マカフィー モバイル脅威レポート: 2018 年第1四半期 · 3 マ ?ィー モバイル...

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マカフィー モバイル脅威レポート : 2018 年第 1 四半期 1 レポート モバイル脅威レポート これからの 10

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マカフィー モバイル脅威レポート : 2018年第 1四半期1

レポート

モバイル脅威レポートこれからの 10年

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マカフィー モバイル脅威レポート : 2018年第 1四半期2

レポート

犯罪者が利益を追うことで、2018年はモバイル マルウェアの年になる傾向に

何百万ドルものお金を物理的に動かすことの難しさを想像してみましょう。映画『マイナー・ブラザーズ 史上最大の賭け事』(原題 : Brewster� s Millions)で、リチャード・プライヤ演じるモンティ・ブリュースターは、3億ドルを相続するために30日間で 3千万ドルを使い切るという挑戦を受け、大金の山を提示されます。これが現代なら、スマートフォンを使うだけで済みます。2017年後半ならば、仮想通貨でこの挑戦を受け、1,500枚強のビットコインを使えばよいのです。

モバイルデバイスにはチャンスがあふれていますが、リスクがあることもまた、明らかです。携帯電話はただの電話ではありません。子供への遺産、デジタル ID、そして、自宅だけでなくデジタル生活(家庭内のインターネット接続可能なあらゆるモノを含む)の鍵がすべて含まれることもある有能なコンピューティング環境です。そのため、警戒すべきはモバイル マルウェアだけではありません。モバイル プラットフォーム自体が、物理世界とデジタル世界を完全に写し出しています。武装強盗が仮想通貨トレーダーを脅し、交換を強要するケースも報告されており、すべてのモバイル脅威がデジタルとは限らないと認識することが大切です。

今年のマカフィー モバイル脅威レポートには、このプラットフォームが標的にされていることを示す顕著な傾向がいくつか見られます。その 1つが、モバイル マルウェアの増加です。ただし、すべてのマルウェアが同じように作られているわけではありません。私たちは、反体制派の特定を目的に行われた標的型モバイル脅威攻撃について詳しく調査しました。

McAfee Labsのブログや脅威フィードをフォローしている方は、影響力の大きな攻撃者がモバイル プラットフォームに流れているというマカフィー モバイル調査チームの分析をご覧になることでしょう。

これは、韓国の宗教団体を狙い、離反する可能性がある者に影響を与えることが目的の攻撃として、初めて確認されたものです。当然、脅威はそれだけでは終わりません。数週間後、反体制派を狙う別の攻撃がこの地域で実行されました。

前置きが長くなる前にモバイル脅威レポートをご覧ください。重要なのは、携帯電話の時代は何年も前に終わったということです。現在、私たちが通話に使用しているデバイスは、電話という枠を遥かに超えるものなのです。

-ギャリー・デイビス

チーフコンシューマー セキュリティエバンジェリスト

-ラージ・サマニ

マカフィー フェロー チーフサイエンティスト

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マカフィー モバイル脅威レポート : 2018年第 1四半期3

レポート

これからの 10年

今年、Apple App StoreとGoogle Play Storeが 10周年を迎えます。これらのアプリ ストアの概念は、ノキアやエリクソンとった初期の Symbian OS端末にまで遡りますが、大多数のスマートフォン ユーザーにとって、Appleや Googleのアプリケーション マーケットの登場と言えば、アプリの配信を意味しています。

10年が経ち、リリース後の問題にも継続的に対処しているにも関わらず、両ストアでは数多くのセキュリティ インシデントが発生しています。

Google Play Storeユーザーを標的とするマルウェア攻撃は、サービス開始とほぼ同時に始まりました。Droid09と呼ばれるGoogle Playで初のバンキング型トロイの木馬から、最新の広告クリック詐欺/潜在的なビットコイン マイニング アプリに至るまで、今では毎週のように、新たな脅威がこのストアに蔓延しています。Google Play Storeは全方位からの攻撃にさらされています。10年間で変わったことといえば、感染デバイス数が増加したことでしょう。活発な攻撃は次々と発見されており、その数は数百万台に上るかもしれません。

Google Play Storeは全方位からの攻撃にさらされています。10年間で変わったことといえば、感染デバイス数が増加したことでしょう。活発な攻撃は次 と々発見されており、その数は数百万台に上るかもしれません。

2%ルート権限奪取

5%仮想通貨マイニング12%

バンキング型トロイの木馬

23%スパイウェア

22%ボットネットC&C 攻撃 36%

広告クリック詐欺

昨年度比で増加

昨年度比で増加

増加

Google Play Store ユーザーを狙う脅威で最

も多いのが、広告クリック詐欺。

仮 想 通 貨マイニング マルウェアの

世 界 的 急 増 は、ビットコイン価 格

の急騰とほぼ同時に始まっている。

減少

図 1. 昨年度(2016年)の Google Play Storeを標的とした攻撃や脅威の分布図。一部の脅威ベクトルが増加している

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マカフィー モバイル脅威レポート : 2018年第 1四半期4

レポート

2017年後半から 2018年前半にかけて、マカフィーが発見した最も顕著な攻撃の 1つは、Android/Grabosです。これは、ユーザーの知らないところで勝手にアプリをプッシュする、Pay-Per-Download(ダウンロード報酬型)詐欺として知られる攻撃です。Google Playは、合計 144 種類のアプリを検出し、削除しました。削除されるまでに、世界で 1,750万台のスマートフォン デバイスにこれらのアプリがダウンロードされたと予想されています。

Appleも脅威と無縁ではありません。現在では、「デッド アプリ」の問題も発生しています。Appleは、セキュリティ(またはプライバシー)関連の問題が見つかると、公表やリコールを行うことなく、単純に App Storeからアプリを削除します。

そのため、数百万人のユーザーが、開発ワークフローを狙うマルウェア インシデントや、ソース コード漏えいのリスクにさらされ、エクスプロイトの作成方法に関する知識をハッカーに与えてしまいかねません。また、単純に、あるテルグ語を 1文字送るだけで、あらゆる iOS 11デバイスを機能不全に陥れることができる、検査で見逃された問題もあります。

「2017年後半から2018年前半にかけて、マカフィーが発見した最も顕著な攻撃の 1つは、Android/Garbosです。」 プラヴァット・ラール(Pravat Lall) マカフィー エンジニアリング、 モバイル& ISPソリューション担当 バイス プレジデント

図 2. 上図ように、あるテルグ語を 1文字送るだけで、iOS 11デバイスを機能不全に陥れることが可能

図 3. iOSソース コードの漏えい

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マカフィー モバイル脅威レポート : 2018年第 1四半期5

レポート

活況の一方で不正の温床に

Googleと Appleにとって、セキュリティは最大の懸念事項になっています。それは、コンポーネントのレベルからアプリ ストアに至るまで、両社がプラットフォームを守るために行っている投資に現れています。ただし、依然多くのことが手つかずのままです。

2017年は、Google Playにおいてモバイル デバイスを狙った攻撃の数が前年を上回りました。つまり、Google Play Protectの検知機能に対する第三者機関による試験で、内蔵のセキュリティ対策が極めて一般的なマルウェア攻撃すら検知も防御もできないことが判明したとしても不思議ではないのです。実際、過去 90日間に発見された脅威に対する第三者機関による試験の結果、Google Play Protectは不合格でした。

支出額が 10億ドルを超えたモバイル広告市場は、比較的新しい分野であることから、今や不正の温床となっています。2017年にマカフィーが発見したマルウェア攻撃のかなりの割合が、広告クリックを行うトロイの木馬でした。この脅威は、何らかのサービスを装いながら、背景のモバイル広告を不正に操作することで、アプリ作成者に収益をもたらします。

「コンポーネントのレベルからアプリ ストアに至るまで、両社がプラットフォーム全体を守るためにリソースにつぎ込んでいる投資額をみれば、Googleと Appleにとって、セキュリティが最大の懸念事項であることは明らかです。ただし、依然として多くのことが手つかずのままです。」 シェイラジャ・シャンカー(Shailaja Shankar) モバイルおよび ISPソリューション担当 バイス プレジデント兼ゼネラル マネージャー

図 4. 2015~2017年のマルウェア サンプル 図 5. 2015~2017年に新た発見されたマルウェア サンプル数

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マカフィー モバイル脅威レポート : 2018年第 1四半期6

レポート

2020年以降の 10億ドル産業

初期のモバイル マルウェアは、料金詐欺(長距離電話料金の不正請求)やプレミアム SMS詐欺で金儲けに走る傾向がありました。現在は 2つの手口が登場しています。

アジアでは、人民元にして数元程度の少額を毎月ユーザーに不正請求するマルウェアが登場しています。被害者は、数カ月後に異変を感じるまで、被害に気付きません。中国警察はこれをmoney suck(金吸い)詐欺と呼んでいます。東ヨーロッパのマルウェア作成者は、詐欺アプリがデバイスに感染すると、45~ 100ドル程度などの額を単発で請求するという、さらにショーウィンドー破りのように大胆な手口を開発しています。この方法は、北米のユーザーを狙うモバイル ランサムウェアの基盤となりましたが、現在では、主に東ヨーロッパのマルウェア作成者が開発、利用しています。

マカフィーの試算では、2010年に最も成功したマルウェア攻撃の稼ぎは 10~ 30万ドルであると推定しています。現在の脅威情勢では、広告クリック詐欺や Pay-Per-Download詐欺(2018年現在、約 400億ドル規模の市場)、また普及しているバンキング型トロイの木馬を利用した本格的な攻撃によって、マルウェア攻撃は 1~2百万ドルの収益を生んでいる可能性があります。モバイル マルウェアが今の調子で増加すれば、2020年までにマルウェア作成者の収益は 10億ドルに達するかもしれません。

昨年、モバイル マルウェアが爆発的に増加しただけでなく、モバイル情勢も大きく変化したことから、2018年はこれまでのところ最もリスクの高い年ということになります。2017年、世界で 50億人と推定されるモバイル契約者は、攻撃の数だけでなく、その腕も上げてきたマルウェア作成者の格好の餌食であることが証明されました。

McAfee Labsは、2017年第 3四半期だけで 1,600万件のモバイル マルウェア感染を検知しました。これは、前年比で約 2倍の数字です。

McAfee Labsは、2017年第 3四半期だけで 1,600万件のモバイル マルウェア感染を検知しました。これは、前年比で約 2倍の数字です。

図 6. 2016年以降のサイバーセキュリティ リスク増加率

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マカフィー モバイル脅威レポート : 2018年第 1四半期7

レポート

脅威は、アフガニスタンからキューバに至る、世界各地から発生していますが、感染数が最も多いのはロシア、中国、韓国です。攻撃の主な目的は、お金です。

従来型のプレミアム テキスト メッセージや通話料金上乗せ詐欺に代わり、ボットネットによる広告詐欺、Pay-Per-Download配信詐欺、仮想通貨マイニング マルウェアなど、何百万ドルもの被害を生む可能性のある攻撃経路を確認しています。

さらに、昨年だけで、仮想通貨マルウェアは 70%も急増しており(Google Playでの仮想通貨活動の 5%増を含む)、モバイル バンキング型トロイの木馬は 60%増加したことを確認しました。

20億人を超えるユーザーを抱え、比較的オープンにアプリを配信している Androidプラットフォームは、やはりマルウェア作成者にとって手軽に稼げるプラットフォームです。Google Play Storeで発見された脅威ファミリーの数は昨年 30%も増加し、正規の Androidアプリ ストアですら、ユーザーにとって危険な場所となりました。

一例のみですが、広告収入を稼げる正規アプリの海賊版を発見しました。開発者は、このプラットフォームからマルウェアやスパイウェアを配信したり、犯罪組織に開発者アカウントを売るつもりだったのかもしれません。

どちらの場合も、犯罪者の行動の原動力はお金です。また、ユーザーを詮索するスパイウェアを含む不正なメッセージ送信アプリ、ランサムウェア攻撃からユーザーを守ると謳う偽アプリ、同意なくユーザーをプレミアム サービスに登録するトロイの木馬化されたアプリも発見しました。

2018年以降も、こうした攻撃者が悪用や金儲けのスキルに磨きをかけ、サイバー犯罪者によるモバイル デバイスを標的とした攻撃は着実に増加すると予想しています。

「2018年以降も、こうした攻撃者が悪用や金儲けのスキルに磨きをかけ、サイバー犯罪者によるモバイル デバイスを標的とした攻撃は着実に増加すると予想しています。」 ラージ・サマニ(Raj Samani) マカフィー フェロー チーフ サイエンティスト

図 7. 現在、マカフィーのサンプル データベースには、4,000種類以上のモバイル脅威ファミリーと亜種が登録されている

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マカフィー モバイル脅威レポート : 2018年第 1四半期8

レポート

モバイル マルウェア作成者の目的がお金である証拠として、モバイル プラットフォームでは、バンキング型トロイの木馬という従来型の PC攻撃にランサムウェア機能を加えた新たな脅威が開発されていることも挙げられます。その背景には、過去数年間のモバイル バンキングや金融アプリケーションの爆発的増加があることは間違いありません。

2017 年、Android/Marcherマ ル ウ ェ ア な ど、Androidプラットフォームの自動インストールに関する脆弱性を利用した不正なバンキング型トロイの木馬の増加傾向を確認しました。動画プレイヤー、Flashプレイヤー、ゲーム、システム ユーティリティのための正規のアプリを装い、何百万人もの Google Playユーザーを被害に陥れました。

偽のアップデートや標的型 eメールまたは SMSフィッシングで配信されるモバイル バンキング型トロイの木馬も確認しています。これまで発見した中で最も巧妙な脅威は、Android/LokiBotマルウェアです。その巧妙さの一例として、Android/Marcherの機能に暗号ランサムウェア機能が追加されていることが挙げられます。

この脅威は、ファイルを暗号化してデバイスをロックしたり、偽通知を送りつけて、ユーザーにオンライン バンキング アプリを開くように誘い込んだり、さらには、攻撃者が被害者の IPアドレスを装い、他の詐欺行為に使えるようにします。

Android/LokiBotは、世界 100以上の金融機関を攻撃しました。マカフィーは、LokiBotは、「ダーク ウェブ」上でのキット販売で、200万ドル近い収益を得たと予想しています。

「Android/LokiBotは、世界100以上の金融機関を攻撃しました。マカフィーは、LokiBotは、「ダーク ウェブ」上でのキット販売で、200万ドル近い収益を得たと予想しています。」 スリーヌ・ピルットラ(Sreenu Pillutla) ソフトウェア エンジニアリング担当 シニア ディレクター

攻撃の傾向

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マカフィー モバイル脅威レポート : 2018年第 1四半期9

レポート

バンキング型トロイの木馬は、特別開発されたモバイル アプリやフィッシング技法で、国際的な大手金融機関や地銀を攻撃します。たとえば、Android/MoqHaoマルウェアは、韓国の大手銀行を標的にしました。この脅威は、巧妙なソーシャル エンジニアリング技法(受信者に画像確認を求める)を使った SMSで拡散されています。

受信者が不正なリンクをクリックすると、偽のバンキング アプリがインストールされます。この偽アプリが、ユーザーの携帯電話上の正規のバンキング アプリを探して削除します。標的にされているのは、従来型の銀行だけではありません。

仮想通貨が注目され、ビットコインの価格が急騰するに伴い、サイバー犯罪者は偽のモバイル ウォレットを配信して仮想銀行強盗を働くだけでなく、

仮想通貨業界で働く人を狙って徹底的にビットコインを盗み出しています。昨年は、ビットコイン マイニング関連のマルウェアが 80%も大幅に増加しました。

さらに大胆な仮想通貨攻撃の例は、カナダのオタワで発生した武装強盗団です。1月、ビットコイン関連の金融機関が狙われました。ただし、このようにデジタル資産を狙い、実世界で犯罪を起こしたケースは、急増するオンライン脅威に比べれば極僅かです。

2012年以降、バンキング型トロイの木馬のリスクは増加の一途をたどっています。仮想通貨が大きく注目されているだけでなく、マルウェア作成者は正規のアプリケーションでマルウェアの真の実態を隠せるため、近い将来、この脅威が減少することは期待できません。

昨年は、ビットコイン マイニング関連のマルウェアが 80%も大幅に増加しました。

現代型の(サイバー)疫病

過去 12カ月に確認した中で最大の懸念事項の 1つは、標的型攻撃の対象がモバイル デバイスに移っていることです。マルウェア サンプルが PC上で 200万個まで増えるまでに 20年かかりました。モバイルでは、わずか 5年で同数に達しました。

標的型攻撃

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マカフィー モバイル脅威レポート : 2018年第 1四半期10

レポート

マカフィーのモバイル調査チームは、バックドア ファイルが含まれる Androidマルウェア サンプルを発見しました。これは、サイバー犯罪集団 Lazarusによる初のモバイル攻撃と思われます。Lazarusは、北朝鮮政府と関係しているとされており、昨年前半にイギリスの国民健康保険やその他数千の組織を混乱に陥れたランサムウェア「WannaaCry」攻撃で世間を騒がせました。

この Androidマルウェアは、Google Playで正規の韓国語版聖書アプリを装い、韓国人ユーザーを標的にしています。ユーザーのスマートフォンに感染すると、デバイスはボット化します。確証は得られていませんが、この攻撃は、韓国に賛同する北朝鮮の宗教団体支援組織を狙ったものと考えられています。

モバイル デバイスの普及は、人々が通信し、組織化し、あるいは(アラブの春で行われたように)抗議する方法をも根底から変えてきましたが、この力が今、別の方向に向かい始めています。国家を背景とした攻撃者がモバイル プラットフォームを使うことで、手軽かつ効率的に反対派の監視や口封じに利用できることに気づいているのです。

人の力から国家の力へ

たとえば、マカフィーの研究者は先日、韓国で普及しているチャット アプリ「KakaoTalk」を利用している北朝鮮の反体制派やジャーナリストがマルウェア攻撃の標的にされたことを確認しました。チャット アプリや SNSを通じて、スパイウェアを仕込むためのマルウェアに誘導する短縮リンクが、不明な差出人から被害者のデバイスに配信されました。これは狡猾な手口です。多くのユーザーは、差出人不明の eメールにあるリンクはクリックすべきでな

いことを熟知していますが、チャット仲間にも同様の警戒を向けるべきだとは思っていません。

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マカフィー モバイル脅威レポート : 2018年第 1四半期11

レポート

反体制デモは、1月に話題になりました。最初のデモは、イラン第二の都市、マシュハドで発生しました。当初は経済面を重視したものでしたが、他の都市にも広がるに伴い、その目的は拡大し、政治色も増してきました。デモの目的に関わらず、確実に言えることは、組織化や通信においてテクノロジーが重要な役割を果たしているということです。スマートフォンや SNS、メッセージ送信アプリなどのテクノロジーがなければ、デモに必要な人数を集めることはできなかったでしょう。

イランでは、人口の半数近くにあたる 4,000万人がTelegramというメッセージ送信サービスを使用していると予想されています。このテクノロジーが、抗議者の戦略的通信ネットワークとして使われました。イラン政府は、デモ中の暴力行為を助長し、暴動に繋がる恐れがあるとして、間もなく、このサービスを規制しました。アーヤットラ・アフマド・ハータミー(Ayatollah Ahmad Khatami)は金曜日の祈祷集会で、「サイバースペースが、戦いの火を煽った」と述べました。

抗議者は、通信経路を確保するために、仮想プライベート ネットワーク(VPN)や、規制の無効化を求めるハッキングされたメッセージ送信サービスに目を向けました。

マカフィーのモバイル研究者は、機能する Telegramアプリの偽造版として流通しているアプリの 1つは、実際には、感染したデバイスから外部サイトに情報を送る、遠隔アクセスを目的としたトロイの木馬であることを確認しました。

Android/Grapherには、SMS、電話帳、コンタクト、通話記録、ブラウザ履歴の傍受や、認証情報の窃盗など、数々の機能が備わっています。この攻撃の黒幕はわかりませんが、その目的が、反体制派の情報収集であることは明らかです。

実に大勢の人が、モバイル デバイスを介して常につながっているため、一部の国家は積極的に国民を監視するようになることが予想されます。

「サイバースペースが、戦いの火を煽った」 アーヤットラ・アフマド・ハータミー(Ayatollah Ahmad Khatami)

図 8. デモの際、このイラン人学生抗議者の写真が SNSで拡散された

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マカフィー モバイル脅威レポート : 2018年第 1四半期12

レポート

モノのインターネット(IoT)の時代、消費者は利便性を求め(あるいは、ただ流行に乗って)、生活にスマートホーム テクノロジーを取り入れています。デジタル アシスタントとして機能するインターネット接続タイプのスピーカー、スマート サーモスタット、インタラクティブな玩具を初めとするデバイス製品の売上が急増しています。

ガートナーの調査によれば、昨年は 84億台におよぶインターネット接続可能な「モノ」が使われていると言われ、2016年から 31%の増加を見せています。ガートナーは、2050年までに、家庭には 500億台のインターネット接続可能なデバイスが普及すると予想しています。これは、その時点に予想される地球人口の約 5倍です。

こうしたデバイスによって、利便性や快適性が得られることに間違いはありませんが、攻撃対象領域も大幅に拡大します。こうしたデバイスの大多数は、まったくと言っていいほどセキュリティを考慮しておらず、商品化や利便性ばかりが追求されています。

消費者は、デバイスがもたらすリスクを完全に認識しておらず、一般的に家庭内でセキュリティ対策をほとんど行っていません。

IPカメラのハイジャックが報告されたことで、ユーザーが監視されている可能性が認識されるようになりましたが、ユーザーは、家庭内に攻撃可能な場所がこれほどたくさん存在することの意味を、しっかり理解していません。

何百万台もの IoTデバイスをボットネット軍化することができる「Mirai」の作成者にとって、IoTデバイスが如何に格好の標的であるかが想像できると思います。このボットネットは、主に感染させたウェブカメラを使って史上最大の DDoS攻撃を仕掛け、人気のウェブサイトに 1秒あたり最大 1.2テラバイトの負荷を加えました。これが、巨大インターネット企業に対するパワープレイであったことは明らかですが、あらゆる組織や国がボットネット軍の標的にされる可能性があります。

「昨年後半、ボットネットが、主に感染させたウェブカメラを使って史上最大規模のDDoS攻撃を仕掛け、人気のウェブサイトに 1秒あたり最大 1.2テラバイトの負荷を加えた IoT 攻撃が注目を集めました。」 ギャリー・デイビス(Gary Davis) チーフ コンシューマー セキュリティ エバンジェリスト

IoTの危険性

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マカフィー モバイル脅威レポート : 2018年第 1四半期13

レポート

サイバー犯罪者は、私的な目的のために IoTを操る方法をすでに模索しています。昨年秋、研究者はデジタル玩具で物理的な損害を与えられることを概念実証するために、ホーム アシスタント ロボットをハッキングするという面白い試みを行いました。もちろん、一般的に、サイバー犯罪者の目的はお金なので、実際には、クレジットカード情報の窃盗、仮想通貨マイニング、PCやモバイル デバイスなどの他の価値の高いデバイスへのホッピング、さらにはユーザーの外出時を犯罪者に知らせるなどを目的として、IoTが使われる可能性の方が高いと考えられています。

2017年後半、マルウェア「Reaper」が、200万台ほどのデバイスを感染させました。わずか 1年前、IoT 攻撃とは、多くのコネクテッド ホーム デバイスのセキュリティの甘さを利用したものでしたが、それが進化しています。

「Reaper」は、デフォルトのユーザー名やパスワードで総当たり攻撃を仕掛ける「Mirai」とは異なり、既知の脆弱性が含まれるデバイスを探し、それを利用します。大幅に進化した一連のハッキング ツールが使われました。消費者は、かつてない勢いでデバイスを家庭内に取り入れているため、この進化は、脅威の増大を意味しています。

図 9. 2016年以降のサイバーセキュリティの増加

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マカフィー モバイル脅威レポート : 2018年第 1四半期14

レポート

ユーザーが家庭内や私生活にテクノロジーを取り入れると同時に、多くのユーザーが公共のネットワークの危険性を認識しています。ビッグ データの時代であればなおさらです。

マカフィーは、過去 18カ月でネットワークのなりすましが劇的に増加していることを確認しています。ハッカーが独自のネットワークを公共の場所に設置し、ユーザーが接続するのを待って、銀行のログイン情報やクレジットカード番号などの機密情報が送信されないか監視します。あるいは、単純に、空港やホテルなどの場所で、セキュリティが甘いネットワークを飛び交うトラフィックを監視しています。

特に旅行中は、セキュリティに対する意識が低下するため、このような手口の危険性が増します。マカフィーの2017年の旅行中のインターネット接続に関するアンケート調査(Unplugging Travel Survey)から、58%の旅行者はWi-Fiの安全性を確認する方法を知っているにもかかわらず、実際に安全を確認する人は、半数以下(49%)であることが判明しました。

懸念されるこうした傾向に加え、最近、幅広く使用されているWPA2暗号化プロトコルに KRACK 脆弱性の問題が見つかり、ネットワークの安全性が一層複雑化しています。HTTPプロトコルを使用してデータをスクランブルしない限り、たとえ暗号化しても、KRACKによって、攻撃者がデバイスとルーター間のトラフィックを傍受できてしまうかもしれません。安全なネットワークに接続していても、Androidデバイスの 41%近くが危険にさらされています。この不具合は、VPNに加えて、モバイル セキュリティを導入することの重要性を一層浮き彫りにしています。

メディアが、公共のWi-Fiに潜む危険性や、最近発見された私たちが利用するインターネット接続に潜む脆弱性について取り上げているので、消費者は VPNでプライバシーを守ることを検討するようになるでしょう。

ネットワーク セキュリティのリスク

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マカフィー モバイル脅威レポート : 2018年第 1四半期15

レポート

2018年はモバイル マルウェアの年になるのか?

2018年、世界のサイバー犯罪被害額は 6,000億ドルに上ることが予想されていますが、世界中の大多数の人々がモバイル デバイスでのアクセスを望んでいます。モバイル マルウェアの作成者は、不正攻撃によって何百万ドルもの金銭を狙い、そこから収益を生み出しています。モバイル マルウェアの歴史は 15年足らず(2009に発見された初のモバイル ボットネットから、Lazarusによるスマートフォンでの標的型攻撃に至るまで)であることを踏まえると、モバイル デバイスにおけるマルウェアの進化のスピードは憂慮すべきです。

バンキング型トロイの木馬が数百万ドルの利益を生み、広告クリック詐欺や潜在的な仮想通貨マイニング アプリがオンライン ストアに溢れていることから、2018年は攻撃数の劇的な増加が予想されています。イランや韓国の標的型攻撃は、始まりに過ぎません。これらの要素や、Lazarusが PCベースの永続的かつ巧妙な手口をモバイル デバイスにも派生させていることから、2018年はモバイル マルウェアの年になるかもしれません。

まとめ

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マカフィー モバイル脅威レポート : 2018年第 1四半期16

McAfeeについて

McAfeeは、世界で最先端のサイバーセキュリティ企業です。 McAfeeでは、より安全なデジタル世界を構築するため、個々の力を結集し、企業と個人を保護するソリューションを提供しています。他社の製品と連携するソリューションを構築することで、真に統合されたサイバーセキュリティ環境を整備し、脅威の対策、検出、修復を連動して行うことができます。McAfeeの個人向けのソリューションは、すべての種類のデバイスに対応しています。自宅でも外出先でも、安心してデジタル ライフを楽しむことができます。McAfeeでは、他のセキュリティ企業との連携を強化し、力を合わせてサイバー犯罪者と戦っています。www.mcafee.com/jp

McAfee Labsについて

McAfee Labs は世界で最先端の脅威研究機関で、脅威情報やサイバーセキュリティに関する最新の情報を提供しています。世界各地に配備した数百万台のセンサーからデータを収集し、ファイル、Web、メール、ネットワークなどに対する脅威を研究・調査し、脆弱性の報告を行っています。McAfee Labsは、リアルタイムで脅威情報、重要な分析結果、専門的な情報を提供し、保護対策の向上とリスクの軽減に貢献しています。https://www.mcafee.com/jp/mcafee-labs.aspx

本資料は弊社の顧客に対する情報提供を目的としています。本資料の内容は予告なしに変更される場合があります。本資料は「現状のまま」提供するものであり、特定の状況あるいは環境に対する正確性および適合性を保証するものではありません。McAfeeおよび McAfeeのロゴは米国法人McAfee, LLCまたはその関係会社の登録商標です。その他すべての登録商標および商標はそれぞれの所有者に帰属します。Copyright © 2018 McAfee, LLC

〒 150-0043東京都渋谷区道玄坂 1-12-1渋谷マークシティウエスト 20Fwww.mcafee.com/jp

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