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1
電子情報工学基礎
第6回
半導体の基礎(その1)
2
半導体の基礎
• 原子の構造
• 電子軌道の計算(波動方程式)
• エネルギーバンド
• 半導体
• エネルギー分布
• 原子と原子の結合
• 半導体
• pn接合
3
「全ての物質は原子で構成されている」
原子 : 原子核(陽子、中性子)+電子
・ 陽子の数、電子の数は原子番号(Z)に等しい
電気素量 : e = 1.602 x 10-19 C
・ 陽子は +e の正の電荷、
電子は –e の負の電荷をもつ
原子の構造
vr
原子核
4
気体放電により放射される光の線スペクトルの規則性を
説明する為,次の仮説を提唱し,原子模型を導いた.
気体放電のスペクトル(イメージ)
黒体輻射(白色光)のスペクトル(イメージ)
電子は原子核の周囲を円軌道を描きながら回転する.その際,幾つかの限られた飛び飛びの軌道だけが許される.(量子化条件)
ボーアの原子模型
5
速度
電子の質量
電荷原子番号,
原子核が持つ電荷
円軌道の半径
:
:
)::(
:
:
v
m
eZ
Ze
r
e
電子軌道の計算1
円軌道
6
24
2
0
2 vm
r
ZeE e
2
0
22
4 r
Ze
r
vme
電子軌道の計算2
電子の全エネルギー
遠心力=クーロン力
静電ポテンシャル
運動エネルギー
円軌道
遠心力 クーロン力
r
ZeE
0
2
8 :電子の全エネルギーは軌道半径に反比例
古典力学→ r は連続値をとることが可能
量子力学→ r は「ボーアの量子条件」を満たす軌道のみ存在
-B
-A
B式をA式に代入して
①
②
vr
原子核
7
最終的な量子化されたn番目の軌道の半径と電子の全エネルギーは:
,...)3,2,1(2
nnh
nvrme
,2
2
2
0 nZem
hr
e
n
222
0
421
8 nh
eZmE e
n
エネルギー準位に相当
電子軌道の計算3
角運動量の量子化(ボーアの量子条件)
とびとびの軌道半径のみが認められる
2
hの整数倍
h:プランク定数
離散値
③
①、②、③式から
8
222
0
42 1
8 nh
eZmE e
n
量子化された軌道の半径と電子の全エネルギー
電子のエネルギー変化と
光の吸収・放射
chhv
EEE nn
1
水素の軌道とエネルギー
計算例
n = 1
n = 2
n = 3
n = 4
ライマン系列
バルマー系列
パッシェン系列
水素原子の電子軌道とスペクトル
9
n =4(励起状態)
n =3
n =2
n =1(基底状態)
軌道半径
電子のもつエネルギーの井戸
線スペクトルの規則性
1
nm8.660
m10608.6
J][1001.3
2
1
3
1
8
7
19
2222
0
42
23
E
chc
Ehν
h
eZmEEE e
10
電子のような微小粒子の移動状態は波動性をもつ
mv
h
ド・ブロイの物質波の仮説 電子波, ド・ブロイ波
電子波波長
kg 109.1093897
F/m 1078.85418781
sJ 1062607556
m/s 10997924582
31-
12-
0
34
8
e
-
m
ε
.h
.v
重要な定数:
線スペクトルの規則性をきわめてよく説明したが,線スペクトルの微細構造や光の強弱など,解釈のつかないところもあった.
ボーアの原子模型
→より詳しい議論
11
2
2
2
2
2
22
22
2
zyx
EVme
φ:波動関数(波動方程式の解)
|φ2|:電子の存在確率
ド・ブロイの物質波の概念を元に波動方程式を導出
シュレディンガーの波動方程式
ポテンシャルエネルギー
固有値をとるときのみ解を持つ
← 電子状態
(いくつかの解)
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量子数
1. 主量子数 : n
• 電子の状態を区別するのに最も重要な量子数で,正の整数 nで表される.
• nが小さいほど電子のエネルギーが低い.
• 主量子数の等しい軌道群を殻(shell)といい,内殻から順にK, L, M, N, ...
殻という.
2. 方位量子数 : l(エル)
• 電子軌道の形状を区別する量子数で,0, 1, 2,..., (n – 1) の n個の値をとる.これらは,分光学的表記を用いて,s, p, d, f, ... と表されることが多い.
3. 磁気量子数 : m
• 電子の角運動量の z成分に対応し,–l, – (l – 1), ..., 0, ...(l – 1), lの(2l+1)
個の値をとる.
• 磁界を印加しない限り磁気量子数の区別はできない.
4. スピン量子数 : s
• 電子の自転(スピン)を量子化したもので,+1/2 または – 1/2 の値をとる.
(電子の状態(波動方程式の解)を4量子数で区別)
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水素原子の波動関数(電子軌道)の角度依存性
(a) l=0
(b) l=1
(c) l=2
3s軌道
3p軌道
3d軌道
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殻と量子数
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各軌道への電子の入り方
・ 原子を構成している電子は,原子のエネルギーが最小になるように,低いエネルギーの電子状態から順につまっていく.
・ 主量子数 nの殻に入る電子の総数は,2n2 である.
・ ある殻に収容されている電子数がその殻に与えられた最大数(2n2)に等しい場合,その殻を閉殻(closed shell)と呼ぶ.
・ 完全に満たされていない殻がある場合,その殻に存在する電子は価電子(valence electron)と呼ばれ,その原子の化学的性質を決定する.
1つの電子状態には,1つの電子しか入り得ない.
パウリの排他原理
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エネルギー帯(バンド)構造
孤立原子に属する電子は,その量子数できまる軌道を描き,離散的なエネルギー値をとる.
原子を近接させ,かつ規則的に並べて結晶を構成すると,各原子に属する電子は互いに影響を及ぼし合うようになる.
エネルギー準位は,結晶を構成する原子の数に相当する準位に分離する.
→エネルギー帯
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エネルギー帯構造の形成モデルの模式図
許容帯 : 電子が存在できるエネルギー帯
禁制帯 : 電子が存在できないエネルギー範囲
結晶を構成する原子の数は非常に多いので,
これらの分離した準位は重なってほぼ連続的に分布し,エネルギー帯構造を形成する.
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充満帯 : 電子が完全につまった許容帯
伝導帯 : 空または一部つまった許容帯
自由電子 : 伝導帯の電子 → 印加電界により
容易に移動して電気伝導に寄与
価電子帯 : 絶縁体・半導体においてエネルギーが最も高い充満帯
禁制帯幅(Eg) : 価電子帯の頂(Ev)と伝導帯の
底(Ec)とのエネルギー差
導体、絶縁体のエネルギー帯構造
充満帯
充満帯
Eg大きい
Ec
Ev
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半導体
低温では、絶縁体と同様、伝導帯が空であるが、
Egが比較的小さく、室温
程度で価電子帯から伝導帯に電子が励起される
→電気伝導が生じる
Eg (小さい)
価電子帯
伝導帯
エネルギー
Eg (小さい)
価電子帯
伝導帯
エネルギー
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半導体
Ge(ゲルマニウム) 0.66eV
Si(シリコン) 1.12eV
C(ダイアモンド) 5.5eV
GaAs(ガリウムひ素)1.42eV
絶縁体
SiO2(ガラス) 9eV
エネルギーギャップ Eg の例
eV(エレクトロンボルト):電位差1[V]かかってるところで電子を移すためのエネルギー
1 [eV] = 1.6 x 10-19 [C]
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まとめ
・原子の構造
・電子軌道の計算量子化シュレディンガー方程式パウリの排他原理
・エネルギーバンド
・半導体