高齢者にみられる精神的特徴に関する 臨床心理学的考察...

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高齢者にみられる精神的特徴に関する臨床心理学的考察 高齢者にみられる精神的特徴に関する 臨床心理学的考察 臨床心理学研究センター 研修員 麻友子 &驪 濾 飜羅 腰躍 緲 ヤ舜纏鱇 飜驫鸛鑾 廓灘灘 秘鑼 ・灘騰 灘鯑 我が国では、他国に例を見ない速さで高齢化 が進んでいる。今 日、高齢者 は65歳以上 と定義 され て い る が、 他 の発 達 的段 階以 上 に個 人 差 が 大 きい 故 に 、 高齢 者 を どの よ うに捉 え るか に 困 難 で あ る 。 そ こ で 本 研 究 で は、 居 住 環 境 、 加 齢 、性 差 か ら、 自己概 念 と実 存 に 関す る価 値 観 を 中心 に、SCT及びPGCモラール尺度 を用 い て 面 接 法 に よ り高 齢 者 の精 神 的 特 徴 を 検 討 し た。結果、探索的に 「意欲・継続型」「危機型」 「人生幸福型」 の3つ を類 型化 した。更に、3 類 型 の 中 か ら代 表 例 を取 り上 げて 事 例 検 討 を行 い、 本研 究 の 補完 的役 割 を期 待 した 。 キ ー ワー ド 高 齢 者 、 自 己 概 念 、 適 応 、 老 年 用SCT 1.問 題と目的 1-1.高齢者 の増加 とその多様 さ 高齢者 と は 、WHOで 定義されているよう に 、 一 般 に65歳以 上 の 人 で あ る。 我 が 国 で は、 他国に例を見ない速さで高齢化が進んでいる。 厚 生 省(2000,注:現 厚 生 労 働 省)に よる と、 1950年 の 高 齢 化 率(65歳 以 上 人 口 が 全 人 口 に 占 め る 割 合)が4.9%に し、2000年で は、 17.2%(人口の6人 に1人)で あ った 。 さ ら に、2015年には、25.2%(人口の4人 に1人)、 2050年には、32.3%と現在の約2倍 に上昇する こ と が 予 想 さ れ て い る 。 国 際 的 に 見 て も 、2025 年までに我が国の高齢化率は、世界最高の水準 に達すると言われている。また、現在の平均寿 命 は 、 男 性78.07歳 、 女 性84.93歳 であり、女性 は世界 トップ に躍 り出 て い る。 以 上 の こ とか ら、 ま さに 「高齢者の世紀」が始まるというこ とが で きる。 65歳以上 を高齢者 と定義 して も、今 日では、 例 えば65歳で仕事 を している人、90歳を超えて 寝た き りな人等、全 て同 じ 「高齢者」 とな り、 年代の幅が広す ぎる。その背景を踏まえて、米 国 の社 会 老 年 学 者Neugarten(1975)は 、55歳 か ら74歳までを 「前期高齢者」、75歳以上を 「後 期高齢者」 と区分 した。今 日で は、近年 の 長寿化に伴 い85歳以上 をさ らに 「超高齢者」 と して 区 分 して い る(古 谷 野,2002)。 しか しな が ら、 暦 年 齢 の 細 分 化 を して も、 身 体的側面、社会的側面、知的側面、価値的側面 等 か らみ て も、 他 の発 達 的 段 階 以 上 に個 人差 が 大 き く、 どの よ うに高 齢 者 を捉 え るか は 一様 で はない。 1-2.生涯 発 達 理論 Baltes(1987,東 ・柏木 ・高橋 監 訳,1993)に よると、生涯発達心理学とは一生を通じて行動 183

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Page 1: 高齢者にみられる精神的特徴に関する 臨床心理学的考察 ......②身体の超越対身体への没頭、③自我の没頭 対自我の超越、とした。①は、職業や親役割

高齢者にみられる精神的特徴に関する臨床心理学的考察

高齢者にみられる精神的特徴に関する

臨床心理学的考察

臨床心理学研究センター 研修員 森 麻 友 子 靂&驪 飜 濾 飜羅 腰躍 緲 ヤ舜纏鱇 飜 驫鸛 鑾 廓灘 灘 秘鑼 ・灘騰 讙 灘 鯑 、

我が国では、他国に例を見ない速さで高齢化

が進んでいる。今 日、高齢者は65歳以上と定義

されているが、他の発達的段階以上に個人差が

大きい故に、高齢者をどのように捉えるかに困

難である。そこで本研究では、居住環境、加

齢、性差から、 自己概念 と実存に関する価値観

を中心 に、SCT及 びPGCモ ラール尺度 を用 い

て面接法により高齢者の精神的特徴を検討 し

た。結果、探索的に 「意欲 ・継続型」「危機型」

「人生幸福型」の3つ を類型化 した。更に、3

類型の中から代表例を取 り上げて事例検討を行

い、本研究の補完的役割を期待 した。

キ ー ワー ド

高 齢 者 、 自己概 念 、 適 応 、 老 年 用SCT

1.問 題 と 目 的

1-1.高 齢 者 の増 加 と そ の 多様 さ

高 齢 者 と は、WHOで 定 義 さ れ て い る よ う

に 、 一 般 に65歳 以 上 の 人 で あ る。 我 が 国 で は、

他 国 に例 を見 な い速 さで高 齢 化 が 進 んで い る。

厚 生 省(2000,注:現 厚 生 労 働 省)に よる と、

1950年 の 高 齢 化 率(65歳 以 上 人 口 が 全 人 口 に

占 め る 割 合)が4.9%に 対 し、2000年 で は、

17.2%(人 口 の6人 に1人)で あ った 。 さ ら

に 、2015年 に は 、25.2%(人 口の4人 に1人)、

2050年 に は、32.3%と 現 在 の 約2倍 に上 昇 す る

こ とが 予想 され て い る 。 国 際 的 に見 て も、2025

年 まで に我 が 国 の 高齢 化 率 は、 世 界 最 高 の水 準

に 達 す る と言 わ れ て い る 。 ま た、 現 在 の 平 均 寿

命 は、 男 性78.07歳 、 女 性84.93歳 で あ り、 女 性

は 世 界 トップ に躍 り出 て い る。 以 上 の こ とか

ら、 ま さに 「高 齢 者 の世 紀 」 が 始 ま る と い う こ

とが で きる。

65歳以上を高齢者 と定義 しても、今日では、

例えば65歳 で仕事をしている人、90歳 を超えて

寝たきりな人等、全て同じ 「高齢者」とな り、

年代の幅が広す ぎる。その背景を踏まえて、米

国の社会老年学者Neugarten(1975)は 、55歳

か ら74歳 までを 「前期高齢者」、75歳 以上を

「後期高齢者」 と区分 した。今 日では、近年の

長寿化に伴い85歳以上をさらに 「超高齢者」 と

して区分している(古 谷野,2002)。

しかしながら、暦年齢の細分化をしても、身

体的側面、社会的側面、知的側面、価値的側面

等からみても、他の発達的段階以上に個人差が

大きく、どのように高齢者を捉えるかは一様で

はない。

1-2.生 涯 発 達 理論

Baltes(1987,東 ・柏 木 ・高橋 監 訳,1993)に

よ る と、 生 涯発 達 心 理 学 とは一 生 を通 じて行 動

183

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佛教大学教育学部学会紀要 第3号

の恒常性と変化を研究することであるが、発達

過程は成長や進歩だけか らではなく、適応能力

の獲得(成 長)と 喪失(衰 退)と の間に内在す

るダイナミックスを伴う。その道筋は、生活条

件や経験により様々であり、歴史的文化的な条

件 とその変化により影響を受ける。このような

生涯発達心理学的視点か ら老年期の理論を見て

いくと、老年期 とは、人間の一生を発達的に捉

えた場合の最後の段階をいう。

Erikson,E.H.(1950,仁 科訳,1977)は 、

人格発達理論を 「人間の8つ の発達段階」とし

て展開し、これをライフサイクルと呼んだ。各

段階に固有の心理 ・社会的危機があ り、「老年

期」は最後の第8段 階で、発達課題の危機 を

「自我の統合 対 絶望」であるとした。

「統合」とは、最も単純にいえば、「一貫性 と

全体性の感覚」(1982,村 瀬 ら訳,1989,p85)

であ り、「絶望」とは、連鎖の喪失による終局

的状況下に耐えられず、死の恐怖が、無意識的

であれつ きまとう状態である。この危機を乗 り

越える経過の中で 「英知」が育まれ、自分の人

生に意義 と価値を見出すことができ、死の訪れ

を受容する。「英知」とは、「死そのものに向き

合 う中での、生そのものに対する聡明かつ超然

とした関心」(1982,村 瀬ら訳,1989,p79)で

ある。Erikson,E.H.は 、人 間が発達 してい く

上で、特に文化的、歴史的影響に光を当て、個

人の環境への関与 と社会 との相互作用が重要で

あるとし、心理社会的発達を唱えた。

Peck(1968)は 、さらに詳 しく老年期 の発

達課題を① 自我の分化 対 仕事一役割の没頭、

②身体の超越 対 身体への没頭、③ 自我の没頭

対 自我の超越、とした。①は、職業や親役割

を含めた引退の危機であり、これまで積み上げ

た成果を越えて、広い役割に満足 し、別の面に

も目を向け自分の価値観を創造 していけるかが

問題となる。②は、身体的健康の危機であり、

悪化ばかりに捉われることなく、それを超える

ユ84

ような対人関係や趣昧、創造的な精神活動に満

足することが、生 きがいにつなが り幸福感を生

む。③ は、死の危機であり、長 くはない未来故

に、自分の生死ばかりに注意が向くのか、これ

まで自分が生み出した子供や友情、文化を通 し

て個の意識を超越 し、これからも続 くという恒

久的な意味を見出すかが重要 となる。

1-3.適 応に関する理論一活動理論と離脱理論

社会の中に改めて高齢者 を位置付 けてみる

と、老年期には仕事を中心 とした社会生活や親

役割が縮小 されていく事実に気づ く。その役割

という概念から高齢者の適応を検討 した理論 と

して 「活動理論」 と 「離脱理論」がある。

活動理論とは、米国社会の老化に対する価値

判断を表しているが、生物学上の変化等不可避

的な場合 を除き、高齢者は中年期 と同じ心理的

社会的欲求をもっている。従って、できるだけ

これまでの活動性 を維持 し、生活圏の縮小に抵

抗する者は、生活満足感が高く適応に成功する

のである(袖 井,1975)。

Cumming&Henry(1961)に よって提 唱 さ

れた離脱理論とは、個人と社会の様々な関係が

離れていき、残る関係 にも質的な変化がみ ら

れ、人間にとって避けることのできない過程で

あると定義した。離脱 していくことは、 自分の

内なる世界に関心 を向けるためにも望 ましいこ

とで、上手に年をとる(successfulaging)た め

に必要な条件であるとした。

さらにHavighurst(1961)は 、高齢期の発達

課題は、身体 の衰退、役割等の喪失や死別 と

いった 「喪失に伴 う適応」 とこれらの喪失感を

理解し合えるような同世代の仲間の 「親密な人

間関係」であるとした。前者には役割の柔軟性

や代替が重要である。

1-4.高 齢者に関する臨床心理学研究

老年期の発達の課題の重要な問題 として「死」

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への態度が挙げ られる。岡本(1990)は 、60

歳以上の70名 の施設者を対象 に、死の認知型を

6分 類 し、精神的充足感、老年期以前の達成

度、自我機能、との関連性 について検討した。

その結果、積極 的受容型が最 も多かった。ま

た、自我同一性の達成度が高いと老年期の死の

受容を助け、自我機能が高いと死に対して主体

的に受容することが可能であることを示唆した。

適応 に関 して石原 ら(1999)は 、50~74歳

の在宅者1,785人 を対象 にLawton(1975)が 作

成 したPGCモ ラール尺度 によって、主観的幸

福感を測定し、5年 間にわたりその経年変化を

検討した。その結果、全ての年齢で経年変化は

みられず、安定していることが分かった。

下仲 ら(1981)は 、60~86歳 の24名 を対象

に、2年 間で計4回 の追跡調査を行い、施設生

活の適応に、自己概念、自己評価 を中心とした

人格機能がどのように影響しているのかを検討

した。その結果、自己概念では、入所前は肯定

視にせよ否定視にせよ自己の概念化が明白に言

語化されていたのが、入所後はそれらの傾向は

やや少なくなり、代わって自己を明確化せず、

曖昧にして答えるとい う傾向が示 された。ま

た、施設入居による心理的動揺がみられず、幸

福感が入所前 よりも良くなっていた。

河合 ら(1990)は 、老年期 の夫婦 の依存 関

係を検討した結果、退職後、社会的役割を喪失

した夫は、生活が縮小 し、家庭生活においては

精神的にも身体的にも、より妻に対 して依存的

になる傾向が認められたと述べている。前田ら

(1988)は 、高齢者の適応感の研究で、特に男

性の場合、配偶者 との死別経験は適応感と関連

があると指摘 した。

精神機能に関 しては、下仲(1988)が 、文章

完成法(以 下SCTと 記す)を 用 い、65歳 以上

の859名 を対象 に、自己概念 を中心 に家族関

係、対人関係、実存に関する価値観が、在宅と

施設の差異を調べている。その結果、在宅高齢

高齢者にみられる精神的特徴に関する臨床心理学的考察

者は、人生を肯定的に捉え、身体的自己を健全

とみなし、死や老化を認めているものの限 りあ

る未来 を積極的に生 きようとする意欲が見出さ

れた。一方、施設高齢者は、人生に否定的で、

過去 を客観視 し、身体的自己を客観視するか否

定的に思い、自己の可能性の追求に関 しては非

積極的だった。

以上の理論と諸結果を考慮にいれ、高齢者の

体験世界を臨床心理学的に考察するために、以

下のことに着目する。

自己は、自己の存在 と意味の重要な要素をな

す社会的、身体的、時間的秩序の中におかれて

おり(Wells&Stryker,1987:東 ら監訳,1993)、

高齢者 も例外ではないと考 える。つ まり、過

去 ・現在 ・未来の時 間的流れの中で生 きてい

る。また、文化により自己という概念が異なる

(北山ら,1995)と いう視点か ら、歴史的文化

的背景を考慮にいれる。さらに、高齢者 を65歳

以上 としてひとまとめにせず、特に加齢、性

差、居住環境の影響を踏まえる。

1-5.本 研究の目的

高齢者は、 これまでの人生 をどのように捉

え、調査時点での 「今」何を思い、また、その

次に訪れる不可避的な死を含めた未来をどのよ

うに感 じているのだろうか。本研究では、上記

の着目点を含め、高齢者の精神的特徴を社会的

な関与も含めて臨床心理学的に考察する。

II.方 法

2-1.調 査対象

調査は、近畿圏の生涯教育センター、老人保

健施設、特別養護老人ホーム、及び府県下から

選ばれた、痴呆者を除く65歳以上の69名 を対象

とし、2002年7月 から8月 にかけて、筆者が個

別に面接を行った。表2-1に年齢層の内訳を居

住環境別 ・性別に記した。在宅では主に高齢前

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佛教大学教育学部学会紀要 第3号

表2-1被 験者の年齢層別人数構成(居 住 環境別、性別)

66~74歳 75~84歳 85~99歳 全年齢n平 均 年 齢(SD,)

在 宅]8人70.0(2,24)

施設471.5(3.26)

n平 均 年 齢(SD.)

14人78.4(2.84)

981.1(3.79)

n平 均 年 齢(S.D,)n平 均 年 齢(SD.)

4人87、3(3.30)36人75.3(6.34)

2089.0(3.73)3384.7(7.00)

女性1470,9(3.04)15

男性869.8(2.43)8

80.1(3.03)21

78.3(2.92)3

88.9(3.80)5081.2(8.19)

87.3(2.52)1976.1(6.88)

総 計2270.5(2.94)23 79.5(2.97)24 88.7(3.66)6979.8(8.13)

期 ・高齢後期、施設では主に高齢後期 ・超高齢

期に偏った年齢構成となった。

2-2.調 査方法

(1)文 章完成法(SCT)

高齢者 の精神的特徴 を評価する目的でSCT

を実施した。項 目は、時間軸における自己、生

と死に関わる実存的価値観、および役割に着目

して設定 した(① 現在 ・過去 ・未来の自己、②

死に対する態度、③人生に対する態度、④役割、

⑤生きること、⑥信仰、⑦今の願い、⑧時々思

うこと)。①③⑤⑧ は、下仲 ・村 瀬(1975)が

作成 した自己概念 を評価するSCT、 ②④ は、

岡本(1990)が 高齢者 の精神的充足感 を評価

するために作成 したSCTを 使用 した。

(2)PGCモ ラール尺度

高齢者の適応を評価する客観的な指標 として

PGCモ ラール尺度(全17項 目、Lawton,1975)

を実施 した。

2-3.面 接 手 続 き

面 接 の 目的 、 面接 が 途 中 で も中止 して よい こ

と、 プ ライバ シー は保 護 され る こ と を説 明 し、

PGCモ ラー ル 尺 度 、SCTの 順 で 口 述 筆 記 に よ

り実 施 した。 面接 所 要 時 間 は、 個 人差 が あ っ た

もの の 、 お よそ20分 か ら50分 で あ っ た。

皿.結 果 と考察

3-1.SCTの 結果と考察

まずSCT各 項 目回答を内容によって分類 し、

その後、下仲(1988)の 作成 した評定基準 を

参考に、各内容を肯定、否定、客観 ・中立に分

類した。各項目の分類は2名 の評定者(筆 者及

び臨床心理学を学ぶ大学院生)が 実施 し、判定

者間の一致率は82%~100%の 範囲であ り平均

は88%で あった。回答例 と分類 ・評定結果を表

3-1に まとめた。

次に、精神的特徴が各要因(居 住環境、加

齢、性差)で どのように影響するかを検討 し、

表3-2にSCT評 定結果を整理 した。更に、評定

のスコア化を行って平均値を算出 し、図3-3~

図3-8に要因毎に図示 した。

(1)居 住環境の影響

在宅高齢者 は全体 に中立的か ら肯定的であ

り、施設高齢者は一部の項目で否定的であり群

問で異なった傾向であった。特に、①未来の自

己と⑤役割については有意な違いが見 られた。

①未来の自己では、在宅群で 『意欲 ・奉仕』

(10名)が 最も多 く、55%の 人が肯定であるの

に対 し、施設群は 『死』(8名)が 最 も多 く、

59%が 否定であった。⑤役割では、在宅群で肯

定が72%を 占め、実際に 「役割がある」(12名)、

周囲との 『人間関係』を保つ(8名)、 家族を 『見

守る』(5名)等 が挙げられたが、施設群では、

自分の役割として 『過去の事実』を客観的に回

答した人が顕著に多かった(72%、23名)。

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高齢者にみられる精神的特徴に関する臨床心理学的考察

表3-1SCT分 類 ・評定 と回答例

分類n(%)評 定 例

旧皿e憬蜜

担暇

網咽e

受 容 ・満足23(33)

幸 福9(13)肯定

身体が弱かったですが、みんなの愛情で豊かに生活ができた

おじいさんもやさしかった し何もなく幸せな方です

否定 ・拒否14(20) 否定 主人が死ぬまではつらい思いを してきま した。今まではよくなかった

これまでは 自然に5(7)

何 もない10(14)

過去の事実6(9)

普通2(3)

中立

そんな悪いこともなくすんなり来た

いろんなことは考えな いようにしている

思い出すのは戦争のことばかりです

まあまあで した

受容 ・満足20(29)

意 欲7(10)

幸 福19(28)

肯定

現状に非常に満足している

とにかくしたいことがたくさんある、いろんなものに挑戦 したい

気楽に誰にも指図されずに自分の考えで生きていけるので幸せです

今の私は 死4(6)

否定9(13)否定

もういつで も死ぬると思っている

分かりません。幸せでない

普通6(9) 中立 中間だな、つらいことも気楽な ことも楽 しいこともなく普通

その他4(6)

意欲 ・奉仕15(22)

健康6(9)

人間関係6(9)

肯定

人様のために自分の力でできることなら何な りとやってあげたい

体に気をつけて元気に暮 らさせていただ く

みんな仲良く元気に生きられたらいいの になあと思います

死11(16)

これか らは 何 もな い7(10)

否 定 ・拒 否5(7)

否定

死ぬことしかない

もうここに来て何もかも考えることない様に思います

考えても仕方がない。できることもできないのだから

継続8(12)

自然に7(10)中立

この調子でずっといってくれたら結構です

自然にお任せ します

その他4(6)

刃Uゆ荊姻㊥

赳く㊥

.

遡粮ゆ柯被U

醸㊥

積極的受容20(29)

受動的受容20(29)肯定

主人に先立たれてから全く死 に対 して何の恐れもなく平穏な日々

死にたくないとかはない、自然にお任せ

死に対 して、 否定的受容6(9)

私は 否認11(16)

恐怖4(6)

否定

待ってる、これ以上生きないでもよい、寂 しいし行くところもない

そういうことは考えない、考えないようにしている

もうなあ、恐いです、一人でいくの寂 しい

死方願望8(12) 中立 うちの母は楽 に亡くなったから、 自分もそんな風に

受 容 ・感謝16(23)

意 欲5(7)

幸 福18(26)

肯定まあいろんなことがあって苦労もしたけど自分の運命やなあと思う

常に前進ですな

幸せで した

否定11(16)私の人生は

拒否2(3)否定

母と別れるときにつらかったし、父が病気 にな ってつらかった

どうでもなれという気持ち、ダメになるから考えないよ うにする

過去の事実8(12)

普通8(12)中立

戦争中に父が死に、戦後兄が病気になって昔の方がいろいろあった

まあまあ平凡ですわな

その他1(1)

受容 ・感謝13(19)

意欲5(7)肯定

すばらしい、苦 しい事 も含めて一生勉強だと思います、年をとっても進歩していくもの

生きると 難しい18(26)

いうことは 否定14(20)否定

難 しいと思います

自由にならん、若い時から勉強できる環境がなかった り

知恵15(22)

自然に4(6)中立

自分の考えを大きく持って、体のことや ら嫌なことを忘れる

自然任せ、考えたってどうなるものでもなく

配継⑤

役割がある12(17)

見守る6(9)

人間関係8(12)

私の役割は 邪魔 しない3(4)

肯定

会社を健全 にすること、家族を幸せにすること

もう会社を辞めた し、後は孫たちを見守 ってゆくくらい

お嫁さんと子供たちとお話できること

子供たちに迷惑をかけないこと

役割がない14(20) 否定 何もすることないからない、その 日が済めばよい

過去の事実25(36) 中立 女としての役割、終始子供を育てて母親だった

そ の他 囑1(1)

量胆

興味がない30(43)私にとって 信仰がある22(32)

宗教とは 先祖17(25)

あんまり興味ない、あってもいいと思うけど信じすぎたらあかん

自分の中では大きい存在、 しんどいときに頼 ります

先祖の霊 に感謝するのみの 日々 です

二瞹e

ぐθ

特 にな い16(23)

死15(22)今の 私の

家族15(22)願 いは

健 康15(22)

何も思うことはない、思っても仕方ない

苦 しまず に死にたい

家族みんな元気で達者でいてほしい

夫婦の健康

その他8(12)

り16

曲、

セ盤◎

何 もな い22(32)

家族 ・夫11(16)

死9(13)時 々、私 は 意欲6(9)

否定6(9)

時々考えることなんて何にもないです

子供のこと、どうしているか、親だから考える

あんまり長わずろいせんとお迎えが欲 しい

いろんなことを知ってやっていこうという意欲はある

泣いているだけ

その他15(22)

合計69(100)

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佛教大学教育学部学会紀要 第3号

表3-2SCT評 定結果(居 住 環境、加齢、性差の影響)

過去の自己 現 在の 自己#1 未来 の 自己#1 死に対する態度 人生 生きること 役割at

総計 肯定 中立 否定 肯定 中立 否定 肯定 中立 否定 肯定 中立 否定 肯定 中立 否定 肯定 中立 否定 肯定 中立 否定

居住 在宅 36 2088 2526 18114 2547 2565 13815 2628

環境 施設 33 12156 2147 9419 15414 14118 51117 3236

df=2 x2=4.29 x2=/: x2=ア6.0*** x2=4.71 xZ=S.14 xz=4.03 xZ=36.ア***

高齢前期 22 1084 1515 1136 1624 1552 787 1434

年齢 高齢後期 23 1346 1712 976 1139 1265 8312 1463

超高齢期 24 9114 1446 7511 1338 1266 3813 iis7

df=4 x2=4.45 x2=4.83 xz=4.45 xZ=3.20 x2=2.54 xZ=6.80 x2=23.9***

女性性別 50 22199 3368 181219 32711 261410 131423 182111

男性 19 1045 135 934 8110 1333 559 1143

df=2 x2=1.88 x2=3.06 xZ=1.92 x2=6.29* x2=ア.62 x2=0.02 x2=3.55

計 69 322314 46613 271523 40821 391713 181932 292514

#1:分 類にあてはまらない回答を一部除外 ***ρ<.001,*ρ<.05

在宅 施設

図3-3居 住環境 の影響1

肯定+1

0

否定一1

在宅 施設

図3-5加 齢 の 影 響1 図3-7性 差の影響1

図3-4居 住環境の影響2 図3-6加 齢の影響2 図3-8性 差の影響2

その他、両群間で違いが見 られた点を挙げる

と、②死に対する態度で、『積極的受容型』は

両群同数(各10名)で あるのに対 し、『受動的

受容型』は在宅群で15名 、施設群で5名 と異

なっていた。③人生に対する態度では、在宅群

で、人生を 『受容 ・感謝』 している(ll名)、

現在 『幸福』である(10名)等 、肯定が多かっ

たが、施設群では肯定のほかに 『普通』(7名)

といった中立的な回答が比較的目立っていた。

①過去の自己では、『何 もない』が在宅群で1

..

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名、施設群で9名 と特に異なっていた。

(2)加 齢の影響

⑤役割で群間に有意差がみられ、前期 ・後期

群で肯定が60%以 上であったのに対 し、超高齢

群では 『過去の事実』を客観的に回答 した人が

多かった。他の項目では大 きな違いが見 られな

かった。

次に居住環境 ごとに加齢の影響を調べた。在

宅 ・施設群聞で傾向に違いの見 られた点を以下

に記す。

①過去 ・現在 ・未来の自己では、在宅群は過

去 ・現在の自己は加齢に拠 らず肯定的で、未来

の自己は加齢により肯定が若干減少する傾向で

あった。施設群は3項 目とも高齢前期の肯定が

少ないことが特徴的であった。

②死に対する態度では、在宅群は超高齢期で

否定が多かった(4名 中2名)の に対 し、施設

群は加齢とともに否定から肯定へ変化 し、在宅

群とむしろ逆の傾向を示 した。

⑤役割では、在宅群は高齢前期 ・後期で多 く

の人が役割を自覚しているものの、超高齢群で

役割があると答 えた人はいなかった。施設群

は、加齢に拠 らず客観 ・中立的に過去の役割に

ついて述べる傾向を示 した。

(3)性 差の影響

性差で有意だった項 目は、②死 に対する態

度、⑥信仰であった。残差分析の結果、②死で

は、『否定』で男性(52%)が 女性(22%)よ

り有意 に多 く、⑥信仰では、『先祖』を大切 に

する人が女性で有意に多かった。

(4)考 察

(i)居 住環境の影響

居住環境による精神的特徴の影響は大 きいと

考えられた。

在宅高齢者は、現在 と過去の自己で満足感を

示 し、未来の自己で意欲的であった。一方、施

設高齢者は、現在の自己で在宅者と同様に幸福

感や満足感を示し、概ね肯定的であった一方、

高齢者にみられる精神的特徴に関する臨床心理学的考察

未来の自己で、死や未来がないことを回答 した

人が多 く、在宅 ・施設問で顕著な違いがみられ

た。下仲(1988)に よる と、在宅高齢者 は、

過去の自己把握は基本的に肯定的であり、 自己

の未来の終極に死や老化を設定して、限りある

未来を積極的に生きようとする意欲が強くみら

れ、施設高齢者は、過去の自己で客観的、未来

の自己で肯定的姿勢が少なかったと述べ られ、

本研究の結果と同様の傾向となっている。

役割では、在宅高齢者は、現在の役割を自覚

している人が多い一方で、施設高齢者は、 自分

の役割はこうであったと過去を振 り返る傾向に

あった。回答内容を詳しくみると、在宅高齢者

は、年齢に関わらず仕事や主婦業等の明確な役

割 を持つ人 と持たない人 との個人差が大 きい

が、明確でなくても、家族 を見守る、邪魔をし

ない等のいわば間接的役割 を答えた人が多かっ

た。一方、施設高齢者は、間接的役割を答えた

人 も少なく(3名)、 一様に過去の役割につい

て答えていた。この結果から、入居によって家

族や社会から離脱する自覚が、施設高齢者に存

在するのではないかと考えることもできる。

(ii)加 齢の影響

精神的特徴に与える加齢の影響は、高齢者全

体 としては顕著でなかった。下仲(1988)の

言う、加齢の影響 は自己概念の次元で一様でな

いという結果を支持するものである。

一方、本研究では、在宅群 ・施設群間で加齢

の影響に違いがみられた。在宅高齢者では、加

齢に伴い過去 ・現在の自己を除く各項 目で、肯

定から否定へ、特 に、後期から超高齢期におけ

る変化がみられた。施設高齢者では、過去 ・現

在 ・未来の自己に関して高齢前期群が最も否定

的な反応を示した。つまり、居住環境間の精神

的特徴の差は前述したように全体では顕著な差

であるが、年齢層が高 くなるにつれ、その差が

少なくなる傾向にある。このような居住環境と

加齢の交互作用ともいえる傾向は、下仲の結果

189

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佛教大学教育学部学会紀要 第3号

にはみられない点である。ただし本研究では、

在宅高齢者の超高齢群、施設高齢者の高齢前期

群の人数が相対的に少ないため、更なる調査が

必要である。し

また超高齢群で、過去の自己を 『何 もない』

と回答し、未来の自己に 『死』を言及 し、時々

『死』を思い、人生に 『意欲』的でなく自然に身

を任 して生 きている、といった傾向が、高齢前

期 ・後期群 と比較して顕著であった。このよう

な 「生への興味の収縮」や、超高齢群で在宅 ・

施設問の差があまりみられなかったことは、超

高齢者像の表れであるといえないだろうか。

(iii)性差の影響

有意な性差の影響は、死の態度の否定が男性

で、先祖 を信仰す る人が女性で多いことであ

る。また他のSCTの 反応内容か ら、男性の特

徴 として、未来に意欲的であり、家族を見守る

役割を自覚 し、世の中のことを時々考えるとい

う傾向が示された。このことから、男性は、定

年退職後も何 らかの役割が意識化されていると

言える。これは、それまでの人生の役割から派

生した使命感や責任感等が、老後 も意識され続

けているのか もしれない。また、今回の対象者

では、男性の年齢層が比較的若かったことも無

関係ではないと考えられる。一方で、死の態度

で拒否的な反応を示す男性が多かったが、配偶

者との死別や施設入居等のライフイベン トで、

このような役割を失い、危機的 ともいえる精神

状態に陥った、とも考えられる。このことは後

の事例にて詳細 に検討 してい く。また、女性

は、未来の自己で、「家族や友人とうまくやっ

てい く」等の協調性の志向や、「このままの状

態で」といった継続的志向がみ られた点で男性

と異なっていた。

3-2.PGCモ ラ ール 尺 度 の 測 定 結 果 と考 察

(1)因 子 分 析

Lawton(1975)は 、 「心 理 的 動 揺 」「孤 独 感 ・

不 満足 感 」「老 い に対 す る態 度 」 の3つ の 因子 を

抽 出 して い る。 本研 究 で 因子 分 析 を行 っ た と こ

ろ、 そ の 因子 項 目が合 致せ ず、 特 に第3因 子 の

「孤 独 感 」が 大 き く異 な った 。一 方 、星 野(2001)

に従 い 因子 数2と して 再抽 出 した と ころ 、 十分

な 一 致 を示 し た 。 よっ て 因 子 数 と して2を 選

び、 因子 負 荷 量=.30以 上 か らそ の 下 位 項 目 を

構 成 した。さ らに、Lawton(1975),Liang,Asano,

etal(1987)の モ デ ル を参 考 に して項 目内容 を

決 定 し、 第 一 因 子 を 「心 理 的 動 揺 」、 第 二 因 子

を 「老 い を受 け入 れ る積 極 的 な 態 度」 と した 。

結 果 を表3-9に 示 す 。

(2)居 住 環 境 、加 齢 、性 別 につ い て の分 析 結 果

2つ の 下 位 尺 度 に つ い て そ れ ぞ れ 、 居 住 環

表3-9因 子分析結 果と下位尺度 の決定

下位尺度

(質問項 目)

因子分析結果

因子寄与 累積寄与率(%)

因子得点

平均 分散Cronbachの α係数

「心 理 的 動 揺」

(4,7,12,16,17:計5項 目)2.69 19.91 3.701.92 0.631

「老 いを 受 け 入 れ る 積 極 的 な態 度 」

(1,2,6,8,9,10:計6項 目)1.38 32.25 3.522.84 0.650

表3-10各 要因(居 住環境、加齢、性差)に 関するPGC下 位尺 度得点 の分散分析

要因 居住環境 年齢層 性別 居住環境×年齢層 居住環境×性別 年齢層×性別

心理 的動揺

老いに対する積極的な態度F値

0.001.41

19.19***1.26

0.06

0.03

1.44

2.30

1.72

0.oi

0.72

0.00

***ρ<.001

190

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境、加齢、性別 を要因 とした分散分析を行っ

た。結果を表3-10に示す。

(3)考 察

「心理的動揺」では、平均 して得点が高 く、

加齢や居住環境 に関わらず安定 していた。下仲

ら(1981)の 研究では、加齢 とともに増加す

る身体的不安が施設入居によって安定化すると

された。本研究では、施設高齢者の平均年齢が

在宅高齢者に比べ高かったため、「心理的動揺」

は結果的にで変化 を示 さなかったとも考えられ

る。

「老いを受け入れる積極 的な態度」では、主

効果は居住環境で得 られ、施設群は有意に低得

点であった。下仲 ら(1981)は 、施設者が入所

後の集団生活に適応するためには、自己主張す

るよりもお世話になります といった依存的受け

身的な姿勢が有効であろうと考察 したが、施設

者のこのような依存的傾向が前記主効果に表れ

ていると考えられる。ただし、施設入所する人

は、そもそも老いを受け入れる積極的な態度を

示 さず依存的傾向が強いとも考えられ、結論に

はさらなる検討 を必要 とするだろう。

また、交互作用は得 られなかったが、施設者

の高齢前期において顕著に低得点であった(4

名の平均が1.25点)。 これは、比較的若い年齢

で施設入居 したことにより、未来への展望が持

てなくなり、ある種の絶望感やあきらめといっ

たものを生 じていることに関係 していると考え

られないだろうか。

3-3.高 齢者の精神的特徴のまとめ

SCTの 結果、在宅高齢者 は、各項 目とも肯

定的であったが、施設高齢者は、未来の自己に

否定的で、現在 の役割 を持たない点が顕著で

あった。また、施設高齢者の高齢前期では、現

在 に否定的な危機型が多 く見受けられたこと、

超高齢期では、在宅高齢者 と施設高齢者の差が

みられなかったこと、が特徴として挙げられた。

高齢者にみられる精神的特徴に関する臨床心理学的考察

PGCモ ラール尺度の結果、高齢者は概ね心

理的に安定 していることが示 されたが、老いに

対する積極性の点で、在宅 ・施設問で異なる傾

向を示 した。

以上 の結果か ら、高齢者の精神的特徴 とし

て、主に3つ の型が探索的に考えられる。1つ

は在宅高齢者に多い 「意欲 ・継続型」であり、

自己の追求に意欲的で、役割を自覚 し、老いを

積極的に受容している型である。2つ めは、施

設高齢者の高齢前期(75歳 未満)に 多 く見受

けられた 「危機型」であ り、自己に対して否定

的で生きる意欲が低 く、老いを受け入れていな

い型である。3つ めは、施設高齢者に多い 「人

生幸福型」であ り、未来に意欲を持たず役割の

ないことを自覚しているが現在の自分や人生に

は幸福感がある型である。この型においては老

いを受け入れる態度は一様でない。また在宅高

齢者の超高齢期 もこの型と同様の傾向を示した

ことから、超高齢期に多い型であるともいえる。

W.総 合 的考 察

4-1.「 意欲 ・継続型」

本結果か ら明らかになった 「意欲 ・継続型」

では、役割を自覚し、未来を肯定的に捉えたこと

が特徴である。人は、個人差があっても、生産

的な仕事や実際的な親役割からいずれ離れてい

く。Henry(1965)は 、老年期が青年期や成人

期と異なる点は、時間における概念だと述べて

いる。老年期とは、「関与からの解放」であり、

様々なことに従事 しなければならなかったこれ

までの感覚とは異なるとしている。つまり、老

年期では、自らが何かを選択 し、社会的相互的

に関与してい く視点が、これまでと変化すると

述べ ている。それ故 に、自己決定するという

「自立」が重要な概念となって くるであろう。

役割について全体的にみると、加齢と共に実

際的な仕事から退き、周囲の人 とこれまで通 り

191

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佛教大学教育学部学会紀要 第3号

に仲良くやってい く、家族をそっと見守ってい

くことが 自分の役割 として自覚 されていた。

Cumming&Henry(1961)は 、この ような役

割を柔軟に変化 させてい くことが重要であると

唱えた。役割が変化 しても、何 らかの 「役割が

ある」と自覚 した人は、役割のない人と比べ、

未来を意欲的に捉 える、あるいは、 このまま継

続すると考 えてお り、今まで生きてきた人生 を

肯定視 し、現在の自己に満足 し、さらに老いを

積極的に受け入れることと関連していた。 これ

は、人生の満足度と活動(社 会的相互作用)が

大きく関わっているという活動理論を支持 した

結果であった。

では、高齢者にとって未来とは、どのような

意味があるのだろうか。Erikson,E.H.ら(1986)

によると、そもそも未来とは、これからやって

くると思われる人生の季節に対するある種の心

理的な準備を意味するものであ り、数十年は続

くだろうと思われるその人個人の期待なのだ

が、老年期にとっては、無限の未来ではなく、

はるかに不確実なものであると述べた。しかし

ながら、Erikson,E.H.ら(1986)の バークレー

調査(1981)の 結果では、「それで も実際は、

相変わらず 自分たちの未来を人生そのものの一

部と考え今までの生活がそのまま継続するとい

う見地か ら話をす る(p67)」 と述べている。

本調査の結果も、「お友達 と旅行に行 きたい。

楽 しみです」等の回答がみ られ、「未来を活動

の時間(p68)」 として捉えている人や、「この

まま続 くでしょう」と時間というものを 「いつ

までも価値ある資源(p68)」 として捉 え、さ

らに、「自分のや り残 したことを十分にやって

い く」といった 「自分のための道標を未来に設

定する(p68)」 人が見受けられた。

「死」という未来 をどのように捉えているか

は後述する。

192

4-2.「 危機型」「人生幸福型」

一方、本調査では 「役割のない人」 も多く、

半数以上であった。これは、様々な社会的関与

か ら解放され、自由になった時間を自らの意志

で選べない人と考えられる。例えば、身体的衰

えにより介護が必要な人、「息子が勧 めたか

ら」、「周囲に迷惑をかけた くないから」と施設

入居 した人である。これ らの人にとって、「関

与か らの解放」(Henry,1965)が 何を意味する

のだろうか。

役割がない と回答 した人で、未来を肯定的に

捉 えている人はほとんどいなかった。彼 らに

とって未来 とは、「死ぬだけでしょ」「もう何も

あ りません。今更未来なんてあ りますか」等

と、「意欲 ・継続型」と異な り、もはや無限の

未来ではなく、死 とい う確信がさらに身近に強

まっているようである。

人数は少なかったものの、特徴的だった 「危

機型」は、上記に加 え、「老いに対す る積極的

な態度」が低得点だったことか ら、老年期の課

題に対する抵抗あるいは嫌悪感を示し、現状を

受け入れられず、その結果、 自己に対 しても否

定的で生 きる価値を見失っている状態である。

本調査でも、配偶者の死別や、病気で生 きる意

欲を失っている人が見受けられた。特に男性に

とって、配偶者 と死別することは大 きなライフ

イベ ントであ り危機 を招 く可能性がある。(河

合ら,1990,前 田ら,1988)期 待すべ き未来が、

ほとん ど終わりに近づいた として否定的に捉

え、死別や病気等危機的なライフイベ ン トを

きっかけに過去 を振 り返 り、人生を 「自分の人

生は無駄であった」「後悔 している」 と評価 し

た場合、危機的 というよりむ しろ絶望 に近い

(Butler,1963)o

一方 「人生幸福型」では、役割がな く、限り

ある未来を感 じているものの、現在の自己や人

生には幸福感がある、もしくは客観的に述べた

ことが特徴である。いずれかのSCTで 家族へ

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の思い を語っているのが特徴であるが、これ

は、社会から離脱し、相互的関与がほとんどな

いものの、家族への心理的な関わりがあること

を示唆している。事例でさらに検討する。

また、今の私 は 「幸せ です」、これ まで は

「何 も心配 していなかった。これまではこれま

で」「よかった」 と言い切った人が多 くみられ

た。Erikson,E.H.ら(1986)は バーク レー調査

(1981)で 、「わた しの知る限 り後悔 はあ りま

せん」等という回答を得たが、これが必ず しも

生涯を通じての満足を示 しているわけではない

ことに注意しなければならないとし、恐 らくこ

のような人は、「擬似統合」の過程であると解

釈 している。疑似統合 とは、「受け入れ難いと

思われる要素を否定することによって、全体と

しては満足のいくのライフスタイルであったと

いう見方を構築する過程である(Erikson,E.H.

etal,1986,p74-75)」 。さ らに、過去 に選択

した決定や行動の進路を今は変更することはで

きないのだという考えを受け入れようと苦心す

る一方で、今更考えても仕方がないのだか らと

いう一種の諦念が窺えると解釈 している。

本研究ではそれが擬似統合であるかわか りか

ねるが、受け入れ難いと思う要素を否定するよ

りも、むしろあきらめの念が強いのかもしれな

い。この型には施設者が多いという本結果から

考えると、これが限られた環境で自分なりにう

まく適応 させている手段だと考えることができ

ないだろ うか。下仲(1981)は 、我が国の施

設高齢者が自己を明確化せず、回避i的であって

もそれは逆に適応する手段として捉えた。本結

果でも、「積極型」のように過去や現在の自己

を明確化せず、「言い切 り方」が見受けられた

が、適応面から考えると肯定的に捉えることが

できるだろう。さらに、この諦念は、 日本の文

化を考慮にいれると、自分個人の満足感や達成

感に浸るというより、むしろ家族等の周囲の気

持ちを感 じながら、また周囲の環境に適度に依

高齢者にみられる精神的特徴に関する臨床心理学的考察

存 しなが ら、あきらめに通じていくものかもし

れない。山口(2000)も 、高齢者 を人生の語

りか ら分類 した結果、我が国では未解決の葛藤

を解決 し、肯定的な意味を見出していくといっ

た意欲的な高齢者が全てではないことを示唆 し

ている。

このことは、仏教と関連 して考えてみると興

味深い。奈倉(1999)は 、仏教 の根本思潮で

ある 「三法印」の教 えを 「常に変化するのが も

のごとの自然な姿であ り、失われることを嘆い

たり、過去に執着することが苦を生み出す。そ

してともすれば自己中心的な考えに陥りやすい

のが人間であるが、ものごとは自分の思い通 り

に運ぶものではなく、様々な人や 自然や社会の

動きの中で展開してい くものだということを心

にとどめるべきだ」と述べている。本結果で、

仏教 を積極的に信仰 している人は32%と 多 くは

なかったが、我が国で仏教が宗教 という独自の

世界観 を確立しているというより日常に浸透 し

ていると考えると、「言い切る」 ことも高齢者

の知恵なのかもしれない。

しかしながら、実際、今までの生活に全 く執

着を示 さない ということは当然難しい。「人生

幸福型」の事例か らもわかる様に、「十分に生

きま したから」 といった気持ちを抱 きなが ら

も、人や社会との関わりがある限 り、どこかで

「生」に思いを馳せるのかもしれない。

いずれにしても、様々なかかわ り合いを縮小

した結果、家族 を含めた 「関わ り」に未練をあ

まり感じない、あるいは未練があったとしても

自分な りにこころの中に納めている人が 「人生

幸福型」であると言えるか もしれない。

4-3.死 に対 す る 態度

これ らの3型 の 共通 の課 題 と して 、 必 ず 訪 れ

る 「死 」 が あ る。 本 結 果 で は、 約60%の 人 が 死

を 「当 然 来 る もの」 と して捉 えて い た 。

Erikson,E.H.ら(1986)は 、 生 活 が あ ま り活

193

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佛教大学教育学部学会紀要 第3号

発でなくな り、いつ死んでもいい、死にたいと

口に出したとしても、実際は、人生への感覚的

愛着を味わっているようで、人生を価値あるも

のにするのは、子供や孫への思いであると述べ

た。本結果か らも、「十分に生きましたか ら、

いつ死んで もいいです」等 と答 えている一方

で、「孫のことが心配です」「息子が会いに来て

くれます」等と家族への思いを語った人が少な

か らず見受けられた。

また、「自然に任せ ます。」と回答した人も多

かったが、加藤 ら(1977)に よると、一般に

日本人の死に対する態度は、あきらめをもって

受け入れられている。その背景は、死と日常生

活上 との断絶、すなわち、死の残酷で劇的な非

日常性を、強調 しなかった文化であると述べて

いる。これは 『受動的受容型』が 『積極的受容

型』と同数(各20名)で 多かった結果からも頷

ける。

さらに、河合(1991)に よると、死は 「自然」

の現象であり、西洋の近代の自然が人間にとっ

て客体的対象 として考えられる一方で、「本来

的にそうであるもの」 という。つまり、日本人

の生死の隔壁が薄い死生観によって生きている

と述べている。本結果でも、「まあ自然にまか

せます。深 くは考えません」 と死をなんとなく

漠然と境界をあいまいにさせている人が見受け

られた。

本調査のSCT項 目で、性差に有意差がみ られ

たのは、「死に対す る態度」 と 「宗教」であっ

たが、その回答を各個人でみてみると、女性は

「お父ちゃんのところへ行きます。」「あの世に

言ってからお父さんとお話することがたくさん

あります」「家族のもとへ行 くのを楽しみにして

います」と何 となく死後も生命が永続するだろ

うという期待 に支えられて生きている人が見受

けられ、死をつきつめて特定の宗教に頼るので

はなく 「あの世」への親和性を示唆する態度が

多かった。一方で、「このような状態ではもう

194

死にたい」といった男性は、配偶者と死別して

お り、現実か らの不満足感から死を否定的にみ

ていた。宗教のSCT項 目において、「先祖を大

切 にす る」に分類 された男性が僅かひとりで

あったことも死への態度と関連しているのかも

しれない。

V「3類 型 の個別 的検 討」

これら3類 型の中か ら代表例を取 り上げ、事

例検討を行 う。

5-1.事 例一1(意 欲 ・継続型)

Aさ ん 男性 ・72歳 ・在宅(面 接時間:70分)

1.生 活史:15歳 までの10年 間続いた戦争で自

分 の価値観が揺 らぐが、大学 を卒業 し就

職。やればやるほ ど成果はあが り、その

後、社長を長期に渡 り務め70歳で引退。現

在は、妻と海外旅行に出かけたり、勉学に

励む。

2.臨 床像:「 伝 えたいことがた くさんある」

と意気揚々と話す姿、堂々たる態度が印象

的。歴史上の人物の名言等 も引用 し、知的

に高い面も窺 えた。

3.PGCモ ラール尺度結果

「心理的動揺」

「老いを積極的に受け入れる態度」

4.SCTの 結果 表5-1

5.考 察

3点

6点

Aさ ん は前 期 高 齢 期 の 在 宅 者 で あ る。 「関 与

か らの解 放 」(Henry,1965)と い う劇 的 な変 化

で は な い ものの 、 仕 事 とい う社 会 的役 割 を 自分

な りの 方 法 で 収 縮 し て い る 。故 に 「口 を挟 ま

な い こ と」 が 役 割 に な る と同 時 に、 限 りあ る時

間 に気 づ きや り残 してい る こ と に活 力 を注 い で

い る。 大 学 の聴 講 生 や 旅 行 は、 役 割 の 「代 替 」

(Friedmann&Havighurst,1954)と い え る で

あ ろ う。

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高齢者にみられる精神的特徴に関する臨床心理学的考察

表5-1意 欲 ・継続型(Aさ ん)のSCT

これまでは「戦争で大変な時期 もあった。食物も何もなかったなあ。で も、就職 して、世の中は右上が り、どんどん伸びていっ

たな。そんな時期にサラリーマンとしては最も幸せな時期を過ごしたと思います。幸せです。」

今の私は

「現状に非常に満足や。仕事を70ま でやっとったが、平均寿命から考えると、後10年 しか残 って いないことに、は

たと気づいたんや。一度失った ら手に入 らないものは、時間や し、これからは、 自分のや りた いことをやって、カ

を最大限に伸ばしていきたい。まあ、思った道を進んでいきたいね。今は、大学の聴講生をやった り、妻と海外へ

行ったり、や り残 したことをやっていますわ。」

これからは「日本は、徹底的に悪くなるか、再び繁栄 していくのか、両極端に別れるでしょう。何となく幸せだということはも

うありえませんわ。勉強をやる人とや らない人では大きな差がつ くと思いますよ。」

死に対 して、

私は

「仕方のな いことで しょ。自然の成りゆきだから。大事なのは、人間は皆死ぬけれど、や りたいことをやり尽 くすと

いう努力をすることです。まあ 自分では覚悟できているつもりでも、いざとなったらわか らんな。できればころっ

と死 にたい、なんて思っているということは、やっぱ り恐怖心はあるのかも。でも今死んだとして も、納得 して死

ねる気が します。未練があまりないところまできているから。」

生きると

いうことは

「一生勉強だと思います。年をとっても進歩していくもの。記憶力は衰えていくけども、神話など、感性の面で習得

していくことができる。これからも続けてゆく。これは自己満足やな。いろいろ経験 したことを友達と語 り合いたい。」

私の役割は「あまりな い。強いて言 うと、仕事で口をはさまないこと。聞かれれば意見を言いますが、差 し出がま しいことはあ

まり言わないようにしておる。それと、自分の役割として生きている間は、妻と徹底的に仲良くやってゆくことか。」

今の願いは 「や りたいことをやるためにはとにかく健康です。」

PGCの 高得点の条件は、Lawton(1972)に

よると 「自分自身への基本的な満足感」 と 「環

境のなかに自分の居場所がある」だが、今の自

分を 「非常に満足 している」 と語ることや配偶

者や友人との関係性からもわかる。

鑪 ら(1997)に よれ ば、「自我の統合」 と

は、「過去の経験をプラスもマイナスもすべて

受け入れ、そこから人生の最後のとりくみない

し、生き方の姿勢を獲得 してい くことを意味し

ている。これは、自然な現象であるというよ

り、意志的に努力して得 られる心的プロセスで

ある(p29.)」 。Aさ んは、戦争や仕事等のこれ

までの経験を受け入れ、退職を機に、残 りの人

生に意欲的である。また、記憶力は衰えても、

感性等の面では、「進歩する」と考えているこ

とから、これまでの価値観とは異なる側面を感

じ始 めているのだろ う。これがAさ んにとっ

て、人生の最終段階へ向かうとりくみなのかも

しれない。

また未来では、日本の現状 と未来への不安を

熱心に語ったが、70歳 まで作 りあげてきた、言

わば経済的価値観から、宗教感などを含め徐々

に広が りつつある視野が今後 どのように変容 し

てゆくのだろうか。役割を収縮できても、長年

積み上げてきた個人の価値観から、退職後 さら

に創造 してゆくこと(Peck,1968)は 、容易で

はないことが窺える。

また、今の願いから、健康に不安 を感 じ始め

ている様子が伺 える。Havighurst(1961)は 、

身体の衰退などの喪失感による適応 と、同世代

の仲間でこれらの喪失感を分かち合えるような

人間関係を指摘し、Lawaton(1975)は 、モラー

ルを高 く保つことために動かしえないような事

実についてはそれを受容することが必要 とした

が、Aさ んが、「友人関係」を保ちつつ、今後

喪失にどのように適応 していくのかはさらに別

の課題である。

5-2.事 例一2(危 機型)

Bさ ん 男性 ・71歳 ・施設(面 接時間:20分)

1.生 活史:Bさ んは、新制高等学校を卒業後、

就職。転勤が多かった。55歳 のときに脳血

栓で倒れてから右片麻痺 となり、長い入院

生活を送る。3年 ほど前から娘の住居に近

い現施設へ移る。介護度は2で ある。

2.臨 床像:車 椅子から筆者の顔をじっと見つ

195

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佛教大学教育学部学会紀要 第3号

める目が印象的。ベ ット横に生前の妻の写

真が飾 られており、筆 と妻が よく似ている

と言い、 どれほど優 しかったか という記憶

を辿 り、涙 された場面 もあった。

3.PGCモ ラール尺度結果

「心理的動揺」

「老いを積極的に受け入れる態度」

4.SCTの 結果 表5-2

5.考 察

4点

2点

Bさ んは、「危機型」の最 も多かった高齢前

期の施設者に分類 される。Bさ んの場合、身体

的な衰退というよりは、中年期の働 き盛 りのと

きに急に訪れた予期できぬ否定的なライフイベ

ントであったと推察される。その事実が変わる

ことなく現在、未来へ と続 くことで、16年経っ

た 「今」もこの病気 を受容し難いものとして感

じられているようだ。老年期は、役割や身体面

の喪失をどのように適応するかが課題となるこ

とは既に述べたが、この身体的喪失が、予期で

きない時期に訪れ、一度に身体の自由を失い、

それがさらに自分の役割を喪失する形になって

いる。Havighurst(1961)が 喪失に伴 う適応 に

は、「代替」が重要であると主張 したが、その

「代替」がこのような場合、どのように選択で

きるのだろうか。

また、最も親密な人間関係、妻との関係も 「死

別」という形で喪失した。身体面での喪失が、

役割という喪失を重ね、数年後には人間関係を

も喪失した結果、「代替」などを可能にする状

態ではなくなり、現在の絶望に近い危機的な状

態へと繋がっている。

しか しながら、人間関係の喪失とは、厳密に

は日常生活での人間関係の喪失と述べた方がよ

いか もしれない。配偶者との死別に適応できて

いない と言い切ればそれまでなのだが、写真 を

見つめなが ら筆者に妻の姿を投影したことから

も、Bさ んにとって妻を思う気持ちが恐 らく今

でも様々な感情をもって存在してお り、相手か

らの実際的な返答がなかろうとも妻との関わ り

は続いているだろうと推察されるからである。

人生において 「まあまあいい方ではないかと」

と語 られたことは、生きてきた全てを否定的に

捉えるのではなく、過去を受容する姿が垣間み

られた。これは、16年 という長い間に培 ったB

さんなりの適応か ら得た ものであるか もしれな

い。Lawton(1975)に よれば、高齢者の適応

感とは、不良な方向に変化 しつつあるという自

己認知が欠如 していることである。また、長期

の身体不 自由な状態を客観的に捉えるのではな

く、自分が日々このような状態でいることに適

応 している面は、一種のあきらめといえるかも

しれない。

表5-2危 機型(Bさ ん)のSCT

これまでは 「サラリーマンで転勤も多くて。元気なときはいいこともあった。いろいろ後悔している。」

今の私は 「分か りま せん。 幸 せでな い。」

これからは 「何 も分か らん。」

死に対して、

私は「死んでしまいたい。早く家内のところに行きたい。すぐにで も早 く死にたい。そのうちではダメだ。」

私の人生は 「なんて言 うのか、まあまあ、いい方ではないかと思 う。」

生きると

いうことは「元気なときはいいなと思ったが、病気でぼや一っと思っていると死んだほうがいいと思う。」

私の役割は 「考 えた こ とな い。」

今の願いは 「死ん で しま いた い。」

時 々、私 は 「元気なときはいろいろ考えたが、15、6年 もこんなんだった ら何も分からない。死ぬることとかも考えていない。」

196

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高齢者にみられる精神的特徴に関する臨床心理学的考察

このように 「危機型」 とは、身体、役割、人

間関係など様々な喪失が重なり合う中で、異な

る視点や価値観が生み出せなくなった場合に陥

るということがわかったが、時期や状況、これ

まで生きてきた過程によっては、そのような価

値観が生み出すことが容易でないことも事実で

ある。しかしなが ら、時間とともに、あきらめ

かもしれないが、その耐えがたい喪失 した状態

に適応 している面 も評価すべ きであろう。

5-3.事 例 一3(現 在幸福型)

Cさ ん ・女性 ・82歳 施設者(面 接時間:15分)

1.生 活史:小 学校を卒業。夫が酒飲みだった

ので、若い頃は家を守 り、子供3人 を育て

ることに必死だった。43歳 の時息子と、73

歳の時夫 と死別。子供(息 子)に 迷惑をか

けたくないからと4ヶ 月前施設へ入所。そ

れまでは息子夫婦 と孫 と暮 らしていた。特

に現病歴はない。

2.臨 床像:背 中が丸 く、杖をついてゆっくり

歩 く。「役になんか立ちますかいな」 と笑

顔を見せなが ら語った。よくケラケラと笑

い、表情もあっけらかんとしていたが、 自

分のことを 「気がつ きすぎるからしん ど

い」と異なる一面も覗かせた。

3.PGCモ ラール尺度結果

「心理的動揺」

「老いを積極的に受け入れる態度」

4.SCTの 結果 表5-3

5.考 察

4点

4点

Cさ んは、「人生幸福 ・客観型」に最 も多かっ

た施設者に分類 される。あまり多 くを語 られな

かった。精神的機能を考慮すると、下仲(1978)

の述べた通 り、興味関心の範囲が薄れ精神内界

の収縮化が起こっているのかもしれないが、一

方で自分の中に 「もろもろ」 を収めた結果であ

る印象も受けた。これは、今更といったあきら

めからくるものも含んでいるかもしれない。短

い会話に収まったCさ んの人生は逆に多 くのも

のを含んでいる印象を受ける。今 も幸せ と語 り

ながらも、最後に質問以外に付け加えた言葉か

らも考察できるように、息子を思 う気持ちが切

実に感 じられ、また思 う故に自分の気持ちを言

い切れない切なさが伝わってきた。最後に言わ

表5-3現 在幸福型(Cさ ん)のSC丁

これまでは 「おじいさんもやさしかったし何 もなく幸せな方です。」

今の私は「今だって幸せですよ。のん気に暮らさせてもらっているから感謝 しています。何も思うことはない。 いつまでも長

生きしても迷惑かけるのが嫌やと思っているだけ。でも寿命があるうちは、無駄死にもできないし。」

これか らは「そんな もんあ りますかいな。人生もうないのに。子供が元気に事故にだけは遭わないように陰から拝むくらい。こ

こまで生きたらもう満足ですわ。」

死 に対 して、

私は

「恐いことは何もない。もういつ逝っても結構です。子供の写真見ながら、何も思い残すことはないから、いつでも

迎えに来ていいよって言っています。これがこころの慰めですわ。情けな い人生で しょ。」

私の人生は 「普通。結構だったと思っています。」

生きると

いうことは「難 しい。」

私の役割は 「終 りですの に何 もありません。お爺さんが呑気やったから家を守ってきた。」

今の願いは 「82も3も生きたら何 も思い残すことはない。」

時々、 私 は 「あんまり長わずらいせん とお迎えが欲 しいと思っています。」

その他、筆者との面接が終わる別れ際に、 自発的に 「ここにいるのは、息子が"お 母ちゃん、養老院行くの嫌か?"っ て聞くから"嫌

な ことないよ。あんたが探 してくれたらどこにでも行 くから"って言いました。嫁と私の間で気を使うのがかわ いそうや し。やっぱり

自分も気を使 うのは嫌やから、どこか長 く居させてくれるところ探 してもらおうかって気にもなった。で も自分の家にも戻りたいと

思 うこともあるけど、まあここに居させてもらうのが幸せなんや。何も考え無い様で考えたりもしますねん。」 と語 られた。

197

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佛教大学教育学部学会紀要 第3号

れた 「何も考え無い様で考えたりもしますねん」

という言葉がまさにこのような状況を語って く

れている。

Erikson,E.Hに よると、「英知」 とは、「死そ

の ものに向 き合 う中での、生そのものに対する

聡明かつ超然 とした関心」(1982,村 瀬 ら訳

1989,p79)で あ る。山口(1994)に よると

「英知」とは、人生において獲得し、守 り育て

てきたいっさいに距離をとり 「相対化」 し、死

に向き合う中で過去への執着、さらには、自己

その ものへの執着 を超克す る力である。さら

に、この相対化 ・断念の力であると同時に、身

近な人々や周囲に対する、生 き生 きとした 「関

心」ないしは 「愛」でもある。これ らの執着を

断ち切ることは、並大抵のことではない。

Cさ んの人生に対する言葉は、「普通」と答

えたことからもわかるように、距離をもって客

観視 された。 また、これまで生 きてこられたこ

とに満足感を示 し、思い残すことはなく、 もう

いつ逝っても結構です と語 り、死に向き合い、

過去への執着心はほとん どない。 しか しなが

ら、どこか寂 しそうな印象を受けたのは、今回

限 りの面接では分かりかねるが、 自分が居た場

所へ戻 りたいという自分の 「生」に対する気持

ちから生まれた感情と、息子への気持ちが絡み

合い、本当の気持ちを言い切れない思いがある

か らかもしれない。これが、Erikson,EH.が 述

べる 「英知」のような執着のない生への関心で

あるかは、議論の余地を残すだろうが、Cさ ん

は、自分に対する執着心よりも息子への愛を感

じていたといえるのではないだろうか。さらに、

この気持ちは、長生きした満足感と、息子より

長生きした罪悪感が入 り混じり、死別した息子

に迎えに来てもらうと思う中で死への親和性 を

感 じている、非常に微妙な気持ちが窺われた。

Erikson,E.H.ら(1986,p352)に よると、

アメリカ社会で高齢者にとって大切なのは 「活

力(vitality)」 であ り、それが生命力の呼吸で

198

ある。そのためには、「生き生きと(vital)」かか

わ りあい、「相互的経験 を含まなければならな

い」 と述べているが、Cさ んの事例を通して考

えられることは、相互的経験でなくとも、相手

を思う気持ちがあるときにそれは 「生き生きし

たかかわりあい」と言えるのではないだろうか。

さらに、Cさ んにとって大切なのは、「寿命」

であった。与えられた自分の寿命は、無駄にす

るべきではないとCさ んは感 じている。終末期

の高齢者のケアに携わる奈倉(1999)は 以下

の様に述べている。「人間は自分が生 まれよう

として生まれたのではない。また、死のうとし

て死んでい くのではない。いのちの働 きで自分

は生きてお り、心臓は自分が動けと命 じなくて

も動き、たとえ止まれと命 じても止まるもので

はない。この自分の意識を超えて働 くいのちに

まかせ、生命あるかぎり人間として生 きぬくこ

とが人間の務めではないだろうか」Cさ んの場

合も、いろんな思いを抱えていながらも、寿命

とは自分の意志でどうにかなるものではなく、

生かされているものという認識が根底にはある

ように思える。

Cさ んの事例を通 して、「人生幸福型」とは、

これまでの人生を自分のこころに収めてお り、

そ こから連続 して生 まれた思いが、「今」 と未

来の 「死」を評価 していることがわかった。そ

れは例えば、家族への思いであ り、その思いは

肯定、否定に関わらず 「生 き生 きとした もの」

であろう。

V【.ま とめ

様々な社会的関与か ら離れてい く時はやがて

やってくる。その時間をどのように捉えるかは

個人の選択である。社会的役割以外で も、何 ら

かの役割があると自覚 していると、満足感や意

欲感 も高い傾向にあることが本研究より明らか

になった。また、社会的役割か ら離脱 していく

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過程の中で、社会や人に対して個hに 合った関

わりを自らの意志で行ってい く、つまり自己決

定を行うという自立の概念が重要であると示唆

された。

一方で、そのような時間を自らの意志で選べ

ない人、選ばない人も見受けられた。家庭や社

会の役割が減少 し、身体的な衰退や居住環境等

により、若い時のように活動し、関わることが

困難な状況にある。そのため 「関わり」を手放

してゆく必要がある。つまり、喪失に適応 して

いかなければならない。

このような状況を受け入れることができない

人は、適応感や満足感も低 くかった。 さらに、

これまで生きてきた人生すら否定する傾向にあ

り、未来も否定的に捉えているため、絶望に近

い危機を抱えていると言えるだろう。

また、わりと自然に関わ りを縮小 していく人

も見受けられた。このような人は、 自己に固執

し、過去の達成感や満足感に浸 るとい うより

も、周囲の気持ちを察しながら、自分なりに今

の状態 を受け とめ、適応 しているようであっ

た。これは、日本という文化の中で形成された

自己の価値観と死を自然のものとして捉える死

生感からくることではないかと考える。

〈付記〉本論文は、佛教大学大学院教育学研究

科に提出した論文の一部を加筆修正 したもので

す。論文作成にあた りご指導くださいました佛

教大学大学院教育学研究科の大塚義孝先生、調

査にご協力 くだ さいました施設 ・病院 ・セン

ター並びに対象者の方に深 くお礼申し上げます。

高齢者にみられる精神的特徴に関する臨床心理学的考察

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