機械設計製図 - 青山学院大学medesign/2019_lecture(tue)_1st.pdf ·...
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機械設計製図
第1回:授業資料
前半(4限):設計製図の基礎
教室:N棟6階,N602a室 設計製図室
配布用
火曜日 担当:吉川
この授業の設計対象は“遠心渦巻きポンプ”
教科書
パワー社「SI版渦巻ポンプの設計― 設計製図の基礎 ―」
ISBN4-8277-1269-7(定価 ¥2,400+税)
授業に必ず持参するもの
教科書「SI版 渦巻ポンプの設計 - 設計製図の基礎 - 」
パワー社,ISBN4-8277-1269-7,¥2400+税
電卓/計算機
レポート用紙(計算書用)
製図用具製図用コンパス(大きな綺麗な円がかけるもの),製図用シャープペン(細,太),円のテンプレート
1.1 設計の分類
開発設計・・・B2C(Business to Consumer)
乗用車、カメラ、家電製品など
主に一般消費者向け商品開発
受注設計・・・B2B(Business to Business)
特殊車両、産業用機械、社会インフラなど(消防車、タービン・発電機、橋梁etc)企業、官公庁向け製品の受注生産
1.2 開発設計と受注設計の比較商品開発 受注設計
生産形態 量産 一品生産
設計仕様(スペック)
製造側が決める(市場調査、他社動向、などから開発仕様を策定)
発注者が発行する仕様書に準拠して設計する
市場リリースまでの過程
基本試作、量産試作を経て販売開始の決定(満を持して発売)
受注後、詳細設計、製品製作、試験・検査、合格出荷(一発勝負)
価格 製造側が決める(定価、オプション価格)
仕様書に基づき見積提出→発注者が複数比較(技術、価格、納期)して選択(相見積)
成功のカギ 消費者の求めるニーズに合致すれば売れる
技術提案力実績
1.3 機械設計とは機械の機能、操作性、安定性、安全性、保守性を実現するための具体的な構造、機構を決め、材料を選定し、
設計計算により各部品の詳細形状、寸法、公差、表面粗さ、など諸元を定めて、
「製作図面」に表すこと
(開発設計、受注設計、共通)
1.4 設計者とは開発設計、受注設計 共通
既存製品の諸元を変更する流用設計が多い
実績品であっても改良すべき点は多々ある
設計者は、既存製品に関するトラブルや苦情情報を広く収集 常に改善の工夫を行う
日々勉強を怠らずに、製品改良に努める
Design=サインをする=設計する製品の責任を明確にすること機械の機能・性能のみならず、安全性、信頼性、取扱性に気を配って設計する
1.5 製図 とは
設計した製品の形状と諸元を図面(絵)にして他の専門家(生産技術、加工・組立など製造部門)に伝える.
諸元には、寸法の他に、表面仕上げ(粗さ)、幾何公差(直角度、平行度、同芯度など)
使用する材料の情報も含む
製図 とは立体形状の製品=3次元→図面:2次元 で表す作業
基本的には3次元で設計し、3次元で物を作り、3次元でアフタサービスを行えればそれが最も良い。(3D-CAD、3Dプリンタ)
しかし世の中の大半はコスト/効率の観点から紙という2次元で動いている。従って2次元で3次元を表現するのに慣れておくことが現実的。
1.6 設計の流れ
設計作業は,
機能 → 機構 → 構造
を何度も繰り返し評価
しながら進んでいく。
(構想→基本設計
→詳細設計
一度の評価で設計がうまくいくことはない。
基本計画図
→ 最終計画図
までの作業が重要!
機械の構造はそれぞれの部品が働いている状態(組み立てられた状態)を考え,決定する。
↓
計画図 を完成度高く作ることがコツ!コストの8割はここで決まる。
1.7計画図の必要性
1.8機械設計での必須の知識
力の流れ
変形
剛性
応力集中
振動
疲労
熱の流れ
温度分布
熱変形
その他 多くの幅広い知識
1.9技術者の社会に対する責任
技術は,それが適用される製品やサービスとして,最終的には一般の人に利用されるのであるから,社会に対する影響を考慮して開発されなければならない。
設計作業は,社会に対する責任を伴う。
→ 製造物責任法(PL法)・製造欠陥
・設計欠陥
・表示、警告の欠陥
1.13設計者の心得担当製品の実際の使用状況、運転状況を自分の目で確認
使用者にヒアリングして、要望事項や困りごとを収集
製造現場へ足を運び、加工・組立・検査・試験など関係各部門の人々の意見に耳を傾ける
担当製品以外にあらゆる機械に目を向けて、その機構や構造、材料、などを設計的思考で観察
視野を広げて設計に生かす努力
1.14寸法表示の注意事項部品が設計意図通りの精度で正しく加工されるためには、一定の規則に従って、図面の寸法表示を行うことが重要JIS B0001の寸法記入原則
寸法記入の原則 説明、理由、意味、目的
必要な寸法は必ず記入 寸法の他公差、表面粗さ、はめ合いなど
出来るだけ主投影図に記入 最も形状のわかりやすい図に表示
寸法を計算する必要がないように
加工者が計算しないと必要な寸法が解らない図面はダメ
工程ごとに配列を分ける 旋盤、フライスなど工程別に分寸法表示
関連寸法は、なるべく一か所にまとめて記入
あっちみてこっちみては見落としや誤解を招きやすい
必要あれば、基準とする点、線、面を基に寸法記入
加工基準となる「基準形体」がある場合は、そこからの寸法で表示
重複記入を避ける 重複記入が必要な場合は、該当寸法に印をつけて、注記欄に説明追記
1.15標準化とコストダウン製造業の3大要素はQCD(品質・コスト・納期)
QとCはトレードオフの関係といわれている。設計者は、Cを下げるためにQがおろそかになることは避けなければならないQを維持しつつCを抑えるためにはどうすればよいか1円でも安く作るためにはどうすればよいのか思考を停止せずに地道な努力を積み重ねる
一つの方策として標準化による設計合理化を図ることで、加工量の節約、購入費の削減、などコストダウンにつながる
標準数の適用
標準数適用の利点
・標準数列は、等差数列ではなく、等比数列
寸法を決める際の合理性あり、バリエーションをいたずらに増やすことなく、多様な顧客仕様に対応することが可能
・標準数の適用により、製作に必要な治工具の種類も限定することが可能となり、コストダウンにつながる
標準数の考え方と使用方法は 「JIS Z 8601標準数」に解説されている。次ページに概要
標準数の使用方法概要(JIS Z 8601より)
工業標準化・設計などで、段階的に数値を定める場合には標準数を用い、単一数値を定める場合でも標準数から選ぶようにする。
標準数は、基本数列の中で増加率の大きい数列から選ぶ。すなわち、R5,R10,R20,R40の順で用いる。基本数列によれない場合のみ
R80を用いる。
市販部品の使用コストを適正に抑えて製品作りするポイントの一つ市販部品の使用 標準的市販品は廉価購入可能特に、ネジ部品(ボルト・ナット)、シール部品(Oリング)などは、市販標準部品を適用する
・ネジは特殊なサイズの場合、ネジ模範から作らねばならず コストアップ、納期延長
・Oリングは特殊サイズの場合、型から起こさねばならず コストアップ、納期延長
・フレームやベースなど構造部材は、市販鋼板(幅、厚さ)を 出来る限り加工せずにそのまま使用するように設計すると加工費を削減できる
JIS規格の部品寸法は、標準数列から選定されている
機械設計製図
第1回:授業資料
後半(5限):渦巻ポンプの基礎
教室:N棟6階,N602a室 設計製図室
配布用
火曜日 担当:吉川
ポンプの分類 P13
渦巻きポンプ
タービンポンプ渦巻き斜流ポンプ
斜流ポンプ
ターボ形ポンプ
遠心ポンプ
斜流ポンプ
軸流ポンプ
容積形ポンプ
往復動ポンプ ピストンポンプ
プランジャポンプ
回転ポンプ 歯車ポンプスクリュウポンプ
ベーンポンプ
その他のポンプ
渦流ポンプエアリフトポンプ
ジェットポンプ
ポンプ
軸と軸受の構造による分類主軸が水平設置される構造を横軸ポンプ、垂直設置されるポンプを立軸ポンプとよぶ。軸受が羽根車を挟んで両側配置される構造を両持、羽根車に対して片側にのみ配置される構造を片持、と呼ぶ
米国石油協会(American Petroleum Institute)ではAPI610という規格で、ターボ形ポンプ分類している。片持構造はOH(Over Hung)、両持構造はBB(Between Bearing)、立軸ポンプはVS(Vertically Suspended)という記号をつけ、さらにケーシング構造、軸受、モータとの接続、などの違いによりOH1~OH6,BB1~BB5,VS1~VS7、の全部で18種類に分類
3片持ポンプの例:OH1横軸下脚支持
両持ポンプの例:BB1単段軸水平割
立軸ポンプの例:VS1単胴揚液管吐出デイフューザ
演習対象
ターボ形ポンプの機能流量と全揚程(要項)
単位時間当たりどの位の量の水(流量)を、
水柱換算してどの位の高さ(全揚程)を持って送り出すか
単位と記号
流量:記号Q 単位;時間当たりの体積(m3/minなど)
全揚程:記号H 単位;位置エネルギ単位である長さ(mなど)
4
流量、全揚程に関するポンプ能力の例
大流量の軸流ポンプ 2000 m3/min以上の流量を送水できる…50mプールの水を1分以内に排水できる能力
高揚程の遠心ポンプでは4000m 級の全揚程を発揮するものあり…富士山の頂上まで水を上げる能力
P18,19
全揚程
5
全揚程H=実揚程+配管系統損失およびバルブ損失1)実揚程Haポンプが液体に実際に与えなければいけない位置エネルギ(ヘッド)のこと
①圧力差タンク圧力差P2-P1
②高低差液面高低差L1
P75
今回の演習では液面高低差のみHa=L1
全揚程
© 日本アイアール株式会社 All right reserved. 6
2)配管損失、バルブ損失ポンプは、水を流すことで生じる圧力損失分ヘッド(システ
ムヘッド)も供給する必要あり
圧力損失は流速の二乗に比例流速は流量を配管断面積で除した値で、配管径が決まれば流速は流量に比例したがって、損失水頭は次の様に表すことができる
配管損失h1=A1xQ2…‥(3)
吐出し弁損失V1=A2xQ2…‥(4)
A1:配管長さや曲がり(エルボ)や合流の数、タンクへの開放吐出しなどで決定される損失係数A2 :吐出弁の損失係数A1+A2=Aとおけば、式(3),(4)より全揚程H =Ha+AQ2…‥(5)
P76
ターボ形ポンプの水動力と効率効率:ターボ形ポンプの性能を論ずる基準となる指標
ポンプの流量をQ(m3/min)、全揚程をH(m)、ポンプが扱う液体の密度をρ(kg/m3)とした時、ポンプが行う有効な仕事を水動力と呼び、水動力は次式で計算される。
ポンプが水動力を出力するために消費する動力が軸動力L(kW)
水動力の軸動力に対する百分率がポンプ効率
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ポンプ水動力=0.1634 xρx Q x H/1000 (kW)
ポンプ効率η=0.1634ρQH/1000Lx100 (%)
P20
ターボ形ポンプの効率
3種類の損失
①水力損失:羽根車や案内羽根における流れの乱れ、流れの衝突、流れと流路壁との摩擦、による損失
②漏れ損失:ポンプ内部の差圧のある個所に生じる漏れ流れによる損失
③機械損失:軸受や軸封などの部品における摺動抵抗などによる損失
8
水動力軸動力
水力損失機械損失 漏れ損失
P35~41
ターボポンプの特性曲線ターボ形ポンプの特性は横軸に流量、縦軸に全揚程、効率、軸動力をとった特性曲線で表す。流量-全揚程曲線はQHカーブともよぶ。
特性曲線で、ポンプの効率が最大値(ピーク効率)となる流量を最高効率点(BEP: Best Efficiency Point )という
通常は、要項点がBEPと一致するように設計する
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
0 20 40 60 80流量Q
ターボポンプの特性曲線(例)
BEP…効率ピークとなる流量と全揚程を設計点と呼ぶ
ポンプ運転点配管、バルブ、フート弁における損失は流速の2乗に比例流速=流量/断面積、配管口径が一定であれば、損失は流量の2乗に比例する。流量ゼロにおける、実揚程に相当する全揚程点から配管系統の損失特性を2次曲線で引いた曲線を、システムヘッドとよぶ。
ポンプ運転点は、QHカーブとシステムヘッドの交点となる。
図例では、システムヘッド1は損失係数が大きく実揚程が低い、システムヘッド2は損失係数が小さく実揚程が大きい要項点では、ポンプ流量と全揚程が一致している。
比速度流量をQ(m3/min)、全揚程をH(m)、回転速度をN(min-1)とした時、比速度(Specific Speed)(以下 Ns)は次の式で定義される
Nsは、ターボ形ポンプの羽根車形状の相似性を表す数値
形状が相似であるポンプのNsは同じ値
羽根車形状は、流量Q,全揚程H,回転速度N,の3要素で決まる
NとQが一定のとき、Hが大きくなるほどNsは小さくなり(低NS)NとHが一定のとき、Qが大きくなるほどNsは大きくなる(高NS)
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Ns=NxQ1/2 / H3/4
ターボ形ポンプのサイズポンプサイズは、吸込み吐き出しの配管サイズで代表し、これをポンプ口径と呼ぶ。口径は、吸込みx吐出しで表す
吐出し配管は、吸込みと同径か、1~2サイズ小さくなる
ポンプ口径の表し方の例(右図参照)
150x100
(吸込口径150㎜、吐出口径100㎜)
12
100
150
吐出フランジ
吸込フランジ
ポンプサイズは接続する配管口径で表す
ターボ形ポンプはどこで使われるか水や様々な液体を扱うシステムの心臓部
・上下水道・マンション、ビル給水
・農業、灌漑
・雨水排水、河川排水,洪水対策用先行待機ポンプ
・火力発電(ボイラ給水、循環水、復水)
・海水淡水化
・鉄鋼(デスケーリング・・・薄板鋼板表面スケール除去)
・LNG移送
・原油移送、石油精製プロセスポンプ
・肥料(液安、カーバメイト)
・石油化学用プロセスポンプ
・製紙用パルプ液 等々
汎用ポンプと受注生産ポンプ
汎用ポンプ(標準ポンプ)設計形態は、開発設計(基本試作、量産試作を経て標準化、量産)
用途:建築設備、家庭用、工事用
受注生産ポンプ(エンジニアドポンプ)
設計形態は、受注設計(仕様書に応じて設計、単品生産、試験・検査)
用途:産業用、社会インフラ、特殊用途
1)NPSHAAvailable NPSH…有効吸込ヘッド、利用できるNPSHポンプの設置条件および吸込み条件で決まる値システム側から与えられる値。飽和蒸気圧に対する、ポンプ羽根車入口での吸込みヘッド余裕分のこと
2)NPSHRRequired NPSH…必要吸込ヘッド。ポンプがキャビテーションを発生させず運転できるために必要な吸込みヘッドのこと羽根車入口の設計によって決まる値羽根車入口で、ヘッドがどの位低下するのかを示す値
NPSHR値が小さい=吸込み性能が良い
NPSHRはNPSH3とも表示
NPSH(Net Positive Suction Head)NPSHAとNPSHRの2種類
回転速度による性能調整ポンプ流量をQ、全揚程をH、軸動力をL、回転速度をNとし、回転速度をN1からN2に変化させるとき、
流量は回転速度比に、全揚程は回転速度比の2乗に、軸動力は回転速度比の3乗に、それぞれ比例
回転速度制御を導入することで、大きな省エネルギ効果を得ることが可能
ポンプ駆動モータをインバータなど可変速仕様とすることで、負荷に応じた回転数制御を行い、低負荷運転時の大きな省エネルギを実現
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Q2/Q1=N2/N1
H2/H1=(N2/N1)2
L2/L1=(N2/N1)3
羽根径カットによる性能調整
ポンプのお薦め参考書
入門 新ポンプ技術松村 正夫 著丸善出版ISBN978-4-621-08390-1定価 ¥3,200+税
絵とき ポンプ基礎のきそ外山 幸雄日刊工業新聞社ISBN978-4-526-07319-9定価 ¥2,300+税
復習と予習
本日授業の復習に教科書:第3章 ポンプの分類と構成
第4章 ポンプの相似側を読んでください。余裕あれば、第4章:ポンプの作用 と第6章1:キャビテーション も読んでおく
次回授業の予習に
教科書:第7章 仕様と基礎設計
を読んできてください