エネ研日本モデルによる分析結果 - ieej · 8. 2050年のエネルギー需給の姿 ....

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エネ研日本モデルによる分析結果 1. ケース展開の考え方 2. 経済社会活動の見通し 3. 最大導入ケースにおけるエネルギー技術の想定 4. ▲13%ケースにおけるエネルギー技術の想定 5. 試算結果 6. 感度分析 7. ▲23%ケースの評価 8. 2050 年のエネルギー需給の姿 9. 結論 (補論) エネ研『エネルギー需給モデル』の概要 2009 年 3 月 27 日 日本エネルギー経済研究所

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Page 1: エネ研日本モデルによる分析結果 - IEEJ · 8. 2050年のエネルギー需給の姿 . 9. 結論 (補論) エネ研『エネルギー需給モデル』の概要

エネ研日本モデルによる分析結果

1. ケース展開の考え方

2. 経済社会活動の見通し

3. 大導入ケースにおけるエネルギー技術の想定

4. ▲13%ケースにおけるエネルギー技術の想定

5. 試算結果

6. 感度分析

7. ▲23%ケースの評価

8. 2050 年のエネルギー需給の姿

9. 結論

(補論) エネ研『エネルギー需給モデル』の概要

2009 年 3 月 27 日

日本エネルギー経済研究所

Page 2: エネ研日本モデルによる分析結果 - IEEJ · 8. 2050年のエネルギー需給の姿 . 9. 結論 (補論) エネ研『エネルギー需給モデル』の概要

1. ケース展開の考え方

エネルギー需給分析においては経済活動、価格メカニズムに基づく分析に加えて具体的なエネ

ルギー技術の導入分析が不可欠であり、これを前提とした分析により、実現可能性の検討が可能

となる。エネ研モデルでは、対策技術の普及程度を前提として削減量を導出している。専門家の

知見も踏まえて、エネルギー分野に可能な限り詳細に積み上げており、実態に即したシナリオ設

定が可能である。

1.1 ケースの種類

本試算で行なう技術導入におけるケースは以下の通りである。なお、本分析ではエネルギー起

源 CO2を対象とするものである。

A)現状固定ケース

現状を基準とし、今後新たなエネルギー技術が導入されず、機器の効率が一定のまま推移した場

合を想定。耐用年数に応じて古い機器が現状標準レベルの機器に入れ替わる効果のみを反映した

ケース。

B)努力継続ケース

これまで効率改善に取り組んできた機器・設備について、既存技術の延長線上で今後とも継続し

て効率改善の努力を行い、耐用年数を迎える機器と順次入れ替えていく効果を反映したケース。

※世界モデル分析の「諸外国が発表している中期目標と限界削減費用が同等となるケース」に相当

C) 大導入ケース

実用段階にある 先端の技術で、高コストではあるが、省エネ性能の格段の向上が見込まれる機

器・設備を 大限普及させることにより劇的な改善を実現するケース。

※世界モデル分析の「先進国全体で GHG 削減率が 90 年比▲25%であって、先進各国の限界削減費用が均等にな

るケース」に相当

D)▲13%ケース

大導入ケースを超える更なる技術普及を想定し、既存設備の買換えを促す大規模なインセンテ

ィブ導入や規制等の強力な措置を考慮したケース。

※世界モデル分析の「先進国全体で GHG 削減率が 90 年比▲25%であって、先進各国の GDP 当たりの対策費用が

均等になるケース」に相当

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技術導入とそれに必要な政策の考え方

技術導入の考え方 政策の考え方

A)現状固定ケース 現状を基準とし、今後新たなエネル

ギー技術が導入されず、機器の効率

が一定のまま推移した場合を想定。

耐用年数に応じて古い機器が現状標

準レベルの機器に入れ替わる効果の

みを反映したケース。

-

B)努力継続ケース

これまで効率改善に取り組んできた

機器・設備について、既存技術の延

長線上で今後とも継続して効率改善

の努力を行い、耐用年数を迎える機

器と順次入れ替えていく効果を反映

したケース。

現行の政策を維持

C) 大導入ケース

実用段階にある 先端の技術で、高

コストではあるが、省エネ性能の格

段の向上が見込まれる機器・設備を

大限普及させることにより劇的な

改善を実現するケース。

大限の「誘導的規制措置」を前提

としており、国民や企業に対して更

新を法的に規制する一歩手前のぎり

ぎりの政策を講じる。

D)13%削減ケース

大導入で想定した各種技術につい

て、規制措置などにより物理的ポテ

ンシャルまで導入を進める

誘導的規制措置だけではなく、法律

による強制、義務化、大幅な補助支

援等、新たな強力な「政策手法の導

入」が必要。

1.2 「 大導入ケース」における政策の考え方

設備更新時に 先端の技術を 大限導入することを想定しているが、その際、民間努力だけで

は不十分であり、省エネ基準、補助金、減免税などの「誘導的規制措置」が必要と考えている。

大限の「誘導的規制措置」を前提に、国民や企業に対して更新を法的に規制する一歩手前のぎ

りぎりの政策を講じる。本ケースを実現するためには、国民努力や政策的協力が必要である。

1.3 「▲13%ケース」における政策の考え方

90 年比▲13%の検討には、 大導入ケースにおいて想定した「誘導的規制措置」だけではなく、

新たに強力な「政策手法の導入」が必要である。以下に挙げる追加的な政策手法はあくまでも仮

にモデル計算をすることを目的として仮置きしたものである。すなわち、これらの手法を実際に

導入するためには、広く「国民の合意」と「政治的・政策的」決定がなければ、絵に描いた餅で

あり、「実現可能性」の保証はない。

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ここでは、新たな手法として、とりあえず、以下の手法を想定している。

(1) 「カーボン・プライシング(キャップ&トレード、炭素税、フィードイン・タリフなど)」

(2) 「規制措置」

(3) 財源の裏づけのある「支援措置」

欧米のエネルギー有識者の多くは、意欲的な削減目標の実施には、これ以外にもあらゆる手法

を同時活用する必要があるとの意見が支配的である。その場合の配慮事項としては、以下の点が

考えられる。

(a) 「低炭素社会」の実現に向けての新しい「社会的価値観」を定着させるための「広報」、「教

育」等の徹底

(b) 今後の中長期経済発展の柱として、低炭素技術産業を位置づけ、そのための「技術開発」、

「普及促進」等の政策の継続的推進

(c) 「低所得者」等への過重負担回避のための支援措置

1.3.1 「CO2に価格をつける措置」

CO2 に価格をつけることは、外部不経済要因である CO2 排出を価格メカニズムに取込む方法と

して、有意義であるが、そのための具体的手法については、世界的に多様な論議がある。

具体的手法の選択をめぐる論点例は以下の通り。

1)炭素税

肯定的評価:一次エネルギー供給者にとって負担が公平であり、定量評価ができるので経営対

応容易

否定的評価:温暖化対策の目標との定量的相関性が明確でない。(①下流等への波及状況で、CO2

の現実的削減効果が異なる。②現実に消費者に転嫁される流れになっても、光熱

水道費は食・住・衣の支出より日常生活必需品性が高いため、エネルギー価格が

異常高騰しない限り、価格引き上げ=消費減=CO2 削減に繋がる効果は低い。③

課税水準にはモデル計算が用いられるが、前述の要因等を取込むデータがほとん

どなく、パラメータが恣意的になりやすい等の問題点。)

2)Cap & Trade

肯定的評価:価格メカニズムの効用をより明確にとり込める。

否定的評価:①キャップ配分の公平性確保が難しい。(配分指標の選択のとり方/オークション

部分の設定方法等)②トレードの段階で金融商品化の恐れがある。③CO2 価格が

大きく変動すると機器、技術、システム提供サイドの研究開発が緩慢になるので

セイフティ・バルブ等の考案が必要となる。)

3)フィードイン・タリフ

肯定的評価:安定的な新エネ導入を促進する。

否定的評価: 終負担が低所得者層により深刻な影響を与える。

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1.3.2 「規制措置」の導入 規制の対象は、需要家が一般消費者である分野(個人的判断を 小化し、広く、決定的効果が

あると見込まれる分野が対象)。合わせて必要に応じての支援措置が必要。

具体的には、例えば

A) 住宅・建築物、公共施設:「省エネ基準の強化」、「太陽光パネルの導入義務化」等

B) 自動車関連:国内販売を順次、ハイブリッド、EV 等に限定するような規制措置の導入

第 2 世代バイオ燃料の導入義務化

C) 電気・電子機器:照明機器、家電製品、OA 機器等の省エネ基準の大幅な強化

1.3.3 「更なる技術革新」実現に向けての「支援強化措置」 炭素税賦課の効果は、その税収に焦点をあてて、集中的に「低炭素化」支援措置に投入するこ

とで大きな効果が挙るとの考え方が、エネルギー有識者の間では一般的である。

近の動向を踏まえ、特に焦点のあたる革新的項目をあげると次の通りである。

① 原子力稼動率の向上。(80%→90%で CO2▲1.8%)

② 高効率天然ガス火力発電の導入促進。(熱効率 48%→54%(HHV)の向上で CO2▲0.8%)

③ 高効率石炭火力発電の導入促進。(熱効率 41%→46%(HHV)へ向上で CO2▲0.5%)

④ 高効率ヒート・ポンプ普及促進支援。(全住宅等に 100%導入で CO2▲1.6%)

⑤ その他:上記で示した規制措置、及び太陽光発電へのフィードイン・タリフ導入について

の需要家支援等にも炭素税収を活用。

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2. 経済社会活動の見通し 2. 経済社会活動の見通し

エネルギー需給を見通すための前提となる、エネルギー価格、経済社会活動、各種活動水準等

を以下の通り想定した。

エネルギー需給を見通すための前提となる、エネルギー価格、経済社会活動、各種活動水準等

を以下の通り想定した。

2.1 エネルギー価格の見通し 2.1 エネルギー価格の見通し

世界の石油需要が堅調に増大する一方で、供給サイドでは既存油田の減退率上昇、投資停滞等

による供給制約が徐々に顕在化し、原油価格が中長期的に上昇すると想定。LNG 価格は、原油価

格との相対価格で熱量等価に向かう。石炭価格も緩やかに上昇すると想定した。

世界の石油需要が堅調に増大する一方で、供給サイドでは既存油田の減退率上昇、投資停滞等

による供給制約が徐々に顕在化し、原油価格が中長期的に上昇すると想定。LNG 価格は、原油価

格との相対価格で熱量等価に向かう。石炭価格も緩やかに上昇すると想定した。

日本輸入CIF価格(2007 年実質価格) 日本輸入CIF価格(2007 年実質価格)

2007 年度 2007 年度 2020 年度 2020 年度

原油価格($/bbl) 78 90

LNG価格($/t) 443 844

一般炭価格($/t) 76 102

2.2 人口・労働力人口の見通し

人口は、国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」(2006 年 12 月)の出生中位

(死亡中位)推計をもとに、2004 年をピークに下記のように減少すると想定した。労働力人口は、

雇用政策研究会「人口減少下における雇用・労働政策の課題」(2005 年 7 月)(独立行政法人労働

政策研究・研修機構推計)の労働市場への参加が進まないケースを参考に想定した。

実績 今回の想定

2005 2010 2015 2020

人口(万人) 12,777 12,725 12,550 12,281

労働力人口(万人) 6,651 6,651 6,585 6,467

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

1980 1990 2000 2010 2020

万人

15~64歳

15歳未満

65歳以上

12,361 12,777 12,281

12.1%21.5%

29.3%

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020

万人

生産人口(15~64歳)

労働力人口

総人口

6,669

12,777 12,281

6,467

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2.3 経済成長率の見通し

経済成長率は、事務局が提示した数値を採用した。GDP の内訳は以下の通り想定した。

実績 今回の想定

1980-1990 1990-2000 2000-2005 2005-2010 2010-2020

実質GDP成長率(%) 4.0 1.3 1.2 0.7 1.6

民間消費(伸率%) 3.7 1.4 1.0 0.4 1.2

民間投資(伸率%) 8.0 -0.1 2.4 0.0 3.5

政府消費(伸率%) 3.5 3.3 2.0 1.1 1.1

公共投資(伸率%) 0.5 1.9 -8.1 -4.1 -0.8

輸出(伸率%) 4.6 4.3 6.7 3.6 3.0

輸入(伸率%) 6.6 3.7 3.8 0.4 2.8

2.4 各種経済活動指標の見通し

以上の人口構造や GDP コンポネント等から、生産活動、サービス活動、輸送活動の見通しを以

下のように推計した。

2.4.1 産業部門 主要産業については、業界ヒアリングに基づく数値を参考に想定。

実績 今回の想定

1990 2000 2005 2010 2020

粗鋼生産(万トン) 11,171 10,690 11,272 11,907 11,966

セメント生産(万トン) 8,685 8,237 7,393 6,861 6,699

エチレン生産(万トン) 597 757 755 716 706

紙板紙生産(万トン) 2,854 3,174 3,107 3,128 3,244

生産指数(CY05=100) 100 99 101 104 118

機械(CY05=100) 84 91 102 111 136

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2.4.2 民生部門 世帯数は、国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」(2008 年 3

月推計)を参考に想定。業務用床面積は、経済の成熟化、高齢化などにより消費のサービス化が

進み、オフィスビル、小売店、病院などを中心に増加していくが、頭打ち。

実績 今回の想定

1990 2000 2005 2010 2020

世帯数(万世帯) 4,116 4,742 5,038 5,286 5,357

業務床面積(百万 m2) 1,285 1,656 1,759 1,842 1,931

2.4.3 運輸部門 旅客輸送(人キロ)、貨物輸送(トンキロ)は、国土交通省見通しを参考に想定。

実績 今回の想定

1990 2000 2005 2010 2020

旅客輸送(億人キロ) 11,313 12,969 13,042 13,111 13,066

貨物輸送(億トンキロ) 5,468 5,780 5,704 5,984 6,341

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3. 大導入ケースにおけるエネルギー技術の想定(精査中)

「エネルギー技術戦略」を参照にして、実用段階にある 先端の技術で、高コストではあるが、

省エネ性能の格段の向上が見込まれる機器・設備を 大限普及させることを想定している。

3.1 産業部門(転換部門を含む)

3.1.1 鉄鋼業 ①SCOPE21

・コークス製造プロセスにおいて、石炭事前処理工程等を導入することによりコークス製造に係

るエネルギー消費量等を削減する。

2020 年

省エネ量・代エネ量(万 KL) 31

追加投資額(億円) 3,300

普及度合い コークス炉の設備更新時にすべて導入。2020 年までに 6 基

導入、2030 年までに 15 基導入。

②自家発・共同火力の高効率化

・自家発電及び共同火力における発電設備を、高効率な設備に更新する。副生ガスの供給制約が

ない場合は ACC を、供給制約がある場合は USC-BTG を導入する。

2020 年

省エネ量・代エネ量(万 KL) 42

追加投資額(億円) 5,972

普及度合い 共同火力については、2020 年までに更新を迎える設備すべ

て(全容量の 40%)を、自家発は、2020 年までに更新を迎

える設備のうち、排熱回収発電設備や既存インフラとの取

り合い制約のあるものを除く設備すべて(全容量の 25%)

を高効率化するものとする。

③省エネ設備の増強

・高炉炉頂圧の圧力回収発電、コークス炉における顕熱回収といった廃熱活用等の省エネ設備の

増強を図る。

2020 年

省エネ量・代エネ量(万 KL) 51

追加投資額(億円) 1,457

普及度合い CDQ、TRT、低圧蒸気回収(焼結、転炉等)について、2020

年までに現在のトップランナーと同等の回収効率の設備導

入がなされるものとする。

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④製鉄所における廃プラスチックのケミカルリサイクル拡大

・容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(平成7年法律第 112 号)に基づ

き回収された廃プラスチック等をコークス炉で熱分解すること等により有効活用を図り、石炭の

使用量を削減する。

2020 年

省エネ量・代エネ量(万 KL) 47

追加投資額(億円) 275

普及度合い 2020 年までに 100 万トンの廃プラスチック等を集荷・使用

すると想定。

⑤電力需要設備効率の改善

・製鉄所で電力を消費する設備について、高効率な設備に更新する(酸素プラント高効率化更新、

ミルモーターAC 化、送風機・ファン・ポンプ動力削減対策、高効率照明の導入、電動機・変圧器

の高効率化更新)

2020 年

省エネ量・代エネ量(万 KL) 12

追加投資額(億円) 1,600

普及度合い 設備更新時にすべて高効率化が行われ、電力消費原単位を

2020 年時点で約2%改善すると想定。

3.1.2 セメント産業 ①セメント製造省エネ設備導入

・粉砕効率が高い設備(竪型原料ミル、竪型石炭ミル、ローラーミル型予備粉砕装置、スラグ粉

砕)の導入、エアビーム式クリンカクーラーの採用、SP・NSP 焼成方式の採用、排熱発電導入。

2020 年

省エネ量・代エネ量(万 KL) 6.2

追加投資額(億円) 206

普及度合い 各設備の普及率増を次のとおり想定(2005 年→2020 年)。

・竪型原料ミル(78% → 78%)

・竪型石炭ミル(94% → 100%)

・ローラーミル予備粉砕設備(72% → 74%)

・竪型ミルによるスラグ粉砕(89% → 93%)

・エアビーム式クリンカクーラー(50% → 61%)

・SP・NSP焼成(100% → 100%)

・排熱発電(77% → 88%)

-9-

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②クリンカ製造代替廃棄物(廃プラ等)利用技術

・熱エネルギー代替廃棄物(廃プラ等)の利用を増加させる。

2020 年

省エネ量・代エネ量(万 KL) 5.2

追加投資額(億円) 321

普及度合い 廃プラ等の受入を増やし、2020 年において約 5 万kl程度

の増加を想定。

3.1.3 化学産業 ①ガスタービンの普及

・エチレンを生産する分解炉にガスタービン設備を設置し、排気ガスのエネルギーを有効活用し

て省エネルギー化を図る技術。

2020 年

省エネ量・代エネ量(万 KL) 14.4

追加投資額(億円) 427

普及度合い 追加的に5基導入し、2020 年時点の普及率を 60%とする。

②熱併給発電技術(CHP)の効率化

・自家発電において、高効率ローターの普及、高効率シールの普及等により自家発電性能の強化

を図る。

2020 年

省エネ量・代エネ量(万 KL) 39.7

追加投資額(億円) 500

普及度合い 既に普及した CHP について、100%実施する。

③低温排熱の回収システム構築

・石油化学で排出される 100 度以下の未利用エネルギーを、コンパクトな装置で個別に回収する

システムを構築し、各装置で低温熱源を利用した発電または熱利用を行う。

2020 年

省エネ量・代エネ量(万 KL) 12.9

追加投資額(億円) 400

普及度合い 研究開発のリードタイム等を踏まえ、2020 年時点で、80%

程度まで普及。

-10-

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④内部熱交換型蒸留塔(HIDiC)技術

・蒸留に投入された熱エネルギーを自己再利用することにより、消費エネルギーを従来比 30%以

上削減できる省エネ蒸留技術。

2020 年

省エネ量・代エネ量(万 KL) 19.5

追加投資額(億円) 669

普及度合い 蒸留塔全体のうち約 3%に普及。

⑤ナフサ接触分解

・エチレン、プロピレンを、新規な触媒を用いた接触分解により、ナフサクラッキングを従来の

800℃から 650℃まで下げ、ナフサ分解炉の省エネを図る。

2020 年

省エネ量・代エネ量(万 KL) 8.8

追加投資額(億円) 717

普及度合い 研究開発のリードタイムや新規触媒の耐久性能のリスクを

想定し、10%程度に普及と想定。

⑥バイオマス資源を活用したプロピレン製造技術

・エチレン、プロピレンをバイオマス由来のエタノール(バイオエタノール)から、触媒を用い

た化学変換により製造する技術。

2020 年

省エネ量・代エネ量(万 KL) 21.9

追加投資額(億円) 213

普及度合い 研究開発のリードタイムやバイオマス由来のエタノールの

供給制約等を踏まえ、2020 年段階では商用基第 1 号が稼動

していると想定。

⑦膜による蒸留プロセスの省エネルギー化技術

・蒸留プロセスに「膜分離技術」を導入することにより、石油化学基礎製品等の収率を向上し、

省エネ化を図る技術。

2020 年

省エネ量・代エネ量(万 KL) 35.6

追加投資額(億円) 814

普及度合い 研究開発のリードタイムや新規触媒の耐久性能のリスクを

想定し、8%程度に普及と想定。

-11-

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⑧高効率熱併給発電技術(CHP)

・高効率化熱併給発電技術の開発により、現行のCHP技術の効率化を高め、更にエネルギー削

減を図る。

2020 年

省エネ量・代エネ量(万 KL) 15.9

追加投資額(億円) 3,327

普及度合い 更新時に高効率設備を導入する。

3.1.4 紙パルプ産業 ①高効率古紙パルプ製造技術

・古紙パルプ工程において、古紙と水の攪拌・古紙の離解を従来型よりも効率的に進めるパルパ

ーを導入し、稼働エネルギー使用量を削減する。

2020 年

省エネ量・代エネ量(万 KL) 5.8

追加投資額(億円) 55

普及度合い 2020 年までに追加的に 61 基導入され、基数ベースでの普及

率が 40%、処理能力ベースでは 17%から 71%まで拡大する

と想定。

②高温高圧型黒液回収ボイラー

・濃縮した黒液(パルプ廃液)を噴射燃焼して蒸気を発生させる単胴ボイラーで従来型よりも高

温高圧型でボイラー効率が高い回収ボイラーを導入する。

2020 年

省エネ量・代エネ量(万 KL) 8.7

追加投資額(億円) 450

普及度合い 2020 年までに追加的に 3基導入され、実質導入率が 59%ま

で拡大すると想定。

③廃材等利用技術

・代替エネルギー源として廃材等を利用し、化石エネルギー使用量を削減する。

2020 年

省エネ量・代エネ量(万 KL) 36

追加投資額(億円) 920

普及度合い 未利用資源の確保を積極的に推進し、2020 年までに利用量

が 86 万トン増加すると想定。

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3.2 民生部門

①建築物の省エネ・空調等

・BEMS:建築物内の空調や照明等に関するデータを常時モニタリングし、需要に応じた 適運転

を行うことで省エネを図る技術。

・高効率セントラル空調:従来燃焼式で供給しているセントラル空調設備について、高効率ヒー

トポンプ式空調で代替する。

・高効率個別空調:従来電力による個別空調について、より高効率な空調機器で代替する。

対策技術 2020年の普及度合いの想定省エネ量(万kL)

追加投資額(億円)

BEMS 新築・既築を併せて約40%まで普及。 200 14,277

高効率セントラル空調

導入ポテンシャル量に対して37%まで普及。 83

高効率個別空調 ポテンシャル量に対して65%まで普及。 453,330

②IT 機器

・高効率ルーター:データ流量に応じたルーター性能の制御や、ネットワークのデータ流量の高

精度な観測・予測技術により、高効率化を達成する。

・サーバー:水冷等超高効率CPU冷却システムの開発、回収排熱の冷房への再利用、ハードデ

ィスクの記録密度の向上等によるサーバーの高効率化を目指す。

・ストレージ:アクセス低頻度・重複データを圧縮しストレージ台数を削減する技術や、ハード

ディスクの記録密度の向上等によるストレージの高効率化を目指す。

対策技術 2020年の普及度合いの想定省エネ量(万kL)

追加投資額(億円)

高効率ルーター ポテンシャル量に対してほぼ100%まで普及。 299

サーバー ポテンシャル量に対してほぼ100%まで普及。 57

ストレージ ポテンシャル量に対してほぼ100%まで普及。 49

44,896

③照明

・LED 照明:LED を用いた、高輝度・長寿命な照明技術。

・有機 EL 照明:有機ELを用いた照明技術。面発光であることから広範囲を照らすことができる

といった利点がある。

-13-

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2020年の普及度合いの想定省エネ量(万kL)

追加投資額(億円)

LED照明 ポテンシャル量に対して5%まで普及。 43

有機EL照明 ポテンシャル量に対して9%まで普及。 24

LED照明 ポテンシャル量に対して5%まで普及。 8.1

有機EL照明 ポテンシャル量に対して8.7%まで普及。 4.5

対策技術

業務

家庭

13,000

④ディスプレイ

・低電力液晶ディスプレイ:LEDバックライト技術、パネル低電圧駆動を実現する保護膜材料、

プロセス設備・パネル設計等に係る技術を総合し、低電力の液晶ディスプレイを実現す

る。

・低電力プラズマディスプレイ:パネル低電圧駆動を実現する保護膜材料、プロセス設備・パネ

ル設計等に係る技術を総合し、低電力のプラズマディスプレイを実現する。

・有機 EL ディスプレイ:有機ELディスプレイの電極製膜技術、封止技術、大面積成膜技術等の

開発により、大型有機ELディスプレイの製品化を目指す。

2020年の普及度合いの想定省エネ量(万kL)

追加投資額(億円)

低電力液晶ディスプレイ

ポテンシャル量に対して55.9%まで普及。 3

低電力プラズマディスプレイ

ポテンシャル量に対して68.2%まで普及。 0.5

有機ELディスプレイ

ポテンシャル量に対して15.2%まで普及。 2.1

低電力液晶ディスプレイ

ポテンシャル量に対して55.9%まで普及。 56

低電力プラズマディスプレイ

ポテンシャル量に対して68.2%まで普及。 9.2

有機ELディスプレイ

ポテンシャル量に対して15.2%まで普及。 40

対策技術

業務

家庭

26,162

⑤その他

対策技術 2020 年の普及度合いの想定 追加投資額(億円)

住宅の省エネ性能向上 も厳しい建築基準(平成 11 年基準)を満

たす新築が増加し、2020 年では新築のうち 8

割を占めると想定した。

46,594

高効率給湯器

潜熱回収型給湯器、ヒートポンプ式給湯器、

コージェネレーション等の高効率な給湯器

が、現状の 70万台から 2800 万台まで普及す

ると想定した。

44,415

-14-

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3.3 運輸部門

①自動車の燃費向上

従来自動車の燃費向上率は、以下の通り想定した。ただし、次世代自動車技術を含めて 2015 年

トップランナー基準をクリアすることを考慮している。

新車燃費 保有燃費

乗用車・バス 117 123

トラック 106 108

合計(2005 年=100) 109 116

次世代自動車のシェアについては、以下の通り想定した。

2005 年 2020 年

保有ベース 0% 19%

販売ベース 1% 46%

従来自動車と次世代自動車を合わせた燃費の改善率は以下の通り。

保有燃費

乗用車・バス 128

トラック 107

合計(2005 年=100) 119

②その他対策(バイオ燃料、交通流対策等)の CO2削減効果は以下の通り想定した。

2020 年

燃費改善・次世代自動車 21

バイオ燃料 2

交通流対策等 16

合計※ (百万トン-CO2) 40

※電源構成変化による効果を含む

-15-

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3.4 発電部門

①原子力発電

供給安定性、環境適合性、経済性等を評価し、 適な組み合わせにより需要に見合った供給力

を確保する観点から、原子力発電を将来にわたる基幹電源として推進することを考慮。

2030 年に「原子力発電の発電電力量に占める比率が 30~40%程度以上」との戦略目標が達成で

きる程度の設備として、約 9基の新設を想定。設備利用率は約 80%と想定した。なお、 大導入

ケースには浜岡原子力発電所のリプレース計画が反映されていない。2020 年に同発電所6号機が

運転開始していない場合(平成 30 年代前半の運転開始予定)は、他の原子力プラントの設備利用

率を 80%以上に高める必要があることに留意が必要。

②発電効率の向上

LNG火力、石炭火力において高効率発電設備の導入等により、ストックベースで発電効率が

2%向上すると想定。但し、 新設備にリプレースを行うか否かは、適正な供給予備率確保といっ

た安定供給上の観点からの各電力会社の判断による。

-16-

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3.5 新エネルギー

①太陽光発電

2020 年

省エネ量・代エネ量(万 KL) 350

追加投資額(億円) 67,101

普及度合い 新築住宅の 7割に設置すると想定。現状の 10 倍にあた

る 320 万戸に普及。

②風力発電

2020 年

省エネ量・代エネ量(万 KL) 200

追加投資額(億円) 2,644

普及度合い 現状の約 5倍まで導入すると想定。

③その他の新エネルギーの導入については、以下の通り想定した。

2005 年度 2020 年度

太陽光発電 35 350

風力発電 44 200

廃棄物・バイオマス発電 252 393

バイオマス熱利用 142 330

その他※ 685 762

合計(万 KL) 1,158 2,035

※その他:太陽熱利用、廃棄物熱利用、未利用エネルギー、黒液・廃材等が含まれる。

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4. ▲13%ケースにおけるエネルギー技術の想定

「 大導入ケース」は、 大限の「誘導的規制措置」を前提としており、国民や企業に対して更

新を法的に規制する一歩手前のぎりぎりの政策を講じ 大限普及させたケースである。設備更新

時に 先端の技術を 大限導入するという想定のもと、対策毎に 大限の導入量を見込んでいる。

90 年比▲13%の検討には、 大導入ケースにおいて想定した誘導的規制措置だけではなく、新

たに強力な「政策手法の導入」が必要である。この追加的な政策手法はあくまでも仮にモデル計

算をすることを目的として勘案したものである。すなわち、これらの手法を実際に導入するため

には、広く「国民の合意」と「政治的・政策的」決定がなければ、絵に描いた餅であり、「実現可

能性」の保証は全くない。「 大導入ケース」をさらに超える導入量を実現するためには、既存設

備の買い替えを促す大規模なインセンティブ導入や規制等の強力な措置が必要となる。

4.1 エネルギー技術導入の想定

エネルギー起源 CO2を 1990 年比 13%削減するために、想定した主なエネルギー技術は以下の

通り。

努力継続ケース 大導入ケース ▲13%ケース

太陽光発電

(住宅)

新築住宅の約 3割に設置。

ストック 130 万戸

(世帯普及率 3%)

新築住宅の約 7割に設置。

既築も毎年 5万戸に設置

ストック 320 万戸

(世帯普及率 6%)

新築持家住宅全てに設置。

既築も毎年 60 万戸に設置

ストック 1,000 万戸

(世帯普及率 20%)

太陽光発電

(産業用)

現状の約 4倍。

120 万 kW

現状の約 10 倍。

300 万 kW

現状の約 70 倍

2,100 万 kW

風力発電 現状の約 4倍。

400 万 kW

現状の約 5倍。

500 万 kW

現状の約 9倍。

1,000 万 kW

地熱発電 現状並み 50 万 kW 現状並み 50 万 kW 現状の約 2倍。100 万 kW

省エネ住宅 平成 11 年基準を

新築の 7割程度が満たす。

(住宅普及率 20%)

新築の 8割程度が満たす。

(住宅普及率 25%)

新築のすべてが満たす。

(住宅普及率 30%)

既築の約 6割(推定値)を

占める平成4年基準未満の

住宅をすべて平成4年基準

に改築。

省エネ建築物 平成 11 年基準を

新築の 80%程度が満たす。

(建築物の 40%)

新築の 85%程度が満たす。

(建築物の 50%)

新築・既築すべての建築物

が満たす。

(建築物の 100%)

高効率給湯器 販売シェア 15%

900万台(世帯普及率20%)

販売シェア 80%

2,800万台(普及率約55%)

販売シェア 100%

4,400万台(普及率約90%)

-18-

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次世代自動車 新車販売の 10%。

保有台数の 3%。

250 万台

新車販売の 46%。

保有台数の 19%。

1,500 万台

新車販売の 100%。

保有台数の 39%。

3,100 万台

原子力発電 9 基の新規運転開始

設備利用率は 81%。

9 基の新規運転開始

設備利用率は 81%。

9 基の新規運転開始

設備利用率は 90%。

各技術を普及させるために講じる主な施策は以下の通り。

努力継続ケース 大導入ケース ▲13%ケース

太陽光発電

(住宅)

RPS 法 買い取り制度の創設

補助金制度創設

各種減税措置の充実

新築住宅への設置義務

既築住宅への買替促進

補助金の大幅増額

風力発電 投資促進税制

補助金制度

近隣住民との合意形成

系統安定化対策の促進

自然公園での設置許可

漁業権問題の解決

省エネ住宅

省エネ建築物

省エネ法の省エネ基準

融資制度

法改正(対象拡大・強化)

融資枠拡大

BEMS への補助金制度

新築への適用義務

既築への強制改修

高効率給湯器 補助金制度

融資制度

補助金の増額 従来型の販売禁止

既存機器の強制買替

補助金の大幅増額

次世代自動車 取得税・自動車税の減税

トップランナー基準

取得税・自動車税の免税

補助金の増額

従来車の販売禁止

補助金の大幅増額

原子力発電 定期検査間隔の延長 定期検査間隔の延長 定期検査期間の短縮化

4.2 技術普及に際しての政策と課題

各技術の導入にあたっての課題はそれぞれ異なっており、特性に応じた対策が必要となる。以

下、各技術における普及に対する課題と必要な政策等を整理した。

4.2.1 太陽光発電 「努力継続ケース」では現状 32 万戸から 2020 年には4倍の 130 万戸に、「 大導入ケース」

では、新築住宅の約7割に導入し、ストックで現状の 10 倍の 320 万戸に増加すると想定してい

る。また、非住宅用としては、工場・公共施設等の大型建築物に現状の約 10 倍にあたる 300 万

kW を導入する。

「 大導入ケース」については、日陰、屋根の向き、積雪地域等の発電量不足の問題、美観意

識、漏水の問題等の理由から設置を望まないユーザも存在、新築の7割でもハードルは高く、実

質上 大限と考えられる。また、「 大導入」を実現するには、補助金、住宅ローン減税等の財政

支援、新たな買い取り制度の創設などの強力な導入支援措置が必要。

「13%削減ケース」では戸建住宅への太陽光発電の設置を法的に義務付け、新築持家住宅の全

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てに導入し、かつ既築住宅には年間約 60 万戸に導入していくことが必要となる。また、一定規模

以上の工場・公共施設への設置も義務化され、主要な施設に導入した上で、メガソーラーの建設

も多数必要となる。また、短期間での大量導入は系統安定対策が追いつかず、停電等の供給不安

定性の懸念が大きい。

4.2.2 風力発電 「努力継続ケース」では、風力発電を現状 110 万 kW から約 4 倍の 400 万 kW まで、「 大導入

ケース」では、約 5 倍の 500 万 kW まで導入すると想定している。足元の導入スピードは非常に

速いが、風況の優れた立地は概ね既設されていることから、今後は導入速度はやや鈍化すると思

われる。

立地選定にあたっては、バードストライクや近隣住民への低周波音被害の問題などが指摘され

ており、単に風況だけでなく、さまざまな配慮が必要となっている。地域住民や関係者への情報

公開と合意形成の重要性が増しており、これまで以上に慎重な導入プロセスが求められている。

また、系統連系可能な容量見通しは 500 万 kW 程度までと言われているが、(2008 年 11 月時点の

連系可能量は 330.5 万 kW)、これは全国レベルの話であり、風況の良い地域に集中するとその地

域内では系統連系制約が発生する可能性もある。

「13%削減ケース」では、1,000 万 kW まで導入する必要がある。しかし、風力発電の陸上の

設置可能面積(自然公園等を除く)の全てに風力発電を導入した場合でも、680 万 kW 程度が限

界となるため、陸上には物理的に設置が不可能である。そのため、漁業権の問題など多くの課題

が残る洋上にも設置するか、あるいは自然公園等にも設置できるような規制緩和などの措置が必

要となる。一方で、想定している設備容量は、現在進められている系統安定化対策では賄いきれ

ない量であり、技術的、費用的な問題が生じる。

4.2.3 省エネ住宅・建築物 「努力継続ケース」では、新築住宅の 7 割が も厳しい基準(平成 11 年基準)を満たし、「

大導入ケース」では、同様に約 8 割がこれを満たすと想定している。また、建築物については、

「努力継続ケース」で新築の 8 割程度が平成 11 年基準を満たし、「 大導入ケース」では 85%が

平成 11 年基準を満たすと想定している。

省エネ法の改正などにより住宅・建築物の省エネ化は進んできている。また、省エネ住宅に対

する融資制度、省エネ改修促進税制によって省エネ対策も行われている。しかし、省エネ基準の

達成率が上昇してくると、デザイン住宅や伝統的工法など断熱対策になじまない住宅にも対策を

取る事が必要になってくる。このため、意欲的な目標の達成のためには省エネ法の更なる改正と

対象事業者の拡大や融資枠の更なる拡大等が求められる。

「13%削減ケース」では、住宅に関しては、新築住宅は平成 11 年基準の法的義務付けを行い、

さらに平成 4 年基準に満たない既築住宅(推計で 6 割程度)についても、強制的あるいは強力な

インセンティブのもと改築を行なう必要がある。建築物については、新築は全て平成 11 年基準を

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満たし、更に既築についても平成 11 年基準を満たすよう改修が必要になる。強制的義務による国

民の負担を緩和するためには、多額の補助金も必須になると考える。また、改修義務にあたって

は、改築件数の急増に伴う行政コストの増加やリフォーム事業者の不足などが見込まれる。

4.2.4 高効率給湯器 「努力継続ケース」では、給湯器販売の約 15%程度、保有台数は現状の 70 万台から 900 万台

程度まで増加することを想定している。「 大導入ケース」では、給湯器販売の約 8 割(新築分は

100%)を高効率型が占め、2800 万台まで増加、世帯の約 55%まで普及することを想定している。

そのうち、ヒートポンプは 900 万台、世帯普及率 18%を想定している。

高効率給湯器に対する補助金によってこれらの機器の普及は徐々に進んでいるものの、現状で

は補助金を含めても従来型との差額は大きい。また、補助金の総額、受付件数が決まっている等

の問題が指摘されている。今後は補助金の更なる拡充と設備に対する融資の拡大などが求められ

る。

「13%削減ケース」では販売される給湯器はすべて高効率型とし、買い替えを行うことで全世

帯の約 9 割、およそ 4,400 万台まで普及させる必要がある。このためには、給湯器、特にヒート

ポンプのコストダウンはもとより、従来型との差額を埋めるための補助金の増額も必要になる。

また、販売シェア 100%を確実に達成するための販売規制を行うとともに、まだ使用可能な給湯

器についても強制的な買い替え、あるいは、強力な買い替え促進策を行う必要がある。また、短

期間での機器の入れ替えを考慮すると、高効率給湯器の生産能力を迅速かつ大幅に拡大する事が

必須になり、供給能力の限界も懸念される。

4.2.5 次世代自動車 「努力継続ケース」では新車販売の 10%程度、「 大導入ケース」では、新車販売の約半分、

保有台数では約 20%に導入すると想定している。2005 年新車販売に占める次世代自動車の割合

はわずか 1%程度であり、今後のハイブリッド車人気の高まりを加味しても、「努力継続ケース」

程度が現実的な限度との見方もある。

次世代技術の導入により各用途の利便性(走行性能や居住スペースなど)が損なわれたり、コ

スト増となるなど、ニーズが多様化している消費者に簡単には受け入れられない。現在、グリー

ン税制により自動車税、取得税の減税措置が行なわれているが、平成 21 年 4 月より、免税となる

(3 年間の時限措置)。これにより、小型ハイブリッド車では 10 万円強の負担減となる。「 大導

入」を実現するためには、免税措置の延長を検討すべきである。また、「クリーンエネルギー自動

車等導入促進事業」などの補助金制度があり、上限はあるが概ねベース車両価格との差額の半分

を補助している。ただし、ハイブリッド乗用車は現在対象外であり、再び対象に加えることも必

要となろう。

「13%削減ケース」では、新車販売の全てを次世代自動車とし、保有台数の約 40%を次世代自

動車とする必要がある。このためには従来自動車の販売禁止といった非現実的な強制措置が必要

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となる。さらに、選択肢のなくなったユーザーのコスト負担を緩和するために、価格差を全額補

助することも必要となる。さらに、モーターなどは従来の内燃機関とはまったく異なる技術であ

り、整備技術が追いつかない整備工場が多くなり、大量普及に際してはアフターメンテナンスの

面でも課題が残る。また、生産設備の対応面から見ても供給能力の限界を超えているものと考え

られる。

4.2.6 原子力発電 「努力継続ケース」及び「 大導入ケース」では、2020 年までに原子力発電所新設を 9 基、設

備利用率を約 80%と想定している。

原子力発電所は立地申入れから運転開始まで許認可手続き、県と立地市町村(周辺も含む)の

同意、漁業補償交渉などを含め長い期間を要し、過去には計画よりも大幅に遅延したケースも多

い。このため、2020 年までに 9 基の新設という将来の見通しは不透明さを免れない。

新検査制度の導入により定期検査間隔の延長が検討されているが、仮に定期検査間隔を 18 ヶ月

まで延長したとしても、定期検査期間を全国平均で 4 ヶ月以内としない限り 80%の設備利用率は

達成できない。しかし現在、既に多くのプラントが営業運転開始から 20 年以上経過しており、高

経年化対策を含めた様々な長期補修計画のため定期検査期間が長期化する傾向にある。また、計

画時点では予想しなかった検査中のトラブルにより再起動時期が遅れる事例が多く見られるほか、

地震等の不可抗力によって原子炉の稼動停止を余儀なくされるリスクも存在する。このような場

合に、地元の同意を得て運転再開に至るまでに長い期間を要することもある。これらのことから、

「努力継続ケース」及び「 大導入ケース」の想定は相当の努力を必要とするとともに、その実

現にはかなりの不確実性を有していると言わざるをえない。

「13%削減ケース」では、更に設備利用率を 90%まで向上させる必要がある。このためには、

定期検査間隔を 18 ヶ月まで延長した上で、更に定期検査期間を平均 2 ヶ月以内とすることが必要

となる。これは過去の国内の実績から見て、実現のハードルがかなり高いと言わざるを得ない。

技術上、理論上はともかく、設備利用率が向上しない要因の一つとして、プロセスにおける地元

の理解、同意の獲得に時間を要しているのが実態であり、現状はこれらの活動を電力会社が行っ

ているが、国・地方自治体が主体となって実施し、同意を得る責任主体となることを法律上規定

するといったことも検討すべきである。

4.3 省エネ技術の短期・大量普及についての課題

4.3.1 需要面からの評価 「 大導入ケース」では、設備更新時に 先端の技術を 大限導入するという前提のもと、対

策毎に 大限の導入量を想定している。その際、民間努力だけでは不十分であり、補助金、減免

税などの「誘導的規制措置」が必要と考えている。

しかし、「 大導入ケース」をさらに超える技術普及を実現するためには、 終消費者等に買い

替えを促す大規模なインセンティブの導入や販売規制、あるいは設置義務等の強力な措置を前提

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Page 24: エネ研日本モデルによる分析結果 - IEEJ · 8. 2050年のエネルギー需給の姿 . 9. 結論 (補論) エネ研『エネルギー需給モデル』の概要

としている。「13%削減ケース」では、主要な省エネ技術について、概ね導入ポテンシャルに近い

導入が想定されている。こうした場合には、消費者の選択肢が極端に狭められ、嗜好に合致しな

い製品を購入しなければならないという不都合が生じる。また、これらの省エネ製品は概して従

来品よりも高価であり、家計の負担が大きくなる。とりわけ低所得者層は顕著である。補助金な

どのケアが必要になるが、その財源についても検討しなければならない。

4.3.2 供給面からの評価 省エネ技術の短期間での大量導入については、供給面での対応が困難な場合も考えられる。製

品開発のリードタイム(初期の商品は価格、機能面で十分でなく、先駆的・導入的な需要創出か

ら本格的な需要拡大に至るまでは時間がかかる)や工場建設のリードタイム(工場の立地選定か

ら現実の稼働までは数年間を要する)、あるいは、部品・資材調達における信頼できるサプライチ

ェーンの構築などを考慮すれば、2020 年までという短期間での大量普及は懸念が残る。

また、自然条件に左右される太陽光発電や風力発電については、こまめな供給調整が必要とな

る。しかし、太陽光・風力発電に合わせた出力変動や蓄電池等の設備管理については、現在まだ

不十分であり、今後さらなるデータの蓄積・分析を行い、供給力の調整方法を確立していく必要

がある。そのため、短期間での太陽光・風力発電の大量導入がなされた場合、電力需給運用の面

で困難が伴うことになる。

4.4 電源構成改変可能性の検討

電気事業法に基づき全ての電気事業者が毎年、経済産業省に提出する「電力供給計画」(10

年先までの計画。現在 2018 年まで)と内外の「技術進歩」動向を踏まえて、CO2削減可能性

に焦点を当てた検討。

A) ガス火力発電: 日本では更なる大幅な導入の拡大は非現実的

① ガス転換は日本が世界に先行して実施済み。例えば東京電力はガス発電の利用で世界

一位。なお、産業用ガス利用や大企業向けは既に導入済。今なお石炭からガスへの転

換が進行中の欧米とは異なる。

② 日本のガス供給はLNGによるので、ガス液化~輸送~ガス化のサプライチェーンの形

成に長期間と多額の投資を要するため 10-20 年の「テイク・オア・ペイ」の長期引取

り契約が必要で、弾力性が小さい。LNGの安定的な供給のため資源国の安定性、供給

ソースの分散等の「エネルギー供給のセキュリティ」が大前提。日本は世界のLNG購

入で圧倒的シェア。日本でのLNG発電導入拡大の余地は少ない。

③ 高効率ガス火力発電への転換も進行中。一層の努力は必要。

B) 水力発電: 拡大努力は必要なものの実現策は限定的

① 2030 年までの水力発電量の増加ポテンシャルは 70 億kWh。現在 20 地点の建設・計

画中の供給力は約 487 万kW(「水力発電研究会報告」、H20.7)。

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② 資源エネルギー庁「未利用落差発電包蔵水力調査」では、小水力の未開発地点は 560

地点、電力量にして約 6 億kWh。

③ 農業用水確保継続のため国交省で水利権利用限定の動き(水利権許可期間 30 年→20

年へ)。農業対策とのバランスからも過大な拡大は無理。

C) バイオマス発電: 「 大導入ケース」が限界

① バイオマス発電は、石炭火力での混焼が経済的。「 大導入ケース」想定の 393 万kl

で既に電力各社が取り組んでいる3%の混焼率を超えており、更なる積み増しは困難。

② バイオマス専燃火力発電については、設置は増加するが発電量は限定的。当研究所で

実施する「グリーン電力認証」の実績ではH20.4~H21.1において発電量 1,541

万kWhに止まる。

D) 太陽光発電: 季節と月間に応じた負荷調整システムの構築が必要

① 太陽光を 1,300 万kW以上導入すると、年間の電力需要端境期(5月等)には、原子

力、水力、地熱、太陽光等の新エネルギー、出力調整に 低限必要な火力だけで供給

が需要を上回る。需要を上回る供給力の調整は、蓄電池による対応のみではなく、太

陽光、原子力の出力調整制御が必要となる。

② 出力調整のためには、系統制御のための新たなシステム開発が必要。また、電力系統

安定化のための蓄電池の設置等の大幅な投資が必要。

E) 原子力発電: 稼働率向上には事業者任せではなく、国・地方公共団体による地域対策が

不可欠

① 設備利用率 90%の達成(定期検査間隔を 24 ヶ月まで延長、定期検査期間を 2 ヶ月ま

で短縮)のためには、地元の「安心感」の定着と定期検査の効率化(新検査制度の的

確な運用、オンラインメンテナンスの導入等を含む)が必要。現状では過去 高の

85%が現実的ではないか。事業者の万全を期した「安全対策」とともに、国・地方公

共団体の地元広報、検査の効率化の行政対応が不可欠。

F) 石炭・石油火力発電: 「エネルギーセキュリティ」上、必要。しかし、更なるクリーン

化の徹底も必要

① 石炭火力: (a) 石炭資源の埋蔵量と世界的産業戦略の産業政策面からみて、石炭は

エネルギー安定供給のために不可欠。(b) 日本でも政府で設置推進策がとられたプラ

ントは現在も重要電源。ただし将来的には、IGCC(石炭ガス化複合発電)と CCS(二

酸化炭素回収・貯留)の組み合わせによるクリーン化が必要。(c) 新の技術活用の

IGCC の熱効率は既にガス火力発電と同水準。(d) 世界へのビジネス展開上も有力な

産業。

② 石油火力: (a) 石油火力発電所は電力需給の調整電源として今後も重要。(b) ガソリ

ン生産に伴う連産品である重油等を活用する火力発電は引続き日本の経済活動上、エ

ネルギーセキュリティ上も不可欠。(c) 技術的にも日本が 先端だが、更なるクリー

ン化努力は常に必要。

-24-

Page 26: エネ研日本モデルによる分析結果 - IEEJ · 8. 2050年のエネルギー需給の姿 . 9. 結論 (補論) エネ研『エネルギー需給モデル』の概要

追加

的政

策措

置と

問題

点追

加的

政策

措置

と問

題点

努力

継続

ケー

ス大

導入

ケー

ス9

0年

比▲

13

%ケ

ース

太陽光発電

風力発電・

地熱発電

住宅・

建築物

高効率

給湯器

次世代

自動車

情報機器・

家電等

○新

たな

買取

制度

の創

設○

住宅

太陽

光補

助金

の創

○公

共部

門で

の率

先導

入○

投資

減税

措置

創設

○R

PS法

の目

標引

き上

げ○

全て

の新

築に

設置

義務

○一

定規

模以

上の

既築

住宅

に設

置義

務。

○投

資促

進税

制(特

別償

却3

0%

、税

額控

除○

地方

自治

体等

への

補助

(半

分を

補助

○民

間事

業者

への

補助

(1

/3

を補

助) 

○「自

然公

園法

」:特

別保

護地

区等

の利

用行

為の

許可

基準

緩和

(200

万K

L分

を導

入目

標とす

る)

○「温

泉法

」:都

道府

県知

事掘

削許

可申

請に

近隣

源泉

所有

者の

同意

書添

付を

条件

とし

ない

○洋

上風

力設

置の

ため

の漁

業権

問題

の解

決 等

○ト

ップ

ラン

ナー

基準

(家

電)

○補

助金

制度

○融

資制

度○

トッ

プラ

ンナ

ー基

○取

得税

・自

動車

税の

減税

○補

助金

制度

○ト

ップ

ラン

ナー

基準

○省

エネ

法ト

ップ

ラン

ナー

(IT

機器

等)に

よる

高水

準達

成○

技術

開発

支援

 等

○省

エネ

法改

正(対

象拡

大・強

化)

○税

制優

遇・補

助金

制度

の強

○融

資枠

の拡

大○

BEM

S等

への

導入

補助

○補

助金

制度

の大

幅拡

○公

共部

門の

率先

導入

○取

得税

・自

動車

税の

免税

○補

助金

制度

の強

化○

イン

フラ

整備

○ト

ップ

ラン

ナー

基準

の強

化○

公共

部門

等で

の大

量導

○大

導入

ケー

スと

同じ

○も

厳し

い基

準を

満た

す新

築住

宅建

設の

義務

化○

断熱

住宅

以外

の従

来型

法の

禁止

○基

準を

満た

さな

い住

宅の

改築

を義

務化

○既

築住

宅へ

の導

入義

務化

○補

助金

制度

の大

幅拡

○従

来自

動車

の販

売禁

止 

  

(中

古車

含む

)○

従来

車の

車検

時適

用不

○補

助金

制度

の強

対策

主な

政策

措置

対策

追加

政策

措置

対策

追加

政策

措置

約30

万戸

↓約

130万

戸普

及(現

状の

4倍)

風力

:現

状110

万kW

↓約

400万

kW

地熱

:52万

kW

トッ

プラ

ンナ

ー制

度に

よる

効率

改善

次世

代基

準適

合新

築住

宅70

%、

新築

建築

物80

現状

約70万

台↓

約90

0万台

(販

売シェア

15%

新車

販売

の10

新築

持家

住宅

の7割

(320

万戸

)工

場等

に300

万kW

(現

状の

10倍

風力

:約500

万kW

地熱

:52万

kW

省エ

ネIT

機器

、省

エネ

ディ

スプ

レイ

、高

効率

照明

等の

導入

促進

次世

代基

準適

合新

築住

宅80

%新

築建

築物

85%

BEM

S、

高効

率空

調 

約28

00万

台(販

売シェア

80%

新車

販売

の50

%保

有台

数の

20%

新築

全て

、既

築も

一部

設置

(1000万

戸)、

工場

等に

2100

万kW

(現

状の

40倍

風力

:約100

0万kW

地熱

:104万

kW

次世

代基

準適

合新

築住

宅全

て、

新築

建築

物全

て(既

築も

改築

約44

00万

台(販

売シェア

100%

)(普

及率

9割)

新車

販売

の全

て保

有台

数の

40%

原子力

○現

状の

設備

利用

率6

0%

から

の大

幅上

昇(新

検査

制度

など

新設

9基設

備利

用率

80%

新設

9基設

備利

用率

90%

省エ

ネIT

機器

、省

エネ

ディ

スプ

レイ

、高

効率

照明

等の

導入

促進

新設

9基設

備利

用率

80%

○地

域住

民や

関係

者へ

の情

報公

開と

合意

形成

○地

方自

治体

、民

間事

業者

への

補助

(努

力継

続ケ

ース

と同

じ)

○定

期検

査期

間の

大幅

な短

縮策

(検

査手

順の

簡素

化、

地元

理解

を国

・地

方自

治体

が主

体と

なっ

実施

する

体制

の確

立な

ど)

これ

まで

の効

率改

善の

延長

線上

で努

力を

継続

し、

市場

メカ

ニズ

ムを

大限

に活

用す

るケ

ース

先端

の技

術を

設備

更新

時に

大限

導入

させ

るた

め、

誘導

的規

制措

置を

実施

する

ケー

ス実

現可

能性

を無

視し

て、

法律

によ

る強

制、

義務

化、

大幅

な補

助支

援等

を実

施す

ると

仮定

した

ケー

○省

エネ

法の

省エ

ネ基

準○

住宅

性能

表示

制度

○税

制優

遇制

90年

比5

%90

年比

▲5

問題

○大

量導

入時

の系

統安

定化

対策

の限

界を

超過

○技

術的

不確

定要

素が

拡大

し、

停電

の許

容を

考え

る必

要あ

○大

量導

入時

の系

統安

定化

対策

が不

可欠

○自

然公

園を

除く

陸上

設置

可能

面積

を超

えて

おり

、洋

上に

設置

する

必要

があ

るが

、建

コス

トが

増大

する

上に

漁業

権の

問題

が発

○主

要な

機器

は既

に対

とな

って

いる

○現

状の

増改

築の

数倍

(床

積)の

工事

が必

要、

リフ

ォー

ム事

業者

の不

○小

規模

な建

築物

への

適用

に伴

う行

政コ

スト

の増

大○

複層

ガラ

ス等

断熱

材関

連製

品の

増産

体制

整備

 等

○耐

用年

数が

到来

して

いな

い従

来型

給湯

器も

買換

えが

必要

○貯

湯槽

が必

要な

ヒー

トポ

ンプ

は集

合住

宅で

は設

置困

難な

ため

、物

理的

ポテ

ンシ

ャル

は1

80

0万

台程

度○

生産

能力

に問

○消

費者

の選

択の

機会

を奪

う○

イン

フラ

・生

産ラ

イン

の不

○レ

アメ

タル

類の

供給

安定

○定

期検

査間

隔を18

ヶ月

まで

延長

した

とし

ても

、定

期検

査期

間を2ヶ

月ま

で大

幅に

短縮

する

必要

あり

○設

備利

用率

1%

の低

下は

、26

0万

トン

分の

クレ

ジット

購入

の必

要性

につ

なが

課題

○高

いイ

ニシ

ャル

コス

トの

ため

却期

間を

短く

とな

らな

いと

広範

な普

及は

難し

○屋

根の

面積

や日

照の

観点

ら設

置に

向か

ない

ケー

スも

ある

○多

雪地

域で

は設

置上

の制

○大

量導

入時

の系

統安

定化

策の

必要

○バ

ード

ストラ

イク

や低

周波

音等

の立

地問

題へ

の対

応○

50

0万

kW

まで

系統

連係

可能

と言

われ

てい

るが

、風

況の

良い

地域

に集

中す

ると

その

地域

内で

連係

制約

が生

じる

可能

性あ

○行

政コ

スト

の増

大○

技術

開発

の不

確実

○従

来型

との

差額

に見

合っ

た補

助金

が必

要○

生産

能力

の増

強 

 

○イ

ンフ

ラ整

備○

生産

ライ

ン構

築、

バッ

テリ

供給

、レ

アメ

タル

など

を含

む部

品の

サプ

ライ

チェ

ーン

構築○

原子

力に

特有

の状

況か

ら、

将来

の建

設見

通し

は不

確実

○地

震等

の不

可抗

力に

よる

リス

ク要

因も

考慮

する

必要

あり

○R

PS法

○デ

ザイ

ン性

が高

い住

宅等

では

設計

上複

層ガ

ラス

など

が適

応で

きな

い可

能性

○改

築よ

りも

建て

替え

の方

がコ

スト

が安

い可

能性

○ビ

ルの

オー

ナー

とテ

ナン

トの

発想

の相

違が

課題

追加

的政

策措

置と

問題

点追

加的

政策

措置

と問

題点

努力

継続

ケー

ス大

導入

ケー

ス9

0年

比▲

13

%ケ

ース

太陽光発電

風力発電・

地熱発電

住宅・

建築物

高効率

給湯器

次世代

自動車

情報機器・

家電等

○新

たな

買取

制度

の創

設○

住宅

太陽

光補

助金

の創

○公

共部

門で

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先導

入○

投資

減税

措置

創設

○R

PS法

の目

標引

き上

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設置

義務

○一

定規

模以

上の

既築

住宅

に設

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○投

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別償

却3

0%

、税

額控

除○

地方

自治

体等

への

補助

(半

分を

補助

○民

間事

業者

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補助

(1

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助) 

○「自

然公

園法

」:特

別保

護地

区等

の利

用行

為の

許可

基準

緩和

(200

万K

L分

を導

入目

標とす

る)

○「温

泉法

」:都

道府

県知

事掘

削許

可申

請に

近隣

源泉

所有

者の

同意

書添

付を

条件

とし

ない

○洋

上風

力設

置の

ため

の漁

業権

問題

の解

決 等

○ト

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ラン

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基準

(家

電)

○補

助金

制度

○融

資制

度○

トッ

プラ

ンナ

ー基

○取

得税

・自

動車

税の

減税

○補

助金

制度

○ト

ップ

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基準

○省

エネ

法ト

ップ

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(IT

機器

等)に

よる

高水

準達

成○

技術

開発

支援

 等

○省

エネ

法改

正(対

象拡

大・強

化)

○税

制優

遇・補

助金

制度

の強

○融

資枠

の拡

大○

BEM

S等

への

導入

補助

○補

助金

制度

の大

幅拡

○公

共部

門の

率先

導入

○取

得税

・自

動車

税の

免税

○補

助金

制度

の強

化○

イン

フラ

整備

○ト

ップ

ラン

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基準

の強

化○

公共

部門

等で

の大

量導

○大

導入

ケー

スと

同じ

○も

厳し

い基

準を

満た

す新

築住

宅建

設の

義務

化○

断熱

住宅

以外

の従

来型

法の

禁止

○基

準を

満た

さな

い住

宅の

改築

を義

務化

○既

築住

宅へ

の導

入義

務化

○補

助金

制度

の大

幅拡

○従

来自

動車

の販

売禁

止 

  

(中

古車

含む

)○

従来

車の

車検

時適

用不

○補

助金

制度

の強

対策

主な

政策

措置

対策

追加

政策

措置

対策

追加

政策

措置

約30

万戸

↓約

130万

戸普

及(現

状の

4倍)

風力

:現

状110

万kW

↓約

400万

kW

地熱

:52万

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これ

まで

の効

率改

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延長

線上

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継続

し、

市場

メカ

ニズ

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るケ

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先端

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術を

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更新

時に

大限

導入

させ

るた

め、

誘導

的規

制措

置を

実施

する

ケー

ス実

現可

能性

を無

視し

て、

法律

によ

る強

制、

義務

化、

大幅

な補

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援等

を実

施す

ると

仮定

した

ケー

原子力

トッ

プラ

ンナ

ー制

度に

よる

効率

改善

次世

代基

準適

合新

築住

宅70

%、

新築

建築

物80

現状

約70万

台↓

約90

0万台

(販

売シェア

15%

新車

販売

の10

新築

持家

住宅

の7割

(320

万戸

)工

場等

に300

万kW

(現

状の

10倍

風力

:約500

万kW

地熱

:52万

kW

省エ

ネIT

機器

、省

エネ

ディ

スプ

レイ

、高

効率

照明

等の

導入

促進

次世

代基

準適

合新

築住

宅80

%新

築建

築物

85%

BEM

S、

高効

率空

調 

約28

00万

台(販

売シェア

80%

新車

販売

の50

%保

有台

数の

20%

新築

全て

、既

築も

一部

設置

(1000万

戸)、

工場

等に

2100

万kW

(現

状の

40倍

風力

:約100

0万kW

地熱

:104万

kW

次世

代基

準適

合新

築住

宅全

て、

新築

建築

物全

て(既

築も

改築

約44

00万

台(販

売シェア

100%

)(普

及率

9割)

新車

販売

の全

て保

有台

数の

40%

新設

9基設

備利

用率

80%

○現

状の

設備

利用

率6

0%

から

の大

幅上

昇(新

検査

制度

など

新設

9基設

備利

用率

90%

省エ

ネIT

機器

、省

エネ

ディ

スプ

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、高

効率

照明

等の

導入

促進

新設

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用率

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○地

域住

民や

関係

者へ

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報公

開と

合意

形成

○地

方自

治体

、民

間事

業者

への

補助

○省

エネ

法の

省エ

ネ基

準○

住宅

性能

表示

制度

○税

制優

遇制

90年

比5

%90

年比

▲5

○R

PS法

(努

力継

続ケ

ース

と同

じ)

○定

期検

査期

間の

大幅

な短

縮策

(検

査手

順の

簡素

化、

地元

理解

を国

・地

方自

治体

が主

体と

なっ

実施

する

体制

の確

立な

ど)

問題

○大

量導

入時

の系

統安

定化

対策

の限

界を

超過

○技

術的

不確

定要

素が

拡大

し、

停電

の許

容を

考え

る必

要あ

○大

量導

入時

の系

統安

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対策

が不

可欠

○自

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園を

除く

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する

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問題

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いる

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数倍

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積)の

工事

が必

要、

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ム事

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○小

規模

な建

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適用

に伴

う行

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大○

複層

ガラ

ス等

断熱

材関

連製

品の

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体制

整備

 等

○耐

用年

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いな

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給湯

器も

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が必

要な

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ンプ

は集

合住

宅で

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置困

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ため

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理的

ポテ

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生産

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○レ

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類の

供給

安定

○定

期検

査間

隔を18

ヶ月

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延長

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-25-

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5. 試算結果

以上の前提によるエネルギー消費量及びエネルギー起源 CO2排出量の見通しは以下の通り。

5.1 部門別・エネルギー源別 終需要

[現状固定ケース]

・ 終エネルギー消費は 2005 年比で 6%の増加。

[努力継続ケース]

・ 終エネルギー消費は 2005 年比で 2%の減少。

[ 大導入ケース]

・省エネルギー技術の 大限の導入により、 終エネルギー消費は 2005 年比で 8%減少。GDP原

単位は 24%減と、「新国家エネルギー戦略」の 2030 年目標である「30%の効率改善」に向けて着

実に進展。

終エネルギー消費(部門別)

(原油換算百万KL)

構成比 構成比 構成比 構成比 構成比

終消費計 413 100% 438 100% 405 100% 380 100% 367 100%

産業 181 44% 181 41% 181 45% 178 47% 177 48%

民生 134 32% 164 38% 138 34% 124 33% 114 31%

  家庭 56 14% 61 14% 56 14% 51 13% 45 12%

  業務他 78 19% 103 24% 83 20% 73 19% 69 19%

運輸 98 24% 92 21% 85 21% 78 21% 76 21%

現状固定 大導入2005年度

▲13%ケース

2020年度

努力継続

終エネルギー消費(エネルギー源別)

(原油換算百万KL)

構成比 構成比 構成比 構成比 構成比

終消費計 413 100% 438 100% 405 100% 380 100% 367 100%

石炭 46 11% 49 11% 49 12% 48 13% 48 13%

石油 225 54% 209 48% 194 48% 177 47% 167 46%

都市ガス 33 8% 46 11% 40 10% 40 10% 38 10%

電力 91 22% 113 26% 100 25% 93 24% 90 25%

蒸気熱 18 4% 19 4% 19 5% 18 5% 18 5%

2005年度現状固定 ▲13%ケース

2020年度

努力継続 大導入

再生可能他 1 0% 2 0% 2 1% 4 1% 5 1%

-26-

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5.2 電源構成

[ 大導入ケース]

・原子力の割合が 44%と、「新国家エネルギー戦略」の目標である「30%~40%以上」を達成し

つつ、火力の割合も 4 割以上でバランスのとれた電源構成となっている。

[▲13%ケース]

・原子力は、新増設基数 9 基を前提にすると設備利用率 90%超が必要である。設備利用率 90%

は、全てのプラントで「24 ヶ月連続運転」かつ「定期検査期間 2 ヶ月」を実現してようやく到達

できる水準であるが、社会的受容性等の問題もあり、2020 年時点での実現は困難。仮に、利用率

上昇による発電増分を太陽光や風力で代替する場合には、負荷調整力の不足など安定供給に重大

な支障をきたす恐れがある。

年度末設備容量

(万kW)

構成比 構成比 構成比 構成比 構成比

水力 4,574 19% 4,833 18% 4,833 20% 4,833 20% 4,833 20%

  一般 2,061 9% 2,158 8% 2,158 9% 2,158 9% 2,158 9%

  揚水 2,513 11% 2,675 10% 2,675 11% 2,675 11% 2,675 11%

火力 14,355 60% 15,829 59% 13,409 55% 13,269 55% 13,321 55%

  石炭 3,767 16% 4,698 18% 3,828 16% 3,788 16% 3,788 16%

  LNG 5,874 25% 6,938 26% 5,388 22% 5,288 22% 5,288 22%

  石油等 4,662 20% 4,141 15% 4,141 17% 4,141 17% 4,141 17%

  地熱 52 0% 52 0% 52 0% 52 0% 104 0%

原子力 4,958 21% 6,150 23% 6,150 25% 6,150 25% 6,150 25%

合計 23,887 100% 26,812 100% 24,392 100% 24,252 100% 24,304 100%

▲13%ケース

2020年度

大導入2005年度

現状固定 努力継続

発電電力量

(億kWh)

構成比 構成比 構成比 構成比 構成比

水力 813 8% 852 7% 821 8% 807 8% 807 9%

  一般 714 7% 781 6% 781 7% 781 8% 781 9%

  揚水 99 1% 71 1% 40 0% 26 0% 26 0%

火力 5,973 61% 6,868 56% 5,362 50% 4,267 44% 2,966 34%

  石炭 2,529 26% 3,030 25% 2,400 22% 2,008 21% 1,375 16%

  LNG 2,339 24% 3,159 26% 2,314 21% 1,796 19% 1,230 14%

  石油等 1,072 11% 645 5% 615 6% 430 4% 294 3%

  地熱 32 0% 33 0% 33 0% 33 0% 67 1%

原子力 3,048 31% 4,373 36% 4,374 41% 4,374 45% 4,860 55%

新エネルギー 56 1% 217 2% 217 2% 217 2% 217 2%

合計 9,845 100% 12,309 100% 10,774 100% 9,665 100% 8,850 100%

▲13%ケース

2020年度

大導入2005年度

現状固定 努力継続

-27-

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5.3 一次エネルギー国内供給

[ 大導入ケース]

・一次エネルギー構成は一層の多様化が見込まれ、非化石燃料シェアは現状 18%から 26%へ。

・石油依存度は 38%と「新国家エネルギー戦略」の目標である「40%を下回る」水準。

(原油換算百万KL)

構成比 構成比 構成比 構成比 構成比

一次エネルギー国内供給 588 100% 646 100% 598 100% 553 100% 541 100%

▲13%ケース

2020年度

現状固定 努力継続 大導入2005年度

石油 255 43% 229 35% 214 36% 191 35% 183 34%

LPG 18 3% 19 3% 19 3% 18 3% 17 3%

石炭 123 21% 141 22% 128 21% 116 21% 103 19%

天然ガス 88 15% 114 18% 95 16% 83 15% 66 12%

原子力 69 12% 99 15% 99 17% 99 18% 111 20%

水力 17 3% 19 3% 19 3% 18 3% 20 4%

地熱 1 0% 1 0% 1 0% 1 0% 1 0%

新エネルギー等 17 3% 23 4% 23 4% 27 5% 40 7%

5.4 部門別エネルギー起源CO2排出量

[ 大導入ケース]

・エネルギー起源CO2排出量は、2005 年総排出量比▲15%(1990 年総排出量比▲5%)となる。

・民生部門での削減が大きく(努力継続ケースからの削減幅:民生▲6500 万 t、産業▲2700 万 t、

運輸▲2000 万 t)、同部門での実効性の担保が必要。

・電力比率の高い民生部門では、非化石電源の効果も大きい。

[▲13%ケース]

・実効性を担保せず、モデル計算上で、1990 年総排出量比 13%削減を行なったケース。

(百万トンCO2)

現状固定 努力継続 大導入 ▲13%ケース

エネ起CO2排出量 1,059 1,203 1,245 1,120 994 891

  2005年GHG比 3% ▲ 6% ▲ 15% ▲ 23%

  1990年GHG比 15% 5% ▲ 5% ▲ 13%

産業 482 455 444 438 411 385

民生 292 412 474 382 317 256

  家庭 127 174 176 153 130 98

  業務他 164 238 298 228 187 158

運輸 217 257 241 221 201 190

エネルギー転換他 68 79 87 79 65 61

2005年度2020年度

1990年度

-28-

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6. 感度分析

前提条件の不確実性を考慮して、 大導入ケースをもとに以下の感度分析を行った。

6.1 国際エネルギー価格の影響

原油輸入価格が本試算想定値よりも、実質 20 ドル/バレル高かった場合。これは、IEA「World

Energy Outlook 2008」で想定されている価格に相当する。また、20 ドル低かった場合についても

行なった。LNG 価格、石炭価格も同率で上昇/下落。

100100

120

140$/bbl

90

0

20

40

60

80

1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030

実質価格 IEA 2008

本試

IEA 2007

算想定+20$

▲20$

(2020年度) 本試算想定価格上昇

ケース価格下落

ケース

原油価格($/bbl) 実質 90 110 70

名目 121 148 94

LNG価格($/t) 実質 844 1,031 656

名目 1,135 1,387 883

石炭価格($/t) 実質 102 125 79

名目 138 168 107

①エネルギー価格上昇時のマクロ経済への影響(2020 年度)

輸入価格の上昇による所得移転、国内物価上昇に伴う消費、投資の減退等により、2020 年断面

で実質 GDP が 0.5%の減少となる。企業物価は 1.1%、消費者物価は 0.5%上昇する。

生産活動への影響では、粗鋼生産▲0.5%(▲60 万t)、エチレン生産▲0.7%(▲5 万t)、セ

メント生産▲0.6%(▲40 万t)、紙パルプ生産▲0.5%(▲17 万t)となる。

輸送需要への影響では、ガソリン価格の高騰による台当り走行距離の減少等により、旅客輸送

は▲0.2%の減少となる。また、ガソリン価格の高騰により、軽乗用車の販売台数が増え(+0.3%)、

ラージクラスの需要が減少する(▲1%)。

-29-

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マクロ経済への影響(2020 年度)

20$上昇 20$下落 20$上昇 20$下落

原油価格 22.2% -22.2% 旅客輸送量 -0.2% 0.2%

LNG価格 22.2% -22.2% 自動車 -0.3% 0.3%

石炭価格 22.2% -22.2% 鉄道 -0.1% 0.1%

実質GDP -0.5% 0.5% 航空 -0.4% 0.3%

名目GDP -0.5% 0.4% 貨物輸送量 -0.5% 0.5%

GDPデフレータ 0.0% 0.0% 自動車 -0.5% 0.5%

消費者物価 0.5% -0.5% 鉄道 0.2% -0.2%

企業物価 1.1% -1.1% 船舶 -0.6% 0.6%

鉱工業生産指数 -0.6% 0.6% 乗用車台数 0.0% 0.0%

粗鋼生産 -0.5% 0.5% 台当り走行距離 -0.2% 0.2%

セメント生産 -0.6% 0.6% トラック台数 -0.5% 0.5%

エチレン生産 -0.7% 0.7% 台当り走行距離 0.1% -0.1%

紙板紙生産 -0.5% 0.5% 軽乗用車 0.3% -0.3%

世帯数 0.0% 0.0% スモールクラス -0.1% 0.2%

業務床面積 -0.1% 0.1% ミディアムクラス -0.1% 0.1%

サービス活動指数 -0.5% 0.5% ラージクラス -1.0% 1.0%

産業・民生活動

旅客輸送

貨物輸送

自動車

販売台数

価格

マクロ経済

変化率 変化率

②エネルギー価格上昇時のエネルギー需給への影響(2020 年度)

エネルギー価格の上昇と、経済・生産活動の減退等により、2020 年断面で 終エネルギー消費

は 0.7%減、一次エネルギー消費は 0.7%減となる。

エネルギー起源 CO2は、エネルギー需要の減少等により 0.9%減少する。1990 年 GHG 比で見れ

ば、▲5.9%まで低下する。

エネルギー消費量、エネルギー起源 CO2 排出量への影響(2020 年度)

本試算

変化率 変化率

合計(百万トン-CO2) 994 985 -0.9% 1,003 1.0%

(90年GHG比) -5.2% -5.9% -4.4%

産業 411 407 -1.0% 416 1.2%

家庭 130 129 -0.9% 131 1.0%

業務 187 185 -1.2% 190 1.3%

運輸 201 200 -0.4% 201 0.4%

合計(原油換算百万KL) 554 551 -0.7% 559 0.8%

石炭 116 115 -0.8% 117 0.8%

石油 209 207 -1.1% 212 1.2%

天然ガス 83 82 -0.8% 84 0.7%

原子力 99 99 0.0% 99

水力 19 19 0.0% 19 0.0%

合計(原油換算百万KL) 380 377 -0.7% 383 0.8%

産業 178 177 -1.0% 180 1.1%

家庭 51 51 -0.6% 51 0.7%

業務 73 72 -0.8% 73 0.8%

運輸 78 78 -0.4% 78 0.4%

エネ起CO2

一次エネ

終エネ

20$上昇 20$下落

0.0%

-30-

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6.2 原子力設備利用率による感度分析結果

本試算で想定されている設備利用率は約 80%であるが、仮に現状並みの 60%にとどまる場合や

米国、韓国並みに 90%まで上昇する場合。

0

10

20

1980 1990 2000 2007 2020

30

40

50

60

70

80

90

100設備利用率(%)

本試算想定

90%

70%

60%

設備利用率が 90%まで上昇すると、2020 年断面でエネルギー起源 CO2 は 大導入ケースより

2.4%減少する。1990 年 GHG 比で見れば▲7.1%まで低下する。設備利用率が 60%にとどまる場

合には、CO2は 90 年比▲0.8%まで上昇する。

本試算

[81%] 90%ケース 70%ケース 60%ケース

合計(百万トン-CO2) 994 970 1,023 1,049

(90年GHG比) -5.2% -7.1% -2.9% -0.8%

産業 411 404 420 428

家庭 130 122 140 149

業務 187 179 197 207

運輸 201 200 202 202

合計(原油換算百万KL) 554 556 552 550

石炭 116 112 121 125

石油 209 209 209 209

天然ガス 83 78 89 9

原子力 99 111 86 74

水力 19 19 19 19

合計(億kWh) 9,665 9,700 9,623 9,585

水力 807 807 807 807

石炭 2,008 1,816 2,243 2,457

天然ガス 1,796 1,537 2,112 2,400

石油等 430 430 430 430

原子力 4,374 4,860 3,780 3,240

新エネ・地熱 250 250 250 250

合計(%) 100% 100% 100% 100%

水力 21% 19% 23% 26%

石炭 19% 16% 22% 25%

天然ガス 4% 4% 4% 4

石油等 45% 50% 39% 34%

原子力 8% 8% 8% 8%

新エネ・地熱 3% 3% 3% 3%

原子力設備利用率

一次エネ

エネ起CO2

発電電力量

発電構成比

5

%

-31-

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7. ▲23%ケースについての評価

エネルギー起源 CO2を 1990 年総排出量比 23%まで削減することについては、「▲13%ケース」

で想定した以上の技術導入が必要となる。しかし、すでに「▲13%ケース」においては、規制的

措置によって物理的ポテンシャルに近い導入が想定されており、これ以上の技術導入の余地はほ

とんどないと考える。そのため、さらなる削減のためには、生産活動や輸送活動などへの規制措

置も検討する必要が出てくる。

大導入ケース ▲13%ケース

住宅太陽光発電 新築は 70%設置

世帯普及率 6%

320 万戸

新築持家は 100%設置

既存住宅にも設置

世帯普及率 20%

1,000 万戸

省エネ住宅 新築は 80%適用

住宅普及率 25%

1,250 万戸

新築は 100%適用

住宅普及率 30%

1,500 万戸

既存住宅も省エネ改築

省エネ建築物 建築物の 50% 建築物の 100%

高効率給湯器 世帯普及率 55%

2,800 万台

世帯普及率 90%

4,400 万台

次世代自動車 新車シェア 46%

保有シェア 19%

1,500 万台

新車シェア 100%

保有シェア 39%

3,100 万台

【炭素価格を導入する場合(KEO モデルとの連携)】

炭素価格を導入して、▲23%までに足りない分(90 年比 10%分、約 1億 2,000 万トン-CO2)を

削減する場合について試算を行った。KEO モデルとの連携により、炭素価格(約 9万円、KEO モデ

ル▲25%ケース試算結果)の導入を想定した。

上記の条件で、実質 GDP は 2020 年断面では「▲13%ケース」より約 6%低下する。このとき、

累積の GDP ロスは約 190 兆円となる。生産活動は 11%低下するが、エネルギー多消費型産業であ

る素材系 4業種については 20%前後の減産となる。また、輸送活動についても、旅客輸送が 7%、

貨物輸送が 19%低下する。

-32-

Page 34: エネ研日本モデルによる分析結果 - IEEJ · 8. 2050年のエネルギー需給の姿 . 9. 結論 (補論) エネ研『エネルギー需給モデル』の概要

炭素価格導入による「▲23%ケース」の影響(2020 年)

変化率▲13%ケース

▲23%ケース

変化率

実質GDP -6% 合計(百万トン-CO2) 891 770

鉱工業生産指数 -11% (90年GHG比) -13% -23%

粗鋼生産 -18% 産業 385 321 -17%

セメント生産 -25% 家庭 98 87 -11%

エチレン生産 -23% 業務 158 140 -12%

紙板紙生産 -29% 運輸 190 169 -11%

業務床面積 -1% 合計(原油換算百万KL) 541 482 -11%

サービス活動指数 -3% 石炭 103 87 -16%

旅客輸送量 -7% 石油 199 169 -15%

自動車 -9% 天然ガス 66 60 -10%

鉄道 -3% 原子力 111 111 0%

航空 -11% 水力 20 20 0%

貨物輸送量 -19% 合計(原油換算百万KL) 367 324 -12%

自動車 -23% 産業 177 148 -17%

鉄道 -7% 家庭 45 43 -5%

船舶 -14% 業務 69 64 -6%

運輸 76 68 -11%

終エネ

産業・民生・運輸活動

一次エネ

エネ起CO2

【各種活動の禁止措置を考える場合】

主要産品の生産禁止(産業構造・貿易構造の大幅な改変を伴う)や国民の我慢などを強いる場

合には、以下のような削減イメージとなる。これらの措置を組み合わせながら、90 年比 10%分の

CO2削減を行なうことになる。

・粗鋼生産の半減措置で、▲9,700 万トン-CO2(1990 年比▲7.7%)

・エチレン生産の半減措置で、▲2,000 万トン-CO2(同▲1.6%)

・セメント生産の半減措置で、▲1,900 万トン-CO2(同▲1.5%)

・紙パルプ生産の半減措置で、▲1,700 万トン-CO2(同▲1.3%)

・マイカー使用禁止で、▲8,900 万トン-CO2(同▲7.1%)

・家庭での冷暖房エアコンの使用禁止で、▲2,400 万トン-CO2(同▲1.9%)

・家庭、オフィス等での冷房使用禁止で、▲2,200 万トン-CO2(同▲1.7%)

なお、我が国で活動量を減らした場合、特に製造業の場合には、その分を海外で生産すること

となる。製鉄業の例(生産半減=6,000 万トンの減産)では、仮にその分を中国の増産でまかな

うとすると、日本と中国での効率の違いにより、日本の減産措置は全世界で 3,000 万トン-CO2(=

6,000 万トン×1.67t-CO2/粗鋼トン×0.3)の CO2の増加を招くことになる。

※生産禁止に付随する経済活動の停滞(失業者の増大)によるさらなるエネルギーの減少や、マイカー禁止に伴

うバス、鉄道などの増発によるエネルギーの増加などの副次的な効果は考慮していない。

-33-

Page 35: エネ研日本モデルによる分析結果 - IEEJ · 8. 2050年のエネルギー需給の姿 . 9. 結論 (補論) エネ研『エネルギー需給モデル』の概要

8. 2050 年のエネルギー需給の姿

2050 年の長期目標として、①世界のGHG排出量を現状より半減する、②日本は先進国の一員

として 60%~80%削減する、③今後 10~15 年の間に排出量を peak-out させる、の三点を発信し

ている。このため、これらとの整合性のとれたシナリオを整理することが必要とされる。今後、

2050 年までにアジアを中心としての世界のエネルギー消費が拡大する中で 2050 年迄のエネルギ

ー像を想定すると、

(1) エネルギー消費の中で電力の比重が高くなる。その際、 も重要なのは、原子力と再生可能

エネルギーの増大、CCSの地域的受容等である。

(2) 技術的には現在想定している革新は(核融合、宇宙太陽光等を除き)ほぼ実現していると考

える。

(3) 生活面では、「都市構造の変化」(大都市の省エネ化・新エネ化の徹底、compact city の全国的

展開)、「運輸部門の変化」(モーダルシフト、電気自動車の一般化、地産地消等)、「民生部門」

の省エネルギー化の徹底等が考えられる。

これらの想定のもと、本分析の「 大導入ケース」を 2050 年に伸ばしたケースを試算した。「エ

ネルギー消費」、「電源構成」、「CO2排出量」等の試算結果は以下のとおり。

8.1 一次エネルギー消費

日本の 2050 年のエネルギー像は激変する。一次エネルギー消費は 2005 年比約▲33%となり、

そのうち化石エネルギー消費は 05 年比で▲61%と大幅に減少する。化石エネルギーの構成比は

82%から 48%に大幅に低下する。省エネ効果( 終需要減少)は人口減(▲25%)減を考えても

▲38%が 大努力した場合の実現見通しであろう。

8.2 電源構成

需要の電力化が進展する中、原子力の役割が特に重要である。現在計画中・建設中の原子炉を

着実に運転開始した後、2030 年以降は発電容量の増加を伴うリプレースを続け、更に設備利用率

を 85%以上まで上昇させることにより、原子力の発電シェアは約 60%まで上昇する。外国との電

力融通があり得ないわが国では、電力の安定供給のためにはこれが限度とみられる。

新エネルギーについては、蓄電能力の向上等、系統安定化技術の進歩に伴って、発電シェアの

拡大が可能になると想定。太陽光は 2050 年迄に 05 年比 76 倍、風力は 35 倍増加させると推定し

ている。風力発電については国立公園での設置を許可する必要があるが、それを想定してもこれ

が目一杯と考えられる。

-34-

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8.3 CO2排出量

大限の省エネと非化石燃料の導入を想定して達成される 2050 年の CO2 排出削減量は、エネ

ルギー起源 CO2全体で 2005 年比▲65%の削減と試算される。

インフラ整備、技術開発・導入のリードタイムの長さ等を考えると、2020 年は、すでに導入が

確実とされる技術の普及が中心になる。それに対し 2025 年頃~2030 年には、 大限の努力を継

続することにより多くの革新的技術が実用化し、2035 年以降排出削減量が拡大する。これは、日

本の長期目標(2050 年に 60~80%削減)とも整合すると考えられる。

一次エネルギー供給

(原油換算百万KL)

(%) (%) (%) (%) (%)

石炭 123 21 21 21 16 11

46 39 38 34 26

15 16 15 14 1112 17 18 24 31

3 3 3 5 6

3 4 5 7 15

100 100 100 100 100

128 116 76 45石油 273 232 209 161 101天然ガス 88 95 83 67 43原子力 69 99 99 115 123水力・地熱 18 20 19 23 23新エネルギー 17 23 27 34 59

CO2排出量(CO2換算百万トン)

  (2005年度比)

2035年

728

61

2005年 努力継続 大導入

2020年実績

83

1120

100 93

1203 994

2050年

420

35

一次エネ供給 588 598 553 475 393

電源構成

0

200

400

600

800

1000

1200

努力継続

最大導入

10億kWh

26%

2005年 2020年 2035年 2050年

24%

31%

986

1%

11%

8%

22%

22%

41%

1,074

2%

6%

8%

21%

19%

45%

963

2%

4%

8%

13%

15%

9%

966

10%10%

1%3%

10%

856

62%

23%

1%

51%

新エネルギー

水力

原子力

石油等火力

LNG火力

石炭火力

4%

29%

44%

50%

61%

火力合計

-35-

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2050 年までの二酸化炭素削減パス

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1990 2000 2010 2020 2030 2040 2050

百万トンCO2

最大導入ケース(90年比▲5%、05年比▲15%)

努力継続ケース(90年比+5%、05年比▲6%)

90年比▲13%ケース(05年比▲23%)(年平均排出減少量)

-36-

-25-20-15-10

-50

2005-2020

2020-2035

2035-2050

百万トンCO2

エネ起CO2

05年比▲65%

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9. 結論

1.エネルギー需給分析においては経済活動、価格メカニズムに基づく分析に加えて具体的なエ

ネルギー技術の導入分析が不可欠であり、これを前提とした分析により、実現可能性の検討が可

能となる。

2.実現可能性の検討に当たっては政策の具体化が重要。政策手段によっては全ての経済主体(国

民、企業)に決定的な影響を及ぼすので、広く「国民的合意」と「政治的・政策的な決定」が不

可欠。今回のモデル分析について、その前提を含め国民に発信し、理解を得ることが必要。

3.国民合意の形成には以下の3点が必要。①低炭素社会に対する情報公開、教育、広報などを

通した新しい価値観の定着、②低炭素技術産業の育成など持続的経済成長の軸の形成、③結果と

しての公平性の確保(エネルギーは生活必需品であるため低所得者層への十分な配慮など)。

4.2020 年までのタイムスパンを考慮すると、「 大導入ケース」が CO2 削減の限界であると考

えられるが、日本が世界の常に半歩先を歩み続けることが、「日本の国際的地位の確保」、「日本産

業の持続的発展」のために重要であるので、更なる可能性を求めて国を挙げての努力が必要。し

かし、90 年比 13%削減については、厳しい負担から国民合意が得られるかどうかは疑問。25%

削減については不可能。

5. 大導入ケースの延長線上で 2050 年のエネルギー需給の姿を描くと、CO2 排出削減量は、

2005 年比▲65%の削減と試算される。これは日本の 2050 年目標(60%~80%削減)とも整合す

る。

-37-

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[補論] エネ研『エネルギー需給モデル』の概要

エネルギー需給見通しを行なうにあたって、エネルギーバランス表に基づいた「エネルギー需

給モデル」を使用する。また、エネルギー需給モデルを中核として、下図のような構造を持った

「モデル群」により、試算を行う。

 海外要因 : 世界貿易、為替レートなど

 経済政策 : 公共投資、税負担、社会保障など

 人口要因 : 人口、高齢化、世帯、労働力人口など

 GDP及びコンポーネント、 一般物価

 (産業別生産指数)、(主要製品生産量)

 業務用延床面積、 自動車保有台数等 石油製品、電力、都市ガス価格

 原油輸入価格、石炭輸入価格、LNG輸

入価格 エネルギー税など

  発電構成(発電量、設備容量)  燃料消費量

原子力、水力、発電効率など

  終エネルギー消費  産業部門 (業種別)  民生部門 (用途別)  運輸部門 (機関別)  エネルギー源別需要 (石炭、石油、電力、都市ガス等)

 エネルギー転換部門  発電部門  石油精製部門  都市ガス製造部門

 一次エネルギ供給

エネルギー需給バランス表

 CO2排出量

マクロ経済モデル(計量経済型) 二次エネルギー価格モデル(計量経済型)

エネルギー需給モデル

適電源構成モデル(LPモデル)

電力需要

は、外生または他のモデルより与えられる

 技術評価・導入モデル  新エネルギー導入モデル  分散型電源導入モデル  燃料電池導入モデル

 トップランナー等評価モデル  民生部門:機器効率(家電製品等)  運輸部門:保有燃費、クリンー車

各種技術評価・要素積上モデル

 産業別生産活動

産業連関モデル各種技術想定、補助金等

-38-

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マクロ経済モデル

所得分配、生産市場、労働市場、一般物価など整合的にバランスの取れたマクロフレームを算

出し、エネルギー需要に直接、間接的に影響を与える経済活動指標を推計する。

- GDP 及びコンポネント、生産量、IIP、業務用床面積、自動車販売台数など

二次エネルギー価格モデル

原油・LNG などのエネルギー輸入価格や国内の一般物価指数などから、エネルギー需要、選択

行動に影響を与えるエネルギー購入価格を推計する。

- 各石油製品価格、電力・電灯価格、都市ガス価格など

適電源構成モデル

エネルギー需給モデルにより推計された電力需要に対し、対象期間内における割引現在価値換

算後のシステム総コスト(設備費、燃料費)を動学的に 小化することにより、経済合理的で

適な電源構成(発電量、設備容量)を試算する。 適化手法は線形計画法を利用する。

- 電源構成(各種電源設備容量、発電量)

分散型電源導入予測モデル

産業用、業務用、家庭用のコージェネレーション及び燃料電池の導入市場規模を、過去の実績、

潜在需要量、競合エネルギー価格等から推計する。

- 分散型電源設構成(各設備容量、発電量、熱量)

要素積上モデル

回帰型のマクロモデルでは扱いにくい、トップランナー基準の効果を明示的に取り入れるために、

家電機器効率や自動車燃費などの省エネルギー指標を推計する。

- 民生部門の用途別機器効率、自動車部門の保有燃費

新技術導入評価モデル

今後導入が見込まれる HEMS、BEMS、高効率給湯器、新エネルギーについて、量産、普及に伴

う価格の低減や、投資回収年数に基づく導入率を踏まえ、導入量及び省エネ量を推計する。

- HEMS、BEMS の普及率、高効率給湯器等の導入台数、新エネルギーの導入量、省エネ量

エネルギー需給モデル

上述の各モデルから得られる経済活動指標、価格指標、省エネルギー指標などから各 終部門

におけるエネルギー需要を推計する。次に、発電部門等のエネルギー転換を経て、一次エネルギ

ー供給量を推計する。エネルギー源別の消費量をもとに、CO2排出量を計算している。

- 部門別エネルギー 終消費、エネルギー源別一次供給、CO2排出量など

-39-

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1. マクロ経済モデル

実質支出モジュールを中核とし、潜在成長率や物価指数などとともに整合的にバランスのとれ

たマクロフレームを算出する。そして、エネルギー需要に直接、間接的に影響のある経済活動指

標等を求める。

は、外生または

他のモデルより与えられる

   実質支出モジュール

    実質GDP    各コンポーネント     消費     投資     輸出入  など

 生産モジュール

  粗鋼等素材系生産量  各業種生産指数  など

 業務床面積モジュール

  事務所ビル  病院・福祉施設  など

 輸送需要ジュール

  機関別人キロ・トンキロ  クラス別乗用車台数  など

 財政モジュール

  政府貯蓄  財政赤字  など

 潜在GDPモジュール

   資本ストック

税収

政府支出

GDPギャップ

輸入物価

年齢別人口

GDP各コンポーネント

労働力人口技術進歩

可処分所得・法人所得

 賃金物価モジュール

  GDPデフレータ  各デフレータ  雇用者賃金  消費者物価指数  企業物価指数  など   

 名目支出モジュール

  名目GDP  各コンポーネント

デフレータ

諸物価

 所得分配モジュール

  国民所得  可処分所得  各種租税  など

 海外要因 : 為替水準、原油価格など 経済政策 : 公共投資、税負担など 人口要因 : 人口、世帯、労働力人口など

 労働モジュール

  就業者数  失業率  など

雇用者所得

[方程式数:383 本]

-40-

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実質支出モジュール

ケインジアンモデルを想定し、各コンポーネントをそれぞれ推計、総計として実質GDPを得る。

- 民需:消費支出、設備投資、住宅投資

公需:政府支出、公共投資

外需:輸出、輸入

賃金物価モジュール

為替、原油価格などの国外要因と需給ギャップなどの国内要因により、各一般物価を推計する。

- 賃金、企業物価指数、消費者物価指数、GDP の各デフレータ

名目支出・所得分配・財政モジュール

国民所得を租税、補助金等を通して、個人、企業、政府に分配する。さらに、政府支出額と租

税額より財政バランスを見る。

生産モジュール

関連する各支出コンポーネントより、素材系生産量、鉱工業生産指数(9 業種)を推計する。

例えば、粗鋼生産は、民間投資、住宅投資、公共投資等を説明変数として回帰推計している。

- 素材系生産量 :粗鋼、エチレン、セメント、紙、パルプ

鉱工業生産指数:食料品、繊維、紙・パルプ、化学、窯業土石、鉄鋼、

非鉄金属、金属機械、その他

業務用床面積モジュール

関連する経済・社会指標より、業務部門における各業種(8業種)の延床面積を推計する。例え

ば、飲食店は女性の就業率、病院福祉施設は 65 歳以上人口といった指標を説明変数に含めている。

- 事務所、飲食店、卸小売、学校、ホテル、病院福祉施設、娯楽施設、その他

輸送需要モジュール

関連する経済、社会指標より、各輸送機関別の輸送需要(人キロ・トンキロ)を推計する。さ

らに、自動車については、乗用車、貨物車の保有・販売台数を推計する。推計された販売台数は、

保有燃費を計算する要素積上モデルに反映される。

- 人キロ、トンキロ × 自動車、鉄道、船舶、航空

クラス別(軽、スモール、ラージなど)の乗用車・貨物車販売台数

-41-

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2. エネルギー需給モデル

本モデルの中核をなす「エネルギー需給モデル」は、「 終エネルギー消費部門(産業、民生、

運輸)」、「エネルギー転換部門(発電、石油精製、都市ガスなど)」、「一次エネルギー供給部門」

からなり、エネルギーバランス表に基づき、全ての需給バランスの見通しを描くことが出来る。

《 終エネルギー》

【エネルギー源別】

【用途別】

【エネルギー源別】

【機関別】

【エネルギー源別】

【業種別】

  《転換部門》

 

《一次エネルギー》

経済活動指標

(GDP、生産量、世帯数、床面積、輸送需要など)

各種エネルギー価格

は、外生または

他のモデルより与えられる

産業部門  【業種別】

           農林水産

           建設・鉱業

           製造業

            食料品

            繊維

            紙パルプ

            化学

            窯業土石

            鉄鋼

            非鉄金属

            金属機械他

民生部門  【用途別】

           暖房

           冷房

           給湯

           厨房

           動力・照明

運輸部門   【機関別】

           自動車

           鉄道

           船舶

           航空

石炭製品 石油製品 都市ガス 電力

石炭 石油 天然ガス 原子力 水力 地熱

石炭製品製造 石油精製 都市ガス製造 系統電源 分散型電源

石炭製品 石油製品 都市ガス 電力

石炭製品 石油製品 都市ガス 電力

《電源構成》

石炭 石油 LNG 原子力 水力 新エネ

二酸化炭素

供給計画

新エネ

-42-

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【エネルギーバランス表の行・列】

部門別(行) 部門別(行) つづき エネルギー別(列)

一次エネルギー 終エネルギー消費 原料炭

国内産出 産 業 一般炭等

輸 入 農林水産業 石炭製品

輸 出     鉱 業 原 油

供給在庫変動     建設業 石油製品

国内供給   製造業計 ナフサ

一般用電力     食料品 ガソリン

外部用電力     パルプ紙板紙 ジェット燃料油

自家用発電     化 学 灯 油

製造業自家発電     石油製品 軽 油

パルプ紙板紙     窯業土石 重 油

化学     鉄 鋼 A重油

石油製品     非鉄地金 C重油

窯業土石     機 械 その他石油製品

鉄鋼     他業種・中小製造業 LPG

非鉄地金 民 生 天然ガス

機械    家 庭 (用途別) 都市ガス

他自家発電    業 務 (用途別) 再生可能・未活用エネルギー

産業用蒸気 運 輸 太陽光発電

パルプ紙板紙    旅 客 風力発電

化学      自家用乗用車 廃棄物発電

石油製品      営業用乗用車 バイオマス発電

窯業土石      バ ス 太陽熱利用

鉄鋼      鉄 道 未利用熱利用

非鉄地金      船 舶 廃棄物熱利用

機械他      航 空 バイオマス熱利用

地域熱供給    貨 物 黒液・廃材等

都市ガス製造      自動車 地熱

石炭製品製造      鉄 道 事業用水力発電

石油製品製造      船 舶 原子力発電

他転換      航 空 電 力

自家消費・送配損失 非エネルギー利用 一般用電力

消費在庫変動   産業部門 外部用電力

統計誤差    農林水産・鉱・建設・食料品 自家用電力

   パルプ紙板紙 熱

   化 学

   石油製品

   窯業土石

   鉄 鋼

   非鉄地金

   機 械

   他業種・中小製造業

  民生部門

  運輸部門

ギー

ギー

ギー

ギー

ギー

-43-

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2.1 終エネルギー消費部門

(1) 産業部門

【産業部門のモデル構造】

産業活動指標

(素材系生産量、各業種IIPなど)

各種エネルギー価格

産業部門

エネルギー源別

終消費

経団連自主行動計画

産業別/燃料・原料原単位

は、外生または

他のモデルより与えられる

産業別/電力原単位

 産業別

  農林水産

  建設・鉱業

  製造業

   食料品

   紙パルプ

   化学

   石油製品

   窯業土石

   鉄鋼

   非鉄地金

   機械

   他業種・中小

新エネルギー導入量

産業別/燃料・原料需要

電力需要

エネルギー価格

燃料別需要

エネルギー間競合

省エネルギー対策

① モデルの基本構造 エネルギー需給モデルにおけるエネルギー消費量算出の基本構造は以下の通り。

エネルギー消費 = 生産活動指標 × 消費原単位 - 各種省エネ対策

(燃料・電力) (生産量・生産指数) (自主行動計画を織り込む)

-44-

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産業別:農林水産業、建設鉱業、製造業(3 産業)

うち製造業:食料品、パルプ紙板紙、化学、石油製品、窯業土石、鉄鋼、非鉄地金、機械、

他業種・中小製造業(計 9 業種)

② 推計に当たっての基本的考え方 ○生産活動指標の設定;

「マクロ経済モデル」から推計される数値を与える。

※ただし、本試算では各業界ヒアリングに基づく数値を参考に想定。

(素材系生産量)粗鋼、エチレン、セメント、紙・パルプ

(鉱工業生産指数)食料品、紙・パルプ、化学、窯業土石、鉄鋼、非鉄地金、機械、その他

○消費原単位の設定;

日本経団連自主行動計画による原単位改善努力を見込みながら回帰モデルによる推計。

消費原単位= f(生産要因、価格要因、技術トレンドなど)

○各種省エネルギー対策の設定;

業界関係者、技術専門家等のヒアリングを参考に想定。

-45-

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(2)民生部門

【民生部門のモデル構造】

GDP, 個人消費

人口, 世帯数

エネルギー価格

気温

世帯当たり

用途別需要量

床面積当たり

用途別需要量

家電製品等機器効率

住宅断熱性能

建築物省エネ性能

床面積当たり用途別

エネルギー源別需要量

エネルギー源間競合 エネルギー源間競合

世帯当たり用途別

エネルギー源別需要量

エネルギー価格

世帯数

家庭部門用途別

エネルギー源別需要量

業務部門用途別

エネルギー源別需要量

新エネルギー導入量

民生部門

エネルギー源別

終消費

業務部門

は、外生または

他のモデルより与えられる

家庭部門

暖房用

冷房用

給湯用

厨房用

動力照明用

暖房用

冷房用

給湯用

厨房用

動力照明用

業務用延床面積

省エネルギー対策

要素積上モデル

HEMS、BEMS

高効率給湯器

導入評価モデル

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① モデルの基本構造 ○エネルギー消費量算出の基本型

エネルギー消費 = 経済・社会活動指標 × 消費原単位 - 各種省エネ対策

(用途別) (世帯数・業務用床面積) (用途別)

※用途別:暖房、冷房、給湯、厨房、動力照明他(5 用途) ※業務用床面積はマクロ経済モデルで推計された 8 業種の和である。 →業種別:事務所ビル、飲食店、卸小売、学校、ホテル、病院、娯楽施設、その他

② 推計に当たっての基本的考え方 民生部門のエネルギー消費原単位の評価においては、所得要因、価格要因の他に、将来のエネ

ルギー需給に影響を及ぼすと想定される高齢化、世帯構成、女性の就業率をはじめとした社会的

要因や省エネルギーの進展も考慮に入れている。

○用途別の消費原単位の推計では、次式の回帰式を基本型としている。

消費原単位= f(所得要因、価格要因、社会的要因、気温、省エネ)

→社会的要因:高齢化、世帯構成、女性の就業率、住宅に占める戸建比率など

→省エネ:トップランナー基準を考慮した家電製品などの機器効率、住宅・建築物の断熱効

率、エネルギーマネジメントなど

○エネルギー源別の消費原単位、消費量は、「二次エネルギー価格モデル」において試算された価

格やオール電化普及状況などに基づき、エネルギー間競合を経て決定される。

○各種省エネルギー対策の設定;

投資回収年数受容曲線などを用いて普及状況及び省エネ効果を測定。別途、業界関係者、技術専

門家等のヒアリングを行い、これを参考にしている。

-47-

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③ 要素積上モデル 販売ベースの機器効率から、販売年別残存保有台数を通して、保有ベースの機器効率を推計す

る。トップランナー機器、高効率給湯器、住宅断熱の効果を明示的に織り込むことが出来る。

世帯数

タイムトレンド

○年製 販売台数

は、外生または

他のモデルより与えられる

トップランナー対象

14品目を

含む全34品目

経年残存率

残存保有台数

保有台数

保有ベース機器効率

○年製 販売台数 残存保有台数

○年製 販売台数 残存保有台数

・・・・・・・ ・・・・・・・

製造年度別 機器効率

(製品別トップランナー基準)

加重平均

○年製 機器効率

○年製 機器効率

○年製 機器効率

・・・・・・・

-48-

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(3)運輸部門 運輸部門は、部門別(2区分)、輸送機関別(4区分)に分割している。

○ 部門別 :旅客部門、貨物部門 ○ 輸送機関別:自動車、鉄道、船舶、航空

【運輸部門のモデル構造】

GDP、 人口、免許保有率

素材系生産量、公共投資、IIP

エネルギー価格

エネルギー源別需要

運輸部門機関別

エネルギー源別需要量

運輸部門

エネルギー源別

終消費

次世代自動車

普及台数

保有台数(台)

自動車

保有燃費(km/L) 新車燃費

新車販売台数

走行距離(km)

鉄道・航空・船舶

消費原単位

(kcal/人・km、kcal/トン・km)

輸送需要(人・km、トン・km)

エネルギー源別需要

は、外生または

他のモデルより与えられる

省エネルギー対策

要素積上モデル

次世代自動車

販売台数

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① 自動車部門 ○エネルギー消費量算出の基本型

エネルギー消費量=保有台数×走行距離/(保有理論燃費×使用状況係数)-各種省エネ対策

・保有台数は、経済動向、人口などによって推計。また、車種構成は所得や貨物需要構成、及び

燃料価格などによって推計される。

・走行距離は、所得、貨物需要及び燃料価格などによって推計

○要素積上モデル 販売ベースの燃費(新車燃費)から、年式別残存保有台数を通して、保有ベースの燃費(保有

理論燃費)を推計する。トップランナー基準の効果を明示的に織り込むことが出来る。

【要素積上モデルの構造】

GDP、IIP、 人口、免許保有率

エネルギー価格

○年式 新車販売台数

は、外生または

他のモデルより与えられる

乗用車・貨物車

×

ガソリン・軽油

×

車両重量別

経年残存率

(逆ロジスティック曲線)

残存保有台数

保有台数 保有燃費

○年式 新車販売台数 残存保有台数

○年式 新車販売台数 残存保有台数

・・・・・・・ ・・・・・・・

総和

年式別 新車燃費

(車重別トップランナー基準)

加重調和平均

○年式 新車燃費

○年式 新車燃費

○年式 新車燃費

・・・・・・・

② 自動車以外の輸送機関 ○エネルギー消費量算出の基本型

エネルギー消費量 = 輸送需要 × 消費原単位

(鉄道、船舶、航空) (人キロ・トンキロ) (外生)

○各輸送機関の輸送需要は、GDP、IIP、燃料価格などより回帰推計している。

-50-

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2.2 (参考)主要推計式

各部門における主要な推計回帰式は以下のとおり。

(1)産業部門

エネルギー需要 = 生産量 × エネルギー消費原単位 (業種別)

・生産量はマクロ経済モデルから算出される。

・消費原単位=f(生産要因、価格要因、技術トレンドなど)

以下に、紙パルプのエネルギー消費原単位の例を示す。燃料と電力に分けて原単位を推計してい

る。

(例1)紙パルプ・燃料原単位 ( 小二乗法 1980 - 2004年 )

LOG(燃料原単位) = +2.29727 -.302567*(LOG(紙生産量)) +.369025*(LOG(パルプ生産量/紙生産量))

' (1.70) (-1.91) (1.20)

-.101363*(LOG(燃料平均価格/企業物価指数)) +.465270*(LOG(燃料原単位(前期)))

' (-2.46) (2.69)

' 決定係数= 0.9514 標準誤差= 0.036 ダービン・ワトソン比= 2.009

(例2)紙パルプ・電力原単位 ( 小二乗法 1975 - 2004年)

LOG(電力原単位) = +1.45388 -.071458*(LOG(紙生産指数))

' (2.89) (-2.32)

-.103976*(LOG(電力価格/企業物価指数))

' (-3.58)

+.620038*(LOG(電力原単位(前期)))

' (5.29)

' 決定係数= 0.9610 標準誤差= 0.014 ダービン・ワトソン比= 1.940

※括弧内はt値

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(2)家庭部門

エネルギー需要 = 世帯数 × エネルギー消費原単位 (用途別)

・世帯数は人口問題研究所による推計を参考に想定。

・消費原単位=f(所得要因、価格要因、社会的要因、気温、機器効率など)

以下に、暖房用消費原単位、給湯用消費原単位の例を示す。家庭部門は、所得と価格、機器効率

以外にも、ライフスタイルの変化や気温の影響が大きい。

(例1)家庭・暖房用 ( 小二乗法 1975 - 2005年)

暖房用原単位/(断熱効率*機器効率) = -21,159.7 +487.4170*(民間消費/世帯数)

' (-2.12) (2.49)

-5,732.99*((燃料平均価格/消費者物価指数)*(断熱効率*機器効率))

' (-6.05)

+144.9946*(高齢者人口比率) +1.58002*(暖房度日)

' (3.08) (6.92)

+4,820.35*(世帯人数)

' (2.01)

' 決定係数= 0.9786 標準誤差= 104.450 ダービン・ワトソン比= 1.417

(例 2)家庭・給湯用 ( 小二乗法 1980 - 2005 年)

LOG(給湯用原単位/機器効率) = +5.39936 +.521824*(LOG(民間消費/世帯数))

' (13.96) (2.09)

-.518305*(LOG((燃料平均価格/消費者物価指数)*機器効率)) +.000157*(暖房度日)

' (-3.47) (2.43)

-.000222*(冷房度日) +.226840*(世帯人数)

' (-2.85) (5.07)

' 決定係数= 0.8430 標準誤差= 0.028 ダービン・ワトソン比= 1.765

※括弧内はt値

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(3)自動車部門

エネルギー需要 = ①保有台数 × ②走行距離 × ③保有燃費

・①保有台数=f(人口、所得水準など)

・②走行距離=f(所得要因、価格要因、社会的要因など)

・③保有燃費=f(保有車種構成、技術要因、燃費規制、渋滞など)

車種別 保有台数

[フロー・ストック変換]

車種別 新車販売台数=f(所得要因、価格要因、社会的要因など)

以下に、乗用車販売シェア、走行距離の例を示す。ガソリン価格の上昇は、大型車よりも燃費の

良い小型車への選択を促す。車種構成の変化を通して、保有燃費にも影響を与えることになる。

(例 1)大型乗用車の販売シェア ( 小二乗法 1975 - 2005 年)

大型車販売シェア = +.077636 +.036402*(1人当たりGDP)

' (2.11) (2.30)

-.048948*(ガソリン価格/消費者物価指数)

' (-1.28)

-.183637*(女性免許保有者/免許保有者計) +.241885*(大型車販売シェア(前期)

' (-1.73) (2.90)

' 決定係数= 0.9932 標準誤差= 0.006 ダービン・ワトソン比= 2.103

(例2)軽自動車の販売シェア ( 小二乗法 1985 - 2005年)

軽乗用車の販売シェア = -.640596 +1.57486*(女性免許保有者/免許保有者計)

' (-2.22) (2.17)

+.626727*(ガソリン価格/消費者物価指数) +.651819*(軽乗用車の販売シェア(前期))

' (1.65) (3.56)

' 決定係数= 0.9630 標準誤差= 0.017 ダービン・ワトソン比= 1.708

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(例3)乗用車の平均走行距離 ( 小二乗法 1975 – 2005年)

平均走行距離 = +5,658.66 -2,915.01*(乗用車保有率) +247.1051*(1人当たりGDP)

' (2.87) (-3.11) (1.17)

-2,160.45*(ガソリン価格/消費者物価指数) -2,150.92*(女性免許保有者/免許保有者計)

' (-1.93) (-1.24)

+.536752*(平均走行距離(前期))

' (3.13)

' 決定係数= 0.9061 標準誤差= 110.839 ダービン・ワトソン比= 2.482

※括弧内はt値

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2.3 エネルギー転換部門

エネルギー転換部門は、各部門別の 終エネルギー消費(二次エネルギー)を供給(生産)す

るために必要な投入エネルギー量を求めるモデルである。

(1)発電部門 終需要電力量を算出したあと、必要な発電量及び各燃料投入量(電源構成)を推計する。電源

構成については、「 適電源構成モデル」により決定する。

○ 適電源構成モデル

対象期間内における電力需要(日負荷曲線)の想定に対して、各種電源運用制約、電源建設制

約等を考慮した上で、計画期間内における電源固定費用、電源可変費用が 小になる 適解(

適電源建設計画、 適電源運用計画)を導出するモデルである。

【 適電源構成モデルの構造】

 線形計画法(LP)により、 各種運用制約の下、 適化を実施

は、外生または

他のモデルより与えられる

 目的関数

 対象期間内における 電源固定費及び燃料費    適電源構成データ

  電源設備量  発電量  設備利用率  など

電力需要

 電源設備データ (電源種別)

  建設単価  燃料価格  熱効率  など

 電源運用データ

  設備利用率上限  負荷追従率上下限  燃料消費制約  など

小化

 制約条件

  電力需給バランス  供給予備率制約  設備利用率制約  負荷追従制約  揚水動力に関する制約  など

適解

(2)石油精製・都市ガス製造部門 石油精製部門では、各油種別の精製量と原油処理量を推計する。まず、各油種別の需要量(

終部門+転換部門)から必要な精製量を推計する。次に、油種毎の精製量を総和し、これに必要

な原油処理量を推計する。

都市ガス製造では、都市ガス需要量から原料として必要な投入量を推計し、LNG、LPG などに

配分する。

石炭製品製造では、コークス需要量から必要な原料炭投入量を推計すると同時に、発生・回収

される石炭系ガスの需給を推計する。

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2.4 エネルギー技術

(1)技術積上モデル

「エネルギー技術戦略」を基に普及する技術を選定した上で、当該技術について下記の方法の

いずれかにより普及状況を見通した。

① 普及曲線の利用

価格情報のある技術の評価においては、投資回収年数受容曲線を用いて、各時点における投資

回収年数から技術の顕在化率(新技術導入者数/(従来技術買替数+需要拡大量))を算出。

0%

20%

40%

60%

80%

100%

0 5 10 15

投資回収年数(年)

顕在

化率

(%)

投資回収年数

受容曲線の例

② S字曲線の利用

価格情報がない技術については、時間とともに顕在化率が増加することを直接表す「S字曲線

(ロジスティック曲線)」を用いて技術の普及率を算出。

0%

50%

100%

顕在

化率

(%)

③ ①②を用いない想定

製造プロセスにおける省エネ技術の場合、当該技術が適用される地点や設備が限定的であるこ

と、企業や業界団体によってはある程度導入計画が定まっている可能性があることから、コスト

に関する情報がない場合は、ヒアリング等による想定を行った。

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(2)新エネルギー導入モデル

基本的な考え方は、習熟曲線(式 1)によってコストが低下する一方、累積導入量はロジスティ

ック曲線(式 2)で決定される。

β−

⎟⎠

⎞⎜⎝

⎛×=XXCC t

t0

0 (式 1)

ここで、 Ct:t 期におけるコスト、 C0:初期コスト、 Xt:t 期における累積導入量、

X0:初期累積生産量、 β:パラメータ

btt eaKX −×+

=1

(式 2)

ここで、 Xt:累積導入量、 K:導入量の上限

t:時間 a と b:パラメータ

習熟曲線は右下がりの曲線であり、その形状はパラメータβによって決定される。式 1 より、

累積生産量が 2 倍になった時のコスト低下率(F)は、次式のように表すことができる。

Ft=Ct/C0=(Xt/X0)-β=2-β

各種技術の先行例から、Ftを先に想定し、パラメータβは次式から求めるのが一般的である。

β=-log(Ft)/log(2)

0.60

0.65

0.70

0.75

0.80

0.85

0.90

0.95

1.00

1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0Xt

Ct

β=0.15

β=0.30

X0=1、C0=1

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2.5 一次エネルギー供給部門

一次エネルギー国内供給量は、転換部門で投入された一次エネルギー量と、 終消費部門でエ

ネルギー転換を経ないで消費された量の合計として求められる。

エネルギー源 A B C D E F G

部門石炭 石油 ガス

水力・地熱他

原子力 電力 合計

1 1 1 3 28 61 0 932 120 274 76 0 0 0 4693 121 275 78 28 61 0 5634 -3 -18 -0 0 0 0 -215 118 256 78 28 61 0 5426 -54 -16 -50 -21 -61 80 -1217 -19 -17 0 -7 0 16 -26転

電気事業者

その他

一次供給

国内生産

輸入

一次総供給計

輸出等

一次国内供給計

8 -3 -14 -2 0 0 -10 -299 39 216 26 4 0 87 372

10 38 91 10 2 0 36 17811 1 35 16 1 0 49 10212 0 90 0 0 0 2 92

終消費

終消費計

産業

民生

運輸

換自家消費ロス

石油換算百万トン

一次供給の姿

電源構成

終消費構造

ここで得られたエネルギー源別の一次エネルギー国内供給をもとに、CO2排出量を計算している。

CO2排出量 =Σ燃料種別[ エネルギー消費量 × CO2排出原単位 ]

(但し、石油化学原料などの非エネルギー分は控除する)

※各部門別の CO2排出量は、電力など間接排出分を按分している。

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