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哺乳類胚のPGC ほ乳類のPGCは、 卵黄嚢の基部に、 アルカリ性ホス ファターゼという 細胞表面の酵素 の活性が特別高 い細胞として我々 に初めて認識で きるようになる (ヒト 3~4w)。 その後、胚の発生の 進行による形態形成 運動と、PGC自身の能動運動により、後腸上皮から間充識に入り、腸間膜から中腎腹側の 将来生殖巣へと分化する生殖隆起の領域に移動し、定着する。この移動の間、PGCは活 発な細胞分裂により増殖する。 なお、全てのPGCが生殖巣にたどり着くわけではなく、副腎等 に留まるものがあり、これらはアポトーシスにより退化するが、たまに生殖細胞性腫瘍となるこ と知られている。 PGCは胚体外に出現し、間充識内を将来生殖巣となる領域に移動してゆく

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哺乳類胚のPGCほ乳類のPGCは、

卵黄嚢の基部に、

アルカリ性ホス

ファターゼという

細胞表面の酵素

の活性が特別高

い細胞として我々

に初めて認識で

きるようになる

(ヒト 3~4w)。

その後、胚の発生の

進行による形態形成

運動と、PGC自身の能動運動により、後腸上皮から間充識に入り、腸間膜から中腎腹側の

将来生殖巣へと分化する生殖隆起の領域に移動し、定着する。この移動の間、PGCは活

発な細胞分裂により増殖する。 なお、全てのPGCが生殖巣にたどり着くわけではなく、副腎等

に留まるものがあり、これらはアポトーシスにより退化するが、たまに生殖細胞性腫瘍となるこ

と知られている。

PGCは胚体外に出現し、間充識内を将来生殖巣となる領域に移動してゆく

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マウスとヒトの初期発生での違い

胚盤胞(blastocyst)から初期発生の終了まで

マウスでは、他の哺乳類の初期胚の構造と異なっている。このような初期胚の構造上の違いにより、限られた子宮のスペースでの多胎を可能としている。

この構造上の違い(「胚

葉の逆転」)は、内容には違いはなく、「胚の回転(反転)」によって同等となる。

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マウスとヒトの初期発生での違いマウス胚の「胚葉の逆転」 と「胚の回転 (反転)」

マウス胚では内胚葉が胚の外側に、外胚葉が胚の内側にあり、他の哺乳類胚での外胚葉と内胚葉の位置関係(外胚

葉が外側を占め。内胚葉はその内側を裏づけする)と逆転している。

これは、中空のボールを指で内側に押し込んでやるのと同じく、胚盤が卵黄腔の中に押し込まれた状態がマウス胚での胚葉の逆転と考えればよい。

反転は初めのうちは、頭部と尾部に限定される。頭部からは前腸が、尾部からは後腸が形成され始め、それぞれ中腸部に向かって形成が進行する。最後に、胚は、中腸部でのみ卵黄膜にしっかりと付着した状態となる。続いて、この胴体の中央部分の反転により、胚は臍の緒のみで母体とつながった状態で、完全に羊膜腔内に浮遊する(つまり胚の反転により、中腸が自動的に生成される)。

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生殖細胞質を

持たない動物

群における生

殖系列の形成

(マウスを例として)

アルカリ性ホスファ

ターゼ活性を持つ

細胞群の発生運命

を追跡した結果、

生殖細胞へ分化す

ることが明らかに

なった。交尾後7~

8日頃胚体外中胚

葉領域である胚体

後部の尿嚢の基部に集合(a)、交尾後8.5日に後腸の陥入に伴い後腸へ移動(b)、後腸が中胚葉に包み込まれ腸間膜が形成されると、腸間膜中を通り抜け、交尾11日までに腸間膜基部に形成される生殖隆起に取り込まれる(c)。この過程で、生殖系列の細胞は細胞分裂を繰り返し、7日齢胚での約8個の細胞は、7.5日齢胚で60~80個、8日齢胚で125個程度、生殖隆起に取り込まれている13.5日齢胚では25000個にも増殖する。その後増殖を停止し、雌ではすぐに減数分裂過程に入り、雄では細胞分裂を停止し、出生後に細胞分裂を再開後、減数分裂に入る。

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マウスPGCs :vasa遺伝子(Mvh)の発現他マウスPGCは胎生6日目以降に開始される中胚葉誘導及び原条形成の時期に決定される(母性の決定機構によるものではない)。PGCはアルカリ性ホスファターゼ(alkaline phosphatase, AP)染色により同定できるが、その最初の出現時期は、胎生7.25日目の尿膜基部の胚体外中胚葉に見いだされ、生殖巣原基に移動定住は、8.5~11.5日目にかけて。

Mvhの発現は、この移動後期の生殖巣原基近傍に移動してきたPGCの一部から検出可能となり、生殖巣原基に定着したPGCでは、雌雄にかかわらず、そのすべてがMvh発現陽性となる。その後、減数分裂後の半数体細胞まで生殖細胞特異的に発現される。

Mvhのノックアウト(KO)マウスは、ホモ♀は正常、ホモ♂は不稔(減数分裂初期で分化が停止することによる)。移動期までのPGCはホモ個体でも正常。よってマウスvasaはPGCの

出現に対しては必須ではない。 これは、母性決定因子として機能するショウジョウバエや線虫のvasaでのKOの結果とは明らかに異なる結果であった。

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マウス生殖細胞形成 2009

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生殖細胞の形成:::::: 母性因子か? 誘導か?

① 母性因子による転写抑制

生殖細胞が形成される部位の細胞質に局在する特殊な細胞質を取り込んだ細胞が、未分化な生殖細胞である始原生殖細胞PGCになる。この細胞質には生殖細胞形成の引き金を引く幾つかの因子が含まれていることが明らかになっている。

また、胚発生の初期段階では、未分化な細胞で様々な遺伝子が発現し、その働きによって、色々な異なった性質の体細胞へ分化を始める。他方、生殖細胞は最終的には個体発生における全能性を発揮するために、如何なる体細胞の分化経路にも入らずに生殖細胞としての個性を保持し続ける必要がある。このためには、生殖細胞形成初期には転写の全般的な抑制が重要であることが分かってきた。

② 誘導と転写制御

哺乳類の受精卵では発生を開始後しばらくは、どのような種類に細胞にも分化できる多能性を保持した細胞の集団が維持されている。その後、原腸陥入は始まると様々な組織の基になる胚葉の形成が始まり、同時期に生殖細胞の形成が起こる。 誘導!!

原腸陥入前のマウス胚は、多能性の胚体外胚葉(epiblast)とこれに接している胚体外外胚葉などから成る。胚体外外胚葉で発現し分泌されるBmp4の蛋白質がエピブラストに作用して、PGCの前駆細胞が誘導される。この前駆細胞では、Blimp1,Prdm14という類似した構造を持つ2種類の転写制御因子が発現し、その働きによってPGCの分化運命決定が起こる。

前者はPGCの形成時に起こる体細胞を規定するような遺伝子の発現を抑制する。後者は、PGCが分化する際の ゲノムのエピジェネティックな再プログラム化 ( epigenetic reprogramming ) などを引き起こす働きがある。

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エピジェネティックス (epigenetics)

エピジェネティックスepigenetics(後成学、後成遺伝学)は真核生物のゲノムに記された遺伝情報の発現を制御する仕組みであり、様々な生命現象と関係している。

この言葉は、epigenesis(後成、後成説)を基にしてイギリスの発生学者Waddingtonによって作られた。epigenesisとは、前成説( preformation theory)と対立する「個体が発生する際に単純な構造から複雑な構造が新たに形成される」とする考え方である。

epigeneticsは、 「DNAの配列変化を伴わずに子孫や娘細胞に伝達される遺伝子機能の

変化と、この現象を探求する学問」 「クロマチンへの後天的な修飾により遺伝子発現が制御されることに起因する遺伝学或いは分子生物学の研究分野である」と定義されている。

遺伝形質の発現はセントラルドグマ仮説で提唱されたように「DNA複製→RNA転写→タンパク質合成→形質発現」に従ってDNA上の遺伝情報が伝達された結果である。つまり、セントラルドグマ仮説における形質の変化(遺伝子変異)とはDNAの1次配列の変化であり、実際に、遺伝子変異の大半はDNA配列の変化に起因する、このことは実証されてきた。しかし、その後、DNA配列の変化を伴うことなくDNAへの後天的な作用により形質変異が生じる機構が発見されてきた。 例えば、「DNA塩基のメチル化による遺伝子発現の変化」であったり、「ヒストンの化学修飾による遺伝子発現の変化(ヒストンのメチル化、アセチル化、リン酸化等)」である。 このような発現制御の変異はDNA1次配列変化とは独立している事象(後天的DNA修飾による遺伝発現制御)である。 これを扱う学問分野 として、

現在、ポストゲノムシークエンス時代の重要な研究テーマとして認識されている。 特に、転写因子による発現の誘導や抑制と異なり、DNA複製と細胞分裂を経て次世代の細胞への伝達性を持つ点が重要であると見られている。

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エピジェネティックス (epigenetics)エピジェネティックスは発生の遺伝的制御に深く関わっている。特に①哺乳類のX染色体不活性化 と②ゲノムインプリンティング ( 遺伝的刷り込みgenomic imprinting ) は、エピジェネティックな現象の代表的例として知られている。

しかし、そもそもエピジェネティックは発生全般に関わるものである。動物の発生におけるエピジェネティックな制御の大きな特徴は、それが世代ごとにリセットされることである。これをリプログラミング( reprogramming) と呼ぶ。発生は世代ごとに繰り返されるものであることから、これは当然のことである。

動物細胞でリプログラミング能を持つ細胞は生殖細胞と受精卵に限られ、初期胚の核の全能性 や、体細胞クローン動物作出時に卵細胞質内に移植された体細胞核の初期化 の理解に必須である。

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① 哺乳類のX染色体不活性化哺乳類では、未分化細胞が分裂増殖を続ける着床前の♀胚では、両親から受け継い

だそれぞれのX染色体は共に活性を持つ。しかし、胚盤胞に達すると、将来胎盤や胚体外膜の一部へと分化する胚体外組織系列の細胞でX染色体不活性化が起こる。この時、齧歯類では父親由来X染色体が選択的に不活性化する事が知られている。その後、内部細胞塊に由来する胚体組織(epiblast)系列の細胞でも細胞分化に伴ってX染色体不活性化がおこるが、そのころまでにはX染色体不活性化のインプリントは消失し、由来にかかわらずどちらか一方がランダムに不活性化する。

この現象は「性染色体の遺伝子量補償」の観点から研究されている。

一対の常染色体のうちの一方が進化の過程で欠失や逆位などの構造変化を繰り返した結果、形態的に大きくことなる一対の性染色体が形成されたと考えられている。この染色体の縮退は進化の上で何らかの利点がったと思われるが、その結果として、性染色体間の遺伝子量に著しい不均衡が生じることになった。これを是正するために遺伝子量補償機構を進化させたと考えられている。この機構が破綻した場合には致死となることが知られており、正常発生に極めて重要な機構であると考えられている。

哺乳類では、♀(XX) において一方のX染色体をそのほぼ全域にわたって不活性にすることで♂(XY)との間にあるX染色体連鎖遺伝子量の差を解消させている (X染色体不活性化)。

遺伝子量補償機構はショウジョウバエや線虫でも調べられていて、それぞれ大きく異なっているが、性染色体と常染色体の比に基づいて性決定がなされる性決定機構と密接に関連している。

哺乳類では性決定とは独立しているように見えるが、これはY染色体の存在の有無で性が決定するという性決定機構の違いに基づくものと理解されている。

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②ゲノムインプリンティング ( genomic imprinting )遺伝的刷り込み

ゲノムインプリンティングは父親由来のゲノム、或いは、母親由来のゲノムからのみ発現する遺伝子群 ( paternally expressed genes ( Peg ) および maternally expressed genes ( Meg ) )の発現調節に関わる機構。父親由来と母親由来のゲノムとの間に機能的な差異を与える。これは、高等脊椎動物の中で哺乳類のみにみられるエピジェネティックな遺伝子発現調節機構である。このため、哺乳類は雌性単為発生をすることができない(魚類、両生類、爬虫類、鳥類は自然状態又は実験的条件下において雌性単為発生が可能である)。

ゲノムインプリンティングの親由来の記憶は生殖細胞系列でリプログラムされる。精子は父親型、卵子は母親型にインプリントされている。そして、受精から始まる個体の一生の期間を通じて、この記憶は体細胞系列で消えることはない。一方、生殖細胞系列では、その個体の性別に応じて、雄であれば精子形成までに、雌であっれば卵子成熟の間に、あたらしいインプリントが起こる。

実際には、マウスでは雄型へのインプリントは出生前後の時期に、雌型へのインプリントは出生後の成熟過程で起こることが知られている。それに先だって、胎仔期には親由来の記憶の消去が起こる。この時期は雌雄の生殖細胞系列で共通していて、始原生殖細胞PGCが将来の生殖巣である生殖隆起にはいる胎生11.5日に起こる。PGCはマウス胎生7.0日の尿膜基部に出現し、体内を移動して胎生10.5日に生殖隆起に到着しその内部へ移住を始める。体内を移動中の時期には、PGCは体細胞と同様に受精卵由来の父親・母親の記憶をもっている。しかし、生殖隆起に入った直後に記憶の消去が起こる。

マウスの♀ゲノムだけからなる単為発生マウスの作出に河野友宏さんが成功した(2004)。成功の理由は、ゲノムインプリンティングを受ける遺伝子を操作したことによる。“KAGUYA”と命名されたマウスの誕生は、エピジェネティックな遺伝子発現調節が哺乳類の個体発生を支配している決定的証拠となった。

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引用文献(1)「生殖細胞ー形態から分子へ」 (編)岡田益吉、長濱嘉孝、223頁、共立出版 、1996

(2)「生殖細胞の発生と性分化」 (編)岡田益吉、長濱嘉孝、中辻憲夫、 蛋白質核酸酵素増刊号、Vol. 43, No. 4、324頁、 共立出版、 1998

(3)「生殖細胞形成の根本原理を求めて」(編)松居靖久、細胞工学、 Vol.22,No.10 秀潤社、 2003

(4)「生殖細胞分化とエピジェネティック制御」(編)小林 悟、 実験医学、 Vol.23, No.5 羊土社、 2005

(5)「生殖細胞の発生・エピジェネティックと再プログラム化」 (編)小倉敦郎、佐々木裕之、仲野徹、松居靖久、中辻憲夫、 蛋白質核酸酵素、 Vol. 52, No.16 共立出版、 2007

(6)「生命の永続性を司る生殖細胞サイクルー 転写、small RNAによる制御機構と生殖幹細胞の維持」 (編)松居靖久 実験医学、 Vol.27, No.3 羊土社 2009

(7)「エピジェネティックス」 シュプリンガー・レビュー 、(編)佐々木裕之、 238頁、シュプリンガー・フェアラーク東京、 2004

(8)「生殖生物学入門 」UP Biology 舘 鄰 東京大学出版会 161頁、 1990

(9)「マウスのテラトーマ: EC細胞による哺乳動物の実験発生学」 (編)野口武彦、村松喬

理工学社、 1987

(10)「ボディープランと器官形成」 (編) 浅島 誠 現代化学 増刊39 東京化学同人

183頁、 2001

(11)「発生学」 医学要点双書 藤本十四秋、受島敦美 第5版 金芳堂 134頁2005

(12)「ヒト発生の不思議」 藤本十四秋 金芳堂 119頁 2006

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(13)「生殖と発生」 (編)森 崇英、山村研一 岩波講座現代医学の基礎 5、214頁、岩波書店、1999

(14)「個体の生涯Ⅰ」 (編)岡田節人 岩波講座 分子生物科学 8、158頁、 岩波書店、1990

(15)「個体の生涯Ⅱ」 (編)岡田節人 岩波講座 分子生物科学 9、168頁、 岩波書店、1990

(16)「水産無脊椎動物学」 椎野季雄 345頁 培風館 1982

(17)「無脊椎動物発生学」 (編)久米又三、団勝磨 436頁、 培風館、 1957

(18)「脊椎動物発生学」 (編)久米又三 525頁 培風館 1966

(19)「脊椎動物の発生」 上 (編)岡田節人 486頁 培風館 1989

(20)「発生工学のすすめ」実験医学バイオサイエンス11 中辻憲夫 116頁、 1993

(21)「動物発生段階図譜」 (編著)石原勝敏 共立出版、 348頁 1996

(22)「ボディープランと器官形成」 (編) 浅島 誠 現代化学 増刊39 東京化学同人

183頁、 2001

(23)「発生学」 医学要点双書 藤本十四秋、受島敦美 第5版 金芳堂 134頁2005

(24)「ヒト発生の不思議」 藤本十四秋 金芳堂 119頁 2006

(25)「基礎発生学概論 新版」 市川 衞 裳華房 277頁 1968

(26)「ウィルト発生生物学」 F.H. Wilt & S. C. Hake 東京化学同人

388頁、 2006

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(27)「エッセンシャル発生生物学」 J. Slack 羊土社 335頁 2005

(28)発生生物学 (中)分子から形態進化まで S.F.Gilbert トッパン 283-583頁、 1991

(29)発生生物学 (下)分子から形態進化まで S.F.Gilbert トッパン 585-950頁、 1991

(30)”Primordial germ cells in the chordates. Embryogenesis and phylogenesis.” P. D. Nieuwkoop & L. A. Sutasurya Cambridge Univ. Press 187P. 1979(31)”Primordial germ cells in the invertebrates, From epigenesis to preformation “P. D. Nieuwkoop & L. A. Sutasurya Cambridge Univ. Press 187P. 1981(32)”The epigenetic nature of early chordate development . Inductive interaction and competence . “ P. D. Nieuwkoop , A. G. Johnen & B. Albers Cambridge Univ. Press 373p. 1985(33)”Development of Vertebrates” E. Witschi W. B. Saunders Comp. 588p. 1956(34)”Patterns and principles of animal development” J. W. Saunders, Jr. The Macmillan Comp. 282p. 1970(35)”Epigenetics” Søren Løvtrup John Wiley & Sons 547p. 1974(36)Birth of parthenogenetic mice that can develop to adult. T. Kono et al., Nature, 428, 860-864, 2004.

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配 偶 子 形 成

(6-2) 130521

精子形成

精子変態

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配偶子 gamete

配偶子形成 gametogenesis

始原生殖細胞 primordial germ cell (PGC)

生殖原細胞 gonium (pl. gonia)

精原細胞 spermatogonium (pl. spermatogonia)

卵原細胞 oogonium (pl. oogonia)

生殖母細胞 gametocyte

精母細胞 spermatocyte

卵母細胞 oocyte

精細胞 (精子細胞) spermatid

精子 spermatozoon (pl. spermatozoa) , sperm

卵(子) ovum (pl. ova)

精子形成 spermatogenesis

精子変態(完成) spermiogenesis

卵(子)形成 oogenesis , ovogenesis

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アルカリ性ホスファターゼ活性の高い細胞として出現(7.0dpc)を認識した後、移動期を経て定着した生殖巣原基が、形態的に雌雄判別可能となる時期(12.5dpc)までの生殖細胞を 始原生殖細胞(PGC)と呼ぶ。

生殖巣原基が卵巣原基である場合、そこの生殖細胞を 卵原細胞、精巣原基であるならば 精原細胞

と呼ぶ。卵原細胞、精原細胞を合わせて生殖原細胞 ( gonium, pl. gonia ) と総称する。

生殖原細胞が減数分裂に入ったならば、生殖母細胞 (gametocyte )( 卵母細胞、精母細胞)と呼ぶ。

マウス胚の例

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マウスPGCの表面抗原

マウスPGCは、胎齢7.5~12.5dpcまでをいう。ただし、

移動期と定着期で細胞の性質が異なると思われる。更に、細胞表面の抗原の組織化学やモノクローナル抗体染色等によるPGCの反応を見て

も分かるように、胎齢により反応が異なることから、PGCは細かく分類

されるものと思われる。

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マウス胚の例

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ヒト胎児の卵巣

妊娠3週で数百個のPGCは、妊娠6週頃に生殖隆起に定着し始め、妊娠5ヶ月で700万個に増殖するが、その後雌雄共に急速に減少することが知られている。

ヒト胎児卵巣では、妊娠3ヶ月より卵原細胞が減数分裂前期に入り、卵母細胞となり、出生までに全て卵母細胞になるが、合糸期(zygotene)および厚糸期(pachytene)に退化するものが多い。これは相同染色体間での乗り換えが危険度の高い過程で、染色体切断などの誤りが生ずるためと考えられている。胎児精巣でも同時期に生殖細胞減少が見られる。

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体細胞分裂mitosis

分裂(M期)に入るに先

立って(中間期(静止期))DNAの複製が起こる

時期(S期)がある。

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減数分裂meiosis(成熟分裂 or 還元分裂)

PGCは精巣に定着し精

原細胞と呼ばれ、体細胞分裂(mitosis)を繰り返して増殖する。その後、増殖をやめ成長し、1次精母細胞となる。

この細胞はほぼ2倍の

サイズであり、成長の間にDNAも複製され、核相は4nである。

その後、2回分裂を行い、2次精母細胞を経て、単相 n(haploid) の4個の精細胞となる。

この過程が、減数分裂で、配偶子形成時にのみ見られる分裂である。

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一次生殖母細胞まで

は核相(核の中の遺伝

子セット数)は体細胞と

同じ2nである。もし生殖

細胞の核相が半減した

単相(n)でなければ、受

精により生ずる新しい個

体(接合子)の核相は複

相(2n)+複相(2n)=4nとな

り、受精のたびに核相は

倍加してゆくことになる。

体細胞分裂でも、減数

分裂でも、中間期(静止

期)でまずはDNAの複製がおこる。

生物体の遺伝子セットを常に一定にして置くための仕組みとして、

雌雄の生殖細胞ではその形成途上で減数分裂により核相を半減する。

この核相が半減する現象を『減数分裂』と呼ぶ。

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第一分裂前期

第一分裂前期は、染色体の形状から5段階に分けられる。

細糸期 leptotene2nの染色体が細い染色質の糸として見える

合糸期 zygotene相同染色体が対になって接着する

厚糸期 pachytene対をなした染色体が互いに螺旋状に巻き付き、太く短くなる。相同染色体が結合したもの(2価染色体)。

複糸期 diplotene染色体が分離し、相同染色体が離れる。

移動期 diakinesis染色体が収縮して太くなる。

卵形成、精子形成どちらもこの時期までは同じ。

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一次精母細胞中期では核膜が消失。相同染色体が赤道面に並ぶ。

後期では、染色体は2方向へ分離するため、染色体数は半減し、

2個の娘細胞(2次精母細胞)となるが、核膜を生じることなく、第2減数分裂中期に入る。

各娘細胞は通常の体細胞分裂と同様に分裂して、最終的には4個の精細胞(単相 n ) となる。

精細胞はまだ卵と合体することは出来ない。

細胞間橋が省略されている