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構造設計指針・同解説 平成 30 4 東京都財務局

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構造設計指針・同解説

平成 30年 4月

東京都財務局

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目 次

第1章 総則 ································ P. 1

1.1 目的 ······························· P. 1

1.2 適用範囲 ··························· P. 1

第2章 構造計画 ···························· P. 3

2.1 一般事項 ··························· P. 3

2.2 構造形式及び種別 ··················· P. 4

2.3 上部構造 ··························· P. 5

2.4 基礎構造 ··························· P. 7

第3章 構造材料 ···························· P. 9

3.1 一般事項 ··························· P. 9

3.2 使用材料の注意事項 ················· P. 12

第4章 荷重及び外力 ······················· P. 14

4.1 荷重及び外力の種類 ················· P. 14

4.2 固定荷重(G) ······················· P. 14

4.3 積載荷重(P) ······················· P. 15

4.4 積雪荷重(S) ······················· P. 16

4.5 風圧力(W) ························· P. 16

4.6 地震力(K) ························· P. 17

4.7 その他の荷重 ······················· P. 18

第5章 構造計算 ···························· P. 21

5.1 構造計算の手順 ····················· P. 21

5.1.1 一般事項 ······················· P. 21

5.1.2 用途係数 ······················· P. 22

5.1.3 構造計算ルートの選定 ··········· P. 24

5.2 一次設計 ··························· P. 26

5.2.1 基本事項 ······················· P. 26

5.2.2 長期荷重時の設計 ··············· P. 29

5.2.3 水平荷重時の設計 ··············· P. 30

5.3 二次設計 ··························· P. 31

5.3.1 層間変形角 ····················· P. 31

5.3.2 剛性率・偏心率等 ··············· P. 32

5.3.3 保有水平耐力の検討 ············· P. 33

5.4 高度な計算法 ······················· P. 35

5.4.1 限界耐力計算・エネルギー法 ····· P. 35

5.4.2 時刻歴応答解析 ················· P. 37

第6章 躯体各部の設計 ······················ P. 42

6.1 共通事項 ··························· P. 42

6.2 鉄筋コンクリート造 ················· P. 42

6.2.1 柱の設計 ······················· P. 42

6.2.2 梁の設計 ······················· P. 43

6.2.3 壁の設計 ······················· P. 45

6.2.4 床版の設計 ····················· P. 47

6.2.5 柱・梁接合部の設計 ············· P. 48

6.3 鉄骨鉄筋コンクリート造 ············· P. 48

6.3.1 一般事項 ······················· P. 48

6.3.2 柱の設計 ······················· P. 49

6.3.3 梁の設計 ······················· P. 50

6.3.4 壁の設計 ······················· P. 50

6.3.5 床版の設計 ····················· P. 50

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6.3.6 接合部及び柱脚の設計 ··········· P. 51

6.4 鉄骨造 ····························· P. 52

6.4.1 柱の設計 ······················· P. 52

6.4.2 梁の設計 ······················· P. 52

6.4.3 筋かいの設計 ··················· P. 53

6.4.4 床版の設計 ····················· P. 54

6.4.5 接合部の設計 ··················· P. 55

6.4.6 柱脚の設計 ····················· P. 56

6.5 合成構造・混合構造 ················· P. 56

6.5.1 一般事項 ······················· P. 56

6.5.2 PC 構造 ························ P. 57

6.5.3 CFT 構造 ······················· P. 58

6.5.4 RCS 構造 ······················· P. 58

第7章 非構造部材 ·························· P. 59

7.1 非構造部材の耐震目標水準 ··········· P. 59

第8章 基礎構造 ···························· P. 62

8.1 地盤調査 ··························· P. 62

8.2 液状化等の検討 ····················· P. 63

8.3 直接基礎の設計 ····················· P. 65

8.4 杭基礎の設計 ······················· P. 66

8.5 地盤改良 ··························· P. 70

8.6 擁壁 ······························· P. 71

第9章 免震及び制振構造 ···················· P. 73

9.1 一般事項 ··························· P. 73

9.2 使用材料 ··························· P. 74

9.3 免震・制振構造 ····················· P. 74

9.4 保守管理 ··························· P. 75

第 10 章 耐震診断及び耐震補強 ··············· P. 76

10.1 適用範囲 ·························· P. 76

10.2 耐震診断 ·························· P. 77

10.3 耐震改修設計等 ···················· P. 78

第 11 章 躯体の品質確保と設計図書 ··········· P. 80

11.1 一般事項 ·························· P. 80

11.2 法令検査事項の記録 ················ P. 80

11.3 設計意図と施工品質の確認 ·········· P. 81

11.4 技術資料等の作成 ·················· P. 81

指針改正に当たり技術協力いただいた学識経験者について

付録 構造設計概要書

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第 1 章 総則

1.1 目的

この指針は、「設計基準(東京都財務局)」に基づいて建設する都立建築物の構造設計の目標水準

を示すことにより、必要な性能を確保することを目的とする。

《解説》

都立建築物は、不特定多数の都民が利用することもあり、地震等の災害に対する安全性を十分に

確保する必要がある。また、災害発生後、庁舎や医療施設等は応急対策活動の拠点となるほか、都

政の BCP(東京都事業継続計画)に基づき一定水準の行政サービスを継続する必要があり、災害に

強い施設づくりが求められている。

本来、構造設計は、実際の建築物を実況に応じて正確にモデル化し、その挙動を正確に把握す

ることが必要であるが、モデル化、解析手法等に伴う算定結果のばらつき、施工誤差など施工時の不

確定要素があるため、構造耐力上十分に安全となる配慮が必要である。

さらに、建築物の高層化や巨大化、鋼材・コンクリートなど材料の高強度化、海外生産による PCa

化や長周期地震動への対応など構造関係の技術は多様化・複雑化している。

このため、建築物の用途や防災上の重要度、施工上の不確定要素や大地震の発生予測などを考

慮して、本指針では、設計上の目標水準を示している。なお、これら目標水準のなかには「数値」を示

しているが、これらの数値は上記を基にした「推奨値」を想定しており、実際の設計に当たっては十分

な調査や検討を行い、安全性を確保できるという構造設計者の工学的判断を妨げないものとする。

1.2 適用範囲

(1) この指針は、都立建築物の構造設計及び工事監理に適用し、工作物、改修工事等において

は、この指針を準用する。

(2) 特別の調査、研究等に基づいて設計する場合及び地域的条件のある場合は、この指針によ

らないことができる。

《解説》

(1) この指針は、「設計基準(東京都財務局)」に基づき原則として東京都財務局が建築する全ての

都立建築物の構造設計及び工事監理に適用し、擁壁、防球フェンスなど「令」第 138条(工作物

の指定)に規定する指定工作物、屋内に懸垂される装置・装飾(建設省住指発第 157号・平成元

年 5月 16日)、設備基礎・建具など構造安全性を確認する対象物について準用する。

また、既存建築物の改修工事等においては、既存の躯体や設備機器等の状況、改修後の執務

スペースの確保など本指針を適用することが困難な場合が考えられる。これらの場合には構造上

の安全性を低下させないことを前提に、この指針を準用することとする。

(2) 特別な調査、研究等に基づいて設計を行い、必要とされる目標水準が確保できる場合は、この

指針によらないことができる。なお、高度な工学的判断を要する構造設計を行った場合等、設計

内容の妥当性を審議することを目的として、「財務局耐震安全委員会」へ付議することを検討する。

また、都立建築物を他県に建築する場合、当該自治体の条例・規則等に適合させるほか、自治

体独自の指針を用いて本指針の目標水準を確保する場合この指針によらないことができる。

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この指針の略表記は、本文で定義するほか、次の通り。

「RC造」 鉄筋コンクリート造

「SRC造」 鉄骨鉄筋コンクリート造

「CB造」 コンクリートブロック造

「S造」 鉄骨造

「PC造」 プレストレストコンクリート造

「PCa造」 プレキャストコンクリート造

「PRC」 プレストレスト鉄筋コンクリート構造

「WRC造」 壁式鉄筋コンクリート造

「法」 建築基準法(昭和 25年法律第 201号)

「令」 建築基準法施行令(昭和 25年政令第 338号)

「告示」 国土交通省告示(平成 12年度以前は建設省告示)

「JIS」 日本工業規格

「JASS」 建築工事標準仕様書・同解説((一社)日本建築学会)

「技術基準」 建築物の構造関係技術基準解説書(全国官報販売協同組合)

「都設計指針」 建築構造設計指針(東京都建築構造行政連絡会監修)

「荷重指針」 建築物荷重指針・同解説((一社)日本建築学会)

「RC規準」 鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説(同上)

「SRC規準」 鉄骨鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説(同上)

「S規準」 鋼構造設計規準(同上)

「S塑性指針」 鋼構造塑性設計指針(同上)

「基礎指針」 建築基礎構造設計指針(同上)

「RC配筋指針」 鉄筋コンクリート造配筋指針・同解説(同上)

「SRC配筋指針」 鉄骨鉄筋コンクリート造配筋指針・同解説(同上)

「RC靱性指針」 鉄筋コンクリート造建物の靱性保証型耐震設計指針・同解説(同上)

「WRC指針」 壁式鉄筋コンクリート造設計施工指針((一財)日本建築センター)

※上記の指針類は原則として最新版を使用すること。

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第 2 章 構造計画

2.1 一般事項

(1) 構造計画は、構造設計の担当者が計画の初期から意匠設計及び設備設計の担当者に協議

し、構造安全性を考慮し、設計条件や要求性能及び経済性を満たす構造体となるよう計画す

る。

(2) 敷地及び敷地周辺地盤について、地震その他に伴う崩壊の有無に関する検討等を行い、必

要に応じて適切な措置を講ずる。

(3) 極めて稀に発生する地震動(大地震動)に対して、所要の安全性を確保するため、東京都

震災対策条例(平成 12 年条例第 202 号)に基づく施設の重要度並びに地域防災計画等による

社会的位置づけに応じて、構造体、非構造部材、設備機器の耐震性能の目標水準を定める。

《解説》

(1) 構造設計は、構造計画、構造計算、計算結果の検証、設計図書作成という過程に大きく分けら

れるが、設計の初期段階である構造計画は特に重要な部分である。構造計画に当たっては、敷

地、地盤、建築物の規模や用途、将来計画、経済性、工期等の条件を満足させるとともに、施工

性等も考慮して手戻りなく進めることが必要である。

そのため、計画の初期段階から地形や道路幅員・敷地の環境条件、近況状況、設備機器の位

置や荷重の確認を行うなど意匠設計、設備設計の担当者と協議し、計画する。

(2) 建築物の敷地条件や周辺の地盤性状について次の事項を検討し、適切な措置を講じる。

(a) がけ地に近接して建築物を計画する場合

・高さ2m を超えるがけの下端からの水平距離ががけ高の 2倍以内のところに建築する場合は原

則として安全な擁壁を築造する。

・盛土で 30°以上、切土で 45°以上の傾斜面の場合、土質及び地層の状況を考慮した地盤の

すべり破壊の検討を行う。

・既設擁壁にふくらみや亀裂、あるいは排水不良がある場合、擁壁の安全性について詳細な検

討を行い、必要に応じて補強または土圧・水圧の低減などの措置を講じる。

(b) 砂質地盤で地下水位が高い場合

・液状化の発生有無の検討を行い、発生が予想される場合は液状化を考慮した基礎の設計、地

盤改良等の措置を講じる。

(c) 地盤沈下が予想される地域の場合

・不同沈下を軽減するため建築物基礎まわりの剛性を高くする、エキスパンションジョイントを設け

るなど建物への影響を少なくする対応を行う、負の摩擦力を考慮した杭の設計や地盤改良な

ど地業計画を適切に行う。

(d) 護岸の付近など地震時に地盤変動が予想される地域の場合

・地盤変動による強制作用力の影響を十分に考慮し、耐力及び剛性の高い杭や群杭を採用す

る。

・地震時に側方流動が予想される場合で杭のみで抵抗させる事が難しい場合は、地中連続壁や

地盤改良などを併用する。

(e) 都市計画道路等の指定がある場合

・計画道路等の施行後を想定し、基礎、擁壁、埋設物の位置、形状等を決定する。

(3) 極めて稀に発生する地震動(大地震動)において、構造体に求められる安全性には「人命の

安全確保」がある。また、地震発生後の災害対策活動拠点としての機能確保が各施設の条件に

より要求される。構造計画にあたっては、これら施設の重要度等に応じた目標水準を定める。各

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目標水準での耐震性能や留意事項は、本指針の「第 5章 構造計算」、「第 6章 躯体各部の設

計」、「第 7章 非構造部材」「第 8章 基礎構造」による。

2.2 構造形式及び種別

(1) 構造形式は、建築物に要求される諸性能を勘案して最適なものを選定する。一般に RC 造・

SRC 造では耐力壁付ラーメン構造を基本とする。

(2) 構造種別は表 2.1 を標準とする。

表 2.1 構造種別の標準

地上の階数及び高さ 構造種別

備 考 RC造 SRC造 S造

1階~6階かつ 20m以下 ◎ ○ ○ ① 階高、スパン及び積載荷重の大きなも

のは、混合構造など別途検討する

② 地階はこの限りではない

③ 塔状建築物は SRC 造・S造を原則とす

7 階以上及び 20m を超えるも

ので 45m までのもの ※ ◎ ◎

45m を超えるもの ※ ※ ◎

(注) ◎は標準、○は適用可能を示す。※は十分な検証を行う。

《解説》

(1) 構造形式は建築物の規模、用途、機能、経済性等により最適なものを選定する。この指針では、

建築物の平面計画上、構造形式による制約が比較的少ないこと、骨組に作用する力の流れが明

快であり応力解析がしやすいこと及び建築物としての強度とねばり両方を確保しやすいことから、

RC・SRC造では耐力壁付ラーメン架構を基本とする。

(2) RC造は、曲げモーメントに対しては十分な強度を有するがせん断力に対してはやや乏しい面が

あり、階数が多いほど耐震性を確保するのが困難になる。一方、SRC造は、RC造の強度とS造の

粘り強さが組み合わされているため、剛性・強度は RC造と似ているが破壊時に粘り強さを持ち、

変形能力が大きくじん性に富んでいることから、中高層や高層の建築物の構造種別として有利で

ある。

高層になると固定荷重の軽減、振動性状の明確化、工期短縮が図れる等施工性の点からS造

が有利となるが、剛性が RC造等と比較して低く、床振動や風荷重による居住性への配慮が必要と

なる。また、基礎構造の経済性との関連で軽量化を図る場合など、低層の場合でもS造を採用す

ることがある。

これら諸要素を考慮し、構造種別は建築物の地上階数と高さにより表 2.1 を標準とする。

(WRC造)

(a) WRC造は、耐震強度が極めて大きく、以下の用途などで採用することができる。

①箱形を構成する小規模な倉庫・機械室

②住宅など小間仕切りの多い建築物

(b) ラーメン構造と WRC造は変形性状が異なるため、原則として併用しない。ただし次に掲げる

部分で、建物全体に対する構造上の影響が軽微な場合については併用することができる。

①階数に算入されない塔屋など小規模なもの

②階段室

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なお、壁式ラーメン構造は、中高層壁式ラーメン鉄筋コンクリート造設計施工指針((一社)日

本建築学会(以下「建築学会」という。))が住宅用途を前提に作成されており、住宅用途以外に

は適用しない。

表内の検証を行うに当たっては、建築物の規模に応じて「都設計指針」を参考にする。

特に中高層建築物、塔状建築物は、同指針の構造審査要領に準じて、高さ 20m を超える RC造中

高層建築物および 45m を超える SRC造高層建築物は、「中高層建築物の審査要領」により計画

する。

2.3 上部構造

(1) 上部構造は、力学モデル及び応力解析が明快な架構とする。

(2) 大スパンの梁及びスラブは、有害な変形及び振動障害を防止するため、部材剛性を確保す

る。

(3) 建築物は平面的、立体的にバランスの良い形状とし、地震及び強風時の安全性を確保する。

(4) 構造体は、その変形により非構造部材及び建築設備の機能に支障をきたさないように設計

する。

(5) 部材配置、部材断面、接合方法等は、施工性、耐久性及び耐火性について検討し決定する。

《解説》

(1) 構造体は、構造計算上の仮定(解析モデル)が成り立ち、かつ確実な応力伝達が行われるよう

な部材・接合方式により架構を構成する。やむを得ず、柱・壁抜け、吹抜け、逆梁など応力伝達

の不連続性が生じ易い部分を設ける場合は、解析のモデル化にあたって十分検討するとともに

部材耐力、変形能力などに余裕を持った計画とする。

また、力学モデルの設定、採用する解析手法の違いによる結果のばらつき及び施工誤差等の

不確定要素に対応するため設計上の余裕を見込むなどの配慮が必要である。

(2) 大スパンの梁・スラブは、長期荷重における有害なクリープ変形や、地震力、風圧力等による有

害な変形及び振動障害が生じないようにする。RC造においてスパン長で概ね 15m、S造・SRC造に

おいて 30m前後のスパン長を超えるもの、長さ2mを超える片持ちスラブなどは上下方向の地震

動に対する影響を検討する。

(3) 水平力に対する抵杭要素の計画は以下に注意する。

(a)平面形

平面形は矩形を基本とする単純な形状と

するとともに、柱、壁等の耐震要素はバラン

スよく配置するなど、各階で位置が重なるよう

に計画することが望ましい。 各階の偏心率

は 0.15以下を目標値とし、やむを得ず 0.15

を超える場合は、形状係数を割増して必要

保有水平耐力の算出を行うほか、構造耐力

に余裕を持たせた設計を行う。

また、解説図 2.1に示す耐力壁が妻壁だけに配置される場合は、建築物中央部での面内変形

面内変形 耐力壁

耐力壁

解説図 2.1

耐力壁が妻壁だけに配置される場合

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防止に配慮した耐震要素の配置を行うか、床の剛性を考慮した解析を行うなど考慮が必要であ

る。

(エキスパンションジョイント)

以下に示す①~③の建築物にはエキスパンションジョイントを設ける。なお、十分な安全性が

示される場合はこれによらない。エキスパンションジョイントの間隔は、建築物相互の最大水平変

形の絶対値の和に対して設定し、構造解析より確認する。寸法の設定にあたっては「技術基準」

を参考にする。

① 長辺長さ(L)が 100m を超える、あるいは辺長比 L/B>10 となる長大な建築物の場合。(解

説図 2.2)

② T字形、L字形などの平面形状の複雑な建築物や、階数が著しく異なる場合。(解説図

2.3)

③ 水平的な増築(横増築)において、既存建築物に対し構造上別棟と扱う場合。

(b)立面形

建築物の上下方向にも質量分布、剛性分布を均整化するため、立面は矩形を基本とする単

純な形状とし各階とも同一の平面形状が望ましい。各階の剛性率は 0.6以上を目標値とし、や

むを得ず 0.6を下回る場合は、形状係数を割増して必要保有水平耐力の算出を行うほか、構造

耐力に余裕を持たせた設計を行う。

(ピロティ形式)

特定階がピロティ形式の設計では、上下階の水平剛性及び水平耐力に比較してその剛性及

び耐力は極端に小さくなる場合が多い。このような建築物は過去の地震において深刻な被害が

見られたことから、原則としてピロティ形式は採用しない。やむを得ずピロティ形式を採用する場

合は、「技術基準」付録 1-6「ピロティ形式の建築物に対する耐震設計上の留意点」を参照し検

討する。

(c) 耐力壁

耐力壁は平面的にバランスよく配置し、建築物にねじれを生じないようにする。さらに垂直方

向に連続して配置する。やむを得ず、耐力壁を下層部で抜く場合は、負担せん断力の伝達など

詳細な検討を行う。

(耐力壁に関する注意事項)

①主要な間仕切位置は剛接架構内に設け、耐力壁となるようにする。

② 耐力壁には原則として開口部を設けない。やむを得ず開口部を設ける場合には、壁板中央付

近の開口が望ましく、開口周辺の補強を十分に行う。壁の設計は、耐力壁とその他の壁を区

分して行う。(「第 6章 6.2.3 壁の設計」参照)

③ 開口が将来設けられる疑いのある壁は耐力壁としない。

④ 耐力壁面内方向の境界梁等、耐力壁に接続する柱又は梁端部の応力は、耐力壁に直接分

散されるのではなく、耐力壁周囲の柱及び梁を通じて伝達されるので、枠柱及び枠梁の断面

はこれに接続する柱又は梁の応力に耐えるものとする。

L

解説図 2.2 長大な平面形の建築物

B EXP.J

λ=50~80m 間隔程度

解説図 2.3 平面形が T 字形,L 字形の建築物

建築物の剛性及

び階数が著しく

異なる場合は、

単純なブロック

に分割する

10 階 4 階 12 階

EXP.J

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⑤ 耐力壁の断面算定の規定は、「第 6章 6.2.3 壁の設計」によるほか「RC規準」19条に準拠し

て行う。

(d) じん性の確保

構造体には十分じん性を持たせるなど、降伏後の崩壊を避けるようにする。また、構造体の変

形が非構造部材や設備等の機能に支障を及ぼすことのないように注意する必要がある。

(RC造のじん性確保の方法)

①十分なせん断補強を行い部材の変形性能を確保する。

② 腰壁や垂れ壁による短柱は、壁を乾式工法で施工することにより長柱化するか、開口等を工

夫して短柱にならないようにする。なお、やむを得ず構造スリットを設ける場合は、構造的な検

討のほか、防水等の機能性、耐久性及び施工性等も含め十分検討する。

③ 高い変形能力を期待する部位には、スパイラル筋、副帯筋等を用いる。高強度せん断補強筋

を用いる場合は、コンクリート強度とのバランスに配慮する。

(e) その他の上部構造に関する注意事項

① 標準的な柱の支配面積は極力次の範囲内とする。

・RC造:50㎡程度

・SRC造:70㎡程度

② 上部構造の解析において基礎梁は十分剛性の高いものとし、原則として内柱の剛比の 3倍以

上ある場合のほかは柱脚固定として応力解析してはならない。

③ 周辺固定スラブの短辺方向の長さは原則として 4m以下でかつ内法面積 24㎡以下とし、これ

を超える場合には、小梁を設ける。また、施工荷重及びスラブ自重によるたわみ等も十分に考

慮する。

④ ひび割れ防止は、鉄筋コンクリート系建築物の場合避けられない問題である。構造設計上で

のひび割れ防止は、各部材の各応力に対する余裕を十分確保することで予防できるとされて

いる。施工上のひび割れの検討に当たっては、「鉄筋コンクリート造建築物の収縮ひび割れ制

御設計・施工指針(案)・同解説」(建築学会)が参考になる。

2.4 基礎構造

(1) 基礎は、沈下等による障害を生じさせることなく、上部構造を安全に支持し、経済性を考

慮したものとする。

(2) 水平力に対する設計は、上部構造の機能確保に有害な影響を与えるような損傷を生じない

ように行う。

(3) 建築物が隣地と近接している場合は、地盤掘削等に伴う地中応力度の変化が隣地へ影響を

及ぼさないよう考慮する。

(4) 異種基礎の併用は行わない。ただし、基礎及び上部構造において、併用による障害が生じ

ないことを確認した場合は、併用することができる。

《解説》

この節は支持地盤の選定など基礎構造の計画における注意事項を示す。地盤調査方法、基礎構

造設計の詳細については、第 8章「基礎構造」による。

(1) 基礎構造は、「令」第 38条及び第 93条の規定により敷地及び地盤の調査等を行い、建築物の

規模、形状、構造形式を十分考慮し、安全に支持できるように設計するとともに、経済性を考慮し

たものとする。

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(a)地盤調査

基礎等の設計に先立ち、予備調査を行い、既往の資料等から地盤の種類や性状の概況を把

握する。それを基に建築物の規模や構造に適した基礎形式を想定し、必要な地盤の性質を把

握する調査計画を立て、本調査を行う。調査の段階を予備調査と本調査とに分け、設計の進捗

状況に見合ったタイミングで実施することが重要である。(「第 8章 8.1 地盤調査」参照)

(b)液状化対策

土を固めて抵抗力を増大させるほか、液状化層に加わる応力や間隙水圧の条件を変えて地

盤の変形を抑制する等、地盤改良により液状化の発生を抑える。また、液状化に伴う側方流動

の発生が想定される場合、基礎部分の耐力及び剛性を十分確保するなど対策を検討する。(第

8章「8.2 液状化等の検討」参照」)

(2) 水平力に対する設計は、地震力によるほか傾斜地に立地するなど片土圧を受ける建築物など

水平力の影響がある建築物を対象に行う。地震力による計算は原則として中地震を対象に行う

が、建物の重要度などに応じるほか、軟弱地盤上の建築物など大地震時に上部構造の機能確

保に有害な影響を与える恐れがある建築物に対して、大地震時を対象とした設計を行う。(「第 8

章 8.3 直接基礎の設計 8.4 杭基礎の設計」参照)

(3) 基礎部分の施工に際し、地盤掘削等が隣地へ影響しないことを確認する。特に周辺地盤及び

隣地建築物への騒音、振動、沈下等の有害な影響や危険を及ぼすようなことのないように、工法

の選定において以下の点に注意する。

①地下掘削に伴う周辺地盤の沈下及び隣接建築物の破損、あるいは地下水の変動による井戸

の枯渇、汚濁

② 杭施工に伴う騒音、振動、油等の飛散

③ 施工車両及び重機類の騒音、振動

④ 根切等に伴う塵埃

⑤ 泥水等の処理

⑥ 地下掘削時のベントナイト液使用による地下水の汚染

⑦ 排水、排土に伴う排水溝や河川の汚濁

また、将来隣地での地下掘削工事等による影響が予想される場合、あらかじめ基礎構造の設

計に余裕を見込んでおくことが望ましい。

(4) 異種基礎の併用は、鉛直変形量に差が生じ、不同沈下を起こすなど障害を生じる恐れがあるた

め、同一の建築物には原則として行わない。やむを得ず異種基礎併用とする場合は、エキスパン

ションジョイントにより構造的に別棟とする、それぞれの荷重沈下特性を戴荷試験等で十分確認

した上で、基礎等に不具合が生じないように設計する。

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第 3 章 構造材料

3.1 一般事項

(1) 構造材料は「法」第 37 条の規定に基づき日本工業規格に適合するもの又は国土交通大臣の

認定(以下「大臣認定」という。)を受けたものとする。

(2) 構造材料の組合せは、建築物の規模、構造種別及び各材料の特性を考慮して決定する。

《解説》

構造材料における規定は、以下のとおりとする。

(コンクリート)

(a) 設計基準強度は解説表 3.1 を参考に適切に定める。

解説表 3.1 コンクリートの種別と設計基準強度の目安

コンクリート種別 設計基準強度(Fc) 施設の規模等

普通コンクリート

18N/mm2 軽微なコンクリート構造物

21N/mm2 一般の中低層構造物

24~36N/mm2 用途係数 1.25以上の建築物、高層、大スパン構造

軽量コンクリート 21~27N/mm2 高層建築物で固定荷重の軽減が適切な場合

(b) コンクリートは、原則として JIS A 5308に適合するレディーミクストコンクリートとする。

なお、「法」第 37条第一号の規定に基づき、「建築物の基礎、主要構造物等に使用するコンクリ

ート」が適合すべき日本工業規格については、平成 12年「告示」第 1446号別表第 1において

「JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)-2014」と規定されている。したがって、下記に該当

する場合には大臣認定が必要になるので、注意が必要である。

1 再生骨材 M、L等の JIS A 5308 に適合しない骨材を主要構造部等に使用する場合

2 JIS A 5308-2014 に適合しない高強度コンクリートを使用する場合

(c) 軽量コンクリートは土及び水に常時接する部分には使用しない。

(地上部分にのみ使用する。)

(d) 「令」第 81条第 1項第四号及び平成 12年「告示」第 1461号に基づく(一財)日本建築セン

ター(以下「建築センター」という。)等の指定性能評価機関の「評価」等を取得した(超)高層建

築物及び免震建築物等で十分な施工実績があり、かつ品質・施工管理が適切に行える場合

は Fc=36N/mm2を超える高強度コンクリートを使用することができる。

(e)平成 27年 3月に公表した「第二次 主要施設 10か年維持更新計画」によれば、都有施設の

目標使用年数は「65年以上」としている。一方、「JASS」5 2015では、構造体の計画供用期間の

級に応じて、耐久設計基準強度が解説表 3.2のとおり決められているので、設計基準強度を定

める際の参考とする。

解説表 3.2 コンクリートの計画供用期間の級および耐久設計基準強度

計画供用期間の級 耐久設計基準強度(N/mm2)

短期(計画供用期間およそ 30年) 18

標準(計画供用期間およそ 65年) 24

長期(計画供用期間およそ 100年) 30

超長期(計画供用期間およそ 200年) 36

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(鉄筋)

(a) 鉄筋は異形棒鋼とし、SD295、SD345、又は SD390で JIS G 3112 に適合する製品とする。鉄筋

の種別及び継手工法は、解説表 3.2 を標準とする。

解説表 3.2 鉄筋の種別及び継手工法の標準

鉄筋種別 継手工法 使用範用

SD295

ガス圧接 配筋が交錯して重ね継手が適切でないもの(圧接は SD295Bが望ましい)

重ね継手 一般の壁・スラブ等の鉄筋、一般の帯筋・あばら筋、小規模の建築物及び壁式構造の主筋

SD345

ガス圧接 一般の建築物の柱及び梁等の主筋

重ね継手 応力の大きな地下壁及び耐圧スラブ、場所打ちコンクリート杭の主筋、 大きなせん断力を受ける帯筋、あばら筋

SD390 ガス圧接 応力の大きな柱及び梁の主筋

(b) 同一現場内の鉄筋の径、材質は原則として統一し、施工上の混乱を避けるためにも同径のも

のは材質も同じとする。

(c) 建築物の規模、構造形式により、他の継手工法が適切であると判断される場合には、上記以

外の継手を用いることができる。太径鉄筋等で経済性及び施工性を考慮し、適切と考えられる

場合は、平成 12年「告示」第 1463号に適合する機械式継手等としてよい。

ただし、これらの継手は継手部の強度・剛性等の性能に応じて SA級、A級等のランクに分けら

れ、構造計算ルート、使用部位に応じて規定されていることに注意する。また、各工法の評定

内容、施工マニュアル等に記載の施工及び試験等に関する条件を十分に確認したうえで採用

する。

※継手性能の分類

・ SA級継手:強度、剛性、靱性等に関してほぼ母材並みの継手

・ A級継手:強度と剛性に関しては母材並みであるが、その他に関しては母材よりもやや劣る

継手

・ B級継手:強度に関してはほぼ母材並みであるが、その他に関しては母材よりも劣る継手

(d) 高強度せん断補強筋については、大臣認定を取得したものを使用し、各工法の認定内容、

施工マニュアル等に記載の施工及び試験等に関する条件を十分に確認したうえで採用する。

(鋼材)

鋼材の種別は引張強度が 490N/mm2までの鋼材を対象とし解説表 3.3を標準とする。これを超

える鋼材は、十分な検討の上採用すること。

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解説表 3.3 鋼材の種別と主な使用範囲

構材種別 主な使用部位 規格

建築構造用圧延鋼材

SN400A 塑性変形性能を期待しない部位、部材に使用する。ただし、溶接を行う構造耐力上主要な部分への使用はしない

JIS G 3136 SN400B SN490B

一般の構造部位に使用する。

SN400C SN490C

溶接加工時を含め板厚方向に大きな引張応力を受ける部位、部材に使用する。

建築構造用圧延棒鋼 SNR400A・B SNR490B

アンカーボルト、ターンバックルボルト等に用いられる鋼棒

JIS G 3138

一般構造用圧延鋼材 SS400 6mm未満の丸鋼や SN材の補完材料として二次部材や梁の中間部等に使用する。

JIS G 3101

溶接構造用圧延鋼材

SM400A SM490A

SN材の補完材料として、板厚 40mm以下のものに使用する。

JIS G 3106

SM490B SN材の補完材料として、板厚 40mm を超えるものに使用する。

建築構造用炭素鋼管 STKN400W STKN400B STKN490B

パイプトラス構造部材、パイプ鉄塔、工作物、梁貫通孔

JIS G 3475

一般構造用炭素鋼管

STK400 STKN材の補完材料として使用する。

JIS G 3444 STK490

STKN材の補完材料として応力の大きな部材に使用する。

一般構造用角形鋼管 STKR400 軽微な構造物の柱、工作物

JIS G 3466 STKR490 応力の大きな部分

鋼管ぐい SKK400 一般的な杭材

JIS A 5525 SKK490 応力が大きい場合

一般構造用軽量形鋼 SSC400 仕上材取付用 2次部材、工作物 JIS G 3350

デッキプレート SDP1T スラブ型枠用 JIS G 3352

(耐火認定) SDP2 鉄骨造のスラブ

建築用ターンバックル(胴)

SS400 SNR400B

低層鉄骨造の耐震ブレース JIS A 5540 JIS A 5541

六角ボルト、六角ナット、平座金

ボルトの材質は鋼またはステンレス鋼とする

二次部材の接合用 JIS B 1180 JIS B 1181 JIS B 1256

摩擦接合用高力六角ボルト・六角ナット・平座金のセット

2種(F10T) 一般的な構造物の部材接合ボルト JIS B 1186

1種 A (F8T相当)

溶融亜鉛めっき高カボルト

大臣認定品

トルシア形 高カボルト

S10T (F10T相

当の強度) 一般的な構造物の部材接合ボルト

建築構造用TMCP鋼 高層建築物の下層部柱

冷間成形角形鋼管

BCR295

中低層建築物の柱部分 BCP235 BCP325 BCP325T

頭付きスタッド シャーコネクター JIS B 1198

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3.2 使用材料の注意事項

(1) 「5.1.2 用途係数」において分類Ⅰ及びⅡとなる建築物の、構造体コンクリートの設計

基準強度は 24N/mm2以上を原則とする。

(2) 構造体に用いるコンクリートに、塩化物、アルカリシリカ反応物等の、耐久性を損なう有

害な物質が含まれている可能性のある場合は、適切な対策を講ずる。

(3) D19 以上の鉄筋を使用する場合には、原則として SD345 または SD390 を選定する。

(4) 鋼材は SN 材を原則とし、SM 材、SS 材は弾性設計の適用範囲、構造特性等を考慮し選定す

る。

(5) 普通コンクリートで高炉セメント B 種を用いる範囲は、場所打ち杭、擁壁、基礎・基礎梁、

外構の構築物(階層を成す形状のものを除く)、水和熱反応の制御が必要な場合等を原則とす

る。

(6) 高性能 AE 減水剤を用いるコンクリート、高強度せん断補強筋、PC材、耐火鋼材などを

用いる必要がある場合は、構造特性、経済性、施工性及び品質管理方法を十分吟味して用い

る。

(7) コンクリートの設計基準強度を施工部位又は階により変更する場合は、応力伝達等の連続

性を考慮し行う。

(8) 構造上 1 棟とみなされる建築物内においては、鉄筋、形鋼、鋼板の材質の違うものを同一

サイズで混用しないよう配慮する。

《解説》

(1) 用途係数の分類がⅠ又はⅡとなる防災上重要な建築物は、耐久性の観点から構造体コンクリ

ートの設計基準強度は原則として 24N/mm2以上とする。

(2) 耐久性を損なう有害な物質を含む恐れのあるコンクリートは原則として構造体には使用しない。

ただし、地域的に塩分を含む細骨材の使用・海塩粒子による塩害等が避けられない場合は、鉄

筋にエポキシ樹脂塗装を施したものを使用する等の対策を講ずる。なお、これら塗装を施した鉄

筋を用いる場合は、許容付着応力度が低減される等の制約があるので注意が必要である。また、

やむを得ずアルカリ骨材反応のおそれがある粗骨材を使用する場合は、事前に骨材のアルカリ

シリカ反応性試験を行い、無害であることを確認するか又は必要な対策を講ずる。

(3) D19以上の鉄筋は、SD345又は SD390 を用いることを原則とする。

(4) 使用する鋼材は建築構造用の鋼材として規格が制定されている SN材を原則とし、角型鋼管を

使用する場合は、BCR・BCP材とする。SM材、SS材の使用は、二次部材や梁の中間部など弾性設

計の適用範囲とし、建築物の構造特性等を考慮し選定する。

(5) 「高炉セメント B種」は製造時の CO2発生量が低減できることから環境対策として、場所打ち杭、

基礎・基礎梁、マスコンクリートとなる部材等について使用を推奨する。また、強度発現が遅く、せ

き板・支保工の存置期間が長くなることから、層を成す構造物への適用は慎重に検討する。

(6) 高性能 AE減水剤を用いるコンクリート、高強度せん断補強筋、PC材、耐火鋼材などを用いる場

合は、それぞれの材料の特性や使用条件などを十分に調査・確認し、対象建築物の構造特性や

経済性・施工性・品質管理方法を十分に検討した上で用いる。

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(7) 1棟の建築物でコンクリートの設計基準強度を変更する場合は、応力伝達等の連続性を考慮し、

原則として階又はエキスパンションジョイントで区画された「部位」単位で変更する。やむを得ず、

「部材」の単位で変更する場合は、設計上のモデル化や打継ぎ部の施工について検討し、併せ

て施工間違いが生じないように図面の表現等に十分注意する。

(8) 構造上 1棟とみなされる建築物内において、施工上の間違いをさけるため、設計図書に材料の

使い分けを明示し、鉄筋、形鋼、鋼板などの材料は同一サイズで材質の違うものを混用しないよう

配慮する。

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第 4 章 荷重及び外力

4.1 荷重及び外力の種類

(1) 構造体に作用する荷重及び外力の種類は、「令」第 83 条の規定による。

(2) (1)のほか、「建築物荷重指針・同解説(建築学会)」を参考に、法定数値を下回らないよ

う算定し、各種構造計算設計方法に適した設定を行う。

《解説》

(1)構造体に作用する荷重及び外力の種類は「令」第 83 条に定められている固定荷重、積載荷重、

積雪荷重、風圧力及び地震力とする。また、設備機器等による振動及び衝撃力、温度応力、地

中部分等における土圧、水圧も必要に応じて考慮する。

(2) 法定の数値を下回らない範囲で、「荷重指針」の値を参考にしてよい。「第 5章 構造計算の手

順」では、保有水平耐力計算・許容応力度等計算を原則としているが、限界耐力計算、時刻歴

応答解析など、計算手法によっては外力の再現期間や荷重の考え方が異なる。解析の目的、手

法に合わせて適切な荷重・外力の設定を行う。

4.2 固定荷重(G)

(1) 固定荷重は、「令」第 84 条の規定によるほか、材料の種別及び部材寸法の実況に応じて

算定する。

(2) 鉄筋コンクリート及び鉄骨鉄筋コンクリートの単位体積重量は表 4.1 による。

表 4.1 コンクリート単位体積重量(kN/m3)

コンクリート種別 コンクリート強度 コンクリート 鉄筋コンクリート 鉄骨鉄筋コンクリート

普通コンクリート Fc≦36 23 24 25

軽量コンクリート(1種) Fc≦27 19 20 21

《解説》

(1)固定荷重は、材料の種別、部材寸法等の実況に応じて計算することを原則とする。

「令」第 84条によるほか、「荷重指針」及び「鉄筋コンクリート構造計算用資料集(建築学会)」4章

「仕上重量表」を参考としてよい。

また、屋上防水や屋上緑化などは、建物供用開始後の管理上の都合等により荷重が増加すること

があるため、余裕を持った数値を設定する。

(2)鉄筋コンクリート及び鉄骨鉄筋コンクリートの重量は表 4.1によるほか、「RC規準」及び「SRC規準」

を参考にする。

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4.3 積載荷重(P)

(1) 積載荷重は、「令」第 85 条の規定及び表 4.2 によるほか、実況に応じて算定する。

(2) 「令」第 85 条第 2 項の積載荷重の低減は、長期荷重計算時には適用しない。

(3) 機器荷重等の重量物における特殊荷重が載荷される場合は、積載荷重の部分的載荷による

影響を検討する。

表 4.2 積載荷重 (N/㎡)

構造計算の対象室の種類

スラブ

小梁

計算用

大梁

基礎

計算用

地震力

計算用 備考

(1) 住宅の居室、住宅以外の建築

物における寝室又は病室 1,800 1,300 600 「令」第 85 条

(2) 事務室・会議室・食堂・研修

室 2,900 1,800 800 「令」第 85 条

(3) 教室 2,900

(2,300) 2,100 1,100

スラブ用を除き「令」第 85 条

斜体の荷重は用途転用を考慮

した。

(4) 百貨店又は店舗の売り場 2,900 2,400 1,300 「令」第 85 条

(5)

ホール、集会

所等の客席、

集会室等

固定席 2,900 2,600 1,600 「令」第 85 条

その他 3,500 3,200 2,100

(6) 自動車車庫・自動車通路 5,400 3,900 2,000 「令」第 85 条

(7) 廊下・玄関・

階段

(1)及び (2)に掲

げる用途

1,800

又は

2,900

1,300

又は

1,800

600

又は

800

※ (1)及び (2)の室に連絡するも

のに当たっては (1)(2)及び連絡

する室の最大値とする。

「令」第 85 条

(3)~ (5)に掲げ

る用途 3,500 3,200 2,100

(3)~ (5)の室に連絡するものに

当たっては左記の数値。

「令」第 85 条

(8) 屋上広場・バ

ルコニー

(1)及び (2)に掲

げる用途 1,800 1,300 600 「令」第 85 条

(3)~ (5)に掲げ

る用途 2,900 2,400 1,300 「令」第 85 条

(9) 機械室

(機械設置部分を除く) 4,900 2,400 1,600 実情に応じ算定する。

(10) 可動書架(閉架式)、2段床式書

架の書庫など 11,800 103,00 7,400

(11) 一般書庫、倉庫など 7,800 6,900 4,900 天井まで満載の書架を配置す

る場合

(12) 図書室、特別教室、研究室 3,900 2,400 1,600 実習室は重量物の実情を調査

する。

(13) 通常、人が使用しない屋根 1,000 600 400 作業荷重を考慮した。

機器重量は別に考慮する。

(14) 体育館、武道館

原則(5)その他を準用する 3,500 3,200 2,100

実情に応じ算定する。

衝撃荷重を別に考慮する。

(斜体は「令」第 85条と異なるもので「令」第 85条の値を( )で示す)

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《解説》

(1) 積載荷重は、「令」第 85条の規定及び表 4.2による。実況によって算定する場合は、「荷重指

針」を参考にする。なお、実況により算定した荷重や特別に設定した荷重は、設計図書に記載す

る。

(2) 支える床の数による積載荷重の低減は、RC造、SRC造などで固定荷重が支配的であること、ま

た、積載荷重は不確定要素が多く、耐力の余裕度を確保する為にも長期荷重の計算時には行

わない。ただし、塔状建築物などで、水平力による基礎の浮き上がりや構造体の転倒の検討を行

う場合は積載荷重を低減した場合について検討が必要である。(第 5章「5.2.3 水平荷重時の

設計」 参照)

(3) 集密書庫をフロアの全面ではなく、部分的に配置する場合など重量物を乗せる範囲の設定が

必要かどうか、プール・駐車場など使用状態による荷重の大きな変化の有無を確認する。 また、S

造などで長期荷重に対して積載荷重の割合が大きいなど偏在荷重による影響を考慮する必要が

ある場合、このような著しい荷重の偏りが生ずる可能性がないか確認しておく。(第 5章「5.2.2

長期荷重時の設計」参照)

屋根の積載荷重は、改修等による太陽光発電パネル等設備機器の設置、防水の更新による

仕上荷重の増加が想定される場合は、設計時において積載荷重等を適切に割増すなどの配慮

をする。

4.4 積雪荷重(S)

積雪荷重は、「令」第 86条、「多雪区域を指定する基準及び垂直積雪量を定める基準を定める件」

(平成 12年「告示」第 1455号)の規定及び特定行政庁が定める規則による。

《解説》

積雪荷重は、垂直積雪量に 1cm当たり 20N/㎡を乗じて算定する。東京都の垂直積雪量は「都設

計指針」2-4-4積雪荷重による。「告示」による標高・海率の詳細については必要に応じて各行政庁

に問い合わせる。

なお、原則として、雪下ろしによる荷重低減は行わないものとし、検討にあたっては以下の点に注

意する。

① 低層のS造建築物でスパンが大きく不静定次数の低い建築物

② 庇、軒先など荷重が集中し、施工上、構造上の弱点となりやすい部分

③ 渡り廊下、自転車置き場など軽易な構造物における隣接建築物からの落雪(衝撃荷重として

評価)

④ 地理的条件(山間地)、敷地の周辺状況(高層建築物に隣接)、屋根形状等の影響

⑤ 積雪によって外壁に作用する側圧(「荷重指針」を参照すること。)

また、平成 26年 2月に関東地方を中心として発生した記録的な積雪による被害を受け、「告示」の

改正が平成 31 年 1 月に施行される。改正内容に応じた検討を行うなど法改正に対する配慮が必要

である。

4.5 風圧力(W)

風圧力は、「令」第 87条及び「Eの数値を算出する方法並びに Vo及び風力係数の数値を定める件」

(平成 12年「告示」第 1454号)の規定による。

屋根ふき材、帳壁、外装材等の風圧力は、「令」第 82条の 4及び「屋根ふき材及び屋外に面する帳

壁の風圧に対する構造耐力上の安全性を確かめるための構造計算の基準を定める件」(平成 12年「告

示」第 1458号)の規定による。

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風方向

風直交方向 風

《解説》

(a) 設計用風圧力は、「令」第 87条の規定により算出する。東京都の基準風速は「都設計指針」

2-4-6風荷重による。なお、小笠原村の屋根ふき材等の検討用基準風速は Vo=46m/s とする。

(b) 屋根ふき材、外装材、外部の帳壁などを支持する母屋・胴縁等は、「令」第 82条の 4及び平成

12年「告示」第 1458号の規定により検討を行う。これら母屋・胴縁等の検討において、島しょ及び

山間部では地形的影響を、高層建築物等の地表近傍では吹き下ろし等による割増しを考慮して

検討する。

(c) 塔状建築物、高さが 45m を超える建築物では「荷重指針」を参考に風方向、風直交方向、捩り

の風荷重成分の組合せを考慮する。

(参考) 荷重指針に示される風直交方向、捩り風荷重の検討を必要とする建築物

の場合に検討が必要

H:建築物の高さ(m)

B:建築物の幅(m)

D:建築物の奥行(m)

4.6 地震力(K)

地震力は、「令」第 88条及び関連告示の規定による。

《解説》

(a) 高さが 60m以下の建築物についての地震力は、原則として「令」第 88条及びその関連告示によ

る。なお、建築物の高さが 45mを超えるもの、振動性状が特殊な建築物は、第 5章 5.4.2 「時刻

歴応答解析」を参考に振動性状の確認を行い、地震力を決定する。

(関連告示等)

○昭和 55 年「告示」第 1793 号(Z の数値、Rt 及び Ai を算出する方法並びに地盤が著しく

軟弱な区域として特定行政庁が指定する基準を定める件)

○「令」第 42条 1項(土台及び基礎)

○昭和 62年「告示」第 1897号(建築基準法施行令の規定に基づき地盤が軟弱な区域として特

定行政庁が区域を指定する基準)

(b) 平面的及び立面的に突出した部分及び剛性の大きく変化する部分はその他の部分との接続

部を含めて「令」第 88条及び関連告示による値を用いて検討を行う。

なお、平成 19年「告示」第 594号(保有水平耐力計算及び許容応力度等計算の方法を定める

件)により一定規模以上の建築物およびその部分について、鉛直震度等により別途、検討するこ

とが求められているので注意する。また、同告示で規定する建物規模等に該当しなくても、平面・

立面的に突出する部分を有する場合は、同告示に基づく検討を行うこととする。((e)参照)

(c) 塔状建築物は、許容応力度計算の標準せん断力係数 C0を 0.25以上(塔状で 4本柱の建築物

の場合は、C0≧0.3)とする。ただし、この場合基礎ぐいの引き抜き検討用としては 0.2以上を用い

る。

3≧BD

H

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(d) 地下部分に作用する地震力は「令」第 88条第 4項による。

(地下の適用に関する取扱い及び注意事項)

ⅰ) 地階の階高の 2/3以上が全て地盤と接し、地上と地下部分が一体の構造となっている場合

は、構造上地下部分として扱うことができる。

ⅱ) 地階の外周囲が全周囲の面積の 75%以上で地盤と接している場合は、地下部分として扱う

ことができる。

なお、ドライエリアを有する建築物でドライエリア部分と建築物本体が剛強な梁等で接続してい

る場合、ドライエリアに面する建築物本体は地盤と接しているものとして扱う。

ⅲ) 地下連絡通路、共同溝など地盤と一体に挙動すると考えられる構造物は、長さ方向等に対

する地盤の挙動の相違によって生じるせん断力の検討を行う。

ⅳ) 擁壁を兼用した構造物の場合は、土圧・水圧による影響を考慮して、上下階の地震力を算

定する。

(e) 局部地震力

屋上から突出する水槽・煙突等に作用する局部地震力は、「令」第 129条の 2の 4及び平成

12年「告示」第 1389号(屋上から突出する水槽、煙突等の構造計算の基準を定める件)による。

P=k・W

P : 地震力(N)

k : 水平震度で 1.0以上とする。

W : 屋上水槽等及び支持架台などの固定荷重と屋上水槽等の積載荷重の和(N)

以下の場合においても局部地震力による検討を行う。

ⅰ) 平成 19年「告示」第 594号に規定されている平面・立面形状が局部的に突出する場合。

ⅱ) 長柱等の中間節点に集中荷重がある場合。

4.7 その他の荷重

(1) 土圧及び水圧は、地盤調査等に基づき適切に算定する。

(2) 移動荷重は、移動により生じる衝撃力を考慮して算定する。

(3) 建築設備の荷重は、機器の運転を考慮して算定する。

(4) 施工時の作業荷重による影響は、必要に応じて検討する。

(5) 建築物の種類又は形状により、温度変化のため特に大きな応力を生じる場合は、温度によ

る荷重効果を考慮する。

(6) 地下埋設物等を設計する場合、地表面載荷重を考慮して算定する。

(7) 架渉線荷重は、架け渡す長さによる荷重の増大を考慮して算定する。

(8) 施設に求められる性能に応じ、津波による波圧及び波力の検討が必要になる場合は「津波

防災地域づくりに関する法律施行規則(平成 23 年国土交通省令第 99 号)の規定により、

津波による波圧及び波力を算定する。

《解説》

(1) 土圧及び水圧に対する検討は、地下外壁・擁壁の設計だけでなく、山止め・根切り等の仮設計

画上も重要である。事前に土質構成や地下水圧等の地盤調査を行い、これら計画に反映させる。

なお、検討方法は「基礎指針」及び「荷重指針」による。

① 建築物の地下外壁およびドライエリアの擁壁で擁壁底部および頭部を建築物と連結する場合

など水平変位が起きない条件では、静止土圧(土質によらず静止土圧係数=0.5とする)を用

いる。

②一般的な擁壁では、常時作用する土圧として主働土圧を用いることができる。

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③地下外壁および擁壁は土圧のほかに常水面以下の水圧(浮力を含む)を考慮する。なお、地

下水位は揚水規制や雨量等により変動するので、水圧の算定は、その影響を考慮する。

(2) 移動荷重(車両荷重)の取り扱い

① トラックなど大型車両の車輪圧によるスラブ設計用荷重は、積荷等載荷状態にある車両の総

重量を車体の床投影面積で除した平均荷重に、車両移動時の衝撃による割増し(衝撃係数

1.25)を考慮した値を用いる。

② 消防自動車等によるアウトリガーを使用することが想定される場合、支点に集中荷重がかかる

ものとして扱う。ただし、通行頻度等が少ない場合、短期荷重として取り扱うことができる。

③ 建築物全体の検討を行う場合、大型車の積載荷重は衝撃係数を考慮せず、平均荷重を採用

することができる。

(3) 設備荷重の取り扱い

① エレベーター、エスカレーター、クレーン、ホイスト、小荷物専用昇降機、搬送用のフォークリフ

ト等について、各設備メーカーに荷重(設計)条件を確認し、移動により生じる衝撃力など実況

に応じて算定する。

② 運転に伴い振動・衝撃を発生する設備機器類については解説表 4.1~4.5 を参考に荷重を

算定する。

③ 製造メーカーの試験値が解説表を上回る場合、労働安全衛生規則等で別に定めがある場合

は当該規定により、荷重を算定する。

解説表 4.1 設備機器類の設計用荷重

ボイラー蒸

気発生機

構造計算用重量としては缶重量、かん水容量に配管保温材重量と補器類の

重量の合計をとる。これらの重量を算定しない場合は、缶重量を 1.15 倍

程度割増しする 基礎及び

架台重量

を加算す

る。

冷凍機 機器の重量に配管重量及びコンプレッサーの衝撃力等を加算する。

冷却機 全重量は、運転重量に接続する配管重量を加算する。

電力設備 自重に配線重量及びこれに付属する機器重量を加算する。なお振動を伴う

ディーゼル機関等にはさらに衝撃力等を加算する。

解説表 4.2 設備機器の衝撃力

駆動種別 衝撃力

モーターにより動く機械を支持する構造体用 機器重量の 20%

ピストン駆動の機械を支持する構造体用 機器重量の 50%

エレベーターを支持する構造体用 エ レ ベ ー タ ー 重 量 の

100%

解説表 4.3 天井走行クレーンの割増し率 設計条件 割り増し率

衝撃荷重 クレーン走行速度が 60m/min 以下の場合 車輪荷重の 10%

クレーン走行速度が 60m/min を超える場合 車輪荷重の 20%

水平荷重 クレーン走行方向の制動力 車輪荷重の 15%

クレーン走行方向に対して直角の制動力 車輪荷重の 10%

解説表 4.4 天井クレーンのたわみ制限 設計条件 たわみ制限

クレーン走行速度が 60m/min 以下で軽微なもの 1/500~1/800

クレーン走行速度が 90m/min 以下の一般クレーン 1/800~1/1000

クレーン走行速度が 90m/min を超える又は製鉄用クレーン 1/800~1/1200

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解説表 4.5 ホイストクレーン(吊り荷重 5 トン未満)

割増率

鉛直荷重 ホイスト自重×1.2(静荷重係数)+吊り荷×

1.2(動荷重係数)

水平荷重 (ホイスト自重+吊り荷重)×0.1(水平方向荷重

係数)

ホイストビームのたわみ制限 1/800 以下

(4) 施工時の作業荷重による影響が想定される場合は、これを考慮する。

例) ・S造建築物に使われるタワークレーン等は、多数の荷重ケースがあるので十分検討する。

・型枠兼用のハーフプレキャスト版等も構造体が固まるまでは、プレキャスト版自体の重量の影

響を受けるので十分注意する。

(5) 温度変化による材料の体膨張(伸縮)などで生ずる応力(内部応力として発生する荷重効果)は、

長大建築物、大空間建築物、煙突など条件によっては長期応力を超える場合があり、十分検討

する。

(6) 地下埋設物・工作物を設計する場合の地表面載荷重

地下埋設物等を設計する場合は、地表面載荷重を適切に考慮する必要がある。この値は、実

況に応じて適切な値を採用するが、設計時において地表面載荷の値が不明な場合は 4.9kN/㎡

(車が通過しない場合)~9.8kN/㎡(車が通過する場合)とする。

また、土圧及び水圧における地下外壁および擁壁の土圧を算定する場合に考慮する地表面

載荷については、この項の規定を準用する。

(7) 架渉線荷重(電線、通信線など空中に架け渡された線・支線)による引張力は、架け渡す長さの

二乗に比例し荷重が増大するので、アンカー部の検討に注意する。

(8) 津波による波圧及び波力は、「津波浸水想定を設定する際に想定した津波に対して安全な構

造方法等を定める件」(平 23年「告示」第 1318号)によるほか、「津波に対し構造体力上安全な

建築物の設計法等に係る追加的知見について(技術的助言)」(平成 23年 11月 17日付国住指

第 2570号)における別添「東日本大震災における津波による建築物被害を踏まえた津波避難ビ

ル等の構造上の要件に係る暫定指針」を参考にする。

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第 5 章 構造計算

5.1 構造計算の手順

5.1.1 一般事項

(1) 構造計算は、関係法令等の規定によるほか、この指針による。

(2) 構造計算は、「第 2 章構造計画」において検討した事項の安全性を確保するように地盤特

性、荷重等を適切に考慮して行う。

(3) 「法」第 20 条第1項第一号から第三号の建築物、「令」第 138 条の工作物のほか以下の

建築物、工作物等においても計算により安全を確認する。

① 「法」第 20 条より構造計算が不要とされる建築物、高さ 2m 以上のフェンス、バックネ

ット。

② 「第 7 章 非構造部材」及び観覧場等の手すり、建具、二段式書架、山留め、乗り入れ構

台、「懸垂物安全指針」(平成元年 5 月 16 日建設省住指発第 157 号)に該当する装置・装飾

等。

《解説》

(1) 構造計算は、「法」の関係法令や建築学会の規準等によるほか、この指針の規定による。

(2) 構造計算において、地盤特性や地震力を含めた荷重等の設定は構造性能に大きな影響を及

ぼす。したがって、設計の信頼性を確保するために、構造計算はこれらの設計条件等を十分に

考慮して行う。

(3) 指定工作物や確認が不要な建築物であっても、施設利用者等が施設を安全に利用するため

に構造計算を実施する。なお、建築物本体の構造設計で想定した内容と相違が無いことを確認

するために、メーカーなどが作成する計算書を含め、建築物本体の構造設計者がその内容を確

認する。

また、法令等で十分な強度を有するとされる工法・納まりであっても、想定する使用条件が合致

しているかを確認する必要がある。

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5.1.2 用途係数

(1) 東京都震災対策条例第 17 条に基づく建築物や多数の者が利用する建築物など、防災上の

重要度に応じて、以下により用途係数を適用する。

(2) 用途係数は表 5.1 の分類による。

(3) 用途係数は 5.3.1 に規定する層間変形角以内で、二次設計における各階の必要保有水平耐

力の目標水準に応じた割増しに用いる。

(4) 目標水準は、震災後の機能、拠点配置等を考慮し、施設所管局と調整の上定める。

表 5.1 用途係数

類 目標水準 対象とする施設 用途例

用途

係数

大地震動後、構造体の補

修をすることなく建築

物を使用できることを

目標とし、人命の安全確

保に加えて十分な機能

確保が図られている。

(1) 災害応急対策活動に必要な施設のうち特に重要な施設。

(2) 多量の危険物を貯蔵又は使用する施設、その他これに類する施設。

・本庁舎、地域防災センター、

防災通信施設

・消防署、警察署

・上記の付属施設(職務住宅・宿

舎は分類Ⅱ。) 1.5

大地震動後、構造体の大

きな補修をすることな

く建築物を使用できる

ことを目標とし、人命の

安全確保に加えて機能

確保が図られている。

(1) 災害応急対策活動に必要な施設。

(2) 地域防災計画において避難所等として位置付けられた施設。

(3) 危険物を貯蔵又は使用する施設。

(4) 多数の者が利用する施設。ただし、分類Ⅰに該当する施設は除く。

・一般庁舎

・病院、保健所、福祉施設

・集会所、会館等

・学校、図書館、社会文化教育

施設等

・大規模体育館、ホール施設等

・市場施設

・備蓄倉庫、防災用品庫、防災

用設備施設等

・上記の付属施設

1.25

大地震動により構造体

の部分的な損傷は生じ

るが、建築物全体の耐力

の低下は著しくないこ

とを目標とし、人命の安

全確保が図られている。

分類Ⅰ及びⅡ以外の施設。 ・寄宿舎、共同住宅、宿舎、工

場、車庫、渡り廊下等

※都市施設 *については別に考

慮する。

1.0

*「都市計画法」第 11 条参照

《解説》

(1) 東京都震災対策条例第 17条(重要建築物の耐震性等の強化)等の規定を基に、建築物の用

途による重要度に応じて用途係数を設定している。なお、昭和 51年の「構造設計指針・同解説」

制定当初から用途係数の考え方を導入しているが、昭和 57年の改定で、建築物の用途に合わ

せて、地震に対して必要な建築物の構造耐力を、「法」で規定する地震力の 25%あるいは 50%

割り増すことを定めた。具体的な用途は表 5.1 を参考にする。

(2) 用途係数は、建築物に要求される機能に応じて、大地震動により建築物に生ずる変形を抑制

するとともに、強度を向上させる為の係数として設定し、表 5.1の分類による。

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(3) 用途係数は 5.3.1に規定する層間変形角以内であることを確認した上で、二次設計における

各階の必要保有水平耐力を割増す係数として用いる。

用途係数の分類がⅠ及びⅡに該当する建築物は、その規模等の条件から法令上、耐震計算ル

ート1及び2が採用できる場合であっても、WRC造を除き、保有水平耐力による確認が求められて

おり、用途係数は、必要保有水平耐力の割増し係数として用いる。(「5.1.3構造計算ルートの算

定」)なお、具体的な取り扱いは「5.3.3 保有水平耐力の検討」による。

なお、時刻歴応答解析等により、地震動に対する建築物の応答を解析する構造計算を採用す

る場合は、建築物の挙動を詳細に把握できるため、建築物の変形や塑性化の程度に対する目標

値を定めて設計することができる。この場合の具体的な取り扱いは「5.4.2 時刻歴応答解析」に

よる。

(4) 目標水準は、震災後の機能、拠点配置等を考慮し、施設所管局と調整の上定めるものとする。

組織の新設や再編等で、指定されていた目標水準が不明な場合は、建築物の主な用途により表

5.1 を参考に調整の上で、決定する。

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5.1.3 構造計算ルートの選定

(1) 構造計算の方法は、原則として「保有水平耐力計算」(「令」第 82 条の3)または「許容

応力度等計算」(「令」第 82 条の6)とし、建築物の規模、構造体の特性、構造の種別と架

構形式、壁量、柱量等に応じた構造計算のフロー(図 5.1)に従って行う。

(2) 用途係数の分類がⅠ及びⅡに該当する建築物は、規模や構造特性に応じ、構造計算のフロ

ーのルート1及び2を選択して「法」の手続きを行う場合であっても、壁式構造等の強度

型の建築物を除き、用途係数を考慮した保有水平耐力の確認を行う。

(3) 限界耐力計算やエネルギー法による計算などの高度な計算手法についての取り扱いは

5.4.1 による。

スタート

保有水平耐力計算、限界耐力計算及び許容応力度等計算と同等以上に安全であるものとして国土交通大臣が定める基準に従った構造計算

応力計算

応力度の確認

規模等による構造計算適合性判定の要否

又は判断※1

大地震動時の変形制限(層間変形角)の確認※2

S 造 ルート 1-2

RC 造等 ルート 1

S 造 …… ルート 2

RC 造・SRC 造……ルート 2-1、2-2

ルート

3

用途係数の設定(1.0,1.25,1.5)

※構造計算に係る規定

「令第 81 条~第 99 条」

「法第 20 条」

Yes

二次設

No

不要

必要

Yes

一次

設計

No

No

Yes

No

Yes

「令第 82 条の 5」

H12 告示 1457

「令第 80 条の 2」

「令第 82 条の 2」

「令第 81 条 2 項」

「令第 82 条の 6」

S55 告示 1791

使用上の支障

防止

屋根葺き材の構

造計算

「令第 82 条の 3」 H19 告示 594

H12 告示 1461

「法」第 20 条により、構造計算が不要(平屋かつ延べ面積が 200 ㎡以

下)である建築物等も、許容応力度計算により安全性の確認を行う。

二次設計

一次設計

ルート

1-1

層間変形角≦1/200

H19 告示 593

「令第 82 条」

国土交通

大臣が定める基準に 従 っ た

構造計算

・プレストレス ト コ ン ク

リート造 S58 告示 1320

・免震建築物

H12 告示 2009

・薄板軽量形鋼造

H13 告示 1641

・壁式ラーメン鉄筋コン

クリート造 H13 告示 1025

荷重及び外力により構

造耐力上の安全性を確かめる 地震については時刻歴応答解析を行う

限界耐力

計算

・S 造 標準せん断力係数 の割増 筋かい接合部補強等

高さ>45m 又は判断※1

エンド

エンド

エンド

エンド

エンド

エンド

エンド エンド

剛性率・偏心率の確認 剛性率≧0.60 偏心率≦0.15

荷重・外力

許容応力度

「令第 83 条~第 88 条」 S55 告示 1793 H12 告示 1454,1455

「令第 89 条~第 94 条」

使用上の支障防止

屋根葺き材の構造計算

「令第 82 条四号」H12 告示 1459

「令第 82 条の4」H12 告示

1458

・S 造

階数≦3 高さ≦13m 軒高≦9m スパン≦6m

延面積≦500 ㎡

・S 造 階数≦2 高さ ≦13m 軒高≦9m スパン≦12m 延面積≦500 ㎡ (平屋の場合≦3,000㎡) 標準せん断力係数 の割増 筋かい接合部補強 等 ・RC 造及び SRC 造 高さ≦20m 壁量・柱量の確保等

・S 造 筋かいの分担率に応じ地震時応力を割増(分担率βが 5/7以上で最大 1.5倍に割増) 筋かい接合部補強・局部座屈の防止 等 ・RC 造 壁量・柱量の確保 柱・梁・耐力壁のせん断破壊防止等

材 料 強 度

構造特性係数 (D s ) 形 状 係 数 (Fes)

S55 告示 1792

「令第 95 条~第 99 条」

変形・振動の確認

仕様規定「令第 36 条~第 80 条の 2」

S 造偏心率≦0.15確認

保有水平耐力

確認

高さ>31m 又は判断※1

耐久性等関係規定 「令第 36 条 1 項に規定」

検証法の選択

超高層建築物 高さ>60m

注) 二重囲み は法令等に規定が無いものを示す。 ※1:より詳細な検討を行うなどの判断により、No であっても Yes に進める事ができる。

※2:大地震動時の変形制限が法令等で定められている場合はそれによる。

「令第 81 条

1 項」

図 5.1 構造計算のフロー

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《解説》

(1) 計算は、図 5.1によるフローにより行い、次の点に注意する。

①法令上、構造計算が不要(平屋かつ延べ面積が 200㎡以下)である建築物も、許容応力度計

算により安全性の確認を行う。

②S造ルート 1-2については、偏心率が 0.15以下であることを確認する。

③高さ 45mを超える建築物は、条件により時刻歴応答解析等の詳細な検討を行う。

④建築物の高さが 20mを超え 60m以下の RC造、SRC造、S造の建築物は、「都設計指針」の「中

高層建築物の取扱い」による検討を行う。

⑤ エキスパンションジョイント等により構造体として独立しているものは、法令で許容されている範

囲でそれぞれ別の建築物扱いとして別の計算ルートを採用してよい。

なお、地下部分や基礎を一体とし、上部構造にのみエキスパンションジョイントを設けた場合

においても法令で許容されている範囲内で、個別の建築物として上部構造の計算を行ってよ

い。

⑥ 同一建築物において、法令の範囲内で各方向ごとに異なった計算ルートを採用してよい。

⑦ 同一方向において、各階ごとに異なった計算ルートを採用してはならない。

(2) 用途係数の分類がⅠ又はⅡの建築物について、「法」では保有水平耐力の検討を行う必要がな

い場合でも、WRC造等の強度型の建築物の場合を除き、保有水平耐力の確認をして大地震時の

耐力を確認する。

ルート1の検討

(a)S造ルート 1-1 は比較的小規模な建築物を対象とした計算ルートで、標準せん断力係数を割

増した許容応力度計算を行い、筋かい材の端部・接合部を保有耐力接合とする。(第 6章

「6.4.3 筋かいの設計」参照)

(b)S造 ルート 1-2 は、ルート 1-1 とルート 2の中間に位置する耐震計算ルートであり、標準せん

断力係数を割増した許容応力度計算による確認を行った後、偏心率の計算を行って過大なね

じれが生じないことを確認する。なお、偏心率は 0.15以下となるようにする。また、筋かい材の

端部・接合部を保有耐力接合とする。(第 6章「6.4.3 筋かいの設計」参照)

(c) RC造 ルート 1 は、比較的小規模で壁量・柱量の確保により十分な耐力を持たせることを確認

する計算ルートである。また、じん性確保の観点から一定の割増しを行った設計用せん断力によ

る部材の検討を要求している。

ルート2の検討

ルート 2は、高さが 31m以下の建築物に適用される耐震計算ルートである。まず許容応力度計

算を行い、次に地震力による層間変形角が許容範囲内にあることを確認し、剛性率が 0.6 以上、

偏心率が 0.15以下、かつ、その他国土交通大臣が定める基準(昭和 55年「告示」第 1791号

(建築物の地震に対する安全性を確かめるために必要な構造計算の基準を定める件)を満たす

ことを確認する。

ルート3の検討

高さが 31m を超え 60m以下の建築物、高さが 31m以下で上記のルート1、ルート2のいずれに

もよらない建築物及び表 5.1用途係数において分類Ⅰ又はⅡの建築物の構造計算は、許容応

力度計算に加え、層間変形角の計算、保有水平耐力の確認を行う。なお、保有水平耐力(Qu)

は、必要保有水平耐力(Qun)にそれぞれの用途係数を乗じた値以上であることを確認する。

WRC造では、必要壁量の規定を満足しない場合に保有水平耐力の計算を行う場合があるが、

ここでは告示の規定範囲内での壁量の確認による方法を想定している。したがって、WRC造等の

強度型の建築物とする場合は、必要な壁量を用途係数により割り増して、目標水準を満足して

いることを確認するか、許容応力度計算時の層せん断力を用途係数により割り増して確認する。

WRC造における必要壁量の用途係数による割り増しは以下のとおりとする。

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Σ2.5αAw≧I・Z・W・Ai

Z,W,Ai : 令第 88条による。 I : 用途係数(第 5章 5.1.2「用途係数」)

α、Awは平 19年「告示」第 593号による。

なお、ルート1、2は、大地震時に対して構造体が保有している性能が不明確であることに留

意する。

5.2 一次設計

5.2.1 基本事項

(1) 許容応力度計算は、「令」第 82 条の規定により応力解析を行い、各部材の応力度の確認を

行う。

(2) 許容応力度計算は、原則として、弾性体として応力解析を行う。また、建築物の性状に応

じて適切に算定されるようにモデル化する。

(3) 構造材料の許容応力度は、「令」第 90 条から第 92 条の 2 まで及び第 94 条の規定によるほ

か、使用する部材の応力度の算定方法に応じて定める。

(4) RC 造及び SRC 造については、応力解析における部材の剛性評価において、鋼材の影響を考

慮しないことができる。

(5) 断面算定用設計応力は、断面算定を行う部分の応力とする。

(6) 塔状比が4を超える建築物(以下、「塔状建築物」という)および四本の柱で構成される

ような架構の不静定次数が低い(以下、「四本柱等の」という)建築物の一次設計時の標

準せん断力係数 Co については原則として 0.25 以上とする。また、塔状建築物でかつ四本

柱等の建築物の一次設計時の Co については原則として 0.3 以上とする。また、塔状建築物

については、平成 19 年「告示」第 594 号第4第五号により、転倒に対する検討が必要であ

る。

(7) 塔屋、工作物である広告塔など、屋上に突出する部分の水平震度は原則として 1.0 とする。

(8) RC 造耐力壁付きラーメン構造について、地震時せん断力のラーメン分担率が 1/2 未満の場

合、独立柱の応力の割増しを行う。

(9) 屋外階段など水平方向に突出する部分の水平震度は原則として 1.0 とする。

(10) 片持ちバルコニーなど外壁から突出する部分の鉛直震度は原則として 1.0 とする。

《解説》

(1) 許容応力度計算は、「令」第 82条と平成 19年「告示」第 592号(建築物の構造方法が安全性

を有することを確かめるための構造計算の方法を定める件)、平成 19年「告示」第 594号(保有水

平耐力計算及び許容応力度等計算の方法を定める件)、技術的助言及び「技術基準」、「RC規

準」、「SRC規準」、「S規準」等により行う。

(2) 許容応力度計算は、原則として、構造耐力上主要な部分を弾性体として、当該建築物の性状

に応じて適切に計算できる方法を用いて行う。「都設計指針」2-5-1準備計算を参考に、構造計

算に用いる建築物の架構の寸法、耐力、剛性、剛域その他の数値は実況に応じて適切に設定し、

応力解析に当たっては、「都設計指針」2-5-2応力解析を参考とする。また、基礎又は杭の変形

を考慮する場合には、地盤調査の結果に基づき、基礎及び杭に接する地盤が弾性状態にあるこ

とを確認する。

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(3) 使用する構造材料の許容応力度は、「令」第 90条(鋼材等)、第 91条(コンクリート)、第 92条

(溶接)、第 92条の 2(高力ボルト接合)及び第 94条(補則)の各規定によるほか、建築学会の各

種規準等を参考に使用する部材の応力度の算定方法に応じて定める。

なお、地盤及び基礎ぐいの許容応力度は、「令」第 93条によるほか特定行政庁の取扱いを考

慮する。

(4) 応力解析においては各部材の剛性の比率が影響する。RC造及び SRC造については、鉄筋及

び鋼材を考慮した各部材の剛性の比率と、これらを無視した各部材の剛性の比率がほぼ同じと

仮定することにより、この影響を無視して応力解析を行うことができる。ただし固有値解析等、剛性

の絶対値が振動特性に影響を及ぼす場合には、鉄筋及び鋼材による剛性を考慮しなければなら

ない。また、異なる構造種別を併用する場合にも、鋼材等の影響を適切に考慮する必要がある。

(5) 構造計算に採用する応力の組合せは「令」第 82条により行い、断面算定用設計応力は原則と

して断面算定を行う箇所に生じる応力を組み合わせた値とする。「都設計指針」2-5-3常時荷重

時ラーメンの応力算定、2-5-4水平荷重時ラーメンの応力算定、2-5-5断面算定を参考とする。

(6) 塔状比が 4 を超えるような塔状建築物は、立面形状が通常の構造設計で想定しているものとは

異なり、架構全体の曲げ変形の影響が無視できず、Ai分布形のままでは特に上部の地震力が過

少となる恐れがある。したがって、地震応答解析等による振動性状を的確に把握して設計を行う

必要があるが、簡便な方法として、原則として一次設計時の標準せん断力係数 Co を 0.25以上と

し、安全性を確認する。

また、4本の柱で構成されるような架構の不静定次数が低い建築物の Coについても 0.25以上と

して許容応力度計算を行う。この規定の趣旨は不静定次数が低い建築物は一部の柱等の損傷

が、建築物全体の崩壊に結びつくため、余裕を持たせて安全性を高めようとするものである。

塔状建築物で 4本柱等の建築物の場合は、それぞれの構造的特性が重畳され、さらに余力を

持たせた慎重な設計を行う必要があり、原則として Co を 0.3以上であることとする。

なお、「都設計指針」では、原則として塔状比は 6以下とし、これを超える場合は地震応答解析等

による変形を確認することなどが規定されているので注意する。(「都設計指針」12-5塔状建築物

等審査要領参照)

加えて、塔状建築物については平成 19年「告示」第 594号第 4第五号により、建築物全体の浮

き上がりによる転倒が生じやすいため、別途転倒を防止するための検討を行うこととしている。

(7) 塔屋など建築物の屋上部分から突出する部分に関する構造計算の方法は平成 19年「告示」

第 594号第三号ハに、広告塔など工作物の構造計算の方法については平成 12年「告示」第

1449号に規定されているが、塔屋、広告塔など全ての屋上に突出する部分は、原則として水平

震度 1.0 として構造計算を行う。

(8) RC造において耐力壁の剛性は柱剛性と比較して高く、耐力壁とラーメン架構が混在する場合、

剛性評価を適切に行わないと耐力壁やラーメン架構それぞれの負担応力を過大・過小評価する

ことになる。

ただし、耐力壁の剛性は正確な評価が困難であり、ラーメン架構部分の耐力不足を防ぐ措置と

して、ラーメン部分の分担率に余裕を持たせておくこととし、その階の各柱について支える重量に

一次設計用地震層せん断力係数を乗じた値の 25%(Co=0.05以上に相当)のせん断力による検

討を行う。なお、「5.2.3水平荷重時の設計」に記載のラーメン部分の分担率に留意すること。

(9) 屋外階段など外壁から突出する部分の水平震度の数値については、原則として 1.0 とする。こ

のとき、突出部分の応力割増しの影響が基礎部分に及ぶ場合は、当該基礎部分も含めて検討

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することとする。さらに、突出部分については、本体架構の変形に追従できることを確認する必要

がある。

(10) 片持ちバルコニーなど外壁から突出する部分の鉛直震度の数値については、原則として 1.0

とする。ただし、先端部分を支持する柱を設けるなど振動の励起を防止する措置を講じる場合は

検討を不要とする。

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5.2.2 長期荷重時の設計

《解説》

(1) 軸方向力の算定においては、フレーム内にある壁重量は直接柱に伝わるものとみなし、壁開口

や壁設置状況に応じて適切に応力伝達を考慮して検討する。また、最下階まで連続する壁で、

壁重量及びこれに接続する部材重量などを下階の壁に伝えることができ、将来その一部が撤去

されないことが確実である場合には直接基礎に伝わるものとする。この場合、柱軸方向力とは別

に算定することができるが、接続する柱の断面設計用軸方向力に壁の負担する軸方向力の 30%

程度を加えた場合についても検討する。

柱、基礎等の軸方向力を算定する場合、支持する床の数に応じた積載荷重の低減は、原則と

して行わない。なお、RC及び SRC造の断面算定時において、低減を考慮しないことは軸方向力の

値によっては必要引張鉄筋量が過小評価となり、必ずしも安全側とならない場合があるので軸方

向力の算定にあたっては注意する。

(2) RC造小梁の応力は、「RC規準」第 9条「骨組の解析」の解説を参考に適切に大梁の拘束条件

を評価して算定する。S造小梁の応力算定は、ウェブプレートのみを接合した場合、両端ピンとし

た単純梁として計算してよい。

(3) 土圧、水圧の算定に当たっては「基礎指針」3章 3.3節「水圧」及び 3.4節「土圧」等を参照し、

土質条件に適合した値を用いる。

また、傾斜地に建つ、ドライエリアがあるなど、大きな片側土圧を受ける場合はこれを考慮して設

計する。

(4) 土に接する床を土間床版(構造スラブ)として設計する場合、床の荷重がどのように流れるかは、

地盤の状態等により異なるが、基礎梁及び基礎の設計において、浮き上がりの検討等を除き、床

の固定荷重及び積載荷重を考慮する。次の場合は、原則として土間床版(構造スラブ)として設

計する。なお、土間コンクリートとした場合でも、基礎梁の剛性は実況に応じてその影響を考慮す

る。

① 地盤沈下地帯に建つ場合

② (基礎杭で)床下部の地盤が軟弱な場合

③ (基礎杭で)床下部が盛り土層の場合

(1) 柱軸方向力は、実際の荷重の流れに即して算定する。

(2) 小梁の応力は、大梁の拘束条件を考慮して算定する。

(3) 地階を有する建築物は、実況に応じて、土圧及び水圧を考慮して設計する。

(4) 土に接する床を土間床版(構造スラブ)として設計する場合は、基礎梁及び基礎の設計におい

て、床の固定荷重及び積載荷重を考慮する。

(5) 大スパンの梁、片持ち梁、S造の梁及び大面積の床版については、長期荷重による鉛直変位

及び振動について検討する。

(6) プール、倉庫、駐車場等の重積載荷重は、満載・非満載状態が隣接する場合、非荷重である

状態の場合などの影響を検討する。

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(5) 大スパンの梁、片持梁、S造の梁及び大面積のスラブでは、長期荷重によるたわみや振動につ

いての検討を行う。

なお、RC造の梁の検討を行う場合、断面 2次モーメントは、引張応力が生じるコンクリート部分の

断面を無視した値を用いるか、またはひび割れ、クリープを考慮したたわみの計算方法による。

(6) プール、倉庫、駐車場等の積載荷重が重い用途の建築物において、検討するスパンに満載・

非満載状態が隣接する場合、当該スパンの状態のみによる算定に比べ、応力が大きく変動する

場合があるので、その影響を検討する。

5.2.3 水平荷重時の設計

(1) 架構の水平荷重時の応力解析は、直交する二方向の架構構面として独立に行うことができ

る。ただし、架構形状が、構造体全体の応力状態に及ぼす影響を考慮する必要がある場合は、

立体解析を行う。

(2) 架構の応力解析は、剛床仮定が成り立つものとして行う。ただし、この剛床仮定が成り立

たない場合は、条件に応じて剛床仮定を解除し、応力解析を行う。

(3) 基礎の浮き上がり及び構造体の転倒が生じないように設計する。なお、この場合は、「令」

第 85 条 2 項の積載荷重の低減を考慮して検討する。

(4) 耐力壁を設ける場合は、原則として一次設計における水平荷重時の層せん断力に対するラ

ーメン部分の分担率を 40%程度以上とする。

(5) S造のブレースは、柱軸力への影響、変形後の耐力低下について十分考慮して決定する。

《解説》

(1) 水平荷重時の応力解析は、直交する2方向の架構構面として独立に行うことができる。た

だし、平面形状や立面形状が不整形な架構形状で、構造体全体の応力状態の影響を考慮する

必要がある場合は、立体解析を行う。

また、4 本柱の架構など架構構成の影響で、直行方向のみの検討では危険となる部材が発

生する場合は、2方向のみではなく斜め方向の応力についても検討するか、一次設計用層せ

ん断力係数を割り増した検討を行う。

(2) 各階の水平変位に関しては剛床仮定が成立するものとして応力解析を行ってよい。ただし、

細長い平面形状や吹き抜けがあり、床の面内剛性が剛床として扱うのに不十分な場合、多剛

床等(多数の床開口により剛床と見なし難い場合も含む)によりそれぞれの部分が独立した水

平変位を生ずる場合には、各々適切な解析方法(動的解析を含む)を用いる。また、大きな水

平力を負担する耐力壁に接続するスラブについては、その強度、剛性について必要に応じて

検討を行う。特にコア廻りでは、設備の縦配管等でスラブに開口が必要な場合が多いので注

意する。

(建築物がいくつかのブロックで構成されている場合の対処方法)

建築物がいくつかのブロックから構成されている場合は、次のいずれかの方法により設計を行う。

① エキスパンションジョイントを設ける。

②各ブロックを分割して各部分毎に計算を行う。

この場合、2方向のそれぞれについて、各部分の剛性の均整化を図り、分割した箇所の応力

及び変形に対する影響についても検討し、必要に応じて床スラブ等を補強する。

③時刻歴応答解析を行い設計する。

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各ブロックの応答せん断力やブロックが接続する部分に発生する応力等が正しく評価される

解析モデルを作成し、時刻歴応答解析を行なった結果により、各ブロックの地震力や接続部分

の応力及び相対変位を算定して接続部分の設計を行なう。

(3) 建築物の隅柱、耐力壁付き柱、ブレース付きの柱等には地震時にかなり大きな引抜力や圧縮力

がかかるので、これらの基礎を含めて十分に検討をする。この際基礎の引抜きに対する抵杭要素

としては、長期柱軸力、基礎・地中梁・杭の自重、杭の引き抜き抵抗力、梁の境界効果、直交壁

等の影響を考慮する。なお、原則として長期柱軸力の算定に当たっては、「令」第 85条 2項の規

定により積載荷重を低減した場合についても検討する。

また、塔状比が高い建築物は、地震時の転倒モーメントにより建築物の基部に回転、浮上り、地

盤の崩壊などが生じる可能性があるので、塔状比が 4を超える建築物については、転倒に対する

検討を行い、安全性を確認する。

(4) 耐力壁付きラーメン架構において、耐力壁の水平力分担は、部材の弾性剛性に基づき、算定

する。ただし、一般に部材の弾性剛性に基づいた場合、壁の負担応力が大きく、ラーメン架構の

負担応力を過小評価することがあり、結果的にラーメン架構部分の耐力不足を招く恐れがあるた

め、本指針においては、耐力壁の水平力分担率をおさえ、ラーメン架構で一次設計における水

平荷重時の層せん断力の 40%程度以上分担できることを原則として検討する。

なお、平成 19年「告示」第 594号により地震力に対する耐力壁の分担率が1/2を超える場合は、

柱に作用する固定荷重と積載荷重の合計に、一次設計用地震層せん断力係数を乗じた値の

25%の水平力が作用した際の当該柱応力について検討しなければならないので注意する。

(5) S造のラーメンは一般的に剛性が低く、ブレースを設けて剛強にすることが構造的に望ましい。

剛性の高い形状のブレースを一部の架構にのみ配置した場合、当該架構に大きな水平力が働き、

ブレース付き柱の軸方向力やブレース応力、柱脚部に生じる引抜力が大きくなるので、できるだ

けブレースを配置した架構を多く設けて建築物全体を剛強にする。 耐震要素としての圧縮ブレ

ースは一般に座屈後の耐力低下が著しく、復元力特性も不安定なため、その性状を検討した上

で設計する。

5.3 二次設計

5.3.1 層間変形角

二次設計を必要とする建築物は、「令」第 82条の 2による層間変形角が許容範囲内であることを確

認する。

《解説》

地震時において、各階の変形が大きすぎると、帳壁、内外装材、設備等がその変形に追随できず

に破損、脱落したり、構造体に有害な影響が出る可能性がある。

各階に生じる水平方向の最大層間変位の当該各階の高さに対する割合が 1/200(帳壁、内外装

材、設備等に著しい損傷が生じるおそれのない場合は 1/120)以内であることを確かめる。なお、この

場合ラーメンフレーム外の雑壁の剛性は無視する。

通常、RC造及び SRC造建築物の場合、1/200 を超えることはないが、S造建築物では架構の剛性

が低いと 1/200 を超える場合があるので注意が必要である。なお、S造建築物でも 1/200 を超えない

ことが望ましいが、小規模建築物等で破損、脱落などを生ずる帳壁等がない場合や外装材等の材料

や取付方法を検討し、建物の変形に対する追従性能がある場合には 1/120 まで緩和することができ

る。

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なお、緩和する場合は帳壁、内外装材、設備等の変形追従性について、取付方法や詳細等施工

面を含めて検討することとし、例えば ALCパネルを用いた場合は、「ALCパネル構造設計指針・同解

説」(ALC協会発行)等を参考とすることができる。

5.3.2 剛性率・偏心率等

二次設計を必要とする建築物のうち、許容応力度等計算(保有水平耐力の確認を行わないもの)に

関しては、「令」第 82条の 6及び関連告示による規定を満足することを確認する。

《解説》

第5章「5.1.3構造計算ルートの算定」で二次設計を必要とする建築物のうち、保有水平耐力の確

認を行わない建築物は、「令」第 82条の 6に基づく剛性率(Rs)、偏心率(Re)がそれぞれ許容範囲内

(Rs≧0.6、Re≦0.15)とし、昭和 55年「告示」第 1791号(建築物の地震に対する安全性を確かめる

ために必要な構造計算の基準を定める件)により定められた基準を満足することにより、必要な耐力

とじん性が確保されていることを確認する。

なお、剛性率及び偏心率は構造計算における部材の剛性評価方法等により算定結果にばらつき

があり、また建築基準法の規定値(Rs≧0.6、Re≦0.15)もいわゆる「最低の基準」であることから、十

分な余裕を持つことが望ましい。

その他の規定(昭和 55年「告示」第 1791号)の運用について

① 昭和 55年「告示」第 1791号第 2「鉄骨造の建築物等に関する基準」のS造建築物の耐震性

を確保するための規定の運用については、「技術基準」付録 1-2「鉄骨造に関する技術資

料」による。

② 昭和 55年「告示」第 1791号第 3「鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造の建築物等

に関する基準」の RC造及び SRC造建築物の耐震性を確保するための規定の運用について

は、「技術基準」付録 1-3「鉄筋コンクリート造に関する技術資料」、及び付録 1-4「鉄骨鉄筋

コンクリート造に関する技術資料」による。

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5.3.3 保有水平耐力の検討

(1) 建築物の各階において保有水平耐力 Qu が、必要保有水平耐力 Qun に用途係数 I を乗じた値

以上(下式参照)であることを確認する。

Qu≧I・Qun

Qun=Ds・Fes・Qud Qu : 各階の保有水平耐力 Qun : 各階の必要保有水平耐力

Qud : 地震によって各階に生ずる水平力 I : 用途係数(第 5章 5.1.2「用途係数」)

Ds : 構造特性係数(「令」第 82 条の 3) Fes : 形状係数(「令」第 82条の 3)

(2) 大地震動時の層間変形角は、表 5.2 に示す目標値以内であるか又は安全上支障のないこと

を確認する。

表 5.2 大地震動時の層間変形角の目標値

構造種別 目標値

RC造 1/200

SRC造 1/200

S造 1/100

※なお、時刻歴応答解析を行う場合は、5.4.2 時刻歴応答解析による。

(3) 構造材料の強度は、「令」第 96 条から第 99 条までの規定による。

(4) 構造体の保有水平耐力は、架構の一部又は全部に崩壊メカニズムが形成された状態で、柱、

耐力壁及び筋かいが負担する水平せん断力の和として求められる値とする。

(5) 構造体の保有水平耐力の算定方法は、架構全体の弾塑性解析により行う。ただし、適切な

崩壊メカニズムを設定し、算定方法の特性を考慮した場合は、略算法等により行うことがで

きる。

(6) 地階においても、構造体の保有水平耐力が、必要保有水平耐力に用途係数を乗じた値以上

であることを確認する。

《解説》

(1) 法令で保有水平耐力を求めることが必要な建築物(ルート3)及び用途係数の分類がⅠ及びⅡ

に該当する建築物は、「令」第 82条の 3及び平成 19年「告示」第 594号等によって算定した各

階の保有水平耐力が、必要保有水平耐力に「5.1.2用途係数」の用途係数(1.0・1.25・1.5)を

乗じたもの以上であることを確かめる。

(2) 大地震動時における層間変形角の制限は、構造体の最大水平変形やその限界値を制限する

ものではなく、密接に関連する構造体、非構造部材、建築設備に、大きく障害を生じさせることな

く機能させるための目標値として定めたものである。したがって、大地震動時の層間変形角を制

限することとし、構造種別に応じて表 5.2に示す値以下となるように設計を行う。

ただし、構造形式等により表内の数値を採用することが困難な場合は、大地震動時の層間変

形角を別途設定し、構造体の変形性能・損傷程度、非構造部材等の落下・損傷、設備機器の設

置等の各項目について、詳細に検討し、安全上及び機能上の支障がないか確認する。この検討

を行う場合、「建築設備耐震設計・施工指針(建築センター)」を参考にすることができる。

なお、大地震動時の層間変形角の算定は次による。

①一次設計時の層間変形角より推定する場合には、構造体の変形能力を考慮し、適切に求め

る。推定の方法としては、次式に示すエネルギー一定則に基づいてよい。また比較的長周期の

範囲では変位一定則によることもできる。なお、ルート1及び2により設計を行う場合は、一次設

計時の層間変形角の5倍の値を用いてもよい。

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COP 1

δp= ・ Ds+ ・δe

2・Coe Ds

δp=大地震動時における建築物の最大水平変形

COP=令第88条第3項に規定する標準せん断力係数(1.0以上)

Coe=令第88条第2項に規定する標準せん断力係数(0.2以上)

δe=令第88条第1項及び第2項に規定する地震力(一次設計用地震力)により建築物の地上

部分に生じる弾性水平変形

Ds=構造特性係数

②時刻歴応答解析及び限界耐力計算を行った場合は、その応答値を用いる。

(3) 部材の終局強度の算定に用いる材料強度は「令」第 96~99条による。ただし、鋼材等が JIS規

格品の場合は、平 12年「告示」第 2464号に基づきその値の 1.1倍以下とすることができる。また、

部材の終局強度は平成 19年「告示」第 594号「保有水平耐力計算及び許容応力度等計算の方

法を定める件」、「建築物の安全性の確保を図るための建築基準法等の一部を改正する法律等

に関係する構造関係告示の施行について(技術的助言)」(平成 19年 6月 20日付国住指第

1335号)(以下「技術的助言(平成 19年国住指第 1335号)」という。)及び「技術基準」付録等に

算定式が紹介されており、この式を用いることを原則とする。

(4) 構造体の保有水平耐力は、架構の一部又は全部に崩壊メカニズムが形成された状態で、柱、

耐力壁及び筋かいが負担する水平せん断力の和として求められる値とし、そのうちで一番安全側

の値をその構造体の保有水平耐力とする。また、崩壊メカニズムの条件として建築物全体の浮き

上がりによる転倒崩壊形は正確な評価が現状困難であり、浮き上がりを生じないものとして3つの

崩壊形(全体崩壊形、部分崩壊形、局部崩壊形)を求め、保有水平耐力を検討しなければなら

ないことに注意する。

(5) 保有水平耐力の算定は精算法である増分解析法によることが原則である。なお、保有水平耐

力は、直交する水平2方向に対して、正負の地震力で算定し、仮定条件の相違により複数の保

有水平耐力が算定できる場合は、各仮定条件それぞれについて算定しなければならない。なお、

節点振り分け法などの方法によって計算することも可能ではあるが、解析法の特徴を把握して適

切に用いることが必要である。

(6) 法令上は地階の保有水平耐力の検討は求められていないが、本指針においては、地階につい

ても構造体の保有水平耐力が、必要保有水平耐力に用途係数を乗じた値以上であることを確認

する。なお、通常地階部分は剛強な外壁に囲まれているため、保有水平耐力の算定に当たって

は、壁量等を考慮した略算法を用いて以下の計算方法で行ってよい。

BQu≧I・BQun

BQu:地階の保有水平耐力

BQu=2.5αAw+0.7α(1.0)Acにより算定してよい。

( )内の値は鉄骨鉄筋コンクリートの場合を示す。

BQun:地階の必要保有水平耐力

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BQD

BQun =1Qun

1QD

1Qun:1階の必要保有水平耐力

BQD:地階の一次設計用せん断力

1QD:1階の一次設計用せん断力

5.4 高度な計算法

5.4.1 限界耐力計算・エネルギー法

(1) 限界耐力計算は、「令」第 82 条の 5 の規定によるほか、以下による。

①安全限界変位は、施設の重要度を考慮して定める。

②部材の限界変形角は、部材の変形性能を考慮して定める。

③構造材料の許容応力度は、「令」第 90 条から 92 条の 2 まで及び第 94 条の規定によるほ

か、使用する部材の応力度の算定方法に応じて定める。

④構造材料の強度は、「令」第 96 条から第 99 条までの規定による。

⑤表層地盤による加速度の増幅率は、地盤の特性及び地盤種別の検討を行った上で決定す

る。

(2) エネルギー法は、「令」第 81 条第 2 項第一号ロに基づく、平成 17 年「告示」第 631 号の

規定による。

《解説》

限界耐力計算は平成 12年の「法」の改正、エネルギー法については平成 17年の告示に基づき制

定された計算方法である。

(1)限界耐力計算は、構造関係基準の性能規定化により、平成 12年 6月の法改正で新たに制定さ

れた計算方法であり、従来の構造計算と並立する形で設けられた構造計算である。この計算方法は、

極めて稀に発生する積雪および暴風に対する安全性を直接検討するとともに、極めて稀に発生する

地震動において生ずる建築物の変形量を計算し、その変形に対して安全であるように部材を設計す

ることで安全性を確認する手法である。限界耐力計算の留意点は以下のとおりである。

①限界耐力計算の方法

ア 架構のモデル化

限界耐力計算は、建築物の応答について一次振動モードが支配的であることを前提として、建

築物の振動特性を代表する等価1質点系の応答に基づいて、建築物の応答を評価するものであ

る。そのため、高次振動モードの影響が大きい高層建築物等の場合には、その影響を適切に考慮

する必要がある。

イ 荷重及び外力

許容応力度による検証時に使用する荷重及び外力については、「第 4章 荷重及び外力」によ

る。ただし、地震力については「令」第 82条の5第三~五号に規定するところによる。

なお、特に S造の建築物において、暴風時における転倒及び柱の引抜き等を検討する場合、積

載荷重によって生ずる力については、建築物の実況に応じて積載荷重を減らした数値による。

②安全限界変位

安全限界時の検証では、まず安全限界変位を建築物の変形性能を考慮して適切に設定する。

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設定した変位時の周期に応じて地震力を算出し、その地震力に対して、安全限界耐力が上回ることを

確認する。安全限界変位について詳細な検討を行わない場合は、安全限界変位の当該各階の高さに

対する割合は1/75を超えないものとする。

なお、安全限界変位は、保有水平耐力に相当する水平力等に耐えている時の水平方向の変位であ

り、大地震動による実際の変形量とは異なることに留意する。

③部材の限界変形角

検証は様々な不確定要因が存在することを勘案し、想定する部材の限界変形角に対して余裕のある

変形能力が確保されていることを確認する。

④許容応力度及び材料強度

許容応力度は、5.2.1基本事項(3)によることとし、材料強度は 5.3.3保有水平耐力の検討(3)によ

る。

⑤表層地盤による加速度の増幅率

表層地盤による加速度の増幅率については、平 12「告示」第 1457号第 10において、地盤の特性を

考慮して求める場合と地盤種別により求める場合の2つの算出方法が示されているが、算出結果が大

きく異なる場合が想定されるため、2つの算出方法を十分に検討したうえ、表層地盤による加速度の増

幅率を決定する。

(2)エネルギー法は、平成 17年「告示」第 631号「エネルギーの釣合いに基づく耐震計算等の構造

計算を定める件」に規定された計算方法で、塑性変形能力の大きい鉄骨造や履歴形のダンパーを

設置した制震構造建築物の設計等に適した計算方法である。地震時に建築物に作用するエネルギ

ーを直接取り扱い、精算によって当該エネルギーを安全に吸収できることを確認できる手法である。

なお、本構造計算を適用する建築物の適切な設計に当たっては、下記文献を参考とする。

・「エネルギーの釣合いに基づく耐震計算法の技術基準解説及び計算例とその解説」

(国土交通省国土技術政策総合研究所他)

・「エネルギーの釣合に基づく建築物の耐震設計」 (秋山宏)

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5.4.2 時刻歴応答解析

(1) 建築物の高さが 45m を超えるもの及び特殊な振動性状を持つ建築物(以下「超高層建築物等」

という。)は、原則として、時刻歴応答解析を行い、振動性状を確認する。

(2) 時刻歴応答解析に用いる地震動波形及び地震動の強さは、「超高層建築物の構造耐力上の安

全性を確かめるための構造計算の基準を定める件」(平成 12 年「告示」第 1461 号)の規定に

よるほか、敷地周辺の過去の地震活動、地盤条件等を考慮して決定する。

(3) 架構の解析モデル及び復元力特性は、構造体の実況に応じて、応答値が設計に必要な精度を

有するように設定する。

(4) 東京臨海部の軟弱地盤地域を除く、超高層建築物等の設計目標は、表 5.3 を目安とする。

表 5.3 超高層建築物等の設計目標の目安

部 位 入力地震動の強度レベル

レベル 1 レベル 2

上部

構造

最大層間変形角 1/200以下 1/100以下

層の最大塑性率 ― 2.0以下

構造耐力上主要な部分を構成する各

部材の応答塑性率 ― 4.0以下※

構造耐力上主要な部分に生じる応力

短期許容応力度以内、又

は地震後に有害なひび割

れ又はひずみが残留しない

ことを確かめること※

基礎 部材の状態 弾性限内 脆性的破壊を生じない

※制振部材を除く。

(5) 東京臨海部において用途係数がⅠ及びⅡに該当する超高層建築物等を建設する場合につ

いては、軟弱地盤等の地域的な特殊性を考慮して、表 5.4 を目安として、地震動波形、地震動

の強さ及び設計目標等を定めることとする。

ただし、レベル3の耐震レベルの検証については、用途係数がⅠ及びⅡに該当し、かつ防災

上重要な建築物等について、設計の余裕度を検証する場合、対応するものとする。

表 5.4 東京臨海部に建設される超高層建築物等の設計目標の目安

耐震レベル 入力地震動 構造物の特性

想定する

地震発生

頻度

上部構造 基礎

部材の状態 最大層間変形角 層の最大塑

性率

部材の状態

中地震

(レベル1)

既往波

(25 ㎝/S)

無被害

【機能維持】

数十年に

1度発生

短期許容

応力度内 1/200 以内 -

短期許容

応力度内 告示波(稀)

大地震

(レベル2)

既往波

(50 ㎝/S)

軽微な補修により

事業継続可能

【指定機能維持】

数百年に

1度発生

部 材 の 塑 性

率が4.0

以下

1/100 以内 2.0以下 脆性的破壊

を生じない

告示波(極稀)

サイト波

(個別・包絡)

(長周期地震動

を考慮)

極大地震

(レベル3)

告示波(極稀)

の 1.5 倍程度

(長周期地震動

を考慮)

倒壊・崩壊

させない

【余裕度の検証】

数千年に

1度発生

建物の用途・特性に応じて個々に設定

(極大地震動が建物に入力した場合の性状を把握した

上で判断)

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《解説》

(1) 法令により時刻歴応答解析を行なうことを求められている高さが 60m を超える建築物(以下「超

高層建築物」という。)を含み高さが 45m を超える建築物及び特殊な振動性状を持つ建築物は、

原則として時刻歴応答解析を行い、振動性状を確認する。

表 5.3、5.4の設計目標で設計された場合、「5.1.2 用途係数」の分類はⅠ類に相当するとし

てよい。

なお、時刻歴応答解析を行う必要のある「超高層建築物等」とは下記の(a)~(d)の建築物の

ことをいう。

(a)超高層建築物

超高層建築物は、「法」第 20条第 1項第一号の規定により、大臣認定が必要となる。

一般的な手続きとしては、平成 12年「告示」第 1461号により時刻歴応答解析による検討を行

い、事前に大臣が指定する指定性能評価機関の性能評価を受けることとなる。

(b) 高さが 45m を超え 60m以下の建築物

高さが 45m を超え 60m以下の建築物の設計についても、一般に規模が大きく重要性も高いた

め、より詳細に耐震性能を検討する意味から、時刻歴応答解析を行うこととする。

なお、これらの建築物は、特定行政庁において一般に指定性能評価機関等において技術評

定等を受けることが望ましいとされている場合も多いが、高さ 60m以下の場合は、構造計算適合

性判定を受ける必要もあるので、事前に十分調査し手続きについて調整をする必要がある。

技術評定の目的は、保有水平耐力及び必要保有水平耐力の算定方法の妥当性を確認する

ことにあり、時刻歴応答解析は、参考としての位置付けになっている。

応答解析の方法や解析結果の評価クライテリア等は、超高層建築物に準拠する。

(c) 特殊な振動性状を持つ建築物

法令等により時刻歴応答解析を要求される建築物以外であっても、特殊な振動性状を持つた

め、耐震設計を行う上で静的解析だけでは不十分と考えられる建築物については、時刻歴応答

解析を行うこととし、次のような場合が考えられる。

① 偏心のある建築物では、一般に静的応力解析結果よりも動的解析結果の方がねじれの影響

が大きくなる。例えば静的解析では、1階にのみ偏心のある建築物についての偏心による応力

の補正は、当然ながら 1階以外は行われない。しかし、動的解析によれば、1階のねじれ振動

が上階のねじれ振動を誘発し、ねじれによる応力の増大が無視できない場合がある。弾塑性

応答においても、法令による必要保有水平耐力の割増し係数 Feの値が十分でない場合もあ

ることを示す解析結果が報告されている。

ねじれ振動については、影響を与える構造パラメータが非常に多く、まだ統一的な見解を得

るには至っていない現状にあるため、ねじれの大きい建築物については、応答解析により十分

な検討を行うことが望ましい。

② 低層部分とその上の塔状部分とからなる建築物は、高さ方向の重量分布や剛性分布がなめら

かではないので、法令による層せん断力係数及びその分布形を適用することが適切でない場

合があるため、時刻歴応答解析を行うか、建築物を 2つの部分に分けて地震力を求める方法

等を用いる。

③ 各階の剛性率が 0.6以上あっても、連続する階で値が急変する建築物、剛性率分布が比較

的なめらかであっても各階の保有水平耐力分布がなめらかでない建築物は、特定の階に変

形や損傷が集中しやすい。これらについては、塑性域に入った場合の解析例が余り多くはな

いため、応答解析により塑性率等を具体的に確認することが望ましい。

④吹き抜け等により剛床仮定が成立しなかったり、複数棟(例えばツインタワー等)の連成振動を

生じるような建築物、長大スパン架構の屋根が存在する建築物等では、静的応力解析により

求めた床の発生応力が過小であったり、法令の規定に基づいて設定した地震力では不適切

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であったりするため、より正確に地震時の挙動を把握するためには、時刻歴応答解析を行う必

要がある。

(d) 免震構造及び制振構造

免震構造及び制振構造の構造計算は、原則として時刻歴応答解析によるものとするが、免震

構造の場合は、平成 12「告示」第 2009号第6に規定された構造計算によることもできる。

(2) 入力地震動等

(a) 入力地震動のレベル

時刻歴応答解析に用いる入力地震動としては、「超高層建築物の構造耐力上の安全性を確

かめるための構造計算の基準を定める件」(平成 12年「告示」第 1461号)の規定によるほか、過

去の地震記録又はその修正が考えられる。

① 過去の地震記録を用いて入力地震動を作成する場合は、稀に発生する地震動(レベル 1)の

地震動の強さは 25cm/sec(カイン)、極めて稀に発生する地震動(レベル 2)の地震動の強さ

は 50cm/sec(カイン)を、それぞれの最大速度の標準値とする。

③ 上記告示第四イのただし書きによる模擬地震動の作成においては、活断層の有無も含め、

敷地周辺の地震活動度や地盤構造を適切に評価して作成する必要がある。また、断層等の

破壊に関わる諸量を決定する際には、大きな不確定性があることに注意する。なお、評価法

については、「高層建築物の構造設計実務」(建築センター)を参考にする。

(b)地震動の波形

①使用する地震動の波形の数は、平 12「告示」1461号の規定による告示波及び建設地周辺に

おける活断層分布、断層破壊モデル、過去の地震活動、地盤構造等に基づき模擬地震波(サ

イト波)で 3波以上、過去における代表的な観測地震波から作成した地震波で 3波以上とし、特

定のスペクトルに偏らないよう注意が必要である。

②東京臨海部の軟弱地盤地域等における地震動の波形は(5)による。

(C)工学的基盤

工学的基盤の位置については平 12「告示」1461号による。

(3) 解析モデル及び復元力特性

(a) モデル化の基本事項

建築物の時刻歴応答解析を精度良く行うためには、構造体のモデル化をその必要に応じて、

詳細に行う必要がある。

建築物ごとに、その振動性状を、あらかじめ十分に考察及び検討し、不十分又は必要以上に

複雑なモデル化を行わないよう注意する。

(4)超高層建築物等の設計目標

超高層建築物等の設計目標の目安は、表 5.3のとおりとする。

特に重要度が高い建築物は、建設敷地の歴史上の地震資料、付近で発生が予測される地震

の規模、地震断層等の地震環境を調査し、必要に応じて、耐震性能の余裕度を確保する。

なお、建築基準法に基づく性能評価及び任意の構造評定を行う場合は、評価機関の業務方

法書等の内容を満足させること。

東京臨海部の軟弱地盤における設計目標は、(5)による。ここで、東京臨海部は解説図5.1

の範囲とする。

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解説図5.1 東京臨海部の範囲

①本指針における東京臨海部とは、明治初期以降の埋立地盤を対象とし、解説図 5.1の太線か

ら海側を対象としている。なお、都市整備局の「建物における液状化対策ポータルサイト」におい

て、明治初期からの現在までの地歴情報を公開しており、明治初期以降の埋立地盤の範囲を確

認するための参考とすることができる。

②なお、解説図5.1の範囲以外についても、河川周辺などの液状化の可能性が高い地盤の地

域においては、この地域について東京臨海部と読み替え、本指針を活用することができる。

(5)東京臨海部の軟弱地盤等における設計目標

東京臨海部の軟弱地盤等における超高層建築物等の設計目標の目安を、表 5.4に示す。

2011年の東日本大震災では、東京臨海部の軟弱地盤地域において、内陸部を上回る揺れが

観測されるとともに、地盤の液状化も発生した。

本地域において用途係数がⅠ及びⅡに該当する超高層建築物等の時刻歴応答解析を行う

場合、公共建築物としての重要性を勘案し、(4)とは異なる設計目標を設定することとし、入力地

震動については、敷地周辺における断層及び震源からの距離等を適切に考慮して「別途定めた

地震動波形および地震動の強さ」※に基づき検討することとした。通常の超高層建築物等の設計

目標の目安としている中地震(レベル1)と大地震(レベル2)に加え、極大地震(レベル3)につい

ても、検証用として設定した。

①中地震(レベル1)は、発生頻度が数十年に 1度程度の稀に発生する地震動に相当する。

②大地震(レベル2)は、発生頻度が数百年に1度程度の極めてまれに発生する地震動に相当

する。具体的には南海トラフの巨大地震、大正関東地震、東京湾北部地震を想定した時刻歴

波形(サイト波)を用いる。さらに、これらを概ね包絡した地震動もサイト波として設定した。

③極大地震(レベル3)は、発生頻度は数千年に 1度程度の発生確率は極めて低いものの、対

象建築物の重要性を勘案して検証しなければならない地震動として設定した。

検討を行うに際して、コストアップ等を極力抑えるため、部材断面、架構等の算定はレベル2地

震動で決定することを前提としつつ、検証用としてレベル3地震動を入力し、建物の挙動を把握

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した上で、上部構造については崩壊・倒壊しないことを目標とする。また、非構造部材について

は、建築物及びその周辺の利用者の人命を守ることを目標とする。

※①本地震動データは財務局建築保全部技術管理課で保管している。本データは工学的基盤

面のデータであるため、使用に際しては、表層地盤による増幅を適切に考慮の上、建築物に入

力する地震力を作成する。

②本地震動データは、前述したとおり、東京臨海部の軟弱地盤等で使用することを前提としてい

るが、本地域以外においても、建設地域の地震動の増幅を適切に評価できる場合は、他地域に

おいて使用することも可能である。

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第 6 章 躯体各部の設計

6.1 共通事項

(1) 算定する部分が設計応力に対して安全であるようにするほか、構造体を構成する要素とし

て性能を十分発揮できるよう、部材接合位置によるねじれ応力の程度、ふかしの位置などを

考慮して設計する。

(2) 断面設計に当たっては、施工上の手順、精度に無理が生じないように部材の断面の形、鉄

筋の径、本数などを適正に設定する。

《解説》

(1) 躯体各部の設計において算定する部分が設計応力に対して安全であるのは当然として、その

部分の建築物における構造要素の位置づけを明確にし、要求される性能を発揮できるようにする。

それぞれの部材性能を阻害する恐れのある部材接合部位置によるねじれ応力の考慮や施工上

の納まり等により設けられるふかし部分による剛性や強度、重量についても配慮して設計する。

(2) RC造の梁の断面設計においては、直交する水平2方向においてどちらの方向の鉄筋を先に組

むかなど施工の手順により鉄筋の位置が、鉄筋の径分だけ上下することにより、その断面性能が

変わってくる。また、S造の仕口部等の溶接が、直交する梁フランジの位置が近接するなど、施工

時に溶接が困難な納まりになる場合がある。このような事項を避けるため、設計段階においても部

材の断面の形、鉄筋の径、本数、納まりなど施工上の手順等を考慮し、施工時に無理が生じない

部材断面を適切に設定する必要がある。

6.2 鉄筋コンクリート造

6.2.1 柱の設計

(1) 柱は、ぜい性的な破壊が生じないように設計する。

(2) 柱の短期荷重時の圧縮応力度が、原則として、コンクリートの設計基準強度の 1/3 を超え

ないように断面を決定する。

(3) 出隅の柱は、同時に 2 方向の応力を受ける材としても検討する。また、ねじりによる応力

への影響が大きい柱は、断面算定にこの影響を考慮する。

(4) 柱は一段配筋を原則とし、一辺に並ぶ主筋断面積は、コンクリート全断面積に対して、原

則として、0.8%以下となるようにする。

(5) 柱には、配管等の埋設を行わない。

《解説》

RC造の柱の設計において、曲げ、せん断及び軸力に対する許容応力度は「RC規準」4章 14条「柱

の軸方向力と曲げに対する断面算定」及び 15 条「梁・柱および柱梁接合部のせん断に対する算定」、

終局強度は技術的助言(平成 19年国住指第 1335号)及び「技術基準」付録 1-3「鉄筋コンクリート

造に関する技術資料」等を参照する。

(1) 柱は曲げ降伏が先行するように設計する。この場合、柱の曲げ降伏時のせん断力に対して、せ

ん断終局耐力は 1.1倍以上必要であり、1.2倍以上とすることが望ましい。ただし、メカニズム時

においてその柱に取り付く梁の曲げ降伏が先行し、当該柱の両端にヒンジが生じない場合は、メ

カニズム時の柱のせん断力に対してせん断終局耐力を 1.25倍以上確保することが必要である。

柱の破壊モードはせん断スパン比(M/QD)、簡便には高さ幅比(内法高さと柱せいの比 ho/D)に

大きく左右され、せん断スパン比が小さい場合には、対角線状のせん断破壊などを生じやすい。

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特に ho/D≦2のような短柱は、せん断補強によって曲げ降伏を先行させることが困難な場合があ

るので、じん性を期待する場合には、腰壁や垂壁により短柱にならないようにし、腰壁等が必要な

場合には、乾式構造にするなどの対処をする。

(2) 軸方向応力度の大きいものほど曲げ降伏が先行し、小さな塑性率で曲げ圧縮破壊を生じやす

い。これは断面の圧縮側で破壊が生ずるからである。そこで単独柱の短期軸力の圧縮応力度は、

ある程度抑えておく必要があるため、本指針では設計基準強度の 1/3以下とする。(耐力壁付帯

柱は「6.2.3 壁の設計」参照)

(3) 隅角部の柱の設計は、斜め方向からの地震力を考慮して、水平荷重時には2方向からの応力

を同時に受けるものとして検討する。また、長期荷重時にも、著しく大きな2方向応力を受けている

ような場合、適切に2方向の複合された効果に対して検討しなければならない。(「RC規準」4章 14

条「柱の軸方向力と曲げに対する断面算定」参照)

なお、長期荷重時に大きな曲げ応力を受ける柱の鉄筋は、寄せ筋(二段筋)など 2方向に兼用

させてはならない。

また、隅柱で床版がない場合、かつ、柱に対して梁が極端に偏心接合している場合など、柱に

ねじり応力が作用することが予想される時は、「RC規準」4章 22条「特殊な応力その他に対する構

造部材の補強」等を参考に必要な補強を行う。

(4) 柱の主筋は、梁筋の定着、コンクリートの充填性等を考慮し、付着等に問題がない限り比較的

大きい径の鉄筋を使用し、その本数を多くしないことが望ましい。

柱の引張鉄筋比が大きくなると、付着割裂破壊を生じやすくなる。また、ho/Dにもよるが、せん

断破壊も生じやすくなるので、柱の一辺に並ぶ主筋断面積の合計は、コンクリート全断面に対して、

原則として、0.8%以下とし一段配筋とする。やむを得ず 0.8%を超える場合は、副帯筋を有効に

配置するなどの処置をする。

帯筋は D10以上の異形鉄筋とし、柱梁接合部を除き間隔を 10cm以下とする。また、スパイラル筋

や鉄筋端部を溶接した閉鎖型帯筋の採用、副帯筋を使用すると、主筋及びコアコンクリートに対す

る拘束が大きくなり、じん性向上が図れる。従って次の項目に該当する場合には、このようなせん断

補強を行うことが望ましい。

① ho/Dが 2.5以下となる場合

ho:柱の内法高さ(mm)、D:柱せい(mm)

② 柱の引張鉄筋比が 0.8%を超える場合

(5) 電気設備の埋め込みボックス等は、柱の断面欠損となり、強度、耐久性の低下につながるため、

埋め込まないこととし、壁への移動、乾式工法(軽鉄下地)等を検討する。

6.2.2 梁の設計

(1) 梁は、長期荷重に対してコンクリートのひび割れ、たわみなどの障害が生じないように

設計する。

(2) 梁は原則として、複筋比を 0.4 以上とし、つりあい鉄筋比以下になるように設計する。

(3) 梁は原則として、曲げ降伏が先行するように設計する。なお、曲げ降伏以降も大きな変

形性能を要求される部材については、せん断補強によりじん性を確保する。

(4) ねじりによる応力への影響が大きい梁は、断面算定にこの影響を考慮する。

(5) 梁貫通孔は、せん断力の大きい部位を避けて設け、必要に応じた補強を行う。また、梁

には配管等の埋設を行わない。

(6) 小梁はこの節に準ずる。

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《解説》

RC造の梁の設計において、曲げ、せん断に対する許容応力度は「RC規準」4章 13条「梁の曲げに

対する断面算定」及び 15条「梁・柱および柱梁接合部のせん断に対する算定」、終局強度は技術的

助言(平成 19年国住指第 1335号)及び「技術基準」付録 1-3「鉄筋コンクリート造に関する技術資

料」等を参照する。

(1) 梁はコンクリートのひび割れ、たわみ等による障害が起きないよう過小な断面は避ける。特にスパ

ンの大きい梁や片持梁については慎重に設計する。(「RC規準」付 7「長期荷重時におけるひび

割れと変形」参照)

(2) 梁の設計がコンクリートで決まることは地震時の破壊性状が脆くなり、じん性の確保という点で好

ましくないので、つりあい鉄筋比以下で設計する。

また、長期荷重によるクリープたわみの防止や短期(地震時)荷重に対するじん性の確保に効

果的なため、圧縮側にも十分な配筋をする。(「RC規準」第 4章 13条「梁の曲げに対する断面算

定」参照)

(3) 曲げ降伏が先行するように設計することを原則とし、梁の曲げ降伏時のせん断力に対してせん

断終局耐力は 1.1倍以上必要であり、1.2倍以上とすることが望ましい。また、メカニズム時にお

いて当該梁の両端にヒンジが生じない場合は、メカニズム時の梁のせん断力に対してせん断終局

耐力を 1.2倍以上確保することが必要である

中廊下形式の建築物などのせん断スパン比(M/QD)の極めて小さい梁では大きなせん断力

を受け、せん断破壊するおそれが大きいので十分な補強をするか、梁せいを小さくするなど、曲

げ降伏先行型とするなどの方法をとる。また、境界梁は曲げ降伏後も大きな変形性能を要求され

ることがあるので、壁の終局状態に応じて、十分にせん断補強を行い、じん性を確保する。

(4) 突出の大きな庇やスパンの大きい小梁が片側に取り付く梁は大きなねじりモーメントを受けるの

で、ねじり応力に対する検討を行い、必要に応じて適切な補強を行う。(「RC規準」22条「特殊な

応力その他に対する構造部材の補強」参照)

なお、ねじり応力は、ねじりが生じている部材に直交する部材に対する曲げモーメントとして処理

するなどしなければならない。

(5) 梁貫通孔は設けないことが望ましいが、設ける場合は終局時に塑性化が予想される梁端部(原

則として柱際から内法スパンの 1/10以内かつ、梁せいの 2倍以内)を避けて、上下の位置は梁

せいの中央付近とする。孔径は梁せいの 1/3以下とし、孔が連続することを避ける。やむを得ず

連続する場合は、中心間隔で両孔径の平均値の 3倍以上を確保する。また、梁には配管等の埋

設は行わない。

貫通孔の補強等は、「RC規準」等に準じた計算により、配筋設計については「RC配筋指針」第 9

章 9.4節 d.「貫通孔補強筋」による。また、貫通孔補強に既製品を用いる場合は、建築センター

等において評定を取得したものとし、その評定内容に従って適用条件及び施工管理等を含め十

分検討を行い、採用する。

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- 45 -

6.2.3 壁の設計

(1) 壁の設計は、耐力壁とその他の壁を区分して行う。

(2) 耐力壁及び耐力壁周囲の部材は、変形性能及び終局状態を考慮して設計する。

(3) 腰壁、垂れ壁、そで壁等は、柱及び梁の剛性並びにじん性への影響を考慮して設計する。

(4) 壁厚及び壁配筋は、応力状態、乾燥収縮、埋設配管等によるひび割れを考慮して決定する。

(5) 壁に開口部を設ける場合は、隅角部に過大なひび割れが生じないよう、必要に応じた補強

を行う。

《解説》

RC造の壁の設計において、曲げ、せん断に対する許容応力度は「RC規準」4章 19条「壁部材の

算定」、終局強度は技術的助言(平成 19年国住指第 1335号)及び「技術基準」付録 1-3「鉄筋コン

クリート造に関する技術資料」等を参照する。

(1) 壁の設計は、構造計算において水平力を分担させる耐力壁、計算ルートの判別の時に Aw とし

て算定する耐力壁とその他の壁を区別して、その条件や性状等を考慮して設計する。Awの算定

は、「技術基準」6.4「鉄筋コンクリート造の耐震計算の方法」及び「都設計指針」6-2-7「ルート1に

よる設計」を参考とする。

(2) 耐力壁の水平耐力は基礎の浮上りによって決まる場合、壁自体の曲げ降伏で決まる場合及び

壁自体のせん断破壊によって決まる場合があり、変形性能及び終局状態はそれぞれ異なる。設

計においては原則としてねばりのある曲げ降伏型とし、メカニズム時の壁のせん断力に対してせ

ん断終局耐力を 1.25倍以上確保することが必要である。

耐力壁及び耐力壁周囲の柱・梁の設計に当たっては次の事項に注意する。

(a) 「令」第 78条の 2による前提条件を以下に示す。

・ 壁厚は、12cm以上。(ダブル配筋の場合、施工上は 18cm以上が望ましい。)

・ 開口部周囲には、D13以上の補強筋を配置する。

・ 原則として D10以上の鉄筋を縦横 30cm以下の間隔で配置すること。

・ 壁周囲の柱及び梁との接合部は、その部分の存在応力を伝えることができること。

(b) 壁板の最大耐力時の平均せん断応力度は原則として 0.2Fc以下になるようにする。

(c) 連層耐力壁下部は大きなせん断力と曲げによる軸力を負担することになるため、付帯柱の許

容応力度設計時の軸方向応力度はσ=N/A≦0.4Fc とする。

(d) 地震時に壁板にせん断ひび割れが発生するとき、壁板の壁筋が少ない場合には付帯ラーメン

に大きな応力と損傷が生じて急激に剛性が低下する恐れがあるため、せん断補強筋比は直交

する各方向に対し 0.25%以上とする。

(e) 耐力壁の付帯ラーメンの断面形状は、「RC規準」4章 19条「6.壁部材の柱と梁の断面と配筋」

を参考に設計する。

(3) 腰壁・そで壁等の取扱いについては、「技術基準」付録 1-3.2「剛節架構内の鉄筋コンクリート

造腰壁・そで壁等の構造計算上の取扱い」等を参考にする。

(4) 壁は平面計画と適合させながら、耐震計画上の全体の壁量、壁配置のバランス、ひびわれに配

慮して設計する。

(a) 外壁等のひび割れは耐久性に大きく影響するので、以下の点に十分注意して設計を行う。

① 柱、梁、収縮目地等で囲まれた面積は 25m2程度以内とする。

② 面積 5~6m2程度以下の壁を除き、辺長比(l/h)を 1.5程度以下とする。

l :壁の長辺長さ(誘発目地のある場合はその間隔)

h :壁の短辺長さ(誘発目地のある場合はその間隔)

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③ 外壁は必要に応じて厚くするほか、補強筋量を水平・垂直方向とも、壁断面積に対して 0.4%

以上とする。

(b) 壁の厚さは解説表 6.1 を標準とする。なお、電気設備のボックス等の周辺では、設備配管が

集中するので、壁厚を厚くし、複配筋とする。

解説表 6.1 壁の部位による壁厚

部位 壁厚

外壁 15cm以上

片持階段を受ける壁 18cm 〃

土圧を受ける壁 20cm 〃

その他の壁 12cm 〃

注:外壁打放し等で壁目地を設ける場合は、壁厚は目地底からの値とする。

厚さ 10cm のブロック壁を受ける垂れ壁等軽微な壁は 12cm未満としてよい。

(5) 耐力壁に開口を設ける場合は、解説図 6.1 を満足するものとし、「RC規準」4章 19条「壁部材

の算定」の規定に基づき補強を行う。壁厚に対して開口補強筋量が多い場合は、必要に応じて、

開口周囲にリブ等を設ける。また、小開口が複数ある場合、その形状及び位置により包絡した大

きな単一の開口部として計算するなど適切に開口部を評価することが必要である。

解説図 6.1 開口のある耐力壁の条件

耐力壁以外の壁では、主に乾燥収縮によるひび割れに対し補強を行うこととし、「鉄筋コンクリ

ート造建築物の収縮ひび割れ制御・施工指針(案)・同解説(建築学会)」を参考に行う。

柱 開

口 lo

ho

h

lo

l

<有開口耐力壁の条件>

・開口補強がされていること

・ √(ho×lo)/(h×l)≦0.4

lo/l≦0.4(壁量計算に用いる場合)

を満足すること

・開口が上下の梁、床版に接していないこと

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6.2.4 床版の設計

(1) 床版は、応力、たわみ及び振動を考慮して設計する。

(2) 屋根床版及び構造体の隅角部の床版は、ひび割れを考慮して設計する。

(3) 片持ち床版は、原則、持出し長さを 2m までとし複配筋とする。また、設計荷重を割り増す

等により断面及び配筋に余裕を持たせて設計する。

(4) 床版は、埋設される配管等を考慮して設計する。

《解説》

床版は、積載荷重を架構に伝えるとともに、水平力の伝達を担う重要な構造部材であり、ひび割れ

や振動障害などの不具合が生じやすい部材であるので、十分注意して設計する。

RC造の床版の設計において、周辺固定とみなすことができる長方形床版が等分布荷重を受けると

きの応力算定は「RC規準」3章 10条「スラブの解析」、小梁付床スラブのたわみ等の検討については、

4章 18条「床スラブの算定」等を参照する。

(1) 面積の大きい床版、厚さの薄い床版は、たわみ、振動、ひび割れ等の問題が生じやすい。床版

は、水平荷重時の応力の再配分を担う重要部材であるので、開口の大きさ・位置等にも配慮して

設計する。一般には次の事項に注意する。

(a) 1枚の床版の面積は一般に 25m2程度以内とし、厚さは原則として 15cm以上とする。

(b) スラブ筋は D10以上の異形鉄筋とし、施工上の乱れ等を考慮し D13以上を併用する。

(c) 不整形な床版及び大きな開口を有する床版は、全断面にわたり引通しの複配筋とする。

(d) スラブ開口の周囲には、必要に応じてリブ小梁等を設ける。

(2) 建築物の出隅部、入隅部は周辺拘束による八の字型のひび割れが生じやすいので、このような

箇所は小梁を入れて床版の面積を小さくする、隅角部に補強筋を入れる等の補強を行う。また、

屋根床版は建築物の耐久性に大きく影響し、温度変化が大きい等条件も厳しいので、全断面に

わたり引通しの複配筋とし、ひび割れ防止等のため原則として配管類は埋設しない。

(3) 一般に片持床版のような不静定次数の低い支持方法の床版では、たわみ、ひび割れ等の問題

が生じやすい。そのため、片持床版の元端から先端までの長さは最大 2.0m程度とする。また元端

の厚さは長さの 1/10以上とし、持出し長さが 1.7m を超えるものや先端に集中荷重を受ける場合

は、十分安全率を見込んで厚さを決定する。また、配筋は原則として複配筋とする。

なお、許容応力度設計の断面算定に用いる設計用応力は算定応力を 1.5倍した値とする。ま

た、必要に応じて鉛直震度についても平 19「告示」594号第 2第三号ニにより検討を行う。

(4) 電気設備の埋込み配管等が集中する場合は、床版の断面欠損となり耐久性等に影響を与える

ので、あらかじめ床厚を厚くしたり、配管用のリブを設ける、配筋量を増やす等の対応をする。

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6.2.5 柱・梁接合部の設計

(1) 柱・梁接合部は、取り付く部材の強度に対して、十分な強度が確保されるように設計する。

(2) 柱・梁接合部は、大地震時においても破壊しないように十分なじん性が確保されるように

設計する。

(3) 柱・梁接合部は、各部材間の応力が適切に伝達できるように設計する。

《解説》

(1) 柱・梁接合部の地震による被害は、建築物の高層化や使用材料の高強度化が進む中、兵庫県

南部地震で少なからず見られた。柱・梁接合部は、被害を受けても修復することが困難であるた

め、取り付く部材の強度に対して、十分な強度が確保されるように設計する。

(2) 柱・梁接合部は、柱と同様に軸力を負担する部位であり、接合部に隣接する部材に降伏ヒンジ

が発生することを計画した場合、接合部には降伏ヒンジの曲げ強度に対応する応力が確実に発

生することとなる。部材のヒンジ部分に必要なじん性が確保されていても、ヒンジ以外の部分がヒン

ジ部分のじん性能が発揮される前に破壊しては、建築物に必要な変形能力を確保できないため、

接合部に取付く柱及び梁の応力によって生じる接合部せん断応力に対して十分余裕のあるもの

とし、「RC靱性指針」8章「柱梁接合部の設計」等を参考に設計する。

(3) 柱・梁接合部には、+形、T形、L形、ト形の形式があるが、主要部材の柱と梁の交差部分であ

るため太い鉄筋が交錯し施工上問題を生じやすい。また、隅柱や梁に段差がある場合などは、梁

筋の定着でコンクリートの充填が困難になる。柱・梁側面が同一になる場合は梁筋が内側に追い

込まれ、必要な鉄筋間隔がとれなくなる場合もある。そのため、設計段階から配筋の納まりをよく

検討し、梁幅を変更するなど配筋間隔を確保し、構造体に欠陥が生じないように注意する。

6.3 鉄骨鉄筋コンクリート造

6.3.1 一般事項

(1) 鉄骨部分と鉄筋コンクリート部分の曲げ応力の分担比率は、設計条件及び部材の応力状態

を考慮して、適切な比率となるように設計する。

(2) 鉄筋の定着方法及び鉄骨部分のコンクリートかぶり厚さは、鉄骨及び鉄筋の相互の位置並

びにコンクリートの充てん性を考慮し、応力が確実に伝達されるように決定する。

《解説》

SRC 造は、地震国日本において発達してきた構造であり、その耐震性は優れているとされているが、

鉄骨の量などにより、その特性は大きく変わるので、注意して設計する必要がある。

(1) 鉄骨部分と鉄筋コンクリート部分の曲げ応力分担比率は、設計条件および部材の応力状態に

応じて適切に決定する。また、鉄骨部分が自立できるかなど施工上の条件も考慮する。

(2) SRC構造は、断面内に鉄骨構造と RC構造部分を同時に納める必要があるため、鉄筋の定着方

法や、コンクリートの充填性等、施工性等を踏まえて断面を決定する。

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6.3.2 柱の設計

(1) 柱は、ぜい性的な破壊が生じないように設計する。

(2) 柱の短期荷重時の作用軸力は、適切に定めた制限値以下となるようにし、じん性が確保

できるように設計する。

(3) 柱の鉄骨は、充腹形を用いる。

(4) 構造体の出隅の柱は、同時に 2 方向の応力を受ける材としても検討する。また、ねじり

による応力への影響が大きい柱は、断面算定にこの影響を考慮する。

(5) 柱には、配管等の埋設を行わない。

《解説》

SRC造の柱の設計において、曲げ、せん断及び軸力に対する許容応力度は「SRC規準」4章 17条

「柱の軸方向力および曲げモーメントに対する算定」及び 18条「部材のせん断力に対する算定」、終

局強度は「技術基準」付録 1-4.2「鉄骨鉄筋コンクリート造部材の終局強度」及び「SRC規準」5章 32

条「柱および梁部材の終局曲げ耐力」及び 33条「部材の終局せん断耐力」等を参照する。

(1) じん性を確保するため、原則として曲げ降伏が先行するように設計する。この場合、柱の曲げ降

伏時のせん断力に対して、せん断終局耐力は 1.2倍以上とすることが望ましい。ただし、メカニズ

ム時においてその柱に取り付く梁の曲げ降伏が先行し、当該柱の両端にヒンジが生じない場合は、

メカニズム時の柱のせん断力に対してせん断終局耐力を 1.2倍以上確保する。せん断スパン比

が破壊形式に与える影響については RC造と同様であり、せん断スパン比の小さい柱はじん性確

保の面から好ましくない。

(2) 柱が一定の軸力のもとに繰り返し曲げモーメントを受けると、軸方向の塑性ひずみの蓄積に伴

って、RC部分の負担軸力は鉄骨部分に移行し、RC部材に比べてその曲げ耐力の低下は小さく

なる。ゆえにじん性を確保するために、柱の短期荷重時作用軸力が下式に示す軸力制限値以下

となるようにする。軸力がこの範囲におさまっていれば、繰り返し逆対称曲げモーメントを受ける場

合においても柱の部材角として 1/100 ラジアン(rad)程度の変形能力が確保できると考えられる。

N=1/3(bD・FC+2・SA・SfC) N:短期荷重時作用軸力(N)

b:柱幅(mm)

D:柱せい(mm)

FC:コンクリートの圧縮に対する材料強度(N/ mm2)

SA:鉄骨部材の断面積(mm2)

SfC:鉄骨部材の短期許容圧縮応力度(N/ mm2)

(3) 鉄骨ウェブの形式として、充腹型はきわめて安定した吸収エネルギー量の大きい紡すい形の履

歴曲線をもち、最大耐力後の耐力低下は緩やかとなっている。これに対し、ラチス形、格子形は、

スリップ領域を有する逆 S字型の履歴曲線をもち、特に格子形は最大耐力以後の耐力低下が著

しい。したがって柱の鉄骨ウェブは充腹型を用いることとする。

(4) 出隅の柱でその柱に耐力壁が取り付かない場合又は不整形な平面形状をしていて架構構面

と主軸が一致しないような場合は、6.2.1「柱の設計」(3)と同様に、「SRC規準」4章 17条「柱の軸

方向力および曲げモーメントに対する算定」により、同時に2方向の応力を受ける材として設計す

る。また、柱に対して梁が偏心してとりつく場合など、柱にねじりモーメントが作用することが予想さ

れる時は、「SRC規準」4章 18条「部材のせん断力に対する算定」及び「RC規準」4章 22条「特殊

な応力その他に対する構造部材の補強」等を参考に必要な補強を行う。

(5) 柱内には、RC造と同様に、配管等の埋設を行わない。

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6.3.3 梁の設計

(1) 大スパンの梁は、長期たわみによる影響を検討する。

(2) 梁は、原則として、曲げ降伏が先行するように設計する。

(3) 梁貫通孔は、せん断力の大きい部位を避けて設け、必要に応じた補強を行う。また、梁に

は、配管等の埋設を行わない。

《解説》

SRC造の梁の設計において、曲げ、せん断に対する許容応力度は「SRC規準」4章 16条「梁の曲げ

モーメントに対する算定」及び 18条「部材のせん断力に対する算定」、終局強度は「技術基準」付録

1-4.2「鉄骨鉄筋コンクリート造部材の終局強度」及び「SRC規準」5章 32条「柱および梁部材の終局

曲げ耐力」及び 33条「部材の終局せん断耐力」等を参照する。

(1) SRC造は一般的に RC造より長スパンの梁になり、大スパンの梁においては長期荷重に対するた

わみの検討を行う。たわみの算定では、鉄筋コンクリート断面と鋼材の剛性を等価に評価した等

価断面2次モーメントを用いて行う。

(2) 梁においても柱同様じん性を確保するために、曲げ降伏が先行するように設計する。この場合、

梁の曲げ降伏時のせん断力に対して、せん断終局耐力は 1.2倍以上とすることが望ましい。鉄骨

ウェブの形式も充腹型を原則とするが、やむを得ない場合はラチス形を用いてもよい。

(3) 梁貫通孔は設けないことが望ましいが、設ける場合は終局時に塑性化が予想される梁端部(柱

際から内法スパンの 1/10以内かつ、梁せいの 2倍以内)を避けて、上下の位置は梁せいの中央

付近とする。孔径は梁せいの 1/3以下かつ鉄骨せいの 1/2以下とし、孔が連続することを避ける。

やむを得ず連続する場合は、中心間隔で両孔径の平均値の 3倍以上を確保する。また、梁には

配管等の埋設は行わない。なお、鉄骨部分は補強の有無にかかわらず、施工性を考慮して原則

として鋼管スリーブを用いることが望ましい。

6.3.4 壁の設計

壁の設計は、「6.2.3壁の設計」に準じ、壁の構造種別等の特性を考慮して行う。

《解説》

SRC造の壁の設計は、「SRC規準」4章 25条「壁部材」、5章 38条「壁部材の終局耐力」によるほか、

「6.2.3壁の設計」の解説を参照する。なお、配筋については「SRC配筋指針」を参考にする。また、

平鋼等の筋かい材を鉄筋コンクリートの壁に埋め込む場合は、座屈によるぜい性的な破壊を避ける

ためにも、コンクリートの厚さ及び配筋を適切に決める必要がある。

6.3.5 床版の設計

床版の設計は、「6.2.4床版の設計」、「6.4.4床版の設計」に準じ、床版の構造種別等の特性を考

慮して行う。

《解説》

SRC造の床板の設計は、「6.2.4床版の設計」及び「6.4.4床版の設計」に準じて行う。

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6.3.6接合部及び柱脚の設計

(1) 柱・梁接合部は、取り付く部材の強度に対して、十分な強度が確保されるように設計する。

(2) 柱・梁接合部に取り付く柱及び梁のそれぞれの鉄骨部分の曲げ耐力の和は、極端に異なら

ないようにし、両部材間の鉄骨部分の応力が確実に伝達できるように設計する。

(3) 鉄骨部分の柱・梁仕口部の接合形式は、力学的特性、施工性等を考慮して決定する。

(4) 鉄骨部分の柱・梁仕口部及び継手部は、「令」第 67 条の規定により、その応力状態を考慮

して設計する。

(5) 鉄骨部分の柱脚部は、「令」第 66 条の規定によるほか、その応力を確実に鉄筋コンクリー

ト部材に伝達できるように、原則として、埋め込み形柱脚で設計する。

《解説》

SRC造の接合部、継手及び柱脚の設計において、許容応力度に基づく設計は「SRC規準」4章 20

条「柱梁接合部」、21条「鉄骨および鉄筋の継手」及び 22条「柱脚」、終局強度は、「技術基準」付録

1-4.2「鉄骨鉄筋コンクリート造部材の終局強度」、「SRC規準」5章 35条「柱梁接合部の終局せん断

耐力」、36条「継手の終局耐力」及び 37条「柱脚の終局耐力」等を参照する。

(1) 「SRC規準」5章 35条「柱梁接合部の終局せん断耐力」を参考に、接合部の終局耐力は取り付く

柱、梁の終局耐力に対して十分余裕のあるものとする。

(2) 柱・梁接合部に取り付く柱及び梁のそれぞれの鉄骨部分の曲げ耐力の和は、極端に異ならな

いようにし、両部材間の鉄骨部分の応力が確実に伝達できるように設計する。柱、梁部材の鉄骨

部分とコンクリート部分のそれぞれの曲げ耐力の和は、「SRC規準」4章 20条「柱梁接合部」の

(20.3)、(解 20.13)式を満足するように設計する。

(3) 鉄骨部の柱梁接合形式は原則として、柱貫通型水平スチフナー形式、または梁貫通形式とす

る。梁貫通形式は、梁の鉄骨が柱の鉄骨に比べて大きい場合に採用し、柱貫通形式は柱鉄骨を

通すことが適切な場合に用いる。両形式とも鉄骨に関しては応力の流れが明確となり、単純で確

実な接合形式といえるが、コンクリートの充てんが梁や水平スチフナーにより難しくなるので、これ

らを十分考慮した設計を行う。

また、設計に当たっては、鉄筋貫通孔、スカラップ、溶接タイプ(突合せ、すみ肉)等を考慮した

構造計算を行う。

(4) 継手の位置は、原則として大きな応力が生ずる位置には設けない。継手部の設計においては、

部材本体が十分に塑性化するまで破壊しないことを目標に設計する。

鉄骨継手は、塑性化領域外にあることを条件として、曲げ応力はフランジ部分で、せん断応力

はウェブ部分で負担するものとして、各々の有効断面積を考慮した全強継手として設計する。ま

た、梁鉄骨のフランジ材の材質または厚さを継手部で変える場合は、梁端部及び継手位置で断

面が決定されることが多いので、必ず断面の検討を行い、安全性を確認する。

(5) 柱脚は、鉄骨鉄筋コンクリート造と鉄筋コンクリート造の接点となるので、剛性の大きな地下室の

柱に鉄骨を埋め込むか、地下室のない場合には基礎、地中梁に鉄骨を埋め込むなど、柱鉄骨

応力を確実に鉄筋コンクリート部分及び基礎に伝達させる必要がある。やむを得ず埋め込み形

柱脚以外とする場合は、十分な耐力とじん性が確保できるようにする。

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6.4 鉄骨造

6.4.1 柱の設計

(1) 柱は、細長比、軸力比を抑え、じん性を確保するように設計する。

(2) 柱の板要素の幅厚比は、じん性を確保できるように決定する。

(3) 出隅の柱及び直交する両方向に筋かいの付いている柱は、同時に 2 方向の応力を受ける材

としても検討する。

《解説》

S造の柱の設計において、曲げ、せん断及び軸力に対する許容応力度は「S規準」5章「許容応力

度」、6章「組合せ応力」、終局強度は技術的助言(平成 19年国住指第 1335号)、「技術基準」付録

1-2.5「鉄骨造部材の終局強度」及び「S塑性指針」3章「全塑性モーメント」等を参照する。

(1) 軸方向力と同時に曲げモーメントをうける柱では細長比及び軸力比が大きく、取り付く梁の剛比

の小さいものほど、柱自身の回転能力が減少し、P-δ効果による骨組全体の不安定現象が起こ

りやすくなる。このため、柱のじん性を確保するために柱の細長比、軸力比をある程度抑えておく

必要がある。 一般の柱については「令」第 65条及び「S規準」11章「圧縮材ならびに柱材」により

細長比λは 200以下とする。また、特に塑性を考慮する場合は「S塑性指針」6章 6.1「柱材の細

長比および圧縮軸力の制限」の(6.1.6)、(6.1.4.a)、(6.1.4.b)式の規定による。

柱の座屈長さは、通常移動が止められている節点間の距離とする。ただし、水平移動が拘束さ

れない場合、端部の固定度を評価する場合は「S規準」11章 11.3「単純な支持条件を持つ材の

座屈長さ」による。

柱に用いられる角形鋼管は、原則として建築構造用冷間ロール成形角形鋼管 BCR(大臣認定

品)及び建築構造用冷間プレス成形角形鋼管 BCP(大臣認定品)を採用するものとし、一般構造

用角形鋼管 STKR(JISG3466)については使用部位や期待する変形性能及び強度を十分考慮す

る必要がある。基準強度、幅厚比等は、各評価内容及び設計マニュアルによるものとし、「冷間成

形角形鋼管設計・施工マニュアル(建築センター)」を参照する。

(2) 板要素の幅厚比は、原則として「都設計指針」表 5-1-3 を満足させる。

(3) 柱は、一般には2方向の応力を別々に検討しているが、隅柱などで 2方向の応力が集中するよ

うな場合は、両方向の応力が同時に作用するものとして検討を行う。また、高層建築物などでは、

必要に応じて斜め加力の検討を行う。

6.4.2 梁の設計

(1) 梁は、断面の剛性を確保することにより、たわみや振動による障害が生じないように設計

する。

(2) 大梁は、じん性を確保するために、適切な板要素の幅厚比とするとともに、所要の横補剛

材を配置する。

(3) 梁は、ねじりによる応力への影響を考慮して設計する。

(4) 梁貫通孔は、せん断応力の大きい部位を避けて設け、必要に応じた補強を行う。

《解説》

S造の梁の設計において、曲げ、せん断に対する許容応力度は「S規準」5章「許容応力度」等、終

局強度は技術的助言(平成 19年国住指第 1335号)、「技術基準」付録 1-2.5「鉄骨造部材の終局

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強度」及び「S塑性指針」3章「全塑性モーメント」等を参照する。

(1) 鉛直荷重による梁のたわみは、平成 12年「告示」第 1459号によるほか、通常の場合スパンの

1/300以下、片持梁では 1/250以下とする。たわみの算定に当たっては、梁端部の拘束条件を

十分考慮して算定する。また、大梁、小梁及び母屋それぞれのたわみ量の累加によって仕上げ

材に支障が生じないよう留意する。なお、鉄筋コンクリート床スラブとの合成効果を考慮して梁の

剛性を評価する場合には、鉄筋コンクリート部分のクリープも考慮してたわみの検討を行うことが

望ましい。

(2) 局部座屈などにより耐力が損なわれることのないよう、板要素の幅厚比は原則として「都設計指

針」表 5-1-3 を満足させる。

梁の横補剛は、梁の両端部が塑性状態に至った後、十分な回転能力を発揮するまで横座屈を

生じない保有耐力横補剛として設計する。設計に当たっては「技術基準」付録 1-2.4「鉄骨造部

材の変形能力確保」等を参照する。

(3) 鉄骨梁は、一般にねじり剛性が小さいので、ねじりモーメントが生じないように構造計画を行う。

例えば、梁の途中から片持梁が出る場合は、梁に直接ねじりがかからないように片持梁を引き通

し、連続梁とする等の対策を講じる。

(4) 梁貫通孔は、梁端部(柱際から内法スパンの 1/10以内かつ、梁せいの 2倍以内)は原則として

避ける。梁貫通孔の最大径は、梁せいの 0.4倍以下とし、連続して設けない。やむを得ず連続し

て設ける場合には孔中心間距離は両孔径の平均値の 3倍以上とする。貫通孔の上下の位置は、

梁せいの中央付近に設ける。

なお、充腹形で貫通孔の多い場合には、貫通孔に外接する正六角形の孔に置換し、ハニカム

梁に準じて曲げ及びせん断等の検討を行い、梁ウェブ等の厚さを決定する。

6.4.3 筋かいの設計

(1) 筋かい等は、それぞれの力学的特性を考慮して決定する。

(2) 筋かいは、全体曲げによる架構の変形、引張側柱の引抜きを考慮し、また、圧縮側柱の座

屈が生じないように設計する。

(3) 引張り筋かいは、じん性を確保するため、接合部で破断することのないように設計する。

《解説》

(1) 筋かい等の耐震要素の構造形式は、X型、K型、偏心K型等の筋かいと鋼板耐力壁等の壁板

状のものに大別できる。

筋かいは、水平せん断剛性が大きくなりすぎると筋かい付き柱の軸力が大きくなり過ぎ、フレー

ムの安定性が悪くなるとともに、柱脚部の引抜き力の処理が難しくなる等の問題が生じる。また、

連層の筋かいでは、柱の伸縮による曲げ変形が大きくなるため、上層部においては水平力の分

担が小さくなる。筋かいの設計においては、筋かいの架構形式を含め、これらの問題を考慮し、

建築物全体でバランスのとれたものとする。

筋かいは、引張りのみに期待する設計と引張り及び圧縮に期待する設計がある。いずれの場合

も、接合部での各部材の重心軸は1点に集まるように設計し、1点に集められない場合は、偏心の

影響を考慮する。

鋼板耐力壁は、リブ等で十分補強して鋼板壁自体の全体座屈あるいは局部座屈を防ぐことに

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より、十分な変形性能が期待できる。鋼板耐力壁が取り付く柱・梁部材については、一般に施工

精度の確保が難しいため、その取り合い部分等については十分検討する。

(2) 比較的高層の建築物に使用される圧縮筋かいは、細長比が大きい場合は、座屈後の耐力

低下が著しく、履歴特性も複雑なものとなり、じん性も低下する。このような現象を避け

るため、圧縮筋かいの細長比は、40 以下とすることが望ましい。それとともに筋かいの水

平力分担を小さくおさえるか、筋かいの取付く梁等が先に降伏して筋かいの座屈を防ぐよ

うな構造(偏心K型等)とするなどの設計法を用いる。

圧縮筋かいの細長比、幅厚比は柱と同様に設計する。ただし、ウェブプレートの幅厚比は

圧縮力だけを受けるものとして「技術基準」の(付 1.2-5)式による。

(3) 引張筋かいは、塑性域に入ると逆 S字型の履歴曲線でただ1回の塑性変形でエネルギーを吸収

するだけとなり、じん性に乏しい。このため、引張筋かいは十分な耐力を持たせるように設計する。

また、過去の例からも、引張筋かいは、接合部で破断することが多いため、接合部は筋かい材に

対し十分な耐力をもつよう、保有耐力接合設計を行う。具体的な計算方法については「技術基

準」付録 1-2.4「鉄骨造部材の変形能力確保」等による。

6.4.4 床版の設計

(1) 床版は、応力、たわみ及び振動を考慮して設計する。

(2) 床版の構法は、構造上の特性、建築物の使用目的、施工性及び経済性を考慮して決定する。

(3) 床版は、面内に生じるせん断力以上の強度及び剛床仮定を満たす剛性を確保し、必要に応

じて水平筋かいを設ける。

(4) 床版は、埋設される配管等を考慮して設計する。

《解説》

床版は、積載荷重を架構に伝えるとともに、水平力の伝達を担う重要な構造部材であり、S造の床

版は特に水平力の伝達が十分できて、剛床仮定を満足させる剛性を確保することができるかに留意

する。

(1) 床版のたわみ及び固有振動数等は、6.2.4「床版の設計」に準じて算定し、支障のない範囲と

する。デッキプレートを用いた合成床版等については、「デッキプレート床構造設計・施工規準-

2004」((一社)日本鉄鋼連盟)にたわみ及び固有振動数の算定方法並びに許容値の目安が示

されているので参照する。

(2) 床版の構法は、構造上の特性、建築物の使用目的、施工性及び経済性を考慮して決定する。

デッキプレートを用いた合成床版等については、「デッキプレート床構造設計・施工規準-

2004((一社)日本鉄鋼連盟)」等による。床鋼板(デッキプレート)とコンクリートの合成スラブとした

ものは、一般に耐火被覆が必要であるが、国土交通大臣の認定により耐火被覆が不要な工法も

ある。これらの採用にあたっては、当該認定を受けた使用条件等で採用する。

(3) 床の面内剛性が小さく、面内に生じるせん断力を処理できない場合、水平筋かい等を設けて床

面剛性および強度を確保する。

(4) 床版に埋設される配管等がある場合は、それらを考慮して設計する。なお、大臣認定を取得し

た床版を採用する場合は、使用条件等に十分留意する。

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6.4.5 接合部の設計

(1) 柱・梁接合部は、取り付く部材の強度に対して、十分な強度が確保されるように設計す

る。

(2) 柱・梁仕口部の接合形式は、力学的特性、施工性、品質管理方法等を考慮して決定する。

(3) 柱・梁仕口部及び継手部は、「令」第 67 条等の規定により、その応力状態を考慮して設

計する。

(4) 鉄骨工事の品質管理の項目である「接合部に関する事項」「受入れ検査に関する事項」

は、構造設計の担当者が「要求性能(設計品質)」に基づき、設計図書に明示する。

(5) 溶接の検査は工事施工者(元請)が検査を自ら行うか、第三者に依頼して行うものを「受

入れ検査」とし、構造設計の担当者は、鉄骨加工工場の能力及び品質管理状況、建築物の

重要度等について総合的に勘案して「受入れ検査」の抜取り検査率を決定する。

(6) 現場溶接は原則として採用しない。ただし、十分な施工管理が行える場合、又は補助部

材等はこの限りでない。

《解説》

接合部は応力伝達に支障がなく、接合される部材と同等の強度、じん性を確保できるものとする。

接合部の設計に当たっては、「鋼構造接合部設計指針(建築学会)」等を参考にする。

(1) 柱梁接合部はS造において十分な強度とじん性が必要とされる。このため、「S規準」及び「S塑

性指針」に準じて接合部の検討を行い、原則として保有耐力接合となるように設計する。

(2) 柱・梁仕口部の接合形式は、力学的に応力伝達が明確になるような形式とし、施工性や品質

管理方法・レベルを考慮して決定する。

(3) 柱・梁仕口部及び継手部は、崩壊メカニズム時に当該部位に作用する応力に対して、また、当

該部位が塑性化する応力に対して、仕口部及び継手部が破断しないように設計し、接合される

部材と同等以上の強度及びじん性を有し、支障なく応力が伝達できるものとする。具体的には、

「令」第 67条及び平成 12年「告示」第 1464号(鉄骨造の継手又は仕口の構造方法を定める件)

を満足するほか「技術基準」付録 1-2.4「鉄骨造部材の変形能力確保」により検討を行う。また、

製作ならびに施工に際しての寸法精度の許容差は「JASS6付則 6鉄骨精度検査基準(建築学

会)」の規定による。

(4) 鉄骨工事の品質管理の起点は、構造設計の担当者が設計において確定し、設計図書に表現

した「要求性能(設計品質)」である。したがって、構造設計の担当者は、「要求性能(設計品質)」

に基づき、設計図書に以下の事項を明示する。各事項の詳細は「鉄骨造等の建築物の工事に関

する東京都取扱要綱」(2都市建調第 272号)による。

(a)接合部に関する事項

(b)受入れ検査の実施に関する事項

・工場製作に関する検査

・工事現場製作に関する検査

(5) 「受入れ検査」として行う溶接部の検査は、表面欠陥を検出するために行う外観検査と内部欠

陥を検出するために行う超音波探傷検査(UT)を組み合わせて行う必要がある。

鉄骨加工工場の社内検査(自主管理検査)によって全数検査(検査率 100%)を実施し、十分な

品質の確認が行われていることを前提として溶接部の「受入れ検査」の抜取り検査率を決定する。

検査率は「東京都建築工事標準仕様書」、「建築工事施工計画等の報告と建築材料試験の実務

手引き」等を参考に決定し、一例を以下に示す。

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・鉄骨加工工場の能力及び品質管理状況、建築物の重要度等、総合的に勘案して 30%を下

限として抜取り検査率を決定する。ただし国土交通大臣認定工場のMグレード以下の工

場については、接合部に関する品質確保について合理的に説明できる場合を除き、「受

入れ検査」の検査率は 100%とする。

(6) 現場溶接は、工場溶接と異なり、天候、足場などにより作業環境が変化しやすく、品質のうえで

は不利な条件となるため、原則として採用しない。工事現場における施工状況等により、やむを

えず実施する場合は、十分な施工管理が行えること等を条件とし、工期及び工程の制約などか

ら自主検査が省略されることもあるため、「受入れ検査」の検査率は 100%とする。

また、補助部材を構造材に取り付ける現場溶接をやむを得ず実施する場合も、熱により構造

材に悪影響を与えてないよう注意する。

6.4.6 柱脚の設計

柱脚は、構造計算において仮定した支持条件を満たす構造形式とし、「令」第 66条の規定による。

《解説》

柱脚は計算上仮定された支持条件に近いものにすると共に、実況と計算仮定の差異が建築物の

耐力あるいは変形に及ぼす影響を考慮し、必要な耐力と変形性能を確保するように設計する。柱脚

の下部が SRC造に接合される以外は、露出柱脚または埋込み柱脚を採用する。

露出柱脚で、工法および材料に評定および大臣認定を取得したものを採用する場合は、通常の

埋め込み型柱脚等と比較することと併せて、類似の評定工法等との検討を十分に行う。なお、これら

の評定及び認定を取得した製品は、設計・施工・検査等に条件が付されているのでその内容をよく

確認し、標準仕様図面等を添付する。

柱脚部の構造は、「令」第 66条及び平成 12年「告示」第 1456号(鉄骨造の柱の脚部を基礎に緊

結する構造方法の基準を定める件)、「技術基準」付録 1-2.6「柱脚の設計の考え方」による。

6.5 合成構造・混合構造

6.5.1 一般事項

(1) 合成構造・混合構造の採用に当たっては、コスト、構造耐力、解析手法など十分な検討

を行い採用する。

(2) スパン長、荷重条件等により、単一の構造種別(RC 造、SRC 造など)とすることが、合理

性、経済性を欠くと考えられる場合は、部材別、階別・平面的に RC 造、SRC 造、S 造、

PC 造等を組み合わせて使用する。

(3) 異種構造部材の接合部における応力伝達機構、鉄筋コンクリート部の耐久性上有害なひ

び割れ等について検討する。

《解説》

(1) 合成構造及び混合構造の採用に当たっては、コストのほか構造耐力、解析手法などについて

十分な検討を行い採用する。これらの構造の構造設計については、構造方法等によっては「各

種合成構造設計指針・同解説(建築学会)」のように学会等で基準等としてまとめられているもの

もあるので参考とする。

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(2) スパン長、荷重条件等の設計条件により、各種構造を立面的、平面的、部材別等により混用す

る場合は、単一構造の建築物と違い、力の流れや構造材料の大小による変形の違い等特に注

意して設計する必要がある。また、施工上の問題について十分検討する。

(3) 合成構造及び混合構造の採用に当たっては、異種構造部材の接合部における応力伝達機構

等の構造上の問題や意匠と関連した納まり等の詳細についても十分に検討する。また、鉄筋コン

クリート部については変形等の相違による耐久性上有害なひび割れ等について検討する。

また、合成構造及び混合構造において、保有水平耐力検討のための構造特性係数 Dsの設定

は不明確な場合があり、十分に検討する必要がある。

6.5.2 PC構造

(1) PC 構造は、「プレストレストコンクリート設計施工規準・同解説」(建築学会)、「プ

レストレスト鉄筋コンクリート(Ⅲ種 PC)構造設計・施工指針・同解説」(建築学会)等関

連規準および昭和 58 年「告示」第 1320 号による。

(2) 構造計算ルートは、「第 5 章構造計算 図 5.1 構造計算のフロー」に示すルート 3 を原

則とする。

(3) ポストテンション方式の PC 鋼棒の定着装置類は建築センター等の評定を取得したもの

とし、評定の範囲内で使用する。

(4) アンボンド工法を柱、梁、耐力壁に用いる場合は(PRC 造を除く。)、緊張材が破断した

場合に崩壊を防止するための有効な措置を講ずるとともに、限界耐力計算と同等以上の計

算を行い構造耐力上安全である事を確認する。

(5) 長期荷重の変動に対して安全であることを確認する。

(6) 現場緊張 PC 部材には、原則として貫通口を設けない。

《解説》

(1) PC 構造の設計に当たっては、「プレストレストコンクリート設計施工規準・同解説」(建築学会)、「プレ

ストレスト鉄筋コンクリート(Ⅲ種 PC)構造設計・施工指針・同解説」(建築学会)、「プレストレストコンクリ

ート造技術基準解説及び設計・計算例」(建築センター)などを参考に、昭和 58年「告示」第 1320号に

より設計する。

(2) 構造計算ルートは、「第 5章構造計算 図 5.1構造計算のフロー」に示すルート 3を原則とし、付加荷

重の取扱いに注意して設計する。

(3) ポストテンション方式の PC 鋼棒等の定着装置類には、大きな緊張力が荷重として作用するので、建

築センター等の評定を取得したものを評定範囲内で採用する。

(4) アンボンド PC 鋼材は、品質管理の行き届いた工場製品であり、耐腐食性能に関しては信頼性が高

いが、いかなる状況においても破断しないことを 100%保障することは難しい。破断した場合は、グラウト

によって付着を有する PC 鋼材と異なり、急速にプレストレス力を喪失し重大な事故に繋がる恐れがあ

る。不測の事態に対しても最低限の安全を確保する観点から、部材が落下崩落しないこと、構造物の

崩壊を誘発しないことに対し対策を講じておく必要がある。部材のこのような冗長性(フェイルセーフ)

を確保する例として次のような処置がある。

① アンボンド PC 鋼材の他に付着の良好な緊張材を配置し、アンボンド PC 鋼材が破断しても付着の

良好な緊張材で鉛直荷重に耐える構造とする。

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② アンボンド PC 鋼材の他に引張鉄筋を配置し、緊張材が破断しても鉄筋で鉛直荷重に耐える構造

とする。

③ 横架材の場合、緊張材が破断してもブラケットのような部材により落下を防止する。

④ その他、部材の崩落防止に有効な措置を取る。

⑤ ①から④を組み合わせる。

ここでいう鉛直荷重とは、固定荷重と積載荷重の和程度を想定しているが、積載荷重は建物の実況

に応じて設定するか、「令」第 85 条第1項表の(は)欄に記載される地震力算定用の数値を用いてよ

い。

(5) PC 構造は、緊張力が長期荷重として働くため、長期荷重の変動に対して安全であることを確認する。

例えば、プールを受ける梁において満水時と水を抜いた時や、駐車場の満車時と空車時など積載荷

重の変動が大きい場合は、積載荷重が少ない場合の断面算定も行うなど考慮が必要である。

(6) 原則として貫通孔は設けないこととするが、やむを得ず設ける場合は、「プレストレストコンクリート設

計施工規準・同解説」第 71条 2による検討を行い、開口部の破壊が母材または母材を含む架構の破

壊より先に起こらないように補強をしたうえで設置する。

6.5.3 CFT構造

CFT構造は、「コンクリート充填鋼管造の建築物又は建築物の構造部分の構造方法に関する安全上

必要な技術的基準を定める件」(平成 14年「告示」第 464号)によるほか、「コンクリート充填鋼管(CFT)

造技術基準・同解説」((一社)新都市ハウジング協会))、「コンクリート充填鋼管構造設計施工指針」

(建築学会)等による。

《解説》

CFT構造については、「コンクリート充填鋼管造の建築物又は建築物の構造部分の構造方法に関

する安全上必要な技術的基準を定める件」(平成 14年「告示」第 464号)によるほか、「コンクリート充

填鋼管(CFT)造技術基準・同解説」((一社)新都市ハウジング協会)、「コンクリート充填鋼管構造設

計施工指針」(建築学会)等によって構造設計をする。なお、CFT構造の施工については、新都市ハ

ウジング協会により、施工会社の技術レベル等により施工指導などを行っているので、工事に際して

は事前に協議を行うことが望ましい。

6.5.4 RCS構造

主要骨組が、RC造の柱と、S造の梁で構成される混合構造物の設計と施工は、「鉄筋コンクリート柱・

鉄骨梁混合構造の設計と施工」(建築学会)による。

《解説》

主要骨組が、RC造の柱と S造の梁で構成される RCS構造は、体育館や市場など大空間が求めら

れる建築に適した混合構造であり、その設計及び施工は「鉄筋コンクリート柱・鉄骨梁混合構造の設

計と施工」(建築学会)等による。

なお、S造の梁から RC造の柱への応力伝達機構の検討や鉄筋や鉄骨部材の接合部納まり等の検

討を十分に行うほか、接合方法によっては特許工法になっている場合があるので注意する。

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第 7 章 非構造部材

7.1 非構造部材の耐震目標水準

(1) 非構造部材は、耐震設計に際し、構造体の要素から除外されている部材、部位とする。な

お、設備関係機器は取り合い部のみを対象とする。

(2) 非構造部材の耐震設計に当たっては、関係法令の規定に適合させるだけでなく、施設の用

途及び地震動後に施設に必要とされる機能等に応じ目標とする水準を定め、その確保を図

る。

ア 中地震動に対する非構造部材の耐震安全性の目標は、全ての非構造部材に使用上の支障

となる損傷が生じないこととする。

イ 大地震動に対する非構造部材の耐震安全性の目標は、表 7.1 のとおりとする。

なお、特定天井は「令」第 39 条及びそれに基づく「告示」等関係法令の規定による。

(3) 非構造部材の耐震安全性は、建築物周囲の動線、建築物の密集度、避難道路との関係等、

敷地外部への影響、非常時の機能動線などを考慮し、建築物・工作物の各部に適用する。

(4) 設備基礎等を受ける構造体の設計は、建築設備設計における耐震性能を考慮する。

表 7.1 非構造部材の耐震目標水準

分類 目標水準 対象とする施設

A

大地震動後、災害応急対策活動や被災

者の受け入れの円滑な実施、又は危険物

の管理のうえで、支障となる非構造部材

の損傷、移動等が発生しないことを目標

とし、人命の安全確保に加えて十分な機

能確保が図られている。

(1) 災害応急対策活動に必要な施設

(2) 危険物を貯蔵又は使用する施設

(3) 地域防災計画において避難所等

として位置付けられた施設

B

大地震動により非構造部材の損傷、移

動等が発生する場合でも、人命の安全確

保と二次災害の防止が図られている。

(1) 多数の者が利用する施設

(2) その他、分類 A 以外の施設

《解説》

(1) 非構造部材とは、耐震設計に際し、構造体の要素から除外されている外壁、建具、天井などの

部材、部位とし、これらの部材、部位の地震災害及びその二次災害に対する安全性を確保するこ

ととする。なお、大地震時には、構造体との挙動の相違から仕上げ材料が脱落又は移動して設備

機器類を損傷する等非構造部材が建築設備の機能を阻害しないよう、取り合い部分で適切なク

リアランスを確保する。

(2) 非構造部材の検討は建築基準法など関係法令において、屋根ふき材、外装材等に詳細な評

価基準が設けられていたが、平成 23年 3月に発生した東北地方太平洋沖地震において大規模

空間を有する建築物において天井が脱落した事案が生じたことから、「令」及び「告示」等の制

定・改正が行われ「特定天井(注)」の脱落防止に関する規定が新たに設けられた。

(注)特定天井は、吊り天井であって、次の①から③のいずれにも該当するもの

①居室、廊下その他の人が日常立ち入る場所に設けられるもの

②高さが6mを超える天井の部分で、その水平投影面積が 200 ㎡を超えるものを含むもの

③天井面構成部材等の単位面積質量(天井面の面積の1㎡当たりの質量をいう。)が 2kgを超え

るもの

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特定天井脱落対策に係る「令」及び「法」施行規則の関係条項並びに関係技術基準「告示」は、

次のとおり。

<令>

第 36条第 1項、第 36条の 2、第 39条第 3項及び第 4項、第 81条第 1項及び第 2項、第 82

条の 5、第 137条の 2

<建築基準法施行規則>

第 1条の 3、第 3条の 2、第二号様式、第十九号様式、第二十六号様式、第四十二号様式、

第四十二号の十三様式、第四十二号の十七様式

<関係技術基準告示>

告示名(告示番号) 関係根拠規定

特定天井及び特定天井の構造耐力上安全な構造方法を定める件(平成

25年告示第 771号)

令第 39条第 3項

超高層建築物の構造耐力上の安全性を確かめるための構造計算の基

準を定める件(平成 12年告示第 1461号)

令第 81 条第 1 項第三

号、第四号

損傷限界変位、Td、Bdi、層間変位、安全限界変位、Ts、Bsi、Fh及びGsを計算する方法並びに屋根ふき材等及び外壁等の構造耐力上の安全を確かめるための構造計算の基準を定める件(平成 12年告示第 1457

号)

令第 82条の 5第七号

免震建築物の構造方法に関する安全上必要な技術的基準を定める等

の件(平成 12年告示第 2009号)

令第 81条第 2項第一号

プレストレストコンクリート造の建築物又は建築物の構造部分の構造方法

に関する安全上必要な技術的基準(昭和 58年告示第 1320号)

令第 81条第 2項第一号

エネルギーの釣合いに基づく耐震計算等の構造計算を定める件(平成

17年告示第 631号)

令第 81条第 2項第一号

建築物の倒壊及び崩落、屋根ふき材、特定天井、外装材及び屋外に面

する帳壁の脱落並びにエレベーターの籠の落下及びエスカレーターの

脱落のおそれがない建築物の構造方法に関する基準並びに建築物の

基礎の補強に関する基準を定める件(平成 17年告示第 566号)

令第 137 条の 2 第一号

イ、ロ及び第二号イ

建築基準法施行令第 36条の 2第五号の国土交通大臣が指定する建築

物を定める件(平成 19年告示第 593号)

令第 36条の 2第五号

確認審査等に関する指針(平成 19年告示第 835号) 法第 18条の 3第 1項

特定天井の設計については、「建築物における天井脱落対策に係る技術基準の解説」((一

社)建築性能基準推進協会)を参考にすること。

学校施設については、平成 25年文部科学省「学校施設における天井等落下防止対策の一

層の推進について(通知)」(8月 7日付)に留意して設計を行う必要がある。

なお、特定天井の条件に該当しなくてもこれに準ずる規模の天井で、不特定多数の者が利用

に供する居室の天井については、建物管理者と協議の上、特定天井と同等の仕様にすることが

望ましい。

構造体については、「5.1.2 用途係数」に従い、防災上の重要度に応じて設計することとなっ

ているが、地震動後、建築物の機能を発揮させるためには、天井や家具など非構造部材の落下、

転倒等の被害を避けなければならない。そのため、非構造部材については、当該建築物の存続

中に数回遭遇するレベルの中地震動に対しては、全ての非構造部材に使用上の支障となる損傷

が生じないようにし、建築物の存続中に遭遇するか否かのレベルの大地震動に対しては、当面の

間、表 7.1に示す施設の分類に応じて、目標水準に見合う性能を確保する。(表 7.1の施設分類

は、「表 5.1 用途係数」の施設分類と異なるので注意する。)

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A類の施設の外部及び活動拠点室、活動支援室、活動通路、活動上重要な設備室、危険物

を貯蔵又は使用する室等における非構造部材は、大地震動後、災害応急対策活動等を円滑に

行う上、又は危険物の管理の上で支障となる非構造部材の損傷、移動等が発生しないことを目

標とし、人命の安全確保に加えて十分な機能確保が図られるものとする。また、機能の停止が許

されない室においては、要求される機能に応じた検討を行う。

B類の施設の非構造部材は、大地震動により損傷、移動等が発生する場合でも、人命の安全

確保と二次被害の防止が図られていることを目標とする。なお、A類の対象施設であっても上記で

示される地震動後に機能確保を要しない室については B類と同様とする。

設計は、「建築非構造部材の耐震設計施工指針・同解説および耐震設計施工要領」(建築学

会)、「外装構法耐震マニュアル-中層ビル用」(建築センター)等を参考とする。

なお、外壁や懸垂物の落下事故は、人的被害を含む重大災害につながる恐れがあるので、必

ず検討を行うように注意する。内部に設置される懸垂物の安全性を検討する場合、「懸垂物安全

指針・同解説」(建築センター 監修:建設(現国土交通)省住宅局建築指導課)を参考にすること

ができる。

【参考】

検討に用いる設計用地震力は、最新の知見に基づき設計者が決定する。決定にあたっては、

当面の間、解説表 7.1 に示す水平震度を参考にできる。(特定天井を除く)

解説表 7.1 非構造部材の設計用標準水平震度

分類 設計用標準水平震度

上層階屋上及び塔屋 中間階 1階及び地下階

A 1.0 1.0 0.6

B 1.0 0.6 0.4

上層階:2~6階建は最上階、7~9階建は上層 2階、10~12階建は上層 3階、

13階以上は上層 4階

中間階:1階、地下階を除く各階で上層階に該当しないもの

(3) 非構造部材の耐震安全性は、建築物周囲の動線、建築物周辺の密集度、避難道路との関係、

敷地外部への影響、非常時の機能動線などの要素について検討、建築物及び工作物の各部に

ついて必要な性能を決定し、各部が要求性能に見合う変形性能や耐力等を確保する。

(4) 設備基礎等を受ける構造体の設計は、建築設備設計における耐震性能を満足するように設計

しなければならない。

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第 8 章 基礎構造

8.1 地盤調査

(1) 地盤調査は、地盤種別と建築物の規模を考慮して予備調査及び本調査を行い、必要に応

じて追加調査を行う。

(2) 予備調査は、地盤概要の把握及び本調査の計画の資料とするため、周辺建築物の基礎形

式の調査、既往の地盤調査資料の収集、文献調査及び現地調査を行う。

(3) 本調査は、基礎形式及び施工方法を選定するために支持層の深さ、支持力、沈下性状、

地下水位等の地盤の性質を把握できる内容とする。

(4) 杭基礎の場合には、杭の水平力に対する検討を行うため、孔内水平載荷試験を実施し、

水平方向地盤反力係数(Kh値)を確認する。

《解説》

(1) 地盤調査は地盤種別に応じ、また、建築物の規模、採用する可能性がある基礎形式及び工法

等により、それぞれの場合に適した方法及び内容とする。そのため、「建築基礎設計のための地

盤調査計画指針(建築学会)」等を参考に調査を計画し、予備調査で十分な資料を収集し、支

持層の深さ等予想した上で本調査を行う。追加調査は、本調査等により明らかな問題点が生じ、

さらに詳細な情報が必要な場合に行う。

(2) 予備調査は、法律・条令等に関する調査、文献・資料による調査など行い、本調査を計画する

うえで必要な情報を得るものとし、資料を収集する。予備調査における現地調査は、地下水位、

敷地の傾斜や高低差、敷地の前歴、工事車両の搬入路、作業スペース、近隣敷地の地盤調査

資料、近隣建築物の基礎の種別などを調査する。

なお、予備調査に当たっては、既往の地盤調査や東京都土木技術支援・人材育成センターの

ホームページで公開されている「東京の地盤」等の資料を参考に、建設予定地の地盤において

局所的に地層構成や層厚が変化していないか確認する。東京臨海部や河川周辺などは、これら

変化が大きいため、地盤情報の信頼性をより向上させるための詳細な地盤調査を検討する。

(3) 基礎形式及び施工方法を選定するためのボーリング調査位置は、縦、横 30~40mの間隔以内

の位置で行うことを原則とするが、予備調査において局所的に地層構成や層厚が変化していると

想定される場合は、下記、(a)または(b)のいずれか、あるいは両方を組み合わせた地盤調査を

実施する。

(a)前述した「建築基礎設計のための地盤調査計画指針(建築学会)」等を参考に、敷地面積

の増加に応じて、適切に地盤調査本数を増加させる。

(b)通常のボーリング調査に加え、杭施工位置近傍等に静的コーン貫入試験やラムサウンディ

ング試験あるいはスウェーデン式サウンディング試験等を併用して、局所的な地層構成や層厚

の変化をより詳細に把握する。なお、これらの試験は、対応可能な深度や地層構成が定められ

ているため、実施に当たり注意が必要である。

また、既成市街地などでは、敷地に既存ぐいや改良地盤、地中障害物等が存在する場合が

あるので、これらの影響も勘案した上で地盤調査を実施する。

なお、建築物の位置が確定している場合はその位置を重点的に調査する。 ボーリング深さは、

地盤図、近隣の資料により支持層を推定し、決定する。特に重要、あるいは特殊と考えられる建築

物の場合は、ボーリング本数のうち1本以上は推定支持層より更に 10m深く調査を行う。

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また、23区域外では地下水利用があり、地下水の分布が静水圧分布となることが稀であるため、

地層別に地下水に関する正確な情報を得ることが必要である。

極めて小規模な倉庫等を設置する場合は、スウェーデン式サウンディング試験の結果を参考に

できる。

調査計画ならびに調査結果の解析の詳細は、「基礎指針」や「建築基礎設計のための地盤調査

計画指針(建築学会)」等を参照する。また、構造設計の担当者は、支持層を把握するために、等

値線図(コンター図)を描くことが重要である。

(4) 杭の水平力に対する検討は、孔内水平載荷試験を必ず実施し、水平方向地盤反力係数(K

h値)を確認する。

エキスパンションジョイントを設けない増築の場合は原則として既存部分の杭についても水平力

に対する検討が必要となる。既存部分の杭で水平耐力が不足する場合があるので注意する。

8.2 液状化等の検討

(1) 飽和砂質土層及び軟弱な飽和中間土層については、地震動時における液状化の発生の可能

性及びその程度を評価する。

(2) 液状化、地盤沈下、側方流動及び斜面崩壊の可能性のある場合は、その発生により基礎の

障害が生じないようにするとともに、上部構造へ及ぼす影響をできるだけ少なくする対策を

講ずる。

(3) 建築物のほか、敷地内の重要な付属設備等の基礎構造、工作物等に及ぼす影響をできるだ

け少なくする対策を講ずる。

《解説》

(1)(a)液状化を考慮すべき土の種類

地盤の液状化は、基礎の破壊、建築物全体の崩壊を引き起こす可能性があるため、以下に

ついては、液状化発生の可能性について十分な検討を行う必要がある。

①以下に該当する砂質地盤

ア 砂質土で粒径が比較的均一な中粒砂などからなる地層があること。

イ 地下水位以深にあって、水で飽和していること。

ウ 標準貫入試験によるN値がおおむね 15以下であること。

②細粒土含有率が 35%以下の土。

③粘土分(0.005mm以下の粒径をもつ土粒子)含有率が 10%以下、又は塑性指数が 15%以下

の埋立あるいは盛土地盤。

④ 細粒土を含む礫や透水性の低い土層に囲まれた礫。

⑤ 対象とする土層そのものの透水性は高く、粒土から判断する限り液状化し難いと判断されて

もその土層が粘土、シルトなど、透水性の低い土に覆われている場合。

⑥ 自然堆積の砂地盤だけでなく、シルト、まさ土(風化花崗岩)、建設発生土のような材料が埋

立に用いられた場合。

また、「東京の液状化予測」(東京都土木技術支援・人材育成センター)において、液状化予

測図、埋立工事履歴、明治・大正・昭和期での水系の変化等の情報が公開されており、本資料

に記載されている「利用上の注意」に配慮した上で、参考とすることができる。

(b)簡易予測法

液状化危険度の予測については、液状化の可能性(FL値)、液状化による危険度(PL値)、液

状化の程度(Dcy値)を総合的に判断して行う。ただし、用途係数の分類Ⅲの軽微な建物につい

ては、FL値で液状化の予測をしてもよい。

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FL値に基づく液状化予測法については既存資料や土質試験結果をもとに、簡単な手法を用

いて比較的精度の高い予測を行うことができる。

なお、液状化判定の具体的な計算については、「基礎指針」計算例[計算例1]4.5節 液状

化判定と動的水平変位及び残留沈下量及び「技術基準」7.3.2(4)ウ)表層地盤の液状化発

生の可能性の確認による。

本予測法における留意点を下記に示す。なお、地震動によって地盤が破壊に至らないまでも、

変形が生じる恐れがある場合は、構造物に及ぼす影響をできるだけ少なくするよう適切な対策

を講ずる。

①液状化の検討に用いる地表面における設計用水平加速度αmaxは 2.0m/s2を用いて検討

を行う。用途係数の分類Ⅰの建築物、用途係数の分類Ⅱで災害応急対策活動に必要な建

築物、大地震発生時においても人命の安全確保に加えて機能維持が求められている建築

物等、さらに高い加速度レベルにおける地盤性状を把握しておくことが望ましい場合は、水

平加速度を適宜割り増して液状化する限界加速度を求め、予測される液状化の程度を検

討しておく。この場合の水平加速度は 3.5m/s2程度とするが、地盤の性状や建築物の重要

性を勘案して最大値を4.0m/s2程度としてもよい。

②時刻歴応答解析を行う建築物等で、地表面加速度を算定している場合は、その加速度を利

用しての液状化判定を①に追加して行う。

(c)詳細予測法

以下に示す詳細予測法は、予測精度が高く、任意の地震動や地盤形状のモデル化が可能

である。したがって、地震時に地盤挙動の増幅が考えられる軟弱地盤地域等においては、以下

の①あるいは②の方式で液状化の予測を行うことが望ましい。

①原位置サンプリング試料による液状化強度試験等、詳細な地盤調査を実施し、動的変形特

性を求めた上で、解析パラメータを試験結果に合致するように設定し、有効応力解析を行う

こととする。この場合は、過剰間隙水圧比に基づく液状化の評価も併せて行い、「(b)簡易

予測法」で求めた液状化危険度の予測値等も踏まえ、総合的に液状化の危険度を判定す

る。

②有効応力解析のパラメータ設定に必要な地盤調査(土試料のサンプリングならびに室内動

的試験(液状化試験)等)を行うことができない場合について、剛性低下率の下限値を設定

する等、液状化強度を適切(構造安全側)に算定できる場合には、簡易液状化解析手法

(※)を用いてもよい。

※なお、本手法は以下の論文を参考にして解析を行う。ただし、この場合、液状化層の剛性低

下率rGの下限値は 0.02 とする。

・日本建築学会:建物と地盤の動的相互作用を考慮した応答解析と耐震設計

pp.75~78、2006年

・日本建築学会技術報告集:1次元等価線形解析による簡易液状化解析法の提案(小林素

直、林康裕、新井洋) Vol.21、No.48、pp.563~568、2015年

(2) 液状化、地盤沈下、側方流動及び斜面崩壊(以下「液状化等」)の対策に当たっては、液状

化等の発生そのものを防止する地盤改良、あるいは液状化等の発生は許すが被害を低減する構

造的対策等の方法があり、必要に応じて複数の方法の組み合わせも検討する。また、施工に当た

っては、建築物の形態、周囲の状況を考慮して効果の確実性、信頼性、施工性、経済性、工期等

を充分比較検討して選定する。

(3) 建築物のほか、敷地内の重要な付属設備等の基礎構造、工作物等に及ぼす液状化、地盤

沈下、側方流動及び斜面崩壊の影響をできるだけ少なくする対策を講ずる。建築物に付属の設

備や工作物は、建築物の機能に大きく影響するものが多いので、次のような対策を講じて液状化

等の影響を受けないようにすることが必要である。

①付属工作物等の基礎を、建築物の基礎と一体にする。

②建築物の周囲からの引き込み埋設配管等については、地盤沈下や地盤の移動に対して障害

が発生しないような十分な余裕や可とう性を確保する。

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③付属設備や工作物等の基礎の周辺地盤に対しても、地盤改良等の対策を行う。

8.3 直接基礎の設計

(1) 直接基礎の設計は、基礎底面に作用する鉛直力による応力度が地盤の許容応力度以下であ

ること及び沈下によって上部構造に有害な影響を与えないことを確認し、基礎のすべりに対

する検討を行う。

(2) 敷地の内外に高低差がある場合は、必要に応じて、地盤の安定性に関する検討を行う。

《解説》

(1) 直接基礎の設計は、「令」第 93条、平成 13年「告示」第 1113号(地盤の許容応力度及び基

礎ぐいの許容支持力を求めるための地盤調査の方法並びにその結果に基づき地盤の許容応力

度及び基礎ぐいの許容支持力を定める方法等を定める件)及び「基礎指針」により地盤の許容応

力度及び沈下等に対して安全になるように設計する。なお、「令」第 93条のただし書きの表の許

容応力度値は、ほぼ均質で、安定した敷地上の地盤について経験的に得られている数値により

定められており、建設地点の地盤特性の特殊性は考えられていないため、原則として算定に必

要なデータは、土質調査・試験によって得られた数値に基づくこととする。また、底面に水平力が

作用する場合は、基礎のすべりに対する検討を行う。

なお、地震時に液状化するおそれのある地盤の場合は、建築物の自重による沈下その他の地

盤の変形等を考慮して建築物又は建築物の部分に有害な損傷、変形及び沈下が生じないことを

確認する。

また、地下水による浮力の影響は、原則として支持力算定には考慮してはならない。ただし、浮

き上がりなど構造体としての安全性に対する地下水の影響は、止水対策、排水対策等の有無に

係わらず考慮して検討する。この場合、地下水位の浅い地盤における潮の干満や、季節による地

下水位の変動に注意する。

(2) 地盤の安定性の検討

敷地の内外に高低差がある場合には、地盤の安定性についての検討を必要に応じて行う。検

討の結果、斜面崩壊等の危険性がある場合には、8.6「擁壁」により擁壁を設置するなど対策を

適切に講ずる。検討に当たっては、「宅地防災マニュアルの解説」(宅地防災協会編)等が参考

になる。

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8.4 杭基礎の設計

(1) 杭基礎の設計は、杭に作用する荷重、杭の力学的性能、地盤条件、施工性、経済性等を考

慮して材料及び工法を選定する。

(2) 杭の許容支持力は、杭材料の許容応力度、地盤の許容支持力及び許容沈下量より求まる値

のうち最小値を採用する。

(3) 杭基礎は、稀に発生する地震動(中地震動時)によって引抜き力が作用しないように計画す

る。やむを得ず引抜き力を検討する必要がある場合は、杭の引抜抵抗以下とする。

(4) 水平力を受ける杭は、杭の水平力に対する検討を行う。水平力は、上部構造物の最下階に

おける地震層せん断力に基礎部分に作用する水平力を加えたもの及びその他適切な外力を

採用する。なお、応力の検討に当たっては、杭頭条件は原則として固定とする。

(5) 杭基礎は、必要に応じて保有水平耐力の検討を行う。その際の杭の保有水平耐力は、上部

構造の必要保有水平耐力以上を確保する。また、杭が地盤の強制変形を受ける可能性のある

場合は、必要に応じて、杭・地盤系の相互作用の影響を考慮して検討を行う。

(6) 杭と基礎床版の接合は、接合部に生じる引抜き力、せん断力及び曲げ応力に対して安全性

の確保されたものとする。

(7) 杭が負の摩擦力を受ける可能性のある場合は、その影響を考慮して設計を行う。

《解説》

(1) 杭基礎の材料及び工法は多種多様にあり、施工する地盤の状況は建築物の位置毎に異なる

ため、最適な材料・工法を選択することは非常に困難だが、建築物の規模、形状や上部構造

の形式、地盤条件、施工条件、敷地条件、経済性等を十分に検討し、決定しなければならな

い。

(2) 杭基礎の設計は、「令」第 93 条、平成 13 年「告示」第 1113 号により「基礎指針」を参考

に各許容応力度及び沈下等に対して安全になるように行う。なお、これまでの実績、経験等

に基づいた特定行政庁の定めた「取扱い」がある場合は、法令の範囲内でそれら「取扱い」

による。東京都では「取扱い」として「都設計指針」に「基礎構造審査要領」が定められて

いる。

また、大臣認定工法等特殊な工法を採用する場合は、支持力算定式の適用条件等に注意し、

当該杭の実際の条件に適合しているか十分に検討する。

杭の鉛直許容支持力は、杭体の許容耐力、地盤の許容支持力及び沈下について検討し、こ

れらから求まる最小値を採用する。

(a) 杭材料の許容応力度

杭材料の許容応力度は、平成 13年「告示」第 1113号第 8による。

(b) 地盤の許容応力度

地盤の許容支持力による杭の許容支持力は、原則として平成 13年「告示」第 1113号及び

「基礎構造審査要領」(「都設計指針」)による。なお、この要領の適用に当たっては、次の事項

に留意する。

・短杭の支持力低減があること

・大口径場所打ちコンクリート杭の支持力の低減があること

・場所打ちコンクリート杭の支持力は、支持地盤の種別による低減があること

(3) 原則として杭基礎には、建築物の存続期間中に数回程度発生する地震動(中地震動)によっ

て、引抜き力(基礎の浮き上がり)が作用しないように架構等を計画する。やむを得ず引抜き力が

作用する場合でも、原則として杭の自重等の重量により処理する。杭の引抜抵抗力の算定は、

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「基礎指針」等を参考に、平成 13年「告示」第 1113号によることとし、引抜抵抗力を伝えることの

できるように杭と基礎との接合部を設計しなければならないので注意する。なお、塔状比が高いな

どやむを得ず、杭の引抜抵抗力に地盤の周辺摩擦力を考慮する場合は、土質定数について十

分検討し、安全率を考慮して算定する。

(4) 杭は、平成 13年「告示」第 1113号、「地震力に対する建築物の基礎の設計指針(建築センタ

ー)」及び「基礎指針」第 6章 6.6節 「水平抵抗力および水平変位」等により水平力に対する検

討を行う。設計用水平力は、上部構造物の最下階における地震層せん断力に基礎部分に作用

する水平力を加えたもの、その他適切な外力を採用する。なお、応力の検討に当たっては、杭頭

条件は原則として固定とし、杭の曲げ戻しは基礎梁等により処理する。

(杭に作用する水平力に関する留意事項)

①水平力は、原則として全て杭で処理するものとする。

②水平力及び鉛直力を受ける杭体の応力度が杭体の短期許容応力度を超えないように設計す

る。

③水平力を受ける杭の設計は、原則として弾性支承梁として解析(Y.L.Changの解)し、「地震力

に対する建築物の基礎の設計指針(建築センター)」に示される算定式により行う。

④水平力による杭の変位が上部構造に有害な影響を及ぼさないようにする。

⑤地盤が液状化するおそれのある地層では、その影響を十分考慮して設計する。

⑥設計に採用する地盤反力係数の算出は、原則として土質試験、孔内水平載荷試験等に基づ

いた数値による。

⑦埋め立て地、軟弱地盤など負の摩擦力を考慮する必要がある地域等において、建築物の建

設後に周辺地盤の沈下により杭が露出するおそれのある場合には、地盤から杭頭が突出して

いるものとして、鉛直支持力及び水平力による杭の変位及び応力等の検討を行う。

(5) 大地震動時の検討

(a)杭の保有水平耐力の検討

大地震動時における杭基礎の検討は、保有水平耐力の確認により行う。保有水平耐力の検討

は、用途係数の分類がⅠ、Ⅱの建築物、高さが 31mを超える建築物および杭頭部付近の地層が第

三種地盤相当のような軟弱地盤上の建築物などについて、原則として行う。

また、建築物の地上部分の塔状比が4を超える場合は、平 19年「告示」第 594号第 4により杭

体の耐力及び杭の圧縮方向及び引抜き方向の極限支持力の検討を行う。

杭の保有水平耐力は、上部構造の必要保有水平耐力時において、杭に作用する圧縮力、引

張力および水平力を算定し、これらが杭の終局耐力を上回らないことを確認する。

なお、水平力は基礎スラブの根入れによる低減を許容応力度計算時と同様な方法により考慮し

てよい。

pQu≧pQun

pQu:杭の保有水平耐力(kN)

pQun:杭の必要保有水平耐力(kN)

pQD

pQun = Qun

QD

Qun :杭の直上階の必要保有水平耐力(kN)

pQD :杭の一次設計用せん断力(kN)

QD :杭の直上階の一次設計用せん断力(kN)

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杭の必要保有水平耐力は、原則として、上部構造の必要保有水平耐力以上となるように設定

する。ただし、上部構造の構造特性係数(Ds)が 0.4 より大きい場合で、SC杭、場所打ち鋼管コン

クリート杭等の靱性を有する杭を使用した場合は、杭の必要保有水平耐力を上部構造の構造特

性係数にして 0.4相当まで低減してよい。

1スパン又はこれに近い少数スパン構造では、建物周辺部の杭が終局状態に達すると同時に、

建物の回転動も終局状態に近づくことになるため、その場合には十分に余裕を持たせる必要が

ある。

(b)杭の終局耐力

杭の終局耐力は、次の方法により求める。なお、詳細については「建築耐震設計における保有

耐力と変形性能(1990)」(建築学会)を参考とするとよい。

①鉛直耐力

杭の鉛直耐力(圧縮)は、次のア~ウのうち、いずれか小さな値とする。

ア 杭材の終局強度

イ 基礎スラブの終局強度

ウ 地盤より定まる杭基礎の終局鉛直支持力

杭の鉛直耐力(引抜き)は、次のア~エのうち、いずれか小さい値とする。

ア 杭体の終局引張強度

イ 杭頭接合部の終局引張強度

ウ 地盤による杭の終局引抜き抵抗力

エ 杭に引抜き力が作用した場合の基礎スラブの強度

②水平耐力

杭の保有水平耐力を検討する場合、上部構造と一体として扱うことが望ましいが、簡便法として、

次に示すように杭のみで検討してもよい(杭頭が十分に回転拘束されている場合)

ア 杭体に十分な変形性能が期待できない場合は、弾性支承上の梁としての計算法(弾性地盤

反力法)によることができる。

イ 杭体が十分な変形性能を有する場合は、Broms の計算法(極限地盤反力法の一種)によるこ

とができる。

(C)地盤変位を考慮した杭の設計

地震時には、建築物の慣性力のほかに地盤の変位に起因する外力が杭に作用する。地盤状況

によっては、地盤変位による地中部の杭応力が、建築物の慣性力による杭頭の応力を上回り、地盤

の杭体に大きなせん断力や曲げモーメントが作用する可能がある。

杭の設計を行うに当たり、下記の①~③の地盤条件に該当する場合、地盤変位の影響を無視で

きない可能性が高いので、軽微な建築物で用途係数の分類Ⅲの建築物を除き、地盤変位を考慮し

た検討を行う必要がある。

①東京臨海部

②軟弱地盤

③地盤剛性が地層間等で急変する地盤

地盤変位を考慮した杭の設計は、下記手法による。

用途係数の分類Ⅰ、Ⅱの建築物等は、施設の重要性を勘案し、建物・杭・地盤の連成振動解析等

の詳細検討を行うことが望ましい。

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なお、解析パラメータに必要なデータの取得や分析ができない場合は、杭単体として地盤から受け

る強制変形の影響を静的解析により評価する応答変位法によってよい。なお、強制変形の検討は、

「基礎指針」の第 6章「応答変位法に基づく静的設計法」に基づき行うことができる。

(6) 杭と基礎床版(基礎スラブ・フーチング)の接合方法は、杭頭に生じる応力を確実に基礎床版

及び基礎梁に伝達できるように設計する。許容応力度設計において、杭と基礎床版の接合方法

は、原則として固定とし、接合方法の詳細は計算上の仮定と整合するように十分検討する。一般

的には、場所打ちコンクリート杭の場合では基礎床版に 10cm以上、既製杭の場合は杭径以上

埋め込む場合が固定として扱われる。固定以外とする場合や特殊な接合方法を採用する場合は、

固定度や接合方法の詳細、施工方式等について十分検討する。また、杭頭に生じた曲げモーメ

ントは、曲げ戻し応力として基礎梁に割戻して基礎梁断面算定を別途行う。なお、柱の剛性が梁

に対して無視できない場合は、柱にも割戻して算定する。

杭の保有水平耐力の検討を行う場合には、上部構造の性状に応じた設計が必要である。

①上部構造がじん性型の場合

杭及び基礎スラブとの接合部は、上部構造の保有水平耐力を上回る強度とし、地震動時のエ

ネルギー吸収は上部構造に期待する。

②上部構造が強度型の場合

上部構造が強度対応型の場合は、杭及び接合部のじん性に期待する設計とすることが考えら

れる。この場合は、じん性は、杭体、場合によっては基礎梁に期待することになる。

なお、転倒に対する杭の抵抗力を見込む場合は、接合詳細を含め十分に検討を行う必要が

ある。

(7) 地盤沈下を生じている地域及びその可能性のある地域で、沖積粘性土が厚く堆積しているなど、

杭が負の摩擦力を受ける可能性のある場合は、その影響を考慮して設計を行う。ただし、地盤沈

下がほぼ停止した地域など、負の摩擦力を考慮しなくても支障がないと判断される場合は、検討

を省略してもよい。設計に当たっては、「技術基準」5.6.2その他の荷重及び外力「負の摩擦力を

考慮したくいの設計指針」及び「基礎指針」6.5節「負の摩擦力」等を参考にする。

なお、負の摩擦力に対する対策として、杭の表面に潤滑剤等を塗布した対策杭の採用や地盤

改良などがあるが、一般の杭で対応が難しい時は、ネガティブフリクション対策杭(SL杭)の使用

を併せて検討する。

(その他杭基礎の設計における留意事項)

①杭基礎の許容支持力は杭の支持力のみによるものとし、特に詳細検討した場合のほかは、基礎

スラブ底面における地盤の支持力を加算しない。

②杭基礎の設計においては、荷重の偏心についての検討を行う必要がある。

③同一の建築物または工作物で支持杭と摩擦杭の混用は避ける。また、打込杭・埋込み杭及び

場所打ち杭の混用、材種等の異なった杭の使用は原則として避ける。

④杭の最小間隔は、施工性及び隣接する杭同士の影響を考慮して設定する。

⑤杭と基礎スラブの接合部は、杭基礎の設計条件及び建築物としての構造条件に適合するものと

する。(「基礎指針」6.8節「基礎スラブおよび杭頭接合部」参照)

⑥杭の継手部・先端部は十分に応力の伝達できるものとする。

⑦施工時の誤差等を考慮して、設計時に一定の杭の位置のずれを見込んで「あらかじめ検討」を

必ず行う。

⑧既製コンクリート杭の場合、設計で想定した支持地盤位置と施工時での誤差を考慮する。

特定埋込杭工法の場合は、各工法毎に支持層貫入量、根固め液への貫入量が規定されている

ので確認し、また、以下について設計時に検討する。

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ア 根固め部の強度等、健全性を確認する試験を実施する

(あらかじめ試験孔を設置し、未固結試料の施工及び強度確認等の実施を検討する。)

イ 杭先端部の拡大根固め球根部の状況を確認できる試験(ボアホールソナー等)を実施する。

ただしα※=250未満の杭工法は除く。

※α:平成 13年「告示」第 1113号第 6に基づく杭先端支持力係数

⑨建設地、建設時期等を勘案し、選定した杭に相応した技術力を有する施工管理技術者が確保

できるか検討の上、杭工法の選定を行う。

⑩既製杭の場合、局所的に地層構成や層厚が変化している地盤など、設計で想定した杭長では

施工できない場合があり、杭の再発注時に日数を要することを考慮する。

⑪試験杭は、地盤調査の結果等を参照し、本杭施工時における支持地盤への到達を判断するた

めに相応しいものを設計において決定する。なお、試験杭本数は3本程度とするが、建物規模、

杭本数を考慮し、設定する。

8.5 地盤改良

(1) 建築物の支持地盤として用いる地盤改良は、「地盤の許容応力度及び基礎ぐいの許容支

持力を求めるための地盤調査の方法並びにその結果に基づき地盤の許容応力度及び基礎ぐ

いの許容支持力を定める方法等を定める件」(平成 13 年「告示」第 1113 号)により、工法

は以下の通りとする。

① 深層混合処理工法

② 浅層混合処理工法

(2) 改良地盤の許容応力度

改良地盤の許容応力度は、平板載荷試験又は載荷試験により得られた数値に基づいて、平

成 13 年「告示」第 1113 号の第 4 の表の式により定める値とする。

(3) 適用規準

「建築物のための改良地盤の設計及び品質管理指針」(建築センター)のうち、地盤改良工

法に関係する部分を適用する。

(4) 軟弱地盤地域等において、大地震時の揺れやそれに伴う地盤の液状化による杭および地

上躯体への影響を低減させるために、建築物下部およびその周辺への地盤改良を検討する。

《解説》

(1) 平成 13年「告示」第 1113号第 3では、セメント系固化材を用いた地盤改良について定めてお

り、一般的には、深層混合処理工法と浅層混合処理工法の2つの工法がある。

(2) 地盤改良は、現場で行われる施工方法であり、又、材料として現場の土壌を使用するという特

殊な工法であるので、改良地盤の許容応力度は、平板載荷試験又は載荷試験により得られた数

値に基づいて、平成 13年「告示」第 1113号第 4により求める。

改良地盤に対しては、地盤条件等に適した試験法により改良の目的に十分適合したことを確か

める必要がある。また、地盤の部分的改良を行った場合は、改良部分の地盤の状況に応じ、その

下部の地盤についても支持力及び不同沈下などに対し、建築物が安全であることを確かめる。

なお、改良地盤の評価に関しては、「建築物のための改良地盤の設計及び品質管理指針」(建

築センター)、「建築基礎のための地盤改良設計指針案」(建築学会)等を参考とする。

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浅層改良工法による場合は、改良体の品質にばらつきがでることが予想されるので、施工に当

たっては計画を入念に検討するとともに管理を十分に行い、許容応力度を確認するための平板載

荷試験等の実施に当たっては、試験計画についても十分検討する。

東京臨海部の軟弱地盤地域において地盤改良を実施する場合は、下記①~③の方法等に基

づき、改良地盤による地震動の増幅を適切に評価する。

①多次元 FEM(有限要素法)解析等を実施し、施設への入力地震動を評価する。

②一次元地震応答解析で評価する場合には、改良範囲の効果に対する定量的な評価が困難な

ため、改良地盤と未改良部分との応答解析を包絡させるなど、地盤部の地震動を適切に評価し

た上で、建物に入力する地震動を作成する。

③なお、地盤改良の効果を評価するため地盤改良施工後、地盤調査を行った上でそのデータを

活用し、地震応答解析を行って確認することが望ましい。

(3) 設計及び品質管理においては、「建築物のための改良地盤の設計及び品質管理指針」(建築

センター)のうち、地盤改良工法に関係する部分を適用する。

(4) 軟弱地盤地域については 「8.4杭基礎の設計 (5)大地震動時の検討」における各種検討を

行う際、杭及び地上躯体への影響を低減させるために、建築物下部およびその周辺への地盤改

良を行うことが有効である。

8.6 擁壁

(1) 擁壁は、がけの地層構成、切り土・盛り土の状況、水位その他の地盤の状況についてボ

ーリング調査等及び資料により把握し、がけ崩れに対する敷地の安全を確保する。

(2) 擁壁の構造方法は、「法」第 88 条及び「令」第 142 条、「煙突、鉄筋コンクリート造の

柱等、広告塔又は高架水槽及び擁壁並びに乗用エレベーター又はエスカレーターの構造計

算の基準を定める件」(平成 12 年「告示」第 1449 号)、東京都建築安全条例(昭和 25 年条例

第 89 号)(以下「安全条例」という。)による。

《解説》

(1) 擁壁は、ボーリング調査及び資料などによりがけの地層構成、切り土・盛り土の状況、

水位その他の地盤の状況について把握し、がけ崩れ等に対し敷地及び建築物等が安全である

ように設計する。

「告示」において基準を準用している宅地造成等規制法施行令(以下「宅造法施行令」と

いう。)によれば、30°以下の勾配、安全条例によれば1/2の勾配(約 26.6°)以下のがけ

であれば、安定している地盤として扱われ、擁壁を設置する必要はないとされているが、地

層構成や地下水の状況により前記の勾配以下であっても、がけ崩れ等による被害を受ける恐

れがある場合は、擁壁の設置を検討する。

(2) 擁壁の構造方法

① 擁壁の構造は、RC造等の腐食しない材料によるものとし、水抜き穴を適切に(1 ヶ所以上/3

㎡)設置する。水抜き穴を設置する壁面には、砂利等による裏込め部分を設ける。また、20m以

安全条例第 6 条 2 項

の制限を受ける範囲

2h 2h

h がけの高さ 1 2

がけの下端

がけの最高部

≒26.6゜

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上の長い擁壁となる場合や長手方向に対して地盤、基礎の条件等が異なる場合は、適切に伸

縮継手を設け、平面的に擁壁が屈曲する部分の隅角が 120°未満の場合は、コーナー部を補

強する。

② 擁壁の構造計算

擁壁の構造計算は、平成 12年「告示」第 1449号第 3により、宅造法施行令第 7条の規定が

準用されるので、転倒及び滑動、沈下等に対する検討を行う必要がある。また、擁壁が軟弱層

を含む地盤上や斜面上に設置される場合には、円弧すべり等の検討を行う。

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第 9 章 免震及び制振構造

9.1 一般事項

(1) 免震・制振構造を採用する建築物は、原則として大地震動に対して、施設の機能確保及び

収容物の安全が特に必要なものについて適用する。

(2) 歴史的、文化的価値が高い、振動に関して高度な水準が要求される施設など、特別な機能

が要求される場合、または、従来の耐震工法では施設の機能上、耐震性能の向上が困難な建

築物について免震・制振構造の採用による建築構造を検討する。

(3) その他、従来の耐震工法とのコスト、性能比較において、免震構造を採用することが有利

と判断される場合にも検討する。

(4) 免震構造及び制振構造は、原則として、それぞれの機構の特性を考慮したモデルにより、

地震動及び暴風に対する時刻歴応答解析を行い、振動性状を確認する。

《解説》

(1) 第 5 章 5.1.2「用途係数」表 5.1.2 の分類Ⅰ、Ⅱに当たる施設のうち、次のように、建築

物に要求される機能が地震応答の低減を特に必要とする建築物については、免震・制振構造

の採用を検討することができる。

(a) 防災拠点として機能すべき建築物、救護施設及びこれに準ずる建築物

・大地震動に対して機能停止しないことが要求され、室内の家具、備品、機器等の移動、転倒、

損傷を防ぐ必要がある場合。

・ コンピューター、OA機器、その他精密機器等に対して振動による損傷や誤作動を防止する必

要がある高度技術施設。

(b) 危険物を貯蔵または取り扱う建築物

・ 貯蔵する危険物の損傷、流出等による二次災害を防ぐ必要がある場合。

(c) 貴重品、重要な文書等を収容する建築物

・ 文化財等の重要な保存資料、物品、公文書等の損傷、逸出を防ぐ必要がある場合。

(2) 必要な耐震性能を保有していない既存建築物のうち、歴史的、文化的価値が高い、また意匠

的な面や敷地条件などから大規模な補強、改修が許容されない場合や振動を低減し、心理的な

不安感などを取り除くことが必要な病院、高齢者施設等の福祉施設及び塔状建築物等で中小地

震や暴風時における応答低減を必要とする建築物については、免震・制振構造の採用を検討す

ることができる。

(3) 従来の耐震工法とのコスト、性能比較は、初期建設費のみではなく、建築物の総ライフサイクル

コスト、建築物の要求性能との比較、検討を行う。総ライフサイクルコストは、初期建設費、維持管

理費、地震等災害による被害想定損失費を加えたものとし、従来工法に免震・制振構造と同等

の耐震安全性を確保させた場合の建設費(等価性能コスト)との比較も行う。

(4) 免震構造及び制振構造は、免震構造で平成 12年「告示」第 2009号による場合などを除き、時

刻歴応答解析を行って構造計算することが求められる。時刻歴応答解析の場合、大臣認定が必

要であり、手続きに要する期間として指定性能評価機関による性能評価及び国土交通省の認定

審査に要する期間を考慮する必要があるので注意する。免震構造の具体的な設計方法は、「免

震構造設計指針」(建築学会)、「免震建築物の技術基準解説及び計算例とその解説」(建築セ

ンター)等を参考にする。

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9.2 使用材料

免震・制振構造に使用する支承材、減衰材、復元材等は、原則として「法」第 37条の規定に基づく

大臣認定を受けたものとする。

《解説》

「法」第 37条の規定に基づく平成 12年告示第 1446号では、免震材料は指定建築材料として指

定されているが、同告示別表第 1には JIS規格等の指定がなく、規格の指定がなされるまでは原則と

して個別に大臣認定を受ける必要がある。同告示において、免震材料に対して品質基準及びその

測定方法等(別表第 2)と検査項目と検査方法(別表第 3)が定められているので、参考にする。

制振材料についても、特殊な材料を使用する場合は、原則として個別に大臣認定を受ける必要が

ある。

9.3免震・制振構造

(1) 建築計画及び構造計画は、免震・制振効果が有効に機能するように策定する。

(2) 免震・制振材料は、大地震動時の鉛直力及び水平力に対して、安全性の確保されたものと

する。

(3) 免震層より上部の構造体は、大地震動時において、各部材の応力度が、原則として短期許

容応力度以内であるものとする。

(4) 免震層より下部の構造体及び基礎は、大地震動時において、各部材の応力度が、原則とし

て弾性範囲内であるものとする。

《解説》

(1) 建築計画及び構造計画は、免震・制振効果が有効に機能するために、次のような条件を満た

すようにする。

(a) 免震機構は、アイソレータとダンパーにより構成する。

アイソレータは、原則として使用実績に基づく、信頼性のあるものとする。ダンパーの選択は、

各々の機構の特性を考慮して適切な構法とする。

(b) アイソレータの性能を十分発揮させるために、鉛直荷重による面圧が適切な値になるとともに、

上部構造の転倒モーメントによる引き抜き力が作用しないものとする。

(c) 免震層における上部構造の変形量に対応した十分なクリアランスを、建築物の周囲に確保す

る。

(2) 免震・制振構造の設計及び保有すべき性能

(a) 免震構造等の地震応答解析は、入力地震動の各レベル毎に目標値を設定して行い、目的に

応じた応答性状を示すように設計する。なお構造的にはレベル 2の入力地震動(50cm/sec を

標準)に対して設計を行えば十分であると考えられるが、レベル 1の入力地震動(25cm/sec を

標準)に対してもその挙動を検討することが一般的な設計手法である。

(b) 地震動以外の外力に対して支障が生じないように設計する。

① 常時の風及び積雪荷重等に対しては、過大な変形を生ずることがなく、建築物の機能性、居

住性を損なわないものとする。

②台風などの 暴風時に対しては、構造体に生じる応力や繰り返し振動において支障がないよう

にする。

③ 建築物外と接続する配線、配管等について地震挙動に対して追随できること。

(c) アイソレータは、次のような性能を保有するものとする。

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① 設計時に想定した水平方向の最大変形に至るまで、安定した鉛直荷重支持能力を保持する

とともに、水平変形による破断に至るまで復元力を保持する。

② 建築物の耐用年数を考慮した耐久性を有し、過大なクリープ変形を生じない。

③ 大変形時の固有周期は、原則として 3秒以上とし、入力地震動と共振しないように設定する。

④ レベル2の入力地震動に対して、せん断歪は 250%以内とする。

⑤ 水平ばね定数の温度依存性は小さく、外気温の変化による影響を最小限に抑えられるものと

する。

(d) 免震・制振部材のダンパーは、次のような性能を保有するものとする。

①地震動による入力エネルギーを十分吸収できる能力を持つ。

②建築物の耐用年数を考慮した十分な耐久性を有する。

③ひずみ、履歴、温度等への依存性が十分評価でき、信頼性の高い解析が可能であるものとす

る。

(e) 制振構造のエネルギー吸収機構は、変形や速度依存性が高いので、制振効果が十分に発

揮できるような構造形式の建築物を適用の対象とする。また、エネルギー減衰機構の保有すべ

き性能は、対象とする外力、目標性能及び採用する制振機構に応じて建築物ごとに設定す

る。

(3) レベル 2の入力地震動に対して、免震層より上部の構造体に生ずる応力は短期許容応力度以

内とする。

また、対象施設の重要性を鑑みて、免震層上部の構造体最下階の設計用せん断力係数は原則

として 0.15以上とする。

(4) レベル 2の入力地震動に対して、免震層より下部の構造体及び基礎構造に生ずる応力は、弾

性範囲内とする。これは大地震動時における免震部材の安定的な挙動を確保するためである。

なお、上部の構造体の安全性の余裕度を考慮し、免震層下部の構造体についても、短期許容

応力度以内とすることが望ましい。

9.4保守管理

免震・制振機構が有効に機能を発揮できるよう、保守管理を常時維持できるものとする。

《解説》

保守管理は、将来にわたり確実に免震、制振の効果を発揮し、建築物の安全性・機能性を保持で

きるように、免震部材や制振機構の損傷や劣化の有無、免震層の水平変形の妨げになる障害物の

有無、建築非構造部材、設備配管等の変形追従性について、適切な保守管理を実施できるものと

する。

(a) 免震効果を長期にわたって確保するために、免震層はメンテナンスが容易にできるよう計画す

る。

(b) 制振機構の効果が持続するよう、必要な維持管理が容易な計画とする。

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第 10 章 耐震診断及び耐震補強

10.1適用範囲

(1) この章は原則として新耐震基準(昭和 56 年6月1日施行)導入以前に建設された建築物に

適用する。

(2) この章は「建築物の耐震改修の促進に関する法律」(平成 7 年法律第 123 号)(以下「耐震

改修促進法」という。)並びに「建築物の耐震診断及び耐震改修の促進を図るための基本的

な方針」(平成 18 年「告示」第 184 号)及び「建築物の耐震改修の促進に関する法律第 17 条

第 3項第一号の規定に基づき地震に対する安全上耐震関係規定に準ずるものとして定める基

準」(平成 18 年「告示」第 185 号)の耐震関係規定に準拠するほか、規定のない事項は各種

耐震関係基準類等を参考にする。

《解説》

(1) 原則として、耐震診断及び耐震補強の対象とするのは、昭和 56年以前に建設された建築物

(新耐震基準の適用以前のもの)とする。

(2) 「建築物の耐震診断及び耐震改修の促進を図るための基本的な方針」(平成 18年「告示」第

184号)の別添「建築物の耐震診断及び耐震改修の実施について技術上の指針となるべき事

項」(以下「耐震診断指針」という)の「第1 建築物の耐震診断の指針」のほか、同本文ただし書

に基づくものとみなされる「建築物の耐震診断及び耐震改修に関する技術上の指針に係る認定

について(技術的助言)」(平成 26年 11月 7日付国住指第 2850号)による耐震診断の方法は、

解説表 10.1のとおりである。

なお、平成 26年 12月 24日に施行された「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」(平成

14年法律第 78号)第 102条に規定する除却の必要性に係る認定及び「耐震改修促進法」第 25

条に規定する区分所有建築物の耐震改修の必要性に係る認定においては、耐震性のないこと

を判断することができる認定診断法のみ適用可能であり、平成 26年 11月 7日付国住指第 2850

号別添 2による耐震診断の方法となるため、注意が必要である。

解説表 10.1 耐震診断の方法

耐震診断の方法 対応する耐震診断指針

の規定

(1) 「公立学校施設に係る大規模地震対策関係法令及び地震防災対策関係

法令の運用細目」(昭和55年7月23日付け文管助第217号文部大臣裁定) 指針第1第二号

(2)

「木造住宅の耐震診断と補強方法」に定める「一般診断法」及び「精

密診断法」(時刻歴応答計算による方法を除く。)(一財)日本建築防災

協会

指針第1第一号

(3) 「既存鉄骨造建築物の耐震診断指針」(一財)日本建築防災協会 指針第1第二号

(4)

「既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準」及び「既存鉄骨鉄

筋コンクリート造建築物の耐震診断基準」に定める「第1次診断法」に

より想定する地震動に対して所要の耐震性を確保していることを確認

する方法(想定する地震動に対して所要の耐震性を確保していること

を確認できる場合に限る。)(一財)日本建築防災協会

指針第1第二号

(5)

「既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準」及び「既存鉄骨鉄

筋コンクリート造建築物の耐震診断基準」に定める「第2次診断法」及

び「第3次診断法」(一財)日本建築防災協会

指針第1第二号

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(6) 「官庁施設の総合耐震診断基準」(一財)建築保全センター 指針第1第二号

(7) 「屋内運動場等の耐震性能診断基準」 指針第1第二号

(8) 「木質系工業化住宅の耐震診断法」(一社)プレハブ建築協会 指針第1第一号

(9) 「鉄鋼系工業化住宅の耐震診断法」(一社)プレハブ建築協会 指針第1第二号

(10) 「コンクリート系工業化住宅の耐震診断法」(一社)プレハブ建築協会 指針第1第二号

(11)

「既存壁式プレキャスト鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断指針」

に定める「第1次診断法」により想定する地震動に対して所要の耐震性

を確保していることを確認する方法(想定する地震動に対して所要の

耐震性を確保していることを確認できる場合に限る。) (一財)日本建

築防災協会

指針第1第二号

(12) 「既存壁式プレキャスト鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断指針」

に定める「第2次診断法」(一財)日本建築防災協会 指針第1第二号

(13)

「既存壁式鉄筋コンクリート造等の建築物の簡易耐震診断法」( 規模・

構造、立地・敷地、平面形状、立面形状、コンクリート強度及び経年劣

化に関する要件をすべて満たしていることを確認できる場合に限る。)

(一財)日本建築防災協会

指針第1第二号

(14)

建築物の構造耐力上主要な部分が昭和56年6月1日以降におけるある時

点の建築基準法(昭和25年法律第201号)並びにこれに基づく命令及び

条例の規定(構造耐力に係る部分(構造計算にあっては、地震に係る

部分に限る。)に限る。)に適合するものであることを確認する方法

(当該規定に適合していることを確認できる場合に限る。)

指針第1第一号及び第

二号

このほか、参考とする基準類は、次のとおり。

①「鉄筋コンクリート造建築物の耐久性調査・診断および補修指針(案)・同解説」(建築学会)

②「建築設備・昇降機耐震診断基準及び改修指針」(国土交通省住宅局建築指導課監修)

③「建築設備耐震設計・施工指針 2014年版」((独法)建築研究所監修)

④ 「2013年改訂版既存鉄骨造建築物の耐震改修施工マニュアル」((独法)建築研究所監修)

10.2耐震診断

(1) 建築物の構造及び用途により適切に耐震診断の方法を選定する。

(2) RC 造及び SRC 造の耐震診断の次数は、原則として二次診断とする。

(3) RC 造、SRC 造の二次診断及び S 造の診断結果における構造耐震指標(Is)の判定は、表

10.1 による。

表 10.1 耐震診断結果の判定

構造耐震指標

(1) Is<0.3 地震の震動及び衝撃に対して倒壊し、又は崩壊する危険性が高い。

(2) (1)と(3)の中間 地震の震動及び衝撃に対して倒壊し、又は崩壊する危険性がある。

(3) Is≧0.6 地震の震動及び衝撃に対して倒壊し、又は崩壊する危険性が低い。

《解説》

(1) 耐震診断の方法は、原則として 10.1(2)による方法とし、「耐震診断指針」第 1 第一号、第

二号に示されている方法のほか(一財)日本建築防災協会の「既存鉄骨造建築物の耐震診断指

針」、「既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準」、「既存鉄骨鉄筋コンクリート造

建築物の耐震診断基準」及び文部科学省の「屋内運動場等の耐震性能診断基準」によるもの

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- 78 -

とする。

(2) 耐震診断の次数は、原則として二次診断とするが、壁式構造や小規模な倉庫等などは一次

診断とすることができる。また、特殊な構造形式を採用した建築物など条件によっては三次

診断とする。

(3) 診断結果の判定は各階・方向毎で最も低い構造耐震指標(Is)によることとし、判定は表

10.1 による。

ただし、一次診断とした場合、「屋内運動場等の耐震性能診断基準」を用いた場合や木造

建築物などは、判定指標等が異なるため、それぞれに応じた指標等によって判定する。

10.3耐震改修設計等

(1) 耐震補強における補強目標値(RIs)は 0.6 以上とし、当該施設について、震災時における

役割に応じた重要度、機能性の確保、将来利用計画などの条件を考慮して設定する。

(2) 補強は建築物の構造特性に適合したもので、機能性、経済性、施工性などを考慮して比較

検討する。

(3) 補強工法は強度型を基本とする。

(4) 補強効果の確認は診断時に用いた手法により確認する。

(5) 低強度コンクリート、制振構造等を用いる場合は、三次診断、精密診断などを行うと共に

既存建築物の構造特性を把握する。

(6) 耐震診断を新たに行う場合には、耐震診断の評定を取得することとし、また、耐震改修実

施設計は、原則として耐震改修促進法第 17 条に基づく認定を取得する。

《解説》

(1) 耐震補強における補強目標値は 0.6以上とし、耐震補強計画の策定に当たっては次の主要項

目について検討を行う。

・建築物の震災時における用途(避難施設、救護施設、備蓄倉庫等)に応じたクライテリア(判断

基準)を設定

・建築物の機能性確保(建築物用途、採光・換気・避難・設備計画等)

・建築物の将来利用計画(建築物用途、耐用年限、改修・改築計画等)

・耐震補強施工に係る条件(敷地、地盤、周辺環境、工事中の建築物利用制限、工事中の安全

性確保、騒音、振動、仮設建築物の要否等)

・耐震補強施工に伴うその他の改修工事(内外装、設備等)

(2) 耐震補強の方法は、一般的に壁の増設や袖壁などによる柱補強など、耐力を増し、強度を向

上させる「強度型」補強と、既存の柱や梁に鋼板や炭素繊維などを巻いてせん断強度を高めたり、

腰壁や垂壁によって短柱になっている部分に構造スリットを設けて、柱の変形能力を改善し、じん

性を向上させる「じん性型」補強、及び両工法を併用する補強のいずれかとなる。

また特に、歴史的・文化的価値が高く、建築物の意匠上の改変を許容できない場合、その他在

来工法では必要な耐震性能が得られない場合は、免震あるいは制振構造を用いた補強方法(免

震・制振レトロフィット)の適用も可能である。(第 9章「免震及び制振構造」参照)

(3) 補強は、前記の事項について検討し、方針を定めるものとするが、新築の場合と同様原則とし

て「強度型」の補強とする。

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(4) 補強効果の確認は、判定手法が異なると結果が変わる場合もあるので、耐震診断に用いた判定

手法により確認することを原則とする。また、同一の判定手法を用いても、条件等の設定により結

果に影響する場合があるので、補強設計の設計条件等は、診断の時に設定したものと同一にす

る。

(5) 補強建築物のコンクリートが低強度コンクリートの場合や補強に制振構造等の特殊な構法を採

用した場合は、三次診断、精密診断や時刻歴応答解析などそれぞれの条件に適応した手法で

計算・解析などを行うと共に既存建築物の構造特性を十分に把握したうえで補強設計を行う。

(6) 耐震診断を新たに行う場合は、都市整備局により指定されている専門機関による耐震診断の

評定を取得することとする。また、耐震改修実施設計は、原則として耐震改修促進法第 17条に

基づく認定を取得する。認定にあたっては、所管行政庁と事前に協議を行うなど手続き等に支障

のないようにする。なお、都市整備局による認定の場合は、耐震診断と同様に指定されている専

門機関による耐震改修設計に対する評定が必要となる。

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第 11 章 躯体の品質確保と設計図書

11.1 一般事項

構造設計概要書及び構造計算書は書式により作成する。構造図面は(一社)日本建築学会制定の

構造関係基準を参考に作成する。

《解説》

(a) 構造設計概要書(付録参照)は、構造設計が終了した段階で記載事項を確認した後、または構

造計画が終了した段階で記載できる事項を記入する。

(b) 構造計算書は、構造設計の内容を表し、建築物の安全を確認するものであるので、作成に当た

っては、設計条件、構造計画、計算過程及び計算結果等を記載する。

(c) 構造計算プログラムで構造計算書を作成する場合は、次の点に注意する。

・大臣認定や評価を受けたプログラムの場合は、認定書、評価書を添付し、適用条件等を確認

する。

・適用範囲等のチェックリスト、ウォーニングリスト、エラーリスト等とそれらに対する対処・考察を記

載した文書を添付する。

・アウトプットの伏図、軸組図等が建築物の各設計図面と整合しているか確認する。

・アウトプットのページが一連のものであることを確認する。

・必要に応じて各ページには、メーカーのマニュアル等を参照しなくても十分理解できるような説

明書きを入れる。(手書きで可)

・構造計算結果について、工学的な判断をふまえた最終判断等の考察を明記する。

(d) 構造図面は構造計算結果の検証とこれに基づく設計者の判断を具体化し、建築物の骨組の

元となるものであるため、各図面の内容等を十分理解したうえで、作図する必要がある。また、作

図にあたっては、構造計算書及び建築及び設備の設計図書と相違がないように注意する。

11.2 法令検査事項の記録

工事監理者は「法」に基づく以下の書類を作成する。

○ 東京都建築基準法施行細則(昭和 25年規則第 194号)(以下「施行細則」という。)第 14条(建

築工事施工計画の報告)に基づく書類

○ 中間検査(特定工程)

○ 完了検査

○ 重大な不具合(「法」第 12条報告及び特定行政庁への報告)

《解説》

工事監理者は、次の(1)から(4)までの書類を作成・保管しなければならない。

(1) 施行細則第 14条に該当する建築物における建築工事施工計画報告書

施行細則第 14条により地上 3階建て以上かつ延べ面積 500㎡を超える建築物については、

工事の着手前に「建築工事施工計画報告書」を提出しなければならない。

提出書類の詳細については、(公財)東京都防災・建築まちづくりセンター発行の「建築工事

施工計画等の報告と建築材料試験の実務手引」による。

(2) 中間検査(特定工程)に関する書類

「法」第 7条の 3第 1項、法第 18条第 19項により行われる中間検査に関しては、施行細則

第 15条の 4により建築工事施工結果報告書等の提出が必要である。なお、受検に当たっては、

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検査日程・内容を十分に調整するほか、前記結果報告書の他に関連の提出書類が必要となる

場合もあるので事前に確認を行うこと。

(3) 完了検査に関する書類

中間検査以降の工事を対象とする「法」第 7条第 1項、第 18条第 16項により行われる完了

検査に関して提出する書類としては、中間検査と同様に施行細則第 15条の 4により建築工事施

工結果報告書等の提出が必要である。なお、受検に当たっては、検査日程・内容を十分に調整

するほか、前記結果報告書の他に提出書類が必要となる場合もあるので事前に確認を行うこと。

(4) 重大な不具合に関する書類

「法」で「重大な不具合」は定義されていないが、都市整備局市街地建築部では、「建築物の

工事における試験及び検査に関する東京都取扱要綱」の定めにより「重大な不具合」を通知(平

成 15年6月 25日付 15都市建企第 138号)により指定している。内容としては、S造の溶接継手

における食い違い・ずれ・割れであるが、本指針においては、同通知にいう不具合のほか、材料

強度の設計図書との相違など建築物の構造耐力に関連する全ての不具合を対象とする。特に、

「法」第 12条第 5項に基づき報告を求められる場合や「法」に基づく検査に関連して報告を求め

られた場合の書類の作成には注意する。

11.3 設計意図と施工品質の確認

構造設計者は、設計図書で規定した要求品質の確保について定期に現場を確認し記録する。

○ 品質管理体制

○ 不具合の措置と検討・報告

○ 応力最小部分などで行う接合状況(鉄筋の継ぎ手・圧接、コンクリートの打継、溶接仕口等)

○ 圧接、コンクリート打設、超音波探傷試験等、構造体の各種品質確認に関する試験、外観検査

及び施工状況

○ 法令・告示改正時の措置

○ コンクリートのひび割れ防止対策

《解説》

構造設計者は、設計の意図を施工において実現するため、品質確保の状況について、定期的か

つ必要時に現場で確認し、その記録を作成しなければならない。

11.4 技術資料等の作成

施工及び監理事項を確認する為、実施設計において以下の資料を作成する。

○ 特殊工法(PC工事含む)の品質管理事項、工事監理者の確認事項

○ その他必要な資料

《解説》

PC工事など特殊工法を設計する場合は、その工法について十分に検討、調査を行い、品質管理

や工事監理者の確認すべき事項について必要な資料を実施設計で作成しなければならない。

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指針改正に当たり技術協力いただいた学識経験者について

本指針の改正に当たり、「5.4.2 時刻歴応答解析(地震波作成を含む)」「8.2 液状化等の

検討」「8.5 地盤改良」については、高度な技術的判断が求められるため、建築物の耐震設計

等に精通した以下の学識経験者から、改正内容について意見聴取を行った上で作成した。

新 井 洋 国立研究開発法人建築研究所

構造研究グループ主任研究員

久 田 嘉 章 工学院大学建築学部まちづくり学科教授

中 井 正 一 千葉大学大学院工学研究科名誉教授

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付 録

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構 造 設 計 概 要 書

工事名称

=========================================

=========================================

平成 年 月 日

==================================================================

代表となる設計者

事務所名

==================================================================

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目 次

§1 建築物の概要

§2 設計方針と使用材料

§3 荷重・外力

§4 準備計算

§5 応力解析

§6 断面算定

§7 基礎・地盤

§8 層間変形角・剛性率・偏心率等

§9 保有水平耐力

P

P

P

P

P

P

P

P

P

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§1 建築物の概要

1.工事名称

2.設計者

(1)事務所名

(2)設計者名

(3)構造設計者氏名

(4)電話番号

3.敷地の位置

4.用途

5.工事種別 □新築 □増築 □改築

6.規模

(1)延べ面積 ㎡ 建築面積 ㎡

(2)階数 地上 階 地下 階 塔屋 階

(3)高さ m

(4)軒の高さ m

7.構造概要

(1)構造種別 □S造 □RC造 □SRC造

(2)骨組形式 X方向 Y方向

(3)基礎種別 □直接基礎 □杭基礎(工法: )

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(4)略図

(各階及び基礎伏図)(積載荷重の分布が分かるように表示する。)

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(4)略図

(軸組図・断面図)(壁の開口が分かるように表示する。)

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8.その他

(1)増築計画 □有 □無

(2)屋上付属物 □有 □無

(3)その他

§2 設計方針と使用材料

1.設計上準拠した指針・規準等

■建築基準法・同施行令・同施行規則・告示等

■建築物の構造関係技術基準解説書( 年版)

□鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説( 年版)

□鉄骨鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説( 年版)

□鋼構造設計規準( 年版)

□建築基礎構造設計指針( 年版)

□プレストレスコンクリート設計施工規準・同解説( 年版)

□壁式構造関係設計基準集・同解説(壁式鉄筋コンクリート編)( 年版)

□鋼構造塑性設計指針( 年版)

□建築耐震設計における保有耐力と変形( 年版)

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2.設計方針

(1)計算ルート

X方向 ルート -( ) (P. )

Y方向 ルート -( ) (P. )

(2)壁・柱量の算定

方向 階 ΣAw

(c㎡)

ΣAc

(c㎡)

ΣAw`

(c㎡)

Σ( )Aw+Σ( )Ac+

Σ( ) Aw` (c㎡)

( )ZWAi

(N)

(3)その他

(4)計算プログラムの使用箇所

(一貫計算 ソフト名 会社名 番号 )

(許容応力度設計 ソフト名 会社名 番号 )

(保有水平耐力計算 ソフト名 会社名 番号 )

(その他 使用箇所 ソフト名 会社名 )

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3.使用材料と使用場所 (P. )

材 料 種 別 使 用 場 所 備 考

コンクリート γ=

γ=

鉄 筋 σ= N/mm F

鋼 材

高力ボルト To=

溶 接 突合せ 工場グレード

隅肉

現場溶接(有・無)

§3 荷重・外力

1.床荷重(N/㎡) (P. )

用途 種別 床用 小梁用 大梁・柱・基礎用 地震用 備考

積載

固定

合計

積載

固定

合計

積載

固定

合計

積載

固定

合計

積載

固定

合計

その他 設備機器 ( ) kN

2.積雪荷重

(1)最深積雪量 cm 単位重量 N/㎡・cm

(2)低減 □有 □無

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3.水平力

(1)構造緒言 (P. )

地震力

地震地域係数 Z=

地盤種別 第 種地盤 Tc= sec

設計用一次固有周期 T= sec (略算・精算)

振動特性係数 Rt=

標準せん断力係数 Co=

地下震度 K=

風荷重

風の速度圧 速度圧 q= (0.6・E/Vo)

基準風速 Vo=

E=

建物の高さと

軒の高さの平均 H=

地表面粗度区分 (Ⅰ,Ⅱ、Ⅲ,Ⅳ)

風の風力係数 Cf= (0.8・kz+0.4)

(2)層せん断力

地震層せん断力表 (P. )

階 Wi(kN) ΣWi(kN) αi Ai Co= Wi/A

(kN/㎡) Ci Qi(kN)

設計用層せん断力表(風圧力の検討及びブレースを使用する場合) (P. )

X方向 Y方向

風圧力 1+0.7β

設計用層

せん断力

風圧力 1+0.7β

設計用層せ

ん断力 Pi ΣPi Pi ΣPi

4.その他

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§4 準備計算

1.計算仮定

(1)床剛性 (P. )

(2)壁(ブレース)剛性 (P. )

(3)その他 (P. )

2.剛性の評価方法

(1)柱・梁 (P. )

(2)耐力壁(ブレース) (P. )

(3)雑壁等 (P. )

(4)地盤・くい (P. )

3.その他

(1)柱脚の固定度 (P. )

(2)地中梁の剛性 (P. )

(3)その他 (P. )

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§5 応力解析

1.鉛直荷重時

(1)解析方法 (P. )

(2)その他(特殊な取扱いとした場合) (P. )

2.水平荷重時

(1)解析方法 (P. )

(2)その他(特殊な取扱いとした場合) (P. )

(3)フレーム・壁(ブレース)の分担率 (P. )

方向 階 ΣDc ΣDw ΣDc

ΣDc+ΣDw

設計用分担率 壁のτmax

柱の分担率 壁の分担率

X方向

1

Y方向

(4)偏心等による修正 □有 □無 (P. )

一貫計算

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§6 断面算定

1.応力の組合 (P. )

(1)長期(+ )G:固定荷重

P:積載荷重

K:地震荷重

(2)短期 地震時(++ ) W:風圧力

暴風時(++ ) S:積雪荷重

積雪時(++ )

2.部材の設計方針

(1)梁 ①曲げ (P. )

②せん断

(2)柱 ①曲げ、軸力 (P. )

②せん断

(3 )耐力壁(ブレース) (P. )

(4)接合部 (P. )

'(5)その他の考慮 剛域の考慮 □有 □無 (P. )

§7 基礎・地盤

1.杭基礎 (P. )

工法 径(cm) 長さ(m) 許容支持力(kN/本) 支持地盤の種類 備考

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2.直接基礎

(1)長期許容値耐力 kN/㎡ 短期 kN/㎡ (P. )

(2)深さ GL- m

(3)支持地盤の種類

(4)基礎形式

3.地盤調査 (P. )

(1)調査の有無 □有 □無

(2)調査の方法

(3)調査地点

4.その他 (P. )

(1)地盤改良 □有 □無

(2)NFの処理 □有 □無

(3)水平抵抗の検討 □有 □無

(4)引抜きの処理 □有 □無

(5)その他

§8 層間変形角、剛性率、偏心率等

1.算定表 (P. )

方向

階 Qi

(kN)

ΣD σ

(cm)

γ

≦1/200

Rs

≧6/10

Fs Re

≦15/100

Fe Fes

B1

B1

2.その他 (P. )

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§9 保有水平耐力

1.算定方針 (P. )

(1)基本方針

①モデル化の考え方

②採用解析方法

③仮定外力分布

④電算機使用 □有 □無 プログラム名( )

(2)崩壊メカニズムの仮定 (P. )

①形成条件の仮定

②付加軸力の処理方法

③基礎の考え方

(3)特殊な形状に対する考え方 (P. )

2.部材の種局強度算定式 (P. )

(1)梁

①曲げ

②せん断

(2)柱

①曲げ

②せん断

(3)耐力壁

①曲げ

②せん断

3.メカニズムの概要 (P. )

4.断面補正の概要 (P. )

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5.構造特性係数(Ds) (P. )

方向 階 柱,梁群の種別 耐震壁、ブレースの種別 βu Ds 備考

6.保有水平耐力の確認 (P. )

方向 階 Ds Fes Qud(kN) Qun(kN) Qu(kN) Qu/Qun 備考

B

B

大地震動時の最大層間変形角

X方向 ( 階)

Y方向 ( 階)

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7.Qun、Quグラフ

○保有水平耐力

▲必要水平耐力

(Y方向)

(必要)保有水平耐力(kN)

(X方向)

(必要)保有水平耐力(kN)

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(構造設計概要書記入要領)

§0 全体

*原則として棟別に作成すること。(エキスパンション・ジョイント等により別建築物扱いとした場合も同じ。)

*(P. )には該当及び関連する計算書のページを記入すること。

§1 建築物の概要

2.設計者

*構造設計者は、実務担当者(本概要書の記入者)の氏名を記入すること。

*構造設計事務所が意匠設計と異なる場合は、(1)意匠(事務所名・設計者氏名・電話番号)、(2)構造(事

務所名・設計者氏名・電話番号)とすること。

*構造設計者が複数いる場合は、担当した分野を明記した上で、(2)の内容を記載する。なお、別紙にな

っても良い。

3.敷地の位置

*敷地の地名地番を記入し、住居表示は( )内に併記すること。

4.用途

*主要用途と棟別用途を記入すること。

*用途係数を記入すること。

5.工事種別

*該当するものを○印で囲む。増築、改築の場合はその範囲等を略図に表示すること。

6.規模

(3)高さ、(4)軒の高さ

*令第2条第1項第6号による建築物の高さ、第7号による軒の高さのうち最高のものを記入する。

7.構造概要

(1)構造種別

*鉄骨造、鉄筋コンクリート造等を記入し、併用の場合あは範囲を略図に記入すること。

(2)骨組形式

*耐力壁付ラーメン構造、ブレース構造等を記入すること。

(3)基礎種別

*直接基礎、杭基礎等の種別を記入すること。

(4)略図

*各階伏せ図等には、階・XY方向・通り番号・スパン寸法・柱・耐力壁、ブレース・階段・吹抜け・エキスパ

ンションジョイント位置等を表示する。

*軸組図等2には、通り番号・スパン寸法・階高・計算用階高・高さ・軒の高さ・壁開口・地盤面(平均・実

況)等を表示する。

8.その他

(1)増築計画

*増築計画の有無を記入し、有りの場合は増築計画部分を略図に表示すること。

(2)屋上付属物

*高架水槽、広告物等の付属物等の概要を記入すること。

(3)その他

*敷地の特殊性(傾斜地、偏土圧等)その他の特殊な条件について記入すること。

§2 設計方針と使用材料

2.設計方針

(1)計算ルート

*ルート1~3の別を記入すること。

*鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造でルート2を採用した場合及び鉄骨造でルート1-2 を採

用した場合は、細ルート(2-1、2-2、1-2の下線の部分)を( )内に記入すること。

(2)壁・柱量の算定

*鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造で、ルート1.ルート2-1、ルート2-2の場合のみ記入

する。

(3)その他

*部分的に棟別した場合、水平剛性の不十分なもの等特殊な取扱いを行なった場合は、その概要を記

入すること。

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(4)コンピュータの使用箇所

*コンピュータプログラムを使用した場合は、名称、評定番号等を記入する。

3.使用材料と使用場所

*種別が2以上の場合に、階別、部材別、部材の部分別、径別(鉄筋の場合)等を正確に記入すること。

階別の場合等、必要に応じて略図にその位置を記入すること。

*軽量コンクリートは、気乾単位体積質量を記入すること。

*種別欄に母材の種類を、備考欄に鉄骨加工工場のランクと現場溶接の有無をそれぞれ記入すること。

*破断強度は該当する備考欄に記入すること。

§3 荷重・外力

1.床荷重

*備考欄に梁自重、間仕切壁自重等の処理及び屋上使用の有無等を記入すること。

*屋上積載物(高架水槽、広告物等)等の重量を記入すること。

2.積雪荷重

(2)低減

*低減の有無を記入し、有りの場合は屋根勾配、雪降ろし等の種別及びその数値を記入する。

3.水平力

(1)構造諸元

*Rtは、特別な調査・研究によった場合はその方法を別記すること。

*略算又は精算を○印で囲み、精算の場合は計算方法を別記すること。また、略算の場合は高さのとり

方を略図に表示すること。

(2)層せん断力

*屋上突出部・地階も記入すること。

*Coは一次設計用の値を記入すること。

*風圧力について検討を要する場合又はブレースを使用する場合、設計用層せん断力表に該当事項を

記入すること。

4.その他

*土圧、水圧、局部震度、増築予定等その他考慮した荷重・外力について記入すること。

§4 準備計算

1.計算仮定

(1)床剛性

*床剛性が十分高いか否かを記入し、高い場合はその根拠を、そうでない場合は計算上の取扱い方法

を記入すること

(2)壁(ブレース)剛性

*壁(雑壁等を含む)又はブレース等の剛性を評価したか否かを記入すること。

(3)その他

*不整形な架構等の場合は、架構のモデル化とその仮定条件について記入すること。

2.剛性の評価方法

*各部材別に、剛性の評価方法(剛域考慮による方法、ブレース置換による方法、内柱のn倍とおく方法

等)とその内容及び考慮した影響因子の概要を記入すること。

*応力解析時と偏心率、剛性率の算出時で評価方法が異なる場合は、それぞれについて記入すること。

3.その他

*柱脚の固定時、地中梁の剛性等その他の留意した事項について記入すること。

§5 応力解析

1.鉛直荷重時

(1)解析方法

*プログラム使用の場合は、プログラム名、評定番号、解析方法を、部分使用についてはその使用範囲

を記入すること。

(2)その他

*モデル化等で特殊な取扱い方法をした場合は、その内容について記入する。

2.水平荷重時

(1)解析方法

*プログラム使用の場合は、プログラム名、評定番号、解析方法を、部分使用についてはその使用範囲

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を記入すること。

(2)その他

*モデル化等で特殊な取扱い方法をした場合は、その内容について記入する。

(3)フレーム壁(ブレース)の分担率

*フレームと耐力壁(ブレース)を併用した場合に記入すること。

*柱(フレーム)の分担率を大きくした場合、設計用分担率は壁を(ΣDw/ΣDc+ΣDw)×2.0等実際の

断面設計の分担率とする。(合計して 100%を超える。)

*壁のτmaxは耐力壁を併用した場合に記入すること。

(4)偏心率等による補正

*偏心率による補正の有無及びその方法を記入すること。

§6 断面算定

1.応力の組合せ

*G(固定荷重)+P(積載荷重)等決定上の応力の組合せを記入すること。

2.部材の設計方針

*XY方向で異なる場合は、それぞれ記入すること。

*各部材の断面算定に使用した規準又は計算式を設計力及び許容力について記入すること。

*接合部、鋼材の幅厚比、横補剛、パネルゾーン等については、その強度算定に考慮した項目及び使

用した規準又は計算式を記入すること。(鉄骨造のみ記入すること。)

§7 基礎・地盤

1.杭基礎

*工法欄には打込み杭、埋込み杭、場所打ち杭(具体的な工法を併記)、摩擦杭、大臣認定杭等の種類

を記入すること。

*平成 13年告示第 1113号等による許容支持力を径ごとに記入すること。

3.地盤調査

*ボーリング調査、N値、土質試験、載荷試験、孔内水平載荷試験等記入すること。

4.その他

*各項目について有無を記入し、有りの場合はその方法を記入すること。

*NFはネガティブフリクションを示す。

*地盤の液状化現象の発生の可能性の有無と検討条件を記入すること。

§8 層間変形角、剛性率、偏心率等

1.算定表

*ルート1の場合は記入しなくてよい。

*Fe、Fc、Fesはルート3の場合のみ記入すること。

2.その他

*層間変形角の制限値を緩和した場合は、内外装、設備等に対する配慮を記入すること。

*大地震時の層間変形角について記入すること。

§9 保有水平耐力

1、基本方針

(1)解析方法

①モデル化の考え方

*フレーム、耐力壁(ブレース)、境界梁等の関係について、包括・別途計算の別等と考え方を記入するこ

と。

②採用解析方法

*節点振り分け法等採用した解析方法名と柱・梁への分割方法等を記入すること。

③仮定外力分布

*Ai分布、等分布等仮定した外力分布を記入し、修正を行なった場合は、その旨記入すること。

④プログラム使用

*プログラムを使用した場合は、プログラム名、認定番号等を記入すること。

(2)崩壊メカニズムの仮定

①形成条件の仮定

*崩壊メカニズムの仮定あたっての各部材(柱、梁、耐力壁、ブレース)及び接合部の基本的な考え方を

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記入すること。

②付加軸力の処理方法

*外柱・内柱の軸力の付加についての考え方を記入すること。

③基礎の考え方

*基礎の浮上りに対する仮定条件及びその他の処理方法等を記入すること。

(3)特殊な形状に対する考え方

*平面上で他の構面と並行でない場合、特殊な断面計画の場合等の考え方について記入すること。

2.部材設計(終局耐力算定式)

*各部材について、終局耐力算定に採用した準拠規準、算定式等を記入すること。

*その他、座屈、接合部に対する設計方法、考慮した影響因子等について記入すること。

3.メカニズムの概要

*仮定した崩壊メカニズムの算定結果の概要(崩壊形及び降伏する部材名、位置等)を記入すること。

4.断面補正の概要

*部材設計において、断面補正を行なった場合、その概要を記入すること。

*急激な耐力の低下をきたさないように、じん性の確保をすること。

5.必要保有水平耐力の算定

*用途係数による必要保有水平耐力の割増を行なうこと。

*特別な調査及び研究等による場合は、その概要について記入すること。