アフガニスタン国 カブール首都圏開発計画 推進プ...

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アフガニスタン・イスラム共和国 カブール市役所 アフガニスタン国 カブール首都圏開発計画 推進プロジェクト 都市開発及び都市運営人材育成 サブプロジェクト 業務完了報告書 平成 27 年 3 月 (2015 年) 独立行政法人 国際協力機構(JICA) 株式会社 ティー・アソーシエイト 基盤 JR 15-085

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アフガニスタン・イスラム共和国

カブール市役所

アフガニスタン国

カブール首都圏開発計画

推進プロジェクト

都市開発及び都市運営人材育成

サブプロジェクト

業務完了報告書

平成 27 年 3 月

(2015 年)

独立行政法人 国際協力機構(JICA)

株式会社 ティー・アソーシエイト

基盤

JR

15-085

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目次 1.背景 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

1.1 サブプロジェクトの背景・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 1.2 「カブール首都圏開発計画推進プロジェクト」における実施・・・・・・・・・2

2.以前のサブプロジェクトの研修の評価と今後の研修の設計方法 ・・・・・・・・・4 2.1 研修内容や研修プログラム決定の流れ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 2.2 以前のサブプロジェクトで行われた研修や今後の研修の必要性の評価・・・・・4 2.3 当該サブプロジェクトのための研修プログラム設計・・・・・・・・・・・・・7

3.研修プログラム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 3.1 研修プログラムの構成と特徴・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 3.2 能力開発の必要性と KM のために組まれた研修との関連性に関する一覧 ・・23

4.研修の実施 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24 5.対象となる研修生グループのプロフィールと適性 ・・・・・・・・・・・・・・41

5.1 研修生や学習素地の全体的な状況分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・41 5.2 対象グループのプロフィール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42

6.研修実施後のフォローアップ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50 6.1 フォローアップ会議・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50 6.2 月次衛星 TV 会議でのフォローアップ活動・・・・・・・・・・・・・・・・52

7.研修結果に関する DAC 五項目による評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・57 7.1 妥当性に関する評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・57 7.2 効率性に関する評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・57 7.3 有効性及びインパクトに関する評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60 7.4 持続性に関する評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・65 7.5 評価を踏まえた提言及び教訓・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・67

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表の一覧 表1:KM の能力開発の現状と懸案事項 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 表2:2012 年の研修の評価や研修への要望、及び今後の研修の必要性・・・・・・・・6 表3:今後、学習されるべき研修項目、また、研修場所の観点からの優先順位・・・ 12 表4:必要とされる能力開発項目と研修プログラムの比較一覧 ・・・・・・・・・・23 表5:第1回本邦研修(区画整理)の研修生のプロフィール・・・・・・・・・・ ・43 表6:第2回本邦研修(建築コントロール・ゾーニング・地区計画)の研修生の

プロフィール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・43 表7:第3回本邦研修(交通管理)の研修生のプロフィール・・・・・・・・・・ ・44 表8:第4回本邦研修(住民参加)の研修生のプロフィール・・・・・・・・・・ ・45 表9:第5回本邦研修(都市経営)の研修生のプロフィール ・・・・・・・・・・・46 表10:第6回本邦幹部研修の研修生のプロフィール ・・・・・・・・・・・・・・47 表11:インド研修の研修生のプロフィール ・・・・・・・・・・・・・・・・・・48 表12:トルコ研修の研修生のプロフィール ・・・・・・・・・・・・・・・・・・49 表13:各研修における研修生の数 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60 表14:KM 区画整理・都市再開発プロジェクトの主要テーマと段階別対応能力達成水準と

今後の研修の重要度評価 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・68 表15:KM 住民参加街づくりの能力開発主要テーマと段階別対応能力達成水準と今後の研

修の重要度の評価 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・72 表16:KM 都市経営関連の主要テーマとプロジェクト対応能力達成水準と今後の研修の重

要度評価 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・75 表17:KM 交通管理・管制の主要テーマと段階別対応能力達成水準と今後の研修の重要度

評価 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・77 図の一覧 図1:カブール首都圏開発計画推進プロジェクトの新事業概要・・・・・・・・・・・3 図2:研修内容選択、研修プログラム決定への流れ・・・・・・・・・・・・・・・・4 図3:カブール市改訂版マスタープラン開始からの都市石器絵の論理的作業手順のながれ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 図4:2012 研修における能力向上とさらに強化されるべき分野・・・・・・・・・・10 図5:2012 年研修における能力向上と 2013-14 年の研修テーマの相互関係・・・・・11 図6:今後の研修をどのように実施するかについての将来の方向性 ・・・・・・・・14 図7:パイロット事業の実施や制度開発につながる能力開発努力 ・・・・・・・・・16

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ABBREVIATIONS (略語説明リスト)

AMC Ahmedabad Municipal Corporation

AMM Ankara Greater Metropolitan Municipality

ANDS Afghanistan National Development Strategy

ANSA Afghanistan National Standards Authority

APIC Andhra Pradesh Industrial Infrastructure Corporation Ltd.

AUDA Ahmedabad Urban Development Strategy

BCR Building Coverage Ration

CBD Central Business District

CCED Certification, Codes and Environment Division

CD Capacity Development

CEO Chief Executive Officer

CM Construction Management

DAC Development Assistance Committee (of the OECD)

DCDA Independent Board of Kabul New City Development Desabz-Barikab

City Development Authority

DDA Delhi Development Authority

EIA Environmental Impact Assessment

FAR Floor Area Ratio

GIFT Gujarat International Finance Tec-City

GIS Geographical Information System

HRD Human Resource Development

IMM Istanbul Greater Metropolitan Municipality

INTACH The Indian national Trust for Art and Cultural Heritage

IT Information Technology

ICT Information & Communication Technology

JICA Japan International Cooperation Agency

JNNURM Jawarharlal Nehru Urban Renewal Mission

KM Kabul Municipality

KMA Kabul Metropolitan Area

KMADP Kabul Metropolitan Area Development Plan Promotion Project

KNC Kabul New City

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KSP Kabul Solidarity Program

LR Land Readjustment

MCD Municipal Corporation of Delhi

NGO Non-Governmental Organization

NOIDA New Okhla Industrial Development Authority

NPO Non-Profit Organization

PM Project Management

PPP Public Private Partnership

PR Public Relations

SPV Special Purpose Vehicle Company

TDR Transfer of Development Right

TIC JICA Tokyo International Center

TMG Tokyo Metropolitan Government

TOBASI SPV established as a JV company by Greater Ankara

Metropolitan Municipality and TOKI for the implementation of

Northern Ankara Urban Transformation Project

TOKI Turkish National Housing Development Administration

TPS Town Planning Scheme (Indian Land Readjustment)

UDH1 Sub-project of Human Resource Development for Urban Development

UDH2 Sub-project of Human Resource Development for Urban Development

and Urban Management

UR Urban Renaissance Agency

YMM 21 Yokohama Minato Mirai 21

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カブール首都圏開発計画推進プロジェクト 都市開発及び都市運営人材育成サブプロジェクト

カブール市役所 業務完了報告書

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1. 背景

1.1 サブプロジェクトの背景

2011年 12 月から 2013 年 3 月まで「都市開発人材育成サブプロジェクト」が実施され、こ

の前サブプロジェクトで実施されるべき能力開発の範囲を決定するために、研修参加機関の

組織分析や研修の必要性の評価といった準備作業が様々な観点から行われた。また、研修需

要の現状について共通の理解を得るため、カブール市当局(Kabul Municipality: KM)とも綿

密な打ち合わせがもたれた。2012 年には、まず過去に行われた能力開発事業、またカブール

首都圏マスタープラン調査において KMの人材育成に関連のあるものが見直され、さらに補

足情報を収集するための調査が実施された。次いで、都市開発の計画や実施において KMが

行う必要のある作業の範囲が特定され、KMの能力開発を対象とした研修で扱われるべきテ

ーマや分野を包括したリスト(ロング・リスト)が用意された。さらに、短期、中長期とい

った時間軸に基づき特定された研修テーマや研修分野の優先順位付けや分類も行われた。

今回のサブプロジェクトは、上述のサブプロジェクトの後継事業として実施されるものであり、

従って、前回のサブプロジェクトで分析、整理された研修テーマの優先順位を参考にし、さらに

前サブプロジェクトでの経験や教訓にも基づき実施計画がたてられている。今回の研修において

は後述される研修分野が選ばれているが、なぜこれらの項目が研修でとりあげられることになっ

たのかというと、まず、カブール市の主要な問題として、これまでにない規模で都市の人口密集

地が急速に広がってきていること、またこのような都市化の広範囲な拡大への対応に深刻な遅れ

をきたしていることがあげられるであろう。急速な都市化拡大によってもたらされる大規模な住

宅需要や建設需要は間違いなくアフガニスタン経済を後押しする大きな原動力であり、KMは違

法な土地略奪や無秩序な非正規居住地の拡大に対し、見て見ぬ振りをするような政策や態度を取

らないことが求められている。そのためにはKMは正当な都市計画を行える環境や都市開発の実

施体制を整える必要があり、またそれを可能にする能力を育成する必要があるだろう。

KMはJICAの技術支援を受けて1978年に作成されたマスタープランを改定することができたが、

マスタープラン改定を達成しただけでは、すべての問題を解決するのには十分ではないことは明

白であり、改定後、どのようにそのマスタープランを実現していくのかということが、KMの都

市計画や都市運営の重要な課題の一つとなっている。改定されたマスタープランは、将来のカブ

ール市のあり方を構想し、戦略的な都市計画を定め、さらに構造計画や地区計画、個々の詳細計

画を作成するためのきめ細やかな政策基盤を形成しているので、いわば、カブール市における

「暫定憲法」である。一般的に言ってマスタープランの実現は、複数の実施手法をいかに効果的

かつ効率的に活用するかにかかっており、これはカブール市の場合も同様であろう。

さらに、 カブール市の都市計画における現在の制度的枠組みや法制度に目を通してみると、

いくつかの構造的な欠陥が見受けられ、これらを克服する必要があるかと思われる。カブール市

の都市計画制度は、社会主義的な都市計画の影響を受けたため必要以上に規範や規定に基づく

「指示的」ものであり、言い換えるのならば、詳細計画が現在のカブール市を機能させるのに多

大な役割を果たしているといえるであろう。ここで、この「指示的な計画」の欠陥を列挙してみ

ると、1)公共セクターがほぼすべての計画事項を詳細に決定しなければならない、

2)変化に直面した際の柔軟性の不足、3)民間セクターに自由裁量や決定権がない、4)市民参

加による意見反映がなく、基本的に上から下へのアプローチ、5)土地収用への過度の依存、

6)民間投資の促進、活用の必要性への認識が弱いこと等が挙げられる。都市計画や開発実施、

また都市規制におけるこのような指示的な制度は、公共セクターがほとんどの開発事業を単独で

実施するならばうまく機能するかもしれないが、実際には、公共セクターは事業を単独で実施で

きるほどの財源を有しておらず、また民間セクターはマスタープランや構造計画を無視し土地市

場はマスタープランとは異なった形で機能している。このような状況で、KMはより具体的で多

様な土地利用のために詳細計画を作成し続けつつも、建築規制に対するゾーニングといった新た

な枠組みや規制措置の設置について検討する必要があるだろう。

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カブール首都圏開発計画推進プロジェクト 都市開発及び都市運営人材育成サブプロジェクト カブール市役所 業務完了報告書

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土地に関する重要な問題の一つとして、それぞれの都市開発事業に必要な土地をいかに取得す

るのかということが挙げられる。都市開発や都市再生における失敗例の多くでは、土地が不適切

に取得されたか、または取得に多大な時間がかかっており、土地取得や土地収用に係わる長く煩

雑な手続きは都市開発に携わる公共・民間両セクターに多大な損失や無駄をもたらすこととなっ

ている。また、このような土地収用や土地取得では、公機関が自らの権限を過剰使用する結果と

なる傾向があり、また土地資源の適正な配分を阻害することにもなりがちである。このような状

況を鑑みると、KMは土地区画整理の知識や実施技術を取得する必要があるだろう。土地区画整

理は、無秩序に開発された土地を秩序ある状態に変更、改善するための実施手法であり、土地の

改善や改良は、土地区画の形状、大きさ、位置を変更する過程で行われる。道路拡幅やインフラ

整備のために土地の一部が提供されるので、土地区画の大きさは通常縮小されるが、その地価は

上昇することとなる。また、土地区画整理の過程に参加型手法は欠かせないため、KMがこの手

法を新たに習得する事は必要であろう。

このようにカブールの都市計画や都市開発において、広範囲にわたる能力育成が必要とされて

おり、KMは、土地区画整理、ゾーニング、詳細計画のみでなく、参加型手法、土地のガバナン

ス(統治管理)、公営住宅や社会住宅供給、都市再開発手法、都市遺産の保全、都市経済再生施

策、さらに、事業促進戦略、市政の管理運営などといった他の側面においてもその能力を向上さ

せる必要があるだろう。タスクフォースから昇格、発展した形で新たに設立された部署では、主

に直接マスタープラン実現につながる土地区画整理やゾーニングといったKMを象徴するような

課題に取り組むので、他の様々な課題に対処するためには、KMの他の部署の能力強化も必要と

される。また、これまでも、1)土地区画整理や、2)ゾーニングや建築規制等の2つの事業実施

施策は重要な関心事であったが、2013年の主な課題には、これらの事業に携わる新しく設立され

た部署へ能力開発支援を広げることも含まれる。これらの部署の職員が実用的で実行可能な知識

や技能を習得することができるように、研修は実際に現地にもたらされる成果に十分配慮して行

われるべきであり、例えば、これらの部署により試験的に都市開発事業が計画、実現されるよう

な研修を用意する必要があるだろう。もし研修がこのような試験事業の計画や実施を前提として

行われるのであれば、研修は効率的かつ効果的なものになると思われるので、KMからの研修参

加者は、このサブプロジェクトを通し強化される能力を、この試験事業の計画作成や実施につな

げることが期待されているということを心に留めておく必要がある。

KMへの技術支援の目的は、持続可能な都市計画や都市開発、都市再生や再開発が行えるよう

な実践的な経験を積む事により、広範囲で多岐にわたる知識基盤や洗練された技術に裏打ちされ

た高い能力を持つKM職員を育成することにある。

1.2 「カブール首都圏開発計画推進プロジェクト」における実施

「カブール首都圏開発計画推進プロジェクト」(Kabul Metropolitan Area Development Plan Promotion Project: KMADP)の中期見直しが2013年6月にJICAにより実施され、KMADPの基本的

な方向性の枠組み(Project Design Matrix: PDM)が改訂された。その結果、過去に設定されてい

たKMADPの6つの成果が以下の5項目に再編された。

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カブール首都圏開発計画推進プロジェクト 都市開発及び都市運営人材育成サブプロジェクト

カブール市役所 業務完了報告書

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PDM3の改定版

図1:カブール首都圏開発計画推進プロジェクトの新事業概要

上記の成果のうち、基本的にこのサブプロジェクトにおいては、「都市開発事業を実施するた

めのKMの能力向上」を目指す成果4と「新都市の都市基盤開発事業を実施するために必要なデ

サブ新都市開発委員会事務局(Desabz City Development Authorityy: DCDA)の能力の強化」を目

指す成果2を達成することを目的とする。また上記の能力開発努力の結果、「新都市における都

市開発の実施体制の強化(成果1)」や「カブール市における都市開発の実施体制の強化(成果

3)」に間接的に寄与することも期待されている。またこのサブプロジェクトは全体として

KMADPの枠組みの中の一部門として実施される必要があり、このため、このサブプロジェクト

のもとで行われる研修の成果がカブール首都圏開発に寄与することが求められている。またこの

研修によって、KMやDCDAといった研修対象機関に、革新的な制度向上、必要な能力開発、実

用的な知識や技術の習得をもたらすことで十分な貢献をすることも期待されている。

以前のサブプロジェクトやその他の能力開発事業実施の経験から得た教訓を踏まえ、このサブ

プロジェクトでは、実用的な知識が向上し実際の成果につながる効果的な学びが行えるよう細心

の注意が払われる。

カブール首都圏マスタープランに基づいたカブール首都圏 開発が加速される。

カブール首都圏マスタープランの実施を促進する能力が 開発される。

新都市の都市

基盤開発事業を

実施するために

必要な DCDAの能力の強化

新都市における

都市開発の実施

体制の強化

カブール市に

おける都市開発

の実施体制の

強化

都市開発事業を

実施するための

KM の能力向上

カブール首都圏

開発(KMAD)

に係わる機関間

で必要な調整が

適切に行われ

る。

新都市開発 カブール市開発 KMAD 全体

全般的な目的

事業目標

成果

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カブール首都圏開発計画推進プロジェクト 都市開発及び都市運営人材育成サブプロジェクト カブール市役所 業務完了報告書

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2. 以前のサブプロジェクト 2012 研修の評価と本研修の設計方法

2.1 研 修 内 容 や 研 修 プ ロ グ ラ ム 決 定 の 流 れ 研修内容を選択し、研修プログラムの決定に至る作業の流れを以下に示す。

図2:研修内容選択、研修プログラム決定への作業の流れ

2.2 以前のサブプロジェクトで行われた研修や今後の研修の必要性

以前のサブプロジェクトのもとで実施された研修プログラムを、経済開発協力機構、開発援助

委員会によって定められた評価5項目(DAC評価)に基づき自己評価する。以下の表はKMの現状

や懸案事項の概要を明示している。

KMADP の事業目標への貢献

「過去に実施された研修の評価」

研修により達成された成果への評価

今後の研修の必要性に対する評価 (2012 年の研修実施後、アンケート調査や面談調査を通して)

KM の現状への評価、今後の KM の課題克服過程、また マスタープラン実現にむけての展望

当該サブプロジェクトにおける研修の目標の設定

研修目標、達成されるべき成果、研修内容や研修テーマを含む研修案作成

キックオフミーティング(研修開始時の会議)の開催、またその際の討議

まとめ

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カブール首都圏開発計画推進プロジェクト 都市開発及び都市運営人材育成サブプロジェクト

カブール市役所 業務完了報告書

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表1:KMの能力開発の現状と懸案事項

今後の能力開発のために必要な事項 現状と重要懸案

マスタープランの実施

計画作成

定期的な見直しや更新

努力 改訂版マスタープランが承認された。

制度面での改良

総合的な都市交通計画や政策 計画作成の技術的な

能力

実施手法

ゾーニング(土地利用

規制)と建築基準

担当部署が新たに設立された。

リーダーとなる人材の育成が必要

実用的な能力習得が必要

開発規制 制度の近代化と能力強化

他の様々な実施規制の

枠組み

ゾーニングや建築規制等、新たな規制の

枠組み作成が必要

用地取得や他の解決策

基本的知識はこれまでに習得されたが、

実施レベルでの知識はまだである。

実用的な知識や参加型手法の習得が必要

土地区画整理

担当部署が新たに設立された。

リーダーとなる人材の育成が必要

実用的な能力習得が必要

社会住宅 基本的知識は習得されたが、事業実施に

基づいたものではない。

参加型手法による

計画作成や開発

「カブール市連帯プログラム」(Kabul Solidarity Program:KSP)が実施されて

いる。

リーダーとなる人材の人材が必要

都市再生・

都市改良

大規模都市再生・

再開発

新たな制度体系の構築が必要

関連する能力開発が必要

都市環境改善 KSPのさらなる能力開発が必要

制度・専門資格 制度改革努力 都市計画部が再編成され、職員数が増や

された。

研修生の知識レベルに関するアンケート調査、研修生や上司による評価、または面談調査、講

義観察等の結果を要約することにより、将来の研修のあり方に関する提案がなされている。

土地区画整理とゾーニングに係わる二つのタスクフォースが、KMの組織内で課に形を変え昇

格されたことは、2012年に行われた研修の効果的かつ具体的な成果であることをここで言及して

おきたい。また、KMの上層部は、これらの新設された課の能力が将来的にもJICAの研修を通じ

て強化されることを望んでいる。したがって、これらの課の能力強化を2013年に実施されるこの

研修の重要項目の一部とすることが望まれる。

また、2012年研修へ参加したKM職員の自己評価から、土地区画整理やゾーニングの知識は大

幅に改善されたものの、特に事業実施に関する知識を深めるさらなる能力育成の機会が必要であ

ることが分かる。

現在まで2012年研修は、研修生の知識や技術の向上に貢献するといった具体的な成果をKMに

もたらしており、タスクフォースに関して言えば、総じて、土地区画整理手法、ゾーニング、建

築規制、都市再開発手法、資産価値変換、参加型手法、市民活動といった分野において、比較的、

効果的な成果をあげている。

次表は、研修生の知識レベルがどの程度向上するかといった研修の有効性の評価、これまでの

研修に参加した受講生とその上司の研修への評価や要望、また、これらの結果に基づき、今後ど

のような研修が必要かという評価もあわせて示している。

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カブール首都圏開発計画推進プロジェクト 都市開発及び都市運営人材育成サブプロジェクト カブール市役所 業務完了報告書

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表2:2012研修の評価や研修への要望、及び今後の研修の必要性

研修テーマ・研修分野

評価・要望

能力強化

の 必要性

研修より習得

される 知識レベル

(研修の 有効性)

研修生や その上司から

の要望

インパクト・

アセスメント 手法に よる評価

都市計画とその

制度

都市の展望の明確化、 またその構想を実現する

ための実際の計画作成 C 〇 〇 〇

マスタープラン、都市計

画制度 B 〇 〇 〇

土地利用計画 C ◎ 〇 ◎

都市開発手法

土地区画整理 B ◎ 〇 ◎

都市再開発 C ◎ △ ◎

参加型手法 C ◎ △ ◎

非公式住宅 C 〇 △ ◎

都市住宅問題、

都市環境向上

都市住宅問題、都市環境

向上 C 〇 △ 〇

水管理 (-) 〇 △ 〇

都市経済活性、都市運営 C 〇 △ 〇

都市交通 計画、運営 (-) ◎ △ ◎

トンネル管理(保守) (-) 〇 △ 〇

指導者育成 (-) ◎ △ ◎

■ 2012年研修による知識向上への評価

A:実際の事業運営に適用されるまでに習得し理解された。

B:十分に習得されたが、実際の事業運営に適用されるまでには至らなかった。

C:基本的な理解や知識は得られた。

D:基本的レベルに到達するほど理解、習得されなかった。

(-):2012年研修の範囲外

■ 研修生やその上司による評価や要望

◎:強化されるべき/高い優先度

〇:中程度の優先度

△:低優先度

■ インパクト・アセスメント(影響評価)手法による評価 ◎:日常業務に実際に影響を与えた。

〇:日常業務に実際に影響を与えることが予想される。

△:実際に影響を与えるとは思われない。

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カブール首都圏開発計画推進プロジェクト 都市開発及び都市運営人材育成サブプロジェクト

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■ 将来に向けての能力強化の必要性(研修生や上司からの要望の強さ、また研修の有効性評価

や影響評価の結果を考え合わせて優先度の高さを設定)

◎:強化されるべき/高い優先度

〇:中程度の優先度

△:低優先度

研修項目や研修分野以外では、将来の研修における基本的な方向性としてKMとはすでに、

1)より具体的でより実践的な研修、2)1〜1.5ヶ月といった長期間の研修、3)各研修において

少人数の参加者、といった点において共通理解に達している。

2.3 当該サブプロジェクトのための研修プログラム設計

2012研修実施後、サブプロジェクトチームはその実施成果を評価し、2012年研修の主な改善点

を確認した。その後、これらの評価結果だけでなく、研修参加者やその上司へのアンケート調査

にも基づいて、KMの能力開発における重要課題や、近い将来に実施されるべき研修の計画案に

関しても特定し、また、分析結果を補完し最終的にまとめるために、2012年12月と2013年

1月に、2012年研修の参加者、さらにKMの人事部の上級管理職との十分な協議を重ねた。今年度

の初めに、KMは前述の2つのタスクフォースを昇格させ、都市計画部内に2つの課を作ること

を決めたので、こういった現状にあわせた形で、また、KMによる都市開発の現在の重要懸案を

考慮した上で、2013年の研修プログラムは作成される必要があるだろう。次表は、このような決

定に至るまでの筋道や現状を示している。

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図3:カブール市改訂版マスタープラン開始からの都市設計の論理的作業手順の流れ

2013年研修の基本的な方向性

2012年本邦研修や第三国研修の実施

研修前後を比較するために行われる研修

生へのアンケート調査やその分析 研修過程の観察や評価

2012年研修プログラムの研修生の評価に

関するアンケート調査 2012年 研修プログラムの上司の評価に

関するアンケート調査

研修生への面談調査 上司への面談調査

状況や環境の変化 (事業計画から事業実行へ) (多様化から専門化へ)

DAC 評価 5 項目の観点からの評価

より少人数で

より専門的

より実用的 より実践的

土地区画

整理・TPS

ゾーニング・

建築規制・ 地区計画

都市再開発・

都市変容

参加型手法・

都市計画、 都市開発への

住民参加

非公式住宅の

正規化・社会

住宅

都市経済活性

化・都市運営・

都市の売り込み

土地利用計画

や交通計画と

の関係

2012 年研修での向上点(効果的に学習された項目)

将来の研修プログラムの設計 2013年の研修テーマの特定

カブール市マスタープランの改訂版

カブール市開発のための主要懸案の見直し

KM の開発目標 の見直し

KM 職員の能力開発に関する主要テーマの確定

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カブール首都圏開発計画推進プロジェクト 都市開発及び都市運営人材育成サブプロジェクト

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特に、最近改訂されたカブール市の都市計画マスタープランの実施を促進することを目的とし

て、以前2012年実施のサブプロジェクトで4つの研修プログラムがに実施された。そして、その

努力の結果として、設置された前述のタスクフォース(区画整理タスクフォース、土地再開発タ

スクフォース)が、2013年にKM組織内で正式な部署として格上げされ、都市計画局内に設置さ

れた。従って、本サブプロジェクトでの主眼としては、その二つの新組織の2部署の人材の能力

を強化することが挙げられる。

以前のサブプロジェクトでは、2012年に、都市計画部、建設監理部、用地取得部の24人のKM職員が日本やインド、トルコに派遣され、この職員たちは実によく学び、土地区画整理や、ゾー

ニング・建築基準に関する全般的な流れと構造を学び、基礎的な理論知識を習得した。しかし、

これらの知識や技術を習得したものの、完全に都市計画・都市開発制度を利用して具体的なプロ

ジェクトを実現できるほどにはまだ十分に習得されたとは言えず、研修生が十分に事業実施能力

を身につけるにはまだまだ時間がかかると思われる。したがって、KMの組織図上に正式に位置

づけられたこれら2つの課(区画整理課、土地再開発課)が十分機能できるように、さらなる能

力強化を目指すことはKMにとって極めて重要である。

建築や土木の分野に比べると、都市計画的なテーマ・分野に関するKM職員の知識レベルがか

なり低いことがこれまでの研修では判明している。実際、KM内には土木技師や建築家はいるが、

都市計画に係わる職員がいないという認識がアフガニスタンの都市計画関係者の一般的な見方と

なっている。専門的な特定の分野に焦点をあて、またより深い知識習得を目指す能力開発の取り

組みはもちろん非常に重要であるが、この状況を鑑みると、組織の底力を上げるための長期的な

努力といった観点から都市計画・都市開発に係る知識レベルを高め強化することも非常に重要で

あると言える。

このような技術的能力の向上に加えて、以前のサブプロジェクトの研修を通じて、KMは東京

都、広島市、京都市、さらに独立行政法人都市再生機構(Urban Renaissance Agency: UR)と貴重

な協力関係を確立することができたと思われる。したがって、この研修の機会を利用して、KMから選ばれた職員が上記の日本の自治体やURとの協力のもと、さらに深める研修ができるように

本サブプロジェクトでの研修内容、プログラムを構成することが肝要であろう。

さらに日本との高等教育の機会提供という意味では、KMは、優れた潜在能力があり将来の

組織の重要な担い手となる職員を日本の大学院に派遣することは非常に有意義と考えられ、「未

来への架け橋・中核人材育成プロジェクト(The Project for the Promotion and Enhancement of the Afghan Capacity for Effective Development: PEACE)」といった機会を十分に利用する必要がある。

これは、KMの将来の発展の可能性を広げるだけでなく、アフガニスタンの都市セクター全体の

可能性を高めることに繋がるであろう。

一方、これまでのインドやトルコでの研修で、KMは、インドやトルコでの地方自治体や中央

政府機関、大学教授や民間コンサルタント会社の専門スタッフなどと良好な関係を築くことに成

功しており、これらの機関の中には、KMの能力開発努力への支援を続行するために今後の協力

関係の強化が期待される。

以下の表は、現時点での能力の到達度、すなわち、2012年研修を通して向上した知識や技術を

示している。このようにこれまでの能力向上の成果を踏まえることで、まだ対処されていない

KM組織の構造的な問題や、さらなる能力開発が必要な分野を明らかにしていくことができると

考える。

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10

2012年研修で

向上した点

研修参加者の以下の点に関する一般的な理解や基礎的技術

大局的な項目 細部に関する項目

1. 都市計画とその制度 土地利用規制、都市開発規制施策(ゾーニング・建築

基準)

2. 都市開発手法

土地区画整理、TPS(インドの都市計画制度)、トルコ

の土地区画整理

都市再開発手法、都市変容手法

参加型手法、都市計画や都市開発における住民参加

3. 都市住宅問題、都市

環境向上

非公式住宅地区(ゲジェコンドゥ: Gejekondo)の正規

化、社会住宅やクロスサブシディ

都市住宅問題や都市環境向上

4. 都市経済活性や都市

運営 都市経済活性化戦略と都市運営

5. 都市交通 土地利用計画、また都市交通との関係

6. その他

図4:2012研修における能力向上とさらに強化されるべき分野

図4では、従前の努力で基礎的な理論の部分の理解(青い部分)は達成されてきていることを

示し、それを受けて、今後、理解度を深めて重点的に学習強化されるべき項目(黄色の部分)は

何であるか、それらの対応関係をビジュアルに示している。また、次ページの図5は、2012年の

サブプロジェクトで実施された研修においての学習項目と、本サブプロジェクトで行われる研修

プログラムにおいて扱われるべき研修項目との相関関係を示している。この表により2012年研修

と2013年研修がどのように関連づけられているかについてよく理解できるのではないかと思われ

る。

強化される べき現在の

課題

KMの能力強化のために以下の課題が克服されなければならない。

大局的な項目 細部に関する項目

1. 都市計画とその制度

都市計画や都市開発に関して一般的で広範囲にわたる

知識の欠如

ゾーニングや建築基準の実施レベルでの知識や技術の

欠如

非公式住宅地区の合法化、正規化に関する知識の欠如

2. 都市開発手法

土地区画整理に関する実施レベルでの知識や技術の

欠如

参加型手法や住民の自発的な努力を促すための知識の

欠如

都市再開発、また資産価値変換や再分配手法に関する

知識の欠如

3. 都市住宅問題、都市

環境向上 社会住宅やクロスサブシディ手法に関する知識の欠如

4. 都市経済活性や都市

運営 都市経済や都市運営・管理・財務に関する知識の欠如

5. 都市交通 都市交通運営・管制に関する知識の欠如

6. その他 これらの努力を強化するリーダーシップの欠如

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図5:2012年研修における能力向上と2013-14年の研修テーマの相互関係

以下に示す9項目の研修を近い将来どのように行うべきかを考えるにあたって、研修が実施さ

れる国や、その国の研修受け入れ機関の特徴を理解することは不可欠である。従って、その詳細

を以下の表3、さらにそれに続く記述によって説明する。

土地区画整理の実施レベルでの知識や技術

都市再開発手法(都市変容手法)、資産価値変換

制度

参加型手法、住民参加活動

ゾーニング・建築基準・都市の無秩序な拡大抑止

のための対策

非公式住宅地区の正規化

社会住宅、クロスサブシディ

都市交通計画・運営・向上

都市経済や都市運営・管理・財務

都市計画、都市開発の一般的、基礎的知識

都市再開発手法

土地区画整理、TPS、トル

コの土地区画整理

参加型手法、住民参加

都市住宅問題、都市環境

向上

非公式住宅地区(ゲジェコ

ンドゥ)の正規化

都市経済活性化戦略や

都市運営

都市交通に関連した土地

利用計画

土地利用規制・都市開発 規制手法

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表3:今後、学習されるべき研修項目、また研修場所の観点からの優先順位

研修場所

強化されるべき研修テーマ、研修分野 日本 インド トルコ

1) 都市計画や都市開発に関する一般的で広範囲にわ

たる知識 〇 〇 〇

2) 土地区画整理の実施 ◎ ◎ 〇

3) ゾーニング、建築基準、詳細計画 ◎ 〇 〇

4) 参加型手法 ◎ 〇 〇

5) 非公式住宅地域の合法化・正規化 〇 ◎ ◎

6) 都市再開発手法 ◎ 〇 ◎

7) 都市交通運営 ◎ 〇 〇

8) 都市経済、都市運営・管理・財務 〇 ◎ ◎

9) 社会住宅、クロスサブシディ 〇 ◎ ◎

◎:特にこの国で学ぶべき 〇:この国で学ぶべき

1)都市計画や都市開発に関する一般的で広範囲にわたる知識:通常、このJICAサブプロジェク

トチームによる研修は一般的な事項の学習ではなく、具体的な知識や技能を習得するために

実施される必要がある。しかし、KM職員の能力開発の現状を見てみると、都市計画や都市

開発に関する一般的な知識の欠如は非常に深刻であると思われる。特定の知識を応用し活用

するためには、基礎的な知識を有することは必須であり、そうでなければ、特定の知識を適

切に使いこなすことはできない。一方で、日本、インド、トルコといった海外研修は、単に

基本的かつ一般的な事項のみを学ぶには余りにも貴重であるため、これらの研修ではやはり

具体的かつ専門的な知識の習得が目指されなければならない。したがって、一般的で基礎的

な知識の強化は、地元の専門家、またカブール大学や技術専門大学(ポリテクニク大学)の

教授の助けによってカブールで行わなければならない。

2)土地区画整理の実施:これまでのところ、KMの研修生は主に日本での研修を通して土地区画

整理に関する能力を育成してきているので、その知識は日本の土地区画整理の制度や慣習を

基盤としている。したがって、さらなる知識や技術の積み上げという観点からすると、イン

ドやトルコでの研修よりも日本での研修の方に利点があるかと思われる。一方、KMの研修

生は2012年にインドの土地区画整理(TPS)やトルコの土地区画整理も学んでいる。

3)ゾーニング、建築基準、詳細計画:上記の2)で示された状況がこの研修項目についても同様

にあり、ゾーニング、建築基準、詳細計画の研修においても、インドやトルコよりも日本で

の研修に利点があるかと思われる。

4)参加型手法:2012年の研修や学習活動の経験から鑑みると、トルコやインドはこの項目を学

習するのにはあまり適していない。この研修テーマをどの国で研修するのがより効果的かと

いうことは、おそらく各国の社会経済発展の度合いや民主的合意形成の実践経験に大きく関

係しており、また教育レベルや地域の文化活動の活発度と都市計画や都市開発が住民主導、

住民参加の元で行われるかどうかということとの間にも相互関係があると思われる。

5)非公式住宅地域の合法化・正規化:トルコやインドには、非公式住宅地区が多く存在してい

るが、現在の日本でそれら見ることはほぼないので、トルコやインドでの研修で、研修生は

これらの国々の自治体がこの非公式住宅の問題をどのように解決しようとしているかを学ぶ

ことができるであろう。

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6)都市再開発手法(トルコの都市変容手法):現在、URは都市再生、都市再開発関連の事業を

優先的に行っている。もしなんらかの問題を抱える地域が人口密集地であれば、土地だけで

なく建造物に関する再編成、再開発が必要となるので、建物の財産権を考慮せずに土地区画

整理のみを用いて都市再生や都市再開発を達成することはできない。トルコでは同様の取り

組みや手法を「都市変容」と呼んでおり、KMの研修生は、日本の都市再開発手法のみでな

くトルコの都市変容手法も学ぶ。

7)都市交通運営:日本の交通計画や交通管理はとても良く発達しており、インドやトルコも交

通については日本から学んでいるので、日本での研修はインドやトルコでのものよりも効果

的であろう。

8)都市経済、都市運営・管理・財務: 都市経済や地域経済の健全な成長を促進することは自治

体にとって不可欠である。物的な都市基盤整備や大規模な住宅供給は強い経済を基盤とする

ことで実現できるので、KMは経済開発戦略についてより詳しく学ぶ必要がある。日本の社

会経済状況はアフガニスタンとはかなり異なるので、KM職員がこれらを学習するのは、日

本よりインドやトルコでのほうがより適切かと思われる。

9)社会住宅、クロスサブシディ:日本の政府や自治体は、低所得層への住宅支援を行う財源が

確保されているので、社会住宅への他事業収益からの補てん(クロスサブシディ)制度を使

用していない。そのため、日本ではそのような事例を見つけることができないが、一方でイ

ンドやトルコではクロスサブシディの実例が存在する。ただ、日本にも公共住宅政策や関連

プロジェクトは存在している。

2012年研修の経験や教訓を基にして、今後の研修は「より具体的で、より実用的な」方向で行

われるべきである。今回のサブプロジェクトの各研修では参加人数を少なくするとともに研修期

間を長くとる。また各研修には同じようなバックグラウンド、また同程度の責任や関心をもつ職

員が参加する必要があるだろう。

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将来の方向性 1 (日本、インド、

トルコ)

1グループ:2〜3人のみ

同程度の専門性や責任を持つ職員で構成されるグループで1つの研修に参加すべき

十分に長い期間(1〜2ヶ月)

1つのテーマに焦点を絞る(例えば土地区画整理)

職場内研修のような形態で行われる実習

将来の方向性 2 (カブール、

アフガニスタン)

KMの二つの新設された課の職員のため日々職場内研修を実施

海外研修へ出発する前の予備講義

PEACEプログラムを活用し有望なKM職員を高等教育機関へ派遣

活動の推移のフォローアップ

二つの新設された課の能力強化を目的

図6:今後の研修をどのように実施するのかについての将来の方向性

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3. 研修プログラム

3.1 研修プログラムの構成と特徴

(1)概要

研修プログラムは、設定された目標に照らして構成され、また、推薦された講師予定者、各講

義のファシリテーターとの十分な協議の後に作成されている。また日本、インド、トルコといっ

た研修先の国は、過去の研修状況を鑑みJICAにより選択された。

前述のようにKMは土地区画整理、またゾーニング・建築規制・詳細計画に係わる二つのタス

クフォースを発展、昇格させる形で、その都市計画部内に二つの新しい課を設立したので、この

サブプロジェクトの初期段階から、土地区画整理とゾーニングは今回の研修の最も重要なテーマ

として選択されている。

このような状況を鑑み、KMのための第1回、第2回本邦研修は、それぞれ土地区画整理、ま

たゾーニングと建築規制に焦点を当てて2013年9月に開催される。2014年1月から3月にかけて行

われる第3回本邦研修は交通運営に焦点を絞ったプログラムが用意されている。さらに5月の第

4回本邦研修では住民参加と参加型手法に焦点があてられ、第5回本邦研修では、都市運営に焦

点が当てられている。

第三国研修を見てみると、インドやトルコでの研修は、それぞれ一度のみ実施される計画とな

っているので、これらの第三国研修では、土地区画整理、またゾーニングや建築規制の両側面の

知識を深めるだけでなく、インドでは土地の共同管理(ランド・プーリング)を、またトルコで

は都市変容に関してあわせて学ぶことを目指している。

都市開発を実現するための上記のような手法を習得するための前提として、KMの研修生が日

本、インド、トルコそれぞれの都市計画・開発制度の基本的な構造や制度を学んでいることは必

要不可欠である。

(2)研修アプローチと視点

カスタマイズ

過去のサブプロジェクトにおける研修実施経験やそれらに関連する経験から学んだこととして、

他国の都市計画制度を単純にアフガニスタンにそのまま導入するだけでは不十分だということが

あげられる。アフガニスタン独自の状況に応じて、他国の手法や制度に必要な手を加える(カス

タマイズ)精力的な努力をすることが不可欠である。

学習したあらゆる専門知識はアフガニスタンの現状にあわせて必要な変更を加えるこの「カス

タマイズ・プロセス」を経る必要があるだろう。

ステップ 1:日本、インド、

トルコからの学び 特定の活動を実行するため

に組織や個人の能力を強化

ステップ 2:カスタマイズ・

プロセス 学習したことを再考し、また

それらに刺激を受け、順応

し、その分野でのリーダーシ

ップを発揮し、組織の使命や

構造、活動との間の一貫性を

強化する方法を模索する過程

ステップ 3:応用 組織として生き残るため、

また組織によって定められ

ている使命を果たすための

組織強化

この研修プログラムにおいて、このカスタマイズの必要性が強調されている。

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カブールに戻った後の行動

すべての研修生は、カブールに戻った後に実際に行動を起こすことの重要性を認識する必要が

ある。研修の実施前に、研修生に研修の方向性を正しく認識してもらうために衛星テレビを使用

したオリエンテーション会議が実施されており、その際、特に、研修後に研修生が「私たちは日

本、トルコ、インドで多くのことを学んだ」と述べるだけでは十分ではなく、学習した手法や制

度をカブールの現状に即した形に応用し現地で使用するといった実際の行動を取ることの方がよ

り重要であるということを強調している。単に学習するだけで何も行わないという事態が発生す

ることはもっとも避けるべきであるので、研修生は研修先からカブールに戻った後、自らが今後

とるべき行動について考えることを求められる。

特に「土地区画整理」と「ゾーニング・建築基準・地区計画」に関する2つの研修プログラム

は、試験事業の計画と実施につながるように計画されている。

図7:パイロット事業の実施や制度開発につながる能力開発努力

JICA の研修では通常、研修生の役職や所属部署、担当任務、現在直面している問題や、また

学習対象国で何を学びたいかといった研修生の現状を具体的に記述した「カントリー・レポート」

を作成することが研修生に要求される。しかし、もし研修後に各自が実際に活動を行うことが不

可欠であると考えるのであれば、国の状況等を単に報告するだけでは十分ではないかと思われる。

したがって、今後とるべき行動に重点を置いた上で各自の状況を報告してもらうことが必要であ

り、研修生には研修へ出発する前に、今後自分が取るべき行動を予測するために想像力を働かせ

ることが求められる。

双方向のやりとりを基本とした授業

講師から研修生への一方的な講義は、たとえそれらの講義がいかに有意義な情報や学びを含ん

でいたとしても適切ではないので、「実際の行動」に移すことの必要性を考えると、アフガニス

タンと日本、アフガニスタンとインド、そしてアフガニスタンとトルコといったように両者を比

較して学習することが不可欠である。研修生は全員、研修対象国の状況を詳細に調べてその国と

アフガニスタンの状況を比較し、カブールの状況との違いについて検討する必要があり、そうし

なければ、効果的に研修を自国で応用したといった結果が出てくることはないであろう。したが

って、研修生は KM の現状や「カントリー・レポート」について研修を受け入れた国々の担当者

にプレゼンテーションを行い、また講師は各講義の中で講義のテーマに応じてカブールの状況に

ついて研修生に尋ねることで、双方が両国の都市開発の類似点や相違点についての理解を深める

ことが求められている。可能であれば、講師はこのような観点から研修生との議論をすすめるべ

きで、そのためには研修生の好奇心を喚起するようなよく考えぬかれた質問をなげかける必要が

あるだろう。また、研修生が講義内容を適切に理解しているかどうかを確認するために演習の授

業も行われなければならない。

新たな都市計画制度の準備 1)土地区画整理 2)ゾーニング、建築基準

パイロット事業の計画や

実施 ゾーニング、建築基準、

地区計画の研修

土地区画整理の研修 パイロット事業の計画や

実施

能力開発努力 都市計画技術の進歩

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研修の初めに KM 研修生によって行われる KM の現状や現在直面している課題に関

する研修生の認識に焦点をあてた発表 研修の初めに KM研修生によって行われる「カントリー・レポート」の発表 講義後の質疑応答 計算や記述形式の演習や実習

実用的研修内容

「実際に行動を起こすこと」を結果として期待するのであれば、研修や講義の内容はあまりに

も学問的であってはならず、実用的な応用を目指して構成されるべきである。そのため研修は、

都市計画や都市開発、都市運営の実践的側面に焦点を当てたものでなければならず、研修では具

体的な実施方法や実際に使用されている手法が提供される。

(3)日本、インド、トルコの状況

日本の状況

日本の都市計画や都市開発は、アフガニスタンや、またインド、トルコといった第三国研修先

の国々と比較すると、日本の発展した社会経済や国民の高い教育レベルによって特徴づけられる。

土地問題などを含む日本での都市計画・都市開発過程は、インドやトルコでのものよりも民主的

でより参加型であり、一般市民とより頻繁かつ緻密な意思疎通が図られていることが主な特徴で

ある。第二次世界大戦や関東大震災直後のような過去の時代を振り返ってみると、日本は未曽有

の荒廃や被害から復興した経験があり、特に都市計画や都市開発における法制度や規制制度とい

う観点から、土地区画整理、土地利用のゾーニングや建築基準を導入した過去の状況について

KM 研修生が学習することは価値がある。また、都市計画や都市開発のそれらの規制制度が導入

された過程や背景を学ぶこともとても重要であろう。

インドやトルコなど他の急速に成長している国々と比較して、日本の経済発展の速度は、現在、

非常に緩やかで、またその社会経済状況は変化がほとんどなく、日本の現在の都市化の状況はア

フガニスタンのそれとは全く別ものである。現在、日本は少子化や、東京、大阪、名古屋などの

大都市への人口集中といったものからの負の影響に直面せざるをえない状況になっており、人口

減少や景気低迷といった深刻な問題に直面している。このような日本とアフガニスタンとの違い

を考え、本邦研修の講義内容では、日本が現在直面している人口減少や都市化に逆行するような

現象に重点をおいて行われるべきではないということ、しかしそうはいっても本邦研修には、

KM の研修生にとっては依然として有益で参考になるものが多くあるということを認識して行わ

れる。

日本における巨大都市のマスタープランは、近年、「コンパクトシティ(compact city)」の概念

や、土地を効果的に利用するための政策やその実施に重きを置いている。アフガニスタンにおい

ても、KM だけでなく他の大規模な自治体でも、有限な水資源やエネルギーの消費抑制政策、ま

た環境保護の観点から、土地拡張成長路線ではなく土地集約型都市開発路線を検討すべきであろ

う。もし KM が土地拡張成長戦略を採用すれば土地基盤の整備費は KM に重くのしかかることに

なるので、そのようなことを避けるためにも、土地の高度利用や省エネルギーを取り入れた都市

化は KM の研修生にとって重要な学習項目になると思われる。またこの土地の高度利用といった

考え方は開発を求める圧力に対応するために数々の政策介入が行われるきっかけともなっており、

これらの政策介入に続いて制度レベルでの介入が行われたり、より新たな都市基盤が整備され事

業が開発されたりしている。特に、アフガニスタンで対処が必要とされる懸念事項としては、既

存の都市の居住環境を向上するということ、また、都市部での生活を求めてやってくる人々を収

容するためにさらなる都市が必要であるということの 2 点があげられる。これは先進国だけでな

く多くの急成長中の発展途上国にみられる世界的な現象であり、KM の研修生は、日本のマスタ

ープランの事例研究から新しい考え方や実施戦略を学ぶこととなるだろう。

日本では様々な形態の官民パートナーシップ(PPP)、特別目的事業体(SPV)の設立、第三者

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によるモニタリングといった都市開発支援調整の枠組みを用いた都市自治体の事業運営や資金調

達に関する新しい体系が確立されている。このような新しい取り組みの意義としては、財政的、

技術的に民間セクターを活用する革新的な方法であり KM 研修生も日本で学習する PPP事業を通

じて、民間セクターが事業参加することにあるといえるであろう。

インドの状況

インド都市部はその全人口の増加に伴い、規模が急速に拡大し経済的にもより複雑さを増して

きている。またインドは世界で 2 番目に人口の多い国であり巨大な国家であるので、この国の都

市部門がいかに大きいのかを認識することができるであろう。連邦共和制国家であるインドはそ

の憲法に基づいて 28 州と7つの連邦直轄領から構成されており、その社会経済状況は市や州に

よって異なる。また憲法に従い、都市計画や都市開発、また土地に関する事項は州政府が管理す

ることになっているため、都市開発戦略や事業状況は州ごと、都市ごとに異なっている。そのた

め州と都市の両方のレベルで KM の研修生は、異なる社会経済や政治状況における都市問題に対

処するために採用された様々な戦略を学ぶ機会を得ることができるであろう。たとえば「土地区

画整理」の街、アーメダバードはインドの土地区画整理を勉強するのに最適の都市である。イン

ドでは土地区画整理は都市計画制度(Town Planning Scheme)を略して「TPS」と呼ばれており、

TPS はアーメダバードやグジャラート(Gujarat)州の他の都市で様々な目的のために積極的かつ

頻繁に使用されているが、これはインドの他の地域では使用されていない。またインドの都市計

画の仕組み、ゾーニングや建築規制がどの程度高度化されているのかを学習するのであればデリ

ーを訪問するべきである。インドにおける貧困地区の再生や再定住はチェンナイで学習すべきで

あろう。このようにインドでは異なった都市で異なった都市計画や都市開発手法があり、トルコ

や日本と比べると多様性に満ちている。この多様性は、州にすべての開発関連の決定を許してい

るインドの憲法に基づいて、また省庁、部局、研究科学機関を通じて必要な助言や指示を与えて

いる連邦政府の監督のもとで確保されている。

インドでの都市開発機関によって実践されている都市開発手法や戦略を詳しく見てみると、都

市計画や都市開発は移行途上にあり、国家経済や社会発展の目標、統治構造の状況に即して変化

していることがわかる。1980年代の終わり頃までインドの経済部門や都市部門は主に公共機関や

政府の資金によって支配されていたが、1980年代終わりにはインドの経済改革へ向けていくらか

の前進がみられた。さらに1990年以降には、計画策定を地方へ移譲するためのステップとして都

市部の自治体の企画力開発を目指した73番目、74番目の憲法改正法が施行され、同じく1990年以

降に行われた国民経済の部分的な規制緩和といった大きな変化とともに、この経済改革の流れは

顕著に表れはじめた。この結果、民間セクターや市町村といった都市部の自治体が、様々な都市

計画や事業、新しい事業実施方法を介して、都市部門でますます大きな役割を果たすようになっ

ている。活発なインド経済のもと、このような新たな発展は強い躍動力を持ち、かつ急速なスピ

ードでやってきている。

インドの近年の急速な社会経済の発展やその他多くの個々の出来事が引き金となり、開発を求

める圧力が高まり、それらに対応するために数々の政策介入が行われた。続いて制度レベルでの

介入が行われ、都市関連事項に対処するための新たな環境が整備され、また新しい事業や手法が

開発された。特に明白な懸念分野として既存の都市の居住環境の向上と、都市部での生活を求め

てやってくる人々を収容するためにさらなる都市が必要であるという 2 点があげられる。古い都

市の再生に向けた政府の取り組みは様々な計画や事業を通じて行われており、これは過去何年も

の一貫した傾向としてある。ただし都市再生体系はジャワハルラール・ネルー国家都市再生ミッ

ション(Jawaharlal Nehru National Urban Renewal Mission: JNNURM)といった時代を画するよう

な新規構想が多く立ち上げられた特に過去 10 年間に大きく変化してきた。

このような状況下で、KM の研修生はインドの都市部で起こっている変容を自分たちの目で見

て感じる機会を得ることが出来るであろう。事業形態や制度形態を含む都市開発戦略は、インド

内部で、また世界中で起こっている社会経済状況の変化に伴う形で絶えず再調整された結果、急

速に変化している。

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トルコの状況

トルコは他の発展途上国と同様に許可を得ないまま建てられた非公式住宅の問題が非常に深刻

な国であり、大都市に住んでいる人々の半数以上が「ゲジェコンドゥ」(Gecekondu)と呼ばれる

この非公式住宅に住んでいると言われている。トルコでは、1950 年代から急速に都市化が加速し

ており、それは農村部での貧困よりは都市部での貧困を選んだ何百万人もの人々の移動に主な原

因があるのだが、その結果、トルコの都市構造は、貧困や悲惨、混乱が日常の都市生活の中に具

現化し、無秩序で不法な建設や開発が基本的な特徴となっている。トルコのこの状況下で、トル

コ住宅公団(Housing Development Administration of Turkey :TOKI)は都市住宅や都市定住問題に

ついて主導的な役割を果たしている注目に値する組織であり、都市部に住む貧困層のための大規

模な住宅供給のため 1984 年に設立されて以来 29 年間、幾多の住宅地開発、住宅供給プロジェク

トにおいて様々なファイナンス手法を開発して駆使してきている。TOKI の住宅開発プロジェク

トでのターゲットとしているグループは、まともな住宅取得が難しい低中所得世帯である。

カブール市役所は地方自治体なので、トルコで都市計画・都市開発やそれらの実際のプロジェ

クト経験をから学習するという文脈で考えると、アンカラ都庁やイスタンブール都庁が KM 職員

にとって学習上のよいベンチマーク機関となるであろう。

トルコにおいても、土地区画整理手法は、都市計画目標を実現するために効果的かつ不可欠な

手法として用いられてきた。トルコの土地区画整理制度は、日本の土地区画整理制度よりもイン

ドの TPS に類似している。より分かりやすいトルコの土地区画整理制度を学び、また日本のより

複雑な制度とインドやトルコのより簡略な制度を比べ、それらの長所と短所について評価するこ

とも有意義であると思われる。

(4)特定の国や都市に特化した講義作成

以下の記述は、訪問先の場所(都市)ごとに、どのような学習テーマ分野、ケース・スタディ

のプロジェクトを選択・設定すべきかの優先順位を概察するのによい。講義やワークショップの

内容・目的は、それぞれの国の状況や特徴を反映してデザインされるべきである。KM は、まず

ゾーニングや建築規制、土地区画整理、都市再生や都市再開発、都市環境の向上や開発規制に関

する能力を強化する必要があるので、その視点のもとに各都市においては、どのようなプロジェ

クトやテーマで学び、講師の選択はどのように選択されるべきか、検討した。

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(4)-1日本

東京

東京は日本の首都としての圧倒的な地位を享受しているので、国全体にわたる管轄権を持つす

べての中央省庁、部署が東京に置かれており、またすべての国家レベルでの政治的、教育的、科

学的、戦略的機関も東京に位置している。これにより東京は国内では類のない、また他の追随を

許さない地位が与えられているといえるであろう。また JICA の本部事務所や日本の研修基地で

ある東京国際センター(Tokyo International Centre of JICA :TIC)も東京に置かれており、特に、

土地利用規制や建築規制、都市統治制度や都市再生方法といった日本の都市計画や都市運営の制

度体系に関する情報を効率的に得るために、また日本でのこれらにかかわる事項の全体像を把握

するために、東京は KM の研修生にとって適切な場所である。また、横浜にある JICA の研修基

地(Yokohama International Centre of JICA :YIC)は首都圏内の便利な場所に位置しているだけで

なく UR の本社もすぐ近くにあり、さらに横浜市は多くの有名な都市開発、都市再開発、また新

都市建設事業を行っているので、本邦研修プログラムを実施するにあたっての基地として TIC と

YIC を使用することが期待されている。

神戸

JICA 関西センターは、神戸市に位置しており、また、神戸市が一昨年の 2011 年 3 月に神戸市

都市計画マスタープランの改定を行っていることは注目すべきである。今回の研修では神戸市が

この新しいマスタープランをどのように実施しようと考えているのかを KM 職員は学ぶことがで

きるので、最良のタイミングである。このマスタープランの概念は、「建築」から「再構築」へ

の転換から考案されたもので、神戸市では土地利用管理や都市開発運営の規制の枠組みを多層構

造にした制度を研修生は学ぶことができるであろう。神戸はまた、革新的な都市運営、独特な起

業家精神、また都市開発や都市再開発の課題に対する優れた戦略で有名であり、神戸市は KM の

研修生が都市計画や都市開発のあらゆる側面について学ぶための良い手本となるだろう。

また神戸は 1995 年に起こった地震の多大なる被害から復興しており、大規模自然災害から復

興した都市として KM の職員にとって学ぶ価値のある例となるであろう。

名古屋

名古屋市も 2011 年 12 月に新たなマスタープランを作成し承認しており、現在、その新しいマ

スタープランを実現するために努力している。したがって、新たなマスタープランについて学び、

また、現在採択されようとしているその実施戦略について学習できることから、ここでの研修は

非常に時宜を得ている。さらに名古屋は交通計画や交通運営を学習するのには良い地であろう。

このマスタープランでは、コンパクトな土地利用を支える鉄道輸送を最優先することで集中的

土地利用型都市となることを目指しており、このマスタープランの重点項目の中でも特にこの想

定イメージの学習は注目に値するだろう。名古屋市の都市構造は伝統的に自動車輸送に依存して

おり道路建設が長年にわたって優先されているが、同時に名古屋市は現在、包括的な都市変容を

目指しており、2012 年はこの新しいマスタープランを実施する最初の年であった。

京都

京都は皇室の尊厳のもと約千年にもおよび首都としての役割を担ってきた歴史都市であり、ま

た京都御所や他の多くの歴史的な建造物の所在地であるので、都市景観の維持や風景の保護に関

する規制の枠組みを学ぶのにこの都市は良い事例になると思われる。京都市は歴史的景観の維持

と、止めることが困難な経済的な観点から起こる開発への動きとの調和を図ろうと精力的な努力

を行ってきた。社会の変化や人々の生活様式は、経済優先の、また効率を追求する動機によって

いつも影響を受けており、この経済活動と歴史的景観の保護といった相反する欲求をどのように

調和させるかという問題は、複雑でまた細心の注意を払って対処される必要がある。これらの問

題や状況に対応するかたちで、京都市は 2012 年 2 月に京都市都市計画マスタープランを作成し、

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昨年はこのマスタープランの実施が始まる年であった。このマスタープランで考えられている都

市構造のイメージも「コンパクトシティ」である。

広島

初めて原爆が投下された都市として世界でも有名である広島は、毎年 8 月にこの都市で開催さ

れる「平和首長会議」という国際的なイベントを創設し、この会議には 150 カ国以上の 4,600 を

超える自治体が代表を送っている。広島市は廃墟から再生した都市であり、「平和記念都市」で

あるこの街の復興状況は平和の大切さを象徴するものとなっている。「平和都市」の概念は、1)

振興と繁栄、2)仕事と私生活のバランス、3)平和への探求である。カブール市もまた戦災から

の復興に努力しており、広島との多くの共通点が見受けられるので、KM は広島から学ぶことに

よって、「戦災からの復興都市」また「国際平和都市」となるような目標を定めることができる。

一方、広島は、都市交通ターミナル、公共輸送システム・機関等を学ぶのにも適している。

福島(会津若松)

2011 年に日本東部は東日本大震災とその後の地震による津波で甚大な被害を受け、現在、復興

作業が進行中であるので、この都市を今、訪れることはアフガニスタンからの研修生にとって災

害後の復興過程を実際に観察できる貴重な機会となるであろう。会津若松市は、特に地震による

経済的損失からの復活をめざし都市計画、都市開発に市民が積極的に参加している都市の一つで

あり、例えば「会津まちづくり応援隊」という町づくり市民支援組織が活動している。

宮城(女川、松島)

女川、松島は 2011 年に地震と津波に見舞われた宮城県にある。現在、女川では、地域住民や民

間セクターが参加する中、町中心部の商業地区の再建計画が進められており、様々な作業グルー

プが、この地区の将来のあり方に係わる具体的な提案をしている。気仙沼では震災後、住民の一

部が安全上の理由のために別の地区に移動することを余儀なくされてきた。地域住民や非政府組

織(NGO)のメンバーによる復興整備協議会(まちづくり協議会)は、より安全な地域への移転

計画をまとめあげるのに重要な役割を担ってきており、また、このような計画作業において、民

間のコンサルタントの役割も大切なものであった。亘理町も市民、民間企業、私立大学の参加と

いった民間セクターの協力によって地域生活を再建している良い例である。

(4)-2インド

デリー(Delhi)

インドの首都としてデリーは権力の中心に座し、国全体にわたる管轄権を持つすべての中央省

庁、部署がデリーに置かれており、またすべての国家レベルでの政治的、教育的、科学的、戦略

的機関もデリーに位置しているため、デリーは国内の巨大都市の中でも特別な性質を有している。

国の政治や行政の首都であることに加え、デリーは活気ある経済活動が行われている真に多機能

な巨大都市で、一人あたりの所得はムンバイに次いで2番目の高さを誇っている。都市計画や都

市開発の観点から見れば、デリーは中世以来、計画開発の先駆的都市であり、現代の都市計画は

イギリス人が 1911 年にコルカタからデリーへ首都を移転し、その際に有名な都市設計者である

エドワード・ラッチェンス(Edward Lutyens)とハーバート・ベイカー(Herbert Baker)がニュ

ーデリーの街を 1912 年に設計したことから始まっている。インド独立後は、1957 年に設立され

て以来、デリー開発局(Delhi Development Authority: DDA)がデリーの都市計画や都市開発を担

っており、1950 年代より DDA は、積極的に新地区の計画や開発、また旧地区の改善に取り組ん

できている。従って、デリーを、ゾーニングや建築規制、また旧地区や非正規住居地の地域計画

や再開発の事例研究地として選択することは自明のことであろう。DDA は、社会の経済的弱者

のための住宅供給を含む住宅ストック(公営住宅の空き部屋)の確保に長い間携わってきてい

るので、社会住宅の授業はその経験から学ぶために実施される。

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アーメダバード(Ahmedabad)

インドで実施されている「土地区画整理法」の学習は、KMを対象とした研修の優先項目とさ

れているので、TPSに関する知識や技術を強化するためにもアーメダバードを研修対象都市とし

て選択したことは自然なことであろう。グジャラート州はTPSが成功裡に実施されているインド

唯一の州であり、この州最大の都市であるアーメダバードでは特に成功している。社会住宅供給

や非正規居住地の再生や再開発をもたらすTPSのような多くの成功事例を有しているアーメダバ

ードでこれらの事業を学ぶことはKMの研修生にとって最優先事項である。

講義内容およびそれらの授業を行う順序は、割り当てられた時間を最適に利用し研修生が実践

学習の効果を最大限に得るような方法で決められている。また、実地研修手法が、講師に助けて

もらいながら試験的に都市計画事業作成を試みる授業や、ワークショップ、また実際の事業を実

施している現場での学習に採用されることとなる。

チェンナイ(Chennai)

チェンナイは、インドで4番目に大きい都市であり、インドの南部に位置するタミル・ナードゥ

州にある。国が示す数字では州の31.1%の人々が都市部で生活しているとなっているが、2011年

の国勢調査によると、都市部には州人口の48.45%が生活しており最も都市化が進んだ州だとい

えるであろう。チェンナイは、この州の中でも都市部に最大の貧困層をかかえる都市であるが、

スラム地区(劣悪な住宅環境が密集する貧困地域)や都市部の貧困層が抱える問題に成功裏に対

処してきている。州レベルで都市貧困地区の対応をしている半官半民機関のタミル・ナードゥ・

スラム撤去委員会(Tamilnadu Slum Clearance Board: TNSCB)は都市の貧困層やスラム地区居住

者のためだけに住宅ストックを確保する活動を、この活動が大成功をおさめているチェンナイの

みならず、州全土にわたって継続的に行っている。これらのことから、チェンナイは、都市再開

発や社会住宅供給の状況や種類、戦略を理解するための事例研究都市として選ばれており、それ

は、またこの都市が採用しているこれらの手法が包括的で統合的なものであり、KMの研修生が

模範的な事例を学ぶことができるためでもある。

(4)-3トルコ

アンカラ(Ankara)

アンカラはトルコの首都であるので、国全体にわたる管轄権を持つすべての中央省庁、部署が

アンカラに置かれており、またすべての国家レベルでの政治的、教育的、科学的、戦略的機関も

アンカラに位置している。イスタンブールはアンカラよりはるかに大きい巨大都市であるが、国

の首都というアンカラの位置づけはこの都市に独特の性質を与えている。アンカラは行政や政治

の面で国を率いており、多くのコンサルティング会社、法律事務所、会計事務所、建設会社、不

動産開発業者の本社機能はアンカラに置かれており、さらにすべての省庁のみでなく、TOKI の

本社もアンカラに位置している。これらの状況から、日本の場合の東京のように、トルコでの講

義や演習のほとんどはアンカラで手配、実施することができるであろう。

イスタンブール(Istanbul)

イスタンブール都庁は都市運営や事業管理、ならびに都市計画問題において非常に先進的かつ

効率的な機関であり、特に、自治体運営の民営化やその組織編制の面で注目に値するので、イス

タンブールでの研修は KM の職員にとって、その都市運営の高度な取り組みを学ぶ素晴らしい機

会となるであろう。また、イスタンブールはトルコ最大の人口を有しており、人口増加によって

引き起こされる問題はイスタンブールで最も多くみられるので、多くの都市開発事業や都市再生

事業がイスタンブールで計画され実施されている。従って、この地で KM の職員は様々な現地調

査や面談調査を実施する機会を得ることができるかと思われる。

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3.2 能力開発の必要性と KM のために組まれた研修との関連性に関する一覧

以下の図は、表題の内容を示している。

表4:必要とされる能力開発項目と研修プログラムの比較一覧(KM)

研修プログラム

(分野・テーマ)

KMの都市開発・都市

再開発に必要な能力開発

本邦研修 インドでの

研修 本邦研修

トルコでの

研修 本邦研修

土地区画

整理

ゾーニン

グ・建築

基準・

詳細計画

TPS・都市

再生・

正規化

交通管制・

交通管理

都市変容・

土地区画

整理

参加的

手法

都市経済

開発・

都市運営

マス

タープ

ランの

実施

計画作成

定期的な見直し

や更新努力 ○ ◎ ○ ○ ○

計画作成の技術

的な能力

実施手法

ゾーニング(土

地利用規制)と

建築基準

○ ◎ ○ ○ ○ ○ ○

開発規制 ○ ◎ ○ ○

他の様々な実施

規制の枠組み ○ ○ ○ ○

用地取得や他の

解決策 ○ ○ ○

土地区画

整理 ◎ ○ ○ ○ ○

社会住宅 ○ ○ ○

参加型手法によ

る計画作成や

開発

○ ○ ○ ◎

都市再生

・都市

整備

大規模都市

再生・再開発 ○ ○ ○

都市環境

向上 ○ ○

制度・専門

資格

制度改革 ○

専門資格 ○

都市運営・

制度 制度・運営 ○ ○ ○ ◎

注:研修プログラムは左列から右列の順に行われる。

◎:特に教えられるべき項目

○:関連項目

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4. 研修の実施

(1)第1回本邦研修

コース名: 「KM のための土地区画整理の研修」

実施期間:2013 年 9 月 2 日 - 9 月 28 日(2013 年 9 月 1 日に日本着・ 2013 年

9 月 29 日:日本を出発)

受講者数:KM 職員 5 名

都市計画局区画整理課より 5名

主な学習項目:区画整理

土地区画整理の事業の進め方 土地区画整理における市民参加の局面 土地区画整理における住民コンセンサスの取り付け方 土地区画整理事業の具体的な事例によるケース・スタディ

この研修で KM の研修生は、どのように上記のような土地区画整理事業を進めていくか、実

務的な流れ、進め方を主に学習した。また、加えて、市民参加のもとに都市計画、都市整備

事業を進めることが、世界的な潮流となっているので、市民参加、コミュニティ参加での都

市計画についても学習すべく講義内・ワークショップのメニューに含めた。また、アフガニ

スタンでは、市民の理解を十分に得られないまま強権的に物事を進めることが多いので、日

本における民主的なプロセスを踏襲してもらうべく、コンセンサス・ビルディングを項目に

加えた。

講義・演習

研修は以下のように構成されている。

オリエンテーション KM 職員による「カントリー・レポート」の発表、質疑応答、討論 ポリテクニック大学教官による「疑似区画整理事業」についての報告 講義:URにおける土地区画整理事業 講義:海外における土地区画整理 講義:土地区画整理事業の実例(1) 講義:土地区画整理事業の実例 (2) 講義:日本型土地区画整理事業 講義:東京の土地区画整理事業 土地区画整理ワークショップ 土地区画整理の事業の流れ、手続きの進め方のワークショップ 視察(千葉地区の萱田、西八千代での区画整理事業) 土地区画整理における計算演習ワークショップ 講義:市民参加型の区画整理 視察(川崎市の生田地区における住民参加の実例) 視察(横浜市の長津田、こどもの国周辺の区画整理事業) 講義:URによる横浜市の長津田、こどもの国周辺の区画整理事業 北海道を訪問 視察(北海道における UR区画整理事業、ニュータウン事業) 講義:北海道における URによる区画整理事業

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視察(札幌の中心部での都市再開発事業、区画整理事業) 講義: 区画整理における住民・地主へのコンセンサス・ビルディング 土地区画整理事業での住民コンセンサス・ビルディングに関するワークショップ アクション・プランづくりのワークショップ 研修後のアンケート調査 「アクション・プラン」報告書作成 評価会と認定書授与式

アクション・プラン

この研修によるアクション・プランは、カブール市の 1区の Bagh Ali Mardan 地区に適用し

て実行しようと企図する区画整理の基本構想立案作業に関連したものである。研修生が来日

する前に、市長と副市長が、この対象地区を選定したが、それは、この研修を通じての計画

立案作業が単なる演習目的でなく、実際の事業化を見据えた作業とするためである。カブー

ル市で実際に運用するために、地主・住民の理解を得ること、カブールの状況に適したカス

タマイズを行う必要があることを研修生は認識したうえで、アクション・プラン作成作業を

行った。

4 年間にわたるタイムスケジュール 作業項目的には:(基礎調査)、(交渉)、(計画設計)、(換地)(建設)、(関係者との調

整) 1 年目は、基礎的な調査、住民と地主に対して説明と意見交換 社会調査、住民との接触、コミュニティ開発等において KSP と連動して行動にあた

る。 制度・規則の整備・確立が重要

(2)第2回本邦研修

コース名:「KM のための用途地域・建築基準法・地区計画に係る研修」

実施期間:2013 年 9 月 2 日 - 9 月 28 日、(2013 年 9 月 1 日:日本に到着・2013 年 9 月

29 日:日本から出発)

受講者数:KM 職員 5 名

都市計画局の土地再開発課より 5 名

主な学習項目:土地利用規制ゾーニング、建築規制誘導コントロール

多くの国で望ましき土地利用、都市開発計画を実現していくための基盤となる手法・手段と

して用いられている、用途地域制度(ゾーニング)、建築基準法、地区計画等の手法の学習が、

この研修の中心テーマであった。加えて、市民参加のもとに都市計画、都市整備事業を進め

ることが、世界的な潮流となっているので、市民参加、コミュニティ参加での都市計画につ

いても学習すべく講義内・ワークショップのメニューに含めた。また、アフガニスタンでは、

市民の理解を十分に得られないまま強権的に物事を進めることが多いので、日本における民

主的なプロセスを踏襲してもらうべく、コンセンサス・ビルディングを項目に加えた。

用途地域制度(ゾーニング) 建築基準法 地区計画 市民参加、コミュニティ開発 コンセンサス・ビルディング

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講義・演習

研修は以下のように構成されている。

オリエンテーション 講義:東京の成長と発展の概要・質疑応答 「カントリー・レポート」の発表 「パイロット・プロジェクトの状況」について報告 ポリテクニック大学教官による「疑似区画整理事業」についての報告 講義:カブールでの都市計画・土地利用について(1) 講義:カブールでの都市計画・土地利用について(2) 演習ワークショップ(区画整理の基礎理論復習、計算演習) 講演:日本のまちづくり、都市計画の手法について(1) 演習ワークショップ(ゾーニングと建築指導コントロール) 講演:日本のまちづくり、都市計画の手法について(2) 中間レビュー 演習ワークショップ(建築基準法の適用、計算演習) 講義:市民参加による都市計画、ケース・スタディ川崎市生田緑地 視察(川崎市生田緑地) 講義:横浜市長津田及びこどもの国での区画整理プロジェクト 視察(横浜市長津田及びこどもの国での区画整理プロジェクト) 視察(札幌の都市計画、UR 都市開発プロジェクト) 講義:北海道における UR事業 演習ワークショップ(アクション・プランづくり) 演習ワークショップ(用途地域、建築基準法の適用) 講義:市民参加による都市計画 演習ワークショップ(都市再開発プロジェクト) 演習ワークショップ(アクション・プランづくり)(1) 演習ワークショップ(アクション・プランづくり)(2) 演習ワークショップ(アクション・プランづくり)(3) 講義:区画整理における地主・住民とのコンセンサス・ビルディング 演習ワークショップ(区画整理における住民とのコンセンサスづくり) 「アクション・プラン」報告書作成 研修後のアンケート 評価会と認定書授与式

アクション・プラン

この研修によるアクション・プランは、カブール市にゾーニング(用途地域制度)を適用す

ることを企図するものであった。実験的な試みとして、パイロット・プロジェクトの Bagh

Ali Mardan 地区において、都市再開発計画を立案構想するとともに、ゾーニングのシステム

を適用してみることであった。研修生が来日する前に、市長と副市長が、この対象地区を選

定したが、それは、この研修を通じての計画立案作業が単なる演習目的でなく、実際の事業

化を見据えた作業とするためである。都市再開発事業が、実際に、当該地区で行われるべく、

併せて、ゾーニングが適用されるように、地主・住民の理解を得ること、カブールの状況に

適したカスタマイズを行う必要があることを研修生は認識したうえで、アクション・プラン

作成作業を行った。

Bagh Ali Mardan 地区での都市再開発計画に係るアクション・プラン

4 年間にわたるタイムスケジュール

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作業項目的には:(計画づくり)、(交渉カブール市役所内での意見聴取と取り纏め)、

(地主・住民との対話) 1 年目及び 2 年目は、基礎調査、地主・住民からの承認取り付け、意見交換を促進す

るために、基本構想、コンセプト・プランを立案 3 年目は、地主・住民とのコミュニケーションを深化させること、プランの最終化 4 年目は、実施

カブール市に適用カスタマイズしてのゾーニング制度に係るアクション・プラン

6 つのカテゴリーに分化した、ゾーニング(用途地域制度)計画案の作成 その 6 つのカテゴリーとは:(低層住宅地域)、(高層住宅地域)、(複合土地利用地域)

(近隣商業地域)、(商業地域)、(工業地域)

(3)第3回本邦研修

コース名:「KM のための交通管理・管制に係る研修」

実施期間:2014 年 1 月 14 日 - 3 月 10 日、(2014 年 1 月 13 日:日本に到着・2014 年 3 月

11 日:日本出発)(旅程の更なる詳細については、別紙 2 を参照のこと。)

受講者数:KM 職員 5 名

これまで、KM には、交通関係の部署も存在していなかったし、そのような教育を受けてきた

人員もいなかったので、特にどの部局から選ぶべきという関連性・脈絡はなかったので、若

手でまだ入所間もない人材から選出された。維持管理局の建設管理課から2名、用地局の価

格査定課から2名、環境保全・健康管理局の食品管理課から 1名の土地再開発課より 5 名

(更なる詳細については別紙 1 を参照のこと。)

主な学習項目:土地利用規制ゾーニング、建築規制誘導コントロール

多くの国で望ましき土地利用、都市開発計画を実現していくための基盤となる手法・手段と

して用いられている、用途地域制度(ゾーニング)、建築基準法、地区計画等の手法の学習が、

この研修の中心テーマであった。加えて、市民参加のもとに都市計画、都市整備事業を進め

ることが、世界的な潮流となっているので、市民参加、コミュニティ参加での都市計画につ

いても学習すべく講義内・ワークショップのメニューに含めた。また、アフガニスタンでは、

市民の理解を十分に得られないまま強権的に物事を進めることが多いので、日本における民

主的なプロセスを踏襲してもらうべく、コンセンサス・ビルディングを項目に加えた。

交通需要予測・交通計画全般 道路交通環境・道路ネットワーク計画 公共交通計画 交通管理 交通流管理 交通ターミナル

講義・演習

研修は以下のように構成されている。

オリエンテーション 「カントリー・レポート」の発表 演習(カブールにおける交通問題のとらえ方) 講義:世界の都市交通問題と対策カブールにおける都市交通問題のとらえ方 演習(カブールにおける都市交通改善対策案の検討)

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演習(サライシャマリ交差点の現状把握) 演習(サライシャマリ交差点の問題分析) 視察(都内の交差点見学 環状 7号線、8号線) 講義:交差点について概論 講演:ラウンドアバウト交差点概論 演習(サライシャマリ交差点改良計画) 講義:サライシャマリ交差点改良計画(立体交差、平面交差) 講義:自治体(横浜市)の交通関連の部署・組織設計 演習ワークショップ(カブール市における交通関連組織) 講義:交通安全(自動車交通事故と対策) 視察(日本自動車研究施設) 中間レビュー1 講義:名古屋市の公共交通整備の考え方と経緯 視察(あおなみ線の特徴と整備の経緯) 講義:LRT・BRT 及びフィーダーバス 講義:名古屋市の公共交通計画方針と施策 講義:バス停留所とバス・ターミナルの計画 講義:交通需要管理概論 講義:交通行動分析概論 講義:交通需要予測(四段階推計法)概論 講義:バス路線計画 中間レビュー2 講義:交通調査 講義:道路交通流動分析 講義:道路の階層構造・等級分け、交通量処理との関連性 演習ワークショップ(道路の等級・段階的な交通処理の考え方) 講義:パーク&ライドの概念、パーク&ライドに係る駐車場整備 講義:公共交通輸送システムの計画と必要となる交通調査手法 視察(道路の管理) 講義:(LRT 導入計画及び検討の進め方) 中間レビュー3 講義:バス・ターミナルの整備運営 視察(オアシス21/アルナス金山/近鉄バスセンター) 演習ワークショップ(バス・ターミナルの計画・整備運営1) 講義:名古屋市内の道路交通の管理 演習ワークショップ(バス・ターミナルの計画・整備運営2) 視察(岐阜バス・ターミナル・連結バスの運行・運営) 中間レビュー4 講義:交差点流動調査の解析方法 演習ワークショップ(交差点流動調査の解析) 講義:広島市内の公共交通政策と運営 視察(広島市内の交通状況と交通結節点整備事例) 講義:アストラム・ライン 視察(アストラム・ライン) 講義:路面電車 視察(広島電鉄及び近郊路線) 視察(広島市内のバス・ターミナル事例) 講義:仙台市の都市計画マスタープランと交通計画 視察(仙台市内の市営の地下鉄東西線) 視察(泉中央駅バスプール/パーク&ライド) 視察(仙台駅北側都市計画道路整備、仙台駅東土地区画整理事業)

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講義:多摩ニュータウンにおける都市計画と交通計画の関係 視察(多摩ニュータウン) 講義:鉄道事業整備制度 演習ワークショップ(地下鉄整備計画演習) 演習ワークショップ(道路管理運営計画の演習) 視察(高速道路の管理) 演習ワークショップ(「アクション・プランづくり」) 「アクション・プラン」報告書作成 研修後のアンケート 評価会と認定書授与式

アクション・プラン

この研修によるアクション・プランは、カブール市に交通問題を扱う部署を設置することで

あった。カブール市には、これまで都市交通問題を扱い、分析・把握を行う部署は無かった。

従って、当然、都市交通問題を理解し、交通計画等に通じるような人材はいなかった。

都市交通に係るアクション・プラン

2年間にわたるタイムスケジュール 4つのフェーズあり(第 1 フェーズ:タスクフォースの設置)、(第 2 フェーズ:コン

セプト・プラン計画立案)、(第 3 フェーズ:マスタープランの見直し、用地取得計画、

ビジネス・プラン、費用・受益分析、EIA)、(第 4 フェーズ:BRT 計画構想づくり、

Saraishamari 交差点改良計画) 上記のように、タスクフォースの設置を提案していたが、それを超えて、実際の組織

設立が行われた。

(4)第4回本邦研修

コース名:「KM のための住民参加型街づくり・復興に係る研修」

実施期間:2014 年 3 月 18 日 - 4 月 11 日、(2014 年 3 月 17 日:日本に到着・2014 年 4 月

12 日:日本出発)(旅程の更なる詳細については、KM 第 4 回本邦研修実施報告書の添付資

料 2 を参照のこと。)

受講者数:10 名(KM の PIU/KSP 職員 4 名、土地区画整理課から 2 名、都市計画局計画

課から 3 名、都市計画局調査課から 1 名)(更なる詳細については、KM 第 4 回本邦研修実

施報告書の添付資料 4を参照のこと。)

主な学習項目:土地利用規制ゾーニング、建築規制誘導コントロール

現在、都市計画や都市開発の実現のためには、住民参加のもとに行うことが世界的な潮流と

なっているが、一方、アフガニスタンのこれまでの行政運営、自治体行政では、専横的なト

ップダウンで非民主的な手法がとられてきた。本研修では、市民参加のもとに都市計画、都

市整備事業を進めるやり方を学習した。

住民参加の仕組み 住民参加のプロセス 住民参加の促進ツールや手段 住民参加のカブール市への適用の在り方

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30

講義・演習

研修は以下のように構成されている。

オリエンテーション 「カントリー・レポート」の発表 「カントリー・レポート」について研修生側からプレゼン報告 演習ワークショップ:本研修において学ぶ「市民参加」についての討論 演習ワークショップ:日本の都市計画・都市開発での「市民参加」 視察(神戸の震災復興地での「人と未来の防災センター」) 講義:日本の市民参加主導での都市整備 演習ワークショップ(市民参加の進め方) 講義:カブールでの都市計画・土地利用について(2) 演習ワークショップ(区画整理の基礎理論復習、計算演習) 講義:UR「舞多門での住宅地開発における購入者(将来住民)参加のもとの都市整

備・住宅開発の実験」 視察(神戸市営ゴルフ場を再開発しての UR「舞多門」住宅地の視察) 講義:都市問題の解決と市民参加という手法 演習ワークショップ(対人コミュニケーションの取り方) 講義:神戸市灘区六甲道駅南地区復興再開発 視察(神戸市灘区六甲道駅南地区復興再開発) 講義:神戸市長田区野田北ふるさとネット「鷹取駅周辺」 視察(長田区「鷹取駅」周辺) 講義:京都市における、市民参加での「景観まちづくり」事例 視察(京都の「町屋づくり」町並み保存の事例) 演習ワークショップ(市民参加による都市整備、東京の豊島区) 視察(東京都豊島区雑司ヶ谷) 講義:多摩ニュータウン、八王子みなみのシティにおける市民参加 視察(多摩ニュータウン、八王子みなみのシティ) 講義:北海道における UR事業 演習ワークショップ及び中間レビュー(これまでの講義・演習・視察を振り返って) 講義:区画整理・・・・参加型の都市整備手法の代表例的手法 演習ワークショップ(区画整理における計算演習) 講義:区画整理における住民・地主からコンセンサスをとりつける戦略・戦術 演習ワークショップ(区画整理事業におけるコンセンサス・ビルディングのロールプ

レイ) 演習ワークショップ(アクション・プランづくり)(1) 演習ワークショップ(アクション・プランづくり)(2) 講義:区画整理における地主・住民とのコンセンサス・ビルディング 演習ワークショップ(区画整理における住民とのコンセンサスづくり) 演習ワークショップ(「アクション・プラン」作成について) 講義:地主とのコミュニケーション、コンセンサスづくり 講義:震災からの復興都市再整備事業における住民参加 視察(宮城県牡鹿郡女川町における震災の状況と復興まちづくりのプロセス) 演習ワークショップ(女川町での都市再整備復興計画における住民参加) 講義:宮城県の東松島市での震災と復興まちづくり 視察(宮城県東松山市での震災の状況と復興まちづくりのプロセス) 演習ワークショップ(東北地方での震災からの復興に係る意見交換) 講義:都市開発事業における自治体の役割 講義:日本における自治体と市民との対話・コミュニケーション 演習ワークショップ(横浜市での市民と自治体との対話:コミュニケーションのケー

ス・スタディ)

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演習ワークショップ(本研修で学んだ「市民参加、住民参加」をアフガニスタン国カ

ブール市へどのように適用するかについての意見交換) 講義:東京都の世田谷区での街づくりと住民参加の試み「世田谷トラスト」の活動 視察(世田谷区における「共生の家」) 演習ワークショップ(アクション・プランづくり、市民参加のガイドラインづくりの

可能性) 研修後のアンケート 評価会と認定書授与式

アクション・プラン

この研修によるアクション・プランは、研修参加者の帰属する部署の担当分野、事業特性、

専門性に従い、3つのグループに分かれて作成された。1)区画整理・土地再開発チームのア

クション・プラン、2)計画課、GIS 課に即する職員によるアクション・プラン、3)KSP の

PIU に属するチームのアクション・プラン。

Bagh Ali Mardan 地区で住民参加を促進しながらのパイロット・プロジェクトの開発計

画に係るアクション・プラン

6 つの作業項目:(市民の意識の高揚)、(ワークショップの実施)、(住民との意見交

換、コンセンサスづくり)、(会合の開催)、(意見交換)、(実施) 2014 年の 4月~2015 年の 8月に亘って 17か月のタイムスケジュール

住民コンセンサスを得て第 4区の 15ha のの都市再開発を進めるアクション・プラン

2014 年の 4月~2015 年の 8月に亘って 17か月のタイムスケジュール 作業項目的には、(コンセプト・プランのプレゼン紹介と情報共有)、(土地所有状況

の調査)、(地区詳細計画の立案)、(住民との会合開催)、(都市計画審議会の開催)、

(計画の調整・修正)、(意見のとりまとめ)、(換地)、(委員会からの承認)、(実施)

住環境改善プロジェクトに係るアクション・プラン

2 か年のタイムスケジュール 作業項目的には、(組織の立ち上げ)、(意識啓発)、(研修の計画実施)、(データ収集)、

(住民コンセンサス)、(3R 運動)、(緑地・公園・樹木の価値、重要性の認識)、(ポ

スターの作成)

(5)第 5回本邦研修

コース名:「KM のための都市経営に係る研修」

実施期間:2014 年 3 月 25 日 - 4 月 10 日、(2014 年 3 月 24 日:日本に到着・2014 年 4 月

11 日:日本出発)(旅程の更なる詳細については、KM 第 5 回本邦研修実施報告書の添付資

料 2 を参照のこと。)

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受講者数:5 名(KM の財務・総務担当の副市長 1 名、財政局から 1 名、都市計画局土地

区画整理課から 1 名、政策調整局から 1 名)(更なる詳細については KM 第 5 回本邦研修

実施報告書の添付資料 4を参照のこと。)

主な学習項目:都市自治体経営の基盤を成す住民票、戸籍の管理掌握、固定資産(土

地・建物)の管理掌握、

現在、都市計画や都市開発の実現のためには、住民参加のもとに行うことが世界的な潮流と

なっているが、一方、アフガニスタンのこれまでの行政運営、自治体行政では、専横的なト

ップダウンで非民主的な手法がとられてきた。本研修では、市民参加のもとに都市計画、都

市整備事業を進めるやり方を学習した。

住民参加の仕組み 住民参加のプロセス 住民参加の促進ツールや手段 住民参加のカブール市への適用の在り方

講義・演習

研修は以下のように構成されている。

オリエンテーション 「カントリー・レポート」の発表 講義:自治体運営と都市経営の論点整理 講義:自治体の組織構造と組織運営 講義:大阪の都心開発戦略 視察(大阪阿倍野及び北梅田地区の都市再開発プロジェクト視察) 講義:京都観光都市戦略 講義:京都における歴史的町並み保存の方針・施策 視察(京都歴史的町並み保存の視察) 講義:日本の不動産登記の実務 講義:日本においての不動産情報の活用実態 講義:「学術研究」をテーマとした都市開発、都市経営戦略 視察(京阪奈丘陵に広がる関西学術研究都市) 講義:大阪の伊丹市のタウンマネージメント 視察(伊丹市のタウンマネージメントの現場) 講義:自治体での人材開発と組織戦略 演習ワークショップ(人材開発) 講義:千葉県の柏市での産学連携のまちづくり 演習ワークショップ(千葉県柏市での産学連携でのまちづくりの具体的施策事例) 講義:横浜みなとみらい21事業の横浜市における都市経営戦略的な位置づけ 視察(横浜みなとみらい21の開発地区) 講義:都市開発において自治体が果たす役割 演習ワークショップ(アクション・プランづくりに向けてのディスカッション) 講義:市役所の本庁と区役所の役割分担・・・横浜市の事例を通じて 講義:区役所業務の具体的な内容・・・・横浜市の瀬谷区役所の事例を通じて 講義:住民票と戸籍の制度・・・人口及び住民の把握管理 講義:固定資産税の徴収、その前提としての土地・建物(固定資産)の掌握 演習ワークショップ(アクション・プランづくり)(1) 演習ワークショップ(アクション・プランづくり)(2) 演習ワークショップ(アクション・プランづくり)(3) 「アクション・プラン」報告書作成 研修後のアンケート

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評価会と認定書授与式

アクション・プラン

この研修によるアクション・プランは、2つのグループに分かれて作成された。1)ファイ

ナンスと調達に関連してのアクション・プラン、2)区画整理・土地再開発チームのアクシ

ョン・プラン。

住民票・戸籍の確立、市民税の確立、税金関係のコンピューターシステム化に係るア

クション・プラン

2014 年の 4月~12月のタイムスケジュール 4つの作業項目:(準備:市民への説明と意見交換)、(データの収集)、(コンピュー

ター化)、(税システム、住民票関係の情報登録、研修の実施)

経済活性化の見地から Bagh Ali Mardan パイロット・プロジェクトの計画を見直し、

改定を進めるアクション・プラン

2014 年の 4月~2015 年の 7月に亘って 16か月のタイムスケジュール Bagh Ali Mardan 地区の区画整理・都市再開発プロジェクトの修正 作業項目的には、(条例・手続き・その他必要な制度の制定・構築)、(ベースマップ

作成)、(カブール市役所内に委員会の設置)、(土地所有関係の把握、物理的な条件等

の把握)、(住民コンセンサス)、(コンセプト・プランの立案策定)、(実施計画の策

定)、(関係者の調整)

(6)第6回本邦幹部研修

コース名:「KM 幹部のための区画整理・都市再開発、住民参加型都市計画・住民コンセ

ンサス都市経営に係る研修」

実施期間:2014 年 11 月 10 日 - 11 月 21 日、(2014 年 11 月 10 日:日本に到着・2014 年

11 月 20 日:日本出発)

受講者数:7 名(KM の各部局の局長 6名、副局長 1名)

主な学習項目:区画整理・都市再開発、都市自治体経営の基盤を成す住民票、戸籍の管

理掌握、固定資産(土地・建物)の管理掌握、参加型の都市計画、住民コンセンサス

現在、これまでの研修での中心学習テーマであった区画整理・都市再開発を実現すべくのパ

イロット・プロジェクトについて幹部にも理解をしてもらい、パイロット・プロジェクトの

実現を促進する大きな手助けとする。また、都市計画や都市開発の実現のためには、住民参

加のもとに行うことが世界的な潮流となっているが、一方、アフガニスタンのこれまでの行

政運営、自治体行政では、専横的なトップダウンで非民主的な手法がとられてきた。本研修

では、市民参加のもとに都市計画、都市整備事業を進めるやり方を学習した。さらに、自治

体経営の基盤となる住民・人口把握のトゥール、税収・自治体歳入について学習する。

区画整理事業の基本メカニズム 市街地再開発事業の基本メカニズム 住民参加の仕組み 住民参加のプロセス

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住民参加の促進ツールや手段 住民参加のカブール市への適用の在り方 住民票・戸籍 固定資産税、住民税等の地方税 自治体の経営組織

講義・演習

研修は以下のように構成されている。

オリエンテーション 「カントリー・レポート」の発表 講義:区画整理の各国事情 講義:区画整理事業と地主・住民とのコンセンサス・ビルディング 演習:コンセンサス・ビルディングのロールプレイゲーム 講義:カブール市の交通問題 講義:住民参加型都市計画1 視察:(横浜みなとみらい 21) 講義:住民参加型都市計画2 視察:(横浜みなとみらい 21視察) 講義:多摩市の聖蹟桜ヶ丘駅周辺の区画整理・都市再開発 視察(聖蹟桜ヶ丘駅周辺の区画整理・都市再開発後の状況視察) 講義:自治体の経営組織、横浜市を実例として 講義:住民票、戸籍 講義:日本の税制の概要、自治体による税収 講義:民間ディベロッパーによる都市再開発、官民協力による都市再開発・区画整理 視察(六本木ヒルズ、虎の門ヒルズ) 演習ワークショップ(アクション・プランづくり)(1) 「アクション・プラン」報告書作成 研修後のアンケート 評価会と認定書授与式

アクション・プラン

この研修に参加したカブール市役所の幹部は、市役所内の枢要な部署の局長、副局長等であ

ったので、各人が持つ責任、管理を担当する事象等の相違点から、アクション・プランは、

各人ごとに分かれて作成された。1)都市計画局のアクション・プラン、2)第 1区のアク

ション・プラン、3)用地局のアクション・プラン、4)建設コントロール局のアクショ

ン・プラン、5)土地権利及び土地供給局のアクション・プラン、6)人事局のアクショ

ン・プラン、7)政策調整局のアクション・プラン

(7)インドでの研修

コース名:「KM のためのインド区画整理(TPS)、非公式住宅地の公式化、市民参加に係る

研修」

実施期間:2013 年 11 月 4 日 - 12 月 6 日(2013 年 11 月 3 日:インド到着・2013 年 12 月

7 日:インド出発)

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受講者数:KM 職員 6 名

6 名とも課は異なれども、都市計画局に属す。区画整理課から 2 名、土地再開発課から 1名、

調査課より 1 名、建築家から 1名、鑑定評価課から 1 名

主な学習項目:インド方式の区画整理(TPS)、非公式住宅地の公式化、住民参加・コミ

ュニティ参加

日本では現在、非公式住宅地は存在しないので、日本では学びにくい「非公式住宅地」問題

やその対応策としての公式化の方策、また、インド方式の土地区画整理(TPS)、さらには、

住民参加やコミュニティ参加について学習した。

インドの都市計画全般の概論 インドの土地区画整理(TPS:Town Planning Scheme)の基礎理論 アーメダバードでの TPS の活用状況 インドにおける「非公式住宅地」問題の背景とこれまでの経緯 「公式化」Regularization の進め方 市民参加、住民参加の背景とインドでの状況

講義・演習

研修は以下のように構成されている。

オリエンテーション KM 職員による「カントリー・レポート」デリーでの発表 講義:デリーの発展プロセス 講義:「非公式住宅地」の進行が都市に引き起こす問題 講義:「非公式住宅地」問題を解決するためにこれまでインドで取られてきた施策、

方針、法的な制度 講義:規則・制度の視点からアフガニスタン国カブール市とインドの諸都市を比較 演習ワークショップ(「国と州政府の間で、どのように「非公式住宅地」問題の解決

に向けて努力してきたか、特に施策・方針上の違い、それはなぜかディスカッション」 演習ワークショップ(「非公式住宅地」の地図化、インフラ整備状況・社会状況等の

現況把握調査の実施方法、やり方等、カブール市での適用実施へのカスタマイズ方法) 視察及びワークショップ(デリーにおける「非公式住宅地」を視察、再開発・環境整

備計画策定プロセス、参加型の実施展開のアプローチ) 講義:公式化のプロセスでよく起こる問題と対応策、住民参加、整備計画水準 講義:デリーでの居住環境改善プロジェクトでのコンサルタントとしての経験 講義:公式化プロセスでのチェックリスト 演習ワークショップ(公式化のパイロット・プロジェクト対象地の選定(第 4 区にお

いて)、インドの経験・叡智のカブールへの適用の仕方) 演習ワークショップ(デリーでの研修を踏まえての「アクション・プラン」作成) KM 職員による「カントリー・レポート」チェンナイでの発表 講義:ゴミ収集でのコミュニティ参加、住民参加 講義:コミュニティ開発での公共セクターとしての努力、スラムでの住民移転問題 視察(Kannagi Nagar でのコミュニティ開発) 演習ワークショップ(コミュニティ開発におけるステイクホールダーの取り扱い、

NGO の役割、コーディネーション努力の重要性) 講義:NGO (Exnora International Information)のコミュニティ開発の経験 演習ワークショップ(チェンナイでの研修を踏まえてのアクション・プラン作成) 講義:グジラート州アーメダバードでのインド方式区画整理 TPS のメカニズム

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演習ワークショップ(ベースマップづくりの演習、計画対象地の選定と境界設定の方

法、現地調査の仕方) 講義:TPS の計画策定における目的設定、政策・方針における位置づけの確認 演習ワークショップ(パイロット・プロジェクトを通じて目的設定、計画の枠組み、

主要方針の設定) 組織訪問及び講義受講(アーメダバード市開発庁、TPS 説明ビデオの視聴) 視察(TPS プロジェクト対象地/Ghandinaghar 新行政都市、GIFT City) 視察(都市交通プロジェクト BRTS/Sabarmati リバーフロント) 演習ワークショップ(計画対象地での「目的」「計画枠組み」「計画策定の方針」の設

定の仕方) 演習ワークショップ(コンセプト・プランの策定) 演習ワークショップ(カブール市 1 区でのパイロット・プロジェクト対応での骨格的

なインフラ計画デザインと概略費用見積もりの仕方) 演習ワークショップ(換地計画の立て方、コスティングとインフラ計画との関連も考

慮して) 講義:アーメダバードでのインド TPS プロジェクト経験 演習ワークショップ(アーメダバードでの研修・学習内容を踏まえてのアクション・

プランづくり) 演習ワークショップ(カブールでの「非公式住宅地の公式化」の適用の仕方の復習、

それと関連するアクション・プランについてレビュー・再検討) 演習ワークショップ(カブールでの「市民参加、コミュニティ開発」の適用の仕方の

復習、それと関連するアクション・プランについてレビュー・再検討) 演習ワークショップ(アクション・プランの統合、全体とりまとめ) 研修後のアンケート調査

デリーの JICA インド事務所でのアクション・プランのプレゼンテーション、評価会

研修生チームでの内部反省会と帰国後のアクションの確認

アクション・プラン

この研修によって、3つのインドの都市を訪問したが、都市ごとに学習テーマは異なっていた

ので、それに対応して、3つのアクション・プランが作成された。1)インド方式区画整理

(TPS)のアクション・プラン(Ahmedabad)、2)住民参加とコミュニティ開発のアクション・

プラン(Chennai)、3)非公式住宅地の公式化のアクション・プラン(Delhi)。

インド方式区画整理(TPS)に係るアクション・プラン(Ahmedabad)

3 か月の短期のタイムスケジュール、及び 12 か月の中期タイムスケジュール 作業項目は 12:(ベースマップの作成)、(土地所有関係の調査)、(住民への説明と意

見交換)、(コンセプト・プラン)、(換地)、(インフラ建設コスト)、(地価の分析・評

価)、(資金調達計画)、(コンセンサス形成)、(計画の調整・改定)、(土地所有者、住

民との意見取り纏め)、(計画の最終化)

住民参加とコミュニティ開発のアクション・プラン(Chennai)

非公式住宅地を公式化する際の住民参加とコミュニティ開発の実践の仕方 インド方式区画整理を進める際の住民参加とコミュニティ開発の実践の仕方 健康振興の一環でスポーツジムを計画整備する際の住民参加とコミュニティ開発の実

践の仕方

非公式住宅地を公式化する際のアクション・プラン(Delhi)

4 か月の短期タイムスケジュールと 19か月の中期計画(2014 年 1 月~2015 年 7 月)

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作業項目的には、以下の通り:1)パイロット・プロジェクトのサイト選定、2)ベ

ースラインのデータ収集、3)インフラ開発整備と住環境改善の計画、4)公共施設

計画、5)資金調達・ファイナス計画、事業採算チェック、6)土地所有権利調査、

7)開発計画と枠組みの整理、8)住民と土地所有者とのコンセンサス形成、9)実

(8)本邦研修実施後に追加補足的に実施したインドでの短期間(1週間)の第三国研修

コース名:「KM のための非公式住宅地の公式化に係る研修」

実施期間:2013 年 9 月 29 日 - 10 月 5 日(2013 年 9 月 29 日:インド到着・2013 年 10 月

5 日:インド出発)

受講者数:KM 職員 10 名

6 名とも課は異なれども、都市計画局の区画整理課から 5 名、土地再開発課から 5名(上記の

(1)区画整理本邦研修に参加の 5名、(2)の土地利用規制誘導ゾーニング、建築指導コン

トロールの 5名の計 10名。)

主な学習項目:非公式住宅地の公式化

インドにおける「非公式住宅地」問題の背景とこれまでの経緯 「公式化」Regularization の進め方

講義・演習

研修は以下のように構成されている。

オリエンテーション KM 職員による「カントリー・レポート」デリーでの発表 講義:都市計画マスタープランと土地利用計画 講義:「非公式住宅地」の進行が都市に引き起こす問題 講義:「非公式住宅地」問題を解決するためにこれまでインドで取られてきた施策 講義:「非公式住宅地」の公式化での金銭的支援の在り方 講義:都市機能更新、都市再開発がもたらす恐れのある社会的な影響・問題 講義:公式化作業における実施する現地調査、ベースライン情報整理、レイアウト計

画図の作成 講義:公式化していく上での基準設定、パラメーター設定 講義:公式化のプロセス上の住民参加 講義:公式化実現のための財務的な支援 視察(デリー市内の「非公式住宅地」、Before・After) 講義:ゾーニング及び地区計画 演習ワークショップ(「非公式住宅地」の公式化を進める上でのマニュアルづくりに

係る考察・討論) 研修生チームでの内部反省会と帰国後のアクションの確認

アクション・プラン

この短期間インド研修は、既に言及している本邦研修の第 1 回、第 2 回に引き続いて、

帰国時に、インドに立ち寄り、日本で学びにくい非公式住宅地の公式化などについて、

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1 週間だけ補足学習が行われた。期間も短く、補足的な内容であったので、このイン

ド短期間研修に特定して別にアクション・プランを作成することは、しなかった。

(9)トルコでの研修

コース名:「KM のためのトルコ方式区画整理、アーバン・トランスフォーメーション、

非公式住宅地(Gecekondu)の公式化、住民参加型都市計画に係る研修」

実施期間:2014 年 8 月 31 日 - 10 月 4 日(2014 年 8 月 31 日:トルコ到着・2014 年 10 月

3 日:トルコ出発)

受講者数:KM 職員 6 名

4 名は、都市計画局に属す。その 4名のうち 2名は区画整理課・土地再開発課から、1名は建

築課、1 名は調査課。そのほか、建設管理局から 1名。用地局から 1名。(更なる詳細につい

ては KM トルコ研修実施報告書の添付資料 4 を参照のこと。)

主な学習項目:トルコ方式の区画整理(TPS)、アーバン・トランスフォーメーション

(都市再開発)、非公式住宅地の公式化、住民参加・コミュニティ開発、住民コンセンサ

日本では現在は、非公式住宅地は存在しないので、日本では学びにくい「非公式住宅地」問

題やその対応策としての公式化の方策、また、トルコ方式の土地区画整理(TPS)、さらには、

住民参加やコミュニティ参加について学習した。

トルコの都市計画全般の概論 トルコの土地区画整理、都市再開発(アーバン・トランスフォーメーション)の基礎

理論 イスタンブール、アンカラでの区画整理の活用状況 トルコにおける「非公式住宅地」問題の背景とこれまでの経緯 非公式住宅地(Gecekondu)の「公式化」Regularization の進め方 市民参加、住民参加の背景とトルコでの状況

講義・演習

研修は以下のように構成されている。

オリエンテーション KM 職員による「カントリー・レポート」の発表 講義:アンカラ首都圏の発展プロセス 講義:「非公式住宅地」の進行が都市に引き起こす問題 講義:「非公式住宅地」問題を解決するためにこれまでトルコで取られてきた施策、

方針、法的な制度 講義:トルコにおけるアーバン・トランスフォーメーション都市再開発の背景と歩み 講義:トルコの都市計画制度 講義:トルコにおける住民参加による都市計画の進め方、重要な役割を演じる主体 視察:(新都市開発事業の事例:Batikent, Eryaman, Cayyolu の視察) 講義:Kepez-Santral の Gecekondu でのアーバン・トランスフォーメーション 講義:土地収用と土地評価の手法 講義:トルコの区画整理 講義:トルコの区画整理の法律・規則の体系 演習ワークショップ(トルコの区画整理の事例を用いた演習)

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演習ワークショップ(トルコの区画整理を踏まえて、アフガニスタンでの活用の仕方) 理解度テスト(1) 講義:非公式住宅地(Gecekondu)の形成のプロセス、その歴史的な歩み 講義:非公式住宅地(Gecekondu)の公式化の方策、手法 演習ワークショップ:公式化の演習 演習ワークショップ:トルコの Gecekondu を踏まえつつ、アフガニスタンにおける非

公式住宅地の公式化についてのディスカッション 視察:(アンカラにおける都市環境改善の事例) 講義:トルコの Gecekondu での住民参加による公式化プロセス、進め方 講義:区画整理の実施手順 演習ワークショップ:非公式住宅地の公式化の実施マニュアル 演習ワークショップ:Bagh-E-Ali Mardan を事例にして都市環境改善のプランニング

の演習 講義:アンカラの Dikmen Valley での都市再開発 視察:(Dikmen Valley) 講義:北アンカラでの都市再開発 視察:(北アンカラの都市再開発プロジェクト) 講義:トルコのアーバン・トランスフォーメーション法・規則の体系 演習ワークショップ:トルコのアーバン・トランスフォーメーションについての自由

討議 講義:アンカラの Altindag 区での都市再開発、都市環境改善プロジェクト 視察:(Gultepe,Aktas,Dogantepe) 講義:住民参加型の都市計画 視察:(Altindang Hamamonu) 理解度テスト(2)

移動(アンカラ→イスタンブール) 講義:イスタンブールの発展のプロセス 講義:大量住宅供給プロジェクトのフィージビリティ、アーバン・トランスフォーメ

ーション・プロジェクトのフィージビリティ 講義:イスタンブールにおけるアーバン・トランスフォーメーション・プロジェクト 視察:(IBB/ Kiptas プロジェクト) 講義:イスタンブール首都圏庁のアーバン・トランスフォーメーション・プロジェク

ト 講義:Zeytinburnu 市のアーバン・トランスフォーメーション・プロジェクト 講義:紛糾案件の利害調整 視察:(アーバン・トランスフォーメーション Fikirtepe, Umraniye) 演習ワークショップ:アクション・プランの作成 研修後のアンケート調査

アンカラの JICA トルコ事務所でのアクション・プランのプレゼンテーション、評価

研修生チームでの内部反省会と帰国後のアクションの確認

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40

アクション・プラン

各人の専門性ごとに整理して、4つのアクション・プランが作成された。1)非公式住宅地

の公式化のアクション・プラン、2)建設コントロールに係るアクション・プラン(Chennai)、

3)土地データ収集と参加型アプローチのアクション・プラン、4)パイロット・プロジェ

クト・エリアでのコンセプト・プラン。

非公式住宅地の公式化に係るアクション・プラン

2014 年 11 月から 2年間のタイムスケジュール 作業項目は5つある。:(研修で学習した事柄の情報共有、普及)、(現在のカブール市

マスタープランをレビュー、理解する)、(住環境改善プロジェクト向けの重点地域の

選定)、(住環境改善のガイドライン)、(住環境改善計画の立案)

建設コントロールに係るアクション・プラン

7 か月のタイムスケジュール 建築確認申請制度での完了検査の導入創設 作業項目的には以下の通り:(建築確認申請の完了検査の概念の情報共有、普及)、

(自治体審議会に提案打診)、(審議会に承認してもらう)、(完了検査証のフォーマッ

トの調整)、(フォーマットの普及)

土地データの収集登録と参加型アプローチのアクション・プラン

1 年間のタイムスケジュール 作業項目的には、以下の通り:1)学習した事項の情報共有、2)住民と土地所有者

への説明セミナー開催、3)土地権利データの収集整理と情報登録

Bagh Ali Marda 地区におけるパイロット・プロジェクトの開発に係るコンセプト・プラ

ン策定のアクション・プラン

9 か月のタイムスケジュール 作業項目的には、以下の通り:1)開発シナリオづくり、2)ビジネス・プラン策定、

3)法的な枠組みの整理・調整、4)土地所有者の組合の設立、8)社会調査の際に、

KSP を利活用

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カブール市役所 業務完了報告書

41

5.対象となる研修生グループのプロフィールと適性

5.1 研修生や学習素地の全体的な状況分析

研修とは原則的に有用な学習内容を含んでいなければならず、有効性の観点からみても研修や

その後の実施展開は各研修生や KM の状況にとって適切なものでなければならない。一方で、効

率的な人材育成を行うためには個々の潜在能力や適性を考慮する必要があり、具体的な知識や技

術を吸収するために必要な基本的な技術的知識や技能をあらかじめ有しているかといったことが

特に重要となる。今回の場合でいえば、都市計画や都市開発に関する一般的な知識が前もって要

求されるであろう。

各人の大学時のバックグラウンドは、主に土木専攻。その他建築専攻等

JICA はカブール市のマスタープラン改定を精力的に支援してきており、そのような経緯から、

研修の目的は、土地区画整理や土地開発規制・誘導(ゾーニングや建築規制による)の実践を学

習したいという KM のニーズにこたえるのが大きな目的であったため、本邦研修も第三国研修も、

その主対象の学習分野テーマは、区画整理、ゾーニング、建築コントロール、土地問題等であっ

ため、また、そういった経緯から、土木・建築関係の教育バックグラウンドが主であった。

第 3 回本邦研修は、これまでの分野・テーマと異なる都市交通を対象に計画実施した。そもそ

も現在のカブール市役所の組織には、交通を担当する部署は存在しないことと、アフガニスタン

の大学で交通計画を専攻する学部・学科はこれまでなかった。カブール大学にようやく交通専門

の教官が出てきはじめつつあるところである。そのため、この交通の本邦研修に参加する研修生

は、これまでの学歴としての大学の専攻、職歴では選べないので、若手の優秀な素養を持つ人材

から選んだ。結果として、大学では建築専攻だった者が 3名、土木 1名、環境・防災 1名であっ

た。

第 4 回本邦研修は、住民参加、市民参加を学習する研修であったが、KMからの参加者は、こ

れら研修生はこれまで主に学士レベルの土木工学や建築を学んできており、土木技術者や建築設

計者として確かに建造物の設計や施工には携わっている。しかし、これら職員は土木構造工学の

分野や政府の建物の設計などには携わってはいるものの、都市計画にかかわる作業をおこなって

いるわけではなく、またアフガニスタンの大学教育は、土木工学や建築は教えていても都市計画

の一般的な知識を十分に教えていないこともあり、研修生の都市計画や都市開発の一般的、基本

的な知識は不足しているといえよう。研修生の懸念や関心は建造物の建設に向けられており、都

市計画や社会経済的側面といった建設における「ソフト」な側面に向けられているとはいえない。

特に若手の KM 職員にとっては具体的かつ専門的な職業経験を積む前に、都市計画の一般的で

基本的な知識を広く習得することが不可欠である。KM の能力開発は喫緊の課題であることを鑑

みると、土地区画整理やゾーニングのような特定の専門能力を開発すると同時に、KM の関係部

署の職員に都市計画の一般的な基礎知識を提供し、能力開発を行うという同時並行的なアプロー

チを取ることが求められた。

KM の若手職員の英語力、新しい知識への適応性

前フェーズのサブプロジェクトでの経験、及びカブール市マスタープラン策定時の時の印象で

は、KM の職員は概して英語を使いこなすことはできないとのイメージであったが、本フェーズ

のサブプロジェクトでは、全体的に英語のレベルが上がっている。この数年、大学新卒の優秀な

若手がカブール市役所に入所してきていることの結果として起こってきていることであろう。も

ちろん、自由に使いこなせる程のレベルの人材はほとんどいないが、ある程度読み書き、聞き取

り、話もできるレベルの人材が多くなった。また、前のフェーズから参加している人材も、前の

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42

フェーズの時には、ほとんど英語使えないと思われた人材も、このフェーズのサブプロジェクト

では、簡単な会話ができるようになり、ある程度、自分の意見が言える程度の会話力が身に着い

た人材も散見される。これまでの研修で日本、インド、トルコへの渡航時の経験、カブールでの

準備学習、フォローアップ学習等が刺激となって、英語学習意欲も湧いているものといえよう。

カブールでの予備講義と研修生の学習素地

第 1 回(区画整理)、第 2回(建築コントロール、ゾーニング、地区計画)本邦研修について

は、以前のフェーズでの学習での蓄積された当該知識があったことと、第 3 回(交通管理)では、

出発前に、カブール大学の教官を現地調査員として活用し、出発前に、事前の予習として、交通

計画、交通問題の概論、用語学習を行ったことが功を奏して、研修生が研修先に到着した後、こ

れらは確実に授業内容をより良く理解する手助けとなった。一方、第 4回(住民参加)、第 5回

(都市経営)本邦研修については、これまで扱ってこなかった分野・テーマであり、前述の新設

課だけでなく、カブール市役所内の他の組織に関わり、経営管理業務全般に関わりがある分野で

あったことなどから、予備講義を行うことが困難であったため、日本に来てからの学習となった。

しかしながら、基礎的、導入的な位置づけのレベルであったので、理解するのに困難ということ

はなかった。

5.2 対象グループのプロフィールと評価分析

2013 年 9 月に行われた第 1 回、第 2 回本邦研修(2013 年 8 月 30 日 - 9 月 29 日、31 日間)

及び、其の後、帰国前にインドで補足研修(9月 30 日-10 月 5 日)に参加した研修生

第 1 回(区画整理)本邦研修、第 2 回(土地利用規制誘導ゾーニング、建築指導コントロール)

本邦研修、及びインド研修については、第 1 区でのパイロット・プロジェクト対象地でのプロジ

ェクト実現につながるような能力開発となるべく、計画された。従って、研修生は 10 名。この

選定は、研修生の所属部門の観点から見ても適切な構成となっており、KM は巨大な組織である

が、研修生選定は研修の目的や研修内容を十分に考慮して行われたと言えるであろう。過去の研

修生グループを振り返ってみると、研修生の所属部署の担当業務が研修内容とあまり関係してい

なかったような人が含まれていたので、この点に関して改善がなされたことが見受けられた。な

お、彼ら 10 名の大学での専攻に着目すると、これら第 1回本邦研修、第 2回本邦研修の 10 名の

うち実に 9名までが大学では土木学の専攻であった。もう一人は建築であった。

実用面を教えるという意図からすれば、10 名とも 20 代から 30 歳代前半であり、このような研

修で学習成果を上げるのには適した年齢層思われる。また、研修生グループの構成の決定は、上

記のように、10 名とも区画整理課、土地再開発課から選定されていることは、サブプロジェク

トチームと KM 首脳部との間の議論や合意を完全に反映したものだといえるであろう。

彼ら 10 名のリーダー役は、区画整理課、土地再開発課の両課を束ねる責任者がリーダーであ

り、一定の経験があり、カブール市として公式に位置づけられた責任者であり、適任といえる。

また、

個々の研修生の基礎知識や事前の理解状況は程度の差が存在していたが、前フェーズのサブプ

ロジェクトでのこれまでの研修プログラム参加による学習成果により、ほぼ全ての研修生は、区

画整理、建築基準法、用途地域等の基礎知識的な面で一定レベルの理解度があり、研修生が海外

研修をうけるために必要な基礎知識や予備知識の形成に良い影響を与えたからだと推定できる。

換言すれば、この人材育成プログラム以前には、KM 職員の土地区画整理、建築規制、ゾーニン

グの知識はほぼ皆無であったので、研修の後、大きな変化が起こったといえるであろう。

研修への参加態度の面では、研修を通して参加者は概して非常に注意深く知識欲が旺盛で、多

くの質問をし、熱心に学んでいた。

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43

表5:第 1回本邦研修(区画整理)の研修生のプロフィール

番号 名前 部署 役職 主な担当

1 Faridon AFSHARI 都市計画局区画整理課

区画整理課の

課長(9月か

らピースで日

本留学)

区画整理課全体の統括

2 Nangialay YOUSUFZAI

都市計画局区画整理課

区画整理課調

査技術員(9

月からピース

で日本留学)

区画整理パイロット・

プロジェクト計画準備

3 Masoud Ahmad SEDICQI

都市計画局区画整理課

区画整理課調

査技術員

区画整理パイロット・

プロジェクト計画準備

4 Ahmad Samir EHSAN

都市計画局エンジニア

リング課

エンジニアリ

ング課調査技

術員

区画整理パイロット・

プロジェクト計画準備

5 Ekramuddin SHAHAB

都市計画局エンジニア

リング課

エンジニアリ

ング課調査技

術員

区画整理パイロット・

プロジェクト計画準備

表6:第 2回本邦研修(建築コントロール・ゾーニング・地区計画)の研修生のプロフィール

番号 名前 部署 役職 主な担当

1 Qiam SHINWARI 都市計画局区画整理課

及び土地再開発課を束

ねる部 部長

部全体(区画整理課及

び土地再開発課)の統

2 Wahid SHAHABY 都市計画局土地再開発

土地再開発課

の課長・調査

技術員

都市再開発・ゾーニン

グ・建築コントロール

地区計画、パイロッ

ト・プロジェクト準備

3 Nazifullah OMARKHILL

都市計画局土地再開発

土地再開発課

調査技術員

都市再開発・ゾーニン

グ・建築コントロール

地区計画、パイロッ

ト・プロジェクト準備

4 Atiqullah HAMIDI 都市計画局土地再開発

土地再開発課

調査技術員

都市再開発・ゾーニン

グ・建築コントロール

地区計画、パイロッ

ト・プロジェクト準備

5 Abdul Hameed MOJADDIDY

都市計画局土地再開発

土地再開発課

調査技術員

都市再開発・ゾーニン

グ・建築コントロール

地区計画、パイロッ

ト・プロジェクト準備

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44

なお、現地カブールのセキュリティ面での問題から、日本人専門家が現地カブールに出張する

ことができないため、現地でのフォローアップを補填・強化する必要があり、その観点から、現

地のカブール・ポリテクニック大学の教官に現地でのフォローアップに本サブプロジェクトの現

地調査員として参画してもらうこととした。アフガニスタンでは、都市計画の法制度は未整備な

ため、その大学教官自身も区画整理、用途地域、建築コントロール等の知識を十分に持ち合わせ

ていないため、大学教官自身の能力強化も含めて、この本邦研修にも参加してもらった。それに

よって、研修実施前、研修中、研修実施後・帰国後の能力強化、パイロット・プロジェクト実現

化に向けて切れ目なく支援をしやすい体制となった。

2014 年 1 月-3 月に行われた第三回本邦研修(交通管理)(2014 年 1 月 12 日 – 3 月 12 日、

60 日間)

この研修では 5名の研修生が 3 つの部局から選ばれ日本へ派遣された(建築管理局より 2 名、

用地局鑑定評価課より 2 名、食品管理局より 1 名)。この研修は、今まで、交通問題に取り組む

部署のなかった KMに、都市交通の計画、施策を立てられ、カブール市の交通問題の改善に取り

組む部署を新設することを目指した研修であり、交通問題、交通計画全般の学習、特に都市再開

発、区画整理等での関連において、都市交通ターミナル拠点、道路ネットワーク計画、結節点の

交通処理問題等に関する学習をしてもらう研修であった。これまでに、KMがそのような交通問

題に対応する部署が存在していなかったため、当然ながら、交通計画、交通管理等について専門

家、学習機会を過去に持ちえた人材はいなかった。結果、カブール市役所内全体を見回して、こ

の1-2年のうちに採用された、優秀な若手人材の中から、希望者を募り、面接選抜と 2段階の

試験を行い、「交通」という新しい分野の学習に強く興味を抱く人材の中から選定された。参加

者は全員、非常に注意深く積極的で知識欲が旺盛で、態度は非常に誠実であり、概して日本側の

講師からは良い印象を引き出すことができた。

なお、本サブプロジェクトでは、日本人専門家をアフガニスタンに派遣できない事情に対応し

て、カブールでの出発前の準備、帰国後のフォローアップに本研修のリーダー役として、カブー

ル大学の教官を参加させた。この研修生グループの指導補助において適切なリーダーシップを発

揮し、また、カブールの状況と日本での学習の関連付けに大きな貢献をしてくれた。また、来日

前の準備、及び帰国後のフォローアップ指導にも大きな役割を担っている。カブール市役所内に

交通問題を担当する課を新設する点についても、カブール市の市長、副市長との意見交換、連絡

調整等を行い、カブールで本邦研修での成果を事業や組織に具現化していくプロセスにも大きな

役割を果たしてくれた。

予備講義に関していえば、インドでのこの研修も KM の研修生に予備講義を行う効果や必要性

を示している。予備講義は研修生が海外での研修を受ける前に、それらへの準備姿勢や予備知識

を高めるために重要な役割を果たしていた。帰国後のカブールでのフォローアップ学習について

も、カブール市役所内での交通課の設立、及び着実な機能の発揮に向けて有用であった。

表7:第 3回本邦研修(交通管理)の研修生のプロフィール

番号 名前 部署 役職 主な担当

1 Mohammad Ehsan AZIZI 用地局鑑定評価課 鑑定評価課の調査

技術員 土地関係の調査・評価

2 Aemal AMARKHEL 用地局鑑定評価課 鑑定評価課の調査

技術員 土地関係の調査・評価

3 Ahmad Zubair

FAQIRZAI 維持管理局建築監理

課 建築監理課の調査

技術員 建築監理およびモニタ

リング

4 Mustafa Saad SULTANI

維持管理局建築監理

課 建築監理課の調査

技術員 建築監理およびモニタ

リング

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5 Abdul Nazir RASULY

環境保全・健康管理

局食品監理課 食品監理課の調査

技術員 食品監理およびモニタ

リング

2014 年 3 月-4 月に行われた第四回本邦研修(住民参加)(2014 年 3 月 15 日 – 4 月 14 日、

31 日間)

この研修生グループ 10名は、KSP 実現のために設立された PIU の人材 4名、カブール市の都

市計画局の人材 6名、2つのグループから構成されていた。また、カブール市の都市計画局の人

材も、新設の区画整理・土地再開発の 2部署から選定された人材と、都市計画局の従来の部局か

ら選定された人材とで構成されていた。一方、PIU の 4名も、2名はカブール市プロパーで採用

された人材、もう 2名は、KSP の実施のために JICA のカブール GKD 事務所で採用された現地

調査員である。この研修生グループは、所属組織・立場・業務内容・基礎能力レベルに差異があ

る混成グループであるが、住民参加を取り入れて実施する KSP と今後住民参加を幅広くカブール

市の業務に反映するために選ばれた 10 名であった。住民参加を実施する場面では、様々な立場、

意見、個性の人々の意見をまとめていく必要があり、そういった意味では、「住民参加」、「市民

とのコミュニケーション」を学習するのには、適した混成グループともいえよう。

このグループの利点は、KSP の 2 名は、非常に英語能力が高く、基礎能力も高い人材であった

ため、研修中の講義・ワークショップの様々な局面で、通訳の補足的な役割を果たしてくれた。

純粋に言語の変換というだけでなく、意味を読みこなして現地語に訳し、また、カブール市の業

務遂行局面への反映といった意味で補完的な役割もはたしてくれた。そういった意味で、講師と

研修生の意思疎通はより密に展開できた。

このチームの不都合だった点は、研修生が仕事の経験があまりないことと、カブールでの準備

講義に出席する機会がなかったということである。このグループの研修生は KM で働き始めてま

だわずか 1 年や数年しか経っておらず、それは実務経験がそれほどないことを意味している。さ

らに、カブールでのゾーニング規制や建築規制に関する準備講座に参加できなかったことで、こ

れらの研修生の都市計画および都市開発に関する予備知識のレベルは非常に低かった。

KSP の人材は、日頃の業務で住民参加を実践してきているので、住民参加の意味を捉えやすか

ったが、カブール市役所から派遣されてきた人材は、まだアフガニスタンでは、住民参加がカブ

ール市の都市計画や都市開発の実践には適用されておらず、また現在、制度的に組織的に定着し

ていないので、住民参加の意味、重要性について、ようやくこの研修で触れたところであり、カ

ブール市役所の実際の業務に普及適用実施には、相当大きな努力が必要なことが、この研修後の

アクション・プラン作成過程で明らかとなった。

表8:第 4回本邦研修(住民参加)の研修生のプロフィール

番号 名前 部署 役職 主な担当

1 Ahmad Shekib RAFI KSP プロジェクト実

施ユニット KSP リーダー KSP の現地リーダーとし

て取り纏め指導

2 Fatana JAMIL KSP プロジェクト実

施ユニット KSP 社会開発専

門家 コミュニティの社会面の

調査、住民との調整

3 Ahmad Farid BAHMAN

KSP プロジェクト実

施ユニット(KM から

出向)

KSP11 区コーデ

ィネーター

11 区での KSP 実施に伴

う計画調整、住民とのコ

ミュニケーション

4 Ahmad Shoaib JAHANI

KSP プロジェクト実

施ユニット(KM から

出向)

KSP4 区コーデ

ィネーター

4 区での KSP 実施に伴う

計画調整、住民とのコミ

ュニケーション

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5 Farid ASHFARI KM 都市計画局

区画整理課 都市計画局

区画整理課長

区画整理・土地再開発パ

イロット・プロジェクト

計画実施

6 Ehsanullah SAFI KM 都市計画局

区画整理課

都市計画局

区画整理課

調査技術員

区画整理・土地再開発の

パイロット・プロジェク

トの計画実施

7 Sayeed Mohammmad Jawad HUSSAINI

KM 都市計画局

計画課

都市計画局

計画課

調査技術員

都市計画の調査、計画業

8 Ahmadullah NAQSHBANDI

KM 都市計画局

計画課

都市計画局

計画課

調査技術員

GIS を KM に普及し、

GIS 業務を行うチームの

リーダー

9 Mohammad Rafi TABESH

KM 都市計画局

計画課

都市計画局

計画課

調査技術員

GIS を活用した都市計画

調査、計画業務

10

Mohammad Ramin AMIRYAR

KM 都市計画局

調査課

都市計画局

調査課

調査技術員 都市計画調査業務

2014 年 3 月-4 月に行われた第五回本邦研修(都市経営)(2014 年 3 月 15 日 – 4 月 14 日、

31 日間)

自治体としての経営管理を勉強する研修であるため、この研修グループには、3 名いるカブー

ル市副市長のうち、経営管理財務担当の副市長 1 名が含まれた。その他の 4 名の研修生について

は、財政局から 1 名、調達局から 1 名、都市計画局区画整理課から 1 名、都市計画局土地再開発

課から 1 名選ばれ派遣された。研修内容は、自治体を経営管理する視点からの経営戦略、自治体

経営の基盤を形成する最も根幹的な部分(住民の登録管理、人口の正確な把握・・・・住民票、

戸籍、自治体税収の確保としての固定資産税、住民税を学ぶことに重点が置かれていた。また、

都市開発、インフラ開発等が自治体経営財政にどのような意味を持ち、関連性を持っているかを

具体的な都市開発プロジェクトのケース・スタディの中で学んだ。

5 名の研修生うち 3 名が 20 代後半から 30 代前半の若手であったが、上記のように経営財務担

当の副市長や財政局の中間管理職もいて、帰国後に実際のカブール市業務に反映していく上での

バランスはとれていた。

英語力の面では、6 名の研修生のうち 1 名の若手は英語に堪能で、副市長と区画整理課の 1名

は、ある程度、英語の講義も聴取可能であった。

表9:第 5回本邦研修(都市経営)の研修生のプロフィール

番号 名前 部署 役職 主な担当 1 Mohammad Aslam

AKRAMI 部署に属さない 副市長(経営財

務担当) カブール市の財政、経営

管理、 2 Mohammad

AKBARI 財政局 経営管理分野の

中間管理職 カブール市の財政・税務

等の業務 3 HedaAhmad

Jamshed HAQBIN 調達局 経営財務事務職

員 カブール市の調達業務

4 Nangialai YOUSUFZAI

都市計画局

区画整理課 調査技術員 区画整理パイロット・プ

ロジェクトの計画実施 5 Hamid Shah

SULTANI 都市計画局

土地再開発課 調査技術員 ゾーニング、建築基準法

等の導入適用

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2014 年 11 月に行われた幹部研修(2014 年 11 月 10 日 – 11 月 21 日、12 日間)

カブール市役所の幹部を対象にした研修であるため、市役所の各部局の長を集めての研修を行

った。この研修グループの構成メンバーは以下に示すように、都市計画局長、建設コントロール

局長、用地取得局長、用地整備供給局長、政策調整局の副局長長、第 1 区の区長代行、人事局長

の 7 名であった。趣旨としては、これまで気鋭の若手の能力開発を行ってきたが、彼らが帰国し

てからの対応アクションの実現を図るには、幹部の理解無くしては、実現不可能であるので、幹

部を日本に呼んで、区画整理、都市再開発の重要性を理解してもらうことは重要である。また、

局長向けの研修であるので、カブール市役所の経営管理においてもっとも重要な要素となる自治

体の歳入確保の基盤となる税収制度の理解促進、住民や人口の把握の基盤となる住民票、戸籍等

の制度の理解促進も含まれていた。また、アフガニスタンの都市計画・都市開発で最も欠けてい

る部分である住民コンセンサスについても学習した。

幹部であるので、7名の研修生うち 3 名が 50代、2名が 60代、2名が 40代であった。

英語力の面では、40 代の 2名、及び 60代の 1名、計 3名は、英語堪能であったが、残り 4名

は、英語は堪能ではなかった。

表10:第 6回本邦幹部研修の研修生のプロフィール

番号 名前 部署 役職 主な担当 1 Mohammad Naeem

CHAARDIWAL 用地局 用地局長 カブール市の用地取得、

その他の土地関連問題 2 Mohammad Sarwar

SARWAR 建設管理局 建設管理局長 カブール市における建設

活動のコントロール 3 Mohammad Yasin

NIAZY 都市計画局 都市計画局長 カブール市における都市

計画、都市開発 4 Faridoun RASHIDI 土地整備供給局 土地整備供給局

カブール市における土地

開発整備 5 Ahmad Kamal

QASEMYAR 人事局 人事局長 カブール市役所の人事、

人材開発 6 Nawkhan JOMAZAI 第一区の区役所 第 1区の区長代

行 区役所の運営管理

7 Mohammad Yasin HELLAL

政策調整局 政策調整局の副

局長 カブール市役所の政策調

2013 年 11 月-12 月に行われたインド研修(インド方式区画整理・住民参加・非公式住宅

地の公式化)(2013 年 11 月 3 日 – 12 月 7 日、35 日間)

この研修に参加した 6 名は、所属する課は異なれども、皆、都市計画局から選ばれている。区

画整理課から 2 名、土地再開発課から 1 名、調査課から 1 名、建築課から 1 名、数量計画課から

1 名。日本では学びにくいテーマや局面を学習する第三国インド研修であり、日本にはない「非

公式住宅地」の問題や対応策、住民参加による都市計画・都市開発、インド方式の区画整理

(TPS)を勉強する研修であるため、この研修グループは、半分の 3 名は、新設された区画整理

課・土地再開発課から、もう半分の 3 名は、都市計画局内の他の課、調査課、数量計画課、建築

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課から各 1 名の 3 名で構成された。研修内容は、上記のように、3つのテーマがあったが、時間

的な配分からは、インド方式区画整理(TPS)の学習に特に重点が置かれた。

6 名の研修生すべて 20 代後半から 30 代前半の若手であった。そのため、確たるリーダー格の

存在が無く、研修の実施の中で、行動規範的なリーダーシップを発揮し、学習内容の理解におい

ても率先的に理解できる人材がいなかった点が、やや問題であった。

英語力の面では、6 名の研修生のうち 1 名の若手は英語に堪能、その他の研修生は、一部英語

が理解でき、流暢には英語を話すことはできないが、簡単な会話は可能というレベルであった。

表11:インド研修の研修生のプロフィール

番号 名前 部署 役職 主な担当 1 Ehsanullah SAFI 都市計画局

区画整理課 調査技術員 区画整理・土地再開発の

パイロット・プロジェク

トの計画実施 2 Ahmad Samim

RANJBAR 都市計画局

区画整理課 調査技術員 区画整理・土地再開発の

パイロット・プロジェク

トの計画実施 3 Hamid Shah

SULTANI 都市計画局

土地再開発課 調査技術員 ゾーニング、建築基準法

等の導入適用、パイロッ

ト・プロジェク実施 4 Fraidon GHASI 都市計画局

調査課

調査技術員 都市計画局の都市計画調

査業務 5 Ahmad Shekib

AMINI 都市計画局

建築課 調査技術員 建築計画設計業務

6 Ahmad Jawid ZAKHILY

都市計画局

数量計画課 調査技術員 都市計画関連の数量計画

調査業務

2014 年 9 月-10 月に行われたトルコ研修(トルコ方式区画整理・都市再開発(アーバン・

トランスフォーメーション)、非公式住宅地の公式化、住民参加型都市計画、住民コンセ

ンサス)(2014 年 8月 31 日 – 10 月 4 日、35 日間)

この研修に参加した 6 名のうち、4 名は、都市計画局から、1 名は、建設管理局、もう 1 名は、

用地局から選ばれた。都市計画局の 4 名のうち、2 名は、新設された区画整理・都市再開発課か

ら選ばれている。所属する課は異なれども、皆、都市計画局から選ばれている。区画整理課から

2 名、土地再開発課から 1 名、調査課から 1 名、建築課から 1 名、数量計画課から 1 名。日本で

は学びにくいテーマや局面を学習する第三国トルコ研修であり、日本にはない「非公式住宅地」

の問題や対応策、住民参加による都市計画・都市開発、トルコ方式の区画整理を勉強する研修で

あった。

6 名の研修生すべて 20 代後半の若手であった。そのため、惜しむらくは、確たるリーダー格の

存在が無く、研修の実施の中で、行動規範的なリーダーシップを発揮し、学習内容の理解におい

ても率先的に理解できる人材がいなかった点が、難点であった。

英語力の面では、6 名の研修生のうち 1 名は英語に非常に堪能、2名は、流暢とはいかないが

一応英語でコミュニケーションできるレベル、その他 3名は、英語でのコミュニケーションは困

難であった。

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表12:トルコ研修の研修生のプロフィール

番号 名前 部署 役職 主な担当 1 Ekrammdin

SHAHAB 都市計画局 区画整理課

調査技術員 区画整理・土地再開発の

パイロット・プロジェク

トの計画実施 2 Nazifullah

OMARKHIL 都市計画局

土地再開発課 調査技術員 区画整理・土地再開発の

パイロット・プロジェク

トの計画実施 3 Mohammad Ramin

AMIRYAR 都市計画局

調査課

調査技術員 都市計画局の都市計画調

査業務 4 Aboozar CHERAGH 都市計画局

建築課

調査技術員 都市計画局の建築関係の

建築設計、建築計画業務 5 Mohammad Nasim

MUNIB 用地局

土地情報課 調査技術員 用地取得業務に係る土地

情報の整理、調査 6 Abdul Samim SAFA 建設管理局

建設管理課 調査技術員 建築活動を制御管理する

業務

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50

6.研修実施後のフォローアップ

6.1 フォローアップ会議

本件サブプロジェクトの実施中に、カブール市役所の幹部と実施された研修についての評価、反

省を行い、今後の実施の方向性、実施方法について協議し、改善を図っていくことは肝要である。

また、区画整理・都市再開発のパイロット・プロジェクトの状況について、幹部とフェイス・ト

ゥ・フェイスでしっかり協議することによって、より有効に効率的にプロジェクト実現ができる

と思われる。その見地から、5回に亘って、数日間、カブール市役所の幹部と日本、インド、ト

ルコなどでフォローアップ会議を開催した。

(1)第1回フォローアップ会議(デリー)

期間: 2014 年 2 月 8 日~10 日(3日間) 場所:インド国デリー Hotel Bristol 協議内容:主にパイロット・プロジェクトの進め方、及び KM 側からマスタープラ

ンのブレイクダウン計画作業に向けた JICA 支援要請、新設部署の役割・業務範囲

ToR について o 区画整理・都市再開発パイロット・プロジェクトのコンセプト・プランの

作成の仕方について

o 住民・地主とのコンセンサス・ビルディングの重要性、そして KSP との連

携について

o 実施のために制度・手続きの準備が必要

o 今後直面すると予想される課題の整理

o 今後の遂行の時間スケジュール表の作成及びマイルストーンの認識

o 当該土地での土地権利の状況把握・確認

o カブール市の都市計画マスタープランを市域全体から区の計画、地区詳細

計画へブレイクダウンしていく努力に向けて、JICA からの支援を頂けない

かとの要請

o 非公式住宅地の公式化

o 新設された「区画整理課」、「土地再開発課」の役割・業務範囲の確定

(2)第2回フォローアップ会議(イスタンブール)

期間: 2014 年 5 月 9 日~10 日(2日間) 場所:トルコ国イスタンブール Lamartine Hotel 協議内容:主にパイロット・プロジェクトの進め方、カブール市役所職員の今後

必要となる能力開発の内容・進め方、 o 区画整理・都市再開発パイロット・プロジェクトの実施のためには、法律

制度面でのバックアップが重要

o パイロット・プロジェクトのコンセプト・プラン作成過程へのアドバイス

o 時間スケジュール表のアップデート

o これまで実施された研修及びその成果を踏まえて今後必要と考えられる能

力開発の方向性、範囲、進め方について

o 特に、今後、能力開発上必要な主要項目は、土地区画整理・都市再開発、

都市交通、都市経営、市民参加型アプローチ、区別計画や土地利用・ゾー

ニング・建築指導コントロール

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(3)第3回フォローアップ会議(東京)

期間: 2014 年 8 月 19 日~20日(2日間) 場所:日本国 東京 JICA 東京国際センター(TIC) 協議内容:JICA が協力して進められたタイでの区画整理制度の導入のプロセス、

その成果、特に DVD 広報映像での普及プロセス、条例・法律としての制度定着の

道筋等 o タイの区画整理への JICA の協力の経験

o カブールでの都市再開発パイロット・プロジェクトの実施のためには、カ

ブール市適用のための条例として起動させ、行く行くは、国の法律へ格上

o パイロット・プロジェクトの進捗状況の確認

o タイの上記の DVD をカブールでの知識普及に活用するために、ダリ語での

吹き替えすること、それへの UDH 側での支援の内容・方法

o カブール市の制度面での支援目的のため UDH 側で作成したカブール市の区

画整理条例の案文第一稿について

o カブール市側から重ねて、カブール市の都市計画マスタープランのブレイ

クダウンへの JICA 支援

o 成功裏に実施されてきた KSP について

o カブール市内道路、サライシャマリ交差点改良、バス・ターミナル、BRT 等

の都市交通面

o 能力開発 CD の継続の重要性、PEAC プロジェクトも継続してほしい旨の KM

側からの要請

o パイロット・プロジェクトでの住民・地主の参加型の協力、減歩への協力

付随して行われた訪問・レクチャー等:東京都の建築指導課・土地利用計画課を

訪問、横浜市瀬谷区を訪問 o 上記の会議に先立って、8 月 18 日に東京都を訪問して、土地利用計画課か

ら用途地域制度(ゾーニング)と建築基準法と絡めての土地利用規制誘

導・建築規制誘導について受講

o 上記の会議の後で、8月21日に横浜市の瀬谷区区役所を訪問して、市役

所本部と区役所の役割分担、横浜市の都市経営施策、そして、「住民票・戸

籍」の制度、「固定資産税」「市民税」等の税収について受講

(4)第4回フォローアップ会議(東京)

日本でのフォローアップ研修に転用して実施

期間: 2015 年 1 月 7 日~16 日(10日間) 場所:日本国 東京/名古屋 JICA 東京国際センター(TIC)及び中部国際センタ

ー(CIC) 東京での研修内容:

日本・インド・トルコの区画整理・都市再開発の制度の特徴について国際比較分

析、カブール市の疑似区画整理的な先行プロジェクトについて(1 月 7 日~10 日) o 日本・インド・トルコの区画整理・都市再開発制度の横断比較分析

o カブール市向けに起案した区画整理条例案文について再検討確認

o カブール市の中心部で近年実施された、区画整理によく似た手法を用いた

プロジェクトの制度面での検討

名古屋での研修内容:

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ガニ大統領が強い関心・興味を抱いている名古屋の区画整理の学習、その関連で

名古屋市都市計画全般の学習、各プロジェクト現地の視察(1 月 11 日~12日) o 名古屋市の都市計画全般、区画整理事業の歴史

o 春日井市の勝川の駅前での区画整理・都市再開発等

東京でのとりまとめ: 学習内容のとりまとめ、及びアクション・プラン作成(1 月 13 日~16日)

(5)第5回フォローアップ会議(東京)

通常のフォローアップ会合に加えて、今後のカブール市のプロジェクト実現に寄与するべ

く、いくつかの自治体を訪問して、区画整理・都市再開発のノウハウの強化、都市経営の戦略・

方策に資するべく、受講及び意見交換を行った。結果的に、日本の自治体との関係強化につなが

った。

期間: 2015 年 2 月 16 日~23日(8日間) 場所:日本国 東京・横浜/名古屋 JICA 東京国際センター(TIC)、横浜国際セン

ター(YIC)及び中部国際センター(CIC) 協議内容:(2月 16日及び 18日)

o 今後のカブール市の能力開発で重点努力する分野・範囲についての確認、

これから数年に亘っての実施の時間スケジュール表の作成・確認

o 本サブプロジェクト、及び KSP、市内道路プロジェクト等の本サブプロジェ

クトと並行して実施されていた案件も含めて継続支援への JICA への要請

o 次のフェーズのプログラムに進めるかどうかに関連した必要条件等の確認

東京・横浜での自治体及び UR等の表敬訪問及び受講:(2月 17 日及び 18日) o UR 本部理事への表敬訪問、そして UR の区画整理・都市再開発事業について、

UR 本部の入居する横浜アイランドタワーのビルの歴史的な建築の保全と最

新オフィスビルの建設等の並存について学習

o 横浜市役所副市長への表敬訪問、そして横浜市の市政への取り組み、横浜

市が国際的に展開するシティネット

o 東京都副知事への表敬訪問、そして都市整備局から新宿で実施している都

市再開発プロジェクトについての説明、そして意見交換

名古屋での自治体及び UR等の表敬訪問及び受講:(2月 17 日及び 18 日) o 名古屋市長への表敬訪問、名古屋市都市センターから、名古屋市の都市計

画全般、名古屋での土地区画整理事業の歴史的な歩み、現在の名古屋での

都市計画全般の説明を受講、意見交換

o 春日井市における勝川駅前の区画整理事業、都市再開発事業について、勝

川駅の現地で春日井市役所の都市計画部署の職員から受講、意見交換

o 名古屋市の CBD 地区の栄での区画整理、都市再開発視察、その他、名古屋

駅周辺での都市再開発プロジェクト視察

東京でのとりまとめ: 学習内容のとりまとめ、及びこれまでの協議内容の確認(2月 22 日~23 日)

6.2 月次衛星 TV 会議でのフォローアップ活動

本件サブプロジェクトの実施中に、随時、フォローアップが行えるように、おおよそ月に1度あ

るいは2度の頻度で、カブール市役所の幹部と現状についての確認評価、反省を行い、今後の実

施の方向性、実施方法について協議し、改善を図っていくための衛星 TV 会議を開催した。特に、

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53

カブール市側とは、現地で進めている、区画整理・都市再開発のパイロット・プロジェクトの状

況についての状況確認、それから、必要と思われる補講的なレクチャーをタイムリーに行った。

計11回行った。

(1)第1回 KM 月次衛星 TV 会議

期日: 2014 年 7 月 23 日 場所:東京 JICA 本部とカブール GKD オフィスを結んで 協議内容:

o UDH 側で作成したカブール市の区画整理条例用の案文についてのカブール市

側からのコメント、相互意見交換

o カブール市側で、UDH の都市交通研修の実施後に、学習内容を反映して新設

した新部署(都市交通を取り扱う部署)について、状況確認、今後の課題

について意見交換

o サライシャマリ交差点の改良について意見交換

o カブール市役所内での知識共有の代について

o 次回の KM衛星 TV 会議の期日等について確認

(2)第2回 KM 月次衛星 TV 会議

期日: 2014 年 9 月 8 日 場所:東京 JICA 本部とカブール GKD オフィスを結んで 協議内容:

o 2014 年 11 月に実施する本邦幹部研修の目的、実施スケジュール、大まかな

日程について

o カブール市の区画整理条例案文、今後制定化されている流れについての意

見交換

o タイの区画整理の広報のために作成された DVD のダリ語訳の吹き替えにつ

いて

o ANSA(アフガニスタン政府規則ガイドライン等制定庁)が最近発行した都

市開発規則集(日本の用途地域制度に対応している)をカブール市の都市

行政でどのように取り扱うかについて

o 2014 年 11 月 10 日の開催する区画整理フォーラム(日本)について情報共

o 次回の KM衛星 TV 会議の期日等について確認

(3)第3回 KM 月次衛星 TV 会議

期日: 2014 年 10 月 14 日 場所:東京 JICA 本部とカブール GKD オフィスを結んで 協議内容:

o カブール市の区画整理の条例の法制度化の確定に向けた今後のスケジュー

ル、活動予定について

o 2014 年 11 月に実施する本邦幹部研修の日程・計画内容等についての情報ア

ップデート

o カブール市職員が、UDH を通じて能力開発を行った内容についての知識共有、

カブール市役所内での普及のための活動、その道具としてのブックレット

づくりについて

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o カブール市役所の組織に設立された都市交通担当部署の今後の予定につい

o ANSA(アフガニスタン政府規則ガイドライン等制定庁)が最近発行した都

市開発規則集(日本の用途地域制度に対応している)、建築規則集(日本の

建築基準法)について、カブール市側でどのように対応するのか

o 次回の KM衛星 TV 会議の期日等について確認

(4)第4回 KM 月次衛星 TV 会議

期日: 2014 年 11 月 4 日 場所:東京 JICA 本部とカブール GKD オフィスを結んで 協議内容:

o 新大統領ガニが、カブール市役所を訪問して、カブール市役所職員にスピ

ーチした「カブール市にとって今後重要な3つの事項」について

o パイロット・プロジェクトについての 2014 年 11 月~2015 年 3 月までの5

か月間の活動予定について

o UDH から世界各国の区画整理の制度の国際比較についての説明

o カブール市の土地区画整理・都市再開発の条例の案文についての修正ポイ

ント確認

o 次回の KM衛星 TV 会議の期日等について確認

(5)第5回 KM 月次衛星 TV 会議

期日: 2014 年 12 月 9 日 場所:東京 JICA 本部とカブール GKD オフィスを結んで 協議内容:

o 区画整理・都市再開発パイロット・プロジェクトに関して、土地所有権利

の状況、コンセプト・プランについてアップデート状況の確認

o UDH より 2015 年1月に予定している日本でのフォローアップ研修について

説明、来日前に準備すべきデータ、図面等についての確認

o 1月来日時に訪問予定の名古屋の区画整理について導入紹介的な情報提供

o 先月11月に実施した KM 本邦幹部研修の成果、アクション・プランについ

ての市役所内プレゼンテーション会議の予定確認

o タイの区画整理の DVD のダリ語吹き替えの進行状況の確認

o 次回の KM衛星 TV 会議の期日等について確認

(6)第6回 KM 月次衛星 TV 会議

期日: 2014 年 12 月 24 日 場所:東京 JICA 本部とカブール GKD オフィスを結んで 協議内容:

o ナワンデッシュ市長の辞任及び、今後の予想される動向について

o 土地区画整理条例の案文の修正推敲、既存の都市住宅開発の市の規則の改

定すべき点についての確認

o 新たな法案化(区画整理条例の制定)の前に、既存の都市住宅開発の規則

の改定のみでパイロット・プロジェクトが実施可能なものなのかどうか、

訴訟を起こされる可能性はないか等のリスク分析

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o カブール市でカスタマイズして適用する「区画整理」での減歩の取り扱い、

保留地の取り扱い(トルコ的な一律適用、無償での拠出の可否、インド TPS

的な簡便化してのスキーム等)

o 最近、カブール市役所内に新設された新設部署(都市交通課)の取り扱い

o これまでの研修成果のブックレット化、タイ区画整理 DVD 等について

o 次回の KM衛星 TV 会議の期日等について確認

(7)第7回 KM 月次衛星 TV 会議

期日: 2015 年 1 月 14 日 場所:JICA 東京国際センター(TIC)とカブール GKD オフィスを結んで 協議内容:

o ガニ大統領によるワヒッド市長代行の任命、及び就任後の予想される動向

について

o 新設部署を3つに再編(①土地区画整理・都市再開発、②用途地域・建築

基準法等、③都市交通課)

o 当面、ワヒッド市長代行は、技術分野の副市長ポストの役割責任も兼務す

る。

o 東京に滞在して研修中のカブール市職員から、コンセプト・プラン等説明、

ワヒッド市長代行からコメント

o 2014 年 11 月に実施された KM 本邦幹部研修で作成されたアクション・プラ

ンについてプレゼンテーション会議が1月10日に実施されたことの報告

o 土地区画整理・都市再開発の法律手続き面の準備の進行状況等について

o 次回の KM衛星 TV 会議の記述等について確認

(8)第8回 KM 月次衛星 TV 会議

この回は、用途地域(ゾーニング)、建築基準法等の適用についての補講的な研修として

転用して実施

期日: 2015 年 2 月 10 日 場所:JICA 東京国際センター(TIC)とカブール GKD オフィスを結んで 協議内容:

o アフガニスタンの都市計画のプランニング、プロジェクト実施の際に、頻

繁に適用してきたディテール・プラン制度とゾーニング制度の特徴の比較

分析

o 今後、カブール市が用途地域制度(ゾーニング)を導入適用していく場合

のメリットと、克服しなければならない課題の検討

o 以前の本邦研修で検討されてきたアクション・プラン(ゾーニング導入を

目途としたアクション・プラン)での用途地域の土地利用カテゴリーの種

類、段階導入案等

o 次回の KM衛星 TV 会議の記述等について確認

(9)第9回 KM 月次衛星 TV 会議

この回は、用途地域(ゾーニング)、建築基準法等の適用についての補講的な研修として

転用して実施

期日: 2015 年 3 月 3 日

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場所:東京の JICA 本部とカブール GKD オフィスを結んで 協議内容:

o 用途地域制度(ゾーニング)/建築基準法に関連した計算演習(建蔽率・

容積率等の計算など)

o 2月10日に出題しておいた、容積率・建蔽率に基づいて建築計画を行う

プランニング演習の講評

o KM ブックレットの作成に向けた取り組みの進行状況の把握

o 次回の KM衛星 TV 会議の記述等について確認

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7. 研修結果に関する DAC 五項目による評価

7.1 妥当性に関する評価

7.1.1 アフガニスタンの開発ニーズとの整合性

カブール市の人口は急激な増加傾向にあり、本来の都市のキャパシティをすでに超えている状

況である。この傾向は今後も続くと思われ、2025 年には人口が 650 万人に達するとの予測もあ

る。カブール市の都市基盤の復旧・整備は遅れており、慢性的な水不足や地下水汚染、交通渋滞

等の問題が深刻化することが予想され、居住環境や衛生環境の悪化は都市経済の持続的な成長を

妨げる要因として懸念されている。かかる状況下、アフガニスタンの要請を受けて、JICA は、

2007 年 11 月から 2009 年 8 月にかけて「カブール首都圏開発計画調査」を実施し、KM の能力向

上を計ることを目的とした技術協力プロジェクト「カブール首都圏開発計画推進プロジェクト」

(以下 KMADP)が 2010 年 5 月から開始された。それと同時に 1978 年より更新されてこなかった

カブール市のマスタープランを 2011 年に改訂することに対しても、JICA は多大な貢献を行って

きた。

KM のマスタープランは 2014 年春に正式化され、今後はこのマスタープランに即した都市開発

の推進が求めらている。しかしながら、現在の KM 職員の能力はこのようなプランを実施するに

は不十分だと思われ、職員の能力開発は今後のマスタープラン実行の要となっている。この研修

は KM 職員のマスタープランに従って都市計画を行い実施するための能力向上を意図するもので

あり、今後のカブール市の発展に寄与するものと考えられる。以上のことから、本案件はアフガ

ニスタンの開発ニーズに合致したものである。

7.1.2 国家計画及び政策との整合性

アフガニスタンの国家戦略である Afghanistan National Development Strategy (ANDS) 1387

– 1391 (2008 – 2013)の中で、都市計画セクターは重要なセクターとして位置づけられており、

関係機関の責任の分担・分権化を行い、都市基盤の整備や都市サービスを改善し、都市部のマネ

ージメントの改善および貧困削減を行うことが重要であると強調されている。それにより、都市

生活者がより安全で健康的な生活なものとなり、また経済的な発展が促されると述べられている。

このような背景があり、ANDS の中でも特に以下のような能力開発が期待されている。

(i) 都市サービスの運営のための自治体のキャパシティ強化

(ii) 関連機関の調整及び都市生活の指標のモニター

また同様に、National Action Plan ではモニタリング、評価、再プランニングというプロセス

の中で中核となる職員の能力強化、そして技術者と管理職員の能力開発が提案されている。この

研修は以上のようなニーズに応えるものであり、アフガニスタンの国家戦略と高い整合性がある

ことが明らかである。

7.2 効率性に関する評価

7.2.1 事業のスコープ

各研修は、事前に策定されたワークプランに基づいて設計されている。

ワークプランは昨年度実施された「都市開発人材育成サブプロジェクト」の成果及び評価結果

を踏まえた、組織能力のレビュー分析、知識レベルのギャップ分析、研修ニーズのアセスメント

をもとにして策定され、KM の管理者レベルの職員との議論を経て、5回の本邦研修、各1回のイ

ンド研修及びトルコ研修の計 7回の研修が計画・実施された(トルコ研修は 2014 年 11 月実施

中)。

事業のスコープに関しては、第 1 回及び第 2 回本邦研修に引き続き、これら研修生全員を対象

にインドでの第 3国研修を実施したこと、および、幹部研修を追加した変更点があった。

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幹部研修は当該部署の実務レベル職員の知識・見識は高まってきているものの、それらの上司

の幹部職員の知識・見識が並行して高まっていないことで、上司の理解が不十分なためにカブー

ル市役所としての事業計画策定、策定後の事業実現プロセス、市民とのコミュニケーション等、

様々な局面で円滑な遂行がはばまれがちになる事態が生じていることを背景に計画され、2014

年 10 月末から 11 月初旬にかけ実施予定であったが、大統領選挙後の政府組織人事改変作業の影

響で 11 月後半に変更し実施している。研修参加者の選定に当たっては、KM と協議を行い、カブ

ール市役所の都市計画局をはじめとする関連部局の幹部クラスのメンバーから選出されている。

幹部研修では、これまでの研修に研修生を派遣していた立場の都市開発関連関連部署の局長が

一堂に会し、これまでの研修生が学んだ区画整理事業をはじめとする都市開発にかかわる基本事

項を学んだ。これによって、KM 内での区画整理などの事業手法に関する共通認識を形成し、都

市開発を進める上で基礎条件の強化に寄与した。

研修内容の詳細は前章の通りであるが、概要を再述すると以下の通りである。

(1)研修内容・構成・期間

第 1 回(区画整理)本邦研修、第 2 回(土地利用規制誘導ゾーニング、建築指導コントロール)

本邦研修、及びインド研修については、第 1区でのパイロット・プロジェクト対象地でのプロジ

ェクト実現につながるような能力開発となるべく、計画された。

また、約 1ヶ月の期間で演習に重点を置いて、集中的で実効性の高い研修を行うためには、視

察の機会は少なくし、講師の構成もごく数名にして、特に演習形式で図面作成、計算、意見交換

などを実務的に行う講師・ファシリテイターは、極力、それらの数名の講師に集中させることに

した。

第3回本邦研修(交通管理)は、今まで、交通問題に取り組む部署のなかった KM に、都市交

通の計画、施策を立てられ、カブール市の交通問題の改善に取り組む部署を新設することを目指

した研修であり、交通問題、交通計画全般の学習、特に都市再開発、区画整理等での関連におい

て、都市交通ターミナル拠点、道路ネットワーク計画、結節点の交通処理問題等に関する学習を

してもらう研修であった。

また、約 2ヶ月と長期にわたることを考慮し、最初の段階で、都市交通問題の捉え方・考え方

やカブールの都市交通問題について研修生と議論し、カブールの都市交通問題に対する共通認識

を深めるとともに研修への取組の心構えやモチベーションの形成を図った。さらに、前半を基礎

理論の学習に充て、後半に見学を充て応用編として実際の体験の期間に充てるよう極力配慮する

とともに、適宜、演習を行っている。

第4回本邦研修(住民参加)は、住民参加を実施する場面では、様々な立場、意見、個性の

人々の意見をまとめていく必要があり、「住民参加」、「市民とのコミュニケーション」を学習す

ることを目して実施されたものである。

研修内容は、最初の数日は参加型まちづくりの基礎的な考え方や、日本の都市計画における住

民参加の背景を学ぶ事で、その後の講義や視察の基礎を固める事に集中した。また、いくつかの

ワークショップを体験することで、参加することの意義や楽しさ、効用を実体験として得る事を

狙いとしている。

第5回本邦研修は自治体としての経営管理を勉強することを目し、約 3週間の期間で都市経

営・行政経営という自治体の中核的かつ幅広い機能・分野を集中的に実効性の高い形で研修を行

うため、様々なテーマを短期間で習得するようなプログラムとなっている。

第6回本邦研修は前記のとおり、約 1週間の短期間に、土地区画整理、市民参加の都市計画、

住民票・戸籍、土地権利、固定資産税等についての概要をカブール市役所幹部職員に理解しても

らうプログラムとなっている。

第三国インド研修は「非公式住宅地」の問題や対応策等、日本では学びにくいテーマや局面を

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カブール市役所 業務完了報告書

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自治体としての経営管理を勉強することを目して実施した。

研修期間は約 5週間であるが、アーメダバードのインド方式区画整理が最も長く 2週間、デリ

ーの公式化研修が 1週間半、チェンナイの市民参加の研修が 1週間弱、残りの 1週間弱が最後の

デリーでのアクション・プラン取り纏めセッションである。各都市で、研修テーマが 1本に絞り

込まれていることから、研修生側は、明瞭に区別して考えやすい組み合わせ・構成となっていた。

第三国トルコ研修は日本では学びにくい「非公式住宅地」の問題や対応策とっしての公式化方

策の他、トルコ方式の土地区画整理(TPS)、住民参加やコミュニティ参加を学習している。

研修期間は約 1ヶ月であり、アンカラでの「非公式住宅地」問題の対処や都市再開発の事例等

やイスタンブールでのアーバン・トランスフォーメーション・プロジェクトに関する講義や視察

の他、トルコの区画整理の事例を用いた演習やアフガニスタンでの活用の仕方についてのワーク

ショップ等を行い、研修生の理解を深める組合せ、構成となっている。

(2)研修生の構成

研修生の構成は、第 1回及び第 2回本邦研修は主に都市計画局の、区画整理課、土地再開発課

から選ばれた 10 人であり、サブプロジェクトチームと KM 首脳部との間の議論や合意を反映した

ものと評価できる。

第 3 回本邦研修は交通問題に専従的に取り組む部署がないため、希望の中から選考試験を経て、

「交通」という新しい分野の学習に強く興味を抱く優秀な若手人材 5人が選ばれ参加した。

第 4 回本邦研修は住民参加を取り入れて実施する KSP と今後住民参加を幅広くカブール市の業

務に反映するために、所属組織・立場・業務内容・基礎能力レベルに差異がある 10人の混成グ

ループであった。

第 5 回本邦研修は経営管理財務担当の副市長の他、財政局、調達局、都市計画局区画整理課、

都市計画局土地再開発課の各職員、計 5人が参加した。

第 6 回本邦研修は都市開発事業に関連する用地局、建設管理局、都市計画局、土地整備供給局、

政策調整局、と人事局及び第一区の区役所の各責任者 6局長 1区長が参加した。

第三国インド研修は都市計画局の区画整理課、土地再開発課、調査課、建築課、数量計画課に

所属する、計 6人が参加している。

第三国トルコ研修は都市計画局の区画整理課、土地再開発課、調査課、建築課、数量計画課に

所属する、計 6人が参加している。

なお、研修実施の他に、研修成果の確実な進捗を支援する観点から、当初の業務計画にフォロ

ーアップ(本邦ないし第3国でのフォローアップ会議や月間のテレビ会議)を追加している。

7.2.2 実施期間

この案件は当初計画では 2013 年の 7月に開始され、2014 年の 10月に完了する予定であった

が、幹部職員本邦研修及びフォローアップ(本邦ないし第三国でのフォローアップ会議や月間の

テレビ会議)を行うものとし、2015 年 3 月に完了する見込みである。このため当初のワークプ

ランでの実施期間は 16ヶ月であったが、5ヶ月が追加され 21 ヶ月となっている。

前項の通り、本邦研修及び第三国研修(インド、トルコ)の全ての研修は 2014 年の 11 月に既

に完了している。

上記のとおり、追加された幹部研修が大統領選挙後の組閣活動等の影響により、当初計画より

2週間程度の遅れが生じているものの、その他の研修全体には遅延なく進行され、報告書なども

含め全体が 2015 年 3 月に完了する見込となっている。

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以上のことから、このプロジェクトの効率性は高い。

7.3 有効性及びインパクトに関する評価

7.3.1 有効性の分析

(1) 研修のアウトプット

研修の直接的なアウトプットである KMの研修生の数は以下の表に示すとおりである。その他

の幹部研修をあわせると、全ての研修人数は 49名となっている。(研修生のポジションに関して

は 2.2 を参照)。

表 13 各研修における研修生の数

研修名 数

第一回本邦研修(区画整理) 5

第二回本邦研修(建築コントロール・ゾーニング・地区計画) 5

第三回本邦研修(交通管理) 5

第四回本邦研修(住民参加) 10

第五回本邦研修(都市経営) 5

第六回本邦研修(幹部研修) 7

インド研修(インド方式区画整理・住民参加・非公式住宅地の公式化) 6

トルコ研修(既存都市市街市街地整理) 6

合計 49

なお、第1回及び第2回の本邦研修実施後に、各研修受講者 10名を対象に追加補足的にイン

ドでの短期間(1 週間)の第三国研修を実施している。

これら全ての研修で 49名の参加者となる。

(2) 習得した知識レベル (研修の有効性)

研修の直接的なアウトプットは研修をうけた職員、つまり「研修生」そのものであると考えら

れる。しかしながら有効性で重要なのは、研修生がどの程度の知識量を得たかという点でもある。

本プロジェクトでは各研修の途中に、研修の内容及び期間を考慮しつつ、各人がどの程度の知識

量を得たかを、測定するための理解度テスト調査を行なった。

以下は、研修中の受講の状況や、理解度テストの結果を参考としつつ、講師及び観察者からの

評価をまとめたものである。

1) 区画整理の経営採算と事業計画の策定

「区画整理の経営採算と事業計画の策定」は区画整理・土地開発プロジェクト遂行にとって習

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得すべき主要テーマのひとつであり、個別事項として、減歩と保留地の仕組み、事業計画書の作

成、事業収支、区画整理の組織(民間施行)と業務の遂行がげられる。

「区画整理」は第一回本邦研修での主要テーマであり、毎週、週の終わりに行われた理解度チ

ェックのテストの結果によると、以下の通り、講師から区画整理についての理解は進んできてい

るものと評価されている。

区画整理のメリットや有効性のポイントを具体的に理解している様子が示唆される記述が多

く、具体的に例を挙げれば、用地買収方式に比べると、必要となる予算を縮減でき、元から

住む住民が元の地域に残り住むことが可能な手法であること、市民参加、市民の理解・協力

が重要な制度であることなどが研修生の記述に示されていて、ポイントはよく理解してきて

いると評価されている。

土地区画整理事業案件を進めていくためには、どのようにしたらよいかという問いに対して

も、増進がきちんと見込めるような減歩率の計算、住民・地権者への説明や広報の重要性な

どをきちんと指摘できるほど理解しているものもいる。

ただし、UR 特有の新都市開発のための土地先買いの区画整理と、一般的な区画整理との相

違点については、あまりよく理解していない面があった。

討議という観点からみると、積極的に質問をして確認理解する重要性について何度なく説明

しているため、講義後、あるいは講義の途中でも、研修生からの質問が積極的に出てくるこ

とが多くなった。彼らが興味関心を持って講義に臨んでいる上、また、帰国後のパイロッ

ト・プロジェクトの実現という目標設定があるため、質疑応答、討論も比較的、的を得たも

のが多かった。

さらに、パイロット・プロジェクトの対象地での開発計画、土地利用計画の検討、区画整理

の計画立案、用途地域・建築コントロールの制度の立案適用などを具体的に検討し、より身

近な目線で区画整理、市街地再開発をとらえる機会として活用した。講義で考えていた時よ

りも、より実践に即してリアルに理解できたようであった。

また、インド研修において、インドの土地区画整理(TPS:Town Planning Scheme)の基礎理

論や活用状況や、トルコ研修においてトルコ方式の区画整理(TPS)を学んでいる。現地での理

解度テストの結果では、これらに関する理解度は中程度と評価されている。

2) 個別の土地(建物)評価と換地計画策定進

「個別の土地(建物)評価と換地計画策定進」は区画整理・土地開発プロジェクト遂行にとって

習得すべき主要テーマのひとつであり、個別事項として、従前の土地評価と基準地積、換地設計

の方法、権利者の意向の反映と公平性の確保があげられる。

これら事項に関しては、第一回本邦研修において、換地設計(基準値、路線価)や区画整理事

業の体系(公共測量から換公告、清算)の講義とともに、講師からは換地設計の演習を行うこと

で理解を深めているものと評価されている。

また、同研修において土地区画整理の実施プロセス、 土地所有者との会合や合意形成・土地

所有者や賃貸者からの質問、実施プランの作成方法等についての講義を受け、理解も深まってい

るものと評価される。

さらに、同研修において市民が参加するワークショップや区画整理事業における土地所有者と

事業実施者に分かれたロールプレイを体験するなどにより、参加型街作り・コンセンサスビルデ

ィングについて疑似体験的に学び、講師からは理解が深まっているものと評価されている。

3) 新たな土地への権利移行の法制度

「新たな土地への権利移行の法制度」は区画整理・土地開発プロジェクト遂行にとって習得す

べき主要テーマのひとつであり、個別事項として、事業の流れと各権利者の土地の使用収益、仮

換地指定、換地処分、清算金処理、公共施設引継・帰属、区画整理登記があげられる。

これら事項に関しては、主に第五回本邦研修において、都市自治体経営の基盤を成す住民票、

戸籍の管理掌握、固定資産(土地・建物)の管理掌握を主要テーマとして学んでいる。

なお、本研修は約 3週間の期間で都市経営・行政経営という幅広い機能・分野を様々なテーマ

を短期間で習得するようなプログラムとなっており、また、視察を多く組み込むんだものになっ

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ていることから、まとまった理解度テストは行っていない。

ただし、講師及び観察者からは以下の評価がなされている。

研修内容が、基本的な自治体行政・経営基盤の強化が不可欠であるという問題意識は強く植

え付けられたものの、具体的な解決策を詳細に指し示すまでの内容とはなっていなかったこ

とを勘案すると、短い期間の中で、都市経営という分野において問題意識の発現や気付きを

促すという位置づけが強いため、的確な問題意識を研修生が強く持てれば研修の成果が得ら

れたと考えてよいものと評価されている。

特に、本研修では講義後に質疑応答・意見交換などを行い、それらを通じて、講義内容の理

解とカブール市への応用・適用方策の検討を促しており、全般に積極的な質問や議論の姿勢

が見られ、研修全般にわたって内容に関心が高い活発な質問が出されている。また、講師等

に質問するだけでなく、カブール市の現状を詳細に説明することにより、活発かつ実践的、

有意義な議論が展開でき、カブール市にどうカスタマイズできるかについても、様々な観点

から検討することができた。研修生が問題意識を明確化することにより、講師陣の的確な解

答や議論を引き出すことが可能となっていたものと評価されている。

4) 規制誘導手法と市街地整備の促進

「規制誘導手法と市街地整備の促進」は区画整理・土地開発プロジェクト遂行にとって習得す

べき主要テーマのひとつであり、個別事項として、現行制度の確認と課題の検討、都市計画ゾー

ニング制度、違法建築の解消、各種事業手法の活用による市街地整備の促進があげられる。

これらの事項に関しては主に「土地利用規制誘導ゾーニング、建築指導コントロール」を主要

テーマとする第二回本邦研修での講義がなされた。

毎週、週の終わりに行われた理解度チェックのテストの結果によると、以下の通り、市街地再

開発事業についての理解はだいぶ進んできていることが確認されたものと評価されている。

具体的には、昨年の学習で蓄えた知識もあるため、質問内容は、具体的で詳細なポイント

についての説明を要求する質問が多く、興味関心を持って講義に臨んでいる上、また、帰

国後のパイロット・プロジェクトの実現という目標設定があるため、質疑応答、討論も比

較的に的を得たものが多かった。

さらに、パイロット・プロジェクトの対象地での開発計画、土地利用計画の検討、都市再

開発事業の計画立案、用途地域・建築コントロールの制度の立案適用などを具体的に検討

し、より身近な目線での用地取得、区画整理、市街地再開発をとらえる機会として学習が

進んだものと思われる。講義で考えていた時よりも、より実践に即してリアルに理解でき

たようであった。

しかし、容積率や建蔽率の計算、斜線制限等の計算について、実際の詳細な計算では、そ

の算数・数学的な基礎能力の問題から、計算のロジック、手法を十二分に駆使できるまで

には至っていないことが把握された。この点については、様々な計算演習を、具体的な場

面で繰り返し、繰り返し、行って理解を深めることが肝要であると思われる。

また、第三回本邦研修において土地利用規制ゾーニング、建築規制誘導コントロールを住民参

加に着目した視点から学んでいる。

二回にわたって実施した理解度テストの結果は後述のとおりであるが、住民参加の重要性や、

ワークショップという手法の意味、まちづくり協議会の意義など基礎的なことは理解されている

ものと評価されている。

ただし、正答率が 50%を超えたのは 3人のみに留まり 50%以下の研修生が大半で高い結果を

得られてはいない。この評価結果は回答内容が漠然とし具体性に欠けるため、あるいは、質問の

意図と外れた回答になってしまっているためであるものと評価されている。

さらに、インド研修及びトルコ研修において「非公式住宅地」問題と「公式化」の進め方を学

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んでおり、現地での理解度テストの結果からは、前述のとおり比較的理解されているものと評価

されている。

5) 都市交通運営

都市交通運営を主要テーマとして、カブール市の公共交通政策・戦略の構築、公共交通サービ

ス改善、都市開発パイロット・プロジェクトにかかわる交通対策、市内交差点・ラウンドアバウ

トの改良があげられ、第三回本邦研修において「交通管理・管制」をテーマとした研修がなされ

ている。

第三回本邦研修では、理解度テストを概ね 2週間を単位として研修期間中 3回実施しており、

理解度テストの結果を踏まえると、今回の研修で交通計画・工学に関する基礎理論や公共交通計

画の検討プロセスに関しての基礎的な考え方をはじめ、交通政策・戦略や交通計画を検討してい

くための基礎を習得することができたものと評価できる。

今回の研修を踏まえ、今後のステップとして、特定のプロジェクトを念頭に置いた実務実施に

向けた能力向上を図る段階に移るための基礎ができたものと推察するものである。

なお、各講義テーマは多様な分野にわたっていたが、研修生からは積極的な質問や討議がなさ

れておりそれぞれの講義テーマでの内容の理解がなされているものと推察された。ただし、交通

需要予測や交通行動、交通流分析に関するアカデミックな面からの講義や、物流システムという

観点からの講義はやや難解な面もあったものと受け止められる。

また、昨年春にカブールの交差点で撮影した CCTV 交通流記録を用いた、カブール市内のラウ

ンドアバウト交通容量推計の演習や、各自がカブール市において必要と感じる場所でのバス・タ

ーミナルのデザインを課し、講師よりコメントを与えるほか、ポリテクニックを抜ける新道路の

整備計画案(配置及び縦断形状;切通し/トンネル)や、ダルラマンから農業省を通るルートな

どにつて地図上で描きつつ研修生と議論し、道路計画の演習を行っている。代替案を作成する過

程の議論で、建設費のみの観点ではなく、B/C を比較することの意味を理解できた様子であり、

計画案を実際に作成しながら議論することが有効であった。

さらに、公共交通をはじめとする交通システムを実体験し理解することが重要であるとの観点

時から、講義や解説を加えつつ、より多くの交通システムの見学を行い、これによって交通シス

テムの多様性を認識でき、交通政策・計画の検討に際しての論理思考にとっての掴みどころや柔

軟性を高めることができたものと推測される。

(3) 研修生及び監督者による研修プログラムに対する評価及び要請

1) 研修生による評価及び要請

研修生へのアンケート調査の結果から、研修内容に対し以下の評価がなされている。

日本、インド、トルコのいずれの研修プログラムは概ね大変有意義であるものと、大

多数から良い評価を得ている。

市民参加に関する研修では具体的な多様な内容の講義、事例にもとづく計画手法や事

業手法等の解説の他、グループ・ディスカッション、ブレーン・ストーミング等の演

習等、有意義であったとする評価がある一方で、テーマや事例などにおいてより焦点

を絞った内容が期待する旨の提案等もみられる。

日本、インド、トルコのいずれの研修プログラムの内容の豊富さに比してスケジュー

ルがタイトであり、研修期間の長期間化等の要望があがっている。

インド研修において市民参加などに関する研修をより充実してほしいとの要望もみら

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れた。

カブールへの応用にとってより効果的な講義内容の充実を図る上で、講師と研修生の

現地での相互交流が望ましいとの意見がみられた。

日本、インド、トルコの異なった国や都市での事例研修は、カブールへの応用にとっ

て大変有意義であり、多くから今後とも研修の継続が期待されている。

2) 監督者による要望等

前記の通り、市役所の幹部連の意識啓発、知識共有を目指して、研修生の監督者に当たる各部

局幹部を対象とした幹部研修を行っていることから、今回は監督者を対象としたのアンケート調

査は実施していない。

3) 研修生による評価及び要望にもとづく今後の研修内容

前項の研修生及び監督者による評価、及び要望を踏まえると、DCDA は、新都市開発の推進段

階に差し掛かっていることから、今後は、事業推進上で直面する経営上の課題に対応した研修が

望まれている。

アンケートでは、今後の具体的な研修テーマに関する要望を直接的に尋ねてはいないが、自

由意見などから、以下のような内容が求められている。

土地区画整理事業実施にかかわる基本法規等の整備

都市開発事業、都市計画、建築基準

市民参加(具体的実施方法)

交通計画、交通流管理・管制、交差点設計

7.3.2 インパクトに関する評価

下記のはフォローアップ・ミーティングやマンスリーTV 会議での議論、現地情報等によって

判明したことをまとめたものである。

(1) パイロット・プロジェクト推進に向けての体制整備と本格作業への取り組みの開始

昨年度の研修の後、本邦研修生 5人「区画整理」部門と、インド研修生 5人で構成される「ゾ

ーニング」の 2分野のタスクフォースが立ち上げられたが、その後、本サブプロジェクト中に

各々が都市開発局の管轄部署である「区画整理」部門、「土地再開発」部門として位置づけられ

ている。

これらの部署の現在の職員数は計 14 人(内コンピューター要員 2人)となっており、(1)パイ

ロット・プロジェクト推進に向けての体制整備と本格作業への取り組みが進められている。

(2) 交通担当部署の設置

第3回本邦研修の研修生の所属部署は異なっていたが、研修終了帰国後に、既存部署監督者か

らの移動許可が得られない 1人を除き、除く 4人が中心職員と交通担当の部署が設けられ、交通

を専任する所管部署及び担当職員が配置されることになった。

ただし、正式な部署としての位置づけは来年度開始時期となる予定であり、職員の増強も計画

されているが、管轄内容等に関しては検討中である。

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7.4 持続性に関する評価

ここでは、研修成果が期待されたカブールの都市開発にとって持続的に貢献するために、研修

成果が各自の仕事の遂行する上でどのように役立てられているか、あるいは遂行にとっての問題

点や課題の状況を評価する。

なお、現段階では、前項の有効性の評価結果や、マンスリー・TV ミーティングやフォローア

ップ・ミーティングでの議論や現地スタッフが収集した情報を参考とするとともに、上記を目的

とし帰国後の研修生や研修生の監督者を対象に実施したアンケート調査の結果を参考としている。

7.4.1 研修成果の共有

ほぼ全員の研修生が研修終了帰国後に市長、副市長、所属部署監督への報告、アクション・プ

ランの発表等を行っているとともに、同僚との積極的な意見交換を行っており、KM内での研修

成果の共有化が図られている。

また、本邦研修、インド研修、トルコ研修の各々の間での意見交換は十分にはなされていない

側面も見受けられるものの、区画整理や都市再開発等に関し、各々の間での共通認識は醸成され

てきているようである。

さらに、追加で実施された本邦幹部研修によって、これまでの研修生が学んだ区画整理などの

事業手法に関する共通認識が形成され、都市開発事業の業務を進める上で基礎条件が強化された。

7.4.2 アクション・プランの遂行

区画整理事業にかかわる社会調査、測量、関連条例策定作業等、研修において作成したアクシ

ョン・プランに基づいて進められている。

ただし、仮組織状態にある交通部署はアクション・プランの修正・最終化作業中の状況に置か

れているなど、所属部署等によって進捗状況は異なっている。

7.4.3 パイロット・プロジェクトの遂行

(1) 組織体制

前述のとおり、パイロット・プロジェクト推進に向けて本プロジェクト研修生が中心となった

「区画整理」部門と「土地再開発」部門がタスクフォースから都市開発局の管轄部署として新設

され、体制整備と本格作業への取り組みが拡充されてきている。このことはカブールの都市開発

事業を進めるうえで、研修成果を継続的に反映していく上で有効な条件が整備されてきているこ

とを示しており、大いに評価できるものである。

ただし、プロジェクトの実際の推進にとっては、担当職員の能力向上や人員構成拡充等、当体

制の今後の一層の強化が期待されるところである。

(2) 担当職員能力

上記 2部署の職員は本プロジェクトの研修生を中心に構成されており、パイロット・プロジェ

クト推進に向けて有用な研修を受け、一定程度の知見が得られているものと評価ができる。

しかし、当職員は研修で習得した知見を用いた実際の業務は無く、また、研修成果を単独で実

際の業務に活用できるまでの習得度には至っていない。

今後、パイロット・プロジェクト推進していくためには、区画整理の経営採算と事業計画の策

定、個別の土地(建物)評価と換地計画策定新たな土地への権利移行の法制度の整備、規制誘導手

法と市街地整備の促進にかかわる更なる能力強化を図っていくことが必要とされている。

(3) 担当職員のモチベーションの維持

研修生が研修後の新組織への異動に伴う職階の変更を理由として他機関への移籍等が発生して

いることが見聞される。

研修成果がパイロット・プロジェクトをはじめとする都市開発事業に継続的に反映されていく

よう、研修生が担当職員として定着できるような職場環境の維持・充実に配慮することが期待さ

れる。

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(4) 関連部署・関係者との連携強化

パイロット・プロジェクトをはじめ、都市開発事業は担当 2部署だけで遂行できるものではな

く、関係部署・関係者との協力・連携が不可欠であることは言をまたない。

関係部署・関係者からの協力・連携を図るうえで、関係部署・関係者による開発事業に対する

理解を得ることは極めて重要な要件である。このためには、担当 2部署職員のみならず、カブー

ル市役所の関係部署や KSP をはじめとする関係機関・関係者の理解向上や協力強化を図る観点か

ら、研修、セミナー、ワークショップなどを実施していくことが有効な方法であるものと思料さ

れる。

特に、住民参加等の協力において KSP との連携が有用であることに配慮していくことが肝要で

ある。

7.4.4 公共交通関連施策の策定及び推進体制

(1) 組織体制(道路専任部局との区分)

前述のとおり、別途部署に所属していた研修生によって、第 3回本邦研修(交通管理・管制)

を終了・帰国後に「交通」担当部署が都市計画局内に新設され、当研修生が専属職員として配属

されたことは、カブールにおける公共交通にかかわる施策への取組が進められることを期待させ

るものであり、大いに評価できる。

しかし、フォローアップ・ミーティングやマンスリィ・TVミーティングでの協議状況から、

関係者からは道路交通流対策(交差点/ラウンドアバウト)がカブールにおける喫急の交通問題

として関心が高く、バスや BRT 等の公共交通システムへの関心は低いものと受け止められざるを

得ない。

道路交通に関しては都市計画部局に既に担当部署及び職員があり、過年より専従して業務に当

たっているとともに、近年は道路整備・維持管理に関する JICA による研修も行われ、道路の整

備・維持管理に関する職員能力も強化されてきているものと推測される。

一方で、都市マスタープランに提案されているバス・サービスの改善、BRT/LRT の導入等、公

共交通システムへのカブール市役所独自の取組体制は明確になっておらず、前述した第 3回本邦

研修の研修生が所属する「交通」担当部署に期待されるところである。

このためにはカブール市役所内幹部職員に公共交通システムの有用性の認識共有を図っていく

とともに、「交通」担当部署と既往の道路担当部署との間で、所管の役割・業務目的・内容の差

別化・明確化を行うことが求められるところである。

(2) 組織体制(担当職員の構成および能力)

前述した「交通」担当部署は第 3回本邦研修の若い研修生が中心となって構成され、当部署を

専任する監督者が任命されていないのが現状である。

本邦研修を受けた研修生・職員は優秀な能力を有しており、今後のカブール市の都市開発、交

通政策への取組への貢献が期待されるところであるが、経験の無い若年者であることは否めず、

カブール市役所の中に公共交通システムに対する知見を有する職務者が少ないの中で、彼らの能

力を現在のカブール市役所行政に直接反映していくことは極めて困難である。

この状況への対応策として、当担当部署に公共交通システムに関する認識、理解を有し、若い

職員が監督指導を求められる中堅職員を配置することが期待される。

また、あわせて、本プロジェクトでの研修を踏まえた更なる人材能力強化を図っていくことが

必要である。

(3) 関連部署・関係者との連携強化

有効な交通交通システムを導入・維持するためには他の都市開発事業の連携が不可欠である。

現在、検討・推進されつつあるパイロット・プロジェクトは、カブール市内の公共交通システ

ムの骨格を形成する公共交通ネットワークの核ともなる位置及び開発条件を有している。したが

って、今後の公共交通関連施策の検討に当たり、パイロット・プロジェクトを担当する「区画整

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カブール首都圏開発計画推進プロジェクト 都市開発及び都市運営人材育成サブプロジェクト

カブール市役所 業務完了報告書

67

理」及び「土地再開発」担当部署との緊密な連携に配慮するとともに、その他、運輸・交通関連

監督機関をはじめ、運輸・交通問題にかかわる関係部署・機関との調整等を図るための体制を整

備に配慮することが望まれる。

7.5 評価を踏まえた提言及び教訓

ここでは、前項までの評価結果、ならびに、研修後の研修生追跡アンケート調査結果や、マン

スリイ・ミーティングやフォローアップ・ミーティング結果を踏まえ、今後の研修へ提言を行う。

昨年から引き続いての研修成果を踏まえた、前述した現時点での課題の中で、能力開発にかか

わる事項として以下があげられる。

パイロット・プロジェクト推進に向けての組織体制が整備・強化されていてきているが、区

画整理事業を行う上で、関係者の理解を得るための制度設計・整備が求められている。これ

らに対応するために、区画整理の経営採算と事業計画の策定、個別の土地(建物)評価と換地

計画策定新たな土地への権利移行の法制度の整備、規制誘導手法と市街地整備の促進にかか

わる更なる能力強化を図っていくことが必要とされている。

都市交通、特に公共交通に対する取組み能力の強化・充実が求められる。今回の研修で交通

計画・工学に関する基礎理論や公共交通計画の検討プロセスや、交通政策・戦略や交通計画

を検討していくための基礎を学んでいるが、実践的応用に展開するためには、更なる能力強

化を図っていくことが必要とされている。

前記の通り、研修はその目的の対し一定の効果が得られているが、「カブール市における都市

開発の実施体制の強化」、「都市開発事業を実施するための KM の能力向上」及び「カブール首都

圏開発(KMAD)に係わる機関間で必要な調整が適切に行われる」ことの目標に対しては更なる強

化が求められる。

次表は、前項までの研修成果の評価・達成度の状況を踏まえ、上記目標に対し人材開発が一層

資するための観点から、今後に望まれる人材育成・強化の分野を整理したものである。

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カブール首都圏開発計画推進プロジェクト 都市開発人材育成サブプロジェクト カブール市役所 業務実施報告書

68

表 14:KM 区画整理・都市再開発プロジェクトの主要テーマと段階別対応能力達成水準と今後の研修の重要度評価

主要テーマ 求められる職員能力、組織・体制

研修テーマ・項目 段階別対応能力達成水準 今後の

研修の

重要度 主な研修内容 達成水準 第1段階

基礎理論取得 第2段階 計画作成

第3段階 事業化・実施

I. 区画整理・

都市再開発

の権利変換

の仕組み

土地・建物等の権利

関係と不動産の価値

不動産の価値と財産権への理解の

強化

受益者負担に基づく区画整理・再開発の手法 〇 B

単買型事業と比較した区画整理・土地再開発

の有用性 ―

土地・建物など不動

産の権利変換の手法

土地開発・再開発の諸々の手法を

修得

土地区画整理事業の仕組み(施行者別) 〇 C

事業の流れ(施行者別) △ A

立体換地、区整・再開発の一体的施行 △ A

市街地再開発事業の仕組み(施行者別)と種類

(第1種(権利変換方式)・第2種(用地買収方

式))

基本法制度の確立と

各地区別施行規程の

準備

事業手法の確立と法制度・施行規

程等整備のための能力開発

カブール市区画整理条例案の分析 ◎ A

各地区事情に合わせた施行規程の必要性 △ A

施行規程に定める事項 △ A

区画整理の権利変換

と物件補償

不動産の価値と財産権への理解の

強化

土地の上に存する権利の種類、不動産の価値

(使用価値、交換価値)と権利関係の把握の必

要性

受益者負担に基づく区画整理・再開発の手法 〇 C

不動産登記制度の有用性(実務は別途講座) △ B

区画整理事業における補償業務の

確立

移転の種類(中断移転・直接移転、直接施行) △ A

区画整理の損失補償の種類と補償基準の必要

補償業務の執行にあたり必要な書類(計算書、

補償契約(承諾)書等)

II. 初動期・事

業期の合意

形成

構想・計画策定段階

での住民参加

プランニング段階からの参加手法

の意義と効果に関する理解

まちづくり協議会等、都市の課題や将来像、

整備エリア等に関する議論の場の設置 ◎

事業の流れと合意形

関係権利者・行政機関の合意形成

のための手法の整備に関する能力

開発

合意形成に関する目標水準の設定(組合設立準

備組織は7人以上、設立認可のための宅地所

有者・借地権者の同意は 2/3 以上)

公共施行の場合の認可事項(施行規程、事業計

画、換地計画) △

組合(民間)施行の場合の認可事項(組合設立、

換地計画、組合解散) △

各権利者への合意形成のポイント

と合意形成の手法

減歩緩和等、評価基準に関する合意形成 △ A

審議会の運営、縦覧・意見書提出と意見書へ

の対応 △

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カブール首都圏開発計画推進プロジェクト 都市開発及び都市運営人材育成サブプロジェクト カブール市役所 プログレス・レポート2

69

アンケート調査等による各種権利者の意向把

握、説明会やニュースの発行を通じた情報共

有、模型による将来都市像の共有

権利者に対する実務 76 条申請の対象行為と許可の基準 △ A

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カブール首都圏開発計画推進プロジェクト 都市開発人材育成サブプロジェクト カブール市役所 業務実施報告書

70

主要テーマ 求められる職員能力、組織・体制

研修テーマ・項目 段階別対応能力達成水準 今後の

研修の

重要度 主な研修内容 達成水準

第1段階 基礎理論取得

第2段階 計画作成

第3段階 事業化・実

施 III.区画整理の

経営採算と

事業計画の

策定

減歩と保留地の仕組

経営成立の枠組みの総体的理解 経営採算を左右する公共減歩率と保留地減歩

率のバランス ◎

平均減歩率と個々の宅地の評価に基づく個別

の減歩率 △

増進が少ない場合の採算確保の方法(減価補償

型) △

保留地処分にかかる実務の理解 保留地処分の方法(募集方法) ◎ C

事業計画書の作成 事業計画書作成の実務の理解 事業計画書に定める事項 ◎ B

事業計画認可図書の作成 〇 A

事業収支 事業の目的、公共性に応じた資金計

画に関する理解

収入計画:保留地処分金、道路等公共用地の

先買いや管理者負担金、別途事業での整備な

支出計画:公共施設整備費(築造、移転、移

設)、上下水道・ガス等の整備費、整地費、事

務費、金利等

区画整理の組織(民

間施行)と業務の遂

円滑な事業推進のための必要事項の

理解

執行機関(理事会)、議決機関(総会、総代

会)、監査機関(監事)、諮問機関(評議員)、事

務局

技術的要素を必要とする部分の業務委託、業

務代行(一括代行、工事代行、事務代行) ―

IV. 個別の土地

(建物)評価

と換地計画

策定

従前の土地評価と基

準地積 土地の評価に関する能力開発 基準地積(従前地積)の確定 ◎ A

土地評価基準に定める事項 ― A

換地設計の方法 換地設計の実務に関する能力開発 権利調査から仮換地、清算までの事業の流れ △ A

個々の宅地の減歩計算と清算金算定の方法 △ A

換地位置決定の原則 ― A

小規模宅地の減歩緩和 △ A

換地設計・換地計画の認可手続き(認可申請図

書)

権利者の意向の反映

と公平性の確保 市街化促進に寄与する積極的な土

地活用を促す換地計画

照応の原則と申出換地の導入目的(センター用

地、賃貸住宅経営、業務用地、農地等)

申出換地を行う場合の流れ(事前の意向調査、

申出調査、決定通知)

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71

主要テーマ 求められる職員能力、組織・体制

研修テーマ・項目 段階別対応能力達成水準 今後の

研修の

重要度 主な研修内容 達成水準 第1段階

基礎理論取得 第2段階 計画作成

第3段階 事業化・実施

V. 新 た な 土

地・建物床

への権利移

行の法制度

事業の流れと各権利

者の土地の使用収益 円滑な実務のための能力開発 土地の使用収益権の停止・移行・再開に関す

る事務 △ A

仮換地指定 仮換地指定の時期と手続きの流れ(審議会への

諮問と供覧、意見書の処理)

△ A

仮換地指定の通知内容 △ A

換地処分 換地処分の時期 △ A

換地処分の通知内容 △ A

清算金処理 指数当たりの単価の定め方、定める時期 △ A

清算金の徴収・交付と残余財産の処理(清算

人)、決算報告 △ A

公共施設引継・帰属 道路・水路等用地の帰属の整理・引継 ― B

引継図書の作成 ― B

区画整理登記 町界、町名、地番、地目の整理 ― B

登記の嘱託図書の作成 ― A

権利者への連絡(登記済証、登記閉鎖解除) ― A

VI. 規制誘導手

法と市街地

整備の促進

現行制度の確認と課

題の検討

規制誘導手法の開発能力の向上 現行のカブール市の土地利用規制制度の再確

〇 A

カブール市における規制誘導手法の課題 △ A

都市計画ゾーニング

制度

各国の規制制度の理解と現地への

適合性に関する検討

日本など諸外国における土地利用規制手法(ゾ

ーニングシステム)の歴史的経緯と特性

〇 A

都市計画ゾーニング“特区”制度(インセンテ

ィブゾーニング)の活用可能性の検証

△ A

違法建築の解消 建築許可・確認制度の確立 例外規定を用いた建築誘導 △ A

建築士資格制度の確立 △ B

違法建築物の監視・是正命令 △ A

各種事業手法の活用

による市街地整備の

促進

市街地整備の促進手法への理解 民間活力を活かした社会資本整備の促進(まち

づくり基本協定によるグランドデザインの共

有、公共施行、第三セクター民間資本の事業

化によるリスク分担)

△ B

注-1:全般的いえば、KM にとって区画整理・土地再開発・建築基準法・ゾーニング等については、基礎理論的な理解のレベルを概ね脱し、計画レベルの理解にまだまだ不十分であるものの、組織が直面する状況

として計画作成段階での能力開発が重点的に行われるべき段階に来ている。 注-2:達成水準については、「-は未実施」、「△は基礎理論理解まだ不十分」、「〇は基礎理論的な理解はほぼできて、今後、計画作成段階に移行」、「◎は計画作成段階に到達していて、今後自ら計画作成できるよう

になるレベルの能力開発。」を示している。 注-3:「今後の研修の重要度」は、全般的にいえば、「第2段階の計画作成」段階での達成を目途に行うべき段階にきている。各項目の重要度の評価では、「A は研修実施の重要度が大変高い」、「B は研修が必要であ

る」、「C は研修の実施が望ましい」を示している。

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72

表 15 KM住民参加街づくりの能力開発主要テーマと段階別対応能力達成水準と今後の研修の重要度の評価

KM住民参加街づくりの能力開発主要テーマ 求められる職員能力、組織・体

研修テーマ・項目 段階別対応能力達成水準 今後の

研修の

重要度 主な研修内容 達成水準

第1段階 基礎理論取得

第2段階 計画作成

第3段階 事業化・実施

I.

都市計画、都市整

備における住民参

加の政策的変遷と

参加のメカニズム

や主要プロセス

都市開発における住民参加の目

的や意義の理解促進と能力開発

一般的な都市開発プロジェク

トにおける住民参加を促進す

る能力、「まちづくり」への理

住民参加型「まちづくり」とは、

意義、目的、基礎的な理解 〇 B

住民参加が必要な背景 〇 B

住民参加の基本的なメカニズム △ B

参加型まちづくりで利用可能な

指針やプロセスのデザイン 住民参加のプロセスのデザイ

組織体制・関係機関構成、制度 〇 A

ガイドラインや指針づくり - A

計画立案への参加プロセスデザイ

ン - A

「まちづくり」における個別プ

ロジェクト策定・実施 「まちづくり」プロジェクト

のための問題抽出、プロジェ

クト発掘・策定能力

コミュニティにおける問題抽出能

力 △ A

まちづくりプロジェクト策定と実

施 △ A

II.

広報・啓蒙活動

参加型まちづくりで利用可能な

ツールと運用に関する能力開

発、カブール市役所と住民の関

係強化

「まちづくり協議会」の設立

と運営

協議会の意義や目的 〇 B

協議会の設置・構成方法 △ A

実際の運営方法や行政の役割 - A

広報、啓蒙活動の実施能力 広報・啓蒙活動、広報ツール △ B

ステークホルダーの特定 - B

住民・コミュニティとのコミ

ュニケーションツールの運用

能力

異なる参加のメカニズム 〇 A

ワークショップなどの企画運営 △ A

・異なる意見の意見調整方法 △ A

・専門家やファシリテーターの養

成、活用 △ A

・住民とのコミュニケーション方法 △ A

III.

土地区画整理と再

開発事業などにお

ける住民参加

土地区画整理におけるコンセン

サスビルディング、住民参加

土地区画整理における合意形

成を構築する一般的能力

パイロット・プロジェクトを

促進する能力

土地区画整理の概念の理解と説明 〇 B

土地区画整理のステークホルダー

の特定 〇 B

住民・コミュニティとの合意形成

のプロセス ○ B

区画整理における合意形成の説明

のポイント △ B

合意が困難な地主や住民とのコミ

ュニケーション能力や信頼関係構

△ A

実際の合意形成プロセスのデザイ

ン・運営 - A

実際の事例からの学習 〇 B

市街地再開発における住民参加 市街地再開発におけるコンセ 市街地再開発の概念の基礎的理解 △ A

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カブール首都圏開発計画推進プロジェクト 都市開発及び都市運営人材育成サブプロジェクト カブール市役所 プログレス・レポート2

73

ンサスビルディングを構築す

る能力

地主やその他のステークホルダー

の特定と住民協議会設置 - A

合意形成のための説明のポイント - A

反対する地主や住民とのコミュニ

ケーションや信頼関係構築 - A

合意形成のためのプロセスデザイ

ン・運営 - A

歴史的景観地区や木造密集一

気における開発 開発と保存に関する知識と能

歴史的景観地区 △ C

ゾーニングや町並みルールの策定

と周知 △ A

開発困難な既存市街地への対応 △ B

新都市開発における住民参加、

コミュニティづくり

新都市開発に関する知識と能

新都市開発における住民参加の計

画、実施、コミュニティづくり △ C

IV.

復興計画、復興ま

ちづくりにおける

住民参加

住民参加型の復興計画作りを

学習することによりカブール

市の都市計画策定プロセスへ

の応用

住民参加型の復興計画作り

復興検討・マスタープラン策定プ

ロセス ○ A

体制づくり、協議会などの設置 △ A

住民のニーズの把握方法 △ A

住民参加プロセス策定・運営

能力

参加プロセスのデザイン △ A

情報提供や住民協議会などの運営 △ A

可視化の技術(マップ、モデルな

ど) △ A

関係機関・関係者との意見調整方

法 △ A

意見の取りまとめと計画への反映 - A

防災まちづくり 持続可能な防災まちづくり

防災まちづくりの基礎 △ C

持続可能な復興まちづくり - C

V.

住民による自発的

なまちづくりと行

政の役割

住民が主体となって行われてい

る多様なまちづくりの現状

住民と行政の役割やメカニズム

の構築

住民が主体となって行われて

いるまちづくりと、その支援

能力

基本的な考え方・概要 ○ B

関係機関・関係者との意見調整方

法 △ B

住民ニーズの把握と支援 - B

事例(福祉、公園、インフラその

他) ○ B

住民と行政、その他の団体の

信頼に基づいた関係の構築

行政側の組織体制の構築・強化 △

A

住民とのコミュニケーションやコ

ンサルテーション能力 - B

中間支援団体や NPO の活用 ○ B

ワークショップなどのファシリテ

ーション能力 △ A

コミュニティセンターやネットワ

ークなどの交流の場づくり △ A

コミュニケーションツールや情報 △ A

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74

支援、広報活動

住民主体のまちづくり促進の

メカニズム事例

コミュニティ・バス - A

商店街の活性化支援 - C

まちづくりファンドなど △ B

事例(福祉、環境、公園、インフ

ラその他) ○ A

注-1:KM住民参加街づくりに係る能力開発は、端緒についたばかりであり、まだ、基礎理論的な理解を深めていく必要がある。 注-2:達成水準については、「-は未実施」、「△は一部研修実施したが、まだまだ基礎理論理解も不十分」、「〇は基礎理論的な理解は進みつつあるが、基礎理論でもまだ学習必要」、「◎基礎理論は理解し、計画作成

レベル、実施レベルには未達」を示している 注-3:「今後の研修の重要度」は「第2段階 計画作成」レベルへの達成を目途に、「A は研修実施の重要度が大変高い」、「B は研修が必要である」、「C は研修の実施が望ましい」を示している。

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75

表 16:KM都市経営関連の主要テーマとプロジェクト対応能力達成水準と今後の研修の重要度評価

KM都市経営関連の主要テーマ 求められる職員能力、組織・体制

研修テーマ・項目 段階別対応能力達成水準 今後の

研修の

重要度 主な研修内容 達成

水準 第1段階

基礎理論取得 第2段階 計画作成

第3段階 事業化・実

施 Ⅰ.税体系と税徴

収システム

日本における国税

と地方税の体系、

及び特に自治体を

中心とした税徴収

のシステムと税徴

収体制

徴税のための基礎情報の取

得・整理能力の強化

・国・地方税の全体体系 △ A

・自治体の税項目と税収比率 △ A

・徴税に必要な情報基盤 △ A

・国税局と自治体の連携関係 △ B

徴税システムと徴税体制の強

・徴税システム・徴税実務 △ A

・徴税組織・体制 △ A

Ⅱ.不動産登記と

土地価格評価、土

地価格情報

日 本 に お け る 土

地・建物の権利、

不動産登記の制度

土地所有者の権利確定の促

進、土地所有者情報整備強化

・土地・建物の権利 ○ A

・土地所有者情報の整備体系 ○ A

不動産登記システム導入のた

めの能力開発

・不動産登記制度と体系 〇 A

・不動産登記の実務 ― B

・不動再登記の情報システム整備 - B

土 地 価 格 評 価 体

系、土地価格情報

の整備体系 土地価格評価体系と評価手法

・土地価格評価体系 △ B

・土地価格評価手法 △ B

・固定資産税、土地建物の相続税の評価

方法 △

C

・用地買収、土地区画整理の土地価格評

価法 △

A

土地価格情報整備体系と情報

システム整備

・土地価格情報の整備体系 △ B

・土地価格情報データベースの整備 - B

不動産情報の活用

方法

都市開発など自治体プロジェ

クト実施のための土地情報整

備・活用のための能力開発

・土地所有者情報の活用方法 - B

・土地価格情報の活用方法 -

B

Ⅲ.戸籍登録と住

民票登録

戸籍登録システム

と住民票登録シス

テムの体系と実務

住民情報登録・把握システ

ム導入のための能力開発

・戸籍登録制度と戸籍登録実務 △ A

・住民票登録制度と住民票登録実務 △ A

・戸籍・住民票情報システム整備 ― A

戸籍や住民票の住

民サービスへの活

用方策

住民データ整備による住民サ

ービス改善のための能力開発

・戸籍・住民票の利用実態 ― B

・住民情報と住民サービスの連携方策 ― C

住民票の税の徴収

への活用方法 住民データ整備による徴税

能力強化

・住民情報データベースの整備 △ A

・住民票情報の税徴収への活用方策 - C

住民税の導入 住民税導入のための住民情

報整備の能力開発

・住民の所得の把握方法 - C

・住民税徴収方法・体制 - C

Ⅳ.都市再開発事

業の制度とスキー

パイロット・プ

ロジェクトへの

都市再開発事業

制度の導入の検

市街地再開発の手法・事業ス

キームの多様化のための能力

開発

・区画整理事業と都市再開発事業の違い ○ A

・都市再開発事業のスキーム・仕組み

A

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カブール首都圏開発計画推進プロジェクト 都市開発人材育成サブプロジェクト カブール市役所 業務実施報告書

76

・権利床、保留床の計算方法 ― B

・都市再開発事業の事例 〇 B

Ⅴ.行政組織・人

材開発

戦略的な行政組織

の検討 組織力の強化と戦略的な組織

体制の構築

・民間企業経営的なの組織戦略・人材開

発及び運用 △

B

・戦略的人材育成プログラムの開発 ― B

Ⅵ.財政運営・財

務会計

財政運営能力の強

化 戦略的な財政運営と財政運営

管理システムの構築

・戦略的な財政運営の方策 ― B

・財政運営システムの開発(IT 化) ― B

・財政運営と行政運営の連携強化 ― B

財務会計能力の強

化 効率的・効果的な財務会計シ

ステムの構築

・効率的・効果的な財務会計の運営方策 ― B

・財務会計システムの開発(IT 化) ― B

・会計システムと行政運営の連携強化 ― B

Ⅶ.経済振興・産

業振興

地域の経済・産業

力の強化 経済・産業施策の展開

・産業振興施策や起業の支援策 ― B

・企業誘致・立地促進策 ― B

・製造業・商業・IT 産業等の振興 ― B

Ⅷ.文化観光の振

観光・文化の振興 観光振興施策の展開

・観光振興と市の PR △ B

・コンベンションの誘致促進 ― B

文化振興策の展開 ・文化振興施策 ― B

Ⅸ.行政サービス 環境保全と創造 良好な環境の創造・保全策の

展開

・公害等の規制策 ― C

・環境アセスメント政策 ― C

・環境意識啓発 ― C

公園と緑地 公園の整備、美化維持 公園の整備と維持・美化

その他緑地 その他の緑地の保全

廃棄物対策 廃棄物処理の適正化 ・廃棄物処理政策 ― C

注-1:KM都市経営に係る能力開発は、端緒についたばかりであり、まだまだ基礎的なレベルの理解を進める必要がある。ただ、一方、土地登記的な努力が、住民票的な情報も含めて進み始める現実面での動きも

あり、不動産登記、住民票、戸籍等の、自治体としての基礎情報データベースづくりの面で、計画段階及び実施段階を既に見据えた努力が必要な事項もある。更に、それらに基づいた市民税の創設や既存固定資産

税的な税徴収の改善などに進展する将来可能性を含んでいる。 注-2:「達成水準」については、「-は未実施」、「△は一部研修実施したが、まだまだ基礎理論理解も不十分」、「〇は基礎理論的な理解は進みつつあるが、基礎理論でもまだ学習必要」、「◎基礎理論は理解し、計画

作成レベル、実施レベルには未達」を示している 注-3:「今後の研修の重要度」は「第2段階 計画作成」レベルへの達成を目途に、「A は研修実施の重要度が大変高い」、「B は研修が必要である」、「C は研修の実施が望ましい」を示している

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77

表 17: KM 交通管理・管制の主要テーマと段階別対応能力達成水準と今後の研修の重要度評価

KM

交通管理・管制の主要テーマ

求められる職員能力、組織・体

研修テーマ・項目 段階別対応能力達成水準 今後の

研修の

重要度 主な研修内容 達成水準

第1段階 基礎理論取得

第2段階 計画作成

第3段階 事業化・実施

I.

カブール市の公共

交通政策・戦略の

構築

都市マスター・プランに提示

された公共交通政策のレビュ

ーと公共交通政策・戦略計画

の策定(優先すべき都市交通施

策選定と施策案策定) 「公共交通政策・戦略」の策

定に向けた委員会(仮称)の

設立と事務局としての運営能

都市交通問題の捉え方 ◎ C

都市交通システム事例 ◎ C

交通需要管理(TDM) 〇 C

「公共交通政策・戦略」の実例 △ A

策定プロセス、組織体制・関係

機関構成、制度 △ A

調査・検討内容 △ A

政策立案及び優先政策選定の検

討方法 △ A

関係機関・関係者との意見調整

方法 - A

検討作業において採用した技術

手法 - A

交通政策を企画・調整・立

案する専攻部署設立

組織体制・関係機関構成、制度 △ A

「公共交通政策・戦略」計

画作成に資する技術的能力

交通調査 〇 A

交通需要予測 △ B

計画案作成・評価分析 - A

II.

カブール都市圏の

公共交通サービス

改善

バス(Milli Bus、mini Bus、

Mini-Van)の利便性や交通秩

序の向上(バス・ルートやサ

ービス地域の再編、市内バス

ターミナル整備、乗降場所特

定化整備(特に mini-Van 対

策)を含む利用改善方策の策

定)

「バス事業関連協議会」(仮

称)の設立、運営能力

組織体制・関係機関構成、制度、

運営方法 - A

バス利用改善方策の策定に資

する技術的能力

利用改善方策・運行事例 〇 A

バス利用に係る交通調査 △ A

バス利用需要予測 - B

計画案作成・評価分析 - B

バス・ターミナル施設計画 〇 B

バス・ターミナル事業計画 - C

バス・ターミナル運営 △ C

公営バス運営組織の強化 公営バス運営組織の強化方策

の策定に資する能力

公営交通運営組織・体制 △ A

公営交通の維持管理 △ A

民間バス、Mini-Van の運営関

連規則・法規(車両整備、事

業資格及び義務、従業者資格

等)の整備

バス運営関連規則・法規の整

備に資する能力 バス運営関連規則・法規 - A

BRT(連結バスの独自運行を想

定)運営組織設立と関連規

則・法規の整備

注:外部条件である他ドナーの動

向に要留意

BRT 運営組織設立・運営及び

規則・法規整備に資する能力

BRT 運行実態 △ A

運営組織、運営方法 △ A

関連規則・法規

- A

Page 84: アフガニスタン国 カブール首都圏開発計画 推進プ …open_jicareport.jica.go.jp/pdf/12230124.pdfアフガニスタン・イスラム共和国 カブール市役所

カブール首都圏開発計画推進プロジェクト 都市開発人材育成サブプロジェクト カブール市役所 業務実施報告書

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交通拠点整備 交通拠点整備計画立案能力

交通拠点整備事例 ◎ B

施設計画作成 △ C

事業計画作成 - C

III.

カブール市のパイ

ロット・プロジェ

クトにかかわる交

通対策

パイロット・プロジェクトを

念頭においた、再開発事業に

かかわる交通対策の立案

関係規則、監理・監督・指導

体制の整備

Land Readjustment

Division, Land

Redevelopment Division と

連携した計画策定能力

検討・策定プロセス - A

関係機関・関係者との意見調整方

法 - A

再開発事業にかかわる交通対

策計画案の作成に資する能力

交通需要調査・予測手法、 △ A

道路・街路計画 - A

駐車場計画 △ A

公共交通対策 - A

IV. カブール市内交差

点・ラウンドアバ

ウトの改良

交差点(ラウンドアバウト)

改良と周辺道路交通流改善 交差点(ウンドアバウト)改

良案を作成・評価する技術的

能力

交差点交通流調査・分析 △ A

交差点改良案作成 △ A

改良案の比較評価

(交通流シミュレーション、B/

C)

△ A

交差点改良事例 △ A

注-1:全般的いえば、KM にとって交通管理・管制のテーマでの能力開発努力は、端緒についたばかりである。おしなべて。まだ基礎理論的なレベルの理解がまだまだ必要なとされる段階である 注-2:達成水準については、「-は未実施」、「△は基礎理論的な理解が始まったばかり」、「〇は基礎理論的な理解が進展しきているが、まだ未了」、「◎は、基礎理論的な理解がほぼ終了しつつある。」を示している。 注-3:「今後の研修の重要度」は、全般的にいえば、「第2段階の計画作成」段階での達成を目途に行うべき段階にきている。各項目の重要度の評価では、「A は研修実施の重要度が大変高い」、「B は研修が必要であ

る」、「C は研修の実施が望ましい」を示している