複合動詞sils.shoin.ac.jp/talks/talks20/ikeya/池谷:開始を... · web...

22
開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開 「」「」 開開開開開開開開開開開開開開開開開 開開 開開 開開開開 開開開開開 開開開開開 tikeya[at]shoin.ac.jp Difference of Japanese Compound Verb“ 開Dasu and Hajimeru” A Corpus-based Study of the actual uses. Tomoko IKEYA Abstract 開開開開開開開 開開開開開開開開開開開開開 開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開 開開開 開開開開開開 「」「」、 。 開開開開開開開開開開 開開開開開開開開 開開開開開開開開 開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開 開開開開開 。2、 。、 「」「」 開開開開開開開開開開開開 開開開開開開開開開開開開開開開開開 開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開 開開開開 開 、、「 開開BCCWJ-NT開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開 」、「」「」、。 開開開 開開開開開開開開開開開開開開開開開 開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開 開開開開開開開開開開開開開 、 「」「」、 開開開開 開開開開開開開開開 開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開開 。 、 「」「」。 Syntactic compound verbs “~dasu” and “~hajimeru” are both known as the aspect that expresses the start of action. The preceding studies analyze the difference between these two verbs by examining artificial examples, and it ha regarded that these two verbs are able to be paraphrased, whereas “~dasu” often indicates the action that suddenly. This paper is intended to clarify the characteristics v e r b s ~ d a s u a n d ~ h a j i m e r u f r o m investigating real sentence examples in the Balanced Corpus of Contemporary Written Japanese, an difference of two verbs can be explained by two factors of delimitivity and controllability. 1

Upload: others

Post on 09-Jul-2020

2 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 複合動詞sils.shoin.ac.jp/TALKS/TALKS20/ikeya/池谷:開始を... · Web viewこのように、影山(1993)では複合動詞を語彙的複合動詞と統語的複合動詞に分類し、その成果は広く知られている。しかし、影山(2012)では語彙的複合動詞をさらに2つに分類し、語彙的複合動詞が、更に「主要部関係複合動詞」と「アスペクト複合動詞」に分類できることを提案した。

開 始 を 表 す 複 合 動 詞 「 〜 出 す 」 「 〜 始 め

る 」 の 違 い

〜 コ ー パ ス を 利 用 し た 使 用 実 態 か ら 〜

池 谷   知 子

神 戸 松 蔭 女 子 学 院 大 学   言 語 研 究 所

tikeya[at]shoin.ac.jp

Difference of Japanese Compound Verb“ 〜 Dasu “ and “ 〜Hajimeru”:   A Corpus-based Study of  the actual uses.Tomoko IKEYA

Abstract

統 語 的 複 合 動 詞 「 〜 出 す 」 と 「 〜 始 め る 」は 、 両 方 と も 開 始 の ア ス ペ ク ト を 表 す も のと し て 知 ら れ て い る 。 こ の 2 つ は 言 い 換 えが き く も の さ れ て き た 。 先 行 研 究 で は こ の2 つ の 違 い と し て 、 「 〜 出 す 」 の 方 は 「 突然 性 」 が あ る と さ れ て き た 。 こ れ ま で 、 複合 動 詞 の 用 法 に つ い て は 、 作 例 で 検 証 さ れる こ と が 多 か っ た が 、 本 研 究 で は 「 現 代 日本 語 書 き 言 葉 均 衡 コ ー パ ス ( 通 常 版 ) 中 納言   BCCWJ-NT 」 を 使 う こ と に よ っ て 、 「 〜 出す 」 と 「 〜 始 め る 」 の 違 い を 、 数 量 と 実 例を 使 っ た 観 点 か ら 明 ら か に し て い く 。 そ して 、 「 〜 出 す 」 と 「 〜 始 め る 」 の 違 い に は 、動 詞 の 限 界 性 と 動 作 主 の コ ン ト ロ ー ル 性 とい う 2 つ の 要 因 が 関 与 し て い る こ と を 論 じる 。 そ の こ と に よ っ て 、 「 〜 出 す 」 と 「 〜始 め る 」 の 表 す 開 始 の ス ペ ク ト の 違 い を 明ら か に す る 。

Syntactic compound verbs “~dasu” and “~hajimeru” are both known

1

Page 2: 複合動詞sils.shoin.ac.jp/TALKS/TALKS20/ikeya/池谷:開始を... · Web viewこのように、影山(1993)では複合動詞を語彙的複合動詞と統語的複合動詞に分類し、その成果は広く知られている。しかし、影山(2012)では語彙的複合動詞をさらに2つに分類し、語彙的複合動詞が、更に「主要部関係複合動詞」と「アスペクト複合動詞」に分類できることを提案した。

as the aspect that expresses the start of action. The preceding studies analyze the difference between these two verbs by examining artificial examples, and it has been regarded that these two verbs are able to be paraphrased, whereas “~dasu” often indicates the action that happens suddenly. This paper is intended to clarify the characteristics of verbs “~dasu” and “~hajimeru” from the viewpoint of investigating real sentence examples in the Balanced Corpus of Contemporary Written Japanese, and argue that the difference of two verbs can be explained by two factors of delimitivity and controllability.

【 キ ー ワ ー ド 】統 語 的 複 合 動 詞   語 彙 的 複 合 動 詞   ア ス ペク ト 複 合 動 詞   限 界 性   コ ン ト ロ ー ル 性  未 完 了 の 逆 接

【 Keywords 】syntactic compound verbs, lexical compound verbs, aspectual compound verbs, delimited, controllability, imperfective paradox

1 . は じ め に

  「 降 り 出 す 」 「 降 り 始 め る 」 の よ う な V1+ V2 型 複 合 動 詞 は そ れ ぞ れ 開 始 の ア ス ペ クト を 表 す 形 式 と し て 知 ら れ て い る 。 そ し て 、し ば し ば そ れ ら の 意 味 の 違 い が 問 題 と な って い る 。 例 え ば 、 名 柄 編 ( 1987:76 ) 『 外 国 人た め の 日 本   例 文 ・ 問 題 シ リ ー ズ ④   複 合動 詞 』 に は 次 の よ う な 問 題 が あ る 。

三 (     ) 内 の 動 詞 に 「 は じ め る 」 か 「 だす 」 を 加 え な さ い 。 過 程 の は っ き り し たも の に は 「 は じ め る 」 を つ か い な さ い 。

① か お る ち ゃ ん 、 も う 歯 が ( 出 る ) た よ うね 。

② 中 年 に な っ て 、 ち ょ っ と ( 太 る ) た よ う

2

Page 3: 複合動詞sils.shoin.ac.jp/TALKS/TALKS20/ikeya/池谷:開始を... · Web viewこのように、影山(1993)では複合動詞を語彙的複合動詞と統語的複合動詞に分類し、その成果は広く知られている。しかし、影山(2012)では語彙的複合動詞をさらに2つに分類し、語彙的複合動詞が、更に「主要部関係複合動詞」と「アスペクト複合動詞」に分類できることを提案した。

な 気 が す る ん だ 。③ そ ろ そ ろ 卒 業 論 文 を ( 書 く ) な け れ ば な

ら な い な 。④ ピ ア ノ を ( 習 う ) た こ ろ 、 子 供 が 十 年 も

続 け る と は 思 い も し な か っ た 。⑤ 女 の 子 は 警 官 の 顔 を 見 て 、 わ っ と ( 泣

く ) て 、 母 親 に し が み つ い た 。⑥ 私 は 、 こ の 大 学 で ( 教 え る ) て か ら 、 十

年 に な り ま す 。⑦ 宿 で 寝 て い る と 、 天 井 で 突 然 ね ず み が

( あ ば れ る ) て び っ く り し た 。⑧ そ れ を 聞 い て 、 彼 は 急 に ( あ わ て る ) て 、

落 ち 着 か な く な っ た 。⑨ 今 す ぐ 行 き ま す か ら 、 皆 さ ん に 先 に ( 食

べ る ) て い て く だ さ い 。⑩ こ の 辺 り は 冬 が 早 く 、 十 月 に な る と も う

雪 が ( 降 る ) ま す 。⑪ 突 然 家 が ( 揺 れ る ) て び っ く り し た 。 自

身 は 初 め て の 経 験 だ っ た か ら 、 す ご く 怖か っ た 。

⑫ 遊 園 地 に 連 れ て 行 っ て や る と 行 っ た ら「 嬉 し い な 、 嬉 し い な 」 と 行 っ て 、 ( 踊る ) だ 。

  こ の 問 題 の 指 示 文 に あ る 「 過 程 の は っ きり し た も の に は 『 は じ め る 』 を つ か い な さい 」 の 部 分 を 削 除 し て 、 日 本 語 母 語 話 者 にや っ て も ら う と 、 実 際 の 解 答 1 と 異 な る 答 えが み ら れ た 。 つ ま り 、 こ の 問 題 は 、 過 程 とい う 時 間 が か か る こ と が コ ン テ ク ス ト 上 で保 証 さ れ て い る も の に は 、 「 〜 始 め る 」 を選 択 さ せ る こ と を 誘 導 し て い る の で あ る 。そ の た め 、 そ れ を 削 除 し て 、 直 感 に 従 っ て自 由 に 選 ん で も ら う と 、 解 答 と は 異 な る 答え に な る 場 合 が み ら れ た 。 ま た 、 「 〜 始 める 」 か 「 〜 出 す 」 を つ け な さ い と い う 指 示に も 関 わ ら ず 、 「 ④ 習 い は じ め る / 習 い だ

1 ①出はじめる、②太りだす、③書きはじめる、④習いはじめる/習いだす、⑤泣きだす、⑥教えはじめる、⑦暴れだす、⑧あわでだす、⑨食べはじめる、⑩降り始める/降りだす、⑪揺れはじめる、⑫踊りだす

3

Page 4: 複合動詞sils.shoin.ac.jp/TALKS/TALKS20/ikeya/池谷:開始を... · Web viewこのように、影山(1993)では複合動詞を語彙的複合動詞と統語的複合動詞に分類し、その成果は広く知られている。しかし、影山(2012)では語彙的複合動詞をさらに2つに分類し、語彙的複合動詞が、更に「主要部関係複合動詞」と「アスペクト複合動詞」に分類できることを提案した。

す 」 、 「 ⑩ 降 り 始 め る / 降 り だ す 」 、 の よ うに 両 方 の 答 え を 可 と し た 問 題 が 12 問 中 、 2題も あ っ た 。 も ち ろ ん 、 両 方 と も 開 始 の ア ス ペ ク ト を 表す 複 合 動 詞 と さ れ て い る も の な の で 、 両 方の 形 式 で 言 え て も 不 思 議 で は な い 。 し か し 、こ れ 以 外 に も 両 方 の 形 式 が 取 れ る と 思 わ れる も の が あ る 。 例 え ば 、 も う 一 度 、 問 題 ②を み て み よ う 。

1.(a) 中 年 に な っ て 、 ち ょ っ と 太 り は じ め た よう な 気 が す る ん だ 。 ( 正 答 ) (b) 中 年 に な っ て 、 ち ょ っ と 太 り だ し た よ うな 気 が す る ん だ 。 ( 誤 答 )

  1(a) が 正 答 と さ れ て い る が 、 (b) が 非 文 な のだ ろ う か 。 実 際 に 調 べ て み る と 筆 者 も 含 めて 、 ( b) で も 言 え る と い う 人 も お り 、 こ の答 え が 自 然 な 言 語 直 感 に 従 っ た 解 答 で は ない こ と こ と を う か が わ せ る 。 そ れ で は 本 当に 「 太 り 出 す 」 が 言 え る か ど う か 確 認 す るた め 、 「 現 代 日 本 語 書 き 言 葉 均 衡 コ ー パ ス( 通 常 版 ) 中 納 言   BCCWJ-NT ( 以 下 コ ー パ ス中 納 言 ) と 略 す 」 2 で 検 索 し て み る と 次 の よう な 例 が 見 つ か っ た 。

2. 運 動 不 足 に な る と 犬 は て き め ん に 太 り だし 、 体 が 重 た く な る と 、 さ ら に 動 き た がら な く な り ま す 。 ( 『 ウ ェ ス ト ハ イ ラ ンド ・ ホ ワ イ ト ・ テ リ ア 』 誠 文 堂 新 光 社  2001)

3. そ こ で 、 病 院 で 投 与 を 受 け る こ と に な りま し た が 、 今 度 は そ の 副 作 用 で 、 や せ た体 が ま た 急 激 に 太 り だ し ま し た 。 ( 藤 野

2 『現代日本語書き言葉均衡コーパス』(BCCWJ)は、現代日本語の書き言葉の全体像を把握するために構築したコーパスであり、現在、日本語について入手可能な唯一の均衡コーパスである。書籍全般、雑誌全般、新聞、白書、ブログ、 ネット掲示板、教科書、法律などのジャンルにまたがって1億 430万語のデータを格納しており、各ジャンルについて無作為にサンプルを抽出している。http://pj.ninjal.ac.jp/corpus_center/bccwj/

4

Page 5: 複合動詞sils.shoin.ac.jp/TALKS/TALKS20/ikeya/池谷:開始を... · Web viewこのように、影山(1993)では複合動詞を語彙的複合動詞と統語的複合動詞に分類し、その成果は広く知られている。しかし、影山(2012)では語彙的複合動詞をさらに2つに分類し、語彙的複合動詞が、更に「主要部関係複合動詞」と「アスペクト複合動詞」に分類できることを提案した。

武 彦 『 BOOCS ダ イ エ ッ ト 』 朝 日 新 聞 社  2005)

  こ の よ う に 、 「 太 り 出 す 」 が 絶 対 的 に 言え な い と い う わ け で は な い 。 こ の こ と か ら 、「 過 程 が は っ き り し た も の に は 〜 は じ める 」 が 使 わ れ る と い う 説 明 だ け で は 、 「 〜出 す 」 と 「 〜 始 め る 」 の 違 い を 明 ら か に する に は 十 分 で は な い こ と が わ か る 。  景 山 ( 1993) に お て 、 統 語 的 複 合 動 詞 と 語彙 的 複 合 動 詞 が 提 案 さ れ て か ら 、 姫 野(1999)、 伊 藤 ・ 杉 岡 ( 2002) と 複 合 動 詞 に つ いて 多 く の 研 究 が な さ れ て き た 。 た だ 、 そ れら の 研 究 で は 、 コ ン テ ク ス ト か ら 切 り 離 され た 複 合 動 詞 の み が 扱 わ れ る こ と が 多 か った 。 そ こ で 、 本 研 究 で は 近 年 、 め ざ ま し く進 歩 し た コ ー パ ス 研 究 の 知 見 を 利 用 し な がら 、 開 始 を 表 す 統 語 的 複 合 動 詞 と 言 わ れ てい る 「 〜 出 す 」 と 「 〜 始 め る 」 の 違 い に つい て 論 じ て い く 。

2 . 先 行 研 究   〜 影 山 (1993) の 統 語 的 複 合 動詞 と 語 彙 的 複 合 動 詞 〜  

  影 山 ( 1993) 、 影 山 ( 1999) 、 影 山 ( 2012)で は 複 合 動 詞 に は 「 語 彙 的 複 合 動 詞 」 と「 統 語 的 複 合 動 詞 」 の 2種 類 が あ る こ と が 指摘 さ れ て い る 。

影 山 ( 2012:3-4)a. 語 彙 的 複 合 動 詞後 項 動 詞 ( V2 ) が 直 接 、 前 項 動 詞( V1 ) の 連 用 形 に 結 合 す る 。 す な わ ち 、2つ の 語 彙 範 疇 が 直 接 的 に 複 合 で あ る とい う 点 で 「 語 彙 的 」 で あ る 。

b. 統 語 的 複 合 動 詞V2 は 、 直 接 、 V1 の 連 用 形 に 付 く の で はな く 、 V1 を 主 要 部 と す る 補 文 ( 幾 つ かの レ ベ ル の 動 詞 句 ) を 取 る 。 す な わ ち 、

5

Page 6: 複合動詞sils.shoin.ac.jp/TALKS/TALKS20/ikeya/池谷:開始を... · Web viewこのように、影山(1993)では複合動詞を語彙的複合動詞と統語的複合動詞に分類し、その成果は広く知られている。しかし、影山(2012)では語彙的複合動詞をさらに2つに分類し、語彙的複合動詞が、更に「主要部関係複合動詞」と「アスペクト複合動詞」に分類できることを提案した。

統 語 的 な 句 に 付 く と い う 点 で 「 統 語的 」 で あ る 。

  こ れ ら の 具 体 例 と し て 、 以 下 の よ う な 動詞 が あ が っ て い る 。

影 山 (1993:75)a. 語 彙 的 複 合 動 詞飛 び 上 が る 、 押 し 開 く 、 泣 き 叫 ぶ 、 売 り払 う 、 受 け 継 ぐ 、 解 き 明 か す 、 飛 び 込 む 、( 隣 の 人 に ) 話 か け る 、 こ び り 付 く 、 飲み 歩 く 、 歩 き 回 る 、 踏 み 荒 ら す 、 褒 め 讃え る 、 語 り 明 か す 、 聞 き 返 す 、 震 え 上 がる 、 呆 れ 返 る 、 持 ち 去 る 、 沸 き 立 つ

b. 統 語 的 複 合 動 詞払 い 終 え る 、 話 し 終 わ る 、 し ゃ べ り 続 ける 、 食 べ す ぎ る 、 食 べ そ こ な う 、 助 け 合う 、 動 き 出 す 、 食 べ か け る 。 し ゃ べ り まく る 、 走 り 抜 く 、 数 え 直 す 、 見 慣 れ る 、登 り 切 る 、 や り つ け る

  ま た 、 影 山 (1993:96) で は 「 到 着 し 始 め る 」と 「 印 刷 し 出 す 」 を 例 に と り 、 「 〜 始 める 」 と 「 〜 出 す 」 の 両 方 を 「 始 動 」 を 表 す統 語 的 複 合 動 詞 と し て い る 。 統 語 的 複 合 動詞 と さ れ る も の に は 「 始 動 」 「 継 続 」 「 完了 」 な ど 、 ア ス ペ ク ト に 関 わ る 表 現 が 多 く含 ま れ て い お り 、 統 語 的 複 合 動 詞 と 語 彙 的複 合 動 詞 は 、 以 下 の 5 つ の テ ス ト の よ っ て 、区 別 さ れ る 。 そ の テ ス ト の 振 る 舞 い を 確 認す る 。 ( そ れ ぞ れ の 例 は 影 山 (1993) か ら の 抜粋 で あ る )

< 統 語 的 複 合 動 詞 と 語 彙 的 複 合 動 詞 を 区 別す る テ ス ト >a. 代 用 形

①   そ う し 始 め る ( 統 語 的 )② * そ う し 歩 く ( 語 彙 的 )

6

Page 7: 複合動詞sils.shoin.ac.jp/TALKS/TALKS20/ikeya/池谷:開始を... · Web viewこのように、影山(1993)では複合動詞を語彙的複合動詞と統語的複合動詞に分類し、その成果は広く知られている。しかし、影山(2012)では語彙的複合動詞をさらに2つに分類し、語彙的複合動詞が、更に「主要部関係複合動詞」と「アスペクト複合動詞」に分類できることを提案した。

b. 主 語 尊 敬 語①   お 歌 い に な り 始 め る ( 統 語 的 )② * お 書 き に な り 込 む ( 語 彙 的 )

c. 受 身 形①   名 前 が 呼 ば れ 始 め た ( 統 語 的 )② * 書 か れ 込 む ( 語 彙 的 )

d. サ 変 動 詞①   徹 夜 で 見 物 し 続 け る ( 統 語 的 )② * 沸 騰 し 立 つ ( cf. 沸 き 立 つ ) ( 語 彙的 )

e. 重 複 構 文①   大 臣 は そ れ を ひ た 隠 し に 隠 し 続 けた 。 ( 統 語 的 )

②   * 行 方 不 明 の 子 供 を 探 し に 流 し 歩い た 。 ( 語 彙 的 )

  こ の よ う に 、 影 山 ( 1993) で は 複 合 動 詞 を語 彙 的 複 合 動 詞 と 統 語 的 複 合 動 詞 に 分 類 し 、そ の 成 果 は 広 く 知 ら れ て い る 。 し か し 、 影山 (2012)で は 語 彙 的 複 合 動 詞 を さ ら に 2つ に 分類 し 、 語 彙 的 複 合 動 詞 が 、 更 に 「 主 要 部 関係 複 合 動 詞 」 と 「 ア ス ペ ク ト 複 合 動 詞 」 に分 類 で き る こ と を 提 案 し た 。 影 山 の 分 類 を図 に め と め る と 次 の よ う に な る 。

< 図 1> 影 山 (2012)の 複 合 動 詞 の 分 類

7

Page 8: 複合動詞sils.shoin.ac.jp/TALKS/TALKS20/ikeya/池谷:開始を... · Web viewこのように、影山(1993)では複合動詞を語彙的複合動詞と統語的複合動詞に分類し、その成果は広く知られている。しかし、影山(2012)では語彙的複合動詞をさらに2つに分類し、語彙的複合動詞が、更に「主要部関係複合動詞」と「アスペクト複合動詞」に分類できることを提案した。

  主 要 部 関 係 複 合 動 詞 は 「 V1,V2 と も に 主 題関 係 ( 項 関 係 ) を 持 ち 、 V1 は V2 を 様 々 な 意味 関 係 で 修 飾 す る 」 と し て い る 。 一 方 、 アス ペ ク ト 複 合 動 詞 は 、 「 文 の 項 関 係 は 基 本的 に V1 に よ っ て 決 ま る 。 V2 は 広 い 意 味 で 語彙 的 ア ス ペ ク ト を 表 し 、 V1 が 表 す 事 象 の 展開 に つ い て 述 べ る 」 と し て い る 。  影 山 (1993) の 統 語 的 複 合 動 詞 の 中 に は 、 アス ペ ク ト に 関 す る も の が 多 く 含 ま れ て い たが 、 影 山 ( 2012) で は 、 更 に 語 彙 的 複 合 動 詞の 中 に も ア ス ペ ク ト に 関 す る も の が あ る こと が 、 新 た に 打 ち 立 て た 。 そ れ で は 、 語 彙的 ア ス ペ ク ト 複 合 動 詞 の 特 徴 は ど う い う もの だ ろ う か 。 そ れ に 関 し て 、 「 〜 出 す 」「 〜 始 め る 」 を 例 に と っ て 、 詳 し く 述 べ られ て い る た め 、 少 し 長 い が 、 そ こ か ら の 引用 を 行 う 。

影 山 ( 2012:13-14 ) ( 原 文 で は 下 線 で 表 さ れ たも の は ゴ シ ッ ク で 示 す ) ア ス ペ ク ト 複 合 動 詞 は 、 従 来 の 語 彙

的 複 合 動 詞 の 意 味 分 類 に お い て も っと も 難 し い 分 類 で あ る 。 こ の グ ル ープ は 影 山 ( 1993 ) 、 由 本 ( 2005 ) の「 補 文 関 係 」 、 松 本 ( 1998) の 「 副 詞的 関 係 」 を 包 摂 し 、 ま た 、 伝 統 的 な国 語 学 ・ 日 本 学 に お い て は 、 元 の 動

複合動詞

語彙的複合動詞

主要部関係複合動詞

アスペクト複合動詞

統語的複合動詞

8

Page 9: 複合動詞sils.shoin.ac.jp/TALKS/TALKS20/ikeya/池谷:開始を... · Web viewこのように、影山(1993)では複合動詞を語彙的複合動詞と統語的複合動詞に分類し、その成果は広く知られている。しかし、影山(2012)では語彙的複合動詞をさらに2つに分類し、語彙的複合動詞が、更に「主要部関係複合動詞」と「アスペクト複合動詞」に分類できることを提案した。

詞 の 語 彙 概 念 と は 異 な る 意 味 ( 特 にア ス ペ ク ト 的 な 意 味 ) を 表 す た め 、「 補 助 動 詞 的 」 と 言 わ れ る も の で ある 。 た だ し 、 日 本 語 学 に お い て は 、形 態 論 の 領 域 と 統 語 論 の 領 域 の 区 別が 実 質 的 に は 欠 如 し て い る た め 、「 補 助 動 詞 」 は 「 し ゃ べ り 始 め る 」「 し ゃ べ り 終 わ る 」 の よ う な 統 語 複合 動 詞 の 後 項 も 含 ま れ る 。 例 え ば 、寺 村 ( 1994:169 ) は (6) の 3 つ の 例 文 につ い て 、 ( 6b ) の 「 出 す 」 と (6c) の「 出 す 」 も 共 に ア ス ペ ク ト を 表 す 複合 動 詞 と 考 え て い る 。

(6) a. 虫 を 箱 か ら つ ま み 出 し た 。 ( 動詞 + 動 詞 )      b. 虎 が お り か ら 逃 げ 出 し た 。( 動 詞 + 補 助 動 詞 )      c. 赤 ん 坊 が 泣 き 出 し た 。 ( 動詞 + 補 助 動 詞 )   し か し な が ら 、 影 山 ( 1993) が 提 唱す る 統 語 的 複 合 動 詞 と 語 彙 的 複 合 動詞 の 診 断 基 準 に な る と 、 両 者 に は 明確 な 文 法 的 相 違 が あ る こ と が 分 か る 。す な わ ち 、 統 語 的 複 合 動 詞 は 、 V1 に受 身 形 、 使 役 形 、 「 そ う す る 」 代 用形 、 「 VNす る 」 な ど が 来 る こ と が でき る と い う 特 徴 を 持 つ が 、 (6c) の 「 泣き 出 す 」 が こ れ ら の 特 徴 に 適 合 す るの に 対 し て 、 ( 6b ) の 「 逃 げ 出 す 」は 統 語 的 複 合 動 詞 の 特 徴 を 示 さ な い 。

( 中 略 )そ の 結 果 、 我 々 は 一 見 相 反 す る( ア ) と ( イ ) の 主 張 に 直 面 す る こと に な る 。

  ( ア ) ( 6b ) と (6c) の 「 出 す 」 は ど ちら も ア ス ペ ク ト を 表 す 補 助 動 詞 で ある 。

9

Page 10: 複合動詞sils.shoin.ac.jp/TALKS/TALKS20/ikeya/池谷:開始を... · Web viewこのように、影山(1993)では複合動詞を語彙的複合動詞と統語的複合動詞に分類し、その成果は広く知られている。しかし、影山(2012)では語彙的複合動詞をさらに2つに分類し、語彙的複合動詞が、更に「主要部関係複合動詞」と「アスペクト複合動詞」に分類できることを提案した。

  [ 寺 村 ]  ( イ ) ( 6b ) は 語 彙 的 、 (6c) は 統 語 的と い う 文 法 的 な 相 違 が あ る 。 [ 影山 ]

  こ の 矛 盾 を 無 理 な く 解 決 す る 方 法は ( 6b ) を 語 彙 的 な 複 合 動 詞 で あ るが 、 ア ス ペ ク ト を 表 す と 捉 え る こ とで あ る 。 す な わ ち 、 従 来 の 一 般 的 な考 え に 反 し て 、 ア ス ペ ク ト を 表 す 補助 的 な 動 詞 は 、 統 語 構 造 に も 語 彙 構造 に も 存 在 す る と い う こ と で あ る 。

    影 山 (2012)で は 語 彙 的 ア ス ペ ク ト ( Aktionsartア ク ツ ィ オ ン ス ア ル ト ; 動 詞 の 様 態 ( manner of action ) と は 、 完 了 、 未 完 了 と い っ た 時 間 的な ア ス ペ ク ト に 限 ら れ ず 、 広 く 「 事 象 の 展開 の 仕 方 」 を 表 す 概 念 と し 、 こ れ ら を Lexical-aspect( L-asp) と 名 付 け た 。 そ の 中 で 特 に 時 間的 な ア ク ツ ィ オ ン ス ア ル ト と し て 、 次 の よう な も の を あ げ て い る 。

影 山 ( 2012:17-18 ) か ら 抜 粋< 時 間 的 ア ク ツ ィ オ ン ス ア ル ト > 完 了 … 「 縫 い 上 げ る 」 「 縫 い 上 が る 」 変 化 の 強 調 … 「 寝 込 む 」 「 澄 み き る 」

「 静 ま り か え る 」 「 住 み つ く 」 「 震 え 上が る 」 「 咲 き 乱 れ る 」 「 落 ち 着 き は らう 」 「 照 り つ け る 」

開 始 な い し 開 始 の 試 み … 「 切 り つ け る 」「 立 ち あ げ る 」 「 咲 き 初 め る 」

継 続 … 「 泣 き 暮 ら す 」 「 降 り し き る 」 反 復 ・ 多 回 性 ・ 習 慣 … 「 ほ じ く り 返 す 」

「 使 い 込 む 」 「 言 い 習 わ す 」 動 作 の 強 調 … 「 さ わ ぎ た て る 」 「 こ き お

ろ す 」 「 い じ く り ま わ す 」 「 沸 き か える 」 「 沸 き 立 た つ 」 「 褒 め ち ぎ る 」 「 吹き す さ ぶ 」

複 数 事 象 の 相 互 関 係 … 「 溶 け あ う 」 「 居あ わ せ る 」 「 聞 き か え す 」

10

Page 11: 複合動詞sils.shoin.ac.jp/TALKS/TALKS20/ikeya/池谷:開始を... · Web viewこのように、影山(1993)では複合動詞を語彙的複合動詞と統語的複合動詞に分類し、その成果は広く知られている。しかし、影山(2012)では語彙的複合動詞をさらに2つに分類し、語彙的複合動詞が、更に「主要部関係複合動詞」と「アスペクト複合動詞」に分類できることを提案した。

行 為 の 不 成 立 … 「 履 き 違 え る 」 「 貸 し しぶ る 」 「 伸 び 悩 む 」

  そ し て 、 こ れ ら の 語 彙 的 ア ス ペ ク ト の 構造 と し て [ 語 彙 範 疇 ( V1 ) - 語 彙 範 疇 (V2)-機能 範 疇 (L-asp)] と い う 順 序 に な る と し て 、 次の よ う な 構 造 を 想 定 し て い る 。

< 図 2 >   影 山 で 想 定 さ れ て い る 語 彙 的 な複 合 動 詞 の 構 造     影 山 (2012:28) を 改 編

 

  そ し て 、 こ の よ う な 接 続 に な る 証 拠 と して 、 次 の よ う に 3 つ の 動 詞 が 連 な る 例 を あげ て い る 。

4. 干 あ が る ( V+ L-asp ) 、 干 か ら び る ( V+V)

( ア ) →干 - か ら び - あ が る (V + V+ L-asp)

5. 寝 静 ま る ( V+ V) 、 静 ま り か え る (V + L-asp)

( イ ) →寝 - 静 ま り - か え る (V + V+ L-asp)

  こ の よ う に 、 語 彙 的 複 合 動 詞 が 3 つ 連 なる 時 、 語 彙 的 ア ス ペ ク ト が (L-asp)最 後 に く るこ と が わ か る 。 つ ま り 、 [ V1 + V2 ] + L-aspと い う 順 に 相 互 承 接 し て い る こ と が わ か る 。そ れ で は 、 語 彙 的 な ア ス ペ ク ト 複 合 動 詞 と統 語 的 な ア ス ペ ク ト 複 合 動 詞 の 関 係 は ど うな っ て い る の だ ろ う か 。 そ れ に つ い て 、 影

11

Page 12: 複合動詞sils.shoin.ac.jp/TALKS/TALKS20/ikeya/池谷:開始を... · Web viewこのように、影山(1993)では複合動詞を語彙的複合動詞と統語的複合動詞に分類し、その成果は広く知られている。しかし、影山(2012)では語彙的複合動詞をさらに2つに分類し、語彙的複合動詞が、更に「主要部関係複合動詞」と「アスペクト複合動詞」に分類できることを提案した。

山 は 以 下 の よ う に 述 べ て い る 。

影 山 ( 2012:44 ) ( ゴ シ ッ ク は 筆 者 )本 稿 で 提 案 し た ア ス ペ ク ト 複 合 動 詞 は 、あ く ま で 「 語 彙 的 複 合 動 詞 」 の 一 部 であ り 、 「 〜 し 始 め る 、 〜 し 続 け る 、 〜し 出 す 、 〜 し 損 な う 」 と い っ た 統 語 的複 合 動 詞 と 同 一 視 す る こ と は で き な い 。す な わ ち 、 日 本 語 の 「 動 詞 連 用 形 + 動詞 」 型 の 複 合 動 詞 に は 3 つ の カ テ ゴリ ー が 共 存 し て い る こ と に な る 。

(49)語 彙 的 な 主 題 関 係 複 合 動 詞 ( V1 と V2 が 直 接

結 合 す る )|

語 彙 的 な ア ス ペ ク ト 複 合 動 詞 ( V1 と V2 が 直接 結 合 す る )

|統 語 的 複 合 動 詞 ( V2 は V1 を 主 要 部 と す る 動

詞 句 を 取 る )       3 . 語 彙 的 複 合 動 詞 「 〜 出 す 」 と 統 語 的 複合 動 詞 「 〜 出 す 」

  前 章 で 「 〜 出 す 」 は 統 語 的 複 合 動 詞 で ある と 述 べ た が 、 実 は 、 「 〜 出 す 」 に は 語 彙的 複 合 動 詞 と 統 語 的 複 合 動 詞 の 2 つ の 用 法が あ る こ と が 知 ら れ て い る 。 陳 ( 2012:51 ) で は 、 語 彙 的 複 合 動 詞 は 位 置変 化 を 表 し 、 統 語 的 複 合 動 詞 は 開 始 の ア スペ ク ト を 表 す と し て 、 次 の よ う に ま と め られ て い る 。

< 図 3 >   「 〜 出 す 」 の 意 味 と 用 法     陳( 2012:51 ) を 改 編

12

Page 13: 複合動詞sils.shoin.ac.jp/TALKS/TALKS20/ikeya/池谷:開始を... · Web viewこのように、影山(1993)では複合動詞を語彙的複合動詞と統語的複合動詞に分類し、その成果は広く知られている。しかし、影山(2012)では語彙的複合動詞をさらに2つに分類し、語彙的複合動詞が、更に「主要部関係複合動詞」と「アスペクト複合動詞」に分類できることを提案した。

陳 ( 2012:36 ) で は 統 語 的 複 合 動 詞 と 語 彙 的 な複 合 動 詞 の 構 造 を 次 の よ う に 想 定 し て い る 。

< 図 4 >   陳 ( 2012:36 ) に よ る 統 語 的 複 合 動

詞 と 語 彙 的 な 複 合 動 詞 の 構 造  そ れ 以 外 に も 「 〜 出 す 」 の 意 味 に つ い ては 森 田 ( 1989) 姫 野 ( 1999) な ど 数 多 く の 先行 研 究 が あ る 。 そ の 代 表 的 な も の を ま と めて み る 。

森 田 ( 1989:643 ) で は 「 〜 出 す 」 の 意 味 と して 、 次 の よ う に ま と め て い る 。

① 中 に あ る 事 物 を 外 側 へ 、 表 面 の 方 へ移 し 現 れ る よ う に す る 意 か ら 、 ② 新 たな 状 態 を 発 生 さ せ る 意 へ と 発 展 し そ こか ら ③ 新 た に 事 が 始 ま る 意 味 へ と 転 じて い る 。

〜出す

位置変化(語彙的複合動詞)

他動詞

財布を取り出す、家具を運び出す、猫を追い出す、水を吸い

出す…

自動詞

鳩が飛び出す、虎が逃げ出す、水が流れ出す、地がにじみ出

す…

アスペクト(統語的複合動詞)

雨が降り出す、彼女が泣き出す、弟が酒を飲み出す、パソコンが動出す…

13

Page 14: 複合動詞sils.shoin.ac.jp/TALKS/TALKS20/ikeya/池谷:開始を... · Web viewこのように、影山(1993)では複合動詞を語彙的複合動詞と統語的複合動詞に分類し、その成果は広く知られている。しかし、影山(2012)では語彙的複合動詞をさらに2つに分類し、語彙的複合動詞が、更に「主要部関係複合動詞」と「アスペクト複合動詞」に分類できることを提案した。

姫 野 (1999:96-97)「 出 す 」 の 基 本 的 意 味 で あ る 「 外 部 への 移 動 」 は 「 開 始 」 の 場 合 に も 意 味 の根 底 に お い て 引 き 継 が れ 、 連 続 し て いる 。 内 部 に 込 め ら れ て い た も の が 、 何ら か の き っ か け で ど っ と 外 部 に 出 て 、事 が 始 め る と い う 事 態 は 容 易 に 想 像 され る こ と で あ る 。 そ こ に は 人 為 的 な 力の 作 用 と 言 う よ り は 、 内 部 か ら あ ふ れた 自 然 な エ ネ ル ギ ー の 流 出 が 感 じ ら れる 。 実 際 の と こ ろ 、 「 〜 だ す 」 が 「 外部 へ の 移 動 」 な の か 、 「 動 き の 開 始 」な の か 区 別 の つ き か ね る よ う な 、 中 間的 な 性 質 を 持 つ 物 も あ る 。

  そ の 中 間 的 な 例 と し て 「 走 り 出 る 」 を あげ て い る 。 そ れ で は 実 際 の 用 例 を コ ー パ スで 確 認 し て み る 。

6. 「 よ し 、 見 と れ 」 勝 治 は 昂 然 と 肩 を そ びや か せ た 。 「 約 束 し た さ か い な 。 こ な いだ 、 お 返 し し た る っ て 」 橋 か ら は ゆ る い下 り 坂 に な っ て い る 。 勝 治 は い き な り 走り 出 し て ( =走 り 始 め て ) 、 一 瞬 の た めら い も 見 せ ず 門 の 中 に 入 っ て 行 っ た 。( 山 本 音 也 『 抱 き 桜 』 小 学 館   2005)

7. 宿 の 主 人 に 、 遠 山 家 ま で の 道 程 と 行 き 方を 教 え て も ら い 、 急 ぎ 足 で バ ス 道 路 を 進行 方 向 に 向 か っ た 。 ほ ど な く 教 え ら れ た三 差 路 へ 出 た 。 白 山 登 山 口 で は な い 方 に上 れ ば 、 待 望 の 遠 山 家 が あ る 。 胸 を 躍 らせ て 坂 道 を 上 り 始 め た 。 す る と 空 が 暗 くな り 、 雷 鳴 が し 始 め た 。 降 ら な い う ち にと 走 り 出 し た ( = 走 り 始 め た ) が 、 間 に合 わ ず 大 粒 の 雨 が 落 ち て き た 。 ( 秋 野 沙夜 子 『 熟 年 夫 婦 の 味 わ い 』 杉 並 け や き 出版 ; 星 雲 社   2005)

  こ れ ら の 例 は 「 走 り 出 し た 」 は 、 「 走 る

14

Page 15: 複合動詞sils.shoin.ac.jp/TALKS/TALKS20/ikeya/池谷:開始を... · Web viewこのように、影山(1993)では複合動詞を語彙的複合動詞と統語的複合動詞に分類し、その成果は広く知られている。しかし、影山(2012)では語彙的複合動詞をさらに2つに分類し、語彙的複合動詞が、更に「主要部関係複合動詞」と「アスペクト複合動詞」に分類できることを提案した。

こ と を 始 め た 」 と い う 開 始 の ア ス ペ ク ト とし て 解 釈 す れ ば 、 統 語 的 複 合 動 詞 で あ る し 、「 走 る 」 と い う 様 態 で 「 出 る 」 と い う 位 置変 化 を 引 き 起 こ し た と 解 釈 す れ ば 、 語 彙 的複 合 動 詞 に な る 。 姫 野 ( 1999) で は 「 走 り 出 す 」 だ け を 上 げて い た が 、 「 歩 き 出 す 」 「 動 き 出 す 」 「 溢れ 出 す 」 「 流 れ 出 す 」 の よ う に V1 が 移 動 の様 態 と し て 解 釈 で き る も の は 他 に も 見 ら れた 。  陳 ( 2012) で は 語 彙 的 複 合 動 詞 「 〜 出 す 」に つ い て 、 「 位 置 移 動 」 し か 取 り 上 げ て いな い が 、 こ の 他 に 「 顕 在 化 」 と い う 意 味 を持 っ て い る が 知 ら れ て い る 。 こ れ ら は 、 対象 を 外 部 や 表 面 に 出 現 さ せ る こ と で 、 隠 れて い た 物 が 取 り 除 か れ て 姿 を 現 す 。 見 え ない も の が 見 え る よ う に な る と い う 状 態 変 化を 引 き 起 こ す が 、 位 置 変 化 は 起 こ さ な い 。姫 野 は 「 顕 在 化 」 の 下 位 分 類 と し て 、 「 顕現 」 「 創 出 」 「 発 見 」 の 3 つ が あ る と し 、そ れ ぞ れ 次 の よ う な 例 を 挙 げ て い る 。

姫 野 (1999:93-95) か ら 抜 粋【 顕 在 化 】A) 顕 現 … 暴 き だ す 、 さ ら け だ す 、 む き だ す 、

あ ぶ り だ す 、 削 り 出 す 、 照 ら し 出 す 、 映し 出 す 、 思 い 出 す

B) 創 出 … 作 り だ す 、 考 え だ す 、 生 み だ す 、編 み だ す 、 織 り だ す 、 染 め だ す 、 描 き だす 、 ひ ね り だ す

C) 発 見 … 見 つ け だ す 、 探 し だ す 、 探 り だ す 、調 べ だ す 、 聞 き だ す 、 嗅 ぎ だ す 、 洗 い 出す 、 割 り 出 す

  本 動 詞 「 出 す 」 は 他 動 詞 で あ り 、 「 Aが Bを   出 す 」 と い う 構 造 を 取 る 。 本 動 詞 「 出す 」 は 対 象 の 位 置 移 動 を 表 し て お り 、 複 合動 詞 「 〜 出 す 」 に な っ た 時 に も 「 位 置 変化 」 と い う 意 味 を 保 持 し て い る 。 複 合 動 詞後 項 「 〜 出 す 」 は 自 動 詞 に も 他 動 詞 に も 付

15

Page 16: 複合動詞sils.shoin.ac.jp/TALKS/TALKS20/ikeya/池谷:開始を... · Web viewこのように、影山(1993)では複合動詞を語彙的複合動詞と統語的複合動詞に分類し、その成果は広く知られている。しかし、影山(2012)では語彙的複合動詞をさらに2つに分類し、語彙的複合動詞が、更に「主要部関係複合動詞」と「アスペクト複合動詞」に分類できることを提案した。

く こ と が で き る 。 「 〜 出 す 」 が 他 動 詞 に 付く と 対 象 の 位 置 変 化 に な る が 、 自 動 詞 に 付く と 主 体 の 位 置 変 化 と な る 。 ま た 、 位 置 が変 わ る と い う こ と は 、 一 種 の 状 態 変 化 で ある 。 対 象 y の 中 か ら 外 へ の 位 置 変 化 が 引 き 起こ さ れ 、 見 え な い も が 見 え る 状 態 に 変 化 した 意 味 を 持 つ よ う に あ る と 、 姫 野 で 顕 在 化と 呼 ば れ る 「 状 態 変 化 」 の 意 味 を 持 つ よ うに な る 。  こ の 「 状 態 変 化 」 は 変 化 前 の 状 態 が 含 意さ れ た 場 合 、 「 状 態 変 化 」 に な る が 、 そ れが 含 意 さ れ な い 場 合 、 新 た な 事 態 の 発 生 を表 し 、 「 開 始 の ア ス ペ ク ト 」 と な る 。

< 図 5 >   複 合 動 詞 「 〜 出 す 」 の 意 味 変 化

< 語 彙 的 複 合 動 詞 >① 中 に あ る 事 物 を 外 側 へ 、 表 面 の 方 へ 移 し現 れ る よ う に す る 「 位 置 変 化 」 の 意 味例 : 太 郎 が ボ ー ル を 外 に 蹴 り 出 し た ( 他動 詞 + 〜 出 す ) 対 象 の 移 動    太 郎 が い き な り 走 り 出 し た ( 非 能 格自 動 詞 + 〜 出 す ) 主 体 の 移 動

② 新 た な 状 態 を 発 生 さ せ る 「 状 態 変 化 ( =顕 在 化 ) 」 の 意 味例 : 山 中 教 授 が iPS細 胞 を 作 り 出 し た ( 他動 詞 + 〜 出 す )

< 統 語 的 複 合 動 詞 >③ 新 た な 事 態 が 始 ま る 意 味 「 開 始 の ア ス ペク ト 」例 : 太 郎 が 本 を 読 み 出 し た ( 他 動 詞 + 〜出 す )    赤 ち ゃ ん が よ ち よ ち と 歩 き 出 し た( 非 能 格 自 動 詞 + 〜 出 す )    桜 が 枯 れ 出 し た ( 非 体 格 自 動 詞 + 〜出 す )

   影 山 の フ レ ー ム に 照 ら し 合 わ す と 、 ①

16

Page 17: 複合動詞sils.shoin.ac.jp/TALKS/TALKS20/ikeya/池谷:開始を... · Web viewこのように、影山(1993)では複合動詞を語彙的複合動詞と統語的複合動詞に分類し、その成果は広く知られている。しかし、影山(2012)では語彙的複合動詞をさらに2つに分類し、語彙的複合動詞が、更に「主要部関係複合動詞」と「アスペクト複合動詞」に分類できることを提案した。

「 位 置 変 化 」 と ② 「 状 態 変 化 ( = 顕 在化 ) 」 が 語 彙 的 複 合 動 詞 に な り 、 ③ 「 開 始の ア ス ペ ク ト 」 が 統 語 的 複 合 動 詞 と な る 。こ れ ら の こ と を ま と め る と 、 複 合 動 詞 「 〜出 す 」 は 以 下 の よ う な 体 系 に な っ て い る 。そ し て 「 〜 始 め る 」 と 意 味 が 共 通 す る の は統 語 的 複 合 動 詞 で 開 始 の ア ス ペ ク ト を 表 す③ の 部 分 で あ る 。

< 図 6 > 複 合 動 詞 「 〜 出 す 」 の 意 味 と 複 合動 詞 「 〜 始 め る 」 の 関 係

  影 山 の フ レ ー ム に お い て は 、 語 彙 的 複 合動 詞 と 統 語 的 複 合 動 詞 は 生 成 部 門 の 違 い によ り 。 明 確 に 区 別 さ れ る も の と さ れ て い るが 、 姫 野 (1999) が 「 走 り 出 す 」 を 例 に と っ て 、指 摘 し て い る よ う に 、 こ れ ら に は 「 変 化 」を キ ー ワ ー ド と し た 連 続 性 が 感 じ ら れ る 。「 〜 出 す 」 が 文 法 化 さ れ る こ と に 伴 な っ て 、意 味 の 変 化 を 起 こ し て い く と す る な ら ば 、こ れ ら が 連 続 し て い る こ と は 自 然 な こ と のよ う に 思 わ れ る 。 た だ 、 今 回 は 「 〜 出 す 」と 「 〜 始 め る 」 の 違 い に 焦 点 を 当 て る た め 、動 詞 の 文 法 化 に つ い て は 深 く は 触 れ な い こと に す る 。

4 . 「 〜 出 す 」 と 「 〜 始 め る 」 の 違 い

  「 〜 出 す 」 と 「 〜 始 め る 」 は 統 語 的 複 合動 詞 で 、 両 方 と も 開 始 、 あ る い は 始 動 の ア

〜出す

語彙的複合動詞

① 位置変化 (=移動)飛び出す、運び出す、這い出す、歩き出す、

走り出す、

② 状態変化 (顕在化)

暴き出す、照らし出す、作り出す、考え出す、見つけ出す、探し出す、調べ出す、聞き

出す

統語的複合動詞③ 開始のアスペクト

=〜始める

雨が降り出す、彼女が泣き出す、弟が酒を飲み出す、パソコンが

動出す…

17

Page 18: 複合動詞sils.shoin.ac.jp/TALKS/TALKS20/ikeya/池谷:開始を... · Web viewこのように、影山(1993)では複合動詞を語彙的複合動詞と統語的複合動詞に分類し、その成果は広く知られている。しかし、影山(2012)では語彙的複合動詞をさらに2つに分類し、語彙的複合動詞が、更に「主要部関係複合動詞」と「アスペクト複合動詞」に分類できることを提案した。

ス ペ ク ト を 表 す と さ れ て い る が 、 こ の 両 者の 違 い は ど こ に あ る の だ ろ う か 。  ま ず 、 先 に 挙 げ た 名 柄 編 (1987:73-74) 『 外 国人 た め の 日 本   例 文 ・ 問 題 シ リ ー ズ ④   複合 動 詞 』 で は 「 〜 出 す 」 と 「 〜 始 め る 」 の違 い に つ い て 以 下 の よ う に 述 べ ら れ て い る 。

補 助 動 詞 と し て 、 「 〜 は じ め る 」 は「 あ る 時 を 境 に 、 は っ き り と そ の 状 態に な り 、 そ の 状 態 や 行 為 が 続 く 」 こ とを 、 「 〜 だ す 」 は 、 「 時 間 的 に あ る 動作 、 状 態 が 開 始 、 発 生 す る 」 こ と を 表す 。

  ま た 、 こ の 2 つ の 特 徴 と し て お 互 い に 言い 換 え が き く 場 合 が 多 い と し て い る 。 そ の意 味 の 違 い と し て 、 「 は じ め る 」 は 「 始 →続 → 終 」 と い う 1 つ の 過 程 の 第 一 段 階 で ある こ と を 、 「 だ す 」 は 突 然 、 予 期 し な い 新事 態 が 発 生 す る と い う こ と を 表 す と し て いる 。 姫 野 ( 1999:98-101 ) で は 「 〜 出 す 」 と「 〜 始 め る 」 の 違 い と し て 、 次 の 7つ の 点 をあ げ て い る 。

① 感 情 を 表 す 語 は 「 〜 出 す 」 の 方 が 適 し てい る

② 不 測 性 を 強 調 す る 場 合 は 「 〜 出 す 」 の 方が 適 し て い る

③ 音 の 自 然 発 生 を 表 す 場 合 は 「 〜 出 す 」 の方 が 適 し て い る

④ 「 今 に も 〜 し そ う だ 」 と い う 現 実 化 直 前の 様 相 を 表 す 表 現 で 、 自 然 現 象 の 場 合 は「 〜 出 す 」 の 方 が 適 し て い る

⑤ 表 現 上 の ニ ュ ア ン ス と し て 、 即 興 性 や エネ ル ギ ー の 爆 発 等 が 強 調 さ れ る 場 合 は「 〜 出 す 」 の 方 が 適 し て い る

⑥ 「 〜 出 す 」 は 意 志 表 現 に そ ぐ わ な い⑦ 形 態 上 の 制 限 か ら 前 項 に 「 出 す 、 始 め

る 」 が 来 る 場 合 は 、 同 音 反 復 を さ け る 。

18

Page 19: 複合動詞sils.shoin.ac.jp/TALKS/TALKS20/ikeya/池谷:開始を... · Web viewこのように、影山(1993)では複合動詞を語彙的複合動詞と統語的複合動詞に分類し、その成果は広く知られている。しかし、影山(2012)では語彙的複合動詞をさらに2つに分類し、語彙的複合動詞が、更に「主要部関係複合動詞」と「アスペクト複合動詞」に分類できることを提案した。

「 〜 始 め る 」 は 広 く 様 々 な 動 詞 に つ く こ とが で き る た め 、 ① 〜 ⑥ は 「 〜 出 す 」 を 使 うの に 適 し た 条 件 に な っ て い る 。 こ こ で は 7つ独 立 し た 違 い が 立 て ら れ て い る が 、 相 互 に関 連 し て い る も の も あ る た め 、 こ れ ら を「 〜 出 す 」 と 「 〜 始 め る 」 の 違 い を 明 ら かに す る と い う 点 か ら 、 形 態 上 の 問 題 で あ る⑦ を 抜 き 、 以 下 の 3 つ の 観 点 に ま と め て 議論 し て い く 。

( 1 ) 感 情 を 表 す 語 は 「 〜 出 す 」 の 方 が 適し て い る → ①( 2 ) 「 〜 出 す 」 は 「 突 然 性 」 「 不 規 則

性 」 「 即 興 性 」 を 含 意 し や す く 、 音 や 自然 現 象 を 表 す の に 適 し て い る 。 → ② 、 ③ 、④ 、 ⑤

( 3 ) 「 〜 出 す 」 は 意 志 表 現 に そ ぐ わ な い→ ⑥

  そ れ で は 、 先 行 研 究 の 中 で 指 摘 さ れ て いる 「 〜 出 す 」 と 「 〜 始 め る 」 の 違 い を 見 てい き な が ら 、 順 に 「 現 代 日 本 語 書 き 言 葉 均衡 コ ー パ ス ( 通 常 版 ) 中 納 言   BCCWJ-NT 」 で検 証 し て い く 。

( 1 )   感 情 を 表 す 語 は 「 〜 出 す 」 の 方 が適 し て い る   姫 野 ( 1999:97 ) で は 、 自 然 現 象 の う ち「 笑 う 、 泣 く 」 に は 「 〜 出 す 」 が つ く が「 〜 始 め る 」 は つ か な い こ と 述 べ て い る 。そ れ と 同 じ よ う な 記 述 と し て 、 名 柄 編( 1987:74 ) で は 、 過 程 の は っ き り し な い 感 情を 表 す 動 詞 の 「 笑 う 」 「 あ わ て る 」 「 怒る 」 な ど に は 「 始 め る 」 は つ き に く い こ とを 述 べ て い る 。 そ こ で 、 そ れ ら が 本 当 に 正し い の か 、 コ ー パ ス 中 納 言 を 使 っ て 実 例 を確 認 し て み る 。  検 索 方 法 と し て は 「 笑 い 出 す 」 な ら ば「 ワ ラ イ ダ ス 」 と い う 「 音 素 読 み 」 で 検 索を か け 、 「 笑 い 出 す 」 「 笑 い だ す 」 「 わ ら

19

Page 20: 複合動詞sils.shoin.ac.jp/TALKS/TALKS20/ikeya/池谷:開始を... · Web viewこのように、影山(1993)では複合動詞を語彙的複合動詞と統語的複合動詞に分類し、その成果は広く知られている。しかし、影山(2012)では語彙的複合動詞をさらに2つに分類し、語彙的複合動詞が、更に「主要部関係複合動詞」と「アスペクト複合動詞」に分類できることを提案した。

い 出 す 」 「 わ ら い だ す 」 の す べ て の 表 記 を取 り 扱 う 。 同 時 に 、 「 笑 い 出 し た 」 「 笑 い出 し て い る 」 「 笑 い 出 し て い る 」 の よ う に 、そ の 動 詞 が 取 り 得 る す べ て の 活 用 形 も 検 索対 象 に 含 む 。  先 行 研 究 で 感 情 を 表 す 動 詞 に つ き や す いと 指 摘 さ れ て い る た め 、 「 笑 う 」 「 あ わ てる 」 「 怒 る 」 に 加 え て 、 感 情 を 表 し て い ると 思 わ れ る 「 喜 ぶ 」 「 悲 し む 」 「 楽 し む 」「 苦 し む 」 を コ ー パ ス で 調 べ て み る と 、 次の よ う な 結 果 と な っ た 。 こ れ ら は コ ー パ スに 登 録 さ れ た 1 億 430 万 語 か ら 抽 出 さ れ たデ ー タ で あ る 。

< 図 7 > 感 情 を 表 す 動 詞 と 「 〜 出 す 」 と「 〜 始 め る 」

〜 出 す 〜 始 め る

笑 う 405 例 29 例あ わ て る 13 例 6例怒 る 176 例 67 例喜 ぶ 1例 0例悲 し む 0例 0例楽 し む 2例 5例苦 し む 15 例 12 例痛 が る 0例 0例あ き れ る 0例 0例う ろ た え る 1例 0例

  こ れ を み る と 、 感 情 を 表 す 動 詞 に つ き やす い と さ れ な が ら も 、 「 笑 い 出 す 」 「 怒 り出 す 」 以 外 の 動 詞 は 「 〜 出 す 」 で あ っ て も「 〜 始 め る 」 で あ っ て も 、 全 体 的 に 用 例 数が 少 な い こ と が わ か る 。 そ れ で は 、 「 〜 始め る 」 は 0例 に も か か わ ら ず 、 「 〜 出 す 」 が1 例 だ け 観 察 さ れ た 例 に つ い て 確 認 す る 。  ま ず 、 「 喜 ぶ 」 に つ い た 「 喜 び 出 す 」 1例 、 「 喜 び 始 め る 」 0例 で あ っ た 。 そ の 1 例を あ げ て お く 。

20

Page 21: 複合動詞sils.shoin.ac.jp/TALKS/TALKS20/ikeya/池谷:開始を... · Web viewこのように、影山(1993)では複合動詞を語彙的複合動詞と統語的複合動詞に分類し、その成果は広く知られている。しかし、影山(2012)では語彙的複合動詞をさらに2つに分類し、語彙的複合動詞が、更に「主要部関係複合動詞」と「アスペクト複合動詞」に分類できることを提案した。

8. 「 借 金 取 り は 余 都 老 爺 が 癇 癪 を 起 こ さ れた の で 、 怖 が っ て 逃 げ て し ま い ま し たよ 」 と 余 荘 児 は 顔 色 ひ と つ 変 え ず に 言 う 。こ れ は ま さ に “ 含 み の あ る 皮 肉 ” と い う もの で 、 余 誠 格 は 怒 る ど こ ろ か 喜 び 出 し 、余 荘 児 の 顔 を ひ と つ ま み し て 出 て 行 こ うと し た 。 ( 高 陽 ( 著 )/永 沢 道 雄 ( 訳 )/鈴 木 隆康 ( 訳 ) 『 西 太 后 』 朝 日 ソ ノ ラ マ   1995)

  次 に 、 「 う ろ た え る 」 に つ い た 「 う ろ たえ 出 す 」 1 例 、 「 う ろ た え 始 め る 」 0 例 であ っ た 。 そ の 1 例 を あ げ て お く 。

9. キ キ ッ 、 キ キ ッ と み じ か く 鳴 き か わ し 、サ ル ど も は あ き ら か に み ん な の ほ う へ 近づ い て く る よ う す だ 。 「 あ い つ ら も 、 ここ で 雨 や ど り す る つ も り か な 」 光 彦 がい っ た 。 「 そ う だ と し た ら 、 た い へ ん だわ 」 す み 子 が と た ん に う ろ た え だ し 、「 み ん な い そ い で 、 そ こ の 押 し 入 れ に かく れ よ う 。 は や く 、 は や く 」 と せ き た てた 。 ( 吉 本 直 志 郎 『 き ょ う も 朝 か ら 夏 やす み 』 佼 成 出 版 社   1990)

  こ こ で 確 認 し て お き た い の は 、 コ ー パ スに 存 在 し な い か ら 言 え な い と 主 張 す る わ けで は な い こ と で あ る 。 た だ 、 用 例 数 が 少 ない と い う こ と は 、 自 然 な 状 況 下 で 、 そ れ を使 う 状 況 が あ ま り な い こ と を 表 し て い る 。こ こ か ら 分 か る こ と は 、 従 来 の 研 究 で 指 摘さ れ て い た こ と と は 違 っ て 、 感 情 を 表 す 動詞 な ら ば 、 何 で も 「 〜 出 す 」 が つ く わ け では な い と い う こ と で あ る 。 反 対 に 、 感 情 を表 す 動 詞 は ど ち ら か と い え ば 、 「 〜 出 す 」も 「 〜 始 め る 」 も 付 き に く い こ と が わ か る 。感 情 を 表 す 動 詞 が 、 過 程 性 [ + process ] を 取り に く い と 考 え る の な ら ば 、 こ れ は 寧 ろ 、自 然 な 結 果 で あ る 。  そ こ で 、 改 め て 、 用 例 数 が 多 い 「 笑 う 」「 怒 る 」 を 見 る と 、 感 情 を 表 す と い う よ り 、

21

Page 22: 複合動詞sils.shoin.ac.jp/TALKS/TALKS20/ikeya/池谷:開始を... · Web viewこのように、影山(1993)では複合動詞を語彙的複合動詞と統語的複合動詞に分類し、その成果は広く知られている。しかし、影山(2012)では語彙的複合動詞をさらに2つに分類し、語彙的複合動詞が、更に「主要部関係複合動詞」と「アスペクト複合動詞」に分類できることを提案した。

感 情 に 付 随 し て 起 こ り や す い 動 作 で あ っ て 、形 容 詞 の よ う に 純 粋 な 感 情 を 表 し て い る わけ で は な い 。 「 悲 し い 」 と 感 情 を 持 っ て いる と 、 「 泣 く 」 事 態 が お こ り や す い が 、「 泣 く 」 そ の も の が 感 情 を 表 し て い る わ けで は な い の で あ る 。 そ れ で も 、 用 例 数 か ら「 笑 う 」 に は 「 〜 始 め る 」 よ り 「 〜 出 す 」が つ き や す い の も 事 実 で あ る 。 そ こ で 、「 〜 出 す 」 と 「 〜 始 め る 」 の 違 い を 確 認 する た め に 、 「 笑 い 出 す 」 と 「 笑 い 始 め る 」を 検 索 し て み る と 、 同 じ コ ン テ ク ス ト で 両方 の 形 式 が 表 れ て い る 文 が 見 ら れ た 。

10. 彼 女 は 突 然 堰 を き っ た よ う に 笑 い だ し た 。よ ほ ど お か し か っ た の だ ろ う 、 し だ い に胸 を 波 打 た せ て 笑 い 始 め た 。 ( 川 上 健 一『 翼 は い つ ま で も 』 集 英 社   2001)

11. お っ と 思 い 声 を か け て み た が 、 す で に狂 っ て い た 。 何 を 言 っ て も 通 じ な い 。 突然 、 笑 い 出 す 。 俯 い て 、 辺 り を き ょ ろき ょ ろ と 見 回 す 。 ま た 、 笑 い 始 め る 。( 尾 川 正 二 『 帝 国 陸 軍 の 教 育 と 機構 』 2003)

  こ れ を み る と 「 笑 い 出 す 」 に は ど ち ら も副 詞 「 突 然 」 が 共 起 し て い る 。 「 〜 出 す 」が 急 な 予 期 し な い 新 事 態 の 発 生 を 含 意 す る「 突 然 性 」 を 持 っ て い る こ と は 、 多 く の 先行 研 究 で 指 摘 さ れ て い る 。

( 2 ) 「 〜 出 す 」 は 「 突 然 性 」 「 不 規 則性 」 「 即 興 性 」 を 含 意 し や す く 、 音 や 自然 現 象 を 表 す の に 適 し て い る 。

  そ れ で は 、 「 突 然 性 」 を も っ た も の は 必ず 「 〜 出 す 」 が 選 択 さ れ る の だ ろ う か 。 確か に 「 〜 出 す 」 は 「 突 然 」 「 急 に 」 「 急 激な 」 と い っ た 副 詞 と 相 性 が い い の は デ ー タと し て は 事 実 で あ る 。 し か し 、 そ の 「 突 然

22

Page 23: 複合動詞sils.shoin.ac.jp/TALKS/TALKS20/ikeya/池谷:開始を... · Web viewこのように、影山(1993)では複合動詞を語彙的複合動詞と統語的複合動詞に分類し、その成果は広く知られている。しかし、影山(2012)では語彙的複合動詞をさらに2つに分類し、語彙的複合動詞が、更に「主要部関係複合動詞」と「アスペクト複合動詞」に分類できることを提案した。

性 」 は 「 〜 出 す 」 だ け の 専 売 特 許 的 な 特 別な 意 味 要 素 で な く 、 「 〜 始 め る 」 に も 「 急速 に 」 「 突 然 」 と い っ た 、 「 突 然 性 」 を 表す 副 詞 を つ け る こ と が で き る か ら で あ る 。

12. 千 九 百 八 十 六 年 以 降 、 原 油 価 格 は 一 挙 に十 ド ル も の 暴 落 と な り 、 一 バ ー レ ル = 十六 ド ル 程 度 ま で 低 下 し た 。 こ の い わ ゆ る“ 逆 石 油 シ ョ ッ ク ” に よ り テ キ サ ス 州 を はじ め と す る 南 西 部 に お け る 石 油 産 業 は 激し い 打 撃 を 受 け た 。 そ の た め 石 油 ・ ガ ス掘 削 業 雇 用 者 数 は 千 九 百 八 十 二 年 を ピ ーク に 急 速 に 減 少 し は じ め た 。 ( 宮 崎 義 一『 複 合 不 況 』 中 央 公 論 社   1992)

13. し ば ら く 二 人 は 黙 っ た ま ま 、 目 の 前 の 建物 の 壁 を 見 て い た 。 そ れ か ら 突 然 、 イ スマ イ ル は 自 分 の 側 の 事 情 を 早 口 で 喋 り はじ め た 。 ( 池 澤 夏 樹 『 バ ビ ロ ン に 行 き て歌 え 』 新 潮 社   1990)

  ま た 、 逆 に 「 〜 出 す 」 が 表 す 事 態 が ゆ っく り と 実 現 さ れ た こ と を 表 す 副 詞 と 共 起 する 例 も 見 ら れ る 。

14. と き た ま 見 え る の は ニ ッ パ ヤ シ の 小 屋 か洋 館 だ け で あ る 。 陽 は な い が 、 す で に 風の な か に 熱 帯 の な ま 温 か さ が 滲 ん で い る 。煙 草 を 喫 い 終 る と 、 英 世 は ゆ っ く り と 歩き 出 す 。 ( 渡 辺 淳 一 『 遠 き 落 日 』 角 川 書店   1979)

15. 結 婚 式 は 、 真 昼 に 行 わ れ た 。 新 郎 新 婦 の 、神 々 へ の 宣 誓 が 済 ん だ こ ろ 、 黒 雲 が 空 を覆 い 、 ぽ つ り ぽ つ り 雨 が 降 り だ し 、 や がて 車 軸 を 流 す よ う な 大 雨 と な っ た 。 ( 宮地 裕 ほ か 『 国 語 2 』 光 村 図 書 出 版 株 式 会社   2005)

  こ こ で 、 冒 頭 の 名 柄 編 ( 1987) 『 外 国 人 た

23

Page 24: 複合動詞sils.shoin.ac.jp/TALKS/TALKS20/ikeya/池谷:開始を... · Web viewこのように、影山(1993)では複合動詞を語彙的複合動詞と統語的複合動詞に分類し、その成果は広く知られている。しかし、影山(2012)では語彙的複合動詞をさらに2つに分類し、語彙的複合動詞が、更に「主要部関係複合動詞」と「アスペクト複合動詞」に分類できることを提案した。

め の 日 本   例 文 ・ 問 題 シ リ ー ズ ④   複 合 動詞 』 の 問 題 を 振 り 返 っ て み る と 、 「 〜 出す 」 は 突 然 、 予 期 し な い 新 事 態 が 発 生 す ると し な が ら も 、 そ の 練 習 問 題 と し て 作 ら れた 問 題 ⑪ は 「 突 然 」 が つ い て い る の に 、 答え で は 「 揺 れ 出 す 」 で は な く て 「 揺 れ 始 める 」 が 正 し い と さ れ て い る 。

16. 突 然 家 が 揺 れ 始 め て び っ く り し た 。 自 身は 初 め て の 経 験 だ っ た か ら 、 す ご く 怖か っ た 。

  つ ま り 、 「 突 然 性 」 を 含 意 し や す い か どう か は 、 あ く ま で も 傾 向 の 話 で あ っ て 、 どち ら か が 非 文 に な る よ う な 絶 対 的 な ル ー ルで は な い の で あ る 。 こ の よ う な 事 情 の た め 、「 〜 出 す 」 と 「 〜 始 め る 」 は 開 始 の ア ス ペク ト を 表 す も の と さ れ な が ら も 、 そ の 使 い分 け に 関 し て 、 未 だ 明 確 な ル ー ル を 見 い だせ な い ま ま に な っ て い る 。  陳 ( 2012:63 ) で は 「 〜 出 す 」 の 突 然 性 を「 SUDDEN START 」 と 設 定 し 、 「 〜 出 す 」 のLCS と し て 以 下 の よ う な も の を 想 定 し た 。

ア ス ペ ク ト の 「 〜 出 す 」 :      [BECOME[[LCS1]BE AT-SUDDEN START]]

  こ の よ う に ア ス ペ ク ト の 「 〜 出 す 」 が「 SUDDEN START 」 と い う 、 LCS を 持 っ て い る なら ば 、 14 や 15 の よ う な 例 は 非 文 に な る は ずが 、 実 際 は そ う は な ら な い 。 そ こ で 、 先 行研 究 で 述 べ ら れ て い る よ う に 「 〜 出 す 」 が「 突 然 性 」 「 不 規 則 性 」 「 即 興 性 」 を 含 意し や す く 、 音 や 自 然 現 象 を 表 す の に 適 し てい る か を 確 認 す る た め 、 音 や 自 然 現 象 を 表す 開 始 の ア ス ペ ク ト 「 〜 出 す 」 の 例 を あ げて み る 。 そ し て 、 そ れ を 「 〜 始 め る 」 と 比較 し て み る 。 対 象 と す る の は 「 電 話 が 鳴る 」 「 風 が 吹 く 」 「 ( 植 物 ) が 枯 れ る 」 であ る 。

24

Page 25: 複合動詞sils.shoin.ac.jp/TALKS/TALKS20/ikeya/池谷:開始を... · Web viewこのように、影山(1993)では複合動詞を語彙的複合動詞と統語的複合動詞に分類し、その成果は広く知られている。しかし、影山(2012)では語彙的複合動詞をさらに2つに分類し、語彙的複合動詞が、更に「主要部関係複合動詞」と「アスペクト複合動詞」に分類できることを提案した。

< 電 話 が 鳴 る >  「 電 話 が 鳴 り 出 す 」 14 件「 電 話 が 鳴 り 始 め る 」 7件電 話 が 鳴 る に 関 し て は 「 電 話 が 鳴 り 出 す 」「 電 話 が 鳴 り 始 め る 」 の 両 方 の 形 式 が あ った が 、 「 鳴 り 出 す 」 の 方 が 優 勢 で あ る 。

17. さ て 、 の ん び り と 石 ケ ン を 使 っ て 、 泡 に埋 ま ろ う か 、 と お 湯 を た め て い る と 、 電話 が 鳴 り 出 し た 。 ベ ッ ド の 方 に 電 話 が ある の だ が 、 浴 室 に も 受 信 専 用 の 電 話 が ある 。 ( 赤 川 次 郎 『 愛 情 物 語 』 角 川 書 店  1983)

18. 電 話 が 突 然 鳴 り 出 す と 、 河 合 勝 三 は ギク ッ と し て 、 一 瞬 、 心 臓 の 縮 む よ う な 思い を し た 。 電 話 と い う の は 、 た い て い 突然 鳴 り 出 す も の と 相 場 が 決 っ て い る が 、河 合 は そ の 都 度 神 経 を 針 で 突 つ か れ る よう な 気 が し て 「 電 話 の ベ ル は も っ と 柔 らか い 、 穏 や か な 音 に す る べ き だ 」 と 、 NT T に あ て て 投 書 し て や ろ う と 決 心 す るの だ っ た 。 ( 赤 川 次 郎 『 親 し き 仲 に も 殺意 あ り 』 集 英 社   1990)

19. 講 義 の 最 中 に 、 学 生 の か ば ん の 中 の 携 帯電 話 が く ぐ も っ た 音 で 鳴 り 始 め た 。 私 は一 瞬 に し て 気 分 を そ が れ 、 次 の 言 葉 を 忘れ て し ま っ た 。 ( 波 多 江 伸 子 『 ネ コ 型 のす き ま 』 木 星 舎   2001)

< 風 が 吹 く >「 風 が 吹 き 出 す 」 15 件「 風 が 吹 き 始 め る 」 26 件「 風 が 吹 く 」 に 関 し て は 、 「 吹 き 出 す 」 と「 風 が 吹 き 始 め る 」 の 両 方 の 形 式 が あ っ たが 、 「 吹 き 始 め る 」 の 方 が 優 勢 だ っ た 。 また 、 同 時 に 21 の よ う に 「 吹 き 始 め る 」 に「 突 然 性 」 を 表 す 副 詞 が つ く も の も 見 ら れ

25

Page 26: 複合動詞sils.shoin.ac.jp/TALKS/TALKS20/ikeya/池谷:開始を... · Web viewこのように、影山(1993)では複合動詞を語彙的複合動詞と統語的複合動詞に分類し、その成果は広く知られている。しかし、影山(2012)では語彙的複合動詞をさらに2つに分類し、語彙的複合動詞が、更に「主要部関係複合動詞」と「アスペクト複合動詞」に分類できることを提案した。

た 。

20. 夕 食 の 仕 度 を 始 め た が 、 石 油 コ ン ロ が また 壊 れ た 。 残 り の 一 台 を 使 っ て 何 と か 食事 は と れ た が 、 や は り コ ン ロ を う ま く あや つ る コ ッ ク が ぜ ひ と も 必 要 だ 。 寝 袋 にく る ま っ て い る と 、 強 い 風 が 吹 き 出 し た 。日 の あ る う ち は 川 の ほ う か ら 吹 い て い た風 が 、 夜 に な る と 逆 に 山 か ら 吹 き お ろ すよ う に な る 。 ( 佐 藤 健 『 マ ン ダ ラ 探 険 』中 央 公 論   1988)

21. 目 指 す ミ ー ラ ン の 遺 跡 に 着 い た の で あ る 。私 た ち が 車 を 降 り る と 同 時 で あ っ た 。 それ ま で ほ と ん ど な か っ た 風 が 、 突 如 吹 きは じ め た の で あ る 。 猛 烈 な 風 で あ っ た 。( 作 者 不 明 『 シ ル ク ロ ー ド 糸 綢 之 路 』 日本 放 送 出 版 協 会   1980)

  言 う ま で も な い こ と だ が 、 コ ー パ ス で「 風 が 吹 き 出 す 」 で 検 索 を す る と 、 22 の よう に 位 置 変 化 を 伴 う 例 も 見 ら れ る が 、 そ のよ う な 例 は 排 除 し 、 純 粋 に 開 始 の ア ス ペ クト を 表 す も の で 比 較 し て い る 。

22. 溶 岩 ト ン ネ ル で 知 ら れ る の は 、 九 州 五 島の 福 江 島 、 八 丈 島 西 山 な ど 、 ご く 一 部 の 、限 ら れ た 地 域 に す ぎ な い 。 風 穴 の 多 く は 、冷 風 を 吹 き 出 し て い る が 、 こ れ は 、 地 下で 冷 や さ れ た 空 気 が 重 く な っ て 、 下 降 気流 が 生 ず る た め と 言 わ れ る 。 ( 富 士 自 然動 物 園 協 会 編 『 富 士 登 山 ハ ン ド ブ ッ ク 』自 由 国 民 社   2001)

< ( 植 物 ) が 枯 れ る >「 枯 れ 出 す 」 5件「 枯 れ 始 め る 」 9件「 ( 植 物 ) が 枯 れ る 」 に 関 し て は 、 「 枯 れ出 す 」 「 枯 れ 始 め る 」 の 両 方 の 形 式 が あ った が 、 「 枯 れ 始 め る 」 の 方 が 優 勢 で あ る 。

26

Page 27: 複合動詞sils.shoin.ac.jp/TALKS/TALKS20/ikeya/池谷:開始を... · Web viewこのように、影山(1993)では複合動詞を語彙的複合動詞と統語的複合動詞に分類し、その成果は広く知られている。しかし、影山(2012)では語彙的複合動詞をさらに2つに分類し、語彙的複合動詞が、更に「主要部関係複合動詞」と「アスペクト複合動詞」に分類できることを提案した。

「 植 物 が 枯 れ る 」 は 非 対 格 自 動 詞 で あ り 、ま さ に 自 然 現 象 を 表 す も の で あ る の で 、「 枯 れ 出 す 」 の 方 が 多 く 現 れ る と 予 測 し たの で あ る が 、 実 際 に は 「 枯 れ 始 め る 」 の 方が 多 く 見 ら れ た 。

23. 七 月 初 め の 梅 雨 の 頃 で し た 。 そ ろ そ ろ 花の 咲 き 始 め た 頃 で し た 。 そ し た ら 、 葉 が急 に 枯 れ 出 し て 、 花 も 葉 も 半 分 は 落 ち てし ま っ た ん で す 。 七 月 の 初 め に 、 葉 が 枯れ 落 ち る な ん て 、 そ ん な こ と っ て あ り ませ ん で し ょ う 。 ( 山 本 武 臣 『 あ じ さ い にな っ た 男 』 コ ス モ ス ヒ ル ズ   1997)

24. 植 物 は 鉢 内 の 温 度 が 三 十 ℃ を 超 え る と 、大 き な ダ メ ー ジ を 受 け ま す 。 植 物 の 葉 が黄 色 っ ぽ く 変 化 し た り 、 葉 先 が 枯 れ 始 めた り し て い る の を 見 か け た こ と は あ り ませ ん か 。 ( 星 野   洋 一 郎 ( 著 )/木 村   和 史( 著 )/矢 澤   秀 成 ( 著 )/草 場   貞 門 ( 著 ) 『 趣味 の 園 芸 ( N H K テ レ ビ 放 送 テ キ スト ) 』 日 本 放 送 出 版 協 会   2005)

  そ れ で は 、 な ぜ 、 「 〜 出 す 」 は 「 突 然性 」 「 不 規 則 性 」 「 即 興 性 」 と い う ニ ュ アン ス を 含 意 し や す い の だ ろ う か 。 ま た 、 音や 自 然 現 象 を 表 す の に 適 し て い る は 何 故 だろ う か 。 「 〜 出 す 」 と 「 〜 始 め る 」 の 違 いは で あ る 「 ( 1 ) 感 情 を 表 す 語 は 「 〜 出す 」 の 方 が 適 し て い る 」 や 「 ( 2 ) 「 〜 出す 」 は 「 突 然 性 」 「 不 規 則 性 」 「 即 興 性 」を 含 意 し や す く 、 音 や 自 然 現 象 を 表 す の に適 し て い る 」 と い う の は 傾 向 や 程 度 問 題 であ っ て 、 ど ち ら か が 非 文 に な る よ う な 絶 対的 な 不 適 切 さ を も っ て い る わ け で は な い 。も っ と 明 確 な 文 法 性 判 断 の 差 を 持 っ た も のに つ い て 、 次 の ( 3 ) で 述 べ る 。

( 3 ) 「 〜 出 す 」 は 意 志 表 現 に そ ぐ わ な い

27

Page 28: 複合動詞sils.shoin.ac.jp/TALKS/TALKS20/ikeya/池谷:開始を... · Web viewこのように、影山(1993)では複合動詞を語彙的複合動詞と統語的複合動詞に分類し、その成果は広く知られている。しかし、影山(2012)では語彙的複合動詞をさらに2つに分類し、語彙的複合動詞が、更に「主要部関係複合動詞」と「アスペクト複合動詞」に分類できることを提案した。

  名 柄 編 ( 1983) で な さ れ た 重 要 な 指 摘 と して は 、 意 志 動 詞 に つ い た 場 合 で も 「 〜 出す 」 が 付 加 さ れ る と そ の 動 作 が 無 意 識 に なさ れ た 事 と い う 意 味 合 い を お び る こ と が ある 。 そ の た め 、 相 手 に 動 作 を 依 頼 す る 形 式「 〜 て く だ さ い 」 が つ く と 、 25 は 言 え る が26 は 言 え な い と し て い る 。

25.   食 べ 始 め て く だ さ い 。26. * 食 べ 出 し て く だ さ い 。

  ま た 、 今 井 (1993) で も 、 「 〜 出 す 」 が 命 令形 に な る と や や 不 自 然 に な る こ と を 指 摘 して い る 。 基 本 的 に 「 〜 出 す 」 は 命 令 形 と は相 性 が 悪 い の で あ る が 、 そ の 中 で も 動 詞 によ っ て 差 が あ る こ と を 池 谷 (2002) で は 指 摘 した 。

27. * 早 く 食 べ 出 せ28.   ピ ス ト ル が な っ た ら 、 走 り 出 せ29.   合 図 が あ っ た ら 、 歌 い 出 せ

  池 谷 (2OO2) で は 、 そ れ を 更 に 検 証 し 、 「 〜出 す 」 と 共 起 す る V1 動 詞 が 限 界 性 [ +delimited ] を 持 つ 場 合 、 命 令 に な り に く い こと を 証 明 し た 。 「 〜 出 す 」 が 命 令 形 に な りに く い な か 、 「 限 界 の な い 非 能 格 自 動 詞 」の 場 合 、 命 令 形 を 許 容 す る も の が 多 い 。

< 限 界 の な い 非 能 格 自 動 詞 >

30. (a) 歩 き 出 せ

(b) 歩 き 始 め ろ

31. (a) 走 り 出 せ

(b) 走 り 始 め ろ

32. (a) 踊 り 出 せ  

28

Page 29: 複合動詞sils.shoin.ac.jp/TALKS/TALKS20/ikeya/池谷:開始を... · Web viewこのように、影山(1993)では複合動詞を語彙的複合動詞と統語的複合動詞に分類し、その成果は広く知られている。しかし、影山(2012)では語彙的複合動詞をさらに2つに分類し、語彙的複合動詞が、更に「主要部関係複合動詞」と「アスペクト複合動詞」に分類できることを提案した。

(b) 踊 り 始 め ろ  

33. (a) 動 き 出 せ

(b)動 き 始 め ろ

  一 方 、 同 じ 非 能 格 自 動 詞 で も 、 限 界 性 があ る も の は 、 例 え 人 間 が 主 語 で あ っ て も 命令 形 に で き な い 。 し か し 、 こ れ ら は 「 〜 はじ め る 」 な ら ば 、 動 作 主 に 働 き か け て 命 令形 に す る こ と が で き る 。

< 限 界 の あ る 非 能 格 自 動 詞 >34.(a) * 早 く 座 り 出 せ (b)   早 く 座 り 始 め ろ

< 非 対 格 自 動 詞 >35.(a) * 早 く 痩 せ 出 せ (b)   早 く 痩 せ 始 め ろ

  他 動 詞 文 は 動 作 主 を も つ も の が ほ と ん どで あ る が 、 そ れ で も 命 令 形 と は そ ぐ わ な いも の が 多 い 。 特 に 限 界 性 [ + delimited ] を 含意 す れ ば す る ほ ど 、 許 容 度 が 下 が る 。

[ + delimited ] 水 を 流 す >本 を 読 む >論 文 を 書く >ケ ー キ を 作 る [ + delimited ]

< 他 動 詞 >36.(a)   ? す ぐ に 水 を 流 し 出 せ   (b)     す ぐ に 水 を 流 し 始 め ろ  

37.(a) * す ぐ に 本 を 読 み 出 せ (b)   す ぐ に 本 を 読 み は じ め ろ  

38.(a) * す ぐ に 論 文 を 書 き 出 せ (b)   す ぐ に 論 文 を 書 き は じ め ろ

39.(a) * す ぐ に ケ ー キ を 作 り 出 せ (b)     す ぐ に ケ ー キ を 作 り は じ め ろ

29

Page 30: 複合動詞sils.shoin.ac.jp/TALKS/TALKS20/ikeya/池谷:開始を... · Web viewこのように、影山(1993)では複合動詞を語彙的複合動詞と統語的複合動詞に分類し、その成果は広く知られている。しかし、影山(2012)では語彙的複合動詞をさらに2つに分類し、語彙的複合動詞が、更に「主要部関係複合動詞」と「アスペクト複合動詞」に分類できることを提案した。

[ + delimited ]

  こ の よ う な 事 象 か ら 、 池 谷 ( 2002:195 ) では 「 〜 出 す 」 と 「 〜 始 め る 」 の 違 い を 次 のよ う に 定 義 し て い る 。 そ の 表 を も う 一 度 まと め 直 す 。

< 図 8 > 「 〜 出 す 」 と 「 〜 始 め る 」 の 違 い

                  開 始         継 続  終 了      〜 始 め る

                  〜 出 す

< 図 9 > 「 〜 出 す 」 と 「 〜 始 め る 」 の 違 い〜 出 す   例   雨 が 降

り 出 す〜 始 め る   例   雨 が

降 り 始 め る 運動が開始した瞬間の局面を表す

「雨が降っていなない」状態から

「雨が降る」状態への変化・生起、

つまり、それまで存在しなかった新

たな状態が起こったことを表す

その運動が継続して行われるかは含

意しない

「始- 続- 終」という一連の運動の開始を表す

運動全体から計算した最初の部分を

表す

その運動は継続して行われることが

期待されている

  つ ま り 「 〜 出 す 」 は 開 始 し た 瞬 間 の 局 面の み を 表 す た め 、 動 詞 の 終 わ り が 視 界 に入 っ て い る 限 界 性 [ + delimited ] を 持 っ た 動詞 に つ い た 場 合 、 意 味 的 に 矛 盾 す る た め 命令 形 に し に く い と い う 現 象 と し て 現 れ る 。    こ れ 以 外 に も 池 谷 (2012) で は 次 の よ う な現 象 を 取 り 扱 っ た 。

40. 車 が 動 き 出 し た

30

Page 31: 複合動詞sils.shoin.ac.jp/TALKS/TALKS20/ikeya/池谷:開始を... · Web viewこのように、影山(1993)では複合動詞を語彙的複合動詞と統語的複合動詞に分類し、その成果は広く知られている。しかし、影山(2012)では語彙的複合動詞をさらに2つに分類し、語彙的複合動詞が、更に「主要部関係複合動詞」と「アスペクト複合動詞」に分類できることを提案した。

      = 車 が 動 き 始 め た

41. * 飛 行 機 が 飛 び 出 し た = 飛 行 機 が 飛 び 始 め た

先 に 「 〜 出 す 」 は 限 界 性 が な い 動 詞 に つ くと 定 義 し た が 、 41 「 * 動 き 出 す 」 な ど は 一見 そ の 反 例 の よ う に 見 え る 。 こ れ を ど の よう に 扱 っ た ら い い の だ ろ う か 。 そ れ に は 未完 了 の 逆 接 ( imperfective paradox) が 鍵 と な る 。未 完 了 の 逆 接 ( imperfective paradox) に つ い て 、池 谷 (2002)で は 次 の よ う に 述 べ て い る 。

池 谷 (2012:198)  「 〜 だ す 」 は 活 動 動 詞 と 相 性 が 良 いが 、 そ れ は 活 動 動 詞 が 動 作 が 始 ま っ た瞬 間 に 事 態 が 成 立 す る と い う 未 完 了 の逆 接 ( imperfective paradox) を も っ て い る こと に 起 因 す る 。 つ ま り 、 起 こ っ た 瞬 間に す べ て が 成 立 し な け れ ば な ら な い ので あ る が 、 活 動 動 詞 の 中 に は そ の 事 態が 成 立 す る と 認 識 さ れ る ま で 、 物 理 的に 時 間 が か か る と 認 識 さ れ る も の が ある 。 こ こ で い う 「 時 間 が か か る 」 と いう の は 文 法 の 問 題 で は な く 、 現 実 の 物理 的 世 界 に 対 す る 認 識 の 問 題 で あ る 。「 〜 だ す 」 は 開 始 の 局 面 し か 表 さ な いの で 、 こ の よ う な 開 始 し た 瞬 間 に 成 立し た と 認 識 さ れ な い 動 作 と は な じ み にく い の で あ る 。

  こ れ を 簡 単 に 書 き 表 す と 次 の よ う に な る 。

40’ 車 が 動 き 出 す      A【 車 が 動 い て い な い 状 態 】 → B【 車が 動 い て い る 状 態 】

41’ 飛 行 機 が 飛 び 出 す      A 【 飛 行 機 が 止 ん で い な い 状 態 】→ B【 飛 行 機 が 飛 ん で い る 状 態 】

31

Page 32: 複合動詞sils.shoin.ac.jp/TALKS/TALKS20/ikeya/池谷:開始を... · Web viewこのように、影山(1993)では複合動詞を語彙的複合動詞と統語的複合動詞に分類し、その成果は広く知られている。しかし、影山(2012)では語彙的複合動詞をさらに2つに分類し、語彙的複合動詞が、更に「主要部関係複合動詞」と「アスペクト複合動詞」に分類できることを提案した。

  「 〜 出 す 」 が 付 く た め に は A→B と い う 状 態変 化 が 瞬 間 的 に 成 立 す る こ と が 必 要 で あ る 。「 車 が 動 く 」 は 車 が ち ょ っ と で も 動 い た 瞬間 に 「 車 が 動 く 」 と い う 動 作 が 完 成 し 「 車が 動 い た 」 と 認 定 さ れ る 。 「 雨 が 降 る 」 は雨 が ポ ツ ッ と 落 ち て き た 瞬 間 に 「 雨 が 降 った 」 と 認 定 さ れ る 。  そ れ に 対 し て 「 飛 行 機 が 飛 ぶ 」 は 飛 行 機が 離 陸 し て 、 一 定 の 高 度 ま で 上 が っ て い き 、そ こ か ら 水 平 飛 行 に 入 る た め 、 A→B へ の 状 態変 化 に い た る ま で 、 時 間 が か か る 。 よ っ て 、動 詞 の 成 立 ま で 時 間 が か か る と 解 釈 さ れ るも の は 、 単 一 事 象 の 開 始 を 「 〜 出 す 」 で 表し に く い 。 そ の よ う な 場 合 は 全 体 の 中 の 開始 部 分 を 表 す 過 程 性 [ + process ] を 持 つ 「 〜始 め る 」 の 方 が 選 択 さ れ る 。  こ の 他 の 理 由 と し て 、 「 飛 び 出 す 」 が 言い に く い 要 因 と し て は 、 「 飛 び 出 す 」 は「 子 供 が 道 か ら 飛 び 出 し た 」 の よ う な 位 置変 化 を 表 す 語 彙 的 複 合 動 詞 の 用 法 を 持 っ てい る こ と が 考 え ら れ る 。 そ の た め 、 紛 ら わし さ を 回 避 す る た め 、 開 始 の ア ス ペ ク ト を表 す 場 合 は 、 「 飛 び 始 め た 」 の 方 が 好 ま れる と い う 可 能 性 も 想 定 さ れ る 。  先 行 研 究 で も 「 〜 出 す 」 が 「 突 然 性 」 と相 性 が 良 い こ と は し ば し ば 指 摘 さ れ て い るが 、 こ の A【 運 動 が 起 こ っ て い な い 状 態 】→ B【 動 作 が 完 成 し た 状 態 】 の 変 化 が 、 開 始の 局 面 で 瞬 間 的 に 成 立 す る た め 、 突 然 、 起こ っ た よ う な 意 味 を 含 意 し や す い の で あ る 。そ こ か ら 感 じ ら れ る 「 突 然 性 」 「 即 興 性 」「 不 規 則 性 」 は あ く ま で も 副 次 的 な 効 果 であ っ て 、 本 質 的 な 意 味 で は な い 。 そ の た め 、前 に あ げ た 14 や 15 の 例 が 可 能 に な る 。

14. と き た ま 見 え る の は ニ ッ パ ヤ シ の 小 屋 か洋 館 だ け で あ る 。 陽 は な い が 、 す で に 風の な か に 熱 帯 の な ま 温 か さ が 滲 ん で い る 。煙 草 を 喫 い 終 る と 、 英 世 は ゆ っ く り と 歩

32

Page 33: 複合動詞sils.shoin.ac.jp/TALKS/TALKS20/ikeya/池谷:開始を... · Web viewこのように、影山(1993)では複合動詞を語彙的複合動詞と統語的複合動詞に分類し、その成果は広く知られている。しかし、影山(2012)では語彙的複合動詞をさらに2つに分類し、語彙的複合動詞が、更に「主要部関係複合動詞」と「アスペクト複合動詞」に分類できることを提案した。

き 出 す 。 ( 渡 辺 淳 一 『 遠 き 落 日 』 角 川 書店   1979)

15. 結 婚 式 は 、 真 昼 に 行 わ れ た 。 新 郎 新 婦 の 、神 々 へ の 宣 誓 が 済 ん だ こ ろ 、 黒 雲 が 空 を覆 い 、 ぽ つ り ぽ つ り 雨 が 降 り だ し 、 や がて 車 軸 を 流 す よ う な 大 雨 と な っ た 。 ( 宮地 裕 ほ か 『 国 語 2 』 光 村 図 書 出 版 株 式 会社   2005)

「 〜 出 す 」 が 表 し て い る こ と は 、 A【 何 も ない 状 態 】 → B【 動 作 が 完 成 し た 状 態 】 へ の 状態 変 化 と 、 運 動 の 開 始 局 面 で 成 立 で あ る 。「 歩 く 」 は 、 1歩 で も 歩 け ば 動 作 が 成 立 す るの で 、 「 ゆ っ く り と 歩 き 出 し た 」 は 可 能 であ る し 、 「 雨 が 降 る 」 は 一 粒 で も 降 れ ば 動作 が 成 立 す る の で 、 「 ポ ツ リ ポ ツ リ と 雨 が降 り 出 し た 」 の よ う な 例 が 可 能 に な る 。 それ に 対 し 「 〜 始 め る 」 は 開 始 の 方 法 に 指 定が な い 。 そ の た め 、 「 〜 始 め る 」 は そ の 動詞 全 体 の 開 始 部 分 と 解 釈 さ れ れ ば 、 色 々 な動 詞 と 共 起 す る こ と が で き る 。  こ れ ま で の 議 論 を ま と め る と 、 以 下 の よう に な る 。

「 〜 出 す 」 と 「 〜 始 め る 」 の 違 い ①  

「 〜 出 す 」 は 動 詞 が 開 始 し た 瞬 間 の 局 面 のみ を 表 し 、 限 界 性 を 含 意 し な い と い う [ -delimited ] と い う 性 質 を も つ 。 一 方 で 「 〜 始め る 」 は 動 詞 が 表 す 事 態 全 体 の 中 に お け る 、開 始 部 分 を 表 す た め 過 程 性 [ + process ] と いう 性 質 を も つ 。 「 〜 出 す 」 と 「 〜 始 め る 」の 使 い 分 け に は 、 こ の 動 詞 の 過 程 性 と 限 界性 が 関 わ っ て い る 。

  先 に 「 〜 出 す 」 は 依 頼 形 や 命 令 形 と 相 性が 悪 い こ と を 述 べ た 。 そ れ に 加 え て 、 「 〜始 め る 」 は 動 作 動 詞 と 同 じ く ル 形 で 意 志 未来 を 表 す 事 が で き る が 、 「 〜 出 す 」 は ル 形

33

Page 34: 複合動詞sils.shoin.ac.jp/TALKS/TALKS20/ikeya/池谷:開始を... · Web viewこのように、影山(1993)では複合動詞を語彙的複合動詞と統語的複合動詞に分類し、その成果は広く知られている。しかし、影山(2012)では語彙的複合動詞をさらに2つに分類し、語彙的複合動詞が、更に「主要部関係複合動詞」と「アスペクト複合動詞」に分類できることを提案した。

で 意 志 未 来 を 表 す こ と が で き な い 。

42.(a)   * 明 日 か ら ECC で 英 語 を 勉 強 し 始 め る( ル 形 ) (b)     明 日 か ら ECC 英 語 を 勉 強 し 出 す

43.(a)   * こ れ か ら ピ ア ノ を 弾 き 出 す ( ル形 ) (b) こ れ か ら ピ ア ノ を 弾 き 始 め る

44.(a)   * さ あ 、 皿 を 洗 い 出 そ う ( 意 向 形 ) (b)       さ あ 、 皿 を 洗 い 始 め よ う

45.(a)   * お 父 さ ん 、 帰 っ て 来 な い か ら 先 に食 べ 出 そ う ( 意 向 形 ) (b)         お 父 さ ん 、 帰 っ て 来 な い か ら 先 に食 べ 始 め よ う  

  そ の 一 方 で 、 動 作 主 性 が な い 自 然 現 象 であ っ た り 、 非 能 格 自 動 詞 で 表 さ れ る よ う な事 態 に つ く と 、 「 〜 出 す 」 は 「 〜 始 め る 」と 同 じ よ う に 近 接 未 来 を 表 す よ う に な る 。

46.(a)   も う す ぐ 桜 が 咲 き 出 す   (b) も う す ぐ 桜 が 咲 き は じ め る

47.(a)   明 日 か ら 雨 が 降 り 出 す (b)   明 日 か ら 雨 が 降 り は じ め る   こ こ か ら 導 か れ る こ と は 「 〜 出 す 」 は 、命 令 形 、 依 頼 形 、 意 向 形 、 意 志 未 来 を 表 す事 が で き な い こ と か ら 、 意 図 を 持 っ た 表 現と は な じ み に く い こ と が わ か る 。 つ ま り 、「 〜 出 す 」 は 意 図 性 を 含 意 し て い な い 。 しか し 、 こ れ は 、 「 財 布 を 落 と す 」 や 「 穴 には ま る 」 の よ う に 、 動 作 主 が 望 ん で い な い動 作 を う っ か り 行 っ て し ま っ た と い う 非 意図 性 と は 異 な る 。 「 〜 出 す 」 で 表 さ れ る 意図 性 の な さ は 、 非 コ ン ト ロ ー ル 性 [ -controllability ] と 言 い 換 え る こ と が で き る そ の

34

Page 35: 複合動詞sils.shoin.ac.jp/TALKS/TALKS20/ikeya/池谷:開始を... · Web viewこのように、影山(1993)では複合動詞を語彙的複合動詞と統語的複合動詞に分類し、その成果は広く知られている。しかし、影山(2012)では語彙的複合動詞をさらに2つに分類し、語彙的複合動詞が、更に「主要部関係複合動詞」と「アスペクト複合動詞」に分類できることを提案した。

事 態 の 招 来 に つ い て 、 何 の コ ン ト ロ ー ル 力も 持 っ て い な い こ と を 表 し て い る 。 そ の ため 、 そ れ が 起 こ る の を 外 か ら 眺 め て い る よう な 、 一 種 、 傍 観 者 の よ う な 表 現 効 果 を 生む 。 そ の た め 、 た と え 自 分 自 身 の 動 作 であ っ て も 、 43(a)「 * こ れ か ら ピ ア ノ を 引 き 出す 」 の よ う な 意 志 未 来 に 使 う こ と が で き ない 。  そ れ で は 、 な ぜ 、 「 〜 出 す 」 は 意 図 性 と相 性 が 悪 い の だ ろ う か 。  そ の 理 由 と し て 「 〜 出 す 」 が 表 す 事 象 がA【 動 詞 が な い 状 態 】 → B【 動 作 が 完 成 し た状 態 】 の 状 態 変 化 を 表 し て い る と こ ろ に ある と 考 え る 。 「 〜 出 す 」 が 表 す 事 態 は 、 動作 主 が 意 図 を も っ て 始 め た 事 態 で は な く 、状 態 の 変 化 を 表 し て い る と 考 え る の で あ る 。そ れ は あ る 意 味 、 客 観 的 な 事 態 の 描 写 で あり 、 何 も な い と こ ろ に 新 た に 生 起 し た 新 しい 事 態 の 描 写 で あ る 。 そ の 「 〜 出 す 」 が もつ 非 コ ン ト ロ ー ル 性 [ -controllability] と い う 性質 の た め 、 た と え 、 動 作 主 が 存 在 す る 事 態で あ っ て も 、 意 図 を 表 す 命 令 形 、 依 頼 形 、意 向 形 、 意 志 未 来 と な じ み に く い の で あ る 。  そ れ に 関 し て 今 井 ( 1993:6) も 「 〜 出 す 」は 「 〜 出 す 」 は 「 知 覚 す る だ け で あ り 、 事態 に 対 す る 制 御 力 を も っ て い な い た め 、 命令 ・ 意 志 ・ 使 役 の 文 脈 で は あ ら わ れ に くい 」 と 述 べ て い る 。  こ の よ う な 「 〜 出 す 」 の 性 質 の た め 、「 〜 出 す 」 は 人 間 で は な い も の ( 自 然 物 )に 付 き や す く 、 動 作 主 の い る 動 作 に つ い たも の で あ っ て も 、 客 観 的 に 見 た 動 作 や 、 無情 物 の 動 作 で あ る こ と が 多 い 。  「 歩 き 出 す 」 と い う 複 合 動 詞 は 、 コ ー パス 中 納 言 の 中 で 958 例 現 れ る 。 そ の 中 で 、 明確 に 一 人 称 を 取 る も の は 、 「 私 」 2 例 、「 あ た し 」 1 例 、 「 僕 」 4 例 、 「 俺 」 2例 、で あ っ た 。 そ の 例 を あ げ て お く 。

48. 精 一 は 先 に 車 か ら 降 り て 、 頭 を 振 り 振 り 、

35

Page 36: 複合動詞sils.shoin.ac.jp/TALKS/TALKS20/ikeya/池谷:開始を... · Web viewこのように、影山(1993)では複合動詞を語彙的複合動詞と統語的複合動詞に分類し、その成果は広く知られている。しかし、影山(2012)では語彙的複合動詞をさらに2つに分類し、語彙的複合動詞が、更に「主要部関係複合動詞」と「アスペクト複合動詞」に分類できることを提案した。

外 で 家 造 り を 手 伝 っ て く れ て い た 大 工 のジ ェ オ リ ー の と こ ろ へ 行 っ た 。 二 人 し てこ っ ち を 見 て 笑 っ た 。 な ん て い や な 日 本人 ! も う い い 、 こ こ ま で 馬 鹿 に さ れ て 運転 な ん か で き な い 。 わ た し は 精 一 に 向か っ て な に や ら わ め く と 、 車 を そ の 場 に捨 て 、 七 絵 の 手 を 引 き 、 ハ イ ウ ェ イ の 路肩 を 古 い 家 に 向 か っ て 歩 き 出 し た 。 ( すず き ひ さ こ 『 マ マ は 陽 気 な ア ラ ス カン ! 』 文 芸 社   2002)

49. 僕 は 金 本 の 反 応 が 、 僕 に 対 す る 憤 り に 根ざ し て い る の だ と 解 釈 す る と 、 途 端 に 気持 が 軽 く な り 、 ゆ っ く り 足 を 頼 み し め なが ら 山 の 麓 の 部 落 に 歩 き 出 し た の だ っ た 。( 梶 山 季 之 『 李 朝 残 影 』   イ ン パ ク ト 出版   2002)

  山 崎 ( 1995:97 ) で は 、 「 〜 出 す 」 は 継 起 的な 結 び つ き を 表 す 「 〜 す る と 」 と 結 び つ きや す い こ と を 指 摘 し て い る が 、 48 と 49 の 例も そ の 特 徴 に 合 致 し て い る 。 こ の よ う に 、限 界 の な い 動 作 動 詞 「 歩 く 」 に 付 い て い たと し て も 、 「 歩 き 出 す 」 は そ の 文 全 体 で 、背 景 や 状 況 を 表 す 文 に な っ て い る 。

「 〜 出 す 」 と 「 〜 始 め る 」 の 違 い ②  

「 〜 出 す 」 は 動 作 主 が 意 図 を も っ て 始 め た事 態 で は な く 、 外 か ら 観 察 さ れ た 開 始 の 状態 変 化 で あ る 。 そ の た め 、 「 〜 出 す 」 は 非コ ン ト ロ ー ル 性 [ -controllability] と い う 性 質 をも ち 、 命 令 形 、 依 頼 、 意 向 形 、 意 志 未 来 をと り に く い 。 そ れ に 対 し て 、 「 〜 始 め る 」は 意 図 的 に 運 動 を 開 始 で き る コ ン ト ロ ー ル力 を 持 つ 。 つ ま り 、 「 〜 出 す 」 と 「 〜 始 める 」 の 使 い 分 け に は 、 動 作 主 の コ ン ト ロ ール 性 [ controllability ] が 関 わ っ て い る 。

5 .   ま と め

36

Page 37: 複合動詞sils.shoin.ac.jp/TALKS/TALKS20/ikeya/池谷:開始を... · Web viewこのように、影山(1993)では複合動詞を語彙的複合動詞と統語的複合動詞に分類し、その成果は広く知られている。しかし、影山(2012)では語彙的複合動詞をさらに2つに分類し、語彙的複合動詞が、更に「主要部関係複合動詞」と「アスペクト複合動詞」に分類できることを提案した。

  最 後 に 、 従 来 、 開 始 の ア ス ペ ク ト を 表 す「 〜 出 す 」 「 〜 始 め る 」 の 違 い と し て 、「 突 然 性 」 を 中 心 と し て 説 明 が 与 え ら れ るこ と が 多 か っ た 。 し か し 、 本 研 究 で は 、「 〜 出 す 」 は A【 何 も な い 状 態 】 → B【 動 作が 完 成 し た 状 態 】 の 状 態 変 化 を 表 し て い ると こ ろ に あ る と 考 え た 。 そ し て 、 「 〜 始 める 」 は 動 詞 が 表 す 事 態 全 体 の 中 に お け る 、開 始 部 分 を 表 す た め 過 程 性 [ + process ] と いう 性 質 を 持 っ て い る の に 対 し て 、 「 〜 出す 」 は 動 詞 が 開 始 し た 瞬 間 の 局 面 の み を 表す と し た 。  先 行 研 究 で 指 摘 さ れ て い る 「 突 然 性 」 は急 に 状 態 が 成 立 し た こ と か ら 生 ま れ る 副 次的 な 意 味 で あ る 。 ま た 、 「 〜 出 す 」 が 付 く動 詞 は 限 界 性 を 含 意 し な い 非 限 界 性 [ -delimited ] と い う 性 質 を も ち 、 V1 に 限 界 性 をも つ 動 詞 を 取 り に く い 。 こ の よ う に 、 「 〜出 す 」 と 「 〜 始 め る 」 の 使 い 分 け に は 、 動詞 の 限 界 性 が 関 わ っ て い る こ と を 明 ら か にし た 。  そ し て 最 後 に 、 「 〜 出 す 」 が 命 令 形 、 依頼 形 、 意 向 形 と な じ ま な い 現 象 こ と か ら 、「 〜 出 す 」 は 、 動 作 主 が 意 図 を も っ て 始 めた 事 態 で は な く 、 外 か ら 観 察 さ れ た 開 始 の状 態 変 化 で あ る と 考 え た 。 「 〜 出 す 」 は たと え 動 作 動 詞 に 付 い た 場 合 で あ っ て も 、 意志 的 に 使 う 事 が で き ず 、 事 態 に 対 す る コ ント ロ ー ル 力 を 持 た な い 。 そ れ に 対 し て 、「 〜 始 め る 」 は 意 図 的 に 運 動 を 開 始 で き るコ ン ト ロ ー ル 力 を 持 つ 。 つ ま り 、 「 〜 出す 」 と 「 〜 始 め る 」 の 使 い 分 け に は 、 動 作主 の コ ン ト ロ ー ル 性 [ controllability] が 関 わ って い る 。  こ の よ う に 、 開 始 の ア ス ペ ク ト を 表 す 統語 的 複 合 動 詞 は 事 態 の 「 限 界 性 」 と 動 作 主の 「 コ ン ト ロ ー ル 性 」 と い う 大 き な 2 つ の基 準 に よ っ て 、 選 択 さ れ て い る こ と を 証 明し た 。 そ し て 、 「 〜 出 す 」 「 〜 始 め る 」 は 、

37

Page 38: 複合動詞sils.shoin.ac.jp/TALKS/TALKS20/ikeya/池谷:開始を... · Web viewこのように、影山(1993)では複合動詞を語彙的複合動詞と統語的複合動詞に分類し、その成果は広く知られている。しかし、影山(2012)では語彙的複合動詞をさらに2つに分類し、語彙的複合動詞が、更に「主要部関係複合動詞」と「アスペクト複合動詞」に分類できることを提案した。

こ の 2 つ の 基 準 に よ り 二 者 択 一 的 に ど ち らか 1 つ が 選 択 さ れ る 場 合 も あ る が 、 多 く の場 合 は 、 「 〜 始 め る 」 を 使 っ て 、 過 程 性 があ る 一 連 の 動 作 の 開 始 部 分 を 語 り た い か 、「 〜 出 す 」 を 使 っ て 、 何 も な い と こ ろ に 新た な 事 態 が 出 現 し た こ と を 語 り た い か と いう 、 話 者 の 事 態 の 捉 え 方 に よ っ て 選 択 さ れる 。 そ の た め 、 言 い 換 え が き く も の が 多 いの で あ る 。

< 参 考 文 献 >淺 尾 仁 彦   (2007)「 複 合 語 の 生 産 性 と 文 法 的 性質 」 『 日 本 言 語 学 会 第 134 回 大 会 予 稿 集pp.416-421. 池 谷 知 子 ( 2002) 「 複 合 動 詞 『 〜 だ す 』 と 限界 性 」 『 KLS 』 22.pp192-202. 関 西 言 語 学 会池 谷 知 子 ( 2005) 「 『 そ う す る 』 」 テ ス ト はど う す る こ と か 」 『 KLS 』 25. pp.293-303.関 西 言語 学 会今 井 忍 (1993) 「 複 合 動 詞 の 旅 性 に 関 す る 認 知意 味 論 に よ る ア プ ロ ー チ - 『 出 す 』 の 起 動 の意 味 を 中 心 に し て - 」 『 言 語 研 究 』 2. 京 都 大学姫 野 昌 子 ( 1999) 『 複 合 動 詞 の 構 造 と 意 味 用法 』 ひ つ じ 書 房伊 藤 た か ね ・ 杉 岡 洋 子 ( 2ß002 ) 『 語 の 仕 組み と 語 形 成 』 『 英 語 学 モ ノ グ ラ フ シ リ ーズ 』 16 巻 . 研 究 社影 山 太 郎 ( 1993) 『 文 法 と 語 形 成 』 ひ つ じ 書房影 山 太 郎 ( 1999) 『 形 態 論 と 意 味 』 く ろ し お出 版影 山 太 郎 ( 2013) 「 語 彙 的 複 合 動 詞 の 新 体 系- そ の 理 論 的 ・ 応 用 的 意 味 合 い - 」 『 複 合 動詞 研 究 の 最 先 端   謎 の 解 明 に 向 け て 』 ひ つじ 書 房陳 劼 懌 ( 2013) 「 語 彙 的 複 合 動 詞 と 統 語 的 複合 動 詞 の 連 続 性 に つ い て - 『 〜 出 す 』 」 を 対象 と し て 」 『 複 合 動 詞 研 究 の 最 先 端   謎 の解 明 に 向 け て 』 ひ つ じ 書 房

38

Page 39: 複合動詞sils.shoin.ac.jp/TALKS/TALKS20/ikeya/池谷:開始を... · Web viewこのように、影山(1993)では複合動詞を語彙的複合動詞と統語的複合動詞に分類し、その成果は広く知られている。しかし、影山(2012)では語彙的複合動詞をさらに2つに分類し、語彙的複合動詞が、更に「主要部関係複合動詞」と「アスペクト複合動詞」に分類できることを提案した。

寺 村 秀 夫 (1984) 『 日 本 語 の シ ン タ ク ス と 意 味Ⅱ 』 く ろ し お 出 版名 柄 迪 編 ・ 新 美 和 昭 ・ 山 浦 洋 一 ・ 宇 津 野 登久 子 ( 1987) 『 外 国 人 た め の 日 本   例 文 ・ 問題 シ リ ー ズ ④   複 合 動 詞 』 荒 竹 出 版長 谷 部 郁 子 ( 2013) 「 複 合 動 詞 と 2 種 類 の アス ペ ク ト 」 『 複 合 動 詞 研 究 の 最 先 端   謎 の解 明 に 向 け て 』 ひ つ じ 書 房森 田 良 行 ( 1989) 『 基 礎 日 本 語 辞 典 』 角 川 書店由 本 陽 子 ( 2005) 『 複 合 動 詞 ・ 派 生 動 詞 の 意味 と 統 語 』 景 山 太 郎 編   ひ つ じ 書 房山 崎 恵 (1995) 「 開 始 の 局 面 を 取 り 立 て る 局 面動 詞 に つ い て - 『 〜 始 め る 』 『 〜 出 す 』 の 用法 比 較 - 」 『 坂 田 雪 子 先 生 古 希 記 念 論 文 集  日 本 語 と 日 本 語 教 育 』 98. 三 省 堂

< 利 用 し た コ ー パ ス >

『 現 代 日 本 語 書 き 言 葉 均 衡 コ ー パ ス 』(Balanced Corpus of Contemporary WrittenJapanese =   BCCWJ) 『 中 納 言 』 (https://chunagon.ninjal.ac.jp/)

39