赤色ledによる アザミウマ類...
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株式会社光波大阪府立環境農林水産総合研究所
静岡県農林技術研究所農研機構野菜花き研究部門
赤色LEDによるアザミウマ類防除マニュアル
目次・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p.1このマニュアルについて・・・・・・・・・・p.21.防除のイメージ・・・・・・・・・・・・p.32.効果のメカニズム・・・・・・・・・・・p.43.利用上のポイント・・・・・・・・・・・p.54.赤色LED防除装置の概要・・・・・・・・p.65.施設内での設置方法・・・・・・・・・・p.76.施設ナス栽培での利用法・・・・・・・・p.8 7.施設キュウリ栽培での利用法・・・・・・p.98.施設メロン栽培での利用法・・・・・・・p.10参考資料・・・・・・・・・・・・・・・・・p.11問い合わせ先・担当者・・・・・・・・・・・p.12
目次
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このマニュアルについて
2 ナスの被害
・雌成虫は体長1.3mm程度で体色は橙黄色・施設内で越冬可能・ナス,ピーマン,キュウリ、メロン等の果菜類を加害・葉では葉脈沿いに食害痕(シルバリング)を生じる・果実では果皮やがくに縦の線状あるいは不規則な傷を生じる(写真の白矢印) ミナミキイロアザミウマ雌成虫
農業害虫とされる主な種は、以下の5種である:ミナミキイロアザミウマ、ミカンキイロアザミウマ、ネギアザミウマ、ヒラズハナアザミウマ、チャノキイロアザミウマ
キュウリの被害
ミカンキイロアザミウマ雌成虫 ネギアザミウマ雄成虫(左)雌成虫(右)
ヒラズハナアザミウマ雌成虫
アザミウマ類
栽培施設で大発生する害虫の多くは、殺虫剤に対する抵抗性を発達させており、薬剤のみでの防除は困難になっています。殺虫剤の使用量を減らすためには薬剤以外の防除法を組み合わせる必要があります。そこで、特に問題となるアザミウマ類を対象に、赤色 L E Dを
利用した防除技術を開発しました。本マニュアルは、都道府県普及指導員および J A営農指導員などを対象としています。アザミウマ類の防除の参考にしていただければ幸いです。
ミナミキイロアザミウマ
メロンの被害
??♪♪
1. 防除のイメージ赤色光がないとき… 赤色光があるとき!!
幼虫は葉や果実を吸汁して成長した後,蛹化のために土壌へ移動する。蛹は4~5日で羽化し,再び葉へ移動する。
定着阻止葉に赤色光を当てると定着しにくい。
羽化
蛹化
成虫幼虫
蛹
引き離し効果はないすでに葉に定着していると赤色光を当てても逃げない。
夜間照射は逆効果夜間に照射すると、アザミウマ類は誘引される。
注意
成虫はハウス外から侵入して,葉を加害し,産卵する。
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2. 効果のメカニズム
ミナミキイロアザミウマが反応する光
・ミナミキイロアザミウマが誘引される波長域夜間では、UVから赤色までの波長域の光に成虫が誘引される。
→ 夜間の照射を避ける(p.5)
緑色に赤色光を照射する
・赤色光を植物に照射するとミナミキイロアザミウマが近づきにくい日中では、赤色光を照射しない植物にミナミキイロアザミウマは誘引されるが、赤色光を照射した植物にはあまり誘引されなくなる。
・赤色光はミナミキイロアザミウマの行動を制御する日中では、寄主植物の葉と似た色の緑粘着板にミナミキイロアザミウマは誘引されるが、緑粘着板に赤色光を照射すると誘引されなくなる。
8時間以上照射すると、行動抑制効果が高まる。
赤色光
緑粘着板 黒粘着板透明の円筒
355 400 500 600 735 nm
紫外(UV)
赤
誘引率(%)60 0 20 40 602040
農研機構 野花研4
アザミウマを放す
3. 利用上のポイント
○効果のあるアザミウマ種
①照射時間は日中12時間程度。
アザミウマ種により、赤色光の定着阻止効果の程度が異なる。
○照射開始前のアザミウマ類密度をゼロに・照射開始前からアザミウマ類がいると、赤色光では防除できない。・育苗時から赤色光を照射する。・定植前~定植時に薬剤を処理して苗からの持ち込みを防ぐ。
○天敵への影響
・赤色防虫ネットの施設開口部への展張。・光反射シートの畝面被覆。
赤色光照射は、カブリダニ類の使用に影響しない。
○組み合わせ可能な防除資材
○日中に照射する
大阪環農水研 5
効果の程度 アザミウマ種
高 ミナミキイロアザミウマ
低 ネギアザミウマ・ミカンキイロアザミウマ
*植物との組み合わせにより効果が多少異なる。
②最低気温が20℃を超える時期には日の出1時間前~日の入り1時間後の照射が望ましい。
*夜間に照射すると、アザミウマ類を誘引する。
4. 赤色LED防除装置の概要
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構造
仕様
ユニット数 16 個/1アール光源間隔 2~3 m消費電力 約 90 W/1アールピーク波長 約 660 nm (赤色)フォトン数 1×1018 Photons/s/m2
取付 フック式
④
①
① 発光部② カバー③ 電線④ フック③
③
②
④
点灯の様子
組立
フックをカバーに図のように取り付ける。外れないことを確認する。フックの向きを互い違いにすることで、ワイヤーに掛けた際に外れにくくなる。
留意点・注意事項・水や農薬が直接かからないようにする。・耐用年数は7年程度である。・施設専用である。
(株)光波
5. 施設内での設置方法
開口部は防虫ネットを展張
地上高180~200cm
電源BoxLEDランプ
1.LEDランプを設置する位置にワイヤーあるいは針金などを張る。ハウスの骨材や作物の誘引用資材を利用する。
2.LEDランプのフック部分を針金にひっかける。フック部品は事前に取り付けておく。
3.LED電源を通して施設のAC100Vあるいは200V電源のコンセントにつなぐ。
4.LED電源やたるんだコードを結束バンドなどで固定する。=注意=*植物体への照射強度は最低1×1018photons/m2/s以上とする。*(株)光波製赤色LED装置では、地上高180~200cmに設置すれば地上30cmの高さで十分な照射強度が得られる。*LEDランプを畝間あるいは畝上に設置すると光強度が均等になる。*施設開口部近くに多く設置する。 設置例
(22個を針金4本に設置する場合)装置6個の針金が2本、装置5個の針金が2本になるので、6個の方をサイド開口部の近くに設置する。
2~3m
2~3m
電源(100Vあるいは200V)、延長コード、結束バンド、ワイヤーあるいは針金(直径1~2mm程度)
○材料
○方法
大阪環農水研 7
LED電源
LEDランプ
LED電源
6. 施設ナス栽培での利用法
設置方法
試験事例
留意点・注意事項
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現地施設ナスのミナミキイロアザミウマの抑制効果(2018年6月7日、富田林市)
赤色LED装置と赤色防虫ネットの利用により、ミナミキイロアザミウマを低密度に抑制。
針金の設置 設置の様子
・生育、収量および品質への影響はなかった
大阪環農水研
ハウス骨材などを支えとして針金を張る
3月19日~6月30日に13回,各区30株の2葉(計60葉)についてミナミキイロアザミウマの生息個体数を調査
7. 施設キュウリ栽培での利用法
設置方法
試験事例
留意点・注意事項
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横からみた図 設置の様子
赤色LED装置
赤色LED装置と赤色防虫ネットの利用により、ミナミキイロアザミウマを低密度に抑制。
大阪環農水研
赤色光が均等に当たるように畝間に設置するのが望ましい。地上高180~200cmの高さにワイヤーや針金などを設置し、装置のフック部分をひっかける。
キュウリ誘引用ネット
8月17日~11月26日に10回,各区30株の2葉(計60葉)についてミナミキイロアザミウマ成幼虫の生息個体数を調査
現地施設キュウリのミナミキイロアザミウマの抑制効果(2018年10月9日、富田林市)
・生育、収量および品質への影響はなかった
区 9月 10月 11月 12月
赤色LED
照射区
無照射区
8. 施設メロン栽培での利用法
設置のイメージ
試験事例
留意点・注意事項
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・育苗は専用の施設で行うミナミキイロアザミウマが寄生した苗を定植すると赤色LEDの効果が出にくいので、育苗は専用の施設で行う。
アザミウマ1齢幼虫を捕食するスワルスキーカブリダニ
スリークォータ-型温室における赤色LEDの設置例(横から見た図)
020406080
100120
赤色LED照射によるミナミキイロアザミウマ幼虫の抑制効果(2018年、掛川市)
生息個体数/葉
スワルキーカブリダニ
スワルキーカブリダニ
殺虫剤定植直後から赤色LEDを点灯
定植
収穫
赤色LEDとコードが一体となった製品
スワルスキーカブリダニを利用している現地のメロン温室に、赤色LEDを追加し、慣行防除の無照射区と防除効果を比較した。
静岡農技研
カブリダニが徐々に放出される資材を株元に設置
赤色LED装置と天敵カブリダニの組合せは効果が高そうね。
1.8m以下
赤色LED装置
赤色LED照射区無照射区
定植
殺虫剤
赤色光が均等に当たるように畝間に設置するのが望ましい。地上高180~200cmの高さにワイヤーや針金などを設置し、装置のフック部分をひっかける。
収穫
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参考資料
1)柴尾学(2016)赤色LED照射によるナスのミナミキイロアザミウマの密度抑制.JATAFFジャーナル 4巻7号,pp.35-38.
2)Murata M, Hariyama T, Yamahama Y, Toyama M, Ohta I (2018) Effects of the range of light wavelengths on the phototactic behaviour and biological traits in the melom thrips, Thrips palmi Karny (Thysanoptera: Thripidae). Ethology Ecology & Evolution vol.30, pp.101-113.
3)Murata M, Hariyama T, Yamahama Y, Toyama M, Ohta I (2018) In the presence of red light, cucumber and possibly other host plants lose their attractability to the melon thrips Thrips palmi (Thysanoptera: Thripidae). Applied Entomology and Zoology vol.53, pp.117-128
4)村田未果(2018)赤色光照射による害虫防除技術.照明学会誌 102巻,pp.492-496.
5)柴尾学(2019)赤色LEDによるナスのアザミウマ類の防除技術.全国農業改良普及支援協会「技術と普及」6月号,pp.62-63)
6)片山晴喜(2019) 赤色LEDによるメロンのアザミウマ抑制技術.道県農業改良2誌 (北海道「農業の友」 71(8): 40-41, 全国農業改良普及支援協会「技術と普及」 56 (5): 72-73).
7)片山晴喜・土井 誠・斉藤千温・岩崎大樹 (2019) メロン栽培温室における赤色LED照明装置の設置によるミナミキイロアザミウマの密度抑制効果. 関東東山病害虫研究会報(印刷中).
もっと詳しく知りたい場合は、下記資料をご覧下さい。
問い合わせ先・担当者
株式会社 光波営業統括部〒178-8511 東京都練馬区東大泉1-19-43TEL: 03-3978-2151(営業)FAX: 03-3978-2152(営業)Mail: [email protected]
大阪府立環境農林水産総合研究所食と農の研究部 防除グループ
柴尾学・城塚可奈子・金子修治〒583-0862 羽曳野市尺度442TEL: 072-958-6551(代表)FAX: 072-956-9691
静岡県農林技術研究所植物保護・環境保全科
片山晴喜・土井誠・石川隆輔〒438-0803静岡県磐田市富丘678-1TEL: 0538-36-1556 FAX: 0538-37-846
農研機構野菜花き研究部門野菜病害虫・機能解析研究領域 虫害ユニット
太田泉・村田未果〒514-2392 三重県津市安濃町草生360TEL: 059-268-1331(代表)
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*担当者の所属は研究実施時のものであり、現在と異なる場合があります。
効果のメカニズムについて
メロンでの使用について
ナス・キュウリでの使用について
製品(赤色LED防除装置)について
編集責任者:大阪府立環境農林水産総合研究所柴尾学・城塚可奈子
発行日: 2019年12月 初版 発行
本マニュアルの内容は、内閣府 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「次世代農林水産業創造技術」(管理法人:農研機構生研支援センター)の研究成果を活用しています。本マニュアルの複製・転載を御希望の場合は、下記まで御連絡ください。
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