ポスト3.11 高校生未来プロジェクト 2013 学校での対話型 ...b高校(関東)...
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2015.2 ベネッセ教育総合研究所 「高校生未来プロジェクト」事務局
【CONTENTS】
ポスト3.11 高校生未来プロジェクト 2013
学校での対話型ワークショップによる
学ぶ意欲の向上に関する実証実験報告書
1.目的(問題意識) 2.方法(仮説・経緯・実施情報) 3.成果(効果) 4.課題・対応策・考察 5.おわりに
2
目次 1.目的(問題意識) 2.方法(仮説・経緯・実施情報) 3.成果(効果) 4.課題・対応策・考察 5.おわりに
3
1.目的(問題意識)
目的:「対話型ワークショップ×学びの目的を「あえて」作り出す活動 =主体的な学習意欲を向上」に、効果があるのか、検証したい。
4
低水準にとどまる、高校生の「学びの目的」
勉強の意味を見つけられず、「勉強しようという気持ちがわかない」高校生は約6割*
「将来の進路は大学進学後に考える」という高校生が約5割*
・高校時代に「なりたい職業」を決めて勉強や大学進学への意欲を高める「自己実現モデル」の限界
・「社会に貢献したい」という意欲はあるが、それが学びへの意欲や具体的な行動に結びついていないジレンマ。。。
近年産業界・ビジネス界の研修で取り入れられている「対話型ワークショップ(以下、WS)」 「ファシリテーション」などの新しい学びの手法で、 「あえて」学ぶ目的を深め、仮決めする活動は、 長期的に学ぶ意欲につながる可能性はないか?
高校・大学での「学び」の価値や、「個人としての」学ぶ目的が「対話型ワークショップ」で実感出来れば、
高校生の学ぶ意欲が高まるのではないか
仮説 本報告書は この仮説を 検証します
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高校生未来
プロジェクト2013
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2.方法(仮説・経緯・実施情報)
ワークショップの仕組み : 「マイテーマ」「学ぶ目的」を「仮決め」 高校生未来
プロジェクト2013
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【仮説】
学ぶ意欲を向上させるためには、「マイテーマ(例:人の役に立ちたい、英語がうまくなりたい、起業したい、声優になりたい、等)」と「学ぶ目的」を対話型ワークショップで語らい、外部刺激を受け、内省化することが、有効なのではないか
マイテーマ (問題意識・
解決したい課題・興味)
マイテーマ を実現してる 自分の未来像
学ぶ目的
◆本ワークショップの価値
=「自ら語る」「外部刺激と問い」「内省化=自分との対話」
◆手段
「マイテーマ」を「仮決めする」 :内発的なゆらぎ
「先輩との交流」「未来の情報提供」 :外発的なゆらぎ
↓
「マイテーマ」を仮決めする。
「学ぶ目的」がわかる。
↓
学ぶ意欲は向上する、という仕組み
ワークショップ当日の進行
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初芝富田林高校 未来PJ
当日スケジュール(一例)
13:00~13:30 イントロダクション アイスブレーク
13:30~14:40 4人一組の少し深めの自己紹介 (ジブンガタリ)
14:40~15:40 マイテーマを考える ※みんなのアンテナを仮決めする・先輩も参加!
15:40~18:00 先輩とのセッション ※先輩の話を聴く「勉強」や「社会」を先輩と語り合う
18:00~19:00 夕食休憩
19:00~20:00 自分との対話 ラップアップ
9:20~12:00 みんなで深める ※社会貢献や勉強の意味・目的について対話
14:00~14:30 自分で深める ※個人ワーク内容を共有、フィードバック
14:50~16:00 クロージング ひとりひと言 ※全体で学びを共有
9:00~9:20 イントロダクション チェック・イン
14:30~15:00 未来の自分と対話する~半年後の手紙
13:00~14:00 言葉にする ※自分の考えを文章にして学び合う
1日目 2日目
プログラムのねらい= 「語らい」「外部刺激」というゆらぎ(拡散)と 「仮決め」「文字にする」という決定(収縮)を繰り返し、 生徒一人ひとりに、自分なりの学ぶ意味・目的を言葉にさせていくこと。
経緯 ~ 一連の研究における、今回の報告の位置づけ
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第一段階
全国公募合宿型
2011・12年度
学ぶ意欲が半年後高く継続
「全国」「個人参加(任意)」ならうまくいった
このモデルだと
普及しない
結論 課題
第二段階
学校導入型
2013年度
ワークショップは 学校現場でも
学び意欲を向上させる?
2日連続型が ベストなのか?
?
仮説 結論
対話
ワークショップは学ぶ意欲を向上
仮説
今回の報告の対象
高校生未来
プロジェクト2013
実施概要―実施校および実施対象の紹介
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高校生未来
プロジェクト2013
A高校(東京) (私立女子,39名参加) /学年243名
C高校(関西) (私立共学,58名参加) /学年232名
B高校(関東) (県立共学,38名参加) /学年333名
D高校(中国地方)
(私立共学,64名参加) /学年264名
2013年 10月~12月
・2週に1回水曜2時間×全5回 ・1年生1クラス・ロングHR+総合的学習の時間 (全員参加)
実施校 実施時期 実施方法
2013年11月~14年3月
2014年 3月13-14日
2014年 3月27-28日
・月1回土曜日4時間×全4回 ・進路指導部が自由参加で公募 (任意参加)
・3月末木金2日連続通学型 ・学年主任が呼びかけて公募 (任意参加)
・3月末木金2日連続・合宿型 ・進学合宿の体裁 (全員参加)
任意参加=先生が校内で公募 全員参加=先生が学年もしくはクラス全員参加とした
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調査項目
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高校生未来
プロジェクト2013
ア:自分を語る
イ:未来を語る
ウ:お互いにほめあう
エ:ワークシート記入
オ:問題意識の共有
カ:自分が話したい話
キ:社会人・先輩と話す
ク:机の紙を使って議論
ケ:全体シェア・発表
コ:全員の前で一言
平日学習時間
自己決定感
自己効力感
他者からの承認感
学年主観成績
①事前アンケートの項目 ②実施当日のプログラム ③アンケート3回 ④半年後の手紙 直後・3か月・半年
自己効力感
他者からの承認
平日学習時間
変化を与えたか
自己決定感
半年後の自分にあてて、 ワークショップ 最終日に書いた ものが届く →内容も分析
ワークショップで学んだことを思い出し学ぶ意欲を喚起
学ぶ目的
希望職業の有無
学ぶ目的
WSを誰に話した
内容覚えてるか
希望職業の有無
満足度
アンケート実施時期 高校生未来
プロジェクト2013
A高校(東京) (私立女子,39名参加) /学年243名
C高校(関西) (私立共学,58名参加) /学年232名
B高校(関東) (県立共学,38名参加) /学年333名
D高校(中国地方)
(私立共学,64名参加) /学年264名
2013年 8月
実施校 事前アンケ 実施時期 直後アンケ 3ヶ月アンケ 6ヶ月アンケ
2013年 9月
2014年 1月
2014年 1月
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2013年 10月~
12月
2013年11月~
14年3月
2014年 3月13-14日
2014年 3月27-28日
2013年 12月
2014年 3月15日
2014年 3月14日
2014年 3月28日
2014年 3月
2014年 6月
2014年 6月
2014年 6月
2014年 6月
2014年 9月
2014年 9月
2014年 9月
高校1年生高校2年生 合計1 39 0 392 16 5 213 49 0 494 63 0 63
合計 167 5 172
学校
学年別
●回収状況
a~dまで4本のアンケートがそろっている172名を対象に分析。
(全4校×全4回のアンケート実施)
※WS実施時の学年。
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回答者属性 公私立あわせて4校にてイベント実施。 前後それぞれ4回実施したアンケートから検証。 女子高を除いても、女子の参加率が高い傾向があった。
男性 女性 合計1 39 0 392 18 3 213 26 23 494 28 35 63
合計 111 61 172
学年別
学校
男子 女子
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分析にあたり、本人の主観評価における学年の中での自分の成績を7段階で評価。 これをもとに上位層、中位層、下位層にわけて分析した。
現在の成績は、学年の中でどのくらいですか度数 有効% 累積%
上位 上のほう 3 1.8 1.82 23 14.1 16.0
中位 3 33 20.2 36.2真ん中 40 24.5 60.7
下位 5 24 14.7 75.56 16 9.8 85.3
下のほう 24 14.7 100.0合計 163 100.0
結論 高校生未来
プロジェクト2013
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1:高校生に勉強する意味を考えさせるWSは、参加高校生の将来に向かっての学ぶ意欲を向上させ、半年間維持させることができた。
高校・大学での「学び」の価値や、「個人としての」学ぶ目的が
「対話型ワークショップ(以下、WS)」で実感出来れば、
高校生の学ぶ意欲が高まるのではないか
結論
仮説
2:「マイテーマ」「学ぶ目的」を「仮決め」させて言葉にすることは、
学ぶ意欲の向上に有効。
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3.成果(効果)
効果と課題・その対策 高校生未来
プロジェクト2013
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「将来」「大学に行く」ため:漠然としていた学びの目的をWSが具体化させた。 1
WS後の半年間、 「勉強する気にならない」、「勉強する意味がわからない」 学習に対する否定的な気持ちが減少する傾向がみられた。
2
WS後の半年間、 1日当たりの平均学習時間に増加傾向がみられた。
3 WS後の半年間、 学びに対する意欲が向上した状態を維持できた。
参考
A:効果
B:課題
参加動機次第で効果が変化 1
記憶が薄れるため、効果が薄れる 2
効果が大きい大学生との交流が単発でおわってしまっている
3
C:対応案
事前の仕組で参加意欲を高める
生徒のゆらぎを周囲が肯定し、 事後想起する仕組み
先輩との継続的な交流を支援
1
2
3
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高校生未来
プロジェクト2013
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「将来」、「大学に行く」ため・・・漠然としていた学びの目的を ワークショップ(以下、WS)が具体化させた。
効果1
・将来、自分にとって必要だから、今勉強すると考えています ・大学に行くため。 …ほとんどがこの2種類の回答に収斂する状態。
<深まり> ・将来の夢を叶えるために今自分にできること ・大学に行くため。大学につながる社会に出たときのため。自分のため。 ・幸せになるため→人、自分
・自分の将来のため私的には「学ぶ」というのに目的とか意味とかないと思う。なぜなら人は自分の知らないうちに何かを学び得ているから <具体的> ・論理的思考を持って世の中の問題に自分の意見を持ち解決していくため
・嫌なことを楽しくやる方法や、効率良くやる方法を勉強を通して学ぶことだと思う。学ぶ過程が大事ってことだと思う。 <前進> ・近い話では大学、もう少し遠い話では大人になった時にしっかり行動できるようにすること。
・将来の夢がある人はそれに向かって進むため。将来の夢がない人は視野を広げてやりたい事を見つけるため。
…今の学びと未来を具体的に、つなげる言葉になっている。回答も千差万別。(多様性)
Q:「あなたは、高校が勉強する意味、学ぶ目的とは何だと思いますか。」
WS前
WS
直後
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高校生未来
プロジェクト2013
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WS後半年間、 「勉強する気にならない」、「勉強する意味がわからない」 学習に対する否定的な気持ちが減少する傾向がみられた。
効果2
「とても+ややあてはまる」の%。
Q:あなた自身のことについて、お答えください。(単位:%)
自己肯定感はWSの直後高まるが、長期的な変化はなし。 18
高校生未来
プロジェクト2013
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WS後半年間、 学びに対する意欲が向上した状態を維持できた。 効果3
【全体平均】 学びに対する意欲 WS前:62 WS:100 3か月後:82 6か月後:81
Q:ワークショップ直後のあなたの学びに対する意欲を「100」とすると、現在のあなたの学びに対する意欲はいくつくらいになりますか。だいたいで構いませんので、数字でお答えください。
WS後下がるものの、 WS前と比較すると 約3割増の意欲を維持。
【学校別】
学校別で差はあるが、傾向は全体平均に同じ。
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高校生未来
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WS後半年間、 学びに対する意欲が向上した状態を維持できた。 効果3
WS3か月後、6か月後も、WS前より高い学習意欲を維持できる傾向は、どの成績層も同じ。 どの成績層も+20ポイント程度の向上。
【成績別】 ◆上位 WS前:69 WS:100 3か月後:89 (WS前+20) 6か月後:88 (WS前+19) ◆中位 WS前:60 WS:100 3か月後:80(WS前+20) 6か月後:80( WS前+20) ◆下位 WS前:56 WS:100 3か月後:77(WS前+21) 6か月後:73( WS前+17)
20
高校生未来
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WS後半年間、 1日当たりの平均学習時間に増加傾向がみられた。 参考
【全体平均】 WS前:80分 WS 3か月後:91分(WS前+11分) 6か月後:97分( WS前+17分)
Q:あなたは平日(学校がある日)、平均してどれくらい勉強していますか。 (塾や予備校に通っている人は、塾や予備校で勉強する時間も含めた時間をお答えください)
※単位は分。
【学校別】 ベースの勉強時間と増減の変遷に違いはあるが、 WS前より6か月後のほうが 学習時間は増えている。
21
参考値
★平均学習時間(の増加)の変容は、ワークショップの効果のみが原因とは考えにくく、学年・時期など他の原因があることも十分考えられるため、参考値とさせていただきました。
98
80
71
113
99
70
121
106
74
0
20
40
60
80
100
120
140
上位 中位 下位
1日の学習時間
直後
3ヶ月後
半年後
高校生未来
プロジェクト2013
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WS後半年間、 1日当たりの平均学習時間に増加傾向がみられた。 参考
※単位は分。 【成績別】 ◆上位 WS前:98分 WS 3か月後:113分(WS前+10分) 6か月後:121分( WS前+23分) ◆中位 WS前:80分 WS 3か月後:99分(WS前+19分) 6か月後:106分( WS前+26分) ◆下位 WS前:71分 WS 3か月後:70分(WS前 - 1分) 6か月後:74分( WS前+4分)
Q:あなたは平日(学校がある日)、平均してどれくらい勉強していますか。(塾や予備校に通っている人は、塾や予備校で勉強する時間も含めた時間をお答えください)
勉強時間は数値だけをみると上位層の時間が長いが、勉強時間の伸び率は、 どの成績層も約2割増とほぼ同じ。
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参考値
高校生未来
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「Q:今回のワークショップに参加して、得たことは何ですか?」 → “語らい、理解した興奮”
WS直後の反応
▼考え方・価値観について
・相手の立場、自分とは違う角度から物事を見ることの面白さ。 ・苦手意識を持つのではなく、違う視点で見ることの大切さ。
・自信が一番です。こんな意見持ってもいいんだ!!!!と思わされました。これからは自信を持って行動していきたいです。 ・まず自分を見つめ直せたこと。自分がどう思っているか、言葉にすることで初めて知れた。 ・学ぶことは人生を楽しむための道具である。自分なりに、勉強をする意味がまとまった。 ・ 「有言実行」しようという気持ち。話したいという意識。これから勉強しようと思った。 ・氷山のように、自分の内に秘めていることは言葉にして出していかないと伝わらない!!
▼勉強について
・勉強をする意欲がわいた!!将来に向けてどうしていけばいいのか分かった。悩みを相談できる人が近くにたくさんいることがわかった。 ・勉強はやっぱり自分のためであるということの再認識 ・勉強する意味、目標、また目標の立て方、見つけ方
▼進路について
・大学にいって学ぶ意味、必要性など話しを聞いていく中で分かることができました。この体験を忘れずにしっかり過ごしていこうと思います。 ・大学についても考えてたくさん候補をあげられた。 ・ニュースをみること ・社会への関心、危機感
WS
直後
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高校生未来
プロジェクト2013
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「Q:ワークショップの影響は何か」「学びの意味・目的は変化したか」 → “具体的な行動に反映されている”
3ヶ月後の反応
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WS
3か月後
▼学ぶ姿勢の変化
・たくさんの人と話すうち、異なる物の考え方や視点に触れる事ができる大切さに気づいたので、学びとる姿勢を得ていくことが今学校でやっている「勉強」の骨子だと思った。 ・内容→自分の勉強スタイルについて 理由→目的がきちんとみえてきたため ▼学ぶ目的の具体化
・「貧困に苦しむ人を助けたい」という目的から「労働条件などに苦しむ人、社会的弱者を救いたい」という目的になった。 ・ 以前→[将来のため、社会に出ても学ぶ姿勢をつけるため] 今→以前のものプラス[自立するため]
・勉強は選択肢を広げるためのものであり、将来の仕事のためにもすることである ▼学ぶ意欲の向上
・勉強をするようになった。やってて損はないと思ったから。
・以前は勉強をしていてもすぐにあきらめてしまったことがあったけど、自分の目標と夢をあきらめずに頑張ることができている。
▼考え方・価値観について ・やれることではなく、やりたいことをやるようになった。
・将来に向かって自分が行動するべきことを考え、苦手なことにも挑戦するようになった。 ・はっきりと自分の考えを言葉にするのがうまくなった。 ・冷静に物事を判断する ・積極的に行動するようになった ・今は意識して目をみて話せるようになった ▼勉強について
・今まではダラダラと勉強してしまうことが多かったが、なるべくメリハリをつくろうと心がけるようになった。 ・放課後の自主学習に参加するようになった。 ・苦手科目を頑張るようになった ▼進路について
・漠然と大学に行きたいと考えていたけれど自分の夢が叶えられるところに行きたいと考えるようになった
・迷っていたが、自分は人の役に立つ仕事がしたいので管理栄養士になって病院で働きたい ・ 大学情報があったら手に取って目を通してみたり、進路に対して少し真剣になった。 ・新聞を読むようになった ▼その他(ネガティブな意見) ・ 変化はしなかった。あのワークショップは何を目的にしているのか、
ゴール地点がどこなのか分からず、「考え」に終わり「行動」に移すまで行かなかった
Q:あなたがワークショップから得たことは、ワークショップ後から現在までの、 あなたのふだんの生活や学習・進路に対してどんな影響を与えたと思いますか。
Q:現在、あなたが思う「学びの意味・目的」は、マナモクシートから変化しましたか。
具体的な行動変容が行われていることが みてとれます
高校生未来
プロジェクト2013
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「Q:ワークショップの影響は何か」「学びの意味・目的は変化したか」 → 「習慣化・定着化」 と 「効果のうすらぎ」
半年後の反応
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WS
6か月後
Q:あなたがワークショップから得たことは、ワークショップ後から現在
までの、あなたのふだんの生活や学習・進路に対してどんな影響を与えたと思いますか。
Q:現在、あなたが思う「学びの意味・目的」は、マナモクシートから変化しましたか。
▼進路への意識
・内容 基礎だからとりあえず。理由 大学に行くより専門学校がいい。
・なんとなくやっていた勉強を志望校に向かってやるものにした。
・将来なっていたい自分を想像して勉強するようになった。 ▼迷い・悩み ・やった時より多くのことが分かったので、 少し難しく考えるようになった。
▼考え方・価値観について ・あまり悲観的にならなくなった
・ワークショップで全然話をまとめられなかったことから「これはまずい」という気持ちが生まれました ・早寝早起になった ・先のことを計画的に行う
・今までは、あまり気にしていなかった「時間」を気にするようになった ▼勉強について ・最初は、本気で勉強しようと思うようになった。 だんだん無くなってきちゃいましたが。 ・勉強に対する意欲がわいた
・今している勉強がとても大切でもっと熱心にするようになった。 ▼進路について ・将来についてさらに考えるようになった
生徒には定着化の傾向と効果の薄らぎがみてとれる。半年経過した生徒の中には新たなゆらぎを記述する生徒がおり、
先生方からの働きかけがキーとなると思われる。
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4.課題・対応案・考察
高校生未来
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任意参加か必須参加かによって、満足度に差がある 課題1
【全体】 WSに「かなり+まあ」満足 3か月後:56.8% 6か月後:54.6%
【学校別】 WSに「かなり+まあ」満足 学校① 3か月後:25.6% 6か月後:17.9% 学校② 3か月後:95.3% 6か月後:85.7% 学校③ 3か月後:87.8% 6か月後:89.8% 学校④ 3か月後:38.7% 6か月後:39.6%
必須参加
必須参加
任意参加
任意参加
【課題1】イベントの目的やねらい毎に、高校生の参加意欲を高める仕組みが事前に必要
56.8%
38.7%
87.8%
95.3%
25.6%
29.2%
48.4%
6.1%
0.0%
43.6%
11.7%
9.7%
6.1%
0.0%
28.2%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
全体
学校4
学校3
学校2
学校1
満足
どちらでもない
不満
無答不明
3ヶ月後
54.6%
39.6%
89.8%
85.7%
17.9%
27.9%
44.4%
6.1%
4.8%
41.0%
14.0%
11.1%
4.1%
38.4%
3.5%
4.8%
9.5%
2.6%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
全体
学校4
学校3
学校2
学校1
満足
どちらでもない
不満
無答不明
6ヶ月後
◆考察
このようなイベントを学校で実施する際には、 生徒に参加させたい範囲の方針が学校や受け入れ担当の先生によって異なることに配慮する必要がある。 実施にあたっては各校から2つの要望があった。 要望①:「学年全体」「クラス全員」に実施したい 要望②:希望者に任意で受講させたい 結果としては②任意参加型の効果が、高かった。
その理由としては、イベントの目的と本人の参加意識・問題意識が合致して参加していることが挙げられる。 (全員参加の場合は、受講に必ずしも乗り気でない生徒が時間の経過とともに見受けられた。 生徒によっては、参加を途中で止める者や、通学型で2日目以降に来なくなる者がいた。 また全員実施の際には時間が経過するにつれて集中が続かない生徒が散見された)
◆対応案
<学校における全員参加型ワークショップの場合の参加意欲> A:参加意思を事前確認。 参加者全員に、参加にあたっての前提文を配布し、本人の任意での参加署名を求める。学校実施の場合は、当初から「無条件の」「全員参加」とさせないことも検討する。場合によってその時間を任意で自習にするなどの措置を事前に担任の方と相談することにより本人の「主体性」「参加意思」を明確にしておく。(参考例:オーストラリアのある高校の修学旅行では、生徒と保護者の署名があり、前提に従えない場合は強制送還・離脱の約束が記載されている)
B:主催者側(今回はベネッセ教研)がイベント映像を事前に視聴させる。 その中で明らかに効果が変わっていく生徒の前後の様子を、参加前の生徒に視聴可能な期間を設け、「最後にどうなるのか」の様子を見せて、事前の期待を喚起する。
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事前の仕組で参加意欲(当事者意識)を高める 対応案1
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記憶が薄れ、効果が薄れる 課題2
Q:ワークショップが終わってから現在までの間で、
あなたは、ワークショップのことを思い出すことがどの程度ありましたか。
内容
WS
3か月後
WS
6か月後
・先輩の話を聞いたこと。大学生との会話 …半年経って記憶に残るのは、他人(先輩)の話が印象的だったこと
・勉強がしんどくなった時、今勉強している意味を思い出した。
・大学について考えるときに、大学はなんのために行くのかということ …勉強がつらくなった時自分を鼓舞するために思い出している
【課題2】 単発イベントゆえ、学ぶ意欲を維持し続ける効果には限界がある。 何かしらの事後フォローを周囲が実施するなり、 本人が積極的にワークショップでの学びを想起したくなる仕組みが必要
高校生未来
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生徒のゆらぎを周囲が肯定し、 ワークショップを事後想起する仕組みを実施
対応案2
◆考察 ~ 事後想起が必要
ワークショップ後のアンケート(24-26頁)を確認する限り、受講した生徒は、 仮決めした「学ぶ目的」をそのまま受け入れて直線的に学びに向かう、 というよりは、WS後も揺らぎ、考え直し、逡巡しながら自らの「学ぶ目的」を 変更したり、悩みながら考え直している。 これらの揺らぎは、「学ぶ意味の確信」に必要なプロセスであり、 周囲は本人の揺らぎに気づき、肯定しながら支援することが理想といえる。 よって事後想起を本人にさせ、支援する仕組みが必要である。
◆対応策案の一部
A:ワークシートを活用
・希望者に対して「その後の<マイテーマ><学ぶ目的>を傾聴する機会を設ける。先生や進路指導担当者による声掛け。機会の提供。もしくはマイテーマや学ぶ目的を書かせるシートの配布を数カ月あけて実施する。 ・盛り上がった当日に記載した本人のワークシートを進路指導や生徒指導で活用する。 B:壁に張り出す
ワークショップでは思考の過程を数枚のワークシートに記録している。本人許諾のもと、他クラス・他学年の生徒が閲覧できる場所等に貼りだすことも、事後想起の仕組みとして効果的であると思われる。貼りだす紙の大きさ・種類などには工夫が必要。 C:学習相談・進路指導時に活用
生徒の学ぶ意味や目的は、地域性やその本人の個性などによって千差万別である。ワークショップを受講した生徒のワークシートを本人許諾のもとに関係機関は蓄積し、本人の学習相談や進路指導時に、過去の本人の履歴として提示することは一助になるといえる。内容をデジタル化できる場合も同様である。
生徒は学ぶ目的に合致した目標に一直線に「進歩的に」成長していくのではなく、都度揺らぎ、幾度も意味や目的を捉えなおしながら漸次的に「進化的に」成長を続ける
高校生未来
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効果が大きい大学生との交流が単発でおわってしまっている 課題3
【課題3】 卒業生・大学生との対話がもっとも効果があることがわかったが、 この効果をより伸ばすための仕組みが現時点では存在していない。
高校生未来
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先輩との継続的な交流を支援する仕組みを構築 対応案3
◆考察
ワークショップのプログラムの中で、生徒への刺激として一番効果があったのは 先輩との交流であった。 アンケート結果からも見て取れるが、実際に運営していると生徒の眼の輝き、 傾聴する態度からもはっきりとその様子が見て取れた。 生徒たちにとっては非常に学びの多い機会であるため、本ワークショップの効果を 継続して生徒に定着させる仕組みとして、先輩方との交流の効果を活用したい。
◆対応策
A:SNSグループサイトなどで管理 今回の学校実施にあたっては活用しなかったが、全国公募イベント型では2回分の参加者に任意でFacebookグループに参加いただいた。後日、関連イベントや事後の座談会・ヒアリングなどで非常に告知等含めて利活用した。 できればワークショップ参加生徒と卒業生限定のSNSグループを作成し、相互にコミュニケーションできる場を作成できると効果の持続が見込まれる。また本イベントを活用した別のイベントを企画するときに非常に便利といえた。
B:先輩と後輩の連絡先交換を支援 ・ベネッセは3年間の運営にあたって効果を定性ヒアリングで追っているが、SNSの活用と共に、実際には参加した生徒同士の連絡先交換によって、ながく効果が持続していることを確認している。この効果を発展し、先輩と生徒の間で連絡先を交換促進し、たまに悩みの助言などができる機会に発展できると、より幅広い効果が見込まれる。 ・修了生を協力者として、学校として進路指導・キャリア教育イベントの仲間として継承させていくことも効果的。
高校生未来
プロジェクト2013
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大学生・社会人の「ゆらぎ」が、 高校生に「大学の学び」「学ぶ意味」を実感させる
考察
◆試み:
「大学生に大学の学問をつかって社会課題の解決を話してもらう」
ワークショップ運営後期、ある学校でのワークショップの回から、参加卒業生・ 大学生に、高校生にも投げかけた社会課題(例:少子化問題など)を、 どう解決したらいいかを答えてもらう、という試みを行った。
◆観察: 「少子化問題をどう解決するか」という問いをあるワークショップで行ったところ、 複数の学部で学ぶ10数名の大学生・社会人から、実に多様な回答が発表された。 大学1年生から若年社会人まで年齢に幅はあったが、 「大学の学部で学んだ学問を使って答えを出そうとする」 「大学の学部にとどまらず、幅広く見知り得た知識で答えを出そうとする」 様子が見て取れた。
◆考察:
「大学生が、大学時代に学んだ知識や組み立てを用いて社会課題に<悩み考えながら>回答する姿」 「高校生である自分たちだけでは思いつかなかったような説明の仕方」 つまり大学生・社会人自身が目の前で「ゆらぎ」「考えて」回答する姿こそが、 高校生にとって「大学での学び」を実感させたのではないだろうか。 答えを出そうとする<ゆらぎ>は、参加した社会人・大学生にも、 ワークショップを終えた後に「学ぶ目的」「意味」を再度深く考える高校生にも発生した。(24-26頁アンケートより) しかしこの<ゆらぎ>こそが、 学ぶ意味を感じることができない高校生にとって最も必要であり、周囲の支援が必要なものではないだろうか。
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5.おわりに
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おわりに
子どもの学ぶ意欲を、対話で高める本プロジェクトの試みは、2011年から始まり、検証を含めて足かけ4年間、行ってまいりました。
各校をはじめとする生徒・関係者の皆様のご協力のもと、学校実施の効果を2年かけて丁寧に検証することができ、成果をこうして発表することができました。
対話型ワークショップは、受講してくださった高校生たちの学びの意欲に変化を、行動に変容を起こしていました。この研究結果は、新しい学びの手法の研究開発として、とても大きな成果だったと確信しています。
ご協力くださった生徒・学校関係者の皆様に、厚く御礼申し上げます。
本プロジェクトの成果が、学校現場の進路指導、キャリア教育の一助となれば幸いです。
我々の本実証研究は今回の報告をもって終了とします。
今後もベネッセグループの試みにご期待ください。
2015年2月 高校生未来プロジェクト
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