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心の健康教育プログラム 平成 24 年 3 月 31 日 県立教育研修所 心の教育総合センター

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心の健康教育プログラム

平成 24年 3月 31日

県立教育研修所 心の教育総合センター

Page 2: 心の健康教育プログラムkenshusho/07kokoro/H23/kokoronokenkou.pdfサーティブコミュニケーションスキル、3-②対人関係スキル、4-①自己認識スキル、4-②共感スキル、5-①情動抑制スキル、5-②ストレスマネジメントスキル)である。

まえがき

近年の社会環境や生活環境の急激な変化は、子どもの心身の健康にも大きな影響を

与えています。子どもの心身の健康を守り、安全・安心を確保するためには学校全体

として取組を進めることが必要であるといわれています。

本県では、心の教育総合センターを設置し、心の教育に関する実践研究を進めると

ともに、子どもたちの内面に自己肯定感や成就感、規範意識等を育むことをねらいと

した「自然学校」、「トライやる・ウィーク」、「高校生地域貢献事業」、「高校生就業体

験事業」等の体験的な学習を推進してきました。

平成22年度の「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」では、本

県においては、暴力行為の発生件数は、1000人あたり5.7件と、全国平均4.6件を上回

っております。本県における暴力行為の主な特徴としまして、小中学校では、自分の

感情がコントロールできずに、繰り返し暴力行為に及ぶケースがみられます。高等学

校では、インターネットや携帯電話等によるトラブルから暴力行為が発生するケース

がみられます。これらは、児童生徒のコミュニケーション能力が不足していると捉え

ることができます。

当所では、本年度より児童生徒の心の健康を保持増進するために「児童生徒の『心

の健康』教育実践研修講座」を開講しております。さらに平成24年度からは、居心地

の良いクラスづくりのための「児童生徒の『心の健康教育プログラム』講座」を開講

予定です。いずれも、児童生徒のコミュニケーション能力の向上を図り、暴力行為や

いじめ、不登校などの問題行動等の未然防止につながるものと考えております。

また、これまでに開発してきた「命の大切さを実感させる教育プログラム」や「暴

力防止プログラム」などを活用し、「心の健康」のための教育として系統立て、全ての

教員が、児童生徒の実態に応じて実践できる「心の健康教育プログラム」を作成しま

した。

本プログラムは、これまで実践されてきた活動を、その活動における効果により分

類し、子どもの「心の健康」をテーマとしてとりまとめたものです。

本冊子が、日頃から子どもたちの「心の健康」を保持増進されている先生方の一助

となり、子どもたちがさらに生き生きとした学校生活を送れるように願っております。

平成24年3月31日

県立教育研修所長 藤井 雅英

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はじめに

兵庫県心の教育総合センターは、2010年12月に兵庫県下小中高特別支援学校1,103校に対

し「『心の教育』に関する調査」を実施した。「心の教育授業実践研究」や「命の大切さを

実感させる教育プログラム」などでの具体的な授業や活動を26項目にまとめ年間の実施頻

度を求めた。併せて不登校・いじめ・暴力行為が全国平均に比べてどの程度か、また5年間

のそれらの増減について回答を求めた。各学校で実施している「心の教育」の活動と児童生

徒の問題行動等の頻度、増減の関係から、「心の教育」の活動を3つに分類することができ

た。1つは「命の教育」である。動植物の飼育をしたり観察をしたりする活動、動植物やペ

ットの死について話し合ったり考えたりする、2分の1成人式、ライフライン、自分の成長

の振り返り、仲間の「いいとこ探し」などの項目から構成された。もう1つが「心の健康教

育」であった。心の病への対応などメンタルヘルスに関する授業である。ストレスマネジメ

ントなどのストレスへの適切な対処、暴力行為の現状や未然に防止する方法などの項目から

構成された。3つ目は「個別相談体制」であった。いじめに対する実態調査、心身の健康状

態を調べるアンケートの実施、教育相談週間の実施などの項目から構成された。そして、不

登校、暴力行為、いじめの件数が尐ない学校で、「命の教育」が頻繁に行なわれており、暴

力の増減と「心の健康教育」との関連があることが見いだされた。すなわち、「命の教育」

は不登校の抑制と関連があり、「心の健康教育」は、暴力やいじめの抑制と関連があると推

測された。

小学校低学年では、動植物の飼育、2分の1成人式、中学校では、仲間への肯定的なメッ

セージなどの「命の教育」が積極的に行なわれていた。一方、ストレスへの対処やメンタル

ヘルスなどの「心の健康教育」の実施頻度は低かった。一方で、「これからやりたい『心の

教育』は」と尋ねると、「カウンセラーが担任と共同しておこなう実習等の実施」というの

が多く、「ストレスへの適切な対処法を学びたい」も上位であった。すなわち、学校は「心

の健康教育」の一層の充実を望んでいることがわかった。

諸外国をみると、「心の健康教育」はプログラムや科目として、学校教育の中で展開され

ている。イギリスでは、SEAL(Social and Emotional Aspects of Learning;社会性と

感情の学習)プログラムが、いじめや暴力防止に効果をあげており、2011年までに全小

学校に導入された。中国では、2003年に「道徳」とは別に「心理健康教育」を立ち上げて、

不登校・インターネット依存の対応として、科目として設定している。

本冊子は、児童生徒の心の健康を保持、増進させることを目的に、これまで心の教育総合

センターで開発してきた「心の教育」の活動を系統立てることにより、どのような活動が展

開できるのかを具体的に活動案として示したものである。

平成24年3月31日

心の教育総合センター所長 冨永 良喜

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目次

第1章 心の健康教育とは ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3

第2章 心の健康教育プログラム活動系統図と各領域 ・・・・・・・・・・・4

第3章 心の健康教育プログラム活動展開例 ・・・・・・・・・・・・・・・7

Ⅰ 児童生徒の見立てに応じた活動

Ⅱ 居心地の良いクラスづくりのための年間計画例

第4章 心の健康教育プログラム 指導プラン

Ⅰ セルフマネジメント力を高める活動 ・・・・・・・・・・・・・・・・9

1「ストレスマネジメント」

2「自分の感情を理解する」

3「怒りのメカニズムを理解する」

4「頭にきたときのよりよい対応」

5「10秒呼吸法を使ったストレスマネジメント」

6「おおらかな心をもとう」

Ⅱ 自己を理解する活動・他者を理解する活動 ・・・・・・・・・・・・・16

7「自分の木」

8「私は私が好きです。なぜなら・・・」

9「友だちの良いところ探し」

10「あったか言葉」

11「役割交換てがみ」

Ⅲ コミュニケーション能力を高める活動 ・・・・・・・・・・・・・・・22

12「自らの課題や問題を解決する」

13「様々な自己表現を知ろう」

14「うまく仲間に入ろう」

15「NASAゲーム」

16「言語による伝達」

第5章 心の健康教育プログラム 参考資料 ・・・・・・・・・・・・・・・28

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第1章 心の健康教育とは

はじめに、「心の教育」と「命の教育」及び「心の健康教育」について整理してみたい。

上地(1999)は、「『心の教育』とは、①人間の命は、何事にも代え難い、この世で最も

尊い存在であり、一度失ったら決して取り返しのきかない唯一のものであるとの実感を育

てる、②周囲の人々への思いやりとやさしさ、そして愛情を持って接し、個人的な力の強

弱を越えて共に友和的に生きる心を育てる、さらに、③各人の個性を尊重し、それぞれの

個性に応じた社会的な生活力を育むことである。」と定義した。また、梶田(2007)は、「命

の大切さを実感させる教育プログラム」の提言に、「発達段階に応じて、『命の大切さ』

を概念としてではなく実感として深く心に刻み込むことが、未来を担う子どもたちに生き

る力を培うことにつながる」と述べている。

これらの定義から、かけがいのない命の大切さを実感する教育、人と人のつながりや思

いやりを深める教育、個性を大切に社会に活かす教育の3つに整理できる。命の意味を考

え命の大切さを実感する教育を「命の教育」と呼んでもいいだろう。教師は、すべての教

科や道徳・特別活動において、児童生徒がこの3つの体験ができるように働きかけている。

また、WHO(1994)は、 ライフスキルを日常生活の諸問題に適切かつ積極的に対処し行動

するために必要な心理的社会的能力とし、5組10種類のスキルを挙げた。1-①意志決定ス

キル、1-②問題解決スキル、2-①創造的思考スキル、2-②批判的思考スキル、3-①ア

サーティブコミュニケーションスキル、3-②対人関係スキル、4-①自己認識スキル、4-

②共感スキル、5-①情動抑制スキル、5-②ストレスマネジメントスキル)である。

心の教育総合センターでは、「心の健康」を一部の支援が必要な児童生徒に対する「心

のケア」という視点だけではなく、すべての児童生徒が自己実現に向けて積極的に学校生

活を送ることができるように、積極的精神健康に基づいたものとすることとした。さらに

、「『心の健康教育』とは児童生徒の心の育成において、心の健康増進(問題予防)と心

の健康を取り戻す(問題対処)ための学校における教育活動である」と定義した。

わが国では「心の健康教育」は、医学・心理学・保健学を学問背景として保健体育に位

置づけられている。小学校では、「心の発達及び不安、悩みへの対処の仕方について理解

できるようにする。」とされ、中学校では「心身の機能の発達と心の健康について理解で

きるようにする。心の健康を保つには,欲求やストレスに適切に対処するとともに,心身

の調和を保つことが大切であること。また,欲求やストレスへの対処の仕方に応じて,精

神的,身体的に様々な影響が生じることがあること。」と学習指導要領に記載されている。

中学の教科書には、ストレス対処の項が立てられ、リラクセーションや相談など望ましい

対処や、用語こそ記載されていないが、問題焦点型対処と情動焦点型対処に対応する記載、

考え方で感情や行動が変わる例が記載されているものもある。

現在、中学校では主に体育科の教員がこの「心の健康教育」を教えているが、他の教員

が特活、各教科、さらには、掃除の時間などの日常生活に「心の健康」に関わる内容を教

えていくことでより健全な子どもの「心の健康」が育まれると考える。総合的な学習の時

間なども含め、さまざまな行事などの直前に取り入れるなど、心の健康に関する知識と体

験を学ぶことができるよう年間カリキュラムをたてることも可能であろう。

不登校・暴力・いじめを未然に防ぎ、また、災害や事故・事件に巻き込まれたとしても、

人生を前向きに生きる力に変えていくことができるよう「心の健康教育」のプログラム化

が急がれる。

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第2章 心の健康教育プログラム活動系統図と各領域

<心の健康教育プログラム活動系統図>

○各活動は、その活動による効果によって分類しています。

○相互に影響し合い進んでいく自己理解と他者理解は、同じ領域として示しています。

○縦軸に「個人的」と「社会的」をとり、より社会的な関わりの強い活動を系統図の上方

に配置しています。

○横軸を子どもの「過去」「現在」「未来」に分け、命の教育において、主に過去に関わ

る活動については左側に、未来に関わる活動については右側に配置しています。

社会的

個人的

過去 未来 現在

たまごを育てる

乳幼児とのふれあい

命の教育

うまく仲間に入ろう

役割交換てがみ

Ⅱ 自己を理解する活動

他者を理解する活動

自分の木

友だちの良いところ探し

自分史づくり

ストレスマネジメント

Ⅰ セルフマネジメント力を高める活動

おおらかな心をもとう

未来の自分への手紙

限りがある命の尊さ

命の教育

身近にある老いと病

「私は私が好きです。なぜなら・・・」

自らの課題や問題を解決する

Ⅲ コミュニケーション能力を高める活動

NASAゲーム

様々な自己表現を知ろう

言語による伝達

自分の感情を理解する

10秒呼吸法を使ったストレスマネジメント

あったか言葉

怒りのメカニズムを理解する

頭にきたときのよりよい対応

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<各活動領域>

Ⅰ セルフマネジメント力を高める活動

近年、子どもたちへのストレスが高くなっていることが指摘されている。そのよう

なストレスが、子どもたちの多様な問題行動を引き起こす一因になっている。高いス

トレスが続いたとき、人々は意図的、無意図的にさまざまな行動により、ストレスを

発散、やりすごそうとする。その行動の中には、ときに望ましくない問題行動も含ま

れる。うまく発散等の処理ができない場合は、頭痛、腹痛、皮膚炎といった身体症状

として表れたり、不眠、無気力状態、ひきこもり、自殺企図、鬱傾向といった行動障

害が増加したりといったことが挙げられる。さらには、他者に向かって攻撃的な行動

を取り、キレて暴れる、誰かをいじめるといった行動として表れる場合もある。

このようなストレスに対して、児童生徒自らがその存在に気づき、原因、種類、メ

カニズムを正しく理解し(認知レベル)、対処法を学び、その実践を練習することに

より、ストレスに対して上手に対処する方法(スキルレベル)を体得することは、上

記のようなストレスに起因する問題の予防と改善に有効であると考えられる。

この活動は、「心の健康教育」のなかで、心身の問題を改善し、健康を高めるため

の直接的効果が期待されるものである。また、さまざまな問題行動の発生を予防する

効果も期待される。直接的には、個々の児童生徒のストレスへの対処法を教える活動

であるが、個々の生徒のストレスが低減することにより、クラス全体の雰囲気が和ら

ぎ、問題発生に対する予防的な効果も期待できる。

ただし、特に身体の活動を伴うような内容は、何回か繰り返して行うことにより、

その行動の習慣化が起こり、より高い効果が期待される。したがって、クラスの子ど

もたちの様子を観察したり、クラスの対人関係を測定する調査などを行ったりするこ

とで、子どもたちのストレスが高まっていることが予想されるとき、短時間でできる

内容も含め、随時、導入することが望まれる。とはいえ、身体的な動きや感覚への気

づきを伴った活動が苦手な児童生徒もいるので、個々の子どもに気を配り、うまくや

るコツを教えてあげる、児童生徒同士で教え合うなど、実施上の要点をつかんで実践

することに留意することが大切である。

Ⅱ 自己を理解する活動・他者を理解する活動

人間関係の基盤には、自己理解と他者理解がある。私たちは、日頃、意識的に自分

のことについて考えたり、あるいは、他者を深く理解しようとしたりする機会は尐な

いと思われる。自分自身について理解することは、特に中学生、高校生といった青年

期の発達課題であるが、青年期に、このテーマに取り組むには、小学生の時からの経

験や考えの積み重ねが必要である。自己理解は、昨今重視されているキャリア教育の

一つの中心的テーマでもある。

自己理解と他者理解は、ある活動の中では同時に発生する場合が多い。例えば、友

だちの良いところを探す活動は、他者から見た自分の良いところにも気づき、自己理

解、ひいては、自尊感情を高めることにもつながるであろう。

自己理解や他者理解の活動は、それによって、自己卑下、务等感情や、他者を卑し

める感情に結びついてはならない。そうではなく、自己および他者の長所、得意、好

みといった、肯定的な側面の理解を伸ばすことが活動のコツである。

自己理解・他者理解は学級経営における円滑な人間関係の基になると考えられる。

なぜならば、人間関係の底には、自分の価値を肯定し、可能性を信じるとともに、他

者の価値を肯定し、可能性を信じることが存在する。このような肯定的な自己理解・

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他者理解を促進することは、日々の家庭生活や学校生活で培われることであるが、そ

れを「心の健康教育プログラム」として、学級の活動の中で行うことは、学級内に良

い人間関係をつくり、良い学級雰囲気を醸成するのに大きな効果をもつものである。

したがって、自己理解・他者理解を促進する活動は、どの学年においても、年間を

通して行うことが必要である。特に、はじめて出会う友だちがたくさんいる年度初め

には、他者理解のきっかけとなるような活動が適している。また、学級が落ち着いて

くる時期には、さらに深い自己理解や他者理解に進むような活動を取り入れると良い

であろう。

Ⅲ コミュニケーション能力を高める活動

コミュニケーションとは何であろうか。最近、よくコミュニケーションが大事だと

いうことを聞く。しかし、改めてコミュニケーションとは何かと考えてみると、答え

にくいものである。なぜなら、非常に広い内容を含んでいるからである。言葉の語源

からいうと、「他者と何かを共有する」ことである。そこから、情報を伝える、伝え

合うという意味になった。

たとえば、コミュニケーションの基本として「あいさつ」が挙げられることが多い。

地域、学校、職場、あらゆる場面で人間関係の基本である。人間どうし、あなたがそ

こにいるのを認めていますよ、私がここにいるのを認めてね、と言う意味で、あいさ

つを交わすことは互いの存在を受容し合うことの始まりである。また、「ありがとう」

という感謝の言葉も、相手の行動を深く受け入れ、認めることにつながる。このよう

に、言葉を掛け合うことがコミュニケーションの基礎段階として重視されるが、この

ような言葉を発するという行動も、普通に行えるようになるには、意味やスキルの理

解、モデル行動の観察、練習から習慣化にまで至り、定着したものとならないと、実

際にはなかなか行いにくいものである。

さらに、コミュニケーションの役割は、このような言葉掛けのレベルに留まるもの

ではない。相手の気持ちを理解する(共感的理解)、相手の言いたいことを理解して

自分の言葉で伝える(要約力)、自分の考えをわかりやすく伝える(コメント力)、

さらには、互いの考えから、新しい目標や方法についての考えを生み出すということ

がコミュニケーションの高度な役割として期待される。そして、何よりも、相手の話

をしっかり聞く(傾聴)ということがこれらの機能に優先する基本的態度として学ば

れなければならない。

このように、コミュニケーション能力は、子どもたちの家庭生活や学校生活の中で、

何の手立てなしに育つというものではなく、学校において学習の機会を設定して、組

織的に繰り返し、育成していくことが必要である。

とくに、学級の中の人間関係がうまく作れない場合や、学級集団にうまく溶け込め

ない児童生徒がいる場合に、コミュニケーション能力を高める活動は効果的であると

思われる。

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第3章 心の健康教育プログラム活動展開例

児童生徒の実態に応じ、学級活動などを利用してその状況にあった活動を取り入れるこ

とは必要です。また、意図的・計画的に行うために、年間を通した計画を組んで実践する

ことも大切です。ここでは、この2つに分けて活動例を示します。

Ⅰ 児童生徒の見立てに応じた活動

児童生徒の見立て 活動例

怒りをコントロールできない子

どもが多い。

1「ストレスマネジメント」

3「怒りのメカニズムを理解する」

4「頭にきたときのよりよい対応」

5「10秒呼吸法を使ったストレスマネジメント」

6「おおらかな心をもとう」

自分の感情(喜怒哀楽)を上手に

表現できない子どもが多い。

2「自分の感情を理解する」

7「自分の木」

8「私は私が好きです。なぜなら・・・」

10「あったか言葉」

グループ活動など、協力して一つ

のことを行うことができない。

9「友だちの良いところ探し」

11「役割交換てがみ」

13「様々な自己表現を知ろう」

14「うまく仲間に入ろう」

15「NASAゲーム」

16「言語による伝達」

何か問題が生じたときの対応が

できない子どもが多い。 12「自らの課題や問題を解決する」

~各活動を効果的なものとするために~

○ 実施した時間だけでなく、継続的に日頃の子どもへの見立て、声かけに反映させる

ことが大切です。

○ 子どもが活動の成果(怒りをコントロールしている様子が見られたなど)があれば

積極的に褒めたり、認めたりすることが大切です。

○ 子ども一人ひとりの成果を、振り返りによって集団に返すようなアイディア(振り

返りシートの共有、学級通信、掲示物など)を活用することが大切です。

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Ⅱ 居心地の良いクラスづくりのための年間計画例

<小学生>

月 行事 活動のテーマ

4月 入学式 8「私は私が好きです。なぜなら・・・」

新しいクラスにおいて、児童の自己理解と他者理

解をすすめ、人間関係の醸成を図る。

7 月~8 月 夏季休業日

10 月 オープン

スクール

4「頭にきたときのよりよい対応」

緊張も解け、自己主張を始める子どもが出てくる

2学期に、良好な人間関係を継続するために、怒り

を感じたときのより良い対応について学ぶ。

11 月 音楽学習発表会

12「自らの課題や問題を解決する」

学習や行事が多くなり、乗り越えるべき様々な課

題を抱える児童のために自ら課題や問題に対応す

る力を育む。

<中学生>

月 行事 活動のテーマ

4月 入学式 8「私は私が好きです。なぜなら・・・」

新しいクラスにおいて、生徒の自己理解と他者理

解をすすめ、人間関係の醸成を図る。

5月 中間テスト

5「10 秒呼吸法をつかったストレスマネジメント」

テストを目前に控え、緊張が張りつめているとこ

ろである。プレッシャーによるストレスはコントロ

ールできるものであることを学ばせ、ストレスの対

処法を習得することによって、積極的に課題に立ち

向かおうとする力を培う。

6月 野外活動

13「様々な自己表現を知ろう」

生徒同士で力を合わせて行う活動が増える野外

活動を前に、適切な自己表現をする力や、お互いを

尊重しあう心を育み、より良い人間関係の構築を図

る。

9 月

10 月

体育大会

文化祭

10「あったか言葉」

生徒に自分自身への励ましの言葉、他者への励ま

しの言葉を考えさせることによって、体育大会や文

化祭の成功に向けて生徒全員で行事に向かう意欲

の向上を図る。

2 月~3 月

12「自らの課題や問題を解決する」

人は悩みや課題を解決することが必要であり、よ

り良い生き方をするためにも課題解決が大切であ

ることを伝え、その力を培う。

○ 「保健」や「総合的な学習の時間」、「HR活動」の時間を有効に活用

し、意図的計画的に各活動をつなげていくことが有効です。

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第4章 心の健康教育プログラム 指導プラン

Ⅰ セルフマネジメント力を高める活動

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【目的】「ストレスのしくみと対処」について理解する。

学習活動 教師の支援・活動の留意点等

1 「ストレス」とは何かについて考える。 ・「『ストレス』とはなんだと思う」

など、児童生徒が持っている「スト

レス」についての捉え方を問う。

2 ストレスについての理論を学ぶ。

3 ストレス場面を想起する。

①自分にとってのストレスと、そのストレス反

応についてワークシートに記入する。

(資料 P32)

②グループで発表し、誰でもストレスがあるこ

とを理解する。(資料 P32 2(1)(2))

③ストレス対処についてグループで話し合うこ

とで、様々な対処法があることを知る。

(資料 P32 2(3))

4 ストレス対処法について学ぶ。

(資料 P30 1(4))

5 ストレス対処の体験ワークをする。

(資料 P31 1(5))

① 「イメージ呼吸法」

② 「肩のリラクセーション」

③ 「簡易漸進性弛緩法」

6 グループで話し合う。(資料 P32 2(4))

・ストレスのしくみについて説明す

る。(資料 P29 1(1)~(3))

・ストレスを感じる場面について児

童生徒に話し合わせ、ストレスの影

響を具体的に理解させる。

・ストレス反応は心身が頑張ってい

る大切なサインであり異常な反応で

はないことを理解させる。

・ストレスは適切な対処で軽減・解

消が可能であり、ストレスから生じ

る問題は防げることを強調する。

・各自の対処の特徴と問題を理解さ

せる。

・適切なストレス対処の重要性と不

適切な対処の弊害を説明する。

・動作を実演しながら解説する。

・目を閉じさせ(強要しない)ゆっ

たりとした気分を味わえるように配

慮する。

・本時の内容を振り返る時間を持っ

たあと、感想を話しあい、共有する。

7 本時の学習を振り返る。

・ストレスマネジメントの方法を整

理する。

・心を込めて人に話を聞いてもらう

こともストレス対処の方法であるこ

とを説明し、お互いに声を掛け合う

ことの大切さを理解させる。

指導のポイント

1 ストレスのしくみと対処について、自分に置き換えて考えさせる。

2 適切な対処と不適切な対処について知らせ、適切な対処法を活用することの大切さを理

解させる。

3 ストレスへの対処法を具体的に示すことによって、自分自身にはどの対処法が有効なの

かを考えさせる。

【参照】 暴力防止プログラム研究 P76

1 「ストレスマネジメント」

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【目的】感情について目を向け、「感情を言葉で表現することの大切さ」を理解する。

学習活動 教師の支援・活動の留意点等

・「感情は状況に応じて変化

するものなんだよね。今日は

その感情を言葉で表すこと

について考えてみよう。」と

説明を行う。

2 感情を表す言葉についてワークシートに記入する。

(資料 P33 1・2)

3 感情表現を用いて文章を完成する。(資料 P33 3)

2で挙げた快と不快の(1)について、文章を完成する。

4 ワークシートの事例を読み、どのように感じるかと

その理由について考える。(資料 P33 4)

5 グループで話し合う。

・感情の言葉をできるだけた

くさん挙げさせる。

・自分の感じ方の特徴に気づ

かせる。

・同じ状況でも、人によって

生じる感情は異なることを

理解させる。

・その感情が生じた理由を話

し合わせ、他者の感じ方を理

解させる。

6 本時の学習を振り返る。 ・自分の感情を認識し、理由

とともに適切に相手に伝え

ることの大切さを理解させ

る。

指導のポイント

1 導入において、児童生徒が自分の感情に十分に向き合えるように働きかける。

2 自分の「快」と「不快」の感情を考えることは、自己理解の一つであることを伝える。

3 感情に向き合い、その感情を言葉で表し、人に伝える大切さを知らせる。

【参照】 暴力防止プログラム研究 P32

2 「自分の感情を理解する-感情の言葉を増やそう-」

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- 12 -

【目的】「怒り」の感情について理解させる。

学習活動 教師の支援・活動の留意点等

1 様々な感情の中で「怒り」の感情について考える。

・「喜怒哀楽という言葉があ

るね。今日は『怒り』につい

て考えてみよう」という動機

づけを行い、「怒り」につい

てイメージ感じたり、考えた

りしていることを自由に書

けるように促す。

2 「怒りとは?」の ワークシートに記入する。

(資料 P34 1(1)~(5))

3 グループで話し合い、怒りを感じる状況が様々である

ことを理解する。

4 ワークシートに記入する。(資料 P34 2(2)①)

5 ワークシートに記入し、グループで話し合う。

(資料 P34 2(2)②)

・児童生徒が書きにくそうに

している場合には、「この1

週間何か嫌な気持ちになっ

た時はある?」などと援助す

る。

・できた文章の状況を分類さ

せ、児童生徒の怒りに関する

特徴に気付かせる。

・なぜ怒りを感じたのか、言

葉で説明するよう促す。

・自分が怒りを感じたときに

はどのような対処をしてい

るのか、その傾向に気づかせ

る。

・認知を変えることも、怒り

を感じた時の対処法の一つ

であることに気づかせる。

・対処法についてともに考え

させる他者の存在を意識さ

せる。

6 本時の学習を振り返る。 ・自分の怒りの表現方法を理

解した上で、認知を変える

ことも怒りの対処法の一つ

であることを理解させる。

指導のポイント

1 「怒り」は誰にでも起こる感情であることを知らせる。

2 自分の体が「怒り」によってどう変化するのかを認識させる。

3 人によって「怒り」の感情の起こる状況や、その対処は様々であることを知らせる。

4 怒りの感情を否定せず、認知を変えることも、望ましい対処の一つであることを伝える。

【参照】 暴力防止プログラム研究 P33

3 「怒りのメカニズムを理解する」

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【目的】「頭にきたときのよりよい対応」について理解する。

学習活動 教師の支援・活動の留意点等

1 日頃の出来事と感情について振り返らせる。

・「些細なことで、頭にきた

ことはどんな時?」と問いか

け、児童生徒がこれまでにし

た場面を想像させる。

2 頭にきたときの対応をワークシートに記入し、グルー

プで話し合う。 (資料 P35 1)

3 頭にきたときの対応からその後どうなるかについて

考え、ワークシートに記入する。(資料 P35 2)

4 頭にきたときのよりよい対応について学ぶ。

5 教師が行うロールプレイを見る。(資料 P35 3)

6 ペアになってロールプレイをする。

7 本時の振り返りをする。

(資料 P35 4)

・まずは一人学習としてワー

クシートへ記入させる。

・人によって様々な対応をす

ることに気づかせる。

・同じものを何回使ってもい

いことを伝えておく。

・理由をつけてお願いするこ

とが、適切な行動の例である

ことを理解させる。

・上手に対応できた児童生徒

には褒めてあげる。

・うまくできたら児童生徒同

士でほめ合うことを伝える。

・できるだけ多くの児童生徒

に、具体的にほめたりアドバ

イスしたりする。

8 本時の学習を振り返る。 ・児童生徒の感想から、より

よい対応の仕方について理

解させる。

指導のポイント

1 怒りの感情をもつことを否定することなく、頭にきたときのよりよい対応を学習させる。

2 学校生活の中で起こりうる(起こった)場面を取り上げることで、効果があがる。

3 小グループで行うことで、児童生徒の戸惑いや照れを尐なくすることができる。

4 教師が見本を見せることで、児童生徒が活発にロールプレイを行うことができる。

【参考】 H23 不登校対策推進研修員実践例

4 「頭にきたときのよりよい対応」

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【目的】「10秒呼吸法を使ったストレスマネジメント」について理解する。

学習活動 教師の支援・活動の留意点等

1 緊張したり、プレッシャーを感じたりしたときのこと

を思い出す。

・「どんな時に緊張したり、

プレッシャーを感じたりし

ますか。」と問いかける。

2 緊張する場面で、行っている工夫についてワークシー

トに記入し、グループで話し合う。

(資料 P36 1(1)・1(2))

3 10秒呼吸法について学ぶ。

(資料 P36 1(3))(資料 P37 2(1)・2(2)・2(3))

姿勢の説明を聞いて、実際にやってみる。

腹式呼吸の練習をする。

4 みんなと一緒に 10秒呼吸法の練習をする。

①姿勢の説明の説明を聞く。

②腹式呼吸の練習をする。

③10秒呼吸法の練習をする。

5 終了覚醒動作をする。(資料 P37 2(4))

6 授業の感想を記入する。(資料 P36 1(4))

・話し合いにより、様々な工

夫があることに気づかせる。

・「○に入る漢字一文字が分

かるかな」と問う。

・「『息』は自らの心と書きま

す。ここからも心と密接に関

係していることが分かりま

すね。」など呼吸法の大切さ

について伝える。

・呼吸法はいつでもどこでも

できることを伝える。

・音楽を流したり。肯定的メ

ッセージを添えるなどの工

夫をする。

・次の活動を円滑に行うため

にも、終了覚醒動作を十分に

行うよう指示する。

7 本時の学習を振り返る。 ・10秒呼吸法が、緊張を抑え

るための対処法の一つであ

ることを理解させる。

指導のポイント

1 呼吸と心のつながりを示すために、「息」を使った感情を表す言葉を示したり、体と心の

つながりを「肩」の言葉を用いた感情表現を示すことによって、活動の意味づけができる。

2 目を閉じたほうが、体に意識が集中し、10秒呼吸法の効果が上がることを伝える。

3 円陣を組んで大声を出すなど、緊張を高めて、集中する活動もあることを伝える。

【参照】 心の教育授業実践研究第 5号 P1

5 「10秒呼吸法を使ったストレスマネジメント」

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【目的】「おおらかな心をもつ」こともストレスを軽減できることを理解する。

学習活動 教師の支援・活動の留意点等

1 些細なことでイライラしたり、怒りを感じたりするこ

とがあるか、日常を振り返る。

・「普段、些細なことでイラ

イラした時に、自分に言い聞

かせている言葉はあります

か」と動機づけを行う。

2 最近、些細なことで腹が立ったり、嫌な気持ちになっ

たりしたときに自分に言い聞かせる言葉についてワー

クシートに記入し、グループで話し合う。

(資料 P38 1)

3 絵本「いいからいいから」を聞く。(資料 P38 2)

4 ペアになってロールプレイをする。(資料 P38 3)

5 ロールプレイの振り返りを行う。(資料 P38 4)

・自分で思い浮かばない場合

は、身近な人が使っている言

葉を思い浮かべるように促

す。

・ゆっくりと楽しめるように

感情を込めて読み聞かせる。

・上手に対応できた児童生徒

には褒めてあげる。

・「いいからいいから」の他

に1で考えた言葉を用いて

もよいことを伝える。

6 本時の学習を振り返る。 ・友だちの失敗を責めたり、

怒ったりせずに「いいからい

いから」と許せるおおらかな

心をもつことも大切である

ことを伝える。

指導のポイント

1 「怒り」の感情は誰にでも起こる自然な現象であることを知らせる。

2 「怒り」の感情を相手にぶつけるのではなく、おおらかな気持ちで受けとめると、良好

な人間関係を保つことができることを知らせる。

【参考】 H23「心の健康」教育実践研修講座 受講者実践事例

・長谷川義史『いいからいいから①』絵本館 2006

『いいからいいから②』絵本館 2007

『いいからいいから③』絵本館 2008

6 「おおらかな心をもとう」

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Ⅱ 自己を理解する活動・他者を理解する活動

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【目的】「自己発見と自己理解」について理解する。

学習活動 教師の支援・活動の留意点等

1 普段は、意識して使っていない五感を用いて

「自己発見と自己理解」をすることを知る。

・「普段は頭を使って自分を理解して

いますが、今日はそれ以外の感覚を

使って新たな自分を見つけてみまし

ょう。」と動機づけを行う。

2「自分の木」を見つける活動の説明を聞く。

(資料 P39 1)

3 活動を行うための準備を行う。

・目を閉じて、聴こえる音に集中する。

・素足になり、地面の感覚を確かめる。

4 「自分の木」を見つける活動を行う。

・これは、「自分の木」だと感じたら、その木を

じっくりと見つめ、ワークシートに記入する。

(資料 P39 2~6)

5 あらかじめ指定された時間に集合する。

・二人一組になる。

・ワークシートを見せ合いながら、お互いの「

自分の木」を紹介し合う。

・お互いに相手の木のイメージができたら、二

人で相手の「自分の木」を探しに行く。

6 本時の振り返りをする。

(資料 P39 7)

・「自分の木」を見つけるために、ま

ずは気持ちを落ち着かせる。

五感を研ぎ澄まし、自然との交流を

とおして、自分を見つめる時間であ

ることを説明する。

・感覚を研ぎ澄ます活動であること

を知らせる。

・何の音であるかではなく、どんな

音であるのかを聴かせる。

・何を踏んだかではなく、どんな感

じであるかを確かめさせる。

・自分以外の人の体験や感想を知り、

自己理解と他者理解の幅を広げる。

・危険な場所や、他人に迷惑をかけ

る場所には行かないように注意を促

す。

・「どうしても見つけられなければ、

一番自分に近い木を見つけ、どこ

がどう違うかを考えたら?」と声を

かけ、活動を促す。

・相手に「自分の木」がどこにある

かを教えないように指示する。

7 本時の学習を振り返る。 ・視点を変えると今まで自分で気づ

かなかった自分に出会えることを理

解させる。

【参照】 心の教育授業実践研究第6号 P14

指導のポイント

1 自然とふれあうことだけではなく、自分自身に向き合うことが活動の趣旨であることを理

解させる。

2 他者から理解される喜びを感じとらせる。

3 校内だけではなく、校外で取り入れるなどの工夫ができる。

7 「自分の木」

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【目的】「自己理解・他者理解」について理解する。

学習活動 教師の支援・活動の留意点等

1 自分について改めて振り返る。 ・「自分のことって知ってい

るようで知らないよね。」な

どと自分を見つめさせる。

2 ジョハリの窓について学ぶ。(資料 P40 1)

3 グループ(班)に分かれ発表する。

①グループ内で発表する順番を決める。

②グループ内の一人一人に対して「私は私が好きです。

なぜならAだからです。」と伝える。(資料 P40 2)

③伝えた相手から「私はあなたが好きです。なぜならB

だからです。」と返してもらう。(資料 P40 3)

④最後に全員に「私は私が好きです。なぜならCだか

らです。」と発表する。(資料 P40 4)

4 本時の振り返りをする。

(資料 P40 5)

・自己理解を深めるために、

発表までの自分を見つめる

時間を多くとる。

・他者により自己理解が促進

されることに気づかせる。

5 本時の学習を振り返る。 ・自己理解を深めるために、

自己開示と他者からのフィ

ードバックが大切であるこ

とを理解させる。

指導のポイント

1 新年度が始まった時期に、ホームルームなどで自己紹介を兼ねて行うこともできる。

2 小グループでの活動にするなど、発表しやすい雰囲気を作る工夫が必要である。

3 発達の段階に応じて、ジョハリの窓の「未知の窓」における自己発見に焦点をあてるこ

ともできる。

【参照】 心の教育授業実践研究第 5号 P29

8 「私は私が好きです。なぜなら・・・」

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【目的】「他者理解・自己理解」について理解する。

学習活動 教師の支援・活動の留意点等

1 友だちの良いところを探し、また、友だちから良いと

ころを探してもらう活動であることを知る。

・「自分の良いところは自分

では見つけにくいものだけ

れど、今日は友だちから良い

ところを見つけてもらう活

動をしましょう。」と動機づ

けを行う。

2 クラスの「友だちの良いところ」を見つけ、良いとこ

ろを「良いところカード」に記入していく。

(資料 P41 1)

(事前に教師が児童生徒の名前の記入してあるものを各

自に配っておく。朝の会(SHR)などを利用して配布し、

終わりの会で回収する。)

3 配られた「良いところカード」に友だちの良いところ

を記入する。

4 自分に宛てられた「良いところカード」を受け取る。

5 「良いところカード」を読んだ感想を書く。

(資料 P41 2)

・友だちの良いところを記入

するように促す。

6 本時の学習を振り返る。 ・自分では気づかなかった自

分自身の良いところを発見

できるようにさせる。

指導のポイント

1 他者から自分の良いところを伝えてもらえることで、自尊感情が高まることに気づかせ

る。

2 活動を取り入れる時期については十分に考慮する。

【参考】 H23「心の健康」教育実践研修講座 受講者実践例

9 「友だちの良いところ探し」

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【目的】「自己理解・他者理解」を深める。

学習活動 教師の支援・活動の留意点等

1 自分がどんな言葉によって励まされ、勇気づけられた

かを振り返る。

・「今までに、人からかけら

れた言葉で、自分の心が元気

になり、励まされた言葉はど

んな言葉?」と問いかけ、動

機づけを行う。

2 あったか言葉について、ワークシートに記入する。

(資料 P42 1)

3 グループで発表する。

・自分がどんな言葉で励まさ

れたかを考えることによっ

て他者の支えに気づかせる。

4 本時の学習を振り返る。(資料 P42 2) ・人それぞれ、人からの言葉

かけで様々な場面で励まさ

れていることを気づかせる。

指導のポイント

1 「クラブ活動編」「学習編」「学校行事編」「家族編」など、テーマを変えることで、さま

ざまな場面で励まされていることに気づかせる。

2 他者からの言葉で、自己の意欲が促進することを気づかせる。

3 グループワークでの活動から他者理解につながることを理解させる。

【参照】 「命の大切さを実感させる教育プログラム」実践事例集ⅢP114

10 「あったか言葉」

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【目的】人の立場になり、手紙を書くことで「自己理解・他者理解」を深める。

学習活動 教師の支援・活動の留意点等

1 本時の学習内容

・「皆さんは手紙を書いたことがあり

ますか?今日は、手紙を書きましょ

う。しかし、自分あての手紙です。」

と動機づけを行う。

2 役割交換手紙の説明を聞く。

ワークシート(資料 P43 1)

3 差出人を決定する。 (資料 P43 2・3)

4 自分への手紙を書く。

5 本時の振り返りをする。(資料 P43 4)

・ワークシートを配布し、シートに

従って、思いを深める。

・差出人は自分以外のものにするこ

とを指示する。

・書いた手紙は、封筒に入れ、宛名

(自分の名前)を書く。「○○様」の

ように、あえて「様」をつけると、

他人の立場で書きやすくなると伝え

る。

・振り返りのテーマとして、なぜそ

の差出人にしたのかという理由も含

めることを知らせる。

6 本時の学習を振り返る。

・他者の目をとおして自分がどのよ

うに見えているかを考えることによ

って、自己理解を深め、他者に対す

る関心を高める活動であることを伝

える。

指導のポイント

1 相手の思いを考えることは難しいが、自己理解を深め、他者への関心を高めるために大

切なことであることを理解させる。

2 本当に相手がそう思っていたら正解、というのではなく、相手の思いを考えることその

ものが重要だということを伝える。

3 手紙を書くことで、自己洞察を深めたり、他人への思いを深めたりすることが大切であ

ることに気づかせる。

【参照】 心の教育授業実践研究第 7号 P61

11 「役割交換てがみ」

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Ⅲ コミュニケーション能力を高める活動

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【目的】「課題解決」について理解する。

学習活動 教師の支援・活動の留意点等

1 自分の悩みや課題について考える。

・「人は色々な悩みや課題を

持っていますね。生きるため

には、人はその悩みや課題を

解決することが必要です。よ

りよい生き方をするために

課題解決というのは大切な

ことといえます。今日は課題

を解決するための方法につ

いて考えてみましょう。」と

動機づけを行う。

2 自分の課題についてワークシートに記入する。

(資料 P44 1・2)

3 グループで話し合う。自分の心配事を話し、解決に向

けたアドバイスを他者から受ける。

4 アドバイスを参考にして、自分で解決法を見つけ、ワ

ークシートに記入する。(資料 P44 3)

5 グループ内で自分の考えた解決法を発表する。

6 1週間後、グループで話し合う。

①自分の今の気持ちについて数値化する。

(資料 P44 4)

②一週間の取組状況について発表する。

③班員からの評価を受ける。

7 本時の振り返りをする。(資料 P44 5)

・悩みや不安について気づか

せる。

・発表者に適した解決へのア

ドバイスを心掛けるように

促す。

・各自、課題解決に向けた班

員の様子を観察するように

指導する。

・尐しでも良くなった場面を

自己評価させるなど、取組に

対して肯定的な気持で数値

化するように促す。

・肯定的な評価をするように

促す。

8 本時の学習を振り返る。

・一人で苦しまず、悩みを打

ち明けることで、他者からの

支えが得られ、課題が解決し

ていくことに気づかせる。

指導のポイント

1 気持ちを数値化する作業(スケーリング)によって、各自が客観的に自分の気持ちに目を

向けることができることを伝える。

2 積み重ねにより、さらに大きな課題を解決することができることを伝える。

3 課題の解決に焦点をあてるのではなく、課題解決する過程で自尊感情が高まり、次に生じ

る新たな課題に対しても積極的に取り組める意欲につながることを知らせる。

【参照】 心の教育授業実践研究 第 4号 P45

12 「自らの課題や問題を解決する」

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【目的】様々な表現の仕方を知り、コミュニケーション能力を高める。

学習活動 教師の支援・活動の留意点等

1 日頃の自分の表現の仕方について振り返る。

「自分の言いたいことがう

まく相手に伝わらなかった

という経験はないですか。今

日は、相手にうまく伝えるた

めの工夫について学びまし

ょう。」と動機づけを行う。

2 様々な表現方法について学ぶ。

(資料 P45 1)

3 グループに分かれ、ロールプレイ1を行う。

(資料 P45 2)

4 ロールプレイ1の振り返りを行う。

5 ロールプレイ2を行う。

(資料 P45 3)

6 グループで振り返りをする。

(資料 P45 4)

・自分か普段どのような話し

方をしているかに気づかせ

る。

・3つの話し方を全員が体験

できるようにする。

・お互いに不快にならない話

し方はどのような話し方か

に気づかせる。

・アサーティブな話し方を意

識しているかを確認させる。

7 本時の学習を振り返る。 ・日頃の自分の話し方を振り

返らせるとともに、お互いに

不快にならない話し方を理

解させ、その話し方を活用し

ようという意欲を持たせる。

指導のポイント

1 自分の普段の表現について理解を深められるように3つの表現を提示する。

2 3つの表現からどの表現を選ぶかは、その場の状況によって異なってくるが、より良い

人間関係を構築するためにはアサーティブな表現が望ましい。

3 日常生活においても、自分も相手も大切にした話し方を心掛けるのが望ましいことを伝

える。

【参照】 暴力防止プログラム研究 P46

13 「様々な自己表現を知ろう」

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【目的】「仲間づくり」について理解する。

学習活動 教師の支援・活動の留意点等

1 仲間に入ろうとして、入れなかった経験について思

い出す。

・「皆さんの中に、楽しそうにして

いる友だちの輪の中に、入りたい

けど入れなかった経験のある人は

ないですか?」と問いかける。

2 クマとあなぐらゲームをする。(資料P46 1)

3 仲間づくりをするときに、必要な言葉や表情につい

て記入し、グループで話し合う。(資料P46 2)

4 グループで話し合ったことを発表する。

5 2人組でロールプレイを行う。(資料P46 3)

①相手に近づく。 ②相手を見る。

③聞こえる声で言う。 ④笑顔で言う。

6 本時の振り返りをする。(資料P46 4)

・心と体の安全を守りながら活動

するように留意する。

・仲間に入れてほしいと来た友だ

ちは、仲間に入れてあげることを

伝える。

・児童生徒が発表した意見を「行

動」と「言葉」に分けて整理する。

・「よくできているね。」と、肯定

的なフィードバック(褒める等)

を行う。

・仲間に入る言葉かけをして、実

際に仲間に入れたときの気持ちを

発表させる。

7 本時の学習を振り返る。

・勇気を持って仲間に入れてとい

う人と、それを笑顔で快く受け入

れてくれる人がいて、仲間が生ま

れることに気づかせる。

指導のポイント

1 児童生徒が仲間に入れてもらえた時の嬉しさや喜びを体感することを通じて、仲間を受容す

る雰囲気づくりを大切にする。

2 児童生徒が楽しみながら活動できるように、ゲーム的な要素を入れる。

3 ひとりぼっちでいる人を仲間にしようとする意識を持たせるように指導する。

【参考】 H23 不登校対策推進研修員実践例

14 「うまく仲間に入ろう」

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【目的】「課題解決」について理解する。

学習活動 教師の支援・活動の留意点等

1 本時が集団で一つの課題に取り組む活動であ

ることを知る。

・「遠足で、クラスでどんな活動をす

るかを決める時に、なかなか決まら

なかったよね。今日は、集団で一つ

のことを決めていくことについて学

んでいきましょう。」と問いかける。

・多数決との違いを強調する。

・1グループ6~8名が適当。

2 NASAゲームの進め方の説明を聞く。

(資料 P47 1)

3 個人で順位をつける。

4 グループで話し合いながら、順位をつける。

(資料 P47 1)

5 話し合って決めた順位と理由を発表する。

6 本時の振り返りをする。(資料P48 2・3)

・状況と課題について確認させる。

・ここでは他の人と相談しないよう

に注意する。

・言葉の意味が分からないといった

言葉上の質問にのみ答える。

・決定するために多数決や安易な妥

協はしない、いつでも多数派が真実

とは限らないので、尐数派になった

人も十分に主張することが大切であ

る、等の説明をする。

・最初に作業終了時間を明確にして

おく。

・決定の理由ならびに決定に至った

経過やエピソードなどを簡単に発表

させる。

・NASAが導き出した順位づけを

みて、論理の展開の在り方について

学ばせる。

7 本時の学習を振り返る。 ・正しい答えを導き出すことよりも、

グループで話し合う過程が重要であ

ることに気づかせる。

指導のポイント

1 正解を導き出すこと(結果)よりも話し合いを持つこと(過程)を大切にするように指

導する。

2 合意(コンセンサス)を得ることの難しさと大切さを伝える。

3 話し合いには十分に時間をかけ、合意形成された内容については、全員がその順位付け

を支持するように伝える。

【参照】 暴力防止プログラム研究 P57

15 NASAゲーム

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【目的】「言語による伝達」について理解する。

学習活動 教師の支援・活動の留意点等

1 普段の会話について振り返る。

・「普段の会話の中で、言葉の行き違

いがあるな、と感じることはないで

すか?今日は、言語による伝達につ

いて学習しましょう。」と動機づけを

行う。

2 活動の進め方の説明を聞く。

(資料 P49 1)

3 グループに分かれ、実習1を行う。

4 実習1の振り返りを行う。

①情報提供者が伝え方の難しさについて話す。

②他の班員は、説明としてわかりにくかったと

ころの改善点について話す。

③情報を正確に伝えるためにはどのようにすれ

ばよいかを話し合う。

5 実習2を行う。 (資料 P49 2)

6 本時の振り返りをする。

(資料 P49 3)

・1グループ6~8名が適当。

・正確に情報を伝えるにはどのよう

にすればよいのかについて焦点をあ

てて話し合うように指導する。

・解答者の書いた図をもとにした質

問はしないように指導する。

7 本時の学習を振り返る。 ・情報が正確に伝わったかどうかで

はなく、正確に伝えるには、双方向

に情報を交換しながら、丁寧に伝え

ることが大切であることを伝える。

指導のポイント

1 正解に導き出すことではなく、正確に情報を伝える方法について焦点をあてた話し合い

をもつように指導する。

2 言葉だけでの伝達には限界があり、状況に応じて視覚的に伝えることも必要があること

も伝える。

【参照】 暴力防止プログラム研究 P54

16 「言語による伝達」

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第5章 心の健康教育プログラム 参考資料

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1 ストレスって何だろう?!

(1) ストレスとは?

=ある物体に外から力が加わったときに生じる物体のひずみ(物理学)

生物の体で起こるストレス(セリエ)

①物理化学的ストレス・・・・暑さ、寒さ、騒音など

②生理的ストレス・・・・・・過労、感染など

③社会的心理的ストレス・・・人間関係、挫折感、不安など

*いずれもストレッサー(外からの刺激によって起こるもの)

ストレスは必ず有害か? → 「挑戦」のように有益な良性のストレスもある。

適度なストレスは必要で、大切なのはそのつきあい方。

(2)ストレスはなぜ起こるのか?

①時代背景

【学歴重視による受験競争の激化、テクノロジーの進化によるテクノストレスなど】

②生活環境

【育児ストレス、夫婦や親子間の不満など】

③自信欠乏

【セルフ・エフィカシー(自己効力感)の欠乏状態】

④パーソナリティー(性格)

タイプAとよばれる性格特性を持つ人はストレスを受けやすい。

タイプAの性格特性 ・目標に向かって突き進む

・認められたいという願望が強い

・競争心が旺盛である

・一度に二つ以上のことをする

・周囲にひどく気を配る

・話し方が早い

資料 1「ストレスマネジメント」

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(3)ストレスと体の関係

ストレス →

警告期 → 抵抗期 → 疲弊期

*ストレスの現れ方 ①心身症状的症状・・・高血圧、潰瘍、糖尿病など

②神経症状的症状・・・不安神経症、不眠、慢性疲労感など

③行動・認知障害・・・注意集中困難、知能機能低下など

例 糖尿病とストレス 風邪などの体調不良や夜勤などの加重労働が食事の摂取量

やエネルギーの発散料に関係なく血糖値を上げる。

(4)ストレスマネジメント

ストレスへの対処法

①課題志向型・・・・原因を分析し、処置する

②感情の表出・・・・うっぷんばらし、アドバイスを求める

③他活動を行う・・・運動や趣味などを行う

④消極的試み・・・・発生源の無視

*二つの主要な働き ○問題焦点型の対処(ストレスの元となる環境を変える)

○情緒を調整する(情緒的な苦痛を減尐させる)

~効果的な対処法~

①動作法

自分の体の感じに気づき、なだめていく体験

②問題解決的アプローチ

具体的な解決策を考え、可能なものから尐しずつ実行していく方法

③自律訓練法・イメージ療法・交流分析法・音楽療法など

反ショック相

防衛反応

ストレッサーと

生体の抵抗力と

がバランスを取

っている状態

抵抗力下降

症状最表出、

衰弱し死に

至る

ショック相

体温下降

血圧下降

血糖値低下

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(5)技法

①「イメージ呼吸法」の説明内容

吸うが緊張、吐くがリラックスです。リラックスしたいときは、吐く息を尐し長めにします。

息を吐くとお腹がしぼんで、息を吸うとお腹が膨らみます。

吐く息とともに、イライラや身体の疲れが身体の外に出ていく感じがでてくるといいですよ。

自分のペースで、ゆっくりと息を吐いてみましょう。息を吐き切ったら、大きく、自然に、息を

吸い込みます。

尐し止めて、ゆっくり細く長く息を吐いていきましょう。吐く息とともに、身体の力が抜けて

いく感じがいいですね。

②「肩のリラクセーション」の説明内容

真っ直ぐな姿勢をします。肩を小さな力で、大きく高く上げていきます。思わず首や肘に力が

入っていないか点検します。もっと高く上がるかなとメッセージを送ってみてください。そして

、ストン(ゆっくり)と力を抜いていきます。まだ、まっすぐな姿勢です。一仕事終えたような

感じです。まだ、肩に余韻が残っているかもしれません。ふっと肩に力が入っていた自分に気づ

くことができるかもしれません。そして、背もたれにもたれ、休息の姿勢です。

③「簡易型漸進性弛緩法」の説明内容 両手首をまげます。

両足首をまげます。他はリラックスです。

両手首に力を入れたまま、両足首の力を抜きます。

両手首の力も抜きます。

両手首をまげます。両足首もまげます。次に肩を開いて背中にも力を入れます。

両手、両足は力をいれたまま、肩・背中の力を抜きます。

両手首に力を入れたまま、両足首の力を抜きます。

両手首の力も抜きます。

両手首をまげます。両足首もまげます。肩・背中にも力を入れます。腰・お知りに力を入れます。

両手、両足、肩・背中の力は入れたまま、腰・お尻の力を抜きます。

背中・肩の力を抜きます。

両足首の力を抜きます。

両手首の力を抜きます。

両手首をまげます。両足首もまげます。肩・背中にも力を入れます。腰・お尻に力を入れます。最後に

顔に力を入れます。奥歯をかみしめて目をギュッとつぶります。これで、身体全部に力が入っています。

両手、両足、肩・背中、腰・お尻の力は入れたまま、顔の力を抜きます。

両手首、両足首、肩・背中の力は入れたまま、腰・お尻の力を抜きます。

背中・肩の力を抜きます。

両足首の力を抜きます。

両手首の力も抜きます。

全部の力が抜けました。ここからもっと力が抜けていきます。まだ、足に力が入っていたなー、とか、

身体のすみずみまで気持ちを向けることで、さらに、力が抜けていきます。それを、じっくり、味わいま

しょう。この後、すぐに仕事や活動をしないといけないときは、必ず、「終了覚醒動作」を行う。

*終了覚醒動作の説明内容

リラックスした状態から、気持ちをはっきりさせるために、「両手をグーパーグーパーします。

次に、肘をまげて伸ばして、足も伸ばせたら伸ばしましょう。両肘を前に突き出すか、高く上げ

て、はっきりと目を開けましょう。」

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2 ワークシート

(1) あなたにとってストレスはどんなこと?

(2) ストレスがたまったときにあなたの体や行動にどんな反応がでますか?

(3) ストレスがたまったときに、あなたはどのように対処しますか?

(4) ストレス対処法を体験してどのように感じましたか?

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ワークシート

1 感情を表す言葉はどんなものがある?思い浮かぶだけ書いてみよう。

(快の感情を表す言葉)

例 気持ちいい 楽しい

(不快の感情を表す言葉)

例 苦しい 寒い

2 1で挙げた言葉をその感情が大きいものから順に並べてみよう。

(快の感情を表す言葉)

(1)

(2)

(3)

(4)

(5)

(不快の感情を表す言葉)

(1)

(2)

(3)

(4)

(5)

3 以下の文章の空欄に言葉を入れてみよう。

(例)私が楽しいのは、テストでいい点が取れたとき

~(快の感情を表す言葉)(1)の場合~

私が と感じるのは何(誰) がどういう状態 の時

~(不快の感情を表す言葉)(1)の場合~

私が と感じるのは何(誰) がどういう状態 の時

4 あなたはクラスで学級委員に推薦されました。どのように感じますか?

<どのように感じるか>

<そう感じた理由>

資料 2 「自分の感情を理解する-感情の言葉を増やそう-」

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ワークシート

1 「怒りとは?」

「今日は、人はなぜ怒るのだろう?と言うことを一緒に考えたいと思います。あなたが“

怒り”について日頃感じたり考えたりしていることを、自由にこのシートに書いてくださ

い」

(1) 怒りとは、 。

(2)私が怒るのは、 とき。

(3)私は怒ると、 になる。(体の変化)

(4)私は怒ると、 になる。(行動)

(5)私は怒っている人を見ると、 と感じる。

2 次の場面について考えよう

(1)あなたは廊下を歩いていて、曲がり角で勢い良く走ってきたクラスメートにぶつかり、

持っていた本やプリントを落としてしまいました。クラスメートはあなたに向かってプ

ンプンに怒って「痛い!ぼやぼやしないでよ!」となじり、落ちた本やバラバラになっ

たプリントを拾わずに行ってしまいました。この時あなたは、腹を立てました。

(2)同じ日の放課後、ぶつかったクラスメートがあなたの所にきて、謝りました。

「あの時は、ごめんね。昨日の英語のテストがすごく悪くてお母さんに怒られて、すご

く気分が悪かったの。」

① 2(1)の時、腹を立てないために、どう考えればよいのでしょうか?

② 1「(2)私が怒る とき」で記入した場面で、腹を立てないために、どう考えれば

よいのでしょうか?

資料 3 「怒りのメカニズムを理解する」

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ワークシート

1 頭にきたときにどんな対応をしているか考えよう。

2 頭にきたときに下のそれぞれの対応をすると、その後どうなるか考え、下の選択群

から選ぼう。(複数選択可)

攻撃 暴力をふるう。

文句や悪口を言う。

やつあたり 物を投げたり蹴ったりする。

関係のない友達にやつあた

りする。

がまん 必死で我慢して相手にしな

い。

お願い その場で、その人に自分の気

持ちをいいながらお願いす

る。

↓ ↓ ↓ ↓

選択群

(1)物が壊れる (2)けんかになる (3)家族にやつあたりする (4)けがをする

(5)仲直りする (6)話し合いをする (7)すっきりする (8)元気がなくなる

(9)ストレスがたまる (10)体調が悪くなる (11)学校にいきたくなくなる

(12)先生にしかられる (13)家の人にしかられる (14)家の人に迷惑がかかる

(15)友だちがいなくなる (16)友だちが増える

(17)友だちが自分の気持ちをわかってくれる (18)幸せになる

3 次の場面でのロールプレイをしてみよう。

身体測定で並んでいるときに、友だちがしつこく背中をつついたり、後ろから押してき

ます。一度注意をしたのにやめません。

A君 「押されたり、つつかれたりしたらいややから、やめてくれへんかなぁ。」

(理由をつけてお願いする)

B君 「嫌なことしてたんやね。ごめんな。」

A君 「分かってくれたらええよ。」

4 ロールプレイをした感想を書こう。

4 「頭にきたときのよりよい対応」

頭にきた時の対応 後、どうなる?

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1 ワークシート

(1) 試験や試合の前、プレッシャーがかかった時、あなたの身体にどのような変化がおこ

りますか?

(2) 1のようなとき、あなたは何か工夫していますか?

(3) ○に入る漢字を考える。

○が合う。

○をのむ。

○が詰まる。

○を止める。

(4) 10秒呼吸法を行った感想を書いてみましょう。

資料 5 「10秒呼吸法を使ったストレスマネジメント」

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2 呼吸法について

(1) 腹式呼吸

横隔膜を上下させて行う呼吸。吸いながらお腹をふくらませる。吐きながらお腹をへこ

ませる感じで行うとよい。

吸うときは鼻から、吐くときは口を尐しすぼめて、遠くへ、細く長く、吐く感じで行う。

(2)10秒呼吸法

☆リラクセーション

① 姿勢を整える(椅子の背もたれに軽くもたれ、脚は鈍角にし、両手は脚の上にの

せ、首は軽くうなだれる。目を閉じられる場合は閉じる)

② 静かに眼を閉じる

③ 全部息を吐く

④ 1・2・3と鼻から息を吸って

⑤ 4で止めて

⑥ 5・6・7・8・9・10で口から吐き出す

(吐くときにイライラやモヤモヤが一緒に吐き出されるようイメージする)

☆集中

① 姿勢を整える(椅子に深く座り、背筋を伸ばし、脚は直角にし、両手は脚の上に

のせ、首は真っ直ぐ前を向く。)

② 静かに眼を閉じる

③ 全部息を吐く

④ 1・2・3・4・5・6と鼻から息を吸って

⑤ 7で止めて

⑥ 8・9・10で口から吐き出す

(吸うときに身体の中にエネルギーがたまっていくようなイメージをする)

(3)理想的な呼吸

深・・・一回の呼吸の肺活量が大きい方がよい

長・・・呼吸の周期が長い方がよい

細・・・呼吸の流量が細く小さい方がよい

均・・・呼吸と呼気の流量が均一な方がよい

緩・・・ゆっくりと呼吸するのがよい

軽・・・音を立てない呼吸がよい

(4)終了覚醒動作

① 腕を前に突き出して手を開いたり閉じたりする。

② 腕を肘から曲げたり伸ばしたりする。

③ 最後に手を組んで、思いきり背伸びを2・3回する。

資料 5 「10秒呼吸法を使ったストレスマネジメント」

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ワークシート

1 些細なことでイライラしたり、いやな気持になったりした時に自分に言い聞かせてい

る言葉はある?

2 絵本「いいからいいから」を聞いてどう感じましたか?

3 次の場面でのロールプレイをしてみよう。

待ち合わせの時間から 1時間遅れて、A君がやってきました。

A君 「寝坊して遅れてしまった。ごめんね。」

B君 「いいからいいから」

4 ロールプレイをした感想を書いてみよう。

資料 6 「おおらかな心をもとう」

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ワークシート

1 「自分の木」を探す活動

校内にある木から、自分にぴったりくると思えるような「自分の木」を1本、五感を使

って見つけ出す。活動中は他の人と話さず、一人で行う。

2 なぜ、この木を自分の木として選びましたか。

3 木の大きさ、形、雰囲気はどうですか。

4 木の幹や葉を手でさわったり、においをかいだりすると、どんな感じですか。

5 木に耳をあてると、何が聞こえますか。もし木があなたに語りかけるとすれば、どん

なことをいっていますか。

6 木の周りは、どんな様子ですか。

7 このワークをとおして感じたことを書いてください。

資料 7 「自分の木」

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ワークシート

1 ジョハリの窓

人同士が円滑なコミュニケーションを進めるために考案されたコミュニケーション分析のモデル。人間

関係の変革を起こすには、下図のように開放された窓を広げるために、「自己開示」と「他者からのフィー

ドバック」が重要であるといわれています。

自分が知っている私 自分が知らない私

人が知っている私 開放された窓

「公開された自己」

盲点の窓

「自分は気がついていないものの、他人からは見ら

れている自己」

人が知っていない私 秘密の窓

「隠された自己」

未知の窓

「誰からもまだ知られていない自己」

2 「私は私が好きです。なぜならAだからです。」とグループ内で発表する。

3 「私はあなたが好きです。なぜならBだからです。」と班員に言ってもらう。

4 「私は私が好きです。なぜならCだからです。」とグループ内で発表する。

自分が知っている私 自分が知らない私

A (自分も他人も知っている)

B (自分は知らないが他人は知っている)

C (自分は知っているが、他人は知っていない)

5 このワークをとおして感じたことを書いてください。

資料 8 「私は私が好きです。なぜなら・・・」

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ワークシート

1 良いところカード

( )さんへ

2 良いところカードを読んだ感想を書きましょう。

資料 9 「友だちの良いところ探し」

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ワークシート

1 人からかけられた言葉で、自分の心が元気になったり、励まされたりした言葉を書い

てみよう。

① 家族から

② 体育大会や文化祭、部活動、習い事などで先生や友人から

③ 困ったときに一言、先輩から

④ 本や新聞、テレビなどで励まされた言葉

など

2 このワークをして感じたことを書いてみよう。

資料 10 「あったか言葉」

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ワークシート

1 役割交換手紙の説明

自分の思い浮かべる差出人の立場から、自分宛ての手紙を書く。

(1)差出人を決定する。

(2)差出人の視点から自己洞察をする。

(3)手紙を書く。

2 次の(1)~(8)について書いてみましょう。

(1)普段からよく励ましてくれたり、誉めてくれたりしているのは誰でしょう。

(2)どんな言葉をかけてくれますか。

(3)それを聞いてどう思いますか。

(4)どんな思いでその言葉をかけてくれるのでしょう。

(5)普段からよく叱ってくれたり、注意をしてくれたりしているのは誰でしょう。

(6)具体的にどんな言葉をかけてくれましたか。

(7)それを聞いてあなたはどう思いましたか。

(8)どんな思いでその言葉をかけてくれるのでしょう。

3 差出人は誰ですか?またその理由はなぜですか?

4 手紙を書いた感想を書いてみましょう。

資料 11 「役割交換てがみ」

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ワークシート

1 今、気になること、心配していることがあれば、書いてみよう!

2 心配していることや今の気持ちはどれくらい?

(心配事がない状態を 10点、今は何点ぐらい)

0 2 4 6 8 10

3 解決法について書いてみよう。

4 心配していることや今の気持ちはどれくらい?

(心配事がない状態を 10点、今は何点ぐらい)

0 2 4 6 8 10 5 このワークをして感じたことを書いてみよう。

資料 12 「自らの課題や問題を解決する」

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ワークシート

1 話し方の3つのパターン

A(攻撃的) …自分のことを中心に、相手の気持ちなどは無視して、とにかく

自分の意見や思いを一方的に言う表現。

B(受け身的) …相手のことを優先させて、自分の気持ちを抑えてしまう表現。

C(アサーティブ)…自分の気持ちも相手の気持ちも大事にした表現。

2 ロールプレイ1をしましょう。

給食当番が牛乳ビンのケースを持って教室に入ろうとしています。あなたは同じ入り口

から手を洗いに行こうとしていました。入り口付近ですれ違った時、給食当番が持ってい

た牛乳ビンのケースが、あなたに当たりました。あなたはどうしますか。

A 「痛いなあ、ちゃんと前向いとけよ」と言いながら、相手を蹴る。

B 何も言わず、下を向いたまま教室から出て行く。

C 「牛乳瓶のケースが体に当たって、痛かったで。今度から気をつけてな。」と言っ

てから教室を出る。

3 ロールプレイ2をしましょう。

あなたが大切にしていた本を友だちに貸したところ、1ヶ月以上たってから返してもら

えました。よく見ると表紙が破れています。友だちにどう伝えますか。

4 このワークをして感じたことを書いてみましょう。

資料 13 「様々な自己表現を知ろう」

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ワークシート

1 クマとあなぐらゲーム

3人組になりジャンケンをする。負けた人は、ほかの2人がつないだ手の中に入る。 2

人が「あなぐら」役、中に入った人が「クマ」役となる。教師が「クマ」とコールしたら、

「クマ」の人は他の「あなぐら」に移動する。あいている「あなぐら」を見つけたときに

「クマ」役の人は「入れて」と声をかける。声をかけられた「あなぐら」役の人は「いい

よ」と答える。今度は、教師が「あなぐら」とコールする。反対に「あなぐら」役の人が

「クマ」を探し、「入って」と声をかける。「クマ」役の人は「いいよ」と言って中に入る。

教師が「嵐がきた」とコールすると、「クマ」役の人も「あなぐら」役の人も全員が入れ替

わり、3人組になる。

輪の中には入るときに声をかけること、そして、それに答えることがポイントとなる。

近づいて相手に聞こえる声でいうよう助言する。教師が、クマとなって「あなぐら」に入

るとコール役が交代できる。

2 仲間づくりをするときに、必要な言葉や表情を書いてみよう。

3 2人組で、仲間に入るときのロールプレイを①~④のようにしてみよう。

<仲間になろうと声をかける人>

①相手に近づく。 ②相手を見る。

③聞こえる声で「(なかまに)入れて」と言う。 ④笑顔で言う。

<声をかけられた人>

①「いいよ」と笑顔で答える。

4 このワークをして感じたことを書いてみよう。

資料 14 「うまく仲間に入ろう」

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ワークシート

1 NASAゲーム

あなた方は、月旅行宇宙船のメンバーです。計画では、明るい方の月面上で、迎えに来

る母船とランデブーすることになっていました。ところが、あなた方の宇宙船は、機械の

故障で着陸予定地点(母船とのランデブー地点)から 200km離れた所に着陸してしまい

ました。その上、月面着陸に際し、搭載していた機械の多くは破損してしまったのです。

生存したいならば、あなた方はどうにかして母船の着陸地点にたどり着かなければならな

いのです。そこで、月面上 200kmの旅行に携行するのに必要な品物を選択する必要に迫

られています。

次に、着陸の際、破損を免れ完全なままで残った15の物品のリストがあります。課題

は、あなた方、乗組員グループがランデブー地点い到達するため、その必要度(重要度)

に応じて、これらの物品に順位をつけることです。

まず、あなた個人として順位をつけて下さい。最も不可欠と思われるものを1とし、そ

の次に重要なものを2、以下順に3、4、・・・、一番必要でないと思われるものを15と

いう具合に、全品目の順位を記入して下さい。また、その理由も簡単に書いて下さい。

品目 順位 理由

マッチの入った箱

宇宙食(固形食)

ナイロンのロープ(15m)

パラシュートの絹布

ポータブルの暖房機

45口径ピストル 2挺

粉乳 1ケース

45kgの酸素入りボンベ 2個

月から見た星座図

救命ボート

磁石の羅針盤

20リットルの水

発火信号

注射針の入った救急箱

太陽光で作動するFMの送受信機

資料 15 NASAゲーム

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2 NASAが導き出した順位付け

品目 順位 理由

マッチの入った箱 15 酸素無し。

宇宙食(固形食) 4 食物なしでも相当日数持ちこたえられる。

ナイロンのロープ(15m) 6 地形の悪いところを越していくため。

パラシュートの絹布 8 運搬日よけなど。

ポータブルの暖房機 13 明るい月面は熱い。(当分は暗い月面(夜)

にならない)

45口径ピストル 2挺 11 推進力として何らかの用途があろう。

粉乳 1ケース 12 水が必要な補助食料。

45kgの酸素入りボンベ 2個 1 月面に空気はない。

月から見た星座図 3 方位を定めるために必要。

救命ボート 9 運搬、日よけ、ふくらますためのガスを推

進力として使うなどの利用価値有り。

磁石の羅針盤 14 月面上の磁場は非常に弱い。また地球と異

なる。

20リットルの水 2 水なしでは、長くは生きられない。宇宙服

内は発汗作用が大きい。

発火信号 10 視界内信号として用いる。

注射針の入った救急箱 7 救急薬品、栄養剤など使用できる。針は特

に関係なし。

太陽光で作動するFMの送受信機 5 FMのため、遠距離は困難であるが、連絡

用に必要。

3 このワークをして感じたことを書いてみよう。

Page 51: 心の健康教育プログラムkenshusho/07kokoro/H23/kokoronokenkou.pdfサーティブコミュニケーションスキル、3-②対人関係スキル、4-①自己認識スキル、4-②共感スキル、5-①情動抑制スキル、5-②ストレスマネジメントスキル)である。

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ワークシート

1 実習1

①情報の提供者を決める。

②情報提供者は情報を口頭だけで伝える。

③他の班員は聞いた情報を紙に書く。(情報提供者に質問をしない。)

2 実習2

①話し合いで情報の提供者を決める。

②情報提供者は情報を口頭だけで伝える。

③他の班員は聞いた情報を紙に書く。(情報提供者に質問できる。)

3 このワークをして感じたことを書いてみよう。

資料 16 「言語による伝達」