【製造業における海外現地生産の進展と国内生産等に ... - meti...- 133 -...

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- 133 - 【製造業における海外現地生産の進展と国内生産等に対する影響】 (1) 製造業の総供給と出荷内訳 製造業の総供給(数量ベース)の推移を鉱工業総供給表でみると、総供給は緩やか な上昇傾向で推移している。このうち、輸入には伸張がみられるが、国産は緩やかな上 昇傾向となっている(総供給ウェイトに占める輸入ウェイトの割合(12年)は 8.6%)。また、 製造業の出荷(数量ベース)の推移を鉱工業出荷内訳表でみると、出荷は緩やかな上 昇傾向で推移している。このうち、輸出向けは上昇傾向となっているが、国内向けは緩 やかな上昇傾向となっている(第Ⅱ-3-8図)。 第Ⅱ-3-8図 総供給と出荷の推移(製造業、12年=100) 資料:「鉱工業総供給表」、「鉱工業出荷内訳表」 このように、我が国の製造業においては、国内出荷(国内向け)の伸びが小さい一方 で、海外との交易は増大している。この要因として、我が国の製造企業が国際競争力等 を高めるために製造拠点の海外進出を進展させていることの影響が想定される。そこで 本稿では、日系企業の海外進出が、我が国の国内生産の伸びにどのような影響を与え ているか、また海外現地企業が製造する製品の逆輸入の状況等について、暫定的に以 下の指標を試算し考察をする(第Ⅱ-3-9図、第Ⅱ-3-5表)。 60 80 100 120 140 160 180 12 13 14 15 16 17 18 ①総供給 総供給 輸入 国産 60 80 100 120 140 160 180 12 13 14 15 16 17 18 ②出荷 出荷 輸出向け出荷 国内向け出荷

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- 133 -

【製造業における海外現地生産の進展と国内生産等に対する影響】

(1) 製造業の総供給と出荷内訳

製造業の総供給(数量ベース)の推移を鉱工業総供給表でみると、総供給は緩やか

な上昇傾向で推移している。このうち、輸入には伸張がみられるが、国産は緩やかな上

昇傾向となっている(総供給ウェイトに占める輸入ウェイトの割合(12年)は 8.6%)。また、

製造業の出荷(数量ベース)の推移を鉱工業出荷内訳表でみると、出荷は緩やかな上

昇傾向で推移している。このうち、輸出向けは上昇傾向となっているが、国内向けは緩

やかな上昇傾向となっている(第Ⅱ-3-8図)。

第Ⅱ-3-8図 総供給と出荷の推移(製造業、12年=100)

資料:「鉱工業総供給表」、「鉱工業出荷内訳表」

このように、我が国の製造業においては、国内出荷(国内向け)の伸びが小さい一方

で、海外との交易は増大している。この要因として、我が国の製造企業が国際競争力等

を高めるために製造拠点の海外進出を進展させていることの影響が想定される。そこで

本稿では、日系企業の海外進出が、我が国の国内生産の伸びにどのような影響を与え

ているか、また海外現地企業が製造する製品の逆輸入の状況等について、暫定的に以

下の指標を試算し考察をする(第Ⅱ-3-9図、第Ⅱ-3-5表)。

60

80

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180

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①総供給

総供給 輸入

国産

60

80

100

120

140

160

180

12

13

14

15

16

17

18

②出荷

出荷 輸出向け出荷

国内向け出荷

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第Ⅱ-3-9図 製造業のグローバル出荷分析用作成指標の概念図

国内向け出荷指数(国産指数)

国内出荷指数

<鉱工業出荷内訳表> 輸出向け出荷指数

現地販売指数 総供給指数

<鉱工業総供給表>

海外出荷指数 第三国向け輸出指数

<海外事業活動基本調査> 輸入比率

<海外現地法人四半期調査> 輸入指数

日本向け輸出指数

製造業出荷海外比率(品目ベース) 海外市場比率

製造業

グローバル

出荷指数

逆輸入比率

(注)「海外現地法人四半期調査」結果は、以下の処理を施し使用した。

1.調査結果(実額)は時系列上、新規調査対象把握等による断層が各年度間に発生しているため、年

度間数値(実額)の接続の際には公表されている接続係数(年度平均、以下同様)を過去の実額系列

に乗じた。接続係数が公表されていない時点については、公表値伸び率と実額系列から接続係数を

推計した(直近の18年度と17年度の接続についても同様)。

2.接続係数で接続させた実額系列において発生する売上高に係る製造業計と各業種計との差分につ

いては、製造業計を生かすべく各業種の売上高に対して差分の比例配分を行い調整した。さらに、各

業種(製造業計を含む)の売上高と内訳(自国内販売、日本向け輸出、第三国向け輸出)計との差分

については、各業種の売上高を生かすべく内訳に対して比例配分を行い調整した。

3.18年7~9月期の値は速報値である。

第Ⅱ-3-5表 製造業のグローバル出荷分析用作成指標(暫定)

1.指数

製造業グローバル出荷指数

【内容】 我が国企業の国内生産及び日系企業の海外生産による製造品の出荷動向

【作成方法】

【補足】 製造業グローバル出荷ウェイト=国内出荷ウェイト+海外出荷ウェイト

国内出荷指数

【内容】 我が国企業の国内生産による製造品の出荷動向

【作成方法】 国内出荷指数

【補足】 ①

② 国内出荷ウェイト=国内向けウェイト+輸出向けウェイト

海外出荷指数

【内容】 日系企業の海外生産による製造品の出荷動向

【作成方法】 ① 現地販売指数

=(自国内販売額/12年平均の自国内販売額)/輸入物価指数

② 日本向け指数

=(日本向け輸出額/12年平均の日本向け輸出額)/輸入物価指数

③ 第三国向け指数

=(第三国向け輸出額/12年平均の第三国向け輸出額)/輸入物価指数

④ 海外出荷指数

【補足】 ①

② 輸入物価指数は、「企業物価平均指数」(日本銀行)の輸入品(円ベース)による。

④ 海外出荷ウェイト=現地販売ウェイト+日本向けウェイト+第三国向けウェイト

(国内出荷ウェイト×国内出荷指数+海外出荷ウェイト×海外出荷指数)/製造業グローバル出荷ウェイト

(国内向けウェイト×国内向け指数+輸出向けウェイト×輸出向け指数)/国内出荷ウェイト

国内向け指数、輸出向け指数、国内向けウェイト、輸出向けウェイトは、「鉱工業出荷内訳表(組替表)」による。

(現地販売ウェイト×現地販売指数+日本向けウェイト×日本向け指数+第三国向けウェイト×第三国向け指数)/海外出荷ウェイト

自国内販売額、日本向け輸出額、第三国向け輸出額は、「海外現地法人四半期調査」の売上高内訳による。

現地販売ウェイト、日本向けウェイト、第三国向けウェイトは、「海外事業活動基本調査」の業種別製造工業売上高による。

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第Ⅱ-3-5表(続き) 製造業のグローバル出荷分析用作成指標(暫定)

(注)1.各指数は、いずれも製造業とその内訳業種について数量ベースのラスパイレス算式(12年基準)にて

作成した。なお、ウェイトとは各指数系列を合成する際に用いられる重みのことであり、ここではウェイトに

「工業統計品目編」の製造品出荷額及び加工賃収入額、「海外事業活動基本調査」の製造工業売上

高を使用している。

2.「鉱工業出荷内訳表(組替表)」及び「鉱工業総供給表(組替表)」については、以下により作成した。①

「工業統計品目編」(12年)の製造品出荷額計及び加工賃収入額計(=国内出荷)と、「海外事業活動

基本調査」(12年度)の製造工業売上高全地域計(=海外出荷)について、国内出荷と海外出荷の構

成比(全体を1万とする)を求め、これをウェイト構成とする。②「鉱工業出荷内訳表」、「鉱工業総供給

表」の業種分類を、「海外現地法人四半期調査」に合わせて組み替える。③業種組替後の「鉱工業出

荷内訳表」、「鉱工業総供給表」について、製造工業出荷のウェイトが①で求めた国内出荷構成比とな

るように、業種別項目別ウェイトを補正する。

(2) 海外出荷と国内出荷の動向

~輸送、電気機械工業を中心に海外現地法人の生産活動が伸張~

わが国製造業の国内生産による出荷と、日系海外現地法人の現地生産による出荷

を合計した製造業グローバル出荷は、上昇傾向で推移している(第Ⅱ-3-10図)。

これを国内・海外出荷別にみると、国内出荷は総じて国内生産と連動して上昇傾向

で推移している。一方、海外出荷には伸張がみられ、製造業グローバル出荷に占める

海外出荷の割合(製造業出荷海外比率)は、12年1~3月期(14.9%)から18年7~9

月期(21.1%)にかけて 6.2%ポイントの増加となっており、海外出荷の割合が高まって

いる。なお、18年に入ってから海外出荷の伸びに足踏みがみられるが、これは後述する

ように、主に現地販売が18年に入ってから伸び悩んでいることによる。

2.各種比率

製造業出荷海外比率(品目ベース)(%)

【内容】 製造業グローバル出荷のうち、海外出荷の割合

【作成方法】 製造業出荷海外比率(品目ベース)

海外市場比率(%)

【内容】 製造業グローバル出荷のうち、海外市場に出荷される割合

【作成方法】 海外市場比率(%)

【補足】 ① 現地販売指数、第三国向け指数は、海外出荷指数の内訳による。

③ 輸出向け指数、輸出向けウェイトは、「鉱工業出荷内訳表(組替表)」による。

輸入比率(%)

【内容】 総供給のうち、輸入の割合

【作成方法】 輸入比率

= (輸入ウェイト×輸入指数)/(総供給ウェイト×総供給指数)×100

【補足】 輸入指数、総供給指数、輸入ウェイト、総供給ウェイトは「鉱工業総供給表(組替表)」による。

逆輸入比率(%)

【内容】 日本の輸入のうち、日系海外現地法人の日本向け輸出の割合

【作成方法】 逆輸入比率

= (日本向けウェイト×日本向け指数)/(輸入ウェイト×輸入指数)×100

【補足】 ① 日本向け指数は、海外出荷指数の内訳による。

② 日本向けウェイトは、「海外事業活動基本調査」の業種別製造工業売上高による。

③ 輸入指数、輸入ウェイトは、「鉱工業総供給表(組替表)」による。

現地販売ウェイト、第三国向けウェイトは、「海外事業活動基本調査」の業種別製造工業売上高による。

(海外出荷ウェイト×海外出荷指数)/(製造業グローバル出荷ウェイト×製造業グローバル出荷指数)×100

(現地販売ウェイト×現地販売指数+第三国向けウェイト×第三国向け指数+輸出向けウェイト×輸出向け指数)/(製造業グローバル出荷ウェイト×製造業グローバル出荷指数)×100

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第Ⅱ-3-10図 製造業グローバル出荷指数の推移

0

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(12年=100)

0

5

10

15

20

25

(%)

海外出荷 国内出荷 製造業出荷海外比率(品目ベース、右目盛)

(注)1.製造業出荷海外比率=(海外出荷ウェイト×海外出荷指数)/(製造業グローバル出荷ウェイ

ト×製造業グローバル出荷指数)×100

2.海外出荷=製造業グローバル出荷指数×製造業出荷海外比率

3.国内出荷=製造業グローバル出荷指数-海外出荷

資料:「製造業グローバル出荷指数」(試算)

海外出荷指数の推移を日本の対外直接投資累積額の推移と比較すると、対外直接

投資累積額の拡大に伴い、海外出荷指数が上昇する傾向がみられる。海外出荷指数

の上昇の要因として、我が国の製造企業が国際競争力等を高めるために、製造拠点の

海外進出を進展させていることが挙げられる(第Ⅱ-3-11図)。

第Ⅱ-3-11図 対外直接投資累積額と海外出荷指数の推移

(注)対外直接投資累積額は、8年以降の累積値である。

資料:「製造業グローバル出荷指数」(試算)、「国際収支統計」(財務省)

0

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40

60

80

100

120

140

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180

12

13

14

15

16

17

18年

(12年=100)

0

50

100

150

200

250

300

350

400(千億円)

対外直接投資累積額(右目盛)

海外出荷指数

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- 137 -

製造業グローバル出荷を業種別にみると、18年は12年に比べ輸送、電気及び一般

機械工業が大きく上昇し、繊維工業、金属製品工業、窯業・土石製品工業が大きく低

下となった(第Ⅱ-3-12図)。

製造業グローバル出荷の伸び(18年/12年)に対する業種別寄与度を、国内・海外

出荷別にみると、輸送及び電気機械工業では海外、国内出荷のいずれも上昇寄与が

大きい。一般機械工業は、海外出荷の上昇寄与が小さいものの、国内出荷の伸びが製

造業グローバル出荷の伸びに寄与している。繊維、金属製品及び窯業・土石製品工業

の製造業グローバル出荷の大幅な低下は、国内出荷の低下によるものである。

製造業グローバル出荷に占める製造業出荷海外比率を業種別にみると、18年は精

密(44.8%)、輸送(34.3%)及び電気機械工業(28.4%)、繊維工業(22.1%)、化学工

業(20.2%)が高く、いずれも12年に比べて大きく上昇している。一方、鉄鋼業(8.2%)

は12年に比べて大きく低下(▲5.4%ポイント減少)となった。

第Ⅱ-3-12図 製造業グローバル出荷指数の比較(業種別)

0

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60

80

100

120

140

160

12年

18年

12年

18年

12年

18年

12年

18年

12年

18年

12年

18年

12年

18年

12年

18年

12年

18年

12年

18年

12年

18年

12年

18年

12年

18年

12年

18年

製造業 食料品・

たばこ

工業

繊維工業 木材・

パルプ・紙・

紙加工品

工業

化学工業 窯業・

土石製品

工業

鉄鋼業 非鉄金属

工業

金属製品

工業

一般機械

工業

電気機械

工業

輸送機械

工業

精密機械

工業

その他

工業

①指数水準(12年=100)

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

(%)

海外出荷 国内出荷 製造業出荷海外比率(品目ベース、右目盛)

▲ 40

▲ 30

▲ 20

▲ 10

0

10

20

30

40

50

製造業 食料品・

たばこ

工業

繊維工業 木材・

パルプ・紙・

紙加工品

工業

化学工業 窯業・

土石製品

工業

鉄鋼業 非鉄金属

工業

金属製品

工業

一般機械

工業

電気機械

工業

輸送機械

工業

精密機械

工業

その他

工業

②伸び率寄与度(%)

海外出荷 国内出荷 製造業グローバル出荷

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- 138 -

(注)1.製造業出荷海外比率=(海外出荷ウェイト×海外出荷指数)/(製造業グローバル出荷ウェイ

ト×製造業グローバル出荷指数)×100

2.海外出荷=製造業グローバル出荷指数×製造業出荷海外比率

3.国内出荷=製造業グローバル出荷指数-海外出荷

4.12年は1~3月期から10~12月期の、18年は1~3月期から7~9月期のそれぞれ単純平均

値である。

資料:「製造業グローバル出荷指数」(試算)

(3) 製造業グローバル出荷の内訳

~日本の製造業グローバル出荷は、輸送、電気機械工業を中心に海外市場向けが

けん引~

製造業グローバル出荷の内訳構成比をみると、18年7~9月期の国内出荷では、国

内向けが 61.6%、輸出向けが 17.2%となり、海外出荷では、現地販売が 12.8%、第三

国向けが 5.1%、日本向けが 3.2%を占めている。12年1~3月期時点と比較すると、国

内出荷の国内向け(▲9.7%ポイントの大幅な縮小)以外はすべて拡大している。18年

に入ってから海外出荷の伸びに足踏みがみられるが、これは主に、輸送及び一般機械

工業などの業種で現地販売に伸び悩みがみられるためである。

製造業グローバル出荷に占める海外市場向け(現地販売、第三国向け及び輸出向

け)の割合(海外市場比率)をみると、18年7~9月期(35.2%)は、12年1~3月期

(27.0%)に比べ 8.2%ポイントの大幅な増加となり、日本の製造業グローバル出荷の上

昇は、海外市場向けがけん引していることがわかる(第Ⅱ-3-13図)。

第Ⅱ-3-13図 製造業グローバル出荷指数とその内訳の推移

0

20

40

60

80

100

120

140

12

13

14

15

16

17

18

(12年=100)

0

5

10

15

20

25

30

35

40

(%)現地販売(海外出荷) 第三国向け(海外出荷)輸出向け(国内出荷) 日本向け(海外出荷)国内向け(国内出荷) 海外市場比率(右目盛)

(注)1.海外出荷については、(海外出荷指数の当該項目ウェイト×同指数)/製造業グローバル出

荷ウェイト

2.国内出荷については、(鉱工業出荷内訳表(組替表)の当該項目ウェイト×同指数)/製造業

グローバル出荷ウェイト

3.海外市場比率=(現地販売ウェイト×現地販売指数+第三国向けウェイト×第三国向け指数

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- 139 -

+輸出向けウェイト×輸出向け指数)/(製造業グローバル出荷ウェイト×製造業グローバル

出荷指数)×100

4.ここで使用している「鉱工業出荷内訳表(組替表)」の作成方法については、第Ⅱ-3-5表の

(注)を参照のこと(以下同様)。

資料:「製造業グローバル出荷指数」(試算)、「鉱工業出荷内訳表(組替表)」

製造業グローバル出荷の内訳を業種別にみると、製造業グローバル出荷が12年から

18年に大きく上昇した業種のうち、輸送機械工業は現地販売の上昇寄与が目立ってお

り(同業種の12年から18年にかけての製造業グローバル出荷の伸びに対する伸び率

寄与度 17.8%)、電気機械工業は国内向けの上昇寄与(同 12.0%)が比較的高く、一

般機械工業は輸出向けの上昇寄与(同 8.7%)が比較的高い。また、繊維、金属製品及

び窯業・土石製品工業における製造業グローバル出荷指数の大幅な低下は、いずれも

国内向けの低下によるものである(第Ⅱ-3-14図)。

製造業グローバル出荷に占める海外市場比率をみると、18年は精密(63.1%)、輸送

(53.8%)、電気(42.3%)、一般(34.1%)といった各機械工業や、化学工業(32.4%)、

繊維工業(30.0%)が高く、いずれも12年に比べて上昇となっている。なお、鉄鋼業

(21.5%)は12年に比べて低下(▲3.5%ポイント減少)が目立っており、これは国内向け

出荷が上昇したが、現地販売が低下したことによる。

第Ⅱ-3-14図 製造業グローバル出荷指数の比較(業種別)

0

20

40

60

80

100

120

140

160

12年 18年 12年 18年 12年 18年 12年 18年 12年 18年 12年 18年 12年 18年 12年 18年 12年 18年 12年 18年 12年 18年 12年 18年 12年 18年 12年 18年

製造業 食料品・

たばこ

工業

繊維工業 木材・

パルプ・紙・

紙加工品

工業

化学工業 窯業・

土石製品

工業

鉄鋼業 非鉄金属

工業

金属製品

工業

一般機械

工業

電気機械

工業

輸送機械

工業

精密機械

工業

その他

工業

①指数水準(12年=100)

0

10

20

30

40

50

60

70

(%)

現地販売(海外出荷) 第三国向け(海外出荷) 輸出向け(国内出荷)

日本向け(海外出荷) 国内向け(国内出荷) 海外市場比率(右目盛)

▲ 40

▲ 30

▲ 20

▲ 10

0

10

20

30

40

50

製造業 食料品・

たばこ

工業

繊維工業 木材・

パルプ・紙・

紙加工品

工業

化学工業 窯業・

土石製品

工業

鉄鋼業 非鉄金属

工業

金属製品

工業

一般機械

工業

電気機械

工業

輸送機械

工業

精密機械

工業

その他

工業

②伸び率寄与度(%)

現地販売(海外出荷) 第三国向け(海外出荷)

輸出向け(国内出荷) 日本向け(海外出荷)

国内向け(国内出荷) 製造業グローバル出荷

- 139 -

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- 140 -

(注)1.海外出荷については、(海外出荷指数の当該項目ウェイト×同指数)/製造業グローバル出

荷ウェイト

2.国内出荷については、(鉱工業出荷内訳表(組替表)の当該項目ウェイト×同指数)/製造業

グローバル出荷ウェイト

3.海外市場比率=(現地販売ウェイト×現地販売指数+第三国向けウェイト×第三国向け指数

+輸出向けウェイト×輸出向け指数)/(製造業グローバル出荷ウェイト×製造業グローバル

出荷指数)×100

4.12年は1~3月期から10~12月期の、18年は1~3月期から7~9月期のそれぞれ単純平均

値である。

資料:「製造業グローバル出荷指数」(試算)、「鉱工業出荷内訳表(組替表)」

(4) 海外現地法人の仕入と販売状況

~海外現地法人は、現地調達比率が拡大、現地販売比率は縮小~

前述のように海外現地法人企業は活発な生産活動を行っている。そこで、海外現地

法人の仕入と販売状況を確認しておく。

海外現地法人の仕入(数量ベース)をみると、年々増加している。仕入の内訳をみる

と、現地調達が も大きく、年々上昇している。仕入に占める現地調達比率は12年度

(45.6%)から16年度(50.5%)にかけて 4.9%ポイントの増加となっている。なお、同期

間で日本からの輸入比率は縮小(▲3.7%ポイント減少)、第三国からの輸入比率も縮

小(▲1.1%ポイント減少)となっている。このように、日本や第三国からの輸入比率が縮

小する一方で、現地調達比率が拡大した背景としては、海外現地法人では生産が困難

な高機能部品の日本などからの供給が依然続いているものの、海外現地法人や地場

企業における現地生産技術が向上していることが考えられる(第Ⅱ-3-15図)。

第Ⅱ-3-15図 海外現地法人の仕入の推移(製造業、数量ベース)

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

12 13 14 15 16年度

(12年=100)

0

10

20

30

40

50

60

(%)

現地調達 日本からの輸入

第三国からの輸入 現地調達比率

日本からの輸入比率 第三国からの輸入比率

(注)1.現地法人販売額を、「企業物価平均指数」の輸入品(円ベース)で実質化した。

2.各項目=(当該項目ウェイト×当該項目指数)/仕入ウェイト

3.ウェイトは、各項目の12年度実績額を使用した。

4.各比率=各項目/仕入×100

資料:「海外事業活動基本調査」、「企業物価平均指数」(日本銀行)

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- 141 -

次に、海外現地法人の販売を、海外出荷指数でみると拡大傾向で推移している。18

年に入ってからは、主に現地販売の伸び悩みから海外出荷指数は足踏みを見せてい

る(第Ⅱ-3-16図)。

海外出荷指数の内訳をみると、現地販売の割合が大きいが、海外出荷に占める現地

販売比率は12年1~3月期(72.1%)から18年7~9月期(60.6%)にかけて▲11.5%ポ

イントの大幅な縮小となっている。なお、同期間で第三国向け比率は大幅な拡大(7.3%

ポイント増加)、日本向け比率も拡大(4.2%ポイント増加)となっている。第三国向け比

率が大幅に拡大したことについて、「海外事業活動基本調査」(「企業物価平均指数(輸

入品、円ベース)」(日本銀行)で実質化した数量ベース)により、第三国向け販売(12

年度から16年度にかけて 98.4%の上昇)を地域別にみると、ヨーロッパ向け(第三国向

け販売の伸びに対する伸び率寄与度 40.1%)、アジア向け(同 28.2%)の増加寄与が

大きい。このように海外現地法人は、当初、進出国に対する製品供給拠点としての役割

が大きかったものの、現在では進出国以外にも販路を大きく拡げ、ヨーロッパ、アジア等

の世界に向けた製品供給拠点として、その位置づけを変化させつつあることがうかがえ

る。

第Ⅱ-3-16図 海外出荷指数の販売先別の推移(製造業)

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

12

13

14

15

16

17

18

(12年=100)

0

10

20

30

40

50

60

70

80

(%)

現地販売 日本向け

第三国向け 現地販売比率(右目盛)

日本向け比率(右目盛) 第三国向け比率(右目盛)

(注)1.各指数については、(海外出荷指数の当該項目ウェイト×同指数)/海外出荷ウェイト

2.各比率=(海外出荷指数の当該項目ウェイト×同指数)/(海外出荷ウェイト×海外出荷指

数)×100

資料:「製造業グローバル出荷指数」(試算)

(5) 日本の貿易特化係数の動向

~電気及び精密機械工業などで貿易特化係数が減少し輸出超過が緩和~

前述のように日本の製造業グローバル出荷は、海外市場向けのための海外出荷が

Page 10: 【製造業における海外現地生産の進展と国内生産等に ... - METI...- 133 - 【製造業における海外現地生産の進展と国内生産等に対する影響】

- 142 -

伸張しており、海外現地法人の販売対象は現地販売から第三国向け(世界向け)に拡

がりをみせつつある。このような状況下、併せて日本の輸出向け出荷も上昇となっている。

そこで、日本の貿易特化係数(数量ベース)をみると、製造業では多くの業種で日本の

輸出超過状況に変わりはないものの、日本の輸入特化はわずかに高まっている(第Ⅱ

-3-17図)。

業種別の内訳をみると、窯業・土石製品工業、金属製品工業、電気機械工業、精密

機械工業等の輸入比率が拡大している。

電気及び精密機械工業の輸出超過が低下した要因としては、日本企業の海外現地

進出に伴い組立て工程が海外に移転され、部品を日本から供給し、組立て後の完成品

が日本へ逆輸入されるケースの増加などによって、当該産業の係数が低下したことが考

えられる。

第Ⅱ-3-17図 日本の業種別貿易特化係数の推移(製造業)

(注)1.貿易特化係数=(鉱工業出荷内訳表(組替表)の当該産業輸出向けウェイト×同指数-鉱工

業総供給表(組替表)の当該産業輸入ウェイト×同指数)/(鉱工業出荷内訳表(組替表)の当

該産業輸出向けウェイト×同指数+鉱工業総供給表(組替表)の当該産業輸入ウェイト×同指

数)

2.貿易特化係数は、1 に近づくにつれて対象品目の貿易構造が輸出に偏り、マイナス 1 に近づ

けば輸入に偏ることになる。ゼロならば輸出入が均衡している。

3.ここで使用している「鉱工業総供給表(組替表)」の作成方法については、第Ⅱ-3-5表の

(注)を参照のこと(以下同様)。

資料:「鉱工業出荷内訳表(組替表)」、「鉱工業総供給表(組替表)」

(6) 日本の輸入及び逆輸入の動向

~精密及び電気機械工業を中心に逆輸入が急上昇~

日本の製造業の貿易特化係数でみる輸入特化状況はわずかに高まっている。そこで、

総供給に占める輸入比率をみると、12年1~3月期(8.0%)から18年7~9月期

(11.8%)にかけて 3.8%ポイントの増加となっている(第Ⅱ-3-18図)。

▲ 1.0

▲ 0.8

▲ 0.6

▲ 0.4

▲ 0.2

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

12

13

14

15

16

17

18

製造業

食料品・たばこ工業

繊維工業

木材・パルプ・紙・紙加工品工業

化学工業

窯業・土石製品工業

鉄鋼業

非鉄金属工業

金属製品工業

一般機械工業

電気機械工業

輸送機械工業

精密機械工業

その他工業

出超

入超

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- 143 -

第Ⅱ-3-18図 総供給の推移(製造業)

(注)1.輸入比率=(輸入ウェイト×輸入指数)/(総供給ウェイト×総供給指数)×100

2.輸入=総供給指数×輸入比率、国産=総供給指数-輸入

資料:「製造業グローバル出荷指数」(試算)、「鉱工業総供給表(組替表)」

輸入について、逆輸入とそれ以外の輸入(ここでは便宜的に純輸入と呼ぶ)に分けて

みると純輸入が大きい。しかし、12年1~3月期から18年7~9月期にかけて純輸入は

1.3 倍(指数水準、68.6→90.3)の拡大となったが、逆輸入は 2.3 倍(指数水準、24.8→

57.7)と伸張している。輸入に占める逆輸入の割合(逆輸入比率)は、12年1~3月期

(26.5%)から18年7~9月期(39.0%)にかけて 12.5%ポイントの大幅な増加となってい

る(第Ⅱ-3-19図)。

これらのことから輸入比率の増加には、逆輸入の伸張が大きく影響している。この背

景としては、日本企業の海外現地進出に伴い、現地生産された完成品等が日本へ逆

輸入されるケースの拡大が影響しているものと考えられる。

第Ⅱ-3-19図 輸入の推移(製造業)

(注)1.逆輸入比率=(日本向けウェイト×日本向け指数)/(輸入ウェイト×輸入指数)×100

2.輸入は、「鉱工業総供給表(組替表)」の輸入である。

3.逆輸入=輸入×逆輸入比率、純輸入=輸入-逆輸入

資料:「製造業グローバル出荷指数」(試算)、「鉱工業総供給表(組替表)」

0

20

40

60

80

100

120

12

13

14

15

16

17

18

(12年=100)

0

2

4

6

8

10

12

14(%)

輸入 国産 輸入比率(右目盛)

0

20

40

60

80

100

120

140

160

12

13

14

15

16

17

18

(12年=100)

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45(%)

逆輸入 純輸入 逆輸入比率(右目盛)

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- 144 -

総供給を業種別にみると、18年は12年に比べ電気、輸送及び一般機械工業、鉄鋼

業が大きく上昇し、繊維、窯業・土石製品及び金属製品工業が大きく低下となった(第

Ⅱ-3-20図)。

総供給の伸び(18年/12年)に対する業種別寄与度をみると、電気機械工業は他

の業種に比べ逆輸入、純輸入、国産の上昇寄与のいずれも大きい。輸送及び一般機

械工業の上昇はほとんどが国産の寄与によるものである。繊維、窯業・土石製品及び金

属製品工業の大幅な低下は、国産品の低下寄与による。なお、精密機械工業では逆

輸入の上昇寄与が目立っている。

総供給に占める輸入比率を業種別にみると、18年は精密機械工業(45.0%)、繊維

工業(同 40.4%)、非鉄金属工業(同 24.7%)、電気機械工業(同 19.4%)が高く、いず

れも12年に比べて上昇している。輸入を逆輸入と純輸入別にみると、逆輸入が大きい

のは精密及び電気機械工業で、12年に比べ大幅な上昇となっている。純輸入が大きい

のは繊維工業、非鉄金属工業であり、これら業種の輸入のほとんどが純輸入となってい

る。

第Ⅱ-3-20図 業種別総供給の比較(製造業)

0

20

40

60

80

100

120

140

12年 18年 12年 18年 12年 18年 12年 18年 12年 18年 12年 18年 12年 18年 12年 18年 12年 18年 12年 18年 12年 18年 12年 18年 12年 18年 12年 18年

製造業 食料品・

たばこ

工業

繊維工業 木材・

パルプ・紙・

紙加工品

工業

化学工業 窯業・

土石製品

工業

鉄鋼業 非鉄金属

工業

金属製品

工業

一般機械

工業

電気機械

工業

輸送機械

工業

精密機械

工業

その他

工業

①指数水準(12年=100)

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

(%)

逆輸入 純輸入 国産 輸入比率(右目盛)

▲ 40

▲ 30

▲ 20

▲ 10

0

10

20

30

40

製造業 食料品・

たばこ

工業

繊維工業 木材・

パルプ・紙・

紙加工品

工業

化学工業 窯業・

土石製品

工業

鉄鋼業 非鉄金属

工業

金属製品

工業

一般機械

工業

電気機械

工業

輸送機械

工業

精密機械

工業

その他

工業

②伸び率寄与度(%)

逆輸入 純輸入 国産 総供給

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- 145 -

(注)1.輸入比率=(輸入ウェイト×輸入指数)/(総供給ウェイト×総供給指数)×100

2.逆輸入比率=(日本向けウェイト×日本向け指数)/(輸入ウェイト×輸入指数)×100

3.輸入=総供給指数×輸入比率、国産=総供給指数-輸入

4.逆輸入=輸入×逆輸入比率、純輸入=輸入-逆輸入

5.12年は1~3月期~10~12月期の、18年は1~3月期~7~9月期のそれぞれ単純平均値

である。

資料:「製造業グローバル出荷指数」(試算)、「鉱工業総供給表(組替表)」

(7) 国内出荷と海外出荷の関係

~国内及び海外出荷がともに上昇した一般、電気、輸送機械工業~

以上のように、日本の海外現地法人企業は活発な生産活動を展開しており、これらの

生産品は主として海外市場向けに出荷されているが、同時に日本への逆輸入も拡大し

ている。このような製造拠点の海外展開を背景とした海外現地生産の伸張によって、国

内製造業の生産水準が低下しているのかを検証するために、鉱工業出荷指数と海外出

荷指数(後方4期移動平均)の循環図を作成した(第Ⅱ-3-21図)。

国内及び海外出荷の推移をみると、製造業計では、双方がともに上昇となっている

(後方4期移動平均による12年10~12月期と18年7~9月期の比較である。以下同

様。)。

これを業種別にみると、以下の4つのケースに類別できる(第Ⅱ-3-6表)。

第Ⅱ-3-6表 鉱工業出荷指数と海外出荷指数循環図の類別業種整理表

類 別 類別内容及び業種名

ケース1 国内及び海外出荷ともに上昇となった業種

業種: 一般機械工業、電気機械工業、輸送機械工業

ケース2 国内出荷が低下若しくは横ばい、海外出荷が上昇となった業種

業種:

ケース3 国内出荷が上昇、海外出荷が低下となった業種

業種: 鉄鋼業

ケース4 国内及び海外出荷ともに低下若しくは横ばいとなった業種

業種: 木材・パルプ・紙・紙加工品工業、非鉄金属工業

食料品・たばこ工業、繊維工業、化学工業、窯業・土石製品工業、金属製品工業、精密機械工業、その他工業

なお、ケース1のうち電気機械工業は、国内出荷が上昇するとともに、前述のように総

供給に占める逆輸入分も拡大しており、このことから国内生産品と逆輸入品とで品質等

が異なるケースが存在する可能性が考えられる。また、ケース2のうち精密機械工業は、

国内出荷のうち輸出向けが全業種の中で唯一の低下(▲6.2 ポイント減少、後方4期移

動平均後の18年7~9月期と12年10~12月期との指数水準差である。以下同様。)と

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- 146 -

なり、国内向けも低下(同▲26.3 ポイント減少)となった。このように、精密機械工業は、

海外出荷は伸張しているが、国内出荷の輸出向けが縮小していることから、海外向け製

品の製造拠点が国内から海外へシフトするといった戦略企業の存在が考えられよう。当

該業種はまた、総供給に占める逆輸入分が増大し、国内出荷の国内向けが縮小してい

ることから、国内向け製品においても海外向け製品と同様、製造拠点が国内から海外へ

シフトしていることが考えられよう。これらのことから精密機械工業の海外現地生産には

国内生産に対して代替効果を持たせていることが推測される。

第Ⅱ-3-21図 鉱工業出荷指数と海外出荷指数の推移(12年=100)

①国内及び海外出荷ともに上昇となった業種

(12年10~12月期と18年7~9月期の比較、以下同様。)

製造業計

80

90

100

110

120

130

140

150

160

170

80 90 100 110 120 130 140 150 160 170鉱工業出荷指数

海外出荷指数

12.Ⅳ

18.Ⅲ

一般機械工業

80

90

100

110

120

130

140

150

160

80 90 100 110 120 130 140 150 160

鉱工業出荷指数

海外出荷指数

12.Ⅳ

18.Ⅲ

電気機械工業

80

90

100

110

120

130

140

150

160

170

180

80 90 100 110 120 130 140 150 160 170 180鉱工業出荷指数

海外出荷指数

12.Ⅳ

18.Ⅲ

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- 147 -

②国内出荷が低下若しくは横ばい、海外出荷が上昇となった業種

輸送機械工業

90

100

110

120

130

140

150

160

170

180

190

200

90 100 110 120 130 140 150 160 170 180 190 200

鉱工業出荷指数

海外出荷指数

12.Ⅳ

18.Ⅲ

食料品・たばこ工業

90

95

100

105

110

90 95 100 105 110鉱工業出荷指数

海外出荷指数

12.Ⅳ18.Ⅲ

繊維工業

60

70

80

90

100

110

120

130

140

60 70 80 90 100 110 120 130 140

鉱工業出荷指数

海外出荷指数

12.Ⅳ

18.Ⅲ

化学工業

95

100

105

110

115

120

125

130

135

95 100 105 110 115 120 125 130 135鉱工業出荷指数

海外出荷指数

12.Ⅳ

18.Ⅲ

窯業・土石製品工業

75

80

85

90

95

100

105

110

115

120

125

75 80 85 90 95 100 105 110 115 120 125

鉱工業出荷指数

海外出荷指数

12.Ⅳ

18.Ⅲ

Page 16: 【製造業における海外現地生産の進展と国内生産等に ... - METI...- 133 - 【製造業における海外現地生産の進展と国内生産等に対する影響】

- 148 -

③国内出荷が上昇、海外出荷が低下となった業種

金属製品工業

80

85

90

95

100

105

110

115

80 85 90 95 100 105 110 115鉱工業出荷指数

海外出荷指数

12.Ⅳ

18.Ⅲ

精密機械工業

70

80

90

100

110

120

130

70 80 90 100 110 120 130鉱工業出荷指数

海外出荷指数

12.Ⅳ

18.Ⅲ

その他工業

90

95

100

105

110

115

90 95 100 105 110 115

鉱工業出荷指数

海外出荷指数

12.Ⅳ

18.Ⅲ

鉄鋼業

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

50 60 70 80 90 100 110 120 130 140

鉱工業出荷指数

海外出荷指数

12.Ⅳ

18.Ⅲ

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- 149 -

④国内及び海外出荷ともに低下若しくは横ばいとなった業種

(注)後方4期移動平均値である。

資料:「鉱工業指数」、「製造業グローバル出荷指数」(試算)

(8) 海外現地法人の出荷活動が国内出荷に与える影響

~一般、電気及び輸送機械工業は市場拡大型業種、

精密機械工業は海外現地生産による輸出代替型業種~

こでは前述の循環図について、海外現地法人の出荷(生産)活動によって国内出荷

(生産)がどのような影響を受けたかを考察する。

なお、考察するにあたって海外出荷が国内出荷に与える効果の度合いを試算した。

この試算方法は、海外出荷が国内出荷に与えるマイナス効果として、「輸出代替効果」

(従来、日本から輸出されていたものが海外現地生産による現地販売や第三国向け販

売に代替されることにより、日本の国内生産が減少する効果)及び「逆輸入効果」(海外

現地生産された製品が日本に逆輸入されることで日本の国内生産が減少する効果)を

マイナス計上した。また、海外出荷が国内出荷に与えるプラス効果として、「増産効果」

(海外現地生産で使用する部品等を日本から調達することによって日本の国内生産が

増加する効果)をプラス計上した。これらのトータル値によって、海外現地法人の生産活

動が我が国の国内出荷に与える効果の度合いを推測できよう。なお、これらは年度の金

額(円)ベースデータによる算出結果であり、循環図で用いている暦年の数量ベースと

は相違がある。さらに、次の点にも注意が必要である。それは、試算の前提として海外

現地法人の販売が仮に 100%無いとした場合、日本国内からそれと同額を海外に輸出

する(進出国等の海外市場拡大と、日本国内で対応可能なレベル以上の地理的メリット

を有する現地法人の販売努力の成果等を背景に増大している現地法人販売額の全額

木材・パルプ・紙・紙加工品工業

60

65

70

75

80

85

90

95

100

105

60 65 70 75 80 85 90 95 100 105

鉱工業出荷指数

海外出荷指数

12.Ⅳ

18.Ⅲ

非鉄金属工業

75

80

85

90

95

100

105

75 80 85 90 95 100 105

鉱工業出荷指数

海外出荷指数

12.Ⅳ

18.Ⅲ

Page 18: 【製造業における海外現地生産の進展と国内生産等に ... - METI...- 133 - 【製造業における海外現地生産の進展と国内生産等に対する影響】

- 150 -

を、国内生産によって代替する)仮定をおいていること、さらに、国内生産の増加には労

働及び資本などの拡充が必要と想定されるがこれを考慮していないことによる。この試

算結果と製造業グローバル出荷指数(伸び率寄与度)について表に掲載した(第Ⅱ-3

-7表)。

なお、国内出荷額(16年)注)は 283.4 兆円であり、海外出荷が国内出荷に与える効果

(16年度、58.8 兆円)は、本来あるべきと考えられる国内出荷額に対して 大▲17.2%

の減少効果を持っている。

この表でみると、製造業計では、海外出荷、国内出荷(鉱工業出荷指数と同等、以下

同様。)ともに上昇となっており、うち国内出荷は国内向け、輸出向けともに上昇となって

いる。海外出荷が国内出荷に与える効果は、現地販売額、第三国向け販売額等の増

加により拡大(マイナス)している。また、現地法人以外向けの輸出額は増加している。こ

れらのことから国内出荷の上昇のうち国内向けは内需の拡大が影響しており、輸出向け

は好調な日系企業の海外現地生産を上回る規模での日本製品への海外需要が旺盛

であることが影響していると考えられよう(第Ⅱ-3-7表)。

業種別にみると、①国内及び海外出荷とも上昇となったのは、一般、電気及び輸送

機械工業である。これらは、国内出荷(国内向け、輸出向け)、海外出荷(現地販売、第

三国向け、日本向け)のいずれも上昇となっており、国内市場、海外市場ともに伸張して

いる市場拡大型業種と位置づけることができよう。なお、海外出荷が国内出荷に与える

効果は3業種ともにマイナスとなっている。一般及び輸送機械工業は、現地法人以外向

けの輸出額が大きく増加している。これらのことから当該3業種は、製造業全体の動きと

同様に、国内出荷の上昇のうち国内向けは内需の拡大が影響しており、輸出向けは好

調な海外現地生産を上回る規模での日本製品への海外需要が総じて旺盛であることが

影響していると考えられる。さらに、輸送機械工業は、(現地販売+第三国向け)が、輸

出向けを大きく上回っており、海外現地生産による輸出代替の進展が考えられる。さら

に、電気機械工業は国内向け出荷、海外出荷の日本向けともに大きく上昇しており、国

内生産品と逆輸入品とで品質等が異なる(後述する)ケースが存在することが推察され

る。

②国内出荷が低下若しくは横ばい、海外出荷が上昇となった業種は、食料品・たばこ

工業など7業種である。7業種のすべてで、海外出荷の日本向けが拡大若しくは横ばい

注)16年の国内出荷額は、「工業統計品目編」(16年、4人以上)の製造品出荷額(272.0 兆円)、加工

賃収入額(11.4 兆円)の合計値(283.4 兆円)とした。本来あるべきと考えられる国内出荷額は、16

年の国内出荷額と、海外出荷が国内出荷に与える効果(16年度の絶対値、58.8 兆円)の合計値

(342.2 兆円)とした。

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- 151 -

となっている。国内出荷の低下若しくは横ばいは、国内向け出荷の影響によるものであ

り、これは逆輸入の拡大傾向と、内需の伸び悩みが影響しているものと考えられる。なお、

精密機械工業は輸出向け出荷が唯一低下した業種であるが、現地販売は上昇となっ

ており、海外現地生産による輸出代替の進展が考えられよう。

③国内出荷が上昇、海外出荷が低下となったのは鉄鋼業である。海外出荷の低下は、

現地販売の低迷によるものであり、海外出荷が国内出荷に与える効果も現地販売額の

縮小等によってプラスとなっている。国内出荷は国内向け、輸出向けともに上昇となって

いる。また、現地法人以外向けの輸出額は大きく増加している。これらのことから国内出

荷の上昇のうち、国内向けは内需の拡大が影響しており、輸出向けは日本製品への海

外需要が旺盛であることが影響していると考えられる。なお、鉄鋼業の外需については、

海外現地法人による現地販売だけが低迷している状況である。鉄鋼業の現地販売が縮

小した背景について「海外事業活動基本調査」の海外生産と現地生産能力移転のアン

ケート調査でみると、鉄鋼業を営む現地法人の現在の技術水準が日本より高いもしくは

同等と回答した企業は、12年度の 56.1%(分母の回答企業は 239 社)から、15年度は

67.5%(分母の回答企業は120社)と11.4%ポイントの大幅な増加となっている。このこと

から鉄鋼業においては、日本から現地生産工場への技術移転の進展による現地生産

品の品質及び価格の上昇が、現地市場ニーズに必ずしも合致しないケースが存在する

可能性が推察される。なお、当該調査の回答企業数が大幅に減少しているが、これは、

鉄鋼業を営む現地法人数の減少(12年度の 266 社から15年度の 192 社にかけて▲74

社減少)が影響しており、その撤退理由を同調査でみると(12年度から15年度の回答

企業の計51社について)、33.3%の企業が販売不振・収益悪化と回答しており、その主

な理由として製品需要の見誤りを挙げている。これらのことから鉄鋼業は、一旦は生産

拠点を海外進出させたものの一部では海外からの撤退がみられており、旺盛な外需に

対しては我が国からの供給にシフトするなどの国内生産回帰が一部に存在するものと

考えられる。

④国内及び海外出荷ともに低下若しくは横ばいとなったのは、木材・パルプ・紙・紙

加工品工業、非鉄金属工業である。これは内需、外需とも伸び悩んでいるものと考えら

れる。

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第Ⅱ-3-7表 製造業グローバル出荷指数と海外出荷が国内出荷に与える効果

(注)1.海外出荷が国内出荷に与える効果については、「海外事業活動基本調査」を使用した。このうち現

地法人販売額については、符号をすべてマイナスにし(国内出荷に対してマイナスの効果があると考

えられるため)、その後、16年度と12年度の差分を算出した。なお、現地法人向け輸出額には、海外

現地法人の日本からの仕入額を使用した。

2.現地法人以外向けの輸出額は、日本の輸出額から現地法人向け輸出額を除外した値である。なお、

日本の輸出額は、「鉱工業出荷内訳表」による国内出荷業種と貿易統計HS品目との対応表から求

めた品目ベースであるが、除外に使用した現地法人向け輸出額は現地法人の産業ベースのため定

義上の相違がある。この影響により精密機械工業は日本の輸出額を現地法人向け輸出額が上回る

ため、精密機械工業の日本の輸出額には後述する第Ⅱ-3-22図の(注)2の貿易統計HS品目を

使用した(製造業計にも反映している)。

3.海外出荷が国内出荷に与える効果及び現地法人以外向けの輸出額は、窯業・土石製品工業、金属

製品工業、その他工業が一つに合算されている。

資料:「製造業グローバル出荷指数」(試算)、「海外事業活動基本調査」、「貿易統計」(財務省)

(9) 電気及び精密機械工業の輸出入単価

~国内生産品と逆輸入品の競合度合いが低い電気機械工業、

海外現地工場の生産技術が向上している精密機械工業~

前述のように、電気及び精密機械工業は逆輸入が大きいことが特徴的である。このう

ち、電気機械工業は逆輸入、国内出荷の双方が上昇しており、国内生産品と逆輸入品

とで品質等が異なるケースが存在する可能性が考えられる。一方、精密機械工業は国

外及び国内向け製品の製造拠点について国内から海外へのシフトが考えられる。そこ

で両者の輸出入単価を比較し、これについて概観してみる。

電気機械工業について、電気機械品目の輸入単価と輸出単価(国内生産品の単価

製造業グローバル出荷指数(後方4期移動平均) (参考)

合計

製造業グローバル出荷 現地法人販売額日本の輸出額

日本の輸出額

国内出荷 海外出荷現地

販売額第三国向け販売額

日本向け

現地法人向け

国内向け

輸出向け

現地販売

第三国向け

日本向け

(輸出代替効果)

(輸出代替効果)

(逆輸入効果)

(増産効果)

製造業 15.8 6.6 1.5 5.1 9.2 4.5 2.8 1.9 ▲ 16,780 ▲ 10,985 ▲ 9,758 ▲ 2,346 6,309 791

①国内及び海外出荷ともに上昇となった業種

一般機械工業 18.8 14.4 6.1 8.3 4.4 1.8 1.5 1.1 ▲ 701 ▲ 223 ▲ 312 ▲ 345 179 807

電気機械工業 35.5 18.8 11.2 7.6 16.7 4.3 6.9 5.6 ▲ 1,294 76 ▲ 2,071 ▲ 482 1,183 ▲ 1,592

輸送機械工業 40.0 17.2 7.7 9.5 22.7 17.6 4.4 0.7 ▲ 12,577 ▲ 9,369 ▲ 6,023 ▲ 879 3,694 877

②国内出荷が低下若しくは横ばい、海外出荷が上昇となった業種

食料品・たばこ工業 ▲ 6.3 ▲ 6.4 ▲ 6.5 0.1 0.2 0.2 0.0 ▲ 0.1 ▲ 615 ▲ 372 ▲ 151 ▲ 109 17 ▲ 9

繊維工業 ▲ 26.7 ▲ 30.3 ▲ 30.7 0.5 3.6 1.2 1.1 1.4 274 218 109 ▲ 33 ▲ 20 43

化学工業 6.7 1.4 ▲ 0.8 2.2 5.4 2.4 2.2 0.7 ▲ 852 ▲ 942 ▲ 357 ▲ 189 637 ▲ 118

精密機械工業 ▲ 1.1 ▲ 10.4 ▲ 8.4 ▲ 2.0 9.4 6.2 ▲ 1.1 4.3 ▲ 173 ▲ 28 ▲ 239 ▲ 175 269 ▲ 247

窯業・土石製品工業 ▲ 15.4 ▲ 17.4 ▲ 17.7 0.2 2.0 0.9 0.7 0.4 ▲ 1,107 ▲ 595 ▲ 575 ▲ 74 137 198

金属製品工業 ▲ 16.3 ▲ 16.4 ▲ 18.2 1.7 0.2 ▲ 0.1 0.0 0.3

その他工業 ▲ 3.1 ▲ 3.5 ▲ 5.7 2.2 0.4 0.4 ▲ 0.3 0.3

③国内出荷が上昇、海外出荷が低下となった業種

鉄鋼業 6.2 10.9 8.3 2.6 ▲ 4.7 ▲ 5.6 0.7 0.2 354 376 ▲ 169 ▲ 24 171 871

④国内及び海外出荷ともに低下若しくは横ばいとなった業種

木材・パルプ・紙・紙加工品工業

▲ 8.3 ▲ 6.7 ▲ 6.9 0.2 ▲ 1.6 ▲ 0.7 ▲ 0.5 ▲ 0.4 6 8 ▲ 31 2 26▲ 8

非鉄金属工業 ▲ 1.1 ▲ 0.9 ▲ 3.1 2.1 ▲ 0.2 ▲ 2.2 ▲ 0.9 3.0 ▲ 95 ▲ 134 61 ▲ 38 16 ▲ 29

現地法人以外向けの輸出額

各業種のグローバル出荷の伸びに対する伸び率寄与度(18年7~9月期/12年10~12月期)

16年度-12年度

(10億円)

海外出荷が国内出荷に与える効果(16年度-12年度(10億円))

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を輸出単価で代用した。)を比較すると、17年の輸出単価は輸入単価の約 1.8 倍と、精

密機械品目(約 1.5 倍)に比べ輸出入単価の格差が大きい。このことから、電気機械工

業は比較的、高機能(付加価値)品が国内生産されており、海外(現地法人)では比較

的下位ランク(低付加価値)の製品が生産されていることが推測される。このことによって

国内生産品と逆輸入品が直接的に競合製品となる度合いが低くなっているものと考えら

れ、海外現地法人と日本との貿易の一部で、垂直的な産業内貿易が行われていること

がうかがえる(第Ⅱ-3-22図)。

また、精密機械工業については、精密機械品目の輸入単価が12年から17年にかけ

て約 19.6 ドル/kgの増加と、電気機械品目(同約 0.1 ドル/kgの横ばい)に比べて伸

張している。このように精密機械工業は、地場企業を含め海外現地工場の生産技術が

向上していることがうかがえ、このことが国内生産から海外生産へといった製造拠点のシ

フトを支えているものと考えられる。

第Ⅱ-3-22図 電気及び精密機械品目の輸出入額及び単価の推移

①電気機械品目

②精密機械品目

0

5

10

15

20

25

30

35

12 13 14 15 16 17年

(10億ドル)

0

20

40

60

80

100

120

140(ドル/KG)

輸出金額 輸入金額

輸出単価(右目盛) 輸入単価(右目盛)

0

20

40

60

80

100

120

140

160

12 13 14 15 16 17年

(10億ドル)

0

5

10

15

20

25

30

35

40

(ドル/KG)輸出金額 輸入金額

輸出単価(右目盛) 輸入単価(右目盛)

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(注)1.電気機械品目は、HS品目の 8415、8418、8450、8452、8469、8470、8471、8475、8501、8502、

8503、8504、8505、8506、8507、8508、8509、8510、8511、8512、8513、8514、8515、8516、

8517、8518、8519、8520、8521、8522、8523、8524、8525、8526、8527、8528、8529、8530、

8531、8532、8533、8534、8535、8536、8537、8538、8539、8540、8541、8542、8543、8544、

8545、8546、8547、8548 を使用した。

2.精密機械品目は、HS品目の 9002、9003、9004、9005、9006、9007、9008、9009、9010、9011、

9012、9013、9014、9015、9016、9017、9018、9019、9020、9021、9022、9023、9024、9025、

9026、9027、9028、9029、9030、9031、9032、9033、9101、9102、9103、9104、9105、9106、

9107、9108、9109、9110、9111、9112、9113、9114 を使用した。

3.単価は上記HS品目のうち数量がkgで把握できる品目から算出した。

資料:「貿易統計」(財務省)

(10) 結論

我が国の製造企業が国際競争力等を高めるために製造拠点の海外進出を進展させ

ていることを背景として、製造業グローバル出荷は主として海外市場向けの海外出荷を

中心に伸張をみせている。

我が国企業の海外現地法人は、当初は主に進出国に対する製品供給拠点としての

役割を果たしていたものの、現在では世界に向けた製品供給拠点として、その位置づ

けを変化させつつあると考えられる。また、現地調達比率が高まっていることから海外現

地法人や地場企業における現地生産技術が向上していることも推測される。これを背景

に海外現地法人から日本への逆輸入が伸張し、純輸入の伸びを上回っている。

製造拠点の海外展開を背景にした海外現地生産の進展によって、国内製造業の生

産水準が低下しているのかを業種別にみたところ、一般、電気及び輸送機械工業(市

場拡大型業種)では、国内・海外出荷とも上昇となっている。食料品・たばこ工業など7

業種は、海外出荷が上昇、国内出荷が低下または横ばいとなった。また、鉄鋼業は、国

内出荷が上昇、海外出荷が低下となったが、海外出荷は現地販売のみ低迷しており、

これは、日本から現地生産工場への技術移転の進展による現地生産品の品質及び価

格の上昇が、現地市場ニーズに必ずしも合致しないケースが存在する可能性が推察さ

れる。

なお、電気機械工業は、国内では比較的高機能品が、海外現地法人では比較的下

位ランクの製品が生産されていることが推測され、国産品と逆輸入品が直接的に競合製

品となる度合いが低いものと考えられる。精密機械工業は、海外現地工場の生産技術

向上がうかがえ、このことが国内生産から海外生産へといった製造拠点のシフトを支え

ているものと考えられる。

これまでみてきた様に、我が国の製造企業が製造拠点を海外展開させていることによ

る国内出荷への影響は様々である。しかし、長期的にみれば日本企業の海外進出は直

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接投資受入国にとっては自国の経済成長に大きく貢献するものと考えられ、日本経済

の更なる拡大にも繋がる可能性があるものと推測されよう。