超伝導とケンカしない磁場: 高温超伝導物質に侵入 …...1...
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野々村野々村 禎彦禎彦 ((強相関モデリング強相関モデリングG)G)
超伝導とケンカしない磁場:超伝導とケンカしない磁場:高温超伝導物質に侵入する高温超伝導物質に侵入する
量子化された磁場と応用の可能性量子化された磁場と応用の可能性20072007年年66月月2222日日 NIMS evening seminar @ NIMS evening seminar @ 物材機構物材機構 東京会議室東京会議室
OutlineOutlineはじめに:第はじめに:第22種超伝導物質の渦糸状態種超伝導物質の渦糸状態
銅酸化物高温超伝導物質の渦糸格子融解銅酸化物高温超伝導物質の渦糸格子融解
ジョセフソン渦糸状態の不思議な振舞ジョセフソン渦糸状態の不思議な振舞
まとめまとめ
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OutlineOutlineはじめに:第はじめに:第22種超伝導物質の渦糸状態種超伝導物質の渦糸状態
銅酸化物高温超伝導物質の渦糸格子融解銅酸化物高温超伝導物質の渦糸格子融解
ジョセフソン渦糸状態の不思議な振舞ジョセフソン渦糸状態の不思議な振舞
まとめまとめ
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第2種超伝導物質の渦糸状態とは?
超伝導物質に磁場をかけると、磁場を打ち消す方向の超伝導電流が表面に誘起され、磁場は内部に侵入できない(マイスナー効果)
しかし、マイスナー効果のみを示す第1種超伝導物質では、磁場がやや
強くなると、とたんに超伝導は壊れる
磁場の侵入距離λと超伝導の破壊が周辺に影響する距離ξの大小が問題:
λ<ξ(第1種超伝導)では、磁場の侵入で超伝導が壊れると、その影響は最初に磁場が侵入した外側にも及び、ドミノ倒し式に超伝導が全部壊れる
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第2種超伝導物質の渦糸状態とは?
φ0=hc/2e
|ψ|
B
Js
λ
ξ
磁場の侵入長λと超伝導の相関長ξの大小が問題:
λ>ξ(第2種超伝導)では、超伝導が壊れるのは、特に磁場の強い中心部分だけで済む
第2種超伝導物質では、ミクロな超伝導渦電流
で磁場を囲い込み、磁束量子φ0(の整数倍)に
量子化された渦糸として積極的に通すが、
渦糸コアの外側では超伝導が保たれる
このやり方だと、「磁場は一切中に入れない」と
頑張るマイスナー効果の数10倍~数100倍の
磁場(上部臨界磁場)まで超伝導は保たれる
この上部臨界磁場を、第一原理的手法で
評価したのが新井氏の最初の講演
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第2種超伝導物質の渦糸状態とは?
アブリコソフの平均場理論 (1957):[2003年ノーベル物理学賞]
- 超伝導渦糸は、三角格子を組んで安定化する
- 超伝導は、物質が渦糸コアで覆い尽くされる
(磁場が強くなり密度が上がるか、温度上昇でコアの有効半径が大きくなる)まで安定
- 超伝導振幅と位相コヒーレンスは、上部臨界磁場で同時に、連続的に消える
Ψ=|Ψ|exp(iφ)
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OutlineOutlineはじめに:第はじめに:第22種超伝導物質の渦糸状態種超伝導物質の渦糸状態
銅酸化物高温超伝導物質の渦糸格子融解銅酸化物高温超伝導物質の渦糸格子融解
ジョセフソン渦糸状態の不思議な振舞ジョセフソン渦糸状態の不思議な振舞
まとめまとめ
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銅酸化物高温超伝導物質の渦糸格子融解
しかし、典型的な第2種超伝導物質である銅酸化物高温超伝導物質の渦糸相図は、
アブリコソフの平均場理論の相図とは定性的に異なっている
平均場理論では、熱ゆらぎによる渦糸の変形を無視しているが、温度スケールが一桁違う高温超伝導では無視できない
超伝導の位相コヒーレンスがまず失われ、渦糸格子はある温度で突然不安定化する(渦糸格子融解); それより高温でも超伝導振幅は有限なので渦糸は定義でき、物質中
を自由に動き回っている(渦糸液体)Tc
- 通常超伝導物質:Tc~高々10K程度
- 高温超伝導物質:Tc>77K(液体窒素温度)
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銅酸化物高温超伝導物質の渦糸格子融解
絶縁層
超伝導層
超伝導層
絶縁層
絶縁層
Bi2Sr2CaCu2O8+y (1988, NIMS)
© Wikipedia Germany
銅酸化物高温超伝導物質は超伝導層と絶縁層がナノスケールで並んだ天然のジョセフソン接合系:
この結晶構造に即したモデル化を行って計算
- 超伝導層内:GL理論(超伝導の一般的な現象論)で扱う[2003年ノーベル物理学賞:アブリコソフ理論の基礎]
- 超伝導層間:弱いジョセフソン接合を作っていると定式化[1973年ノーベル物理学賞:江崎ダイオードと同時]
さらに、数値計算の手間を減らすための近似を行う:
- GL理論を離散化し、仮想的な格子上に乗せて計算
- 渦糸格子融解は上部臨界磁場よりも十分低磁場・低温で起こるので、超伝導振幅を1に固定して位相のみ考慮
☆ 熱平衡状態を確率的に生成するモンテカルロ法で計算
(~3nm)
(~12nm)
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銅酸化物高温超伝導物質の渦糸格子融解
- Lawrence-Doniach model (H//ab):
- 単純化した LD model [超伝導振幅 ρn=1, 遮蔽効果を無視] (B//ab):
- フラストレートした XY model [超伝導層内で離散化] (B//c):
( )⎥⎦
⎤−
Γ+⎢
⎣
⎡⎟⎟⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛•
Φ−−−= ∑∑ ∫
−− axis2
plane 0
cosd2cosc
jiab
j
ijiijJrAJH φφπφφ
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銅酸化物高温超伝導物質の渦糸格子融解
渦糸状態可視化ソフトウェアFluxviewの出力データより(みずほ情報総研と開発)
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銅酸化物高温超伝導物質の渦糸格子融解~ 欠陥の導入(不純物の影響、特性向上へ)
(1-ε)J interaction J
probability p
(1-ε)J interaction J
probability p
点状欠陥 柱状欠陥
化学組成変化に伴う酸素欠損、その他
不純物など「自然に入ってしまう」欠陥
(電子線照射で濃度制御も可能)
加速器で重イオン(金、鉛など)を照射して
貫通させた、「意図的に手で入れる」欠陥
(渦糸のピン止め中心:臨界電流向上)
Y. Nonomura & X. Hu:Phys. Rev. Lett. 86, 5140 (2001)
Y. Nonomura & X. Hu:Europhys. Lett. 65, 533 (2004)
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銅酸化物高温超伝導物質の渦糸格子融解~ 欠陥の導入(不純物の影響、特性向上へ)
点状欠陥 柱状欠陥
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
0.30 0.35 0.40 0.45
p/f
T [J/kB]
Bragg-Boseglass
Bose glass
vortexliquid
interstitialliquid
0.00
0.05
0.10
0.15
0.20
0.06 0.07 0.08 0.09 0.10
ε
T [J/kB]
Bragg glass
vortexglass vortex
slushvortex
critical point(crossover line)
step of specific heat
liquid
PRL 86, 5140(2001)
欠陥の数/渦糸の数
欠陥のピン止め力
ブラッググラス
渦糸スラッシュ
渦糸液体
渦糸グラス
渦糸液体
ボーズグラス
ブラッグボーズグラス
間隙液体
実験で報告されている4種類の相を
含む状態図を、単一のモデルから
数値的に再現することに成功した
4種類の相を含む状態図が得られた
欠陥を導入すると超伝導転移温度
が上昇し、特性が向上している
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OutlineOutlineはじめに:第はじめに:第22種超伝導物質の渦糸状態種超伝導物質の渦糸状態
銅酸化物高温超伝導物質の渦糸格子融解銅酸化物高温超伝導物質の渦糸格子融解
ジョセフソン渦糸状態の不思議な振舞ジョセフソン渦糸状態の不思議な振舞
まとめまとめ
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ジョセフソン渦糸状態の不思議な振舞
絶縁層
超伝導層
超伝導層
絶縁層
絶縁層
超伝導層に平行に磁場をかけると、渦糸は絶縁層にベタッと広がって侵入する
このジョセフフソン渦糸系は、通常の渦糸系とは異なるさまざまな振舞を示す
- 磁場の強さを変えてゆくと、基底状態が不連続に変化する
(渦糸の位置は、層に垂直な方向には離散的に変化する)
- 磁束格子融解などの振舞が、通常の渦糸状態とは異なる(層状構造 → 熱ゆらぎによる渦糸の変形に強い異方性)
- 渦糸を電流で駆動すると、THz領域の電磁波が発振される
(天然のジョセフソン接合系の固有プラズマ振動との共鳴)
☆ モデルの基底状態を離散化した、連立微分方程式を解く
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磁場変化に伴うジョセフソン渦糸系の基底状態変化
h=1 ~30T for YBCO, ~0.5T for BSCCO
N=5ジョセフソン渦糸格子の基底状態は、(h, N,Δ) を指定すれば完全に決まる
φn に関する微分方程式を、(h,N,Δ) のあらゆる組み合わせについて、単位格子内で解きエネルギー比較
A. E. Koshelev, cond-mat/0602341
単位格子
-
s.t.
Rescaled:
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h=1 ~30T for YBCO, ~0.5T for BSCCO
h<0.99: ジョセフソ渦糸格子の傾きΔは、
磁場変化に伴って不連続に変化
するため、渦糸格子の基底状態
の構造も間欠的に移り変わる
磁場変化に伴うジョセフソン渦糸系の基底状態変化
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h=1 ~30T for YBCO, ~0.5T for BSCCO
h<0.99: ジョセフソ渦糸格子の傾きΔは、
磁場変化に伴って不連続に変化
するため、渦糸格子の基底状態
の構造も間欠的に移り変わる
0.99<h<1.33: ジョセフソン渦糸格子の
傾きΔは、磁場変化に
伴って連続的に変化
磁場変化に伴うジョセフソン渦糸系の基底状態変化
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h=1 ~30T for YBCO, ~0.5T for BSCCO
h<0.99: ジョセフソ渦糸格子の傾きΔは、
磁場変化に伴って不連続に変化
するため、渦糸格子の基底状態
の構造も間欠的に移り変わる
0.99<h<1.33: ジョセフソン渦糸格子の
傾きΔは、磁場変化に
伴って連続的に変化
1.33<h: 超伝導層に平行な渦糸が密に
詰まったジョセフソン渦糸格子
磁場変化に伴うジョセフソン渦糸系の基底状態変化
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ground stateenergy minima
for each N
ジョセフソン渦糸系のエネルギー曲面
(n,m,N)||
基底状態
各N のエネルギー最小状態
h=1 ~30T for YBCO, ~0.5T for BSCCO
(n,m,N)=(2,1,1)
Y. N. & X. Hu: Phys. Rev. B 74, 024504 (2006)
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h=1 ~30T for YBCO, ~0.5T for BSCCO
傾斜格子層平行格子(N=1)
回転格子
層平行格子(N 2)>=
h~1.33h~0.99
回転格子領域では傾きΔ はほとんど
磁場に依らない
ジョセフソン渦糸系のエネルギー曲面
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回転格子領域の基底状態
||多谷構造の分岐点
局所エネルギー最小線から見えるエネルギー曲面の隠れた構造:
ジョセフソン渦糸系のエネルギー曲面: N=1 の空間
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N=1 の基本構造(分岐する多谷構造)に N=2, 3, … の構造
が順次被さって作られる
ジョセフソン渦糸系のエネルギー曲面:全体構造
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まとめまとめ
第2種超伝導物質の簡単なレビュー第2種超伝導物質の簡単なレビュー
銅酸化物高温超伝導物質の渦糸格子融解を、銅酸化物高温超伝導物質の渦糸格子融解を、モンテカルロシミュレーションモンテカルロシミュレーションで調べた研究で調べた研究
-- 欠陥を含まない系の渦糸格子融解の可視化欠陥を含まない系の渦糸格子融解の可視化
-- 点状欠陥・柱状欠陥を含む系のモデル化と状態図点状欠陥・柱状欠陥を含む系のモデル化と状態図
ジョセフソン渦糸状態の基底状態を、モデル系のジョセフソン渦糸状態の基底状態を、モデル系の連立微分方程式を解いて連立微分方程式を解いて調べた研究調べた研究
-- 磁場変化に伴う渦糸格子構造の不連続な変化磁場変化に伴う渦糸格子構造の不連続な変化
-- 電流駆動したジョセフソン渦糸系の電流駆動したジョセフソン渦糸系のTHzTHz発振発振(研究中)(研究中)
計算科学センター 強相関モデリンググループ:
http://www.nims.go.jp/cmsc/scm/