マイクロ波透過法による木材水分量の測定...マイクロ波透過法による木材水分量の測定...
TRANSCRIPT
マイクロ波透過法による木材水分量の測定
木材工業部 山角達也
Measurement of the Wood Moisture by the Microwave Penetrating Method
Tatsuya YAMAZUMI
マイクロ波透過法によるマイクロ波減衰量と木材水分量及び含水率の関係について検討した。その結果,木材中の
, 。水分量によるマイクロ波の減衰量は被測定物の材厚に影響され 材厚が小さい方が両者の間に高い相関が認められた
また,含水率とマイクロ波減衰量の関係に全乾比重が関与しており,比重補正することで両者の相関関係をより高め
ることができる。しかし,現場サイドで全乾比重を求める手段は選択できないことから,実用化の際は含水率を測定
するラインに重量と材積の測定部を付加し,減衰量と水分量の関係式からその材積に含まれる水分を定量化し,含水
率を算出する方法が考えられる。
:マイクロ波,透過,減衰量,木材,水分量Keyword
1. 緒 言
木造住宅のクレーム調査によると,その要因として木材
の未乾燥によるものが大半を占めている結果が報告されて
おり,住宅で使用される木材の乾燥性を高めることは重要
である。
また,住宅の10年瑕疵保証の義務等を盛り込んだ「住宅
の品質確保の促進等に関する法律 (品確法)が平成12年」
4月に施行され,プレカット業や工務店・建設業のユーザ
ーサイドでは乾燥材を強く求めている。一方,製材業等の
供給サイドでは,それに応えるべく乾燥や強度の性能を表
示した材の供給体制を整備しつつある。
実際,木材の含水率の測定・評価法として,直流電気抵
抗式,高周波誘電率式及びマイクロ波透過式等があるが,
本研究ではマイクロ波透過式に着目し,マイクロ波の減衰
量と木材に含まれる水分量の関係等について検討した。
2. 試験方法
2.1 試験機
, ( ) 。試験機は 図1に示すカワサキ機工 株 社製を用いた
図1 試験機
受 振 器
被 測 定 物
発 振 器
受 振 器
被 測 定 物
発 振 器
マイクロ波発振器は被測定物の下部に取り付けられ,被測
定物を載せるアクリル板内の7cm角のスリットから被測定
, ,物に対し 一定距離(50mm)の位置からマイクロ波を照射し
受振器側でその減衰量を測定する機構となっている。
2.2 マイクロ波
用いたマイクロ波の周波数は,9.4GHz(波長3cm),発振
器と受振器の距離は,250mm一定とした。マイクロ波の透
過や反射の影響をみるため,被測定物に対しマイクロ波の
, ,照射角や電界の向きを変化させ 照射の最適条件を決定後
マイクロ波の減衰量を測定した。
2.3 供試材
供試材は材厚の異なる3種(30,55,115mm×120mm×120
mm)のスギを用い,材中の水分量の変化は恒温恒湿機や水
槽等を用いて調製した。供試後,105℃の定温器で全乾状
, , 。態にし 供試時の水分量 含水率及び全乾比重を算出した
供試したスギの全乾比重は0.29~0.47,含水率は0~80%の
範囲にあった。
3. 試験結果
3.1 照射角及び電界の方向性による減衰量と水分量
の関係
材厚30mmのスギについて,照射角を90°,60°に変化さ
せた時の,また電界を木目方向に対し直角及び平行に照射
した時のマイクロ波の減衰量と水分量の関係を図2に示
す。
両者の関係は,照射角60°に比べ90°の方が高い相関が
認められた。また,電界と木目の方向性による両者の関係
は,電界を木目と平行に照射した時の減衰量に比べ,直角
に照射した方が大きな値を示し,また相関も高かった。
マイクロ波透過法による木材水分量の測定 69
減衰量が大きな値を示したのは,材の組織構造の相違によ
るものと思われる。
本結果より,以下の試験の照射条件は,照射角90°,電
界は木目方向に対し直角とした。
図2 照射条件別水分量と減衰量の関係
3.2 材厚による減衰量と水分量の関係
材厚30,55,115mmのスギにおけるマイクロ波の減衰量
と水分量の関係を図3に示す。
水分量に対する減衰量は,材厚が厚いほど大きな値とな
った。水分量と減衰量の相関係数は,材厚30mmでR =2
0.964,材厚55mmでR =0.911であり,材厚が小さいほど2
高い相関を示した。
また,材厚30,55mmの直線回帰式をみると,両者の傾き
は差がないことから,木材中の水分量による減衰量は材厚
の影響を受けていることがわかる。
図3 材厚別水分量と減衰量の関係
y = 0.007x + 0.07R2 = 0.9127
y = 0.0156x + 0.027R2 = 0.964
y = 0.011x + 0.1R2 = 0.8806
y = 0.0146x + 0.1672R2 = 0.8776
0.00.20.40.60.81.01.21.41.61.82.0
0 25 50 75 100 125
水分量(g)
減衰量(V)
90°平行90°直角60°平行60°直角
y = 0.0156x + 0.027R2 = 0.964
y = 0.0155x + 0.1902R2 = 0.9106
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
0 50 100 150 200
水分量(g)
減衰量(V)
材厚30mm材厚55mm線形 (材厚30mm)線形 (材厚55mm)
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
0 50 100 150 200 250 300
水分量(g)
減衰量(V)
材厚115mm
材厚115mmに照射した時の水分量と減衰量の関係は,水
分量140g以下では高い相関傾向が認められるが,それ以上
の水分量になると両者の間には直線関係は認められなかっ
た。
3.3 比重による減衰量と水分量の関係
比重による減衰量への影響をみるため,全乾比重を0.05
毎にグループ化した時の水分量と減衰量の関係を図4,5
に示す。
比重区分毎の両者の関係は,直線回帰式や相関係数から
判断して,比重区分間の差異は顕著に認められなかった。
図4 比重別水分量と減衰量の関係(材厚30mm)
図5 比重別水分量と減衰量の関係(材厚55mm)
3.4 比重による減衰量と含水率の関係
比重区分毎の含水率と減衰量の関係を図6,7に示す。
図6 比重別含水率と減衰量の関係(材厚30mm)
y = 0.0197x + 0.0579R2 = 0.9925
y = 0.0245x + 0.0692R2 = 0.9611
y = 0.0269x + 0.0139R2 = 0.9712
y = 0.0308x - 0.0101R2 = 0.98530.0
0.2
0.40.6
0.8
1.0
1.21.4
1.6
1.8
0 20 40 60 80 100
含水率(%)
減衰量(V)
比重Ⅰ(~0.35)比重Ⅱ(0.35~0.40)比重Ⅲ(0.40~0.45)比重Ⅳ(0.45~)
y = 0.0156x + 0.0588R2 = 0.9916
y = 0.0155x + 0.0707R2 = 0.9567
y = 0.0154x + 0.0103R2 = 0.9754
y = 0.0157x - 0.0026R2 = 0.9901
0.00.2
0.40.60.8
1.01.21.4
1.61.8
0 20 40 60 80 100 120
水分量(g)
減衰量(V)
比重Ⅰ(~0.35)
比重Ⅱ(0.35~0.40)比重Ⅲ(0.40~0.45)
比重Ⅳ(0.45~)
y = 0.0154x + 0.171R2 = 0.9323
y = 0.0158x + 0.1814R2 = 0.9198
y = 0.0151x + 0.1997R2 = 0.8989
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
0 50 100 150 200
水分量(g)
減衰量(V)
比重Ⅰ(~0.35)比重Ⅱ(0.35~0.40)比重Ⅲ(0.40.~0.45)
70 鹿児島県工業技術センター研究報告 No15(2001)
マイクロ波透過法による木材水分量の測定 71
図7 比重別含水率と減衰量の関係(材厚55mm)
比重区分することで含水率と減衰量の間には,高い相関
が認められ,材厚30mmにおいて極めて高い直線関係が認め
られた。このことは,比重補正することで含水率と減衰量
の関係を,より高められることを示唆している。
y = 0.0375x + 0.2013R2 = 0.9023
y = 0.0441x + 0.1877R2 = 0.916
y = 0.0459x + 0.1705R2 = 0.931
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
0 20 40 60 80
含水率(%)
減衰量(V)
比重Ⅰ(~0.35)比重Ⅱ(0.35~0.40)比重Ⅲ(0.40~0.45)
4. 結 言
マイクロ波透過法による木材水分の測定を行い,以下の
ことがわかった。
(1) マイクロ波の照射条件は,照射角90° 電界を木目方,
向に対し直角に照射した時,最適であった。
(2) 木材中の水分量によるマイクロ波の減衰量は被測定物
の材厚に影響され,材厚が小さい方が両者の間に高い相
関が認められた。
(3) 水分量とマイクロ波減衰量の関係に全乾比重の影響は
認められなかった。
(4) 含水率とマイクロ波減衰量の関係に全乾比重が関与し
ており,比重補正することで両者の相関関係をより高め
ることができる。
(5) 現場サイドで全乾比重を求める手段は選択できないこ
とから,実用化の際は含水率を測定するラインに重量と
材積の測定部を付加し,減衰量と水分量の関係式からそ
の材積に含まれる水分を定量化し,含水率を算出する方
法が考えられる。