道路整備における費用・便益分析 ·...

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17 1.はじめに 道路整備における便益の計測に際しては、①道路整備により道路交通サービス利用者全員が得 る便益(発生ベースの便益)、②道路整備の一般均衡論的波及を考慮した上で各経済主体に最終 的に及ぶ便益の総計(帰着ベースの便益)、これら方法のどちらかで計測するのが一般的である。 発生ベースの便益は直接効果とも呼ばれているが、これは道路交通サービスの1単位当たり の一般化費用(金銭的な費用のほかに時間費用を金額換算したものを含めて定義される)の低 下に伴う道路交通サービス利用者の消費者余剰の変化分で計測される。 道路交通サービスはそれ自体が需要の目的ではなく、生産物の生産地から消費地への輸送と か、街に買い物に行くための移動などのように、本来の目的を達成するための派生的な需要で あることが多い。この場合には、便益の最終的な帰着先を見極め、それらが享受する便益を確 定しなければならない。例えば、道路投資によって発着地間の輸送時間が短縮され、その結果 トラック輸送の一般化費用が低下した場合を考えてみると、このことから直接に便益を受ける のは、道路交通サービスを需要するトラック輸送業者である。しかしながら、道路投資の一般 均衡論的波及を経て、輸送される生産物の消費者価格(購入者価格)が低下すれば、消費者は そのことにより利益を受ける。こうした消費者価格の低下が需要を増やし、その結果生産物の 生産者価格が上昇すれば、生産者も利益を得る。このようなときには、消費者、生産者それぞ れが得る消費者余剰、生産者余剰の合計で道路投資の便益を計測するのが自然であろう。 本稿の末に掲げている「付録」 1で証明されているように、あらゆる市場に歪み(distortionがなければ、道路整備の便益を発生ベースと帰着ベースのどちらで計っても同じである。両者 は言わばコインの表と裏の関係にある。しかしながら、どこかの市場に歪みがある場合には、 この同値関係は成立しなくなる 2発生ベースでの便益計測の場合、道路交通サービス需要曲線を推計することで事足りるので、 実証分析のためには非常に便利であるが、それが理論的に正当化されるのはすべての市場に歪 みがない場合に限られる。現実には、市場に歪みをもたらす様々な要因が存在している。企業 や政府が限界費用価格形成原理に従って価格付けをしていない場合、政府により一括固定額税 道路整備における費用・便益分析 ガソリン税を考慮した場合-貝山 道路整備における費用・便益分析 ―ガソリン税を考慮した場合― 貝 山 道 博 (人文学部 法経政策学科)

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Page 1: 道路整備における費用・便益分析 · る便益(発生ベースの便益)、②道路整備の一般均衡論的波及を考慮した上で各経済主体に最終

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1.はじめに

道路整備における便益の計測に際しては、①道路整備により道路交通サービス利用者全員が得

る便益(発生ベースの便益)、②道路整備の一般均衡論的波及を考慮した上で各経済主体に最終

的に及ぶ便益の総計(帰着ベースの便益)、これら方法のどちらかで計測するのが一般的である。

発生ベースの便益は直接効果とも呼ばれているが、これは道路交通サービスの1単位当たり

の一般化費用(金銭的な費用のほかに時間費用を金額換算したものを含めて定義される)の低

下に伴う道路交通サービス利用者の消費者余剰の変化分で計測される。

道路交通サービスはそれ自体が需要の目的ではなく、生産物の生産地から消費地への輸送と

か、街に買い物に行くための移動などのように、本来の目的を達成するための派生的な需要で

あることが多い。この場合には、便益の最終的な帰着先を見極め、それらが享受する便益を確

定しなければならない。例えば、道路投資によって発着地間の輸送時間が短縮され、その結果

トラック輸送の一般化費用が低下した場合を考えてみると、このことから直接に便益を受ける

のは、道路交通サービスを需要するトラック輸送業者である。しかしながら、道路投資の一般

均衡論的波及を経て、輸送される生産物の消費者価格(購入者価格)が低下すれば、消費者は

そのことにより利益を受ける。こうした消費者価格の低下が需要を増やし、その結果生産物の

生産者価格が上昇すれば、生産者も利益を得る。このようなときには、消費者、生産者それぞ

れが得る消費者余剰、生産者余剰の合計で道路投資の便益を計測するのが自然であろう。

本稿の末に掲げている「付録」1)で証明されているように、あらゆる市場に歪み(distortion)

がなければ、道路整備の便益を発生ベースと帰着ベースのどちらで計っても同じである。両者

は言わばコインの表と裏の関係にある。しかしながら、どこかの市場に歪みがある場合には、

この同値関係は成立しなくなる2)。

発生ベースでの便益計測の場合、道路交通サービス需要曲線を推計することで事足りるので、

実証分析のためには非常に便利であるが、それが理論的に正当化されるのはすべての市場に歪

みがない場合に限られる。現実には、市場に歪みをもたらす様々な要因が存在している。企業

や政府が限界費用価格形成原理に従って価格付けをしていない場合、政府により一括固定額税

道路整備における費用・便益分析 ―ガソリン税を考慮した場合―-貝山

道路整備における費用・便益分析―ガソリン税を考慮した場合―

貝 山 道 博(人文学部 法経政策学科)

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以外の課税がなされている場合などがそれに相当する。このようなときには、帰着ベースの便

益計測に頼らなければならない。

本稿の目的は、ガソリン税を考慮した場合の高速道路整備の費用・便益の計測方法を明らか

にすることである。これまで、貝山(1993)の第6・8章、貝山(1996)および貝山(2003)

において、企業や政府が限界費用価格形成原理に従って価格付けをしていない場合を含む、い

くつかの市場に歪みをもたらす要因を持つ経済における道路整備の便益の計測方法が提示され

てきた 3)。ここでは、ガソリン税という新たな歪みをもたらす要因を追加導入した場合の計測

方法について論じることにする。

2.理論モデル

我々が想定する経済には、個人、合成財を生産・供給する企業、無料と有料の2種類の道路

交通サービスを供給する政府の3つの経済主体が存在している。個人は合成財、2種類の道路

交通サービスおよび余暇を需要し、消費する。合成財生産企業(以下単に企業と言う)は労働

サービスおよび2種類の道路交通サービスを投入し、合成財を産出する。また、企業が得た利

潤はすべて株主である個人に分配される。政府は高速道路交通サービス市場では料金を課し、

一般道路交通サービス市場では料金を課さないが、それぞれの道路交通サービスを利用する際

に必要な合成財(ガソリン)の費消に対し税金(ガソリン税)を課す。政府は得たあらゆる収

入を個人に分配する。

以下、各経済主体の行動について詳述する。

[1]個人

個人の効用関数は次の通りである。

(1)U=U(C,T1c,T2

c,R)

ここで、

U:個人の効用水準

C:個人の合成財消費量

T1c:個人の高速道路交通サービス1の消費量

T2c:個人の一般道路交通サービス2の消費量

R:個人の余暇時間

また、個人の予算制約式と時間制約式は次のように示される。

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予算制約式:

(2)C+{ r1+(1+g)q1 }T1c+(1+g)q2 T2

c≦ wLS+П+G

ここでは合成財をニュメレールにとり、その価格を1としている。記号の意味は次の通り。

r 1:高速道路交通サービス1単位当たりの料金(一定)

q 1:高速道路交通サービスを1単位利用するのに必要な合成財の費消量

g :ガソリン税率(一定)

q2:一般道路交通サービスを1単位利用するのに必要な合成財の費消量

w:賃金率(1時間当たり賃金/人)

L S:個人の労働供給時間

П:個人が企業から配当される利潤(利潤は全て配当されるものとする)

G:政府から個人に配分される一括補助金(政府が得た高速道路料金収入及びガソリン税

収入は全て個人に配分されるものとする)

時間制約式:

(3)t 1T 1c+ t 2T 2

c+R+LS ≦ H

ここで、

t 1:高速道路交通サービス利用量1単位当たりの所要時間

t 2:一般道路交通サービス利用量1単位当たりの所要時間

H:個人の総利用可能時間(一定)

個人は、予算制約式(2)、時間制約式(3)および r 1、g、q 1、t 1、q 2、t 2、w、П、Gおよ

びHが所与という制約の下で、効用関数(1)を最大にするようなC、T 1c、T 2

c、L SおよびR

を決定するように行動する。この問題を解くために以下のようにラグランジュ関数を定義する。

X=U(C,T1c,T2

c,R)+λ[wLS+П+G-C-{ r 1+(1+g)q 1}T1c-(1+g)q 2 T2

c]

+μ(H-t 1T1c- t 2T2

c-R-LS)

これをC、T 1c、T 2

c、LSおよびRについて偏微分してゼロと置くことにより、次の式を得る。

∂X/∂C=∂U/∂C-λ= 0

∂X/∂T1c=∂U/∂T1

c-λ{ r 1+(1+g)q 1}-μt 1= 0

∂X/∂T2c=∂U/∂T2

c-λ(1+g)q 2-μt 2= 0

∂X/∂R=∂U/∂R-μ= 0

∂X/∂LS=λw-μ= 0

これらを整理することにより、効用最大化条件として次の式を得ることができる4)。

(4)(∂U/∂T 1c)/(∂U/∂C )= r 1+( 1+g )q 1+ w t 1

(5)(∂U/∂T 2c)/(∂U/∂C )=( 1+g )q 2+ w t 2

道路整備における費用・便益分析 ―ガソリン税を考慮した場合―-貝山

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[2]企業

企業の生産関数は次のように表されるものとする 5)。

(6)Q = F( L*d,T1

F,T2F)、ただし L*

d= Ld- t 1T1F- t 2T2

F

ここで、

Q:企業の合成財生産量

L*d:企業の直接労働投入時間

T1F:企業の高速道路交通サービス利用量

T2F:企業の一般道路交通サービス利用量

Ld:企業の雇用労働時間

この企業の利潤は次のように定義される。

(7)П= Q-wLd-{ r 1+( 1+g )q1}T1F-( 1+g )q2T2

F

ここで、

П:企業の利潤

この企業が利潤最大化行動をとるとすれば、生産関数(6)および t 1、r 1、q 1、t 2、r 2、q 2

およびwは所与という制約の下で、利潤(7)を最大にするような Q、L d、L *d、T1

Fおよび

T2Fを決定することになる。このとき、利潤最大化条件は以下のように表される。

(8)∂F/∂L*d= w

(9)∂F/∂T1F= r 1+( 1+g )q1+ w t 1

(10)∂F/∂T2F=( 1+g )q2+ w t 2

[3]政府

政府は高速道路利用者から利用料金を徴収し、それを個人に分配する。また、ガソリン税収

入も個人に分配する。それゆえ、次の関係式が成り立つ。なお、簡単化のため、道路の維持・

管理費用はゼロとする 6)。

(11)r 1( T1C+T1

F)+g( q1 T1C+q2 T2

C+q1 T1F+q2 T2

F)= G

3.交通施設整備の便益

いま高速道路交通サービスを供給する高速道路が整備され、その結果この高速道路交通サー

ビス利用量1単位当たりの所要時間 t 1が短縮されたとする。これが直接的には高速道路交通サ

ービスの一般化価格 p1(= r 1+( 1+g )q 1+ w t 1)を低下させ、高速道路交通サービスに対す

る需要を増加させる。その一部は相対的に高くなった一般道路交通サービスに対する需要から

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のシフトであろう。これは一般道路交通サービスに対する需要を減少させ、一般道路での混雑

を緩和させるように作用するであろう。一般道路での混雑の緩和は一般道路交通サービス利用

量1単位当たりの所要時間 t 2 を短縮させ、ひいては一般道路交通サービスを1単位利用する際

に費消する合成財の量 q2を減少させよう。このことが一般道路交通サービスの一般化価格

p 2(=( 1+g )q 2+ w t 2)を低下させ、高速道路交通サービス市場にシフトした交通サービス需

要量を一部取り戻すことになる。高速道路交通サービス市場と一般道路交通サービス市場との

間でこうしたやり取りが繰り返され、最終的には、どの市場でも道路交通サービス需要量も、

またその価格も変化しない一般均衡状態が再び確立されるであろう。

言うまでもなく、高速道路交通サービス市場で生じたこうした変化は、一般道路交通サービ

ス市場だけではなく、それ以外の市場、合成財市場や労働市場にも波及していく。それゆえ、

新しい均衡状態では、あらゆる市場価格が新しい均衡水準に変化し、したがって均衡取引量も

変化するものと思わなければならない。

このような一般均衡的波及を考慮した場合、高速道路整備の便益をどのように計測すればよ

いのであろうか。それがここでの問題である。

高速道路整備により個人の最大効用水準も変化するが、ここではその変化分を金額換算した

もの、モデルに即して言えば、合成財で測ったものを高速道路整備の便益Bと定義する 7)。す

なわち、

(12)B = dU/(∂U/∂C)= dU/λ

ここで、λは先に定義したラグランジュ関数の未定乗数で、所得の限界効用と解釈される。

まず、(1)を全微分して(12)に代入すると、次式を得る。

(13)B =(1/λ)・{(∂U/∂C)dC+(∂U/∂T1c)dT1

c+(∂U/∂T2c)dT2

c+(∂U/∂R)dR }

次に、(13)に効用最大化条件として得られる次式を代入する。

λ=∂U/∂C=(∂U/∂T1c)/{ r1+( 1 + g )q1+wt1}=(∂U/∂T2

c)/{( 1+g )q2+wt2}

=(∂U/∂R)/ w

その結果は以下のようになる。

(14)B=dC+{ r1+( 1 + g )q1+wt1}dT1c+{( 1+g )q2+ wt2}dT2

c+wdR

さらに、(14)に時間制約式(3)の不等号をとって全微分した次の式、

dR =-T1c dt1- t1dT1

c-T2c dt2- t2dT2

c-dLs

を代入すると、以下のようになる。

(15)B=dC+{ r1+( 1+g )q1+wt1}dT1c+{( 1+g )q2+ wt2}dT2

c

-wT1cdt1-wt1dT1

c-wT2c dt2-wt2dT2

c-w dLs

加えて、合成財需給均衡式、

(16)C+q1( T1c+T1

F)+q2( T2c+T2

F)= Q

道路整備における費用・便益分析 ―ガソリン税を考慮した場合―-貝山

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労働サービス需給均衡式、

(17)Ld=Ls

および、高速道路、一般道路の各交通サービスの総利用量 T1、T2の定義式、

(18)T1c+T1

F= T1

(19)T2c+T2

F= T2

をそれぞれ全微分した式、

dC=dQ-(T1c+T1

F)dq1-q1(dT1c+dT1

F)-(T2c+T2

F)dq2-q2(dT2c+ dT2

F)

dLs=dLd

dT1c= dT1-dT1

F

dT2c= dT2-dT2

F

を(15)に代入すると以下の式を得ることができる。

(20)B =[dQ-w dLd-{ r1+( 1+g )q1}dT1F-T1

F( 1+g )dq1

-( 1+g )q2 dT2F-T2

F( 1+g )dq2]

+[ r1dT1+g{ d(q1T1)+d(q2 T2)}]

-[{( 1+g )dq1+w dt1}T1c+{( 1+g )dq2+w dt2}T2

c ]

= dП|w=const.+dG-( T1c・dp1|w=const.+T2

c・dp2|w=const.)

ここで、仮定により、r1は高速道路整備に関わらず一定であるから、dr1= 0となることに注意

せよ。

(20)の右辺の解釈は容易である。第1項は高速道路整備以前の賃金率wで評価したときの

企業の利潤の変化分である 8)。第2項は政府の道路料金収入及びガソリン税収入の変化分であ

る。ただし、これについてはwが直接絡んでこないから、高速道路整備以前の賃金率wで評価

するという但し書きを付ける必要がない。第3項は次のように解釈できる。すなわち、時間評

価値として高速道路整備以前の賃金率wを使った場合、高速道路整備以前と同じ量だけ各道路

交通サービスを利用したとしたら、個人は全体でどれだけ一般化費用を節約できるかを表して

いる。

(20)を得るにあたって、利潤最大化条件を一切使ってはいない。それゆえ、価格体系を歪

ませるような行動を合成財生産企業がとった場合でも、(20)は成立することに注意しなければ

ならない。また、高速道路が整備されたという想定の下で便益を計測したが、その結果高速道

路交通サービスの一般化価格のみならず、一般道路交通サービスの一般化価格も変化するから、

因果関係が逆でもこの議論は成り立つことにも注意しなければならない 9)。一般道路が混雑し

ておらず、従って、一般道路交通サービスの一般化価格が高速道路整備により変化しなければ、

T 2c・dp2|w=const.=0となるから、個人が高速道路整備から得る便益は道路整備が行われた当

該交通市場、すなわち、高速道路交通サービス市場でのみ発生することになる。

山形大学紀要(社会科学)第40巻第1号

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かくして、次の命題を得る。

企業がプライス・テイカーとして利潤最大化行動をとっている場合、言い換えれば、限界費

用価格形成原理に従って価格付けがなされている場合、先の命題はどのように変更されるだろ

うか。このとき、なお3種類の価格の歪みが存在することになる。言うまでもなく、それらの

うち2つは道路交通サービス市場に存在する。というのは、政府は高速道路交通サービスにつ

いてはその限界費用に関係なく一定の道路料金を課しており、一般道路交通サービスについて

は料金を徴収していない(あるいは、ゼロの料金を課している)からである。最後の一つはガ

ソリン税である。

(7)に(6)を代入して全微分し、利潤最大化条件(8)~(10)を利用すると次式を得

る。

(21)dQ-w dLd-{ r 1+( 1+g )q 1}dT1F-( 1+g )T1

F dq1-( 1+g )q2 dT2F-

( 1+g )T2Fdq2

=-[{( 1+g )dq 1+ w dt1}T1F+{( 1+g )dq2+w dt2}T2

F ]

それゆえ、この場合(20)は次のように書き換えられる。

(22)B=-[{( 1+g )dq 1+ w dt1}T1F+{( 1+g )dq2+w dt2}T2

F ]

+[ r1dT1+g{ d( q1 T1)+d(q2 T2)}]

-[{( 1+g )dq 1+ w dt1}T1C+{( 1+g )dq2+w dt2}T2

C ]

=dG-( T1・dp1|w=const.+T2・dp2|w=const.)

かくして、次の命題を得る。

道路整備における費用・便益分析 ―ガソリン税を考慮した場合―-貝山

命題1:どの道路についても非効率的な固定的料金が課せられている場合

道路交通サービス市場だけでなく、合成財市場にも価格体系に歪みがある経

済では、道路整備の便益は次の公式により計測できる。

道路整備の便益

= 整備前の賃金率で評価した企業の利潤の変化分

政府の高速道路料金収入及びガソリン税収入の変化分の合計

整備前と同じ道路交通サービスを需要したとしたときの、

整備前の賃金率で評価した個人の各道路交通サービスに

ついての一般化費用の節約分の合計

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4.便益・費用の計測

ここでは、命題2に従った場合における高速道路整備における費用・便益分析のための費用

と便益の計測方法を説明する。高速道路整備プロジェクト全体の費用は、建設期間中の各年の

用地取得費用を除く建設費用(投資費用)の現在価値の総和である。その全体の便益は、当該

自動車道が供用される期間中の各年の

政府余剰

(=高速道路料金収入-高速道路及び一般道路の維持・管理費用+ガソリン税収入)、

個人及び企業が高速道路を利用する際に要する一般化費用

(=高速道路料金+時間費用+税込みガソリン費消額)、

個人及び企業が一般道路を利用する際に要する一般化費用

(=時間費用+税込みガソリン費消額)、

それぞれについての変化分の現在価値の総和ということになる。

実際の便益の計測にあたっては、高速道路が整備されても一般道路の維持・管理費用が変わ

らないと想定して、まずは高速道路が整備されたことによる旧高速道路公団の余剰(=整備さ

れた高速道路の高速道路料金収入-当該道路の維持・管理費用)を計算する。次に、ガソリン

税収入の高速道路整備前後の差額を計算する。一般化費用に関しては、各ODペアーの交通量

が整備前後で変わらないという想定のもとに、各ODペアーについて、一般道路から高速道路

に転換しない交通については、整備前の一般道路の一般化費用から整備後のそれを差し引き、

山形大学紀要(社会科学)第40巻第1号

命題2:どの道路についても非効率的な固定的料金が課せられている場合

企業が限界費用価格形成原理に基づいて行動しているが、どの道路料金もそ

れに基づいて設定されていない経済では、道路整備の便益は次の公式により

計測できる。

道路整備の便益

= 政府の高速道路料金収入及びガソリン税収入の変化分の合計

整備前と同じ道路交通トリップを行ったとしたときの

整備前の賃金率で評価した個人と企業の各道路交通サービスに

ついての一般化費用の節約分の総計

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それを便益とする(高速道路の整備により周辺の一般道路の混雑が緩和されない場合にはゼロ)。

一般道路から高速道路に転換する交通については、整備前の一般道路の一般化費用から整備後

の高速道路の一般化費用を差し引き、それを便益とする。

ここで、一つの適用事例を紹介する。対象路線は、磐越自動車道いわきJCT・会津坂下区間

である。この区間は昭和53年に建設を開始し、平成7年で終了している。供用期間は完成後30

年間と想定する。価格はすべて平成12年価格で、費用・便益等の現在価値の計算の際には、

4%の割引率を適用する 10)。

結果は以下の通りである。

<採算性>

建設費用A=8,518億円

維持管理費用B=1,193億円

建設・維持管理費用合計C=9,711億円

高速道路料金収入D=3,377億円

高速道路公団収支E(=D-C)=-6,334億円

<経済性>

建設・維持管理費用合計C=9,711億円

高速道路料金収入D=3,377億円

対象区間外高速道路料金収入増F=451億円

ガソリン税収増G=-25億円

高速道路利用者一般化費用節約額H=13,017億円

便益 I(=D+F+G+H )=16,820億円

純便益 J(=I-C )=7,109億円

費用・便益比率 K(=I/C )=1.73

5.むすび

これまで見てきたように、道路整備の便益はそれが帰着する先の便益の総計で図るのが正当

であるが、どの市場にも歪みがない場合には、道路交通サービス市場で発生する便益で計測す

ることもできる。その場合には、帰着ベースの便益と発生ベースの便益が等しくなるからであ

る。

しかしながら、どこかの市場に歪みが存在する場合には、道路整備の便益は、発生ベース便

益の一部と帰着ベース便益の一部を加味したものになる。その際、帰着ベース便益に加味され

道路整備における費用・便益分析 ―ガソリン税を考慮した場合―-貝山

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るべきものは、市場に歪みをもたらす要因に直接関係する経済主体が得る帰着ベースの便益で

ある。例えば、企業が限界費用価格形成原理に従った行動をとっていなければ、その企業の利

潤の変化分を付け加えなければならない。ただし、そのときには、企業が享受する発生ベース

の便益をカウントしてはならない。二重計算になるからである。また、政府は往々にしてそう

した行動をとらないので、そのときには、政府の帰着ベース便益である政府余剰の変化分や税

収の変化分を加えなければならない。

道路整備便益の実際の計測にあたって注意しなければならないのは、便益計測用モデルにど

れだけの歪みあるいは歪みをもたらす要因がビルトインされているかを見極めることである。

現実の経済は多くの歪みあるいは歪みをもたらす要因を含んでいる。現実の経済を正確に描写

するモデルが理想ではあるが、そうしたモデルの構築自体が事実上不可能である。それゆえ、

実際便益を計測するためには、どうしても外せない歪みのみを考慮してモデルを構築せざるを

得ない。その結果、計測された便益は、真に正しい便益よりも過大あるいは過小となってしま

うかもしれないが、これは真に正確なシミュレーションはありえないことと同レベルの問題で

ある。しかしながら、このバイアスがどちらの方向にあるのか、その大きさはどの程度ものに

なるのかは今後に残された検討課題である。今の段階で確実に言えるのは、きちんと理論に裏

付けられた方法で道路整備の便益を計測しなければならないということである。

付録:交通施設整備がもたらす発生ベース便益と帰着ベース便益との関係

モデル

労働サービスを投入して消費財を産出する企業を考える。この企業は生産された消費財を市

場(消費者が居住している地域)に輸送する。その輸送コストは輸送の途中で輸送される消費

財の一定割合が昇華するという形で発生する。企業は利潤をすべて株主に配当する。

消費者は消費財と余暇を消費する。そのための所得は企業に労働サービスを提供して得る賃

金所得と企業からの配当所得からなる(消費者は労働者でもあり、株主でもある)。このとき、

余暇時間は一定の利用可能時間から労働時間を差し引いたものになる。簡単化のため、消費者

の市場へのアクセスは何のコストも要しないものとする。

道路や鉄道といった交通施設の整備効果は、企業が消費財を市場に輸送するときに失われる

割合の低下として現れる。このとき、発生ベースで交通施設整備便益をとらえれば、企業の総

輸送コストの減少となる。また、帰着ベースでそれをとらえれば、消費財1単位当りの輸送コ

ストの低下がもたらす消費者価格の下落による消費者余剰の増加と生産者価格の上昇による生

産者余剰の増加(=利潤の増加)の合計となる。どの市場にも歪みあるいは歪みをもたらす要

山形大学紀要(社会科学)第40巻第1号

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因がなければ、両者は一致する。

[1]消費者

消費者の効用関数を

u(C,R)

とする。ここで、Cは消費財の消費量、Rは余暇時間を表す。この消費者の予算制約式、時間

制約式はそれぞれ次のように表される。

pC wLS+Π

LS+R T

ここで、pは消費財の(購入)価格、wは賃金率(1人当たり時間給)、L Sは労働時間、Tは利

用可能時間(一定)を表す。これら2つの制約式を1つにまとめると次のようになる。

pC+wR wT+Π≡Y

消費者はプライス・テイカーとして、上の制約式の下で効用関数を最大にするように行動す

る。

この結果、次のような消費財、余暇の需要関数を得る。

C*=C( p,w,Y )

R*=R( p,w,Y )

これらを効用関数に代入すると、次のような間接効用関数を得ることができる。

V*=u{C( p,w,Y ),R( p,w,Y )}≡ V( p,w,Y )

このとき、Roy の定理より、

交通施設整備が行われれば、その波及が各財・サービス市場に及び、あらゆる財・サービス

の価格が変化する。その結果、消費者の最大効用水準V*がdV*だけ変化したとすると、それを

金額表示したものBが交通施設整備の便益となる。すなわち、

Royの定理より、

=-C* dp - R* dw + dY

=-C* dp - R* dw + Tdw + dΠ

=-C* dp + L*s dw + dΠ

道路整備における費用・便益分析 ―ガソリン税を考慮した場合―-貝山

=-λ* C*, =-λ* R*, =λ*∂V

∂p

∂V

∂w

∂V

∂Y

B =dV*

λ*

B =   ( dp +   dw +   dY )1

λ*

∂V

∂p

∂V

∂w

∂V

∂Y

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を得る。これは次のように解釈される。交通施設整備の便益は次の3つから構成される。

①消費財市場における消費者余剰(需要者側の便益)の変化分-C*dp、

②消費財市場における生産者余剰(供給者側の便益)の変化分 dΠ、

③労働市場における生産者余剰(供給者(=労働者)側の便益)の変化分 L*s dw。

これが交通施設整備便益のとらえ方の基本であるが、ここでは企業の行動について何も定めて

いないので、企業がどのような行動をとっても成り立つことに注意しなければならない。もち

ろん、企業が利潤最大化行動をとらず、その意味で市場に歪みが存在する場合でも成立する。

[2]企業

企業の生産関数を

Q= f( LD)

とする。企業は生産物をQだけ市場に輸送し、販売する。その輸送コストについては、輸送の

途中で100t%(0< t<1)だけ生産物が昇華すると想定する(簡単化のため、ここでは交通

施設として無料で利用できる一般道路を想定している)。このとき、企業の利潤Πは次のように

定義される。

Π= pQ - wL - ptQ = p( 1- t )f( LD)-wL

企業はプライス・テイカーとして、上記の利潤を最大にするように労働雇用量 L(と消費財

生産・供給量Q)を決定する。このとき、利潤最大化条件は、

p( 1- t )f '( LD)= w

となる。これより、次のような労働需要関数、消費財供給関数を得る。

L*D= LD( P,w;t )

Q*= Q( P,w;t )

企業の供給関数を限界費用関数として表すこともできる。生産関数の逆関数をとると、

LD= f-1( Q )

となるが、これを利用すると、費用関数は次のように表される。

X ≡ wLD+ ptQ = wf-1( Q )+ ptQ

=X(Q;P,w,t )

このとき、限界費用MCは、

と表されるから、消費財供給関数は、利潤最大化条件(価格=限界費用)を用いて、

P= MC= wf-1'( Q )+ pt

と表される。この式と先の利潤最大化条件が同値であることは明らか。

山形大学紀要(社会科学)第40巻第1号

MC=   = wf-1'( Q )+ pt∂X

∂Q

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[3]市場均衡

消費財及び労働サービスについての需給均衡式はそれぞれ次のように表される。

C*+ tQ*= Q*

L*D= L*

S

[4]交通施設整備の効果

<帰着ベース>

交通施設整備によって輸送コストが削減された場合の消費財市場における消費者余剰、生産

者余剰の変化分および労働市場における生産者余剰(供給者(=労働者)側の便益)の変化分

は、

B=-C*dp + L*s dw+ dΠ*

より計算できる。このとき、dΠ*は、

dΠ*= d{( 1- t )pQ*}-d(wL*D)=d{( 1- t )pQ*}- L*

D dw - wdL*D

となること、さらに労働サービスの需給均衡式を踏まえれば、上の式は

B=-C*dp + d{( 1- t )pQ*}- wL*D

と書き換えられる。これより、各余剰の変化分はそれぞれ次のように表される。

消費者余剰の変化分:ΔCS =-C*dp

生産者余剰の変化分:ΔPS= d{( 1- t )pQ*}- wdL*D

このとき、生産者余剰の変化分は、賃金率wが変化しないという想定の下での利潤の変化分と

解釈できる。すなわち、労働サービス市場への波及を考慮しないという「部分均衡分析」のも

とでの利潤の変化分である。

従って、交通施設整備の効果は輸送される財の市場での消費者余剰、生産者余剰それぞれの

変化分の合計で正確に計測できる。

<発生ベース>

B=-C*dp + d{( 1- t )pQ*}- wL*D

より、

B=-C*dp - pQ*dt +( 1- t )Q*dp+( 1- t )pdQ*- wL*D

このとき、利潤最大化条件から、

( 1- t )pdQ*- wdL*D=0

となること、消費財の需給均衡式から、

-C*dp +( 1- t )Q*dp=0

となること、これらを考慮すれば、総便益Bは最終的には次のように表される。

B=-pQ*dt

道路整備における費用・便益分析 ―ガソリン税を考慮した場合―-貝山

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これはまさしく輸送コストの変化分そのものである。従って、交通施設整備の効果は交通施設

を使う主体が直接受ける便益(輸送コストの削減分)で正確に計測することができる。

1)付録は拙著「経済学への誘い:費用便益分析を例として」(埼玉大学総合研究機構技術部『第17回技

術部研修発表会報告集』2006年9月)の一部を書き直したものである。

2)先に述べたように、発生ベースの便益は直接効果とも呼ばれるが、どの市場にも歪みがないときには、

これのみで便益を計測できる。しかしながら、どこかの市場に歪みがある場合には、道路整備により引

き起こされる当該道路交通サービス市場の変化が他市場に及ぼす影響である一般均衡論的波及効果、す

なわち間接効果あるいは波及効果と呼ばれるものはキャンセルアウトされずに残ってしまう。それゆえ、

発生ベースの便益と帰着ベースの便益の同値・非同値関係は、このような間接効果あるいは波及効果の

有無に置き換えることもできる。

3)貝山(1993)の第6章では、歪みをもたらす要因として、無料の道路のほかに、企業の独占行動およ

び所得税を導入しており、貝山(1996)では、無料と有料の道路および非完全競争的企業行動を導入し

ている。貝山(2003)では、無料の道路を前提として、企業が限界費用価格形成原理に従って行動する

場合と平均費用価格形成原理に従って行動する場合の道路整備便益計測の比較を行っている。

4)(4)と(5)の右辺はそれぞれ高速道路、一般道路交通サービスの一般化価格あるいは一般化費用と

呼ばれるものである。両式は各財・サービス間の限界代替率が相対価格に等しいとい通常の効用最大化

条件を表している。

5)このような生産関数の定式化は、森杉壽芳(編著)(1997)と同じものである。他にもいろいろな定

式化が考えられるが、道路整備の便益の計測のためにはこれで十分である。

6)道路の維持・管理費用を考慮するのであれば、それを交通サービス利用量に関係づけて導入すること

もできる。そのときには、政府余剰をあらゆる政府収入から道路の維持・管理費用を控除して定義すれ

ば事足りる。もちろん、合成財市場の需要サイドにそのための合成財費消量を加えなければならないが、

結論は変わらない。

7)これはMarshall=Dupuit流の消費者余剰と呼ばれる一般均衡論的尺度である。以下、これにより道路

整備の便益の計測を行うが、このことは暗黙のうちに微小な変化を前提にしていることを意味している。

そうでない場合には、これの積分値で評価を行わなければならないが、そのためには積分経路を定めな

ければならず、また、そのために効用関数型や生産関数型を特定化する必要がある。しかしながら、そ

うした場合であっても、結論の本質的な部分は何ら変わらない。

8)すなわち、一般道路が整備された場合でも、それが一般道路交通サービスの一般化価格はもとより、

山形大学紀要(社会科学)第40巻第1号

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高速道路交通サービスの一般化価格も変化するので、因果関係がどちらであっても構わない。

9)高速道路整備前の賃金率で評価してもよいことは、労働市場への波及を考慮しなくてもよいことを意

味している。このことは一般均衡論的波及があっても部分均衡論的な便益評価でよいことを示唆してい

る。

10)実際の計測にあたっての詳細については、国久・貝山・杉田(2006)を参照のこと。

参考文献

貝山道博(1993)『社会資本整備評価の理論:交通施設整備を中心として』、社会評論社

貝山道博(1996)「限界費用価格形成原理と平均費用価格形成原理-道路整備評価の比較」『社会科学論集』

(埼玉大学経済学会)87、1-5

貝山道博(2003)「交通施設整備の便益のとらえ方-歪みを持つ経済の場合を含む計測方法」『社会科学論

集』(埼玉大学経済学会)109、105-111

金本良嗣(1996)「交通投資の便益評価・消費者余剰アプローチ」『日交研シリーズA-201』、日本交通政

策研究会

金本良嗣(1997)『都市経済学』第10章、東洋経済新報社

金本良嗣・長尾重信(1997)「便益計測の基礎的考え方」『道路投資の社会的評価』(中村英夫編・道路投資

評価研究会)第5章、東洋経済新報社

Kono, T., Morisugi, H. and Yamada, M.(2002), “ Evaluation of a public project under a distorted spacial economy,”

(応用地域学会第16回研究発表大会発表論文)

国久荘太郎・貝山道博・杉田浩(2006)「国民経済的見地からみた地方部における高規格道路整備の費用負

担」((財)高速道路調査会『高速道路と自動車』第49巻第11号、20-30

Lesourne, J.(1975), Cost-Benefit Analysis and Economic Theory, North-Holland

Mohring, H.(1976), Transportation Economics, Ballinger Publishing Co.(藤岡明房・萩原清子監訳『交通経済

学』、勁草書房、1987年)

森杉壽芳(1995)「社会資本と便益評価」『都市と土地の経済学』(山田浩之・綿貫伸一郎・田淵隆俊編)第

10章、日本評論社

森杉壽芳(編著)(1997)『社会資本整備の便益評価-一般均衡論によるアプローチ』、日本交通政策研究会

研究双書12、勁草書房

常木淳(1989)「交通投資」『交通政策の経済学』(奥野正寛・篠原総一・金本良嗣編)第2章、日本経済新

聞社

道路整備における費用・便益分析 ―ガソリン税を考慮した場合―-貝山

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Summary of the paper, “Cost-Benefit Analysis of RoadConstruction in the Case of Introduction of Gasoline Tax”

Michihiro KAIYAMA

(Department of Law, Economics and Public Policy,

Faculty of Literature and Social Sciences)

In this paper, we analyze a method for measuring the benefit of road construction in the case of

introduction of gasoline tax.

We know well that the benefit of road construction can be equal to its direct effect if there is not any

distortion in the economy. Here the direct effect of road construction is defined by the sum of all user

benefits that are their travel cost savings realized by road construction.

However, if there is any distortion in a market, the benefit of road construction cannot be equal to its

direct effect. What is a proper measure in this case? The answers for this question are as follows:

In this case, we have to use the other measure for its benefit. If a firm does not behave in accordance

with marginal cost pricing rule(MCPR), in exchange for its direct benefit, we have to use the change of

producer’s surplus which the firm as a user of road enjoys from a road construction.

And also, there are many cases in the real world that a government will not make a price under

MCPR. In these cases, we have to use the change of government’s surplus as the benefit received by a

government from a road construction. We might list up some examples that a government will not accord

with MCPR as showed by zero or constant pricing on road and some non-optimal marginal taxes such as

gasoline tax except for lump sum tax. In these cases, we have to add the government’s surplus on the sum

of benefits enjoyed by all users such as consumers and producers from road construction.

山形大学紀要(社会科学)第40巻第1号