モンゴルにおける教員評価制度に関する考察...― ―93...

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―  ― 93 東北大学大学院教育学研究科研究年報 第57集・第2号(2009年) 本稿は、モンゴルにおける教員評価制度の政策の特色を明らかにするため、教員の上位資格制度 と業績評価に焦点を当てて論じたものである。業績評価は校長がすべての教員と業績契約を交わし、 教員のパフォーマンスを発揮することで学校の活性化を図ろうとしたものである。 一方、上位資格制度は優秀な教員に与える資格で教員の能力向上・専門性及び教員のモラールの 向上を目的とした制度である。両方の制度に共通するものは教員の評価を充実させることに重点を おき、昇給を伴ったものであるが、果たして、教員の職能成長・児童生徒の学力向上につながってい るのだろうか、という点に注目して論じていく。 キーワード:表彰制度、上位資格制度、資格審査、業績契約、学習成果基盤型教育 はじめに モンゴルは、旧ソ連のペレストロイカの影響を受け、1989年の民主運動により社会主義を放棄し、 体制変換を図った。それ以降、旧社会主義各国と同様に、「民主主義」と「市場経済」を理念とした国 家づくりが進められている。特に、教育の分野においては、これまでの幾多の教育改革とは質的に 大きな相違を見せる形で進展し、教育の目的・内容・制度・理念までを抜本的に変える改革へと発展 した。 この教育改革の実現には、学校教育の担い手である教員の資質・能力の向上が不可欠であり、そ の具体的な方策として、業績評価と上位資格の導入といった教員の適切な人事評価の実施であった。 業績評価は、2002年に制定された「公共部門管理財政法 1 」によって実施されており、公務員(教員) は当局(所属学校)と業績契約を結び、目標を定め、そのパフォーマンスを評価することで、教員の 資質向上と学校組織の活性化をはかるという制度である。 一方、上位資格とは1995年に発表された(1996年、 2003年に改定)教育文化科学大臣の命令により、 職業的資質・能力向上を意図し、一部の優秀な教員に対し、給与や労働条件について厚遇を得るこ とのできる三種類の資格のことである。 モンゴルの教員に関しては、多くの研究が蓄積されてきた。にもかかわらず、上記の二つの制度 東北大学大学院教育学研究科 博士課程後期 モンゴルにおける教員評価制度に関する考察 ―業績評価と上位資格を中心に― ボロルマ・トルバト

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Page 1: モンゴルにおける教員評価制度に関する考察...― ―93 東北大学大学院教育学研究科研究年報 第57集・第2号(2009年) 本稿は、モンゴルにおける教員評価制度の政策の特色を明らかにするため、教員の上位資格制度

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� 東北大学大学院教育学研究科研究年報 第57集・第2号(2009年)

 本稿は、モンゴルにおける教員評価制度の政策の特色を明らかにするため、教員の上位資格制度

と業績評価に焦点を当てて論じたものである。業績評価は校長がすべての教員と業績契約を交わし、

教員のパフォーマンスを発揮することで学校の活性化を図ろうとしたものである。

 一方、上位資格制度は優秀な教員に与える資格で教員の能力向上・専門性及び教員のモラールの

向上を目的とした制度である。両方の制度に共通するものは教員の評価を充実させることに重点を

おき、昇給を伴ったものであるが、果たして、教員の職能成長・児童生徒の学力向上につながってい

るのだろうか、という点に注目して論じていく。

キーワード:表彰制度、上位資格制度、資格審査、業績契約、学習成果基盤型教育

はじめに モンゴルは、旧ソ連のペレストロイカの影響を受け、1989年の民主運動により社会主義を放棄し、

体制変換を図った。それ以降、旧社会主義各国と同様に、「民主主義」と「市場経済」を理念とした国

家づくりが進められている。特に、教育の分野においては、これまでの幾多の教育改革とは質的に

大きな相違を見せる形で進展し、教育の目的・内容・制度・理念までを抜本的に変える改革へと発展

した。

 この教育改革の実現には、学校教育の担い手である教員の資質・能力の向上が不可欠であり、そ

の具体的な方策として、業績評価と上位資格の導入といった教員の適切な人事評価の実施であった。

業績評価は、2002年に制定された「公共部門管理財政法1」によって実施されており、公務員(教員)

は当局(所属学校)と業績契約を結び、目標を定め、そのパフォーマンスを評価することで、教員の

資質向上と学校組織の活性化をはかるという制度である。

 一方、上位資格とは1995年に発表された(1996年、2003年に改定)教育文化科学大臣の命令により、

職業的資質・能力向上を意図し、一部の優秀な教員に対し、給与や労働条件について厚遇を得るこ

とのできる三種類の資格のことである。

 モンゴルの教員に関しては、多くの研究が蓄積されてきた。にもかかわらず、上記の二つの制度

東北大学大学院教育学研究科 博士課程後期

モンゴルにおける教員評価制度に関する考察―業績評価と上位資格を中心に―

ボロルマ・トルバト

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モンゴルにおける教員評価制度に関する考察

をふまえた「教員評価」の研究はほとんど見当たらない。特に、モンゴル人研究者による研究では、

教員の待遇や社会保障の悪化、資質・能力の低下を訴えるものの、この2つの制度をふまえた教員評

価については述べることがなかった。一方、Gita�Steiner-Khamsi、Ines�Stolpe(2006)の研究は、

業績評価の「生みの親」となる学習成果基盤型教育2�(outcome-based�education: 以下 OBE3)を理解

する上で本稿において示唆的であるが、OBEを含む教育政策が主な分析対象であり、教員評価と

いう視点とは少し距離を置いている。

 そこで、本稿の課題は、教員の職能成長及び児童生徒の学力向上という視点からこの二つの制度

を中心に1990年以降のモンゴルにおける教員評価制度の特徴と問題点を明らかにすることである。

そのために、まず、社会体制変換があった1990年を軸にその前後の教員像及び教員の社会的地位を

比較し考察を行う。こうして比較することによって、現在における教員の地位の低下原因をさぐり、

今後求められる教員像を導き出したい。次に、1990年以降における教員の地位を高めるための取り

組みである業績評価と上位資格審査という二つの政策を分析する。この二つの制度は、両方とも給

与のアップにつながるという共通点をもっているが、教員の能力発達、児童生徒の学力向上へのア

プローチに注目したい。その際に、業績評価に関する法律と業績契約書、教育文化科学省省令、さ

らに、インタビュー調査と、小中学校の資料を分析の対象とする。

 なお、本稿で扱う「教員」とは、特にことわりがなければ初等中等教育機関の教員をさす。

1 1990年代前後の教員の地位と政府対策(1) 1990年以前の教員評価制度

 モンゴルでは、現代の学校教育システムができたのは、社会主義国家となった1921年からだとい

われており、学校教育、また、学校の教員という職業4は他の国々(少なくても日本やロシア等)に

比べ、歴史が浅いといえる。この(歴史の浅い)こともあって、学校教育がはじまったときから、慢

性的な教員不足、能力不足などの様々な問題を抱えていたが、教員の意欲を喚起させ、教員の社会

的地位の向上をはかるため多くの対策をとっていた。

 1956年に教員研修センターが設置され、1969年に「教員の研修措置について」の政府決定が出さ

れ、1974年より教員が5年毎に一ヶ月間の教員研修を受けるようになった�。教員養成は主に、師範

大学(中等教育の教員)、師範学校(小学校の教員)あるいは、幼稚園教員学校でそれぞれ行われてい

た。しかし、学校数や生徒数の急増に対応することが難しく、無資格教員に頼ることは多かった。

そこで、教育省が1941、1953年、1974年に3回にわたって全国的に「教員資格審査」を行なった。教

員評価の一環となるこの審査では、専門的能力、時事問題、教授法を総合的に評価し、合格した無資

格教員に対して「教員資格」を与えていた。

 一方、教員の待遇の改善及び教員資質の保障のため、優秀な教員に対する多くの表彰措置が講じ

られていた。1942年に国家第25小会議に決定により「功労教員:гавьяат багш」、さらに、1979年に「国

民教員:ардын багш」という勲章を与え、教員の社会的地位を高めようとした。この二つは、教員が

もらえる最高の表彰であるが、そのほかにもいくつかあって、序列化されているため教員の経験、

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能力によって段階的に表彰されるのである。ようするに、一人の教員がいくら優秀であっても最上

級の表彰を授与することは許されず、最下級の表彰から始まるという制度である。そして、校長が

各県市町村の教育局に申請し、最終的に教育省によって、その功労が優秀であることが認められた

教員が毎年2月の「教員の日」に表彰され、その報酬として給与が多少アップされる。

 このように、社会主義モンゴルでは最高の教員評価として、表彰制度が採用されていたが、能力

主義ではなく年功的資格制度となっていたといえよう。表彰資格の基準として「長年教職についた

…」という表現6が必ず現れるのである。

 文字通り、本稿の課題は1990年以降の教員評価制度に関する考察ではあるが、最初に1990年以

前の教員評価について述べることにしたのは、「旧社会主義が残した遺産は、今日のインフラ、また、

官僚主義政治行政に固執するだけではなく、現在の新しい改革・変革についての考察、評価する際

の文化的レンズ(cultural�lens)の機能も果たすのである」というハンフリー(Humphrey7)の主張に

味方するからである。

 教育分野、とりわけ教員政策に残した社会主義時代の遺産はどのようなものであったのだろうか、

以下考えてみたい。

(2) 1990年以降の教員政策

 体制転換を受けて、教育分野において幾多の政策が講じられた。1991年に新しい教育基本法が発

布され、「脱国家化」、「脱イデオロギー化」「自由」「国民の学ぶ権利」が強調され、民主主義社会に

必要な市民性の涵養を基本目標とした。1993年に『Монголын боловсрол, хүний хүчин зүйл Мастер

төлөвлөгөө:モンゴルの教育、人事 マスタープラン8』が発表され、モンゴルの教育が直面する諸問

題を提起し、その具体的な対策を示した。その中で、教員に関しては、教員が情報や知識を与える

のみではなく、学習者の積極的参加を進める事が大事だとした。また、教員の安定した職場づくり

を図り、給与の引き上げを検討する必要があるとした9。

 1995年に採択された『Төрөөс боловсролын талаар баримтлах бодлого:国家教育計画10』では、「教

育の現場の労働条件を改善し、教員の地位を高め、適切な教員を行う」とした。2000年の『Монголын

боловсролын салбарыг 2000~ 2005 онд хөгжүүлэх стратеги: モンゴル教育開発戦略11』も、社会主義

時代より教員の社会的地位が低下していることを指摘し、教員研修事業や教員の的確な評価を実施

することで教員の能力向上を図るとした。

 しかし、5年に1回行われていた教員研修が1991年より取りやめられ、教員の待遇、社会保障問題

が置き去りにされたため、経済的理由から教員がより条件のいい職場に転職してしまうというケー

スが急増し、教員の絶対数が大幅に不足したこれは教育の質の低下をもたらし、教員の地位が社会

主義時代より低くなり、教員の待遇、社会保障問題が顕著になった。モンゴル教員連盟(1989年に

設立)からこうした諸問題の解決を求め、数回にわたり政府に対して抗議をするが、一向に改善が見

られないため、ついにウランバートル、ダルハンなどの都市部を始め、地方でも給与アップを求め

た教員のストライキまで発生し、それが1995年まで3回も行われている12。

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モンゴルにおける教員評価制度に関する考察

 さらに、1997年に政府がアジア開発銀行の協力を得て「学校の構成・配置の合理化を図る」政策を

発表し、1997年から1998年にかけて bag(村)13の学校の閉鎖、ソム(町)の中高学校の9・10学年の

閉鎖、さらに、県や市の学校の合併という措置をとった。それによって、「定員オーバー」となった

多くの教職員14が退職を余儀なくされ、1996年から1998年に教員数が20090人から18118人に激減

した15。経費を節減することを目的にした対策ではあったが、もともと教員不足、教室・教材不足と

いう大きな問題を抱えるモンゴルにとって、少なくとも教員問題の点では「合理的」ではなかった。

 以上、ここまで、1990年以降における教員問題を含む主な教育改革について述べたが、以下、教

員評価に関するものとして二つの改革を取り上げていきたい。

2 学習成果基盤型教育の導入と業績契約書(1)学習成果基盤型教育の導入

 モンゴルに導入された学習成果基盤型教育(outcome-based education:以下 OBE16)の目的は教員の

一年間のパフォーマンスを評価及び査定し、その結果によって報酬を与えるシステムである。そし

てこれは1990年前半から始まった公的部門改革の一部でもあった。

 ニュー・パブリック・マネジメント(New Public Management)を基本理念とした「Төсвийн

байгууллагын удирдлага, санхүүжилтийн хууль:公的部門経営財政法17」(2002年6月)制定されるこ

とによって、モンゴル版OBEは実現可能になった。「公的部門経営財政法」の目的は、公共機関の行政・

財政部門の責任、利益を高めることであり、すべての公共部門において、業績契約の導入を必要とし

た。簡単に言えば、公共機関が毎年目標を立て、その成果を提起した業績契約書を作成し、年末にそ

れが査定され、目標に示した成果を見せていれば次の年度の予算を採決してもらうということである。

 そもそもモンゴルに導入されたOBEはニュージーランド18をモデルとしているといわれており、

Gita Steiner-Khamsi、Ines Stolpeによると、OBEとは本来、教育カリキュラム、教員のモニタリング、

生徒の成績評価、教員の給与、学校の業績向上のための責任能力(国によって学校選択)などの改革19を含んだ総合的政策である。

 しかし、モンゴルの教員たちの理解は、教員のモニタリングと業績に基づいた給与システムの二

つのことに集中され、他のアスペクトは重要視されなかった。なぜならば、上記の教員の表彰制度

が象徴するように、この二つのシステムが昔からモンゴルにあったものだからである。

 具体的に、教員のモニタリングは、主に教員の仕事ぶりを観察し、不十分なところに対して罰を

加えるという意味をしていた。たとえば、生徒の授業に対する態度の悪さ、宿題をしてこないこと、

あるいは、課外活動を欠席したなどの理由で罰を受けることがある。一方、業績に基づいた給与シ

ステムは、教員の賞罰の大きな決め手となる。

 以上のことから、モンゴルに導入されたOBEは、モンゴルに長年継続してきた教員を「監査」す

るシステムを助長したものとなったといえる。

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(2)業績契約書の導入その現状

 次に、OBEを実現するのに欠かせない үр дүнгийн гэрээ(performance-based contract20: 業績契約

書―日本語訳は筆者)について考察していきたい。

 国家公務員法21により、モンゴルの国家公務員はいくつかのランキングに分けられているが、教

員は「国家サービス公務員」に当たる。「公的部門経営財政法」に示したとおり、公務員である教員は

その責任者である校長と、校長は予算最高責任者である教育文化科学大臣と業績契約を結ばなけれ

ばならない。本稿では、校長と教員の契約を取り上げていくが、業績契約の目的について国家公務

員委員会の規定に次のように示している。「ジェネラル・マネージャー(校長)は公務員(教員)と結

ぶ業績契約の目的は、公務員の業務の効率性を図り、業績、成果を基に評価を行い、報酬を与え、知識・

能力・専門性を高めることによって、組織の計画及びジェネラル・マネージャーの業務の効率性を

高めるために貢献を求めることにある。」

 この規定に校長が教員と契約を結ぶとしているが、具体的には教員が教務マネージャーである教頭

と、教頭が校長とまた契約をするようになっている。業績契約は毎年実施されるようになっており、

年度当初に学校目標に基づく課題点を踏まえた目標設定を行い、校長は教員と面接し、一人ひとりの

具体的な一年間のプランを作成し実行する。年度途中にはプランの進行状況について校長と協議し、

必要に応じてプランの修正をすることもある。そして、総括時には契約上の目標とその遂行状況を校

長や教頭、ソーシャルワーカーとともに確認し、評価してもらう。モンゴルでは、日本のような採用

試験がなく、教員の人事権は「初等中等教育法20条20.1.2」により校長に委ねられており、新聞やテレ

ビなどの求人報告等で募集して、採用している。また、教職員の評価の権限も与えられている(20.2.7)。

 今、ほぼすべての学校で業績契約を結ぶようになっていることから、この改革はかなり定着して

いるようではあるが、すべての教員の契約はほとんど同じだった。これは契約の形式を公務員委員

会の規定で定めているためであるが、果たしてこの契約は教員一人ひとりの職能発達の向上を図る

ことができるのか、疑問が残る。

 表1で実際の業績契約の例を見てみる。

表1 業績契約書の例(ウランバートル市 チンゲルティ区 A学校の教員 ... の業績契約書)

その1 教務マネージャーと校長の契約目標を達成するために重要だと見なされ、教務マネージャーが選択した目標項目

目標及び製品評価基準

数量 品質 期間 経費 結果1 授業の内容、実施状況2 県市町村・校長・保護者による審査3 課外活動、クラブ活動の実施4 教育環境の整備、教室の管理5 生徒の教科コンクールへの参加状況6 事務処理能力7 担任学級の生徒成績8 学級生徒の学校生活態度(出席率等)

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モンゴルにおける教員評価制度に関する考察

 学校によって目標の内容は多少異なるところがあるが、ほとんどの学校において、このA校の目

標と同様である。目標を決める際には、たとえば、ウランバートル市内のB学校の場合、職員会議

で校長から、その年度の学校の目標が紹介され、教職員はそれに賛成する形で決められる。他の国

にあるような教員自身が課題を設定し、プランを作成すること22がないので、目標設定の段階にお

いて教員が受身になっており、教員自身の課題がここで反映されることはない。しかし、その一方、

評価する段階に来ると個々の面談が行われ、職務が細かく査定されるのである。目標に達していれ

ば、翌年度から給与が上がることになっているので、モチベーションが上がる。

 評価の方法は、表1からわかるように評価しやすいということから、教員の業務が数値で示すよ

うになっている。たとえば、コンクールに何回参加できたかとか、メダル数とか、あるいは、作成し

た教材の数とか、担任学級の生徒の成績評価などである。児童生徒の成績評価に関しては、児童生

徒の学習経過、その進歩を見ることより、結果に重要視しすぎる傾向がある。また、生徒のコンクー

ル参加の成績が極めて重要な要因となっているので、コンクールに参加する生徒だけに注意を払う

ことによって、他の生徒のことが置き去りにされるという問題も否定できない。

3 教員の上位資格と資格審査(1)優秀教員に対する上位資格導入と資格の種類

 ここでは、教員の上位資格制度に見る教員評価について考えてみることにする。

 1995年に発表された「国家教育計画23」には教員の能力向上、専門性及びモラールの向上を図るこ

とが重要だとされ、教員の知識・能力・業績に応じた上位資格、報酬を与えることが示された。これ

を受けて、1995年7月に科学教育大臣(現在の教育文化科学省)の「教員の上位資格に関する規定」�

が出された。

 この制度は、一部の優秀な教員に対し、その能力や成績によって заах аргач багш (methodologist24

: ある程度の教授法を身に着けた教員)тэргүүлэх багш(lead teacher:methodologistの指導者)�зөвлөх

багш(advisor teacher:経験豊かな教員)(以下:英語訳の名称を使用)の3種類の上位資格が与えら

れるという制度である。

その2 学校の長期計画の目標に応じて、能力向上をはかる項目

知識・専門能力向上に関する目標評価基準

実施方法 期間 費用1 授業計画の作成、実施2 研究・調査への参加3 研修、研究会への参加4 研鑽(外国語、コンピューター)5 授業研究、マニュアルの作成・実施能力など6 教員コンクールへの参加7 教育関連法についての知識8 教員のモラール

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 1996年に政府の「教員免許・資格について」の決定25が出され、その中で上位資格の規定も改めら

れた。以前は、モンゴルで教員免許状が存在せず、教員養成学校を卒業証明書が教員免許状の機能

を果たしていたが、この決定によって、初めてモンゴルでは教員免許状が交付されることになった。

しかし、上位資格取得要件に関しては、(それぞれの資格を獲得するための勤務年数が延長された

ことを除いて)1995年の規定と内容的に大きく異なることはなかった。

 両方とも専門知識や職務能力が具体的に示されておらず、それよりはコンクールの項目が上述し

た業績契約と同様にかなり重要な基準として取り入れられていることがわかる。教員を評価するに

は児童生徒全員の学力向上というより、成績の良い生徒に視点を置いているといえる。

 一方、2003年に教育文化科学省、社会保障労働省、財政経済省の共同決定(328/131/283号)が出

され、以前の2つの規定(1995年、1996年)と大きく異なるものとなった。

 表2と3を比べてわかるように、2003年の教員の上位資格の条件は、教員の研修と給与に結びつ

いていることである。前回の2つの規定と同様に年功型ではあるが、それだけではなく研修も受けて、

表2 教員の上位資格獲得の要件(その1)

Methodologist ・教授法、指導法において良い結果を出し、評価されてから2年以上働いている ・担当教科が教育スタンダードの基準を満たしている ・�「教育評価局」の学力テストで、担当する生徒の教育成果(成績優秀者の比率等)が期末試験の結果より20%以上低下していない

 ・教科コンクール、教員の能力コンクールでよい結果を出している ・教員の品格を身につけているLead�Teacher ・3人以上のmethodologist 教員の指導をしている ・教授法、指導法において良い結果を出し、methodologist になってから2年以上経っている ・�「教育評価局」の学力テストで、担当する生徒の教育成果(成績優秀者の比率等)が期末試験の結果より15%以上低下していない

 ・町、地区で行われた教科コンクールで生徒が3位以内に入賞している ・教員の品格を身につけているAdvisor�teacher ・�専門知識が豊かで、研究熱心で、他の教員たちへ専門的アドバイスを提供しており、教材・マニュアルの作成に積極的に取り組んでいる

 ・教授法、指導法において良い結果を出し、lead�teacher になってから3�年以上経っている ・�「教育評価局」の学力テストで、担当する生徒の教育成果(成績優秀者の比率等)が期末試験の結果より15%以上低下していない

 ・全国・県の教科コンクールで生徒が6位以内に入賞している ・教員の品格を身につけている出典 :�М.Дэлгэржав. Багшийн мэргэжил дээшлүүлэх асуудалд, Соёмбо принтинг, 2006、p.86~89

表3 教員上位資格獲得の要件(その2)

勤務期間 学力テストの合格率 研修の受講獲得単位 給与手当て

methodologist 5年以上 85% 10単位 5%

lead�teacher 10年以上 90% 15単位 10%

advisor�teacher 15年以上 95% 20単位 15%出典 :�Багшид мэргэжлийн зэрэг , хүчингүй болгох журам、(日本語訳 : 教員の上位資格の授与及び無効に関する規定)(328/131/283号)2003.10.10

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モンゴルにおける教員評価制度に関する考察

それが評価された者が獲得できるようにしている点で、大きく前進している。

 さらに、前回は生徒や教員のコンクールの成績が極めて高い基準だったが、2003年の規定には入

れていない。その理由は決してコンクールの重要さがなくなったからではなく、むしろ、その1年

前に導入されていた業績契約の目標に入れて入っている、すべての教員が積極的に及び自主的にコ

ンクールに参加するようにしたためだと考えられる。

 また、表には入れていないが、すべての教員に求める能力として、最新の教授法について研究お

よび実行し、児童生徒の発達、成績、性格について調査し、保護者との協力を積極的に行わなければ

ならないとしている。

(2) 資格審査

 資格審査の方法は上記規定に示されており、教員本人の申請を受け、それぞれの学校、地方自治

体および国家行政主体が設置する資格審査委員会(以下、審査委員会)を通して審査・授与される。

 審査委員会は、methodologist 教員については、申請教員の勤務校によって、lead�teacher につい

ては地方自治体によって、advisor�teacher については、国家構成主体(教育文化科学省)によって、

それぞれ設置される。その構成や人数は、一般的には、申請教員の勤務校の校長や教頭、同僚教員、

教授法研究を行う教員グループの代表者、保護者、当該地域の教育行政機関や様々な学術・研究団

体の代表者より構成される。そして、規定の基準をもとにまず、審査を受ける資格を満たしている

のかどうかを確認し、確認できたら審査を行い、その結果を職員会議で公表する。

 また、上位資格を取得した教員は、どの種類の資格にかかわらず、5年に1回資格審査を受けるこ

とを義務化とした。社会主義時代の教員は、5年に1回の割合で研修を受けることが義務付けられ、

研修の機会が与えられていたが、1991年より取りやめられていた。しかし、この規定によって、当時

のように研修を受けるすべての教員を対象にした「強制」的な研修まで行かなくても、審査の基準と

して研修の受講が盛り込まれているので、この審査を通じて教員の質・能力の向上を図ろうとする政

府の意図が表れていると指摘できる。過去3年のモンゴルの教員の上位資格獲得状況を表にまとめる。

 表からわかるように、上位資格を獲得している教員数は全国の教員数の半分近くを占め、かなり

高い数字を示している。

 以上、教員資格審査について述べてきたが、モンゴルにおける教員上位資格制度は、義務制、公開

表4 上位資格獲得者数

年度 methodologist Lead�teacher Advisor�teacher 教員数 教員数に占める比率

1 2005年 5747 4515 701 22628 46.7%

2 2006年 6064 4124 500 22891 47.3%

3 2007年 6432 4454 424 23897 47.3%

出典 :Боловсролын салбарын статистикийн мэдээллийн эмхэтгэл、2006、2007より作成

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制、合議制の原則を踏まえたものであることがわかる。しかし、その審査の詳しい内容、方法(投票

か協議かなど)についての指摘がないし、審査委員会の決定に不満が生じた場合の対応についても

言及されていないので審査委員会の権限や義務に関する規定をもっと詳細でかつ明確にする必要が

あるように考えられる。

おわりに 本稿の課題は、教員の職能成長及び児童生徒の学力向上という視点からこの二つの制度を中心に

1990年以降のモンゴルにおける教員評価制度の特徴と問題点を明らかにすることであった。その

ために、2002年から実施されている「学習成果基盤型教育」一環である業績契約と同じく2003年に

採択された「教員の上位資格制度」の二つの制度を中心に分析を行った。

 1990年以降の教員評価制度の特徴や問題点を出すためにまず、社会主義時代の教員評価について

検討することが不可欠だった。現代的な学校教育が始まったときからモンゴルでは慢性的な教員不

足、それに伴う無資格教員の質・能力問題が続いていた。それに対応する形で、教員の待遇の向上、

教員の社会的地位の向上を図るためにとられた対策は、教員の奨励・報酬に関する表彰制度であっ

たことが確認した。

 次に、1990年以降の教員に関する政策を整理した。社会主義を放棄し、民主主義社会へ体制転換

を図ったモンゴルの教育分野は、移行当初アジア開発銀行をはじめとする多くの国際機関の協力を

得て、改革を進め多くの政策書を発表した。しかし、それと裏腹に教育の質の低下、学力低下、教員

の能力の低下が深刻をまし、急速な改革が求められた。

 教育の質を改善するには教員の資質能力の向上が絶対条件であったため、2003年から学習成果基

盤型教育を導入した。それは、「公的部門経営財政法」によって実施されるようになり、その具体的

な対策として業績契約が挙げられた。業績契約の本来の目的は、教員のパフォーマンスを向上させ、

教員評価することを通じて資質能力の確保・向上、学校の活性化を向上しようとするもとであるが、

契約の目標課題を設定する際に、一方的に学校(校長)が主導権を握るので、教員の自主的な活動は

期待できないという状況にあることが明らかになった。

 では、教員の上位資格に見る教員評価はどうだろうか。優秀な教員に対して上位資格を与え、そ

れに昇給が伴うということで教員の意欲を喚起させ、研修事業を復活させるという意味では期待で

きるが、資格審査の方法・内容・基準を詳細に指定する点があると考えられる。

 浦野東洋一は、教員評価をその目的や性格の違いから、〈A〉教員の力量向上(職能成長、職能開

発)のための評価、〈B〉人事評価・行政の評価(勤務評定、人事考課)の2種類に分けている26。こ

れを参考して、現在のモンゴルにおける教員評価制度を考えてみると〈B〉のほうが強いといわざ

るを得ない。

 これからの課題として、両方の教員評価制度において、校長や教頭が重要な役割を示していると

考えられるので、その評価能力・基準について研究を進めていきたい。

Page 10: モンゴルにおける教員評価制度に関する考察...― ―93 東北大学大学院教育学研究科研究年報 第57集・第2号(2009年) 本稿は、モンゴルにおける教員評価制度の政策の特色を明らかにするため、教員の上位資格制度

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モンゴルにおける教員評価制度に関する考察

【註】1� Боловсрол, Соёл, Шинжлэх ухааны яам (2003) p.162~205

2� �この表現は、千葉大学医学部医学教育研究室の『学習成果基盤型教育による医学教育の実質化』教育プログラム

を参考。http://www.m.chiba-u.jp/class/mededu/support/gakushiryoku.pdf

3� その他に、performance-based educationとも言われている

4� �教員(bagsh)という表現はあったが、主に、ゲル学校やラマ教の学校の bagsh という意味で使われていて、学校

の教員を当時、tenhimiin bagsh(学校の先生)というふうに区別して呼んでいた。

5� Ш.Шагдар (2000), p.232

6� М.Дэлгэржав(2006) p.45

7� Humphrey, C. 2002. p.12~15

8� Шинжлэх ухаан, боловсролын яам, Азийн хөгжлийн банк(1993)

9� 前掲書、(註7)9頁

10� Монгол улсын Их хурлын тогтоол (1995)

11� Монгол Улсын Засгийн Газар, Гэгээрлийн яам(2000) p.53

12� 前掲書 ,(註5)�p.276~279

13� �モンゴルの行政区分の一つ。県(aimag)、市(hot)、町(sum)、地区(duureg)、村(bag)という順で行く。Sum(ソ

ム)は県の中のあり、ソムの中に bag(村)がある。一方、hot(市)首都とその他の大きな市を言い、その中に

duureg(地区)がある。

14� 前掲書、(註5)、p.287

15� �この改革によって、退職した教職員の人数について、Ш.Шагдар(2000)は3184人(p.287)だった述べているのに

対し、Gita らは8000(教員のみではなく職員も含む)人だと記述している(モンゴル語版 p.187、英語版 p.104)。

両方ともそのデータの出典先を示していないし、数字があまりにも差があるので、モンゴルの統計書を参考にし

た数字である。しかし、これは単に教員数のデータに過ぎず、直接的に退職した教員数を示すことができない。

National Statistical Office of Mongolia (2000)Mongolian Statistical Yearbook 1999、p.173

16� �その他に、performance-based education(гүйцэтгэлд суурилсан боловсрол)とも言う

17� Боловсрол, Соёл, Шинжлэх ухааны яам(2003)、p.162~205

18� ニュージーランドのOBEについては、特に註のない限り Steiner-Khamsi�&�Ines�Stolpe�2006を参考した

19� �Steiner-Khamsi & Ines Stolpe 2006、p.132またはモンゴル語版 Гита Стайнер-Хамси, Инес Штольпе, 2007, p.192

20� 世界銀行の報告書を参考。World�Bank(2006)p.54

21� 前掲書、(註17)p.123~153

22� たとえば、ニュージーランド(高橋望、2008)

23� 前掲書、(註10)

24� ここの英語訳はすべてWorld bank(2006)、また、Gita Steiner-Khamsi, Ines Stolpe(2006)を参考

25� 前掲書(註6)2006、p.86

26� 堀尾輝久・浦野東洋一、2002、182頁

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� 東北大学大学院教育学研究科研究年報 第57集・第2号(2009年)

【参考文献】1.� �Боловсрол, Соёл, Шинжлэх ухааны яам(2003)Боловсрол, соёл, шинжлэх ухааны салбарт хэрэглэгдэх эрх зүйн

баримт бичгийн гарын авлага, Экимто, p.162~205、(日本語訳)教育文化科学省 [ 教育・文化・科学分野に関する

法律集 ]

2.� �Steiner-Khamsi & Ines Stolpe 2006 Educational Import Local Encounters with Global Forces in Mongolia, PALGRAVE

MACMILLAN、またはモンゴル語版 Гита Стайнер-Хамси, Инес Штольпе Боловсролын бодлогын импорт Даяар

шинэчлэл ба Монголын орон нутгийн хүчин зүйлс, Нээлттэй Нийгэм Форум Адмон хэвлэлийн газар, 2007

3.� �Ш.Шагдар(2000)Монголын боловсролын түүхийн товчоон, Бэмби сан, 2000 Sh.Shagdar [ モンゴルの教育歴史 ]

4.� �Х.Гүндсамбуу(2002)Монголын нийгмийн давхраажилт, хөгжил, хандлага, Удирдлагын хөгжлийн академи,

Улаанбаатар 2002 [ モンゴルの社会階層、発展、展望 ]

5.� �М.Дэлгэржав(2006) Багшийн мэргэжил дээшлүүлэх асуудалд, Соёмбо принтинг, 2006 [ 教員研修諸問題 ]

6.� �Humphrey, C. 2002. Does the category “postsocialist” still make sense? In Postsocialism. Ideals, ideologies and practices in

Eurasia, edited by C.M.Hann, London and New-York: Routledge.

7.� �Монгол улсын Их хурлын тогтоол (1995) М.Дэлгэржав, Багшийн мэргэжил дээшлүүлэх асуудалд, Соёмбо принтинг,

2006,�[ モンゴル国会決定 ]

8.� �Шинжлэх ухаан, боловсролын яам, Азийн Хөгжлийн банк, Монголын боловсрол, хүний хүчин зүйл Мастер

төлөвлөгөө, Улаанбаатар, 1993, [ モンゴルの教育、人事要因 マスタープラン ]

9.� �Боловсрол, Соёл, Шинжлэх ухааны яам, 2000, Монголын боловсролын салбарыг 2000 ~ 2005 онд хөгжүүлэх

стратеги [ モンゴル教育分野開発戦略2000 ~ 2005年 ]

10.� National�Statistical�Office�of�Mongolia�(2000)�Mongolian�Statistical�Yearbook�1999

11.� National�Statistical�Office�of�Mongolia�(2005)�Mongolian�Statistical�Yearbook�2004

12.� National Statistical Office of Mongolia (2007) Mongolian Statistical Yearbook 2006

13.� �Боловсрол, Соёл, Шинжлэх ухааны яам, Боловсролын салбарын 2007~2008 оны хичээлийн жилийн статистикийн

мэдээллийн эмхэтгэл, 2008 [ 教育分野2007~2008年度の統計 ]

14.� �World Bank Mongolia Public Financing of Education in Mongolia: Equity and Efficiency Implications, Washington DC,

USA, 2006

15.� �高橋望「ニュージーランドにおける教員の業務・業績管理システムに関する考察 ―教員評価と職能成長―」日本

教育制度学会『教育制度額研究』第15号、2008年

16.� �Улаанбаатар хотын А сургуулийн үр дүнгийн гэрээ [ ウランバートル市立A学校教員業績契約書 ]

17.� �Улаанбаатар хотын Б сургуулийн үр дүнгийн гэрээ[ ウランバートル市立B学校「学校規則 ]

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モンゴルにおける教員評価制度に関する考察

� In�order� to�make�clear� the�nature�and�character�of� the� teacher�appraisal�system�policies�

used� in�Mongolia,� this�paper� focuses�on� issues�of�performance�appraisal� and� the� system�of�

recognized�teaching�qualifications.�

� In�1990�Mongolia�abandoned�state�socialism�and�worked�toward�a�democratic�regime�change.�

During�Mongolia's�period�of�state�socialism�(1921 ~ 1990)�the�professional�quality,�social�standing�

and�remuneration�of�teaching�staff�was�high.�However,�from�1990�onward�and�particularly�in�the�

first�decade�since�the�transition�there�have�been�fears�that�changes�in�educational�content�under�

the�new�institutions�have�led�to�a�reduction�in�the�quality�of�education�provided.�The�salary�of�

teaching�staff�has�decreased�sharply;�there�has�been�a�conspicuous�flow�of�the�most�able�teachers�

toward�the�private�sector�and�an�overall� shortage�of� teaching�staff.�Furthermore,� issues�with�

teaching�qualifications�have�led�to�a�questioning�of�the�quality�of�teaching�staff.

� To�address�these�issues�the�Mongolian�government�has�carried�out�assessment�of�teaching�

staff,�moved�to� improve�the�quality�and�social�standing�of�teachers�and�adopted�outcome-based�

education(OBE)methods.�This�programme�of�improving�the�quality�of�teaching�staff�involves�a�

system�whereby�teachers�enter� into�a�yearlong�contract�with�the�head�teacher�by�which�their�

professional�performance�is�evaluated�and�salary�increased�according�to�performance.��

 Another�policy�related�to�assessment�of�teaching�staff�is�the�introduction�of�a�new�system�of�

teaching�qualifications.�According�to�experience�and�ability,�teaching�staff�may�undertake�training�

leading� to� three� types�of�higher� teaching�qualification�(methodologist,� lead� teacher,� advisor�

teacher)�and�participate�in�research�contributing�to�the�improvement�of�the�quality�of�teaching�

staff.�

� Though�this�paper�examines� the� teaching�staff�assessment�system�focusing�on�these� two�

policies,� it� is�clear�that�the�teacher�assessment�system�in�Mongolia�goes� little� further�than�the�

summative� appraisal� of� personnel�management� related� decisions� such� as� continuance� of�

employment,� promotions,� incentives� and� censures� being� based� on� assessments� of� past�

performance,� and�as� such�does�not� correspond� to�assessment� for� the�purpose�of� improving�

professional�performance�per�se.�Therefore,� the�current�teaching�staff�assessment�system�does�

A�Study�of�the�Systems�of�Teacher�Appraisal�used�in�MongoliaWith�focus�on�Performance�Appraisal�and�System�of�Recognized�Teaching�Qualifications

Bolormaa�TURBAT(doctor's�degree)

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� 東北大学大学院教育学研究科研究年報 第57集・第2号(2009年)

not�differ�from�the�system�for�staff�commendation�which�was�founded�on�the�achievements�of�the�

period�of�state�socialism.�

Keywords:�performance�appraisal,�outcome-based�education,�higher�teaching�qualification

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