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高等学校  数学科 高等学校  数学科 難関大学入試対策 整数特別講座 「整数の本質」

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高等学校 数学科高等学校 数学科

難関大学入試対策 整数特別講座

「整数の本質」

難関大学入試対策 整数特別講座 「整数の本質」

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-1-

はじめに

平成24年度から実施される新学習指導要領(数学)の科目「数学A」は,「場合の数と

確率」「整数の性質」「図形の性質」の3つの内容から構成されています。標準単位数は

2単位で,生徒の実態や単位数等に応じて適宜選択することとなっています。教科書編纂

の段階から各校の選択内容を調査しておりますが,特に進学校の先生方からは,「入試

の動向が不透明な段階では,3つの内容とも何らかの形で扱っておきたい。」というご意

見を数多くいただいております。

従来,整数は,教科書にまとまった内容が掲載されていないにも関わらず,難関大学

の入試には定番問題として取り上げられていました。今後の傾向はわかりませんが,各

大学とも「現在よりも出しやすくなる」ことだけは確かです。先生方の多くの声は,こ

のような状況を反映してのことでしょう。

一方で,「整数は難しい」「整数はトップレベルの限られた生徒にしか指導していな

い」などのご意見も多々伺います。

今回,教科書で取り上げている「整数の性質」は,1年生で扱う「整数」であることを

十分考慮し,難解な証明や定理の羅列を避け,「問題解法の習得」に力点を置いて編集

しています。例えば,二元一次不定方程式では,「a , b が互いに素のとき,axObyxc が

整数解をもつ」ことの証明に重きを置くのではなく,「3xP2yx1を満たす整数解を求め

よ。」という問題が解けるようになることを指導目標としています。

このような教科書で,一通りの「整数」を学んだその先に,受験指導としての「整数」

があると考えています。難関大学受験を目指す3年生に,どのような「整数」指導をする

べきか,本冊子「整数の本質」は,その答えの一つとして,編集部が自信をもってご提

示できるものです。

本冊子の原著は,東書Eネットに連続掲載した,本庄隆先生の「整数 1回~8回」です。

ユークリッドの組み立てた「整数の本質」を体感できるこの講義録は,必ずや,先生方

の整数指導の一助となることでしょう。

『整数はその本質として難しい』このことに異論のある先生はいらっしゃらないかと

思います。教科書と本冊子を通じて,整数の入り口から出口まで,『整数の楽しさと美

しさ』をご指導いただけたら幸いです。

平成23年5月 東京書籍数学編集部

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-2-

目次

問題編

第1回 基礎的諸定理………………………………p.3

第2回 第1回の基本的応用問題…………………p.6

第3回 剰余…………………………………………p.8

第4回 素数…………………………………………p.10

第5回 余りによる場合分け………………………p.13

第6回 格子点………………………………………p.14

第7回 整数と多項式………………………………p.15

第8回 オイラーの関数・孫子の定理……………p.17

解答編

第1回 解答…………………………………………p.20

第2回 解答…………………………………………p.23

第3回 解答…………………………………………p.25

第4回 解答…………………………………………p.28

第5回 解答…………………………………………p.31

第6回 解答…………………………………………p.35

第7回 解答…………………………………………p.39

第8回 解答…………………………………………p.45

このシリーズは,2007年の東大寺学園高校1年生向け課外講習の内容を整理したものです。

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-3-

<<整数 第 1回~基礎的諸定理~>>

今回から何回かに渡って整数の種々の問題を

紹介する。第1回の今回のみ,整数の理論の基礎

的な側面に光をあててみることにする。幾何同様

に整数の基礎のエッセンスは論理配列にあり,繊

細である。整数の定理の中で最重要な定理の1つ

は『素因数分解の一意性』と呼ばれるものである。

これは『2以上のどのような整数も素数のみの有

限個の積に一意的に表される』という定理である。

すなわち,『2以上のどのような整数も素数のみ

の有限個の積に書けて,しかも,どのような方法

(理由)のもとで素数のみの積に表したとしても

そこに現れる素数の種類と各素数の個数はもと

の数ごとに一通りである』という内容である。

あたりまえに見えるこの定理は整数の問題を解

くときに必ずといってよいほどその根拠として

横たわっているものである。例として,【 2 が

無理数である】ということの証明を考えてみよう。

教科書や参考書によく見られる証明でもよいの

だが,より簡潔な証明に次のようなものがある。

(*)の両辺が表す数の素因数分解の一意性が保障

されなければ,この証明が根拠を失うことは明ら

かであろう。このようなことは他の問題の証明で

もよく現れることである。

ユークリッドはこの素因数分解の一意性の定

理を導くために,有名な『ユークリッドの互除法』

を始めとする僅かな定理を準備して実に印象的

な論理を組み上げた。素因数分解の一意性の定理

を証明するための直接的な定理は大学入試問題

を解く際にもよく利用される『素数ppppがaaaabbbb を割り

切るならばppppはaaaa またはbbbb の少なくとも一方を割

り切る』というものである。この定理に至るまで

のすべての定理は受験生のほとんどがよく知っ

ている事柄なのだが,今回,それらをいくつかの

問題に仕立て,配列に注意して提示する。証明で

用いることは極論すると『約数・倍数』と数の大

小だけであるが,筆者の経験ではこれは整数問題

を考えるための実に良い訓練になるだけではな

く,そのアイデアからは感動も得られる。多くの

問題にヒントを付すので,まずは生徒自らよく考

えてから解答を読むようにして欲しい。次回以降

はこれらを前提として大学入試に対応できる力

の養成を段階的に図って行くことにする。

なお,以後の問題の解答において,mjnという

記号を用いるが,これはmがnを割り切ることを

意味する。学習指導要領外の記号であるが,整数

論では一般的な記号であり,記述が簡略化される

利点もあるので用いることとする。入試などで敢

えて用いるときは断りを入れてから用いるとよ

い。また,証明の終わりは■という記号で表すこ

とにする。

本庄 隆

【証明】 が有理数であるとする。

適当な自然数 , を用いて とおく

ことができる。

両辺を平方し分母を払うと …(*)

, を素因数分解して現れる各素因数の個

数はどちらも偶数。

よって,(*)の左辺の素因数 の個数は奇数。

一方,右辺のどの素因数の個数も偶数。

これは矛盾である。

ゆえに は無理数である。 ■

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-4-

素数の定義

2以上の整数で,1とそれ自身以外に正の

約数をもたないものを素数というが,この定

義と同値な言い換えを2つ以上述べよ。

互除法の原理(準備)1

整数からなる一連の関係式(有限個でも無

数でもよい)

axq 0bOr 1,

bxq 1r 1Or 2,

r 1xq 2r 2Or 3,

………………

r nP2xq nP1r nP1Or n nU3£ ¤,

………………

が与えられたとき,任意の自然数mに対して

r mxxmaOymb

となる整数xm ,ymが存在することを示せ。

(hint) mx1,2のとき成り立つことを示

す。kU2のとき,mxk,kP1で成り立つこ

とを仮定してmxkO1でも成り立つことを

示す。

[注] 本問ではaをbで割った商がq 0 ,余り

がr 1のような設定は不必要。

互除法の原理(準備)

整数a,b,c,dについてaxbcEdが成り立

つとき,aとbの最大公約数とbとd

の最大公約数は一致することを示せ。

(hint) pがaとbの公約数, pがbとdの公

約数を示す。

ユユユユークリッドの互除法

aとbを自然数とする。

⑴ r 1x0 または

bur1u……ur nur nO1x0

となる整数r 1,…,rn,rnO1とq 0,…,q n

が存在し,次式が成り立つことを示せ。

axq 0bOr 1,

bxq 1r 1Or 2,

r 1xq 2r 2Or 3,

………………

r nP2xq nP1r nP1Or n ,

r nP1xq nr nOrnO1

⑵ a とb の最大公約数をg とする。⑴で

r 1~0のときはgxr nであることを示せ。

⑶ gxxaOyb となる整数x,y が存在する

ことを示せ。

(hint)

⑴ aをbで割ったときの商と余りを考える。

⑵ ⑴の結果と 3 を用いる。

⑶ 2 を用いる。

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-5-

「互いに素」についての基礎定理

⑴ 互いに素な自然数a,bについて,ajbcな

らばajcであることを 4 ⑶を用いて示せ。

ただし,整数a,bが互いに素であるとは,

a,bの正の公約数が1のみであることであ

る。

⑵ pを素数,a,bを自然数とする。pjabな

らば,pjaまたはpjb であることを示せ。

( hint)

⑴ 整数a,bが互いに素であることは最大公

約数が1ということと同値である。

⑵ ⑴を用いる。素数pがaの約数でないなら

ば,pとaは互いに素である。

素因数の存在

2以上の整数Nに対して,Nの1以外の正の

約数のうち最小のものをnとする。

nの最小性を用いて,nが素数であることを

背理法により示せ。

最大公約数・最小公倍数の基礎事項

次の各命題を示せ。ただし,素因数分解を

前提とせずに証明すること。

⑴ 整数a,bの任意の公約数g は最大公約

数G の約数である。

⑵ 整数a ,b の任意の公倍数l は最小公倍

数L の倍数である。

⑶ 整数a ,b とその最大公約数G に対して,

axa´G ,bxb´G であるならばa´とb´

は互いに素である。

⑷ 整数a ,b とその公約数g に対して,

axa´g ,bxb´g で,a´とb´が互いに素

であるならば,g はa ,b の最大公約数で

ある。

⑸ 2つの自然数a ,b とその最大公約数G

に対して,axa´G ,bxb´G であるなら

ばa´b´G はa ,b の最小公倍数である。

⑹ 2つの自然数a ,b の積ab は,最大公約

数G と最小公倍数L の積GL に等しい。

(hint)

⑴ GxxaOyb となる整数x ,y が存在する

ことを利用する。

⑵ l をL で割ったときの商をq ,余りをr と

して,rx0を示す。

⑶ a´とb´が互いに素ではないとして矛盾

を導く。

⑷ 最大公約数をG とし,Gxgd としたと

き,dx1であることを示す。

axa´G ,bxb´G とすると,a´ ,b´ は

互いに素であることも用いる。

⑸ 最小公倍数をL ,lxa´b´G とおく。⑵

から,lxLq(q は自然数)としてqx1を

導く。少し難しい。

⑹ ⑸を利用する。

[注] 本問の結果はどれも現行の学習指導

要領にはない内容であるが,入試では証明な

しで用いてもよい。ただし,これらを前提と

する出題は見られなくなってきている。

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<<整数 第 2回~第1回の基本的応用問題~>>

今回は,前回の内容をもとに互除法の利用

や最大公約数(G.C.D.)・最小公倍数(L.C.M.)

および合成数,素因数分解などについてのよ

く知られた類型の問題をみておこう。

2つの整数aとb が互いに素であることを

示すためには,

・ 定義に従って,2以上の公約数の存在を

仮定して矛盾を導くという証明

・ axmbEnのとき, a, b£ ¤x b, n£ ¤

(ここで a, b£ ¤は2数a,bのG.C.D.を表

す)という互除法の原理による証明

が典型的である。

前者の場合には,特に素数の公約数の存在

を仮定すると記述が簡略になることもある。

後者の場合には,特に適当な整数mを用い

てaPmbxE1を導くという方法(mx1のと

きも有効)も有名である。

最大公約数・最小公倍数に関しては,前回

の 7 の諸事実,特に

『最大公約数と最小公倍数の積は2数の積

に等しい』

の利用は基本的である。最近はこの種の問題

の出題があまり見られないことから,ここで

も扱う問題は典型的かつ効果的なものに限

定した。

また,合成数についてのメルセンヌの問題

を入れた。この問題では因数分解が本質であ

るが,当然確認しておかなければならないこ

とをまったく記さない生徒も多く出るので

注意が必要である。

最後には,素因数の個数についての問題お

よびn!の素因数分解をもとにした典型問題

を取り上げた。確実な理解の望まれる問題で

ある。

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-7-

互除法

互除法を用いて,3723と1679の最大公約数

を求めよ。

互いに素

整数aとaP1は互いに素であることを示

せ。

互いに素

Nを2以上の整数とする。1TntNを満た

す整数nに対して,nとNが互いに素ならば,

NPnとNも互いに素であることを示せ。

互いに素

整数s とt が互いに素であるならば,sOt

とst も互いに素であることを示せ。

最大公約数と最小公倍数

和が1995で,最小公倍数が8820となる2つ

の自然数を求めよ。

メルセンヌ数

nが合成数(素数ではない2以上の整数)

ならば,2nP1は合成数であることを示せ。

約数の個数

正の整数nの正の約数の個数をd n£ ¤とする。

d n£ ¤が奇数であるためのnの必要十分条件を

求めよ。

素因数の個数

30の階乗30!について,次の問いに答えよ。

⑴ 2 kが30!を割り切るような最大の自然

数kを求めよ。

⑵ 30!の一の位,十の位,……と順に左に

見ていくとき,最初に0でない数字が現れ

るまでに,連続していくつの0が並ぶか。

⑶ ⑵において,最初に現れる0でない数字

を求めよ。

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<<整数 第 3回~剰余~>>

今回は合同式の基本性質とその利用例あ

るいは一般に「剰余(余り)」に注目した問

題や解法を扱う。また,互いに素な2数の特

筆すべき性質とその応用として,フェルマー

の小定理も紹介する。

合同式とはガウス(1777~1855)が余りに

注目した式処理として発案した記法であり,

自らが発見した「平方剰余の相互法則」とい

う美しい定理を表現するのに用いた概念で

ある。そこまで高度な内容ではないにしても,

これを用いるとかなり見通しが良くなった

り,記述が著しく簡略化されたりする利点が

ある。入試では記号「Q」の定義をきちんと

述べた上で用いるようにするとよい。

aQb (mod m )の定義は次のように与えら

れる。

どのような数で割ったときであるかは本

質的であるから「(mod m)」の部分は欠かす

ことはできない。ただし,一貫してm で割っ

たときに話を限定する場合にはそのことを

明記した上で省略することもある。この定義

のもとで,第1問で合同式の基本性質を順次

導くことから始めて,第2問と第3問でその

利用例を2問扱う。次いで,第4問で互いに

素な2数についての最重要定理を扱い,第5

問と第6問でその重要な応用例を紹介する。

整数 , を整数 で割ったときの余

りが等しいとき,

「 と は を法として合同である」と

いい,

( )

と記す。

( 英 語 で は “a is congruent to b

modulus m.”と読んだりする。)

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合同式の基本性質

1£ ¤ aQb (mod m ) , aPb はm で割り

切れる

であることを示せ。

2£ ¤ aQb (mod m )かつcQd (mod m )ならば

aEcQbEd (mod m)

(複号同順)であることを示せ。

3£ ¤ aQb (mod m )かつcQd (mod m )ならば

acQbd (mod m)

であることを示せ。

4£ ¤ m と c が互いに素のとき, acQbc

(mod m)ならばaQb (mod m)

であることを示せ。

フィボナッチ数列と剰余

a 1x1,a 2x1,anxanP1OanP2 (nU3 )で

与えられる数列 a n« ¬の一般項a n が3 で割り

切れるためのnの条件を求めよ。

数列 nnnn nnnnOOOO1« ¬と剰余

正の整数nでnnO1が3で割り切れるもの

をすべて求めよ。

互いに素な2数についての重要定理

正の整数aとb が互いに素のとき,b ,2b ,

3b ,……, aP1£ ¤b,ab のa個の数をaで割っ

た余りはすべて異なることを示せ。ただし,

aU2とする。

1の生成定理

互いに素な正の整数aとb に対して

xaOybx1となる整数x,yが存在する。

4 を利用してこれを示せ。

フェルマーの小定理

正の整数aが素数p と互いに素であるなら

ば,apP1をp で割った余りは常に1である。

4 を利用してこれを示せ。

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-10-

<<整数 第 4回~素数~>>

今回は素数を中心にした問題を扱う。第 1

回 6 でみたように,2以上の任意の整数NNNN

は必ず素因数をもつ。これはユークリッドの

『原論』第7巻にある定理である。 6 の解答

ではNの1以外の正の約数の最小のものに注

目した証明を与えた。最小値あるいは最大値

(の存在)を利用する論法は整数に限らず絶

大な威力を発揮することがあり,この問題が

その例として重要であると考えたからであ

る。もちろん,大学入試問題の解答でもこれ

は有効である。ユークリッド自身はNが合成

数の場合に次のようないわゆる「無限降下法」

による証明を与えている。

最小値の設定による証明は上の「無限降下

法」に現れる無限の操作にいわゆる一種の終

止符を設定する考えでもある。「帰納法」な

ども一種の終止符的な考え方である。

さて,素数といえば,その個数の無限性に

ついてのユークリッドの証明を知らずして

素数を学んだとはいえないであろう。イギリ

スの有名な数学者ハーディによれば,「美と

厳粛さと意義深さにおいてすべての数学者

が一級品と認め,発見から2000年以上経ても

新鮮で意義深く,何ら色褪せることのない定

理とその証明」の例として,第 1にユークリ

ッドの「素数の個数の無限性の証明」,第 2

にピタゴラス(学派)の「 2 の無理数性の

証明」をあげている。そこでこの機会に,そ

のユークリッドの定理と証明(『原論』第 9

巻)を見ておこう。

その定理は次のように表現されている。

この証明は以下のように与えられている。

【証明】

は合成数なので となる約数

がある。

が素数のときは が の素因数である。

が合成数のときは,同様に

となる の約数 がある。

は の約数でもある。

が素数のときは が の素因数であ

る。 が合成数のときは,以下同様の考

察を続ける。

この操作の中で, の素因数が出てこな

いとすると, の より大きな約数の無

限列でそれぞれが直前の数より小さなも

のが存在することになる。正の整数 に

ついてこのことは不可能である。

したがって, には素数の約数が存在し

なければならない。 ■

「どんな(有限)個数の素数が与えられて

も,それより多くの素数が存在する」

(素数の個数はどのように与えられた

有限個の素数の個数よりも多い)

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[注] この証明を紹介すると,ときどき,

「素数を小さい方から順に有限個乗じたも

のに1を加えたものは素数である」という生

徒がいるがこれは誤りである。

実際,2O1x3,2 @ 3O1x7,

2 @ 3 @ 5O1x31,2 @ 3 @ 5 @ 7O1x211,

2 @ 3 @ 5 @ 7 @ 11O1x2311は素数だが,

2 @ 3 @ 5 @ 7 @ 11 @ 13O1x30031x59 @ 509 は素数

ではない。

また,3 @ 5 @ 7O1x106x2 @ 53などの例もある。

いずれにしても,aaaaAAAAbbbbAAAA…………AAAAccccOOOO1という

数から,与えられた素数aaaa ,bbbb ,…………………… ,ccccとは

異なる素数の存在が得られることには違い

は な く, この 「別 の素 数 の存 在」を

aaaaAAAAbbbbAAAA…………AAAAccccOOOO1の中に保障するところがこ

の証明の優れたところである。この保障にこ

だわらなければ,上の証明を若干変更した次

のような証明が簡単であり,こちらを生徒に

提示することもある。しかしながら,ユーク

リッドがなぜ上の証明を採用したかは明ら

かであろう。

それでは,問題に入ることにする。

【証明】

有限個の素数 , , , が与えら

れたとする。 とい

う数 を考える。

は , , , のどれよりも大き

いから,これらのいずれとも異なる。

が素数のときは, 自身が , ,

, とは異なる素数である。

が合成数のとき, の任意の素因数

(この存在は既に示してある)は , ,

, とは異なる。

なぜなら,たとえば とすると

となる整数 があり,

から, が 以上の

約数 をもつことになる。

これは矛盾であり, は , , ,

とは異なる素数である。

ゆえに , , , とは異なる素数

が存在する。 ■

【素数が無数にあることの証明】

素数の個数が有限であるとして,それら

すべてを , , , とする。

という数 を考え

ると, は , , , のどれよりも

大きいからこれらのいずれとも異なり,

したがって素数ではない。

一方, には素因数が存在し(第 回

),それは , , , のいずれか

に一致しなければならない。

それを としてもよく, とする

と, から, が 以

上の約数 をもつことになる。

これは矛盾。

ゆえに素数の個数は有限ではない。■

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-12-

素数を含まない連続nnnn 整数

2以上の任意の整数nに対して,素数を1つ

も含まないような連続するn 個の整数が存

在することを示せ。

(hint ) 階乗を利用する。

フェルマー素数

1以上の整数kに対して,2kO1が素数で

あれば,kx2 rとなる整数rが存在する。こ

れを示せ。

(hint) kx2rm (rは0以上の整数,mは正

の奇数)とおく。

メルセンヌ素数と完全数

n を2以上の整数とする。

px1O2O2 2O……O2nP1O2n, Nx2np

とする。

p が素数であるとき,次の各問に答えよ。

⑴ N の約数をすべて求めよ(結果のみでよ

い)。

⑵ N 以外のN の正の約数すべての和をS

とする。SxN を示せ。

素数と二項係数1

p が素数で,1TiTpP1のとき,pjpCi で

あることを示せ。

( ただし,二項係数pCi が整数であることは

前提とする。)

(hint) i!, pPi£ ¤!がp と互いに素である

ことを用いる。

フェルマーの小定理(再録と別証明)

⑴ p を素数とする。任意の自然数n に対し

て,n pPn はp で割り切れる。

これを数学的帰納法で示せ。

⑵ 正の整数aが素数p と互いに素であるな

らば,a pP1をp で割った余りは常に1であ

る。これを⑴を用いて示せ。

(hint)

⑴ix1,2,……,pP1に対してpjpCi を用

いる。

素数と二項係数2

n が相異なる素数p ,q の積nxpq である

とき, nP1£ ¤個の整数nCk

1TkTnP1£ ¤の最大公約数は1 であること

を示せ。

(hint) nC1 ,nCp ,nCq の公約数を調べる。

素数と不等式

p を3以上の素数とする。4個の整数a,b ,

c ,dが次の3条件

aObOcOdx0 ,adPbcOpx0 ,

aUbUcUd

を満たすとき,a,b ,c ,dをp を用いて表

せ。

(hint) 第1と第2の条件から,dを消去し

た式を積の形に表す。

第1と第3の条件から,aObU0を導く。

まずaをp で表す。

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<<整数 第 5回~余りによる場合分け~>>

今回は,余りによる場合分けで解決する問

題を中心に扱う。その中でも特に平方数を割

ったときの余り(平方剰余)や整数の累乗を

割ったときの余りについての問題を扱う。一

般に整数n に対して,n 2あるいはn の累乗

を自然数m で割ったときの余りの種類は,

n をm で割ったときの余りの種類より少な

くなる。これが今回の主な発想である。この

話題に関しては,ピタゴラス数についての議

論が有名であるから,これも紹介する。余り

に注目することの重要性は今までも何度か

触れてきたが,今回の問題を通して改めて理

解を深めておきたい。

7jjjjaaaa 2OOOObbbb 2となるための条件

整数a ,b に対して,a 2Ob 2が7 で割り

切れるための必要十分条件はa ,b ともに7

で割り切れることである。これを示せ。

nnnn mmmmQQQQ2 mmmmoooodddd2£ ¤

n を自然数とする。n mを3 で割った余り

が2 となる自然数m があれば,n を3 で割っ

た余りも2 であることを示せ。

9jjjjnnnn 9PPPPnnnn 3

任意の整数n に対し,n 9Pn 3は9 で割り

切れることを示せ。

ピタゴラス数の基本

自然数a ,b ,c がa 2Ob 2xc 2を満たす

とき, 次を示せ。

(1) a ,b の少なくとも一方は3 の倍数で

ある。

(2) a ,b の少なくとも一方は偶数である。

ピタゴラス数の決定

正の整数a ,b ,c がa 2Ob 2xc 2を満た

すとする。ただし,a ,b は互いに素でb は

偶数であるとする。

⑴ cOax2p ,cPax2q となる互いに素

な正の整数p ,q が存在することを示せ。

⑵ a, b, c£ ¤x m 2Pn 2, 2mn, m 2On 2£ ¤

となる互いに素な自然数m ,n が存在す

ることを示せ。

平方数と剰余

⑴ 奇数の平方数を8 で割ったときの余り

は1 であることを示せ。

⑵ n!O3 が平方数となる正の整数n を求

めよ。

3xxxxOOOO5yyyy の値

⑴ x ,y が0 以上の整数のすべての値をと

るとき,3xO5y の値の集合A を求めよ。

⑵ x ,y が1 以上の整数のすべての値をと

るとき,3xO5y の値の集合B を求めよ。

平方数を素数で割ったときの余りの個数

p を3 以上の素数とする。pP1 個の平方

数k 2 1TkTpP1£ ¤の各数をp で割ったと

きの余りのうち,異なるものの個数を求めよ。

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<<整数 第 6回~格子点~>>

今回は,格子点の問題を5問紹介する。い

ずれも出題以来,よく取り上げられてきた有

名問題であるから,どこかで学んだこともあ

るのではないかと思われるが,今回ここにま

とめて提示しておこうと思う。 3 ~ 5 は最

近出題される問題に比べて難しいが,重要な

事柄を学べるので取り上げた。解答を参考に

して学んで欲しい。

格子点と面積

格子点を頂点とする凸四角形の面積が1

であるとき,この四角形は平行四辺形である

ことを示せ。

直線上の格子点の個数

xy 平面上で次の3条件すべてを満たす点

x, y£ ¤は何個あるか。

A£ ¤ x ,yはともに整数

B£ ¤ 1TxT100,1TyT100

C£ ¤ xOy は2の倍数,2xO3y は5の倍数

三角形の周上の格子点の個数

格子点を頂点に持つ三角形ABCを考え

る。

⑴ 辺AB,ACそれぞれの上に両端を除い

て奇数個の格子点が存在するとき,辺BC

上にも奇数個の格子点が存在することを

示せ。

⑵ 辺AB,ACそれぞれの上に両端を除い

てちょうど3点ずつ格子点が存在すると

き,三角形ABCの面積は8で割り切れる

整数であることを示せ。

平行四辺形上の格子点の個数

4 つ の 格 子 点 O 0, 0£ ¤, A a, b£ ¤

B a, bO1£ ¤,C 0, 1£ ¤

,を考える。

ただし,a,b は正の整数でその最大公約数

は1である。

⑴ 平行四辺形OABCの内部(辺,頂点を

除く)に格子点はいくつあるか。

⑵ ⑴の格子点の全体をP1,P2,……,Pt

とするとき,

三角形OPiA(ix1,2,…,t )の面積の

うちの最小値を求めよ。ただし,au1と

する。

平行線上の格子点

各格子点を中心として半径r の円が描か

れており,傾き

25の任意の直線はこれらの円

のどれかと共通点を持つという。このような

性質をもつ実数rの最小値を求めよ。

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<<整数 第 7回~整数と多項式~>>

今回のテーマは整数値(有理数値)をとる

多項式に着目した問題である。整数値あるい

は有理数値をとる多項式に関する今回の問

題は出題当時の有名問題であるが,年を経て

最近はあまり取り上げられなくなった。入試

としての難度は高くなるが,この機会にまと

めて紹介する。特に第4 ~6 問は補完法を用

いると易しくなるとはいえ,かなりの難問で

ある。余力のある生徒向けに限定したほうが

よい。

整数値をとる多項式

f x£ ¤は実数係数の多項式とする。

⑴ 「すべての整数k について,f k£ ¤が整数

である」ための必要十分条件は,

「f 0£ ¤が整数で,かつすべての整数k に

ついてf k£ ¤Pf kP1£ ¤が整数となる」こと

である。これを証明せよ。

⑵ f x£ ¤xax 2ObxOc のとき,すべての整

数k についてf x£ ¤が整数となるためにa ,

b ,c が満たすべき必要十分条件を求めよ。

多項式と整数

f x£ ¤xax 3Obx 2Ocx をx の3 次式とす

る。a ,b ,c は実数である。

「すべての整数n に対してf n£ ¤が整数にな

る」ための必要十分条件は,

「適当な整数p ,q ,rをとると,f x£ ¤が

f x£ ¤xp6

x xO1£ ¤ xO2£ ¤

Oq2

x xO1£ ¤Orx ……(*)

と表される」ことである。これを証明せよ。

整数値をとる多項式

整数係数の3 次の多項式f x£ ¤が次の条件

(*)を満たすとする。

条件(*): 任意の自然数n に対して,

f n£ ¤はn nO1£ ¤ nO2£ ¤

で割り切れる。

このとき,ある自然数a があって,

f x£ ¤xax xO1£ ¤ xO2£ ¤となることを示せ。

(hint) f x£ ¤をx xO1£ ¤ xO2£ ¤

で割ったと

きの商をa とし,その余り(たかだか2 次式)

をさらにx xO1£ ¤で割ったときの商をb ,余

りをcxOd をおく。すると,

f x£ ¤xax xO1£ ¤ xO2£ ¤Obx xO1£ ¤ OcxOd

となる。これを展開・整理し,f x£ ¤が整数係

数であることを用いてa ,b ,c ,d が整数

であることを導く。次いで,n の値ごとに

f n£ ¤xk nAn nO1£ ¤ nO2£ ¤となる整数kn が

存在することを利用する。

有理数値をとる多項式

n を正の整数とする。f x£ ¤はxn

の係数が

1 のn 次の多項式である。相異なるn 個の有

理数q 1 ,q 2 ,…,qn に対して,f q1£ ¤,f q2£ ¤

…,f qn£ ¤がすべて有理数であれば,f x£ ¤

係数はすべて有理数であることをn につい

ての帰納法により示せ。

(hint) 剰余の定理から,

f x£ ¤x xPq n£ ¤g x£ ¤Of q n£ ¤となる多項式g x£ ¤

が存在することを利用する。

帰納法によらない別解として,補完法を用い

ることも可。

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整数値をとる多項式

n を0 以上の整数とする。f x£ ¤はn 次の多

項式である。f 0£ ¤,f 1£ ¤

,…,f n£ ¤がすべて

整数ならば,すべての整数N に対してf N£ ¤

は整数であることを示せ。

(hint) 次数n についての帰納法で示す。帰

納法によらない別解として,補完法を用いる

ことも可。

ある有名な問題

f x£ ¤xax 2ObxOc は xT1 のとき,

f x£ ¤T1を満たしているとする。

1£ ¤ xT1のとき,f´ x£ ¤T4を示せ。

2£ ¤ g x£ ¤xcx 2ObxOa とおくと,

xT1のとき g x£ ¤T2であることを示

せ。

(hint) 補間公式を用いる。

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<<整数 第 8回~オイラーの関数・孫子の定理~>>

今回のテーマはオイラー関数¢ n£ ¤の重要

定理:¢ ab£ ¤x¢ a£ ¤¢ b£ ¤(a ,b は互いに素

な2以上の整数)の証明と孫子の定理の証明

である。オイラー関数¢ n£ ¤とは,正の整数

(あるいは2以上の整数)nに対して,nよ

り小さな自然数でn と互いに素なものの個

数を対応させる関数である。オイラー関数

¢ n£ ¤の今回の定理を背景としたものは全国

の入試問題においてたびたび現れるが,これ

を既知のものとして証明なしで用いること

は入試においては想定されていない。今回は

まず,この定理を用いないで,準備的な問題

(第1問)を考え,次いで第2問でこの定理

の証明を与える。なお,問題では¢ n£ ¤の代

わりにf n£ ¤を用いる。孫子の定理とは連立合

同式の解の分布に関する問題であるが,本質

的には2 つの合同式の場合で十分であるか

ら,第4問でそのようにして扱う。証明には

オイラー関数の定理の証明と同じ表を用い

る。

オイラー関数の入試レベルの問題

整数N U2£ ¤に対して,N より小さな自然

数でN と互いに素なものの個数をf N£ ¤と表

す。

⑴ 異なる素数p ,q に対して,f pq£ ¤を求め

よ。

⑵ 異なる素数p ,q ,rに対して,f pqr£ ¤を

求めよ。

⑶ 素数p と自然数a に対して,f pa£ ¤を求め

よ。

オイラー関数の重要定理

⑴ a ,b ,c を自然数とするとき,次の命

題が成り立つことを示せ。

「c とab が互いに素 , c とa が互いに

素かつc とb が互いに素」

⑵ k ,m,b を自然数とするとき,次の命

題が成り立つことを示せ。

「kOmb とb が互いに素 , k とb が互

いに素」

⑶ 2以上の整数N に対して,N より小さな

自然数でN と互いに素なものの個数を

f N£ ¤と表す。次の命題が成り立つことを

示せ。必要なら下の表を利用せよ。

「a と b が互いに素な 2 以上の自然数

) f ab£ ¤xf a£ ¤f b£ ¤」

… …

… …

… …

… … … … … … … …

… …

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素因数分解とオイラー関数

2以上の自然数

nxp aq b……rc

(p ,q ,…,rは異なる素数,a ,b ,…,c は自然数)に対して,

f n£ ¤xn 1P1pÃ Ä 1P 1

qà ą… 1P1rà Ä

であることを示せ。

孫子の定理

2以上の自然数a ,b が互いに素ならば,a で割ってr余り,b で割ってs 余るような自然数

でab以下のものがただ1つ存在する。これを示せ。ただし,必要なら下の表を利用せよ。

… …

… …

… …

… … … … … … … …

… …

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解答編

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<<解答>>

◆第1回 解答◆ p.3

2以上の整数で,「正の約数の個数がちょう

ど2個であるもの」,「1より大きくて,それ自

身より小さな約数をもたないもの」,「2以上の2

つの整数の積で表すことのできないもの」 等。

[注]

① 自然数aが素数ではないことの言い換えを2

つ以上考えてみることも勧める。これは重要で

ある。

② 1は素数に含めない。1でも素数でもない正の

整数を合成数と呼ぶこともある。したがって,

正の整数は1と素数と合成数に分けられる。

③ 専門的には,より一般な代数の『素元』に対

応するものと考えて,2以上の整数に限定せず,

素数として負の数も許すこともあるが高校で

は2以上の整数に限定して考えてよい。

Ⅰ£ ¤ mx1のとき,r 1x1 @ aOPq 0£ ¤b なの

で,x1x1,y 1xPq 0とするとよい。

mx2のとき,

r 2xbPq 1r 1xbPq 1 aPq 0b£ ¤

x Pq 1£ ¤aO 1Oq 1q 0£ ¤b

なので,x2xPq1,y 2x1Oq 1q 0とするとよい。

Ⅱ£ ¤

mxk ,kP1 2TkTnP1£ ¤のとき主張が正

しいと仮定する。すると

r kxxkaOy kb ,r kP1xxkP1aOy kP1b となる

整数xk ,y k ,xkP1,ykP1が存在する。

与えられた条件式r kP1xq krkOr kO1から,

r kO1xr kP1Pqkrk

x xkP1aOy kP1b£ ¤Pq k xkaOykb£ ¤

x xkP1Pq kxk£ ¤aO ykP1Pq ky k£ ¤b

よって,xkO1xxkP1Pq kxk ,

y kO1xy kP1Pq ky k とすれば,mxkO1に対し

ても主張は成り立つ。

Ⅰ£ ¤

, Ⅱ£ ¤

より,数学的帰納法から,任意の自

然数m に対して r mxxmaOymb となる整数

xm, ym が存在する。 ■

Ⅰ£ ¤ p がa とb の公約数なら,axpa´,

bxpb´となる整数a´,b´が存在し,

EdxaPbcxp a´Pb´c£ ¤となり,pjd

もとより,pjb であるから,pはbとdの公約数

である。

Ⅱ£ ¤

pがbとdの公約数なら,bxpb , dxpd´

となる整数b , d が存在し,

axbcEdxp b´cEd´£ ¤ から,pja

もとより,pjb であるから,p はa とb の公約

数である。

以上から,a とb の公約数の集合とb とd の公

約数の集合は一致する。ゆえにそれらの集合の要

素の最大値である最大公約数は一致する。 ■

[注] この2 つの集合は整数を要素とする有限

集合なので,その要素の最大値が存在する。

1£ ¤ a をb で割ったときの商をq0 ,余り

をr1 とする。

bx1 のときにはr1x0 なので,以下bU2 で考

える。また,bxr0 とおく。

kU1 に対して,rk~0 ならば,rkP1 をrk で

割ったときの商をqk ,余りをrkO1 とする…(*)

このとき,bxr0ur1u…urkO1U0 であり,

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0 以上b 未満の整数はb 個であるから,この操

作(*)はkxbP1 となるまでに終了する。すな

わち,bP1 以下のある自然数n でrn~0 かつ

rnO1x0 となる。ゆえに条件を満たす一連の式

が得られる。 ■

⑵ 一般に2 整数s ,t の最大公約数を s, t£ ¤ と記

すことにすると,⑴と 3 により,

gx a, b£ ¤x b, r1£ ¤x r1, r2£ ¤

x……x rnP1, rn£ ¤xrn (rnO1x0 なので)

となる。 ■

⑶ r1x0 ならば,b がa とb の最大公約数であ

ることは明らか。このとき,bx0 @ aO1 @ b で

あるから,xx0 ,yx1 とするとよい。

r1~0 のときは⑵からgxrn であり, 2 によ

り,gxrnxxaOyb となる整数x ,y が存在

する。 ■

⑴ a とb が互いに素であるから,最大公約

数は 1 である。よって, 4 ⑶によって

xaOybx1 となる整数x ,y が存在する。

したがって,xacOybcxc となる。ここで,

ajac ,ajbc なので,左辺はa で割り切れる。

ゆえにajc である。

⑵ 素数p がa を割り切らないならば,p とa は

互いに素である(p の約数は1 とp のみだが,p

はa の約数ではないからp とa の公約数は1 の

みである)。したがって,⑴によって,pjb であ

る。ゆえにpja またはpjb である。 ■

[注] 本問では,a ,b は整数でもよい。また,3 ,

4 , 5 は入試で証明なしで用いてよい。

n が素数でないとすると,n は1 でもn でも

ない正の約数をもつ。そのひとつをm とすると,

1tmtnTN …①

また,mjn かつnjN より, mjN …②

①,②から,m は1 以外のN の約数でn より小と

なる。これはn の最小性に矛盾する。ゆえにn は

素数である。 ■

[注] これは「1 以外の正の整数は必ず素数の約

数をもつ」というユークリッドの有名な定理とそ

の証明。これを繰り返し用いるか,または数学的

帰納法により,『2 以上の任意の整数は素数のみ

の有限個の積で表すことができる』ことを示すの

は容易である。このことを前提とすると, 5 ⑵

を用いて,素因数分解の一意性が次のように導か

れる。これもユークリッドの証明。

【証明】 自然数n が2 通りに因数分解できて,

nx£ ¤ p1p2…psxq1q2…qt と書けたとする。

(p1 ,…,ps には同じ素数が複数個あっても構

わない。q1 ,…,q t も同様)

q1 は素数で,q 1jp1A p2…ps£ ¤ なので,

q 1jp1 またはq 1jp2…ps ( 5 ⑵)

q 1jp1 ならば,p1 とq1 が素数であることから,

q1xp1 となる。

q 1jp1 でないならば,q 1jp2…ps となり,上と同様

にq1xp2 またはq 1jp3…ps

以下同様にして,q1xp1 ,q1xp2 ,……,q 1xps

の少なくとも1 つが成り立つ。必要なら,p1 ,…,

ps の順番を入れ替えて,q1xp1 として一般性を

失わない。 すると

p2…psxq2…q t となる。これを繰り返すことによ

り,もしもs~t なら,どちらかの辺が先に消え

て1 となり,他方の辺には素数が残ってしまう。

これは矛盾なので,sxt である。

このとき,上の操作によりq1 ,q2 ,…,q t のそ

れぞれはp1 ,p2 ,…,ps t£ ¤ のそれぞれと等しい。

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⑴ axa´g ,bxb´g とする。GxxaOyb

となる整数x ,y が存在するので,

Gx xa´Oyb´£ ¤g ゆえに,gjG である。■

⑵ l をL で割ったときの商をq ,余りをr とし

て,rx0 を示す。lxLqOr ,0TrtL であ

る。r~0 と仮定する。rxlPLq であり,l も

L もa とb の公倍数なのでr もa とb の公倍数

である。0trtL であるからr はL よりも小

さい正の整数である。これはL が最小公倍数で

あることに反する。ゆえにrx0 となり,l はL

の倍数である。■

⑶ a と b´ が互いに素ではないとする。

a´xa´d ,b´xb´d となる2 以上の整数d があ

る。よって,axa´dG ,bxb´dG となり,dG

はa ,b の公約数でG より大である。これはG

が最大公約数であることに反する。ゆえにa

とb´は互いに素でなければならない。■

⑷ 最大公約数をG とすると,⑴から適当な整数

d を用いてGxgd とおける。

axa´G ,bxb´G とすると,a´ ,b´ は互い

に素である。

axa´Gxa´gd ,bxb´Gxb´gd と条件

axa´g ,bxb´g から,a´xa´d ,b´xb´d 。

ここで,a ,b´は互いに素であるから,dx1

ゆえに,Gxg となり,g はa ,b の最大公約

数である。■

⑸ 最小公倍数を L , lxa´b´G とおく。

lxab´xa b からl はa ,b の公倍数であり,

⑵により,lxLq (q は自然数)とおける。

Lxam ,Lxbn(m ,n は整数)とおけて,

a b´GxlxLqxamqxa Gmq より,

b´xmq …①,

a b´GxlxLqxbnqxb´Gbq より,

a´xnq …②

①,②においてa ,b´が互いに素であるから,

qx1

よって,lxL となり,l はa ,b の最小公倍

数である。■

⑹ axa G ,bxb´G と⑸から,

abxGa b´GxGL ■

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◆第2回 解答◆ p.6

3723x2A1679O365,

1679x4A365O219,

365x1A219O146,

219x1A146O73,

146x2A73

よって,gx73……(答)

また,ax3723,bx1679とおくと,上の式から

順に

365xaP2b

219x1679P4 @ 365

xbP4 aP2b£ ¤xP4aO9b

146x365P1 @ 219

x aP2b£ ¤P P4aO9b£ ¤x5aP11b

73x219P1 @ 146

x P4aO9b£ ¤P 5aP11b£ ¤

xP9aO20b

よって, x, y£ ¤xP9, 20£ ¤

【後半の別解】

<g で割って互いに素な2 数から1 を生成してか

らg 倍する>

最初の5つの式を73で割ると,

51x2 @ 23O5

23x4 @ 5O3

5x1 @ 3O2

3x1 @ 2O1

これから,上と同様にして

1xP9 @ 51O20 @ 23

この両辺を73倍すると,

73xP9aO20b

よって, x, y£ ¤xP9, 20£ ¤

[注] 2 数のG.C.D. を因数分解によって求める

ことは大きな2数については現実的ではない。そ

もそも素因数を見出すことが困難である。一方,

互除法は商と余りの算出という単純なアルゴリ

ズムの繰り返しであり,必要な回数もそう多くは

ない場合が多い。

【互除法による証明】

aP aP1£ ¤x1より,aとaP1の正の公約数は

1のみとなり,この2 数は互いに素である。 ■

【定義に基づく証明】

aとaP1が互いに素ではないとする。

axda ,aP1xda´

となる整数d U2£ ¤ ,a ,a´が存在する。

この2式を辺々引くと,

1xd a Pa´£ ¤

よって,1が2以上の約数dをもつことになり矛盾。

ゆえにaとaP1は互いに素である。 ■

[注] dが2 以上であることを明記することが大

事。1 は常に公約数なので,単に公約数dがある

というだけでは極論すると,何も示したことにな

らない。

【互除法による証明】(一般に A, B£ ¤ でAと

Bの最大公約数を表すことにする。)

nxNP NPn£ ¤ より, N, NPn£ ¤x n, N£ ¤x1と

なり,N とNPnは互いに素である。■

【定義に基づく証明】

N ,NPnが互いに素ではないとする。

NxdN´,NPnxdN´ となる2 以上の整数d と

整数N ,N´ が存在する。この2式から,

nxNP NPn£ ¤xd N´PN´£ ¤

よって,dはN ,nの2以上の公約数となり,nと

N が互いに素であることに反する。

ゆえにN とNPn は互いに素でなければならない。

【定義に基づく証明】

sOt とst が互いに素でないとすると,

pjsOt かつpjst となる素数pが存在する。

pjst から,pjs またはpjt

pjs なら,pjsOt からpjt

pjt なら,pjsOt からpjs

いずれの場合もs とt が互いに素であることに矛盾。

ゆえにsOt とst は互いに素。 ■

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-24-

求める2 数をa,b ,その最大公約数をg と

する。

axcg ,bxdg (c ,dは互いに素な自然数)と書

ける。和と積から

cOd£ ¤gxaObx1995x3 @ 5 @ 7 @ 19 ……①

cdgx8820x22 @ 32 @ 5 @ 72 ……②

ここでc とdは互いに素なので,cOd とcdは互

いに素。( 4 )

よって,①と②から,g は1995 と8820 の最大公

約数。

gx3A5A7より,cOdx19,

cdx22 @ 3 @ 7x84

c ,dはx2P19xO84x0の2解である。

xP7£ ¤ xP12£ ¤x0,xx7,12

求める2数は 7 @ 105x735と12 @ 105x1260

…(答)

nは合成数なので,nxab (a,b は2以上の

自然数)と書ける。よって,

2nP1x2abP1x 2a£ ¤ bP1

xXbP1(2axXと置く)

x XP1£ ¤ XbP1OXbP2O……OXO1£ ¤ …①

aU2,bU2より,①の2 つの因数は2 以上の自

然数。ゆえに2nP1 は合成数である。 ■

[注] nが合成数であることが本質。たとえば,

nx5 (素数)なら25P1x31は素数。

また,nが素数だからといって,2nP1が素数と

は限らない。

22P1x3,23P1x7,25P1x31,27P1x127

は素数だが,211P1x2047x23 @ 89は素数ではない。

nxpiqj…rk

(p,q ,…,r は異なる素数,i ,

j ,…,kは正の整数)と素因数分解したとき,

nの正の約数の個数は iO1£ ¤ jO1£ ¤… kO1£ ¤ 。

よって,

d n£ ¤ が奇数である

, iO1£ ¤ jO1£ ¤… kO1£ ¤ が奇数

, iO1,jO1,…,kO1が奇数

, i ,j …,kが偶数

, ix2a,jx2b …,kx2c (a,b ,…,c

は自然数)と書ける

, nx paqb…rc£ ¤ 2 (a,b ,…,c は自然数)

と書ける

, nは平方数 …(答)

【別解】

一般に正の整数nの正の約数s に対して,txns

もnの正の約数。

stxn から,s ,t の一方は n 以下で,他方は

n 以上。

n より小さいnの正の約数の個数をD とする。

ⅰ£ ¤ nが平方数のとき nx n£ ¤ @ n£ ¤ か

ら, n もnの正の約数であり,

d n£ ¤x2DO1…奇数

ⅱ£ ¤ nが非平方数のとき d n£ ¤x2D…偶数

ⅰ£ ¤

, ⅱ£ ¤

より,d n£ ¤ が奇数であるための必要十

分条件はnが平方数であること。

⑴ kは30! の素因数分解中の素因数2 の個数。

2 @ 15x30,22 @ 7x28,23 @ 3x24,24 @ 1x16 か

ら,1から30までに,2の倍数は15個,2 2の倍数

は7個,2 3の倍数は3個,2 4

の倍数は1個。

kx15O7O3O1x26…(答)

【参考】

一般に次の図のようなとき, 素因数2の総数は

1 aPb£ ¤O2 bPc£ ¤O3 cPd£ ¤O4d

xaObOcOd

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⑵ 1から30までの整数の中で5の倍数は6個,

5 2の倍数は1個なので,⑴と同様にして,

30!の素因数分解したときの素因数5の個数は

6O1x7 (個)

素因数2の個数は26であり,10x2A5である

から,30!の因数10の個数は7個

ゆえに,最初に0でない数字が現れるまでに0

は連続して7個並ぶ。

⑶ 1から30までの整数の中で,3の倍数10個,

3 2の倍数3個,3 3

の倍数1個なので,素因数3の

個数は14個,素因数7の個数は4個,素因数11の

個数は2個,素因数13の個数は2個,素因数17,

19,23,29の個数は各1個,よって,

30!x226 @ 314 @ 57 @ 74 @ 112

@ 132 @ 17 @ 19 @ 23 @ 29

x107 @ 219 @ 314 @ 74 @ 112

@ 132 @ 17 @ 19 @ 23 @ 29

一般に整数a,b を10で割った余りが等しいと

きaQb と表すことにすると,

210x1024Q4,29x512Q2より,

219Q4 @ 2Q8QP2

32QP1より 314Q 32£ ¤ 7QP1£ ¤ 7QP1

72QP1より 74QP1£ ¤ 2Q1

112Q1,132Q169QP1,17QP3,19QP1,

23Q3,29QP1

したがって,

30!10 7 QP2£ ¤ P1£ ¤ @ 1 @ 1 @ P1£ ¤

@ P3£ ¤ @ P1£ ¤ @ 3 @ P1£ ¤

Q18Q8 …(答)

[注] 上では,記述を簡略化するために,「整数

a,b を10で割った余りが等しいときaQb と表す」

という合同記号『QQQQ』を用いたが,ここでは単に

「整数の和と積での1桁目の数については各数の

1桁目の数の和と積に注目するだけでよい」とい

う事実を用いているだけのことである。もちろん,

この記号を用いずに記述することもできる。合同

式については,次回または次々回でその基本事項

を紹介する予定である。なお,本年(2007 年)

の学習院大学での大学入試問題についての懇談

会での,東大の先生のお話によると,東大では解

答での合同式の利用の際にはその定義を記して

欲しいということである。

◆第3回 解答◆ p.8

⑴ a,b をm で割ったときの商をそれぞれ

a ,b´,余りをそれぞれr,r とする。

このとき,

axma Or 0Trtm£ ¤ ,bxmb´Or

0Tr tm£ ¤

())合同の定義からrxr である。

よって,aPbxm a Ob´£ ¤ となり,aPb はm

で割り切れる。

(()aPbxm a Ob´£ ¤O rPr£ ¤ である。

ここでaPb はm で割り切れるからrPr も

m で割り切れる。

PmtrPr tmであるから,rPr x0すな

わち,rxr である。

ゆえにaQb modm£ ¤ である。■

[注] この性質⑴により,「aQb modm£ ¤ 」の

定義を「aPb はm で割り切れる」こととする

こともできる。

素因数2222を

1111個以上持

つ数…aaaa 個

素因数2222を

2222個以上持

つ数…bbbb 個

素因数2222を

3333個以上持

つ数…cccc個

素因数2222を

4444個持つ数

…dddd個

の倍数

の個数dddd

の倍数

の個数cccc

の倍数

の個数bbbb

の倍数

の個数aaaa

2 4 2 3 2 2 2

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-26-

⑵ aEc£ ¤P bEd£ ¤x aPb£ ¤E cPd£ ¤(複号同順)

ここで,⑴によりaPb ,cPd はどちらもm で

割り切れるので, aEc£ ¤P bEd£ ¤ はm で割り

切れる。ゆえに再び⑴により,aEcQbEd

modm£ ¤ である。■

[注] この⑵をaQb modm£ ¤ に繰り返し用い

ると,任意の自然数n に対して,naQnb

modm£ ¤ が成り立つ。もちろん,nx0でも成

り立つ。また,PnaQPnb modm£ ¤ も成り立

つから,結局,任意の整数nに対してnaQnb

modm£ ¤ が成り立つ。

⑶ acPbdx aPb£ ¤cOb cPd£ ¤

ここで,⑴によりaPb ,cPd はどちらもm で

割り切れるから, aPb£ ¤cOb cPd£ ¤ はm で割

り切れる。ゆえに再び⑴により,acQbd

modm£ ¤ である。■

[注] この⑶をaQb modm£ ¤ に繰り返し用い

ると,任意の自然数 n に対して,anQbn

modm£ ¤ が成り立つ。もちろん,nは0以上の

整数でもよいが負の整数に対しては意味をも

たないことに注意すること。

⑷ acPbcx aPb£ ¤c がm で割り切れてm とc

が互いに素であるから,aPb はm で割り切れ

る。ゆえにaQb modm£ ¤ である。■

[注] この⑷はm とc が互いに素でないとき

には成り立つとは限らないことに注意するこ

と。例 えば, 2 @ 3Q4 @ 3 mod6£ ¤ だが 2Q4

mod6£ ¤ ではない。3と6は互いに素ではないか

ら,性質⑷は適用できないのである。

一般に整数a,b を3で割ったときの余りが

等しいとき,aQb と記すことにする。

このとき,aQb かつcQd ならばaOcQbOd が成

り立つ。よって,数列 an« ¬ に対して

a1Q1,a2Q1,anQanP1OanP2 nU3£ ¤

である。したがって,

a1Q1,a2Q1,a3Qa2Oa1Q1O1Q2,

a4Qa3Oa2Q2O1Q0, a5Qa4Oa3Q0O2Q2,

a6Qa5Oa4Q2O0Q2, a7Qa6Oa5Q2O2Q1,

a8Qa7Oa6Q1O2Q0,a9Qa8Oa7Q0O1Q1,

a10Qa9Oa8Q1O0Q1

a1Q1 , a2Q1 と a9Q1 , a10Q1 から,漸化式

anQanP1OanP2 により,3で割ったときの余りで

みると,1,1,2,0,2,2,1,0の8項の繰

り返しとなる。ゆえに一般項an が3で割り切れる

ためのnの条件はnが4の倍数であることである。

[注] このように漸化式で与えられる数列を余

りでとらえ直すと解決する問題は入試で度々取

り上げられるものである。3項間漸化式で与えら

れた数列を3で割った余りでみた場合には,連続

する2項でそれまでのどこかの連続する2項と一

致するものが(a10,a11 )までに必ず現れる。なぜ

なら,3で割った余りでみたとき,a i ,aiO1 のそ

れぞれは0,1,2の3個の値しかとれないので,

組(a i ,aiO1 )の異なるものはたかだか32x9通り

しか存在せず,(a10,a11 )までのどこかで必ずそ

れ以前のどれかと同じものが現れなければなら

ないからである。本問では(a9 ,a10 )で初めて(a1 ,

a2 )と同じものが現れている。

一般に整数a,b を3で割ったときの余りが

等しいとき,aQb と記すことにする。正の整数n

に対して,

nQ0 なら,nnQ0 よって,nnO1Q1

nQ1 なら,nnQ1 よって,nnO1Q2

nQP1 なら,

nが偶数のとき,nnQ1 よって,nnO1Q2

nが奇数のとき,nnQP1 よって,nnO1Q0

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したがって,求めるnは

「nx3kP1と書けて,かつnが奇数の場合」

すなわち

「nx3kP1と書けて,かつkが偶数の場合」

である。

このとき,kx2m (m は正の整数)として,

nx3 @ 2mP1x6mP1

と表されるから,条件を満たすnは

「m を正の整数として,nx6mP1と書ける

もの」…(答)

(「6で割って5余る正の整数」でもよい。)

[注] 合同記号を用いない記述にすると以下の

ようになる。

kを正の整数として,

nx3k と表されるとき,

nnx3nknなので,nnO1x 3の倍数

£ ¤O1

nx3kO1と表されるとき,2項定理から,

nnx 3kO1£ ¤nx 3の倍数£ ¤O1なので,

nnO1x 3の倍数£ ¤O2

nx3kP1と表されるとき,2項定理から,

nnx 3kP1£ ¤nx 3の倍数£ ¤OP1£ ¤n

なので,

nが偶数ならば,nnO1x 3の倍数£ ¤O2

nが奇数ならば,nnO1x 3の倍数£ ¤O0

(以下,同様)

aで割ったときの余りが等しいようなib と

jb (1TitjTa )が(1組でも)存在したと

仮定する。

ajjbPib から,aj jPi£ ¤b となる。

ここで,aとb は互いに素なので,ajjPi …(*)

一方,1TjPiTaP1であるから,jPi はa の

倍数とは成り得ない。これは(*)と矛盾する。

ゆえに余りはすべて異なる。 ■

[注 1] aで割った余りは0 からaP1 までa個

あるから,本問によって,b ,2b ,3b ,……,

aP1£ ¤b ,ab をaで割った余りは0からaP1まで

のすべての余りがちょうど1個ずつ現れる。

このようなことから,集合

b, 2b, 3b, ……, aP1£ ¤b, ab« ¬ はa に関する完

全剰余系を成すという。特に余りが0となるのは

ab なので,b ,2b ,3b ,……, aP1£ ¤b をaで割

った余りは全体として1,2,…,aP1に一致す

ることになる。

[注 2] 本問は整数を扱う上での最重要事項のひ

とつである。試験で用いる際には簡単に証明を

付すとよい。また,c を任意の整数として,

bOc ,2bOc ,3bOc ,……,aP1£ ¤bOc ,abOc

のa個の数をaで割るとすべての余りが1 個ずつ

現れるという事実も全く同様に示される。【フェ

ルマーの小定理】,【孫子の剰余定理】,【ウィ

ルソンの定理】,【オイラー関数の基本性質】な

どはこの事実からそれぞれ独立に比較的容易に

導くことができる。この意味でこれは真に強力な

命題である。

ax1のとき

xx1,yx0とすればよい。

aU2のとき

( 4 により,)b ,2b ,3b ,……, aP1£ ¤b をa

で割った余りの中には1が存在する。それをib と

すると,ibxqaO1となる整数q が存在する。そ

こで,xxPq ,yxi とするとよい。 ■

aとpは互いに素なので,

a,2a,3a,……, pP1£ ¤a をpで割った余りは

全体として 1,2,3,……,pP1に等しい。

よって,適当な整数t 1 ,t 2 ,……,tpP1 を用いて,

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1aA2aA3aA…A pP1£ ¤a

x 1Ot1p£ ¤ 2Ot2p£ ¤ 3Ot3p£ ¤

… pP1OtpP1p£ ¤ …(*)

両辺をそれぞれ変形して,

1A2A3A…A pP1£ ¤apP1

x1A2A3A…A pP1£ ¤O pの倍数£ ¤

右辺の第1項を移行すると,

1A2A3A…A pP1£ ¤ apP1P1£ ¤ x pの倍数£ ¤

となる。よって,1 @ 2 @ 3 @… @ pP1£ ¤ apP1P1£ ¤ は

pで割り切れる。

p は素数であるから,1A2A3A…A pP1£ ¤ はp

と互いに素なので,apP1P1がp で割り切れなけ

ればならない。

すなわち,apP1をpで割ったときの余りは1であ

る。 ■

[注 1] pが素数であることがどこで効いている

のかをよく理解して欲しい。

[注 2] 合同式を使うと記述は簡潔になる。すな

わち,上の証明中の(*)式以下を次のようにする。

1aA2aA3aA…A pP1£ ¤a

Q1A2A3A…A pP1£ ¤ modp£ ¤

1A2A3A…A pP1£ ¤apP1

Q1A2A3A…A pP1£ ¤ modp£ ¤

ここで,pは素数であるから,

1A2A3A…A pP1£ ¤ はpと互いに素である。

ゆえに( 1 ⑷により) apP1Q1 modp£ ¤

となる。■

◆第4回 解答◆ p.10

nO1£ ¤!O2 , nO1£ ¤!O3 ,………,

nO1£ ¤!OnO1 ……(*)

を考える。(*)の各数 nO1£ ¤!Ok

kx2, 3, …… , nO1£ ¤はk より大きなk の倍数

であるから素数ではない。

ゆえに(*)は素数を含まない連続するn 整数であ

る。 ■

[注] N をnO1 以上の任意の整数とすれば,

N!O2 ,N!O3 ,………,N!OnO1

は素数を含まない連続n 整数である。N はいく

らでも大きくとれるから,素数を含まない連続す

るnnnn 整数の列は無数に存在する。

kx2 rm (r は0 以上の整数,m は正の奇数)

とすると,2 kx2 2 rmx 2 2 r£ ¤m

ax2 2 r

U2£ ¤とおくと,2 kxa m

と表され,

2 kO1xa mO1 xa mP P1£ ¤m

x aO1£ ¤ amP1PamP2OamP3P£

…Oa2PaO1¤ ……(*)

ここで,mU3 とすると

(*)の第2 因数xamP2 aP1£ ¤

OamP4 aP1£ ¤O…Oa aP1£ ¤O1U2

また,aO1 は3 以上の整数である。これは

2 kO1 が素数という条件に矛盾する。ゆえに,

奇数m は1 となり,kx2 rである。 ■

[注] (*)の各因数が2 以上であることの確認を

忘れないこと。

2 0O1x2 ,2 1O1x3 ,2 2O1x5 ,

2 4O1x17 ,2 8O1x257 ,

2 16O1x65537 は素数だが,

2 32O1x4294967297 x641A6700417 は素数

ではない。

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2 2rrrr

OOOO1 の形の素数をフェルマー素数という。

5TrT21 ではすべて合成数であることが知られ

ていて,rU5 ではすべて合成数,すなわちフェ

ルマー素数は最初の5 個のみであろうと思われ

ている。

⑴ p は素数であるから,2np の約数は

1 ,2 ,2 2,……,2nP1

,2n,p ,2p ,22p

……,2nP1p ,2np xN£ ¤

⑵ Sx 1O2O2 2O……O2nP1O2n£ ¤

Op 1O2O2 2O……O2nP1£ ¤……①

ここで,

1O2O2 2O……O2nP1O2nxp ,

1O2O22O……O2nP1x2nP12P1

x2nP1 (等比数列の和)

よって,①から,

SxpOp 2nP1£ ¤x2npxN ■

[注] 一般に正の整数N について,N 以外のN

の正の約数すべての和がN となるとき,N を完

全数という。完全数に関する本問は高校生にちょ

うどよいレベルの内容であるが,これは『原論』

の第9 巻の最終定理でもある。また,

px1O2O2 2O……O2nP1O2n

x2nO1P12P1

x2nO1P1

であるが,一般に2 kkkkPPPP1 の形の素数をメルセンヌ

素数という。メルセンヌ(1588 ~1648 )はフラ

ンスの神父でこの形の素数の研究で有名である。

メルセンヌ素数とそれから得られる完全数の例

として,

・kx3 のときの 7 x1O2O4£ ¤

このとき,4 @ 7x28 の約数は

1 ,2 ,4 ,7 ,14 ,28 で

1O2O4O7O14x28

・kx5 のときの 31 x1O2O4O8O16£ ¤

このとき,16 @ 31x496 の約数は

1, 2, 4, 8, 16, 31, 62, 124, 248, 496で

1O2O4O8O16O31O62O124O248x496

pCixp!

i! @ pPi£ ¤!より,

i! @ pPi£ ¤! @ pCixp! よって,

i! @ pPi£ ¤! @ pCi はp で割り切れる。……(*)

ここで,pppp は素数であるから,1 ,2 ,……,ppppPPPP1

はどれもpppp と互いに素である。よって,i! ,

pPi£ ¤! 1TiTpP1, 1TpPiTpP2£ ¤はどち

らもp と互いに素である。……(**)

(*)と(**)より,pjpCi である。 ■

【別解】ipCixi @p!

i! pPi£ ¤!

xp pP1£ ¤!

iP1£ ¤! pP1£ ¤P iP1£ ¤« ¬!

xp pP1C iP1

よって,pjipCi である。ここで,1TiTpP1

であるからp とi は互いに素である。ゆえに,

pjpCi である。 ■

[注] 本問は二項係数についての有名事項であ

る。証明とともに常識とすること。また,証明中

でp が素数であることがどのように効いている

かに注意すること。

⑴ Ⅰ£ ¤ nx1 のとき,明らかに

pjn pPn

Ⅱ£ ¤ 1 以上のある自然数k に対して,

pjkpPk ……①と仮定する。

二項定理から,

kO1£ ¤pxkpOpP1

Pix1

pCik iO1

よって,

kO1£ ¤pP kO1£ ¤x kpPk£ ¤OpP1

Pix1

pCik i

……②

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ここで,p は素数なのでpjpCi

ix1, 2, …, pP1£ ¤……③( 3 による)

①,③より,②の右辺はp で割り切れ,した

がってpj kO1£ ¤pP kO1£ ¤である。

Ⅰ£ ¤

, Ⅱ£ ¤

から数学的帰納法により, 任意の

自然数n に対してpjn pPn である。■

⑵ ⑴から,素数p と任意の正の整数a に対して,

pjapPa すなわちpja apP1P1£ ¤

ここで,a がp と互いに素であるから,

pja pP1P1

ゆえにapP1をp で割った余りは1 である。■

[注] ⑵は前回紹介したフェルマーの小定理で

ある。数学的帰納法で⑴を用いて⑵を導く証明法

はスイスのオイラー(1707 ~1783 )によるもので

ある。また,この証明は数学的帰納法を明確に意

識した最初の例ともいわれている。

p ,q は素数であるから,nC1xnxpq の

約数は1 ,p ,q ,pq に限られる。 nCpxpqCp

xpq pqP1£ ¤ pqP2£ ¤

… pqPpO1£ ¤p pP1£ ¤ pP2£ ¤

…2 @ 1

xq pqP1£ ¤ pqP2£ ¤

… pqP pP1£ ¤« ¬

pP1£ ¤ pP2£ ¤…2 @ 1

これより,

nCp pP1£ ¤ pP2£ ¤ @ … @ 2 @ 1

xq pqP1£ ¤ pqP2£ ¤… pqPpO1£ ¤

……①

ここで,右辺の各項q ,pqP1 ,pqP2 ,……,

pqP pP1£ ¤はいずれも素数p で割り切れない

( ∵ q は p と 異 な る 素 数 , pqPk

1TkTpP1£ ¤はp で割るとpPk 余る数)。よっ

て,右辺はp で割り切れない。したがって,左辺

のnCp もp では割り切れない。すなわち,nCp はp ,

pq を約数にもたない。

同様にnCq はq ,pq を約数にもたない。

よって,nC1 ,nCp ,nCq の公約数は1 のみとなり,

これら3 数の最大公約数は1 である。ゆえに,nCk

1TkTnP1£ ¤の最大公約数は1 である。 ■

dxPaPbP c をadPbcOpx0 に代入

すると

a PaPbPc£ ¤PbcOpx0

a2O bOc£ ¤aObcxp

aOb£ ¤ aOc£ ¤xp ……①

aUbUcUd から,aObUcOd

これと aOb£ ¤O cOd£ ¤x0 から,

aObU0 ……②

pu0 なので,①,②から,aObUaOcu0

よって,①から, aObxp ,aOcx1

したがって,

bxpPa ,cx1Pa ,

dxPaPbPcxaPpP1 ……③

これらをaUbUcUd に代入して,

aUpPaU1PaUaPpP1 ……④

④のaUpPa から,2aUp

④の1PaUaPpP1 から,pU2aP2

よって,2aP2TpT2a

ここで,p は3 以上の素数なので,奇数であり

px2aP1

これと③から,

axpO12

,bxpP12

cx1Pp2

,dxPpO12

……(答)

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-31-

◆第5回 解答◆ p.13

以下,mod 7で考える。

整数n に対して,

nQ0のとき,n 2Q0

nQE1のとき,n 2Q1

nQE2のとき,n 2Q4

nQE3のとき,n 2Q2

よって,aQ0 のとき,a 2Ob 2の値をmod 7で

考えると

1O0Q1,1O1Q2,1O2Q3,1O4Q5,

2O0Q2,2O1Q3,2O2Q4,2O4Q6,

4O0Q4,4O1Q5,4O2Q6,4O4Q1,

これらのいずれもQ0 である。したがって,

a 2Ob 2Q0である。

bQ0 のときも,同様にa 2Ob 2Q0

ゆえに,「7ja 2Ob 2)7ja かつ7jb 」である。

この逆,「7ja かつ7jb)7ja 2Ob 2」は明らかで

ある。

以上から,a 2Ob 2が7で割り切れるための必要

十分条件はa ,b ともに7で割り切れることであ

る。■

次の⑴,⑵が成り立つ。

⑴ nQ1 (mod 3 )のとき,任意の自然数m

に対してn mQ1 (mod 3 )

⑵ nQP1 (mod 3 )のとき,

任意の偶数mに対して n mQ1 (mod 3 ),

任意の奇数mに対して nmQP1 (mod 3 )

一般に整数N に対して「N を3で割った余りが2

となる」ということは,NQP1 (mod 3 )という

ことであるから,上記⑴,⑵により,n mを3で

割った余りが2となる自然数m が存在するのは,

nQP1 (mod 3 )かつm が奇数のときに限られる。

ゆえに,n mを3で割った余りが2となる自然数

mが存在するならば,n を3で割った余りも2で

ある。■

以下,mod 9で考える。

n 9x n 3£ ¤ 3 であることを用いると,

nQ0のとき,n 3Q0,n 9Q0から,n 9Pn 3Q0

nQE1のとき,n 3QE1,n 9QE1

(複号同順)から,n 9Pn 3Q0

nQE2のとき,n 3QE8QF1,n 9QF1

(複号同順)から,n 9Pn 3Q0

nQE3のとき,n 3Q0,n 9Q0から,

n 9Pn 3Q0

nQE4のとき,n 3QE64QE1,n 9QE1

(複号同順)から,n 9Pn 3Q0

以上で場合が尽くされているので,つねに

9jn 9Pn 3である。■

【別解1】

n 9Pn 3xn 3 n 6P1£ ¤

xn 3 n 3P1£ ¤ n 3O1£ ¤

x nP1£ ¤n nO1£ ¤n 2

n 2PnO1£ ¤ n 2OnO1£ ¤ …(*)

ここで, nP1£ ¤n nO1£ ¤Q0 (mod 3 )(連続3整

数の積)である。

さらに,

ⅰ£ ¤ nQ0 (mod 3 )のとき,n 2Q0 (mod 3 )

ⅱ£ ¤ nQP1 (mod 3 )のとき,

n 2PnO1Q0 (mod 3 )

ⅲ£ ¤ nQ1 (mod 3 )のとき,

n 2OnO1Q0 (mod 3 )

よって,いずれの場合も(*)から,9jn 9Pn 3

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-32-

【別解2】

n 9Pn 3x n 3£ ¤ 3Pn 3

x n 3Pn£ ¤ 3O3n 3 @ n n 3Pn£ ¤

x n nO1£ ¤ nP1£ ¤« ¬ 3

O3n 4 @ n nO1£ ¤ nP1£ ¤

ここで,nP1£ ¤n nO1£ ¤ は連続3整数の積なので

3の倍数であるから,9jn 9Pn 3 ■

【別解3】

n 9Pn 3xn 3 n 6P1£ ¤

xn 3 n 3P1£ ¤ n 3O1£ ¤

k を適当な整数として,

ⅰ£ ¤ nx3k のとき,n 3x27k3x9 @ 3k3

ⅱ£ ¤ nx3kO1のとき,

n 3P1x27k 3O27k 2O9kO1P1

x9 3k 3O3k2Ok£ ¤

ⅲ£ ¤ nx3kP1のとき,

n 3O1x27k3P27k2O9kP1O1

x9 3k 3P3k 2Ok£ ¤

いずれの場合も,9jn 9Pn 3。■

⑴ a 2Ob 2xc 2より,

a 2Ob 2Qc 2(mod 3 )…①

一般に整数c について,

cQ0 or 1 or P1 (mod 3 )であるから,

c 2Q0 or 1 (mod 3 )…②

①,②より,a 2Ob 2Q0 or 1 (mod 3 )…③

今,aQE1 (mod 3 )かつ bQE1 (mod 3 )

と仮定すると,

a 2Ob 2Q1O1Q2QP1 (mod 3 )…④

③と④は矛盾する。

ゆえに,aQ0 or bQ0 (mod 3 )すなわち,a ,

b の少なくとも一方は3の倍数である。■

⑵ a 2Ob 2xc 2より,

a 2Ob 2Qc 2(mod 4 )…①

一般に整数c について,

cQ0 orE1 or 2 (mod 4 )であるから,

c 2Q0 or 1 (mod 4 )…②

①,②より,

a 2Ob 2Q0 or 1 (mod 4 )…③

今,aQE1 (mod 4 )かつbQE1 (mod 4 )と

仮定すると,

a 2Ob 2Q1O1Q2 (mod 4 )…④

③と④は矛盾する。

ゆ え に ,「 aQ0 or 2 ( mod 4 ) 」 ま た は

「bQ0 or 2 (mod 4 )」すなわち,a ,b の少

なくとも一方は偶数である。■

⑴ a ,b が互いに素でb が偶数なのでa は

奇数であり,従って,a 2Ob 2xc 2か

ら,c も奇数である。よって,cOa ,cPa は

偶数であり,cOax2p ,cPax2q となる

自然数がp,q が存在する。

ここで,a とc は互いに素である。なぜなら,a

とc が互いに素でないならば,a とc は素数の

公約数s をもち,a 2Ob 2xc 2からb 2

はs2で割

り切れ,s は素数であるからs はb の約数とな

るが,これはa とb が互いに素であることに反

するからである。

axpPq ,cxpOq とa とc が互いに素であ

ることから,pとq は互いに素である。なぜな

ら,pとq が2以上の公約数t をもつなら,t は

a とc の公約数となってしまうからである。

以上から,cOax2p ,cPax2q となる互

いに素な正の整数p,q が存在する。■

⑵ b は偶数なのでbx2r となる自然数rが存在

する。

axpPq ,cxpOq ,bx2r を

a 2Ob 2xc 2に代入・整理するとr 2xpq とな

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-33-

る。p,q は互いに素なので,pxm 2,qxn 2

となる互いに素な自然数m,n (mun )が存

在する。なぜなら,rxa ®t ¯…u °

(s ,t ,u ,

…は異なる素数,® ,¯,…,° は正の整数) と

素因数分解したとき,pqxr 2xs 2®t 2¯…u 2°

なるが,p,q は互いに素なので,s2®,t2¯

…,u 2°がそれぞれp,q のどちらか一方に振

り分けられて,pxm 2,qxn 2

となる互いに

素な自然数m,n を得るからである。このm,

n により,

axpPqxm2Pn 2,

cxpOqxm2On 2,

bx2rx2 pq x2mn

となる。■

[注] 一般にa 2Ob 2xc 2をみたす正の整数

a ,b ,c において,a とb の最大公約数をd と

すると,適当な整数eを用いて,d 2exc 2となる。

dxij…k (i ,j ,…,k は素数,ただし同じ

ものがあってもよい) とすると,

ijc 2であるが,i は素数なのでijc となる。j ,

…,k についても同様であるから,結果として

djc である。そこで,axa´d ,bxb´d ,

cxc´d とおくと,

a´£ ¤ 2O b´£ ¤ 2x c´£ ¤ 2 で,a´とb´は互いに素で

ある。また,a´とb´の少なくとも一方が偶数

であることは問題 5 ⑵で学んだことである。

したがって,本問により,

a , b , c´£ ¤x m2Pn 2, 2mn, m 2On 2£ ¤ と

なる互いに素な自然数m,n が存在する。

よって,

a, b, c£ ¤xd m 2Pn 2, 2mn, m 2On 2£ ¤

(右辺は括弧内の3数をそれぞれd 倍したもの)

と な る 。 逆 に こ の 右 辺 の 形 の 3 数 が

a 2Ob 2xc 2をみたすことは簡単な計算で確

かめられる。このようにしてすべてのピタゴラ

ス数が与えられることになるのである。

ピタゴラス数は入試問題で頻繁に取り上げら

れる素材である。本問によってその本質的な側

面が学べると思われるのでよく理解すること

を望む。

⑴ 任意の奇数は適当な整数k を用いて

4kE1と表される。

4kE1£ ¤ 2x16k 2E8kO1 であり,これは8

で割ると余りは1である。 ■

⑵ nU4のとき,n!は8の倍数なので,n!O3

を8で割った余りは3である。n!O3は奇数で

あるから,⑴により,n!O3は平方数ではな

い。

よって,nx1または2または3でなければな

らない。

1!O3x4 ,2!O3x5 ,3!O3x9 より,

条件に適するn の値は1,3……(答)

[注] ①偶数の平方を8で割ったときの余り

は0または4

②平方数を4で割ったときの余りは0または1

③平方数を3で割ったときの余りは0または1

本問では,②を用いることもできる。

⑴ 8以下の整数でA の要素になるものは

0,3,5,6,8である。

8以上の任意の整数がA の要素であることを

示す。

8以上の任意の整数をn とし,

nx8Om (mは0以上の整数)とする。

k を0以上の整数とする。

mx3k のとき,

nx8O3kx3 1Ok£ ¤O52A

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mx3kO1のとき,

nx8O3kO1x3 3Ok£ ¤O5 @ 02A

mx3kO2のとき,

nx8O3kO2x3kO5 @ 22A

以上から,

Ax 0, 3, 5, 6, njnは8以上の整数}« …(答)

⑵ sxxP1,txyP1となる。s ,t は0以上

の整数である。

3xO5yx3 sO1£ ¤O5 tO1£ ¤ x3sO5tO8

⑴により,3sO5t の取る値は0,3,5,6 お

よび8以上のすべての整数であるから,

Bx 8, 11, 13, 14, njnは16以上の整数« ¬

…(答)

【⑵の別解】

16以上の任意の整数をm に対して3xO5yxm

となる自然数x ,yが存在することを以下に示す。

3 @ P3£ ¤O5 @ 2x1より,

3 @ P3m£ ¤O5 @ 2mxm …①

3xO5yxm …②となる自然数x ,yが存在する

とすると,②P① から

3 xO3m£ ¤O5 yP2m£ ¤x0…③

3と5は互いに素であるから,③から,5jxO3m

であり,xO3mx5n となる整数n が存在する。

このとき,③から,

yP2mxP3n

よって,3xO5yxm …②となる自然数x ,yが

存在するとすると,

xxP3mO5n かつyx2mP3n …④

となる整数n が存在しなければならない。逆に④

の形の任意の整数x ,yについて③が成り立ち,

①O③ から②を得る。ゆえに②を満たす整数x ,

yの組の集合は任意の整数n を用いて④で与えら

れるx ,yの組の集合に一致する。そこで,

P3mO5nU1かつ2mP3nU1…⑤

を満たす整数n が存在することを示すとよい。整

数で考えているから,⑤は

P3mO5nu0かつ2mP3nu0 と同値である。

これはさらに

3m5

tnt2m3

と同値である。

ここで,

2m3

P3m5

xm15

t1615

x1であるから,

3m5

tnt2m3

を満たす整数n が存在する。

ゆえに,⑤したがって②を満たす自然数x ,yが

存在する。

以上から,16以上の整数はすべてB に属する。

15以下の自然数についてチェックして,

Bx 8, 11, 13, 14, njnは16以上の整数« ¬

となる。

[注] 0以上の整数x ,y に対してpxxO1 ,

qxyO1 とするとp ,q は1以上の整数であり,

3xO5yx3 pP1£ ¤O5 qP1£ ¤x3pO5qP8 で

あるから,

Bx 8, 11, 13, 14, njnは16以上の整数« ¬

により,

Ax 0, 3, 5, 6, njnは8以上の整数« ¬

となる。

1TltmTpP1である整数l ,mに対して,

l 2をpで割ったときの余りと,m2

をp で割った

ときの余りが等しくなるための必要十分条件は

m2Pl2がpで割り切れることである。

m 2Pl 2x mPl£ ¤ mOl£ ¤ …①,

1TmPlTpP2…②,

2tmOlt2p …③

②から,mPl はpで割り切れない。このことと

①とpが素数であることから,

m2Pl2がp で割り切れるための条件は,mOl

がpで割り切れることである。

このための条件は,③から

mOlxp

となることである。したがって,

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-35-

12と pP1£ ¤ 2 ,22

と pP2£ ¤ 2 ,……,

pP12Ã Ä 2 と pO1

2Ã Ä 2 の各組の2数をpで割ったときの余りは等しく,

かつ

12,22

,……,

pP12Ã Ä 2

の各数をpで割った余りはすべて異なる。ゆえに

pで割った余りのうち異なるものの個数は

pP12

…(答)

【別解】

整数i に対して, pPi£ ¤ 2xp 2P2piOi 2

であるから, pPi£ ¤ 2 とi 2をp で割ったときの余

りは等しい。したがって,

12と pP1£ ¤ 2 ,22

と pP2£ ¤ 2 ,

……,

pP12Ã Ä 2 と pO1

2Ã Ä 2 の各組の2数をpで割ったときの余りは等しい。

Ⅰ£ ¤ px3のとき,

12と22

は3で割ったときの余りがともに1

であるから,余りの個数は1個である。

Ⅱ£ ¤ pu3のとき,

1TjtkTpP12

であるような任意の2つ

の整数j とk について,j2とk2

をpで割った

と き の 余 り が 等 し い と す る と ,

k 2Pj 2x kPj£ ¤ kOj£ ¤ はp で割り切れる。

このこととpが素数であることから,kPj

とkOj の少なくとも一方はpで割り切れる

ことになるが,これは

1TkPjtp かつ1tkOjtp であること

と矛盾する。したがって,

12,22

,……,

pP12Ã Ä 2

の各数をpで割った余りはどの2つも異なり,

pで割った余りのうち異なるものの個数は

pP12

である。

Ⅰ£ ¤ と Ⅱ

£ ¤ から,求める個数は

pP12

…(答)

◆第6回 解答◆ p.14

まず,格子点を頂点にもつ三角形の面積は

12

以上であることを示す。適当な平行移動によ

り頂点の1つをO 0, 0£ ¤ としてよく,このとき,

残りの頂点をA a, b£ ¤ ,B c, d£ ¤ (a ,b ,c ,d は

整数)であるとする。

OAªOB ,A~O ,Q~O から adPbc~0な

ので, adPbc U1

よって,三角形の面積は

12

adPbc U12

であ

る。

面積 1 の凸四角形

PQRS (P ,Q ,R ,

Sは格子点)を考える。

四角形PRQS は凸

なので

1x 四 角 形

PRQSx4PQRO4PRS

x4PQSO4QRS

この式に現れる各三角形の面積は

12

以上である

から,

4PQRx4PRSx4PQS

x4QRSx12Ã Ä

四角形PRQS は凸

なので,R とSは直

線PQ に関して同じ

側にあるので,

4PQRx4PQS

より PQ k SR

同様に,4PQSx4PRSより PS k QR

ゆえに四角形PRQSは平行四辺形である。

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xOy は2の倍数, x ,yの偶奇は一致

, xPy は2の倍数…①

2xO3y は5の倍数

5xO3 yPx£ ¤ は5の倍数

, 3 xPy£ ¤ は5の倍数

, yPx は5の倍数…②

①かつ② yPxx10t (t は整数)とかける

ここで,1TxT100かつ1TyT100より

P99TyPxT99

よって, P9TtT9

yxxO10t 上の条件を満たす格子点の個数は

100P10 t (P9TtT9 )であるから,求める個

数は

9

PtxP9

100P10 t£ ¤ x100 @ 19O29

Ptx1

t

x1900P 1O9£ ¤ @ 9x1000……(答)

Aは格子点であるからAが原点にくるよう

に三角形ABC を平行移動しても,辺上の格子点

の個数や三角形の面積に変化はない。そこで始め

からA 0, 0£ ¤ として考えてよい。

⑴ B a, b£ ¤ ,C c, d£ ¤ とする。a ,b の最大公約

数をgとし,c ,d の最大公約数をh とする。

辺AB,AC上の両端を除く格子点の個数はそ

れぞれgP1,hP1である。

[理由] axga´,bxgb´とすると,a´,b´

は互いに素であるから,原点Aと格子点 a , b´£ ¤

の間には格子点は存在しない。よって,辺AB

上の両端を除く格子点の全ては,

a , b´£ ¤ , 2a , 2b´£ ¤ , …… ,

gP1£ ¤a , gP1£ ¤b´£ ¤

のgP1個である。

辺AC 上の両端を除く格子点の個数も同様に

hP1個である。

gP1,hP1が奇数であることから,g,h は

偶数である。

次にB が原点にくるように平行移動すると,

C は点C´ cPa, dPb£ ¤ に移る。

cxhc´,dxhd´とおくと,

C´ hc´Pga , hd´Pgb´£ ¤ である。g,h は偶

数であるからC´の両座標は偶数なので,両座

標の最大公約数をl とするとl は偶数である。

上の[理由]と同様に,線分OC´の両端を除く

格子点の個数はlP1個であり,これは奇数で

ある。すなわち,線分BC上の格子点の個数は

奇数である。 ■

⑵ ⑴の記号のもとで,与えられた条件から,

gP1x3,hP1x3となり,gxhx4

よって,

4ABCx12

adPbc

xgh2

a´d´Pb´c´

x8 a´d´Pb´c´

ここで,a´,b´,c´,d´は整数であるから,

三角形ABC の面積は8で割り切れる整数で

ある。 ■

,

,

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⑴ 線分OAの内部には格子点は存在しない。

[理由] ax1のときは明らか。

aU2のとき,

1Tx 0TaP1なる整数x 0 に対して,線分OA

上に格子点 x0, y0£ ¤ が存在したとすると,

bx 0xay 0 であり,a とb は互いに素なので,

x 0 がa で割り切れる。これは1Tx 0TaP1に

矛盾する。

線分OBは線分OAをy軸方向に1平行移動し

たものなので,線分OBの内部にも格子点は存

在しない。よって,平行四辺形の内部の格子点

の個数は

ⅰ£ ¤ ax1のとき,0個

ⅱ£ ¤ aU2のとき,

直線xxk 上に各1個の計aP1個

(1TkTaP1,k は整数)

ⅰ£ ¤ ,ⅱ

£ ¤ より,求める個数はaP1個…(答)

⑵ kb をa で割ったときの商をqk ,余りをrk と

する。

A a, b£ ¤ ,P k k, q kO1£ ¤ であるから,

4OAPkx12

qkO1£ ¤aPkb

x12

qkO1£ ¤aP aqkOrk£ ¤

(kbxq kaOrk より)

x12

aPrk

x12

aPrk£ ¤ …①

ここで,a とb は互いに素なので,rk はすべて

異なり,しかも0ではない。

よって,rk は1からaP1の全ての値を1つず

つ取る。ゆえにrk の最大値はaP1で,三角形

OAPk の最小値は

12

…(答)

[注1] ①で実際に,rk がaP1の値を取りうる

ことを示すところがポイント。

[注2] bka

Pqkxrk

aなので,4OAP k の面積

計算は次のようにしてもよい。

(下図参照)

4OAPkx12

a 1Prk

aÃ Ä x 12

aPrk£ ¤

4つの直線 yx25

x ,yx25

xO1,xx0,

xx5で囲まれる領域(境界を含む平行四辺形)

をD とする。D をx 軸方向に5k ,y軸方向に2k

(k は整数)平行移動しても,D 内の格子点は他

の格子点に移る。また,y軸方向にl (l は整数)

平行移動しても,同様である。さらに平面上の格

子点はこれらの平行移動で尽くされる。よって,

問題をD 内の格子点を中心とする円と,D を通

る傾き

25

の直線に限って考えてよい。D 内の格

子点を通り,傾き

25

の直線のy切片はy軸上の区

間 0, 1¥ ¦ の5等分点となる(図1)。

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-38-

この等分点の隣り合う2点をA ,B とし,線分

ABの中点をMとする。また,Mを通り傾き

25

の直線をL とする。点Aと直線L との距離をd

とすると,d が問題の性質を満たす半径rの最小

値である。

[理由] 傾き

25

のD 内のあらゆる直線は,5等

分点を中心とする半径d のいずれかの円と共有

点を持ち,d より小さい半径の円を描いたのでは,

直線L はどの円とも共有点を持たないからであ

る。(図2参照)

A 0,15Ã Ä ,L : yx

25

xO110

として,d を求め

ると,

dxP2O1

4 2O10 2

x1

2 29x

2958

……(答)

[注] 一般に4点 0, 0£ ¤ , a, b£ ¤ , a, bO1£ ¤ ,

0, 1£ ¤ (a ,b は互いに素な整数)を頂点とする平

行四辺形の内部の格子点は傾き

ba

でy切片が

ka

(k は整数)の直線上に1個ずつ存在する。理由

は 4 の(注 2)の図を参照するとわかる。ただし,

本問ではこのような一般論を考えなくても,解答

のように具体的な数値で考えることができる。

なお,次のような別解を考える人も多いと思う

が,根拠記述は結構難しい。理由付けとして必要

なことを少し丁寧に述べておくので参考にして

欲しい。

【別解】

傾 き

25

の 直 線 を 1 つ 定 め て は そ の 式 を

2xP5yOcx0 (c は定数)とし,これをl c とす

る。任意の格子点 p, q£ ¤ に対して,この点とl c と

の距離は

2pP5qOc

29である。2と5は互いに

素であるから,p ,q があらゆる整数値をとって

変化する(すなわち,全格子点を考える)とき,

2pP5q はあらゆる整数値をとることができる。

したがって,l c に一番近い格子点との距離

0以上

12

以下

d は0以上

1

2 29以下である(上図参照)。

さらに,cxmO12(mは整数)のときには,l c

との距離がちょうど

1

2 29となる格子点があ

る(例えば,5qP2pxm となる p, q£ ¤ )。

よって,問題の性質を満たす半径r の条件は

1

2 29以上であることである。ゆえに,

問 題 の 性 質 を 満 た す 半 径 r の 最 小 値 は

1

2 29x

2958

である。

の最小値の取りうる値の範囲

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-39-

◆第7回 解答◆ p.15

命題「すべての整数k についてf k£ ¤が整数

である。」を A£ ¤とする。また,命題「f 0£ ¤

整 数 で , か つ す べ て の 整 数 k に つ い て

f k£ ¤Pf kP1£ ¤が整数となる」を B£ ¤

とする。

⑴ B£ ¤が A£ ¤

であるための必要条件であるこ

と,即ち B£ ¤) A£ ¤ の成立は明らかである。

B£ ¤が A£ ¤

であるための十分条件であること,

即ち,A£ ¤) B£ ¤ の成立を数学的帰納法で示す。

ⅰ£ ¤ kx0 のとき,条件 B£ ¤

よりf 0£ ¤は整数

である。

ⅱ£ ¤ 0 以上の整数i に対してf i£ ¤

が整数で

あるとする。条件 B£ ¤によりf iO1£ ¤Pf i£ ¤

は整数であるから,

f iO1£ ¤x f iO1£ ¤Pf i£ ¤« ¬Of i£ ¤ は整数で

ある。

ⅲ£ ¤ 0 以下の整数i に対してf i£ ¤

が整数で

あるとする。条件 B£ ¤によりf i£ ¤Pf iP1£ ¤

は整数であるから,

f iP1£ ¤xf i£ ¤P f i£ ¤Pf iP1£ ¤« ¬は整数で

ある。

ⅰ£ ¤ , ⅱ

£ ¤ , ⅲ£ ¤ と数学的帰納法により,す

べての整数k についてf k£ ¤は整数である。

⑵ ⑴により,求める条件は

「f 0£ ¤が整数」かつ「すべての整数k について

f k£ ¤Pf kP1£ ¤が整数」となることである。

f 0£ ¤xc ,

f k£ ¤Pf kP1£ ¤

xa k 2P kP1£ ¤2« ¬Ob kP kP1£ ¤« ¬

x2akOaPb

であるから,求める条件は⑴により,

「c が整数」かつ「2akObPa がすべての整

数k について整数」…(*)

となることである。

g x£ ¤x2axObPa とおくと,条件(*)は,再

度⑴により,

「g 0£ ¤xbPa が整数」かつ

「g k£ ¤Pg kP1£ ¤x2a が整数」

となることである。

ゆえに求める条件は,

「2a ,bPa ,c がすべて整数であること」

…(答)

[注] ⑴の内容はいわゆる整数値多項式につい

ての有名事項である。証明は数学的帰納法による。

ただし命題が任意の整数k に対するものである

から,ここでの帰納法は通常の「上への帰納法」

だけではなく,「下への帰納法」も用いている。

すなわち,整数k についての命題をP k£ ¤とおく

とき,「 P k£ ¤が成り立つことを仮定して

P kO1£ ¤が成り立つ」ことを示すだけではなく,

「P k£ ¤が成り立つことを仮定してP kP1£ ¤

成り立つ」ことも示すわけである。このことと,

P 0£ ¤が成り立つことを組み合わせるとP k£ ¤

任意の整数k に対して成り立つことになるわけ

である。ここでP 0£ ¤の成立のかわりに特定の整

数k 0 についての命題P k0£ ¤の成立を前提として

もよいことはいうまでもない。

命題「すべての整数n に対してf n£ ¤が整

数になる」を A£ ¤とする。

命題「適当な整数p ,q ,r をとると,f x£ ¤が

f x£ ¤xp6

x xO1£ ¤ xO2£ ¤ Oq2

x xO1£ ¤Orx

と表される 」を B£ ¤とする。

Ⅰ£ ¤ 十分性( B£ ¤) A£ ¤ )の証明

任意の整数n についてn nO1£ ¤ nO2£ ¤は6

の倍数,n nO1£ ¤は2 の倍数であることとp ,

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-40-

q ,r が整数であることから,

f n£ ¤xp6

n nO1£ ¤ nO2£ ¤

Oq2

n nO1£ ¤Orn

は整数である。■

Ⅱ£ ¤ 必要性( A£ ¤) B£ ¤ )の証明

f x£ ¤ を

16

x xO1£ ¤ xO2£ ¤ で割ったときの商

をp ,余りをg x£ ¤ とする。p は実数,g x£ ¤ は

実数係数の多項式である。さらにg x£ ¤ を

12

x xO1£ ¤ で割ったときの商をq ,余りを

rxOs とする。r ,s は実数である。

f x£ ¤xp6

x xO1£ ¤ xO2£ ¤Og x£ ¤

xp6

x xO1£ ¤ xO2£ ¤

Oq2

x xO1£ ¤OrxOs …①

一方,f x£ ¤xax 3Obx 2Ocx よりf 0£ ¤x0 な

ので,①から sx0

よって,①よりf P1£ ¤xPr ,

f P2£ ¤xqP2r ,f 1£ ¤xpOqOr

条件 A£ ¤ によって,f P1£ ¤,f P2£ ¤

,f 1£ ¤ は

整数であるから,順次r ,q ,p は整数となる。

ゆえに B£ ¤ が成り立つ。 ■

[注 1] 与えられた形になるように割り算を繰り

返す手法を経験なしで独力で気付くことは難し

いかもしれないが,これは多項式を扱うときの典

型的な手法の1 つである。このような予備知識が

ないときには,次のような解答が一番多いと思わ

れる。

【必要性( A£ ¤) B£ ¤ )の別証明1 】

p6

x xO1£ ¤ xO2£ ¤Oq2

x xO1£ ¤Orx

xp6

x 3OpOq2

x 2O2pO3qO6r

6x

であるから,

axp6

,bxpOq2

cx2pO3qO6r

6……(*)

を満たす整数p ,q ,r が存在することを示せば

よい。

ⅰ£ ¤ (*), px6a ,qx2bP6a ,

rxaPbOc

ⅱ£ ¤ f P1£ ¤xPaObPc ,

f P2£ ¤xP8aO4bP2c ,

f 1£ ¤xaObOc より,

aPbOcxPf P1£ ¤,

2bP6axf P2£ ¤P2f P1£ ¤,

6ax3f P1£ ¤Of 1£ ¤Pf P2£ ¤

条件 A£ ¤ により,f P1£ ¤,f 1£ ¤ ,f P2£ ¤

整数なので,6a ,2bP6a ,aPbOc は整

数である。

ⅰ£ ¤ , ⅱ

£ ¤ から(*)を満たす整数p ,q ,r が存

在する。 ■

[注2] この別解 1 は余分な知識が要らないと言

う意味で自然なのだが,A£ ¤) B£ ¤ を示すことが

どういうことなのかを明確に捕らえた記述の答

案は案外少ない。

「f x£ ¤ がp6

x xO1£ ¤ xO2£ ¤Oq2

x

xO1£ ¤Orx の形に表されるような実数p ,q ,

r が存在することは,条件 A£ ¤ とは無関係にいつ

でも導けることであって,問題のポイントはp ,

q ,r が整数かということである。」ということ

を明確にとらえることが重要である。

【必要性の別証明2 】

一般に,関数F x£ ¤ について

「すべての整数n に対してF n£ ¤ は整数である」

…… A´£ ¤

ならば,

「F 0£ ¤ は整数であり,かつ,すべての整数n に対

してF n£ ¤PF nP1£ ¤も整数である」

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…… C£ ¤が成り立つことは明らかである。

今,

f1 x£ ¤xf x£ ¤Pf xP1£ ¤

x3ax 2P 3aP2b£ ¤xOaPbOc

を考えると,条件 A£ ¤により,f1 x£ ¤

は条件 A´£ ¤

を満たす。よって,f 1 0£ ¤xaPbOc は整数。こ

れをr と置く。次に,

f 2 x£ ¤xf1 x£ ¤Pf1 xP1£ ¤x6axP6aO2b

と置くと, C£ ¤によってf2 x£ ¤

は条件 A´£ ¤を満た

す。よって,f 2 0£ ¤xP6aO2b は整数である。

これをq と置く。さらに,

f 3 x£ ¤xf2 x£ ¤Pf 2 xP1£ ¤ x6a

を考えると, C£ ¤によってf3 x£ ¤

は条件 A´£ ¤を満

たす。よって,f 3 0£ ¤x6a は整数である。これを

p と置く。すると,

aPbOcxr ,P6aO2bxq ,6axr

から,

axp6

,bxpOq2

,cx2pO3qO6r

6

となり,

f x£ ¤xp6

x 3OpOq2

x 2O2pO3qO6r

6x

xp6

x3O3x2O2x£ ¤Oq2

x2Ox£ ¤Orx

xp6

x xO1£ ¤ xO2£ ¤Oq2

x xO1£ ¤Orx

である。ここで,p ,q ,r は整数である。 ■

[注 3] この別解2 は問題 1 を念頭に置いた解

法である。

f x£ ¤をx xO1£ ¤ xO2£ ¤

で割ったときの商

をa とし,その余り(たかだか2 次式)をさらに

x xO1£ ¤で割ったときの商をb ,余りをcxOd

とおく。a ,b ,c ,d は実数である。すると,

f x£ ¤xax xO1£ ¤ xO2£ ¤

Obx xO1£ ¤OcxOd

となる。これを展開,整理すると

f x£ ¤xax 3O 3aOb£ ¤x 2

O 2aObOc£ ¤xOd ……①

となり,条件により,これが整数係数であること

から,a ,3aOb ,2aObOc ,d はすべて整

数である。したがって,a ,b ,c ,d は順次,

整数である。

さ て , 条 件 (*) に よ っ て , 整 数 n ご と に

f n£ ¤xk nn nO1£ ¤ nO2£ ¤となる整数kn が存在

するので,①から

knn nO1£ ¤ nO2£ ¤

xan nO1£ ¤ nO2£ ¤Obn nO1£ ¤OcnOd

……②

すると,d は0 以外のあらゆる整数n で割り切れ

るので,dx0 である(d~0 ならd の約数は有

限個しかないので)。

よって,②から,n~0 なるすべての整数n に対

して

kn nO1£ ¤ nO2£ ¤

xa nO1£ ¤ nO2£ ¤Ob nO1£ ¤Oc ……③

すると,c は0 とP1 以外のあらゆる整数n に対

してnO1 で割り切れるので, cx0 である

(c~0 ならc の約数は有限個しかないので)。

よって,③から,n~0 ,1 なるすべての整数n

に対して,

kn nO2£ ¤xa nO2£ ¤Ob ……④

するとb は0 ,1 ,P2 以外のあらゆる整数n に

対してnO2 で割り切れるので,bx0 である

(b~0 ならb の約数は有限個しかないので)。

よって,④から,n~0 ,1 ,P2 なるすべての

整数n に対して,k nxa となり,a は整数であ

る。

以上により,f x£ ¤xax xO1£ ¤ xO2£ ¤かつa は整

数となる。 ■

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[注] 条件(*)から,直ちに多項式f x£ ¤が多項式

x xO1£ ¤ xO2£ ¤で割り切れるとするのは論外で,

得点はない。条件(*)はn の値ごとに整数f n£ ¤が

整数nx nO1£ ¤ nO2£ ¤で割り切れる,すなわち

n の値ごとに

f n£ ¤xk nAn nO1£ ¤ nO2£ ¤と な る 整 数 kn

が存在すると言っているに過ぎない。

【別解】(極限の定義を正確に理解している場合

の別解-理系向け-)

f x£ ¤をx xO1£ ¤ xO2£ ¤

で割ったときの商をa

(0 ではない実数)とし,その余り(たかだか2 次

式)をg x£ ¤とすると,

f x£ ¤xax xO1£ ¤ xO2£ ¤Og x£ ¤

よって,整数n (~0 ,P1 ,P2 ) に対して,

f n£ ¤

n nO1£ ¤ nO2£ ¤

xaOg n£ ¤

n nO1£ ¤ nO2£ ¤ ……①

ここで,g x£ ¤はたかだか2 次の多項式であるから,

limn!1

g n£ ¤

n nO1£ ¤ nO2£ ¤x0 ……②

である。

また,

f n£ ¤

n nO1£ ¤ nO2£ ¤ xk n ……③とする

と,条件によりkn は整数である。

①,②,③より limn!1

knxa

ここで,kn は整数であるから,ある正の整数N が

あって,nUN であるすべての整数n に対して,

k nxa である。よって,①,③から,nUN で

あるすべての整数n に対して,

axaOg n£ ¤

n nO1£ ¤ nO2£ ¤

すなわち

g n£ ¤

n nO1£ ¤ nO2£ ¤ x0

よって,nUN であるすべての整数n に対して,

g n£ ¤x0 となり,多項式g x£ ¤は恒等的に0 であ

る。ゆえに,f x£ ¤xax xO1£ ¤ xO2£ ¤である。ま

た,ここでaxk n は整数である。 ■

Ⅰ£ ¤ nx1 のとき

f x£ ¤xxOa (a は実数)とおく。

f q 1£ ¤xq 1Oa が有理数であるから,a は有理

数である。

Ⅱ£ ¤ nU2 とする。次数nP1 までは主張が正

しいと仮定する。

f x£ ¤はxn

の係数が1 のn 次の多項式で,相異

なるn 個の有理数q 1 ,q 2 ,…,q n に対して,

f q 1£ ¤,f q 2£ ¤

,…,f qn£ ¤がすべて有理数であ

るとき,f x£ ¤の係数はすべて有理数であるこ

とを示す。剰余の定理から,

f x£ ¤x xPq n£ ¤g x£ ¤Of q n£ ¤ …①

となるnP1 次の多項式g x£ ¤が存在し,g x£ ¤

の項x nP1の係数は1 である。

1TiTnP1 なる整数i に対して,①から

g q i£ ¤xf q i£ ¤Pf qn£ ¤

q iPqn

f q 1£ ¤,f q 2£ ¤

,…,f qnP1£ ¤は有理数であるから,

g q 1£ ¤,g q 2£ ¤

,…,g qnP1£ ¤は有理数である。よ

って,帰納法の仮定により,g x£ ¤の係数はすべ

て有理数である。ゆえに,①より,f x£ ¤の係数

はすべて有理数である。 ■

【別解】(帰納法によらず,ラグランジェの補間

公式を用いる)

g x£ ¤xf x£ ¤Px nとおく。1TkTn なる任意の整

数k ごとに

g 1 x£ ¤xxPq 2£ ¤ xPq 3£ ¤

…… xPq n£ ¤q 1Pq 2£ ¤ q 1Pq 3£ ¤

…… q 1Pq n£ ¤

g 2 x£ ¤xxPq 1£ ¤ xPq 3£ ¤

…… xPq n£ ¤q 2Pq 1£ ¤ q 2Pq 3£ ¤

…… q 2Pq n£ ¤

g3 x£ ¤xxPq 1£ ¤ xPq 2£ ¤ xPq 4£ ¤

…… xPqn£ ¤q 3Pq 1£ ¤ q 3Pq 2£ ¤ q 3Pq 4£ ¤

…… q 3Pqn£ ¤

……………………………………………

gk x£ ¤xxPq1£ ¤ xPq2£ ¤

…xPqkP1£ ¤ xPqkO1£ ¤…xPqn£ ¤

qkPq1£ ¤ qkPq2£ ¤…qkPqkP1£ ¤ qkPqkO1£ ¤

…qkPqn£ ¤

……………………………………………

gn x£ ¤xxPq1£ ¤ xPq 2£ ¤ xPq 3£ ¤

… xPqnP1£ ¤qnPq 1£ ¤ qnPq 2£ ¤ qnPq 3£ ¤

… qnPqnP1£ ¤

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という多項式を考えると,これらは有理数を係数

とする多項式である。

g x£ ¤xn

Pkx1

gk x£ ¤g q k£ ¤

となる。この右辺は有理数係数の多項式であるか

ら,g x£ ¤は有理数係数の多項式である。よって,

f x£ ¤xx nOg x£ ¤ も有理数係数である。■

[注] 一般に多項式g x£ ¤に対して,上のgk x£ ¤

用いると,g x£ ¤xn

Pkx1

gk x£ ¤g q k£ ¤と表すことがで

きる。これをラグランジェの補間公式という。実

際にkx1 からkxn まで代入して,シグマ記号

を用いないで書いてみるとよくわかる。

定数は次数0 の多項式と考える。

Ⅰ£ ¤ nx0 のとき

f x£ ¤xa (a は実数)とおく。

f 0£ ¤xa で,f 0£ ¤は整数であるから,a は整

数である。

よって,整数N に対して,f N£ ¤xa は整数で

ある。

Ⅱ£ ¤ k を0 以上のある整数として,nx0 ,1 ,

2 ,…,k までは主張が正しいと仮定する。

f x£ ¤をkO1 次の多項式として,

「f 0£ ¤,f 1£ ¤

,…,f kO1£ ¤が整数であるな

らば,すべての整数N に対してf N£ ¤は整数で

ある」ことを以下に示す。

f x£ ¤をkO1 次式

x xP1£ ¤ xP2£ ¤…… xPk£ ¤

で割ったときの商をa ,余りをg x£ ¤とする。

g x£ ¤の次数はk 以下である。

f x£ ¤xax xP1£ ¤ xP2£ ¤

…… xPk£ ¤Og x£ ¤ ……①

g 0£ ¤xf 0£ ¤ ,g 1£ ¤xf 1£ ¤ ,…,g k£ ¤xf k£ ¤ は

整数であるから,帰納法の仮定により,任意の

整数N についてg N£ ¤は整数である。特に

g kO1£ ¤は整数である。

f kO1£ ¤も整数であるから,

f kO1£ ¤Pg kO1£ ¤は整数である。これをm

とすると,①から,axm

kO1£ ¤!

よって,

f x£ ¤xm

kO1£ ¤!x xP1£ ¤ xP2£ ¤

…… xPk£ ¤Og x£ ¤

したがって,任意の整数N に対して,

f N£ ¤xm @N NP1£ ¤ NP2£ ¤

… NPk£ ¤

kO1£ ¤!

Og N£ ¤ …②

ここで,

N NP1£ ¤ NP2£ ¤… NPk£ ¤

kO1£ ¤!

x

NC kO1 NPkU1£ ¤

0 NPkT0TN£ ¤

P1£ ¤ kO1PNOk£ ¤C kO1 NTP1£ ¤

Ç

であるから,

N NP1£ ¤ NP2£ ¤… NPk£ ¤

kO1£ ¤! は

常に整数である。またg N£ ¤も整数であるから,

②よりf N£ ¤も整数である。 ■

[注] 最後のところで「連続するl 個の整数の積

は l ! で割り切れる」という有名事項をもちいて

いる。念のためその根拠も解答中に記しておいた。

【別解】(帰納法によらず,ラグランジェの補間

公式を用いる)

0TkTn なる任意のk ごとに

fk x£ ¤xxP0£ ¤ xP1£ ¤

…xPkP1£ ¤£ ¤ xPkO1£ ¤£ ¤…xPn£ ¤

kP0£ ¤ kP1£ ¤…kPkP1£ ¤£ ¤ kPkO1£ ¤£ ¤

…kPn£ ¤

とおくと,f x£ ¤xn

Pkx0

fk x£ ¤f k£ ¤

よって,f N£ ¤xn

Pkx0

fk N£ ¤f k£ ¤であり,また

fk N£ ¤xNP0£ ¤ NP1£ ¤

…NPkP1£ ¤£ ¤kP0£ ¤ kP1£ ¤

…kPkP1£ ¤£ ¤ @NPkO1£ ¤£ ¤

…NPn£ ¤kPkO1£ ¤£ ¤

…kPn£ ¤

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ここで,

NP0£ ¤ NP1£ ¤… NP kP1£ ¤£ ¤

kP0£ ¤ kP1£ ¤… kP kP1£ ¤£ ¤

x

NC k NUk£ ¤

0 0TNTkP1£ ¤

P1£ ¤ kPNOkP1£ ¤C k NTP1£ ¤

Ç

NP kO1£ ¤£ ¤… NPn£ ¤

kP kO1£ ¤£ ¤… kPn£ ¤

xNPn£ ¤ NP nP1£ ¤£ ¤

… NP kO1£ ¤£ ¤P1£ ¤nPk nPk£ ¤!

x

P1£ ¤nPkNP kO1£ ¤CnPk NUnO1£ ¤

0 kO1TNTn£ ¤

P1£ ¤nPknPNCnPk NTk£ ¤

Ç

なので,fk N£ ¤は整数である。

f k£ ¤は整数であるから,f N£ ¤

は整数である。■

f P1£ ¤xp ,f 0£ ¤xq ,f 1£ ¤xr とおくとこ

れらの絶対値は1 以下である。

⑴ f x£ ¤xxP1£ ¤ xP0£ ¤

P1P1£ ¤ P1P0£ ¤ p

OxO1£ ¤ xP1£ ¤0O1£ ¤ 0P1£ ¤ qO

xP0£ ¤ xO1£ ¤1P0£ ¤ 1O1£ ¤ r

より,

f x£ ¤x12

x2Px£ ¤pP x2P1£ ¤qO12

x2Ox£ ¤r

f´ x£ ¤x xP12Ã ÄpP2xqO xO

12Ã Är

T xP12Ã Äp O 2xq O xO

12Ã Är

T xP12O 2x O xO

12T4

(x の値で場合を分けて確認できる)

⑵ aPbOcxp ,cxq ,aObOcxr より

g P1£ ¤xaPbOcxp ,

g 0£ ¤xax12

pP2qOr£ ¤ ,

g 1£ ¤xaObOcxr

g x£ ¤xxP1£ ¤ xP0£ ¤

P1P1£ ¤ P1P0£ ¤ g P1£ ¤

OxO1£ ¤ xP1£ ¤

0O1£ ¤ 0P1£ ¤ g 0£ ¤

OxP0£ ¤ xO1£ ¤

1P0£ ¤ 1O1£ ¤ g 1£ ¤

より

g x£ ¤x12

x2Px£ ¤pP x2P1£ ¤

@12

pP2qOr£ ¤O12

x2Ox£ ¤r

x P12

xO12Ã ÄpO x 2P1£ ¤q O

12

xO12Ã Är

g x£ ¤x P12

xO12Ã ÄpOx2P1£ ¤qO

12

xO12Ã Är

TP12

xO12O x 2P1O

12

xO12

x12

1PxO 1Px2O12

1Ox

T12

1Px£ ¤O 1Px 2£ ¤O12

1Ox£ ¤

x2Px 2

よって,x T1 のとき,1T g x£ ¤T2 である。■

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◆第8回 解答◆ p.17

⑴ p ,q が素数であるから,次の同値関係

が成り立つ。

自然数n がpq と互いに素ではない。

, n はp またはq を素因数にもつ。

, n はp またはq の倍数である。……(*)

次のように集合を定める。

Ax {pq 以下の自然数},

Px {pq 以下のp の正の倍数},

Qx {pq 以下のq の正の倍数}

このとき,p ,q が異なる素数なので互いに素

であることから,

P?Qx {pq 以下のpq の正の倍数}である。

また,各集合の要素の個数は,

#Axpq ,#Pxq ,#Qxp ,# P?Q£ ¤x1

である。(ここで,一般に有限集合S に対して,

#S はS の要素の個数を表す。)

(*)から,pq 以下の自然数でpq と互いに素な

ものからなる集合は,全体集合をA として,

P>Q の補集合 (図の斜線部) であるから,

f pq£ ¤x#AP# P>Q£ ¤

xpqP pOqP1£ ¤

x pP1£ ¤ qP1£ ¤……(答)

⑵ p ,q ,r が素数であるから, 1£ ¤と同様に考

えて,次の同値関係が成り立つ。

自然数n がpqr と互いに素ではない。

, n はp またはq またはr の倍数である。

……(**)

今,次の集合を考える。

Ax {pqr 以下の自然数},

Px {pqr 以下のp の正の倍数},

Qx {pqr 以下のq の正の倍数},

Rx {pqr 以下のr の正の倍数}

このときp ,q ,r が相異なる素数なのでどの

2 つも互いに素であることから,

P?Qx {pq の正の倍数でpqr 以下の数},

Q?Rx {qr の正の倍数でpqr 以下の数},

R?Px {rp の正の倍数でpqr 以下の数},

P?Q?Rx {pqr の正の倍数でpqr 以下の数}

である。また,各集合の要素の個数は,

#Axpqr ,#Pxqr ,#Qxrp ,#Rxpq ,

# P?Q£ ¤xr ,# Q?R£ ¤xp ,

# R?P£ ¤xq ,# P?Q?R£ ¤x1

である。

(**)から,pqr 以下の自然数でpqr と互いに素

なものからなる集合は,全体集合をA として,

P>Q>R の補集合であるから,

f pqr£ ¤x#AP# P>Q>R£ ¤

xpqrP qrOrpOpqPrPpPqO1£ ¤

xpqrPpqPqrPrpOpOqOrP1

x pP1£ ¤ qP1£ ¤ rP1£ ¤ ……(答)

⑶ p が素数であるから,pa以下の自然数n

がpaと互いに素であるための条件はn がp で

割り切れないこと,すなわちn がp の倍数では

ないことである。

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pa以下のp の正の倍数の個数は,p aP1

である

から,

f p a£ ¤xp aPp aP1 xpa 1P1p

Ã Ä ……(答)

⑴ 【) の証明】

c とa が互いに素ではないとすると,

cxdc´ ,axda´

となる整数d U2£ ¤,c´ ,a が存在して,c と

ab が互いに素であることに矛盾する。c とb

が互いに素ではないとしても同様に矛盾。ゆえ

に,c とa は互いに素かつc とb は互いに素で

ある。

【( の証明】

c とab が互いに素ではないとすると,

cxpc´ かつabxpq

となる素数p と整数c´ ,q が存在する。p は

素数なので,a とb の少なくとも 一方はp を

因数にもつ。これはc がa と互いに素かつc が

b と互いに素であることに反する。ゆえに,c

とab は互いに素である。

⑵【) の証明】

k とb が互いに素でないとすると,

kxdk´,bxdb´

となる自然数d U2£ ¤,k´,b´ がある。すると,

kOmbxd k´Omb´£ ¤となり,kOmb とb

が互いに素であることに反する。ゆえに,k と

b は互いに素である。

【( の証明】

kOmb とb が互いに素ではないとすると,

kOmbxdl ,bxdb´

となる自然数d U2£ ¤,l ,b´ が存在する。す

ると,kxd lPmb´£ ¤となり,k とb が互いに

素であることに反する。ゆえに,kOmb とb は

互いに素である。

【別証明】

kOmbxmbOk から,互除法により

kOmb, b£ ¤x b, k£ ¤ である。

2 数が互いに素であることと2 数の最大公約

数が1 であることは同値なので,

「kOmb とb が互いに素

, k とb が互いに素 」

である。

⑶ ⑴から,ab 以下の自然数のうち,a と互い

に素かつb と互いに素な自然数の個数を求め

るとよい。

[ア] ⑵から,上の表中の数(ab 以下の自然

数)で,b と互いに素な数はb と互いに素なk

に対して,k を含む縦の列の数のすべてに限る。

このような列はちょうどf b£ ¤個ある。

[イ] 任意の自然数k を固定するごとに,k ,

kOb ,kO2b ,……,kO aP1£ ¤b のa 個

の数をa で割った余りは,すべて異なり(順序

を無視して)0 からaP1 までの数がすべて1

個ずつ現れる。すなわち,表の各列の中にはa

と互いに素な数がちょうどf a£ ¤個ある。

[ア],[イ]より,表中の数で,b と互いに素か

つa と互いに素な数はf a£ ¤f b£ ¤個ある。ゆえに

f ab£ ¤xf a£ ¤f b£ ¤ となる。 ■

… … … … … … … … … … … … … …

… …

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⑶ 次いで, ⑶ を用いると,

[ア] 表中の数( 以下の自然数)で, で

割って 余る数は,

の形の数に限る(明らか)。

[イ] 任意の自然数 を固定するごとに,

, , ,……,

の 個の数を で割った余りは,すべて異なり

(順序を無視して) から までの数がす

べて 個ずつ現れる。すなわち,表の各列の中

には で割って 余る数はただ つ存在する。

[ア],[イ]より,表中の数で, で割って 余り,

で割って 余るような数で がただ つ存在

する。 ■

2 1

f n£ ¤xf p a£ ¤f q b£ ¤……f r c£ ¤

xpa 1P1p

Ã Ä @ qb 1P1q

Ã Ä @ …… @ rc 1P1r

à Ä

xn 1P1p

Ã Ä 1P1q

à ą… 1P1r

à Ä

ab b

s

sOkb kx1, 2, …, aP1£ ¤

k

k kOb kO2b kO aP1£ ¤b

a a

0 aP1

1

a r 1

a r

b s ab 1

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■著者紹介

本庄 隆(ほんじょう たかし)

大阪桐蔭高等学校 客員講師

東進ハイスクール 東大特進コース講師

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難関大学入試対策難関大学入試対策難関大学入試対策難関大学入試対策 整数特別講座「整数の本質」整数特別講座「整数の本質」整数特別講座「整数の本質」整数特別講座「整数の本質」 平成23年5月20日発行

著作者 本庄 隆

編 集 東京書籍株式会社 高校数学編集部

発行者 東京書籍株式会社 川畑 慈範

発行所 東京書籍株式会社 東京都北区堀船 2-17-1 〒114-8524