シラカンバ種子の飛散について - 長野県3. 飛散時期と種子の確保...

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シラカンバ種子の飛散について シラカンパは長野県の県木に指定されており、 その真っ白な美しい樹肌からクリーン信州の象徴 ともいえる樹木です。鑑賞用として公園などにも よく植えられており、また家具材、器具材として も利用価値の高いものです。 近年広葉樹林造成 l と対する要求が高まっていま すが、シラカンパ林も積極的につくっていく必要 があります。シラカンパは典型的な陽樹であり山 火事跡地などの裸地 K先駆樹として最初の森林を っくります。従って シラカンパ林をつくっていく 有力な方法として天然更新があげられます。 当初では昭和62 63 年度の二か年にわたり国補 課題 有用広葉樹の開花結実に関する調査ー でシラカンパ種子の飛散特性について調査しまし た。 ζ の結果を引用しながら主にシラカンパの天 然更新について述べます。 1. シラカンパの種子について 図-1 I ζ示すように シラカンパの種子は長さ 1. 5 -2 . 2 皿で淡褐色、上方 i 乙二本の花柱があ ります。また非常に薄い翼をもち、その幅は果 実の幅の1. 5-2 倍あります。一般的に連年結 実する習性があり、種子は 10 月に飛散し、その 数は 1009 当り約34 万粒です。その散布は風に 依存しており、強風のときなどは想像以上 i 乙遠 くまで飛散しますが、北海道の調査によると成 林の期待できる有効飛散距離は風下で70- m 風上で '30m 程度とされています。 種子 3mm 図-1 シラカ ンパの種子と果りん 7- 2. シラカンパの飛散距離と天然更新 -2 は当センターの構内(標高 900m) にあ るシラカンパ(樹齢33 年、樹高 16m 、胸高直径 18c 鴻)について 散距離を調査した結果です。 母樹から 5m ごとに 50m の距離まで種子採取用 のトラップ(1 m x 1 m) を設置しました。種 子は母樹から 10m の範囲 l ζ大部分落下しており、 50m 以上の飛散距離をもつこともわかりました。 63 年の種子の飛散時期における種子の飛散と風 向・風速との関係を検討したと乙ろ、風下方向 で風速 2m 以上の風があるときは、遠匝離まで 飛散している乙とがわかりました。 62 年の調査 結果では、 50m の距離で lrrf 当り 572 粒の落下 があり、乙れを種子の発芽率とその後の消失な どを考えてその 2 lrrf 当り 11 本の計算になります。 63 年の調査結 果の場合、 30m の距離で 363 粒の落下があり、 同様に計算すると lrrf 当り 7 本となります。 1 rrf 当り 5-7 本の発生があればその後の自 然枯損による消失を考えても将来成林を期待す ることができます。従 ってこの二か年の結果か らはシラカンパを天然下種更新 l とより成林させ る有効飛散匝離は母樹の樹高、結実量、飛散時 の風向風速などにもよりますが、一応半径50m 前後となるようです。 3. 飛散時期と種子の確保 シラカンバの人工造林を考える場合は種子の 効率的な確保が重要で、種子の採取適期を把握 する必要があります。図- 31c はシラカンパ種 子の採取時期別飛散量を示しました。乙の 2 年の調査結果から種子飛散の最盛期は 10 月上・ 中旬といえます。 北海道の調査によると発芽率の最も高い種子 の得られる時期は 9 月下旬 --10 月上旬であり、 乙れは種子落下の最盛期と一致しているとされ ています。 シラカンパの種子は成熟後飛散するので、種 子の採取適期は飛散時期の 10 月上・中旬より少 し早まるものと考えられます。

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Page 1: シラカンバ種子の飛散について - 長野県3. 飛散時期と種子の確保 シラカンバの人工造林を考える場合は種子の 効率的な確保が重要で、種子の採取適期を把握

シラカンバ種子の飛散について

シラカンパは長野県の県木に指定されており、

その真っ白な美しい樹肌からクリーン信州の象徴

ともいえる樹木です。鑑賞用として公園などにも

よく植えられており、また家具材、器具材として

も利用価値の高いものです。

近年広葉樹林造成lと対する要求が高まっていま

すが、シラカンパ林も積極的につくっていく必要

があります。シラカンパは典型的な陽樹であり山

火事跡地などの裸地K先駆樹として最初の森林を

っくります。従って シラカンパ林をつくっていく

有力な方法として天然更新があげられます。

当初では昭和62・63年度の二か年にわたり国補

課題 有用広葉樹の開花結実に関する調査ー

でシラカンパ種子の飛散特性について調査しまし

た。 ζの結果を引用しながら主にシラカンパの天

然更新について述べます。

1. シラカンパの種子について

図-1 Iζ示すように シラカンパの種子は長さ

1. 5 -2. 2皿で淡褐色、上方i乙二本の花柱があ

ります。また非常に薄い翼をもち、その幅は果

実の幅の1.5-2倍あります。一般的に連年結

実する習性があり、種子は10月に飛散し、その

数は 1009当り約34万粒です。その散布は風に

依存しており、強風のときなどは想像以上i乙遠

くまで飛散しますが、北海道の調査によると成

林の期待できる有効飛散距離は風下で70-剖 m、

風上で'30m程度とされています。

種子

3mm

図-1 シラカ ンパの種子と果りん

一 7-

2. シラカンパの飛散距離と天然更新

図-2は当センターの構内(標高 900m)にあ

るシラカンパ(樹齢33年、樹高16m、胸高直径

18c鴻)について 散距離を調査した結果です。

母樹から 5mごとに50mの距離まで種子採取用

のトラップ(1 m x 1 m) を設置しました。種

子は母樹から10mの範囲lζ大部分落下しており、

50m以上の飛散距離をもつこともわかりました。

63年の種子の飛散時期における種子の飛散と風

向・風速との関係を検討したと乙ろ、風下方向

で風速 2m以上の風があるときは、遠匝離まで

飛散している乙とがわかりました。 62年の調査

結果では、 50mの距離で lrrf当り 572粒の落下

があり、乙れを種子の発芽率とその後の消失な

どを考えてその 2~ちが成立すると仮定すると、

lrrf当り 11本の計算になります。 63年の調査結

果の場合、 30mの距離で363粒の落下があり、

同様に計算すると lrrf当り 7本となります。

1 rrf当り 5-7本の発生があればその後の自

然枯損による消失を考えても将来成林を期待す

ることができます。従ってこの二か年の結果か

らはシラカンパを天然下種更新lとより成林させ

る有効飛散匝離は母樹の樹高、結実量、飛散時

の風向風速などにもよりますが、一応半径50m

前後となるようです。

3. 飛散時期と種子の確保

シラカンバの人工造林を考える場合は種子の

効率的な確保が重要で、種子の採取適期を把握

する必要があります。図-31cはシラカンパ種

子の採取時期別飛散量を示しました。乙の 2か

年の調査結果から種子飛散の最盛期は10月上・

中旬といえます。

北海道の調査によると発芽率の最も高い種子

の得られる時期は 9月下旬--10月上旬であり、

乙れは種子落下の最盛期と一致しているとされ

ています。

シラカンパの種子は成熟後飛散するので、種

子の採取適期は飛散時期の10月上・中旬より少

し早まるものと考えられます。

Page 2: シラカンバ種子の飛散について - 長野県3. 飛散時期と種子の確保 シラカンバの人工造林を考える場合は種子の 効率的な確保が重要で、種子の採取適期を把握

4 まとめ

シラカンパを天然下種により更新させるとき

は、種子は自然に大量に落下するので発芽床の

条件(地床に植生や落葉が少なく十分光が当た

る)が整っていれば、飛散時期には特に注意す

る必要はありません。

シラカンパの天然下種更新が期待できる範囲

(x 1000) 昭和62年12 ,.

10

: 8 +............¥

草6~ (粒)4 1

。。10 20 30 40 50

飛散距離 (m)

は一応半径50m前後といえますが、風下方向に

は70~80m、風上方向には30m程度と考えてよ

いでしょう、ただし、種子の飛散時期における

風向、風速、更新地の地形条件等を勘案して更

新の可能な範囲を的確に見きわめなければなり

ません。

(x1000) 昭和63年20 1・・

飛 15散

種 10子

(粒) 5

O O 10 20 30 40 50

飛散距離 (m)

図-2 シラカンパ種子の距離別飛散量

(xl000) 昭和62年12可

10

28 種 6子

(粒)4

2

0

9.14 9.24 10.5 10.23 11. 211.12 11.20

採取時期

(x1000) 昭和63年20 1

飛 15散

種 10子

(粒)5

。10.310.1310.2110.31

採取時期

図-3 シラカンパ種子の採取時期別飛散量

(育林部奥村)

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jみんなでなくそう 差~'l のGj+∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞+

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