|オバマの登場で再浮上した核廃絶一fwii!]年の核制くる動向と...

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. |オバマの登場で再浮上した核廃絶一年の核制くる動向と論調 水本 和実(みずもと かずみ) 広島市立大学広島平和研究所 副所長 1957 広島市生まれ 1981 東京大学法学部第3類(政治コース)卒業 朝日新聞社入社 1989 米国タフツ大学フレッチャ一法律外交大学院修士課程修了 1995 朝日新聞ロサンゼルス支局長 - 1 そ哩温E・園陸 ι .. ./ 司圃 ・E冒- . . 1998 広島市立大学広島平和研究所 准教授 2010 4月 教授 10月 現職 I核は廃絶できるかー核拡散10年の向と論調J (法律文化社、 2009) [核軍縮不舷散の法と政治J (共著、 信山社2008) 平和政策J (共著、 有斐閣、 2006) r21世紀の核軍縮一一広島からの発信J (共著、 法律文化社、 2002) 1 はじめに ', 司E週 r ' 町一 h句 r 21 世紀の初頭において 2009 年という 年は、 9・1 1 同時多発 テ ロ が世 界 を 震掘 さ せ た 2001 年 と 同じ か そ れ 以上 に 重要 な 、 時代の転換点になるかもしれない。 その最大の理由は、 「核兵器のない世界」を掲げたオパマ米大統領の登場と、 れ に よ って 復活した 「核廃絶」の潮流の大き さ にある。 2009 年 4 月 にオパマ大統領が行ったプラ ハ演説は世界に希望を与え、 彼はそ の 年 の ノ ーベル平和賞 を 受賞した 。 また オパ マ 大統領 に 関 する単行本や大型写真 集などが次々に出版された o 核兵器のない世界」を掲げるオパマ新政権が、 体的にいかなる外交・安全保障 ・ 核政策を 打ち出してくるのかについても、 大き な 関心が集まった。 また、 ブ ッ シ ュ前 政権が軽視し続けて き た 国際協調 に基づくグ ロ ー パ ル な 核軍 縮を、 オパマ政権がどう促進させるのかも課題 と さ れた。2010 年 5 月 に開催さ れる、 5 年 に 1度の核不拡散条約 (NPT) 再検討会議へ向け、 2009 年 5 月 に 準 備会合が聞かれたが、 ブ ッ シ ュ前政権時代とは異なる前向き な雰囲気で議論が行 われた。 さらに9月には、 国連安保理で 「核不拡散 ・ 核軍縮に関する安保理首脳会議J が開催 さ れ 、 オパマ大統領自ら 議長 を務めて リ ーダー シ ップを発揮し、 「核兵器 の ない世界jへの決意 を 前 文の冒頭に盛 り 込んだ安保理決議 1887 号が全会一致 で採択 さ れ た 。 このように、 世界のあちこちでオパマ現象が市民を熱狂させたが、 その一方、 12 月 の ノ ーベル平和賞授賞式でオパマ大統領は、 国際社会の予想、に反して 「正 しい戦争、 正 しい平和」とい う 演説2 を 行 い、 現実主義者でもある一面を のぞか せた。 実は、 オパマ大統領への ノ ーベル平和賞授賞が発表さ れた直後の 10 月 16- 19 日 に、 米ギャラ ップ杜が 18歳以上の米国民 1.521人を対象に行った世論調査に よ ると、 オバマ大統領がノ ーベル平和賞受賞に 「値する」と答えた人は 34% に 過ぎず、 「値しない」と答えた人の 61% を大 き く下回った。 またオパマ大統領は ノー ベル平和賞授賞式直前 、 ア フ ガニス タ ン への米兵 3万人の増派を決めた こ と もあ り 、 米国が現在も継続している戦争に対する、 自 ら の 姿 勢 を 明 ら か に する必 85

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|オバマの登場で再浮上した核廃絶一fWII!]年の核制くる動向と論調水本 和実(みずもと かずみ)

広島市立大学広島平和研究所 副所長

1957 広島市生まれ1981 東京大学法学部第3類(政治コース)卒業 一←

朝日新聞社入社 一一1989 米国タフツ大学フレッチャ一法律外交大学院修士課程修了1995 朝日新聞ロサンゼルス支局長

-1 そ哩温E・園陸ι

..../ 司圃・E冒- .......... 1998 広島市立大学広島平和研究所 准教授2010 4月 教授 10月 現職

I核は廃絶できるかー核拡散10年の動向と論調J (法律文化社、 2009)[核軍縮不舷散の法と政治J (共著、 信山社、 2008)『平和政策J (共著、 有斐閣、 2006)r21世紀の核軍縮一一広島からの発信J (共著、 法律文化社、 2002)

1 はじめに

'.1, 司E週・r. ' で町一h句 r

21 世 紀の 初頭に お いて 2009 年とい う 年 は 、 9 ・ 11 同時多発 テ ロ が世 界 を 震掘さ せ た 2001 年 と 同じ か そ れ 以上 に 重要 な 、 時代 の 転換点 に な るかもしれ な い。そ の 最大の理由は 、 「核兵器の な い世界」 を 掲げ た オパマ 米大統領の登場と、 それ に よ って 復活した 「核廃絶」の 潮流の 大 き さ に ある。

2009 年 4 月 に オパ マ 大統領が行 ったプラ ハ演説は世 界 に 希 望 を 与え、 彼は その 年の ノ ーベル平和賞 を 受賞した 。 また オパマ大統領 に 関 する単行本や大型写真集 な どが次々 に 出版 さ れた o 1"核兵器の な い世界」 を 掲げるオパマ新政権が、 具体的にいか な る外交・安全保障 ・ 核政策 を 打ち出してくるの か に ついても、 大 きな 関心が集まった 。

また 、 ブ ッ シ ュ前政権が軽視し続けて き た 国際協調 に基づくグ ロ ー パ ル な核軍縮 を 、 オパマ 政権がど う 促進 さ せるの かも課題 と さ れ た 。 2010 年 5 月 に 開催 される、 5 年 に 1度の核不拡散条約 (NPT) 再検討会議へ向け、 2009 年 5 月 に 準備会合が聞かれたが、 ブ ッ シ ュ前政権時代とは異なる前向 き な 雰囲気で議論が行わ れた 。

さ ら に 9 月 に は 、 国 連安保理で 「核不拡散 ・ 核軍縮 に 関 する安保理首脳会議Jが開催 さ れ、 オパマ 大統領自 ら 議長 を 務めて リ ー ダー シ ッ プ を 発揮し、 「核兵器の な い世界jへの決意 を 前 文の冒頭 に 盛 り 込んだ安保理決議 1887 号が全会一致で採択 さ れ た 。

こ の よ う に 、 世 界の あち こ ちでオパマ 現象が 市民 を 熱狂 さ せ た が、 そ の 一 方、12 月 の ノ ー ベル平和賞授賞式でオパマ 大統領 は 、 国際社会 の 予想、に 反して 「 正しい戦争、 正しい平和」とい う 演説2 を 行い、 現実主義者でもある一面を のぞかせ た 。

実は 、 オパマ大統領への ノ ー ベル平和賞授賞が発表 さ れ た 直後 の 10 月 16- 19日 に 、 米ギャ ラ ッ プ杜が 18歳以上 の 米 国民 1. 521人 を 対象 に 行った 世論調査によ ると、 オバマ大統領が ノ ー ベル平和賞受賞 に 「値する」と答えた人 は 34% に過 ぎず、 「値しな い」と答えた人の 61 % を 大 き く下 回 った。 また オパ マ 大統領はノー ベル平和賞授賞式直前 、 ア フ ガニ ス タ ン への米兵 3万人の増派を 決めた こ ともあ り 、 米 国が現在も継続して いる戦争に対する、 自 ら の 姿 勢 を 明 ら か に する必

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要に 迫 ら れて い た 。オパマ が 「正しい戦争、 正しい平和」演説 を 語 り かけて い た 相手 は 、 授賞式会

場の聴衆では な く、 ノ ー ベル平和賞受賞 を 懐疑的に 受け止めて い た米 国民だ、ったといえ よ う 。 こ の エピソ ー ド は 、 時 に は 理想主義者として 「核兵器の な い世 界 」を 訴え、 時 に は現実主義者として核抑止の必要性を 訴え、 両者のバ ラ ン ス を 取ろう とするオパ マ の 特徴 を 、 物語って いるといえ よ う 30

だが、 オパマ 現象の傍 ら で、 核軍縮への 懸念材料も依然として存在した 。 北朝鮮が 4 月 に 「人工衛星j 打ち上げ成功 を 発表したが、 国際社会か ら は ミ サ イ ル実験と受けとめ ら れ た 。 さ ら に 北朝鮮は 5 月 、 2度目の核実験に 成功した と発表し、7 月 に は 日 本海で ミ サ イ ル実験 を 行った。 2006 年 の 最 初の核実験以来、 6 カ 国協議 を 通じて続け ら れて き た 、 北朝鮮の核放棄を めざす働 き かけは 、 大 き く後退 を余儀な く さ れ た 。

一方、 国際社会か ら の 警告にも関 わ ら ず ウ ラ ン 濃縮活動 を 継続するイ ラ ン で は 、大統領選挙が行 わ れ、 保守派と改革派の 対立が表面化する中 、 保守強硬派の現職ア ハ マデ イ ネ ジャド大統領が再選 を 果た した 。 イ ラ ン で は こ の 年 、 2 カ 所目の核施設の稼働が明 ら かとな り 、 さ ら に そ の数は増える可能性がある一方、 ミ サ イ ル開発の 動 き も活発化して いる。

オバマ 大統領の登場で再浮上した グ ロ ーパ ル な核廃絶の潮流 は 、 高ま り つ つある個 別の核拡散の脅威 を 、 克服で き るの だろ う か。

2 復活した核廃絶の潮流

オパマ大統領が登場する以前 か ら 、 核廃絶 を 目指す動 き は少しずつ 復活しつ つあった 。 そ の 潮流 を 、 2006 年ごろに さ かの ぼって 見 て み よ う 。

大量破壊兵器委員会(ブリクス委員会)報告書

ス ウ ェ ー デ ン 政府の 支援で 2003 年末に設立 さ れ た 「大量破壊兵器委員会」が、2006 年 に 『恐怖の兵器一一核・生物 ・ 化学兵器 か ら の 世 界 の 解放』 と題する報告書 ( ブ リ ク ス 報告書) を 発表した 4。 委員長 は 国連イ ラ ク 監視検証査察委員会( UNMOVIC) 元委員長のハ ン ス ・ プ リ ク ス 氏、 委員は米 国 、 ロ シ ア 、 ブ ラ ジ ル 、日 本 な どの学者、 外交官 ら 1 4人。 報告書は 、 全て の 大量破壊兵器 の 非合法化、核兵器の警戒態勢 の 解除、 戦略核兵器の大幅削減、 全て の核兵器の外国領土か らの撤去、 兵器用核分裂物質の 生産 禁止、 核兵器先制不使用 、 包括的核実験禁止条約 (CTBT) の発効など、 60 項目の提言 を 行った。

ブ リ ク ス 氏 は 序言 の 中で、 1996 年 の キャ ン ベ ラ 委員会報告 5、 1 998 年 の 東京フ ォ ー ラ ム 報告書6 な どの延長線上 に 、 報告書 を 位置付けて いる。 そ の内容は英語の ほか各国語に 訳 さ れ、 ウ ェ ブサ イ ト に も全 文が掲載 さ れ て い る。

ブ リ ク ス 委員会 の 設置 は 、 2003 年 当時 の ダナパ ラ 国 連事務次長やア ン ナ・ リン ド ス ウ ェ ーデ ン 外相の構想に基づく。 リ ン ド外相は核軍縮 に 熱心で、 2000 年NPT 再検討会議 に も参加して演説した。 政治家としても人気が高く、 有力な 次期首相候補とみ ら れ て い た が、 委員会設立直 前 の 2003 年 9 月 、 ス ト ッ ク ホ ル ム市内で暗殺 さ れ、 そ の遺志 を 継ぐ形で委員会が1 2 月 に 発足した 。 ブ リ ク ス 氏 を委員長 に 起用 した の も リ ン ド外相の 意向だとい う 。

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才/î�の登場で厚j!J.土'-'Ic桜庭J;Ø-2009字の援をめぐQI/;,局と訴認

ス ウ ェ ー デ ン は 、 メキシ コ 、 ブ ラ ジ ル な ど核軍縮 に 積極的な 7 カ 国か ら な る新ア ジ ェ ン ダ連合 (NAC )の加盟国であ り 、 NAC は 2000 年 NPT 再検討会議で交渉 を リ ー ドした 70 ブ リ ク ス 報告書に は 、 こ う した ス ウ ェ ー デ ン の 姿 勢が反映 され て いる。

米国4氏の核廃絶提言

続い て 2007年 と 2008年に 、 米国の シ ュル ツ元国務長官、 ペ リ ー 元 国防長官、 キ ッシ ン ジャー 元国務長官、 ナ ン 元上院軍事委員長 の 4 氏が、 『 ウ オー ル ス ト リ ー ト ・ジャー ナjレ』 紙上で核廃絶提言 を 発表した 。 そして こ の 4 氏が、 いずれも米 国 政権 の 中 枢で核抑止戦 略 を 支えた 保守政治家であった こ と か ら 、 4 氏の核廃絶提言は各国のメディア で紹介 さ れ、 指導者層 を 含む多くの人か ら 、 関 心 を 持って受け止め ら れた。

4 氏の核廃絶提言が念頭に置くの は 、 1986 年 に レイキャ ピ ク で行 わ れ た米ソ首脳会談だ。 こ の 席上、 レー ガ ン 大統領がゴルバチ ョ フ 書記長 に核兵器全廃 を 提 案し、 「やろ う じゃな い かJ ("Let's do it." ) と 呼びかけた と い う 。 ゴ ル バチ ョ フ 書記長 は同意したが、 同時 に 彼は 米 国が進めて い た 戦略防衛構想 (SDI )の廃止も要求し、 レー ガ ン 大統領がそ れ を 拒んだ た め、 核兵器全廃提案は実現しな かった。

こ の レ イ キャ ピ ク 首脳会談 に 国務長官 と して 同行した の が、 シ ュル ツ氏である。 彼は現在、 カ リ フ ォ ルニ ア 州の ス タ ン フ ォ ー ド大学 フ ー パー 研究所特別研究員 を して いる。 2006 年秋、 シ ュル ツ氏は 、 友人で国家安全保 障 に 詳しい シ ドニー ・ドレル 同大学線形加速器 セ ン タ ー 名誉教授に 、 20 年前 の レー ガ ン 構想 を 再検討する会議の開催 を 持ちかけた B。 ペ リ ー 元 国 防長官も同席 して お り 、 二人 と も同意した と い う 90

こ う して同年 10 月 、 ス タ ン フ ォ ー ド大学で 2 日 間に わ た る会議が開催 さ れ、20人あま り の 研究者や元政治家が議論した 。 そ の 成果は 3 カ 月 かけて 核廃絶提案 に ま と め ら れ、 会議 に 参加しな かった キ ッ シ ン ジャー 氏 と ナ ン 氏の 名前も加えた 提言 と して 2007 年l 月 、 『 ウ オー ル ス ト リ ー ト ・ ジャーナル』 紙上で発表 さ れた 。 提言 に はオバマ大統領も関心を 持って お り 、 2009 年 5 月 、 4 氏 を ホ ワイ ト ハウ ス に 招い て 熱心 に 耳 を 傾けた と い う 100

グローパル・ゼ口

一方、 2008 年 12 月 に は 「 グ ロ ー パ ル ・ ゼロ 」 と い う 名前 の 新 た な 国際的核廃絶運動がス タ ー 卜した。 パ リ で聞かれ た 創設会議 に は 、 発起人 と して カ ー タ 一元米大統領、 ゴルバチ ョ フ 元 ロ シ ア 大統領、 川口順子 ・ 元外相 ら が参加し、 段階的核廃絶運動 を 提案した 。 こ の運動 は 、 英 国 の実業家でパー ジ ン ・ グル ープの 創設者 リ チヤー ド・ プラ ン ソ ン 氏が資金を 提 供して お り 、 2009 年 9 月 の 時点で、 各国 の 著名人 130人以上が賛同した。 2009 年 6 月 に は 、 次 の よ う な 4 段階の核廃絶計画案 を 発表して いる 110

第l 段階(2010年一2013年) 米ロは核兵器を2018年までに 1.000発に削減する条約を締結する。

第2 段階(2014年 2018年) 米ロは核兵器を2021年までに500発に削減する条約を締結する。

他の核兵器国は2018年まで核兵器を凍結し、 2021年までに等比率でL削減することに同意する。 包括

的な検証システムを確立する。

第3 段階(2019年 2023年) 全ての核兵器を2030年までに 段階的で検証可能な手段により等比

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率でゼロまで肖IJìJ成する協定の交渉を行う。

第4 段階(2024年一2030年) 全ての核兵器の2030年までの段階的で検証可能な手段による等比

率でのゼロまでの削減を完了し、 包括 的検証とその強制システムを継続する。

こ の計画案 を もとに 、 各国政府 な どと協 議 を 重ねて最終計画案にまとめ 、 2010年 2 月 に 行 わ れるグ ロ ー パ ル・ ゼ ロ ・ サ ミ ッ ト 会議で協議する予定で、 2009 年 3月 に は 代表がメドペー ジ ェ フ ・ ロ シ ア 大統領に 会ったほか、 オパマ 大統領に も書簡 を 送った とい う 。

核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(lCNND)

こ れ ら の 動 き に 加 え、 オー ス ト ラ リ ア と 日 本 の 政府が 中 心 に な って 2008 年 9月 に 立ち上げた 「核不拡散 ・ 核 軍 縮 に 関 する 国 際委員会J (ICNND) も、 2009年 11 月 に 報告書 『核 の 脅威の廃絶一一世 界 の 政策立案者の た め の 現実的ア ジ ェン ダ』 を 発表した 120 こ の 報告書 は 、 米 国 防総省が 2010 年 に 発表 を 予定している核政策 文書 『核態勢見直し.1 (NPR) 13 や 2010 年 5 月 に 聞か れる核不拡散条約(NPT) 再検討会議 を 強く意識して まとめ ら れた 。

ICNND は 2008 年 6 月 に 来 日 した ラ ッ ド・ オー ス ト ラ リ ア 首相が、 福田 康夫首相 に 提 案し、 日 豪両国 の共同主催が決まった。 共同議長 は川口順子・元外相とエバ ン ス 元外相、 委員は 共同議長 を 含め て 15人で、 米 ロ 英仏 中 の5核兵器国、 核実験 を 行った印パ お よび各地域か ら 選ばれた。 こ の ほか諮問委員として加 わ った各国 の専門家23人の 中 に は 、 ブ リ ク ス 氏やキ ッ シ ン ジャー氏な ども含まれている。

ICNND も ブ リ ク ス 委員会と同じく、 キャ ン ベ ラ 委員会や東京 フ ォ ー ラ ム を 継承すると自 ら を 位置付けて いる。 2010 年 5 月 の NPT 再検討会議 に 先立って 報告書 を 発表し、 議論 を 活性化 さ せるの がね ら い だ。 2008 年 10 月 ( シ ドニー ) 、2009 年 2 月 ( ワシ ン ト ン ) 、 6 月 (モス ク ワ) 、 10 月 (広島 ) と計 4 回 の 会合を重ねて 報告書 を 作成した 。

また NGO の意見も議論に 反映 さ せるた め 、 2008 年 12 月 に外務省で NGO 意見交換会 を 行い、 2009 年 6 月 のモス ク ワ会合に は 川崎哲・ピー ス ボー ト 共同代表や平和 市長会議会長 の秋葉忠利・ 広島 市長 ら を 招いて発言 を 聞く機会 を 作った 140

NGO の 中 に は 日 本政府の 姿 勢 に 懐疑的な 見方もあった 。 川崎哲氏はエバ ン ス共同議 長 か ら 、 日 本政府が 「核 だけで な く生物・ 化学兵器や通常兵器 に も核抑止が必要」との 立場で核廃絶の足 を 引っ張って いる、 と聞か さ れた とい う 150 エパ ン ス 氏自身、 「核軍縮 に 最も熱心 な 国が、 核兵器ゼロ の実現 を 懸念して いる 16J とも述べて いる。 こ れ に 対し、 外務省周辺に は 、 日 本の 非核 3 原則も重要だが、米 国 の拡大抑止 (核の傘) の 信頼性も重要だ、 との考えも根強い九

ICNND 報告書の 主要論点 に つ い て 、 見 て みる。<段階的核兵器削減>

エパ ン ス 共同議長 は報告書がまとまる前 の段階で、 個 人的な 見解として 、 2段階の核廃絶構想を 述べて いる。 第 1 段階では 、 数百 発レベルまでの核弾頭の削減、核の警戒態勢解除や配備解除、 核兵器先制不使用 の採用 な ど に よる 「最小限抑止Jの 実現 を め ざし、 目標は 早くて 2025 年。 第 2段階で は 、 核兵器ゼ ロ を め ざしたいとい う 180

ICNND も こ の 線で議論 を 進め た 結果、 最終的に は核兵器削減 に つ いて 、 以下の3 段階に 分けた削減計画 を 提 唱した。

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才ハ引すの登場で厚矛'J:.Ld:=1,重廃絶一一2009字の援をめぐ・6亘書舟と誘謂

2012年まで:米 ロ は新戦略兵器削減 (新 ST ART) 条約で戦略核弾頭数 を そ れぞれ 1,500 発に削減し 19 、 全て の核兵器保有 国 は 核兵器 を 増や さ な いと誓 う 200

2025年まで: 2015 年 まで に 米 ロ は ST ART 後継条約 に 批准し、 核 兵 器 数 を2020 年までに 1,000 発以下 に 削減する2 10 2025 年 を 世界の核兵器の 「最小化」段階とし、 世 界全体の核兵器 を 2,000 発以下 に 、 米 ロ の核兵器数を 500 発ずつ に 削減する。 他の核兵器保 有 国 は核兵器数 を 増や さ ず、 大幅に削減する220

2025年以降 :1 最小化」段階か ら 核兵器ゼロ を 達成する2 30 核兵器の 完全 な 廃絶達成に つ い て 確実な 期限目標 を 掲げるの は不可 能と判断して いる2 40

<核兵器先制不使用>

核兵器が廃絶 さ れるまでの問、 全て の核兵器保有 国 は核兵器先制不使用 を 明確に 宣言し、 核兵器 を 使用 する可能性のある敵 に対し、 核兵器 を 予防的また は先制攻撃として使用 せず、 自国や同盟国に核攻撃が な さ れ た 場合に の み 、 報復の 手段として核兵器の使用 もしく は威嚇の選択肢 を 保持する こ と を 誓 う べ き であるお。さ ら に 2025 年までに 、 全て の 核兵器保有 国 は核兵器 「先制不使用 」ド ク ト リ ンを 採用 すべ き だと提 唱する26。 だが、 現時点で法的拘束力のある 「核兵器先制不使用条約J を 検討する こ とに は 消極的である2 70

<核兵器の役割の低減>

2025 年までの 早 い 時期 に 、 全て の核兵器保有 国 に 対し 「核兵器保有 の 唯一の目的は 、 自固また は そ の 同盟 国 に 対し、 核兵器が使用 さ れる こ との 抑止である」宣言 ( 以下、 「唯一の 目的J 宣言 ) を 行 う べ き だと提 唱するお。 さ ら に 、 核兵器先制不使用 を 採用して い な い 国 は 、 少な くとも 「唯一の 目的」 を 宣言すべ き であり 、 米 国 の 役割が大 き く、 オパマ大統領が 『核態勢見直しJ に 「唯一の役割」 に関 する姿 勢 だけでも採用 すれ ば重要な 貢献であ り 、 2010 年 NPT 再検討会議での不拡散体制強化の 支援 に つ な がるとも述べて いる叱また 、 核兵器国が非核兵器国 に核兵器 を 使用しな い 「消極的安全保証」 を 国連安保理決議の下で実施する こと に よ る、 核兵器の 役割低下も提唱して いる 300

ヒロシマ・ナガサキ議定書

広島市長が会長 を 務める平和市 長会議 31 は 、 2020 年までに核廃絶 を 実現する内容 を 盛 り 込んだ、 「ヒ ロ シ マ ・ ナ ガ サ キ議定書 32 J を 2008 年 5 月 に ジ、ュ ネ ー ブで開催 さ れた NPT 再検討会議第 2 回 準備委員会で発表した。 2009 年 8 月 に は 長崎市 に 18 カ 国 か ら 134 の 加盟都市の 市 長 ら を 招い て 、 第 7 回 平和市長会議総会を 開催し、 1 2010 年 NPT 再検討会議での ヒ ロ シ マ ・ ナ ガ サ キ議定書の 採択J や

1 2020 年核廃絶実現 の た めの多国 間協議 を 2010 年 に 開始する こ と」 な ど を 盛 り込んだ 「ナガサ キア ピー ル 」 を 採択した 。 米固などで原爆展 を 開催しな が ら 、 都市 を 対象 に 核廃絶 を 訴えて いる。

3 今後の動向を左右する要素

こ の よ う に 、 ブ ッ シ ュ政権の 末期以降、 核廃絶 を 目指す提言や活動が盛んだ 330「失わ れた 10 年」の終盤に新 た な 潮流が生まれた最大の要因は 、 米 国 の 政権交代への期待と、 ブ ッ シ ュ政権時代の核政策 や イ ラ ク 戦争への批判であろ う 。 だが、不 満や批判だけでは新た な 動 き は具体化 さ れ な い 。 核廃絶へ向けた今後 の具体的

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な 道筋づく り が問 わ れる。 そ れ を 左右する最も重要な要素 を 挙げるな ら 、 オパマ大統領の リ ー ダー シ ッ プと 2010 年 NPT 再検討会議であろ う 。

オバマ大統領のリーダーシップ

大統領選の 最 中 か ら 4 氏の核廃絶提言への 支持 を 明確 に していた 担オバマ大統領 は 、 2009 年 4 月 5 日 、 プ ラ ハ で演説し、 「核 の な い世 界」の 実現 を 訴えた 350そ の 中 で、 世 界 に核兵器がある限 り 、 核抑止力は維持するとした 上で、 米 国自 ら核 の な い世 界 を 目指すと述べ、 以下の具体的 な 政策 を 明 ら か に した 。

米 ロ 間での 核 削減と、 そ れ に 続く全 て の 核 保 有 国 の 核削減、 CTBT の 批准、兵器用 核分裂性物質生産 禁止条約 (F MTC )の締結、 核不拡散条約強化の た めの検証体制の強化、 国際的な 民生用原子力協力の促進、 北朝鮮とイラ ン の核開発への断固たる対応、 テ ロ リ ス ト への核の 流出 を 防ぐ国際的核管理体制の整備 な どである。

そ の 上でオパマ 大統領 は 、 l 年 以内に 米 国 主 催で核 安全保 障 に 関 する国際サミ ッ ト を 行 う と約束した 36。 今後の 問 題 は 、 こ れ ら を ど う 実現するかである。 国防総省が 2010 年 に 議会 に 提出する核戦 略の基本文書 『核態 勢 見 直しj の 中 に 、ど こ まで反映 さ れるかも、 注目 さ れて いる 370

2010年NPT再検討会議

こ れ ら の核廃絶提言の ほぼ全て に 共通するの は 、 NPT 体制の 強化 を 主張している点である。 そ の意味で、 2010 年 5 月 に ニュー ヨー ク で聞かれる NPT 再検討会議が実質的 な 成果 を 残せるかど う かが、 今後の動向に大 き な 影響 を 与えそ う だ。

当面、 問 わ れ て いるの は 、 1995 年 の 再検討会議で採択 さ れ た 文書 「核不拡散と核軍縮の原則と目標」お よ び、 2000 年 の 再検討会議で採択 さ れ た 最終文書 に明 記 さ れ た 1 13 の 具体的 措置」 を 、 2010 年 の再検討会議が さ ら に 発展 さ せる ことがで き るか ど う か だ。 2005 年 の再検討会議で は 米 国代 表が過去の 成果 を 無視した た め、 何 ら 前向 き の 決定は な さ れ な かった。

だ が 、 オパ マ 政権 の 誕 生 は 、 こ こ でも変化 を も た ら して いる。 2009 年 5 月 、翌年 の再検討会議へ向けた 第 3 回 準備委員会がニュー ヨー ク で聞か れ た が、 会場は楽観的 ・ 前向 き な 雰囲気に 満ちて いたとい う お。 委員会では再検討会議の議題が採択 さ れ、 そ の 中 に 1995 年お よ び 2000 年の再検討会議の文書を 考慮する こ とが明記 さ れた の は 、 前進だろ う 。

委員会 は通常、 重要な 課題 を 「勧告J の形で文書化して再検討会議 に 提出するこ とがで き るが、 今 回 の 委員会では 、 議長が 3 次草案まで提示した もの の 、 採択に は至 ら な かった。 だが、 NPT 再検討会議 の 動 き に 詳しいレベ ッ カ ・ ジ ョ ン ソン 英 国 ア ク ロ ニム 研究所長 は 、 今回の委員会 に ついて 、 勧告は採択 さ れ な かったが、 前 向 き の 審議 を 通じて 、 各国 に 重要 な 課題 に ついて理解 さ せる こ とがで き たと言平{面している 390

4 北朝鮮のミサイル発射・核実験

2006年の核実験以降の動き

北朝鮮が 2006 年 10 月 に 前 回 の核実験 を 強行した こ とに 対し、 国際社会 は 6 カ

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国 協 議 を 通じて北朝鮮 の 核放棄 を 求め続けて き た 。 2007 年 2 月 の 6 カ 国協 議では 「核放棄」 を 明記した 共同 文書が採択 さ れた 。 共同 文書に は 、 核放棄への 初期段階 措置として 、 60 日 以内に①寧辺の核施設の活動停止、 ② IAEA 査察受け入れ、③ 日 朝正常化協議開始、 ④テ ロ 支援国家 指定解除へ向けた 米朝協議開始、 お よ びそ れ ら の 見返 り として 北朝鮮への重油 5万 ト ン 相当の エネ ルギー 支援 な どが明記さ れた 。

北朝鮮が核活動 を 停止した こ と を 受けて 2007 年 10 月 に は 6 カ 国協議で新 た な合意 文書が発表 さ れ た 。 こ の 中で 「 第 2段階の 措置」として 、 北朝鮮 は 年 内 に 3核施設の 無 能力化と 「全て の核計画の 申告」 を 行い、 見返 り として重油 100万 トン 相当の 支援も明記 さ れ た 。 だが、 核施設の 無 能力化や核計画の 申告は年内に実施 さ れず、 テ ロ 支援 国家 指定も解除 さ れ な かった た め 「 第 2段階の 措置」の 完了は 2008 年 に 持ち越 さ れ た 。

2008 年 に 入札 「全て の核計画 申告J に 関して北朝鮮は 5 月 、 訪朝した米国務省朝鮮部 長 に 対し、 寧辺の 核施設での核開発計画に 関 する 1万 8,000 ペー ジ の 文書 を 提出し、 6 月 に は核施設目録、 プル ト ニ ウ ム の 生産 ・抽出量と使用 先、 ウ ラン の在庫量 な ど を 明記した約 60 ペー ジ の核計画 申告書 を 中国 に 提出した。

こ れ を 受けて米 国 は テ ロ 支援国家 支援解除 を 決め、 申告内容の検証方法に つ いて 6 カ 国協議で話し合った が、 合意 に 至 ら ず、 米 国 は テ ロ 支援国家 指定解除 を 延期し、 反発した北朝鮮 は寧辺の核施設の 復旧作業 を 開始した。 しかし 10 月 に ヒル 米 国務次官補が訪朝した 結果、 米朝 は検証方法で合意し、 米 国 は北朝鮮の テ ロ支援 国家指定を 解除した 。

と こ ろが北朝鮮は 1 1 月 、 検証対象 を 寧辺に限定し、 米側が求め た サ ンプル採取 を 拒否すると発表し、 12 月 の 6 カ 国協議でも検証方法の 合意 に 至 ら ず、 米 国は 見返 り の エ ネ ルギー 支援 を 中断し、 「 第 2段階の 措置J の 完了は 2009 年 に 持ち越 さ れ た 。

ミサイル発射・核実験の強行

こ の よ う に 、 2006 年の核実験後の 北朝 鮮 の核放棄へ向け た 動 き が膝着する中で 2009 年 2 月 16 日 、 李相菓・韓国 国 防相 は 韓国 の 国 会 で 「 北 朝鮮 が 1 月 か らミ サ イ ル 発 射 の 準 備 を 行 っ て いる」と 明 言 し、 23 日 に 韓 国 国 防省が発表し た

2008 年版国防白書に は 、 北朝鮮が射程3 .000 キ ロ 以上の新型中距離弾道 ミ サ イ ル(IRBM ) を 実戦 配 備した 、 と明記 さ れ た 。 一方、 北朝鮮 は 24 日 、 朝鮮宇宙空間技術委員会報道官が、 実験用通信衛星 「光明星 2 号」を 積ん だ ロ ケ ッ ト 「銀河 2 号Jの 打ち上げ を 準備中だと発表した。

こ れ に 対して 3 月 1 日 、 中曽根弘文外相は 北京での 温家 宝首相との 会談で、 「人工衛星 打ち上げ」でも国 連決議 に 反すると表明したが、 北朝鮮 は 26 日 、 国連安保理に 打ち上げ問題が提起 さ れれ ば核開発再開で対抗すると表明した 。 翌 27 日の 日 米韓 3 カ 国会合は 打ち上げが弾道 ミ サ イ ル活動 を 禁じた 2006 年 の 安保理決議 1718 に 違反するとの見解で一致した。

こ の 間の 3 月 12 日 、 日 本政府は北朝鮮が 4 月 4 日 か ら 8 日 まで に 日 本海側にミ サイル を 発射する計画と予測した が、 4 月 5 日 、 北朝鮮は人工衛星 「光明星 2 号」の 打ち上げと軌道への 進入 に 成功した と発表した。オパマ米大統領は ミ サ イ ル 「 テポド ン 2 号」 だと断定し安保理決議違反だと非難、 13 日 に 国 連安保理は北朝鮮

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の ミ サ イル 発 射 を 非難する議長声明 を 採択 し た 。 こ れ に 対 し 翌 14 日 、 北朝鮮 は6 カ 国協 議 の 離脱 を 発表 し 、 IAEA 視察団に 国 外退去を 通告、 15 日 に IAEA 要員 は 退去 し た 。

さ ら に 北朝 鮮 は 5 月 25 日 、 地下核実験 に 成功 し た と発表 し 、 国連安保理は緊急会合 を 開催 し て 新 た な 制裁決議 案 を 協 議 し た 結果、 6 月 12 日 、 北朝鮮への貨物検査の強化や新た な 金融制裁 を 盛 り 込んだ追加制裁決議案 を 全会一致で採択 した 。 北朝鮮は 13 日 、 受け入れ拒否と ウ ラ ン 濃縮活動への 着手 を 発表 し た 。

北朝鮮 は そ の 後も ミ サ イル活動 を 継続、 7 月 2 日 に は 日 本海へ向け短距離 ミ サイル 4 発 を 発射 し 、 4 日 に は 日 本海へ弾道 ミ サ イル 7 発 を 発射 し た 。 国連安保理は 6 日 に 緊急会合 し 、 安保理決議違反だと非難する議長談話 を 発表 し た 。 だが北朝 鮮 は 強硬姿 勢 を 崩 さ ず、 9 月 3 日 に は北朝鮮国連代表部が国連安保理に対 し 、 「 ウラ ン 濃縮実験に 成功 し 最終段階に達 し た J I制裁が続けば別の強硬 措置 を 講じる」と警告する書簡を 送達 し た。

こ う し た 強硬姿 勢 の 一 方、 北朝鮮 は 関係改善を さ ぐる動 き も見 せ た 。 28 日 の国連総会では朴吉淵 ・ 北朝鮮外務次官が 「朝鮮半島非核化を 否定 し た こ とは な い。核 放棄 に 踏み切るかど う か は 米国の対北朝鮮核 政 策 次 第 だ」と述べた 。 また 10月 5 日 に は金正 日 ・ 総書記が訪朝 し た 温家宝 ・ 中 国首相と会談 し て 、 米朝協議が進展すれ ば多国 間会談 を 行 う 用 意があると表明 し 、 24 日 に は李根 ・ 朝鮮外務省米州局長と 6 カ 国協議の ソ ン ・ キム 米首席 代表が、 米朝当局者と し て は 10 カ 月半ぶ り に接触 し た 。 と こ ろが 11 月 3 日 、 北朝鮮 は寧辺の核施設で約 8,000 本 の使用 済み核燃料棒を 再処理 し てプル ト ニウ ム を 抽出 し た と発表 し 、 核兵器開発への 動 き を 示唆 し た 。

こ の 間、 6 カ 国協議は 4 月 に 北朝鮮が離脱 を 表明 し て 以来 、 動 き が停止 し たままだが、 韓国の 6 カ 国協議首席代表である貌聖洛 ・ 平和交渉本部長が 12 月 17 日 、

モ ス ク ワ を 訪問 し て 同ロ シ ア 首席代表の ボ ロ ダ フ キ ン 外務次官と会談 し 、 6 カ 国協 議 の早期再開 を 目指す一方、 北朝鮮への 制裁 を 継続する方針で一致 し た 。 し かし 、 年 内に具体的な 動 き は な く、 北朝鮮の核問題解決へ向けた 6 カ 国協議 を 含む動 き は 、 2010 年以降に持ち越 さ れ た 。

今回の一連の行動をどう見るか

北 朝 鮮 は 2006 年 に も、 7 月 に 弾道 ミ サ イル 発射、 10 月 に 初の核実験実施、 と立て 続けに挑発的 な 行動 を 取ったが、 今 回 は 4 月 に人工衛星 打ち上げと称する弾道 ミ サ イル 発射、 5 月 に 核実験、 7 月 に ミ サイル発射と、 さ ら に 短期間に集中 して 同様の行動 を 取って いる。 そ の真のね ら いはどこ に あるの か。

伊豆見元 ・ 静岡 県立大学教授は北朝鮮の 「切迫 し た 事情J と し て 、 国内政策上と対外政策上の目的 を 指摘する。 まず国内政策上の目的と し て は 、 高齢化 し 健康の 衰えが指摘 さ れる金正 日 ・ 総書記の後継体制固めの た め、 ミ サ イル発射と核実験 を 強行 し つ つ最高人民会議 を 開催 し て憲法改正と国防委員会の 改組 を 進め、 権力基盤 を 強化 し た とみる。

また対外政策上の目的と し て は 、 ミ サ イルと核 の 存在 を ア ピー ル し てオパマ 政権との取引に お ける 「売値j を 上げると同時 に 、 取引が失敗 し た場合の ために抑止力を 強化するね ら いがあると指摘する 400

北朝鮮が 「人工衛星 打ち上げ」と核実験 を 行 う 直前 の 2009 年 2 月 、 平壌を 訪

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問 した 米 国社会科学調査評議会北東 ア ジ ア 安全保障プロ ジ ェ ク ト 部長のレ オ ン ­v.シ ー ガル氏は 、 北朝鮮 に ミ サ イ ル実験や核開発 を 止め さ せ る 唯一 の 方法は 、 「彼ら が見返 り に 欲しがって い る もの を 与える こ と 、 つま り (米朝) 関係改善しか ない 」と 指摘する 。 そして北朝鮮高官のメ ッ セ ー ジ と して 「 わ れ わ れ は待って い る 、わ れわ れ は交渉を 継続した い j と い う 言葉を 紹介して い る 410

一方、 起訴休職中の元外交官、 佐藤優氏に よ る と 北朝鮮 の 第 l の ね ら い は 、 国内体制固めだ と い う 。 具体的に は 、 故 ・ 金 日 成主席 の生誕 100 周 年 に あた る 2012年 を 主体 (チュチェ ) 元年 と する 新 た な 元号 制 を 導入し、 金正 日 ・ 国防委員長から 後継者への権力移譲が計画 さ れ て お り 、 そ の ための 国肉体制固めだ と い う 。

第 2 の ね ら い は、 対米関係の調整だ と い う 。 金正目指導部 は 、 米 国 が本気 に なれ ば北朝鮮国家が瞬時 に 破壊 さ れ る と の 認識 を 持って い る た め、 あ ら ゆる 手段 を用 い て 米 国 か ら 金正 日 体制への安全保 障 を 得ょ う と し、 今回 の核実験の 直前 に も米 国 に 明確 な シ グナル を 送って い た と 指摘する 420

興味深い と こ ろで は 、 朝鮮鉱工業研究家の 安部桂司氏が、 北朝鮮 に ウ ラ ン 、 金、ある い は最近注目 さ れて い る レア メ タ ル な ど を 含む豊富な地下資源が存在する こと を 指摘しな が ら 、 北朝鮮の核実験が与え る 効果を 指摘して い る 。

北 朝 鮮 の ウ ラ ン 鉱脈に は 2, 600万 ト ン の ウ ラ ン 鉱が埋蔵 さ れ、 採掘可 能 量 は400万 ト ン だ と い う 。 そ して 北朝 鮮 が 1991 年 に 原子力工業 に 乗 り 出し た の は 、近未来 に 世界で濃縮 ウ ラ ン が不足する こ と を 見越して の ウ ラ ン 資源開発だ、った とい う 。 そ して 、 2006 年 の核 実験の際、 北朝鮮が 「科学部門で安全性の保 障 さ れた 核実験 を 行 う 」 と 発表した 真 意 は 、 日 韓中 な ど原子力発電用 の ウ ラ ン 燃料が不足する 国家に 対する 、 豊富な ウ ラ ン 資源の存在 の ア ピー ル だ と い う 。 また中国が北朝鮮 に 対して 強硬姿 勢 を と ら な い一つ の 理由は 、 中国に 不足し北朝鮮 に 豊富に存在する 地下資源の た めだ と も、 安部氏は 指摘する 430

今後、 地球温暖化防止 の た め各国が原発建設へ と 向かえば、 ますます ウ ラ ン 燃料 の 需要は高ま り 、 北朝鮮の ウ ラ ン 資源は重視 さ れ る だ ろ う 。 だ と すれば、 北朝鮮 に対し、 あ ら ゆる 核 関 連活動の停止 を 求め、 核放棄 を 迫る のでは な く、 核 の平和利用 への 支援 と セ ッ ト で核兵器開発の断念 を促すア プ ロ ー チの方が、 有 効 と いえ る かもしれ な い 。

オバマ政権の対北朝鮮政策

新 た に 政権 に就い た民主党 オパマ大統領の 対北朝鮮政策 は 、 ど う な る の か。 同じ民主党の ク リ ン ト ン 政権時代 に 国務省北朝鮮担当官を 務めた ケ ネ ス ・ キ ノ ネ ス国際教養大学教授が、 興味深い分析 を 行って い る 。

キ ノ ネ ス 氏に よ る と 、 オバマ 政権 の 対北朝鮮戦略の本質は 「 ア メ と 鞭jであ る 。つ ま り 、 北朝鮮が核 ・ 大量破壊兵器や ミ サイル の 開発 を 継続する 限 り 、 国連安保理決議や国際法の 「違反者J と して強い言葉で糾弾する が、 北朝鮮が核兵器 を 完全かつ検証可 能 な 形で除去す る 態度 を 示す な ら 、 経済 支援 を 与える と い う もの 。

そ して 、 「 ア メ」 に は 米外交官の平壌訪問 と 北朝鮮関係者の ワ シ ン ト ン 訪問 の容認が含まれ る 。 また オバ マ 政権 は 、 ブ ッ シ ュ時代 に 比べて 米 国 は は る か に 緊密に 日 韓 と 調整し、 また広範な 国際的支持 を 喚起しつ つ 、 北朝鮮 に外交的圧力 を かけて行動規範の順守 を 求める だろ う と い う 。

こ の よ う に 、 北朝鮮の核計画を終わ ら せ る ため、 オパマ政権は多国 間主義的な 「 ア

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メ と 鞭」戦略 を 根気強く継続する決意 を 固めて いるが、 時 間の経過は北朝鮮 に 有利であ り 、 核 ・ 弾道 ミ サ イ ル開発 の ための 時 間 を 与えれ ば与えるほど、 日 本や米国 を 攻撃で き る核弾道 ミ サ イ ル開発成功の 可能性が高ま り 、 そ れ ら の 計画を 止めさ せる代価が未曽有 の 高 さ に 跳ね上がるだろ う 、 と キ ノ ネ ス 氏は警告しているへ

5 イランの核問題

ウラン濃縮活動の継続

イ ラ ン の ア ハ マ デ イ ネ ジャド大統領は 2008 年 4 月 、 「 ウ ラ ン 濃縮 の た めの新たな 遠心分離機 6,000 基 を 2009 年 3 月 までに 設置する」 と 発表して い た が、 2009年も引 き 続 き イ ラ ン に よ る ウ ラ ン 濃縮活動 と ミ サ イ ル開発は 、 国際社会の 懸念材料 と な った。

まず イ ラ ン の ウ ラ ン 濃縮活動継続を 懸念して 2009 年 2 月 4 日 、 国 連安保理5常任理事国 に ド イ ツ を 加えた 6 カ 国 の 高官会合がドイ ツで聞かれ、 イ ラ ン に 対しIAEA に 完全 に 協力する よ う 強く求める共同声明 を 発表 し た 。 さ ら に 19 日 、 エル バ ラ ダイ IAEA 事務局長 は 、 イ ラ ン が ウ ラ ン 濃縮 活動 を 継続 し 、 IAEA の 調査に協力して い な い と する報告書 を IAEA 理事会 に 提出した 。

そ の 後、 IAEA が 8 月 28 日 に IAEA 理事会 に 提出 し た 報告書 に よ る と 、 イ ラン 中 部ナ タ ン ツの核施設で稼動する ウ ラ ン 濃縮 の た めの 遠心分離機の 数が、 5 月以降約 400基減って約 4. 600基に な り 、 製造 さ れる低濃縮 ウ ラ ン の 量も大幅に 減った と さ れた。

イ ラ ン 政府は 9 月 9 日 、 国連安保理5常任理事国 にドイ ツ を 加えた 6 カ 国 に 対し、 核 開発問 題 に 関 する交渉再開 を 提 案 し 、 14 日 に は 、 10 月 1 日 か ら 交渉 を l年3 カ 月 ぶ り に 再開する こ と で合意した。 一方、 IAEA は 9 月 25 日 、 イ ラ ン が国 内 に 2 カ 所目の ウ ラ ン 濃縮施設の存在 を 認めた こ と を 明 ら か に した 。 イ ラ ン 側は 「平和目的J と 主張したが、 米英仏首脳は安保理決議違反だ と の 声明 を 発表した 。 27 日 に は ク リ ン ト ン 米 国務長官 と ゲー ツ米 国 防長官が、 イ ラ ン への 追加 的経済制裁 に つ い て 言及 し 、 30 日 に は イ ラ ン の モ ッ タ キ外相が秘密裏に ワ シ ン トン を 訪問している こ と が明 ら か に な ったO 米 国 と イ ラ ン は 1980 年以来、 国 交 を断交 し て お り 、 き わめて異例な 出来事だ と さ れ た。

10 月 l 日 の 安保 理常任理事国 お よ びド イ ツ と イ ラ ン と の 交 渉で、 イ ラ ン 国内で 2 カ 所目 と な る テ ヘ ラ ン 南方 コ ム の ウ ラ ン 濃縮 施設 に つ い て 、 イ ラ ン 側は

IAEA の査察 を 受け入れ、 申告済 み 濃縮 ウ ラ ン を ロ シ ア に 輸送 し て 再処理するこ と で合意し、 25 日 に IAEA は 同施設 を 査察した 。 こ れ を 受け て 11 月 27 日 、

IAEA 定例理事会 は イ ラ ン 第 2 の ウ ラ ン 濃縮施設の建設停止 を 求める決議 案 を 賛成多数で採択 し た 。

と こ ろが 29 日 、 国営イ ラ ン 放送は、 イ ラ ン 政府が新 た に 計 10 カ 所の ウ ラ ン濃縮施設計画 を 発表した と 伝えた。 こ の う ち 5ヵ所は建設場所が決定 し て お り 、2ヶ 月 以内に 着工する と い う 。 さ ら に 12 月 2 日 、 ア ハ マ デ イ ネ ジャド大統領は 、IAEA が示した 、 イ ラ ン 国 内に 貯蔵 さ れ て いる低濃縮 ウ ラ ン を 国外 に 移送した上で研究用原子炉の燃料 と して 返還 を 受ける案 を 拒否 し た 。

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ミサイル開発

イ ラ ン は 2 月 3 日 、 国 産 ロ ケ ッ ト の 打ち上げと、 搭載した 国産人工衛星「オ ミド (希望) J を 軌道 に乗せる こ とに成功したと発表した 。 また 5 月 20 日 に は 、 新世代 の 中 距離弾道 ミ サ イ ル 「 セ ジ ル2J の 発射実験に 成功した と発表した 。 さ らに 9 月 28 日 に は イ ラ ン 草命防衛隊が、 改良型中 距離弾道 ミ サ イ ル 「 シ ャハ ブ3 J iセジ ル」の発射実験に成功したと発表した 。 また 12 月 16 日 に は イ ラ ン 国防軍需省が、 最新鋭で イ ス ラ エルまで射程に 入る中 距離弾道 ミ サ イ ル 「 セ ジ ル2J を 試射し目標 に 命中 さ せ たと発表した。

イラン国内の保守派・改革派対立

6 月 12 日 、 イ ラ ン の 大統領選挙が行 わ れ、 核 開発 を 進める保守強硬派 の 現職大統領ア ハ マデ イ ネ ジャド氏に 対する有権者の 意思が注目 さ れ た が、 選挙当局は13 日 、 ア ハ マ デ イ ネ ジャド氏が約 63 % の 得票率で、 対立候補 の 改革派ム サ ピ元首相の 得票率約 34% を 上 回 って 再選 さ れ た と発表した。

こ れ に 対し開票 に 不 正 があった とするム サ ピ氏 支持者 ら 数十万人が 15 日 、 大規模 な 抗議デモ を 行 い 、 治安当局の 発砲で 7人が死亡する な ど混乱した が、 19日 に は イ ラ ン の最高指導者ハ メ ネ イ 師が大統領の再選 支持 を 発表した。 改革派はな お も 20 日 、 テ ヘラ ン 市内で数千 人規模の 抗議行動 を 行 い 、 治安当局の鎮圧 によ り 13人が死亡、 数百人が負傷する事態とな った。 こ れ に 対し、 オパマ 米大統領が 23 日 、 治安当局 に よ る改革派デモの 鎮圧は 不 当だと強く非難する な ど、 国際社会 に懸念が広がった。

しかし、 最終的 に 29 日 、 イ ラ ン 護憲評議会が開票 に 不正 は な かった と結論付けた た め、 保守強硬派ア ハ マ デ イ ネ ジャド氏の再選が確定した 。 国際社会 に は 、引 き 続 き イ ラ ン が ウ ラ ン 濃縮活動と ミ サ イ ル 開発 を 継続するとの観測が広まったが、 7 月 9 日 、 ア ハ マ デ イ ネ ジャド大統領は テ レビで演説を 行 い 、 大統領選の 正当性と対外強攻策の継続 を 強調した。 こ れ に 対し保守穏健派の ラ フ サ ン ジャニ元大統領が 17 日 、 テ ヘラ ン 市内で演説して 、 拘束 さ れ た 改革派の 釈放やメディア規制の 緩和を 訴え、 28 日 に は 最 高指導者ハ メ ネ イ 師が人権基準を 満た さ な い拘束施設の閉鎖を 命令し、 大統領選後 に拘束 さ れた 改革派約 140人が釈放 さ れ た 。

そ の上でハ メ ネ イ 師は 8 月 3 日 、 あ ら た めて ア ハ マ デ イ ネ ジャド大統領の再選を 公式承認し、 5 日 に 大統領就任式が行 わ れた が、 ア ハ マ デ イ ネ ジャド大統領は欧米への強硬姿 勢 を 継続する こ とを 表明した。 こ れ に 対し改革派元国会議員 ら は13 日 、 ハ メ ネ イ 師の 罷免権 を 持つ 専門家会議 に 対し、 ハ メ ネ イ 師の 資質 を 問 う書簡を 提出した 。 一方、 ア ハ マディ ネ ジャド大統領は 16 日 、 内閣に 3人の女性閣僚 を 起用 すると発表した 。 1979 年 の イ ス ラ ム 革命以降、 初の 女性閣僚の 起用だが、 改革派 に 対するアピー ルとも受け取れる。

こ の よ う に 、 選挙後も保守派と改革派の 溝 は 深く、 イ ラ ン 社会 に 一定の反ア ハマ デ イ ネ ジャド勢力が存在する こ と を 示して い た が、 12 月 20 日 に イ ス ラ ム 教 シ ーア 派の 改革派行 為聖職者モ ン タ ゼ リ 師が死去し、 21 日 に葬儀が行 わ れると、 改革派ム サ ピ元首相 支持派の 大規模デモ に 発展し、 治安部隊と衝突した 。 27 日 には シ ー ア 派最大の行事ア シ ュ ラ に 合わ せ て 首都 テ ヘラ ン な ど各地で反政府デモが行 わ れ、 治安部隊の発砲で 8人が死亡し、 約 300人が拘束 さ れ た 。

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イランの行動をどう見るか

イ ラ ン の強硬かつ挑発的とも思える こ う した行動 に つ い て は 、 さ まざまな 分析が な さ れ て い るが、 そ の 大半は 西欧民主主義 に 立脚する論者が、 イ ス ラ ム 原理主義とい う レ ッ テ ルとともに不可解かつ 異端児的な 行動とと ら えたもの だ。 しかし、南フ ロ リ ダ大学のモー ゼ ン . M . ミ ラ ー ニ教授 は 、 イ ラ ン の側か ら み た 脅威認識を 軸に 、 以下の よ う な 興味深い分析 を 試み て いる。

そ れ に よ ると、 イ ラ ン の外交 に は独自の戦略論があ り 、 外交政策上最も優先順位が高い の は 、 1979 年 の イ ス ラ ム 革命で成立した イ ス ラ ム 共和国 の 存続である。また イ ラ ン は米 国 を 生 き 残 り への脅威とと ら え、 米 国 お よ びそ の同盟国への抑止と、 中東での競争に 依拠する戦略 を 立て て いる。

米 国 お よ びそ の同盟 国 の 軍事行動 を 抑止するため、 イ ラ ン は 国 の 内外で革命防衛軍や 「 テ ロ リ ス ト 」 を 動員した 報復能力を 高め、 国産 ミ サ イ ル開発 を 進め、 実態 を 隠し な が ら 核開発 を 進めて いる。 そして 、 イ ラ ン の外交政策 の 重要 な 決定 を行 う の は 、 大統領では な く最 高指導者ハメ ネ イ 師である。

イ ラ ン に お ける反米運動 は 、 CIA が 支援した 1953 年 の ク ー デ タ に さ かのぼる。1964 年 に イ ラ ン 政府が 国 内 に 駐留する米軍事顧問 に 法的特権 を 与える条約を 結ぶと、 イ ス ラ ム 指導者ホ メ イ ニ師が 「 イ ラ ン は 米 国 の 植民地と化した 」と警告して 反米意識は さ ら に 高まった。 1979 年 の イ ス ラ ム 革命後、 指導者 ら は 「革命の防衛」と 「 イ ラ ン の 独立J を不可分のものとし、 米 国 は そ の 両者の脅威と さ れ た 。以来、 イ ラ ン と米 国 は互い に 不倶戴天の敵とな り 、 反米感情と反 イ ラ ン 感情 は 同じ コ イ ン の 裏表と な っ て い る。

イ ラ ン か ら すれば、 米軍 は イ ラ ン を 囲むバー レー ン 、 ク ウ ェ ー ト 、 カ タ ー ル に基地 を 置 き 、 ア フ ガニス タ ン とイ ラ ク に 大規模な 軍事力 を 派遣し、 イ ラ ン周辺国の 指導者と友好関係 を 結び、 ペル シ ャ湾に核兵器 を 搭載した 空母 を 展開し、 イ ラン を 孤立 さ せ、 経済制裁 を 強化し、 核開発計画を 妨げ、 先制攻撃 を ほのめかす存在 に 他な ら な い 。

米 国 に よ るイ ラ ン 封じ込め政策 を か わすーっの手段として 、 イ ラ ン は シ リ ア や、レバ ノ ン の シ ー ア 派政治組織ヒズボ ラ 、 パレス チナの イ ス ラ ミ ッ ク ・ ジ ハ ー ドやハ マ ス と連携 を 深め、 イ ス ラ エル に 対抗する一方で、、 ア フ ガニス タ ン やイ ラ ク にも勢力 を 浸透 さ せて いるとい う 。 また イ ラ ン の核開発計画に つ い て は 、 核兵器の製造段階に 達した かど う か は不明 だが、 逆に そ れ を 交渉の カ ー ドとして 米 国や国

際社会の 譲歩 を 引 き 出そ う として いるとみる。 こ う した イ ラ ン の外交政策 を 踏まえて ミ ラ ー ニ教授は米 国 に対し、 体制転覆 を 臭わせる強硬策では な く、 最高指導者 を 中心とした イ ラ ン の 政治体制 を 認めた 上で、 ト ッ プ同士の コ ミ ュニ ケー シ ョン を 維持し、 全面的な 関与政策 を 取るべ き だと提言して いる 450

イ ラ ン の核 問題 に つ い て は 、 国連安保理5 カ 国 に ド イ ツ を 加えた 6 カ 国グル ープと イ ラ ン との 間で協議が続け ら れて いるが、 米 国とな ら んで国連安保理の 有力な メ ン バー であるロ シ ア の 姿勢 に つ い て 、 ロ シ ア 紙の コ ラ ム ニ ス ト 、 パ ヴ ェ ル ・フ ェ ル ゲ ン ハ ウ ア ー 氏が分析して いる。

イ ラ ン は核開発と平行して ミ サ イ ル開発 を 進めて いるこ とが、 ますます国際社会 の 懸念 を 招い て いるが、 ロ シ ア は 1991 年以降、 イ ラ ン に 戦闘機や爆撃機、 戦 車、潜水艦、 地対空ミ サ イ ル な ど の 兵 器 を 供給して き た 。 さ ら に 2005 年 に は 射程距離 150 キ ロ の S300 ミ サ イ ル な ど を 売却する契約を 結んだが、 フ ェ ル ゲ ン ハ ウ ア ー

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氏 に よ ると、 イ ラ ン の核・ ミ サ イ ル開発 を 懸念する イ ス ラ エル か ら ロ シ ア への働き かけで 2008 年ごろに は 売却 は凍結 さ れ た とい う 。 また 、 イ ラ ン の周辺の湾岸ア ラ ブ諸国 にも、 イ ラ ン に 対する警戒感が高まっている。

こ れまで ロ シ ア は核問題での イ ラ ン への 制裁に反対 の 立場 を 貫いて き た が、 イス ラ エルや湾岸諸国 か ら の ロ シ ア への 圧力次第で は 、 ロ シ ア の態度が変 わる可能性がある、 と フ ェ ル ゲ ン ハ ウ ア ー氏は述べている 460

6 日本の核軍縮政策

「核兵器の な い世 界 」 を 目指すオパマ 新政権 の 登場で、 ア メ リ カの同盟 国 ・ 日本 の核軍縮 に 対する姿 勢が問 わ れて いる。 「 対 テ ロ 戦争」 を 掲げて核軍縮 に 背 を向けた ブ ッ シ ュ政権時代 に は 、 そ れ に 追随した形の 日 本だったが、 核軍縮 に 積極的 な 米新政権 を 前 に 、 日 本 は今後、 いか な る態度を とるべ き か。 こ の 問題 に ついて も、 議論が交 わ さ れた 。 主 な もの を 見て み よ う 。

まず、 政権 を 取る直前の野党 ・ 民主党の 岡 田 克也幹事長が さ っそく声 を 上げて注目 さ れた。 民主党核軍縮促進議員連盟の 会長でもある岡 田氏は、 核軍縮 ・ 不拡散が 日 本外交の 大 き な 柱であるべ き だとした 上で、 ①米 国 に よ る核兵器先制不使用 宣言 、 ②非核兵器国への核兵器の使用 の違法化、 ③東北 ア ジ ア 非核兵器地帯構想の 3 点 を 日 本が主張すべ き だとの見方 を 示した 470

岡 田氏は核兵器先制不使用 に ついて 、 核攻撃 を 受けた 後 の核 に よ る反撃まで否定して お ら ず、 現実的だとする。 また東北 ア ジ ア に は北朝鮮の核の脅威が存在するが、 通常兵器で十 分対抗で き ると述べ、 北朝鮮 に核兵器 を 廃棄 さ せ て 北東 ア ジア 非核兵器地帯を 実現し、 日 本、 韓国、 北朝鮮の 「地帯内国家J 3 カ国 は核兵器の 実験・保有 ・ 使用 を せず、 米 国 、 中 国 、 ロ シ ア の 「近隣核兵器国J 3 カ国 は 「地帯内国家jに核兵器の使用 ・ 威嚇 を し な いと約束する こ とで、 実現可能 だと主張する。

また 、 沖縄の米軍普天間基地 に ついて は 「県外、 あるいは 国外に 移転すべ き だ」「沖縄とい う 非常 に 狭い エ リ ア に 、 嘉手納と普天間とい う 大 き な 米軍基地が二つあ り 、 こ れ を 今後三O 年五O 年と継続して いくの かJ 1 も う 少しア メ リ カにも考え さ せる必要があ り ますし、 しっか り 議論しな けれ ば な ら な いjと述べ、 そ の 後の民主党政権の沖縄政策 に お ける迷走振 り を 、 こ の段階では予想 さ せ な い原則論を 主張して いる 480

ピー ス デポ特別顧問 の梅林宏道氏も、 オパマ 大統領の登場で訪れたまた と な い好機 を と ら え、 日 本が 「北東 ア ジ ア 非核地帯j を 入 り 口とするア ジ ア 共生 ・ 対話外交 に 転換すべ き だと提唱する 490

一方、 沖縄の基地 問題 を き っかけ に 、 2009 年 5 月 に 成立した 、 在沖縄海兵隊の 一部 を グア ム へ移転するための経費負担 を 定めた協定 (1グア ム 移転協定J ) 自体が、 日 米 間の 経費負担 に 関し、 完全に 不平等な条約であ り 、 沖縄の負担軽減に寄与せず、 日 本が自 ら 米 国 の従属的地位 を 選択した に 等しい、 との批判が な さ れた 。 さ ら に 「グア ム 移転協定jは 、 米 国 の 「 国際協調路線への 復帰」 を 「同盟 国・日 本への責任強化」で充当し、 「米単独行 動 の 負担」 を 「 日 本の 役割分担jで軽減するもの だとの 指摘もある日。

こ の他、 核軍縮 の機運が高まっている現在、 日 本政府内部の一部の人聞が、 核

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軍縮 の 進展 に危倶 を 感じ、 永続的な核兵器の必要性を 唱えて いる、 と する分析5 1 や、オパ マ構想の 登場 を 機会 に 、 「唯一の被爆国J と して の 意識の真贋 を 問 い 、 同時に 「 日 本核武装」論 と い う 亡霊 を 退場 さ せるべ き だ と する議論5 2 な どもあった 。

7おわりに

2009 年 以降の 国際社会が、 核 兵器 を ど こ まで減 ら せるの か。 オパマ 政権 の 誕生 と 核廃 絶 を めざす複数の大 き な 潮流の登場 に よ り 、 核軍縮 ・ 核廃絶 を 期待する者に と って は 、 久々に希望が持て る時代が来 た よ う だ。

しかし、 提言や構想、 会議 だけでは現実の核 を めぐる諸問題 は 解決しな い。 達成すべ き 目標、 立脚する価値観、 実現する手段、 国際情勢の 認識、 過去の出来事の 解釈 な ど、 あ ら ゆる点に お い て 、 論者の意見の 幅が広く、 合意 を 形成するの が容易で な い か ら だ。

印パの核実験で核 を めぐる世界 の 流れが一挙に 変 わ った 1998 年 に 、 実は そ の後 の テ ロ や核 ・ ミ サ イ ル拡散 を 予測 さ せ得る出来事も起 き て い た 。 同じ よ う に 、核廃絶への 明るい未来 を 描い て いる今、 深刻な 出来事の前兆が隠れて いるかもしれ な い。

だが、 被爆地 ・ 広島 か ら 世界の核の情勢 を 見続けて思 う の は 、 一喜一憂するのでは な く、 あ ら ゆる事象 を 冷静に 見つめる こ と の 、 重要性である。 広島・長崎が核問題 を 考える 「原点」た り 得る と した ら 、 今な お 全貌が解明し尽く さ れて い ない核の 「危険性J を 、 ア ッ プデー ト しな が ら 世 界 に 伝え続ける こ と が可 能 だか らだろ う 。 そ の 「危険性J を視野に入れな い 、 あ ら ゆる核 に 関する議論は 、 空しく響くだけである。

今 こ そ人類の 英知が問 わ れ て いる。 こ の機会 を 失って は な ら な い 。

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才ハマの霊場で厚矛'.J:. Ld.:l,草原.�-2009字の磁をめぐ・3亘書舟と論調

l 渡辺将人 『評伝 パ ラ ク・オパマ 「越境J する大統領』 集英社、 2009 年 ニューヨ ー ク タ イ ム ズ編 『オパマ 希望への道』 岩 波書庖、 2009 年 を は じめ多数出版 さ れ た 。

2 三 浦俊章編著 『オバマ演説集』 岩波新書、 201 0 年 、 21 7- 242 頁。3 オパマ 政権の安全保障・外交 ・ 核政策 に ついて は 、 川上高司 r r核 の な い世 界』 、

『核の ある世界』 一一オパ マ 政権 の核政策と 日 本J r海外事情j 2009 年1 0 月 号 、2 - 31 頁 ; 梅本哲也 「オパ マ 政権 の 始動と米 国 の外交・安全保 障 政 策 J r 国際安全保障j 第 37 巻第 l 号 、 2009 年 6 月 、 9 - 4 頁 な ど参照。Weapons of Mass Destruction Commission, 自nal report, Weapons 01 TIθ'rror:

Fnθemg 的e World 01 NucJea乙 Biologlヒ.al, and Cbeml;句j Arms, Stockholm, Sweden, 2006. (http:/ Iwww.wmdcommission.org/files/Weapons_oLTerror. 凶f) . 邦訳は 大量破壊兵器委員会 『大量破壊兵器一一廃絶の た めの 60 の 提言』岩波書店、 2007 年。

5 Canberra Commission on the Elimination of Nuc1ear Weapons, Report 01 tbθ

Ca刀berra Commission on 的θ Elimination 01 NucJear Weapons, Canberra: Commonwealth of Australia, 1 996.

6 核 不拡散・核軍縮 に 関 する東京 フ ォ ー ラ ム 報告書 『核 の 危険 に 直面して一一

21 世紀への行動計画』 日 本国際問題研究所、 1 999 年。7 ダラ ・マ ッ キ ン パー 「新ア ジ ェ ン ダ連合の非核 ・ 核軍縮政策」広島平和研究所

編 r21 世紀の核軍縮一一一広島 か ら の 発信J 法律 文化社、 2002 年、 389 - 406 頁。8 J Peter Scoblic, “Disarmament Redux," Bulletin 01 tbe A tomic Scie刀tists,

Marchl April 2008, Vo1.64, No.1 , p.36 - 37. 9 春原剛 「プラ ハ を演出した 四 賢人J r外交 フ ォ ー ラ ム j 2009 年 8 月 号、 42 頁。10 前掲、 44 頁。11 Global Zero Commission, GlobaJ Zero A ction Plan, 29 June 2009. 12 Report of the International Commission on Nuc1ear Non-proliferation and

Disarmament, Eliminating NucJear Tbreats: A Practical Agenda lor Global

Policymakers, Canberra/Tokyo, November 2009. 13 そ の 後 、 Department of Defense, NucJθar Postunθ Review Report (NPR),

Apri1 201 0 として発表 さ れ た 。14 r核不拡散 ・ 核軍縮 に 関する国際委員会 ・ 日 本 NGO 市民連絡会」の ホ ー ム ペー

ジ (http:/licnndngojapan.wordpress.com1) 参照。15 川崎哲 「私の視点 核軍縮 世 界の流れ に 逆行する 日 本J r朝 日 新聞j 2009 年 9

月 2 日 。16 “Getting to Zero: An Interview with International Nuc1ear Non-Proliferation

and Disarmament Commission Co-Chair Gareth Evans," Arms Con trol

Today, Vo1.39, No.3, April 2009, p.9. 17 佐藤行雄 「核軍縮時代 の 日 本の安全保障一一拡大抑止 の信頼性向上が鍵J r外

交 フ ォ ー ラ ム j 2009 年 8 月 号、 46 - 49 頁 な ど参照。18 “Getting to Zero," p.6-1 3 19 Eliminating Nudθ'ar Tbr,θ2お , para.1 7.1 2, p .1 66

2 0 lbid., para.1 7.1 5, p.167 2 1 lbJd., para.1 7.1 3, p.1 67.

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22 lbld., para.18.1 , p.187. 23 lbÍcl., para.19.1 , p.204. μ lbld., para.19.2, p.204. 25 lbid., para.17.28, pp.172-173. 2焔 lbl託, para.18.2, p.187. 27 lbid., para.20.47, p.227. 28 lbld., para.7.1 1, p.75. 29 lbid., para.17.32, p.174, 30 lbld., para17.33-17.39, pp.174-177. 31 2009 年 9 月 1 日 現在 、 134 カ 国 ・ 地域の 3.104 都市が加盟 し て い る 。 世 界市長

会議ホ ー ム ペ ー ジ(http:/ /www.mayorsforpeace.org/jp/membercity/index.htm1) 参照。

32 テ キ ス ト は 世 界市長会議ホ ー ム ペ ー ジ(http:/ /www.mayorsforpeace.org/jp/只allery/H-N% 20Protocol.pdf) 参照。

33 George Perkovich and James M. Acton, A bolishing Nuclear Wθapo刀s,

Adelphi Paper No.396, London: The International Institute for Strategic Studies, 2008 な ど。

34 “Arms Control Today 2008 Presidential Q&A: President-Elect Barack Obama," Arms Control Today, Vo1.38, No.10, December 2008, pp. 31-36.

35 The White House, Office of the Press Secretary, Remarks By Pr,θsident

Barac土 Obama, Hradcany Square, Prague, Czech Republic, April 5, 2009, (http://www.whitehouse.gov /the_press_o伍ce/Remarks-By-President-Barack­Obama-In-Prague-As-Delivered/).

36 オ バマ 政権の核政策の展望 に つ い て は 、 ジ ョ ー ジ ・ パ ー コ ピ ッ チ 「 オ バ マ 政権 の意欲J r外交 フ ォ ー ラ ム j 2009 年 8 月 号、 36 - 41 頁 な ど参照。

37 神保謙 「 オ パマ 政権 に お け る 核態勢見直 し と 日 米 同盟J r東亜j NO.502、 2009年 4 月 号、 6 - 7 頁 ; 笹 島 雅彦 「 オ パ マ 新政権 に お け る 安全保障戦略J r軍縮問 題資料j 2009 年 3 月 号、 2 - 18 頁 な ど参照。

38 秋 山信 将 n持て る 国』 と 『持て な い 国』 の協調 は 取 り 戻せ る か-NPT を機能 さ せ る た め に J r外交 フ ォ ー ラ ム j 2009 年 8 月 号、 32 頁。

お Rebecca Johnson, “Enhanced Prospects for 2010: An Analysis of the Third PrepCom and the Outlook for the 2010 NPT Review Conference," Arms

Control Today, Vo1.39, NO.5, June 2009, p. 16-22. ω 伊豆見元「北朝鮮の 『矢継 ぎ早 の挑発行動J を ど う み る かJ r世 界j 2009 年 8 月 号、

184 - 190 頁。41 レ オ ン ・ V ' シ ー ガル 「北の核 ・ ミ サ イ ル 問 題 を 迷走 さ せ る こ れ だ け の誤謬J r中

央公論J 2009 年 5 月 号、 96 頁。42 佐藤優「北朝鮮の外交ゲー ム J (佐藤優 の 新 ・ 帝 国 主義 の 時 代 第 5 回 H 中 央公論』

2009 年 7 月 号、 83 頁。43 安部桂司 「最近 ・ 北朝鮮経済事情J r軍縮 問題資料j 2009 年 12 月 号 、 13 - 23 頁。44 ケ ネ ス ・ キ ノ ネ ス 「北朝鮮 に 対す る オ パ マ の 『 ア メ と 鞭j J r 中 央公論j 2009

年 8 月 号、 144 - 151 頁。45 Mohsen M. Milani, “Tehran's Take," Foreign Affairs, Vo1.88, No.4, July/

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;fノ 1 予の登場で厚浮'..1:. � �土星雲8害�-2009字の援をめ ぐ'�l!J{i守と瀞認

August 2009, pp.46-62. 46 パ ヴ ェ ル ・ フ ェ ル ゲ ン ハ ウ ア ー 「 イ ラ ン 核軍縮 の未来 は ロ シ ア 次第J r 中央公論J

2009 年 12 月 号 、 246 - 253 頁。47 岡 田 克也 r r ア ジ ア の 中 の 日 本』 と し て 安全保障政策 を構築 し な け れ ば な ら な

い J r世界j 2009 年 7 月 号、 139 頁。48 向 上、 142 頁。49 梅林宏道 「核廃絶。 日 本 よ 、 変 わ れ一一ー核兵器依存 を 止 め 、 保有 国 の 軍縮 テ ー

ブル を 用 意す る J r軍縮問題資料j 2009 年 9 月 号、 28 - 37 頁。50 我部正明 、 前 田哲男 、 田 巻一 彦 、 古 関彰一 「共 同提言 安全保障政策の オ ル タ

ナ テ イ ブ一一対米従属 ・ 思考停止 か ら の脱却 を J r世界j 2009 年 7 月 号、 106- 122 頁。

51 ハ ン ス ・ ク リ ス テ ン セ ン 「被爆国 日 本 は核 軍縮 の 足 かせ と な る の かJ r世界』2009 年 9 月 号、 152 - 157 頁。

52 棲 田 淳 「 日 本核武装論、 退場の と き J r中 央公論j 2009 年 7 月 号、 60 - 67 頁。

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