薬剤師の治験業務に関する意見交換会 (第12回)を終えて - …― 33 ― thpa....

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― 31 ― THPA. Vol, 62, No. 3(2013)197 薬剤師の治験業務に関する意見交換会 (第12回)を終えて 薬務薬制部臨床試験推進小委員会 <部会報告> 東京都病院薬剤師会(以下「都病薬」)薬務薬 制部臨床試験推進小委員会では,以下のとおり「薬 剤師の治験業務に関する意見交換会(第12回)」 を開催しました。 【日 時】平成25年2月2日(土) 午後1時~5時30分 【場 所】国立国際医療研究センター病院 国際医療協力部5階 大会議室 【テーマ】A.L.C.O.A. で乾杯!! 【内 容】 1 開催の挨拶 薬務薬制部臨床試験推進小委員会委員長 榎本有希子(日本大学板橋病院) 2 講演 ⑴医療機関における A.L.C.O.A. の現状と問 題点(参加者の意見) 磯貝博之 (東京医科大学八王子医療センター) ⑵ A.L.C.O.A. について 野村 剛 (欧州製薬団体連合会 EFPIA) 3 グループディスカッション 4 グループディスカッション結果と質問事項や 意見のまとめ/名刺と情報交換 5 グループディスカッション結果発表 6 総合討論 7 閉会の挨拶 薬務薬制部部長 奥山 清 (東京医科大学八王子医療センター) 本会には東京都内及び近県の病院薬剤師(委員 を含む)44名,欧州製薬団体連合会 EFPIA より 7名が参加し,上記講演後に5つのグループ (CRC:3グループ,事務局:2グループ)に 分かれて意見交換を行いました。参加された薬剤 師お二人と EFPIA の方より本会への参加記が寄 せられましたのでご紹介します。 日本医科大学付属病院 治験推進室 高瀬 知永 今回,平成25年2月2日開催の「薬剤師の治験 業務に関する意見交換会」に参加いたしました。 当院はベッド数899床の大学病院本院で,現在 CRC7名(看護師4名,臨床検査技師3名),事 写真1 開会の挨拶 榎本委員長 写真2 講演 磯貝委員

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THPA. Vol, 62, No. 3(2013)197

薬剤師の治験業務に関する意見交換会(第12回)を終えて

                               

                       薬務薬制部臨床試験推進小委員会

<部会報告>

 東京都病院薬剤師会(以下「都病薬」)薬務薬制部臨床試験推進小委員会では,以下のとおり「薬剤師の治験業務に関する意見交換会(第12回)」を開催しました。【日 時】平成25年2月2日(土)     午後1時~5時30分【場 所】国立国際医療研究センター病院     国際医療協力部5階 大会議室【テーマ】A.L.C.O.A. で乾杯!!【内 容】1 開催の挨拶  薬務薬制部臨床試験推進小委員会委員長�  榎本有希子(日本大学板橋病院)2 講演⑴医療機関におけるA.L.C.O.A. の現状と問題点(参加者の意見)  磯貝博之� (東京医科大学八王子医療センター)⑵A.L.C.O.A. について

    野村 剛� (欧州製薬団体連合会 EFPIA)3 グループディスカッション

4 グループディスカッション結果と質問事項や意見のまとめ/名刺と情報交換

5 グループディスカッション結果発表6 総合討論7 閉会の挨拶  薬務薬制部部長 奥山 清� (東京医科大学八王子医療センター)

 本会には東京都内及び近県の病院薬剤師(委員を含む)44名,欧州製薬団体連合会 EFPIA より7名が参加し,上記講演後に5つのグループ(CRC:3グループ,事務局:2グループ)に分かれて意見交換を行いました。参加された薬剤師お二人と EFPIA の方より本会への参加記が寄せられましたのでご紹介します。

 日本医科大学付属病院 治験推進室� 高瀬 知永 今回,平成25年2月2日開催の「薬剤師の治験業務に関する意見交換会」に参加いたしました。当院はベッド数899床の大学病院本院で,現在CRC7名(看護師4名,臨床検査技師3名),事

写真1 開会の挨拶 榎本委員長 写真2 講演 磯貝委員

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務局担当者2名(薬剤師)で治験業務に当たっています。この意見交換会には今回2回目の参加で,初参加は第5回だったと記憶しています。その頃は CRC2名,事務局2名の少人数で悪戦苦闘しながら業務に当たっていたなと思い出しつつ,初心に戻ったつもりで楽しみにしていました。本意見交換会は,主に,テーマに関する講演とグループディスカッションからなる会で,他施設の方,治験依頼者の担当者の方々と活発な意見交換となりました。その中で自分自身感じたことを中心に述べさせていただきます。 今回のテーマは「A.L.C.O.A. で乾杯!」ということです。最近は,治験活性化の国家政策によってドラッグラグが解消へ向かっていることから,当院でもグローバル治験の受託数が増えています。学会等でグローバル監査や,海外規制当局の調査を受けた報告・発表を聞いていくうちに,当院にも近い将来入ることもあると考え,ALCOAの基本原則を学ぶ目的で臨みました。ALCOAの用語自体は各学会誌をはじめ,治験依頼者の担当モニターの方との会話等,日常業務の中にも登場しており,大まかには内容を理解しているつもりでいました。ただし,医療機関としてALCOAを実践するのはとてもハードルが高いと頭の中では思っており,とても乾杯できるようなテーマではないなと,頭の中に疑問符が浮かびつつ意見交換会に参加しました。 テーマに関する講演は,医療機関側として東京医科大学八王子医療センターの磯貝先生より,事前に参加者から集めたアンケートについての報告がありました。各施設とも実践は手探りで,混乱していることが見受けられました。現状や抱えている問題点は皆様全く一緒で,意識の共有ができ

たと思います。治験依頼者側からは,欧州製薬団体連合(EFPIA)の代表としてALCOAタスクチームの野村氏より「ALCOAについて」ということで講演がありました。その中でも特に印象�深いのは,日本の規制当局の通知においてもALCOAの文字が出ているということに少なからず衝撃を受けました。日米欧3極の規制当局の担当者が交流をしているということで,その点はICH-GCP として当然のことなのだとも感じました。 グループディスカッションは,私は事務局のAグループに参加し,先の2つの講演を参考にして参加者の方々と議論を交わしました。割り当てられたディスカッションの時間があっという間に過ぎるほど議論が盛り上がりました。その一つとしては,集中測定の検査結果は同じものがいくつかあって迷うことがあるということで,どれがオリジナルかということで議論となりました。検査結果の速報 FAXと,後日郵送される検査結果どちらがオリジナルなのだろうかということで議論を進めました。当院は電子カルテ化されておりますが,自分自身は紙カルテ時代の記憶が染み付いており,カルテに検査結果を糊付けして貼るイメージから,後から郵送されてくる印刷したものがオリジナルで良いと思っていました。 先の講演での説明や,ファシリテーターの方より議論の道筋をつけていただいたこともあり,ALCOA 原則に従い,検査結果の場合であればデータについて医師が確認し医学的判断が加わったものがオリジナルであるということで,非常に明解な回答が得られました。われわれのグループとして「郵送の検査結果はシュレッダ-しましょう!」という一つのセンセーショナルな結論を導

写真3 講演 野村氏 写真4 グループディスカッション風景①

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き,後の総合討論においても活発な議論が巻き起こることとなりました。 また,グループディスカッションでは今回のテーマに限らず,日常業務に関する疑問や改善点についても意見を交わすことができたことはとても有意義でした。例えば,室温管理の治験薬について,グローバル治験では薬事法上の室温でなく上限25℃で管理するように治験薬管理手順書が規定されている治験の依頼が多々あります。事務局として治験薬管理にも関わる立場からすると,温度管理の逸脱には非常に神経を使っており,どこの医療機関も同様の悩みを抱えているのだなということで,意識の共有が図られ業務に対する疑問点が少しずつ解消できました。 今回,意見交換会を通じてALCOAについて理解することができ,医療機関側で治験の質を保証できるシステム構築ができるよう体制を強化し,今後の治験業務に生かしたいと思います。本意見交換会は,ALCOAは怖くないということで会が締めくくられ,次回の意見交換会を楽しみに無事ALCOAで乾杯することができたと思います。 最後になりますが,本意見交換会を企画していただいた東京都病院薬剤師会 薬務薬制部臨床試験推進小委員会の榎本委員長をはじめ委員会の先生方,講演いただいた先生方,準備等をしていただいた関係者の皆様に心より感謝申し上げます。

 帝京大学医学部附属病院 治験事務局� 森山 菜緒 平成25年2月2日「薬剤師の治験業務に関する意見交換会(第12回)」に参加いたしました。治験業務に携わるようになって3年が過ぎましたが,自施設だけでは解決できない疑問や課題に頭を悩

ませるようになりました。これらを解決するためのヒントが欲しい,他施設の問題解決事例など何か解決の糸口を見つけて日々の問題点を少しでも解消したい,そしてとにかく知らないことを1つでも無くしたいという気持ちが常にありました。 また本会は他の医療機関の方々とだけでなく,治験依頼者である製薬企業の方々と忌憚なく意見を交換できるということも私にとっては魅力的でした。普段はお互いに忙しく,モニタリングに来られても直面した問題についてじっくり話せる機会がありません。仮に当院で意見交換を行えたとしても,やはりお互いの立場もあり言いたいことが言えない場合もあります。依頼者側の視点や思考を知る良い機会となり今後の治験業務の参考になると考え,今回初めてこの意見交換会に参加いたしました。 今回の討論のテーマが「A.L.C.O.A. で乾杯!」でした。まさに当院でも一昨年程前から取り組んでいましたが,実践できているのか確信が持てないまま毎日が過ぎ去っていました。ドラッグラグの解消が求められる中,現在日本では国際共同治験が増えており,当院でも受託している治験の�1/3以上が国際共同治験です。国際共同治験でも症例報告書と原資料に整合性が取れていれば問題ない,ドラッグラグ解消に向けて頑張ろうと業務を行っていたところ,ある日ALCOAは突然現れました。国際共同治験の依頼者の方に「今後はALCOAの原理に沿ってお願いします」と言われ,ALCOAの原理って……と正直戸惑いました。しかしながら,ALCOAに基づいた原資料を作成し治験に携わっていくことは,日本が今後も国際共同治験から外されることなく,グローバルの治験に参加し続けるためにとても重要なことです。

写真6 結果発表写真5 グループディスカッション風景②

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 講義では,各医療機関におけるALCOAの現状や問題点が挙げられました。求められていることが短い診察時間で本当に実践できるのか,原資料の管理の難しさ,電子カルテを原資料とする場合の保存方法など話題は多岐に渡りましたが,どこの施設も似たような問題に直面し,同じような気持ちで業務を行っているということがわかりました。その中で印象的だったことは,ALCOAを気にしすぎるばかりに,本質を見誤らないことを心がけたいという意見でした。まさにその通りだと思いますし,それができるのがコーディネーターだと感じました。 欧州製薬団体連合会の方の講義も印象的でした。日本の医療機関は,ALCOAの中のAttributable( 帰 属 / 責 任 の 所 在 が 明 確 で あ る )・Contemporaneous(遅滞なく記録されている)・Original(原本である)が弱いということでした。言われてみれば,思い当たるところが多々ありました。医療機関で被験者の経過が誰にでも理解できる原資料が残っているかと問われると正直自信がありません。その原資料に対して,責任の所在が明確で・遅滞なく記録されており・原本であることは重要ですが,日常診察の中にそれをどのようにして組み込んで業務を遂行していくかということが今後の課題になると改めて感じました。 また欧州医薬品庁ではさらにCCEA(Complete�・Consistent・Enduring・Available� when�needed)という原則が設けられており,ここでも日本は Consistent が弱いとありました。Consistent とは矛盾した表現がないという意味です。矛盾した表現は,原資料に対する疑義として往々にして指摘される事項で,国際共同治験でなくても常に注意すべきことです。例えば,患者さんが日誌に吐気と嘔吐の違いを正しく認識して記入しているか確認し,正確な情報を原資料に残さなければならないなど,コーディネーターの仕事について改めて考えさせられました。 グループディスカッションには,治験コーディネーターとして参加しました。同じ班の中には様々な規模の病院の方がいましたが,やはり原資料の取り扱いの対応に関して非常に困っている様子でしたので原資料について議論しました。グループの中で話題になったのは,何を原資料としておくかということでした。

 近年,電子カルテを使用している医療機関も増えており,原資料の残し方が煩雑になっている状況がどこの施設でも多かれ少なかれあるようでした。メモを原資料としていた時代から,カルテへの直接記載を原資料とする時代へ変化しているため,原資料と呼ばれるものが以前より増えてしまっている印象を受けました。このような状況を回避するには,施設ごとのカルテ記載の方法や状況を踏まえながらALCOAに沿った形で施設ごとに原資料の基準を作り,治験依頼者にヒアリングの段階で提出するのが良いのではないかという話が持ち上がりました。実際に施設の基準を作ることで,自施設での対応が統一されますし,問題点の抽出と解決にも繋がると期待できます。 他に,医学的判断とはどういうことかを明確にしておきたい,という議論もありました。治験プロトコールの内容によって,医学的判断は変わってくる可能性があるので,こちらも今後一層注目し,ALCOAの原則に照らして考えていくべきことだと認識しました。 ALCOAを実践するにあたっては,まだまだ知識も足りず今後も苦労したり,悩んだりすることがあるとは思いますが,今回意見交換会に参加して貴重な講演を拝聴したり,みなさんと議論することでたくさんの情報を得て,気持ちを共有することができました。このような機会があるといつも書かせていただくのですが,今後もすべての患者さんの治療の選択肢を広げるために粛々と行うことが使命だと改めて実感しています。 最後になりますが,第12回薬剤師の治験業務に関する意見交換会の開催にご尽力いただきました東京都病院薬剤師会 薬務薬制部臨床試験推進小委員会の先生方,ご講演いただきました先生方に

写真7 総合討論(登壇者)

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厚く御礼申し上げます。

 ノボ・ノルディスクファーマ株式会社�  大土井 久暁 グラクソ・スミスクライン株式会社�  大垣 博毅 今回,EFPIA�ALCOA�Task�Teamとして本意見交換会に出席させて頂きました。EFPIA のALCOA�Task�Teamは2年前に発足し,EFPIA加 盟 会 社 共 通 の ALCOA 資 料 作 成,Best�Practice の収集,医療機関へのALCOA 啓発活動を行ってきました。中でも今回のように医療機関の方と多くの事を語り合える機会は有意義な活動の一つと感じているところです。◇グループディスカッションに関して 「医師が忙しくて難しい」「依頼者はみんな違う事を言ってきて色々なルールがあって大変」という意見が多くありました。ALCOAを実践していく時に,「壁」になるのはどの医療機関でもこの2つではないでしょうか。現在もモニターがモニタリングに行った時に,原資料ができていないという状況もまだあると思います。 原資料記載が重要で,それが「被験者の安全性保護」につながるという本質を医師に理解してもらうためには,医療機関側・依頼者側双方が協力して,粘り強く伝えていくしかないと思います。 依頼者の問題としては,我々依頼者側のモニター教育が十分できていないという課題があります。同時に,各医療機関で適切な原資料マネジメントを定着させるために,最も効果的な方法は,「医療機関側でALCOAに沿った原資料作成を自分達のやり方を構築して実践し,医療機関側で原資料マネジメントを主導する」ことです。これは,「2012年 CRC と臨床試験のあり方を考える会議」でも話されていました。その成功の為に,EFPIA のモニターは医療機関に十分な情報提供が行えるように,レベルアップが必要です。役割は違えど医療機関・依頼者・モニターが協力していく事が重要です。 医療機関選定時の窓口は,治験事務局の方がされている事も多いと思います。契約を結ぶ前に,「原資料を適切に作成できるのか」という観点についても,治験事務局,治験責任医師,依頼者間で,協議する機会を持つことも有効であると思い

ます。ALCOAと少し離れますが,治験責任医師必須文書は,治験事務局が関わらずに,モニターに依存している現状も少なからずある事がわかりました。原資料関係とともに,治験責任医師必須文書保管についても,最初に協議しておくことが重要ではないでしょうか。◇ 総合討論に関して 総合討論のセッションでは,EFPIA,東京都病院薬剤師会より各2名,計4名が壇上で討論を行うパネルディスカッション形式でした。ALCOAに関連する議題はもちろん,現在治験を実施する上で,治験実施医療機関の方が抱えている問題点や疑問点がいくつも議題として挙がり,依頼者である EFPIA 側はもちろん,実施医療機関側である東京都病院薬剤師会の方にとっても,非常に興味をそそる内容の討論だったと思います。その討論の中で「中央検査機関から FAXされる検査結果の取り扱い」「検査機器の校正」「治験責任医師必須保管文書」など,依頼者側でも検討すべきポイントとしている内容が,議題として挙がりました。依頼者,治験実施医療機関ともに解決すべき問題点,疑問点としての共通の認識を持っていることが改めて確認でき,さらに双方の意見を交換・共有できたことは,大変有意義なことだと思います。また,これまで私達があまり着目していなかった点が会場から議題として提示され,逆に気付かされる場面もあり,大変勉強になりました。 私達は,日常,モニタリング業務の中で,治験実施医療機関の方とALCOAについて協議することがよくあります。その中で感じることは,ALCOAの重要性や必要性は,依頼者も医療機関側もよく理解しているものの,いざ実践すると�

写真8 総合討論(フロア)

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なると多くの障害や疑問点に直面し,それがALCOA実践への弊害となっていることです。このような問題点は,決して医療機関だけの問題ではなく,依頼者はもちろんのこと,SMO,CRO,PMDAなど治験業界全体で考え,取り組んでいく必要がある問題です。近年,日本の製薬企業も積極的に国際共同治験に参画するようになり,グローバル基準での治験の実施が求められるようになっています。ALCOAもその一端ですが,質を低下させることなく,他国に負けない生産性やスピードを確保し,日本の治験環境を活性化させるために,依頼者,医療機関の個々の取り組みだけではなく,今回のような業界団体間のコラボレーションから生み出される力が重要になってくると思います。今後も,依頼者,医療機関の協力体制をより発展させ,より良い治験環境を構築する一助となりたいと思います。 最後になりましたが,このような貴重な意見交換会の場に参加する機会いただけましたこと,改めて御礼申し上げます。

【後 記】 12回目となった「薬剤師の治験業務に関する意

見交換会」のテーマとしてALCOAを取り上げました。ALCOAはテーマ選定に関わった委員の心の中にも??? があったからですが,参加者の皆様も,怖々と,でもこの機会にALCOAを理解しよう! と参加してくださったようです。講義およびグループディスカッションを通じEFPIA の皆様が分かりやすく熱心に説明してくださり,会が終了する頃にはALCOAは怖くない! と思えるようになったと思います。一方,EFPIA の皆様には現場でのALCOAの実践の難しさ等も理解していただけたのではないでしょうか。参加者にご協力いただいたアンケートでも「今回の意見交換会は有意義な内容でしたか」との質問に対し,10段階評価で8以上の回答が82.1%でした。感想・要望等で寄せられたご意見は今後の参考とさせていただきます。 近年,治験を取り巻く環境は目まぐるしく変化し,個々の施設では対応に難渋するケースが少なくありません。12回目を迎えた今回の意見交換会は,終了後の情報交換会まで,ALCOAに留まることなく,終始和やかな雰囲気で日頃の疑問や問題点などを話し合うことができました。今後の業務改善につながる良い機会になったと思います。良い薬を1日も早く患者さんに届けるために,これからも依頼者と医療機関の協働で治験を進めていきましょう。次回の意見交換会&情報交換会もご期待ください!

謝辞 今回の意見交換会の開催にご協力いただいた欧州製薬連合会,国立国際医療研究センター病院及び奥山薬務薬制部長をはじめ都病薬関係者の方々に深く感謝いたします。

写真9 閉会の挨拶 奥山部長

写真10 懇親会集合写真