心肺蘇生例における低体温療法の有用性 その歴史的 …2012/02/25  ·...

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仙台医療センター医学雑誌 Vol.2 April 2012 25 総説 心肺蘇生例における低体温療法の有用性 その歴史的背景から現代における応用まで 尾上紀子 1) 1) 国立病院機構仙台医療センター 循環器内科 ≪抄録≫ 蘇生の基本概念は 500 年以上前にブリュッセルの解剖学者、アンドレアス・ヴェサリウスによって初めて 記載された。ヴェサリウスは動物の肺に管を用いて空気を吹き込むことによって蘇生を試みた。当時の臨床 家は、傷病者の口にふいごを用いて熱気と煙を吹き込むことによって蘇生を行った。その後様々な蘇生法が 試みられたが、いずれも試行錯誤の繰り返しであった。近代的な蘇生法として、人工呼吸法が 1950 年代に ようやく試みられるようになった。1960 年には胸骨圧迫法による心臓マッサージが導入され、心肺蘇生法 の概念が確立された。その後心肺蘇生法のガイドラインは改訂を繰り返し、現在では心拍再開後の生活の質 が重要であると考えられるようになった。このような考え方を背景に、心拍再開後の神経学的予後改善を目 的とした低体温療法が注目を集めている。 本稿では、低体温療法の歴史、低体温療法による脳保護効果、低体温療法の適応、禁忌、その方法、予後 について述べる。 キーワード:心肺蘇生 低体温療法 神経学的予後 2012 2 1 日 原稿受領) 1 はじめに ヴェサリウスに始まる蘇生の概念 1) は、1950 代の人工呼吸法、1960 年代の胸骨圧迫法 2) と進歩 してきたが、蘇生後の神経学的機能の改善において 満足できる水準にはなかった。21 世紀に入り、低 体温療法が神経学的予後を改善することが明らか になり、近年大きな注目を集めている。 2 低体温療法の歴史的背景 2006 10 月に兵庫県の男性(35 歳)が六甲山 で遭難し、24 日ぶりに救出された。意識があった のは最初の 2 日間だけで、その後は意識を失ったま 20 日以上飲まず食わずで、発見時の体温は 22 度、心肺停止状態であった。神戸市内の病院に搬送 され治療開始 4 時間後に心拍再開、50 日後にほと んど後遺症なく退院した。発見現場周辺には排泄の 痕跡もなく、低体温症による冬眠状態で生命の維持 が可能だったのではないかとの仮説が示されてい

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仙台医療センター医学雑誌 Vol.2 April 2012

25

総説

心肺蘇生例における低体温療法の有用性

− その歴史的背景から現代における応用まで − 尾上紀子 1) 1) 国立病院機構仙台医療センター 循環器内科 ≪抄録≫ 蘇生の基本概念は 500 年以上前にブリュッセルの解剖学者、アンドレアス・ヴェサリウスによって初めて

記載された。ヴェサリウスは動物の肺に管を用いて空気を吹き込むことによって蘇生を試みた。当時の臨床

家は、傷病者の口にふいごを用いて熱気と煙を吹き込むことによって蘇生を行った。その後様々な蘇生法が

試みられたが、いずれも試行錯誤の繰り返しであった。近代的な蘇生法として、人工呼吸法が 1950 年代に

ようやく試みられるようになった。1960 年には胸骨圧迫法による心臓マッサージが導入され、心肺蘇生法

の概念が確立された。その後心肺蘇生法のガイドラインは改訂を繰り返し、現在では心拍再開後の生活の質

が重要であると考えられるようになった。このような考え方を背景に、心拍再開後の神経学的予後改善を目

的とした低体温療法が注目を集めている。 本稿では、低体温療法の歴史、低体温療法による脳保護効果、低体温療法の適応、禁忌、その方法、予後

について述べる。 キーワード:心肺蘇生 低体温療法 神経学的予後 (2012 年 2 月 1 日 原稿受領) 1 はじめに ヴェサリウスに始まる蘇生の概念 1)は、1950 年

代の人工呼吸法、1960 年代の胸骨圧迫法 2)と進歩

してきたが、蘇生後の神経学的機能の改善において

満足できる水準にはなかった。21 世紀に入り、低

体温療法が神経学的予後を改善することが明らか

になり、近年大きな注目を集めている。 2 低体温療法の歴史的背景

2006 年 10 月に兵庫県の男性(35 歳)が六甲山

で遭難し、24 日ぶりに救出された。意識があった

のは最初の 2 日間だけで、その後は意識を失ったま

ま 20 日以上飲まず食わずで、発見時の体温は 22度、心肺停止状態であった。神戸市内の病院に搬送

され治療開始 4 時間後に心拍再開、50 日後にほと

んど後遺症なく退院した。発見現場周辺には排泄の

痕跡もなく、低体温症による冬眠状態で生命の維持

が可能だったのではないかとの仮説が示されてい

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心肺蘇生と低体温療法

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る 3)。冬眠を行う動物は摂食や運動を中止し代謝を

極端に低下させ、脳の活動も低下させる。リスの脳

組織は 10 度以下の低体温状況下で生存可能である

4)。冬眠をしない哺乳類においても、人為的に体温

を低下させることにより組織や脳の保護作用が得

られることは 200 年前から報告されてきた。1803年にはロシアにおいて患者を雪で覆うことによる

蘇生法が試みられ 5)、1812 年にナポレオンのロシ

ア遠征の際、負傷した四肢を救済するためや、切断

の麻酔のために低体温が用いられた。1937 年には

Temple 大学の神経外科教授であった Temple Fayが、癌患者において癌細胞の増殖を抑制するために

患者を 32℃に冷却し 6)、その後、重症頭部外傷患者

に対して全身冷却法を情熱的に行った。1950 年代

には心臓手術や脳外科手術に低体温が有用である

ことが報告され 7)、1963 年にはノルウェーで凍結

した川に転落した男児が心肺停止であったが 6 ヶ

月後にほぼ健常に回復したとされた 8)。その後も低

体温の有用性が次々に報告されたが、同時に合併症

も指摘されるようになった。すなわち、30℃以下の

deep hypothermia における心室細動 (ventricular fibrillation, Vf) と菌血症である。これらの副作用

のため 1960 年から 1990 年代までは低体温療法は

あまり施行されなくなった。しかしその中でも動物

実験を続けた研究者達により、再びその有用性が示

され 9)、低体温療法は再び脚光を浴びるようになっ

た。今まで、低体温療法による脳保護作用は動物モ

デルやヒトに対する後ろ向き試験、非無作為研究に

おいては示されてきたが 10, 11)、2002 年に初めて 2つの無作為研究が発表された 12, 13)。Bernard ら 12)

は、院外心停止で心拍再開した昏睡状態の患者を2

群に分け、心拍再開から2時間以内に 33℃に冷却

し 12 時間維持した群と、正常体温の群を比較した。

その結果、低体温群では 49%の患者が自宅退院もし

くはリハビリ施設に転院したが、正常体温群では

26%のみであった。死亡率には有意差は認められず、

低体温群で有意な副作用は認められなかった。また、

The Hypothermia After Cardiac Arrest Study Group により、Vf による心停止患者に対して

32-24℃の低体温療法を 24 時間施行した群では、標

準的治療群と比較して神経学的な予後が良好であ

ったことと死亡率が低かったことが報告された 13)。

これらを受け 2002 年以降、米国心臓協会

(American Heart Association: AHA)とヨーロッパ

蘇生協会(European Resuscitation Council: ERC)において脳低体温療法は院外心肺停止患者の治療

として推奨されるようになった。 3 国際的なコンセンサス 院外心停止による死亡率は非常に高く、報告によ

って様々であるが生存率は 2%〜25%である 14, 15)。

これらのうち、心静止 (asystole) や無脈性電気活

動 (pulsless electrical activity, PEA)による心停止、

バイスタンダーのない心停止では生存率は

2.3-7.4% と 低 い が 、 心 室 頻 拍 (Ventricular tachycardia, VT)、Vf による心停止、あるいはバイ

スタンダーにより自動体外式除細動器(Automated External Defibrillator, AED)を装着され除細動に

成功した患者の生存率は 27.1〜28.8%である 16, 17)。

しかし、生存しても社会復帰が困難なことが多く、

良好な神経学的予後が得られた患者は 3.6-6.9%と

いう報告がある 16, 17)。 1992 年に国際蘇生連絡協議会 (The International Liaison Committee on Resuscitation, ILCOR)が設立され、その使命は心

肺蘇生(CPR)と緊急心血管治療 (emergency cardiovascular care, ECC)に対する勧告を提案す

ることである。1999 年に AHA は初めて ILCOR の

会議を招集し、2000 年に CPR と ECC に関する国

際的なガイドラインが発表され 18)、以後 5 年毎に

改訂されている。その中で低体温療法は、神経学的

予後を改善する治療法として心拍再開後のモニタ

リングと管理の中に挙げられている。2005 年版

AHA ガイドラインでは低体温療法のエビデンスレ

ベルは IIa であったが、2010 年度版では Class I となり、低体温療法はより強く推奨されるようになっ

た 19)。

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4 我が国における大規模臨床試験 我が国では 2011 年に J-PULSE-HYPO study の

結果が発表された 20)。2005 年から 2009 年まで 14施設から 452 人の患者が登録された。対象は心原性

の院外心停止後に心拍再開し、血行動態の安定した

昏睡状態(Japan Coma Scale 200 または 300)で、

低体温療法が行われた 18 歳以上の成人である。平

均年齢は 58.6±13.5 歳で、心停止に至った原因は

68.9%が Vf もしくは Pulsless VT、13.7%が PEA、

9.1%が asystole であった。心停止から心拍再開す

るまでの時間は平均 26 分、目標体温は 33.9±0.4℃であり、冷却維持期間は 31.5±13.9時間であった。

40.1%の患者に大動脈バルーン・パンピングが使用

され、22.6%の患者に経皮的心肺補助装置

(percutaneous cardiopulmonary support, PCPS)が使用された。心停止から 30 日後の生存率は

80.1%で、神経学的予後良好であった患者:

Glasgow-Pittsburgh Cerebral Performance Category (CPC) score 1〜2 が 55.3%であった。こ

の結果は Bernard ら 12)の 49%、HACA study 13)で

の 55%という数字とほぼ一致する。 5 脳虚血による細胞障害の機序 心停止により脳血流が途絶し、嫌気性解糖が起こ

り、乳酸産生により細胞内アシドーシスに至る。ま

たNa+/K+ATPaseとCa2+-ATPaseの構造が変化し、

細胞外 K+と細胞内 Na+が上昇し細胞脱分極を起こ

し、細胞内 Ca2+が増加する。神経細胞は興奮性伝

達物質の受容体が多く、特にグルタミン酸の受容体

が豊富であるが、虚血により細胞外腔へのグルタミ

ン酸放出が誘発され、細胞内へ持続的に Ca2+が流

入する。細胞内の Ca2+濃度の上昇は過酸化脂質、

フリーラジカル産生を引き起こし、細胞死に至る 23,

24)(図1)。 6 低体温療法による脳保護作用

低体温により酸素消費量が抑制され、脳代謝が低

下することにより神経細胞が保護される。体温を

図1 虚血性神経細胞死のメカニズム(文献 23 より改変) 1℃下げることにより、脳代謝は 6-7%減少する 25)。

また遅発性細胞壊死の原因となるグルタミン酸の

放出を抑制することより脳保護作用が発揮される

26)。 7 脳低体温療法の実際 1)目標体温 低体温の程度は表1のように分類される。現在臨

床で最も用いられているのは 32℃〜34℃の mild hypothermia であり 27)、Vf による院外心停止から

心拍再開した昏睡状態の成人に対し、32〜34℃で

12〜24 時間冷却する方法が推奨されている 28)。

表1 低体温の分類

32〜34℃ :mild hypothermia

28〜31.9℃ :moderate hypothermia

11〜27.9℃ :deep hypothermia

6〜10.9℃ :profound hypothermia

6℃未満 :ultraprofound hypothermia 2)低体温の適応 Universal Cardiac Arrest Algorithm(図 2)に

よって救命処置を行い、心拍再開した患者につい

て、Post-Cardiac Arrest Monitoring and Support(心拍再開後のモニタリングと管理、図 3)に従

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心肺蘇生と低体温療法

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い、低体温療法を考慮する。低体温療法は神経学

的な予後を改善する唯一の方法であるため、心停

止の原因が Vf もしくは PEA で従命不能のすべて

の患者に導入を検討すべきとされている 28)。

図2 Universal Cardiac Arrest Algorithm

図 3 Post-Cardiac Arrest Monitoring and Support

(心拍再開後のモニタリングと管理)

Vf以外の不整脈による心停止の患者に対しても

低体温が有用であったとするスタディもあり 29, 30)、

AHA のガイドラインでは Class IIb の推奨レベル

である 28)。 それ以外にも院内心停止患者に対する適応

(Class IIb)や、溺水、無酸素性脳障害、頭部外傷、

外傷性心停止、脳卒中、新生児低酸素性虚血性脳

症、肝性脳症、細菌性髄膜炎、心不全、術後頻脈、

急性呼吸促迫症候群(acute respiratory distress

syndrome: ARDS)などへの臨床応用が考えられて

いる。 溺水による偶発性低体温患者においては脳保護

作用があることが報告されている 31)。また単一施

設からの報告ではあるが、ARDS 患者に低体温を

用いたグループにおいて、用いなかったグループ

と比較して 34%死亡率が低下した 32)。 3)日本における低体温療法の保険適応 我が国では 2006 年 4 月に低体温療法が保険適

応となり、(1) 1 日につき 12,200 点、心肺蘇生後

の患者に対し、直腸温 35℃以下で 12 時間以上維

持した場合に開始から 3 日間に限り算定する、(2) 重度脳障害患者への治療的低体温の場合は算定で

きない、(3) 当該点数を算定するに当たり必ずしも

手術を伴う必要はない、となっている。

4)低体温の禁忌(表3) 絶対禁忌は脳出血、外傷性心停止、 Glasgow

coma scale で 8 点以上、薬物過剰摂取による心停

止、34℃以下の偶発性低体温症などである。 相対禁忌には凝固能異常、補液や昇圧剤によっ

てもコントロールできない低血圧症(平均血圧

<60mmHg)などが挙げられている。 院内発症の心肺停止患者、院外心停止患者でそ

の原因が PEA もしくは asystole であった場合の

適応は現在のところグレーゾーンである。

表3 低体温の禁忌(文献 33 より改変)

絶対禁忌

出血性脳卒中、外傷性心停止

Glasgow coma scale で 8 点以上

偶発性低体温症(34℃未満)、活動性出血

薬物過剰摂取による心停止

相対禁忌

60 分以上の心停止

低血圧(平均血圧 60mmHg 以下)

血小板減少症もしくは凝固能異常

妊婦、癌の終末期

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5)導入のタイミング 心拍再開後、低体温の導入までは可能な限り早い

ほうが良いとされている 27)。実験レベルでは早期に

低体温を導入することにより、血液脳関門の透過性

抑制、脳血流保護、酸素消費抑制などの効果がある

とされており 34 ,35, 36)、心肺蘇生中から低体温を施

行することにより Vf の除細動率を上昇させ、生存

率や神経学的予後を改善したというデータもある

37, 38)。しかし一方で、2 時間以内にターゲット体温

に至った場合と、平均 8 時間で目標体温に至った場

合の神経学的予後に有意差は見られなかったとい

う報告や 12, 27)、現場で救命救急士によって低体温

が導入された群と、病院到着後から低体温療法を開

始した群で予後に差がなかったとする報告もあり

39)、今後大規模なデータベースによる解析が望まれ

る。一般的には 6 時間以上経過してしまった場合に

は、神経保護作用や生存率を向上させる効果はない

と考えられている 33)。 6)冷却方法(表 4) 急速に冷却でき、臓器特異的に冷却可能、持ち運

びに便利で蘇生中にも使用できる冷却装置が理想

的である。非侵襲的な方法と、侵襲的な方法があり、

それぞれの利点と欠点につき述べる 41)。PCPS は急

性心筋梗塞、重症心不全、劇症型心筋症、致死的肺

塞栓に対する補助循環として用いられているが、近

年救急医療の現場での適用が増加してきている(42)。

特に重症心筋梗塞による心停止の場合には、迅速に

PCPS を導入し、まず脳保護を行ってから冠動脈の

再開通を試みる。その際に回路内に冷却水を用いる

ことにより、非常に効果的に全身を冷却することが

できる。しかし、マンパワーを必要とし、侵襲的で

あるので導入に躊躇する場合も多い。非侵襲的な方

法は、氷嚢、冷風・冷水ブランケット、頭蓋冷却ヘ

ルメットなどである。ブランケットは患者体温をフ

ィードバックする機能が付加してあり、目標体温を

コントロールしやすいが 43)、外電源を必要とするた

め院外で用いるのは困難である。頭蓋冷却ヘルメッ

トは局所を冷却するため全身の副作用が少ないと

いう利点があるが、冷却には時間がかかる。鼻咽頭

カテーテル、胃管、点滴ラインより冷却水を注入す

る方法は低侵襲である。これらの方法をうまく組み

合わせて低体温を導入、維持することが重要である。

現在当院で用いている粘着性熱伝導パットを用い

た冷却装置(図 4 ArcticSun®)では 1 時間に 1.5℃体温を下げ、2 時間以内にターゲット体温まで冷却

することが可能であり、理想的である。 7)低体温のモニタリング 食道温、膀胱温、直腸温、肺動脈温などが適して

いる 44)。これらのうち膀胱温と直腸温は深部体温を

反映するのに時間がかかり、膀胱温は尿量によって

大きく変化するため、信用性は中等度である。食道

温は低侵襲で正確に深部体温を反映すると言われ

ている。肺動脈温は深部体温のモニタリングとして

ゴールドスタンダードであり、心肺停止患者の多く

が Swan-Ganz カテーテルを血行動態モニターとし

て必要とするので、留置しておくことが望ましい。

腋窩温や口腔温は深部温としては不適格である。鼓

膜温測定のプローベの入手は困難であり、また信頼

性にも欠ける。 8)呼吸管理 心停止後には様々な呼吸器合併症が起こりうる。

左心不全による肺うっ血、感染、無気肺、誤嚥な

どである。低体温療法中は鎮静薬、筋弛緩薬を使

用することにより咳嗽反射が低下し、臥床により

重力で気道分泌物が背側に貯留するため無気肺を

起こしやすい。さらに低体温による免疫機能低下、

肺血管抵抗上昇による肺血流低下により肺炎を併

発しやすい。従って呼吸管理は非常に重要である。

心停止直後は吸入気酸素濃度(FIO2)を高くしがち

であるが、高濃度の酸素はフリーラジカルを産生

し、神経細胞の脂質過酸化、脳の代謝異常を起こ

し神経変性をもたらす 45, 46)。しかし一方で、低体

温は酸素解離曲線を左方移動させ、ヘモグロビン

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心肺蘇生と低体温療法

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表4 冷却方法(文献 40 より改変)

図4 ArcticSun®

の酸素に対する親和性が増すため、細胞レベルで

低酸素血症になる。ガイドライン 28)では、心拍再

開後は SaO2 を 94%以上に維持できるよう FIO2

をウィーニングしていくことが推奨されている

(Class I)。 心停止後は著明な代謝性アシドーシスを来して

いることが多く、pH を正常化させるため、過換気

にしがちである。また以前は頭蓋内圧亢進治療の

一環として過換気療法が推奨されていた。しかし

過換気により脳血管は収縮し、PaCO2が 1mmHg低下すると脳血流は 2.5%-4%低下するため、最近

のガイドラインでは過換気は避けるべきとされて

いる 47)。 AHAガイドライン 28)ではPaCO2で40-45mmHg、もしくは終末呼気炭酸ガス濃度(ETCO2)を35-40mmHg に保つよう換気量を保ち、急性肺障害、

ARDS を合併していれば、1 回換気量を 6-8ml/kgとし吸気プラトー圧を30cmH2O以下に保つのが良

いとされている 48)。 9)循環管理

体温を 1℃下げる毎に心拍出量は 7%低下する

30)。心拍出量の低下は、抗利尿ホルモンの分泌抑

制や血液の血管外への漏出による循環血液量低下、

心筋収縮能自体の低下、徐脈により起こる。また

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仙台医療センター医学雑誌 Vol.2 April 2012

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低体温により血管が収縮し末梢血管抵抗が増加す

るため、臓器が低灌流に陥る。低体温中は高度脱

水がマスクされているので十分な補液を行って脱

水を補正し、血管作動性薬剤を投与し、平均血圧

を 65mmHg 以上、混合静脈血酸素飽和度(SvO2)を 70%以上に保つようにする 28)。循環動態を把握

するため Swan-Ganz カテーテルを挿入し、中心

静脈圧、肺動脈楔入圧、心拍出量、SvO2をモニタ

リングする。 心電図では QT 延長と J 波 49)が見られる(図 5)。また低体温時の低カリウム血症、血中カテコールア

ミンの上昇により不整脈が起こりやすい。30℃以下

では Vf が起こり、28℃以下では除細動に対して抵

抗性となる 14)。

図5 QT 延長と J 波(矢印)

10)中枢神経系 心停止後の昏睡患者の 5〜20%に痙攣が起こり、

未治療の長時間の痙攣は脳に悪影響を与える。し

かし、チオペンタールナトリウム、ジアゼパム、

マグネシウムなどによる抗痙攣剤が神経学的予後

を改善するかどうかは不明であり 50, 51)、コエンザ

イム Q10 も神経学的予後を改善しなかった 52)。通

常は抗痙攣薬のレジュメとしては抗てんかん薬が

用いられる。 画像診断としては、脳 MRI と脳 CT を行う。MRIで大脳皮質と皮質下領域が拡大していると予後不

良である 53)。CT では皮髄境界の有無、灰白質と白

質の CT 値の比較を行う。 11)電解質 低体温時は抗利尿ホルモンバソプレッシンの分

泌が抑制され、低体温利尿が生じる。また血清カリ

ウムが細胞内へ移行するため、低カリウム血症が生

じる。Mirzoyev(54)らにより低体温療法を開始して

10 時間後に血清カリウム値が平均 3.9mEq/L から

3.2mEq/L まで低下したと報告されている。低カリ

ウム血症に伴い QT 延長と VT の頻度が有意に増加

するので、血清カリウム値は 3.0mEq/L 以上を保つ

ようにする。復温時にはカリウム値が上昇してくる

が、徐々に復温すれば大きな問題にはならないと考

えられている 1)。 12)血糖 低体温中はカテコラミン上昇によりインスリン

分泌が低下し高血糖となる。酸素存在下での低血糖

は神経細胞壊死を引き起こすが、無酸素状態でのグ

ルコースの存在は更に悪い影響を及ぼす。その詳し

いメカニズムは不明だが、虚血状態の細胞内におけ

る高血糖は嫌気性解糖を惹起し、その結果細胞内が

アシドーシスとなり、有害な連鎖を引き起こすため

と考えられている 55)。脳卒中の患者において、血糖

値を正常にコントロールした方が、死亡率が下がる

という報告もある 56)。 13)凝固能 35℃以下で血小板数、血小板機能は低下し、34℃では 37℃と比較して PT、APTT は 9%延長する。

しかし最近の研究では、低体温中に抗凝固療法を行

っても出血のリスクは増加しないと報告されてい

る 1)。 14)感染 低体温中は多核白血球、単球の遊走能、貪食能が

低下している 57, 58, 59)。特に調節呼吸を行っている

間、肺炎には注意が必要である。抗生剤投与、肺理

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心肺蘇生と低体温療法

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学療法を行い、必要に応じて気管支鏡にて喀痰の吸

引を行う。 15)シバリング シバリングにより酸素消費量増加、代謝亢進、呼

吸促迫、頻脈が起こり低体温による有効な効果を打

ち消してしまう。そのため鎮静薬と筋弛緩薬でシバ

リングを抑制するべきである 60)。筋弛緩薬使用中は、

4 連刺激(train of four: TOF)による筋弛緩モニター

が推奨されているが、末梢神経伝達速度は低体温に

より低下するのでしばしばこのモニタリングは信

用性に欠ける。筋弛緩薬によって痙攣がマスクされ

てしまうので連続性脳波によるモニタリングが望

ましいが、低体温を行っていた 68 施設のうち、80%の施設でルーチンに筋弛緩薬が使用されていたが、

そのうち 3 施設でしか脳波のモニタリングを行っ

ていなかったという報告がある 60)。また、筋弛緩薬

により鎮静が十分に行われているかどうかも不明

となってしまう。不十分な鎮静は低酸素療法の有効

性を相殺してしまうので注意が必要である 60)。 16)復温 低体温療法開始から 24 時間後に復温を開始する。

1時間に 0.5℃以上上昇させてはいけない。 17)高体温 蘇生後の高体温は脳の障害からの回復を妨げる。

心停止後の高体温は炎症性サイトカインの活性化

によるものと考えられている 61, 62)。体温 37℃以上、

0.5℃上昇する毎に細胞障害が加速し 25)、37.6℃以

上の高熱は生存率を低下させる。特に復温時には深

部体温の厳重なモニタリングを行い、高体温を避け

るべきである(AHA ガイドライン Class I)。 18)臓器提供 最大限の治療と十分な観察後にも関わらず、脳死

に至った場合には、臓器提供を考慮すべきである

(AHA ガイドライン Class I)。心停止が原因の脳

死と他の原因で脳死に至った場合に移植された臓

器の機能に関して有意差はない。 19)低体温による有害作用 低体温療法によって起こりうる有害事象を(表 5)

にまとめた。 8 予後 低体温施行中は鎮静薬を使用しているので、復温

から 72 時間以上経たないと神経学的予後評価は不 表5 低体温によって起こりうる有害作用(文献 33 より改

変)

心血管系

低血圧、徐脈、VT

腎、電解質

低カリウム血症(細胞内へのシフトによる)

利尿作用による低マグネシウム血症、低リン血症

一過性の糸球体濾過率低下

内分泌・代謝

インスリン分泌低下による血糖代謝異常

感染

院内感染、人工呼吸器関連肺炎、敗血症

神経系

痙攣

血液凝固系

凝固能低下、出血

能である。予後予測因子は様々なものが考えられて

いるが、心停止の原因となったリズムやショックの

存在ではなく、循環虚脱から心拍再開までの時間で

あると考えられている 29)。しかし一方で、低体温療

法は Vf による心停止の患者に対して有効であり、

Vf 以外のリズム(asystole や PEA)では予後が悪

く、救命するためには若年、左室機能が良好である

ことが重要との報告や 63)、VT/Vf 以外のリズムその

ものが神経学的予後不良因子であったとする報告

がある 64)。 9 結語

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現在の心肺蘇生法においては、一番重要な目標は

脳蘇生である。低体温療法はその目的を果たすため、

今後期待される治療法である。しかし、体温を何度

まで下げ、どの位の期間施行するかなどのプロトコ

ールはまだ標準化されておらず、今後のデータの蓄

積、方法の確立が望まれる。 10 文献 1) So HY. Therapeutic hypothermia. Korean J

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