観光案内所の職員に期待される新たな役割 「地域観...

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地域観光コンシェルジュ育成ガイド 概要版(平成26年3月) 国土交通省 観光庁 観光地域振興課 TEL:03-5253-8111(代表) ~地域を訪れるお客様に喜ばれるご案内をするために~ 観光案内所の職員に期待される新たな役割 「地域観光コンシェルジュ」の育成に向けて 「地域観光コンシェルジュ育成ガイド」活用の流れ ~ 地域観光コンシェルジュ育成ガイド」の活用 ・観光案内所職員の育成の考え方や具体的な進め方についてまとめた冊子です。 ・観光案内所職員を対象とする研修の企画・実施の際の指針としてご活用下さい。 <観光案内所の職員に期待される新たな役割> 地元地域へのリピーター・ファンを増やすためには、地域の奥深い情報を提供することや、地域の様々な人た ちと一緒に旅行商品を開発したり、観光地域づくりに取り組むことが求められています。 観光案内所の職員には、これまでの案内業務に加えて、こうした新たな役割も期待されます。 こうした新たな役割を期待される人材を「地域観光コンシェルジュ」と呼ぶことにします。 [主に想定している読者] ▶「地域観光コンシェルジュ」の役割や育成プロセス等の概要について知りたい方⇒この概要版をご覧ください。 「地域観光コンシェルジュ」の育成について、さらに詳しく知りたい方 「地域観光コンシェルジュ育成ガイド」(全文)を、観光庁のホームページからダウンロードしてご覧ください。 観光案内所職員の育成に取り組もうとする観光案内所の運営責任者(自治体の担当者や地域リーダー)、現在自ら案内 業務に携わりながら後輩の育成に関わっている方(今後育成に関わる方)、これから観光案内所の職員を目指す方 【第1段階】 人材育成を 始めるにあたっての 準備・前提条件 観光案内所の位置づけ・機能の明確化 案内業務を担う信念や地元地域に対する愛着を表す「組織目標」の設定 地域観光コンシェルジュに求められる役割の明確化 来訪者のためになりたいという想いの醸成、「学習目標」の設定 1. 2. 【第2段階】 人材育成計画づくり 観光案内所の「組織目標」を達成するために取り組むべき業務と体制の決 定(育成対象となる職員を明確にする)【日々の業務での実践(OJT)】 外部で開催される研修や地元地域での現場研修等への参加を検討 【業務を離れた研修(Off-JT)】 3. 4. 【第4段階】 人材育成の継続 目標に対する実践結果の評価 (客観的評価、主観的評価) 評価の結果や観光案内所の要員の 変 更(人 数、熟 練 度)等を踏まえた 人材育成計画の見直し 案内業務担当者「地域観光コンシェルジュ」 として成長するための人材育成を継続する 6. 7. 【第3段階】 人材育成の実践 【第1段階(目標設定)】の再確認 【第2段階(人材育成計画づくり)】の再検討 へ 地域観光コンシェルジュの育成プロセス ベテラン (後輩の指導も行う) 初心者 以下のような主に3つの場面での人材育成の実践 5. <地元地域の中で> 「組織目標」を共有する。 「行動基準」に基づいて業務を遂行する。 「学習目標」に沿った勉強会を開催したり、職 場コミュニケーションを図る(ノウハウや経験 談、想いを語る等)。 <観光案内所の中で> 地域の情報を正確に来訪者へ伝えるために、日頃から現場を訪れた り、関係者とのコミュニケーションを図る。 魅力ある観光地域づくりに寄与するために、来訪者の評価要望等を関 係者へ伝える(フィードバックする)。 教育機関や広域で開催される集合研修に参加する(Off-JT)。 <地域外で> 問い合わせに応えられる情報・知識、伝える スキルを習得する。 まだ顕在化していないニーズや魅力を発掘 する(来訪者の満足度を追求する「顧客志 向」)。 <来訪者への対応の中で> - 育 成 ガイド 概 要 版 - 「観光案内所の職員の育成が大事、 ということはわかるが、どのように取 り組んだらいいのだろう…」 現在の観光案内所でのご案内は、 今の旅行者の期待に、充分に応えているでしょうか。 活発なコミュニケーション、 信頼感に根差した良質な競争、 教え合い(業務支援) 挑戦 やりがい 挫折 内省 再学習 地域観光 コンシェルジュ 案内所職員が、案内業 務 や 観 光 地 域 づくり について、体系的に学 ぶ機会は少なかった。 案内所職員としての スキルアップは、個 人の努力に任される ことが多かった。

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Page 1: 観光案内所の職員に期待される新たな役割 「地域観 …地域観光コンシェルジュ育成ガイド 概要版(平成26年3月) 国土交通省 観光庁

地域観光コンシェルジュ育成ガイド 概要版(平成26年3月)国土交通省 観光庁 観光地域振興課

TEL:03-5253-8111(代表)

~地域を訪れるお客様に喜ばれるご案内をするために~

観光案内所の職員に期待される新たな役割「地域観光コンシェルジュ」の育成に向けて

~ 「地域観光コンシェルジュ育成ガイド」活用の流れ ~

「地域観光コンシェルジュ育成ガイド」の活用・観光案内所職員の育成の考え方や具体的な進め方についてまとめた冊子です。・観光案内所職員を対象とする研修の企画・実施の際の指針としてご活用下さい。

<観光案内所の職員に期待される新たな役割> 地元地域へのリピーター・ファンを増やすためには、地域の奥深い情報を提供することや、地域の様々な人たちと一緒に旅行商品を開発したり、観光地域づくりに取り組むことが求められています。 観光案内所の職員には、これまでの案内業務に加えて、こうした新たな役割も期待されます。 こうした新たな役割を期待される人材を「地域観光コンシェルジュ」と呼ぶことにします。

[主に想定している読者]

▶「地域観光コンシェルジュ」の役割や育成プロセス等の概要について知りたい方⇒この概要版をご覧ください。▶「地域観光コンシェルジュ」の育成について、さらに詳しく知りたい方⇒「地域観光コンシェルジュ育成ガイド」(全文)を、観光庁のホームページからダウンロードしてご覧ください。

観光案内所職員の育成に取り組もうとする観光案内所の運営責任者(自治体の担当者や地域リーダー)、現在自ら案内業務に携わりながら後輩の育成に関わっている方(今後育成に関わる方)、これから観光案内所の職員を目指す方

【第1段階】人材育成を

始めるにあたっての準備・前提条件

観光案内所の位置づけ・機能の明確化案内業務を担う信念や地元地域に対する愛着を表す「組織目標」の設定

地域観光コンシェルジュに求められる役割の明確化来訪者のためになりたいという想いの醸成、「学習目標」の設定

1.

2.

【第2段階】人材育成計画づくり

観光案内所の「組織目標」を達成するために取り組むべき業務と体制の決定(育成対象となる職員を明確にする)【日々の業務での実践(OJT)】

外部で開催される研修や地元地域での現場研修等への参加を検討【業務を離れた研修(Off-JT)】

3.

4.

【第4段階】人材育成の継続

目標に対する実践結果の評価(客観的評価、主観的評価)

評価の結果や観光案内所の要員の変更(人数、熟練度)等を踏まえた人材育成計画の見直し 案内業務担当者「地域観光コンシェルジュ」

として成長するための人材育成を継続する

6.

7.

【第3段階】人材育成の実践

【第1段階(目標設定)】の再確認【第2段階(人材育成計画づくり)】の再検討 へ

地域観光コンシェルジュの育成プロセス

ベテラン(後輩の指導も行う)

初心者

以下のような主に3つの場面での人材育成の実践5.

<地元地域の中で>

「組織目標」を共有する。「行動基準」に基づいて業務を遂行する。「学習目標」に沿った勉強会を開催したり、職場コミュニケーションを図る(ノウハウや経験談、想いを語る等)。

<観光案内所の中で>

・・・

地域の情報を正確に来訪者へ伝えるために、日頃から現場を訪れたり、関係者とのコミュニケーションを図る。魅力ある観光地域づくりに寄与するために、来訪者の評価要望等を関係者へ伝える(フィードバックする)。

教育機関や広域で開催される集合研修に参加する(Off-JT)。

<地域外で>

問い合わせに応えられる情報・知識、伝えるスキルを習得する。まだ顕在化していないニーズや魅力を発掘する(来訪者の満足度を追求する「顧客志向」)。

<来訪者への対応の中で>

- 育成ガイド概要版 -

「観光案内所の職員の育成が大事、ということはわかるが、どのように取り組んだらいいのだろう…」

現在の観光案内所でのご案内は、今の旅行者の期待に、充分に応えているでしょうか。

活発なコミュニケーション、信頼感に根差した良質な競争、

教え合い(業務支援)挑戦

やりがい 挫折

内省 再学習

地域観光コンシェルジュ

案内所職員が、案内業務や観光地域づくりについて、体系的に学ぶ機会は少なかった。

案内所職員としてのスキルアップは、個人の努力に任されることが多かった。

Page 2: 観光案内所の職員に期待される新たな役割 「地域観 …地域観光コンシェルジュ育成ガイド 概要版(平成26年3月) 国土交通省 観光庁

現在、多くの観光案内所での案内業務の様子

最近の旅行者は、観光地を見て歩くだけではなく、その地域の普段の暮らしぶりや農林漁業・ものづくりなどの体験も希望するようになってきました。インターネットやスマートフォン等の普及で、旅行前・旅行中にも詳しい情報を簡単に入手できるようになるなど、情報収集の方法が変わってきました。その一方で、これまでどおり観光パンフレットやガイドブックといった紙媒体や、対面でのご案内に対するニーズも根強いのです。観光案内所では、地元だからこそできるご案内、お客様一人ひとりに合わせた対応が期待されています。

主に、案内所が立地する自治体や隣接地域の情報

扱う情報の範囲

主に、観光資源、観光・宿泊施設、交通機関、祭礼・イベント、食、土産品について

扱う情報の内容

案内所のカウンターにて口頭での案内、マップやパンフレットの提供、電話での案内

今後、新たに育成を目指す“地域観光コンシェルジュ”のイメージ

【最近の旅行動向の変化、観光案内所への期待】

実際に周遊して楽しめるエリア(行政区域の枠を越えて文化圏等の範囲)の情報

扱う情報の範囲従来の観光資源・施設の情報に加えてものづくりの現場や普段の暮らし等について

扱う情報の内容従来のカウンターでの対応に加えて、ホームページやSNSでの情報発信力も強化

提供する手段

鉄道の乗り換え駅や観光地域の中の観光案内所における情報提供が主な業務

お客様それぞれのニーズに合った情報や、滞在交流観光を推進する観点から地域のより奥深い情報を提供することで、①旅行先での魅力的な過ごし方を提案する②お客様の評価・要望を観光地域づくりの担い手へフィードバックする役割が期待されます。このような業務を担当する人材を、この「育成ガイド」では、「地域観光コンシェルジュ」と称します。

 平成24年3月から1年間、東北6県を舞台に開催された「東北観光博」では、観光案内所及び各施設の職員などが研修を受講して、「地域観光案内人」となりました。 地域観光案内人は、地域ならではの奥深い情報を来訪者に伝えるために、窓口での案内やホームページでの情報発信、そしてツイッターやフェイスブックといった人の顔が見える、双方向の情報発信に取り組みました。 平成25年度には、こうした地域観光案内人が一堂に会する研修が開催され、各自が抱える業務の課題について話し合い、より良い案内業務の進め方や観光地域づくりとの関わり方などについて学びました。 こうした広域での研修の実施により、東北地域の観光案内所の職員同士の連携が強まり、来訪者へのより良い案内につながることが期待されます。

東北観光博で誕生した「地域観光案内人」が、現在も交流し、成長を続けています!

最近の旅行や社会の変化を受けて、観光案内所にも新たな取り組みが期待されています 地域観光コンシェルジュには、様々な能力が求められます

 現在、全国各地の観光案内所で、地域を訪れたお客様に対して、情報提供やご案内が行われていますが、最近の旅行動向や社会環境の変化によって、観光案内所にいくつかの課題が出てきました。 すなわち、以下のように、情報は広域のものも、かつ内容には深みが求められるとともに、様々な手段で情報を発信することが求められるようになってきました。 そして今後は、観光案内所の職員にも、観光地域づくりに関わりを持つことが期待されており、こうした新たな役割を担う人材「地域観光コンシェルジュ」の育成が求められています。

コラム下北

青森・浅虫温泉

弘前 八戸

津軽半島

十和田・八幡平

盛岡・雫石

二戸・久慈

花巻・遠野北上・

西和賀

平泉・一関・奥州

白神

秋田・男鹿

田沢湖・角館

横手・湯沢

庄内最上

銀山温泉

上山・天童・山形蔵王

米沢・おきたま

大崎・鳴子

仙台・秋保・作並

松島

白石・宮城蔵王

ふくしま

会津 郡山・磐梯熱海

いわき

みやこ

気仙沼

東北を受

者に信、る、

するい、方な

が、 下北

青森・浅虫温泉

弘前 八戸

津軽半島

十和田・十和田・八幡平八幡平

盛岡・雫石

二戸・久慈

花巻・遠野北上・

西和賀

平泉・一関・奥州

白神白神

秋田・男鹿

田沢湖・角館

横手・湯沢

庄内最上

銀山温泉

上山・天童・山形蔵王

大崎・鳴子

仙台・秋保・作並

松島

白石・宮城蔵王

みやこ

気仙沼

お客様を心地良く迎えるための身だしなみや接遇スキルを身につけたい。

観光案内所の職員として求められる、

最も基本的な能力

地域に根差した観光案内所だからこそ可能な案内を行うための能力

職員の個性を発揮しながら、

お客様一人ひとりに合わせた臨機応変な対応を行うための能力

・ 接遇スキルを学ぶための研修を受けるとともに、同じ観光案内所で働く先輩や同僚で、「お客様に評判の良い人の仕事ぶり」から学ぶことも大切です。

お客様へ、地元にある観光案内所だからこそ得られる知識や情報を提供できるようになりたい。

・ 観光資源や飲食店などについての知識や情報だけではなく、現地を訪れて体験したり、関係者からヒアリングをするなどして、実感として理解することが重要です。

地元地域の関係者から、最新の情報や特別な知識を教えてもらえる信頼関係を築きたい。

・ 日頃から足しげく地元の施設を訪ねて顔見知りになり、現場の様子を見聞きし、教えてもらいながら理解することが重要です。

新たな商品・サービスの開発や観光地域づくりにも関わりたい。・

新たな商品の開発に取り組む際は、初めはできるだけ多くの先進事例を学ぶことが重要です。フィールドワークとワークショップを行いながら、地元地域の核となるエリアを舞台にした旅行プランの検討・試行など、少しずつ成功体験を積んでいくことから始めると良いでしょう。

お客様一人ひとりのニーズや制約条件に合わせた臨機応変な案内ができるようになりたい。

・お客様の様子に注意を払って、その声に耳を傾け、お客様の状況やニーズを理解する訓練が必要です。観光案内所の職員として基本的な案内業務が行えるようになってはじめて、自分の個性を発揮したご案内をするようにしましょう。

お客様に親しみを感じてもらえるような話し方やSNSを活用した情報発信の方法を身につけたい。

自分の個性の発揮の仕方には、それぞれの工夫があってよいでしょう。方言での案内や、自分の趣味や得意な分野の情報を詳細にご案内するなど、様々な方法があります。ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)に関するスキルは、「習うよりも慣れ」ともいえ、SNSによる情報発信を実際にやってみることで、お客様に好評な情報や画像のツボなどもわかるようになります。

お客様へ、常に正確で最新の知識や情報を提供できるようになりたい。

・ 地元地域の観光資源については、観光情報をまとめた資料や郷土資料などから自習したり研修を受けることによって学ぶことができます。

そのためには…

そのためには…

そのためには…

提供する手段