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文部科学省スーパーグローバルハイスクール研究開発学校 平成27年度指定スーパーグローバルハイスクール研究報告書 第3年次 (研究開発構想名) 科学技術系素養を持つグローバルテクニカルリーダーの育成 平成30年3月 国立大学法人 東京工業大学 附属科学技術高等学校

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文部科学省スーパーグローバルハイスクール研究開発学校

平成27年度指定スーパーグローバルハイスクール研究報告書

第3年次

(研究開発構想名)

科学技術系素養を持つグローバルテクニカルリーダーの育成

平成30年3月

国立大学法人 東京工業大学

附 属 科 学 技 術 高 等 学 校

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本報告書に記載されている内容は,グローバル・リーダー育成に資する教育

を重点的に実施し,これに関する教育課程等の改善に資する実証的資料を得る

ため,現行教育課程の基準の下での教育課程等の改善に関する研究開発のほか,

学校教育法施行規則第85条(同規則第108条の第2項で準用する場合を含

む。)並びに第79条及び第108条第1項で準用する第55条に基づき,現行

教育課程の基準によらない教育課程を編成・実施するために,文部科学大臣の

委託を受けて実施した実証研究です。

したがって,この研究の内容のすべてが,直ちに一般の学校における教育課

程の編成・実施に適用できる性格のものでないことに留意してお読み下さい。

参照:平成26年1月14日文部科学大臣決定

「スーパーグローバルハイスクール実施要項」の6

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はじめに

本校は,SGH研究開発指定第3年次を迎え,あらためてグローバル人材の育成について

問い直す1年となりました。従前より,科学技術高校として,先進的な科学技術系人材育成

プログラムをスクールポリシーの柱としてきましたが,今日,この人材育成プログラムとグ

ローバル人材育成プログラムとの違いを,鮮明に打ち出すことが求められています。

グローバル人材を育成するためには,外国の文化や制度について,精通する必要がありま

す。例えば,列車に乗る際の改札の違いは,外国を旅行すれば誰でも感じることです。日本

では,改札のチェックが厳しいですが,外国では改札のない駅を見かけます。人を信じてい

るのかと思いきや,車内や駅のホームには,罰金のポスターが貼られています。目的地まで

の切符を持っていなければ,理由の如何を問わず高額の罰金が科せられます。実際,警察官

が抜き打ちで,電車に乗ってきて,すべての人に検札を行います。ここで切符を持っていな

ければ,罰金を取られるというわけです。「急いでいたから」とか「うっかり忘れた」といっ

た理由は,全く考慮されません。ルールは守るべきであり,ルールを破ったという事実があ

る以上,罰金が科せられます。すなわち,結果がすべてなのです。それに対して日本では,

ルールを出すまでもなくモラルを重視します。つまり,原因を重視します。その結果,やむ

を得なかったという結論になれば,「情状酌量」がなされるわけです。外国では,ルールを教

え込み,それに反した場合には,罰を受けます。それでは殺伐とした感が拭えませんが,宗

教や価値観の異なる人々が,同じ国内で暮らすという現実を考えれば,ルールのみで判断す

るという方法も合点がいきます。このように,グローバル人材の育成には,見方・考え方を

フル回転させる必要があるといえます。

モラルか,ルールか,といった問題は一例に過ぎませんが,国際社会が抱える諸問題は,

自然科学によるアプローチだけでは見えてこない問題が存在します。また,社会科学による

アプローチだけでは,価値観の違いを越えられないこともあり得ます。特にこの問題では,

人文科学に昇華して新しい文化を創ることを考えないと,解決の糸口は見えてこないように

思います。問題解決というものは,複数の科学が複雑に絡み合うものなのでしょう。

SGH研究の第3年次は,グローバル人材育成について見直しを行い,従来の科学技術人

材育成プログラムとは,目的も求める人材も異なることを明確にしながら,新たな提案を掲

載しております。お読みいただく皆様方のご助言・ご感想を頂戴できれば幸甚です。

最後になりましたが,SGH研究開発の機会を与えて下さった文部科学省の関係各位,ご

指導とご助言をいただいております運営指導委員会の関係各位に,厚く御礼申し上げます。

さらに,高大連携の推進に当たり多大なご協力をいただいた東京工業大学の教職員の皆様に

謝意を表します。

平成30年3月

東京工業大学附属科学技術高等学校 校長 佐伯 元司

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目 次

① 平成29年度SGH研究開発完了報告

② 実施報告書(本文)

②−1 平成29年度SGH研究開発の成果と課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

②−2 研究の概要

Ⅰ 研究開発の指定期間 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5

Ⅱ 研究の概要および本校の概要等

1 研究開発構想名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5

2 研究開発の目的・目標 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5

3 研究開発の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5

4 学校全体の規模 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5

5 研究開発の内容等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6

6 研究開発計画・評価計画 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23

7 研究開発成果の普及に関する取組 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25

8 研究開発組織の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26

②−3 SGH研究開発の実施内容

Ⅰ グローバル社会と技術研究会の活動報告

1 概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29

2 経緯 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29

3 内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29

4 研究開発実施上の課題及び今後の研究開発の方向・成果の普及 ・・・・・・・・・ 42

Ⅱ グローバル社会と技術・応用研究会の活動報告

1 概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44

2 経緯 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44

3 内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44

4 研究開発実施上の課題及び今後の研究開発の方向・成果の普及 ・・・・・・・・・ 55

Ⅲ SGH課題研究研究会の活動報告

1 概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 56

2 経緯 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 56

3 内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 57

4 研究開発実施上の課題及び今後の研究開発の方向・成果の普及 ・・・・・・・・・ 68

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Ⅳ 海外調査研修の報告

1 SGHマレーシア海外調査研修について ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 70

2 SGHフィリピン共和国海外調査研修について ・・・・・・・・・・・・・・・ 72

②−4 第3年次の研究のまとめと今後の課題・成果の普及

Ⅰ 第3年次の研究のまとめと今後の課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 76

Ⅱ 今後の課題・成果の普及 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 79

③ 関係資料

Ⅰ 平成29年度教育課程表

Ⅱ 中間報告会の記録

Ⅲ 運営指導委員会の記録

Ⅳ 連絡協議会等の記録

Ⅴ SGH関連の出張の記録

Ⅵ 報道機関等による取材・報道の記録

Ⅶ SGH生徒意識調査

Ⅷ 生徒成果物

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① 平成29年度スーパーグローバルハイスクール研究開発完了報告

(別紙様式3)

平成30年 3月 31日

研究開発完了報告書 文部科学省初等中等教育局長 殿

住所 東京都目黒区大岡山二丁目12番1号 管理機関名 国立大学法人東京工業大学 代表者名 契約担当役 理事・副学長 安 藤 真 印

平成29年度スーパーグローバルハイスクールに係る研究開発完了報告書を,下記によ

り提出します。

1 事業の実施期間

平成29年4月3日(契約締結日)~平成30年3月30日

2 指定校名

学校名 国立大学法人東京工業大学附属科学技術高等学校

学校長名 佐伯 元司

3 研究開発名

科学技術系素養を持つグローバルテクニカルリーダーの育成

4 研究開発概要

科学技術系の知識を有しながら,ビジネスフレームワークのような問題解決の枠組みな

どのマネージメントスキルをも有する人材を育成するため,また,リスク回避の観点から,

ESD理解を深めるため,産油国・鉱物資源産出国(フィリピン・オーストラリア・サウ

ジアラビア・アメリカ・中国・モンゴル)との国際交流を行う。その際,国際社会で活躍

するリーダーとして育成すべき資質と能力を明確にし,備えるべきスキルと地政学的リス

ク回避能力,語学力(英語によるコミュニケーション力等)を獲得するため,新科目「グ

ローバル社会と技術」「グローバル社会と技術・応用」および,マネージメントの手法や

費用便益分析などの定量的評価を取り入れた「SGH課題研究」を開発する。その際,東

京工業大学との連携教育を大幅に増強し,東京工業大学グローバルリーダー教育院・リベ

ラルアーツセンター・学術国際情報センター等や企業との連携を図りながら,斬新な育成

プログラムを開発・実践し,成果普及に努める。

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5 管理機関の取組・支援実績

(1)実施日程 大学教員派遣等 4月~3月実施

(2)実績の説明(研究対象は,全校生徒 573名)

① 附属科学技術高等学校での大学教授による特別講義(6月 30日)

第1学年開発科目「グローバル社会と技術」において,附属科学技術高等学校の専門

5分野に関係する本学の専攻から,5名の教員を派遣し,特別講義を実施した。

② 本学が主催する各種行事等への附属科学技術高等学校生徒の参加(7月)

ⅰ) “Communicating Science and Engineering in Society (CSES)-東工大サマープログラ

ム 2017”に,附属科学技術高等学校から希望した生徒 19 名が参加し,留学生と本

学学生が共に,問題解決へのアプローチの多様性を学ぶ授業に参加した。

ⅱ) 本学大岡山キャンパスにおいて,「サマーレクチャー」を9月に実施し,附属科

学技術高等学校第2学年全生徒が参加した。本学工学院機械系の伊能教夫教授が

「生物機械工学-生物を機械工学的 観点から考える-」と題した講演を行うと共に,

希望する2つの研究室見学を行った。また,11月に附属科学技術高等学校で開催さ

れた「サマーレクチャーレポート発表会」においては,講評者として本学教授を派

遣した。

③ 附属科学技術高等学校でのSGH中間報告会に学長出席(11月 22日)

SGH研究開発中間報告会の開催にあたり,三島良直学長が出席し,管理機関挨拶

を行った。また,中間報告会には,管理機関から水本副学長ほかを派遣した。

④ 附属科学技術高等学校での本学教授による講演会(2月 2日)

「グローバルリーダー育成講演会」と題して複数回実施される講演会に,本学リベラ

ルアーツ研究教育院池上彰特別教授を派遣し,講演会を行った。

⑤ 本学教授団による専門的支援

教育運営,教育工学,国際交流,工学専門などの専門的見地から支援するために,本

学から学内指導者として6名を選出し,運営指導委員会の委員として委嘱した。

⑥ 本学事務組織による支援

本学の事務組織である総務課,戦略統括会議,教育・国際連携本部などを中心に,本

研究開発の運営に対する支援を行った。

⑦ 管理機関における事業の管理

図1に示すように,本研究開発における研究組織体制を整備している。

図 1 SGH研究開発研究組織図

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6 研究開発の実績

6-1 グローバル社会と技術研究会(第1学年5クラス,200名を対象)

(1)実施日程 業務項目:授業実践等 実施日程:4月~3月実施

(2)実績の説明

① 新科目「グローバル社会と技術」の運営と試行

本科目は,グローバル人材育成の入り口の科目であることから,課題解決のための目

標設定過程の充実を図る科目と位置づけた。特に,社会課題自体が,社会科学・人文科

学や自然科学等に応じた見方・考え方を働かせながら,生徒の主体的・対話的で深い学

びの実現に向けた授業改善を行った。なお,特別講義や講演会では,先進的な研究に触

れると言った科学技術人材育成の意味合いではなく,大学教授がどのような問題意識を

持ち,どのように解決したか,実体験を帰納し,モデル化することに価値があると考え

た。また,中間報告会において,公開授業を行い,成果普及に努めた。

② 東京工業大学教員による特別講義

本学教員を講師として,6月 30日(金)14:15~15:15「特別講義」が行われた。それ

ぞれの講義のテーマ,講義者は以下の通りである。

①「有機化学によるものづくり」物質理工学院応用化学系 田中健 先生

②「プログラミングを楽しむ」 情報理工学院情報工学系 権藤克彦 先生

③「ロボットはできた。さあ,どう動かそう。」工学院システム制御系三平満司先生

④「風力発電を知っていますか」工学院電気電子系 七原俊也 先生

⑤「発展途上国の交通手段」環境・社会理工学院融合理工学系 花岡伸也 先生

③ フィールドワーク(校外研修)

12月 20日(水)横浜みなとみらい地区とその周辺において,第1学年生徒全員を対象

に授業の一環として校外研修を実施した。この地区は,多くの技術館・博物館・開港に

関する港湾施設等があり,フィールドワークに適している。生徒達は,地球環境の保全

やエネルギー問題に関するテーマを事前に考え,フィールドワークによる調査を経て,

レポートを提出した。レポートでは,種々の科学技術を体感し,フィールドワークで深

めた考えが読み取れる。

④ グローバルリーダー育成講演会

今年度は,第1学年対象のグローバルリーダー講演会を2回実施した。

第1回は,2月 2日(金)15:10~16:00,「グローバルリーダーのために国際情勢を説

く」と題し,ジャーナリストとして多くの著作を持ち,テレビ番組でも活躍中の本学教

授池上彰先生を迎え,講演会を実施した。直近のトピックである極東アジアの国際情勢,

アメリカ合衆国の大統領の近況,平昌オリンピック取材などを題材として,政治や社会

のしくみ,国際関係に及ぼす影響などを,現地で取材された経験を交え,わかりやすい

表現で次々と説明されていた。多くの取材経験に基づく様々な現象の見方,海外で気を

つけるべきことなど,大変興味深く,生徒から活発な質問がなされていた。

第2回は,3 月 14 日(金)13:30~15:00,「グローバル化時代に向けた英語学習」と

題し,NHKおとなの基礎英語講師・立教大学教授松本茂先生を迎え,講演会を実施し

た。グローバル化する社会の中で,使いものになる外国語の必要性などを強調されてい

た。聴衆である生徒の間にマイクを持って回りながら問答を試みるなど,生徒に直接訴

えかけていた。2回の講演会は,大きな成果を上げた。

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6-2 グローバル社会と技術・応用研究会(第2学年5クラス,200名を対象)

(1)実施日程 業務項目:授業実践等 実施日程:4月~3月実施

(2)実績の説明

新科目「グローバル社会と技術・応用」では,生徒の主体的・対話的で深い学びの実現

に向けた授業改善を念頭に,3種類のテーマ学習「中東・中央アジア理解」「イスラーム

文化研究」「英語によるコミュニケーションスキル」による価値観の異なる異文化への対

応をしている。さらに,「課題研究への道」によって,具体的に各専門分野での課題解決

に結びつけ,3年生での「SGH課題研究」につなげたい。

平成29年度は,今まで教員の頭の中にあった課題解決の手順を流れ図として可視化した。

生徒は,見方・考え方を働かせながら,知識を相互に関連付けてより深く理解し,「課題

研究への道」を充実させた。なお,中間発表会で公開授業を行い,成果普及に努めた。

また,以下の教育活動を行った。

・9 月 4日 本学大岡山キャンパスを訪問し,講演に参加,研究室訪問を行なった。

・9 月 28日,10月 5日 課題研究発表会参加

・11 月 17 日 本学大岡山キャンパス研究室訪問について全員がリサーチペーパーを提

出,各クラスでの代表が,プレゼンテーションを行なった。

・11月 21日 「人生における仕事の夢はなんだろうか?”はじめてのクルマ”を覚えて

いるだろうか?」講師:日産自動車株式会社 ニスモビジネスオフィスチーフ・プロダ

クト・スペシャリスト(兼)商品企画本部 第一商品企画部チーフ・プロダクト・スペ

シャリスト田村宏志氏による講演会を行った。

・12月 15日 「100歳までに死ねない皆さんに伝えるこれからの日本で起こること」講

師:日南市マーケティング専門官 田鹿倫基氏による講演会を行った。

・12 月 15日 「日南市・油津商店街再生事業 応援の連鎖がまちを変える」講師:那珂

川町事業間連携専門官 木藤亮太氏による講演会を実施した。

6-3 SGH課題研究研究会(第3学年5クラスを対象)

(1)実施日程 業務項目:授業実践等 実施日程:4月~3月実施

(2)実績の説明

① 「SGH課題研究」の運営と取り組み

本科目は,問題を見いだして解決策を考えたり,思いや考えを基に創造したりする実

践の場であり,研究の成果を示すパフォーマンスの場でもある。平成 29 年度の3年生は,

SGHプログラムをすべて学んだ最初の学年であるため,「SGH課題研究」に取り組

む生徒の割合が5分野すべてで目標の 30%をこえ,全体では 39.7%となった。また,課

題解決に当たり,見方・考え方を働かせながら,知識を相互に関連付けてより深く理解

し,情報を精査して考えを形成する指針となる流れ図を作成し,これをもとに指導した。

他方,SGH中間報告会(11/22)では,各専門分野2テーマずつ選出し、全体で10テー

マのポスターセッションを行った。

これらの活動の成果として,外部評価を受けるために,課題研究発表会等に参加した。。

② 講演会等の実施

外部講師等を招聘して下記の講演会(応用化学分野)および講評会(建築デザイン分

野)を行った。

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①応用化学分野講演会

講師:京都大学大学院工学研究科物質エネルギー化学専攻 東正信 助教

対象:応用化学分野2年生 日時:1 月 22日 14:15〜16:00

題目:「光触媒を用いた水分解(水素生成)」

②建築デザイン分野講評会

講師:宇都宮大学地域デザイン科学部建築都市デザイン学科准教授 安森亮雄 氏

対象:建築デザイン分野2年生 日時:2月 20日 9:00〜11:00

題目:「地域資源のリサーチとデザイン〜大谷石と空地から」

6-4 海外調査研修(対象生徒 14名)

参加生徒は,主体的に挑戦することや多様な他者と協働することの重要性等を実感できた。

(1)実施日程 業務項目:海外調査研修 実施日程:7月~8月実施

(2)実績の説明(マレーシア)

7 月 30 日(日)から 8 月 4 日(金)の6日間,生徒8名(男子6名,女子2名)と引

率教員3名でマレーシアにおいて調査研修,現地校との国際交流を行った。現地校にお

いて講義を受けた他,本校生徒がエネルギー・環境問題についての討議する機会が3回

あり,現地生徒との意見交換を通じて,価値観の違いを実感し,非常に有意義な研修と

なった。

(フィリピン共和国)

7 月 30 日(日)から 8 月 4 日(金),生徒6名(男子3名・女子3名),引率教員2

名がフィリピン共和国デ・ラ・サール大学附属高校で調査研修を行った。「異文化理解」

「コミュニケーション能力の育成」の観点から,ホームステイを実施した。校内での研

修(環境,エネルギーに関するプレゼンテーション・質疑応答),校外研修(デ・ラ・

サール大学研究室訪問,地熱発電所訪問)等プログラムに沿って研修を行った。

7 目標の進捗状況、成果、評価

7-1 中間評価への対応

私たちを取り巻く社会課題を解決するには,広義のサイエンス,すなわち,社会科学,

人文科学,自然科学等の特質に応じた物事を捉える視点や考え方(見方・考え方)を働

かせながら,生徒の主体的・対話的で深い学びの実現に向けた学習活動が必須となる。

このことを踏まえて本校では,SGH課題研究のあり方を全面的に見直し,知識を相互

に関連付けてより深く理解したり,情報を精査して考えを形成したり,問題を見いだし

て解決策を考えたり,思いや考えを基に創造したりすることに向かう過程について「課

題解決のため枠組み」として,流れ図を作成し,生徒に示すことで深い学習への道標と

した。

7-2 グローバル社会と技術研究会

探究学習の第一歩となる本科目では,学習活動として,

・解決すべきテーマの理解

・問題解決の手順を習得

・具体的な解決への提案

電力・環境と人間・都市・メカニズムで実施

情報モラル,技術者倫理では授業中はシミュレーション教材

(レポートでは実施)

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・英語による発表と討議

の4項目を掲げている。平成 29年度は,すべてのテーマについて,レポート作成場面にお

ける問題解決の流れ図を作成し,学習の対象となる物事を捉え思考し,テーマの特質に応

じた見方・考え方を働かせながら,知識を相互に関連付けてより深く理解し,情報を精査

して考えを形成する過程を重視した学習の充実を図った。

7-3 グローバル社会と技術・応用研究会

科目の実践を本格化させながら,価値観の異なる資源産出国との対話を深めることで,

多様な他者と協働するためには,共通のルールとしての制度が必要であり,そのためには,

社会科学の手助けが必要であることを学んだ。このような深い学びを実現するための方策

として,「Global Awareness」を,また,主体的・対話的であるために,「課題研究への道」

を実施し,情報を精査して考えを形成したり,問題を見いだして解決策を考えたり,思い

や考えを基に創造したりする探究学習を実施した。また,すべての専門分野において,制

約条件などを取り入れた流れ図を作成し,生徒に明確な指針を提案した。

なお,「Global Awareness」では,東京農工大学に滞在中の外国人留学生 8名が,ファシ

リテーターとしてグループディスカッションに参加した。留学生の中立的な意見を取り入

れることで,インクルージョン力をより育成できると考えられる。

7-4 SGH課題研究研究会

本格的な探究学習として,「SGH課題研究」を実施した。平成 29年度は,本科目に取

り組む生徒の割合が目標の 30%をこえ,39.7%となった。他方,生徒が学習の見通しを立

てたり学習したことを振り返ったりする活動を,計画的に取り入れ,外部評価を受けるた

め,第2回関東甲信越静地区スーパーグローバルハイスクール課題研究発表会に参加し,

金賞2件・銀賞2件を受賞,また,東京学芸大学課題研究成果発表会では,SGHポスタ

ー部門で優秀賞を受賞,日本建築学会「第7回子どものまち・いえワークショップ提案コ

ンペ」最優秀賞,慶應義塾大学「SFC 未来構想キャンプ」優秀賞などを受賞した。

7-5 海外調査研修

イスラーム教国の資源国での調査研修を本研究開発では必須としたため,訪問国にマレ

ーシアを選定し,フィリピンに加えて実施した。計画通りの成果を得ながら,経済的な立

場の違いに起因する考え方の違い(スラムにはペットボトルに水を入れて明かりを採れば

よいなど)を調査することができた。大きな成果であったといえる。

7-6 まとめ

研究第3年次は,新科目「グローバル社会と技術」・「グローバル社会と技術・応用」

において,第1・2年次に作成した教材を用いて,効果の検証をしながら,実践を進めた。

特に深い学びに導くため,「グローバル社会と技術」では,レポート作成場面,「グロー

バル社会と技術・応用」では,「課題研究への道」の実施場面,「SGH課題研究」では,

テーマ設定場面を想定した課題解決の必要な枠組みの流れ図を作成し,生徒に示した。

授業運営については,予定通り進み,教材内容についてもより実情に沿った改善がなさ

れてテキストを改定している。なお,これらの成果の一部は,中間報告会において公開授

スピーチコミュニケーションで実施(外国人教員)

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業を行うなど,成果普及に努めた。

他方,著名な人物による講演や助言等の実現,企業との連携との実現について計画した。

1年生のグローバルリーダー育成講演会において,マスコミで活躍されている東京工業大

学リベラルアーツ教育院特別教授池上彰氏とNHKテレビ「おとなの基礎英語」講師であ

る立教大学教授松本茂氏を招くことができ,生徒のモチベーションは高まった。また,企

業との協働を意識し,2年生のグローバルリーダー育成講演会を企業人に限り,日産自動

車株式会社の田村宏志氏,日南市マーケティング専門官の田鹿倫基氏,那珂川町事業間連

携専門官の木藤亮太氏を招いた。現実のグローバルリーダーの課題への取り組み,起業へ

のチャレンジについて触れることができたと考えている。

「SGH課題研究」では,中間評価においてのご指摘を踏まえ,生徒の主体的・対話的

で深い学びの実現に向けた授業改善の一環として取り組んだ。年度途中での再検討となっ

たが,外部評価を受けるために,課題研究発表会等に参加した。多くの受賞は再検討が反

映されたことによると考えている。

管理機関と附属科学技術高等学校との連携については,図1に示す研究組織により,本

学教授陣による理解と協力の下,支援を行うことができている。

<添付資料>目標設定シート

8 次年度以降の課題及び改善点

8-1 グローバル社会と技術研究会

社会課題解決には,基礎的・基本的な知識及び技能を活用して,課題を解決するため

に必要な思考力,判断力,表現力等を育む必要がある。研究第3年次に作成した「レ

ポート作成場面における問題解決の流れ図」は,その手助けとなるものであるが,さ

らなる充実が求められる。また,課題解決の「出口」について着目させる必要がある。

本科目は,研究第2年次に引き続き,東京工業大学教員による特別講義,著名人による

グローバルリーダー育成講演会を実施し,生徒の興味喚起に大きく役立つことが確認され

た。研究第3年次は,マスコミ等でご活躍の本学特別教授池上彰先生,NHKテレビ「お

となの基礎英語」の講師をされている立教大学教授松本茂先生に講師をお引き受けいただ

いた。著名人による講演は,生徒のモチベーションを高め,効果が大きいが,これを見方

・考え方などの育成に結びつけなければならない。

8-2 グローバル社会と技術・応用研究会

研究第3年次では,課題解決のプロセスを各分野に応じた流れ図にまとめることができ

た。本科目では,問題を見いだして解決策を考えたり,思いや考えを基に創造したりする

ことを実践する探究学習を本格化させるため「課題研究への道」を実施した。今後は,作

り上げた流れ図を個々の事例に当てはめていくといった演繹的な活動を反復する必要があ

る。すなわち,流れ図をマニュアルとして,問題が生じればすぐにそこに戻り,方針を修

正する,いわば統制がとれたアクティブラーニングの試みである。

次年度は,各分野の取組について議論を重ね,「出口」の活動を意識しながら設計し,

可能な限り最大公約数を見つけていく必要があるだろう。それによって,共通の社会課題

を解決するためには,共同での取組,さらには分野の枠に留まらない,合同での取組を模

索することが可能であると考えている。

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8-3 SGH課題研究研究会

研究第3年次では,中間評価でのご指導,視察の際にも科学技術系人材育成との違いに

ついてご指摘があり,ご指導を踏まえて,社会科学,人文科学,自然科学等の特質に応じ

た物事を捉える視点や考え方を働かせながら,生徒の主体的・対話的で深い学びの実現に

向けた授業改善を行うための探究学習として,本科目の開発に取り組む必要がある。

なお,これらの活動の成果普及,および外部評価を受けることを目的として,課題研究

発表会等に参加した。第2回関東甲信越静地区スーパーグローバルハイスクール課題研究

発表会では、金賞2件・銀賞2件,東京学芸大学課題研究成果発表会では,SGHポスタ

ー部門で優秀賞受賞,日本建築学会「第7回子どものまち・いえワークショップ提案コン

ペ」最優秀賞,慶應義塾大学「SFC 未来構想キャンプ」優秀賞などを受賞した。今後はご

指導に鑑み,最適な案を提案した後の「出口の活動」を活発化させる必要がある。

8-4 海外調査研修

海外調査研修は,主体的に学習に取り組む態度を養い,個性を生かし多様な人々との協

働を促す教育の充実に努める絶好の場としなければならない。またその成果を他の生徒に

広めていく必要がある。今回の研修では,個人の経済力の違いがエネルギーの平等利用と

いった考え方すら阻んでいる実態が,高校生にもあることが明らかになった。今後は,個

性を生かし多様な人々との協働を促すための活動に,重きを置きたいと考えている。

8-5 まとめ

私たちを取り巻く社会課題を解決するため,社会科学,人文科学,自然科学等の特質に

応じた見方・考え方を働かせながら,生徒の主体的・対話的で深い学びの実現に向けた学

習活動をさせなければならない。本校は,科学技術高校であることから,生徒の関心が自

然科学的解決に比重を置く傾向があるが,本来の目的であるグローバル人材の育成に向け,

知識を相互に関連付けてより深く理解したり,情報を精査して考えを形成したり,問題を

見いだして解決策を考えたり,思いや考えを基に創造するための取り組みとして,SGH

開発科目を設定している。このような取り組みは,新開発科目のわずか数単位で成し遂げ

られるものではない。それゆえ,科目間の連携を図る必要があることから,カリキュラム

・マネジメント構想が必要であり,本校が置かれている立場を理解するための状況分析の

柱となると考えている。

その他,従来の計画による部分は,すでに軌道に乗り,新科目に使うテキストの改訂も

順調に進んでおり,特段問題はない。しかし,次年度には,企業との連携,地元港区や商

店会との連携といった「出口の活動」を模索し,本校で開発中の課題解決のための流れ図

(枠組み)の中に取り入れていく必要がある。また,成果普及のため,SGH課題研究発

表会等への参加の推進,公開のためにテキストを改訂し,アーカイブ化を進める。

【担当者】

担当課 総務部総務課 TEL 03-5734-2031

氏 名 田中 昇 FAX 03-5734-3649

職 名 総務課長 e-mail [email protected]

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<添付資料>平成27年度スーパーグローバルハイスクール 目標設定シート

【別紙様式7】

1.本構想において実現する成果目標の設定(アウトカム)

平成27年度スーパーグローバルハイスクール 目標設定シート

26年度 27年度 28年度 29年度 30年度 31年度 目標値(31年度)

ふりがな とうきょうこうぎょうだいがくふぞくかがくぎじゅつこうとうがっこう指定期間 27~31学校名 東京工業大学附属科学技術高等学校

25年度

d

公的機関から表彰された生徒数、又はグローバルな社会又はビジネス課題に関する公益性の高い国内外の大会における入賞者数

   6人   47人 0人 0人       人       人       人

目標設定の考え方:授業等の中で各種大会を紹介し、積極的にかかわることで自己達成感を得る。

   6人

   8人 35人 39人       人       人  15人SGH対象生徒:

SGH対象生徒以外:

b

自主的に留学又は海外研修に行く生徒数

  7人    63人 0人       人       人       人       人

目標設定の考え方:校内の国際交流の体験から、リーダーの備えるべき、真の交流のため、留学や海外研修に取り組みようすすめる。

  20人

   13人 72人 80人       人       人 50人SGH対象生徒:

SGH対象生徒以外:

a

自主的に社会貢献活動や自己研鑽活動に取り組む生徒数

  12人 143人 147人       人       人 100人

目標設定の考え方:SGHの活動を通し、リーダーとしての資質を育成するため、ボランティア活動や自己研鑽について考えさせる。

28人   24人   118人 0人 0人       人       人       人

SGH対象生徒:

SGH対象生徒以外:

e

卒業時における生徒の4技能の総合的な英語力としてCEFRのB1~B2レベルの生徒の割合

23.90% 8.84% 0% 0%       %       %       %

目標設定の考え方:外国人教員や留学生TAとふれあうことで、英語学習に対する意欲を増進させる。

26%

22.50% 18.86% 26.06%       %       % 70%SGH対象生徒:

SGH対象生徒以外:

c

将来留学したり、仕事で国際的に活躍したいと考える生徒の割合

49.50% 50.47% 0% 0%       %       %       %

目標設定の考え方:SGHの授業や講演会などを通して、グローバルリーダーとして国際的に活躍しようという意欲を養う。

55.20%

62.50% 47.67% 53.03%       %       % 90%SGH対象生徒:

SGH対象生徒以外:

f

(その他本構想における取組の達成目標)グローバルリーダに必要な、多様性に対する受容力を有する生徒の割合

- 48.77% 0% 0%

目標設定の考え方:外国人に対し、共通点,相違を乗り越えた異文化コミュニケーションできる態度の育成を行う。

-

40.00% 54.49% 60.19% 70%SGH対象生徒:

SGH対象生徒以外:

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1’指定4年目以降に検証する成果目標

SGH対象生徒:

SGH対象生徒以外:

SGH対象生徒:

SGH対象生徒以外:

SGH対象生徒:

SGH対象生徒以外:

SGH対象生徒:

SGH対象生徒以外:

      %       % 40%

      人       人       人       人       人

目標値(34年度)

a

国際化に重点を置く大学 へ進学する生徒の割合

19.50%       %       %       %       %       %       %

26年度 30年度 31年度 32年度 33年度 34年度25年度

21.10%

目標設定の考え方:SGUタイプA型のスーパーグローバル大学への進学をすすめる。

      %       %       %

b

海外大学へ進学する生徒の人数

   0人       人       人       人       人       人       人   0人

目標設定の考え方:グローバルな視点を養うことを通して、海外の大学への進学にも視野を広げさせる。

  5人

c

SGHでの課題研究が大学の専攻分野の選択に影響を与えた生徒の割合

-       %       %       %       %       %       %-

      %       %       %       %       % 100%

d

大学在学中に留学又は海外研修に行く卒業生の数

-       人       人       人       人       人       人-

目標設定の考え方:高校での経験を活かし、大学でも積極的に国際的な活動に取り組む態度を養成する。

      人       人       人       人       人 100人

目標設定の考え方:課題研究等の研究活動の楽しさややりがいを体験させることを通して専攻分野に影響を与える。

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2.グローバル・リーダーを育成する高校としての活動指標(アウトプット)

<調査の概要について>1.生徒を対象とした調査について

148 0 0 0 0SGH対象外生徒数

25年度 26年度 27年度 28年度 29年度 30年度 31年度

584 588 572 572 573 600 600

424 572 573 600 600

全校生徒数(人)

SGH対象生徒数

26年度 27年度 28年度 29年度 30年度 31年度 目標値(31年度)25年度

a

課題研究に関する国外の研修参加者数

  0人    14人 14人 14人       人       人  20人

目標設定の考え方:国際交流校を通して、共通の課題研究テーマを設定し、競わせる。

   0人

b

課題研究に関する国内の研修参加者数

  0人 187人   185人   182人       人       人 200人

目標設定の考え方:国内の高校との交流や、課題研究中間発表会などで、指導、助言等を行う。

  0人

c

課題研究に関する連携を行う海外大学・高校等の数

  0校     1校     1校     1校       校       校  3校

目標設定の考え方:新たな国際交流提携校と連携を始めると共に、今後、1校交流先を増やす。

  0校

d

課題研究に関して大学教員及び学生等の外部人材が参画した延べ回数(人数×回数)

 0人     3人     4人 10人       人       人  20人

目標設定の考え方:テーマに応じ、大学教員や大学院生のTA等に指導、助言等を受ける。

  0人

e

課題研究に関して企業又は国際機関等の外部人材が参画した延べ回数(人数×回数)

   0人     1人     3人 10人       人       人   5人

目標設定の考え方:テーマに応じ、外部の企業や、国際機関の方に指導、助言等を受ける。

  0人

f

グローバルな社会又はビジネス課題に関する公益性の高い国内外の大会における参加者数

   0人     5人    13人 28人       人       人  20人

目標設定の考え方:スピーチコンテストや各種懸賞論文などの応募を促し,受賞による自己高揚感を得させる。

   0人

g

帰国・外国人生徒の受入れ者数(留学生も含む。)

   0人     2人     2人 11人       人       人  20人

目標設定の考え方:帰国・外国人生徒への選抜、対応方法も含め、徐々に拡大を目指す。

   0人

h

先進校としての研究発表回数

   1回     1回     1回 2回       回       回    4回

目標設定の考え方: 課題研究の発表会を拡充し、年2回の発表会を行うと共に研究発表大会を行う。

   0回

目標設定の考え方:

目標設定の考え方: 現在TOPページのみの英語のページがあるが,これを全体に広げると共に英語でのタイムリーな情報を提供する。

j

(その他本構想における取組の具体的指標)

i

外国語によるホームページの整備状況

○整備されている  △一部整備されている  ×整備されていない

△ △ ○ ○ ○△

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− 1 −

② 実施報告書(本文)

②-1 平成29年度SGH研究開発の成果と課題

Ⅰ 総 論

研究第3年次を迎え,研究内容の充実を図る年度であるが,本校では中間評価の結果と

その際に頂戴した指導内容,視察の際に頂戴した指導内容を基に研究計画を見直し,新た

な展開をスタートさせることとなった。本校は科学技術高校として,科学技術系人材の育

成を目的としてきたが,今般,スーパーグローバルハイスクール研究開発の指定を受け,

従来からの科学技術系人材育成教育とグローバル人材育成教育を,別個の教育として並行

させてきた。なぜなら,両者は人材育成の目的やそのための手法が異なるゆえ,あえて切

り離した対応を行ってきた。

しかし,グローバル人材育成教育で取り組む社会課題は,広義のサイエンス,すなわち,

社会科学,人文科学,自然科学等の特質に応じた物事を捉える視点や考え方(見方・考え

方)を働かせながら,生徒の主体的・対話的で深い学びの実現に向けた学習活動が必須と

なる。

本校では,知識を相互に関連付けてより深く理解したり,情報を精査して考えを形成し

たり,問題を見いだして解決策を考えたり,思いや考えを基に創造したりすることに向か

う過程を「課題解決のため枠組み」として,流れ図を作成し,生徒に示すことで深い学習

への道標とした。すなわち,本校のグローバル人材育成教育では,自然科学を支援したり

補完したりするために人文・社会科学を用いるのではなく,これらの特質に応じた見方・

考え方を働かせ,社会課題の解決策を見出し,プロジェクトとして取り組み,最適な解決

案を提言していくものとした。そのためには,社会科学的な問題提起を自然科学的な解決

案に,あるいは,自然科学的な問題提起を社会科学的な解決案に変換することが必要であ

り,それぞれの場面において社会課題を捉え直すことが求められる。

グローバルリーダーは,この見方・考え方を縦横無尽に使いこなして,解決案を提案す

る力が必要である。だからこそ,高校段階で身につけるべき知識・スキル,技能等は,問

題解決学習における検証方法として重要な役割を持つ。

Ⅱ 平成29年度の成果

1 中間評価への対応

中間評価の指導内容

○グローバル社会への視点をもてるよう地政学的な基礎的・基本的な知識を補うテ

キストや開発科目に関わるテキストを開発している点が評価できる。

○SGH・SSHどちらの指定も受けているが、学校全体としてグローバル人材と

科学技術系人材育成の整合性がとれていないため、学校全体で検討し、SGHと

しても研究体制や課題研究内容の充実が図られる必要がある。

○高大連携によりグローバルな社会の現状を知るための学習は充実しているが、今

後は課題研究へ向けての自己課題の設定や問題解決の出口としての活動を充実

させていくことが課題である

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本校では,中間評価の結果,および視察でのご指導を真摯に受けとめ,以下を改善す

べき問題点として検討した。

(1)主体的・対話的で深い学びの実現に向け,グローバル人材育成と科学技術人材育

成の関係を明確にし,整合性をとる。

(2)SGHとして研究体制や課題研究内容の充実を図る。

(3)自己課題の設定や問題解決の出口としての活動を充実する。

(1)については,すでに総論で述べたが,グローバル人材育成教育で取り組む社会

課題は,社会科学,人文科学,自然科学等の特質に応じた見方・考え方を働かせながら,

生徒の主体的・対話的で深い学びの実現に向けた学習活動が必須となる。人との対話,

本との対話,情報との対話を通じ,見方・考え方を駆使して,解決案を可能な限りあげ

ていくことが必要となる。そして,探究学習に当たっては,知識を相互に関連付けてよ

り深く理解したり,情報を精査して考えを形成したり,問題を見いだして解決策を考え

たり,思いや考えを基に創造したりすることが必要である。本校の開発科目は,すべて

この考えに則って開発されている。それに対し,科学技術系人材育成では,自然科学を

対象とし,国際化の場面では,科学技術を共通語とした国際交流を図る。また,学習に

当たっては,基礎で学ぶもの,それを土台に応用として学ぶものがあり,これらの学習

の中で起こった疑問を課題として解決するため,学習の総まとめとして探究学習(課題

研究)がある。

(2)については,今般,SGHとしての活動に当たっては,(1)によく留意し,自

然科学の範疇に留まることなく,SGHの趣旨に沿った「SGH課題研究」に向け,活

動を見直すこととした。この結果,「SGH課題研究」の指導を修正し,知識を相互に関

連付けてより深く理解したり,情報を精査して考えを形成したり,問題を見いだして解決策

を考えたり,思いや考えを基に創造したりする探究学習と捉えるように指導した。

(3)については,自己課題の設定に関して,「グローバル社会と技術」の充実を一層

図るために,課題設定について問題解決の流れ図を作成した。また,問題解決の出口と

しての活動に関して,視察の際にご助言いただいた「泥臭い活動」をすべく指導を重視

した。すなわち,解決案を最終回答とするだけでなく,実際に使ってもらうとか,それ

によるインタビューを行うなど提案後の制度設計に踏み込んで,「SGH課題研究」の設

計を行うよう指導した。なお,本格的な転換は,次年度にスタートさせる。

2 研究の仮説

本研究開発では,以下の項目について,仮説を立てた。

(1)高校段階において育むべき資質と能力について,「リーダーが備えるべきスキル」,

「地政学的リスク回避能力」,「語学力」の3要素を柱とする。

(2)「リーダーが備えるべきスキル」とは,“インクルージョン力(多様性受容力)”・“バ

ックキャスティング力(目標から現在すべきことを考える力)”・“コンセンサスビル

ディング力(合意形成力)”を備えるべき不可欠なスキルとして提案する。

(3)上記(1)(2)を実現するために,新科目「グローバル社会と技術」,「グローバル社会と

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技術・応用」の開発・実践する。

(4)資源産出国であるフィリピン・マレーシアでの海外調査研修の実施。

(5)マネージメントや費用便益分析などの考え方を取り入れた「SGH課題研究」の開

発・実践する。

(6)上記(3)(4)(5)の実践により,グローバルテクニカルリーダー(GTL: Global Technical

Leader)を育成することができる。

これらの実現には,東京工業大学との連携が不可欠であり,高大連携をさらに緊密に

する必要がある。

3 平成29年度の取り組み

各開発科目は,探究学習のために設けられたものであり,生徒の主体的・対話的で深い

学びの実現に向けた学習活動とならなければならない。そのために必要な実践した。

(1)のうち「リーダーが備えるべきスキル」については,その大部分が問題解決能力を

身につけることで,獲得が期待できることから,(3)の開発科目「グローバル社会と技術」

における課題設定の取り組み,開発科目「グローバル社会と技術・応用」における「課題

研究への道」,(5)の開発科目「SGH課題研究」の取り組みにより,実践を続けている。

平成 29 年度の取り組みでは,前項の研究活動見直しに伴い,社会課題の捉え方,解決方

法の策定や解決案に提案において,自然科学的解決ありきではなく,あらゆる可能性を

検討するよう生徒の指導を変更している。

(2)のうち「地政学的リスク回避能力」については,昨年度の取り組みに引き続き,「グ

ローバル社会と技術・応用」の中で,「中東・中央アジア理解」および「イスラーム文化研

究」を実施するとともに,緊迫するアジア情勢に詳しい,本学特別教授池上彰先生の講

演会を実施し,生徒の興味・関心を引き出すことに成功した。また,企業との連携を図る

必要があることから,第2学年では,日産自動車株式会社の田村宏志氏,日南市マーケ

ティング専門官の田鹿倫基氏,那珂川町事業間連携専門官の木藤亮太氏を招いた。成功

体験が生徒を刺激し,問題解決のためには,自らの考えをいかに課題として設定してい

くか,グローバルリーダーから課題設定の重要性を学んだ。

(2)のうち「語学力」では,「グローバル社会と技術」内の1テーマである「スピーチ

コミュニケーション」および「グローバル社会と技術・応用」の中で「Global Awareness」

を外国人教員によって実施した。また,NHKテレビおとなの基礎英語講師・立教大学教

授松本茂先生の講演により,グローバルリーダーには,ただ単なる知識だけではなく,

からだ全体でのコミュニケーションスキルが必要であり,さらなる語学力への鍛錬が必

要であることを学んだ。これらの取り組みにより,英検受験者・合格者は増加の傾向に

ある。

(4)のうち海外調査研修および国際交流事業については,本校の協定校があるフィリピ

ン共和国の他,イスラーム教国であるマレーシアでの実施とした。アラブ圏の国際情勢

が安定しないため,比較的安全な東南アジアのイスラーム教国マレーシアでの調査研修

を先行した。この渡航先の変更については,変更申請をさせて頂いている。渡航に際し

て,フィリピンでは,昨年度同様,ホームステイを実施し,多様性受容力を鍛えている。

また,マレーシアにおいても,昨年同様に,資源を産出するボルネオ島サラワク州を中

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− 4 −

心に,大学と2つの高校を訪問した。両国とも学校訪問にあたっては,エネルギー・環境

問題に関する生徒の主張を披露し,討議した。平成 29 年度の渡航では,スラムの人々へ

の対応をフィリピン側から引き出すことができた。おカネがないのなら屋根に水の入っ

たペットボトルを挿し,部屋を明るくすれば良いとするアイデアは,根本的な解決には

なっておらず,所得の差が事実上の身分の差となっていると思われる。これらの成果は,

国際交流報告会によって,渡航していない生徒にも広く伝えた。これらの取り組みによ

り,海外調査研修の希望者は,大きく増加し,14 名の枠に3倍以上の応募があった。生

徒の関心の高さを示している。

(5)の「SGH課題研究」については,中間評価での指導,視察の際にもSSHとの違

いについてご指摘があり,ご指導を踏まえて,取り組みを大きく転換することとなった。

本科目は,問題を見いだして解決策を考えたり,思いや考えを基に創造したりする実践

の場であり,研究の成果を示すパフォーマンスの場と捉えている。

平成 29 年度の第3学年は,第1学年に「グローバル社会と技術」,第2学年に「グロ

ーバル社会と技術・応用」(「課題研究への道」を含む)などのSGHプログラムをすべ

て学んだ最初の学年であるため,「SGH課題研究」に取り組む生徒の割合が5分野すべ

てで目標の 30%を超え,全体では 39.7%となった。また,テーマ設定に指針となる流れ

図を作成し,これをもとに指導した。他方,SGH中間報告会(11 月 22 日実施)では,各

専門分野2テーマずつ選出し、全体で 10 テーマのポスターセッションを行った。

これらの活動の成果として,外部評価を受けるために,課題研究発表会等に参加した。

第2回関東甲信越静地区スーパーグローバルハイスクール課題研究発表会では、金賞2

件・銀賞2件,東京学芸大学課題研究成果発表会では,SGHポスター部門で優秀賞受

賞,日本建築学会「第7回子どものまち・いえワークショップ提案コンペ」最優秀賞,

慶應義塾大学「SFC 未来構想キャンプ」優秀賞などを受賞した。

Ⅲ 平成29年度の課題

私たちを取り巻く社会課題を解決するため,社会科学,人文科学,自然科学等の特質に

応じた見方・考え方を働かせながら,生徒の主体的・対話的で深い学びの実現に向けた学

習活動をさせなければならない。本校は,科学技術高校であることから,生徒の関心が自

然科学的解決に比重を置く傾向があるが,本来の目的であるグローバル人材の育成に向け,

知識を相互に関連付けてより深く理解したり,情報を精査して考えを形成したり,問題を

見いだして解決策を考えたり,思いや考えを基に創造するための取り組みとして,SGH

開発科目を設定している。このような取り組みは,新開発科目のわずか数単位で成し遂げ

られるものではない。それゆえ,科目間の連携を図る必要があることから,カリキュラム・

マネジメント構想が必要であり,本校が置かれている立場を理解するための状況分析の柱

となると考えている。

その他,従来の計画による部分は,すでに軌道に乗り,新科目に使うテキストの改訂も

順調に進んでおり,特段問題はない。しかし,次年度には,企業との連携,地元港区や商

店会との連携といった「出口の活動」を模索し,本校で開発中の課題解決のための流れ図

(枠組み)の中に取り入れていく必要がある。また,成果普及のため,SGH課題研究発

表会等への参加の推進,公開のためにテキストを改訂し,アーカイブ化を進める。

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− 5 −

②−2 研究の概要

Ⅰ 研究開発の指定期間

指定を受けた日から平成 32 年 3 月 31 日

Ⅱ 研究の概要および本校の概要

1 研究開発構想名

科学技術系素養を持つグローバルテクニカルリーダーの育成

2 研究開発の目的・目標

(1)目的

多様化する国際社会で活躍する人材を輩出する視点から,科学技術系素養を持つ科

学技術高校生徒に育成すべき資質と能力を提案し,高大連携教育を大幅に増強した“グ

ローバルテクニカルリーダー”プログラムを実践し,成果普及に努める。

(2)目標

多様化する国際社会で活躍するリーダーとしての資質と能力を身につけると共に,

資源産出国との国際交流を軸に,地政学的な基礎知識を元にリスクを回避できる“グ

ローバルテクニカルリーダー”の育成を図る。その際,高大連携教育を大幅に増強し,

高大を貫くグローバル人材の育成を目指し,求められる資質と能力を提案すると共に,

実現のための新科目「グローバル社会と技術」「グローバル社会と技術・応用」および

「SGH課題研究」を軸とした育成プログラムを開発・実践し,成果を普及する。

3 研究開発の概要

科学技術系の知識を有しながら,ビジネスフレームワークのような問題解決の枠組み

などのマネージメントスキルをも有する人材を育成するため,リスク回避の観点から,

ESD理解を深めるため,産油国・鉱物資源産出国(フィリピン・オーストラリア・サ

ウジアラビア・アメリカ・中国・モンゴル)との国際交流を行う。その際,国際社会で

活躍するリーダーとして育成すべき資質と能力を明確にし,備えるべきスキルと地政学

的リスク回避能力,語学力(英語によるコミュニケーション力等)を獲得するため,新

科目「グローバル社会と技術」「グローバル社会と技術・応用」および,マネージメント

の手法や費用便益分析などの定量的評価を取り入れた「SGH課題研究」を開発する。

その際,東京工業大学との連携教育を大幅に増強し,東京工業大学グローバルリーダー

教育院・リベラルアーツセンター・学術国際情報センター等や企業との連携を図りなが

ら,斬新な育成プログラムを開発・実践し,成果普及に努める。

4 学校全体の規模

課程・学科・学年別生徒数,学級数(平成30年3月現在)

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課程 学科 第1学年 第2学年 第3学年 計

生徒

学級

生徒

学級

生徒

学級

生徒

学級

数 全日制 科学・技術科※ 201 5 189 5 182 5 572 15

計 201

5 189 5 182 5 572 15

※第1学年では全教科を共通に履修する。第2学年以降の専門教科では,

材料科学・環境科学・バイオ技術分野 (応用化学分野)

情報・コンピュータサイエンス分野 (情報システム分野)

システムデザイン・ロボット分野 (機械システム分野)

エレクトロニクス・エネルギー・通信分野(電気電子分野)

立体造形・ディジタルデザイン分野 (建築デザイン分野)

の5分野に分かれて履修する。(括弧内は各分野の略称である。)

5 研究開発の内容等

(1)全体について

A) 現状の分析と課題

文部科学省(2014)は「育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価

の在り方に関する検討会」の論点整理*1 や次期学習指導要領改訂の議論を踏まえた

文部科学大臣の諮問*2(2014)を公表し,我が国の子供たちにとって今後特に重要

と考えられる,何事にも主体的に取り組もうとする意欲や多様性を尊重する態度,

他者と協働するためのリーダーシップやチームワーク,コミュニケーションの能力

などの関係,および,それらの育成すべき資質・能力と,各教科等の役割や相互の関

係の構造化などの検討を求めている。

本校は,科学技術系の素養を育成する科学技術高校であり,国際社会で活躍でき

るグローバルリーダーを育成するためには,普通科の高校とはベースが異なるため,

新たな「育成すべき資質・能力」を提案して「生きる力」の育成を具現化する新し

い教育システムを構築しなければならない。本校では,科学技術系の素養を持つグ

ローバルリーダーを“グローバルテクニカルリーダー(GTL)”と称することとす

る。GTLは,たとえば,技術専門者をうまく使いながら,グローバルに生産・販

売拠点を置き,安定的(リスクを回避しながら)製品を生産し,流通させ,利益を

上げられるような生産・販売計画を立案できるような資質を想定しており,ある程

度の科学技術系の知識を有しながら,マネージメントスキル,すなわち,ビジネス

フレームワークのような問題解決の枠組みを使いこなせる人材である。このGTL

の人物像は,本校のスクールポリシーに掲げる生徒像とも合致すると考えている。

しかし,GTL育成のためには,新たに,学ぶべき内容の精査,学習・指導方法や

学習の成果を検証し,情報技術(ICT)を大幅に活用するなど指導方法の改善や

パフォーマンス評価方法を開発して,充実を図る必要がある。

いままでに,3 期 13 年にわたるSSH研究開発指定を受け,科学技術系人材に必要

な力として,第1期SSHでは,創造性の基盤となる「わかる」「えがく」「つくる」,

第2期SSHでは,第1期の発展型として「いどむ」「わかりあう」,そして第3期

SSHでは,さらに社会のニーズに応えるべく「伝え合い学び合う」を掲げ,コミ

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− 7 −

ュニケーション力の育成(「科学技術コミュニケーション入門」の開発),課題研究

の実践によるチームワークの育成など,個別に必要な力を伸ばす努力を重ねてきた。

これらに加えて,国際交流による成果も着実に積んでいる。その結果,本校の独自

調査では,将来留学,あるいは仕事で国際的に活躍したいと思う割合が,55.2%(第

2学年)に達するが,実際に留学経験(短期も含む)がある割合は,13.6%に留まる

という現実がある。すなわち,今までの研究開発は,科学者・技術者としての素養

を身につけるものとして,一定の成果を上げながらも,グローバルリーダーの育成

という観点からは取り組んでこなかったといわざるを得ない。そこで本校では,G

TL育成のために,高校段階において育成すべき資質と能力を,「リーダーが備える

べきスキル」,「地政学的なリスク回避力」,「語学力」の3点を提示する。

「リーダーが備えるべきスキル」とは,“インクルージョン力(多様性受容力)”・“バ

ックキャスティング力(目標から現在すべきことを考える力)”・“コンセンサスビル

ディング力(合意形成力)”を備えるべき不可欠なスキルとして提案する。これら3

つの能力は,正課の中で明示的に育成されることはなかった。“インクルージョン力”

とは,ダイバーシティ&インクルージョンが可能な能力のことで,異文化理解を進

め,世界の文化,民族など様々な多様性を受容する能力を指すとともに,先入観な

く多様な情報を受け入れる情報収集力,情報活用力を含む。次に,“バックキャステ

ィング力”とは,持続可能な社会を目標として掲げ,それを実現するために現在を

振り返って,今は何をするべきかを考えることができる力であり,目標実現のため

の企画力である。この能力育成のためには,本校のスタッフの他,企業などで人材

育成をしている方(メーカーまたは,コンサルティング,JETRO など)の協力が必

要である。“コンセンサスビルディング力”とは,コミュニケーション過程において,

相手に納得してもらい,自らの意見に賛同してもらう合意形成力である。この

know-how を,本校ではかねてより“科学技術コミュニケーション”として蓄積して

おり,応用の準備は整っている。

「地政学的なリスク回避力」とは,地域に依存するリスクを理解した上で,リス

クを回避するための意思決定できる能力で,たとえば,世界各地から,どのように

部品を集め,どこで生産し,どこで売るのか,といったことをさまざまな経済情勢

やそれぞれの地域の抱えるリスクなどを,考慮しながら考えることができる能力で

ある。なかでも,リスクを回避するためには,地球全体が抱える様々な問題に精通

する必要があり,殊に,エネルギー問題や環境問題について理解を深める必要があ

る。本校では,新たなESD理解を図るため,産油国などの鉱物資源産出国の実情

を把握する必要性から,特に正課の中で学ぶことは少ない中東・中央アジアやイス

ラーム文化について,異文化コミュニケーションに必要な知識を補填する計画であ

る。また,我が国とは立場の異なるこれらの国々の,特に高校生の意識は,文献資

料では計りがたい。そのため,国際交流によって,直接肌で感じ取らせることを計

画した。これらの取組は,地理歴史科の世界史や公民科の政治・経済,倫理と関連

させ,東京工業大学リベラルアーツセンター等との連携を図りながら,内容を精選

する。

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「語学力」とは,英語によるコミュニケーション力を指し,ツールとしての英語

力を充実させる必要がある。これらを具体的に活かす場として,国際交流を推進す

るが,エネルギー問題・環境問題の理解を深めるためには,産油国であるサウジア

ラビア王国・世界最大級の鉱物資源保有国であるアメリカ合衆国・中華人民共和国,

フィリピン・オーストラリア・そしてモリブデンの埋蔵量が世界屈指であるモンゴ

ル国といった資源産出国との交流が不可欠である。これにより,資源に対する考え

方の違いを理解しうると考えている。また,資源消費国についても,日本だけの考

えでは,グローバルな視野とは言えないため,日本と同じように資源を持たない東

アジア各国との交流(韓国など)が欠かせないと考えている。

GTL育成のために必要なこれらの資質や能力は,3つの新科目「グローバル社会

と技術」,「グローバル社会と技術・応用」および,マネージメントや費用便益分析

などの考え方を取り入れた「SGH課題研究」を開発する必要があり,東京工業大

学との連携教育の大幅増強,東京工業大学グローバルリーダー教育院・リベラルア

ーツセンター・学術国際情報センター等との連携が不可欠となる。

*1 育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会(2014) 論点整理

http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2014/07/22/1346335_02.pdf(参照日 2015.2.9)

*2 初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問),文部科学大臣 (2014).

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1353440.htm(参照日 2015.2.9)

B) 研究開発の仮説

高校段階において育むべき資質と能力について,「リーダーが備えるべきスキル」,

「地政学的リスク回避能力」,「語学力」の3要素を柱とする,新科目「グローバル

社会と技術」,「グローバル社会と技術・応用」の開発・実践,フィリピン・オース

トラリア・サウジアラビア・アメリカ・中国・モンゴルといった資源産出国・韓国

などの東アジアにおける資源消費国との国際交流および,マネージメントや費用便

益分析などの考え方を取り入れた「SGH課題研究」の開発・実践により,科学技

術の素養を持つことを活用しながら,新しいタイプの先導者となりうる“グローバ

ルテクニカルリーダー”を育成することができる。

(2)課題研究について

A) 課題研究内容

a 「SGH課題研究」に向けた新科目「グローバル社会と技術」

新科目のうち,「グローバル社会と技術」は,グローバルな視野で,現在,地球

全体が抱えている問題を学ぶ。ここでの学びは,きっかけに過ぎず,これを種と

して,自らの主体的な調べ学習などにより,実を結ぶことを狙っている。そのた

めの方策として,テーマごとに,生徒個人の「問題解決への提案」を義務づける

ことから,「SGH課題研究」への入門の役割を担っている。本校では,「SGH

課題研究」における問題解決には一定の手順が存在するという仮説を掲げている

が,本科目では,4段階程度のラフな手順を生徒自身に考えさせ,課題に即した

解を埋めることで,「SGH課題研究」における問題解決スキルを磨くことを目指

す。しかしながら,この段階では,手順すべてに考えが及ぶのではなく,むしろ

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問題発見のスキル向上に寄与すると考えている。従来,総合的学習の時間やアク

ティブラーニングでは,PDCAサイクルでいうD (do;行動)やC(check;評価 )

に力を入れているが,本科目では,P (plan)の充実を図る。すなわち,「SGH課

題研究」を始めるには,本来,全体の目的を明示し,いま行える取組を下位目標

に設定して,目標達成の道筋をつけるといったプロセスが必要である。本科目は,

「SGH課題研究」の構成を考え,課題発見・問題解決を図るためのスキルを身

につけることを目指すことから,「SGH課題研究」の入門として重要な役割を担

う。

b 「SGH課題研究」に向けた新科目「グローバル社会と技術・応用」

図 1 は,「グローバル社会と技術・応用」のあらましである。

新科目のうち,「グローバル社会と技術・応用(AGST)」は,1年次に実施した

「グローバル社会と技術」の続編をなし,テーマ学習「中東・中央アジア理解」,「イ

スラーム文化研究」,「英語によるコミュニケーションスキル」をオムニバス形式で

実施する。これにより,地政学的リスク回避のための知識と語学力の鍛錬という

GTLに必要な新たなファクタを加え,得られた知見と既有の知識の再構築を促

す。これらの総仕上げが,「Response to Energy and Environmental Issues(REEI)」

と称するミニ「SGH課題研究」である。REEI は,エネルギー問題・環境問題な

ど私たちを取り巻く諸問題について,マネージメントの問題解決手法や定量的分

析などを援用しながら,自らの考えを提案する探求型学習である。この取組は,

単に法律による規制に頼るのではなく,新たな技術的開発の提案という帰結を目

指す。REEI は,提言に留まらず,国際交流の場においてベースとなる文化の違う

高校生に対して主張することを前提としている。それゆえ,国際交流相手校に対

しても同じテーマでの発表を依頼する。ミニ「SGH課題研究」の例としては,

図 1 新科目「グローバル社会と技術・応用」のあらまし

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砂漠に太陽光発電をつくるべきか? 洗濯機に求められるものは何か? 飲む水

と食器を洗う水は分けるべきか? 砂漠で飲み水を忘れたら分け合うべきか?な

どが挙げられる。

本研究開発における国際交流は,資源産出国等を交流相手と考えており,フィ

リピン・オーストラリアとの交流事業を先行し,サウジアラビア・中国・アメリ

カ・モンゴルとの交流は,国際情勢を鑑みながら,徐々に進めていくことを計画

している。

~なぜフィリピン共和国なのか~

フィリピンは,東南アジア有数の資源産出国であり,エネルギー自給率は 2011

年時点で 59.1%である。しかしながら,電力需給の逼迫が深刻化しており,輪番

制の計画停電も計画される事態となっている。このことは以前より予想されてお

り,原子力発電所を建設,ほぼ完成したが,アキノ政権時代に稼働を認可せず,

結局,原子力開発をあきらめた経緯がある。原子力に代わって地熱発電所を建設

し,その発電量はアメリカに次いで第2位となった。本校では,日本とはあまり

にも違う選択をしたこの国を重視し,フィリピン共和国・デ・ラ・サール大学附

属高校と新たに国際交流協定を締結し,私たちの交流の意図を理解していただく

予定である。原子力開発よりも輪番停電を選んだ国民,文献では知り得ない高校

生の意識を,REEI によるこの国際交流で是非とも明確にしたい。

~なぜオーストラリアなのか~

オーストラリアは,鉱物資源が豊富な資源産出国で知られている。なかでも,

ウランが採掘されているのに,原子力発電所が一基もない。電力の大部分は,火

力発電によるもので,石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料は自給している。火

力発電に頼れば,CO2 の排出を減らすことは出来ない。もちろん,再生可能エネ

ルギーへの取組を行っているが,まだ開発途上である。本校では,日本とは大き

く異なる選択をしたこの国をフィリピンに次いで,重視している。そこで,鉱工

業と関連が深い西オーストラリア州のパースのカーティン大学における「資源開

発ビジネス研修」,および周辺の高校との REEI による国際交流を計画した。「資源

開発ビジネス研修」によりマネージメントの観点からこの国のエネルギー問題へ

の考え方を知り,また,現地の高校生との交流により,文献では伺うことの出来

ない国策に対する高校生の意識を,REEI によるこの国際交流で是非とも明確にし

たい。

なお,サウジアラビアについては,在日アラブ人学校と連携するほか,日本を

訪問するサウジアラビア王立学校校長等の訪問にあわせて,REEI によるこの国際

交流を開始する。中国については,東京工業大学が招聘するサマーキャンプに参

加する清華大学学生との交流を計画している。アメリカ・韓国・モンゴルについ

ては,東京工業大学との連携により,交流を開始する。

c 新科目「SGH課題研究」

従来の課題研究では,技術的な問題の解決や改善をテーマとすることが主であ

ったが,ここでは,マネージメントの問題解決手法や定量的分析などを援用し,

その結果,必要とされた改善をテーマとする。すなわち,ものを作ること自体が

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目的なのではなく,コストを抑える,あるいは損失のリスクを回避するためには

どうしたらよいか,といった視点を大切にする。また,AGST における REEI を発

展させ,実験・実習によるデータを元に,エネルギー・環境問題等を題材とした

研究を行うことも想定している。その際も,マネージメントに基づく損益や費用

便益分析を念頭に置いた帰結を求める。「SGH課題研究」の例としては,「廃油

を利用した芳香効果を持つ石けんの製作」,「安価に製作できる電子式測定器具」,

「廃車を利用した電気自動車の製作」,「安価な電子部品による追尾式太陽光発電

装置の製作」,「廃材を活用した日本家屋の設計」などが挙げられる。

B) 「SGH課題研究」の実施方法・検証評価

第1学年に配当される「グローバル社会と技術」では,オムニバス形式でテーマ

学習が進行するが,その最終回において,問題解決の手順をワークシートにまとめ,

テーマの文脈に沿った解を埋めて提出させる。これは,「SGH課題研究」に向けた

問題解決の第一歩となる。さらに,その内容は,テーマ;スピーチコミュニケーシ

ョンにおいて集約され,提言を英語化し,発表する。これは,「SGH課題研究」の

アブストラクトの英語化につながる。評価は完成した作品,発表の4観点評価,お

よびワークシートやレポートによる総合評価とする。

また,第2学年に配当される AGST 内で実施される REEI は,2年生全員に実施

する。AGST は,所属する分野ごとに実施され,オムニバス形式の講義とミニ「S

GH課題研究」から形成される。ただし,ミニ「SGH課題研究」そのものは,1

学期に集中的に行うことが望まれる。それは,国際交流が夏休み期間から始まるた

めである。本研究においては,「SGH課題研究」の成果を国際交流相手国の胸を借

りてコミュニケーションすることが,真の交流となり得ると考えている。なお,仮

説に対する検証は,ポートフォリオ形式の進捗報告書,最後にまとめる報告書およ

び評価テスト,意識調査により行う。また,外部のコンテストや発表会に積極的に

参加し,外部評価を受ける。

他方,本校は工業課程であることから,第3学年に配当される「課題研究」が必

修科目とされている。そこで,「課題研究」のテーマ設定の段階で,30%程度を目標

に,「SGH課題研究」に振り分ける。このとき「SGH課題研究」に所属した生徒

は,従来型のものづくりを目的とする「課題研究」には参加しないため,教育課程

の特例が必要となる。なお,仮説に対する検証は,担当教員による4観点評価,「課

題研究」・「SGH課題研究」発表会での参観者による評価,生徒・教員・保護者に

対して行う意識調査などによって行う。

<各研究開発単位について>

新科目「グローバル社会と技術」

a 研究開発単位の目的,仮説との関係,期待される成果

グローバルな視野で,地球全体が抱えている問題を取り上げ,科学技術に対す

る興味・関心を喚起し,自ら調べ,学ぶ態度を育てることにより,創造的に問題

解決を図ることができるような人材を育てるとともに,科学技術を学ぶもののあ

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り方を生徒自身に考えさせ,技術者としての倫理観を涵養する。その際,問題解

決の手順を提案させ,「SGH課題研究」への道筋を学ばせ,発表や討議を英語で

行うことができるように指導する。

b 内容

各テーマは,科目横断的・総合的な学習をはかるものとし,技術者としてある

べき姿を考えさせるものとする。テーマは,メカニズム・電力・都市・環境と人

間といったESDに関するものや,技術者倫理・情報モラル・スピーチコミュニ

ケーション(英語)を予定している。

学習活動は,科学技術に対する興味・関心の喚起,学習の動機付け,問題解決

の手順を提案させ,「SGH課題研究」への道筋を学ばせること,英語による発表

と討議の4つの段階よりなる。科学技術に対する興味・関心の喚起では,科学技

術の現状,最先端の技術等を紹介し,各テーマを理解するために不可欠な基礎的

学習を行う。なお,問題点の指摘にあたっては,技術者のモラル・倫理観につい

ても自ら学ぶことができるよう配慮する。なお,グローバル化に対応するため,

発表や討議に英語による表現を導入し,1学年からの国際交流事業において,成

果を検証する。

c 実施方法

第1学年全員が履修し,担当教員はオムニバス形式で各クラスを巡回する。な

お,1テーマあたりの授業回数は,4回程度を想定している。最先端の技術によ

る興味・関心の喚起のため,東京工業大学の協力により,特別講義を年1回実施

する。また,フィールドワークの必要性から,年1回程度の校外学習を行う。

d 検証評価方法

知識理解そのものが目的ではなく,地球全体が抱えている問題の理解によって,

いま何をすべきかを考えることに力点を置くため,レポート形式のまとめをテー

マごとに行い,評価する。レポートでは,態度変容を問うこととし,意識の変化

やグローバル化への対応についても考慮することから,ワークシート形式を想定

する。

新科目「グローバル社会と技術・応用」

a 研究開発単位の目的,仮説との関係,期待される成果

それぞれの文化に根ざした「SGH課題研究」をまとめ上げ,資源産出国に対

する文化的理解を深めると共に,英語による科学技術コミュニケーションを行い,

国際交流を深めることを目的とする。本科目は,英語によるコミュニケーション

が必須であることから,仮説の「語学力」養成につながる。また,来日する資源

国あるいは他の消費国との間には,文化をベースとした差異があり,コミュニケ

ーションを通じて体験することにより,仮説の「地政学的リスク回避能力」につ

いても,強い印象で身につくことが期待される。このように「SGH課題研究」

をまとめ上げることや,フィリピンやオーストラリアなどの資源産出国,消費国

それぞれの文化に根ざした交流の実践を通して,GTLが身につけるべきスキル

の育成を期する。

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b 内容

新科目におけるミニ「SGH課題研究」では,夏休み期間から本格化する国際

交流事業を,GTLが備えるべきスキル(インクルージョン力(多様性受容力),

バックキャスティング力(目標から現在すべきことを考える力),コンセンサスビ

ルディング力(合意形成力))の検証の場と捉えている。それゆえ,国際交流に耐

えうる英語による科学技術コミュニケーションが必須となる。これらの総仕上げ

が,「Response to Energy and Environmental Issues(REEI)」と称するミニ「SGH

課題研究」である。REEI は,エネルギー問題・環境問題など私たちを取り巻く諸

問題について,マネージメントの問題解決手法や定量的分析などを援用しながら,

自らの考えを提案する探求型学習である。この取組は,単に法律による規制に頼

るのではなく,新たな技術的開発の提案という帰結を目指す。REEI は,提言に留

まらず,国際交流の場においてベースとなる文化の違う高校生に対して主張する

ことを前提としている。たとえば,「砂漠に太陽光発電をつくるべきか?」,「洗濯

機に求められるものは何か?」,「飲む水と食器を洗う水は分けるべきか?」,「砂

漠で飲み水を忘れたら分け合うべきか?」などが挙げられる。本研究開発におけ

る国際交流は,資源産出国等を交流相手と考えており,フィリピン・オーストラ

リアとの交流事業を先行し,サウジアラビア・中国・アメリカ・モンゴルとの交

流は,国際情勢を鑑みながら,徐々に進めていくことを計画している。

c 実施方法

第2学年全員を対象に1~2単位で実施する。通年実施ではなく半期での実施

とし,ミニ「SGH課題研究」を想定して,4時間連続等の授業を実施する。ま

た,国際交流での「SGH課題研究」の成果の利用を前提としているため,前半

(4月~9月)に実施する。担当する教員は,専門分野の教員に加え,人文・社

会系,体育科の教員のティームティーチング(TT)による。なお,プレゼンテー

ションシートの制作・要旨の作成・発表原稿の作成は英語で行う必要性があるこ

とから,外国人講師,東京工業大学の外国人大学院生などとの TT を想定してい

る。

d 検証評価方法

実践の過程において,本校教員による4観点評価を行う。また,実践による成

果は,報告書としてまとめられ,本校教員および東京工業大学教員による評価を

行う。仮説に対する検証については,生徒の目標達成状況によって計ると共に,

意識調査および評価テストによって生徒・教員の態度変容を知る。なお,選抜さ

れた優秀な生徒は,SGH校で行われるコンテストや外部の発表会に積極的に参

加させることで,外部評価を受ける。

新科目「SGH課題研究」

a 研究開発単位の目的,仮説との関係,期待される成果

SGHの総仕上げとして,GTLのスキルを活かし,マネージメントに基づく

損益や費用便益分析の結果,必要な改善を施すことが,「SGH課題研究」の目的

である。その結果,GTLに必要なスキルを再確認しながら,リスク回避の必要

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性を認識することが期待できる。また,「SGH課題研究」を進行するにあたり,

チームワークの形成などリーダーとして必要な資質の育成ともなりうる。なお,

「SGH課題研究」の成果を報告する際に,アブストラクトを英語によりまとめ,

将来の学会発表に寄与する。

b 内容

本校が科学技術高校であることを活かし,現在直面する問題を解決しながらも

のづくりや実験を行う。改善が前提としてあり,設計思想が重視されることから,

ものをつくること自体が目的の従来型課題研究とは大きく異なる。また,AGST

における REEI を発展させ,実験・実習によるデータを元に,エネルギー・環境

問題等を題材とした「SGH課題研究」を行うことも想定している。その際も,

マネージメントに基づく損益や費用便益分析を念頭に置いた帰結を求める。より

実用的な題材が求められることになることから,「SGH課題研究」の一例として

「廃油を利用した芳香効果を持つ石けんの製作」,「安価に製作できる電子式測定

器具」,「廃車を利用した電気自動車の製作」,「安価な電子部品による追尾式太陽

光発電装置の製作」,「廃材を活用した日本家屋の設計」などが挙げられる。

c 実施方法

本校は工業課程であることから,第3学年に配当される「課題研究」が必修科

目とされている。従来型のものづくりを目的とする「課題研究」が義務づけられ

ていることから,「課題研究」のテーマ設定の段階で,30%程度を目標に,「S

GH課題研究」に振り分け,教育課程の特例を受ける。なお,時間割上は,すべ

ての生徒が同一時間帯に「課題研究」・「SGH課題研究」のいずれかを行うが,

「SGH課題研究」では,人文・社会系および体育科の教員,および東京工業大

学教員などが指導に加わる。

d 検証評価方法

実践の過程において,本校教員による4観点評価を行う。また,「SGH課題研

究」の成果は,報告書としてまとめられ,本校教員および東京工業大学教員によ

る評価を行う。仮説に対する検証については,担当教員による4観点評価,「課題

研究」・「SGH課題研究」合同発表会での参観者による評価,生徒・教員・保護

者に対して行う意識調査などによって行う。

C) 課題研究に関して必要となる教育課程の特例

a 必要となる教育課程の特例とその適用範囲

工業教科科目「課題研究」に替え,学校設定科目「SGH課題研究」を科学・

技術科第3学年において,希望により振り分けた30%程度の生徒を対象に実施

する。本研究の総仕上げにあたる重要な科目であるが,従来の「課題研究」とは,

課題設定の方法や研究の進め方が大きく異なるため,教育課程の特例が必要であ

る。

新科目「SGH課題研究」

第1 目標

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グローバルな視野で,工業に関する課題を設定し,マネージメントにおける

損益,費用便益分析等の検証によって,課題の解決を図り,専門的な知識と技

術の深化,総合化を図るとともに,問題解決の能力や自発的,創造的な学習態

度を育てる。

第2 内容

(1)分析,設計,(2)作品製作,(3)調査,研究,実験

第3 内容の構成及び取扱い

ア グローバルな視野に立ち,生徒の興味・関心,進路希望等に応じて,内容

の(1)はマネージメントの観点から分析を行い,改善の目標を設定すること。

(2)または(3)までの中から個人又はグループで適切な課題を設定させること。

なお,課題は内容の(2)から(3)までの2項目にまたがる課題を設定することが

できること。

イ 「SGH課題研究」の成果について発表をする機会を設けるようにするこ

と。

ウ 国際交流での活用を見据えて,英語による要旨の作成等を行うこと。

b 教育課程の特例に該当しない教育課程の変更

設定しない

(3)課題研究以外の取組

A) 課題研究以外の研究開発の内容・実施方法・検証評価

図 2 は,研究開発全体のあらましを示している。各研究開発単位の取組のうち,

「SGH課題研究」を除く部分について,以下に記す。

<各研究開発単位について>

新科目「グローバル社会と技術」

a 研究開発単位の目的,仮説との関係,期待される成果

グローバルな視野で,地球全体が抱えている問題を取り上げ,科学技術に対す

る興味・関心を喚起し,自ら調べ,学ぶ態度を育てることにより,創造的に問題

解決を図ることができるような人材を育てるとともに,科学技術を学ぶもののあ

り方を生徒自身に考えさせ,技術者としての倫理観を涵養する。その際,問題解

決の手順を提案させ,「SGH課題研究」への道筋を学ばせ,発表や討議を英語で

行うことができるように指導する。

b 内容

各テーマは,科目横断的・総合的な学習をはかるものとし,技術者としてある

べき姿を考えさせるものとする。テーマは,メカニズム・電力・都市・環境と人

間といったESDに関するものや,技術者倫理・情報モラル・スピーチコミュニ

ケーション(英語)を予定している。

学習活動は,科学技術に対する興味・関心の喚起,学習の動機付け,問題解決

学習への導入,英語による発表と討議の4つの段階よりなる。科学技術に対する

興味・関心の喚起では,科学技術の現状,最先端の技術等を紹介し,各テーマを

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図 2 研究のあらまし

理解するために不可欠な基礎的学習を行う。なお,問題点の指摘にあたっては,

技術者のモラル・倫理観についても自ら学ぶことができるよう配慮する。なお,

グローバル化に対応するため,発表や討議に英語による表現を導入し,1学年か

らの国際交流事業において,成果を検証する。

c 実施方法

第1学年全員が履修し,担当教員はオムニバス形式で各クラスを巡回する。な

お,1テーマあたりの授業回数は,4回程度を想定している。最先端の技術によ

る興味・関心の喚起のため,東京工業大学の協力により,特別講義を年1回実施

する。また,フィールドワークの必要性から,年1回程度の校外学習を行う。

d 検証評価方法

知識理解そのものが目的ではなく,地球全体が抱えている問題の理解によって,

いま何をすべきかを考えることに力点を置くため,レポート形式のまとめをテー

マごとに行い,評価する。レポートでは,態度変容を問うこととし,意識の変化

やグローバル化への対応についても考慮することから,ワークシート形式を想定

する。

新科目「グローバル社会と技術・応用」

a 研究開発単位の目的,仮説との関係,期待される成果

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GTL育成のために,高校段階において育むべき資質と能力である「リーダー

が備えるべきスキル」,「地政学的リスク回避能力」,「語学力」の3要素を身につ

けると共に,「Response to Energy and Environmental Issues(REEI)」と称するミニ

「SGH課題研究」を通じて,GTLに必要なスキルと知識を自覚し,国際交流

によって実践することを目的とする。また,「SGH課題研究」の成果を以て英語

によるコミュニケーションを図ることから,「語学力」の達成を図る。

フィリピンやオーストラリアなどの資源産出国との国際交流の場において,学

習内容の検証を自ら行うことにより,GTLに必要なスキルや知識を自覚するこ

とが出来る。

b 内容

テーマ学習「中東・中央アジア理解」,「イスラーム文化研究」,「英語によるコミ

ュニケーションスキル」をオムニバス形式で実施後,「Response to Energy and

Environmental Issues(REEI)」と称するミニ「SGH課題研究」を実施する。「中

東・中央アジア理解」,「イスラーム文化研究」では,地球全体が抱える様々な問題

を提示し,殊に,エネルギー問題や環境問題について理解を深める。その際,新

たなESD理解を図るため,産油国などの鉱物資源産出国の実情を把握する必要

性から,特に正課の中で学ぶことは少ない中東・中央アジアやイスラーム文化に

ついて,異文化コミュニケーションに必要な知識を地理歴史科の世界史や公民科

の政治・経済,倫理と連携しながら学習する。

また,REEI は,エネルギー問題・環境問題など私たちを取り巻く諸問題につい

て,マネージメントの問題解決手法や定量的分析などを援用しながら,自らの考

えを提案する探求型学習である。この取組は,単に法律による規制に頼るのでは

なく,新たな技術的開発の提案という帰結を目指す。REEI は,提言に留まらず,

国際交流の場においてベースとなる文化の違う高校生に対して主張することを前

提としている。なお,本研究開発における国際交流は,資源産出国等を交流相手

と考えており,フィリピン・オーストラリアとの交流事業を先行し,サウジアラ

ビア・中国・アメリカ・モンゴルとの交流は,国際情勢を鑑みながら,徐々に進

めていくことを計画している。

c 実施方法

東京工業大学リベラルアーツセンターの協力の下で,中東・中央アジア・イス

ラーム文化に関して,GTLを目指す高校生に備えるべき内容を精選する。また,

リベラルアーツセンターに所属する著名な専門家による講演会を実施する。また,

東京工業大学グローバルリーダー教育院・学術国際情報センター・留学生センタ

ーの協力により,人材の派遣を円滑に行い,かつ英語によるコミュニケーション

の鍛錬に協力いただく。また,この分野は,企業などで能力開発などの仕事をし

ている方(メーカー,コンサルティング,あるいは JETRO などの組織)に協力い

ただくことを想定している。

生徒への実施にあたっては,第2学年全員を対象に1~2単位で実施する。通

年実施ではなく半期での実施とし,ミニ「SGH課題研究」を想定して,4時間

連続等の授業を実施する。また,国際交流でのミニ「SGH課題研究」成果の利

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用を前提としているため,前半(4月~9月)に実施する。担当する教員は,専

門分野の教員に加え,人文・社会系,体育科の教員のティームティーチング(TT)

による

d 検証評価方法

オムニバスの講義形式の講義については,レポートおよび成果物による評価を

行う。ただし,発表を伴うものについては,4観点評価を行う。また,実践の過

程において,本校教員による4観点評価を受ける。また,REEI については,報告

書としてまとめられ,本校教員および東京工業大学教員による評価を受ける。仮

説に対する検証については,生徒の目標達成状況によって計ると共に,意識調査

および評価テストによって生徒・教員の態度変容を知る。なお,選抜された優秀

な生徒は,SGH校で行われるコンテストや外部の発表会に積極的に参加させる

ことで,外部評価を受ける。

B) 課題研究以外の取組で必要となる教育課程の特例等

a 必要となる教育課程の特例とその適用範囲

工業教科科目「工業技術基礎」に替え,学校設定科目「科学技術基礎」を科学・

技術科第1学年全クラスを対象に実施する。本科目は,第1期SSHから実践し

ている本校の科学技術教育システムにおいて,第1学年に設置した基礎的な科学

技術の理論と実験実習によって構成される科目であり,本研究開発を実施する上

で必要不可欠であるため設置する。

科学技術基礎

教 科:工 業

科 目 名:「科学技術基礎」

目 標:知識の活性化を狙い,実験・実習の手順を手本として,問題解決に必

要な基本的な技能や既習の知識と現実世界を「結びつける力」を身につ

ける。これらを活用して,自ら課題を設定し,既習の知識と問題解決を

結びつけ,自ら課題を解決する。なお,実験・実習にあたっては,工業

の各分野にわたる基礎的科学技術の理論を確かめながら体験させ,かつ,

各分野における技術と基本的な科学の概念や原理・法則の理解,問題解

決のための手法を獲得させ,科学技術に関する広い視野を養うとともに,

科学技術者としての必要な能力を養う。

履修学年:第1学年

単 位 数:3単位

内 容:(1)力学分野 (2)電気分野 (3)化学分野 (4)製図分野

(5)問題解決学習

各分野においてテーマを設定し,問題解決場面を体験する。

内容の取扱い:

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(1) 科目の目標を達成するために,次の点に留意する。日常生活と関係

の深い科学技術に関する実験・実習を通して,科学技術への興味関

心を養うとともに,その理論を理解させる。

(2) 2年次の新科目「グローバル社会と技術・応用」と密接な関連を図

ること。

(3) 指導計画にあたっては,「工業技術基礎」との違いについて留意す

ること。

b 教育課程の特例に該当しない教育課程の変更

「グローバル社会と技術」

教 科:工 業

科 目 名:「グローバル社会と技術」

目 標:グローバルな視野で,地球全体が抱えている問題を取り上げ,科学技

術に対する興味・関心を喚起し,自ら調べ,学ぶ態度を育てることによ

り,創造的に問題解決を図ることができるような人材を育てるとともに,

科学技術を学ぶもののあり方を生徒自身に考えさせ,技術者としての倫

理観を涵養する。その際,問題解決の手順を提案させ,「SGH課題研究」

への道筋を学ばせ,発表や討議を英語で行うことができるように指導す

る。

履修学年:第1学年

単 位 数:1単位

内 容:各テーマは,科目横断的・総合的な学習をはかるものとし,技術者と

してあるべき姿を考えさせるものとする。

(1)メカニズム (2)電力 (3)都市

(4)環境と人間 (5)技術者倫理 (6)情報モラル

(7)スピーチコミュニケーション(英語)

内容の取り扱い:

学習活動は, (1)科学技術に対する興味・関心の喚起, (2)学習の動機

付け, (3)問題解決学習への導入, (4)英語による発表と討議の4つの段

階よりなる。

(1)科学技術に対する興味・関心の喚起

生徒の興味を沸きたてる授業,最先端の科学技術を体験する特別

講義や体験学習によって,生徒の目を科学技術に向けさせるため,

科目を横断したテーマの設定が望まれる。

(2)学習の動機付け

科学技術の現状,最先端の技術等を紹介し,各テーマを理解する

ために不可欠な基礎的学習を行う。

(3)問題解決学習への導入

問題解決学習は,「受ける学習」から「調べる学習」への転換を図

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るものだが,そのためには,生徒自身が主体的にテーマを設定し,

取り組むことが望まれる。

(4)グローバル化に対応するため,発表や討議に英語による表現を導入

し,国際交流事業において,成果を検証する。

「グローバル社会と技術・応用」

教 科:工 業

科 目 名:「グローバル社会と技術・応用」

目 標:高校段階において育むべき資質と能力である「リーダーが備えるべき

スキル」,「地政学的リスク回避能力」,「語学力」の3要素を身につける

と共に,「Response to Energy and Environmental Issues(REEI)」と称する

ミニ「SGH課題研究」を通じて,GTLに必要なスキルと知識を自覚

し,フィリピンやオーストラリアなどの資源産出国との国際交流によっ

て実践することを目的とする。また,REEI の成果を以て英語によるコミ

ュニケーションを図ることから,「語学力」の達成を図る。

履修学年:第2学年

単 位 数:2単位

内 容:

(1)リーダーが備えるべきスキル・地政学的リスク回避能力・語学力育

(2)テーマ学習「中東・中央アジア理解」,「イスラーム文化研究」,「英語

によるコミュニケーションスキル」の実施

(3)「Response to Energy and Environmental Issues(REEI)」と称するミニ

「SGH課題研究」の実施

指導方法:

(1)については,その育成を意識しながら,科目の全般にわたり指導す

る。

(2)については,専門家の意見を取り入れ,グローバルリーダーの資質

を育成する観点から内容を精選すること。また,専門家による特別

講義を企画すること。

(3)については,自ら導き出した成果を,協同学習の中で意見をすりあ

わせ,独善性を排除した知識の再構成をはかるように留意すること。

また,論理的な意見交換,質問とその回答のしかたなどを学ばせ,

討論や意見交換を通じて相互理解をはかること。また,そこから,

新たな発見ができる可能性があることを理解させること。情報通信

ネットワーク環境を活用して,遠隔地との交流を試み,外国語によ

る国際交流も実施する。

数理基礎

教 科:工 業

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科 目 名:「数理基礎」

目 標: 理科及び工業教科を理解するために必要な基礎的数学知識を習得させ

ることにより,科学や技術の分野に興味・関心を持たせ,工業教科の学

習をスムーズに進められるようにする。

履修学年:第1学年

単 位 数:2単位

内 容:

(1)式の計算(2)指数の計算(3)有効数字(4)ギリシャ文字と単位

(5)三角比(6)ベクトルの計算(7)常用対数の計算(8)三角関数(9)式とグラフ

内容の取扱い:

(1)科目の目標を達成するために,高等学校の理科及び工業教科で使用す

る数式の基本を学習し,数式の理科及び工業教科への応用を学び,深

化を図る。また,理科や工業等の科学技術の基礎教育において,原理・

法則,未知の現象等に対して数理的な見方,考え方を自ら積極的に行

わせるとともに,実験・実習をより客観的に捉え,数理的処理方法の

要領を自ら会得できるようにする。

(2)指導計画の作成に当たっては,「工業数理基礎」との違いについて留意

する。

先端科学技術入門

教 科:工 業

科 目 名:「先端科学技術入門」

目 標: 工業の各分野における先端科学技術の研究や成果及びその基盤となっ

ている部分に触れさせ,基礎的な学力の必要性や重要性を認識すること

で,理数系科目の基礎力の定着を目指し,自然科学ならびに技術に対す

る意欲と挑戦への動機付けを図る。

履修学年:第2学年

単 位 数:1単位

内 容:

(1)各専門分野における工業技術及び科学技術

(2)各専門分野における先端科学技術の研究内容・研究成果

(3)各専門分野における具体的事例に深く関係する理科・数学

(4)各専門分野に関係する科学技術系英語文献を用いた技術系英語

内容の取扱い:

本科目は,先端の科学技術を研究・開発している大学教員や技術者が

講師として参画し,本校教員と協力して行う科目である。

第2学年以上で,1単位で実施することが望ましい。

(1)科目の目標を達成するために,次の点に留意する。

ア 年間を通して6テーマ程度と設定する。また,1テーマにつき授業

を4回程度実施し,第1,2回目を本校教諭による準備授業,第3

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回目を講師による授業,第4回目を本校教諭によるまとめの授業と

なるように配慮する。

科学技術コミュニケーション入門

教 科:工 業

科 目 名:「科学技術コミュニケーション入門」

目 標:科学技術の背景となる理論や法則と科学技術との関連を理解させ,も

のつくりの過程の中で自ら課題を見つけ,主体的に判断・行動し,問題

を解決する資質や能力を育成するとともに,自ら導き出した成果を,協

同学習の中で意見の摺り合わせ,プライオリティを考えながら集団での

意志決定を行わせる。このようにして得られた結論及びその過程を,シ

ナリオのような詳細な計画にまとめられ,聴衆に発信される。これらを

1つの教育システムとした教育ゲームやICTを活用した表現発表会等

を行うことによってコミュニケーション力を引き出し『発信する力』を

育成する。

履修学年:第2学年

単 位 数:2単位

内 容:

(1)理論・法則と科学技術との関連

(2)科学技術に関する課題の発見・設定と解決の方法

(3)知見・成果の表現と発信する方法

(4)討論と相互理解

指導方法:

(1)については,背景となる理論や法則と科学技術との関連を理解させる

とき,各専門分野の特色を生かした事象を例として扱うこと。同時に,

理数科科目との関連を理解させること。

(2)については,ものつくりの過程の中で,科学技術に関する事象を深く

観察させ,協同学習を通じて多面的に考察する力を養うこと。

(3)については,自ら導き出した成果を,協同学習の中で意見の摺り合わ

せ,集団での意志決定を行わせる。このようにして得られた結論及び

その過程を,シナリオのような詳細な計画にまとめて,聴衆に発信す

る力を養うこと。

(4)については,論理的な意見交換,質問とその回答のしかたなどを学ば

せ,討論や意見交換を通じて相互理解をはかること。また,そこから,

新たな発見ができる可能性があることを理解させること。情報通信ネ

ットワーク環境を活用して,遠隔地との交流を試み,外国語による国

際交流も実施する。

C) グローバルリーダー育成に関する環境整備,教育課程課外の取組内容・実施方法

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東京工業大学グローバルリーダー教育院・学術国際情報センター・留学生センタ

ー・世界文明センター等の協力により,グローバル化への対応に明るい専門家によ

る助言,外国人留学生の派遣など,人材の派遣を円滑に行い,かつ英語によるコミ

ュニケーションの鍛錬に協力いただく。

また,東京工業大学リベラルアーツセンターの協力により,国際情勢の教育に明

るい著名な専門家を招き,講演会の実施,新科目に対する講義内容への助言を戴く。

東京工業大学が実施しているSGU:スーパーグローバル大学創造支援事業に参

加し,共同で事業を進めることにより,相乗効果を狙う。

6 研究開発計画・評価計画

(1)第一年次

新科目「グローバル社会と技術」において,オムニバス形式の実施のための授業編

成,内容の精選,英語化の方策などについて検討しながら,試行を進める。

新科目「グローバル社会と技術・応用」において,授業内容の精選,専門家による

助言等を加味しながら,試行を進める。特に国際交流の相手として,フィリピンとオ

ーストラリアを先行実施する。また,著名な人物による講演や助言等を企画する。

「課題研究」・「SGH課題研究」に対する意識調査を行い,「SGH課題研究」への

振り分け方法や実施方法を検討しながら,「SGH課題研究」を試行する。

国際交流校の拡充を視野に,在日アラブ人学校との交流,東京工業大学が招聘する

イベント等への参加,他のSGH校等が開催する高校生の国際会議等への参加を促し,

交流への第一歩を踏み出す。

新たに開発する教材や指導法などのコンテンツのデジタル化についての計画を検討

するとともに,データの蓄積を行う。

意識調査の内容・方法を検討し,年度内に研究対象外の生徒に意識調査を行う。S

GH研究開発の活動に関する意識調査を,本校教員に対して行う。

第一年次のSGH実施報告書を作成する。他のSGH校との研究交流を行う。

(2)第二年次

新科目「グローバル社会と技術」・「グローバル社会と技術・応用」において,第一

年次に作成した教材を用いて,効果の検証をしながら,実施する。試行をもとにして

作成した教材,指導法の再検討を行い,授業形態・指導方法,成績評価の方法などの

確認と改善の検討を行う。また,著名な人物による講演や助言等の実現,企業との連

携を企画する。

「SGH課題研究」について,テーマや運営方法について校内での試行を重ねる。

また,「グローバル社会と技術・応用」において,計画に基づくテーマ学習について趣

旨説明を行い,交流校に打診し,REEI の現地校での実施,実現に向けて検討する。そ

の際,国際交流に関して大学との連携を深める。

国際交流校の拡充を視野に,在日アラブ人学校との交流,東京工業大学が招聘する

イベント等への参加を継続し,他のSGH校等が開催する高校生の国際会議等への参

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加を促し,情報収集を行う。サウジアラビアに関しては,王立学校校長等に対する REEI

討議を実現する。

新たに開発した教材や指導法などのコンテンツのデジタル化についての計画を検討

するとともに,データの蓄積を行う。

意識調査の内容・方法を検討し,年度内に研究対象外の生徒に意識調査を行う。S

GH研究開発の活動に関する意識調査を,本校教員に対して行う。

第二年次のSGH実施報告書を作成する。他のSGH校との研究交流を行う。

(3)第三年次

新科目「グローバル社会と技術」・「グローバル社会と技術・応用」において,第二

年次に作成した教材と指導法の確認と改善を行いつつ,第2年次全クラスにおいて本

格的な授業実践を開始する。実践を踏まえて,授業形態・指導方法,成績評価の方法

などの確認と改善の検討を行う。また,大学との連携について,第二年次の立案を試

行する。

「グローバル社会と技術・応用」について,REEI のテーマをフィリピン・オースト

ラリア両国の交流校に依頼し,来日時に討議を行う。また,在日アラブ人学校との交

流,東京工業大学が招聘するイベント等への参加,他校との交流プログラムについて,

具体的な行動計画を立案する。その際大学との連携を行い,モンゴルとの交流を具体

的に進展させる。また,著名な人物による講演や助言等の実現,企業との連携を企画

する。なお,サウジアラビアについては,王立学校校長等との交流を継続する。

「SGH課題研究」について,テーマ選定での振り分けを実施し,本格的な実施を

開始する。

国際交流校の拡充を視野に,他のSGH校等が開催する高校生の国際会議等への参

加を促し,情報収集を行う。

新たに開発した教材や指導法などのコンテンツのデジタル化のためのデータ蓄積を

引き続き行いながら,アーカイブズの計画と制作を行い,普及方法の計画を行う。

意識調査の内容・方法を検討し,年度内に研究対象外の生徒に意識調査を行う。S

GH研究開発の活動に関する意識調査を,本校教員に対して行う。

SGH中間報告会を実施し,成果を普及すると共に様々な意見を吸収し,研究にフ

ィードバックする。

第三年次のSGH実施報告書を作成する。他のSGH校との研究交流を行う。

(4)第四年次

新科目「グローバル社会と技術」・「グローバル社会と技術・応用」において,授業

実践を行い,2つの科目が結びついているか,検証を開始する。また,引き続き実践

を踏まえた問題点等を検討し,必要に応じて改善を行う。なお,大学との連携を本格

的に行い,問題点を抽出する。

「グローバル社会と技術・応用」について,フィリピン・オーストラリア両国の交

流校にテーマを依頼し,来日時の討議を本格化する。在日アラブ人学校との交流,東

京工業大学が招聘するイベント等への参加の継続し,これをきっかけとして,他校と

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の人的交流の実現,またはネットワーク環境による交流の可能性について検討する。

また,著名な人物による講演や助言等の実現,企業との連携を実現する。

「SGH課題研究」について,本格実施を継続し,アブストラクトの英語化など国

際交流への準備を進めるとともに,従来型の「課題研究」との違いについて,検証す

る。

国際交流校の拡充を視野に,他のSGH校等が開催する高校生の国際会議等への参

加を促し,情報収集を行う。

新たに開発したSGH科目等における開発教材や指導法などのコンテンツのデジタ

ル化のためのデータ蓄積とアーカイブズの制作を継続しながら,一部制作したアーカ

イブズの普及を試行する。

研究対象生徒への意識調査を行う。教員から見た生徒の変容を調査する。理工系大

学に進学した卒業生への追跡調査を行う。教員対象の意識調査を行う。

第四年次のSGH実施報告書を作成する。他のSGH校との研究交流を行う。

(5)第五年次

新科目「グローバル社会と技術」・「グローバル社会と技術・応用」において,授業

実践を行い,教材・授業形態・指導方法・成績評価の方法などについて,完成を目指

す。また,大学との新たな連携を完成させる。

「グローバル社会と技術・応用」について,フィリピン・オーストラリア両国の交

流校との本格的国際交流を進め,来日時に討議を行う。他校との人的交流の実現,ま

たはネットワーク環境による交流の具体的な実現を期す。その際大学との連携を行う。

また,著名な人物による講演や助言等,企業との連携を円滑に行う。

国際交流校の拡充を視野に,他のSGH校等が開催する高校生の国際会議等へ参加

する。在日アラブ人学校との交流,東京工業大学が招聘するイベント等への参加をき

っかけとした直接交流を実現する。

新たに開発した教材や指導法などのコンテンツのデジタル化のためのデータ蓄積と

アーカイブズの制作を継続しながら,普及を図る。

大学に進学した卒業生への追跡調査を行う。生徒の変容についてのまとめを行う。

SGH研究開発の活動に関する意識調査を本校教員に対して行い,教員の変容につい

てのまとめを行う。研究全体の評価をまとめる。

「SGH研究開発発表会」を開催し,研究の評価のためのアンケート調査を行う。

第五年次のSGH実施報告書を作成する。他のSGH校との研究交流を行う。

7 研究開発成果の普及に関する取組

校内における保護者に対する公開授業の実施,中学生を対象とした体験入学等での本

開発科目の試行,SGH研究開発中間報告会および成果報告会での公表に加え,新たに

開発した教材や指導法などをデジタルデータで記録し蓄積する。蓄積したデジタルデー

タを編集し,一連のアーカイブズとして制作する。制作するアーカイブズは「Tokyo Tech

SGH アーカイブズ」としてICTなどの活用による普及を試みる。

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8 研究開発組織の概要(経理等の事務処理体制も含む)

SGHの取組には下の図3に示す研究組織に本校の教員が所属し,教育研究活動を行

う。また,これに伴う事務業務を事務員が全面的に支援する。

(1)各研究会・委員会の役割分担

校内の各研究会・委員会の役割分担は,次の通りである。また,研究開発成果等の

普及や成果等の普及を目的としたアーカイブズの開発も,それぞれの活動を通して継

続的に行う。

図 3 「SGH研究開発研究組織図」

◎各研究会・委員会の役割分担

校内の各研究会・委員会の役割分担は,次の通りである。

〇グローバル社会と技術研究会

新科目「グローバル社会と技術」の開発

〇グローバル社会と技術・応用研究会

新科目「グローバル社会と技術・応用」の開発,海外国際交流校との連携,

東京工業大学国際室及び留学生センターとの連携

〇SGH課題研究研究会

「SGH課題研究」の開発,「課題研究」との連携を行う。

〇SGH研究開発委員会

SGH研究開発における全般的な企画立案,渉外活動,業務のとりまとめ

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(2)研究担当者(〇印 研究主任)

氏 名 職 名 担当教科(分野)

佐伯 元司 校長

仲道 嘉夫 副校長 工業(情報・コンピュータサイエンス分野)

千葉 一雄 副校長補佐(総務担当・主幹教諭)

主そうむ幹教諭(総務担当)

工業(立体造形・ディジタルデザイン分野)

山口 正勝 副校長補佐(研究担当・主幹教諭) 工業(システムデザイン・ロボット分野)

〇遠藤 信一 教諭・SGH研究開発委員会幹事 地理歴史・公民

近藤 千香 教諭・SGH研究開発委員会幹事 工業(情報・コンピュータサイエンス分野)

片渕 和啓 教諭・SGH研究開発委員会幹事 工業(立体造形・ディジタルデザイン分野)

宮原 絢乃 教諭・SGH研究開発委員会幹事 英語

岩城 純 教諭・グローバル社会と技術研究会幹事 工業(システムデザイン・ロボット分野)

都留 裕貴 教諭・グローバル社会と技術・応用研究会幹事 工業(情報・コンピュータサイエンス分野)

砂岡 康宏 教諭・SGH課題研究研究会幹事 理科

草彅 久男 事務長

(3)運営指導委員会

A) 組織

氏 名 所 属・職 名 備考(専門分野等)

蟻川 芳子 (一社)日本女子大学教育文化振興桜楓会・理事長 教育

太田 幸一 元富士通株式会社・常務取締役 産業界

佐藤 義雄 元文部省・教科調査官 教育行政

辛坊 正記 株式会社 HiAc・最高顧問 ビジネスマネジメント

(五十音順)

B) 活動計画

1年に2回程度の運営指導委員会を開催し,研究内容に即した授業の参観,研究

内容に関する討議等を行い,指導と助言を受ける。

(4)学内指導者

A) 担当者

氏 名 所 属・職 名 備考(専門分野等)

大竹 尚登 東京工業大学・工学院機械系・教授 研究推進担当副学長

佐藤 勲 東京工業大学・工学院機械系・教授 国際企画担当副学長

篠崎 和夫 東京工業大学・物質理工学院材料系・教授 理事・副学長(教育・国際

担当)特別補佐

髙田 潤一 東京工業大学・環境・社会理工学院融合理工学系・教授 留学生教育

松田 稔樹 東京工業大学・リベラルアーツ研究教育院・准教授 教育工学

水本 哲弥 東京工業大学・工学院電気電子系・教授 教育運営担当副学長

(五十音順)

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B) 活動計画

1年に2回程度の報告会を開催し,研究内容に即した授業の参観,研究内容に関

する討議等を行い,指導と助言を受ける。

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②-3 スーパーグローバルハイスクール研究開発の実施内容

Ⅰ グローバル社会と技術研究会の活動報告

1 概要

本科目は,グローバル人材育成の入り口の科目であることから,課題解決のための枠

組みのうち,目標設定過程の充実を図る科目と位置づけた。特に,私たちを取り巻く社

会課題自体が,社会科学・人文科学や自然科学等に応じた見方・考え方を働かせながら,

生徒の主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を行った。

2 経緯

SGH研究開発の目的を果たすためには,現在の地球全体,あるいは社会全体が抱え

ている諸問題を理解し,課題設定・問題解決できるための知識とスキルを身につける必

要がある。そして,本科目の実施により,グローバルな視野で,地球全体が抱えている

解決すべき問題(テーマ)を知り,社会科学や自然科学といったそれぞれの範疇のみで

解決を図ることが,困難であることを知らなければならない。その結果,複合した考え

方が必要であることを認識すれば,自ら学ぶ意欲,思考力などの力が育成できると考え

た。各テーマは,科目横断的・総合的な学習をはかるものとし,技術者としてあるべき

姿を考えさせるものとする。テーマには,メカニズム・電力・都市・環境と人間といっ

た持続可能な開発のための教育(ESD: Education for Sustainable Development)に関する

ものを主に掲げている。

次に,上記による知識をもって,グローバルリーダーとして必要な資質や科学技術を

学ぶ者のあり方を生徒自身に考えさせるため,技術の専門家としての情報モラル,技術

者倫理を学ぶ。これらの活動を通じて,問題解決の枠組みによる解決方法を身につける

ことで,「SGH課題研究」において活用できる問題解決のスキルを獲得する。

そして,本科目のまとめとして,自らの主張を英語に変換することを必須とし,知識

の再構築を図ることで,より深い理解を促すこととする。

研究第3年次では,情報収集やその加工といった目標設定過程の見直しを行い,問題

解決のスクリプトの修正を行いながら,SGH教育の入り口としての使命を担いながら,

グローバルリーダーの育成という目標が,高校段階の教育において,どのような落とし

込みができるのか,検討することとなった。

3 内容

(1) 総論

学習活動は,①解決すべきテーマの理解,②問題解決の手順を習得,③具体的な解

決への提案,④英語による発表と討議の4つの段階よりなる。①では,ESD に関わる

問題とそれに立ち向かう人類の英知を紹介するとともに,社会課題は,単一の科学で

は解決し得ないことを学ぶなど,各テーマを理解するために不可欠な基礎的学習を行

う。②では問題解決の手順を学ぶが,技術の専門家としての情報モラル・技術者倫理

を扱う授業の中での問題解決をこれにあてる。このようなモラルの問題は,自分自身

が学んだ内容に基づく意思決定が,現実の場面においても出来なければ意味がないの

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で,態度変容を目論んだ,疑似体験をベースとした教材を開発する。なお,複数のテ

ーマの学習により,人類が直面する問題を理解し,かつ,basic な問題解決の手順を学

んだところで,発表や討議に英語による表現を導入し,知識の再構築による理解の深

化を試みる。

(2) 実施方法

第1学年全員が履修し,担当教員はオムニバス形式で各クラスを巡回する。なお,

1テーマあたり4回授業を実施する。最先端の技術による興味・関心の喚起のため,

東京工業大学との高大連携により,特別講義を年1回実施し,グローバルリーダー育

成講演会を年2回程度実施する。また,フィールドワークの必要性から,年1回程度

の校外学習を行う。

(3) 検証評価方法

知識理解そのものが目的ではなく,地球全体が抱えている社会問題の解決のため,い

ま何をすべきかを考えることに力点を置くため,レポート形式のまとめをテーマごとに

行い,評価する。レポートでは,態度変容を問うこととし,意識の変化やグローバル化

への対応についても考慮する。

(4) 各テーマの内容

社会課題の中から,高校生が解決案を提案することが可能な課題を選ぶためには,自

分の中に取り込む知識(領域固有知識),その内容をさらに深化させるための外部知識

とその扱い方,そして,それらを駆使して目標設定する必要があるため,ここにその手

順を示す必要がある。平成 29 年度はこの目標設定について,重点的に取り上げた。

第1章 電力

図 1 は,レポート作成手順を生徒に示したものである。この手順に従い,深刻化する

エネルギー問題・環境問題に対処するために必要なものは何か,考えさせる。地域や国

によって異なる事情を踏まえた対応を行うためには問題についての広範な理解が必要で

ある。また,学習過程において,グローバルな連携・協業が不可欠であることに気づか

せる。これらについて,電気エネルギーを題材にして考えさせた。

授業の概略

第1時 現代最も広く使われているエネルギー形態である電気エネルギーの特徴を理解

する。また,主要な発電方式の一つである水力発電のしくみを,揚水式を含め

て学び,エネルギー需要の変動について考える。

第2時 枯渇性エネルギー資源の世界的な分布,生産・消費の状況について学び,資源

利用に関わる諸問題について考える。また,現在中心的な発電方式となってい

る火力発電および原子力発電のしくみを理解する。

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第3時 枯渇性資源の保全や環境保護の観点から研究・導入が進んでいる再生可能エネ

ルギーの特徴および新エネルギーに関する政策とそれを用いた発電のしくみに

ついて学び,再生可能エネルギーの制約について考える。

第4時 エネルギーに関する近年の日本と世界における動向について理解する。全4回

の授業を踏まえて各自がテーマを設定し,それぞれの観点からの調査に基づき

レポートを作成する。

まとめ

平成 29 年度は引き続き生徒に提供する参考資料を最新のデータに更新するととも

に,エネルギー利用の問題点について考える時間を設け,これによりエネルギー問題

についてのより深い理解を促した。今後も教材の整備・授業展開の工夫に努め,より

主体的に問題を考えることができるようにしたい。

第2章 技術者倫理

本テーマでは,技術者が関わる事件・事故について情報を収集し,自分自身の道徳

的判断,企業の一員としての判断,技術者としての判断,実際に行われた収拾案など

について検討し,自らの最適解を提案する。

倫理的判断による意思決定という課題を解決するには,高校生は道徳的に未発達で

あり,中学校までの道徳教育をさらに発展させていく必要がある。他方,技術者集団

には,独自に指針としてまとめた行動指針,倫理規定等がある。両者は,合致するこ

ともあるが,相反する場合もあるだろう。現実の技術者倫理では,合理的判断過程に

おいて,自らの道徳規範と専門家集団によるルールの側面を意識しながら,様々な制

約条件をクリアし,最適解を導出することとなる。

図 2 の問題解決の枠組みでは,テーマを設定するに当たって, [情報収集 ] →[処

理]→[まとめ]という横方向の過程を踏む。本科目では,このテーマ設定場面の習得に

図 1 「電力」のレポート作成場面

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重きを置いており,本テーマにおいても繰り返しこのサイクルを回す必要がある。そ

の結果,複数の解決案が抽出されるが,前述の合理的判断により,制約条件をクリア

した案だけが最適解として絞られていく。この合理的判断には,高校生には理解しに

くい,企業内の人間関係やプロフェッショナルとしてのあり方などが含まれる。成人

であれば,これらを経験の内に理解するのであろうが,未就業の高校生には,教育す

る側の配慮が必要である。これら意思決定に必要な知識や「見方・考え方」について

は,授業を通じて理解を深めている。なお,レポート作成過程においては,合意形成

過程を実施することは困難であることから,レポート提出先の教員に総括的評価を受

けることとなる。(これらをもって授業の概略は略す。)

このサイクルは,可能であれば,何回も回し,習得していくべきである。そのため

には,授業を通じたシミュレーション教材が必要であると考えている。

第3章 情報モラル

本テーマでは,情報社会を生きぬくための見方・考え方を学び,何かに直面した際

の思考力・判断力を身につけること,さらに自分でさまざまな課題を解決できる問題

解決力を身につけるとともに,社会の一員として合意形成を図る力を身につけること

を目標としている。平成 29 年度は,問題解決の枠組み(図 3)と問題解決のための見

方・考え方を明示的に指導し,問題解決の演習を行い,解決策を考えるグループワー

クを行った。

まず情報モラルの指導を行い,次に,2回にわたりシミュレーションゲーミング教

材の中で,問題解決のサイクルを何度も経験しながら問題解決の枠組みを学習した。

さらに,合意形成を図る課題にとして,インターネットを利用する際のクラスルール

作りを例にグループディスカッションを実施した。平成 29 年度は,問題解決のサイ

クルを常に意識させ,議論が活発になるように促した。

図 2 「技術者倫理」のレポート作成場面

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授業の概略

第1時 情報モラルの考え方を理解する。

第2時 個人的問題解決の例としてネットオークションの問題解決シミュレーショ

ン教材を使って学習する。

第3時 社会的合意形成をめざしマイナンバーに関するシミュレーション&ゲーミ

ング教材を使って学習する。

第4時 インターネットを利用する際のクラスルール作りを例に合意形成を図るた

めグループディスカッションを実施した。

まとめ

授業ではもちろん,課題レポートでも常に問題解決のサイクルに沿って課題に取り

組むことを徹底した。問題解決の演習を行うことにより,問題解決の枠組みや見方・

考え方を生徒が意識するようになってきてはいるが,十分に活用するまでには至って

いない。今後は,テーマを他の専門分野とも関連するものに広げ,議論を活発化させ

ていきたい。

第4章 都市 ~中間報告会で公開授業実施~

現代都市問題の解決には,技術的アプローチだけでなく,外的制約条件としての

グローバルな社会・経済問題及びローカルな風土,歴史や文化の多様性の理解が不可

欠である。都市の普遍性と多様性を理解し,歴史・文化的視点を導入することで,問

題解決方法を創造する力を養う。平成 29 年度は生徒自身が発見した都市問題の解決

策を提案し,それを基に討議を行った(図 4 参照)。

図 3 「情報モラル」のレポート作成場面

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授業の概略

第1時 都市基盤施設など都市を支える技術を通して,都市を外部から規定する,

自然環境や歴史・文化等の様々な要素について学ぶ。同時に世界各国の都市

の持つ多様性と普遍性について関心を深め,グローバルかつ相対的な視点を

得る。

第2時 都市計画について,歴史的経緯や実際の例(成功例・失敗例)を通して理

解し,現代都市問題について関心を深める。また,都市問題解決に際して

は技術的なアプローチだけでなく,歴史的・文化的視点が必要であること

を理解する。

第3時 具体例として取り上げられた校外研修先の横浜を通して,近代都市の歴史

や都市計画について実感を伴って理解する。これまで学んだことを踏まえ,

自分の住む都市の課題とその解決法についての「提案書(レポート)」を

作成する。

第4時 生徒の「提案書」を基に,都市問題とその解決方法についてグループディ

スカッションを行う。議論を通して,都市問題の把握の仕方やその解決法

が多様であることを理解し,都市問題の複雑さ,解決の困難さの一端を知

る。

まとめ

都市の文化・歴史的側面について生徒の関心を喚起することを目指しつつ,平成 29

年度は生徒による提案及び議論を取り入れた。議論により,他者の視点や問題意識の

共有が可能になり,都市問題の多様さ,複雑さへの理解が進んだと考えられる。一方,

生徒の選ぶ問題は矮小化する傾向もあり,テーマの選択方法等の更なる検討を行って

いる。なお,本テーマの討議部分は,本校SGH中間報告会において,授業を公開し

た。

図 4 「都市」のレポート作成場面

文献調査/実地踏査( 自分の目で見る・歩く )

・ 現在の都市・ 社会問題_

解決手段(実例)

・ 自然環境条件_・ 社会文化的条件

テーマを設定( レポート の目標)

現状把握 制約条件など

複数の解決案

・ 社会が抱えている問題・ 興味を持ったこと

都市と技術

都市の歴史

都市問題

[情報収集]

[処理]

[まとめ]

・ 過去の都市問題・ 現代の都市問題

・ 歴史的背景・ 文化的社会的背景

・ 都市の普遍性と多様性・ 多様な技術

[情報収集]グローバル社会と技術 テーマ「 都市」 のレポート 作成場面

・ 住環境の条件・ 多様な住まい方・ 世界の都市, 建築・ 都市の多様性

歴史・文化的視点

※これまでに試みられた様々な解決策・ 世界の都市計画・ 過去の都市計画・ 失敗例

・ 環境負荷の評価方法・ 都市計画の現在

・ 具体例[横浜]・ 近代日本の都市

多様性 相対化具体例

失敗例

問題点 本校で軽視されがちな歴史的・ 社会文化的視点の導入

世界の都市の多様さを認識し , 相対的な視点を得る [情報収集]

校外研修

分析・提案

[情報収集] [処理]

[処理]

・ 視点・ 考え方

・ 視点・ 考え方

合意形成

一つの案に決定し提案する

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第5章 環境と人間 ~中間報告会で公開授業実施~

環境問題は広域で長期間のデータを扱うため,多くの異なる問題点や解決策などが

提示されている。新聞やテレビで放送されることが,必ずしも正しいとは限らない。

そこで,科学技術者としての環境問題に対する基本的な視点やスタンスを提示し,そ

れらを理解させるとともに習得させることを目標とする。環境問題をグローバルに多

面的に捉え活用するためには,この基本的な視点やスタンスは,必要不可欠である。

昨年に続き,以下のような授業を行ったが(図 5 参照),平成 29 年度は「PET ボト

ルのリサイクル」についてディスカッションを行った。クラスを賛成派と反対派に分

け,そのメリット,デメリットについて議論し理解を深めた。なお,本テーマの討議

部分は,本校SGH中間報告会において,授業を公開した。

授業の概略

第1時 「科学技術」と「環境」の関係について生徒個々に図を書かせた。いくつかの

事例を紹介し,互いの相関に気づかせその関係を理解させた。また,「温暖化」

をテーマに,「チームマイナス 6%」の問題点を提起した。

第2時 「京都議定書 (COP3)」,「チームマイナス 6%」,「IPCC AR4」から科学的視点で

問題点を考察し,COP21(2015)で採択された「パリ協定」について理解を深めた。

第3時 「ペットボトルから見た環境」という自作の教材を用い,資源の有効利用とい

う視点からリサイクルだけでなく「物質循環」,ライフサイクルアセスメント

(LCA: Life Cycle Assessment)について理解を深めた。「PET ボトルのリサイクル」

ディスカッションを行った。

第4時 エネルギーについて,「地球のエネルギー収支からみた環境」という自作の教

材を用い,エネルギーについて考えさせた。「地球が得るエネルギー」は太陽放

射がその 99.97 %を占め,この値から「太陽定数」を計算によって求めさせた。

これを利用して,「ヒートアイランド」や「異常気象」の原因を考察させた。

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まとめ

平均的な高校生と比較すれば,環境への興味・関心が強く,環境に対するリテラシ

ーも高い生徒が多い。しかし,多くの生徒の環境に関する知識は,教科書やニュース

で得た断片的な知識にとどまっている。環境問題解決のためのグローバルリーダーに

は,科学的な視点,広い視野と柔軟な思考が要求される。環境に対する基本的なスタ

ンス“sustainability”を提示することで,今後の専門の学習とともに環境問題に対する「気

づき」を育成できた。

第6章 スピーチコミュニケーション

本章の目標は,生徒全員が授業内で学習した「スピーチの構成」に基づいた原稿を

作成すること,非言語を用いつつクラスメートの前で2分間のスピーチを行なうこと

である。そしてそれぞれがクラスメートのスピーチを評価することである。スピーチ

のテーマは,本章以前の「グローバル社会と技術」の授業で学んだ内容から,自身の

興味・関心に応じて取り上げる。

授業の概略

第1時 Introduction / Physical Message (Posture & Eye Contact)

第2時 Physical Message (Gestures & Voice Inflection)

第3時 Speech Structure (Introduction, Body & Conclusion)

第4時 Speech Delivering

図 5 「環境と人間」のレポート作成場面

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授業での具体的な活動は,第1時と第2時において,プレゼンテーションにおける

非言語,姿勢,アイコンタクト,ジェスチャー,声の抑揚の重要性を学び,実際に身

体を動かしながら学習する。第3時では,宿題とされていた海外の高校生のスピーチ

の Dictation の答え合わせ,その構成を確認したあと,全員で動画を視聴する。第4時

が,各自がスピーチを行う。生徒たちは積極的に授業に参加し,ほとんどの生徒たち

が準備した原稿を暗誦し,しっかりとしたスピーチを行った。英語でのスピーチは暗

記するのに躍起となり,非言語がおろそかになってしまうが,生徒達は一生懸命に取

り組んでいた。

第7章 メカニズム

ここでは,解決すべき課題を把握し,自分達に出来ることは何かを意識した制約条

件を考えさせる等,目標設定過程としての位置付けを考慮しながらの指導に取り組ん

だ。

授業の概略

第1時 自動車の歴史と過去や今現在も抱える問題について学び,技術者達の苦

悩・挫折や栄光の歴史を共有することで,グローバルな技術者としての在り

方・考え方について学ぶ。

第2時と3時 省エネや低公害で再注目を浴びている外燃機関であるスターリング

エンジンを紹介し,熱機関の基本となるメカニズムを理解させ,さら

にその歴史と将来性について考えさせる。

第4時 多用される内燃機関の原理とメカニズムを紹介し,理解させる事により,

これからの内燃機関を代表する自動車の将来目指すべきポイントを考え,さ

らに調査させる事で人と自動車のあるべき形態を模索させる。

図 6 授業の様子(スピーチコミュニケーション)

McGahan 講師によるジェスチャー指導 アイコンタクトの練習

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まとめ

外燃機関や内燃機関のメカニズムに対する関心および我々が抱える環境問題に対

しての生徒達の意識は昨年度同様に非常に高く,集中して講義を進める事が出来た。

メカニズムの説明やアプローチの手法も昨年度の反省を踏まえ,視覚的なものや具体

的な模型等を駆使して,効率よく進める事が出来た。平成 29 年度は時間配分等をさ

らに工夫し,エネルギーと環境問題について考えさせる時間を増やした。近年省エネ

や低公害の点で大きくクローズアップされている外燃機関であるスターリングエン

ジンをメインに,技術者が熱機関とそれらが抱える環境問題等の様々な事項に立ち向

かう意気込みと苦悩を知る事を通して,技術者がグローバルな視点からそれらをどの

ように考え,問題解決法を模索し,どのようなポリシーで技術を進歩させるべきなの

かを効果的にかつ段階的に理解させる様に取り組ませ,生徒の動機付けに大きな効果

を挙げたと考える。機械や車を産み出した我々が,今度はその機械や車が産み出した

社会問題を解決しなければならないと叫ばれて久しい。これからの技術者の新しい発

想が問われているのは過去も今も同様である事を理解させ,取り巻く要素に対してグ

ローバルな視点から環境問題およびそれらの問題解決等の手法を考えさせることで,

国際的に通用する広い視野を持たせる様な内容に工夫した。

(5) 外国人教員との取り組み

本校にはこれまで英語ネイティブの教員がいなかった。SGHに認定され「グローバ

ル社会と技術」第6章スピーチコミュニケーションを実施するにあたって,初めて外国

人教員が授業をすることになった。そのため,この授業の特徴はまず外国人教員と日本

語教員(英語科)とのティームティーチングであることが挙げられる。グローバルな社

会において英語でのプレゼンテーションの重要性は言うまでもなく,日本人英語科教員

も「英語」授業の中でその効果について指導はしてきている。が,非言語の部分に特化

図 7 「メカニズム」のレポート作成場面

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して授業したことはなかった。相手にわかりやすく伝えることを第一に考え,相手を説

得するためのスキルを習得することを目的に,体を使った授業が展開されている。

授業進行と役割分担

この授業は各クラス計4回受講することになる。外国人教員と日本人教員(英語科)

2名の,計3人のティームティーチングで行う。東京農工大学で講師を務め,「異文化

コミュニケーション」教育を専門とする Patricia McGahan 先生に授業内容,テキスト・

配付物の編集・作成を進めてもらった。平成 29 年度は昨年実践した内容にさらに修正

を加えたテキストで実施された。McGahan 先生は授業をすべて英語で進めていく。生

徒達は当初多少戸惑うが,次第に耳が慣れ,何を指示されているのか,すぐに理解する

ようになる。身体を使っての学習では指示通りに動けないと目立ってしまうが,ほとん

どの生徒が日本人教員の日本語訳は必要とせず,McGahan 先生の指示通りに真似をし

て,ジェスチャーをしたり,復唱を行っていく。最終授業における2分間のスピーチに

ついては,そのテーマを「グローバル社会と技術」で学んだ内容としている。英語科目

「英語表現Ⅰ」授業内においてもスピーチは行っているが,この授業ではそのテーマが

本校各分野のより専門的な内容のため,スピーチ作成にも生徒はより多くの時間を割く

ことが期待されている。そのため,使われる語彙,内容には個人差がかなり見られるよ

うになる。一生懸命作成した生徒にとって McGahan 先生から「良いスピーチだった」

というコメントをもらうことが何よりも嬉しく,次の学習へのモチベーションとなると

いうことである。また生徒達は McGahan 先生から指示された5名の生徒のスピーチを

それぞれが評価する Peer evaluation も行う。そのことにより個々の生徒の学習責任を認

識させると共に,授業の目的,観点もより明確にすることに効果があると考える。当初

全員の生徒が全員を評価させることも検討したが,評価シートに記入することに忙しく

なってしまい,クラスメートのスピーチを聞く余裕がなくなってしまう恐れがあったた

め,ランダムに生徒の番号を挙げることにした。発表順は特に定めず,自ら前に出て行

く方式としたが,教員から催促をされるクラスはなく,非常にスムーズに行われ,どの

クラスも時間通りに終了したことは生徒の取り組みが良いと言えると考える。

(6) 東京工業大学教員による特別講義

科学技術への興味・関心を喚起し,技術者はどういうものか , 技術者はどうあるべき

かについて , 技術と生活,技術と環境などの広い観点から , 人と技術の在り方や社会と

技術の関わりについて考えさせることを目的とした「特別講義」が 6 月 30 日(金)14:

15~15:15 に行われた。講師には東工大から5名の先生方をお招きした。講義のテー

マ,講義者は以下の通りである。

A) 「有機化学によるものづくり」

物質理工学院 応用化学系 田中健 先生

B) 「プログラミングを楽しむ」

情報理工学院 情報工学系 権藤克彦 先生

C) 「ロボットはできた。さあ,どう動かそう。」

工学院 システム制御系 三平満司 先生

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D) 「風力発電を知っていますか」

工学院 電気電子系 七原俊也 先生

E) 「発展途上国の交通手段」

環境・社会理工学院 融合理工学系 花岡伸也 先生

それぞれの講義において , 先進的な科学技術に触れるとともに,先生方の課題解決へ

の姿勢や情熱がうかがえた。また,生徒からは活発な質問が多数出され , 生徒達の問題

意識の高さを評価された。東京工業大学の全面的な協力の下,特別講義は実施され,大

きな成果を残すとともに,有意義な時間を過ごす事が出来た。

(7) フィールドワーク(校外研修)

日時:12 月 20 日(水) 対象:第1学年全員 場所:横浜みなとみらい地区ほか

第1学年を対象としたSGH科目「グローバル社会と技術」の授業の一環として校

外研修を実施した。「グローバル社会と技術」の授業では科学技術系のグローバルリ

ーダーを育てるべく,1学期,2学期と地球環境の保全やエネルギー問題を様々な切

り口で学んできた。その授業の中で生じた疑問や課題を解決するために,横浜みなと

みらい地区~関内・山下公園地域をグループで巡り,フィールドワーク実習を行った。

幸いこの地区には,多くの技術館・博物館・開港に関する港湾施設等があり,フィー

ルドワークに適している。当日は天候にも恵まれ,科学技術の発展や地球環境の保全

について有意義に実習することができた。その後,フィールドワークで学んだこと,

考えたことをレポートにまとめさせたが,そのレポートでも様々な科学技術を体感し

図 9 校外研修

図 8 東京工業大学教員による特別講義

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図 11 講演する松本教授

フィールドワークで考えを深めたことが十分に読み取れた。この研修をきっかけに,

本校の生徒が問題解決の手段を学んでくれることを期待する次第である。

(8) グローバルリーダー育成講演会

1年生を対象としたグローバルリーダー育成講演会を2回実施した。1年生は,教育

関係の著名人を,2年生は実務家を招聘していることから,平成 29 年度は,下記の2

名の先生にお越しいただいた。

・第1回グローバルリーダー育成講演会

日時:2 月 2 日(金)14:15~15:15

対象:第1学年全員 場所:大講義室

講師:東京工業大学特別教授 池上彰氏

講演タイトル:

「グローバルリーダーのために国際情勢を説く」

ジャーナリストとして多くの著作を持ち,テレビ

番組でもおなじみの池上彰東京工業大学特別教授を

講師としてお迎えした。

直近のトピックである極東アジアの国際情勢,アメリカ合衆国の大統領の近況,平昌

オリンピック取材などを題材として,政治や社会のしくみ,国際関係に及ぼす影響など

を現地で取材された経験を交えわかりやすい表現で次々に説明されていた。

多くの取材経験に基づく社会での様々な現象の見方,海外で気をつけるべきことなど

大変興味深く,生徒からは,日米地位協定,オリンピックのあり方など活発な質問がな

されていた。

・第2回グローバルリーダー育成講演会

日時:3 月 14 日(水) 13:30~15:00

対象:第1学年全員 場所:大講義室

講師:立教大学教授 松本茂氏

講演タイトル:「グローバル化時代に向けた英語学習」

NHKテレビ「おとなの基礎英語」等の番組で講師を務めるなど,コミュニケーショ

ン教育の分野でご活躍の松本茂立教大学教授を講師としてお迎えした。

先生ご自身英語が得意ではなかったが,高校時代ディベートを通じて英語でのコミュ

ニケーションに関心を持ち,英語を専門にするように至ったというご経験を話された。

グローバル化する社会の中で自分が誇れる能力・体験と並んで使い物になる外国語の

必要性を強調されていた。先生は生徒の扱いに慣れておられ,聴衆である生徒の間にマ

イクを持って回りながら問答を試みるなどダイナミックな展開で,生徒の問題意識を高

図 10 生徒の質問に答える

池上特別教授

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問題解決の枠組み全体を俯瞰

するメタ認知を発揮する機会

める効果が感じられた。また,立教大学での課題研究発表会に触れられ,生徒のやる気

を鼓舞された。

2回の講演会を通して,グローバルリーダーとして身につけるべき多様な能力につい

て気づくきっかけが与えられたものと考える。

4 研究開発実施上の課題及び今後の研究開発の方向・成果の普及

研究第3年次は,中間評価でのご教示に基づき,内容を大きく見直すこととなった。

ご指摘はSGH課題研究に関するものであったが,その前提条件となる本科目の見直し

が必要であることは,言うまでもない。

図 12 にあるように,私たちを取り巻く社会課題自体が,社会科学・人文科学や自然科

学等に応じた見方・考え方を働かせながら,生徒の主体的・対話的で深い学びの実現に

向けた授業実践を行った。なお,本科目では,多くの教育方法を取り入れているが,特

に,特別講義や講演会では,先進的な研究内容に触れると言った科学技術人材育成的な

意味合いよりも,大学教授がどのような問題意識を持ち,それがどのような形で解決さ

れていったのか,といった実体験を帰納し,モデル化することに価値があると考えた。

研究第1・2年次には,効果があると考えられる多くの方法を取り入れた。すなわち,

東京工業大学教員による特別講義・外部から招聘した著名人によるグローバルリーダー

育成講演会の実施(著名人である東京工業大学特別教授池上彰先生,NHKテレビ「お

となの基礎英語」の講師をされている立教大学教授松本茂先生に講師をお引き受けいた

だいた),校外研修によるフィールドワーク,外国人教員によるスピーチコミュニケー

ション授業などである。

図 12 「グローバル社会と技術」の役割

特別講義・講演会の役割

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研究第3年次となる平成 29 年度は,これらの実践が,問題解決の枠組みの中でどの位

置に当たり,どのような効果をもたらすのか,吟味する必要があった。特に,特別講義

や講演会は,東京工業大学との連携によって実現するものであり,先進的な研究内容に

触れると言った科学技術人材育成的な意味よりも,大学教授がどのような問題意識を持

ち,それがどのような形で解決されていったのか,そしてそれらが世の中で認知されて

いくためには,どのような過程を経たのか,といった実体験を帰納していき,モデル化

することに価値があると考える。生徒にそれを求めるためには,さらなる教育方法の改

善が必要である。なお,動機付けとしての効果は,アンケート調査を行っているので,

別章に委ねる。

本科目の学習活動は,

・解決すべきテーマの理解

・問題解決の手順を習得

・具体的な解決への提案

・英語による発表と討議

の4項目を掲げている。平成 29 年度は,すべてのテーマについて,レポート作成場面にお

ける問題解決の流れ図を作成し,学習の対象となる物事を捉え思考し,テーマの特質に応

じた見方・考え方を働かせながら,知識を相互に関連付けてより深く理解し,情報を精査

して考えを形成する過程を重視した学習の充実を図った。

なお,外国人教員によるスピーチコミュニケーションは,自分たちが各テーマで考えた

ことを英語化することで整理する意味合いを持つ。また,より伝わりやすくするために,

ノンバーバルコミュニケーションスキルの習得を目指している。日本人特有の無表情な発

話を乗り越え,説得力のあるスピーチとしたい。これらが外国語の学習という意味合いだ

けではなく,問題解決場面においても役立っていることは言うまでもない。

電力・環境と人間・都市・メカニズムで実施

情報モラル,技術者倫理では授業中はシミュレーション教材

(レポートでは実施 )

スピーチコミュニケーションで実施 (外国人教員 )

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Ⅱ グローバル社会と技術・応用研究会の活動報告

1 概要

新科目「グローバル社会と技術・応用」では,生徒の主体的・対話的で深い学びの実

現に向けた授業改善を念頭に,3種類のテーマ学習「中東・中央アジア理解」「イスラー

ム文化研究」「英語によるコミュニケーションスキル」による知識の蓄積とスキルの獲得

を行っている。さらに,「課題研究への道*」によって,具体的に各専門分野での課題解

決に結びつけ,3年生での「SGH課題研究」につなげたい。

本研究会では,研究第3年次の活動として,科目の実践を本格化させながら,資源産

出国に対する文化的理解を深めることでエネルギー・環境問題に関する取り組み方を学

ぶとともに,国際交流を視野に入れた英語によるコミュニケーション法を学ぶ。また,

「社会課題の解決のための問題解決の枠組み」における複数の解決案を絞る過程の充実

を図るため,専門分野における領域固有の制約条件などを取り入れた「流れ図」を作成

し,生徒に明確な指針を提案することを目指した。

* 「課題研究への道」とは「Response to Energy and Environmental Issues(REEI)」と称

するミニ「SGH課題研究」をさす。

2 経緯

本校では,グローバルテクニカルリーダー(GTL: Global Technical Leader)育成のため

に,高校段階において育むべき資質と能力として「リーダーが備えるべきスキル」,「地

政学的リスク回避能力」,「語学力」の3要素を掲げている。今年度は,これらの要素を

本校が取り組んでいる「社会課題の解決のための問題解決の枠組み」に組み込み,目標

を設定する過程において身につけるべきスキル,領域固有知識,および「見方・考え方」

と明示して,実践した。また,平成 29 年度の取り組みとして,本科目内で実施する「課

題研究への道」の課題設定場面をクローズアップした流れ図を作成し,生徒に明示しな

がら,課題解決学習をシミュレーションした。また,国際交流という現実の実践として,

フィリピンおよびマレーシアなどの資源産出国と交流し,学習内容の検証を行った。

3 内容

(1)総論および全体の計画

本科目は,第1学年の「グローバル社会と技術」の続編となる。「グローバル社会と技

術」では,課題設定に必要な情報の収集,外部知識の取り入れやそのためのスキルを学

び,問題解決のモデルを学ぶが,本科目では,それらを補完するとともに,すでに学ん

だ問題解決の手法を試行する段階となる。

研究第3年次に当たる平成 29 年度は,今まで教員の頭の中にあった課題解決の手順を

流れ図として可視化できたことにある。見方・考え方を働かせながら,知識を相互に関

連付けてより深く理解したり,情報を精査して考えを形成したり,問題を見いだして解

決策を考えたり,思いや考えを基に創造するため「課題研究への道」を充実させた。表

1 は,本科目において育成したい能力と各授業・学校行事との関係を示している。これ

ら育成すべき能力を具体的にどうやって身につけさせていくかが,本科目の課題となる。

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テーマ学習では,集中講義として「中東・中央アジア理解」,「イスラーム文化研究」,

「Global Awareness」をオムニバス形式で実施した。特に前者2講義は,高校段階では学

習する機会があまりなく,情報収集するにしても基礎知識を補う必要があることから,

目標設定過程における領域固有知識の獲得として実施している。また後者の英語に関す

る講義は,発信のために不可欠なものとして,英語科などと連携をとりながら実施して

いるもので,外国人教員による本格的なスピーキング・ライティングのための実践授業

として,「グローバル社会と技術」の「スピーチコミュニケーション」を発展させ,「Global

Awareness」と称して実施した。

次に,「課題研究への道」は,マネージメントの問題解決手法や定量的分析などを取り

入れた問題解決方法などを提案しながら,本校の専門5分野の特性によりながら,第3

学年の「SGH課題研究」への準備となる。なお,本科目では,これらの正規の授業と

は別に,第2学年全員を対象として,自他共にグローバルリーダーと認める実務家を招

聘し,「グローバルリーダー育成講演会」を企画した。今年度は,日産自動車株式会社の

田村宏志氏,日南市マーケティング専門官の田鹿倫基氏,那珂川町事業間連携専門官の

木藤亮太氏を招いた。詳細は後述するが,国際社会の中で活躍する企業,あるいは地方

創生に携わる方の話を聞くことにより,これから社会で求められる能力や,グローバル

な視点で物事を見ることの重要性を再認識できた。

表 1 育成したい能力と授業・学校行事との関係

1) リーダーとしてのスキル 2) 地 政 学

的リスク回避

3) 英語コミ

ュニケーショ

ン力

①インクルー

ジョン力

②バック

キャスティン

グ力

③コンセンサ

スビルディ

ング力

国際交流事業 ◎ ○ ○ ◎

学校行事 ○ △

集中

講義

地歴科教員 ○ ◎

外国人教員 ○ ◎

課題研究への道 ◎ ◎ △

GTL 育成講演会 ◎ ◎ ○

◎能力向上に期待できる ○能力向上に寄与 △関係あり

・集中講義は,地歴科教員による「中東・中央アジア理解」・「イスラーム文化研究」,外国人教員による

「GLOBAL AWARENESS」を集中講義(補講期間)。

・「課題研究への道」は,専門分野ごとに実施

(2)テーマ学習の取り組み

表 2 補講期間での集中講義 (単位:時限)

1 学期補講期間 2 学期補講期間 3 学期補講期間 計

中東・中央アジア理解 2 0 0 2

イスラーム文化研究 0 2 0 2

外国人教員 4 2 4 10

計 6 4 4 14

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A)「中東・中央アジア理解」

(ア)実施内容

GTL に必要な有知識として,豊富な天然資源を有する地域への理解が必要だと考

え,サウジアラビアと中央アジアにつて,1時間ずつの授業を行った。サウジアラ

ビアについては,王族による特有の政治体制と産油国であるという特徴を踏まえた

上で授業を行った。また,中央アジアについては,同地域における政治的影響力の

大きさからウズベキスタン,天然資源を豊富に保有しているトルクメニスタンの2

ヵ国を取り上げた。授業後, 以下の3つのテーマより1つを選択した上で,それに

ついて調べ,レポート作成するように指導した。

(1)サウジアラビアの産業・政治制度・経済または今後のあり方について

(2)中央アジアのいずれかの産業・政治制度・経済・今後のあり方などについて

(3)天然資源をめぐる問題について

レポートの感想・考察について代表的なものを以下に紹介する。テーマ (1)と(2)を選

択した生徒は,「日本へのエネルギー供給する国として,日本にとって重要な国であ

るにも関わらず,中東・中央アジアの国々についてはよく知らなかった。体制・文

化の違いを知った上で,友好的な関係を築いていきたい。」「今まで関心のなかった

地域について調べることができて,面白かった。」といった感想が多く見受けられた。

また,イスラーム教の果たしている社会的役割に着目する考察もあり,異文化を多

面的に捉えるきっかけになったと思われる。これより,GTL にとって必要な物事を

多面的に捉える機会にもなったと思われる。テーマ(3)では,天然資源枯渇の問題や

代替エネルギーの開発・導入に関するものが多かった。

(イ)今後の課題

レポートの中で、中東・中央アジア地域について,「今まで知らなかった」という

感想が多かった。授業では地図に加えて,内容に即した画像・写真などを用いるこ

とで,これら地域のイメージを掴みやすいように改善したいと感じた。

B)「イスラーム文化研究」

本校では,地歴・公民科の科目で,イスラーム文化について学ぶ機会がある。しか

し,残念ながら,第1学年の「世界史」は,近・現代の歴史が主であるために,イ

スラーム教の内容の理解には至らない。また,第3学年の「倫理」では,宗教の特

徴について話題にするが,今日国際問題となっているシーア派やスンナ(スンニー)

派について学ぶ時間はなく,領域固有知識の増強が必要である。

国際交流協定相手国であるフィリピン共和国では,イスラーム武装勢力によるミ

ンダナオ島支配が続いているが,それに加えISとの戦闘が始まり,ドゥテルテ大

統領の来日がキャンセルになるなど,国際情勢は大きく変化した。しかしながら,

情報を収集する段階で,何ら予備知識なしに取り組むことは困難である。少ない時

間ではあるが,今日のイスラーム教徒国際情勢を理解する上で,本テーマを全員が

学ぶ意義は大きい。

平成 29 年度の実践では,国際情勢の理解に必要な項目として,

・スンナ派とシーア派の分裂

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・六信五行

などについて,学ぶこととした。

(ア)生徒への課題

生徒は,授業を受けながらワークシートを完成させる授業方法をとった。これに

より,ほとんどの生徒が,イスラーム教の特徴を理解しながら共存の道を探るべき

であると考えている。

(イ)今後の課題

イスラーム教徒はアラブ地域だけでなく,アジアにおいてもマレーシアやインドネ

シアを中心に,平和裏に活躍している。この事実を踏まえながら,自文化中心主義

(Ethnocentrism)に陥ることなく,私たちの共通の課題を解決する必要があることを

自覚させた。

C)「Global Awareness」

本授業は,外国人教員が担当し,グローバルな視点で問題意識を考える能力を向上

させることを目的としており,英語でのカンファレンス方式で行った。授業は3つ

のパートに分け,それぞれを各学期の補講期間中に実施した。授業の合計時間は 10

時間となる。

3つのパートはそれぞれ2つのセクションで構成されており,パート1では,前半

のセクションで授業の基本概念と 10 のテーマ紹介を行い,各生徒には担当するテー

マと国を指定した。担当するテーマに関する背景やテーマに関する自分の考え,担

当する国に関する背景をリサーチし,それをもとに後半セクションでグループディ

スカッションを行った。グループディスカッションの内容としては,担当テーマに

ついての情報発信と,第1学年のスピーチコミュニケーションで学んだプレゼンテ

ーションスキルの復習となる授業連携である。尚,10 のテーマは以下のとおりであ

る。

・ International Relations: 国際関係

・ International Organizations: 国際機関

・ Cultural and Intercultural Studies: 文化と異文化研究

・ Global Health Issues: グローバルヘルス問題

・ Global Energy and Environmental Issues: 地球規模エネルギー・環境問題

・ International Conflict Resolution & Peace Studies: 国際紛争解決

・ World Heritage Stewardship: 世界遺産管理

・ Models of Local and Global Science & Technological Projects:

地域的およびグローバル的な科学プロジェクト事例

・ International Cooperation: 国際協力

・ Local & Global Collaborations: 地域およびグローバル連携

パート2では,前半セクションで複数テーマに関連するプレゼンテーションの事例

を取り上げ,グループディスカッションを行った。なお,平成 29 年度は,東京農工

大学の外国人留学生8名にファシリテーターとしてグループディスカッションに参

加していただいた。本校生徒だけでなく,留学生の中立的な意見を取り入れること

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で,インクルージョン力をより育成できると考えられる。後半セクションではパー

ト3で実施するグループプレゼンテーションの打ち合わせを行った。

パート3では,各自の担当テーマと担当する国についてトピックを考え,グループ

で資料を統合した後,グループプレゼンテーションを行う。多くのグループは異な

る分野クラスで構成されており,課題解決のために,分野を横断したグループワー

クを行うきっかけとなった。

(3)「課題研究への道」

課題解決メソッドの中では,複数の解決案について吟味する過程において,社会科学

の成果や自然科学の手法を用いて,最適な案を選択していく過程となる。また,自分た

ちが選択した提案を検証する手法を学ぶ。このことに加え,第3学年の「SGH課題研

究」に取り組むための準備と試行という位置づけとなる。そこで,「SGH課題研究」

を始めるに当たって,各分野のテーマ設定までの手順について再認識し,そのプロセス

を生徒に明示することが必要である。テーマ設定までの手順は分野ごとに違いがあるが,

平成 29 年度はそれぞれの分野でのアプローチを流れ図として可視化した。各分野の平

成 29 年度の「課題研究への道」の取り組みは以下の通りである。

A)応用化学分野

課題研究では英語を用いた文献検索や研究発表などを用いて行なうことになること

から科学英語のスキルアップ、および、並行して実施されている「Global Awareness」

と連携しながらグローバルな視点で応用化学的な側面からSGH課題研究の課題設定

ができるようなることを目標に授業を進めてきた。具体的には、3つのステージから

なり、第1ステージでは応用化学分野での大きなテーマとして考えられる「環境」「エ

ネルギー」に関する基本的な専門用語、図や数式の英語表現の自作の科学英語プリン

図 1 応用化学分野 「課題研究への道」テーマ設定フロー

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図 2 2017NEW 環境展ポスター

ト(「数と演算」「グラフ」「化学式と化学反応式」「環境用語」)を用いた学習,また,

アメリカエネルギー省に属する“Office of Energy Efficiency & Renewable Energy”の Web

ページ(https://energy.gov/eere/office-energy-efficiency-renewable-energy)に用意してあ

る教育用ビデオ “EERE Energy101 Video Series”を用いたリスニングおよび内容理解。

第2ステージでは 5 月 23 日〜26 日に東京ビッグサイトで開催された“2017NEW 環境

展”および“2017 地球温暖化防止展”の見学会を通

して,各自がそこで興味をもった事項・製品などの

資料収集・質問による調査等を行い,それを A4 一枚

にまとめたプレゼンテーションシートの作成および

ショートプレゼンテーションの実施。第3ステージ

では「Global Awareness」で設定されたテーマ・立ち

位置(国・地域)をベースにグループでの調査・議

論・まとめとしての各グループ 10 分程度のプレゼン

テーションと質疑応答を実施した。

評価に関しては,第1ステージでは“科学英語表

現小テスト”,“聞き取りの要約と自己評価”,第2,

第3ステージでは“プレゼンテーションシートの

評価”と“プレゼンテーションの生徒間の相互評

価”を元に行った。

B) 情報システム分野

図 3 情報システム分野 「課題研究への道」テーマ設定フロー

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情報システム分野では2学期から「課題研究の道」のカリキュラムをスタートさせ

る。それに伴い,今年度は夏休み期間中に,グローバルな視点から見た社会問題につ

いての調査を,事前学習として行った。具体的な生徒への指示としては, (1)グローバ

ルな視点から社会問題を取り上げる(情報元の出典を明記),(2)なぜ,それを問題であ

ると考えたのか,(3)情報分野関連の技術で,どの様に解決できるか具体的に考える。

以上の3つのステップで調査にあたらせた。尚,漠然と社会問題の調査をした場合,

後述するグループワークでの意思統一が散漫になる可能性があるため,取り上げる社

会問題は,国連の掲げる持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals)「世

界を変えるための 17 の目標」を一つの指標とした。

生徒個人の調査結果をもとに,類似したものをまとめ5~6人のグループを作り,対

象とする社会問題を解決する1つのテーマを決定させる。テーマを決定させるために

は図 3 のようなフローに従い,「SGH課題研究」として取り組んだ場合を想定した技

術的開発の提案をし,実際に研究に取り組んだ。

また,第3学年の課題研究同様に研究経過を報告する中間発表を行い(図 4),研究

のアウトプットと質疑応答からのフィードバックを受けることができ,研究を進展さ

せることに繋がった。研究の最後にはポスターセッションを実施する。

昨年度は過去の課題研究テーマ

から,グローバルな社会問題を考

え,ミニ「SGH課題研究」に取

り組んでいたが,今年度は事前学

習として社会問題の調査にあたら

せることで,より広い視野で研究

テーマ設定に臨むことができた。

さらに,中間発表会やポスターセ

ッションを行うことで,研究のア

プローチの客観的評価を得ること

ができた。

C) 機械システム分野

機械システム分野では平成 29 年度の「課題研究への道」として,課題研究テーマを

より現実的な問題解決の方策を図るために「専門性の向上による課題解決のための視

野の育成」を目指し,高度に細分化された「設計」「原動機」「制御」の3分野をテー

マごとに2時間程度の小分類で学習することで,たがいの技術の関係性を理解し,自

身の専門性が課題解決に必要不可欠であることを学べるよう働きかけを行った。

また,昨年に引き続き,ブレインストーミングとマンダラートによる「地球規模の

課題から自分が解決できる課題へ」をテーマに,専門性とSGH講演会や授業で培っ

た知識を重ね合わせることにより,豊かな課題研究テーマ選定を行える環境づくりを

目指している。

図 4 ミニ「SGH 課題研究」中間発表会の様子

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1月現在の「SGH課題研究」のテーマ案の中でも,従来見ることができなかった

「セラピーロボットの製作」「盲導犬ロボット製作」など,技術によって人間生活に

働きかける研究テーマが出された点を評価していきたい。

D) 電気電子分野

「SGH課題研究」では,社会課題の解決方法を提案するため,調査・分析といった

問題解決のためのスキルが要求される。本分野では,「課題研究への道」として,環境

問題やエネルギー問題を題材に,調べ学習やプレゼンテーションによる発表を通じて,

図 6 機械システム分野「課題研究への道」テーマ設定フロー

図 5 「課題研究への道」ブレインストーミング

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複数の解決案を絞る過程を体験させた。

また,平成 29 年度は,10 月 17 日(火)の授業において,「フィリピンにお薦めする

発電方法」をテーマに,フィリピン共和国デ・ラ・サール大学附属高校生徒と本校生

徒との間で,英語によるコミュニケーションが行われた。その際,この授業の中では

活発的な意見交換が行われ,グローバルな視点から技術的な知識だけでは問題解決が

難しいことを体感することができた。

本分野では例年,課題研究のテーマ設定し,解決案策定のプロセスを自分たちで企

画・立案し,教員との面接を通じて合意形成をはかり,制約条件はクリアしているか,

テーマの趣旨および方向性が適正であるかを検証している。また,「課題研究への道」

の中では,動画による新しいプレゼンテーション技法により,聴衆との合意形成を進

めている。

また,昨年度からの変更点としては,社会課題を把握し,問題を解決するために,

様々な情報を収集するが,この問題設定場面において,さまざまな問題解決の方法か

ら,「なぜその方法を選んだのか」生徒に問いかけ,論理性を重視するとともに,問題

の本質について深く追求し,問題解決のトレーニングをした。また,様々な制約条件

をクリアさせ,最適解を抽出させる作業を繰り返し行うことで,そのプロセスを体得

し,その後に行われる合意形成場面において,自説に対する論理性や表現力が他者へ

の説得には必要であることを実感させることができた。

図 7 電気電子分野 「課題研究への道」テーマ設定フロー

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E) 建築デザイン分野

建築デザイン分野では,授業を実施するにあたり,社会的な課題の抽出および研究

目標の設定として,「省エネルギー化による持続可能な建築の探求」,「地方創世社会に

おける地域性の保全」の2点を掲げた。第3学年より始まる「SGH課題研究」に接

続するにあたり,図 8 に示す流れの中で,基礎的な学習として「情報収集」および「プ

レゼンテーションスキルの向上」に2点に重点を置き授業に取り組んだ。

情報収集に関しては,グローバルリーダー育成講演会(全分野共通)や課題研究発

表会の聴講を通じて,上述の研究目標にアプローチするモチベーションの向上および

研究に関するトピックの抽出を期待した。課題研究発表会聴講後には,興味・関心を

持った研究を各自3点挙げ,その内容について要約する課題を課した。また,校外研

修として東京工業大学環境・社会理工学院 -建築学系の卒業制作・修士制作展の見学を

行った。社会問題の解決方法を建築のデザインへと発展させる高度なアプローチ手法

を学ぶとともに,図面表現および模型表現によるプレゼンテーションの手法を学ぶこ

とができる良い機会となった。見学時には,興味・関心を持った設計作品について要

約する課題を課した(図 9)。

プレゼンテーションスキルの向上に関しては,50 分間の授業において省エネルギー

や環境問題に関する事例等を紹介した後,問題提起を行い,問題解決の提案を 20 分間

で A4 用紙1枚に図式化する課題を毎時間課した(図 10)。

本報告書の執筆時点では,ディスカッションを行いながら「指導教員および研究テー

マのマッチング」を随時進めている段階である。

図 8 建築デザイン分野 「課題研究への道」テーマ設定フロー

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(4) グローバルリーダー育成講演会

A) グローバルリーダー育成講演会 第1回

日時:11 月 21 日(火) 対象:第2学年全員 場所:大講義室

講師:日産自動車株式会社 ニスモビジネスオフィスチーフ・プロダクト・スペシャ

リスト (兼)商品企画本部 第一商品企画部チーフ・プロダクト・スペシャリ

スト田村宏志氏

講演タイトル:「人生における仕事の夢はなんだろうか?“はじめてのクルマ”を覚

えているだろうか?」

内容:日本にとって最大規模の産業である自動車をベースに,企画力やプロジェクト

リーダーに必要な能力を講演によって知ることが出来た。企画をするにあたり重

要なポイントや,プロジェクトリーダーの素養については,目下第3学年の課題

研究においても適応できる内容であり,研究の企画・進め方の裾野を広げること

に繋がった。講演の題材が生徒達にも分かりやすい自動車であったため,質疑応

答も活発に行うことが出来た。

B) グローバルリーダー育成講演会 第2回

日時:12 月 15 日(金) 対象:第2学年全員 場所:大講義室

講師:日南市マーケティング専門官 田鹿倫基氏

講演タイトル:「100 歳までに死ねない皆さんに伝えるこれからの日本で起こること」

図 9 設計作品の要約 図 10 問題解決の提案

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内容:高齢化や需要と供給など,生徒もこれまでに聞いたことのあるキーワードを用

いて,これからの日本がどのような社会になるのか理解することができた。イノ

ベーションにより産業が5年で無くなることを,スマートフォンの普及率を例と

して挙げていた。これからの社会では大きな市場が他の産業に置き換わることが

次々に起こると考えられるので,ライフステージに合わせて,住む場所も雇用形

態もチェンジできる力を持つことが大事であると生徒達は知ることが出来た。

講師:那珂川町事業間連携専門官 木藤亮太氏

講演タイトル:「日南市・油津商店街再生事業 応援の連鎖がまちを変える」

内容:商店街の再生事業をテーマに,現代の東京一極集中を是正し,地方の人口に歯

止めをかけ,日本全体の活力をあげることの必要性を知ることが出来た。また,

これまでは「専門家」や「情報」は都会から地方へ派遣されるのが常であったが,

地方創生について解決すべき課題は地方で起こっており,地域課題を解決するノ

ウハウや経験値は,地方だからこそ得ることができる。地方から起きるローカル

イノベーションについて生徒達は学ぶことが出来た。

4 研究開発実施上の課題及び今後の研究開発の方向・成果の普及

本校では第2学年より専門分野に所属し,工業教科の授業が始まる。そのため,自

然科学における成果を取り入れるにしても,それぞれの専門分野に応じた制約条件や

まとめ方がある。平成 29 年度は,課題解決のプロセスを各分野に応じた流れ図にまと

めることができた。本科目では,問題を見いだして解決策を考えたり,思いや考えを

基に創造したりすることを実践する探究学習を本格化させるため「課題研究への道」

を実施した。今後は,作り上げた流れ図を個々の事例に当てはめていくといった演繹

的な活動を反復する必要がある。すなわち,流れ図をマニュアルとして,問題が生じ

ればすぐにそこに戻り,方針を修正する,いわば統制がとれたアクティブラーニング

の試みである。

次年度は,各分野の取組について議論を重ね,可能な限り最大公約数を見つけてい

く必要があるだろう。それによって,共通の社会課題を解決するためには,共同での

取組,さらには合同での取組を模索することが可能であると考えている。

図 12 第2回講演会の様子 図 11 第1回講演会の様子

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Ⅲ 「SGH課題研究」 研究会の活動報告

1 概要

本校では工業課程の専門高校として工業教科「課題研究」を実践してきた。今般「S

GH課題研究」を掲げたことから,両者の違いを明示する必要がある。従来の工業教

科「課題研究」では,工業教科で学んだことの総括として,ものづくりの過程におい

て直面する問題を解決し,あるいは改善することを目的とする。それに対して,開発

科目「SGH課題研究」では,社会課題を解決できる人材の育成を目的としており,

本科目は,問題を見いだして解決策を考えたり,思いや考えを基に創造したりする実

践の場であり,研究の成果を示すパフォーマンスの場でもある。それゆえ,「SGH課

題研究」のためには,第1・2学年に学んだSGH科目の手法や手順を総動員し,場

合によっては,社会科学的なマネジメントを意識したり,定量的評価を行ったりする。

さらに,高校の公民科で学ぶ人文科学的な知識も必要になる。例えば,社会課題の一

つとなる貧困問題や ,高齢者の社会福祉問題では ,法律などが整備されつつあり,環境問

題では法律による規制などがある場合が多い。しかし,法律による支援や規制だけで

完全に問題が解決されるわけではない。価値観の異なる人々に,情に訴えるような解

決策では,何ら効果は上がらない。真の解決策とは何か,それぞれの個性を生かし多

様な人々との協働する,この力を持つ者に,グローバルリーダーへの道が開かれるも

のと考えている。

「SGH課題研究」では,目標設定に関わるテーマ設定場面における制約条件の扱

いが重要となる。しかも,これらの解決には,実現可能であるという制約条件が加わ

る。すなわち,本校では,企画だけでは「SGH課題研究」とは認めていない。企画

を検証する手段として,ものづくりや実験を位置づける。

2 経緯

(1) 背景

本校は工業課程であることから,第3学年に配当される「課題研究」が必履修科

目とされている。科目「課題研究」は,本校が昭和 58 年度に文部省研究開発学校の

指定を受けた際に開発したものであり,その後必履修科目となったことから,全国

の工業高校等で実践が積まれてきた。なお,現行の学習指導要領では必履修科目と

はなっていないが,本校では必修科目として継続している。

本校においても研究開発学校の指定以来,30 年あまりの間,実践を積んできた。

本校が行ってきた「課題研究」は,ものづくりや実験・実習に基づき,その過程に

おいて直面した課題を解決するという方法で展開されてきた。

(2)本校における取り組みと仮説

「SGH研究開発」における学習の総仕上げとして,いままで学び,蓄積してき

た知識やスキルを活かして社会課題を分析し,課題を設定する。そして,解決策の

検証として,ものづくりや実験・実習を行い,最適解を導出していく。

これらの取り組みにより,論理的に物事を捉え,直面した問題を解決できる人材,

モデル化した手順により問題解決を図る人材,チームワークの形成などリーダーと

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なり得る人材を育成するとともに,「SGH課題研究」における成果の英語化により,

自ら蓄積した知識を再構築できると考えている。

3 内容

(1)「SGH課題研究」研究会の活動

今年度の活動について,内容ごとに報告する。

A) 「SGH課題研究」のテーマの可否を専門分野で認定し,研究会で認める流れ

平成 29 年度実施した「SGH課題研究」は前年度の3学期頃から準備を行い,

次年度の予算申請が2月にあることから,各専門分野において大まかなテーマ設

定と人数を決定した。4月にはテーマ,人数を確定した。

4月から「SGH課題研究」を実施するにあたり,一部のテーマを「SGH課

題研究」とし,その内容,指導に加わる普通教科教員,TA と外部講師について検

討した。過去2年間の「SGH課題研究」の許可理由から,「持続可能性・再生可

能・グローバルな視点での社会貢献」という3つの基準を設け,生徒がテーマ設

定時に,認定理由として活用できるよう確認した。これをもとに5月に,各専門

分野で内容等を吟味し,研究会で許可した (詳細は後述 )。平成 29 年度の第3学年

は,第1学年に「グローバル社会と技術」,第2学年に「グローバル社会と技術・

応用」などのSGHプログラムをすべて学んだ最初の学年であるため,「SGH

課題研究」に取り組む生徒の割合が5分野すべてで目標の 30%を超え、全体では

39.7%となった。

B) 課題設定場面での流れ図の作成

テーマ設定に指針となる流れ図を作成し,これをもとに指導した。なお,各専

門分野では,「安全性が確保されているか,コストに見合う成果が上げられるか,

設備は対応可能か」といった制約条件を吟味する合理的判断過程が必要となる。

この過程は専門分野により異なる。

C) 5分野のスケジュールの現状確認と今後の年間日程の調整

「SGH課題研究」,「課題研究」に関する実施前の指導は,第2学年2で実施

する。その内容や時期は,各専門分野で実施する他の専門科目の履修とリンクす

るため,専門分野ごとに種々である。

D) SGH中間報告会 (11 月 22 日実施 )

各専門分野2テーマずつ選出し、全体で 10 テーマのポスターセッションを行っ

た。

E) 講演会や調査旅費をはじめとする予算の活用(活動を拡張する方法)

講演会や調査旅費は各専門分野の「SGH課題研究」テーマごとに研究会に提

案し,研究会が検討の上,可否を決めた。平成 29 年度は、応用化学分野と建築デ

ザイン分野で講演会を行うこととした。

F) 専門分野教員と普通教科教員との協働

後述の通り,「SGH課題研究」のうち,いくつかのテーマで専門教科教員と普

通教科教員との TT が実現した。今後も TT が促進されるよう,普通教科教員に課

題研究の見学等を促す。

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G) 学外の研究発表会やコンテストへの参加

H) 「SGH課題研究」要旨集の作成

「SGH課題研究」の要旨集は,「課題研究」の要旨集とまとめた一冊にするが,

両者が区別しやすいよう,中扉を設けた。

I) 今後の課題

中間評価時の視察では、「泥臭い実践」をもっと行うようにと指摘された。こ

れを踏まえ、今後は,課題研究での成果を生徒に試してもらう,実際に困ってい

る方にインタビューをする,企業とタイアップするなど出口のありかたを見直し

たい。

(2)講演会等の実施

「SGH課題研究」の一環として,外部講師を招聘し,下記の講演会を行った。

A) 講師:京都大学大学院工学研究科物質エネルギー化学専攻 東正信 助教

日時:1 月 22 日(月) 14:15〜16:00

対象:応用化学分野 2 年生

場所:1号館第1会議室

講演タイトル:「光触媒を用いた水分解(水素生成)」

内容:これからのエネルギー資源を考えた場合,現状の

化石燃料中心から再生可能エネルギーへの転換は必

然である。この講演会では,太陽光を利用して水を

分解し,クリーンな水素エネルギーを得るための技

術として,光触媒の利用を紹介頂いた。原理の説明

から最先端の研究の成果まで,デモキットを使いな

がら分かり易くお話し頂いた。質疑応答では,第3

学年の課題研究で取り組むためのアドバイスを請う

生徒もあり,有意義な講演会となった(図 1)。

プレゼンテーション英語部門 金賞課題名「開発途上国における消毒用バイオエタノールの作製」

ポスター日本語部門 銀賞課題名「世界を救う日本のゴミ箱〜飲料容器自動分別機〜」

第5回サイエンスセミナー2017 江戸川大学情報教育研究所優秀賞課題名「言語学習を目的としたビジュアルプログラミングソフトウェアの開発」

第6回 E&G DESIGN 学生デザイン大賞東海エクステリアフェア実行委員会

佳作課題名「運河に立つ大樹」

第7回 子どものまち・いえワークショップ提案コンペ

日本建築学会最優秀賞課題名「建築におけるワークショップの評価」、「非言語による効率的な伝達方法についての研究」、「SHIBAURA CAMP!」

SFC未来構想キャンプ2017慶應義塾大学総合政策学部・環境情報学部

優秀賞課題名「東京オリンピック2020を契機とした新しい都市緑化」

SSH/SGH課題研究成果発表会 東京学芸大学ポスター優秀賞課題名「山手線駅舎の形態とバリアフリー経路の関係性」

大 会 名 主 催 者 賞 ・ 記録

プレゼンテーション日本語部門 銀賞課題名「熱中症のリスクマネジメント」

第2回 関東甲信越静地区スーパーグローバルハイスクール課題研究発表会

立教大学

ポスター日本語部門 金賞課題名「視覚障害者の為の落下防止システム ~電子白杖の開発~」

図 1 京都大学 東正信

助教講演会の様子

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B) 講師:宇都宮大学地域デザイン科学部建築都市デザイン学科准教授 安森亮雄 氏

日時: 2 月 20 日(火) 9:00〜11:00

対象:建築デザイン分野2年生(聴講:建築デザイン分野3年生希望者)

場所:本校2号館3階造形室

講演タイトル:「地域資源のリサーチとデザイン〜大谷石と空地から」

内容:現代の地方都市において,その再活性化には地域のローカルな状況や要求に応

えるだけでなく,常に都市を取り巻くグローバルな状況や潮流と接続した建築

的な思考が求められる。宇都宮市は,産官学の連携による空き家再生や次世代

型路面電車システム(LRT: Light Rail Transit)計画などを通して,伝統的な街並

みを生かしながら,地方創生社会における持続可能な市街地形成を積極的に行

っている。

そうした宇都宮市を拠点として多彩な研究・設計活動をされている建築都市デ

ザイン学科安森准教授に,地域資源である大谷石を建築的に再評価した伝統産

業と街並みの継承の取り組みと,市街地の空地や空き店舗を新しい地域資源と

して肯定的に捉え直して利活用する取り組みについてご講義頂き、研究と設計

を繰り返しながら建築の学びを地域に生かすことが,持続可能なグローバル社

会の形成につながるというヒントを得ることができた。

(3)各専門分野の活動

A) 応用化学分野

(ア)今年度の概要

応用化学分野では,環境問題や古代技術をテーマとした5つの研究について,

「SGH課題研究」の認定を受けて実施した。

(イ)テーマ設定

テーマ設定の流れについて,その概要を図 2 に示す。実験設備の対応能力や,

データ収集サイクルの妥当性等,化学実験の特質を吟味した上でテーマ設定を進

めた。

(ウ)実施したテーマ

○ 教育支援教材の開発

「身近な素材を用いた金属空気電池の作製と性能の評価」

小中学生を対象とし,安全に実施できる実験の機会の創出を目的に,家庭内で入

手可能な素材を用いた電池の作製を行った。また,電池の原理を学習するための

教材作りにも取り組んだ。

○ 古代技術からの発見

「古代ガラスの作製と評価」

古代ササン王朝ペルシアで作られたササンガラスの作製に取り組み,古代ガラス

化技術について検討した。

○ 環境問題の解決

「芝浦地区の環境調査(大気を中心として)」

学校の所在地である東京港区芝浦地区を対象とし,利便性の高い簡易な装置を用

いた環境測定について検討した。オゾン濃度の測定や COD 水質検査について取り

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組んだ。

「発泡ガラスの作製と水質浄化性能の評価」

素材として安全で広範に利用されているガラスを材料とし,水質浄化のためのろ

過剤の作製と評価を行った。ガラス内部に発泡を施すことにより,細孔の多い発

泡ガラスの製造について検討した。

○ 衛生環境の改善

「開発途上国における消毒用バイオエタノールの作製」

東南アジアの開発途上国を想定し,1家庭や1店舗単位で可能なバイオエタノー

ルの製造方法について検討した。バナナの発酵によるエタノールの製造と太陽熱

を利用した簡易蒸留について,実験的に議論した。

(エ)今後の課題

昨年度の2テーマから,今年度は5テーマについてSGH的な視点に立った研究

を行った。環境問題に関わるテーマが多い傾向にあるが,開発途上国の産業を意

識した技術の提案や,教育機会の創出を目指したもの,古代技術の再現等,昨年

度とは異なるアプローチの研究テーマにもチャレンジした。まだまだ技術的な検

討に止まる研究も多く,社会背景まで考慮した検討まで展開できていないものも

多かった。今後の課題である。

(オ)受賞実績

第2回関東甲信越静地区スーパーグローバルハイスクール課題研究発表会 課

題研究プレゼンテーション(英語)部門において,金賞受賞。

「開発途上国で製造可能な消毒用バイオエタノールの作製方法」

“Method for Preparing Producible Bio -ethanol for Disinfection in Developing Countries”

図 2 応用化学分野テーマ設定の流れ

図Ⅲ-1 応用化学分野テーマ設定の流れ

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B) 情報システム分野

(ア)今年度の概要

図 3 に示すように,テーマ設定のあるべき姿として,漠然とした構想からテー

マを決めるまでの手法についてミニ「SGH課題研究」を通して具体的に学んだ

経験を生かし,平成 29 年度は,(1)言語に依存しない手指の動作で機器の操作を行

うシステムを構築するグループ, (2)プログラミング言語を簡易に学ぶシステムの

開発により貧困問題の解決を目指すグループ, (3)インターネットを介した情報共

有と必要な情報の属性ごとに検索できるシステムの開発を行うグループの計3テ

ーマが取り組みを行った。

(イ)実施したテーマ

「直感的操作可能な手袋型入力システムの製作」

これまでのコンピュータや電気製品の操作には,キーボ

ードやマウス,リモコンなどを利用していた。特にリモコ

ンなどは,一言語でしか印字されていないため,ボタンに

どのような機能が割り当てられているのかがわかりづら

い。そこでユニバーサルデザインを念頭に置いた,手指の

動作を読み取るための手袋型入力装置を自作し,システム

を構築した結果として,コンピュータやエアコン,卓上電

灯などの電化製品の操作に成功した(図 4)。

図 3 情報システム分野テーマ設定の流れ

図 4

データグローブ

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「言語学習を目的としたビジュアルプログラミングソフトウェアの開発」

SDGs の中の貧困問題に着目し,それを解決する一助となるアプリケーションを

考えた。その過程で,開発途上国のインドなどの例を調査したところ,簡単なコ

ールセンターから始まり,今や IT 分野のプログラム開発拠点としての発展してい

る。この事例から,貧困から脱却するにはプログラミングを学び,プログラマー

になることが有力な手段になると考え,C 言語プログラムを学習するための教材を

開発した。完成したアプリケーションはフローチャートのようなアイコンを画面

上で接続し,視覚的にプログラムを行い,プログラムの流れを把握した後,コー

ド生成ボタンで C 言語のソースコードを得る。このコードを元のアイコンと比較

することで,C 言語の書き方を学習する。

「動的な web ページの作成」

環境やエネルギー問題等の世界規模で解決すべき多くの問題を解決するツール

として,情報の共有と,情報の属性ごとに検索できる web ページを作成した。ま

ず校内の進学試験報告書のデータベースを例に作成した。これは簡単に web ペー

ジの維持管理ができるよう構成され,管理者マニュアルも作った。実際に生徒が

校内ネットワーク上で検索,閲覧できるものにした。次に汎用性を高め,情報共

有ツールとして自由度の高いものを作成した。

(ウ)今後の課題

今年度は,言語の非依存とユニバーサルデザイン,貧困問題の解決,ネットワ

ークを介した協働の観点から「SGH課題研究」として取り組みを行ったが,最

低限の課題解決にはなったものの,平成 29 年度も成果を測るには至らなかった。

なお,「SGHフォーラム」や「関東甲信越静地区課題研究発表会」等で発表の機

会を得,特に上記 (2)のテーマについては「サイエンスセミナー in 江戸川大学」に

おいて優秀賞を受賞した。多くの先生方からのご意見があり,このアプリの改良

や YouTube での教材動画の作成のみならず,パソコンを開発途上国に寄贈する活

動など,科学技術の枠を超えた取り組みの必要性等,有意義な情報交換を行うこ

とができ,生徒たちは自分の考えていたもの以上の取り組みの必要性を感じ,多

くの刺激を受けたと考えられる。引き続き,成果測定まで含めたスケジュールの

管理指導と発表会等を通じた成果普及を意識していきたいと考える。

C) 機械システム分野

(ア)今年度の概要

平成 29 年度も昨年度に引き続き,「課題研究」の研究テーマの希望調査の時点

で,エネルギー・環境や社会貢献・社会福祉といったキーワードに関連する問題

を背景として,既に世の中に存在し活用されている機械装置・システム等も対象

として,省エネルギー化,低コスト化,多様な世代・環境等での利用を可能とす

ることによる社会貢献,社会福祉,ユニバーサルデザイン等を目指すことを目的

とした3つのテーマを,今年度の「SGH課題研究」として実施することとした。

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「電池選別機による電池処理の簡略化」では,エネルギー問題に対する課題につ

いて,「自作オムニホイールを用いた乗車型体重移動用ロボットの製作と評価」で

は,ユニバーサルデザインについて,「自動式ペットボトル処理機の開発」では,

環境問題と人的労力の軽減について,それぞれ取り組んだ。なお,テーマ設定に

あたっては,従来の課題研究を参考に図 5 に示す内容に留意した。

(イ)実施したテーマ

「電池選別機による電池処理の簡略化」

エネルギー問題の一つとして,電池の残量があるのに捨てられてしまう無駄な

処分がある。ひとつひとつの電池の電圧を測ることができる「電池チェッカ」や,

ごみ処理場に置かれている大型選別機は存在するが,多くの電池を処理できる電

気店や家庭に置けるような小型の選別機は存在していない。このために,小型電

池選別機を製作した。結果として,電池電圧値の測定において読み取った値で仕

分ける選別能力は,電池20個中12個を正確に選別することができ,全体の6

0%の選別出来る性能を示した。また大きさの異なる電池を選別した場合,多く

の電池を選別する時において人間の選別処理速度より向上する事が出来た。今回

の電池選別機により,電気店など多くの電池が回収される場所において電池を選

別する時,この装置は有利に働くことが期待できるであろう。

「自作オムニホイールを用いた乗車型体重移動用ロボットの製作と評価」

本研究では、自作のオムニホイールとWiiバランスボードを組み合わせるこ

とで,体重移動によって操作できる乗車ロボットを製作した。製作した機体を文

化祭の来場者に試乗してもらうことで実用性の検証を行った。その結果,100 名以

上の来場者を乗せることができ,体重が 100 キログラムの方の搭乗にも成功した。

図 5 機械システム分野テーマ設定の流れ

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初めて搭乗したにも拘わらず全員が操作できたことから,ユニバーサルデザイン

に基づく高い操作性を証明することができた。また,市販のキャスターを活用し

た高過重型のオムニホイールの製作は,これまでの製品に比して大幅なコストダ

ウンを可能にしている。

「自動式ペットボトル処理機の開発」

PET ボトルリサイクル推進協議会によるとペットボトルを廃棄する際 ,資源循環

型社会形成及びリサイクルセンターでの行程の負荷 ,負担の軽減のためボトルとキ

ャップの分別回収を推進している。しかし ,消費者の多くはこのようなルールを認

識しておらずリサイクルセンターの負担は大きい。また ,大抵の使用されている処

理装置は一台あたり数千万円と非常に高額である。このような問題点に着目し,

廃棄する際に , キャップとボトルの分別 , ボトルの洗浄及び圧縮を同時にできる

処理装置を開発し , 分別によるリサイクルへの貢献を図ることを目的とし,さらに,

自ら装置の設計 ,開発を行う事により低価格化と小型化を図る。

(ウ)今後の課題

今年度課題研究を実施した学年は,第1学年時から,SGH開発科目の「グロ

ーバル社会と技術」及び「グローバル社会と技術・応用」を学習している。その

甲斐あって,本分野における課題研究全9テーマの内,3テーマを「SGH課題

研究」で実施することができている。このことは,第1学年,第2学年時におい

て開発科目を履修した成果のひとつと言える。今後も,第1学年,第2学年での

SGH科目の授業等を活用して,「SGH課題研究」の趣旨・目標等を周知し,定

着につなげたい。

D) 電気電子分野

(ア)今年度の概要

本分野では,社会課題解決を目指し,社会科学や自然科学が複雑に絡み合う現

実の中で,電気・電子技術を活かした提案を行い,最適解とするための聞き取り

調査,使用者の合意形成など社会科学的な検証を目標とした。第2学年の「グロ

ーバル社会と技術・応用」では,第3学年の「SGH課題研究」をテーマとした,

調べ学習やプレゼンテーション作成・発表を行っている。それゆえ,課題研究の

テーマ設定は第2学年の 12 月に行っている。なお,テーマ設定時には次のような

条件を与え,生徒たちが自らグループを組み,課題研究の立案を行っている。「研

究内容として適正であるか」「最適解の検証となる製作物が完成できるか」「研究

に危険な作業などは伴わないか」などについて総合判断し,本分野の教員が課題

研究と認定する(図 6)。

○ 課題研究グループの編成 (1テーマ5~7人程度 )

本分野の特質より,ソフトウェアのみを提案するテーマ設定は認めていない。

検証のためのプロトタイプなどを製作する。なお,グループ活動であることから,

分業と連携及び協調性を養う体制をつくる。

○ 研究の意義を考える

社会課題提起からその解決策を多数提案し,社会科学・自然科学それぞれの解

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決案を考慮し,多くの人が「導入しやい」や「使いやすい」,また「作りやすい」

などさまざまな良さを実現できるように指導した。

平成 29 年度は,第2学年時に「SGH課題研究」について理解をする時間を設

けたことから,「SGH課題研究」としてのテーマの認定は,生徒の希望を優先さ

せて決定した。平成 29 年度に実施した「SGH課題研究」テーマは以下の4つで

ある。

① 温管理システムの製作

② 電子白杖の製作

③ 飲料容器自動分別器の製作

④ 目覚まし電波時計の製作

(イ)実施したテーマ

「室温管理システムの製作 ~熱中症のリスクマネジメント~」

熱中症患者は,温度変化の感覚が鈍くなった高齢者が,室

内で発症する場合が多いという統計資料があり,社会課題と

なっている。この課題を解決するために,室温の変化を読み

取り警告音や発光により使用者に知らせる小型機器を作製

し,熱中症患者の軽減や非常時には家族や医療機関にメールを送信する装置の研

究を行った(図 7)。また,室内のどこに設置するのが最適であるかを調べるため

に実際に自宅で調査した結果,直射日光に当たらなければ,室内のどこに置いて

も大きな差が無いことを確認した。本研究は「第2回関東・甲信越静地区スーパ

ーグローバルハイスクール課題研究発表会」に出場し,プレゼンテーション (日本

図 6 電気電子分野テーマ設定の流れ

図 7 室温管理

システム

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語 )を行い,銀賞を受賞した。

「電子白杖の製作 ~視覚障害者の為の落下防止システム~」

白杖を使用している視覚障害者が電車のホームから

転落する事故が多く報道されている。目が不自由な人が

安全に生活できるために,その危険性を軽減する装置を

研究した。普段使用している白杖に簡単に取り付け可能

な「安価・小型軽量」な装置を製作した(図 8)。地面

がなくなると装置から警告音や振動によって使用者に

伝える。また,白杖使用者に使用感を伺うなどの調査活

動も行った。システムを目立たせることで周囲の健常者

に気づいてもらうことが必要であると考えていたが,使用者からは,普通の白杖

と大きく異なる部分は「恥ずかしくて使用しづらい」と言う意見があり,小型と

同時に目立ちにくい色やデザインを考慮した。これらのようにインタビュー活動

を通して改良が繰り返された。本研究は「第2回関東・甲信越静地区スーパーグ

ローバルハイスクール課題研究発表会」においてポスター発表 (日本語 )を行い,金

賞を受賞した。

「飲料容器自動分別器の製作 ~世界を救う日本のゴミ箱~」

鉄 /アルミ /ペットボトルの飲料容器を自動で分別するゴミ箱を研究した。日本の

リサイクル率は非常に高いが,リサイクル率の低い国が多いため,世界のリサイ

クル率を日本レベルまで引き上げ,世界の環境保全に貢献することを目標に本研

究を行った。容器 (素材 )の認識率を上げるための機械工作に時間を割いた。本研究

は「第2回関東・甲信越静地区スーパーグローバルハイスクール課題研究発表会」

においてポスター発表 (日本語 )を行い,銀賞を受賞した。

「目覚まし電波時計の製作 ~快適な目覚めを促進するシステムの提案~」

睡眠や起床時に不満を多く抱えているとの資料がある。このような社会課題を

解決するために,本研究は,ストレスフリーな自然な起床を促し,1日の活動を

快く行うなど生活の質 (QOL: Quality of Life)の低下を防いで生産性の向上を狙った

ものである。更に,起床時に太陽光のような強い光を浴びることで,自然な目覚

めを実感し,「心地よい目覚めだった」と多くの人が回答する調査結果もある。本

研究では起床時間の 30 分前から徐々に明るくなる光を発する装置を製作した。ま

た,アラーム音も鳴らすことが出来るようにし,これを止めるには寝室とは別の

場所にある「スタンド」に立てかけることで,2度寝防止も図った。正確な時を

刻むために「電波時計」を製作した。本研究は「第2回関東・甲信越静地区スー

パーグローバルハイスクール課題研究発表会」でポスター発表 (日本語 )を行った。

(ウ)今後の課題

テーマ設定時に社会課題の解決を考える際に,生徒たちの私見ではなく,統計

や資料などを十分に調査させる時間を与えることが重要だと考える。広い視野を

持って最適な解決方法を考えるのには,問題提起がしっかりと生徒に根付く必要

がある。また,解決案の検証として作成した製作物は,第三者に実際に使用して

もらい,意見を頂くような,社会科学的な解決方法を交える必要がある。今回は

図 8 電子白杖

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電子白杖班が視覚障害者に使用していただき,インタビュー活動をしたことによ

って使用者と製作者の間にある大きな隔たりがあることを,生徒をはじめ教師も

気づくこととなった。従って,社会科学的な解決方法を交えて,はじめて最適解

となることを生徒に気づかせることに留意していきたい。「第2回関東・甲信越静

地区スーパーグローバルハイスクール課題研究発表会」を通して意見交換の楽し

さや他の発表を聞くことが,生徒たちに大きな刺激を与えた。自分の行っている

研究が認められる嬉しさは,研究成果以上に生徒たちの今後の活動に良い影響を

与えるものと思う。今後も発表の場があれば積極的に参加することを薦めていき

たい。

E) 建築デザイン分野

(ア)今年度の概要

今年度は,昨年度からの課題であったやや限定的なテーマの枠組みの検証を行

い,生徒が第1・2年学年におけるSGHプログラムで培ってきた興味・関心に

応えうるテーマ設定を行った。具体的には,昨年度のテーマであった再生利用可

能な材料の有効活用および地域性の保全の円滑化の2つを継続して主軸としなが

らも,観光立国を目指す日本の建築・都市の固有性の把握やバリアフリー化,グ

ローバル社会における多様な制約条件下での住宅建築の持続可能性,経済学や教

育学などの文系的な視点からの建築評価を複合したテーマも認定された。研究を

進める上では,研究結果を提案に昇華させ,地域住民などの非専門家への成果の

普及や社会貢献も目指された(図 9)。その結果,平成 29 年度は建築デザイン分野

全生徒のうち 14 名(50%)を対象に,13 の「SGH課題研究」が実施され,学外

コンテスト等での提案・発表や,ワークショップを通した社会実践といった新し

い取り組みもなされた。また,地歴・公民科教諭1名(建築物の経済効果の評価)

と数学科教諭1名(アンケートによる景観評価での統計処理)の計2名の普通教

科教諭に副担当として指導協力を得た。今年度の研究成果は,SGH合同発表会

や国際交流の場で発表することで生徒の様々な研究交流を深めることができたと

同時に,学外コンテストでも高く評価され日本建築学会「第7回子どものまち・

いえワークショップ提案コンペ」最優秀賞や慶應義塾大学「SFC 未来構想キャン

プ」優秀賞,東海エクステリアエファ実行委員会「第 6 回 E&G DESIGN 学生デザ

イン大賞」佳作を受賞することができた。

(イ)実施したテーマ

○ 再生可能な材料及び既存の空間の有効な利活用方法(6テーマ)

「建築におけるワークショップの評価」,「非言語による効率的な伝達方法につい

ての研究」,「SHIBAURA CAMP!」,「運河に立つ大樹」,「集合住宅から保育所への

用途変更の提案」,「ALC 切削材の建材への有効利用に関する研究」

○ 地域性の保全の円滑化(7テーマ)

「世界の住居の現代への活かし方」,「山手西洋館の横浜における価値の研究」,「商

店街を活気づける景観要素に関する研究」,「都市部の主要私鉄ターミナル駅にお

ける駅建物の変遷に関する研究」,「駅と高速ハバスターミナルの連絡経路におけ

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る効果的なサイン誘導」,「山手線駅舎の形態とハバリアフリー経路の関係性」,「東

京オリンピック 2020 を契機とした新しい都市緑化」

(ウ)今後の課題

第3年次の平成 29 年度は,第1学年からのSGHプログラムに取り組んできた

学年がその集大成として「SGH課題研究」に取り組んだことから,教員・生徒

共に進め方や意義への理解が深まり,それが多くの生徒による取り組みとして定

着したと言える。昨年度の課題であったテーマの枠組み設定による取りこぼしは,

枠組みの再検証により改善された。そして,第2学年科目との連携の向上により,

テーマ設定の円滑化や各種コンテストや研究発表会への参加につながったことか

らも,テーマ設定過程の構築はある程度達成できたと考えられる。また,一部は

分析結果をもとにした提案も達成でき,他校生や地域住民にも解決策を投げかけ,

共有することの意義や教育効果が確認された。これらを踏まえ次年度においても,

引き続き建築デザイン分野での学習により適した「SGH課題研究」の実施手法

の確立,特に課題解決のための分析をもとに提案まで行う研究プロセスの構築を

試みることで,社会と接続した生徒の能力の向上に努めたい。

4 研究開発実施上の課題及び今後の研究開発の方向・成果の普及

中間評価での指導,視察の際にも科学技術系人材育成との違いについて指摘があり,

指導を踏まえて,社会科学,人文科学,自然科学等の特質に応じた物事を捉える視点や

図 9 建築デザイン分野テーマ設定の流れ

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考え方(見方・考え方)を働かせながら,生徒の主体的・対話的で深い学びの実現に向

けた授業改善を行うための探究学習として,本科目の開発に取り組む必要がある。

平成 29 年度の第3学年は,第1学年に「グローバル社会と技術」,第2学年に「グロ

ーバル社会と技術・応用」などのSGHプログラムをすべて学んだ最初の学年であるた

め,「SGH課題研究」に取り組む生徒の割合が5分野すべてで目標の 30%を超え,全

体では 39.7%となった。また,テーマ設定に指針となる流れ図を作成し,これをもとに

指導した。他方,SGH中間報告会 (11 月 22 日実施 )では,各専門分野2テーマずつ選出

し、全体で 10 テーマのポスターセッションを行った。

これらの活動の成果として,外部評価を受けるために,課題研究発表会等に参加した。

第2回関東甲信越静地区スーパーグローバルハイスクール課題研究発表会では、金賞2

件・銀賞2件,東京学芸大学課題研究成果発表会では,SGHポスター部門で優秀賞受

賞,日本建築学会「第7回子どものまち・いえワークショップ提案コンペ」最優秀賞,

慶應義塾大学「SFC 未来構想キャンプ」優秀賞などを受賞した。

今後の方向としては,社会課題に対する解決案の再検討,自然科学ありきの考え方の

見直し,インタビューやアンケート調査など社会科学的なアプローチの取り入れ,合意

形成を重視し,外部団体等へのプロトタイプのモニター依頼など,さらなる活動見直し

が必要である。年度途中ということもあり,できることと間に合わなかったことがある

が,企業との連携,地元港区や商店会との連携といった「出口の活動」を模索し,本校

で開発中の課題解決のための流れ図(枠組み)の中に取り入れていく必要がある。なお

今後も,外部評価を受けるべく立教大学主催等の課題研究発表会等への参加を続けてい

きたいと考えている。

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Ⅳ 海外調査研修

1 SGHマレーシア海外調査研修について

(1)概要

7 月 30 日(日)から 8 月 4 日(金)まで5泊6日の日程で,生徒6名(男子4

名・女子2名),引率教員3名で,マレーシアへ渡航した。平成 28 年度に引き続

き,エネルギー資源開発の最前線であるボルネオ島クチン市,クアラルンプール

市などで調査研修およびマレーシア大学サラワク校(UNIMAS: University Malaysia

Sarawak),セント・トーマス高校(St. Thomas' Secondary School),クチン科学高校

(Kuching Science Secondary School)を訪問し交流した。日本とは異なるエネルギ

ー事情の国の人々の考えに触れ,よりグローバルな視野でエネルギー・環境問題

について取り組む人材を育成することが本研修の目的である。

研修内容

1日目 マレーシア航空便で成田空港からクアラルンプールへ。

クアラルンプールで乗り換えクチンへ。

市内ホテル泊。

2日目 UNIMAS 工学部にて研修。(再生可能エネルギー・現地の水力発電プロ

ジェクトについての講義,本校生徒によるエネルギー・環境問題のプ

レゼンテーション)

市内ホテル泊。

3日目 セント・トーマス高校にて研修。(本校生徒によるエネルギー・環境問

題のプレゼンテーション,化学授業に参加)。クチン旧市街にて古建築

を見学。

市内ホテル泊。

4日目 クチン科学高校にて研修。(本校生徒によるエネルギー・環境問題のプ

レゼンテーション,課題研究発表ブースでの交流,化学・生物授業に

参加,日本語クラスを履修している現地生徒との交流)

企業訪問:太陽誘電サラワク訪問(事業紹介,施設見学)

市内ホテル泊。

5日目 マレーシア航空便でクチンからクアラルンプールへ。

多民族多宗教都市の見学。王宮,モスク等の見学。

市内ホテル泊。

6日目 マレーシア航空便でクアラルンプールから成田空港へ。午後7時頃帰

国。

生徒は事前研修で,学校や日本紹介,エネルギーや環境問題について自分たち

の意見をまとめたプレゼンテーションを作成し,マレーシアの人々とどんな意見

交換ができるのか楽しみ半分緊張半分という心境で出発した。まず,UNIMAS で

は,まさにエネルギー資源開発の最前線にいる教授の講義を受け,教授陣から自

分たちの発表に助言をいただいた。次の日からはいよいよ同年代の生徒との交流

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がはじまる。セント・トーマス高校はじめどの高校でも,学校に着くと生徒の皆

さんの大歓迎を受けた。高校生同士でプレゼンテーションをし,意見交換した。

さらに授業へ参加し化学反応を一緒に考えたり,マレーシア料理の昼食を食べた

り,交流を深めた。さらにクチン科学高校では,生徒の皆さんが課題研究発表ブ

ースを設営し,本校生徒と活発な意見交換をした。お互いに発表し合うことがで

きた。

また,生産拠点である太陽誘電 SARAWAK を訪問した際には,現地社長が自ら

プレゼンをし,案内してくださった。生徒にとっては,異なる文化を持つ人々を

統括する,まさにグローバルテクニカルリーダーと接する貴重な機会となった。

研修中,生徒はプレゼンテーションスキルが日々上達していき,経験値は確実

に上昇した。質疑等では,戸惑うことも多々あったが,その歯がゆい経験は,彼

らのさらなる努力への原動力となることを期待する。派遣生徒の皆さんの前向き

な言動,活力が,今後学校全体に伝播することを願うばかりである。

UNIMAS にてプレゼン発表

UNIMAS 工学部教授の講義

UNIMAS にて研修

高校生と意見交換

化学の授業に参加

課題研究発表ブースにて

昼食しながらの歓談

モスクにて

太陽誘電 企業訪問

図 1 マレーシア研修の様子

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2 SGHフィリピン共和国海外調査研修について

(1)概要

SGH海外調査研修として,フィリピン共和国を訪問し,本校と国際交流協定

を結んでいる De La Salle University Integrated School での国際交流事業に臨んだ。

本校生徒はホテルに宿泊せず,バディ宅に宿泊する。初日は日曜日であるにもか

かわらず,バディの家族が出迎えてくれた。バディの一人の父がラグーナ州知事

ということもあって,厳重な警戒の中で行われた。

研修内容

第1日 7 月 31 日(月)

Integrated School での研修を行なった。フィリピンの朝は早く,学校は7時からス

タートする。授業は4時過ぎまで続く。休み時間はなく,トイレへ行くのは授業中で

も自由。

図 2 Introduction at the Morning Assembly

7時過ぎから Morning Assembly があり,歓迎のダンスが披露された。その後,私た

ちの紹介となり,生徒はそれぞれのバディが紹介した。その後,剣道の型の披露およ

び,私たち全員によるタガログ語の歌「プソンバトゥ」を熱唱した。全校生徒がさび

の部分を一緒に歌ってくれ,大変な盛り上がりとなった。

図 3 プレゼンテーション(環境・エネルギー)

今回の派遣の主な目的であるエネルギー・環境問題に対するプレゼンテーション (10D

クラス )を行い,フィリピン生徒と議論した。エネルギー問題では,日本人が信じる

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太陽光発電優位のイメージは,この国では通用せず,コストの問題を指摘された。ま

た,環境問題では,パパイヤ石けんを作ることで,環境に優しい取組をするというパ

パイヤソーププロジェクトを発表し,賛同が得られた。

図 4 授業の様子(Physical Education・Cooking Class)

体育の授業はダンスで,教室内で行われた。フィリピンではヒップホップダンスが盛

んで,この学校でもコンテストがあるとのことだった。家庭科クラスでは,フィリピ

ンの伝統的な家庭料理を作った。また,二人三脚のゲームや校内のスクールツアーも

行われた。

図 5 授業の様子(Cooking Class・二人三脚のゲーム・製図教室)

第2日 8 月 1 日(火)

東工大デ・ラ・サール大学訪問 東工大オフィス訪問

図 6 訪問先(デ・ラ・サール大学・ロニー先生オフィス・東工大マニラオフィス)

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図 7 訪問先(バイオマス研究室・ソーラーカー研究室・EPDC)

マニラを訪問し,デ・ラ・サール大学,東工大マニラオフィス,国際交流事業を始

めたおりに,ご尽力いただいたロニー先生にお会いすることができた。研究室訪問

では,バイオマスの実験,およびソーラーカーを実験する研究室を訪問し,説明を

聞いた。大学で昼食後,Center for Engineering and Sustainable Development Research お

よび DOST-PCEIETRD などを訪問し,6時過ぎに帰校した。

第3日 8 月 2 日(水)

Outbound Tour in Laguna ラグーナ州の校外研修

引率の先生2名の他に、軍事警察6名,学校の Security guard 1名が同行した。

この日の日程は,当初計画したものではなく,ラグーナ州観光省によって企画された

もので,担当職員も同行した。軍事警察6名が自動小銃を手にトラックの荷台に乗り

込み,先導した。また,行く先々では,地元警察が待ち構えており,一般人は排除さ

れた。

図 8 Makban Geothermal Plant

地熱発電所を見学した。大がかりな施設で,見学者用のみに資料館が用意されて

いる。ゆっくりした国民性のため,ライスセンターの公開時間に間に合わず,代わ

りにフィリピン大学キャンパスを見学した。8時頃帰校した。

この日のツアーは目玉であったが,観光省の手配で本来見学コースに入っていない

宗教施設に2カ所立ち寄ったことから,時間が大幅に超過した。

第4日 8 月 3 日(木)

各自バディの家庭にて自主研修。教員2名は,明日の帰国に備え,空港周辺の混雑

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状況の調査,食文化調査のためジョリビーへ実地調査,世界遺産である Cathedral へ

の見学可能性を調査した。

第5日 8 月 4 日(金)

Farewell Party

図 9 グレース校長先生から修了証を受領

SGH海外調査研修を終えて

フィリピンは,日本との関係が深く,しかも現在は親日的な方向にあり,日本人を嫌

うことはなかった。今回の渡航は,エネルギー・環境問題の討議が主たる目的であった

が,エネルギー問題の提案では,やはり太陽光パネルに対する批判は強く,代替可能エ

ネルギーへの関心は,ないわけではないが,積極的とは言いがたいものだった。電力不

足という社会課題の解決に対し,発電方法のベストミックスを主張したわけだが,資源

を持つ国の本気度が懸念された。他方,環境保全の問題では,本校生徒が社会課題の解

決のために,小さくなった石けんを削り,湯煎で溶かし,パパイヤの皮を混ぜて石けん

を作るという提案には,賛同が得られた。社会課題の解決は,自然科学だけでもまた社

会科学だけでも解決し得ないことを,本研修は証明しているといえよう。有意義な研修

であり,SGHの目的を達成している。

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②−4 第3年次の研究のまとめと今後の課題・成果の普及

Ⅰ 第3年次の研究のまとめと今後の課題

1 総 論

研究第3年次を迎え,研究内容の充実を図る年度であるが,本校では中間評価の結果

とその際に頂戴した指導内容,視察の際に頂戴した指導内容を元に研究計画を見直し,

新たな展開をスタートさせることとなった。

私たちを取り巻く社会課題を解決するため,社会科学,人文科学,自然科学等の特質

に応じた見方・考え方を働かせながら,生徒の主体的・対話的で深い学びの実現に向け

た学習活動をさせなければならない。本校は,科学技術高校であることから,生徒の関

心が自然科学的解決に比重を置く傾向があるが,本来の目的であるグローバル人材の育

成に向け,知識を相互に関連付けてより深く理解したり,情報を精査して考えを形成し

たり,問題を見いだして解決策を考えたり,思いや考えを基に創造するための取り組み

として,SGH開発科目を設定している。このような取り組みは,新開発科目のわずか

数単位で成し遂げられるものではない。それゆえ,科目間の連携を図る必要があること

から,カリキュラム・マネジメント構想が必要であり,本校が置かれている立場を理解

するための状況分析の柱となると考えている。

研究第3年次は,新科目「グローバル社会と技術」・「グローバル社会と技術・応用」

において,第1・2年次に作成した教材を用いて,効果の検証をしながら,実践を進め

た。特に平成 29 年度は,課題解決の必要な枠組みの流れ図を作成した。「グローバル社

会と技術」では,レポート作成過程における課題解決の流れ図を,「グローバル社会と技

術・応用」では,「課題研究への道」を実施するための,課題解決の流れ図を作成した。

このよう図を作ることにより,論点が整理され,何をするべきなのか,どうしたら解決

できるのか,という解決に向けた道筋が明確になり,主体的・対話的で深い学びの実現

に向け前進できると考えている。授業運営については,予定通り進み,教材内容につい

てもより実情に沿った改善がなされている。なお,これらの成果に一部は,中間報告会

において公開授業を行い,公表した。

著名な人物による講演や助言等の実現,企業との連携との実現について,計画したが,

グローバルリーダー育成講演会において,マスコミで活躍されている東京工業大学リベ

ラルアーツ教育院特別教授池上彰氏とNHKテレビ「おとなの基礎英語」講師である立

教大学教授松本茂氏を招くことができた。また,企業との連携を図る必要があることか

ら,第2学年のグローバルリーダー育成講演会を企業人に限り,日産自動車株式会社の

田村宏志氏,日南市マーケティング専門官の田鹿倫基氏,那珂川町事業間連携専門官の

木藤亮太氏を招いた。現実のグローバルリーダーの課題への取り組み,起業へのチャレ

ンジについて触れることができたと考えている。

「SGH課題研究」では,具体的に本科目を実施するに当たり,社会課題をテーマと

して設定していく過程について,流れ図を作成した。本科目は,中間評価においてのご

指導を踏まえて,社会科学,人文科学,自然科学等の特質に応じた物事を捉える視点や

考え方(見方・考え方)を働かせながら,生徒の主体的・対話的で深い学びの実現に向

けた授業改善の一環として取り組んだ。年度途中での再検討となったが,手をつけられ

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ることから取り組み,外部評価を受けるために,課題研究発表会等に参加した。第2回

関東甲信越静地区スーパーグローバルハイスクール課題研究発表会などでの受賞につな

がったものと考えている。

海外調査研修については,交流校に打診し,エネルギー・環境問題をテーマとしたプ

レゼンテーションを実施する計画を立てた。この点に関しては,達成されたと考えてい

る。詳細は前掲に委ねるが,フィリピンでは協定校であるデ・ラ・サール大学附属高校に

おいて,生徒によるエネルギー問題に関する提案,プレゼンテーションを行った。当該

交流校は,10 月に来日したが,その際には,電気電子分野の2年生と交流し,エネルギ

ー問題に関する提案を相互に行った。その際,スラムの人々への対応をフィリピン側か

ら引き出すことができた。彼らは,おカネがないのなら屋根に水の入ったペットボトル

を指し,部屋を明るくすれば良いとするアイデアを提案したが,それでは根本的な解決

にはなっておらず,所得の差が事実上の身分の差となっている現実を垣間見ることがで

きた。所詮下層市民だという思いである。この考え方の違いは,ネットの検索では得が

たいもので,今後解決すべき問題をはらんでいる。また,マレーシアにおいては,セン

ト・トーマス高校(St. Thomas’ Secondary School),クチン科学高校(Kuching Science

Secondary School)両校において,エネルギー問題に関する提案,プレゼンテーションを

行うことができた。なお,国際交流にあたって大学との連携を深めることとしたが,マ

レーシアにおいて,マレーシア大学サラワク校(UNIMAS: University Malaysia Sarawak)

などとの間で,交流を深めることができた。

2 新科目「グローバル社会と技術」のまとめと今後の課題

本科目の学習活動は,

・解決すべきテーマの理解

・問題解決の手順を習得

・具体的な解決への提案

・英語による発表と討議

の4項目を掲げている。平成 29 年度は,すべてのテーマについて,レポート作成場面に

おける問題解決の流れ図を作成し,学習の対象となる物事を捉え思考し,テーマの特質

に応じた見方・考え方を働かせながら,知識を相互に関連付けてより深く理解し,情報

を精査して考えを形成する過程を重視した学習の充実を図った。なお,外国人教員によ

るスピーチコミュニケーションは,自分たちが各テーマで考えたことを英語化すること

で整理する意味合いを持つ。また,より伝わりやすくするために,ノンバーバルコミュ

ニケーションスキルの習得を目指している。日本人特有の無表情な発話を乗り越え,説

得力のあるスピーチとしたい。これらが外国語の学習という意味合いだけではなく,問

題解決場面においても役立っていることは言うまでもない。

また,本科目では,研究第2年次に引き続き,東京工業大学教員による特別講義,著

名人によるグローバルリーダー育成講演会を実施し,生徒の興味喚起に大きく役立つこ

とが確認された。研究第3年次は,著名人である東京工業大学特別教授池上彰先生,N

HKテレビ「おとなの基礎英語」の講師をされている立教大学教授松本茂先生に講師を

お引き受けいただいた。平成 29 年度は,これらの実践が,問題解決の枠組みの中でどの

電力・環境と人間・都市・メカニズムで実施

情報モラル,技術者倫理では授業中はシミュレーション教材

(レポートでは実施 )

スピーチコミュニケーションで実施 (外国人教員 )

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位置にあたり,どのような効果をもたらすのか,吟味する必要があった。特に,特別講

義や講演会は,東京工業大学との連携によって実現するものであり,先進的な研究内容

に触れると言った科学技術人材育成的な意味よりも,大学教授がどのような問題意識を

持ち,それがどのような形で解決されていったのか,そしてそれらが世の中で認知され

ていくためには,どのような過程を経たのか,といった実体験を帰納していき,モデル

化することに価値があると考える。

3 新科目「グローバル社会と技術・応用」のまとめと今後の課題

新科目「グローバル社会と技術・応用」では,第1学年で履修した「グローバル社会

と技術」の成果,および,その他の活動を「課題研究への道」によって,具体的に各専

門分野での課題解決に結びつけ,第3学年での「SGH課題研究」につなげたいと考え

ている。

本校では第2学年より専門分野に所属し,工業教科の授業が始まる。そのため,自然

科学における成果を取り入れるにしても,それぞれの専門分野に応じた制約条件やまと

め方がある。今年度の取り組みは,科目の実践を本格化させながら,価値観の異なる資

源産出国との対話を深めることで,多様な他者と協働するためには,共通のルールとし

ての制度が必要であり,そのためには,社会科学の手助けが必要であることを学んだ。

このような深い学びを実現するための方策として,「Global Awareness」を,また,主体

的・対話的であるために,「課題研究への道」を実施し,情報を精査して考えを形成した

り,問題を見いだして解決策を考えたり,思いや考えを基に創造したりする探究学習を

実施した。また,すべての専門分野において,制約条件などを取り入れた流れ図を作成

し,生徒に明確な指針を提案した。

なお,平成 29 年度の成果は,今まで教員の頭の中にあった課題解決の手順を流れ図と

して可視化できたことにある。図の完成度は今後あげるとして,成果と同時に問題点も

見え隠れする。次年度は,各分野の取り組みについて議論を重ね,可能な限り最大公約

数を見つけていく必要があるだろう。それによって,共通の社会課題を解決するために

は,共同での取り組み,さらには合同での取り組みを模索することが可能であると考え

ている。

4 新科目「SGH課題研究」のまとめと今後の課題

本格的な探究学習として,「SGH課題研究」を実施した。本科目については,中間評

価でのご指導,視察の際にも科学技術系人材育成との違いについてご指摘があり,ご指

導を踏まえて,取り組みを大きく転換することとなった。詳細は前項ですでに述べたが,

社会科学,人文科学,自然科学等の特質に応じた物事を捉える視点や考え方(見方・考

え方)を働かせながら,生徒の主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を行

うための探究学習として,本科目の開発に取り組む必要があると考えている。

平成 29 年度の第3学年は,第1学年に「グローバル社会と技術」,第2学年に「グロ

ーバル社会と技術・応用」および「課題研究への道」などのSGHプログラムをすべて

学んだ最初の学年であるため,「SGH課題研究」に取り組む生徒の割合が5分野すべて

で目標の 30%を超え,全体では 39.7%となった。また,テーマ設定に指針となる流れ図

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を作成し,これをもとに指導した。他方,SGH中間報告会 (11 月 22 日実施)では,各専

門分野2テーマずつ選出し、全体で 10 テーマのポスターセッションを行った。

なお,これらの活動について外部評価を受けるために,課題研究発表会等に参加した。

第2回関東甲信越静地区スーパーグローバルハイスクール課題研究発表会では、金賞2

件・銀賞2件,東京学芸大学課題研究成果発表会では,SGHポスター部門で優秀賞受

賞,日本建築学会「第7回子どものまち・いえワークショップ提案コンペ」最優秀賞,

慶應義塾大学「SFC 未来構想キャンプ」優秀賞などを受賞した。

Ⅱ 今後の課題・成果の普及

私たちを取り巻く社会課題を解決するため,社会科学,人文科学,自然科学等の特質に

応じた見方・考え方を働かせながら,生徒の主体的・対話的で深い学びの実現に向けた学

習活動をさせなければならない。本校は,科学技術高校であることから,生徒の関心が自

然科学的解決に比重を置く傾向があるが,本来の目的であるグローバル人材の育成に向け,

知識を相互に関連付けてより深く理解したり,情報を精査して考えを形成したり,問題を

見いだして解決策を考えたり,思いや考えを基に創造するための取り組みとして,SGH

開発科目を設定している。このような取り組みは,新開発科目のわずか数単位で成し遂げ

られるものではない。それゆえ,科目間の連携を図る必要があることから,カリキュラム・

マネジメント構想(図 1)が必要であり,本校が置かれている立場を理解するための状況

分析の柱となると考えている。

その他,従来の計画による部分は,すでに軌道に乗り,新科目に使うテキストの改訂も

順調に進んでおり,特段問題はない。しかし,次年度には,企業との連携,地元港区や商

店会との連携といった「出口の活動」を模索し,本校で開発中の課題解決のための流れ図

(枠組み)の中に取り入れていく必要がある。また,成果普及のため,SGH課題研究発

表会等への参加の推進,公開のためにテキストを改訂し,アーカイブ化を進める。

図 1 カリキュラム・マネジメント構想

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③ 関係資料

Ⅰ 平成29年度教育課程表

平成28・29年度入学生教育課程履修科目

教科 科 目 必修 選択

1年 2年 3年 小計 類型 自由

国語

国 語 総 合 4 4

0,2,4 国 語 表 現 現 代 文 B 2 1 3 古 典 A 2

地理 歴史

世 界 史 A 2 2

0,2,4 日 本 史 A 2 2 世 界 史 B 日 本 史 B 2 地 理 A

公民 現 代 社 会 2 1 3

0,2,4 倫 理 政 治 ・ 経 済

数学

数 学 Ⅰ 3 3

0,2,4 数 学 A 2 2 数 学 Ⅱ 3 3 数 学 B 2 2 数 学 Ⅲ 3

理科

物 理 基 礎 2 2

0,2,4

物 理 1 1 3 化 学 基 礎 2 2 化 学 1 1 3 生 物 基 礎 地 学 基 礎 科学と人間生活 2 2

保健 体育

体 育 3 2 2 7

保 健 1 1 2

芸術 音 楽 Ⅰ

2 2 美 術 Ⅰ 書 道 Ⅰ

外国語

コミュニケーション英語Ⅰ 2 2

0,2,4 コミュニケーション英語Ⅱ 4 4 コミュニケーション英語Ⅲ 4 4

英 語 表 現 Ⅰ 2 2 英 語 表 現 Ⅱ 2

家庭 家 庭 基 礎 2 2

小計 24 20 13 57 3,6 0,2,4

工業

科学技術基礎実験*(特例対象) 4 4

グローバル社会と技術# 1 1 情 報 技 術 基 礎 2 2 科 学 技 術 研 究* 4 4 先端科学技術入門* 1 1

グローバル社会と技術・応用# 2 2 STEM課題研究*

4 4 SGH課題研究 # 各 分 野 科 目 ※ 5 4 9 3,0 0,2,4

小計 7 12 8 27 3,0 0,2,4 ホームルーム活動 1 1 1 3

合計 32 33 22 87 6 0,2,4 卒業時単位数 93,95,97

表中の「#」は,SGHにおいて設置する新学校設定科目を示し,「*」は,他の学校設定科目を示している。

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平成27年度入学生教育課程履修科目

教科 科 目 必修 選択

1年 2年 3年 小計 類型 自由

国語

国 語 総 合 4 4

0,2,4 国 語 表 現 現 代 文 B 2 1 3 古 典 A 2

地理 歴史

世 界 史 A 2 2

0,2,4 日 本 史 A 2 2 世 界 史 B 日 本 史 B 2 地 理 A

公民 現 代 社 会 2 1 3

0,2,4 倫 理 政 治 ・ 経 済

数学

数 学 Ⅰ 3 3

0,2,4 数 学 A 1 1 数 学 Ⅱ 4 4 数 学 B 2 2 数 学 Ⅲ 3

理科

物 理 基 礎 2 2

0,2,4

物 理 1 1 3 化 学 基 礎 2 2 化 学 1 1 3 生 物 基 礎 地 学 基 礎 科学と人間生活 2 2

保健 体育

体 育 3 2 2 7

保 健 1 1 2

芸術 音 楽 Ⅰ

2 2 美 術 Ⅰ 書 道 Ⅰ

外国語

コミュニケーション英語Ⅰ 2 2

0,2,4 コミュニケーション英語Ⅱ 4 4 コミュニケーション英語Ⅲ 4 4

英 語 表 現 Ⅰ 2 2 英 語 表 現 Ⅱ 2

家庭 家 庭 基 礎 2 2

小計 23 21 13 57 3,6 0,2,4

工業

科学技術基礎*(特例対象) 3 3

数 理 基 礎* 2 2 グローバル社会と技術# 1 1 情 報 技 術 基 礎 2 2 科 学 技 術* 2 2

科学技術コミュニケーション入門* 1 1 先端科学技術入門* 1 1

グローバル社会と技術・応用# 2 2 課 題 研 究

4 4 SGH課題研究 # 各 分 野 科 目 ※ 5 4 9 3,0 0,2,4

小計 8 11 8 27 3,0 0,2,4 ホームルーム活動 1 1 1 3

合計 32 33 22 87 6 0,2,4 卒業時単位数 93,95,97

表中の「#」は,SGHにおいて設置する新学校設定科目を示し,「*」は,他の学校設定科目を示している。

また,「※」の部分詳細は,次の表のようになる。

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材料科学・環境科学・バイオ技術分野の科目

科 目 必 修 選 択

1年 2年 3年 小計 類型 自由 工 業 物 理 化 学 1 2 3

0,2,4 有 機 工 業 化 学 2 2 4 地 球 環 境 化 学 2 2 工 業 技 術 英 語 1 生 物 工 学 2

合 計 5 4 9 0,3 0,2,4

情報・コンピュータサイエンス分野の科目

科 目 必 修 選 択

1年 2年 3年 小計 類型 自由 電 気 基 礎 1 1

0,2,4

電 子 回 路 2 2 ハードウェア技術 1 1 ソフトウェア技術 2 2 プログラミング技術 2 1 3 コンピュータシステム技術 3

合 計 5 4 9 0,3 0,2,4

システムデザイン・ロボット分野の科目

科 目 必 修 選 択

1年 2年 3年 小計 類型 自由 実 習 3 3 2

0,2,4 製 図 2 2 機 械 設 計 2 2 機 械 工 作 2 2 自 動 車 工 学 1

合 計 5 4 9 0,3 0,2,4

エレクトロニクス・エネルギー・通信分野の科目

科 目 必 修 選 択

1年 2年 3年 小計 類型 自由 電 気 基 礎 4 2 6

0,2,4

電 子 技 術 1 1 実 習 2 2 電 子 計 測 制 御 2 電 気 機 器 1 電 力 技 術 通 信 技 術

合 計 5 4 9 0,3 0,2,4

立体造形・ディジタルデザイン分野の科目

科 目 必 修 選 択

1年 2年 3年 小計 類型 自由 製 図 2 2 4

0,2,4

建 築 構 造 1 1 2 建 築 構 造 設 計 1 1 建 築 計 画 1 1 2 建 築 施 工 2 建 築 法 規 1

合 計 5 4 9 0,3 0,2,4

類型選択(6単位)の4コース

教科 コース 専門 数学 理 科 国語 地理

歴史 英語

物理 化学 専門系 a 3 3 理科系 b 3 3 理科系 c 3 3 文科系 d 2 2 2

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Ⅱ 中間報告会の記録

本校は,研究第3年次を迎えたことから,11 月 22 日(水)にSGH研究開発中間報告会

を開催した。報告会では,東京工業大学学長 三島良直先生をはじめご来賓の先生方,ご来

場の皆様方のご協力により,滞りなく会を終えることができた。

開 催 要 項

1 日 時:平成 29 年 11 月 22 日(水) 9:30~15:30

2 場 所:東京工業大学附属科学技術高等学校

〒108-0023 東京都港区芝浦3-3-6

3 研究開発名:

「科学技術系素養を持つグローバルテクニカルリーダーの育成」

4 公開授業:

(1)第1学年「グローバル社会と技術」

* 都 市(建築デザイン分野教諭担当)

* 環境と人間(応用化学分野教諭担当)

(2)第2学年「グローバル社会と技術・応用」

* 課題研究への道(情報システム分野の取組)

* 課題研究への道(電気電子分野の取組)

5 展 示:

*SGH課題研究の生徒ポスター発表

*海外調査研修 フィリピン・マレーシア 生徒ポスター発表

6 日 程:

(1)受 付 9:00 ~ 9:30

(2)全 体 会 9:30 ~ 10:25(開会行事・研究内容説明)

休憩・移動 10:25 ~ 10:40

(3)公開授業(1) 10:40 ~ 11:30(2カ所で同じ時間帯に実施)

第1学年「グローバル社会と技術」

都 市

(建築デザイン分野教諭担当) 1年A組 2号館4階建築製図室

環境と人間

(応用化学分野教諭担当) 1年B組 1号館2階 201 室

昼休み[展示を含む] 11:30 ~ 13:15

(4)展 示 12:00 ~ 13:15(ご自由にご覧いただけます)

SGH課題研究の生徒ポスター発表 1号館2階第一会議室

海外調査研修生徒ポスター発表 1号館1階ロビー

(5)公開授業(2) 13:15 ~ 14:05(2カ所で同じ時間帯に実施)

第2学年「グローバル社会と技術・応用」

「課題研究への道」(情報システム分野) 2年B組

「課題研究への道」(電気電子分野) 2年D組

東京工業大学学長

三島良直先生の挨拶

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休憩・移動 14:05 ~ 14:20

(6)全 体 会 14:20 ~ 15:30 3号館4階 401 室(大講義室)

会について「いずれの取り組みも,生徒の思考力を引き出し,様々な視点から物事をとら

えようとする力を身に着けさせる優れた取り組みと考えます。これらの取り組みを継続する

ことによって,多くの生徒さんのグローバルに活躍する力の定着につながるものと期待でき

ます。」というコメントが寄せられた。

文科省からの中間評価を踏まえ,軌道を修正しながら最終年度に向けて邁進する所存であ

る。なお,中間報告会の引き続き,第1回運営指導委員会が開かれた。指導事項等詳細は次

項に譲る。

Ⅲ 運営指導委員会の記録

平成 29 年度に開催された第1回運営指導委員会及び第2回運営指導委員会について,記

載する。

1 平成 29 年度第1回運営指導委員会

(1)日 時:平成 29 年 11 月 22 日(水)16:00〜17:30

(2)会 場:田町キャンパス キャンパス・イノベーションセンター3階 301 室

(3)出席者:

A) 運営指導委員

蟻川芳子 (一社)日本女子大学教育文化振興桜楓会・理事長

佐藤義雄 元文部省・教科調査官

辛坊正記 株式会社HiAc・最高顧問

B) 学内指導者

篠﨑和夫 東京工業大学・物質理工学院材料系・教授

松田稔樹 東京工業大学・リベラルアーツ研究教育院社会・人間科学系・准教授

C) 本校

校長,副校長,主幹教諭,SGH 研究開発委員会幹事,各研究会幹事,

総務・管理グループ長,総務・管理グループ総務担当主査

(4)内 容:

A) 校長挨拶

B) 校長より運営指導委員会出席者の紹介

副校長より本校職員出席者の紹介

C) 中間報告会について

(i)全体

(ⅱ)各研究会等からの進捗状況報告

(ア)グローバル社会と技術研究会 岩城

(イ)グローバル社会と技術・応用研究会 都留

(ウ)SGH課題研究 研究会 砂岡

(エ)フィリピン海外調査研修 遠藤

(オ)マレーシア海外調査研修 近藤

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D) 中間評価について

E) 質疑応答,助言等(敬称略)

篠崎:SGH 課題研究の数が増えたとの報告があったが,何か特別に説明などを生

徒に対して行ったのか。

本校:建築分野などについては元々SGH 課題研究に取り組む生徒が多く,それが

だんだんと増えてきた印象である。

本校:以前は,発表会の機会があることから SSH の課題研究を希望する生徒が多

かったが,昨年度から SGH 甲子園等,SGH 課題研究でも発表の機会があ

ることがわかり,希望する生徒が増えたのではないかと考えられる。

本校:発表の機会を設けることについては文科省に訴え続けてきたため,その成

果が表れた。今年度は SGH フォーラムに 7 チーム出場予定である。SGH

科目,特にグローバル社会と技術・応用の課題研究への道での問題解決の

枠組みの教育の結果であると考えられる。

篠崎:SSH と SGH を統合したような課題研究のあり方については考えられないか。

どちらの色彩が強いか,という程度で認定をしてもいいのではないか。分

類のルールは厳しいものなのか。

本校:そうしていきたいのは山々だが,SSH・SGH は違う試みとして行っている

ため,外部資金が関わるのもあり,難しいところである。学校全体で行っ

ていることなので,生徒にとっては相乗効果があるようなものではあるの

だが。

篠崎:その融合的な部分やシナジー効果を全面に押し出すというのはどうか。

本校:検討していきたい。

佐藤:SSH の課題研究に取り組んだ生徒と SGH 課題研究に取り組んだ生徒の仕上

がりの違いを検討・分析していくと何かわかりそうだ。同じテーマでも SSH

的に解決した場合と SGH 的に解決した場合で違いが出るのか見てみると

良いかもしれない。異なるコンセプト提案・アプローチの提案になるはず

で,それを整理する必要がある。

松田:課題研究への道でいう課題研究というのは SGH 課題研究を指しているのか。

本校:SGH 課題研究を指している。

松田:SSH の課題研究については何か準備のようなものは行っているのか。

本校:課題研究への道は SGH 科目では行ってはいるものの,どちらの課題研究に

も役立つものと捉えている。

松田:課題研究への道で行っているテーマのほとんどが SGH とは言えない内容に

なっているのではないか。また,分野横断的に課題研究を進めるというこ

とはしないのか。

本校:基本的に生徒の意見・発想を基にテーマを設定していることもあり,生徒

からそういった希望が最近あまりないため行う機会が少ない。

松田:それは教員側がそのような発想に至るように仕掛けを作っていないからで

はないか。分野横断を目指すのであれば,1,2 年の段階でそのあたりの仕掛

けをしておくべきだ。3 年の SGH 課題研究だけの問題ではない。

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本校:ミギャン先生の授業で様々な問題を扱うため,その役割を担っている。た

だ,英語で行うため,生徒にはあまり浸透しづらい部分がある。

松田:それはその授業が単なる英語の授業になってしまっているからではないか。

本校:授業は英語だが,日本語で事前に説明するなどサポートを行っている。ま

た,SSH の方で課題研究への道に相当するものは来年度から科学技術研究

という別の科目で行う予定である。

本校:課題研究について,SSH と SGH で縦にきれいに割るのは不可能だ。今回本

校で取り組んでいるのは,あくまで SGH 的な視点を取り入れるというもの

だと理解している。また,今まで各分野で行ってきた問題解決の考え方を

改めて整理するということを行った。出発点やゴールが異なるが,プロセ

スがオーバーラップしてしまうのは避けられない。

松田:切り分けは可能である。指導においても然りである。社会的問題を解決す

るという視点では切り分けられない。問題の原因が社会的なものと技術的

なものが絡み合っているものを解決するのが SGH だ。社会問題であっても

技術だけで解決できるものは SSH である。

佐藤:SGH 課題研究の発表を見ていたが,正直に言って科学的に考え,技術的に

解決するという SSH の域を出ないものである。他の学校の取り組みを見て

いると,地域のことや歴史をよく研究している。技術だけで解決できない

問題が増えてきているから,文科省がテーマとして設定したのではないか。

そういった問題を見つけてテーマにすると良い。他の学校も参考にしては

どうか。

本校:では本校の基礎となっているものづくりをどう生かしていけばよいか。

佐藤:物がないと何も解決できないのは確かである。ただ,SGH では科学技術を

脇役にして,メインをもっと根本的に問題について考えるというものにす

る必要がある。例えば,孤独死の問題があるが,それは技術だけでは解決

できない。テーマ設定をする際にこういった難しいテーマも含めて考える

べきだ。

蟻川:グローバル化の要因は IT,つまり技術の発展によるものだ。今考えている

ものと反対のプロセスになるが,ものづくりを出発点としてその観点から

グローバル化についてアプローチしてもよいのではないか。ものづくりが

学校の特性なのだから,それを生かしても良い。そうすればそれぞれの学

校からいろいろなアイデアが出てくるはずだ。独自のグローバル化へのア

プローチを考えていって欲しい。

辛坊:初めて授業風景を見たが,生徒の様子から判断すると他の学校からは一段

落上にいると言っても良い。ただ,課題の発見の部分が SGH で重視されて

いることなので,その解決策があまりにも簡単すぎる部分がある。問題解

決のためにどういう指標で現状を把握して,将来像との差を埋めるために

どう行動するかということで,技術は手段である。結論として,このまま

の方針で良いのではないか。

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篠崎:東工大附属高校としてのミッションがあるはずだ。文科省は何かを期待し

て指定をしたのであって,それは構想調書に書いてあったのだろう。SSH

と SGH は別の軸にあって,どちらの要素も入ってきてしまうのは仕方ない。

プロジェクトとしてどう切り分けるかという問題ではないだろうか。

松田:教育工学の分野には工学出身の方と教育出身の方がおられるが,工学的に

考える人は,何か問題があり,それに対して何を作ろうか,と考える。教

育工学的に考えると,そもそもの教育方法としてどういうところが問題な

のか,内容をどう変えるのかを考える。卒業していく生徒が,一つの問題

について全く違うアプローチがあることを知って卒業する,という状態に

できたら一番良い。

蟻川:SGH は社会科学等の他の学問分野との連携が鍵になる,SSH は科学の分野

のみにとどまる,というのが違いではないだろうか。

本校:大学で行っている地域との連携や企業とのコラボレーションについて教え

ていただきたい。

蟻川:例えば駅前の商店街とのコラボレーションや,地域の田んぼを借りて農業

を行うといったプロジェクトがあったが,いずれにせよ教員が仕掛けない

とできない。最近では企業が企画して持ち込んでくるというケースもある。

辛坊:課題と現状があって,それを行動に落とし込むときに技術に加えて技術で

ないものも使う,というのが SGH だと思うが,この学校ではものづくりに

重きを置いているため適切かどうかは断定できない。

佐藤:以前は技術で解決できなかったような難しい問題でも,時がたって何かと

技術が組み合わさって解決できたという例がたくさんある。技術では解決

できなかったことを人文科学の知識をもって臨む。そうすれば大学の教養

に貪欲に臨む人間を生む。そういった問題をテーマとして取り上げれば良

いのではないか。

本校:次回運営指導委員会は 3 月を予定している。報告書が出来上がったあたり

で,またご意見を伺いたい。

2 平成 29 年度第2回運営指導委員会

(1)日 時:平成 30 年 3 月 6 日(火)15:30〜17:30

(2)会 場:田町キャンパス キャンパス・イノベーションセンター3階 301 室

(3)出席者:

A) 運営指導委員

蟻川芳子 (一社)日本女子大学教育文化振興桜楓会・理事長

太田幸一 元富士通株式会社・常務取締役

佐藤義雄 元文部省・教科調査官

辛坊正記 株式会社HiAc・最高顧問

B) 学内指導者

篠﨑和夫 東京工業大学・物質理工学院材料系・教授

松田稔樹 東京工業大学・リベラルアーツ研究教育院社会・人間科学系・准教授

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C) 本校

校長,副校長,主幹教諭,SGH 研究開発委員会幹事,各研究会幹事,

総務・管理グループ長,総務・管理グループ総務担当主査

(4)内 容:

A) 校長挨拶

B) 校長より運営指導委員会出席者の紹介

副校長より本校職員出席者の紹介

C) 研究課題の進捗状況について

(i)全体

(ⅱ)各研究会等からの進捗状況報告

(ア)グローバル社会と技術研究会 岩城

(イ)グローバル社会と技術・応用研究会 都留

(ウ)SGH 課題研究 研究会 砂岡

D) 質疑応答,助言等(敬称略)

篠﨑:流れ図を作成したという部分を強調していたが,どのような効果があった

か。

本校:例えば「グローバル社会と技術」の技術者倫理の章では,生徒に考える手

順を明確に示すことができ,レポートにその成果が見られた。また,授業

担当者が頭の中を整理して授業をするということが最初の目標としてあり,

それについても成果があったと考えている。同科目の情報モラルの授業に

おいては,生徒同士で話し合いをする場面があったが,ブレインストーミ

ングでいろいろな案を出し合った後に,そこで出てきた案を分類するとい

うことを生徒たちが行っていた。これは流れ図を示すことによって,生徒

たちが「今自分たちが何をやっているのか」つまり流れ図でいうとどの部

分にいるのかということを理解しながら進めることができた結果であると

考えられる。第1学年で行う「グローバル社会と技術」の授業では,特に

テーマ設定の場面で流れ図にあるサイクルを回すことを重視している。

篠﨑:流れ図はどのタイミングで生徒に示すのか。最初から情報として与えるの

か,一度何も与えずにディスカッションを行ってからなのか。あるいは一

度学んだ後に,それから離れて改めて考えてみるのか。

本校:おっしゃるとおり様々な方法があると思う。これから検討していきたい。

辛坊:この流れ図では問題や課題をいくつかある中から絞っていくというプロセ

スをとっているが,ビジネスの世界では,ある問題が起こったときに「で

は本来どうあるべきなのか」ということを考え,自分で課題を発見すると

いうプロセスで考える。こういったように,他のアプローチもあるのでは

ないか。

本校:他のアプローチも含め,これから検討していきたい。

松田:同科目では様々なテーマについてクラスごとに異なる順番で取り組んでい

る。例えば技術者倫理の授業を受けた後に情報モラルの授業を受けるクラ

スもあれば,技術者倫理の授業を受ける前に情報モラルの授業を受けるク

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ラスもある。こういうことを考慮すると,全ての授業において毎回内容を

変えるべきではないのか。

本校:これまでに何の授業を受けているのかを考慮して,授業を進めていこうと

思う。

太田:SSH では他校よりも先行して開発科目の授業テキストを作成し,それを公

開してきた。SGH でも同じようにテキストの公開を含めた他校への普及を

進めていくのか。また,国連で掲げている SDGs が話題になっているが,

これについては意識しているか。

本校:「グローバル社会と技術」のテキストは現在流れ図を意識しながら改訂を進

めているところであり,公開することも考えて著作権にも気を配っている。

「グローバル社会と技術・応用」についても同様の形で進めている。成果

普及についても検討している。また,SDGs については情報分野の「課題研

究への道」の授業で扱った。テーマ設定の際に,ただ考えさせるだけだと

テーマがバラバラになってしまうと考え,最初に示した上で生徒にテーマ

設定をさせた。本校生徒は授業の前にある程度テキストを読んでくる。こ

のことを考えると必要な知識を載せたテキストを生徒に持たせる意義は非

常に大きいと考えている。

佐藤:新しい学習指導要領で求められるものと,SGH の目標がどの程度合致して

いるか検討する必要がある。それが評価につながってくる可能性がある。

「対話的で深い学び」という文言があるが,SGH の考え方はその入り口で

ある。これをどのように実現するのか,またどのような場面での対話を想

定するのか考えていく必要がある。また,教科間への「広がり」という文

言についても意識すべきである。これからは全ての教科が SGH 化していか

なければならない。そういう見通しはあるのか。

本校:「深い学び」については,新学習指導要領でもあまり明確に示されていない

と思う。「深い学び」とは,例えば俯瞰的なもの,メタ認知的な見方などが

あげられる。

佐藤:様々な活動を通して何が得られるのか,何を学ぶことができるのか。それ

を仮説として立てる必要がある。「対話的で深い学び」を通して生徒たちに

どこまで学んでほしいのかを目標として設定すべきだ。SGH の考え方が実

はそれを含んでいる。今から学校として見通しを立てて整理しておく必要

がある。

本校:学校として取り組んでいきたい。

蟻川:グローバル人材とは,自ら学び,自ら問題解決ができる人材である。レポ

ート作成の過程でこの方法を身につけることができるのは非常に良い機会

である。現在は SGH をプロジェクトとして行っているが,プロジェクトが

なくなっても普段の授業で意識して行っていけると良い。SGH というのは

その意識付けのためプロジェクトである。このプロジェクトが終わっても,

それを発展させ,各科目に引き継いでいくべきである。あまり細かいこと

に気を配りすぎるのではなく,「問題解決」という究極の目標に向かってい

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くのが良いだろう。大学との連携については非常に恵まれた環境で,良く

できているのではないか。

太田:11 月の中間報告会では,ポスターセッションにおいて学生が物怖じせず生

き生きと話していたのに非常に感銘を受けた。内容も多岐に渡り,現地に

入り込んで研究を行うことができている。また,先ほど言及した SDGs に

ついては最近企業の間でも広がりを見せており,それを「課題研究への道」

に取り入れている点は評価できる。将来的にトップ校と呼ばれる学校出身

の人たちと並んで良い人材が出てくるのではないだろうか。

佐藤:SGU に指定されている大学において,附属は何をすべきなのか考えていく

べきだ。各教員に意識付けをすることで状況は変わっていくだろう。また,

良い評価を受けるためには研究内容をわかってもらえるように上手く伝え

るように工夫する必要がある。そのためには学習指導要領に照らして検討

を進めると良いだろう。サイエンスには,広義のサイエンスという言葉と

科学では意味が違う。スーパーサイエンスなどは良くできた造語でいわゆ

る科学の領域を超え,広くとらえている。報告書に示された科学は(分野

に限定した)狭義であり報告書では見直すべきであろう。

辛坊:11 月の中間報告会での発表を見て,生徒たちは現地でしっかりと情報や考

え方をつかんできていると感じた。地政学的リスク回避能力については,

私はあまり良いことばとは思っていない。リスクを回避すればよいのか,

もっと現地の文化や制度に立脚して見方・考え方を学ぶべきだと思う。課

題設定の場面では,非常に大きなレベルのテーマから,自分の扱うことが

できるレベルまでどのように落としてくることができるのか,その方法論

を確立していくと良い。

篠﨑:グローバルというのは外に,世界に目を向けることであり,いろいろな観

点で物事を考えることである。この考え方についてひな形を与えて経験さ

せる取組は非常に良いと思う。生徒が自分自身で使いこなすことができる

かという問題もあるが,レポートにその成果が見られることから,生徒に

も能力が備わっていると考えられる。あとはその問題に対して生徒がどの

ように興味を持っていくかである。大学においても,学生が教員の与えた

範疇を出て研究を進めていくことが少なくなってきた。自分で興味を持っ

て,教員が考えもつかないような方向に進んでいったりすると,非常にお

もしろいものだ。

松田:何事も毎年きちんと見直しをすることが大切である。最初に決めた計画や

目標でも,変える必要があるならどんどん変えていくべきだ。先ほどから

話題になっている流れ図を見ていると,結局は問題を技術的に解決するだ

けになっている。そうではなくて,様々な要素を含めた複合的な解決をす

ることが必要である。流れ図を作成して満足するのではなく,作った流れ

図についてもきちんと見直しをするべきだ。先日送った EV 化に関する記

事について自分自身の解釈を述べると,ドイツは電気が余っているから電

気自動車を使おうという流れになっているが,なぜそれがドイツではでき

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て,日本ではできないのか。その背景には住宅の作り方の違いなどがある

わけだが,日本で同じことをしようとすると制度面で諸々の制約が出てく

るだろう。だからその制度も含めてうまく調整していく必要がある。技術

者が技術とセットで制度についても同時に提案をしていくと上手くいく可

能性がある。こういった事例をもとに,日本と外国はどうちがうのか,日

本にあるものをどう変えていけば良いのか,といったことを考える力をつ

けることが重要だ。さらに,こういった記事等について個々人の認識の違

いについて協議することは「対話的で深い学び」につながるだろう。また,

「グローバル社会と技術・応用」においてイスラーム文化について学ぶ授

業があるが,その理由は何なのか。他の文化を学ぶという一例としてイス

ラームを選んでいるのか,なぜイスラームを学ぶ必要があるのか,その地

域に特化する意味が他にあるのか。

本校:イスラーム文化をテーマとして扱っているのは,自分たちと全く異なる考

え方を持つ人たちとの協働を想定しているからである。宗教が違えば価値

観は根本的に異なる。それゆえ(善意の規律が異なることから)制度とし

てのルールが必要となる。そのことを生徒にわかって欲しい。一緒に,グ

ローバルな規模で物事を進めていかなければならないことを想定している

ことからである。EV 化の記事については,ガソリンか電気かの選択に日本

は終始するが,ドイツでは電気とすることでそれに付随する新しい産業が

生まれると考えている。課題研究として取り入れ,横断的なテーマとなれ

ばよいと思う。なお,コジェネレーションについて日本でもいくつかの地

域で導入事例がある。賛否両論あり,難しいテーマだが,各分野でどのよ

うに関わるか検討し,分野横断的に研究を進めることができるかもしれな

い。こういったように何か SGH 課題研究において取り組む良いテーマがあ

れば,アイデアを頂戴したい。

佐藤:SSH はすでに評価項目があるから,SGH で求める資質・能力を明確化し,

それで評価項目を作る。そうすれば求める人物像も明確になるだろう。そ

して SGH 課題研究はそれをパフォーマンスとして見る場と考えられる。こ

の部分を学習指導要領と合致させることで,自分たちの取組を上手くアピ

ールできるのではないか。

太田:蔵前ゼミという会があって,そこでは学部生から院生,OB・OG まで様々

なバックグラウンドを持った人が一緒にディスカッションを行い,リベラ

ルアーツを学んでいる。東工大では今,リベラルアーツに力を入れている。

本校では教員と生徒だけで取り組んでいるが,多くの人がいっしょに取り

組めるとよい。

佐藤:フィリピンのデ・ラ・サール高校などの協定校だけでなく,そういった会

に参加してディスカッションをしても良いかもしれない。

蟻川:生徒は SSH と SGH の2つのプロジェクトにどのように関わっているのか。

本校:両方カリキュラムに含まれている。

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蟻川:文化祭でも何でも,何か自分たち自身でテーマを設定して何かを実行した

経験は,現在の自分の研究の基礎になっていると感じている。文献を見る,

先生に聞く,それを持ち帰って仲間と議論するという経験が今でも活きて

いる。SSH にしても SGH にしても課題研究でその経験ができるのはとても

良いことで,これが将来活躍できる人材育成につながっているのではない

か。

Ⅳ 連絡協議会等の記録

1 平成 29 年度第1回SGH連絡協議会

(1)日 程:平成 29 年 6 月 16 日(金)

(2)出張者:仲道副校長,遠藤教諭,片渕教諭

(3)場 所:筑波大学文京校舎講堂

(4)内 容:本会は,午前中は,文部科学省が主催する連絡協議会,午後は,筑波大学

附属学校教育局が主催する連絡会であった。まず,午前中の連絡協議会では,

国際連合広報センター所長根本かおる氏,独立行政法人国際協力機構広報室

地球ひろば推進課長内藤徹氏などの講演があった。午後は,筑波大学教授島

田康行氏の講演「グローバル化時代の高大接続」を拝聴した後,平成 28 年

度SGH指定校によるポスターセッション,指定校報告が行われ,本校も第

一グループとして発表した。

2 平成 29 年度SGH管理機関等連絡協議会

(1)日 程:平成 30 年 1 月 19 日(金)

(2)出張者:管理機関:草彅事務長 管理職:千葉副校長補佐

(3)場 所:筑波大学文京校舎講堂

(4)内 容:文部科学省より行政説明(平成 29 年度秋の行政レビューについて,平成

30 年度の事業について,事業成果検証等についてなど)があり,来年度

の予算割り当て額について,中間評価の結果に準ずることなどが報告され

た。

Ⅴ SGH関連の出張等の記録

平成 29 年度におけるSGH関連の出張について記載する。なお,海外調査研修について

は,「Ⅳ海外調査研修の報告」を参照されたい。

1 SGHフォーラムへの参加

11 月 25 日(土),パシフィコ横浜でスーパーグローバルハイスクール全国高校生フォ

ーラムが開かれた。本校からは4人の生徒が参加し,生徒によるポスターセッション(使

用言語:英語)で「The Development of Visual Programing Education Software for Children

in Emerging Countries」を発表した。ポスターセッションでは,D グループになり,発

表 4 分,質疑4分という条件で2回ほど同じ内容を発表した。限られた発表時間の中,

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パソコンを持ち込み開発したソフトウェアを走らせながら,わかりやすい発表に努めた。

そのおり,何人かの外国の先生から,英語で質問を受け,それに対し,英語で回答した。

手にメモを持って発表している学校も多い中,本校の生徒は原稿なしに上手に発表し,

応答して,見に来られた方から,お褒めの言葉を頂いた。

2 第2回 関東甲信越静地区スーパーグローバルハイスクール課題研究発表会への参加

平成29年12月23日,立教大学において「第2回 関東甲信越静地区スーパーグ

ローバルハイスクール課題研究発表会(主催:立教大学,後援:文部科学省)」に本校

から7チームが参加し,金賞2件,銀賞2件,合計4件の受賞を果たした(詳細は別項

参照)。文部科学省ご担当者様ご列席の下で行われた授賞式では,受賞校発表のたびに

本校の名前が呼ばれ,会場は驚きに包まれていた。本校のSGH課題研究メソッドの着

実な定着,先生方の親身な指導,そして生徒諸君の涙ぐましい努力が実を結んだ。

3 (東京学芸大学主催)2017 年度SSH/SGH課題研究成果発表会への参加

平成 30 年 2 月 18 日,東京学芸大学において「2017 年度SSH/SGH課題研究成果

発表会」に,口頭発表1チーム,ポスターセッション3チーム(SGHのみの数)が参

加し,ポスターセッションの優秀賞を受賞した。

4 SGH甲子園への参加

平成 30 年 3 月 24 日,関西学院大学において「SGH甲子園」に,ポスターセッショ

ン1チームが参加した。

Ⅵ 報道機関等による取材・報道の記録

平成 29 年度は,報道機関等による取材・報道の記録に該当するものはなかった。

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Ⅶ SGH生徒意識調査

1. 調査内容

(1) 調査対象: 全校生徒

(2) 調査回数: 1学年 …… 年 2回(平成 29年 4月と平成 30年 1月)

2学年 …… 年 2回(平成 29年 4月と平成 30年 1月)

3学年 …… 年 2回(平成 29年 4月と平成 29年 12月)

(3) 回答方法: 5段階の間隔尺度による自己評価で,マークシートを利用する。

2. 調査項目

グローバルテクニカルリーダーとして育成すべき資質と能力に関して以下の項目を調査した。

① リーダーが備えるべき 3つのスキル

【Q1】インクルージョン力(多様性受容力)

世界の文化の違いに気づき受け入れること

ができる。

【Q2】バックキャスティング力(目標から現在すべきことを考える力)

持続可能な社会を実現するために過去を振

り返って,今は何をすべきか企画できる。

【Q3】コンセンサスビルディング力(合意形成力)

相手を納得させながら自分の意見に賛同し

てもらうことができる。

② 【Q4】地政学的なリスク回避力(地域に依存するリスクを理解した上で,リスクを回避す

るための意思決定できる能力)

地域特有のリスクを理解した上で,リスクを

回避するための決定ができる。

③ 語学力(英語によるコミュニケーション力)

【Q5】英語での成果の発信

英語で自分の意見・考え・探求の成果を多くの

人に伝えたい。

【Q6】英語のスピーチ力

探求した結果を英語でスピーチができる。

【Q7】英語のプレゼンテーション力

探求した結果を英語でプレゼンテーション

ができる。

【Q8】英語の質疑応答力

英語で発表した内容の質問に英語で応答が

できる。

できない ① ② ③ ④ ⑤

できる

できない ① ② ③ ④ ⑤

できる

できない ① ② ③ ④ ⑤

できる

できない ① ② ③ ④ ⑤

できる

伝えたくない ① ② ③ ④ ⑤

伝えたい

できない ① ② ③ ④ ⑤

できる

できない ① ② ③ ④ ⑤

できる

できない ① ② ③ ④ ⑤

できる

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【Q9】英語による議論力

興味・関心のあるトピックなら英語で議論が

できる。

【Q10】英語による文章力

興味・関心のあるトピックなら英語で文章に

できる。

3. 調査結果

(1) 学年ごとの調査結果と検定

事前・事後の調査結果をまとめ,学年ごとに,対応のあるサンプルの母平均の差の検定(t

検定)を行った。

1学年

検定結果:1 学年では,特に語学力(英語によるコミュニケーション力)に関する質問項目

の母平均の上昇が見られ,【Q6】英語のスピーチ力および【Q7】英語のプレゼンテーシ

ョン力の項目が 1%水準で有意,【Q8】英語の質疑応答力および【Q10】英語による文

章力の項目が 1%水準で有意であった。その他の項目について有意差はみられなかった。

できない ① ② ③ ④ ⑤

できる

できない ① ② ③ ④ ⑤

できる

5 4 3 2 1 合計 平均 分散

Q1 インクルージョン力 81 78 28 9 1 197 4.16 0.76

Q2 バックキャスティング力 22 63 69 32 11 197 3.27 1.08

Q3 コンセンサスビルディング力 27 78 67 18 7 197 3.51 0.92

Q4 地政学的なリスク回避力 34 56 76 26 5 197 3.45 1.01

Q5 英語での成果の発信 54 56 53 20 14 197 3.59 1.42

Q6 英語のスピーチ力 7 27 55 64 43 196 2.44 1.18

Q7 英語のプレゼンテーション力 6 32 43 69 47 197 2.40 1.22

Q8 英語の質疑応答力 5 24 48 71 49 197 2.31 1.11

Q9 英語による議論力 10 34 63 48 42 197 2.60 1.32

Q10 英語による文章力 29 44 57 40 27 197 3.04 1.56

質問項目有効回答数と平均・分散

SGH生徒意識調査・1学年(事前) 平成29年4月

5 4 3 2 1 合計 平均 分散

Q1 インクルージョン力 88 75 27 4 2 196 4.24 0.70

Q2 バックキャスティング力 20 74 74 24 4 196 3.42 0.81

Q3 コンセンサスビルディング力 19 76 72 22 8 197 3.39 0.90

Q4 地政学的なリスク回避力 25 84 65 19 3 196 3.56 0.79

Q5 英語での成果の発信 40 53 56 32 16 197 3.35 1.45

Q6 英語のスピーチ力 11 32 66 64 24 197 2.71 1.11

Q7 英語のプレゼンテーション力 9 39 55 66 28 197 2.67 1.18

Q8 英語の質疑応答力 6 31 50 77 33 197 2.49 1.08

Q9 英語による議論力 9 50 54 54 30 197 2.77 1.27

Q10 英語による文章力 27 65 50 35 19 196 3.23 1.39

質問項目有効回答数と平均・分散

SGH生徒意識調査・1学年(事後) 平成30年1月

Page 112: 文部科学省スーパーグローバルハイスクール研究開 …sgh/im_report/pdf/2700h29sgh.pdfはじめに 本校は,SGH研究開発指定第3年次を迎え,あらためてグローバル人材の育成について

2学年

検定結果:2学年ではいずれの項目においても有意差はみられなかった。

3学年

5 4 3 2 1 合計 平均 分散

Q1 インクルージョン力 64 84 30 10 2 190 4.04 0.80

Q2 バックキャスティング力 18 78 68 23 3 190 3.45 0.77

Q3 コンセンサスビルディング力 16 79 76 15 4 190 3.46 0.70

Q4 地政学的なリスク回避力 26 65 76 19 4 190 3.47 0.85

Q5 英語での成果の発信 38 51 58 27 15 189 3.37 1.40

Q6 英語のスピーチ力 14 42 64 47 23 190 2.88 1.23

Q7 英語のプレゼンテーション力 15 43 66 40 26 190 2.90 1.29

Q8 英語の質疑応答力 7 23 73 52 35 190 2.55 1.08

Q9 英語による議論力 14 30 78 43 25 190 2.82 1.17

Q10 英語による文章力 27 61 58 26 18 190 3.28 1.33

SGH生徒意識調査・2学年(事前) 平成29年4月

質問項目有効回答数と平均・分散

5 4 3 2 1 合計 平均 分散

Q1 インクルージョン力 62 69 42 5 1 179 4.04 0.74

Q2 バックキャスティング力 19 66 73 16 6 180 3.42 0.83

Q3 コンセンサスビルディング力 17 68 68 20 7 180 3.38 0.88

Q4 地政学的なリスク回避力 19 67 72 18 4 180 3.44 0.79

Q5 英語での成果の発信 29 49 53 32 15 178 3.25 1.38

Q6 英語のスピーチ力 15 42 62 39 21 179 2.95 1.25

Q7 英語のプレゼンテーション力 17 45 56 44 18 180 2.99 1.27

Q8 英語の質疑応答力 11 31 57 50 31 180 2.67 1.28

Q9 英語による議論力 14 42 61 41 22 180 2.92 1.25

Q10 英語による文章力 28 58 58 21 14 179 3.36 1.25

SGH生徒意識調査・2学年(事後) 平成30年1月

質問項目有効回答数と平均・分散

5 4 3 2 1 合計 平均 分散

Q1 インクルージョン力 46 79 44 9 4 182 3.85 0.87

Q2 バックキャスティング力 20 56 75 25 6 182 3.32 0.91

Q3 コンセンサスビルディング力 15 67 67 27 5 181 3.33 0.85

Q4 地政学的なリスク回避力 20 51 84 22 5 182 3.32 0.85

Q5 英語での成果の発信 28 43 62 32 17 182 3.18 1.37

Q6 英語のスピーチ力 15 36 59 51 21 182 2.85 1.25

Q7 英語のプレゼンテーション力 14 37 61 46 23 181 2.85 1.25

Q8 英語の質疑応答力 11 24 62 47 38 182 2.58 1.29

Q9 英語による議論力 19 33 63 44 23 182 2.90 1.34

Q10 英語による文章力 27 50 51 38 16 182 3.19 1.39

SGH生徒意識調査・3学年(事前) 平成29年4月

質問項目有効回答数と平均・分散

5 4 3 2 1 合計 平均 分散

Q1 インクルージョン力 46 66 44 14 9 179 3.70 1.18

Q2 バックキャスティング力 27 49 70 20 14 180 3.31 1.20

Q3 コンセンサスビルディング力 22 57 71 25 5 180 3.37 0.92

Q4 地政学的なリスク回避力 24 47 78 22 8 179 3.32 1.00

Q5 英語での成果の発信 34 38 52 34 20 178 3.18 1.59

Q6 英語のスピーチ力 19 30 56 44 30 179 2.80 1.47

Q7 英語のプレゼンテーション力 18 34 54 43 30 179 2.82 1.47

Q8 英語の質疑応答力 15 22 50 50 40 177 2.56 1.46

Q9 英語による議論力 19 29 55 40 33 176 2.78 1.52

Q10 英語による文章力 27 30 64 36 20 177 3.05 1.43

SGH生徒意識調査・3学年(事後) 平成29年12月

質問項目有効回答数と平均・分散

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検定結果:3学年ではいずれの項目においても有意差はみられなかった。

(2) SGH行事(イベント)に関する調査結果と検定

事後調査に関して,参加(対象)生徒と不参加(対象外)生徒の 2 つのグループに分け,

独立したサンプルの母平均の差の検定(t 検定)を行った。(Levene による等分散性の検定

を含む)

フィリピン・マレーシア海外研修

参加(14名)および不参加のグループ

検定結果:母平均の差の検定においては,

1%水準で有意:【Q5】英語での成果の発信,

【Q7】英語のプレゼンテーション力,

【Q9】英語による議論力

5%水準で有意:【Q1】インクルージョン力

【Q2】バックキャスティング力,

【Q4】地政学的なリスク回避力,

【Q8】英語の質疑応答力

有意差なし:上記以外の項目

(等分散性については有意水準を 5%として

等分散性を採択:【Q1】,【Q3】,【Q6】,【Q10】,等分散性を棄却:【Q2】,【Q4】,【Q5】,【Q7】

~【Q9】)ほとんどの項目で海外研修に参加したグループの母平均が高く,有意差がみられ

た。

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マレーシア政府観光局・フィリピン観

光省講演

参加(20名)と不参加のグループ

検定結果:母平均の差の検定においては,

1%水準で有意:【Q5】英語での成果の発

有意差なし:上記以外

(等分散性については有意水準を 5%とし,

等分散性を採択:【Q1】~【Q4】,【Q6】

~【Q10】,等分散性を棄却:【Q5】)

英語での成果の発信の項目のみで有意差

が見られた。講演会により参加生徒の上記

の意識が涵養されたと考えられる。

東工大連携 CSES

参加(19名)と不参加のグループ

検定結果:母平均の差の検定においては,

1%水準で有意:【Q2】バックキャスティング

力,

【Q4】地政学的なリスク回避力,

【Q5】英語での成果の発信,

【Q6】英語のスピーチ力,

【Q7】英語のプレゼンテーション力,

【Q8】英語の質疑応答力,

【Q9】英語による議論力,

【Q10】英語による文章力

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1%水準で有意:【Q1】インクルージョン力

有意差なし:上記以外

(等分散性については有意水準を 5%とし,等分散性を採択:【Q1】,【Q3】,【Q6】,等分散

性を棄却:【Q2】,【Q4】,【Q5】,【Q7】~【Q10】)

ほとんどの項目で海外研修に参加したグループの母平均が高く,有意差がみられた。

SGHフォーラム

参加(4名)と不参加のグループ

検定結果:母平均の差の検定においては,

1%水準で有意:【Q8】英語の質疑応答力

有意差なし:上記以外

SGH フォーラムに参加したグループでは

英語の質疑応答力の項目のみで有意差が

見られた。

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4. スーパーグローバルハイスクール目標設定シートに関する調査

「SGH対象生徒」を全校生徒として集計を行った。

【Q-a】社会貢献活動や自己研鑽活動に取り組んでいる。

①いいえ ②はい

【Q-b】留学または海外研修に行った。

①いいえ ②はい

【Q-c】将来留学したり,仕事で国際的に活躍したいと考えている。

①いいえ ②はい

はい いいえ 合計 はい いいえ 合計

3年 48 122 170 28.24 71.76 100.00

2年 48 128 176 27.27 72.73 100.00

1年 51 141 192 26.56 73.44 100.00

1~3年合計 147 391 538 27.32 72.68 100.00

a. 自主的に社会貢献や自己研鑽活動に取り組む生徒

回答数(人) 割合(%)

はい いいえ 合計 はい いいえ 合計

3年 26 147 173 15.03 84.97 100.00

2年 26 152 178 14.61 85.39 100.00

1年 28 167 195 14.36 85.64 100.00

1~3年合計 80 466 546 14.65 85.35 100.00

b. 自主的に留学または海外研修に行く生徒

回答数(人) 割合(%)

はい いいえ 合計 はい いいえ 合計

3年 83 90 173 47.98 52.02 100.00

2年 98 80 178 55.06 44.94 100.00

1年 108 86 194 55.67 44.33 100.00

1~3年合計 289 256 545 53 .03 46.97 100.00

c . 将来留学したり,仕事で国際的に活躍したいと考える生徒

回答数(人) 割合(%)

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【Q-d】公的機関から表彰されたり,公益性の高い国内外の大会で入賞した。

①いいえ ②はい

【Q-e1】次の「実用英語技能検定」に合格した。(複数回答可)

①いいえ

②英検準 2級 ③英検 2級 ④英検準 1級 ⑤英検 1級

【Q-e2】「TOEIC」または「TOEIC S&W」で次のスコアをマークした。(複数回答可)

①受験していない

②TOEIC 225~545 ③TOEIC 550~780 ④TOEIC 785~940 ⑤TOEIC 945~

⑥TOEIC S&W160~230 ⑦TOEIC S&W240~300 ⑧TOEIC S&W310~350 ⑨TOEIC S&W360~

⓪他の資格試験を受験した

※CEFRと実用英語検定・TOEICとの対照は,以下の表に基づく。(文部科学省:英語力評

価及び入学者選抜における英語の資格・検定試験の活用促進に関する連絡協議会(第 1 回)

配付資料より)

A1 A2 B1 B2 C1 C2

実用英語検定 3~5級 準 2級 2級 準 1級 1級 -

TOEIC L&R 120~ 225~ 550~ 785~ 945~ -

TOEIC S&W 80~ 160~ 240~ 310~ 360~ -

【Q-f】外国人に対し,文化の違いを理解しながらコミュニケーションできる。

①いいえ ②はい

はい いいえ 合計 はい いいえ 合計

3年 23 150 173 13.29 86.71 100.00

2年 7 170 177 3.95 96.05 100.00

1年 9 185 194 4.64 95.36 100.00

1~3年合計 39 505 544 7.17 92.83 100.00

回答数(人) 割合(%)

d. 公的機関から表彰されたり,公益性の高い国内外の大会で入賞した生徒

満たす 満たさない 合計 満たす 満たさない 合計

3年 43 122 165 26 .06 73.94 100.00

2年 51 129 180 28.33 71.67 100.00

1年 28 168 196 14.29 85.71 100.00

1~3年合計 122 419 541 22.55 77.45 100.00

e . 生徒の4技能の総合的な英語力としてCEFRのB1~B2レベルの生徒

回答数(人) 割合(%)

はい いいえ 合計 はい いいえ 合計

3年 83 88 171 48.54 51.46 100.00

2年 116 59 175 66.29 33.71 100.00

1年 126 68 194 64.95 35.05 100.00

1~3年合計 325 215 540 60 .19 39.81 100.00

回答数(人) 割合(%)

f. グローバルリーダーに必要な,多様性に対する受容力を有する生徒

(外国人に対し,文化の違いを理解しながらコミュニケーションできる生徒)

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5 調査結果と検定

(1)成果を示す根拠・学年ごとの調査結果と検定

1 学年では,特に語学力(英語によるコミュニケーション力)に関する質問項目の母平均の

上昇が見られ,英語のスピーチ力および英語のプレゼンテーション力の項目が 1%水準で有意,

英語の質疑応答力および英語による文章力の項目が1%水準で有意であった。その他の項目に

ついて有意差はみられなかった。これは,SGH開発科目と英語教育が相乗効果をもたらし,

学習意欲向上へとつながったものと考えている。第2・3学年は若干の数値の移動はあるが,

有意差を示すには至らなかった。

(2)成果を示す根拠・海外研修および SGH課題研究に関する調査結果と検定

フィリピン,マレーシア海外調査研修に参加した生徒(14名)は,参加していない生徒(565

名)と比較してほとんどの項目で有意差がみられた。特に,英語での成果の発信,英語のプレ

ゼンテーション力,英語による議論力については,1%水準で有意,インクルージョン力,バッ

クキャスティング力,地政学的なリスク回避力,英語の質疑応答力では,5%水準で有意であっ

た。一方「SGH課題研究」では有意差が見られなかった。

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平成30年3月31日発行

スーパーグローバルハイスクール研究開発学校

代表者 校長 佐 伯 元 司

所在地 〒108-0023

東京都港区芝浦三丁目3番6号

学校名 東京工業大学附属科学技術高等学校

(TEL 03-3453-2251)

(FAX 03-3454-8571)

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