バルサ飛行機のあれこれ -...

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バルサ飛行機のあれこれ 2017(平成29)221日改 (楕円翼の検討、式の見直し・修正及び表2.1の修正) 菅原政治郎 1. 概要 2. 理論的検討 3. 計算手順 4. 発射台の制作 5. 制作機の色々 6. 考察 (ご注意:本資料においては、数種類の文献・資料を参考にして内容を記 述しています。内容について誤記・誤解等を含め文責は小生に有り、文献 の著者には御座いませんので予めお知らせ致します。) 1

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バルサ飛行機のあれこれ

2017(平成29)年2月21日改 (楕円翼の検討、式の見直し・修正及び表2.1の修正)

菅原政治郎

1. 概要 2. 理論的検討 3. 計算手順 4. 発射台の制作 5. 制作機の色々 6. 考察

(ご注意:本資料においては、数種類の文献・資料を参考にして内容を記

述しています。内容について誤記・誤解等を含め文責は小生に有り、文献の著者には御座いませんので予めお知らせ致します。)

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1. 概要

子供の頃にバルサ飛行機を作り、小学校の校庭で友達と飛ばして遊んだ記憶が有ります。その頃は、どの様な形状の主翼や機体長にすれば良いかの理論的検討はせずに、友達の良く飛ぶ飛行機を真似て作成していました。

時が経ち、バルサ飛行機について理論的に検討して見たくなり、その理論を基にバルサ飛行機を作れば、上手く飛ぶのではないかと考えました。 本資料は、手投げ(或いはゴム管発射)のハンドランチィング(Hand Launching)を主体としたバルサ飛行機に関する制作経過を記したものです。制作のお役に立てられれば幸いです。

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2. 理論的検討

飛行機は何故飛ぶのかの検討から始めて、安定性、重心位置等の検討を行いました。

充分な検討が出来ていない個所も有るかと思いますので、読者の方々の建設的なコメントを頂ければ幸いです。

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2.1 飛行機は何故飛ぶのでしょうか

本資料において、飛ぶとは、機体が放物線以外の軌道を前進飛翔する場合とします。このことを前提としますと、飛翔には以下の2点が必要です。 (1) 機体を推進(前進)させる力が存在する事。(プロペラ、ジェットエンジン、ロケッ

ト、手での投げ上げ(Hand Launching)、ゴムひも等により推力を作ります。) (2) 機体を浮上させる揚力が存在する事。(揚力については2.1.1以降で説明)

2.1.1 揚力の概要

図2.1.1の様に、一様な平行流に、或る角度(迎角)を持っ

て板を置くと、流体は板に力を及ぼし、その反作用として、板の法線方向に力が生じます。その力の平行流と同方向の成分が抗力、垂直成分が揚力となると言われています。

と書きましたが、それ程話しは単純ではありません。と言うのも、粘性が無くかつ渦の無い完全流体の中では、たとえ角度を持って板を置いても、流体は板の上・下面で渦が生じないため、揚力も抗力も発生せず、偶力により板が回転するのみだからです(ダランベールの背理)。

もし、完全流体でも作用反作用が板に生じるとすれば、板は揚力を受けて重心位置が動くはずですが、そうはなりません。従って、単純な作用反作用論では説明出来ない事に成ります。

抗力

揚力

図2.1.1 流れの中の揚力と抗力

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2.1.1 揚力の概要 (続)

それでは、何故揚力が生じるのでしょうか。 (1)実は、飛行機が飛ぶ流体(空気)は完全流体では無く、粘性流体なので、翼の上下面を通過

した流体は翼に沿って渦を生じさせるとともに、翼に沿って循環流が生じます。この渦及び循環流が揚力を生じさせると考えられています。

(2) 効率良く循環流を発生させるために、飛行機の翼が湾曲しています。但し、湾曲を持たない

平板翼でも、流体に対して迎角を持っていると循環流が生じ、揚力が発生します。ジェット戦闘機は空中戦での機体操作性に優れるように、揚力を多少犠牲にして湾曲の少ない翼の厚みを薄くしています(平板に近い)。

(3)平板でも揚力が生じることを次項2.1.2にて図解で説明します。これにはジューコフスキー(Zhukovsky)変換が必要です。 これは、円にある種の変数変換をすると、それが平板翼や飛行機の翼に変換できるというものです。

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2.1.2 ジューコフスキー(Zhukovsky)変換 その1(平板翼、一般翼、円弧翼、対称翼)

円を飛行機翼に変換するものに、以下のジューコフスキー(Zhukovsky)変換が有ります。変換 (写像)前の位置情報をz、変換 (写像)後の位置情報をZとすると、以下です。

)1.1.2(2

z

azZ

ここでZ及びzの座標を其々(X,Y), (x,y)とすると以下になります。

)2.1.2(iyxz

iYXZ

図2.1.1 ジューコフスキー 変換イメージ

・変換前のzの座標(x,y)が左図の外接円上の点と考えてください。 ・外接円の半径R及びa は変換後の翼の大きさ(翼弦)に関連 ・roは変換後の翼の肉厚に関連するもの これらに着いては、後述します。

(1) 理論

ここに、a:左図の外接円の大きさに関連する定数 (a>0)

(2.1.3を除き、2.1.2から2.1.5までは、竹内淳氏著の「高校数学で分かる流体力学」ブルーバックス、2014年6月を参照しました。)

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)(1,

)(1

)(1

)(1

)(

)()(

)()(

22

2

22

2

22

2

22

2

22

22

yx

ayY

yx

axX

yx

aiy

yx

ax

yx

iyxaiyx

iyx

aiyxiYXZ

式(2.1.1)と(2.1.2)より、以下の関係式が得られます。

)3.1.2(

さて、実際にジューコフスキー変換するには、図2.1.2に示す様に先ずy軸上の点(0,y1)から、点(a,0)を通る円(内接円)を描き、次に点(a,0)を通る外接円を描きます。この外接円上の点が(x,y)に対応します。外接円の中心は(x0,y0)で、外接円の半径をR、とすると、点(x,y)と(x0,y0)の関係は以下になります。

22

0

2

0 )()( Ryyxx )4.1.2(

ここで、点(x0,y0) を原点(0,0)からの距離roと角度δを用い、又、点(x,y)を各々極形式で表記すると以下となります。

)5.1.2(

式(2.1.5)を(2.1.3)に代入する事により、以下の関係式が得られます。

sinsin,coscos

sin,cos

00

00

rRyrRx

ryrx oo

但し、r0>0、 δは、π/2≦ δ ≦ 3π/2内の固定値、 0≦ θ ≦ 2π

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)6.1.2(

)cos(21)sinsin(

)cos(21)coscos(

0

2

0

2

2

0

0

2

0

2

2

0

RrrR

arRY

RrrR

arRX

(2) 結果

(2.1) 平板 (r0= 0 の場合)

1.0 0.5 0.5 1.0

1.0

0.5

0.5

1.0

2 1 1 2

2

1

1

2

図2.1.3 外接円 図2.1.4 ジューコフスキー変換座標

(2.2) 対称翼 (r0> 0 , δ = π の場合)

2.0 1.5 1.0 0.5 0.5 1.0

1.5

1.0

0.5

0.5

1.0

1.5

2 1 1 2

2

1

1

2

図2.1.5 外接円 図2.1.6 ジューコフスキー変換座標

r0=0の場合、R=aとなり、式(2.1.6)のYが0となり、厚みの無い、平板翼となります。

上下対称の対称翼となります。翼の厚みは図2.2 のr0の大きさに拠ります。

式(2.1.6)の r0及びδ をパラメータとして解析した結果は以下となります。

x

y Y

Y

X X x

y

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(2.3) 円弧翼 (r0> 0, δ = π/2 の場合)

図2.1.7 外接円 図2.1.8 ジューコフスキー変換座標

(2.4) 一般翼 (r0> 0 , π/2 < δ < π の場合)

図2.1.9 外接円 図2.1.10 ジューコフスキー変換座標

1.0 0.5 0.5 1.0

0.5

0.5

1.0

1.5

1.5 1.0 0.5 0.5 1.0 1.5 2.0

1.5

1.0

0.5

0.5

1.0

1.5

2.0

1.5 1.0 0.5 0.5 1.0

1.0

0.5

0.5

1.0

1.5

2 1 1

2

1

1

厚みの無い、上に凸な円弧翼となります。 なお、δ = - π/2 の場合、円弧は逆向き対称となります。

翼の厚みはr0 の大きさによります。即ち、r0 が大きければ厚くなります。 なお、-π < δ < -π/2 の場合、逆向き対称の逆一般翼となります。

y y

x x

Y Y

X X

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2.1.3 ジューコフスキー(Zhukovsky)変換 その2(楕円翼の検討)

前項では、内接円と外接円との関係でジューコフスキー(Zhukovsky)変換を検討し、 r0及びδ をパラメータとして平板翼、一般翼、逆一般翼、円弧翼、対称翼を導出しました。 しかし、 どの様にr0及びδ をパラメータとして組み合わせて

も楕円翼は得られませんでした。このため、同心円での変換を検討しました。(参考文献、「流体力学」今井功、岩波書店、1970年12月)

(1) 理論

左図の様に、半径 a の円とそのk 倍の同心円を描きます。式(2.1.1)のz を以下の様に設定します。

ka

a

図2.1.11 ジューコフスキー変換イメージ iyxekaz i

][1

][11

2

Sink

kaiCosk

kaek

eka

iYXz

azZ

ii

…(2.1.7)

式(2.1.1)に代入すると、以下の関係が得られます。

…(2.1.8)

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1][],[

22

aB

Y

aA

XaBSinYaACosX   …(2.1.9)

式(2.1.8)で A= k + 1/k, B= k -1/k と置くと、以下が得られます。

式(2.1.9)より分ります様に、ジューコフスキー(Zhukovsky)変換後の図形は、k の値により、直線(平板)、楕円、円となることが分ります。

(2) 結果

式(2.1.8)の k をパラメータとして解析した結果は以下となります。

6 4 2 2 4 6

6

4

2

2

4

6

(2.2) 平板 (k= 1 の場合) (2.3) 楕円 (k=1.1 の場合)

図2.1.13 ジューコフスキー変換座標

6 4 2 2 4 6

6

4

2

2

4

6

図2.1.12 ジューコフスキー変換座標

(2.1) 楕円(k= 0.5 の場合)

6 4 2 2 4 6

6

4

2

2

4

6

図2.1.14 ジューコフスキー変換座標

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(2.5) 楕円 (k= -2 の場合)

30 20 10 10 20 30

30

20

10

10

20

30

(2.4) 円 (k=10 の場合)

図2.1.15 ジューコフスキー変換座標

6 4 2 2 4 6

6

4

2

2

4

6

図2.1.16 ジューコフスキー変換座標

以上の様に、K = 0 を除いては、楕円関数ですので、k の値が正負に係らず、上下対称の楕円となります。又、0 < k < 1 の場合は、1/k の場合と同じ結果が得られますので、使用に当たっては、K > 1 以上を考慮すれば良い事になります。

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2.1.4 翼周辺の流体の流れ

揚力を求める前に、翼周辺の流体(空気)の流れを見るため、流れ関数ψを求めます。流れ関数ψの等高線図が流線となります。これは揚力の計算に必要な循環流に関連します。 図2.1.2の外接円を中心とした流れ関数ψは以下の式となります。

][)sin(21)sin(

2

rLnRr

RrU )10.1.2(

ここに、 U:流体速度(流体が静止している場合は、機体速度) r :外接円外(即ち、翼の外側)の点の中心からの距離 θ :外接円外の点のなす角度(ラジアン) R :外接円の半径 α :流体と翼とのなす角度(ラジアン) η :翼の反りを示す角度で、 η= ArcCos[(a-r0cosδ)/R]となります。

2.1.5 循環量Γ 循環量Γは、揚力の重要な要素です。以下となります。

)sin(4 RU )11.1.2(

上式から分かりますように、循環量は流体速度U、円の半径R(従って翼の大きさ)、流体と翼とのなす角度α、及び翼の反り角度ηに関係します。

2.1.6 揚力 (この場合の揚力は翼面に垂直な方向の力を指します)

単位長さ当りの揚力Lは、流体密度ρ、流体速度U及び循環量Γを用いて以下となります。

)sin(4 2 RUUL )12.1.2( 13

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右図は、平板と流体に30度の傾きがある場合の流線を示しています。左斜上方(翼先端)から右斜下方(翼後端)に掛けて流線間隔が混んでいる

場所が見えます.流れが速いことを示しています。従って、平板上下面で圧力差が生じ、右斜上方に力が作用し、揚力が生じていることが分かります。

⇒このことは、バルサ飛行機の様な平板翼でも、迎角を付ける事により、揚力が生じ、飛行可能となります。

右図は、流線を示しています。平板と流体(空気)

の流れが平行である事より、流線の間隔は、上下面で対称であり、従って、圧力差が生じなく、揚力が生じないことが分かります。

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2.2 各翼の流線の検討

本節では、前節にて検討したジューコフスキー変換結果を用い、各翼の定性的な特徴を検討します。

2.2.1 平板翼の流線

(1)平板と流体が平行である場合

図2.2.1 平板の流線 (角度無し)

(2)平板と流体に30度の傾きがある場合

図2.2.2 平板の流線 (角度30度)

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2.2.2 一般翼の流線

(2)一般翼と流体に30度の傾きがある場合

右図は、一般翼と流体が平行である場合の流線を示しています。円の上方に流線間隔が若干混んでいる場所が見えます.流れが速いことを示しています。従って、翼上下面で弱い圧力差が生じ、上方に力が作用し、揚力が生じていることが分かります。これは、図2.1.10に示す様に、一

般翼では上に凸の反りが有り、それにより、一般翼と流体に角度差が無くとも、揚力が発生します。この点が、平板翼との違いです。 図2.2.3 一般翼の流線 (角度無し)

(1)一般翼と流体が平行である場合

右図は、一般翼と流体に30度の傾きがある場合

の流線を示しています。翼先端の左斜上方から右斜下方に掛けて流線間隔が混んでいる場所が見えます.流れが速いことを示しています。従って、平板と同様、翼上下面で圧力差が生じ、右斜上方に力が作用し、揚力が生じていることが分かります。

図2.2.4 一般翼の流線 (角度30度) 15

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2.2.3 逆一般翼の流線

(2)逆一般翼と流体に30度の傾きがある場合

右図は、逆一般翼と流体が平行である場合の流線を示しています。翼の下方に流線間隔が若干混んでいる場所が見えます.従って、翼上下面で弱い圧力差が生じ、下方に力が作用し、下方向に揚力が生じていることが分かります。これは、一般翼と反対に下に凸の反りが有り、それにより下方向への揚力が発生しています。このため、この状態を維持すると、飛行機は地面に墜落してしまいます。 図2.2.5 逆一般翼の流線 (角度無し)

(1)逆一般翼と流体が平行である場合

右図は、逆一般翼と流体(空気)に30度の傾きが

ある場合の流線を示しています。翼先端の左斜上方に流線間隔が混んでいる場所が見えます.一般翼や平板程の混み程では無いですが、翼上下面で圧力差が生じ、右斜上方に力が作用し、揚力が生じていることが分かります。⇒背面飛行の可能性を示唆しています。

図2.2.6 逆一般翼の流線 (角度30度) 16

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2.2.4 円弧翼の流線

(2)円弧翼と流体に30度の傾きがある場合

図2.2.7 円弧翼の流線 (角度無し)

(1)円弧翼と流体が平行である場合

図2.2.8 円弧翼の流線 (角度30度) 17

右図は、円弧翼と流体が平行である場合の流線を示しています。一般翼と同様、円の上方に流線間隔が若干混んでいる場所が見えます.流れが速いことを示しています。従って、翼上下面で弱い圧力差が生じ、上方に力が作用し、揚力が生じていることが分かります。これは、図2.1.8に

示す様に、円弧翼では上に凸の反りが有り、それにより、円弧翼と流体に角度差が無くとも、一般翼と同様、揚力が発生します。この点が、平板翼との違いです。

右図は、円弧翼と流体に30度の傾きがある場合

の流線を示しています。左斜上方から右斜下方に流線間隔が混んでいる場所が見えます.流れが速いことを示しています。従って、一般翼と同様、翼上下面で圧力差が生じ、右斜上方に力が作用し、強い揚力が生じていることが分かります。

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2.2.5 対称翼の流線

図2.2.9 対称翼の流線 (角度無し)

(1)対称翼と流体が平行である場合

右図は、対称翼と流体に30度の傾きがある場合

の流線を示しています。左斜上方から右斜下方に流線間隔が混んでいる場所が見えます.平板翼と同様、翼上下面で圧力差が生じ、右斜上方に力が作用し、揚力が生じていることが分かります。

図2.2.10 対称翼の流線 (角度30度) 18

(2)対称翼と流体に30度の傾きがある場合

右図は、対称翼と流体が平行である場合の流線を示しています。対称翼はその名の通り、中心線(X軸)に対して、対称であり、かつ翼と流体の

流れが平行である事より、流線の間隔は、上下面で対称です。従って、圧力差が生じなく、揚力が生じないことが分かります。

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2.2.6 楕円翼の流線

(2)楕円翼と流体に30度の傾きがある場合

右図は、楕円翼と流体が平行である場合の流線を示しています。対称翼と同様、翼が中心線(X軸)に対して、対称であり、かつ翼と流体の流れ

が平行である事より、流線の間隔は、上下面で対称です。従って、圧力差が生じなく、揚力が生じないことが分かります。

図2.2.11 楕円翼の流線 (角度無し)

(1)楕円翼と流体が平行である場合

右図は、楕円翼と流体に30度の傾きがある場合

の流線を示しています。対称翼と同様の挙動が得られ、斜上方に力が作用し、揚力が生じていることが分かります。

図2.2.12 楕円翼の流線 (角度30度) 19

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2.3 各翼の揚力の比較

前節迄において、揚力について検討しました。本節においては、平板翼、一般翼、逆一般翼等の揚力を流体と翼とのなす角度をパラメータにして比較しました。

平板翼 一般翼 逆一般翼 円弧翼 対称翼 楕円翼

翼面積 m^2 512 512 512 512 512 512

流体と翼のなす角度=0度

翼面と垂直方向の力

0 234 -234 331 0 0

機体鉛直方向揚力

0 234 -234 331 0 0

流体と翼のなす角度=2度

翼面と垂直方向の力

116 350 -118 447 116 116

機体鉛直方向揚力

116 350 -118 446 116 116

流体と翼のなす角度=10度

翼面と垂直方向の力

578 808 346 902 578 578

機体鉛直方向揚力

570 795 341 888 570 570

表2.1 各翼の揚力の比較 (単位:ton・重)

20

解析条件:実際の商用ジェット旅客機の飛行条件に近い以下の数値を使用しました。 空気密度ρ= 0.2552 kg/m^3, (0℃、150 torr)、巡航速度U= 250 m/s (900 km/h)、 翼面積≒510m^2、翼迎角= 2度 (参考:ボーイング787-9型機の最大離陸重量は244.94 ton重)

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表2.1から、以下の事が分かります。

(1) 平板翼でも流体と翼の角度が2度有れば、商用巡航速度で飛行すればかなりの揚力(一般翼の約1/3)が得られます。

(2) 一般翼では流体と翼の角度が0度(平行)でも、機体重量を持ち上げられる程の揚力が得られます。

(3) 揚力は速度の二乗に比例するので速度に非常に敏感ですが、流体と翼の角度が小さい場合、角度に敏感となります。

(4) 逆一般翼の場合(一般翼の飛行機が背面飛行した状態)、流体と翼の角度が0度(平行)の場合、一般翼の場合と逆向きの力が作用し、機体は落下します。

(5) 逆一般翼と流体の角度が10度の状態では、機体を浮上させるに十分な揚力が生じます。

(6) 以上より、商用ジェット旅客機でも背面飛行は可能であることが分かります。(実際に飛行するか否かは別問題ですが。)

(7) 円弧翼では、一般翼と同様、流体と翼の角度が0度(平行)でも、機体重量を持ち上げられる程の揚力が得られます。

(8) 対称翼及び楕円翼では平板翼と同様の挙動が得られます。

21

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2.4 飛行安定性等の検討

0 5 10 15 200

2

4

6

8

Xcg

Xnp

Sh

Lh

Lv

Sv

側面図

0 5 10 15 200

5

10

15

20

平面図

MAC

b

記号説明

:機体重心位置

Xcg:機首先端からの重心距離

Xnp:機首先端からの中性点距離

Lh :水平尾翼モーメントアーム

Lv :垂直尾翼モーメントアーム

Sh :水平尾翼面積

Sv :垂直尾翼面積

MAC :平均空力翼弦(Mean

Aerodynamic Chord),平均翼弦C にほぼ等しい)

b :翼幅

S : 主翼面積

C :平均翼弦 (= S/b)

2.4.1 機体の概要と記号

主翼

水平尾翼

垂直尾翼

22

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2.4.2 安定余裕度 SM (Stability Margin)

飛行機の安定飛行の要因には色々挙げられますが、その中の重要なものとして、重心位置Xcgと中性点位置Xnpの関係が有ります。安定余裕度 SMは、設計した機体が外部の擾乱に対し

てどの位安定して飛行できるかを示す指標で、重心位置、中性点位置を用い、以下に示す式で与えられます。(中性点については後述します。)

)1.4.2(

c

XXSM

cgnp

SMが負、即ち、重心位置が中性点位置の後方に有る場合、機体は不安定飛行状態となり、失速状態や墜落状態になりやすくなります。 このため、SMを正の値にする必要がありますが、大きくし過ぎる(例えば0.3以上)と、機体のスピードが大きくなった場合、機首上げして失速する可能性が大きくなります。そのため、SM=0.05位が良いとされています。

ここに、c= 主翼の平均翼弦 (= S/b)

2. 4.3 水平尾翼

水平尾翼の目的は、機首の上げ下げ(Pitching)を抑制・制御するものです。商用飛行機と違い、バルサ飛行機の様な単純なものでは、昇降舵(エレベータ:elevator)が無いですので、ある程度最適値の寸法を求めることが必要です。

以下の安定余裕度 SM 等の検討においては、 http://ocw.mit.edu/courses/aeronautics-and-astronautics/16-01-unified-engineering-i-ii-iii-iv-fall-2005-spring-2006/systems-labs-06/spl8.pdf を参照しました。

23

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上記中性点 Xnp は、水平尾翼及びそのモーメントアームLv (重心位置からの距離)に影響を受けます。水平尾翼の性能を定量的に示すために、水平尾翼容積Vhが定義され、それは、以下で与えられます。

)2.4.2(

cS

LSV hh

h

飛行実績から、良く飛ぶ飛行機の水平尾翼容積Vhは、0.30~0.60の間の数値が良いであろうとされています。

(1) 水平尾翼容積 Vh

水平尾翼容積Vhが余りに小さい場合は、飛行機のピッチ挙動が重心位置に非常に影響されるものとなり、突風や失速に対する抗力の低下や、ピッチ制御が困難なものとなります。

(2) 水平尾翼の空力翼弦 th

)3.4.2()(3

)2)((

10

1010

1tt

tttttth

空力平均翼弦thは左図のようにして幾何学的に求められますが、以下の式で与えられます。

ここに、t0:中央翼弦、t1:翼端の翼弦 (但し、t0>t1)

上式は、左図において、中央翼弦の中点をO、翼端の翼弦の中点をO’とすれば、三角形AOCとBO’Cが相似形になることから、求められます。即ち、いま翼幅をLとすれば、以下が成り立ちます。

24

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)4.4.2(:)2

()2

(:)2

( 21

02

0

1 lt

tlLt

t

ここに、l2:線分CO’の長さ

)5.4.2(2)(3

)2(

10

10

2

L

tt

ttl

これより、l2は以下で与えられます。

式(2.4.6)に式(2.4.5)を代入することにより、式(2.4.3)が得られます。 ちなみに、水平尾翼が並行であれば、th=t0、三角翼(t1=0)であれば、th=2t0/3となります。

)6.4.2()(

1

210 tttL

lttt h

また、C点におけるt/2とt1/2との差をΔtとすれば、 の関係が成り立ちますので、Δtは以下で与えられます。

空力翼弦については、森照茂氏著の「増補改訂 模型飛行機 (理論と実際)」電波実験社1979年刊を参照しました。

25

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2.4.4 中性点 Xnp

中性点 Xnp は、水平尾翼の諸量にも影響を受けます。以下のフィッティング式が用いられています。

)7.4.2(2

41

21

21

4

1

hV

AR

hAR

AR

c

npX

ここに、AR= 主翼アスペクト比、ARh = 水平尾翼アスペクト比、 c= 主翼の平均翼弦

中性点 Xnp が決定されると、安定余裕度SMを用いて、重心位置Xcgが決まります。このため、主翼単独の重心位置を全体の重心位置Xcgに合わせるようにしますと、安定的な飛行が可能となります。

2.4.5 垂直尾翼容積 Vv

垂直尾翼の主目的は、機体の左右揺れ(yawing)を抑制することです。垂直尾翼の性能を示すものとして垂直尾翼容積 Vv の指標が有ります。これは以下の様に定義されます。

)8.4.2(

bS

LSV vv

v

記号については、2.4.1を参照ください

飛行実績から、良く飛ぶ飛行機の垂直尾翼容積Vvは、0.02~0.05の間の数値が良いであろうと

されています。 もしこの数値が極端に小さい場合は、ダッチロールの様な左右への大きな振動となると言われています。

26

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2.5 主翼設計

主翼の主目的は、機体の上昇をもたらす揚力の生成です。 ここでは、多段翼を設計するために、重心位置を計算する方法を検討しました。

2.5.1 矩形の重心の算出

中心線 d1

L1 L2

1,)( 12

1d

LLaaxLxy

ここに

左図の様な矩形が有るとします。この図形は中心線をはさんで対象であるとし、説明の都合上、諸寸法は片側のみのものとします。 紙面の上側をY軸、横軸をX軸とします。 高さを位置 x の関数としてy(x)とすると、以下となります。

位置xにおける微小距離dxにおける矩形の面積ds及び面積Sは以下で与えられます。

2/1)()(*)()( 21

1

0dLLxdsSdxxyxds

d

但し、L2≦L1とします。

(2.5.1)

(2.5.2)

27

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材料の厚みをdpとし、密度をρとすれば、位置xにおける質量dw及びモーメントdmは以下で与えられます。(但し、密度は一様とします。)

dpdsxdwxdm

dpSdwWdpdsdwd

*,1

0

ここに、dw:xにおける微小質量

故に全モーメントMはxを0からd1まで積分すれば得られます。

]32

[

}{

*)(

3

1

2

11

1

1

0

1

0

1

0

dadLdp

dxaxLxdp

dxxyxdpdmM

d

dd

故に重心Cgは以下で与えられます。

)/(]32

[2/ 21

2

111 LLdadL

WMCg

(2.5.3)

(2.5.4)

(2.5.5)

28

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2.5.2 多段翼接合時の主翼重心の算出

1個の矩形の重心の算出を応用して、以下のようにして主翼全体の重心を算出します。

機体

中心線

2 3

4 5

1

DD4

Cg4

n

i

n

i

Wi

WiDDiCgiCg

1

1}{

n: 材料接合数、 Cgi: i 番目の材料単独の重心位置、 DDi:i 番目の材料の左端の全体からの距離、 Wi: i 番目の材料単独の質量

(2.5.6)

29

ここに、

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3. 計算手順

より良く飛ぶ飛行機を制作するため、前章までに説明した諸量を満たす寸法を、コンピュータにて簡単に求められるようにプログラムを作成しました。

計算では、オリジナル寸法による飛行性能と、最適寸法を求められるようにオプションにて選択できるようにしています。

最適寸法計算においては、機体長、錘、主翼の形状はオリジナル寸法を維持し、垂直尾翼長、面積、及び水平尾翼長、面積をパラメータとして計算しました。

3.1にて、デフォールト値、3.2にて計算の全体の流れ、3.3にて最適計算の詳細流れを示しています。

30

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3. 1 デフォールト値

No. 材料名 密度(g/cm^3) 備考

1 檜材 0.47 機体、前縁、補助材に使用

2 バルサ1 0.10 主翼、尾翼に使用(商品に拠り、バラツキが有ります。) 3 バルサ2 0.18

4 エナメル 0.96 塗料

5 木工ボンド 1.02 接着材

6 アロンアルファ 1.05 瞬間接着材

7 テープ 0.016 主翼の固定用 単位は(g/cm^2)

8 板鉛 11.34 錘用

9 空気 1.184x10-3 25℃, 760mmHg

10 新M型主翼 (大型) (nwing=1) 主翼長=30 cm

11 P型主翼 (中型) (nwing=2) 主翼長= 22 cm

12 U型主翼 (改良中型) (nwing=3) 主翼長= 22 cm

13 VV型主翼 (中小型) (nwing=4) 主翼長= 20 cm

14 V型主翼 (小型) (nwing=5) 主翼長= 17.6 cm

31

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Yes

No

最適計算?

主翼位置の再設定

安定余裕度を設定し、水平尾翼、垂直尾翼のアスペクト比から長さ、面積を計算

重心位置、垂直、水平尾翼容積、質量、モーメントアーム等の計算

前回主翼位置と今回主翼位置との差

No

Yes

Yes

End

収束OK ?

No Start

機体諸量(機体長、主翼、尾翼長等)の入力

入力値の妥当性チェック

妥当?

デフォルト値(バルサ材、接着剤、塗料の密度)、主翼の種類等の設定

オリジナル寸法による多段主翼の面積、体積、質量等の計算

機体、尾翼の面積、体積、質量等の計算

オリジナル寸法による安定性、垂直、水平尾翼容積、モーメントアーム等の計算及び出力

3. 2 計算の全体流れ

計算結果の出力と図形出力

32

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Start

sh= (widhorc + widhore)/2 * lhor, widhorc=水平尾翼中心翼弦, widhore=同末端翼弦

lhor= arh * tt, arh=水平尾翼アスペクト比、 tt=空力平均翼弦

abarh=|arh2/arh1| arh1:前回計算時のアスペクト比、arh2:今回の計算値 abarh>1.1⇒arh2= arh1*1.1, abarh<0.9⇒arh2= arh1*0.9 arh= arh2

sv= sm*lmain*recv/mar2, sm=主翼面積, lmain=主翼長, recv:垂直尾翼容積目標値, mar2=モーメントアーム

lver= sv/widverr,

(A)

3.3 最適計算の詳細流れ

1

主翼中心位置Pmainの再設定

垂直尾翼の表面積SVの設定

垂直尾翼の高さlverの設定

水平尾翼のアスペクト比arh2の

設定

水平尾翼の長さlhorの設定

水平尾翼の表面積Shの設定

33

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垂直尾翼の高さのチェック

水平尾翼の高さのチェック

各部の表面積、体積、質量の計算

各部のモーメント計算

重心位置 cg の計算

mar1= mar2, mar1:前回計算モーメントアーム mar2= Leng - widhorc/2 – cg dmar= mar2-mar1 (前回計算との差)

cg= tm / tw

tm = m1 + m2 + ……. + m7 , tm=機体先端における総モーメント

sa1,sa2,…..sa7, v1, v2,…….v7, w1=v1*ro1, tw = w1+w2+ …..+w7 , tw=総質量

lhor>limhu ⇒ lhor=limhu, sh= sh1, sh1=(widhorc+widhore)/2*limhu lhor<limhl ⇒ lhor=limhl, sh= sh2, sh2==(widhorc+widhore)/2*limhl

lver>limvu ⇒ lver=limvu, sv= widverr*lver lver<limvl ⇒ lver=limvl, sv= widverr*lver

sh1, sh2は固定値

モーメントアームmar2の計算

34

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fl= cl*airdens*ubody^2 *sm* 0.001/2

gb= tw *0.001 *grav

ew= pmain- widmainc/2, xx=cg – ew, rwg= xx/widmainc

vh=sh*mar/sm/tt, vv=sv*mar/sm/lmain

stmt= ¼ + {(1+2/arm)/(1+2/arh)}*[1-4/(arm+2)]*vh - rwg

darh=arh2- arh1

dstmt= stmt – stmt1, admst= |stmfix - stmt|

揚力flの計算

重力gbの計算

主翼前縁ew、主翼重心xx、翼幅比rwgの計算

垂直尾翼容積Vv、水平尾翼容積Vhの計算

安定余裕度stmtの計算

水平尾翼アスペクト比の差分darh計算

安定余裕度の差分dstmtと目標値との差分admstの計算

35

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Pmain<0. エラーメッセージの出力と計算の停止

計算の無事終了

Yes No

定数の保存 stmt2=stmt, arh1=arh2, arh2=arh2-dstmt*0.5

|darh|<judarh

Yes

No stmt1=stmt, judarh=水平尾翼収束判定値

admst<judstm

Yes

No dpmain= (stmfix-stmt)/stmfix * 0.9 pmain= pmain + dpmain Judstm=安定余裕度収束判定値

各諸量の出力

図形処理 End

収束オーバー

計算の失敗

Yes

No

(A)へ行く

36

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3.4 最適計算の事例

0 5 10 15 200

5

10

15

20

0 5 10 15 200

5

10

15

20

0 5 10 15 200

1

2

3

4

5

6

7

0 5 10 15 200

1

2

3

4

5

6

7

機体重量:6.05 g, 安定余裕度SM:0.05 重心位置:8.74 cm, 中性点位置:8.94 cm モーメントアーム:13.01 cm 垂直尾翼高:1.59 cm,容積Vv= 0.055 水平尾翼長:6.36cm,容積Vh= 0.9

機体重量:6.15 g, 安定余裕度SM:-0.45 重心位置:6.46cm, 中性点位置:4.64 cm モーメントアーム:15.29 cm 垂直尾翼高:2.00cm,容積Vv= 0.081 水平尾翼長:7.5cm,容積Vh= 1.25

機体長:23 cm, 錘:1.0 g 主翼長:20 cm 中央翼弦: 4 cm, 末端翼弦: 2 cm 主翼面積:65.9 cm^2 主翼厚:0.2 cm 垂直尾翼中心幅=2.0 cm 垂直尾翼末端幅=1.5 cm 水平尾翼中心幅=2.5 cm 水平尾翼末端幅=2.0 cm

最適設計結果 オリジナル寸法の設計

37

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4. 発射台の制作

一般にハンドランチング(Hand Launching)では、発射台は不要ですが、発射から、ビデオ撮影まで一人で遣るには、どうしても発射台が必要となります。 と言う事で、安くて軽くて操作のし易い発射台を念頭に制作しました。

4.1 材料

No. 材料名 数量 値段 備考

1 板 (90cmx3cmx0.5cm) 3枚 300円 杉材を使用しました。(軽い物であればOK)

2 六角ナット W 1/4 100円 1/4インチ、カメラ三脚のネジに対応 (1個あればOK)

3 真ちゅうヒートン 100円 輪ゴム止め用 (4個必要)

4 くさり (1メートル) 150円 飛行機止め用

5 木ネジ (3ミリx12ミリ) 100円 発射台組立用

6 輪ゴム 100円

7 瞬間接着剤 100円 丸形ワッシャ及び六角ナット の接着

8 丸形ワッシャ 100円 板と六角ナット の間に使用します。(1枚あればOK)

9 ダブルクリップ 1個 飛行機止め用

38

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4. 2 発射台制作手順

(1) 先ず、板を3枚、コの字に組合せ、ネジで止めます。その際に錐で予め穴を開けます。(板厚が5ミリで合った性か、3ミリのネジを通した時に、板が割れた個所が有り、瞬間接着剤で埋めました。)

(2) 発射台の中心を測り、底板に丸形ワッシャを接着します。

(3) 丸形ワッシャの部分に、六角ナットを接着します。

(4) 真ちゅうヒートンを左右先端、後端に1個づつ、計4個取り付けます。

(5) 輪ゴムを編み(今回、3本1組で5段編成)、先端の真ちゅうヒートンに掛けます。

(6) くさりを50センチ位に切り、後端のヒートンに掛けます。(後端のもう一方のヒートンはくさりの長さ調整に使用します。)

(7) くさりの先端にダブルクリップを接続します。これで完成です。

39

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4. 3 発射台制作写真

台を上から見た所

台を横から見た所 (カメラの三脚

を接続した所)

後端を横から見た所 (くさりが約50セン

チ有り、真ちゅうヒートンで長さを未調整の場合)

バルサ飛行機を装荷した所 (真ちゅうヒートンで 長さを調整後)

長さ調整部分の写真 (2つ有るヒートンの一方

にくさりを掛けて、長さを調整します。)

40

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4. 4 発射台の設定について

本項については、雲台が古いタイプで2次元的にしか動かない三脚をお持ちの方への参考資料です。(雲台が3次元的に可動な三脚をお持ちの方はスキップしてください。)

設定迎角 θ1

設定ロール角 θ2

仮想延長雲台方向

発射台設定方向

雲台

(1)目標迎角=45度、目標ロール角=0度 設定迎角=45度、設定ロール角=0度

(2)目標迎角=45度、目標ロール角=45度 設定迎角=63.6度、設定ロール角=45度

(3)目標迎角=45度、目標ロール角=75度 設定迎角=87.5度、設定ロール角=59度

(4)目標迎角=0度、目標ロール角=45度 水平発射 設定迎角=45度、設定ロール角=90度

(5)目標迎角=0度、目標ロール角=75度 水平発射 設定迎角=75度、設定ロール角=90度

目標迎角(θp)とは水平面に対する飛ばしたい発射角度で、目標ロール角(θr)とは、機体の中心軸に対する傾きを示します。(後述5.3の表では「左右角度」と表示) 設定迎角(θ1)とは、三脚雲台の水平面に対する角度で、設定ロール角(θ2)は、仮想延長雲台に対する発射台の設定角度です。 これらの関係は以下の式となります。(但し、角度はラジアンです)

)1.4(][

],[2

12

Cos

ArcTan p

p

r

41

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5 制作機

左の飛行機群は、小生が制作したものです。 大型機、中型機、中小型機、小型機の4種類です。 制作にあたっては、以下の点に留意しました。

(1)着地時に主翼を傷めないように、2mm角の檜材の前縁部を全ての飛行機に取りつけました。

(2)流体抵抗減少及び飛行安定性の為、後縁が直線の多段翼を採用しました。

(3)空中での反転性を良くするため、垂直尾翼に双尾翼を採用しました。 (4)飛ばす場所の大きさに制限が有りますので、直進的に飛ぶことを

目指すのではなく、ブーメランの様に戻ってくるように、垂直尾翼に角度を付けて方向舵の役目を持たせました。

(5)朝露や霜の付着による主翼の濡れを防ぐため、エナメル塗料を使用しました。

(6)主翼位置を動かして最適位置の調整を容易にするため、主翼の底部に主翼の長さより前後で各1 cm程度長い取付部を設け、それを機体に接合し、テープで固定する方法を採用しました。

5.1 制作に当たっての留意点

42

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M-02機、翼長30cm、機体長30cm 大型機

P-02機、翼長22cm、機体長27cm 中型機

V-03機、翼長20cm、機体長22cm 中小型機

W機、翼長17.6cm、機体長20cm 小型機

5.2 4種類の飛行機

43

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5.3 制作機の諸量

小生が制作した飛行機の諸量を以下に示します。 機体全体の所の比は、機体長に対するモーメントアームの比を示します。 水平尾翼の所の尾主翼比は、主翼面積に対する水平尾翼面積の比を示します。 重量の所の錘比は、機体全体の重さに対する錘の比を示します。

44

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6. 考察

(1) コンピュータプログラミングにより、最適寸法によるバルサ飛行機の制作が可能となり、それを基に実際に種々の飛行機を制作しました。飛行テストを行い、多くの貴重なデータを得ました。その結果、計算上の主翼(前縁)位置、重量等、ほぼ予期したような性能を得ることが出来ました。

(2) 制作が終わっても、直ぐに意図した飛行性能が得られるわけではありませんので、調整方法として、今回、主翼の位置を前後に動かす方式を用いました。具体的には、主翼の底部に主翼の長さより前後で各1 cm程度長い取付部を設け、それを機体に接合し、テー

プで固定する方法です。飛行特性を見て毎回、剥しては接合する遣り方により、最適位置が見つかりました。この方法は主翼を最初から機体に固定して錘の重量で調整する遣り方に比べて簡便だと思います。

(3) 制作上の不確かさ(左右の翼角度(上半角)の制作、接着剤の量の管理)に課題が見つかりました。今後改善が必要です。

―上半角の制作においては、簡単なジグを作り、左右の翼角度(上半角)を同じになるように寸法を管

理したつもりでしたが、実際には微妙な角度のずれが有り、どちらか一方に偏った飛行になるものが有りました。翼角度を目標角度に設定できるしっかりとしたジグの必要性を感じました。

―接着剤の量の管理が不十分で、理論重量をオーバーするものが有り、これについては、接着剤を注入する方法で解決できないかと考えています。(接着剤の注入口を上向きにし、重力落下による意図しない量の注入を防止する。)

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