テレマティクス 4.0の探求 - ey japan...the quest for telematics 4.0 | 3 1 序章...

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テレマティクス 4.0 の探求 バリューチェーンとの対話: デトロイト・エグゼクティブ・ラウンドテーブル会議要約

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Page 1: テレマティクス 4.0の探求 - EY Japan...The quest for telematics 4.0 | 3 1 序章 テレマティクス分野の利害関係者が、この巨大な 可能性を現実のものとするためには、最終顧客に

テレマティクス4.0の探求バリューチェーンとの対話:デトロイト・エグゼクティブ・ラウンドテーブル会議要約

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Contents

1. 序章 32. エグゼクティブサマリー 5

63. 顧客にとって有意義な価値提案3.1 適切なパッケージ3.2 テレマティクスの価格3.3 多方面とのコミュニケーション3.4 取引成立の鍵を握るディーラー

144. テレマティクスによる 企業価値の創出

4.1 協力する姿勢4.2 価値をめぐる難題

6. 今後の課題: 打開策と障壁 22

7. 利害関係者が検討すべき事項 24

185. ブレークアウトセッション

EY へのお問い合わせ先 26

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3The quest for telematics 4.0 |

1序章

テレマティクス分野の利害関係者が、この巨大な可能性を現実のものとするためには、最終顧客に価値を提供するだけでなく、車載コネクティビティが、企業にとっても価値をもたらすものとなるような戦略が必要となるでしょう。

複雑かつ急速に発展するテレマティクス分野のエコシステムにおいて、利害関係者が直面している戦略上の優先課題についてのさらなる洞察を得るため、EYのグローバル、オートモーティブ・センターとグローバル・テレコム・センターは、先ごろデトロイトにおいて、自動車メーカー(OEM)やサプライヤー、通信事業者、テレマティクス企業といったテレマティクスのバリューチェーン全体を構成する企業から30名以上の経営幹部を招へいし、ラウンドテーブル会議を開催しました。

広範囲にわたる対話が繰り広げられた今回のラウンドテーブル会議において、私たちは、以下の2つの主要領域についてブレインストーミングを実施しました。

• 顧客にとって有意義な価値提案

 ー顧客に価値をもたらすハードウェア、サービ  ス、コネクティビティの組み合わせを検討す  るにあたって直面する複雑性への対処

 ー顧客セグメンテーションを含む効果的な料  金設定およびサービスパッケージ

• テレマティクスによる企業価値の創出

 ーOEM、サプライヤー、通信事業者、ディーラ ー、保険会社、テレマティクス事業者にとって の投資収益源の特定

 ー業績管理、投資収益率の指標、社内オペレー ション、ビジネスモデルに関する全社的な議 論の必要性の認識

テレマティクス4.0の実現が、競争ではなくむしろ協力によってもたらされるであろうことは、会議を通じて明らかでした。利害関係者は、企業価値を生み出し、カスタマーエクスペリエンスを向上させることのできる統合サービスを展開していくために、協働することを学ばなければなりません。しかし、多種多様な企業が存在し、これほど急速に成長しているセクターにおいて、これを実際に行うのは難しいことです。本書では、今後の機会と課題を重点的に取り上げながら、会議で明らかになった主な事柄の概要をご紹介します。

Michael Hanleyグローバル・オートモーティブ・リーダー+1 313 628 [email protected] Dharmapalanグローバル・テレコム・リーダー+1 415 894 [email protected]

テレマティクス4.0、すなわちモビリティとインターネット通信のシームレスな統合は、テレマティクス分野の利害関係者に、これまでに無いさまざまな機会を提供します。2025年までに、およそ1億400万台の新車になんらかのコネクティビティが搭載されるものとみられており、市場規模は、現在の25億米ドルから250億米ドルに達すると予想されています。

出典 :「2025 Every Car Connected : Forecasting the Growth and Opportunity study」SBD and GSMA 2012

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4 | The quest for telematics 4.0

私たちは、テレマティクスのバリューチェーンに属する企業に参加いただき、テレマティクス分野で現在課題とされているトピックについての集中的な議論を行いました。

*利用に応じた保険やフリート管理・支払(徴収/駐車)を含む。

2「どのようにすれば多種多様な企業群をとりまとめ、収益をあげる持続的なエコシステムに統合することができるでしょうか?またそれをサポートするには、どんな内部システムが必要でしょうか?

テレマティクスサービスをどのように提供するか?

テレマティクスのエンドサービスとは?

サービス提供のインフラ

Agero

Airbiquity

ワイヤレスネットワーク(コネクティビティ)

起亜自動車

ユーザーインターフェイス

Fontinalis

ベライゾン

顧客サポート

コンティネンタル

ボーダフォン

デルファイ

クアルコム

ジープ社ディーラー

フォルクスワーゲン

WirelessCar

自動車以外のサービス

オンデマンドのインフォテイメント

ナビゲーション 安全性とセキュリティ

その他のサービス*車両診断

車両間通信(V2V)

自動車を中心とするサービス

Intelligent Mechatronic Systems

Octo Telematics

Telit Communications

スプリント・ベロシティ

QNXソフトウェアシステムズ

ラウンドテーブル会議に参加した利害関係者

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5The quest for telematics 4.0 | 5The quest for telematics 4.0 |

2エグゼクティブサマリー• エコシステムの統合 -今後、エコシステムは統合されていく可能性が高く、大手プレーヤーは、引き続き優位な立場を維持することになります。エンド・ツー・エンドの製品ラインを確実に提供するためには、各プレーヤーは自社の中核となる能力を考慮し、より強固なパートナーマネジメントのスキルを磨いていく必要があります。通信事業者や自動車メーカーが垂直統合を模索していることから、自動車業界では、ティア1サプライヤーが統合による影響を最も受けるものとみられます。

• 収益モデル -大衆市場で成功するサービスを提供するためには、サブスクリプション方式、組込型、プリペイド方式、ビッグデータを組み合わせることを検討していく必要があります。セキュリティ機能を組み込み、都度払い(PAYG)式のインフォテイメント(情報+娯楽)を搭載し、第三者へドライバーのデータを販売するためのデータ分析を備えた製品カテゴリーに基づく価格設定が最も合理的です。今後は、顧客が契約条件を受け入れる前に、いかなるサブスクリプションも既存のプランに組み込む必要性がでてきます。

• 基軸通貨としてのデータ -ディーラー、保険会社、小売店はより優れたビジネス提案を行うために、テレマティクスから得られたデータを利用することに興味を示すことでしょう。エコシス

テムにおいては、持続的なサービスを創り出すために、データのポータビリティおよび所有権(プライバシーなど)の問題やシステム投資の課題を解決していかなければなりません。

• 通信事業者 -他社との差別化を図る上では、先発者の優位性を確保することが必須となります。事業者は、単なるコネクティビティ以上の広範囲なテレマティクスサービスを展開していかなければなりません。請求書の合算や請求処理に関連するサービス、サービスプロビジョニング、デバイス管理、データ分析、顧客サポートはすべて、テレマティクスサービスを提供する上で活用できる能力です。

• 自動車メーカー -フォームファクタは、今後も柔軟性を保ち、合理性を求める顧客セグメントの要求に応じていく必要があります。短期的にはおそらく、高級車向け組込型ソリューションと高級車以外のテザリング型ソリューションを併用していくことが合理的だと思われます。ますます目の肥えた顧客ベースに、この柔軟性を提供するのは容易なことではなく、今後は適切な能力を持った企業と提携していくことが不可欠になります。自動車メーカーがパートナーシップを成功させていくためには、これまで以上に、サービス志向の企業として事業運営していく能力が鍵となります。

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6 | The quest for telematics 4.0

ラウンドテーブル会議の参加企業から聞かれたように、顧客がコネクティビティを求めていることは当然の事実となっています。しかし議論が顧客以外のことに及ぶと、討議は白熱します。ディーラーから通信事業者、OEMに至るまで、テレマティクスのエコシステムにおけるその他のすべての利害関係者がいかにしてコネクティビティをサポートし、貢献できるかを話し合い、議論がますます興味深い方向へと発展するからです。

今後は、以下の3つの領域が(それぞれ単独ではなく)互いに影響を及ぼしあいながら、テレマティクスの普及率を高めていくものと思われます。

1.価値 -利害関係者は、顧客がどのようなサービスに対して出費をいとわず、またどのような支払方法を望んでいるかを理解する必要があります。サブスクリプションパッケージは、顧客にとって魅力的なものでしょうか?コネクティビティは、他の通信キャリアが提供するサービスと合わせてパッケージ化したほうがよいでしょうか?より高い収益源を確保するためには、どのようなサービスを無料で提供すべきでしょうか?

2.ユーザビリティ -価値の検討は不可欠ですが、使いやすさと信頼性も必須の検討事項です。プロバイダーは、ユーザーにシームレスな体験を提供する能力を備えておかなければなりません。しかし、これは誰が担うべき責任でしょう

か?OEM、通信事業者、あるいはテレマティクス・サービス・プロバイダーでしょうか?

3.柔軟性 -顧客はより多くの選択肢を望んでいます。今後、プロバイダーはテクノロジー主導のさまざまな選択肢が登場してくるペースに後れをとらずに対応していくための柔軟性を備えておく必要があります。こうしたサービスの選択肢は、基本的なバンドルサービス(安全・セキュリティサービス)や従量課金制の「フリーミアム」サービスからプレミアム・サブスクリプション・サービスに至るまで、あらゆるテレマティクスサービスで登場してきます。

今後、顧客は新モデルの登場やハンドセットの互換性、またコネクティビティの選択肢(例えば、組込型かテザリング型か)といった観点から、携帯電話パッケージにあるような柔軟性をこれまで以上に自動車にも求めるようになってきます。

今のところ、テレマティクス業界において独占的な立場にある企業は存在しません。また、今後も現れないだろうと私たちは考えています。市場の成熟に伴い、利害関係者は、自動車のオンライン化を進めるだけでなく、テレマティクスサービスを自動車以外のモビリティのシェアを獲得するひとつの手段にしていくソリューションを展開すべく、他社と提携する道を模索していくと思われます。

本セクターの利害関係者は、最終顧客へのアクセスと所有権を得るために絶えず事業戦略を進化させており、テレマティクスの境界線は依然として流動的です。今後、テレマティクス市場はさまざまなプレーヤーがそれぞれの能力を補完しあいながら、さらに協力的な環境の形成を促し続けていくでしょう。

3顧客にとって有意義な価値提案

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「顧客はかつてほど忠実ではなくなってきています。彼らは何か他にもっといいものが出てきたら、すぐに製品を変えるでしょう。ここにこそ、コネクティビティを自社の強みとして利用するビジネスチャンスがあるのです」

「顧客を所有しているのは誰か、どのようなパートナーシップが求められるのかといった多くの議論がなされています」

「顧客は何に対して出費をいとわず、どのような支払方法を望んでいるのでしょうか?サブスクリプション料金でしょうか?それとも他の通信キャリアのサービスとのデータのパッケージ化でしょうか?単独あるいは複数の通信キャリアを通してでしょうか?」

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3.1 適切なパッケージ

現在のところ、会議の参加者は、サービス対象者がドライバーか同乗者かによって、組込型とテザリング型モデルを併用するソリューションが今後広く普及するだろうという意見で一致しています。これまでと同様に、ユーザーエクスペリエンスがサービスの主な決定要因となります。

しかしながら、時間の経過とともに市場は組込型ソリューションが優勢となる方向へと変化していき、今後も柔軟性が最優先されると参加者は考えています。高級車には組込型テレマティクスが備えられ、大衆車は引き続きテザリング機能を採用する形で、個々のブランドの中にさまざまなモデルが登場すると予想されています。

新たなテクノロジーは、創造への挑戦に変革を起こします。狭域通信(DSRC)技術を用いた成功例を報告した参加者がいた一方で、自動車から抽出したデータ分析に基づいて、継続的にアプリケーションに改良を加えていく必要性を強調した参加者もいました。

顧客の要求に沿ったパッケージソリューションを考案していくには、すべての大手プレーヤーがそれぞれの中核的な能力の枠を超えて取り組んでいかなければなりません。今回の会議で明らかになったように、利害関係者は、市場に大きな機会があることを十分に理解しています。しかし、それをどのように実現するかについては、まだ明確な意見の一致はみられません。

モビリティと移動体験を変えるコネクティビティを備え、ハードウェア、ソフトウェア、そして自動車の内外にサービスを提供する価値提案を効率よくパッケージ化するためには、テレマティクスのエコシステム全体を通じた利害関係者間のさらなるコラボレーションが必要となってきます。

「LTEサービスの開始にあたり、一部の通信キャリアは、特定の機器に独占的サービスを提供しています。自動車メーカーである私たちは、いかにして後れをとらないようにしていくべきでしょうか?」

「車を購入したら、すぐにそれがすべてのデータプランをシェアする機器として利用できるなんて最高ですね」

「組込モジュール、もしくはモジュールに結合するバックエンドを開発するには高いコストがかかります。しかし、いったん投資してしまえば、後は顧客がスマートフォンで使いたいと思う機能をただ単に導入していく代わりに、どの機能を追加できるか見直していけばいいのです」

「消費者は柔軟性を求めています。しかし、テクノロジーはまだ携帯電話事業者のビジョンやネットワークレベルに追いついていません」

「成功するビジネスモデルにとって極めて重要なもうひとつの点は、消費者に選択の自由を与えることです。消費者は明確な価値を見出さない限り、追跡されることを嫌がります。OEMが、あるアプリケーションを提供した場合でも、消費者はやはりオプトアウトできる選択肢を求めるでしょう」

「組込型ソリューションによって遠隔操作機能が可能になります。例えば、乗車前に暖房を入れて車内を温めておくといった操作ができるようになれば、すばらしい付加価値になります。テザリング型ソリューションでは、車から離れるとコネクティビティが失われてしまうので、こうした操作はできません」

注)組込型:コネクティビティとインテリジェンス機能の両方が直接車両に搭載されている。テザリング型:インテリジェンス機能が車両に組み込まれている一方で、ドライバーはコネクティビティを可能にするために携帯電話をモデム(有線、Bluetooth、WiFiなどを経由)       として使わなければならない。

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「有形資産と無形資産。私たちはその観点からビジネスケースを作成しています。アフターサービスは無形資産で、将来的にディーラーの利益となります。つまり、顧客の側はディーラーでより良い体験をすることができ、ディーラー側は、購入時にさらに多くの乗り換え顧客を獲得することができるということです。これは将来的に真の価値提案となります」

「コネクティビティは、技術設計からエンジニアリング、アフターサービス、マーケティングに至るまで、ビジネスのあらゆる側面に関わってくることから、組織階層のすべての段階と事業範囲にわたって合意を取りつけなければなりません。その上で、それらをビジネスケースに集約する必要があります」

「企業は、顧客に可能性を与えるために行った投資をどのようにして現金化し、回収できるでしょうか?」

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テクノロジーの急速な進化に伴い、組込みや車載コネクティビティのアップデートにかかるコストは常に上昇しています。これは、既存の料金モデルをまだ維持できていたとしても、じきに限界に達することを意味しています。こうした背景から、OEMやテレマティクス・サービス・プロバイダー、通信キャリアは従来のバンドル料金に固執せずに、コネクティビティソリューションの料金設定やパッケージ方法を見直す必要があります。

ラウンドテーブル会議で意見が聞かれたように、主な利害関係者はさまざまな課題に直面しています。自動車メーカーにとっては、アフターマーケットにおいてサブスクリプション方

式を取り入れる形で、診断サービスやセキュリティサービスのコストを新車価格に組み入れる部分にビジネスチャンスがあります。支払サービスを車内に組込むこともできます。また、主力以外のサービス(請求書サービスやサブスクリプション管理など)を提携先に外注することも可能です。

通信キャリアは、柔軟性の高いデータプラン(共有データプランや請求書分割サービスなど)を通して、顧客をさらに取り込むことができます。また、OEMとの密接なコラボレーションにより、サブスクリプション管理やインボイス/請求書サービスなどの顧客サポートサービスを提供することが可能になります。

消費者が、引き続きコネクティビティを重要視する傾向にあるにもかかわらず、テレマティクスの可能性の大部分は、依然として実現されていません。これは、テレマティクスがあまりにも複雑なサービスだと捉えられていることが一因です。また、顧客がこれらのサービスによって得られる利益が料金に見合っているかどうか、確信が持てないことも原因の一つです。

3.2 テレマティクスの価格

「当面は併用モデルが主流になるものの、顧客に対する料金やコストは、さまざまなものに基づいて設定されることになるでしょう。自動車の価格に組み入れられるケースもありますし、データ利用に応じて料金が設定されるケースもあります」

「これは要するに、顧客が躊躇せずサービス料金を前払いしてくれるかということに焦点を合わせるのではなく、無形のものを収益化することなのです」

「小売価格を決定しようとする際、無形のものとは、車両データに何が起こるのかといったことで、それをどのように価格に反映させるか、プライバシー目的のためにどれだけの価格が許容されるかということを考慮しています」

「テレマティクスサービスの料金は、さまざまな要因に基づいて設定されていますが、顧客がコネクティビティの所有にかかるコストをきちんと理解するにはどうしたらよいのでしょうか?」

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3.3 多方面とのコミュニケーション

OEMやテレマティクスのエコシステムにおけるその他のプレーヤーは、顧客に提供できる価値をディーラーに伝えていくことに加え、コネクティビティの広範なメリットを顧客にさらに上手く伝えていく必要があります。ラウンドテーブル会議において、ある参加者が次のような質問を投げかけました。「どなたか、コネクティビティがどのようにドライブ体験を向上させるか、あるいは顧客が自動車向けの特定のサービスを利用する上でどのように役立つか、実際に時間を割いて顧客に説明したことがある方はいますか?」

参加者は、いったん顧客が何に対して料金を支払っているか(また、実際に必要な機能は何か)を十分に理解すれば、サービスやソリューションに対する需要は、バリューチェーン全体でさらに高まるだろうという意見で一致しました。主な利害関係者の経営幹部全員が、そのメッセージを明確かつ継続的に広めていく責任は自分たちにあるという見解に達しました。

自動車購入の際の検討材料として、コネクティビティの重要性はますます高まっています。このことから、すべての利害関係者間で顧客に提供できる価値を伝え合い、さらに重要な事として、顧客に対してそれを伝えていくことができれば、利害関係者にとって大きな機会が生まれます。

「何がパッケージ化され、顧客に明確に伝えられているか考えたとき、顧客はどんなコンテンツが利用できるかきちんと理解していますか?それはディーラーから顧客への価値提案に含まれていますか?」

「安全性を重視すべきです・・・それこそが注目される部分です。顧客は安全性に対価を支払うことにもっとも抵抗がないでしょう」

「私たちはOEMのウェブサイトで、現在進行中のイノベーションについて顧客に理解してもらうデジタル環境を創り出していかなければなりません。これによって顧客が実際にそれを確かめるためにショールームへ足を運ぶよう誘導するのです」

「私たちはテレマティクスサービスにおいて柔軟性を提供できるでしょうか?また、その柔軟性を市場に伝えていくことができるでしょうか?」

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12 | The quest for telematics 4.0

ディーラーは、テレマティクスサービスの普及率を高める上で重要な役割を果たしますが、いまだにテレマティクスの生み出す機会をとらえるには至っていません。ディーラーは、これらのテクノロジーを顧客に「販売する」意欲をかきたてられていないのが現状です。

テレマティクスによって、ディーラーは、顧客をより深く理解し、顧客との関係を継続する、これまでにない機会を手にしているにもかかわらず、現在のところ、ディーラーにはテレマティクスを説明し、販売した経験がない上、収益性のある機会をとらえるための専門知識が備わっていません。また、テレマティクス関連の新サービスを顧客に販売するために必要なツールや販促用品も持ち合わせていません。

この課題を解決するために、自動車メーカーは、

これらのテクノロジーがディーラーのビジネスにもたらす利益をより深く理解してもらいながら、ディーラーとの協力関係を深めていく必要があります。

ラウンドテーブル会議において、ある参加者が次のようにまとめました。「ディーラーに興味を持ってもらうためには、サービス部門を通してアプローチしていく必要があります。後方業務を行うサービス部門がお金の出どころなのです・・・(今のところ)営業現場には十分な予算がありません」

ディーラーは、販売プロセスにおいて極めて重要な役割を担っているにもかかわらず、現在、テレマティクスソリューションの販売やアフターサービスにおけるテレマティクスの戦略的な活用に苦戦しています。参加者の間では、ディーラーがテレマティクスを推進するための新たな方法を考えていく必要があるという共通した認識がみられました。

3.4 取引成立の鍵を握るディーラー

ディーラーは、テレマティクスサービスの普及率を高める上で重要な役割を果たしますが、いまだにテレマティクスの生み出す機会をとらえるには至っていません。ディーラーは、これらのテクノロジーを顧客に「販売する」意欲をかきたてられていないのが現状です。

「小売り段階での顧客との最初の接点はディーラーです。顧客があなたのコンテンツを取り入れる機能を備えた自動車を手に入れるという点において、ディーラーが重要な部分なのです」

「私たちは、ディーラーに車載コネクティビティを販売してもらうインセンティブを支払うことにしましたが、導入率は改善されませんでした。それ以来、工場の活性化を進めたり、販売やリニューアルを専門のテレマティクスプロバイダーへ外注するようにしました。コネクティビティの販売は彼らの事業なわけですから。ディーラーにその負担を課さなくてもいいのではないでしょうか?」

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「テレマティクスに関する研修をディーラー向けに継続して実施することはできません。ですから、テクノロジーを利用可能なものにし、ディーラーの自動車販売を容易にした上で、私たちが提携しているプロバイダーやパートナーに加わってもらい、取引成立の機会を実現するというのが私たちのやるべきことです」

「ディーラーは、非常に離れていきやすい傾向があります。現在、テレマティクスに関する研修をディーラー向けに実施していますが、研修が終わると彼らは去っていき、クライアントの半分を取っていってしまうのです」

「ディーラーである私は、顧客がシリウスラジオ(米国およびカナダの自動車向け有料デジタル放送ラジオ)の会員になった場合の収益の流れには関心がありません。OEMから、顧客の自動車に修理の必要な箇所があると言われた時に関心を抱くのです。ディーラーとしては、サービスで総利益率70%をあげたいと考えています。ですから、誰かのブレーキの効きが悪いとか、新しいタイヤが必要だといったような情報に興味を引かれるのです」

「今のところ、多くのディーラーはテレマティクスを自動車販売の一方法に過ぎないと感じています。顧客に説明するにはあまりにも大きなテーマで、自動車の価格を考えると高すぎます」

「これは複雑な分野です。ディーラーは、さまざまな選択肢、機能、支払方法をどのように説明したらいいのでしょうか?実際に、ディーラーはこうした料金や価値に関する話をすることができるのでしょうか?」

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午後のセッションでは、テレマティクスへの投資をどのようにして実現、回収するかというさまざまなアプローチについて意見が交わされました。すべての参加者が、統合サービス/ソリューションの提供に力を入れるのに伴い、今後急速にビジネスが発展していくと見ています。

これらのビジネスモデルは、自社で提供するサービスと外注するサービスをどう管理するかの判断によってかたちづくられます。多くのOEMが、自動車を中心とするアプリケーションが多大な収益の可能性を秘めていることを認識しており、自社のアプリケーションストアの立ち上げや自社のアプリケーションの発売を計画しています。また今後は、他社との差別化を図る強力なブランド戦略や収益創出の機会として、ヒューマン・マシン・インターフェイス(HMI)の制御に注力していくでしょう。

議論の中で出たように、顧客サポートなどのその他のサービスは、今後ますます外注される方向に向かうものと思われます。OEMは、その他の利害関係者にバックエンドサポートを外注する形で、

一部の顧客対応業務を維持する可能性があります。一方、通信キャリアは既存の顧客サービスの専門性やインフラを十分に活用し、バックエンドサポートあるいはエンド・ツー・エンドの顧客サービスプロバイダーとして自動車メーカーと提携していくでしょう。

保険会社は、商品改革に注力して、テレマティクスから価値を最大限に引き出していく必要があります。利用ベース自動車保険(UBI)はまだ普及の初期段階にありますが、今後広く浸透していくものと思われます。またリーディング企業は、個々のドライバーの運転傾向に関してより正確な情報を入手、分析することにより、リスク選択において継続的な改善を図っていくことでしょう。

テレマティクスは、本質的に、技術設計からエンジニアリング、アフターサービス、マーケティングに至るまで、企業のあらゆる階層に影響を及ぼします。すべての参加者は、このことがこれらのサービスに対するビジネスケースの作成方法や日々のオペレーション管理に大きく影響するという意見で一致しました。

テレマティクスのエコシステムにおける役割がどのようなものであれ、すべての利害関係者は共通の課題に直面しています。それは、極めて重要な統合サービスを支援する上で必要となる、内部プロセスの整備です。

4テレマティクスによる企業価値の創出

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「OEMは、少なくとも20年間は、ディーラーのシステムに合わせてこなければならなかったため、OEMとディーラー間のデータ通信は、現在、非常に確立されたものになっています。ですから、すでにある程度、顧客データの通信は行われており、チャネルはあるのです。それよりも、データの所有者がOEMなのかディーラーなのかということが問題です」

「すべての利害関係者間で、より密接なコミュニケーションをとること、そして協力しながら製品を市場に投入していくことが求められています。とにかく、私たちができる最善策にさらに多くのエネルギーを注いでいくべきではないでしょうか。それによって関係性が築かれていくのだと思います」

「標準的なテレマティクスアプリケーションは、数メガほどのデータで済むのに対し、インフォテイメントにはギガバイトレベルの情報が伴います。ですから、今後インフォテイメントがさらに普及していくことが期待されます。そうすれば、初期段階で自動車からデータを抽出することがより簡単になり、そのプロセスにかかるコストを削減できるからです」

「いったん物理的に、自動車の中にアーキテクチャとそれをサポートするためのバックエンドシステムが搭載されれば、これを実際に機能させることによって、真の価値提案を示すことができるようになります。つまり、コネクティビティを利用してどのように顧客管理

(CRM)をサポートしていくことができるのか、また、ディーラーが部品注文や在庫を把握し、初めから適切に修理することをサポートできるのかを確認することができるのです。これは要するに、顧客が躊躇せずサービス料金を前払いしてくれるかということに焦点を合わせるのではなく、無形のものを収益化することなのです」

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テレマティクスには企業のさまざまな部門が多数関わってくることから、複雑に絡み合った関係をコントロールし、できることならば生産性を高めるよう、舵取りをしていかなければなりません。

あるOEMの参加者が次のようにまとめました。「商品やサービスの長期的なライフサイクル計画に訴えかける、長期戦略に基づいた商品企画があります。ディーラーのネットワークと協働しているアフターマーケット部門があり・・・彼らは皆それぞれ違うパートナーやサプライヤーと話をしながら、他部門と関わらずに自分たちだけで事を進めています。このような状況で、どうやって共に生産性を上げていくことができるのかということが問題です」

しかも、これは組織内の話に過ぎません。テレマティクス業界のさまざまな企業間においても、パートナーシップを築いていかなければなりません。本セクターにおいて、顧客の所有をめぐる競争が激しい部分では、特に慎重にパートナーシップを築いていく必要があります。

ラウンドテーブル会議の参加者は、テレマティクスの普及率を高め、テレマティクスを通じた企業価値の向上を実現する上で、パートナーシップが重要な役割を果たすという意見で一致しました。全体を通して、新たな開発を考慮に入れたビジネスモデルおよび関係構築に重点を置く必要があるでしょう。これまでと同様、最優先すべきは柔軟性です。

コネクティビティには将来性があります。それは企業内部における、また利害関係者のエコシステム全体にわたる、シームレスなコラボレーションに基づくものです。しかし、極めて多くのさまざまなパートナーが関わっていることから、複雑な課題が生じています。

4.1 協力する姿勢

「あなたがたは、私たちが通信事業者の携帯電話事業向けバックエンドを介したBluetooth接続によって車両データを販売した後に、撤退すると本気で考えていますか?」

「バックエンドはフロントエンドよりも多くの価値をもたらします」

「通信キャリアが鍵となります・・・彼らはコネクティビティのための接続を行い、ますます多くのプラットフォームを提供しています・・・また、多くの顧客に課金する立場にあるのも通信キャリアです」

「そもそも私たちはコネクティビティに投資したわけですから・・・今はこの投資をできるだけ最大限に、かつ、いち早く活用していく必要があります」

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自動車メーカーには、多大な無形の利益を実現する独自の機会が与えられています。自動車メーカーは、テレマティクスによって、顧客ベースと関わり合い、ブランド体験を拡大させる新たな方法を構築する近道を見出すことができます。

ディーラーは、顧客をより深く理解し、顧客との関係を維持継続していくことのできる、これまでにない機会を手に入れます。また通信キャリアは、帯域幅の拡大と請求に関わる課題を解決できれば、いまだにブロードバンド回線がほとんど利用されていない時間帯(ネットワーク利用のオフピーク時)に課金する機会を得て、さらなるネットワーク利用と収益の拡大を図ることができるようになります。

ディスカッションの中では、どこに価値があるのか、また、それを捉えるベストな方法が何であるのかについて、さまざまな意見が聞かれました。OEMは、エンドユーザーのサブスクリプションからではなく、内部やバリューチェーンの効率化によって、最初に行った投資を回収せざるを得ないという強いプレッシャーを感じているようです。ディーラーは、テレマティクスの価値はアフターサービスにおける利益に集中するだろうと確信しています。また保険会社は、ビッグデータにおいて証明済みの能力を十分に活用したいと考えています。現在、さまざまな利害関係者による競争が繰り広げられています。

すべての利害関係者は、テレマティクスから最大限の(有形/無形の)利益を実現することに注力しています。このことが個々のプレーヤーにとって持つ意味は、バリューチェーンにおけるそれぞれのポジションによって変わります。

4.2 価値をめぐる難題

「ディーラーの観点からすると、独自の商品が2つあります。フロントエンド商品は、Bluetooth技術の販売。バックエンド商品は、データを入手して自分のサービス店に顧客の足を運ばせることです」

「今まさに、ビジネスモデルが180度転換しようとしています。私たちは価値提案を変えていかなければなりません・・・どのようにデータの作成者や利用者にアクセスし、新モデルへの投資に役立てていくか、考えていく必要があります」

「自動車から引き出せる無形のデータをどのように活用できるか、検討する必要があります」

「成功を測るシンプルな基準は、サービスの利用開始設定がなされたかどうかです。しかしそれ以上に、実際にどれだけの人がサービスを利用しているかということが、真の成功基準となります」

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5ブレークアウトセッション利害関係者は、ビッグデータとその分析から都市におけるモビリティの統合や破壊的イノベーションに至るまで、さまざまな分野にわたり困難な課題に直面しています。

私たちは一連のブレークアウトセッションの中で、利害関係者がテレマティクスエコシステムにおいて直面している大きな課題をいくつか取り上げて、討論しました。

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ブレークアウトセッション

「私たちは、データの利用方法や所有者に関して複数の弁護士と多くの議論を交わしました。一部の弁護士は、自動車がデータを送信する都度、ユーザーは明確に承諾を与える必要があると述べています。ただ、それがヒューマン・マシン・インターフェイス(HMI)において何を意味するかを考えてみなければなりません」

「ぜひ、現在の状況を一歩離れて眺めてみてください。すると、2つの矛盾する状況があると言わざるを得ないでしょう。技術がますます進歩しているのに、なぜ携帯電話を自動車の中で使うことができないのかということです。この状況を踏まえてこそ、あなたが提供できると考える、最も信頼性と価値の高い優れたサービスを組み込んだプロセス全体を考えだせるのです」

「データは収益の増加につながりますが、データを役立つものにするためのコネクティビティこそ、問題が生じる部分なのです。これらの問題は、提携パートナー同士が共に解決していかなければなりません」

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ビッグデータとアナリティクステレマティクスにより発生した自動車/顧客データの急増は、本セクターの利害関係者にとって大きな機会を生みだしています。しかし、これほど大量のデータを管理することは極めて難しい課題です。今後は、高度なデータ管理/分析能力が中核的な能力とされ、利害関係者は以下のようなさまざまな問題に対処していかなければなりません。

• データの所有者は誰か?データはどこに置かれているか?重要なデータはどれか?分析するためのデータの送信方法は?あるデータを異なる種類の

データとどのように重ね合わせることができるか?データセキュリティや消費者のプライバシーに関する懸念への対処方法は?

• 保険会社は、もともとその業務の中にビッグデータを取り扱う能力が備わっていることから、早い段階で利益を実現できる非常に有利な立場にあります。その他のプレーヤーは、これらの能力を早急に形成するために投資する、あるいは外部のプロバイダーに委託する必要があります。

「データの点と点を結んでいくことが、データを役立つものにしていくことになります・・・そして、ここにこそ課題があるのです」

「事故対応の担当者が事故の発生時刻/場所/状況に関する情報にアクセスできるようになれば、そのときこそ実際に株主価値の向上に取り組むことができます」

「しばらくすると、自動車は移動センサーのプラットフォームになるでしょう・・・地図や交通量、汚染レベルの観点から、自動車から生じるデータの価値はますます重要になってきます」

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破壊的イノベーション都市におけるモビリティの統合

「したがって、スマートカーはまもなく市場性の高い商品となります。これは、スマートフォンのケースと同様で、物理的な商品そのものの販売よりも、商品によって実現されるサービスや結果的に生じる収益に価値の大半があります」

「今後は、エネルギーの均衡を交通に関する議論の中心に据えて大きな道しるべとしながら、都市におけるモビリティを向上させる資産として自動車を考えていかなければなりません」

ココネクティビティおよび自動車とウェブの統合は、自動車と都市の関わり方を再考する可能性を提供している点で、都市におけるモビリティを変革する力があります。テレマティクスは、特定の地域において必要とされる自動車の台数を減らす一方で、企業、家庭、プライベートのニーズを結びつけるという、カーシェアリングの新たなコンセプトの導入を促すツールです。テレマティクスは、駐車場の利用可能性を最大化するのに役立つとともに、電力源としてバッテリーと組み合わせた場合、ビークル・ツー・グリッド(V2G)によるさまざまなメリット実現の可能性を開きます。

都市部はすでに、テレマティクスを新たな広報手段として利用し始めており、これにより、交通管理の改善、さらに二酸化炭素排出量の追跡手段など、新たな指標のためのルール作りが可能になります。

「それは自動車と家を結びつけることです・・・これこそが真のバリューチェーンです・・・そこに真の収益を見出せるでしょう」

「顧客は機能を選別したいと考えるでしょう・・・メーカーは、ある機能が変更されたときに、その変更がもたらす影響に確実に対応できるようにしなければなりません」

「15年先を考えてみたとき、自動運転が実現されているでしょう。注意散漫運転の問題もなく、誰もがサービスへアクセスすることができ、組込型もテザリング型も関係なくなります」

「自動車に新たなテクノロジーが追加されていくことから、自動車の価格は上がっていきますが、モビリティのコストは大幅に下がっていくでしょう」

「通信キャリアは今後、コネクティビティのプラットフォームの利用方法をさらに開拓していけるイノベーターのコミュニティを受け入れていく必要があります」

テレマティクスエコシステムは急速に発展しています。予想もつかないイノベーションが起こることは避けられない現実です。すべての利害関係者は変化に対応できる柔軟なビジネスモデルを備えておき、それを自らの強みに変えていかなければなりません。

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私たちは、ラウンドテーブル会議の締めくくりにあたって、将来のテレマティクスエコシステム形成に向けた打開策と障壁を参加者に挙げていただきました。主な懸念事項として、データプライバシーをはじめとする法規制上の問題が挙げられました。また別の問題として、現在、普及率向上の障壁となっている販売プロセスにおけるディーラーの役割があります。この重要な顧客との接点におけるテレマティクスの販売促進の必要性については、全員の意見が一致しました。課題となっているその他の領域として、OEMにおける調査サイクルの他、予測できない技術的変化や、それがセルラーネットワークに及ぼす影響があります。テレマティクスソリューションは、これに後れをとらないよう、十分な柔軟性を備えたものでなくてはなりません。

打開策については、エンドユーザーがテレマティクスに関して支払いを受けるような、アフタ

ーマーケットにおける新たなモデルの必要性が挙げられました。これは、データ作成者および収集者としてのエンドユーザーの極めて重要な役割を反映したものです。その他、テレマティクスエコシステムの鍵を握るものとして、コンテンツ送信のための真に堅牢なプラットフォームの開発が挙げられました。また法規制は、障壁としてだけではなく、機会を生みだすものとしても挙げられました。誰がデータ所有者なのかがいったん明らかにされれば、利害関係者は確信に基づいてパートナーシップを築いていくことができます。

今、テレマティクスの機会はすぐ手の届くところにあり、その実現が待たれている状況です。次のステージであるテレマティクス4.1では、この機会が価値へと変わるのを実際に目にすることができるでしょう。引き続き、テレマティクスの発展にご注目ください。

6今後の課題:打開策と障壁

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7利害関係者が検討すべき事項

自動車メーカー 通信事業者 自動車保険会社

サービス提供 • インテリジェントな交通ソリューションのサポートに向けたテレマティクスサービスとモビリティソリューションの統合

• アフターマーケットでサブスクリプション方式を取り入れる形で、診断/セキュリティサービスコストの新車価格への組み入れ

• 車両データや環境におけるデータの統合に対する重点的な取組み

• その他の収益源の活用      (ロケーションベースの広告など)

•  (データのセキュリティを確保した上での)車内における支払サービスの統合

• ソフトウェアのアップグレードに対応できる十分な能力と性能を備えたテレマティクスシステムの構築

• 高帯域サービス(乗客向けインターネットゲームやビデオ会議など)に向けた4G/LTEコネクティビティの提供

• 柔軟性の高いサービスの提供(共有データプラン、請求書分割サービスなど)

• 車両関連データ向けネットワークセキュリティに対する重点的な取組み

• エンドサービスを顧客に直接提供する、あるいは自動車メーカーとのコラボレーションにより提供するためのテレマティクス・サービス・プラットフォーム

• 自動車メーカーをサポートするためのデータ収集やデータマイニング能力の活用

• テレマティクスに基づく保険データを活用するための社内ITシステムの開発

• 自動車台数の増加を促すアフターマーケット向けの魅力的な価値提案の策定

• 所有者の総コスト削減を目的としたフリート専用商品の提供

コラボレーション   および提携

• ソフトウェアのアップグレードに対応できる十分な能力と性能を備えたテレマティクスシステムの構築

• 車両データを最大限に活用するためのアフターマーケットチャネルとのコラボレーション

• 主力以外のサービス(請求サービス、サブスクリプション管理など)の外注

• 顧客サポートサービス(サブスクリプション管理、請求サービスなど)の提供に向けた自動車メーカーとの提携

• アフターマーケットにおけるサービス開始に向けたさまざまなセクターの利害関係者との提携

• 統合されたコネクティビティソリューションに基づくUBIの提供に向けた自動車メーカーとのコラボレーション

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テレマティクスには極めて複雑なバリューチェーンがあり、さまざまなセクターのプレーヤーが関わっています。EYは、このエコシステム全体における主な利害関係者が、今後求められる革新的なビジネスモデルを構築、維持するのをサポートしています。

主なサービス内容:

• ビジネスプロセスのイノベーション/改革              (スマートカー、フリート管理、カーシェアリング)

• スマートカー向けITインフラを導入するためのサプライヤー選定における計画策定、導入後の品質保証

• 改革インテグレーター、運用モデルの設計、アーキテクチャ設計、ITリスク/セキュリティ管理、改革の促進

• 経営多角化に向けた戦略およびリスク評価、新製品/サービス向けマーケット戦略、自前の製品セグメントの調査

• 新市場に関連する将来の投資機会やリスクの特定および評価

• クロスボーダーでの法人税アドバイザリーサービスおよび所得税に関するコンプライアンス

• 全国レベルのカーシェアリングへの投資に向けた税制上の優遇措置

• データセキュリティなどの法規制上のリスク分析およびコンプライアンス

テレマティクスおよびコネクティビティのエコシステムにおけるEYの業務提供能力や、今後予定されている同テーマのイベントに関するお問い合わせは、弊社の本セクターにおける専門スタッフにご連絡ください。さらに詳細な情報をご提供いたします。

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お問い合わせ先

EY Japanテレコムセクターリーダー新日本監査法人 アドバイザリー事業部ITリスクアドバイザリー部副部長塚原 正彦 (つかはら・まさひこ)公認会計士 [email protected]

EY Japanテレコムセクター事業開発責任者新日本監査法人マーケッツ本部エグゼクティブディレクター斉藤 武彦 (さいとう・たけひこ)[email protected]

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EYについてEYは、アシュアランス、税務、トランザクションおよびアドバイザリーなどの分野における世界的なリーダーです。私たちの深い洞察と高品質なサービスは、世界中の資本市場や経済活動に信頼をもたらします。私たちはさまざまなステークホルダーの期待に応えるチームを率いるリーダーを生み出していきます。そうすることで、構成員、クライアント、そして地域社会のために、より良い社会の構築に貢献します。

EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバル・ネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。詳しくは、ey.com をご覧ください。

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