マレーシア国 農業農村開発分野における協力の方向...1 マレーシア国...
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資料-5-6
マレーシア国
農業農村開発分野における協力の方向
1. 背 景 -------------------------------------- 1
2. 農業農村の現状 ------------------------------- 2
(1) 食糧安全保障 ----------------------------- 2
(2) 土地利用 --------------------------------- 4
(3) 水資源 ----------------------------------- 5
(4) 人的資源 --------------------------------- 7
3. これまでの協力実績 --------------------------- 8
4. マレーシア国の農業農村政策と我が国の国別援助計画 -- 10
(1) マレーシア国家開発計画 ------------------- 10
(2) 我が国の国別援助計画 --------------------- 10
5. 農業農村開発分野の主要課題と協力の方向--------- 11
1
マレーシア国
1.背 景
〇 米が主食であるマレーシアにとって米の自給達成は独立当時か
らの悲願であると同時に、特に農村部で多いとされた貧困の解消も
重要な政策課題であった。 〇 マレーシアは 1970 年以降、社会目的に合致しためざましい経済
成長を遂げるとともに、各種の稲作保護政策や普及・研究制度の法
制化が図られ、水稲二期作の導入、技術革新及び稲作補助政策によ
り稲作の収益性を高め、貧困層であった稲作農民の所得向上に寄与
してきた。 〇 マレーシアは、過去 30 年間、世界の経済成功物語の一つとなっ
てきた。すなわち、1人当りの GDP は 1970年の 342㌦から 1997年には 4,316 ㌦に上昇し、貧困率は 1970年の 38%から 1995年の
15%まで低下した。(世界食糧農業白書 1998年版) 〇 無償資金協力は原則として文化無償及び草の根無償のみを実施。 〇 有償資金協力は 1994年を最後に通常の円借款を卒業。
1957 年 マラヤ連邦独立 1963 年 マレーシア連邦成立 1965 年 シンガポールが分離独立 1967 年 農民組合法 1970 年代 経済近代化政策(民間主導型開発)とプミプトラ政策(貧
困対策と経済的不均衡是正)等により工業化が急速に発展。 1973 年 基本米価制度(1949~73)から最低価格保障制度へ 1984 年 国家農業政策大綱 1986 年以降 外貨の積極的な導入による輸出指向型工業化政策を推進
し、高度成長を達成。 1992 年 第2次農業政策(1992~2010 年) 1995 年 国家穀物庁の公企業化、1997年には民営化 【国民一人当りGDP及び人間開発指数の推移】
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US $
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一人あたりのGDP
人間開発指数
出典:World Development Indicator 2001 FAOSTAT
UNDP HUMAN DEVELOPMENT REPORT 2001
2
2.農業農村の現状
(1)食糧安全保障
〇 マレーシアの農業生産高において、1995 年の農業の総付加価
値では、ゴム、パーム油及びカカオ豆の永年作物が 57%を占め、
食料品は 21%で、米は僅か 4%であり、稲作は、主要穀物である
にもかかわらず地位は低く、地域的にも限定されている。 〇 米については、第2次国家農業政策(1992~2010年)の中で、
8 ヶ所の大規模穀倉地帯を恒久の米生産地帯に指定するとともに、
最低 65%の自給率を実現することとしている。
【米の需給状況】
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人
生産量(1000t)
消費量(1000t)
人口(1000人)
出典:FAOSTAT
【米の自給率等】
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一人当り消費量
米自給率
出典:FAOSTAT
3
〇 さらに、効率的な米生産のため、集団営農による商業ベースの
大規模経営、エステート形式生産システムの導入を支持するとし
ている。 【穀倉地帯】
【半島マレーシア8大穀倉地帯】
【半島部マレーシアにおける稲作とゴム植栽地の分布】
出典:「発展途上国の農業問題」1993年
出典:農業水利システムの管理 2000.8
分 類 別 の 灌 漑 稲 作 地 の 分 布分 類 A . 主 要 穀 倉 (割 合 )(8灌 漑 事 業 ) 212,497 62% 1.ムダ農業開発公団(MADA) 97 ,000 2.クリブ農業開発公団(K A D A ) 31 ,477 3.クリアン・スンガイマニク灌漑地域 30,058 4.北西スランゴール(タンジョン・カラン計画) 19,022 5.ペナン(スブラン・プライ地域) 13,000 6.スブラン・ペ ラ 灌 漑 地 域 9,510 7.クマシン・スマラク灌漑地域 7,330 8.ブスット灌漑地域 5,100B.2次的穀倉(74灌 漑 事 業 ) 28,441 8%C . 小 穀 倉(172灌 漑 事 業 ) 47,653 14%D . 穀 倉 以 外 の 地 区 54,028 16%
灌 漑 稲 作 地 合 計 342,619 100%出 典 :東 南 ア ジ ア の 技 術 協 力 を め ぐ る 諸 問 題 1996.2
総 稲 作 地 (ha)
4
(2)土地利用
〇 マレーシアは、半島部の 11 州とボルネオ島のサバ州とサラワ
ク州(東マレーシア)の全 13州からなっている。
〇 国土面積 33万 km2 のうち 60~70%がジャングルで占められ
ており、農地面積は 789万 ha で、うち水稲栽培面積は、半島で
約 41万 ha、東マレーシアで約19万 ha、全体で約 60万 ha であ
る。灌漑水田は圧倒的に半島部に多く、総灌漑水田のうち 91%が
半島部に存在する。 〇 1957 年の独立達成後、マレーシアは、その比較的豊富な未開
発土地資源を農村貧困者の所得配分および福祉改善の手段とし
て利用してきた。土地割当計画の目的は、自給用作物ではなく、
輸出用換金作物―ゴム、油やし及び後にはカカオ豆―の栽培によ
って、貧困農民に所得機会を提供することであった。
〇 近年、マレーシア政府は、主要灌漑地帯に水稲生産を集中させ、
その他の生産性の低い地域については、アグロフォレストリー等、
他の利用形態に転換することとしている。 〇 近年の工業等の発達による農村部から都市部への労働力の移
動等により、農業労働力の減少・高齢化によって各地で耕作放棄
地や不作付地が増加している。全体の水田面積約60万 ha のうち
約 9万 ha は耕作放棄田となっている
【土地利用区分推移】
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[1000ha]
その他
森林・林地
農地面積
【主要作物の収穫面積の推移】
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1961 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 1999 2000 2001
[1000ha]
主な果物
野菜
天然ゴム
主な油脂作物
キャッサバ
米
出典:FAOSTAT 【第一次産業従事者の年齢構成】
出典:Department of Statistics. Laporan Am Banci Penduduk
1980; Laporan Am Banci Penduduk 1991
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(3)水資源
〇 年間降雨量は 2000~2500mm と比較的多いものの、蒸発量も
大きく、降雨の季節による変動があるため、乾期作では用水不足
に苦しんでいる地域も多く、年間作付率の向上の阻害要因の一つ。 〇 また、近年の工業化の進展、都市化の拡大により、工業用水・
上水の需要が大きく伸びて農業用水需要と競合を起こし、このこ
とが都市近郊の穀倉地帯における農業用水不足に拍車。 〇 大規模穀倉地帯における水田灌漑管理は、水源から末端水路ま
での管理を行政機関が統一して行い、農家自身による管理はほぼ
自分の水田の水口だけであることが特徴。 ○ 大規模灌漑事業の最初の提案は、1889年にはPerak州のKiran
でなされ、1899年に事業を開始し、1906年に完成している。1932年の排水灌漑局の設立により、稲作推進のための灌漑排水システ
ム整備に向けた体制が整備。 〇 1957 年の独立後、灌漑開発における主眼は、農家の所得向上
と農村民の雇用機会の創設に移り変わった。それまで単作だった
ところで 2期作を行い、米の増収を図ることにより収入を増大。 〇 過去には、米増産政策に沿って大規模穀倉地帯を中心に水資源
施設、水田灌漑排水施設等の整備が進められてきたが、現在は新
規の大規模穀倉地帯等の開発は行われておらず、灌漑排水事業は
大規模穀倉地帯内の既存施設の建設、整備等が中心になっている
ことから、総灌漑面積の拡大は止まっている。全水田面積のうち、
灌漑施設がある水田は約 57%で、総灌漑水田のうち 91%が半島
部に存在。
【灌漑施設の管理】 出典:「農業水利システムの管理」(社)農業土木機械化協会(2000年)より抜粋 【灌漑面積の推移】
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耕地面積
灌漑面積
灌漑率
出典:FAOSTAT
8ヶ所の大規模穀倉地帯のうち、ムダ農業開発公社が管理するムダ地
区、ケムブ農業開発公社が管理するケムブ地区等を除いて、6ヶ所の
大規模穀倉地帯の灌漑管理は農業省灌漑排水局の各州事務所で行っ
ている。 ムダ農業開発公社、ケムブ農業開発公社、灌漑排水局ともに、上流か
ら末端までの管理を行うために必要な多数の職員・組織を持ってい
る。また、水管理に必要な経費は、一部、土地に応じた負担金的なも
のが徴収されているが、実際の管理経費に較べて少額であり、管理費
の大部分は行政の負担となっている。
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【農業排水】 〇 20世紀までは、稲作を除く農業排水については、ココナツ、ゴム、
その他の作物の地主や小土地所有者が個人的に実施する程度であ
った。 〇 1932 年の排水灌漑局の設立にともない、計画的に排水事業が急
速に進められた。1942 年に約8万 ha の地域で排水事業が行われ、
独立後は進捗が著しく、1975年には総排水面積は 35万 ha に達し
た。1980 年時点で 47.5 万 ha に排水施設が設置されており、この
地域の主な作物はココナツ、ゴム、油やし、香辛料、パイナップル
やその他の商品作物である。 〇 現在、主要な穀倉地帯では米の 2期作が行われているが、その他
の生産性の低い地域の水田においては、他作物への転換を図るため
の排水施設の整備が進められている。 〇 しかし、これらの排水施設の整備は湿地の一次開発が主体と考え
られ、今後、湛水防除、圃場内排水条件の改善ための第 2次的な排
水施設の整備が必要と考えられる。
【農業省排水灌漑局農業排水部の取組み概要】 1.背景 農業排水部は、特に小自作農の農業生産性の向上を通じて、農業
分野の国家開発に貢献する工芸作物や商品作物の開発を支援する
ために、排水計画や設計を行っている。 農業排水地域は、輸出品目である油やし、ゴム、ココナツなどの
産品が栽培されている地域である。これらの地域は排水施設が必要
な海岸沿いの低地滞である。 排水施設整備計画は、農道、排水渠、基幹及び 2次排水路の拡幅
の整備、中規模の道路橋の建設や施設の維持管理が含まれている。 2.目的 ・農産物生産の向上のための農業排水システムの整備と効果的統合 ・工芸作物のための農業排水計画の策定 ・排水調整と環境保全の推進 (出典:マレーシア農業省ホームページより抜粋)
(出典:水管理技術研究会現地調査報告書、H8.4、農用地整備公団)
マレーシアの農地排水は開発途上国としてはかなり進んだ段階にあるとみら
れる。しかし、現在までに整備された排水施設は、湿地の一次開発を狙ったも
のと見受けられ、排水流出口に樋門を備えた自然排水を主とし、排水路密度は
必ずしも高くなく、圃場内水路の整備までは進んでいないものが多い。将来、
湛水防除、排水条件をより完全にし、生産性を上げるためには第 2 次的な排水
施設整備が必要となるものと考えられる。
当国の低平地の多くが下層に泥炭層を持っており、河口、沿岸地域下層には
硫酸酸性土壌があるとされているところが多いことから、沈下、酸性化対策、
土壌処理(改良)などに十分な調査と周到な対策が必要と考えられる。
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(4)人的資源
〇 1996 年半ばにおけるマレーシアの人口 2,120 万人のうち、
1,200 万人がマレー人、530 万人が中国人、150 万人がインド人
であり、また、主として近隣の東南アジア諸国出身の約 130万人
の移住労働者が含まれている。 〇 マレーシアの学校教育は 6‐3‐2制(初等‐前期中等‐後期中
等)である。初等教育の就学率はほぼ 100%、中等教育の就学率
は約 80%であり、高等教育の就学率は約 20%となっている。 〇 高等教育機関は、大学、カレッジ、ポリテクニーク(技術教育
学校、職業教育学校)があり、1990 年代後半の一連の法改正を
経て、私立高等教育機関の拡充等により進学者は急増している。
〇 国立大学の在籍学生数は 1980年約 3万人、1985年約 6万人、
1995年約12万人と増加し続け、2000年には約27万人となった。
分野毎の在籍生徒数は、人文社会科学に約 13 万人、自然科学に
約7万5千人、技術工学に約6万5千人(うち IT 分野に約2万
5千人)となっている。 〇 主に灌漑地区で以下のような近代的生産技術に向けての動き
があり、農業労働が変化した。 ① 1970 年以降稲の二期作を可能にする灌漑施設の発展。 ② 1970 年以降農業機械化の急速な発展。 ③ 人手による田植に代わって直播技術の急速な普及。
〇 省力技術の急速な普及により、農業労働力が都市型雇用へ移動
したほか、農村地域に新産業の立地を奨励する政府の施策の結果
として農業地域でも非農業雇用が増大した。
【総就学率】 出典:UNESCO(2000)ただし、初等の98‐99年、中等の 99年、高等の 99年
はマレーシア教育省(2000)、また、中等の98年、高等の 96‐98は推定
【ムダ農業開発公団事業における稲作技術と労働力】
中等
高等
初等
年次 人時/ha/期1.耕耘 - 40% トラクター
- 60% 水牛2.作付 - 100% 移植3.収穫 - 100% 人手1.耕耘 - 85% トラクター
- 15% 水牛2.作付 - 100% 移植3.収穫 - 100% 人手1.耕耘 - 100% トラクター2.作付 - 21% 直播3.収穫 - 88% コンバイン1.耕耘 - 100% トラクター2.作付 - 95% ~
- 100% 直播3.収穫 - 98% コンバイン4.バラ荷扱い - 19%
生産技術の状況
970
615
261
出典:東南アジアの技術協力をめぐる諸問題 1996
212-潤田直播158-乾田直播137-落粒育生
1970
1974
1982
1991
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3.これまでの協力実績 〇 マレーシアでは、1950~1960 年代において、実に国家予算の 5
割が農業関連予算で占められ、1960 年代には主要穀物地帯の一つ
であるムダ地区では、世界銀行融資により巨大な灌漑用ダムの建設
が行われてきた。 〇 このようにマレーシアでは、早くから農業農村整備が行われてお
り、農業農村開発分野における我が国の協力が実施された 1970 年
代後半には既に施設整備がなされてきていた。 〇 このため、協力をはじめた 1977 年には水管理技術の移転のため
のプロジェクト方式技術協力が実施され、その後、必要な開発調査
及び個別専門家の派遣がなされてきたが、既に一般的な有償資金協
力も卒業国となっていることから、2001 年以降具体的な協力は実
施していない。
【農業農村開発関連協力実績】
出典:農林水産業協力の概要(農林水産省国協課、技協課 2002.11)等 【協力案件】 (1)開発調査 ① 案件名:サバ州東部水資源総合開発計画(1978年)
内 容:サバ州東部キナバタン河流域における水資源開発の調査
及び多目的ダムを核とした開発計画のプレF/S
② 案件名:トレンガヌ沼沢地農業総合開発計画(1979年) 内 容:トレンガヌ州に分布するスワンプを農地として開発し、
州内の貧困家庭を入植させ、収入の増加と生活の安定を
図るとともに、農業振興による経済発展を期するための
農業開発計画のM/P策定
③ 案件名:キナパダンガン川流域総合開発計画(1980~1981 年) 内 容:サバ州東部キナバタン河流域における多目的ダム(洪水、
灌漑、発電)の開発計画のF/S
年度 676869707172737475767778798081828384858687888990919293949596979899000102
開発調査 1 1 1 1 1 1 1無償有償
派遣専門家人数年度 676869707172737475767778798081828384858687888990919293949596979899000102個別 1 2 2 3 1 2 1 1 1 1 1 2 1 1 2 1 1 1 1 1
プロ技 2 3 4 4 3 4 3 3 1 1
農業農村開発分野協力実績
水管理訓練計画プロジェクト方式
技術協力
9
④ 案件名:トレンガヌ南部地域総合開発計画(1981~1985 年) 内 容:半島部マレイシア東岸のトレンガヌ州の南部地域
5,370km2を対象に、2000年を想定した地域総合開発計画
の策定及び優先プロジェクトについてのプレF/S
⑤ 案件名:タンジョンカラン灌漑計画(1986~1987年) 内 容:セランゴール州北西部の海岸地帯のタンジョンカラン灌
漑計画地区 20,000ha の適切な水管理に関する諸問題を
明らかにし、解決策についてのF/S
⑥ 案件名:半島マレーシア小規模貯水池農業開発計画 (1993~1995年)
内 容:マレーシア半島部の小規模溜池開発による潅漑農業開発
基本計画M/P 及び優先地区のF/S
⑦ 案件名:半島マレーシア穀倉地域農業用水管理システム近代化計
画(1996~1998年) 内 容:半島マレーシアの5ヶ所の穀倉地帯を対象にハード、ソ
フトの両面を含めた灌漑用水管理の近代化に係る計画の
策定
(3)プロジェクト方式技術協力 ① 案件名:水管理訓練センター計画(1977~1986 年)
内 容:米増産と農産物の多様化を目的として、水管理訓練セン
ターを建設し灌漑排水局技術者や農民等を対象に水管理
技術を普及
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4.マレーシアの農業農村政策と我が国の国別援助計画
(1)マレーシア国家開発計画
第 3次国家農業政策(1998~2010) ① 国内増産・市場効率化等による食糧供給の拡大 ② 新商品開発・労働力削減・土地利用の効率化による生産性・収
入の改善 ③ 農業技術パーク・培養センター・土地銀行・さらに規制緩和に
よる民間資本の農業部門への参入促進 ④ 市場アクセスの改善・熱帯花卉センターの設立・鑑賞魚生産・
国際市場でのマレーシアブランドの確立等による農産物輸出
の拡大 ⑤ バイオテクノロジー・機械化・持続可能な農業など新しい技術
分野での人材育成
(2)我が国の国別援助計画
我が国の援助の重点分野 ①経済の競争力強化のための支援
・ 製造業の高度化、効率化 ・ IT 分野での支援 ・ マレーシアの賦存資源を活かした経済セクターの育成・強化
② 将来のマレーシアを担う人材育成(高度な知識、技能を備えた
人材の育成) ③ 環境保全等持続可能な開発のための支援 ・ 環境保全 ・ 生活環境の改善
④格差是正に対する支援 ・ 格差是正 ・ 農村部における女性の地位向上
11
5.農業農村分野の主要課題と協力の方向 〇 マレーシア農業は、イギリス植民地時代に規定された農業部門に
おける二重構造―輸出用商品作物を栽培している大規模農園(エス
テート)部門と食料作物の栽培に特化した零細小農部門―が、現在
も依然として存在。 〇 主食である米については、1957 年の独立当時からの悲願であっ
た自給率の達成に向けて水稲2期作の導入のための灌漑施設の整備、
技術革新や稲作補助政策を進め、稲作の生産増大を図るとともに、
貧困層であった稲作農民の所得向上に寄与してきた。 〇 しかし、近年のめざましい経済の成長や産業構造の変化の過程に
おいて、農業部門から工業・サービス業部門への産業間労働力移動
に加え、新規就農者の大幅減により、我が国と同様にマレーシアに
おいても農業従事者の減少・高齢化といった担い手不足が深刻化し、
耕作放棄地・不作付地の増加等の問題に直面している。 〇 また、独自に灌漑排水事業を実施してきている状況にあるが、コ
コナツ、ゴム、油やしなどの商品作物を対象とした排水施設の整備
は、湿地の一次開発を主体としたものであり、今後、生産性の向上
のための排水改良対策が必要となっている。 〇 これらの問題解決に当っては、我が国の経験や技術力等の活用が
有益であると考えられるが、マレーシアは既に国民1人当りのGDPが 3,000 ㌦を越え高中所得国であり、ODA の一般的な無償資金協
力及び有償資金協力とも卒業国となっていること及び教育レベル
が高い状況となっていることから、今後、韓国と同様にアジアの一
員としての相互理解の促進とアジアのパートナーとしての関係を
構築していく必要がある。 〇 このためには、これまで構築した人的・組織的関係を活用し、現
在、我が国が取組んできている APECエンジニアリング及び技術者
教育認定システムへの参画や国際かんがい排水委員会、「水田農業
地域における農業工学の技術者育成に関する国際会議」等を通じた
技術交流や研究機関、学会等による連携が考えられる。 〇 更に、マレーシアは東南アジアの中央部に位置し、気候的にも周
辺国と似ていることから、我が国と協力し、水田農業の灌漑排水技
術等に係る第3国研修やマレーシアを拠点とした東南アジア地域で
の広域的な協力が考えられる。