厚生労働省院内感染対策サーベイランス カルバペネ …...全入院患者部門...
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カルバペネム腸内細菌科細菌(CRE)の集計とアシネトバクター属・緑膿菌のコリスチン感受性結果につ
いて
厚生労働省 院内感染対策サーベイランスJANIS
(Japan Nosocomial Infections Surveillance)
国立感染症研究所薬剤耐性研究センター第二室
矢原 耕史
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JANISの目的と5部門
部門 目的
検査部門 主要な菌や薬剤耐性菌の分離状況を明らかにする
全入院患者部門 主要な薬剤耐性菌の感染症の発生率を把握する
手術部位感染(SSI)部門 選定した手術手技におけるSSI発生率を把握する
集中治療室(ICU)部門ICU内の
人工呼吸器関連肺炎、カテーテル関連血流感染症、尿路感染症の発生率を把握する
新生児集中治療室(NICU) 部門 NICU内の院内感染症の発生率と原因菌を把握する
薬剤耐性菌サーベイランス
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わが国における薬剤耐性菌の分離状況と 薬剤耐性菌による感染症の発生状況および院内感染の発生状況、に関する情報提供
2種類の情報を発信・提供
• 我が国における薬剤耐性菌・院内感染に関するナショナルデータ
• 参加医療機関にフィードバックし、その感染対策に資するための情報
→公開情報
→還元情報
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集計プログラム• エラーデータのチェック• 重複処理• 薬剤感受性の判定• 耐性菌分離率の集計
医療機関A 医療機関B 医療機関C
48時間以内
公開情報= national data
医療機関A 医療機関B 医療機関C
還元情報
データの精度管理
四半期報年報月報
四半期報年報
細菌検査の全データ
世界で最も包括的なサーベイランスシステム
月次アップロード
JANIS運営体制
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厚生労働省 健康局 結核感染症課JANIS運営会議
(※平成28年度までは医政局地域医療計画課)
感染研・薬剤耐性研究センターシステム運用保守・データ管理業者
データの収集・解析、精度管理、公開情報・還元情報作成等
参加医療機関数 推移 対象:2013年までは200床以上の医療機関
2014年~ 病床規模条件撤廃 任意参加(年1回募集)
cf. 我が国の医療機関数 8493施設200床以上の医療機関数 2644施設
(平成26年医療施設(動態)調査より)
参加医療機関数(2017/1)
検査部門 1840
全入院患者部門 902
SSI部門 814
ICU部門 193
NICU部門 118
1部門以上 1990
感染防止対策加算1
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~200床 200-499床 500-899床 900床~
検査部門 病床規模別 参加率
検査部門1840参加医療機関 / 全国8480施設 = 21.6%
2017年1月現在
大規模病院の過半数が参加、しかし中小病院は少ない
参加施設 493(8%)
1002 299 46
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自動検査機器細菌検査システム
JANISサイトよりデータ提出
JANIS検査部門データ提出の流れ
各患者の検査結果
臨床検査室システム病院情報システム
培養陽性のみ
培養陰性も含めJANISデータフォーマットに変換
細菌検査の全データ
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48時間以内医療機関A 医療機関B
還元情報 四半期報/年報
データ精度管理
特殊な耐性を示す菌に警告メール送信
提出後1-2時間以内
医療機関A 医療機関B
還元情報 月報
公開情報 四半期報/年報JANISサーバ・ エラーデータのチェック・ 重複処理・ 薬剤感受性の判定・ 耐性菌分離率の集計
…
JANIS検査部門データ集計・解析の流れ
一般公開
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この先のアウトライン
• 公開情報(ナショナルデータ)
• 還元情報(参加医療機関へのフィードバック)
• JANIS海外展開
• 更なる発展に向けて
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Webサイトで公開
2015年年報1435施設分のデータ
728万検体541万菌株
2016年年報は精度管理中!
検査部門 集計対象医療機関数
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900床以上 500~899床
200~499床 200床未満
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呼吸器35%血液培養21%
呼吸器29%血液培養31%
総検体数、血液培養検体数の推移
「特定の耐性菌」の年次推移
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=菌分離患者数
検体提出患者数
薬剤感受性判定基準:CLSI2007 CLSI2012
分離率 感染症法
14
MRSAの割合
15
MRSA分離患者数 / S. aureus分離患者数 x 100
アンチバイオグラム(主要菌の抗菌薬感受性)
• 大腸菌
16
アンチバイオグラム(主要菌の抗菌薬感受性)
• MRSA
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病床数別集計
• 最近急増した200床未満 vs 200床以上
18
(2015年データ)
検体提出患者数(100床あたり)
200床未満 以上
432中央値
MRSA分離率
P<1E-4P<1E-4
8.5%中央値
療養病床が多い
200床未満 以上
3016.3%
200床未満
N=258施設
200床以上
N=1177施設
病床数別集計
ブレイクポイントの変更に伴う耐性率の変化
• JANISでは、医療機関から報告されたMIC値を、CLSIのブレイクポイントで自動的にS(感性), I(中間), R(耐性) 判定– 医療機関での薬剤感受性測定パネルの切り替えに合わせて、原則CLSI 2012に変更
– 2014年と2015年の公開情報年報は【CLSI 2007版】と【CLSI 2012版】の2種類を作成
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腸内細菌科細菌 CLSI 2007 CLSI 2012抗菌薬 S I R S I RCEZ ≦8 16 ≧32 ≦2 4 ≧8CTX ≦8 16 - 32 ≧64 ≦1 2 ≧4IPM ≦4 8 ≧16 ≦1 2 ≧4MEPM ≦4 8 ≧16 ≦1 2 ≧4
例えばCTXについて
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薬剤感受性パネルでのMIC測定レンジとJANISの判定基準が異なるデータが混在しており、データの解釈には要注意
• MIC≧4は、CLSI2012ではR、CLSI2007では判定不能• MIC≦8は、CLSI2007ではS、CLSI2012では判定不能
2014年報 (CLSI2007版) 2014年報 (CLSI2012版)
耐性率の年次推移の解釈にも要注意
• 肺炎桿菌の例
22
0
5
10
15
2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015
(%)
★:2014年に判定基準変更
LVFX
CEZ★
CTX★
IPM★
耐性率
耐性率の年次推移の解釈にも要注意
• 大腸菌の例
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(%)
★:2014年に判定基準変更
LVFXCEZ★
CTX★
耐性率
AZT★
ABPC
都道府県別 「特定の耐性菌」の分離状況• 西日本 vs 東日本:平均分離率を超えた都道府県の割合
• 都道府県別分離率
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都道府県別 「特定の耐性菌」の分離状況
25
検査部門 都道府県別参加率
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全国平均
カルバペネム耐性
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ペニシリン セファロスポリン カルバペネム→ →β-ラクタム薬
第一世代 第二世代 第三世代→ → 第四世代→
ペニシリナーゼ
ESBL
カルバペネマーゼ
セファマイシン
ほとんどのβ-ラクタム薬を不活化する
抗菌スペクトラム
AmpC
β-ラクタマーゼ:β-ラクタム薬を不活化する酵素
カルバペネマーゼ遺伝子は種間で水平伝播する
CRE (カルバペネム耐性腸内細菌科細菌)
• 2015年報でのCRE分離率
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CRE分離患者数 9508人×100 = 0.49%
検体提出患者数 約250万人
E. cloacaeとE. aerogenesで6割以上
菌種 CREの割合
E. cloacae 5.15%
E. aerogenes 10.82%
E. coli 0.19%
K. pneumoniae 0.54%
遺伝子検査未実施
2015年年報 英訳版
英語版HPから公開
この先のアウトライン
• 公開情報(ナショナルデータ)
• 還元情報(参加医療機関へのフィードバック)
• JANIS海外展開
• 更なる発展に向けて
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サーベイランス→現場での活用
自施設の状況の把握(Observe)
他の施設・地域
との比較(Orient)
感染対策の立案(Decide)
感染対策の実施 (Act)
比較するための共通のものさし
→JANISが提供!
還元される具体的な情報
最小 最大中央値
10%
90%
25%
75%
MRSA分離率10% 20% 30%
医療機関数
いつから? どこの病棟で?(表はCSVファイルとして
ダウンロード可)
菌A菌B菌C
菌D
菌E
自施設と他施設と比較
(ある菌の分離率がどれだけ高いか)
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還元情報の見方
33
34
35
36
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この先のアウトライン
• 公開情報(ナショナルデータ)
• 還元情報(参加医療機関へのフィードバック)
• JANIS海外展開
• 更なる発展に向けて
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JANIS海外展開の背景と目的
• 2015年WHO総会 global action plan on AMRで、各国のサーベイランス強化が提唱
• アジア地域の多くの国では、国レベルの薬剤耐性菌(AMR)サーベイランスが未実施
• 我が国で一定の実績のあるJANISシステムを導入することで、これらの国のAMRサーベイランスを支援
• JANISがアジア各国のAMRサーベイランス構築・強化を支援することを、WHOから期待されている=国際貢献
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• 細菌検査システムを利用してAMRサーベイランスを構築
• 個別の医療機関で院内の薬剤耐性菌の蔓延状況が把握できる
• 複数の医療機関のJANIS利用によりナショナルデータが作成できる
• 将来的に、アジア地域の国別比較が可能に
アジアにおけるJANISの活用によって
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自動検査機器細菌検査システム
海外用JANISシステムへのデータ提出の流れ
各患者の検査結果
臨床検査室システム病院情報システム
培養陽性のみ
ディスク法 JANISデータフォーマットに変換
データ変換ツール
BacLink
海外版JANISサイトよりデータ提出
JANIS出力形式
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JANISシステムにデータを提出 各病院への情報還元
各国のサーバに導入
WHONET WHONETWHONETWHONET WHONET
各国のAMRサーベイランス
JANISシステム
衛生検査所A 衛生検査所B
各国のAMRデータの作成
インドネシアベトナム
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この先のアウトライン
• 公開情報(ナショナルデータ)
• 還元情報(参加医療機関へのフィードバック)
• JANIS海外展開
• 更なる発展に向けて
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安定運用・更なる発展に向けて
• 「アクションプラン」の随所にJANIS
• 一方、「JANISはまだ安定していない」という声– 非常に限られた予算と情報技術– 参加医療機関数は急増
• 関係者の御尽力で、昨年度ようやく– 予算の拡充– 「情報の収集、解析、調査研究」を使命とする担当室の設置
まずは、従来の課題を1つ1つ改善44
昨年度に改善した点
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• 医療機関から提出されたデータの処理方式の改善– サーバー負荷軽減– 還元情報の早急な作成依頼への個別対応
• 検査部門専用サーバーの構築
• システム運用に必要なドキュメントの整備
• 精度管理の自動化マクロ開発
• JANISホームページ「よくあるご質問」の大幅改訂
• 検査部門2015年年報の小型冊子化と配布
・・・その他、数十項目
今後の動向
• 医療関連サーベイランス( JANISの検査部門以外の4部門)– 主体は医療センターへ?
• システム移行– 政府共通プラットフォーム
– マイクロソフト社製DBからオープンソースDBへの切り替え
– HPのデザインも一新予定
– しかし、ハードディスクが足りない!!!
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今後の動向
• システム再移行– 厚労省情参室の主導
– 十分なディスクの確保とサーバー増設の可能なクラウド環境へ
• 来年度以降– 運用保守業者と複数年契約
– 経験・技能の蓄積
– 発展的な課題への取り組みを可能に47