連句・前句附・俳句・俳文に遊び、江戸の粋俳諧に...

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連句・前句附・俳句・俳文に遊び、江戸の粋俳諧に志す!

  

其 角 座  

第十五号

                     

   

   

二〇一〇 六月 

 其角生誕350年記念イベント

 

平成十八(2006)年二月二十六日、其角三百回忌記念シンポジウムを江戸東京博

物館にて催して以来、四年余りが経ちました。この其角顕彰の総集編として、本年七月

二十四日、西新宿「常圓寺ホール」にて、其角生誕350年を記念し「俳文の未来シン

ポジウム」を開催します。何とぞご参加ください。(詳細は案内チラシを)

 二〇一〇「晋翁忌」報告

 

平成二十二年四月三日(土)、神奈川県伊勢原市「上行寺」にて「晋翁忌」が催されました。

 「晋翁忌」とは、江戸の俳諧師・晋其角を偲んだ集いで、平成十八年四月一日、其角

三百回忌追善法要が有志によって営まれたのを機縁に、毎年四月の第一土曜日に「上行寺」

にて行なわれる事になったものです。

 「晋翁忌俳句会」は、平成十九年第一回、平成二十年第二回、平成二十一年第三回と行

われ、平成二十二年の本年は第四回になります。

 

また、本年から其角座「文台」に描かれた、春の櫻と秋の楓の画に因み「櫻楓合・晋

翁忌俳諧興行」が行なわれる事となりました。「櫻楓合」とは、上行寺での「晋翁忌」を

お世話するホスト役として「大住連」が発足し、都内には其角座の分会「阿佐ヶ谷連」

がありますので、互いの交流を兼ねて、紅白歌合戦のようにしたものです。

 

今回の「櫻楓合」は、歌仙三十六句のうち、平句各1点、月花の句各3点とし、発句・脇・

第三を除いた合計43点を取り合うという趣向。判定は、23対20で、楓組「大住連」

が桜組「阿佐ヶ谷連」に勝ちましたが、結果はともかく、其角座らしい俳諧興行のスタ

イルが考案され、来年も「櫻楓合」を試みたいと考えている次第です。

 

参加されたメンバーは以下の通り。

《運営担当》土屋実郎(発句、捌き)、上行寺岩田住職(脇句)、小林静司(第三、捌き)、

 

二上貴夫(司会)、浅井翠子(筆記)、原成子(接待)、二上小梅(記録)。

《櫻組連衆 

阿佐ヶ谷連》斉藤一燈、伊藤哲子、石田京、福島壺春、梅津半七、安野ひと枝、

 

矢萩道侠、銀畑二。 

《楓組連衆 

大住連》中根明美、前田明水、小谷参木、鈴木善春、竹村左京、立石佳子、

 

中尾美琳、清水水娥、和田晴美、近藤千惠。

伊勢原市「上行寺」にて。

 

平成二十二年四月三日「晋翁忌俳句会」

に集った参加者の皆さん。

 

年一回のこの俳句会は、今年で四回目。

 

主催者としては、出来るだけ色々な方々

とオープンに交流したく、超結社の雰囲気

を心がけて来た。今年は、上行寺の檀家で

「万象俳句会」顧問である大西八洲雄先生が

来てくださった。晋翁も喜んでいるだろう。

◀「晋翁忌俳諧興行」連衆の「阿佐ヶ谷連」「大住連」の皆さん。なんといっても、連句は一座で巻く「一座建立」の楽しさがある。ベテランも素人も、上手下手なく付句を案じて、競い合う。最年長は大正 11 年生れの斉藤一燈氏、最年少は昭和 51 年生れの矢萩道侠氏か。句を治定するのは、其角座十二世の土屋実郎先生とこの日の脇宗匠を務める小林静司先生。この連句文芸がますます世に盛んになる事を祈るのみだが、其角座も連句普及の任を果たすべく、来年も俳諧興行を執り行ないたい。

  ▲「 2010 晋翁忌俳諧興行」筆記係を引き受ける鈴木善春さんと、大住連 ‘ 女性陣 ’ の佳月さん、千恵さん、晴美さん、水娥さん。

【二〇一〇晋翁忌】 

 歌仙櫻楓合「晋翁忌」の巻          実郎捌

  

  晋翁忌また取り出せる五元集          土屋 実郎

   栞に記すけふの暖か           上行寺日意上人

  親鴨の水脈の内なる子鴨にて          小林 静司

   橋の上からながむ少年            伊藤 哲子

  月天心めざすはリレー一等賞          鈴木 善春

   大口あけて熟るゝいちぢく          齊藤 一燈

ウ ハローウィン妖精パック森の中            哲子

   羅まとひ匂いたつひと            立石 佳月

  アベックでアイスクリーム舐めながら      福島 壼春

   お一人様です道がどろんこ          中野 明美

  カーナビと意見が合はず消去する        中尾 明琳

   海のテラスの声が飛んでく          清水 水娥

  三日ほど足りぬこの月冴え冴えと        銀  畑二

   ゼネコンコンとマザコンの風邪        小谷 参木

  寝てからも世界旅行の下調べ          矢萩 道侠

   亜爾然丁の豚の丸焼き               哲子

  花明り薄紅に燃えてゐて               佳月

   蝶をよそ目に武家物を読む             明美

ナオ誰からかメールが来たよ春嵐          梅津 半七

   象が見てゐる望郷の雲               壼春

  虚と実で相場急落ウォール街          竹村 左京

   首を覚悟で押したスヰッチ          前田 明水

  バナナ籠頭にのせて逢ひに来る            佳月

   汗も厭はずひしと抱かん              壼春

  まだ蚊帳を使ふ水上生活者              一燈

   鍋釜みがき汐からくなる              明美

  有明の干物焼きつゝ酒酌みて             左京

   虫の眼を抜く準教授にて              道侠

  美術展長蛇の列にうんざりと             佳月

   男の美学立つて坐つて               明美

ナウ泣きながら人は生まれて泣かれ死ぬ          畑二

   母校の丘にさらば投げキス             哲子

  譜面台第四楽章タクト置く           和田 晴美

   遥かの海に蜃気楼たつ            近藤 千恵

  鯉遊ぶ上行寺池花枝垂る            安野ひと枝

   迦崚頻伽(

かりょうびんが)

の囀りを聴く     

石田  京

          首尾・平成二十二年四月三日 処・伊勢原「上行寺」

【二〇一〇年 晋翁忌俳句会 互選結果】

  投句四句(兼題・其角忌)参加者選五句/選者選七句(天地人各一句)

【斉藤一燈選】

天 碑に花はしだれて晋翁忌           美 琳

地 啓蟄や地球の叫び蛇口より          左 京

人 玉葱を四角に切りて晋子の忌         左 京 

  祐泰の血塚弔ふ涅槃西風           実 郎

  一と竿は赤子の肌着初ざくら         八洲雄

  鳥引くやおほかたのこと許し合ひ       明 美

  阿夫利嶺にきざす春光其角の忌        翠 子

【大西八洲雄選】

天 春光や海一望の養老院            翠 子

地 大空を黒点となり鳥帰る           玲 子

人 菜の花を摘みて終われり野良仕事       雨 降

  囀もせせらぎもあり里の山          麗 風

  春鳥の声のひろがり尾根づたえ        麗 風

  阿夫利嶺にきざす春光其角の忌        翠 子

  阿夫利嶺の曇れど降らず晋翁忌        一 燈

【中根明美選】

天 一と竿は赤子の肌着初ざくら         八洲雄

地 其角忌やてのごい肩に江戸しぐさ       哲 子

人 春泥の消印雲の欠片なり           貴 夫

  ノンアルコール0・00春の風        

貴 夫

  捨ておきし鉢にひこばえ解れおり       浅 風

  月島へきざはし渡る春の夢          ひと枝

  青饅に酒酌むことも辰巳かな         壺 春

         

【福島壺春選】

天 人生の途中を遊ぶ花明り           みわこ

地 逆光で会う父若し朝ざくら          みわこ

人 阿夫利嶺の曇れど降らず晋翁忌        一 燈

  其角忌のさねさしさがみ養花天        一 燈

  一と竿は赤子の肌着初ざくら         八洲雄

  月島へきざはし渡る春の夢          ひと枝

  大佛の横顔見ゆる花の山           八洲雄

【参加者詠・互選結果・順不同・二十一名、選句のみ・原(成)子】

  ◯土屋(実)郎              ◯前田明(水)

晋翁忌また取り出せし五元集[水麗貴]    雛市に瓜実顔のひとり雛[翠]

祐泰の血塚弔ふ涅槃西風[一]        花かかえ心敬のさと宗祗くる[琳]

黄水仙その球根の逞しく          

赴任先紺のスーツで植木市

馬の子の岬の自由羨しめる         

道行きの花冷えの径果てるまで

 ◯伊藤(哲)子              ◯安野(ひ)と枝

其角忌やてのごい肩に江戸しぐさ[明]    月島へきざはし渡る春の夢[明壺貴]

金縷梅堅麺麭齧る美少年[実]        晋翁忌花のひとひら狂えしや[ペ]

薔薇風や棘ある言葉憂髷[浅]        すれ違ふ顔みなやさし春の雪[雨]

御馳走や白磁伊万里の花片々[成]      おぼろ月ラリックの女神踊り初む

 ◯浅井(翠)子              ◯市川(雨)降

阿夫利嶺にきざす春光其角の忌[一八麗]   菜の花を摘みて終われり野良仕事[八水道]

春光や海一望の養老院[八実麗]       丹沢に緑濃くなり晋翁忌[み]

恋猫やとんと見かけぬトタン屋根[琳道貴]  畠路の遠くになりぬ春時雨

月旅行も夢にあらずや晋子の忌       

にょきょにょきょと畠の土手に蕗のとう

 ◯荻原(浅)風              ◯清水(麗)風

捨ておきし鉢にひこばえ解れおり[明麗貴成] 囀もせせらぎもあり里の山[八雨]

花の雲七曜の空奪いおり[左哲成]      春鳥の声のひろがり尾根づたえ[八]

下萌えや脛ゆらゆらと撫でて行く[水ペ]   卒業の少し大人び孫や来る[玲]

春日傘大山見やり晋翁忌[浜]        其角忌や花の許にて偲ぶ苑

 ◯中尾美(琳)               ◯矢萩(道)侠

碑に花はしだれて晋翁忌[一浜]       春光と始発待つ息消える恋[左ペ]

揚雲雀小さき島に広き基地[水]       晋翁忌酒で消えるか境界線[ひ]

屋根替えて終の栖か鳥の糞         

真夜中に夜露に濡れし君一輪[浜]

差懸の腸ゆさぶ修二会かな         

薔薇の芽の螺旋辿るや地獄変

 ◯岩田(浜)木綿             ◯秋山(玲)子

東風吹くや散華供養の晋翁忌[翠浅]     大空を黒点となり鳥帰る[八み]

迷い猫春の薫りに立ち止まり[左浅]     心憂し花時といふ空の青[哲み]

猫鈴の弾けてきこゆ春彼岸         

とりとめのなき会話かな花の冷え[雨]

晋翁忌墓前に春を供えけり         

其角忌や畑一面黄色して

 ◯高島(み)わこ             ◯竹村(左)京

逆光で会う父若し朝ざくら[壺左道ひ]    啓蟄や地球の叫び蛇口より[一道み]

人生の途中を遊ぶ花明り[壺雨実]      玉葱を四角に切りて晋子の忌[一哲道]

酒の香の淡く流れて晋翁忌[実浜]      春驟雨訪う人もなき城の跡[浅成]

柳の芽未熟な風に遊ばれて[成]       藪椿ちるちるみちる迷い込む

 ◯青田(ペ)ネタ             ◯二上(貴)夫

会いたいと思う柳の川っぷち[玲]      晋翁忌なれや発句の衆となり[琳玲麗]

翻る江戸紫や其角の忌[翠]         ノンアルコール0・00花の山[明哲]

天気図に風花の舞う郡山         

 

春泥の消印雲の欠片なり[明琳]

春の暮路地に弾みし笑い声        

 

花冷えを歩いて来たり声の主[み]

【選者詠】

◯大西(八)洲雄              

一と竿は赤子の肌着初ざくら[一明壺翠水玲ひペ]

大佛の横顔見ゆる花の山[壺]      

山の風もらひて節句凧揚げる    

早やばやと酒場灯りぬ其角の忌

◯斉藤(一)燈                

阿夫利嶺の曇れど降らず晋翁忌[八壺雨実]

其角忌のさねさしさがみ養花天[壺]

芝の目に花の散り込む其角の忌[浅]

阿夫利嶺の裾陽炎ひて晋子の忌

◯中根(明)美

花貝にひとすじの思慕晋子の忌[左ひ貴]

鳥引くやおほかたのこと許し合ひ[一翠ペ]

さきだちて十五倍子は花を憚らず

在り佗びて枕におよぶ花の冷

◯福島(壺)春

青饅に酒酌むことも辰巳かな[明琳ひ]

朝寝してぺんぺん草に雨の音[浜玲]

正覚何ぞ絶海の春霞[哲]

昼酒や晋翁忌とて蛍烏賊

【全国どこからでも参加できる誌上句会花摘集】

  第五回 花摘集

互選結果

       

二〇一〇年四月〜二〇一〇年五月 

         兼題 「石」投句十句以内、選句十句以内

         持ち点選者2点、参加者1点

【斉藤一燈選】

 花の山登りて下りてすこし老ゆ         明 美

   現代俳人に欠けている素直な描写と季節情趣がこの句には誠に豊富で、その臨場

   感もさることながら下五の自愛にユーモアがある。

 炉塞ぎや老いては急かるること多く       壺 春

   加齢による能率の低下は誠に深刻だが、それを中七下五のように思い込むことに

   救いがある。炉塞ぎの季語=作業=が適切。

 望郷を知らぬ我居て鳥帰る           我 楽

   作者の生い立ちや現状については知る由もないが「望郷を知らぬ」の措辞と「鳥

   帰る」の結語から、それ故の深い哀愁が汲み取れる。

 貧農の村に明るき濃山吹            我 楽

   濃山吹を明るきと表現することと貧農の村と認識するところに作者の生き様=人

   と自然に対する親愛の心が強く出ている。

 鼻歌の大きくなりて水温む           佳 月

   平凡とポピュラーの区別が失せてパフォーマンスだけとなった俳句界の中でこの

   ような句に出会った安らぎ。正に水温む。

 蕗味噌や海よりもどる夫の声          ペネタ

   一燈の蕗味噌好きは延縄漁夫だった祖父の隔世遺伝、勿論作り方は祖母直伝。そ

   んな事情でこの句を見逃すことができない。

 花冷やまだ旧姓のままでいる          みわこ

   夫婦別姓が論議中だが、それとは全く無関係な自己紹介的真情独白で、上五の季

   語から広がる世事を超えた俳趣が誠にすばらしい。

 燕来て雨後の町並眩しけり           みわこ

   町並の眩しさをこのような季節気象条件で実感するのが俳句。主観的実感だけな

   ら季節に無関係。これこそ有季定型本格派。

 豆の花多弁な風が吹きぬける          みわこ

   蚕豆でも豌豆でも豆科の花は際立った個別特徴を持ちながら、いずれも愛嬌こぼ

   れるばかり。正に多弁な風を吹きぬけさせる花だ。

 気がつけばまた啓蟄の独り言          玲 子

   独り言と啓蟄の関係を大宇宙の運行と作者自身の生理的情緒の不可分結合として

   実感したところが誠にすばらしい。

【土屋実郎選】

 古メガネ捨てずにかけし春炬燵       左 京

   春炬燵がいいですね。金メッキの竿なのに緑鎖がついていたりして。

 望郷を知らぬ我居て鳥帰る           我 楽

   いくつになっても故里の夢をみるんですよね。望郷を知らずと強がってみても。

 美しき嘘重ねてをりぬ四月馬鹿         みわこ

   恋句になりそうですね。わかっていても許される。

 虫干しや風雅の道はこの書より         善 春

   戦後まだ間もないころ、岩波から露伴の七部集評釈が分冊で出て居りました。

   そんな本でしょうか。

 売れ残る貝が汐吹く春の宵           秀 花

   面白いですね。「たつき」という言葉を想起しました。浦安あたりの昔の風景。

 タグ付けてブランド誇る松葉蟹          翠

   蟹もびっくりして、複眼を持ち上げてまわりを眺めているかも。

 植木鉢割ってのそりと孕み猫          良 文

   貫禄充分。わが家の近所にもこんなのが居て、徘徊しております。

 癌宣告の三月きつく抱かれたし         玲 子

   波郷の病床俳句を想い出しました。

 軍歌しか唄えぬ老に黄砂降る          一 燈

   「黄砂降る」が効いていますね。元陸軍二等兵。中国北支へ派遣。等々連想は止

   まりません。

 ほどけ初む数珠子に畦の風強し         一 燈

   ほどけ初む・・いい春の風景ですね。無事に生長することを祈ります。

【中根明美選】

 夏立や笑いの五段活用す          我 楽

   意表をついた季語との取合わせに、うふふと、まず笑った。こんな楽しい文法教

   室があれば、私も参加したい・・。    

 炉塞ぎや老いては急かるること多く       壺 春

   今はもう、風呂釜が設えられ、香合や炭斗など軽めのものに置き換えられている

   のであろうか。

 春暁や駒子と葉子揃来る            京 見

   

ここは、雪国。作者は春暁のうつつの中で夢を見ていたのであろうか・・。川端

   文学は詩に近いと私は思う。この句を読み、ふと詩情を感じた。

 遠山に明るさ届き草青む            良 文

   虚子に「遠山に日のあたりたる・・」と言う句に近い。きっちりとした写生句は

   大切だと思う。ただ「明るさ届き」は「明るさとどき」にしたい。

 のどけしやキズ音も飛ぶSP盤         善 春

   携帯電話で音楽を聴ける時代。まことに隔世の感。「キズ音も飛ぶ」は「キズ音

   の飛ぶ」では?。「も」の使い方には注意が必要かも・・。

 豆の花多弁な風が吹きぬける          みわこ

   風を多弁と言わせた感覚が素晴らしい。きっと少女達の明るいお喋りであろう。

 ジョギングの一人またふえ山笑う        とよじ

   「山笑う」は身近なことを詠むに相応しい季語であり、ジョギングの景との取り

   合わせの感度は、まさに俳諧そのものであろう。

 癌宣告の三月きつく抱かれたし         玲 子

   「癌」という字を見るだけで憎らしい。花々の咲き始める季節なのに・・。私も

   癌の告知を受けたが家族や句友らに抱かれ今がある。負けないで欲しい。

 少年の木遣古風に御柱祭            半 七

   凛々しい少年の姿が古風な祭を一際鮮やかなものにしている。

   折しも若葉の美しい季節。

 つらつらと急ぐでもなく春の宵         風 純

   春宵一刻の情趣を何にもかえがたい作者・・。「つらつら」が言い得て妙。

【福島壺春選】

 花の山登りて下りて少し老ゆ        明 美

   言葉の流れが實に良い。花疲れの氣分が、絶妙と云つてよいほどうまく捉えられ

   てゐる。

 夕風の中の一氣に花ミモザ        玲 子

中を一氣にだと思ふがミモザを髣髴とさせる。

 春暁や駒子と葉子揃來る            京 見

春暁が必ずしも生きてゐるとは思へないが、駒子はともかく、久しぶりに葉子にお

  目にかかつたので。

 売れ残る貝が汐吹く春の宵        秀 花

   売れ残るといふ現在形が気になるが、面白いと思つた。

 燕来て雨後の町並眩しけり        みわこ

   写生が効いてゐる。

 花冷えやまだ旧姓のままでゐる。        みわこ

   旧姓のといふ以上新姓もある筈で、結婚したのにと解するのが正しいと思ふが、 

  まだ結婚しないでゐるとも考えられ、その方が面白い。作者は心に悔いることで 

  もあるのか。

 人の嘘我が嘘春の雪降れり           みわこ

   きつと美しい嘘であらう。春の雪がいいですね。

 木アロエを咲かせ灯台非公開          一 燈

   写生句の強さ。

 球切れの耳あててきく春の宵          半 七

 この春の宵はなんとも言へない。季語が生きてゐると思ふ。

 少年の木遣古風に御柱祭            半 七

   行事の句は難しいのですがうまくまとめられました。

【二上貴夫選】

 鳥帰る急行の窓すれ違い            道 侠

   「急行の窓」に詩情あり、あわれを感じる。「鳥帰る」の季語が生きている。

 乳牛(ホルスタイン)の鼻面が行く花曇り     左 京

   ルビのホルスタインは無くても分かる。鼻面の白斑と花曇が匂付けで面白い。

 花の山登りて下りてすこし老ゆ         明 美

   また今年も花の山をたずね、来年もまたと、いよいよ軽みの老境を開く。

 春暁や駒子と葉子揃来る            京 見

   『雪国』の読後感か。それにしても春暁がいい。春暁に起こされた作者がみえる。

 朧月愛犬十五のサヨウナラ           マ キ

   十五の春ならず、十五の齢を全うして逝った愛犬への哀悼。

 つらつらと急ぐでもなく春の宵         風 純

   何気ない三六五分の一の存問の思いを詩に託すのが俳句。

 豆の花多弁な風が吹きぬける          みわこ

   「多弁な」が実に多弁に語ってくれている。豆の花と多弁のリズム感もいい。

 花冷えの古道の石に息をつき          灰 匙

   兼題の「石」をこなした句。上五「花冷える」と「切レ」の間を入れたい。

 軍歌しか唄えぬ老に黄砂降る          一 燈

   「しか」は淋しい。戦中戦後、昭和平成と世は移れども変わらぬ歌=俳句を思う。

 フラココや見守るだけの人の恋         ペネタ

   フラココはぶらんこ。春は希望やら人事異動やらで賑わうが、傍観する者も多い。

【投句者 

順不同・二十五名】

 

秋山玲子、青田ペネタ、岩田杏、藤石マキ、梅津半七、三好京見、鈴木善春、矢萩道侠、加藤風純、

 

立石佳月、高島みわこ、西岡翠、菊池我楽、穂坂良文、竹村左京、藤本灰匙、北山建穂、

 

近藤千恵、榎本秀花、渡邊とよじ、斉藤一燈、土屋実郎、福島壺春、中根明美、二上貴夫

【選句者 

順不同・二十一名】

 

秋山玲子、青田ペネタ、梅津半七、鈴木善春、近藤千恵、榎本秀花、三好京見、加藤風純、 

 

立石佳月、高島みわこ、菊池我楽、穂坂良文、竹村左京、矢萩道侠、藤石マキ、渡邊とよじ、 

斉藤一燈、

 

土屋実郎、福島壺春、中根明美、二上貴夫

【お詫び】

 「身に纏ふあれこれ春の潮満ち来る 

明美」「ルーツへの鍵穴さがす春の夢 

明美」の二句が選句一

 

覧表から洩れてをりました。申し譯ありませんでした。

【互選結果】

10点句 

 売れ残る貝が汐吹く春の宵      秀 花

8点句

 花の山登りて下りてすこし老ゆ    明 美  軍歌しか唄えぬ老に黄砂降る     一 燈

7点句

 春暁や駒子と葉子揃来る       京 見  癌宣告の三月きつく抱かれたし    玲 子

6点句

 子等走る浮力をつけて五月風     我 楽  青春の縺れほどける青柳       左 京

 豆の花多弁な風が吹きぬける     みわこ  こまごまと駄菓子屋に積む春の色    翠

 花冷えやまだ旧姓のままでゐる。   みわこ  ゆで卵うす皮をむき春ですよ     佳 月

 踏青や保父来て土手の風変る     みわこ  しづけさの頂きにあり朴の花     秀 花

 炉塞ぎや老いては急かるること多く  壺 春  つらつらと急ぐでもなく春の宵    風 純

5点句

 気がつけばまた啓蟄の独り言     玲 子  燕来て雨後の町並眩しけり      みわこ

 少年の木遣古風に御柱祭(おんばしら)半 七  花冷えの古道の石に息をつき     灰 匙

4点句

 花吹雪心の扉あけておく       みわこ  隣りには寝顔のありて山桜      ペネタ

 望郷を知らぬ我居て鳥帰る      我 楽  春の夜や草は根をはる石をかむ    貴 夫

3点句

 夏立や笑いの五段活用す       我 楽  フラココや見守るだけの人の恋    ペネタ

 口寄屋路傍の石を懐に        我 楽  春風に眠る赤児の指ゆるむ      玲 子

 乳牛の鼻面が行く花曇り       左 京  気がつけばまた啓蟄の独り言     玲 子

 古メガネ捨てずにかけし春炬燵    左 京  夕風の中の一気に花ミモザ      玲 子

 美しき嘘重ねてをりぬ四月馬鹿    みわこ  西の雨今朝つとにきて牡丹うつ    とよじ

 人の嘘我が嘘春の雪降れり      みわこ  ジョギングの一人またふえ山笑う   とよじ

 鳥帰る急行の窓すれ違い       道 侠  植木鉢割ってのそりと孕み猫     良 文

 のどけしやキズ音も飛ぶSP盤    善 春  人待ちのじれったさうな柳かな    半 七

 鼻歌の大きくなりて水温む      佳 月  ほどけ初む数珠子に畦の風強し    一 燈

2点句

 遠山に明るさ届き草青む       良 文  聖五月サタンは赤き目で泣きぬ    我 楽

 山萌えて豊かさを乗せ迫りくる    良 文  頼りなき生への証明朧月       玲 子

 戦国の絵巻や甲斐の遠霞       秀 花  春の日の生きて子守の値打ちかな   京 見

 噂きく耳は持たざり犬ふぐり     秀 花  虫干しや風雅の道はこの書より    善 春

 残雪の連山まぶし眼鏡ふく      秀 花  朧月愛犬十五のサヨウナラ      マ キ

 そよ風は薄色がすき春ショール    秀 花  タグ付けてブランド誇る松葉蟹     翠

 手のひらに生の字書いて握りをり    杏   球切れの耳あててきく春の宵     半 七

 青春と老いの交差や花ふぶき     左 京  一夜あけ山は斑雪にそまりたり    とよじ

 花吹雪両手をひろげ精抱かむ     佳 月  松が枝のしなやかにして春たてり   とよじ

 止め石のふくらみありて春深し    佳 月  蕗味噌や海よりもどる夫の声     ペネタ

 椀に落つる花びら纏う蛤や      風 純  誰よりも風に吹かれて柳かな     ペネタ

 安らぎと昂ぶり交じり桜咲く     みわこ  豆色の憂鬱いっしょに炊くという   ペネタ

 木アロエを咲かせ灯台非公開     一 燈  春まだら息を潜めし海のもの     ペネタ

1点句

 紗を掛けた朝の光に春の雨       杏   黄水仙音符になって庭一面      千 恵

 コジュケイの高鳴く春や手紙書く    杏   弘法や幹くろぐろと若葉寒      千 恵

 春の夕投げ出す脚の重さかな     京 見  別れ霜来そうな夜の鉢一つ      マ キ

 当てもなくまた道訊くや冬の空    京 見  ストーブの上は牛筋白御飯      マ キ

 六キロの生命腕に春の庭       京 見  三月やドレミの音でお湯の沸く    マ キ

 背の寝息まだまだまだと暮れ泥む   京 見  鎧塚なぞの歳月とう霞        とよじ

 告げられし時の満ちたる桜かな    京 見  里山を染めし絵柄も今日の春     とよじ

 心憂し花時といふ空の青       玲 子  荒海に打たれてもなお石仏      左 京

 子等走る浮力をつけて五月風     我 楽  青春の縺れほどける青柳       左 京

 蟇の前腕立て伏せをしてみせる    我 楽  踏んでよね散りて帯なす桜かな    半 七

 門構え内に音あり走り梅雨      我 楽  水温み暮しの声の弾みたる      みわこ

 彼岸越え振り返れども顔はなし    道 侠  人の手の幾何学模様を地に刻み    ペネタ

 鳥帰る急行の窓すれ違い       道 侠  石という時間に人の瞬けり      ペネタ

 勝負あり帰るしかなし春の泥     道 侠  石垣を積む手の癖のおもしろし    ペネタ

 モニターに一人静を映し寝る     道 侠  立ち止まる目蓋の裏に若葉の音    風 純

 緊張に笑顔の混じる新学期      善 春  鳶一羽ふくらむ芽木の山路縫う    秀 花

 定年や山坂越えて花七分        翠   芽吹くもの踏まじと歩む野の匂ひ   秀 花

 園児らの声満ち梅のほころびぬ     翠   菰外れ松の吐息や弥生月       良 文

 帯になり中腹に咲く辛夷かな     佳 月  春浅し公園の遊具遊ぶなり      良 文

 交信機唸りだしたる黒き蜂      佳 月  ゲートボール初夏の響きや背伸する  良 文

 春霖や屹立したる象の檻       建 穂  白きリラ咲きをり遠く海が見え    壺 春

 遠足に潮吹き岩は潮吹かず      実 郎  浸蝕と汚染の浜や啄木忌       一 燈

 老夫婦競ひ仔猫へ離乳食       実 郎  花吹雪約束の肩つゝみ合ふ      明 美

 次回「誌上句会花摘集」ご案内

 第七回投句〆切・・八月十五日必着

  ※句数・・十句

  ※雑詠・・五七五定型の夏の俳句(五七五定型の無季俳句も可)

  ※兼題・・「完」

  ※すでに句会に出された俳句を再投句されても構いません。

 投句先 福島壺春(こしゅん)宛へ

   郵送 〒一八二-

〇〇一四 東京都調布市柴崎2の21の1の202

   ファクス 0424(81)3272

  ※電子メールでの投句は、ホームページの投句フォームをご利用ください。

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 其角『句兄弟』三十九番の十五番  

    兄 

   人先に醫師の袷や衣更         許六

    弟  

   法躰も島の下着や衣がえ        其角

 二句ともに目だつべきものに思ひよせたる也。自句、節小袖などゝも云るべくやと勘

弁せしかども、発句のつりあひ、衣がへといはでは花なし。法躰と醫師とのはれがまし

さは一意なれども、興ことにかはりあるゆへ、わざと一列にたてたり。

 連載第十五回『句兄弟』解説(訳文雑感交じり文・二上貴夫)

◯兄の句=許六・去来の『俳諧問答』に「予が宅に入て逗留し給ふ、晝夜俳談をきく。其の時翁ノ云、

明日衣更也。句あるべし、きかむといへり・・人先に醫師の袷や衣がへ 

といふ句、即時ニい

ひ出す。師掌を打て云ク、奇なる哉・・是也、俳諧の底、此句にてぬけたり・・其角ニ語れバ、

晋子もよくきゝつけて・・句兄弟に可入とて書付たり」とあり、芭蕉が許六宅に逗留した折、

この「人先に」の句を激賞したとの記述がある。なるほど、医師が四月一日の衣更よりも先立

って早くも袷になっているという、ありふれた日常の中に興を見いだしたもので、「十団子も小

粒になりぬ秋の風」など芭蕉好みの句であったろう。

 

ところで、この『俳諧問答』の記述から、『句兄弟』の刊行は元禄七年冬だが、元禄五年頃か

ら其角が『句兄弟』執筆に取りかかっていたのが分かる。

◯弟の句=法体(ほったい)とは、俗体に対する言葉で、剃髪の僧形をいうのだが、プロの俳

諧師も法体であったから、この句は其角が自身の事を含めて言った句とも取れよう。縞の下着

が何とも俗である。

*許六=もりかわきょりく、本名森川百仲。別号五老井・菊阿佛など。明暦二年=一六五六年

〜正徳五年=一七一五年。近江国彦根藩の藩士。蕉門十哲の一人。許六は槍術・剣術・馬術・書道・

絵画・俳諧の六芸に通じていたとして「許六」と芭蕉が付けたという。芭蕉は「許六離別の詞」(別

名柴門の辞)の中で「画はとつて予が師とし、風雅は教へて予が弟子となす」と書いた。許六は、

元禄六年春「芭蕉行脚図」を描いている。『韻塞』『篇突』『風俗文選』『俳諧問答』等の編著がある。

*節小袖=正月の節振舞(せちぶるまい)に着用する小袖。せちごろも。(『広辞苑』)

*勘弁=考えわきまえること。(『広辞苑』)

◎二句ともに目だつべきものに思いをよせた句である。弟の自句は、節小袖などとした

らとも勘弁してみたが、発句のつり合い(「法躰も島の下着や節小袖」では季語が活きな

いし、縞の下着も目立たない)、衣更と言わなくては花がない。法体と医師と孰れも晴れ

がましさという点は同じ意ではあるが、興に於いては殊に変わりある故、わざと(比較

出来るように)一列に立ててみた次第である。

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 其 角 入 門

  〜月花ヲ医ス〜 連載其の二〜

 六代目三遊亭圓窓師匠からメールを頂いた。

 

落語「牛褒め」の中で、「売る人もまだ味知らず初なすび」を其角の発句と教わりましたが、

  あたしは「去来」と直してやってますが、どちらでしょうか。三遊亭圓窓」

 落語「牛ほめ」うむうむ、どんな話やったか、ヤホー(ヤフーだ)で検索してみたら、圓窓

師匠のホームページ「だくだく」の「圓窓五百噺ダイジェスト」の七十二番にあったあった。

 

与太郎が家を新築した叔父の左兵衛宅へ家見舞いに行くことになって、父親に家の褒め方

を教わったが、なかなか覚えられず、紙に書いてもらった。

 「この度は結構なご普請をなさいました」「家は総体、桧造りでございます」「天井は薩摩の鶉

木でございます」「畳は備後の五分縁でございます」「左右の壁は砂ずりでございます」「床の間

の百日紅もたいそう磨き込んでございます」「軸がかかってまして、唐画の茄子でございましょ

う」「なにやら、讃がしてございまして、売る人もまだ味知らず初茄子。これは去来の発句でご

ざいます」「お庭もなかなか結構で、庭は総体、御影造りでございます」など。

台所の柱の節穴を見たら、こう言えとも教わった。「穴の上に秋葉様の火伏せのお札を貼れば、

穴が隠れて火の用心になる」と。その上、牛の褒め方も教わった。「天角、地眼、一黒、鹿頭、

耳小、歯違う」と。

 そして、叔父宅へ行って、紙をチラチラ見ながら褒めるのだが、巧くはいかない。『この度は

結構なご主人を亡くしました』『家は総体、屁の木造りでございます』『天井は薩摩芋の鶉豆』『畳

は貧乏で、ボロボロでございます』『佐兵衛のかかあは引きずりでございます』『へこの間のヒャ

クジッコウもコケコッコウ』『塾に通ってまして、草加のガキでございましょう』『誰やら、お

産をしまして、「生む人もまだ恥知らず初おむすび」。これは去年のコップでございます』『庭は

総体、見掛け倒しでございます』などと、めちゃくちゃである。

 台所へ行って、節穴を見つけて、「穴の上に秋葉様の火伏せのお札を貼れば、穴が隠れて火の

用心になる」と、これは父親に教わった通りになんとか叔父に言えた。

 庭に回って牛を褒めていると、牛が糞をしたので、与太郎は大きな声で言った。

 「おじさん。あの穴の上に秋葉様のお札をお貼れば、穴が隠れて屁の用心になる」

 (圓窓のひとこと備考)

前座噺である。といっても、褒め言葉をしっかりと覚えないといけないので、口慣れるまでは

大変だ。与太郎以上に支離滅裂になってしまうことがある。2007,5,20 U

P

 だれが作ったのか「売る人もまだ味知らず初茄子」。もちろん、去来にも其角にもこんな下手

な句は無いはずだ。まあ、落語のことだから、真に受けるご仁はいないだろうからたわい無い。

 が、「其角バナシ」となるとどうか。「其角バナシ」というのは、江戸の市民に膾炙された頓

智噺のようなエピソードを言い、色々な話が残っている。たとえば、

 ―ある宴席に、其角が、名ある書家と同座していた。宴も終りに、主人、金屏風を出して書

を乞うた。名ある書家、酒が過ぎてと遠慮するのを強いてと乞われ「此所小便無用」と書いた

ので、主人甚だ不興の様子に、其角筆を執ってその下に「花の山」と書き添え、「此所小便無用

花の山」と俳諧の一句に変えてしまった。そこで、主人さすが其角よと喜んだという。

 この話にはバリエーションがあって、名ある書家が、佐文山(書家の佐々木玄龍の弟)であっ

たり、広沢先生(書家の細井広沢)だったり、絵師の英一蝶だったり、果ては、紀文(紀伊国

屋文左衛門)まで登場する。

 こうした「其角バナシ」は、真偽不明で確かめようがないが、俳諧師・其角の当意即妙な人

となりを云わんとした事は確かだ。其角去って百年も経てば、其角の実像を知る者が居なくなっ

たのをいい事に作られたものだろう。この噺の原型は、其角が書いた俳文「白兎公」だろうと

推理して、本拙文を〆括るに一句鑑賞して筆を置くと致しましよう。

   傾廓 

  ほとゝぎす暁傘を買せけり   其角

 傾廓とは傾城の住む郭、吉原のこと。郭帰りの暁方の雨に、傘を一本買わせて出ようとする

と、折から時鳥が鳴いた。傘売りはこんな明方にも来る。まるで時鳥が傘を買わせたような、

風流とも奇とも、そこを「暁傘」と言ったところ、瞬時の偶吟である。其角円熟期の発句であり、

代表句であると思う。俗に在れども俗を抜けた風韻を、俗とばかり見た、これまでの無意味な

其角像を脱構築して、正に現在時に生き、其角に生じた正覚現象を発見しましょうや(天平筆)

表    連句の座はどなたでも参加出来ます。事前に参加予定をご連絡下さい。

六月五日(土)大住連 

   会場/秦野市戸川公園内「おおすみ山居」和室(電話0463・87・9020)

   集合/現地に12時半。もしくは小田急線「渋沢駅」北口に12時。(会費千円)

   連絡 電話ファクス0463・83・2208 竹村まで。

六月十五日(火)誌上句会「花摘集」投句〆切

六月十九日(土)NPO法人其角座継承會会員総会

   会場/「常圓寺」三階会議室(新宿区西新宿7の12の5 

電話03・3371・1797)

   交通/JR線、地下鉄線、京王線、小田急線「新宿駅」西口より徒歩5分。

   会員総会 午後一時〜二時半(議題は正会員へ通知)

   連句の座 午後二時半〜五時半 歌仙一を巻きます。(会費千円)

七月三日(土)大住連

   会場/「雨岳文庫」上行寺隣り。伊勢原市上粕屋862の1(電0463・95・0002)

七月二十四日(土)其角生誕三百五十年記念イベント「俳文の未来シンポジウム」「俳文コンテス

   ト授賞式」「交流パーティ」終了五時。

   会場/「常圓寺」ホール(東京都新宿区西新宿7の12の5)

   当日受付/午後一時(其角生三百五十年記念集一冊進呈、会費六千五百円)

   予約申込み/六千円(七月十七日までに左記へお振込の上、領収書を受付にご提示下さい)

    【郵便振替】其角の会/00250-

4- 95332

 

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 【其角座】第十五号

非売品

   

 平成二十二年(二〇一〇年)六月一日発行

   発行 NPO法人其角座継承會

   編集主幹 二上貴夫

   発行所連絡先 〒257・0024 神奈川県秦野市名古木一一七の一

   【電話ファクス】0463(82)6315

   【電子メール】 kikaku@

ee.boo.jp

   【ホームページ】http://kikaku.boo.jp/

   【銀行口座】みずほ銀行秦野支店(店番号383)

     特定非営利活動法人其角座継承會/口座番号1974299

   【年会費納入口座】郵便振替「00160–

6–

357983 梅津正勝」

     他金融機関より「〇一九店(

019)

当座 0357983 梅津正勝」