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グラファイトの磁気的性質とスピン
2009年6月5日 近藤 剛弘
γραφειν
反磁性体、強磁性体、完全反磁性体(超伝導体)
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目次
(2)グラファイトの磁気的性質とスピン
(1)グラファイトの構造と電子状態 (前回までのゼミ内容の更新情報)
1.グラファイトの磁気的性質(Introduction)
2.磁気的特性を決めているもの:磁気モーメント
1.グラファイトのSTM像
2.グラフェンの電子状態
3.磁性体の種類、磁性を決める相互作用、磁化曲線
3.Caドーピングしたグラファイトが示す超伝導の起源
4.グラファイトの完全反磁性と強磁性
5.グラファイトの欠陥と強磁性(3)まとめ
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近藤剛弘“グラファイトの構造と電子状態(1)” 2008年6月20日のゼミ資料
Hexagonal structure
β炭素の電子状態のみがEf付近に集中している為Ef付近のバイアス条件ではSTMの輝点はβ炭素が支配的
フェルミエネルギー付近で観測されるSTM像に関する解釈
Tománekの説(現在、最も広く支持されている考え方)
Graphiteのフェルミ面近傍のバンドのK点においてαでは層間相互作用の結果形成したGapがあるが、βではGapはない。
C. D. Zeinalipour-Yazdi, Taylor & Francis Group LLC (2008).
D. Tománek and S. G. Louie, Phys. Rev. B 37 (1988) 8327.
前回までのゼミ内容の更新情報:1. グラファイトのSTM像について
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E.Cisternas, et al., Phys. Re. B 79 (2009) 205431.(5月29日に出た論文)
HOPGのSTM観測結果とシュミレーション結果の比較
β炭素のみが輝点(凹凸振幅も一致)
測定結果 計算結果
低サンプルバイアス(-50meV)測定結果 計算結果
β炭素がα炭素より高輝度(凹凸振幅の違いも一致)
実験と理論計算が一致する → 理論計算からグラファイトの見え方を予測する
(計測:加熱処理無しHOPG W-Tipの室温UHV-Omicron-STM 計算 :グラフェン4層をDFT計算した後にTersoff Hamannモデルで表示)
中サンプルバイアス(-300meV)
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計測中にTip-sample距離を1Å離すと見え方が変わった為に確認されたと判断
Tip-surface間距離
サンプルバイアス
小
小 大
大
It = 1.5~3 nA 且つ Vs=-200~-300meVでConstant-height modeなら全原子が見える
E.Cisternas, et al., Phys. Re. B 79 (2009) 205431.(5月29日に出た論文)
計算予測 検証実験
スキャン方向
β炭素の電子状態のみがEf付近に集中している為Ef付近のバイアス条件ではSTMの輝点はβ炭素が支配的
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厳密にはグラフェンは半金属:Efの状態に電子が存在するが熱熱電子励起でのみ伝導
層間相互作用(A-B interlayer coupling)によって生じるバンドの方はスプリットする
Dirac crossing point
グラフェン一枚 バイレイヤーグラフェン(非対称構造)
構造模式図とK点周りのバンド
バイレイヤーグラフェン(対称構造)
両方のバンドともにスプリットする(semi-metal to insulator transition)
T. Ohta, A. Bostwick, T. Seyller, K. Horn, E. Rotenberg, Science, 313 (2006) 951.
グラフェンシートの対称性をコントロールすることで伝導性をスイッチできる
これを実演した論文 Controlling the Electronic Structure of Bilayer Graphene
前回までのゼミ内容の更新情報:2.グラフェンの電子状態
近藤剛弘“グラファイトの構造と電子状態(2)” 2008年9月11日のゼミ資料
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T. Ohta, et al., Science, 313 (2006) 951.
カリウム / バイレイヤーグラフェン / SiC
カリウムなし (Gap OPEN) カリウム / Bilayer Graphene被覆率大被覆率小
カリウム吸着による電子密度増加でEfとEDの差が開く
(Gap CLOSED) (Gap OPEN)n-typeのSiC基盤からの電荷
SiC基盤グラフェン2枚カリウム原子
カリウム堆積で形成するダイポールがグラファイトの対称性を変調する効果がある
バンドギャップの開閉を制御した
右側の図はTight binding計算でのFitting結果
Efのshiftから見積もった
前回までのゼミ内容の更新情報:2.グラフェンの電子状態
近藤剛弘“グラファイトの構造と電子状態(2)” 2008年9月11日のゼミ資料
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N. Kamakura., Surf. Sci., 602 (2008) 95.
K点における角度分解光電子分光スペクトルのカリウム被覆率依存性
HOPG K/HOPG
HOPGでもバイレイヤーグラフェンと同様に電子状態変調を示す
Gapが開き被覆率と共に幅が広がる
K吸着がHOPGの上部2層の電荷密度分布を再分配していると解釈
前回までのゼミ内容の更新情報:2.カリウムドープによるHOPGの電子状態制御
近藤剛弘“グラファイトの構造と電子状態(2)” 2008年9月11日のゼミ資料
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数層グラフェン上でのSTM像グラフェン1層では6つの炭素全てが輝点
グラフェン3層ではβ炭素が輝点
グラフェン2層の場合 積層構造により
STM像が変化
グラファイトSTM像の解釈をそのまま適用P. Lauffer, et al., Phys. Rev. B, 77 (2008) 155426.
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数層グラフェン上でのSTS計測
P. Lauffer, et al., Phys. Rev. B, 77 (2008) 155426.
ABC Stackでの理論計算と一致ABAB Stackでの理論計算と一致
どの場所で見てもGapに大きな違いは無い(下地との相互作用の違いでわずかに差が出る)
バイレイヤーグラフェンでのSTS
STSで数層グラフェンのDOSピークを観測した初めての報告
AB Stackでの理論計算と一致
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Caドーピングしたグラファイトが示す超伝導の起源
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Kishグラファイトから作成
K. Sugawara et al.,, Nature Physics 5 (2008) 40.
他の文献ではHOPGをLiCa合金と混ぜて10日間350℃で加熱して作成
Caドーピングしたグラファイトが示す超伝導の起源
磁気モーメント
FCで完全反磁性になっていないのでピン止め効果が働いている第2種超伝導体と分かる
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C6Ca graphite
C6Caの方が結合エネルギーがEfより下にshift
Caがグラファイトの層間に入ることで電子が注入(dope)された
K. Sugawara et al.,, Nature Physics 5 (2008) 40.
グラファイトの2p*バンドと説明
これが理論予想されていたインターレイヤーバンド(これを初めて観測したと主張の論文)
Caドーピングしたグラファイトが示す超伝導の起源
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K. Sugawara et al.,, Nature Physics 5 (2008) 40.
炭素のout-of-planeの振動がΓ点の電子とカップル(エネルギーやり取りを含む相互作用)してる
炭素のin-planeの振動がK点の電子とカップルしてる
Γ点
K点
フェルミディラック分布に従う(過去のメカニズムを否定する結果)
これが鍵だと主張
Caドーピングしたグラファイトが示す超伝導の起源超伝導ギャップがない
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(2)グラファイトの磁気的性質とスピン
ネオジウム磁石上で浮上する熱分解グラファイト
基礎的な内容に関する参考文献
1) 作道恒太郎、”固体物理“磁性・超伝導””、裳華房 (1993)2) 榎 敏明ほか、”炭素の辞典”、朝倉書店(2007)3) 久保健ほか、”磁性I”、朝倉書店(2008)4) B.T.Kelly, “Physics of Graphite”, Applied Science Publishers, 19815) 金森順次郎、”新物理学シリーズ7 磁性”、培風館 (1969)6) ネオマグ株式会社http://www.neomag.jp/7) Wikipedia
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グラファイトの磁気的性質(反磁性体)
磁化率(磁気感受率):磁気分極の起こりやすさ
磁気分極 真空の透磁率
N極
S極
H
HM m磁化 磁場(磁界)
HHHMHB rm )1()(
磁束密度 磁性体の透磁率比透磁率
divD0divB
tBrotE
・・・・磁場には源がない(ガウスの法則)
・・電磁誘導(ファラデーの法則)
・・・・電場の源は電荷(ガウスの法則)
・・変位電流jを含むアンペールの法則tDjrotH
Maxwellの方程式:
Diamond :m=- 4.9×10-7 [emu/g] (S. Hudgens et al., Phys. Rev. Lett. 33 (1974) 1552.)Graphite (parallel) :m=- 5.0×10-7 [emu/g] (J. Heremans., Phys. Rev. B 49 (1994) 15122.)Graphite (c-axis) :m=-300×10-7 [emu/g] (K. S. Krishman, Nature. 133 (1934) 174.)
c-axis
parallel
C軸方向に強い反磁性的性質を持つ反磁性体(ランダウ反磁性の寄与が大きい(後述))
@
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グラファイトの磁気的性質(強磁性体?完全反磁性体?)
Y. Kopelevish et al., J. Low Temp. Phys. 119 (2000) 691. P. Esquinazi et al., Phys. Rev. B 66 (2002) 024429.
・HOPGが強磁性体や完全反磁性体(超伝導的)であるという報告
・HOPGの欠陥が要因で強磁性体になるという報告
・ナノグラフェンが強磁性体になるという予測
例:X. Yang et al., Carbon 47 (2009) 1399.
例:M. Fujita et al., J. Phys. Soc. Jpn 65 (1996) 1920.
Motivation:グラファイトの磁性を決定しているものはいったい何なのか?
かなり怪しい論文↓
同じグループがグラファイトとへの硫黄のドープでTc=35 Kの超伝導をPRLで報告している(怪しい結果)
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磁気的特性を決めているもの:磁気モーメント
(1)電子のスピン磁気モーメント
s=- gBs
電子の自転に対応するスピン角運動量h s により磁気モーメントが発生
スピン磁気モーメント
g-factor
ボーア磁子spin
電子を外部磁場Hの中におくと
電子はスピンの磁場方向成分に対応して各軌道のエネルギーが変化Es± = ±1/2 gBHの2つに分離する(ゼーマン効果)
(2)電子の軌道磁気モーメント
-
+
電子の公転に対応する軌道角運動量h l により磁気モーメントが発生
軌道磁気モーメント
スピン角運動量
軌道角運動量
電流I速度v
電子を外部磁場Hの中におくと
外部磁場を打ち消す向きに磁気モーメントをつくる誘導電流によって生じる反磁性の項が0に加わる
(3)原子核の磁気モーメント
+
陽子や中性子の自転に対応するスピン角運動量hI により磁気モーメントが発生
=gNN I核磁気モーメント
核磁子はボーア磁子の約1/1800
核磁気モーメントは物質の磁性には影響をほとんど与えない
0=- Bl
主量子数
核磁子
g-factor(核子により決まった値)
核スピン
(*原子核は電子の磁気モーメントによる磁場にさらされて核スピンエネルギーはゼーマン分裂している)
これらの総和
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磁気的特性を決めているもの:磁気モーメント
鉄の場合
(1)電子のスピン磁気モーメント総和 → 不対電子4個(2)電子の軌道磁気モーメント総和 → 球対称でゼロ(3)原子核の磁気モーメント総和 → 無視できるくらい小さい
フントの法則による電子配置モデル
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常磁性体
磁性体
反磁性体
反強磁性体
らせん(ヘリカル)磁性体
弱強磁性体
非磁性体
外部磁場 = H
外部磁場 = H
完全反磁性体
超常磁性体
フェリ磁性体
外部磁場 = H
強磁性体
(軟磁性、硬磁性)
磁性体の種類と磁気モーメントの秩序性
強磁性微粒子など
熱ゆらぎによるスピンの乱れが強く、自発的な配向が無い
交換相互作用でスピンが互いに揃う
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状態 状態
安定 不安定
速やかに遷移する
1O2 :一重項酸素(励起状態)3O2 :三重項酸素(基底状態)
1
2
2s 2s
2p2p
3
1
2
4
x y z x y z
一個なくなるとフリーラジカル
一個加わるとスーパーオキシドアニオン(superoxide anion)
O2-
全スピン量子数1:常磁性
ビラジカル(biradical)
全スピン量子数0:反磁性
常磁性体の例: 酸素分子の基底状態(三重項酸素)
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スピン軌道相互作用電子のスピンと、電子の軌道角運動量との相互作用
結晶場不完全殻の電子が周りに配意する陰イオンから電場を受ける
原子内クーロン相互作用不完全殻の電子間の相互作用(パウリの排他則、フントの規則)
物質の磁性を決める相互作用
キュリー・ワイスの法則χm :磁化率C :物質固有のキュリー定数T :物質の絶対温度T c:常磁性キュリー温度c
m TTC
常磁性体強磁性体 or反経磁性体 温度Tc
磁気双極子相互作用(主要ではない)磁気モーメント同士の相互作用だが距離が大きいために小さい
磁性イオン内(陽イオン)
交換相互作用(主要!)電子間クーロン斥力相互作用の際のスピン間相互作用
磁性イオン間(陽イオン)
RKKY相互作用金属中の伝導電子のスピンを介して行われる局在スピン同士の相互作用
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超交換相互作用
磁性を決める相互作用:交換相互作用
A B
磁性イオン 磁性イオン
直接交換相互作用
(1) AとBの磁性イオンが近づく(2) 互いの電子(スピン)が互いの原子核と
相互作用
それぞれの波動関数が直行する場合→ 3重項状態が基底状態(交換積分Jが正)
それぞれの波動関数の重なりが大きい場合→ 1重項状態が基底状態(交換積分Jが負)
A B
磁性イオン磁性イオン
分子軌道形成
(1) AとBのさらに近づく
A B
磁性イオン 磁性イオン
C
陰イオン
(1) AとBがそれぞれ陰イオンに近づく(2) 陰イオンを介した交換相互作用
(2) 電子が占める確率がどちらのイオンも等価
(3) 分子軌道形成(結合軌道と反結合軌道)
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パウリの常磁性
磁場中
upの電子数がdownの電子数を上回り,磁化を持つ
電子状態の変化や電子の運動で発生する磁性
バンド強磁性
磁場中及び解放後
あまりにも極端にupとdownの電子数が異なるため,自分自身の発する磁場がこのずれたバンドをそのまま固定してしまう(強磁性となる!)
EF 付近に極端に大きなDOSピークがある場合
グラファイトでありえるかもしれない?
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T. Matsui, Phys. Rev. Lett. 94 (2005) 226403.
ランダウ反磁性
ランダウ量子化
電子はサイクロトロン運動(円運動)
磁場中で磁場を打ち消す方向に電流発生(レンツの法則)
黒線が磁場中では赤線のようになる
グラファイトの反磁性的性質 → ランダウ準位の発生
サイクロトロン周波数
計算との比較により40層のグラフェンで再現可能
表面1層のみの計算で再現可能
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大きな磁場をかけても、常伝導状態の部分にいわば磁束の逃げ道が出来ているため、超伝導状態を維持することができる。
第二種超伝導体
第一種超伝導体
完全反磁性(マイスナー効果)電気抵抗がゼロなので誘導電流が容易に流れ、外部磁場を打ち消すような磁場が発生し、磁場の侵入を妨ぐ(電磁誘導のレンツの法則)。( 外部磁場に対して逆向きに磁化)
Hc1
Hc1 Hc2
反磁性の観点からみるとグラフェンは超伝導に近い?
完全反磁性(超伝導体)
ピン止め効果:
磁束が第二種超伝導体の内部にあるひずみや不純物などの常伝導部分にトラップされる(これがあることで磁石は超伝導体上で浮上した際に安定していられる)
超伝導体を強磁性体にすることが可能になる
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逆磁場に強い(減磁しにくい)磁石
磁気特性と磁化曲線
減磁曲線(Demagnetization curve)
Br :残留磁化(残留磁束密度 = MR)
B-H曲線:外部磁場の大きさ+磁化(トータルの磁束密度)
Ms : 飽和磁化MR : 残留磁化Hcj:真の保磁力
M-H曲線:外部磁場による磁化の変化
Hcb :保磁力(<Hcj)
例M
MsMR
Hc小:軟質磁性体磁気ヘッド
Hc中:半硬質磁性体磁気記録媒体
Hc大:硬質磁性体永久磁石
B = μ0 H + J(CGS単位系 B = H + 4πI)
B : 磁束密度 [T](G)H : 磁場 [A/m](Oe)M : 磁化 [T](G)μ0 : 真空の透磁率 4π x 10-7[H/m]
ループで閉じられた面積に相当する分だけのエネルギーが外部の磁界から磁性体に供給される。磁気エネルギーは熱エネルギーに変換(交流磁界によって磁性体が加熱される)
M-H曲線
磁場によって誘起される電流を超伝導リングの近くに置いたコイルで再度磁場に変え増幅
量子化磁束の通過に応じて電流が流れる回路
SQUID磁力計(超伝導量子干渉磁力計)
計測手法
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通常の永久磁石の磁化曲線
超伝導永久磁石の磁化曲線
磁気特性と磁化曲線
超伝導体の転移温度の推移
東工大の細野グループ2008年に最も引用された論文(トムソン社)Science誌が選ぶ「2008年の10大ブレークスルー」
グラファイトが新たな高温超伝導の可能性を切り開くかもしれない
M
M
ピン止め効果
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グラファイトの完全反磁性(超伝導特性)と強磁性
N極
S極
H
parallel
Y. Kopelevish et al., J. Low Temp. Phys. 119 (2000) 691.
ヒステリシスがある → 強磁性的
体積に比例して磁気モーメント増加(試料V2からV1) → バルクの磁性を示している
SQUID磁力計(超伝導量子干渉磁力計)で測定
モスクワのHOPG
Heガス雰囲気10Torrでの800 Kアニール2hが強磁性的なヒステリシスを出すのに重要 かなり怪しい論文↓
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Y. Kopelevish et al., J. Low Temp. Phys. 119 (2000) 691.
Heガス雰囲気10Torrでの800 Kアニール2時間+
真空(10-2 Torr)中での800 Kアニール2時間
グラファイトの完全反磁性(超伝導特性)と強磁性
強磁性から完全反磁性に変化
室温のHOPGが超伝導体と同程度のヒステリシス!!
C8Kなどのグラファイト層間物質の超伝導とMの最小値が近い値をとっている
なんと
一週間たつと強磁性に戻った
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N極
S極
H
c-axis
モスクワのHOPG
グラファイトの完全反磁性(超伝導特性)と強磁性
超伝導体と似たヒステリシス!
・磁場0でも磁気モーメントがある・H=0でジャンプがある
同じ図
Y. Kopelevish et al., J. Low Temp. Phys. 119 (2000) 691.
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グラファイトの完全反磁性(超伝導特性)と強磁性
今度はHe中800 Kアニール2hで超伝導的ヒステリシスが強磁性的ヒステリシスに変化!!!
超伝導的ヒステリシスと強磁性的ヒステリシスの変化はEf付近のキャリアステートとエッジ状態によるのではとコメント(詳細なメカニズム説明なし)
50μmの超高純度グラファイトパウダーで強磁性
特異的な磁性は不純物起因ではない
Y. Kopelevish et al., J. Low Temp. Phys. 119 (2000) 691.
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グラファイトの強磁性と欠陥の関係
X. Yang et al., Carbon 1399 (2009) 47.
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X. Yang et al., Carbon 1399 (2009) 47.
K-H. Han , et al. Adv. Mater, 15 (2003) 1719.プロトン照射でHOPGが強磁性
P. Esquinazi, et al., Phys. Rev. Lett, 91 (2003) 227201.
Cイオン照射でHOPGが強磁性
グラファイトの強磁性と欠陥の関係
Y. Kopelevish et al., J. Low. Temp. Phys. 119 (2000) 691.P. Esquinazi et al., Phys. Rev. B 66 (2002) 024429.
HOPGが強磁性
H. Xia, et al., Adv. Mater, 20 (2008) 4679.
実験
計算
P. O. Lehtinen. Phys. Rev. Lett 93 (2004) 187202.
欠陥および欠陥と水素の混合物が磁気モーメント生成
欠陥上の水素が磁気モーメント生成
O.V.Yazyev, Phys. Rev. B 75 (2007) 125408.
吸着原子が磁気モーメント生成
P. O. Lehtinen, Phys. Rev. Lett, 91 (2003) 017202.欠陥が磁気モーメント生成
Y. Zhang, Phys. Rev. Lett. 99 (2007) 107201.
欠陥有無とアニール処理が及ぼすグラファイトの強磁性への影響を解明
背景
目的
(論文中のアニールに伴う欠陥再生がNドープ効率化のヒントになると考えられます)
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陽電子消滅寿命:陽電子が電子と対消滅するまでの時間
陽電子消滅寿命分光計測(PAS)による欠陥の大きさと深さプロファイル計測
HOPGに70 keVの12C+を照射した後に計測
消滅するサイトの電子密度に依存.欠陥濃度が検出限界以下のとき、格子間位置で消滅. 格子間位置では電
子密度が高いので、寿命は短い.空孔型欠陥があるとそこに捕獲され消滅. 空孔型欠陥中の電子密度は格
子間位置より低いので陽電子寿命は長い.欠陥サイズがさらに大きくなると,欠陥内の電子密度はより低くなるので,寿命は長くなる. (空孔型欠陥の有無や欠陥サイズを推定)
点欠陥
過去のマジックナンバーの予測と一致(5と3が不安定)
X. Yang et al., Carbon 1399 (2009) 47.
(1)100℃ (at 10-7Torr)で1h加熱するとV1のみになる!
欠陥の種類
9
6
4
2
1
(NTMDT社製のHOPGでZYAグレード 加熱処理せず使用)
1×1015cm-2の照射
(2)200℃ (at 10-7Torr)で1h加熱すると欠陥がなくなる!
二つの信号の検出時刻差を測定
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X. Yang et al., Carbon 1399 (2009) 47.
アニール処理がもたらす欠陥プロファイル変化の考察
Range and stopping theory (Ziegler et al.,. The stopping and range of ions in solids. New York: Pergamon; 1985.)によると70 keVの12C+イオンを衝突させると243 nm程度の深さまで218 個のFrenkel pairができる
フレンケル欠陥
格子点イオンが、格子間に移りその後に空孔が残った欠陥
(Interstitial-vacancy (IV) pair)
Thrower, Phys Stat Sol A 47 (1978) 11.
Reported migration energy in graphiteInterstitial: 0.1 eVPoint vacancy: 3.1eV
(1)100℃ (at 10-7Torr)で1h加熱するとV1のみになる!
(2)200℃ (at 10-7Torr)で1h加熱すると欠陥がなくなる(使用前より欠陥が減っている)!
100℃では動ける100℃では動けない
報告されているMeVの電子線照射の結果ではV1が大部分を占めることと一致(B.T.Kelly, “Physics of Graphite”, Applied Science Publishers, 1981)
ニュートロン照射でできるV6欠陥は1500℃でも消滅しないという報告(PRL,82,2532)と異なる
V6が安定なのは似ている
200℃(473 K)はWigner energyを開放する温度として知られている
Interstitial-vacancy (IV) pair
C.P.Ewels, et al., Phys. Rev. Lett. 91 (2003) 025505.R.H. Telling,et al., Nature Mater 2 (2003) 333.
1.3eVのエネルギー(200 K)で通常のグラファイトに戻りこの際に10.1-10.8eVのエネルギーを開放する!
E. W. J. Mitchell, et al., Nature 208 (1965) 638.
450-500 Kで欠陥消滅を報告している飯島グループの結果(Urita et al, Phys. Rev. Lett. 94 (2005)155502)とも一致
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ドップラー拡がり陽電子消滅分光計測(DBPAS)による欠陥濃度と深さプロファイル
S parameter :赤いエネルギー領域のγ線本数 / 全γ線本数
W parameter :緑のエネルギー領域のγ線本数 / 全γ線本数
欠陥濃度・サイズが増えるとS parameter の増加 (W parameterの減少)
陽電子が電子と対消滅すると2本のγ線を放出γ線はE = mc2より511 keVを持つが電子の運動量によるドップラー効果の影響を受ける.
Eγ =m0c2±ΔEγ =m0c2±cpL/2
消滅相手である電子の運動量が大きいほど放射されるγ線が511 keVからよりずれた値になる.
ドップラーシフト
電子の運動量
DBPASの原理100℃アニール後の表面近傍でのSパラメータ減少はV1以外の欠陥の減少に対応
100℃アニール後にSパラメータが大きく減らないのはV1が残っている為
500℃アニール後では欠陥が全部消滅
計算と深さプロファイルが一致する→解釈をサポート
PAS結果と一致(200℃でのDBPAS結果は異なっており、構造由来と解釈している)
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X. Yang et al., Carbon 1399 (2009) 47.
グラファイトにある欠陥と強磁性
未処理のHOPGでの結果を差し引いた正味の磁化ΔM
強磁性ループ
データ上に載せていないが照射したてのHOPGの飽和磁化の75%と記載
欠陥が未処理HOPGよりも減っているため反磁性のループを示す
欠陥プロファイルの結果と合わせると欠陥密度が磁性を決定していると示唆される
-
X. Yang et al., Carbon 1399 (2009) 47.
点欠陥V1が磁気モーメントを持つことはたくさん報告されている
グラフェンではなくグラファイトで計算(何層か記述無しなのでたぶんバルク)レイヤー間のファンデルワールス相互作用の記述は計算コードで大きく異なっているがVASPコードだとレイヤー間距離などが実験結果と良く一致.
DFT計算により欠陥と磁気モーメントの関係を調べる
V4の場合は構造により持つ場合と持たない場合がある
この論文では新たにV6欠陥も磁気モーメント(~5.54B)を持つことが分かった
Spin密度分布
(磁気モーメントが出る構造)
6個の欠陥(V6)
4個の欠陥(V4)
~5.54B
~1.97B かなり局所的
-
X. Yang et al., Carbon 1399 (2009) 47.
DFT計算により欠陥と磁気モーメントの関係を調べる
点欠陥だと広い範囲で出る
B-sublatticeからA-sublatticeへの電子の移動があると解釈
Impurity bandEdwards DM,. J Phys: Condens Mater 18 (2006)7209.
Spin upとdownがEf付近で非対称
バンド内キャリアでスピンに偏り
(spin polariozed electron)
強磁性の起源水素がついた計算を計算すると半導体的になる構造があることを記載
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Impurity bandが下記のような強磁性の起源であると提唱
同じ著者らの論文
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まとめ
今後はグラファイト上のスピンと分子との相互作用の理解が重要と考えられる
下記の3項目について理解を深めた・最近のグラファイトの物性報告の一端・報告されているグラファイトの磁気的特性・提案されている強磁性発生原理
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他の計算論文 CがGraphiteについた表面
H. Lee et al., Phys. Rev. B, 79 (2009) 121404.
スピン偏極(スピンに偏りが出る)
~1.6B
~1.7B
レイヤー間に渡る影響
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RKKY相互作用
金属中の伝導電子のスピンを介して行われる局在スピン同士の相互作用
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弱強磁性
non-collinearで傾いた スピン構造をとるもの
(1)Dyaloshinski-Moriya(DM)相互作用:スピン-軌道相互作用が軌道角運動量の方向性を反映して異方的となる
L. Néel et al., Pauthenet Comp. Rend, 234 (1952) 2172.
(2)磁性錯体などの異方性:結晶中で錯体が交互にある方向に傾いて,かつ異方性も非常に強い場合
F. Setifi et al., Inorg. Chem, 41 (2002) 3786.
(3)フラストレーション:幾何的に全ての相互作用のパスを 最安定には配置できないような場合
J. Nishijo et al., Bull. Chem. Soc. Jpn, 77 (2004) 715.
反強磁性体のスピンが微妙に同じ方向に傾くことにより全体では弱い自発磁化が 右向きに発生
スピンの傾きの起源: