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The Japanese Journal of Psychology

1999, Vol. 70, No. 2, 112-119 原 著

ネコ画像の再認記憶における非対称的混同効果

九州大学医療技術短期大学部 安藤満代2・ 九州大学 箱田裕司

Asymmetric confusability effect in recognition memory of cats pictures

Michiyo Ando (Department of Nursing, School of Health Sciences, Kyushu University, maidashi, Higashi-ku, Fukuoka 812-8582) and Yuji Hakoda (Department of Psychology, Graduate School of Human-Environment Studies, Kyushu University, Hakozaki, Higashi-ku, Fukuoka 812-8581)

Performance superiority of the addition of features in the stimuli over the deletion on recognition (asymmetric confusability effect) has been shown in previous studies (Pezdek, Maki, Valencia-Laver, Whetstone, Stoeckert, & Dougherty, 1988; Ando & Hakoda, 1998). We investigated the same effect by using a familiar living thing (cat) as a stimulus. Ten subjects were given a recognition task using pictures of cats with feature changes (additions, deletions, or no change). Results showed that the picture with deletions were easier to recognize than those with additions, which was opposite to the previous studies. Then, we examined the possibility that performance superiority of the deletions over the additons was mediated by the factor of impression. Another group of 18 subjects was asked to rate the impression scales consisting of a "typicality-reality factor", a "stability-balance factor", and a "grotesque-disgust factor". Results showed that there was a significant difference in impression ratings for each factor between the additions and the deletions, and that impression ratings predicted recognition performance well. It was concluded that performance superiority of the deletions over the additions was mediated by the factor of impression.

Key words: recognition, additions or deletions, impession, asymmetric confusability effect.

略 画 を用 いた再 認記 憶 にお い て,特 徴 の種 類 や特徴

変 化 の種類 に よつて再 認 への影 響度 が 異 な る ことが 示

さ れ て い る(Pezdek, Maki, Valencia-Laver,

Whetstone, Stoeckert, & Dougherty, 1988; Friedman,

1979;安 藤.箱 田, 1996).

Pezdek et al. (1988)は,さ ま ざ ま な シー ン(さ ま

ざ まな場 面)の 写 真 を線 画 に した簡 略 化 図 形(元 図

形)に 対 し,写 真 の意 味 の伝 達 にあ ま り関 係 ない,詳

細 な事物 その ものや詳 細 な事物 の模 様 に操 作 を加 えて

変化 図形 を作 成 した.元 図形 か ら事物 や事 物 の模様 を

除 いた 図形 を被験 者 が まず学 習 し,次 に除 い た もの を

も とに戻 した元 図 形 を再 認 す る場 合 を追加 変 化 の 検

出,ま た元 図形 を まず学 習 し,次 に元 図形 か ら詳細 な

事物 や事 物 の模様 を除 いた 図形 を再認 す る場合 を削除

変化 の検 出 として再認 実験 を行 つた結 果,追 加 変化 の

検 出率 が削 除変化 の検 出率 よ り高い こ とが明 らか にな

つた(非 対 称 的混 同効 果: asymmetric canfusability

effect).こ の実 験 で の追加 変 化 は,元 図 形 か ら詳 細 な

事物 や事 物 の模様 を除 いた 図形 を基準 と考 え,除 か れ

て いた事 物 や模様 を再 び加 えて元 図形 に戻 した場 合 の

変化 を さして お り,元 図形 に新 た な事 物 や模様 は加 え

られ てい なか つた.

一 方, Friedman (1979)は さ ま ざ ま な シ ー ン に お

いて,そ の シー ンに よ くあ りそ うな事 物,滅 多 にあ り

そ うに ない事物(そ の事 物 の存在 が 予想 しえな い)を

事 前 に被験 者 に評定 させ,そ の事 物 の存 在が 予想 で き

るものか,そ うで な いか を調べ,再 認 実 験 を行 った.

そ の結 果,あ るシー ン にお ける事物 が,そ の シー ンで

は予想 で きない事物 へ と変 化 す る場 合 は,予 想 で き る

事 物 へ と変 化 す る場 合 以上 に強 く再 認 に影響 す る,す

なわ ち予想 不 一致 性が 再認 へ影 響 す る こ とを示 した.

そ こ で,安 藤 ・箱 田(1998)は, Pezdek etal.

(1988)の “追 加 変化 が 削 除変 化 よ り強 く再 認 に影響

す る” とい う こ と と, Friedman (1979)の “予 想 不一致性 が 再認 に強 く影 響 す る” とい う こ との関係 を調

べ た.刺 激 として,先 行研 究 で は まだ使 用 され て いな

か った生 き物(チ ョウ)の 写真 を用 い,実 在 す るチ ョ

ウの形態 を壊 す こ とに よ り,チ ョウに対 す るイメ ー ジ

が広 範 に変化 す るよ うに操 作 して刺 激 を作 成 した.特

徴 変化 は, Pezdek et al. (1988)と は異 な り,同 一 の

元画 像 に特徴 の追 加 変化 もし くは削除 変化 を加 えたの

で,追 加 変化 で は新 た な特 徴 が加 え られ てい た.ま た

削 除変化 で は,あ る事 物 そ の もので はな く,事 物(チ

ョウ)を 構成 す る一部 分 を削除 した.再 認 実験 お よび

予想 と一 致 しない程 度(予 想 不一 致度)の 評定 を行 つ

た 結果,(1)追 加 変化 画 像 お よび 削除 変 化 画像 は元 画

1 本研究 は,平 成9年 度 の文部省 科学研究 費(基 盤研 究(B),

課題番号09410027,研 究代表者 箱田裕司)の 補助 を受 けた.

2 現所属:聖 心女子大学.

像 よ りも予 想不 一致 度 が高 い ことか ら,追 加 ・削除変

化 が予 想不 一致 性 に影響 す る こと,ま た 追加 変化 画像

の予想 不一 致度 は削除変 化 画像 の それ よ り高 い こ と,

(2)追 加変 化 は削除 変 化 よ り検 出率 が 高 い こ とか ら,

追 加変 化 が削 除変 化以 上 に再 認 に強 く影 響 す る とい う

非 対称 的混 同効 果 が み られ る こ と, (3)予 想 不 一 致 度

も再認 確信 度 も追加 変 化 が削除 変化 よ り高 い ことか ら

予想不 一 致度 と再 認確 信度 とい う両 変数 問 に密接 な関

係 が あ るの で はない か と考 え られ たが,予 想 不 一致 度

と再認 確 信度 との相 関係 数 は低 く,ま た因 果関係 もみ

られな い こ とか ら,両 変 数間 には密接 な 関係 がな い こ

と,し たが って追 加変 化優 位 の非 対称 的混 同効 果 は予

想不 一致 性 を介 して現 れ るので はな い こ とが 明 らか に

なった.

しか し,以 下 の よ うな問題 が残 された.我 々が頻 繁

に見た り,実 際 にかか わ った り,あ るいはペ ッ トとし

て接 した りす る こ とが あ るイ ヌや ネ コ とい った身 近 な

動物 に対 して は,自 分 とは明 らか に異 な る もの として

で はな く,自 分 と同 じ ような心 を もっ てい る類似 した

もの の よ うに感 じ,変 化 画像 に対 して あ る種 の 印象 を

もち,さ らにその 印象 が再認 に影響 す るの で はな いか

とい う問題 で あ る.も し,そ うで あれ ば印 象が再 認 に

影 響 し,そ の結果,チ ョウ画像 で み られた ような追加

変 化 が削 除変 化以 上 に再認 に影 響 す る とい っ た非対称

的混 同効果 が み られ な い可 能性 が 考 え られ た.

そ こで本 研 究 で は,実 験1に お いて 身近 な生 き物 の

ネ コの画像 を用 いた場 合 に も,チ ョウ画像 と同様 に追

加 変化 優 位 の非 対称 的混 同効 果 が み られ るの か を調

べ,も しみ られ な い とすれ ば,そ の原 因 として変化 画

像 に対 す る印象 が再認 に影響 してい る可能 性 が あ るの

か を実験2で 調 べ た.

実 験1

目 的

哺乳 類 で ある ネコの 画像 につ い て も,追 加 変化 優位

の非対 称 的混 同効 果が み られ るの か を,元 画 像 との類

似 度 が一定 で あ る追加 変化 画像 お よび 削除変 化 画像 を

用 いて調 べた.

方 法

被 験者  類似 度評 定 に14名 の大 学 生.再 認 実 験 に

10名 の大 学生.

刺 激  刺 激 と して,“ 世 界 猫 の カ タ ロ グ”(佐 藤,

1997)か らそれ ぞれ元 画像 を選 択 した(そ の種 類 は,

ア ビシニオ ン,ブ リテ ィ ッシ ュシ ョー トヘ ア,バ ミュ

ーズ,エ ジプ シ ャンマ ウ,ア メ リカ ンカール,エ キ ゾ

チ ック シ ョー トヘ ア,サ イ ベ リア ン,ジ ャパ ニ ーズ ボ

ブテ ール,コ ラ ッ ト,マ ンク ス,オ シキ ャ ッ ト,オ リ

エ ンタル ロ ングヘ ア,シ ャム,シ ンカ プー ラ,ス コテ

イ ッシ ュ フ ォール ド).刺 激 の作成 は コ ン ピ ュー タ ・

グ ラフ ィ ック ソ フ ト(Adoe Photoshop 3.10)を 用 い

た.ネ コの変 化 す る特徴 は目,耳,前 足,後 足,尾,

顔 の6種 類.追 加 変 化 にお いて 目,耳,前 足,後 足 は

三 つ に変化 させ 尾,顔 は二 つ に変 化 させ た.削 除変 化

に お い て は 目,耳,前 足,後 足 は一 つ に変 化 さ せ,

尾,顔 は部 分 的 も し くは全体 的 に 削 除 し た(Figure

1).同 一 の元 画像 に追加 変化 もし くは 削除変 化 を加 え

て変 化 画 像 を作 成 した(こ れ らの 方 法 は安 藤 ・箱 田

(1998)の チ ョウ画 像 と同様 で あ った).類 似 度が 広範

に な るよ うに特徴 を追加 す る位 置,削 除す る位置 に よ

り1種 類 の特 徴 につ いて それ ぞれ2個,計4個 を作成

した.し たが って, 1個 の元 画 像 に つい て6種 類 の 特

徴 を変 化 させ るの で, 1個 の 元 画 像 に つ き24個 を作

成 し, 10個 の元 画 像 か ら は計240個 を作 成 した.さ

らに元画 像 と変化 画像 との類似 度評 定 の ため に,元 画

像 と作成 して いた変化 画像 を並行 して配置 した240組

の 画像 を新 た に作 成 した.

Figure I. Examples of feature changed pictures.

手 続 き

類:似度評 定:240組 の半 分 の,各120組 の刺激 に対

して7人 ず つ の被 験 者が類 似 度評 定 に参加 した.被 験

者 はCRT画 面 に呈 示 され る刺 激 に対 して,各 組 の類

似 度 を “まっ た く異 な って い る” を1,“ ま った く同

じで あ る” を7と し, 7段 階 で 評定 す る よ うに求 め ら

れ た.そ の後,追 加 変 化 画像 と削 除 変 化 画 像 の 類 似

度,お よび各 特徴 間 の類:似度 が一 定 にな る よ うに類 似

度 が2点 か ら4点 の間 にあ る刺激 を選 択 した(元 画 像

と追加 変 化 画 像 との平 均 類似 度 と標 準 偏 差 は, 2.899

お よび0.247,元 画 像 と削除 変化 画 像 との そ れ らは,

2.902お よび0.385で あ り,こ れ ら二 つ の 平 均 類 似 度

の 問 に は有 意 差 はみ られ な か った).顔 の変 化 画 像 に

対 す る類 似度 は2点 以 下 の ものが 多 く,類 似 度 が一 定

範 囲 に は い らない た め,再 認 実験 に は使 用 しな か っ

た.し たが って,変 化 す る特徴 は5種 類 とな っ た.1

個 の元画 像 の ある一 つの特 徴 につい て,追 加 変 化,削

除変 化 を加 えて い る2個 の画像 を選 択 した.し たが っ

て10個 の元 画像 に対 し,追 加 変化 画像10個 と削除 変

化画 像10個 の計20個 の変 化 画像 を選択 し,再 認 テス

トに使 用 した.

再 認 実験:学 習 期 に は20個(再 認 期 に も呈 示 され

る元 画 像10個,お よび再 認期 には呈 示 され ない,元

画像5個 と変 化 画 像5個)を 呈 示 した.再 認 期 に は

40個(学 習期 に も呈 示 され た元 画像10個,類 似 度 評

定 で選択 した 変化 画 像20個,お よび学 習 期 に呈 示 し

なか った,元 画像5個 と変 化画 像5個)を 用 いた.刺

激 は1個 ず つ コ ン ピ ュ ー タ(Macintoshg Quadra

900)に よ っ て 制 御 さ れ たCRT(NANAO, FIEX

SCAN T660i)の 画 面上 に呈 示 され た.各 学習 刺 激 の

呈示 時 間 は5秒,呈 示 間 隔 は3秒 で あ った.CRT画

面上 の呈 示刺激 は13cm×17 cmで あ り,そ れ を被 験

者 は60cmの と ころ で観 察 した.し た が っ て刺 激 は

視覚13.×16.で あ った.実 験 は個 別 に行 わ れ,被 験

者 は呈 示 され る画像 を よ く見 て覚 え る ように教 示 され

た.学 習刺 激 が ラ ンダム な順 で1回 呈示 された直 後 に

再認 テス トが行 わ れ た.テ ス トで被 験者 は呈 示 され る

各刺激 に対 して それ を見 た こ とが あ るか ないか を “見

た”,“見 て ない” で答 え,そ の答 に対 す る確 信度 を,

1を “確信 が ない ”,5を “確信 が あ る” として5段 階

で評定 す る こ とが求 め られ た.

結 果

“見 た”判 断 にお い て,“見 た ”判 断 の確 信 が強 い5

は0に,“ 見 た ”判 断 の確信 が低 い1は4と して,“ 見

た”判 断 の確 信 度1-5を0-4に 変 換 した.ま た,“見 てな い”判 断 に お いて

,“ 見 て な い”確 信 が強 い5

は9に,“ 見 てな い”確 信 が低 い1は5と して,“ 見 て

ない” 判 断の確 信度1-5を5-9に 変換 した.こ の よ

うに して,“ 見 た” も し くは “見 て ない” に対 す る確

信度 を同 一 の直線 上 に尺度 化 した.テ ス ト刺 激 の うち

類 似 度評 定 で 選択 した20枚 の刺 激 にお い て,特 徴変

化 の種 類(追 加,削 除)お よ び 変 化 す る特 徴(目,

耳,前 足,後 足,尾)が ともに同 じ刺激 は2枚 ずつ含

まれ て いた ので,そ れ らの平均 再認 確信 度 を分析 単位

として,特 徴 変化 の種 類 ×変 化 す る特徴 につ い て の2

要因分 散分 析 を行 っ た.そ の結 果,特 徴 変化 の種 類 の

主効果 が有 意 で あ り(F(1,9)二8.65, ρ<.05),削 除変

化 が追 加変 化 よ り高か っ た.

さ らに,再 認 確信 度 と同様 に,特 徴変 化 の種類(追

加,削 除)と 変 化 す る特 徴(目,耳,前 足,後 足,

尾)が 同 じ2枚 の刺 激 の平 均正否 定 率(正 棄 却率)を

角変換 し,特 徴 変化 の種 類 ×変化 す る特 徴 につ いて2

要 因分 散分 析 を行 った.そ の結 果,特 徴 変化 の種類:の

主効果 が有 意 で あ り(F(1,9)=8.27, ρ<.05),削 除変

化 が追 加変 化 よ り高か った(平 均 正 否定 率 は,追 加 変

化,削 除変 化 それ ぞれ74%,89%で あ った).各 特 徴

間 には有意 差 は な く,交 互作 用 もみ られ なか った.

また,再 認期 の元 画像(旧 事例)と 変化 画像(新 事

例)と の弁 別 力 を調 べ るた め に,正 否 定 率 に つ い て

hitとfaire alarmの 値 か らElliot(1964)の 簡 易 表 を

用 い て61を 求 め た と ころ,追 加 変 化 画像 と削除 変 化

画 像 の平 均uvは そ れ ぞ れ1.13, 2.27で あ った.こ れ

らの 問 に 有 意 差 が み ら れ た こ とか ら(t(19)=2.30,

p<.01),削 除 変 化 の 方 が追 加 変 化 よ り,よ く識 別 さ

れて い る とい え る.

したが って実 験1か ら,哺 乳 類の ネ コの画像 を用 い

た場 合 にはチ ョウ とは反 対 の,削 除変 化 が追加 変化 以

上 に再 認 に強 く影響 す る とい う非 対称 的混 同効 果 が み

られ る こ とが明 らか にな った.

実 験2

ネ コ画像 で は削除 変化 優位 の非 対称 的混 同効 果 が み

られた.こ の原 因 の一 つ と して,我 々 に身 近 な哺乳 類

の変 化 画像 に対 して は,あ る種 の感情(印 象)を とも

ない,そ の印象 が再 認 に影響 してい るの で はない か と

考 え られ た.そ こで,“ 削除 変 化優 位 の 非対 称 的 混 同

効 果 は印 象 を介 し て現 れ て い る” とい う仮 説 を設 定

し,こ の仮説 を検 証 す るた め に,変 化 画像 に対 す る印

象 を印 象 評 定 値 に よっ て調 べ,“ 追 加 ・削 除 変 化 ”,“印象評 定値 ”

,お よび “再認 確信 度” とい う3変 数 の

関係 を調べ た.

目 的

“削 除変 化優 位 の 非対 称 的混 同効 果 は印 象 を介 して

現 れ てい る” とい う仮 説 を検証 した.

方 法

予 備調 査  印 象評 定用紙 作成 のた め予備 調査 をまず

行 った.再 認 実 験 に用 い た刺 激 の な か か ら7枚 を選

び,各 画像の印象について8名 の被験者が自由記述を

行った.そ のなかから類似した項目をまとめ,出 現頻

度の高い24項 目を選択した.

Table 1

Results of factor analysis about impression ratings

次 に再 認実 験 に用 い,変 化 してい る特徴 が異 なる追

加 ・削除 変化 画像 各3枚 を含 む計6枚 の各 画像 に対 し

て, 24項 目の 印象評 定 を27名 の大学 生 が行 った.被

験者 には,各 形容 詞 につい てSD法 形 式 の7段 階評 定

が求 め られ た.そ の後,そ れ らの評定 値 につ い て因子

分 析(主 因 子 法,バ リ マ ッ ク ス 回 転)を 行 っ た

(Table 1).固 有 値 が1.00以 上 の基 準 に よ って 因子 数

の決定 を行 った結 果, 3因 子 が 抽 出 され た.第1因 子

に は “正常 な”,“現 実 的 な”,“変 な” な どの項 目 を含

んで お り,“典 型 性 ・現 実性 因 子” と命 名 した.第2

因 子 に は “バ ラ ンスが よい”,“安定 な” な どの項 目 を

含 ん でお り “安 定 ・均衡 因 子” と命 名 した.さ らに第

3因 子 には “ドキ ッ とす る”,“怖 い” な どの項 目が 含

まれ て お り “怪 奇 ・嫌 悪 因子” と命 名 した.

三 つの 因子 に関係 す る項 目 を,因 子 負荷 量 の高 い も

のか ら各三 つ を選択 し,合 計9項 目か らな る印象評 定

用紙 を作成 した.9項 目 は,第1因 子 に関係 す る項 目

が,“ 正 常 な一異 常 な”,“現 実 的 な 一現 実 的 で な い”,“変 な一変 で ない”

,第2因 子 に関 係 す る項 目が “安 定

な一不安 定 な”,“バ ラ ンスが よい一バ ラ ン スが 悪 い”,“便利 そ うな 一不便 そ うな”,第3因 子 に関 係 す る項 目

が “ドキ ッ とす る一ドキ ッ とし な い”,“怖 い 一怖 くな

い”,“不 気味 そ うな一不気 味 そ うでな い” で あった.

本調 査

被 験者  男女 大学 生18名.

手続 き  刺激 は再 認実 験 に使用 した画像 をカー ド状

に した もの を用 い た.カ ー ドの大 き さは縦30cm,横

21cmで あ った.実 験 は1人 ず つ個別 に行 わ れ,被 験

者 は再認 実 験 で用 い た20枚 の変 化 画像 につ い て の印

象 評定 を,各 画 像 につ い て行 った.

Table 2

Mean impression ratings for each feature in each factor

Table 3

Results of multiple regression analysis of impression ratings concerning

each factor on recognition ratings

Table 4

Mean impression ratings for the additions and the deletions

in each factor

結 果

各 刺 激 に つい て, 9項 目の うち各 因子 に 関係 す る3

項 目の合 計 点 を各 因 子 に関 す る印象 得点 と した.さ ら

に, 20枚 の 刺 激 に は変 化 す る特 徴(目,耳,前 足,

後足,尾)お よび特徴 変 化 の種 類(追 加,削 除)が と

もに同 じ刺激 が2枚 ず つ含 まれ て い るの で,そ れ ら2

枚 の刺激 に対 す る平均 印象評 定値 を各 因 子 ご とに算 出

し(Table 2),以 下 の分 析単 位 と した.

平 均再 認 確 信 度 を基 準 変量 に,“ 典 型性 ・現 実性 因

子”,“安 定 ・均衡 因 子”,“怪 奇 ・嫌 悪因 子” に関係 す

る平 均 印象評 定値 を説 明 変数 として重 回帰分 析 を行 っ

た.そ の結果 をTable 3に 示 す.標 準 回帰係 数 に基 づ

くと,再 認確 信度 に影 響 す る因子 は “典 型性 ・現実 性

因子 ” と “怪 奇 ・嫌悪 因子 ” の二 つ であ る こ とがわ か

った.重 相 関係 数 は.85で あ り,説 明 力 は高 く,印 象

評定 値 は再認 確信 度 を予測 す る と考 え られ る3.

次 に,各 因子 ご とに,印 象評 定値 は,追 加 変化,削

除変 化 の どち らの 方が 高 い か を調 べた. Table 4に 平

均 印象 評定 値 を示 す(“ 典型 性 ・現 実 性 因 子” に関 す

る印象評 定値 は,高 い ほ ど “非 典型 的,非 現 実 的” で

あ る こ とを示 し,“安 定 ・均 衡 因子 ” に関 して は,値

3 田 中 ・垂水 ・脇 本(1983)に 従 い, VIF≧10で 多 重共 線 性

が問題 にな る とい う基 準 を採用 し,こ こでは問題 に はな らな い

として分析 を行 った.

が 高 いほ ど “不 安定,不 均衡 ” で あ る こ とを示 し,さ

らに “怪 奇 ・嫌 悪 因子” に関 して は,値 が高 いほ ど“

怪 奇 で あ る,嫌 悪性 が 高 い” こ と を示 す).各 因 子 に

おい て,平 均印 象評 定値 を用 いて特 徴変 化 の種類(追

加,削 除)× 変化 す る特 徴(目,耳,前 足,後 足,尾)

につ いて の2要 因分 散分 析 を行 った.

第1因 子 に 関 して は,特 徴 変 化 の種 類 の 主 効 果

(F(1,17)=51.51, ρ<,001),お よび変 化 す る特徴 の主

効 果(F(4,68)=19.36, p<.001)が 有 意 で あ り,追 加

変 化 画 像 が 削 除 変 化 画 像 以 上 に “非 現 実 的,非 典 型

的” と評定 され,ま た 目の変化 画像 が 他 の どの特徴 の

変 化画 像 よ りも “非現 実 的,非 典型 的 ” と評定 され て

いた.

第2因 子 に 関 し て は,特 徴 変 化 の 種 類 の 主 効 果

(F(1,17)=31.84, ρ<.001),特 徴 の 主 効 果(F(4,

68)二11.38, p<.001),お よび 特 徴 変 化 の 種 類 と特 徴

との問 の交 互 作 用が 有 意 で あ り(F(4,68)=8.17, ρ<

.001),削 除 変 化 画 像 が追 加 変 化 画 像 よ り “安 定 性 が

悪 い,均 衡 性 が悪 い ” と評 定 されて いた.下 位 検 定 の

結 果(Ryanの 方 法),尾 の変 化 画像 が 他 の特 徴 変 化

画像 よ りも “安定 性 が よい,均 衡 性 が よい” と評 定 さ

れ,そ の他 の特徴 間 で は差 はみ られ なか った.さ らに

耳以 外 の各特 徴 にお い て削除 変化 画像 が 追加 変化 画像

以上 に “安定 性 が悪 い,均 衡 性 が悪 い” と評 定 され て

い た.

第3因 子 に関 し て も,特 徴 変 化 の 種 類 の 主 効 果

(F(1,17)=12.80, ρ<.001),特 徴 の 主 効 果(F(4,

68)=26.06, p<.001),お よび特 徴 変 化 の種 類 と特 徴

との 間 の交互 作 用 が有 意 で あ り(F(4,68)=5.89, p<

.001),追 加 変 化 画 像 が 削 除 変 化 画像 よ り も “よ り怪

奇 で あ る,よ り嫌悪 性 が強 い” と評 定 され て いた.下

位 検 定 の結 果(Ryanの 方 法),目 の変 化 画 像 が 他 の

どの特 徴 の変化 画像 よ り も “よ り怪 奇 で あ る,よ り嫌

悪性 が 強 い” と評定 され てい た.さ らに耳,尾,後 足

に お いて 追加 変 化 が 削除 変 化 以 上 に “よ り怪 奇 で あ

る,よ り嫌 悪性 が 強 い” と評 定 され てい た.

この分析 か ら,削 除 変化 画像 は追 加 変化 画像 よ り,“典 型 性 ・現 実 性” が 高 く,“ 安 定 性 ・均 衡 性 ” が 低

い,さ らに “怪 奇性 ・嫌悪 性 ”が低 い と印象評 定 され

てい るこ とが 明 らか に なった.し たが って,各 因 子 に

お け る印 象評 定値 におい て追加 変化 画 像 と削 除変 化画

像 との問 には有意 差 が み られ る ことか ら,追 加 ・削 除

変化 は 印象 に影 響 す る こ とが示 され た.ま た 特 徴 で

は,目 の変化 画像 が “非 現実 的 ・非典 型 的” で あ り,“よ り怪 奇 で あ る

,よ り嫌 悪性 が 強 い” と評 定 され,

尾 の変化 画像 が最 も “安 定性 ・均 衡性 ” が高 い と評定

されて い る こ とが明 らか にな った.

考 察

以 上 の結 果 を も とに,“ 削 除変 化 が追 加 変 化 以 上 に

再 認 に強 く影響 す る とい う非対称 的 混 同効 果 は印象 を

介 して現 れて い る” とい う仮 説 につい て検 討 す る.

各 因子 にお ける印象評 定値 に追加 また は削除変 化 に

差 が み られ る こ とか ら,追 加 ・削 除変化 は印象 に影響

し,ま た 印象評 定 値 は,再 認確 信度 と密 接 な関係 が み

られ た ことか ら,印 象 は再 認 に影響 して いた.そ して

この とき,削 除変 化優 位 の非対 称 的混 同効果 が み られ

て いた.こ の こ とか ら,“ 追加 ・削除変 化” が “印象 ”

に影 響 し,さ ら に “印 象 ”が “再 認 ” に 影 響 した 結

果,削 除 変化優 位 の非 対称 的混 同効 果 が み られ た こと

(Figure 2),す なわ ち削 除変化 優位 の非対 称 的混 同効

果 は印象 を介 して現 れ てい る と考 え られ る.そ れ で は

なぜ,こ の ような関係 が み られた の で あろ うか.以 下

に この こ とにつ い て検 討 す る.

削除 変 化 画像 は “典 型 性 ・現 実 性 ”が 高 く,“怪 奇

性 ・嫌悪 性 ”が低 い と印象評 定 され,そ して再 認確 信

度 は高 か った.こ の こ とは次 の よ うに解釈 で きる.

我 々 は 日常,病 気 や事 故 な どで身体 の一 部 が傷 害 さ

れ た ネ コを現実 に見 る ことは あるが,足 が3本,目 が

三 つ とい った身体 の一部 が追 加 され た ネ コを見 る こ と

は少 ない.た とえ見 た として もアニ メ ー シ ョンな ど非

現 実 的 な世 界 で の こ とが 多 い.ま た,ネ コだ け で な

く,他 の生 き物 や,我 々 につ いて も身体 の一 部が 損失

して い る もの を見 る方 が追加 され でい る もの以上 に多

く,現 実 的で あ る.し たが っ て,削 除変 化画 像 は印象

評 定 にお いて “現 実性 ・典 型性 ”が 高 い と評 定 され た

と考 え られ る.

さ らに,我 々 に とって は非典 型 的な もの よ り典 型 的

な もの の方が容 易 に学 習 しや すい こ とか ら(石 毛 ・箱

田, 1984),追 加 変化 画 像 よ りよ り典 型 的 で あ った 削

除変化 画 像が 学習 しや す く,こ の 因子 に関 す る削除 変

化 画像 の印象評 定 値 と再認 確信 度 との 間 に密接 な関 係

が み られた ので はな いか と考 えられ る.

Figure 2. The relation of three variables.

また,さ きに述 べ た よ うに,あ る身体 の一部 が損 失

した生 き物 を見 るこ とはあ る こ とか ら,そ れ ほ ど削除

変化 画像 に怪 奇 な感 じは しない と考 え られ る.ま た,

削 除変 化 の場 合 は,"事 故 や病 気 で損 失 した ので は な

い か"と 原 因 を推 論 す る こ とは容 易 だが,追 加 変化 の

場合 はそれ を見 る頻 度 も少 ない こ とか ら追 加変 化 の原

因 は推論 しに く く,不 可 解 に感 じるで あろ う.さ らに

アイザ ー ド(福 井, 1991)に 従 え ば,そ の不 可解 さが

不快 に感 じ,有 害 な感 じを高 め,嫌 悪 感 を高 め た と考

え られ る.し た が つ て,“ 怪 奇 ・嫌 悪 因 子 ” に関 す る

項 目の 印象評 定値 は,削 除変化 画 像 の方が 追加 変化 画

像 よ り低 くな つた と考 え られ る.

そ して,“ 怪 奇 性 ・嫌 悪性 ” が 高 い もの,す なわ ち

不快 な もの は忘却 されや す く,そ うでな い ものが記 憶

に残 り,削 除変化 画像 の “怪 奇 ・嫌悪 因子 ” に関 す る

印 象評 定値 と再認 確 信度 との間 に密接 な関係 が み られ

た の で はな いか と考 え られ る.こ の結 果 は,“ 快 で あ

る” と評 定 され た 出来事 は “不快 ” また は “どち らで

もな い” と評 定 された 出来事 よ り も再 生 率 は高 くな る

とい う研究(Wagenaar, 1986)と 一 致 して い る.

以 上 の こ とか ら,削 除 変 化 画 像 は “典 型 性 ・現 実

性 ” が高 く,“怪 奇性 ・嫌 悪 性 ” が低 い と印 象評 定 さ

れ,さ らに再認 確信 度 は高 くな る.一 方,追 加変 化 画

像 は"典 型 性 ・現 実 性” が 低 く,“怪 奇 性 ・嫌 悪 性 ”

が高 い と印象評 定 され,さ らに再認 確信 度 は低 くなつ

た ので はな いか と考 え られ る.

これ らの理 由 か ら “追加 ・削除変 化 ” は “印 象” に

影響 し,さ らに “印象 ” が “再 認 ” に影響 した 結果,

削除 変化優 位 の非 対称 的混 同効 果 が み られた ので はな

い か と考 え られ る(た だ し,追 加 ・削 除変 化 の再認 に

対 す る直 接 的ル ー トも同 時 に存 在 す る こ とは否 定 で き

ない).

それ で はなぜ,チ ョウ画像(安 藤 ・箱 田, 1998)で

は追 加変 化優 位 の非対 称 的混 同効 果 がみ られ,ネ コ画

像 で は削除変 化優 位 の非 対称 的混 同効 果 が み られ る と

い う違 いが 生 じた ので あ ろ うか.そ の原 因 の一 つ と し

て,チ ョウ画像 で は,予 想不 一致 度 と再認 確 信度 との

間 には密接 な関 係が み られ なか つた が,ネ コ画像 で は

印象評 定値 と再 認確 信度 との間 に密 接 な関係 が み られ

た とい う違 い が考 え られ る.チ ョウ画像 で は実験 目的

上,ネ コ画 像 と同様 な手 続 きに基づ い て印象 を評 定 し

て いなか つた が,チ ョウ画 像 の予想 不一 致度 は,複 数

考 え られ る印 象 の うち,い わ ば “典 型性 ” を測定 した

もの と考 えられ る.し たが つて,予 想不 一致 度 と再認

確 信度 に は密 接 な関係 が み られ なか つた こ とか ら,チ

ョウ画像 で は “典 型性 ”評 定値 と再 認 との問 に は密 接

な関 係 はみ られ なか つた こ とに な る.一 方,ネ コ画 像

の重 回帰 分析 におい て,チ ョウ画像 の “典 型性 ”評 定

値 と対応 す る と考 え られ る “典 型性 ・現実 性” に関す

る印象 評定 値 と再 認 確 信度 との偏 相 関係 数 は-.76で

あつ た こ とか ら,“ 典 型性 ・現 実性 ” に関 す る印 象 評

定値 と再 認確 信度 との間 には密接 な 関係が ある と考 え

られ る.こ の違 いが,非 対 称 的混 同効 果 の現 れ方 の違

いに影響 した原 因 の一 つで はな いか と考 え られ る.

それ で はなぜ,チ ョウ画像 で は “典 型性 ”評 定値 と

再 認確信 度 との間 に密接 な関係 が み られ ず,ネ コ画像

で は “典 型性 ・現実 性” に関す る印 象評 定値 と再 認確

信 度 との 間 に密 接 な関係 が み られた ので あ ろ うか.そ

の理 由の一 つ として以下 の ような ことが 考 え られ る.

チ ョウ画 像 の予想 不一 致度 で は,目 を含 む頭 はそ の

他 の特 徴 と同程 度 に影響 して いた.し か し,ネ コ画像

の “典 型性 ・現 実性 ” 因子 お よび “怪 奇性 ・嫌悪 性”

因子 に関 す る印象評 定値 で は,目 が 他 の どの特徴 よ り

も強 く影響 して い る ことか ら,ネ コで は 目が 印象 に強

く影響 して い る ことが 示唆 され た.そ して,こ の 目 と

い う特 徴 が 以 下 に示 す よ う に,チ ョウ画 像 の “典 型

性 ”評 定値 と再 認 確信 度 に は関係 が み られ ず,ネ コ画

像 の “典 型性 ・現 実性 ” の印象 評定 値 と再認 確信 度 に

は関係 が み られ た 原 因 の一 つで はな い か と考 え られ

る.

人 が あ る対 象 の心 を読 むた め に は, (1)対 象 が それ

自身 で,意 志 を もっ て行 動 して い る と思 え る こ と,

(2)対 象が 何 を見 て い るか,す な わ ち視線 が理 解 で き

る こ と, (3)自 己,他 者,第 三 者(物 や 人)の 間 で,

指 さし によ る注意 の喚起 や 同一 の対象 に対 して同 時 に

視 線 を共 有 で き る こ と, (4)他 者 の 目 的 ・意 図 ・知

識 ・信 念 な どの内容 を理 解 す る機 序,す なわ ち “心 の

理 論” を我 々が もつ こ と(Baron-Cohen, 1995),な ど

が満 た され る必 要 が あ る.特 に(1)-(3)に つ い ては,

ネ コで は満 た され るが,チ ョウで は,チ ョウが意 志 を

もつてい る と我 々 が感 じた り,ど こを見 て い るか を理

解 す るこ とは困難 で あ り,こ れ らの条件 は満 た され な

い.し た が つて,チ ョウに対 して は心 を読 むた めの条

件 が満 た され ず,相 手 に感 情 が あ る とは考 え られ な

い.そ のた めチ ョウ画 像 に対 して は,ネ コ画 像 で とも

な った よ うな感 情 を ともなわ ない と考 え られ る.

以 上 の こ とか ら,ネ コに は人 が心 を読 むた めの条件

が満 た され るが,チ ョウで はそれ が満 た され ない こと

か ら,ネ コ画 像 で は “典型 性 ・現 実性 ” の印象評 定値

と再 認確 信度 との間 に は密接 な関係 が み られ,チ ョウ

画像 で は “典 型性 ”評 定値 と再 認確 信 度 との間 に密 接

な関係 が み られ なか つた の で はないか と考 え られ る.

この違 い に よ り,ネ コ画 像 で は削除変 化優 位 の非対 称

的混 同効 果 が み られ,チ ョウ画像 で は追加 変化 優位 の

非対 称 的混 同効 果が み られ たの で はない か と考 え られ

た.

本実 験 か ら,ネ コ画像 で は印 象 を媒 介 とし,削 除変

化 優位 の非 対称 的混 同効 果 が み られ る ことが 明 らか に

な ったが,以 下 の ような問題 が残 された.

Pezdek et al. (1988)に お け る追加 変 化 は も との略

画か ら削 除 された事 物 を もとに戻 す 変化 で あ り,い わ

ば戻 しの変化 とい える.し か し,ネ コ画 像 の追加 変化

は,チ ョウ画像(安 藤 ・箱 田, 1998)と 同様 に,元 画

像 に新 た に特 徴 を加 え る変 化 で あ り,い わ ば非戻 しの

変化 とい える.そ こで,ネ コ画 像 を刺激 に用 いれ ば,

Pezdek etal. (1988)の よう に戻 しの追 加 変 化 を行 つ

た場 合 に も,削 除変化 優位 の非 対称 的混 同効 果 が み ら

れ るの か につい て調 べ る必 要 が あ る.

さ らにチ ョウ画像 お よび ネ コ画像 にお いて追加 また

は削除 され た特 徴 は,一 つ の対 象 を構成 す る重 要 な部

分 で あ った が, Pezdek et al. (1998)に お い て追 加 ま

た は削 除 され た もの は,あ るシー ンにお け る詳細 な事

物 や事物 の模様 な どで あつた.そ こで,削 除変 化優 位

の非対称 的 混 同効 果 は,ネ コ画像 の よ うに重要 な部 分

だ けで はな く,意 味 の伝達 にあ ま り関係 ない詳細 な特

徴 や,あ る事物 その もの の変化 に よつて も生 じうるの

か を,さ まざ まな条件 を設 定 す る こ とによ り調 べ る必

要 が あ る.

今後,さ らに以 上 の点 を検討 す る必 要が あ る と考 え

られ る.

引 用 文 献

安 藤満 代 ・箱 田裕 司  1996自 然概 念 の カテ ゴ リー化

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る非 対称 的 混 同効 果 心理 学研 究, 69, 47-52.

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Swets (Ed.), Signal detection and recognition by human observers. Contemporary readings. New

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石 毛 明子 ・箱 田裕 司  1984カ テ ゴ リー群 化 にお ける

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Pezdek, K., Maki, R. H., Valencia-Laver, D., Whetstone, T., Stoeckert, J., & Dougherty, T. 1988 Picture memory: Recognizing added and deleted

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