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心肺蘇生の生理学 2016.3.29 ICU勉強会(JC吉住花子

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Page 1: 心肺蘇生の生理学CPRにおいて、PPVより胸骨圧迫の方が予後改善に 寄与する影響が大きい可能性あり。 Hands-only CPR NEJM 2015;373(23):2203-79 Con8nuous

心肺蘇生の生理学

2016.3.29ICU勉強会(JC)

吉住花子

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Reviewの目的

•  心停止後の生存率  院外(外傷除く):1%~20%以下、院内:40% そのうち10~50%の患者は神経学的予後不良

•  心肺蘇生の循環生理・血行動態については 未だに不明な点も多いため、生理学的な視点から、質の高いCPRの方法を再考する。

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Conven8onalCPRPhysiologyTheCompressionPhase

[胸骨圧迫時の循環生理]      胸骨圧迫・胸腔内圧の上昇

胸骨と胸椎による心臓の圧迫

   大動脈・右房の圧迫

脳・冠動脈・全身へ

血液の拍出

頭蓋内圧(ICP)が上昇

脳灌流(CerPP)が低下

AnesthAnalg2016;122:767-83

※右房(右心系)の圧も大動脈と  ほぼ同程度の高圧になる

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CommonErrorsDuringChestCompression

•  Resuscita8onoutcomesconsor8um(ROC):アメリカ・カナダのemergencymedicalservice(EMS)からなるネットワーク•  心停止患者にEMSが施行したCPRの胸骨圧迫の深さと胸

骨圧迫率を記録•  18歳以上の院外心停止患者1029人•  主要評価項目:生存退院率  副次評価項目:ROSC、24時間生存率•  期間:2006年5月から2009年6月

CritCareMed.2012;40(4):1192-98

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•  ROSC:26%、24時間生存率:18%、生存退院率:5%

•  胸骨圧迫の深さが深くなるほど生存退院率、ROSC、初日の生存率が改善する傾向。

•  50-60㎜をこえるとそれ以上の深さでのメリットはなさそう。

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TheChestDecompressionPhase胸骨圧迫解除

胸壁のrecoil

心臓への血液の充満

•  S-CPRでの受動的なrecoilでは

血液灌流は不十分になりうる。•  肋骨骨折が起こると、さらに

recoilの妨げになる。

胸腔内圧の低下

ICPの低下

脳灌流(CerPP)増加

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•  Resuscita8onoutcomesconsor8um(ROC) :アメリカ・カナダのemergencymedicalservice(EMS) からなるネットワーク•  心停止患者にEMSが施行したCPRの質を除細動モニターで

記録•  主要評価項目:生存退院率  副次評価項目:ROSC•  20歳以上の院外心停止患者3098人•  期間:2005年12月から2007年5月

Circula8on2012;125(24):3004-12

CommonErrorsDuringChestDecompression

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•  ROSC:1082/3098(35%)、生存退院率:265/3098(8.6%)•  120回/min程度をこえる胸骨圧迫は避けた方がよい可能性が

ある。 (不十分な拡張期血液充満時間、不十分な圧迫の深さとリコイルのためと考えられる)

生存退院率ROSC率

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Posi8vePressureVen8la8onDuringCPR陽圧換気

肺胞への空気の流入

酸素化の促進

肺動脈・肺静脈の拡張

肺循環の促進

              胸腔内圧の上昇

右心系への静脈灌流(前負荷)の低下    ICPの増加                  右心系の後負荷の増加            CerPP低下※ 陽圧換気中の心臓・脳・肺血流の相互関係は   非常に複雑である。

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CommonErrorsDuringVen8la8on

•  院外CPRで平均37回/minもの換気が行われている観察研究がある。       CritCareMed2004;32:S345-51

•  過換気は脳と心筋への血液灌流を減少させる。                              CritCareMed2004;32:S345-51

•  CPRの初めの数分における換気の欠除により、細気管支そして肺血管床の虚脱が起こる。

                    Resuscita8on2008;79:125-32

・過換気は避けるべきだが、換気が不十分なことも望ましくない。・「適正な換気」は、神経学的機能予後と生存率改善のために  重要である。

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•  一般市民の「胸骨圧迫のみ」CPRは、生存率上昇と関連(通常CPRに対するOR:1.6,95%CI:1.2-2.3)

JAMA2010;304:1447-54

•  バイスタンダーに胸骨圧迫のみ、もしくは胸骨圧迫+人工呼吸の指示をした2群で比較したところ、生存退院率に有意差はみられなかった。

 (胸骨圧迫のみ vs.人工呼吸あり12.5%vs.11.0%,P=0.31)                   NEJM2010;363:423-33

CPRにおいて、PPVより胸骨圧迫の方が予後改善に 寄与する影響が大きい可能性あり。

Hands-onlyCPR

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NEJM2015;373(23):2203-79

Con8nuousvs.Interrupted

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Introduc8on

•  胸骨圧迫の中断は循環血流を減少させ、CPRの効果を減弱させる可能性がある。

Circula8on2001;104:2465-70

•  動物実験において、持続的な胸骨圧迫は、呼吸のために胸骨圧迫を中止した群と比較し、神経学的予後の改善を認める。

Circula8on2002;105:645-9

持続的な圧迫はよいと考えられている。可能な限り中断はしないが、換気に伴う中断は

許容されるかを検討。

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[Study design]クラスター無作為化クロスオーバー試験→114救急医療機関を47グループに分類し、各グループを介入群とコントロール群にランダム化し、年に2回介入群と非介入群をクロスオーバー[Subjects]①介入群:持続的な胸骨圧迫1分間に100回の胸骨圧迫と1分間に10回の非同期的な陽圧換気。 ②コントロール群:換気のため中断を伴う胸骨圧迫1分間に100回の胸骨圧迫に加え、陽圧換気を、胸骨圧迫換気比30:2で行う。換気に伴う胸骨圧迫中断は、5秒未満。[blind] なし

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[samplesize]・検出力:90%・生存退院率を以下のように仮定 control(胸骨圧迫中断): 8.1% interven8on(持続胸骨圧迫): 9.4%(16%増の改善)・両側のα-level:0.05⇒N:23,600人と見積もり[outcomes]•  主要評価項目:生存退院率•  副次的評価項目:退院時の神経学的予後(mRS,modifiedRankinscale)

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[inclusioncriteria]•  外傷を除く院外心停止成人患者•  EMSによる胸骨圧迫

[exclusioncriteria]•  EMSによるバイスタンダーCPR•  Trialに参加していないEMSによるCPR•  明らかな呼吸が原因の心停止•  DNARorderのある患者•  気管切開後の患者•  大量出血•  EMS到着前の高度な気道確保•  機械による胸骨圧迫

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両群における生存率、良好な神経学的予後(mRS≦3)は同等

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Editorial•  これまでの観察研究では、換気のための中断

をしない持続的胸骨圧迫の重要性が言われていたが、本研究で中断(30:2)が予後悪化に関連しない可能性が示された。 

                ・bundle-of-careで持続胸骨圧迫以外の項目が生存率を改善させた?・非介入群においても胸骨圧迫時間比:77%はガイドラインでの推奨(60%)よりも高く、それほど「中断」にはなっていなかった?

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GaspingandcoughingduringCPR

あえぎ呼吸や咳

胸腔内圧の低下

肺への空気流入静脈灌流の増加

ICPの減少CerPPの上昇

•  CPR中、あえぎ呼吸は延髄の再灌流が生じた患者に見られることがある。

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Limita8onsofConven8onalCPR

•  質のよいS-CPRを行ったとしても、通常の心拍出量の15-25%程度にしかならない。

                     JApplPhysiol1993;74:147-52

Beyondconven8onalS-CPR

 CPR中の血行動態を理解し、心停止後の予後改善の ために新しいアプローチ法の開発が試みられてきた。

•  IPRIntrathoracicPressureRegula8on(ITD,ACD)•  頭高位CPRによる再灌流障害減少の可能性。

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•  ImpedanceThresholddevice(ITD)胸骨圧迫解除

リコイル時の空気の流入を防ぎ

胸腔内圧の上昇を防止

静脈灌流の増加    ICPの低下               CerPPの増加

マスクや挿管チューブなどのデバイスに付けて使用

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IntrathoracicPressureRegula8onTherapy

•  Ac8vecompressiondecompression(ACD)

胸郭を引き上げる・押し下げるを繰り返し行う。

胸腔内圧の変化を適切に制御

S-CPRよりも効率的かつ確実かも?

※特にDecompression時に確実なリコイルに加えて外からの陰圧で能動的に胸腔内圧の低下を起こすことで有利な静脈灌流を得られる

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ACD+ITD使用でS-CPRに比べ心拍出量の増加・脳灌流の増加を認める。

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Conven8onalorStandardCPRandtheImpedanceThresholdDevice

NEJM2011;365(9):798-806

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<ROC-PRIMEDtrial>Resuscita8onoutcomesconsor8umPrehospitalResusucita8onusinganIMpedancevalveandEarlyversusDelayedanalysis•  米国・カナダの10施設での8718人の院外心停止患者•  患者、研究者、医療提供者すべてで盲検化•  ITD使用(4345人)と偽器具を用いた群(4373人)に割り付け。•  主要評価項目:mRS≤3の生存退院

生存退院、神経学的予後について両群で有意差なし

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ROCPRIMED試験のpost-hocanalysis

•  心肺蘇生の質が結果に影響した可能性を検討。•  質の高いS-CPRが施行されたとされた1675人に対象を限定<質の高いCPR>胸骨圧迫80-120回/分、深さ4-6cm、胸骨圧迫時間比50%以上•  実際のITD使用群(848人)と偽器具使用群(827人)で比較。

Resuscita8on2015;94:106-14

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•  生存退院、神経学的予後はいずれもITD使用群で良好

•  CPRの質によって結果が修飾されていた可能性が示唆された。•  ただしルーチン使用を推奨するほどの根拠としては弱い。

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Ac8veCompressionDecompressionCPRandtheImpedanceThresholdDevice

•  Prospec8verandomizedopen-labelmul8centertrial•  対象:外傷を除く院外心停止患者•  ACD+ITDのCPR(n:840) vs.standardCPR(n:813)•  主要評価項目:神経学的機能良好な生存退院率

Lancet2011;377(9762):301-311

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FDAは、ACDを、外傷を除く院外心停止患者の生存率を改善させる可能性があるオプションとして認定

•  神経学的機能が良好な生存退院率はACD+ITD群で高い。

•  90日後の生存率、  1年後の生存率ともにACD+ITD群で高い。

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Head-UpCPR

重力により脳から心臓への静脈灌流の増加

ICPの低下CerPP上昇

臨床研究のデータはまだ乏しく、評価はこれから

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ReperfusionInjuryProtec8on

•  長時間の虚血後の再灌流により、微小血管や内皮細胞の機能障害が生じ、血流減少を引き起こし、代謝障害、細胞死を引き起こす。(再灌流障害)

•  再灌流後、始めの数分に、再閉塞を意図的に行うことをポストコンディショニングといい、再灌流障害予防策と考えられている。

•  再閉塞の方法はさまざまであり、物理的に血流を遮断する方法、薬理学的な方法がある。

•  再灌流障害予防を行うと、脳は15分以上の虚血に耐えられる可能性があるかもしれない。

CurrOpinCritCare2013;19:417-23

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TheResuscita8onBundle•  1960年代から蘇生に関する多くの研究がされてきたが、

全てに共通して言えるのは、心停止の治療には救命の 連鎖からなる多方面からの治療が重要だということである。

•  CPR中には循環を 適化し、再灌流障害を減らすことが も重要な戦略である。

•  効果的なResuscita8onbundleとするために・・・ü バイスタンダーCPRの啓蒙と除細動器の普及ü 初療からの質の高いBLS、ACLSü ROSC後治療(coronaryrevasculariza8on、体温管理など)

のプロトコル化

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ISCPROFBENEFITATALL?

•  蘇生のために胸骨圧迫法が提唱されて、心停止症例の救命への寄与は非常に大きかったが、その後50年の経過においては生存率が劇的に改善していない。

     •  循環の 適化により再灌流障害を減少させる。•  head-upCPRの可能性など蘇生方法自体の改良•  ROSC後の適切な治療の検証と一般化など知見を増やし、次の50年の生存率改善が期待される。

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Clinicalimplica8onsandthefuture

•  心停止患者に対する治療法はsilverbulletのような一つの効果的な解決策があるという考え方は捨てなければいけない。

•  心停止という多因子的の関与する病態に対しては、bundle-of-careapproachを通し、多方面からのアプローチが必要。

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Editorial•  S-CPRでは血行動態の改善に限度があるため、Intrathoracic

PressureRegula8onの考えのもとITD、ACDが提案された。

•  ACD+ITD群とs-CPR群では、神経学的機能が良好な生存退院率はACD+ITD群で高い。          Lancet2011;377(9762):301-311

ただし、主要評価項目の推定値の周囲の信頼区間が広い。また、ACD+ITD群だけCPRの質をフィードバックする器具の使用が

あるなど、他の介入によるバイアスも高い。

•  s-CPRに対して妥当な代替法になる可能性の示唆にとどまる。   

•  s-CPRに加えて、ITD使用群と非使用群とでは、生存退院、神経学的予後に差はない。            NEJM2011;365(9):798-806

•  質の高いs-CPRに加えて、ITD使用群と非使用群とでは、生存退院、神経学的予後はいずれもITD使用群で良好。

Resuscita8on2015;94:106-14•  従来のCPR中、ITDをルーチンに使用することは推奨されない。

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私見

•  CPRを生理学的に理解した上で、IntrathoracicPressureRegula8onを意識することは、心臓・脳への循環を保持するのに重要である。

•  胸腔内圧制御のために、ITDやACDなどの補助器具が紹介され、理論的にはCPRの質を向上させる可能性があるが、現実的には少し使いにくいかもしれない。

•  現在、実践できるCPRの質の改善方法は、resuscita8onBundleにのっとり、適切なS-CPRを施行することと考える。

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High-QualityCPR