韓国青年訪日団(第 7 8団)(招へいプログラム)の記録 ......1...

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1 韓国青年訪日団(第 78 団)(招へいプログラム)の記録 (対象国:韓国,テーマ:日韓交流と日本の防災対策) 1. プログラム概要 在釜山日本国総領事館, 在済州日本国総領事館にて選抜された大学生・高校生等が, テーマ「日韓交流と日本の防災対策」の下,学校訪問,日本の学生との意見交換会,ホ ームステイ,防災に関する講義の聴講等を通じて対日理解を深めました。 プログラム中,テーマと関連した視察,講義,意見交換会等に強い関心を示し,各々 の関心事項や体験について SNS を通じて対外発信を行いました。 また,帰国前の成果報告の場では,訪日経験を活かした帰国後のアクション・プラン (活動計画)について各人が発表しました。 【訪問地】 東京都,高知県,愛媛県,大阪府,京都府(第8団のみ),滋賀県(第8団のみ), 兵庫県 2. 日程 2 19 日(水) 入国(成田国際空港),【講義】「最近の日韓関係について」 2 20 日(木) 【交流】韓国語学習者との交流会(意見交換会,フィールドワーク等) 2 21 日(金) 高知県へ移動,【表敬】高知県庁関係者,【講義】「高知県の概要と韓国とのつながりに ついて」,【講義】「高知県の防災対策について」 2 22 日(土) 幡多郡黒潮町へ移動,【交流】ホームステイ対面式 2 23 日(日) 終日ホームステイ 2 24 日(月) ホームステイより再集合,【視察】高知県幡多郡黒潮町内の防災対策,【地域文化体験】 かつおのたたき体験(昼食兼),愛媛県へ移動 2 25 日(火) 大阪府へ移動,【視察】耐震・制振構造(あべのハルカス)

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Page 1: 韓国青年訪日団(第 7 8団)(招へいプログラム)の記録 ......1 韓国青年訪日団(第7~8団)(招へいプログラム)の記録 (対象国:韓国,テーマ:日韓交流と日本の防災対策)

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韓国青年訪日団(第 7~8団)(招へいプログラム)の記録

(対象国:韓国,テーマ:日韓交流と日本の防災対策)

1. プログラム概要

在釜山日本国総領事館, 在済州日本国総領事館にて選抜された大学生・高校生等が,

テーマ「日韓交流と日本の防災対策」の下,学校訪問,日本の学生との意見交換会,ホ

ームステイ,防災に関する講義の聴講等を通じて対日理解を深めました。

プログラム中,テーマと関連した視察,講義,意見交換会等に強い関心を示し,各々

の関心事項や体験について SNSを通じて対外発信を行いました。

また,帰国前の成果報告の場では,訪日経験を活かした帰国後のアクション・プラン

(活動計画)について各人が発表しました。

【訪問地】

東京都,高知県,愛媛県,大阪府,京都府(第8団のみ),滋賀県(第8団のみ),

兵庫県

2. 日程

2月 19 日(水)

入国(成田国際空港),【講義】「最近の日韓関係について」

2月 20 日(木)

【交流】韓国語学習者との交流会(意見交換会,フィールドワーク等)

2月 21 日(金)

高知県へ移動,【表敬】高知県庁関係者,【講義】「高知県の概要と韓国とのつながりに

ついて」,【講義】「高知県の防災対策について」

2月 22 日(土)

幡多郡黒潮町へ移動,【交流】ホームステイ対面式

2月 23 日(日)

終日ホームステイ

2月 24 日(月)

ホームステイより再集合,【視察】高知県幡多郡黒潮町内の防災対策,【地域文化体験】

かつおのたたき体験(昼食兼),愛媛県へ移動

2月 25 日(火)

大阪府へ移動,【視察】耐震・制振構造(あべのハルカス)

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2月 26 日(水)

第 7団:終日,大学生訪韓団 OB/OGの学生と交流

【視察】生野コリアタウン,【訪問】在日本大韓民国民団大阪府地方本部,

【講義】「在日社会について」,報告会及び意見交換会

第 8団:【視察】朝鮮人街道,本願寺八幡別院,旧伴家住宅等,

【学校訪問・交流】立命館守山中学校・高等学校(合同授業,交流会等)

2月 27 日(木)

終日,大学生訪韓団 OB/OGの学生と交流

【日韓共同授業①,文化体験】「落語」体験~落語の歴史等のレクチャーと共に,

【日韓共同授業②,視察】阪神淡路大震災記念「人と防災未来センター」,【講義】阪神

淡路大震災被災者の体験談,成果報告会

2月 28 日(金)

出国(関西国際空港)

3. プログラム記録写真

(訪問地:東京都,高知県,愛媛県,大阪府,京都府(第 8団のみ),滋賀県(第 8団

のみ),兵庫県)

2月 19日【講義】「最近の日韓関係について」

(東京都港区)

2月 20日【交流】韓国語学習者との交流会

(東京都港区)

2月 21日【表敬】高知県(高知県高知市)

2月 24日【交流】ホームステイ解散式

(高知県四万十市)

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2月 24日【視察】高知県幡多郡黒潮町内の

防災対策~防災タワーへの避難訓練

(高知県幡多郡黒潮町)

2月 25日【視察】耐震・制振構造

(大阪市阿倍野区)

2月 26日【交流・表敬】大学生訪韓団 OB/OG

の学生と交流「民団大阪」表敬(大阪市北区)

2 月 26 日【学校訪問・交流】立命館守山中

学校・高等学校(滋賀県守山市)

2月 27日【日韓共同授業①,文化体験】「落

語」体験(大阪市北区)

2 月 27 日【日韓共同授業②,視察】阪神淡

路大震災記念「人と防災未来センター」(兵

庫県神戸市中央区)

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4. 参加者の感想(抜粋)

◆ 韓国 大学生

・1995 年 1 月早朝に発生した阪神淡路大震災の様子を見て胸が痛むのと同時に危機感

を感じた。高度成長を経てにぎわった神戸の街が一瞬にして崩壊してしまった姿は,我

が国でも充分あり得ることだと思う。阪神淡路大震災の悲劇を克服し,さらに発展した

姿にまで復興した都市が隣国にあるということは韓国にとって貴重なことであり,あり

がたいことではなだろうか。我が国はそのような体験やノウハウを学べるからである。

日韓関係がぎくしゃくしている中で発生した東日本大震災の際には,どこよりも真っ先

に韓国が日本への支援の手を伸ばしたように,韓国で大地震が発生した際には,是非日

本の協力をいただきたいし,今発生しているような新型コロナの解決等も,お互い知識

と技術力を提供し合い,支援し合って行けるような関係を築いていけば,どれだけ両国

にとって大きな利益になるだろうか。このような関係を築いていくための鍵は,まさに

私たち若者にかかっていると思うので,日韓関係改善のために少しでも積極的自分たち

でできる役割を果たしていきたい。

・日本のことはそれなりに熟知していると自負していたが,今回初めて「日本の防災」

について学び,今まで接したことがない側面であったため新鮮であるのと同時に,想像

以上に膨大な知識と技術力があり,しっかりと対策をされており驚いた。中でも驚いた

のは,地震で揺れる前に「緊急地震速報」がテレビや携帯に届くこと。防災先進国であ

る日本の研究と技術の素晴らしさを実感した。もう 1つは「減災」という考え方で,そ

のために日頃から地域社会とその住民が率先して取り組んでいる姿に感心した。我が国

であれば国主導で,住民は国が何かをしてくれることを待つばかり,防災のために何か

を取組んでいる地域はあるのだろうか。今や自然災害が他人事ではない我が国だが,何

か起こったら何だかんだ言っても頼りになる国は日本だろうし,我が国の防災への取組

みや意識づけの発展のためには,日本の協力は必要不可欠ではないだろうか。そのため

にも,一日も早い日本との関係改善が必要だと思う。

・正直言うとこれまでは「日本」という国名を耳にすると,国際的に政治的に否定的な

印象がかなり強く,良い感情を抱けずにいた。しかし,今回の訪日プログラムで数多く

の交流を通じて直に日本人と接し,すっかり日本のファンになった。また,日本の万全

な防災技術と対策も大きな学びとなったし,日本の外交的立場を初めて直接聞くことに

より理解できる部分もあり,もっと妥協すべき部分もあると思った。

・今回の日程で一番印象深く残ったのは高知県で聴いた南海トラフ地震に関する講義で

ある。30 年以内に起こると予想し,着実に対策を練っていく様子を見て,我が国でも

最近地震が頻発しているのに,このような対策を立てているのか疑わしく思う。これま

で自然災害とは予測不能で事前の対策が難しいと思っていたが,高知県の対策を見て決

してそうではなく,十分予測が可能であり事前対策も可能であると実感した。日本の防

災関連技術が思っていたより発展していて感心した。

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◆ 韓国 高校生

・「最近の日韓関係」に関する講義を聞き,人それぞれの考えが違うように国家間の考

えも異なり,それでも友好関係を維持していくためには両国の立場を正確に理解し,解

決していく努力をしなければならない事を学んだ。メディアは私たちに情報を伝えてく

れるのと同時に,その伝えられる情報には記者や新聞社の考えが反映されており,歪曲

性を持った情報もある。そんな情報に惑わされないためには,ただ受け入れるだけでは

なく,批判的な目をもちながら受け入れる態度が必要になると思う。将来はそんな事を

伝えられる大人になりたい。

・学校訪問について,日本の高校で行われている授業に参加し,韓国の高校で学ぶ事と

の比較や日本の高校生の考えを聞くことができてよかった。また,交流を通じて日本の

高校生の価値観や生活スタイルについて知る事ができてよかった。

・今まで耐震設計というものがどのようになっているのか正確に知らなかったのだが,

今回の講義を通じてどのように設計されているのか知ることができて良かった。また自

然災害が起こった際,私たちが具体的に何をしなければならないのか,また日本政府が

どんな政策(対応)を行っているのか知る事ができて良かった。

5. 受入れ側の感想

ハンガンネット(韓国語学習者交流受入機関)関係者

・厳しい日韓関係,厳しい社会的状況であるにもかかわらず,それらを覚悟して、海を

渡ってきてくれた訪日団の大学生・高校生たちは,本当に素晴らしい若者たちだった。

「単なる交流ではなく、日韓関係について話し合える関係、持続的な交流を」目指して

実施したが,韓国の学生と歴史問題について話し合った方もいたし,今でもほぼ全員の

参加者同士ラインでつながっており,『大邱の学生には「がんばれ!」とメッセージを

毎日送っている』と日本の参加者から聞いているので,一定の手応えは感じている。今

回のような非常事態だからこそ,お互いの絆は一層深まったような気がする。

交流会に参加した韓国語学習者

・今日韓関係は良くないと言われているが,関係改善のために私たちができることを思

い参加したところ,笑顔が溢れあっという間に時間が過ぎた。国と国の問題は簡単に解

決しないかもしれないが,私たち一人一人がお互い好意をもって接することが,小さな

一歩でも,それが集まれば大きな一歩になると信じて,これからも小さな一歩を積み重

ねていきたいと思う。「過去と他人は変えられない。でも,未来と自分は変えられる。」

お互いを非難するのではなく,理解しようと努力していきたい。

高知県庁関係者

・このような時期に高知県を訪問していただき,感謝申し上げる。今回は高知県として

行っている防災対策(南海トラフ地震を中心に)についてお話させていただき,外国人

の方にこのような説明をするのが初めてだったので不安もあったが,沢山の質問があが

り理解していただけたのが分かった。また是非お越しいただきたい。

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ホームステイ受け入れ機関関係者

・学生の皆さんが勇気を持って日本にきて下さったことや,送り出してくれたご両親,

ご家族の方々のお気持ちについて,受入家庭の方も十分理解できたので,至らない点も

あったかと思うが何とか無事に受入ができた。今後も両国の絆が深まり,友好関係が築

かれていくことを一同願っている。

6. 参加者の対外発信

今日の最近の日韓関係に関する講義では

政治的問題に関する日本の立場について

聞くことができて良かった。政治・歴史的

問題について考えることができ,意味のあ

る経験ができた。

高知県表敬・防災講義についての発信

高知県に到着してすぐに高知県の南海ト

ラフ地震対策についての講義を聴いた。

南海トラフ地震とは昔から最大 100年周期

で高知県にも近い震源地で発生する震度 7

以上の大地震のことで、30年以内に発生す

る可能性が高く、高知県内では迅速に防災

対策を立て減災に努めている。

我が国では 2017 年に震度 4 の慶州地震が

発生しており大きな被害を受けたが、これ

は我が国も地震安全国ではないことを悟

らせてくれた。

日本は我が国より 400倍以上の地震発生国

であり、それだけに地震対策とその技術は

優れており、講義を聴きながら我が国の地

震対策はどうなっているのか気になった。

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黒潮町の防災対策についての発信

ホームステイが終わった後、防災教育を受

けた。防災タワーまで避難した時間を計

り、一定時間を超えた学生は実際に津波が

来ていたら命を落としていたかもしれな

いという話を聞き、迅速に避難しなくては

いけないと感じた。防災タワーに上がると

そこは避難所になっており、避難所での 1

名あたりの面積を新聞紙の広さで体感で

きたが、狭くて不便に感じた。

防災教育の中で一番記憶に残ったのは、実

際の災害状況においてどのような判断を

下すのかを YES or NOで答え意見を交わし

たことである。単なる講義だけではなく、

様々な活動が加わることにより、より記憶

に残る活動となった。

阪神淡路大震災記念「人と防災未来館」に

ついての発信

建築基礎構造の実験を通じて、免震システ

ムと耐震システムの差について学んだ。ま

た、このシステムを直接建築物に適用させ

た場合と適用しなかった場合の差も見る

ことができ、防災システムの重要性につい

て気付かされた。

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7. 報告会での帰国後のアクション・プラン発表

成果報告会では, 今回の日程における各種視察や交流,ホームステイを通じて得た成果

と帰国後のアクション・プランをグループ毎に模造紙に表現,各々発表して共有した。主

な発表内容は下記の通り。

・同じグループの団員で画像や動画を持ち寄り,1つの動画に編集して SNSで発信,ま

た上映会などを企画し,今回の経験を多くの方々に伝えていきたい。

・同じ大学の団員が数名いるので大学内で同窓組織を作り,もし日本の大学生訪韓団で

我が校を訪問してくれるのであれば交流プログラムを計画したい。また,それ以外にも

積極的に日韓交流について真摯に考え,交流を実践していきたい。

・雑誌等のデザインや編集を手掛けているので,今回の体験をパンフレットのようなも

のにまとめ,SNSで見られるようにしたり,配布したりして周知に努めたい。

・今回の訪日団についてまとめたものを本として出版する。

・訪日団で得た経験について,校内で発表する機会を設け周知する。

・将来は教職に就くつもりであるため,今回日本で学んだ防災対策についてとても参考

になった。教師になったら沢山の生徒に日本の防災対策について伝えたい。

(了)