手術部位感染サーベイランス 術式改変の背景 -...
TRANSCRIPT
手術部位感染サーベイランス 術式改変の背景
森兼 啓太 山形大学医学部附属病院 検査部・感染制御部
2011年11月3日 JANIS説明会
NNIS (National Nosocomial Infections Surveillance)システム
NNIS (National Nosocomial Infections Surveillance)システム
• CDCによる院内感染サーベイランスシステム • 収集するデータ、感染の定義などを規定 • 1970年代に開始 • SSIをはじめとする院内感染 • 315施設が参加(2004年11月現在) • NNISのデータ→全米的データベース • 多くの国がNNISシステムを採用して自国のサーベイランスシステムを構築
2006年、NNISからNHSNへ
NHSNシステムに沿った SSIサーベイランスの概略
1. 対象手術を決定(胃手術、大腸手術など) 2. 分母データの収集 3. 術後30日間の手術部位(全身状態)観察 一部、術後1年間要フォロー
4. SSI発生の有無を判定 5. SSI発生率などの解析を実施 6. データのフィードバック
NNISとNHSN 手術手技分類の相違
• NNISに存在した「その他の~」(名称がOで始まる手術手技コード)は、NHSNでは廃止され、サーベイランスの対象ではなくなった OGU、OMS、OESなど 「その他」では有意義な解析ができない 従来に比べてサーベイランスの対象となる手術手技が減った
• NNISではおおざっぱすぎた手術手技コードを、NHSNでは細分化した
オー
NHSNで細分化された手術手技 手技 説明 REC 直腸手術、COLOから独立 AAA 大動脈瘤手術 CEA 血栓内膜摘出 AVSD 血液透析シャント PACE ペースメーカー PVBY 末梢血管バイパス THYR 甲状腺、HNから独立(HNはNECKに改名) RFUSN 再癒合、FUSNから独立 OVRY 卵巣、OGUから独立
VSから独立
JHAIS (Japanese Healthcare-Associated
Infections Surveillance) • 1998年 日本環境感染学会事業として立案 • 1999年2月 開始 • 当初の名称はJNIS Japanese Nosocomial Infections Surveillance
• NNISに準拠、SSIを対象 一部手術手技を改変
• 2009年末までに113施設から16万あまりのSSIサーベイランス症例が集積
院内感染対策サーベイランス事業:JANIS (JApan Nosocomial Infection Surveillance)
• 2000年 厚労省事業として立案、開始 • 当初は全入院・検査・ICU部門 • 2002年からNICU部門とSSI部門が追加 • SSI部門については、2002年時点でJNISに加入していた51施設をそのまま移行する形でJANIS参加施設とした
• 基本的にJNISと同じデータをJANISでも集める形 • 2007年より新規参加募集、以後150~200施設からデータ提出あり(1年間で10万例超)
JANISとJNISの 手術手技(術式)分類
• NNISを基本として一部修正したものを使用している ESOP:食道手術:日本独自の手術手技 COLNとREC:大腸を結腸と直腸に分離
• アメリカはNNISからNHSNに変わった • JANISとJNISも、国際標準であるNHSNに合わせる必要がある
• 2006年ごろよりSSIサーベイランス研究会などで術式改変の議論を進めてきた
手術手技分類改変の方向性
• NNISに準じたものを、NHSNに準じたものに変更する
• 日本独自の手術手技の設定についても考慮する
消化器系手術 • 大腸 すでに結腸(COLN)と直腸(REC)に分離している NHSNは我々に追従する形で大腸から直腸(
REC)を分離し、大腸は結腸(COLO)に 我々もCOLNをCOLOに改称
• 肝胆膵(BILI)と胃(GAST)については、分類
がおおざっぱすぎるのではないかとの指摘が従来よりなされていた
• 大阪大学第二外科および関連病院の外科医グループにより、肝胆膵と胃の細分化が検討
GASTの細分化
GAST-D Distal gastrectomy 幽門側胃切除 GAST-P Proximal gastrectomy 噴門側胃切除 GAST-T Total gastrectomy 胃全摘 GAST-W Gastric wedge resection 胃楔状切除 GAST-O Other gastric surgery その他の胃手術
BILIの細分化 BILI-H Hepatectomy 単純肝切除 BILI-B Choledochotomy, resection of bile duct 胆管切除・切開 BILI-P Partial and distal pancreatectomy 膵尾または部分切除 BILI-TP Total pancreatectomy 膵全摘 BILI-HB Hepatectomy with bile duct reconstruction 肝切除(胆管再建を伴う) BILI-BP Pancreaticoduodenectomy 膵頭十二指腸切除 BILI-HBP Hepato-pancreaticoduodenectomy 膵頭十二指腸切除+肝切除
GAST • 全SSI発生率 10.3%(363/3529)
0
5
10
15
20
1.6
6.4
13.2
15.8 17.6
(ご提供:大阪労災病院:清水潤三先生)
SS
I発生率(%)
GASTの手術手技細分化
• 最も頻繁に行われる幽門側胃切除(GAST-D)と胃全摘(GAST-T)の間に著しいSSI発生率の差があり、かつ、GAST全体の平均とも異なる
• これらは細分化する必要がある • それ以外は件数も多くなく、ひとつにまとめる(GAST-O、OはOtherのO)のが妥当
• GASTが、GAST-D、GAST-T、GAST-Oの3つに細分化される
BILI
10
20
30
40
50
13
25 26.2 27.3
34
39.7 40.7
• 全SSI発生率 23.8%(394/1650)
(ご提供:大阪労災病院:清水潤三先生)
SS
I発生率(%)
BILIの手術手技細分化
• 胆道再建を伴わない肝切除(BILI-H)の件数が最も多く、SSI発生率が圧倒的に低い
• その他の術式におけるSSI発生率は大差な
かったが、外科医の興味や実施件数を考慮し、膵頭十二指腸切除(BILI-PD)を独立させ、他はひとつの分類(BILI-O)とすることにした
• BILIが、BILI-L、BILI-PD、BILI-Oの3つに細分化される
その他の手術手技改変
• 血管手術(NNISではVS)がNHSNで細かく
分割され、一方でサーベイランスの対象から外れた術式も少なくなかった
• その中で頻度が多い術式を日本独自の手術手技として立てることとした TAA:胸部大動脈手術 VARX:下肢静脈瘤手術 AAE:腹部大動脈血管内手術 TAE:胸部大動脈血管内手術
新しい手術手技コードを用いたSSIサーベイランス
• 2012年1月1日手術分より、実施を御願い致します
• JANISとJHAISでは同時にこの改変を行います
• 入力支援ソフトウエアも双方において制作中で、どちらのソフトウエアを使用してもどちらのシステムへデータ提出も可能です
手術手技以外の改変部分
• 詳細はのちほど事務局よりご説明しますが、データ収集項目が若干減り、サーベイランスの負担が軽減されます
• フィードバックの際に用いるリスク階層化に関しては、NHSNはすでに回帰分析モデルによる複雑な仕様に移行しています。JANISでは当面、現在と同様のものを用いる予定です