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モデリング & シミュレーション スコープ モデリング&シミュレーションは、extended(拡張)TCAD と呼ばれる半導体のモデリング技術分野を 包含しており、開発期間とコストを削減する数少ない手法の一つである。本章における Extended TCAD は以下に示す技術領域を含む。 1) 材料モデリング -物質の物理的な性質や、場合によってはそれに付随する電気特性を予測する シミュレーションツール、2) フロントエンドプロセスモデリング-トランジスタからメタライゼーションまでの 製造工程の物理的効果のシミュレーション、3) デバイスモデリング -能動素子に関する物理モデル の体系、4) リソグラフィモデリング -リソグラフィ装置とフォトレジストの特性、ならびにそれらの製造プ ロセスのモデリング、5) 装置/最小寸法のモデリング-ウェーハに影響を与える物理的環境、条件、 プロセスを含むモデル(リソグラフィは除く)の体系、6) インターコネクト性能モデリング -バックエンド 構造の動作上の応答(機械的、電磁気、熱的特性)、7) 回路素子モデリング -能動、受動、寄生 素子や新デバイス構造に基づく新しい回路要素のコンパクトモデル、8) パッケージモデリング -パッ ケージの電気的、機械的、熱的モデリング、9) 数値計算手法 -グリッド発生、行列解法、並列化手 法、表面移動技法。 モデリング&シミュレーション能力の「供給者」は、CAD ベンダー、大学、国立研究所、国家プロジェ クトである。半導体企業において、かなりの開発努力がなされているものの、新しい モデリング能力 開発には、大学や国研の機能に最も適した長期レンジの研究が要求される。このため、大学におけ る健全な研究に対する努力がモデリング分野での成功のためには必須である。企業が将来必要とす る重要なニーズに答えるためには、時宜を得た方法で、かつ十分な研究資金の利用を可能にするこ とが極めて重要である。 困難なチャレンジ 図表 102 には、他の技術領域の困難なチャレンジ事項の解決に多大の貢献が可能な、モデリング &シミュレーション分野の困難なチャレンジを示している。ここで、モデリング領域共通のキーとなる困 難なチャレンジが、実験による検証であることを注意すべきである。デバイスが微細化され、かつ多く の材料がプロセスに導入されるので、(物理的科学的に正しい)モデルであることを評価するのに必 要な情報を取得する新しい解析技術が重要である。

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Page 1: モデリング & シミュレーション - JEITA...モデリング & シミュレーション スコープ モデリング&シミュレーションは、extended(拡張)TCADと呼ばれる半導体のモデリング技術分野を

モデリング & シミュレーション

スコープ

モデリング&シミュレーションは、extended(拡張)TCAD と呼ばれる半導体のモデリング技術分野を

包 含 しており、開 発 期 間 とコストを削 減 する数 少 ない手 法 の一 つである。本 章 における Extended

TCAD は以下に示す技術領域を含む。

1)材 料 モデリング-物 質 の物 理 的 な性 質 や、場 合 によってはそれに付 随 する電 気 特 性 を予 測 する

シミュレーションツール、2)フロントエンドプロセスモデリング-トランジスタからメタライゼーションまでの

製 造 工 程 の物 理 的 効 果 のシミュレーション、3)デバイスモデリング-能 動 素 子 に関 する物 理 モデル

の体 系 、4)リソグラフィモデリング-リソグラフィ装 置 とフォトレジストの特 性 、ならびにそれらの製 造 プ

ロセスのモデリング、5)装置/最小寸法のモデリング-ウェーハに影響を与える物理的環境、条件、

プロセスを含 むモデル(リソグラフィは除 く)の体 系 、6)インターコネクト性 能 モデリング-バックエンド

構 造 の動 作 上 の応 答 (機 械 的 、電 磁 気 、熱 的 特 性 )、7)回 路 素 子 モデリング-能 動 、受 動 、寄 生

素 子 や新 デバイス構 造 に基 づく新 しい回 路 要 素 のコンパクトモデル、8)パッケージモデリング-パッ

ケージの電 気 的 、機 械 的 、熱 的 モデリング、9)数 値 計 算 手 法 -グリッド発 生 、行 列 解 法 、並 列 化 手

法、表面移動技法。

モデリング&シミュレーション能力の「供給者」は、CAD ベンダー、大学、国立研究所、国家プロジェ

クトである。半 導 体 企 業 において、かなりの開 発 努 力 がなされているものの、新 しい モデリング能 力

開 発 には、大 学 や国 研 の機 能 に最 も適 した長 期 レンジの研 究 が要 求 される。このため、大 学 におけ

る健全な研究に対する努力がモデリング分野での成功のためには必須である。企業が将来必要とす

る重要なニーズに答えるためには、時宜を得た方法で、かつ十分な研 究資 金の利 用を可 能にするこ

とが極めて重要である。

困難なチャレンジ

図表 102 には、他の技術領域の困難なチャレンジ事項の解決に多大の貢献が可能な、モデリング

&シミュレーション分 野 の困 難なチャレンジを示 している。ここで、モデリング領 域 共 通 のキーとなる困

難 なチャレンジが、実 験 による検 証 であることを注 意 すべきである。デバイスが微 細 化 され、かつ多 く

の材 料 がプロセスに導 入 されるので、(物 理 的 科 学 的 に正 しい)モデルであることを評 価 するのに必

要な情報を取得する新しい解析技術が重要である。

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図表 102 モデリング&シミュレーション 困難なチャレンジ

困難なチャレンジ > 65 nm / 2007 年まで 内容

高周波回路モデリング (>5 GHz ) チップでの配 線 遅 延 の効 果 的 なシミュレーション。

高 精 度 な3次 元 配 線 モデル;インダクタンス、伝 送

線 路 モデル。非 定 常 効 果 、基 板 ノイズとカップリン

グ効果を含む高周波回路モデル。RF 測定を省略

してのパラメータ抽出

極 めて浅 いドーパント分 布 、極 浅 接 合 およびシ

リサイド化 のモデリング

ド ー パ ン ト の モ デ ル と モ デ ル パ ラ メ ー タ ( ダ メ ー

ジ 、 高 濃 度 効 果 、 活 性 化 、 準 安 定 状 態 の 効

果 、 拡 散 、 界 面 お よ び シ リ サ イ ド 化 の 効 果 ) 。 こ

れ ら 極 めて 浅 い 領 域 の 形 状 、 ド ーパ ン ト 分 布 の

評 価 方 法

デ ポ ジ シ ョ ン 、 エ ッ チ ン グ バ ラ ツ キ の モ デ リ ン グ 、

ウェーハ全 体 での特 性 分 布

基 礎 的 な 物 理 デ ー タ ( 例 、 速 度 定 数 、 散 乱 断

面 積 、 表 面 化 学 ) ; 複 雑 な 化 学 状 態 で は 簡 便

な モ デ ル 。 装 置 モ デ リ ン グ と ウ ェ ー ハ 表 面 特 性

モ デ リ ン グ と の 結 合 。 CMP ( ウ ェ ー ハ 全 体 、 チ ッ

プレ ベ ル 、 パ タ ー ン 依 存 性 ) 次 世 代 装 置 / ウ ェ

ーハのモデル

リソグラフィモデリング 予 測 可 能 なレジストモデル。 高 分 解 能 技 術 ;マ

ス ク 合 成 ( OPC,PSM) 。 248 、 193 、 157nm の 評

価 と ト レ ー ド オ フ 解 析 。 次 世 代 リ ソ グ ラ フ ィ モ デ

ル。

困 難 なチャレンジ < 65 nm / 2007 年以降 内容

連 続 体 モデルを原 子 レベルのモデルで補 完 原 子 レ ベル の 効 果 と 現 在 の 連 続 体 モデルを 融

合 させたモデリングツールの連 続 使 用

CMOS の限 界 をシミュレーション可 能 性 CMOS 限 界 を 予 測 で き る 方 法 と ア ル ゴ リ ズ ム 。

量 子 論 に基 づいたシミュレータ

ナノスケールデバイスのモデリング 伝 統 的 な CMOS 限 界 を超 える、シリコンベース

のデバイス。縦 型 MOS、ヘテロ構 造 、薄 膜 トラン

ジスタ、単 電 子 トタンジスタなど

信頼性に対する熱機械的なモデリング ストレスによるボイド形 成 、エレクトロマイグレーシ

ョン、ピエゾ電 気 効 果 、 亀 裂 、 界 面 密 着 性 のシ

ミュレーションツール

ソフトウェアモジュールのインテグレーション 異 種 モジュールを交 互 に動 作 させることおよびイン

ターフェースを充 実 することに重 点 をおいてシーム

レスに各 種 シミュレーションモジュールを結 合 し、設

計効率を増大させること

困難なチャレンジ≧ 65 nm、2007 年まで

高周 波 回 路モデリングは、クロックスピードが継続 的に速 くなっているため、今後 重要になる挑戦 課

題 である。主 な課 題 は、インターコネクトに付 随 する寄 生 効 果 の正 確 なモデリングである。フルチップ

でのインターコネクトによる遅延の効 率 的なシミュレーション技 術が要 求されている。レイアウトからの2

次 元 、3次 元 のインターコネクトの抽 出 モデルは、継 続 的 に要 求 されている。適 正 なモデル精 度 を提

供 するために理 解 しなければならない大 切 な事 項 の例 として、R、L、C、のプロセスばらつきがもたら

す影響、分布した R-C 抽出時の分割技術、多層誘電体層を取り扱う効率的なシミュレーション技術

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があげられる。

チップ上 の伝 送 線 路 とインダクタンスの効 果 を取 り扱 う能 力 の必 要 性 が高 まりつつある。高 周 波 モ

デリングに関 しては、非 平 衡 効 果 を取 り扱 うトランジスタモデルや基 板 ノイズの影 響 の理 解 も重 要 な

挑戦課題である。

迅速な市場投入のためには、RF パラメータ抽出の不要な RF モデルが重要である。

極 浅 のドーパント分 布 、接 合 、シリサイド化 のモデリングは主 要 な関 心 事 である。サーマルバジェッ

トが大幅に少なくなってきているので、プロファイルはダメージ、過渡現象、高濃度、界面/表面効果

によって決 まるようになった。拡 散 と反 応 のパラメータを得 ることは、プロセス、特 に新 しいドーパントや

材 料をよりよく理 解するするためのキーとなる挑 戦 課 題である。低 抵 抗 のソース/ドレイン エクステン

ションは将 来 の高 性 能 デバイスに必 要 であるため、活 性 化 /不 活 性 化 のモデリングはキーであり、そ

れにより、その後の熱 処 理(たとえば、シリサイド化や BEOL の成膜 工 程)による過 渡的 不 活 性 化で

低 下 の可 能 性はあるが、”メタステーブル(準 安 定)”なドーパントの活 性 化 (平 衡 状 態 より高 い)の達

成 につながる可 能 性 もある。イオン注 入 ダメージ、アモルファス化 とその後 の再 結 晶 化 、シリサイド

化を一 層 詳 細に理 解 することは、これらの現 象 がドーパント分 布に決 定 的な影 響を与えているため、

重 要なことである。ドーパントと欠 陥 の分 析 技 術 は、分 布を改 善するためのモデルの開 発とキャリブレ

ーションに大切である。65nm 以下に対する次元(1D、2D、3D)描写を正確に行うツールは存在して

いない。

ウェーハ面 内 の薄 膜 の堆 積 、エッチングばらつき、サイズばらつきのモデリングは開 発 時 間 とコスト

の劇 的 な削 減 を可 能 にする。この領 域 -CMP、プラズマデポジション/エッチング、気 相 成 長 、原 子

レベル堆 積 (ALD)、電 気 鍍 金 -に関 わる製 造 装 置 については、材 料 の物 理 的 性 質 やモデル化 に

必 要 な化 学 反 応 に関 する知 見 が欠 けているため、シミュレーションには限 界 がある。現 実 の適 用 にと

って必 要 である正 しい反 応 パスと第 一 原 理 のみから構 築 された簡 易 化 学 モデルの開 発 は重 要 な挑

戦 である。現 存 する装 置 と次 世 代 (即 ち、大 口 径 ウェーハ対 応 )の装 置 に対 して、装 置 スケールから

最 小 寸 法 までが上 手 く繋 がる、表 面 の化 学 、プラズマと(物 質 )表 面 の相 互 作 用 のモデルが必 要 で

ある。

リソグラフィ技 術 のモデリングは、何 種 類もの波 長と実用 的 な解像 度 向 上 手段の増 加により、次 世

代において次第に重要になってきた。OPC と PSM マスクシンセシスに適用するために改良モデルを

構 築 することは、重 要 な挑 戦 である。予 測 可 能 なレジストモデルを開 発 することは継 続 的 な挑 戦 であ

り、もし開 発 できたなら、リソグラフィモデリングの応 用 範 囲 が極 めて広 くなる。次 世 代 露 光 装 置 (即 ち、

EUV、EPL、その他 の代 替 技 術 )の選 択 時 期 が近 づいており、これらの異 なったアプローチのトレード

オフを理解するためには、包括的なモデリングの開発が要求されている。

極 薄 誘 電 体 のゲート積 層 構 造 のモデルは、従 来 材 料 の非 常 に薄 い誘 電 体 膜 の最 適 化 のみなら

ず、代替の誘電体とゲート電極材料の探索に役立てるために必要とされている。この挑戦は、原子ス

ケールでの誘 電 体 技 術 に貢 献 するための、新 しい世 代 のプロセスモデリングツールの開 発 を包 含 し

ている。さらに、ゲート積 層 構 造 は、その厚 さが数 原 子 層 に近 づくので、その電 気 的 振 る舞 いに関 す

る一 層 詳 細 な量 子 モデルが必 要 である。実 効 誘 電 率 、表 面 準 位 、信 頼 性 、トンネリングに強 く関 係

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するプロセスについての本質を理解することが、将来の高性能 MOS デバイス開発において、重要な

役 割 を果 たすことを可 能 にする。薄 い材 料 のパラメータはバルク材 料 のそれと異 なるという有 力 な示

唆がある。分子動力学や第一原理の構造計算に基づいた材料エンジニアリング手法は、要求される

特性を持った層の構築に役立つ。

困難なチャレンジ< 65 nm、2007 年以降

連続体モデルを原子レベルモデルで補完する

現 在 のシミュレーションツールは、殆 どが連 続 体 モデルをベースとしている。しかし、材 料 モデル、

表面反応、ドーパントの統計的なゆらぎ、格子 ひずみの拡散に与える影響、準安 定状態、量 子効果

など多 くの課 題 を考 えると、連 続 体 モデルと原 子 レベルモデルの橋 渡 しが必 要 なことを示 唆 してい

る。

モデリング&シミュレーションに要求される大チャレンジは、究極の MOS とはどのようなものかという、

LSI 産業での根本的な質問に答えられるツールを準備することである。モデリングのツールというのは、

“何が、何故”という問いに対してのガイダンスを与えるべきである。たとえば、物質材料の物理的な限

界は何なのか、あるいはリソグラフィの限界、デバイス特性 の限界は何なのかなどである。いつ寄生 効

果、信頼 性 問題、統 計 的なゆらぎが支配するのであろうか? その世 代では、非平衡な効 果 が、キャ

リアの輸送現象に対して大いに影響するようになるであろう。

伝統的な MOS スケーリング則の有効性が減少していく中で、ナノスケールでのデバイスモデリング

が必須となっている。伝統的な MOS とは異なった原理で動作する新デバイスの探索のためだけでな

く、新規性のある改良 MOS デバイスの開発のためである。このようなデバイスモデリング技 術の研究

開発には、相当の時間が必要とされる。

熱機械的なモデリングは、IC 構造の信頼性解析において重要性を増している。これまでは、エレク

トロマイグレーションとストレスマイグレーションのモデリングが主流であった。今日、勿論これらマイグレ

ーションの問題は重要だが、さらに膜、パッケージ、界面の密着性と表面粗さの関係、さらにピエゾ効

果のモデリングがより重要な課題となっている。

シミュレーションを用 いた設 計 効 率 を上げるために、各 種 のシミュレーションモジュールのインタフェ

ースを整 え、交 互 に解 析 できるようにして、継 ぎ目 無 しにシミュレーションができるようにすること、別 の

言 葉 でソフトウェアモジュールのインテグレーションのようなことが必 要 になってきている。プロセス・デ

バイスシミュレーションでは、これらを可能にするフレームワークができている。しかし、その他のシミュレ

ーション分野での努力は殆どなされていない。リソグラフィに関して、装置シミュレーションとリソグラフィ

シミュレーションツールをリンクして、エッチング後のパターン形状、プロセス感度 を予測するシミュレー

ションも良い例である。第 2 の例として、チップ全体のパフォーマンス解析ツールを、パッケージの熱

的、機械的および電気的なシミュレーションと結合すること、第 3 の例として、プロセスシミュレーション、

デバイスシミュレーション、回路モデル抽出、およびライブラリ生成までの結合を完 全にすることがあげ

られる。

技術的要求

以下の節では、スコープの中で言及された9つの分野への各々の要求が、詳細に議論される。

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材料モデリング

薄 膜 およびバルク材 料 の物 理 的 特 性 の測 定 、およびこれらの特 性 のデバイスや集 積 回 路 における

電 気 的 、機 械 的 、熱 的 特 性 への影 響 は、新 材 料 が常 に探 索 される半 導 体 技 術 において、ますます

重 要 になっている。材 料 に関 する経 験 的 あるいは基 礎 的 なモデリングとシミュレーションは、これらの

理解を助けるために必要である。

● 多くの代替 材料が半導 体ロードマップの重大な障害に対する解決策候 補として提案されて

いる。材料シミュレーションのツールは、多層薄膜の物理特性の相互関係、あるいはデ バ

イスや集積 回路における電気的、熱的、信頼 性的観 点に対して知見 を与え、多くの複雑な

実 験 による特 性 評 価を必 要とすることなく、仮 にそうならどうなるか(“what-ifs")といった問題

に解答を与える。

● 装 置 、プロセス・デバイス、パッケージ、パターニング、配 線 に関するモデリングとシミュレーシ

ョンのツールは、材 料 の入 力 パラメータが与 えられて始 めて有 効 となる。多 くの場 合 、これら

のパラメータは未知である。実験によるデータベース、またはそれが不可能である場 合には、

プラズマ断 面 積 、化 学 反 応 速 度 、パッケージ材 料 の熱 的 または機 械 的 特 性 、相 互 拡 散 定

数のような第一原理計算により求められるパラメータのデータベースが必要である。

● 改良されたレジストや先進的なマスク作製のための材料モデルが必要である。

● デバイスがほぼ原 子 レベルへと微 細 化 するのにつれて、原 子 的 記 述 から連 続 解 を得 るため

の材料のシミュレーションとモデリングのツールがますます重要となる。

● プロセス的観点からは、調整パラメータを含まないイオン注入プログラム、拡散機構、薄膜で

の相互拡散、誘電体の特性、輸送特性が必要である。

フロントエンドプロセスモデリング

フロントエンドプロセスのモデリングには、トランジスタのメタライゼーションまでの製 造 段 階 (ただ

し、パターン形 成 は除 く)での物 理 的 現 象 のシミュレーションが含 まれる。これらはトランジスタ製

造 の理 解 と最 適 化 のために重 要 である。スケーリングによるトランジスタ構 造 の微 細 化 につれて、

モデリングの必 要 性 が増 しており、微 細 化 によってより正 確 なモデルが求 められるだけでなく、

現 在 扱 われていない材 料 、材 料 の特 性 、ドーパントのモデルが必 要 となっている。

テクノロジが進 むにつれて、注 入 エネルギーに関 する要 求 は、サブ keV にまで下 げられ、表 面

の相 互 作 用 (反 射 、スパッタリングを含 む)や核 阻 止 能 の理 解 が必 要 となる。その一 方 で、ウェ

ル形 成 では、エネルギーは MeV の領 域 に押 し進 められ、電 子 阻 止 能 のメカニズムのより深 い理

解 が求 められる。双 方 の研 究 の鍵 となるのはダメージの低 減 である。ダメージはドーパントの拡

散 および活 性 化 と相 互 作 用 を持 ち、TED(t rans ien t enhanced d i f f u s ion )を引 き起 こす。これ

により、数 百 nm 程 度 の接 合 位 置 のシフトが起 り得 る。拡 散 と接 合 位 置 のシフトを最 小 にするた

めに熱 履 歴 を低 減 することは、ドーパントの十 分 な活 性 化 という要 求 と 競 合 することになる。こ

の TED と活 性 化 を十 分 理 解 し、避 けられない両 者 のトレードオフの関 係 を最 適 化 する努 力 が

払 わなければならない。およそ 10 年 にわたりこの分 野 での研 究 がなされているが、定 量 的 な予

測 モデルはいまだに十 分 には実 用 化 されていない。また、従 来 の拡 散 炉 とは異 なる熱 処 理 条

件 、特 に急 速 熱 処 理 法 やレーザアニールを扱 うモデルが必 要 となっている。

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短 期 的 には、イオン注 入 シミュレーション用 の解 析 式 モデルが引 き続 き必 要 である。シリコン

およびシリコン系 材 料 におけるダメージ、In、Sb のイオン注 入 データや低 エネルギー(1keV 程

度 )注 入 、高 エネルギー(数 MeV)注 入 のデータが必 要 となっている。任 意 のチルト、ローテーシ

ョン条 件 、および適 切 なレイアウト積 層 構 造 におけるチャネリングテールのモデルが必 要 である。

また、横 方 向 広 がりがますます重 要 にそして複 雑 になってきており、ドーパントとダメージの横 方

向 分 布 を正 確 にモデル化 する必 要 がある。モンテカルロ注 入 モデルは解 析 式 モデル開 発 のた

めに必 要 であり、また、狭 いトレンチ側 壁 への注 入 のような解 析 式 モデルでは適 切 に扱 うことが

できないような場 合 に必 要 となる。ソース/ドレイン注 入 およびプリアモルファス化 注 入 によるドー

パントと欠 陥 の相 互 作 用 を正 確 にモデル化 するためには、非 晶 質 層 の深 さ、転 位 ループ形 成 、

および残 留 TED についてのモデル開 発 が必 要 になる。欠 陥 形 成 とアニーリング、温 度 依 存 性

を考 慮 したイオン注 入 について改 良 されたモデルを開 発 するために、広 範 囲 にわたる研 究 とモ

デル開 発 を直 ちに開 始 する必 要 がある。先 進 的 なドーピング技 術 、たとえば固 相 拡 散 、プラズ

マ注 入 法 、GILD(gas immers ion l ase r dop ing )、急 速 気 相 ドーピングなどについて、予 測 能

力 があるモデルを開 発 する必 要 がある。これまでの所 とりたてて有 力 な手 段 はなく、モデリングに

関 与 する人 達 は、これらの技 術 の進 展 を見 守 って最 も有 効 な技 術 のモデルを開 発 する必 要 が

ある。

拡 散 の 連 続 体 モデルとドーパント活 性 化 モデルは、引 き 続 きプロセスシミュレータの中 心 的

存 在 で、より正 確 さが求 められるデバイスの微 細 化 と新 たな現 象 の出 現 に伴 って改 良 される必

要 がある。特 にクラスター化 とその活 性 化 、あるいはドーパント同 士 の結 合 が生 じる際 のドーパ

ント と 欠 陥 の 相 互 作 用 に ついて 、 点 欠 陥 拡 散 モ デ ルを 十 分 改 良 し てい かなけ れば ならない 。

RTA のランプレートは重 要 な要 素 であり、拡 散 /活 性 化 モデルにそれがいかに影 響 するかをテ

ストしていく必 要 がある。界 面 の影 響 、特 に非 SiO 2 界 面 の場 合 の影 響 がますます重 要 になっ

てくる。SiO2、窒 化 酸 化 膜 、high-k 材 料 のような全 てのゲート絶 縁 膜 について、N、C、F のよう

な不 純 物 やノックオンされる酸 素 の影 響 を考 慮 して、不 純 物 の 偏 析 と捕 獲 をモデル化 する必

要 がある。実 験 を補 うために、原 子 レベルのプロセスモデルは、連 続 体 モデルの係 数 を求 める

上 で重 要 な役 割 を果 たすようになる。例 として、ドーパントの結 合 エネルギー、マイグレーション

エネルギーを計 算 によって求 める必 要 があり 、置 換 型 ドーパントと移 動 性 格 子 間 原 子 の結 合

エネルギー、ドーパント と格 子 間 原 子 ペアの マイグレーションエネルギー、移 動 性 ド ーパ ント 原

子 または格 子 間 シリコン原 子 と点 欠 陥 またはドーパントクラスタとの結 合 エネルギーなどが求 め

られる。いくつかのタイプのドーパントと欠 陥 、またドーパントと界 面 の相 互 作 用 については、正 /

逆 反 応 の速 度 係 数 の計 算 が必 要 になる。

先 進 プロセスモデルは、固 溶 度 よりも高 濃 度 のドーパントの準 安 定 型 活 性 化 モデリングに必

要 である。これには、後 続 のバックエンドプロセスにおける不 活 性 化 反 応 過 程 も含 まれるべきで

ある。

表 面 、界 面 の拡 散 モデルも必 要 となる。これには SiO 2 および新 しいゲート絶 縁 膜 材 料 との相

互 作 用 も含 まれる。代 替 材 料 (SiGe、SiGe:C など)のプロセスモデルも開 発 される必 要 がある。

デバイスサイズが急 速 に微 小 化 する中 で、機 械 的 ストレスの影 響 が重 要 になっており、信 頼

性 およびドーパント拡 散 に対 するストレスの影 響 のモデルを開 発 する必 要 がある。全 てのプロセ

ス工 程 によって生 じるストレスを全 ての温 度 範 囲 を考 慮 して求 める必 要 がある。コーナー部 およ

び微 細 3D 構 造 におけるストレスの信 頼 性 への影 響 などを含 む、薄 膜 形 成 の理 解 をさらに深 め

Page 7: モデリング & シミュレーション - JEITA...モデリング & シミュレーション スコープ モデリング&シミュレーションは、extended(拡張)TCADと呼ばれる半導体のモデリング技術分野を

る 必 要 が ある。 寸 法 が 微 小 で あり 、 かつ 薄 い 膜 の 特 性 評 価 は 非 常 に 重 要 である が 、 しかし 非

常 に困 難 でもある。実 際 、すべてのモデルに広 範 囲 な特 性 評 価 が必 要 であるが、これは常 に

困 難 で多 額 の費 用 を必 要 とする。

短 期 的 にはシリサイド化 モデルも、引 き続 き求 められている。非 SiO 2 絶 縁 膜 のモデルを含 む

ゲート絶 縁 膜 形 成 モデルは、ゲート積 層 構 造 の特 性 やチャネルやソース・ドレイン領 域 のドーパ

ントプロファイルを正 確 に予 測 するために必 要 となる。ゲート積 層 構 造 のモデリングについては、

N2O、NO、N での酸 化 反 応 機 構 も必 要 である。酸 化 機 構 に影 響 する元 素 が意 図 的 に付 加 さ

れたプロセスによって導 入 される可 能 性 がある。たとえば、窒 素 注 入 、反 応 ガスへの混 合 、ある

いはコンタミネーションなどによって導 入 される。これらの効 果 を全 てモデル化 しなければならな

い。先 進 的 な素 子 分 離 構 造 で要 求 される全 てのプロセス条 件 、窒 化 酸 化 膜 、結 晶 方 位 につ

いて、粘 弾 性 酸 化 モデルをキャリブレーションする必 要 がある。短 期 的 には、ポリシリコンゲート

の活 性 化 モデルも必 要 になるであろう。長 期 的 には、金 属 ゲート電 極 の特 性 もモデル化 する必

要 が出 てくる。

微 細 構 造 のためのデポジションとエッチングのモデルは、装 置 オペレータによって設 定 されるプロセ

スパラメータに関して装 置シミュレーションとリンクする必要があり、またウェーハ内、ウェーハ間の均一

性を予測する必要がある。これはまた、より物理的な微細構造モデルとなるべきである。

長 期 のロードマップでは、すでに述 べたモデル開 発 とパラメータ抽 出 のへ応 用 に加 えて、フロントエ

ンドプロセスを直接シミュレーションするための原子プロセスモデルが要求される。TCAD モデルのメイ

ンストリームへ ab-initio(非経験的)計算法を導入する手法を開発する必要がある。

計測技術と解析技術の改良は、正確なプロセスモデルの定量化の本質といえるものである。

デバイスモデリング

デバイスモデリングは、キャリア輸 送 、電 磁 場 、そしてある場 合 にはエネルギー輸 送 を記 述 する近

似 モデルと方 法 を含 む。モデルは、ドリフト・拡 散 、ハイドロダイナミック、エネルギー輸 送 、Boltzmann

方 程 式 を含 む。方 法 は、有 限 差 分 、ボックス積 分 、有 限 要 素 のような決 定 論 的 な数 値 解 法 と、モン

テカルロ法 のような確 率 論 的 な数 値 解 法 を含 む。モデルと方 法 の様 々な組 み合 わせにより、記 述 精

度と計算の負荷が異なる。このモデルは、近似 的な量子モデルを含むように拡 張されなければならな

い。いくつかの状 況 において、衝 突 イオン化 によるノンローカル効 果、バンド間 トンネリング、トラップア

シスト・トンネリングまたはチャネル移 動 度 のように、基 本 的 な物 理 モデルは改 良 されなければならな

い。さらに、CAD ツールは、モデルを変更するのに必要な条件を示すべきである。そうでなければ、重

要な物 理的 な効 果が結 果として無 視されたり、計 算の負 荷 が不 必 要に高くなってしまう。方 法は、他

のモデルに移行し易くするために、一貫した仕様で提供されなければならない。

先端の BiCMOS デバイスの開発の中では、ベースからのボロンの拡散を最小にするために、基礎

工学は SiGe と SiGeC の基礎技術を利用する新しい構造を導いた。RF、アナログおよびミックストシグ

ナルの BiCMOS の回路設計は、数値的なデバイスシミュレーションによる個々のサポートの推進を必

要とする。素子性能の分析、非擬似定常効果の特徴づけ、RF の徹底的な測定に必要な時間とコス

トの削 減 、downscale における予 測 データの提 供 のために、効 率 的 な後 工 程 ツールが必 要 とされて

いる。RF 回 路シミュレータを統 合したデバイスシミュレーション、または、ミックストモードシミュレーショ

ンは、最 適 化 を容 易 にするが、非 常 に効 率 的 で役 に立 つアルゴリズムを必 要 とする。表 面 の量 子 化

およびダイレクトゲートトンネリングの近 似 モデルは開 発 されなければならない。包 括 的 な内 部 の雑 音

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モデルは、サブ kHz から少なくても 20GHz の範囲で、重要な内部の雑音源を含まなければならない。

外 部の雑 音 源の包 括 的 な記 述を融 通のきく方 法で輸 送 方 程 式に組 込 むために、基 板 雑 音カップリ

ングのための効 果 的 なモデルが提 供 されなければならない。チップの自 己 発 熱 は考 慮 されなければ

ならない。素 子 寸 法の縮 小 化により、コンタクト抵 抗は、全 素 子 抵 抗(チャネル、SD、コンタクト)に対し

て益 々大 きな割 合 になり、電 流 電 圧 特 性 とトランスコンダクタンスの予 測 可 能 なシミュレーションにお

いて重要な役割を果たす。

あまり究 明されていない他の分 野は、大きい素 子 領 域 のシミュレーションである。パワーアンプや光

学 素 子 は通 常 、大 規 模 なインターコネクトシステムによってお互 いに接 続 された多 くのトランジスタセ

ルで構 成 されている。素 子 パラメータに対 する分 布 定 数 効 果 の影 響 は十 分 に理 解 されてなく、熱 と

電 磁 効 果 が重 要 であるが、モデル化 されていない。大 信 号 の振 る舞 いが多 くの場 合 に必 要 である。

メッシュ数が多すぎるために、古典的な TCAD でのアプローチによる完全なシミュレーションは不可能

である。

これまでは、輸送現象はバルクシリコンに焦点を合わせていた。100nm デバイスおよびそれ以下で

は、ゲート絶 縁 膜 は非 常 に薄 くなり、トンネリングゲート電 流 が非 常 に重 要 な設 計 要 素 になる。ゲート

スタック(チャネル、誘 電 体 、電 極 )の詳 細 な量 子 化 モデルが、わずか二 三 原 子 層 の酸 化 膜 と酸 窒 膜

を理 解 するのに必 要 である。最 終 的 には、新 しいゲート誘 電 材 料 の効 果 を理 解 し、代 替 ゲート誘 電

材 料の探索 と評 価を支 援するために、基 本 的 な材料モデルリングを推 進する必 要 がある。そのような

モデルは、誘 電 体 中 の詳 細 なトンネリングと輸 送 、信 頼 性 への影 響 、界 面 準 位 (全 ての中 間 の界 面 )、

チャネルの移 動 度 の影 響 、複 雑 な積 層 誘 電 体 の実 効 誘 電 率 の詳 細 な理 解 を含 めるべきである。不

揮発性メモリのモデルは、まだ大きな改良を必要とする。

古典的な MOS デバイスは縮小化しているので、モデリングの見地から縮小化による考えられる限

界を理解することが重要である。たとえば、統計的なドーパントの揺らぎや、ゲートスタック線幅の変動

の効 果 は、シミュレーションされる必 要 がある。ドーパントプロフィールの現 実 的 な分 布 が素 子 の様 々

な方向のデカップリングを防ぐので、 しばしば完全な 3 次元問題を解かなければならない。

極限 CMOS の追求で、 さまざまな新しいデバイス構造が提案される。短チャネル効果を抑制する

非 常 に有 望 な方 法 は薄 膜 SOIである。他 の新 しいデバイスの特 徴 は、ノンプレーナ型 かもしくはエレ

ベーテッド(elevated) S/D 構造、 ひずみヘテロ構造チャネル、 二重ゲートもしくは包囲型ゲートのあ

る縦型 FET やその他の構造である。メモリ技術は磁気構造と同様、常誘電体と強誘電体を調査しな

ければならない。

新しいデバイス構造と同様、極限 CMOS もより厳密なモデルを必要とする。ソースとドレイン間の短

い距離(最小 22nm)と 10nm 以下の膜厚は Ion、 Ioff および Igate 電流の完全な 2 次元量子輸送定

式 化 を必 要 とする。いくつかのアプローチがこれらの計 算 を実 現 するために提 案 されたが、 それらは

皆 、 近 似 をどこで打 ち切 るかで厳 密 な正 当 化 に苦 しんでいる。最 も簡 単 な方 法 は、自 己 無 撞 着 な

ポワソン-シュレーディンガ(Poisson-Schroedinger)結合 方 程 式に基づく。ただし、より進んだ方 法とし

て、Green(グリーン)関 数 を使 用 するか、もしくは Wigner(ウィグナー)関 数 かまたは量 子 ドリフト・拡 散

に行 き着 くこれらの関 数 のモーメントのどちらか一 方 で定 式 化 された量 子 Liouville(リュービル)方 程

式 を解 くことを試 みる方 法 がある。計 算 アルゴリズムの正 式 の正 当 化 は別 として、CPUの要 求 もまた

非常に大きい。メモリはスピンと磁気の相互作用のモデリングを必要とする。

製 造 容 易 性 設 計 (DFM)の問 題 と方 法 を記 述 するため、デバイスの可 変 性 (ドーピング、 ゲート線

幅など)の表現と共通言語が開発され、そして回路設計と連結されなければならない。

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かなりの進歩が、基 板電 流とホットキャリア注入 効果のモデリングにおいてこの10年間になされた。

微 視 的 なシミュレータの応 用 がホットキャリアの生 成 と動 力 学 について詳 細 な理 解 を産 み出 した。し

かしながら、超 微 細 デバイス、特 に、薄 い絶 縁 膜 があると、この領 域 でより一 層 の開 発 を必 要 とする。

劣 化 モデルは最 優 先 である。バイポーラ技 術 に関 する開 発 は、いまだMOSデバイスモデル開 発 の

後である。交流信頼性の予測もまた重要な問題である。

このロードマップは主 流 であるシリコンの要 求 を記 述 する。化 合 物 半 導 体 技 術 の要 求 は確 認 する

必 要 がある、そして、将 来 のロードマップがこの領 域 の要 求 を記 述 すると予 期 される。化 合 物 半 導 体

に関するこのトピックの概要へのリンクが用意されている。

リソグラフィ・モデリング

リソグラフィのモデリング・シミュレーションへの要求は次の4分野、レジスト・モデリング;重ね合わせ;

欠 陥 シミュレーション;リソグラフのテクノロジの技 術 に分 けられる。以 下 でこれらの分 野 について議 論

する。また、これらは、このロードマップのリソグラフィ章 の要 求 と解 決 策 候 補 の図 表 にまとめられてい

る。

● レジスト・モデリング

予 測 的 、かつ定 量 的 なレジスト・モデリングは常 に予 測 的 なリソクラフィ・シミュレーションの障

害 であり、今 後 も障 害 となり続 けるであろう。化 学 増 幅 型 レジストのモデルは、Post Exposure

Bake、拡散、ライン・エッジの粗さ、表面反応を考慮する必要がある。エッチング工程を伴う薄

い多 層 レジストのモデルは重 要 になってきている。また、コンピュータによる分 子 モデリングに

基づくレジスト研究への要求が強まってきている。

● 重ね合わせ

重ね合わせはリソグラフィの重要課 題であり続けている。アライメント信号、サイズに応じたパタ

ーン配 置 、可 能 な次 世 代 リソグラフィ・ツールなどに対 する洗 練 されたモデルが求 められてい

る。

● 欠陥シミュレーション

マスクから最終工程までの欠陥転写のモデルが必要である。

● リソグラフィのテクノロジと技術

リソグラフィのテクノロジのモデリングには、標 準 の光 学 系 のモデル改 良 だけでなく、次 世 代 技

術のモデルも含まれている必要がある。

次の数世代 のテクノロジ・ノードへの重要な応用 は、いろいろなリソグラフィの選択肢(問題となる多

層膜上での 248nm リソグラフィ、193nm リソグラフィ、157nm リソグラフィ)の間のトレードオフの見積

りであろう。このためには、各 々の結 像 システムの理 想 状 態 からのズレを含 んだよりよい結 像 モデルが

必 要 である。リソグラフィは、極 限 では、収 差 と偏 光 の影 響 を含 んだ高 NA(Numerical Aperture)の

結像モデルが必要である。さらに、洗練されたレジスト・モデル、特定の波長における解析能力などが

開発され、結像モデルと組み合わされる必要がある。

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次世代リソグラフィ技術には、遠紫外(Extreme Ultra Violet, EUV)、電子線直描 、電子線投 射

型 リソグラフィ(Electron Porjection Lithography)、マスクレス・リソグラフィ(Maskless Lithography,

ML2)技術に対する信頼のできるシミュレーション・ツールが必要である。

リソグラフィのモデリングには、位 相 シフト、高 NA、表 面 粗 さ、散 乱 効 果が含 まれる。電 磁 波 の散 乱

解析は研 究 の主流の一 部になるであろう。位相 シフトマスクでの散 乱、レジスト下のウェーハ・トポロジ

ーによる散乱などは、厳密な電磁波の取り扱いが要求される2つの例である。

最 後 に、統 合 されたモデルング・システムが、今 後 のリソグラフィ工 程 の解 析 、最 適 化 に必 要 である。

非 常 に多 くの独 立 なパラメータと理 解 すべきデータの氾 濫 により、コンピュータによる最 適 化 システム

が回折光学の限界近くで動作されるであろう今後の技術の高精度のチューニングに必要である。

装置/最小寸法スケールモデリング

正 確 な装 置 /最 小 寸 法 スケールのモデリング&シミュレーションソフトウェアツールは、開 発 期 間 お

よびコストの削 減 につながる知 識 や洞 察 を得 るために切 望 されている。装 置 モデリングのためには、

材 料 およびプロセスシミュレーションツール、装 置 から最 小 寸 法 スケールまで関 連 づけるシミュレーシ

ョン(装 置 ―最 小 寸 法 スケールの統 合 を含 む)、プロセスコントロール、装 置 内 センサーの設 計 手 法

の開発が必要である。

装置/最小寸法スケールモデリングの分野は、いくつかのプロセス分野、たとえば CMP、メッキ、熱

処理および RTP、プラズマ処理、CVD、PVD、エッチングなどに分割することができる。応用分野や検

討 するプロセス(たとえば、熱 処 理 、成 膜 、エッチング)によって要 求 されるものが異 なる。従 って、図

表×‐5‐1b の数字は精度要求を仕様限界や計測能力に対するパーセントで表示した。モデルとして

は、使 用 が容 易 なものから複 雑 なもの、計 算 時 間 の短 いものから長 時 間 かかるもの、適 用 範 囲 が限

られているが高 精 度 のものから広 範 囲 に適 用 できるが予 測 精 度 が少 し低 いものまで、全 て要 求 され

る。適 用 分 野 が装 置 単 体 の理 解 からプロセス統 合 へ向 かっている中 で装 置 モデルと、ウェーハ/最

小寸法スケールおよび原子レベルのモデルを連結する必要性はますます強くなっている。

モデルの予 測精度は大 きく進歩しているが、シミュレーション結果をそのまま信じて実デバイスに適

用する前に、まだまだ検証を行わなければならない。装置と最小寸法スケールモデルは、最低限、傾

向(増減方向や桁)を正しく予測 できるものでなければならない。これら二つの分野(装置と最小寸法

スケール)のシミュレーションはウェーハ面 内 とウェーハ間 のプロセスばらつきを検 討 できるように、より

強く結びついてくるに違いない。

反応メカニズムおよび速度定数(ガス・プラズマおよび表面)のような基本的物 理データは、薄膜の

エッチングや成 膜 の表 面 発 展 の物 理 的 および化 学 的 現 象 を適 切 に把 握 する重 要 な鍵 となる。これ

らのメカニズムや速 度 定 数 を得 るためには、実 験 的 手 法 とコンピュータ手 法 の両 方 が必 要 とされる。

原 子 レベル(分 子 動 力 学 、モンテカルロ手 法 、量 子 化 学 など)から連 続 体 までの階 層 的 な計 算 アプ

ローチを展 開 すべきである。(詳 細 は本 章 の「材 料 」の項 を参 照 )反 応 装 置 からの流 れにより最 小 寸

法 スケールに対 する境 界 条 件 が決 定 される(あるいはその逆 )ため、装 置 から最 小 寸 法 スケールまで

つなぐ統合 シミュレーションを提供 することは、依然として大きな課題 である。パターンに依存 するばら

つきのモデリングにも装置と最小寸法スケールの両分野の理解が必要とされる。

今 後 、装 置 モデリングの重 要 な適 用 分 野 として、センサー設 計 やシミュレーションを含 むリアルタイ

ムシミュレータに基づく製造装置のコントロールがある。センサー設計には、何を測定するか、どこにセ

ンサーを設 置 するかの判 断 が含 まれ、さらに、言 わば“ソフトセンサー”とも言 うべきものを作 ること、即

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ち、測定できた諸量から関心のある別の諸量を、モデルを使用して予測すること、なども含まれる。

装 置 / 形 状 モデリン グのソリュ ーションとし て考 えられ るものは、以 下 の6 分 野 に 分 けら れて い

る。

1. 速 度 ― 半 導 体 製 造 プロセスの理 解 は向 上 し、コンピュータの進 歩 により大 規 模 で難しい問 題

をより効 率 的 に解 くことができるようになってきている。しかしながら、バルク反 応 と表 面 反 応 の化

学 動 力 学 に注 目 することが必 要 である。シミュレーションコードへ入 力 するこれらのパラメータと、

正 確 に結 果 を予 測 できることとは、多 くの場 合 、あまり関 連 しない。これらの必 要 とされるパラメー

タの計 算を、実 験に基 づいて行うことや量子 化 学 的手 法によって行うことによって解 決 策が見 つ

かる可能性がある。

また、複 雑 な化 学 反 応 は、少 ない数 の方 程 式 のみによる簡 単 なモデルに帰 着 できること

が多 い。-それにより、より速 い結 果 出 しと主 要 なメカニズムが何 であるかのより良 い洞 察 が

得 られる。

2. 反 応 装 置 モデリング ― プラズマのモデリング&シミュレーションは個 別 プロセスシミュレー

ションの分 野 の中 でもより困 難 なもののひとつである。正 確 なプラズマモデル、これらの気 相

モデルと(優 れたシースモデルなどの)ウェーハ上 の最 小 寸 法 スケールの構 造 との関 連 性 、

装 置 に関 連 したウェーハ上 のばらつきの予 測 可 能 性 は、プロセスの理 解 を大 きく進 歩 させ

る。

3. 最 小 寸 法 スケールモデル ― 現 在 の最 小 寸 法 スケールモデルは連 続 体 モデルである。こ

れらには、粒 子 、粒 子 配 向 、化 学 量 論 、構 造 、界 面 などが考 慮 されていない。しかしながら、

これらの材 料 の性 質 を考 慮 することによって薄 膜 層 の電 子 的 および機 械 的 特 性 が決 まる。

これらの問 題 に対 する予 測 可 能 なシミュレーションの実 現 は、やっと可 能 になったばかりで

ある。

4 . 機 械 化 学 的 平 坦 化 (CMP)モデル ― CMP は難 しい機 械 化 学 問 題 の一 つである。第 一

次 近 似 的 なモデルとシミュレーションツールは存 在 するが、多 様 な絶 縁 膜 および金 属 材 料

に対 して採 用 されている CMP については、より優 れた予 測 可 能 なモデルが必 要 とされる。

たとえば、最 小 寸 法 CMP モデリングのモデルは、Cu を主 としたダマシン工 程 におけるディッ

シ ン グ や 腐 食 の 影 響 を 分 析 す る た め に 必 要 で あ る 。 優 先 度 の 高 い も の と し て 、 ポ ー ラ ス

low-k 材 料 の平 坦 性 に関 する量 的 理 解 が上 げられる。CMP 後 に要 求 される最 終 結 果 を

得 るため、ウェーハ上 にダミーパターンを配 置 することの効 果 は、リソグラフィの中 でマスク設

計 に対 して行 われていることと同 様 に、CAD レベルにおいて理 解 される必 要 がある。

5. 配 線 のモホロジーおよび信 頼 性 ― この分 野 での材 料 モデルとシミュレーションが可 能 に

なると、 現 在 、 全 工 程 の 半 分 以 上 が シリ コンより 上 の 工 程 に 関 連 し てい ることを 考 えると、

新 しいテクノロジ・ノード開 発 を促 進 するものと思 われる。

6. 3D 離 散 化 ― 3 次 元 離 散 化 は非 常 に重 要 であり、次 の部 分 に分 けられる。装 置 シミュレ

ーションにおいては、ユーザーフレンドリーで、加 工 すべきウェーハを含 むプロセスチェンバ

ーの CPU 効 率 のいい離 散 化 に言 及 される。一 方 、最 小 寸 法 スケールシミュレーションにお

いて特 徴 的 な問 題 は、時 間 に依 存 する幾 何 形 状 の高 精 度 で信 頼 できる離 散 化 が必 要 で

ある。装 置 /最 小 寸 法 スケールシミュレーションの結 合 はこれらの両 方 の問 題 に直 面 してお

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り、異 なる長 さスケールの問 題 を含 む。

インターコネクト(INTERCONNECT:配線)性能モデリング

インターコネクト(配 線 )は回 路 とシステムの性 能 の鍵 である。配 線 構 造 の微 細 化 を進 めることは、

予見していない誤動作の機構が頻発する極限 に、素子動作の条件が迫ることを意味する。 エレクト

ロマイグレーションやストレスマイグレーションなど、電 流 や応 力 起 因 の空 洞 化 、突 起 発 生 は、その幾

つ かの 例 で ある 。 電 流 や 応 力 な ど 物 理 的 な 損 傷 機 構 以 外 に 、 シ グナ ル ・ イ ン テ グリ テ ィ ( Signal

Integrity:信 号 完 全 性 )絡 みの誤 動 作 の機 構 も存 在 する。特 に予 め注 意 しておくべきことは、設 計

条 件 の 他 に 、 代 替 の 物 質 や 、 積 層 構 造 を 使 用 す る な ど の プ ロ セ ス 条 件 で あ る 。 従 っ て 、 下 地

“front-end”技 術 の場 合 と同 様 に領 域 としては、プロセスに関 するモデリング(装 置 /最 小 寸 法 スケ

ールの節 )と、本 節 で述 べるような、プロセスに基 いた上 地 “back-end”技 術 の性 能 のモデリングの2

つの領域がある。

優 先 度 の高 いものは、熱 的 、機 械 的 な性 質 が結 びついた多 層 薄 膜 の特 性 である。薄 膜 の構 造 、

組 成 依 存 特 性 は、信 頼 性 への影 響 に関 連 してどうしても把 握 が必 要 なものである。これらの薄 膜 の

機械的な性質、即ち、材料の疲労化、割れの発生、応力起因の空洞化は同じく信頼特性に影響す

る。熱 サイクルが引 き金 となって、予 測 できない割 れが発 生 することがある。これらの影 響 をより効 果

的 に調 べるには、実 験 手 段 だけでなく、シミュレーション・ツールが必 要 である。配 線 シミュレーション

が装 置 /最 小 寸 法 スケールのシミュレーションと相 互 にはたす役 割 は、ますます重 要 である。 材 料

を低 ・誘 電 率 物 質 へ変 更 することは、低 ・熱 伝 導 率 物 質 に変 更 することであり、配 線 設 計 技 術 の進

展に必要とされる一連のシミュレーション・ツール用に組み合わせた電気的、熱的モデリングのニーズ

が極めて大きくなってきている。

素子の動作速度が数 GHz 領域に高まり、配線構造のシステムの複雑さが次々と増加するに従っ

て、高 精 度 でよりよい効 率 のソフトウエア・ツールが必 要 になっている。インダクタンス結 合 のように高

周波・電磁気特性の高精度のモデリングが鍵である。

複 雑 な配 線 構 造 の電 気 的 、寄 生 特 性 を予 測 できるようになることは、引 き続 き大 きな挑 戦 課 題 で

ある。プロセスのできと IC レベルの測定結果とを結び付け、信頼性の問題と設計の不具合との関係

を明 確 にし、そして、代 替 配 線 構 造 を容 易 に探 しだす設 計 能 力 を持 つソフトウエアツールや方 式 が

必要となっている。

回路素子モデリング

現在の設計 生産性危 機 に対する一 つの解決策 として、設計チームが直面している回路実装の課

題を含 んだモデルの改 良 が要 求 されている。歴 史 的 にはモデル開 発 者 の役 割はトランジスタや配 線

系 の正 確 な物 理 モデルで止 まったままである。しかしながら、多 くの回 路 構 造 、分 割 部 分 、機 能 ブロ

ックそして全体のチップ規 模でさえも再利 用されるようになり、これによるチップサイズの増大や複 雑さ

の増加によってこれらそれぞれの構造に対する十分に正確なモデルが要求されている。

コンパクトモデリング(トランジスタと配 線 の両 方 に対 する)と回 路 シミュレーションは、チップ設 計 の

生産性向上の第一の鍵である。課題は大幅なクロック周波数増加、「電圧余裕」(Vt と Vdd 間電圧)

の減少、サブスレッシュホールドおよび弱反転 領 域での動 作 時間の増 加 、そして指数関 数的に増加

する回路の複雑さである。2 つの相反する要 求-精度とCPU効率 -が常に満 たされる必要がある。

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この相 反 する要 請 はモデルの階 層 化 を促 している。大 部 分 の正 確 なモデルは小 さな回 路 のシミュレ

ーションにのみ使われるであろう。より大きな回 路に対しては精度の劣るモデルがこれらの正確なモデ

ルから引 き出 されるであろう。歴 史 的 に見 てアナログシミュレーションの要 求 は回 路 シミュレーションモ

デルの開 発 を駆 り立 ててきており、それらのモデルはアナログ、デジタル両 方 の設 計 チームによって

使われている。

今 日 の競 争 的 なアナログ設 計 に対 しては、トランジスタ、配 線 、受 動 、寄 生 素 子 に対 する正 確 な

DC と高周波 AC モデルが要求されている。それらの応用に対してバイポーラトランジスタは非常に重

要である。サブ 100nm のためのモデル改良には、キャリア速度のオーバシュート、量子効果、ソースバ

リアの影響、ノイズの影響、非平衡動作などに取り組む必要がある。低電圧技術 では、サブスレッショ

ルド動作やコンダクタンスを十分に考察する必要がある。

配 線 遅 延 が、現 在 および将 来 のテクノロジにおけるクリティカルパス遅 延 の主 因 となる。配 線 に関

するレイアウトや理想 的 なプロセスデータベースからの寄 生成 分 抽出 の精度を向 上することは重要な

要 求 であり、複 雑 な配 線 構 造 (3次 元 効 果 のような)に対 応 し、クロストークを正 確 にモデリングするこ

とがキーポイントとなる。高いクロック周 波 数では、インダクタンス結 合、ground bounce(グラウンドバウ

ンス)、伝 送 線 路 効 果 、表 皮 効 果 などが複 雑 に電 気 特 性 に影 響 する。非 常 に高 速 なプロセッサーで

は配線のミスマッチが性能低下の要因となる。

1999ITRS の設 計 の章 に見 られるように、検 証 は高 価 (時 間 と資 源 の両 方 において)になるため

correct-by-construction 設 計 が要 求 されている。たとえ最 初 の最 先 端 技 術 による設 計 (flag-ship

design:旗 艦 設 計 )が検 証 時 間 に余 裕 があったとしても、その規 模の変 更やそれから派 生する設 計は

常 に時 間 の制 約 下 にある。ノイズマージン確 保 や書 き換 え性 能 (記 憶 セルの状 態 を変 えるために必

要な電 圧を決めること)、サイズを維 持することなどのような作 業 分 野では、多くの高 価な再シミュレー

ションを避けるために構造のモデリングや感度解析が必要とされている。たとえば、書き換え性能にお

いては回 路 構 造 の書 き換 え性 能 を調 べるための多 くのシミュレーションが自 動 化 され実 行 される。し

かしながら明 らかになったすべての問 題 を修 正 するには時 間 を必 要 とする。もし最 初 の段 階 で感 度

解析がなされたとしたら、規模の変 さらに対しては最小限の変更で済むような十分な余裕を持って初

期の設計ができることになる。

同 様 にエレクトロマイグレーションやホットキャリア効 果 のような現 象 に対 する信 頼 性 のチェックもモ

デル化され解 析が可 能 となれば、新 しいテクノロジごとに全 体の再 検 証 を行う必 要 がなくなる。多くの

実装解析と同等の時間を信頼性検証に費やすことは一般的ではない。ESD、SER、酸化膜の信頼

性 などの課 題 を扱 うモデルが、回 路 設 計 にとってますます重 要 になっている。アナログ、RF(radio

frequency)、SoC(system on a chip)等のアプリケーションでは、RF 回路のノイズ問題などに新しい要

望を生み出している。それぞれのテクノロジに対して high-Vt、low-Vt、厚い酸化膜などによって多様

なトランジスタ動作を供 給させる傾向にあり、規模増大のためのチップ実装においては素子の入れ替

えの利 点 および危 険 性 が容 易 に理 解 できるように、すべての関 連 する素 子 構 造 に対 して特 性 が明

確 にされなければならない。これらの概 念 には統 計 的 解 析 量 が示 唆 されている。モデリングは将 来 テ

クノロジに対するばらつきと同様に現在のテクノロジのばらつきをも含んだものでなければならない。

RF 回路設計ツールが強く必要とされることから、設計環境の中でより多くの材料特性や物性を取

り入 れることが重 要 になってくる。能 動 素 子 モデルおよび配 線 モデルはどちらも、プロセスのばらつき

を考 慮 してキャラクタライズする必 要 がある。たとえば、CMP を採 用 した層 間 絶 縁 膜 (ILD)の膜 厚 の

ばらつきは 20%を超える。これらの複雑なモデルに対して確信の持てるパラメータを抽出することは重

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要 な課 題 となってくる。設 計 と製 造 がしばしば異 なった企 業 で行 われるようになり、産 業 界 の標 準 回

路モデルの開発もまた現在のビジネス環境を支援していくために必要である。

将来において、馴染みの MOSFET がもはや「スイッチ」素子でなくなる時、前世代から引き継いで

きた構造に対して新素 子がどのように影響するかを予測・解析するためにモデルが開発されねばなら

ない。スイッチの物 理 特 性と所 望の回 路 機 能との間を強く結び付けることのできる新しい回 路 技 術に

重きをおいていかねばならない。

「switch=MOSFET」から「switch=x」への過 渡 期 の期 間 が不 明 なので、多 くの新 奇 素 子 モデルの

要請に対処するためにモデル開発者が準備されなければならない。さらに、n チャネル MOSFET と p

チャネル MOSFET という2つのタイプの素子を要求するのみであったすばらしいテクノロジを我々は再

び持たないであろうことは明白である。モデル開発者は電気素子、光素子、機械素子などを含むいく

つかの異 なった素 子 の相 互 作 用 を今 まで以 上 に理 解 しなければならなくなるだろう。信 号 完 全 性 は

すでに大 きな関 心 事 となっている。より複 雑 (ポスト MOSFET)な環 境 においては、素 子 間 相 互 作 用

を十 分に把 握し、それを階 層 的 手 法 で表 現した正 確なモデリングが無い限り信 号 完 全 性は保てなく

なるであろう。

パッケージ・シミュレーション

パッケージング技 術は、性 能、電 力 、接 合 温 度 、パッケージ構 造 分野での要 求を満 足する必 要 が

ある。今 後 チップ内 外 での電 気 的 、熱 的 、機 械 的 な技 術 側 面 を総 合 設 計 するための挑 戦 が要 求 さ

れる。これらの技 術は、もはや独 立 した技術として扱うことができない。複 雑な構 造を扱う数 学 的 手 法

や、結果の精度と計算時間のトレード・オフを調べる方法の改良のためにの統合設計ツールを使うた

めに、パラメータ授受技術の開発が加速される必要がある。

パッケージ設 計 開 発 のために高 信 頼 性 モデルが必 要 である。構 造 や熱 によって引 き起 こされる機

械的ストレスは、3 次元積層構造においてチップ、パッケージ結合モデルが必要となる。低熱伝 導性

材 料の low-k 誘電 体 は正確な熱 伝 導シミュレーション要 求が強まり、特に高電 力 消 費状 態での電

気 的 ふるまいを一 貫 して解 く必 要 がある。 チップを横 切 る強 い不 均 一 性 を示 す熱 消 費 はさらに解

析 を複 雑 にし、ダイ、パッケージ結 合 の必 要 性 を強 める。薄 膜 の欠 陥 、ストレス伝 搬 、空 孔 、疲 労 を

予測するソフトウエアは、パッケージの機械的性質とチップを結合して理解する必要がある。

高周波数で動作するデバイスの電力伝搬は、重要な項目になりつつある。パッケージ、チップ間で

共 有 しているインダクタンス・ループのモデル化 、回 帰 パスを解 析 することは難 しい問 題 で、さらに強

力 で集 約 化 したシミュレーションシステムが要 求 される。理 想 的 なシミュレーションシステムは、パッケ

ージとチップレイアウトデータベースから結果を生成し、全ての配線を正確な 3 次元式で表現する必

要がある。

電気信号伝搬のモデリングは、単純な RLC モデルから伝送線路モデルに変更する必要がある。

回 路 シミュレーションは基 板 、パッケージ、チップを結 合 することが要 求 される。電 気 的 モデリングは、

同一のパッケージやダイ上で、デジタル、アナログ、そして RF 素子範囲に拡張する必要がある。電力

伝 搬 ネットワークや電 磁 界 干 渉 に通 じるノイズ結 合 は“システムオンチップ”または“システムオンパッ

ケージ”に対し特別な課題である。

数値手法とアルゴリズム

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数値手法とアルゴリズムは、広い意味での TCAD の進展に伴ない複雑化しつつある物理現象のモ

デルを支 えるために進 歩 する必 要 がある。たとえばデバイスシミュレーションで用 いるボルツマン輸 送

方程式をより厳密に解く場合や、応力といくつかの欠陥種やその複合体を考慮した不純物拡散と活

性 化 のシミュレーションをするには、素 子 上 に格 子 点 を作ってより多くの連 立 偏 微 分 方 程 式 を扱 える

ことが必 要 になる。 さらに,特 徴 的 な時 間 や距 離 のスケールが異 なる物 理 プロセスが互 いに重 要 な

関 連 をしあう現 象 に対 しては方 程 式 を一 括して正 しく解 く必 要 がある。たとえば点 欠 陥 の拡 散 はプロ

セスの処 理 時 間 に比 較 して数 桁 高 速 である。 酸 化 炉 中 のガスのフロー、欠 乏 箇 所 、反 応 現 象 とい

った巨 視 的 空 間 スケールの事 象 は、ディープサブミクロンスケールでの局 所 形 状 に影 響 されるコンタ

クトホールへの CVD 工程の基礎となっている。 以上の例は,モデルの予測性能や精度に対する要

求が増すため一層 複 雑 なモデルが必 要になり,その結 果 離 散 化手 法や線 形ソルバー,特に反 応 現

象が結合した拡散方程式 and/or 輸送方程式からなるからなる大規模システムを扱う必要が出てくる

ことのほんの一例にすぎない。 また精度への要 求が高まるにつれ、多くのモデリング分野で全く異な

るレベルのアプローチが要求されている。 たとえば解析的なイオン注入モデルの代わりにモンテカル

ロ法が、連続体での拡散方程式の代わりに原子レベルの手法が、光リソグラフィでは最新のマスク(た

とえば位相シフトマスク、OPC)のシミュレーションに、古典的な薄膜マスク近似の代わりにマクスウェル

方 程 式 が用 いられる。 この様 にモデルをさらに複 雑 化 するアプローチは、標 準 的 アルゴリズムでは

多 くの場 合 には実 現 不 可 能 な程 の計 算 時 間 とメモリを必 要 とするため、それぞれの問 題 に特 化 して

効率化されたアルゴリズムを必要とする。 結論として、他の科学分野で利用可能または開発中の最

新 の数 値 計 算 手 法 やアルゴリズムは、いつも様 々なシミュレーション分 野 の応 用 の視 点 で予 め検 討

され、このロードマップに記 載 し、技 術 開 発 を推 進 したり影 響 を与 えるように利 用 されなくてはならな

い。

非 常 に多 くの半 導 体 製 造 段 階 やその分 岐 を扱 う場 合 には,離 散 化 用 の格 子 生 成 技 術 は特 に重

要 になる。3次 元 のシミュレーションでは,空 間 変 数 の勾 配 が変 化 したり,さらには対 象 の形 状 そのも

のが変 形 することによって重 大 なトラブルが発 生 する。 こうした問 題 には格 子 点 の細 分 化 や間 引 き

の同 時 並 行 的 処 理 や格 子 点 の移 動 が必 要 となり、多 くの場 合 には解 くべき物 理 モデルを表 す方 程

式の解 に格 子の形 状 や品 質が適 合 する様に格 子を生 成することが要 求 される。 格 子 生 成アルゴリ

ズムは、格 子 点 の除 去 や移 動に起 因 した離 散 化 誤 差 がシミュレーション結 果に悪 影 響を及 ぼさない

様 に保 証 しなくてはならない。 特 に感 度 解 析 の場 合 には、異 なる条 件 でのシミュレーション結 果 の

違 いは、用 いた格 子 の違 いで重 大 な影 響 を受 けず、物 理 上 の理 由 で生 じることを保 証 しなくてはな

らない。 この問 題 の好 ましい解 決 方 法 は、たとえば酸 化 工 程 のシミュレーションで用 いる再 構 成 後

の格子に、再構 成前の格子 点や要 素をできるだけ多く適 切に利用することである。 デバイス構造の

変 化 を考 慮 すべき、特 にエッチング工 程 の様 に多 層 構 造 を考 慮 すべき3次 元 的 のプロセスシミュレ

ーションでは、構 造 の変 化 を追 いかけるために効 率 的 で安 定 したアルゴリズムが必 要 とされている。

こうしたアルゴリズムは素 子 の構 造 に影 響 されずに、適 切 な規 模 の格 子 を、高 い信 頼 度 で発 生 でき

なくてはならない。 現時点では、用いられているどのアプローチも(たとえば表面三角分割、セル法、

レベルセット法、ループ除去法)上記の関連課題を解決できていない。

以 上 に述 べた離 散 化 用 格 子 点 生 成 技 術 への要 求 内 容 は,最 近 増 加 している装 置 や材 料 のシミ

ュレーション要 求 のためにさらに拡 張 されている。こうした対 象 では対 象 形 状 が変 形 することは殆 どな

いが,時 間 とともに変 化 する空 間 変 数 に適 合 させて格 子 を生 成 することは重 要 な課 題 である。処 理

中 のウェーハ面 と処 理 装 置 全 体 の主 要 形 状 との両 方 を表 現 しつつ、あまりに多 数 の格 子 点 を使 わ

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ずに適合する格子を発生する場合 には自動メッシュ発生 が特に重要 になる。装 置スケールと半導体

素子の設 計 寸法スケールを同時に扱うシミュレーションでは、この問題 は一層厳しくなる。現 状 のいく

つかの計 算 機 流 体 力 学 (CFD)ツールでは、シミュレーション対 象 の形 状 設 定 や格 子 発 生 に必 要 な

情 報 の指 定 方 法 が複 雑 であるという問 題 を抱 えている。これらの分 野 ではたとえば半 導 体 のプロセ

ス・デバイスシミュレーションとは格子の品質に対する考え方がかなり異なる。 しかし両分野の技術に

共 通 した鍵 は、指 定 された形 状 に対 して適 切 かつ効 率 的 に格 子 を生 成 する手 法 の開 発 と、格 子 に

関する局所 的間 隔・方 位・品質など3次元での格子 発生 ツールを制 御するための情報を、必要な入

力情報から自動抽出する方法を見つけることである。

粒子ベースのモンテカルロコードは CPU そのものの処理速度を上げることへの要求だけでなく、バ

ラツキの少ないデータを実用的な計算時間内の処理で得る手法が必要となる。より高い MFLOPS 値

への要 求 の急 速 な高 まりは、現 状 のトレンドが続 くとしてもハードウエアの進 歩 では一 部 しか満 たされ

ないであろう。ワークステーションの処理速度は 1990 年以降毎年 1.8 倍の率で高速化している。計

算負荷の大きい 3 次元シミュレーションの要求に応えるには、並列解法も必要になる。特に分散型シ

ステム(たとえばワークステーションクラスタ)では、プロセッサ間のデータ交換を最小にするアルゴリズム

が必 要 となろう。これらのシステムは産 業 界で標 準 的であるが、どのような種 類 のシミュレーションが大

規 模 共 有 メモリ計 算 機 で可 能 なのか、どの程 度 の性 能 のシステムが産 業 および研 究 分 野 で利 用 可

能なのかは厳密に調査する必要がある

議論

幾 つかの場 合 において、モデリングとシミュレーションソフトウェアツールはお互 いにリンクされ始 め

たが(伝統的 な TCAD のプロセスとデバイスシミュレータ、設計ツールのように)、一 方、他の多くの場

合には、ソフトウェアツールはまだ切 り離されている。ある人が新しい技術 の開発のためにサイクルタイ

ムを調 べるとき、その時 間 と費 用 の多 くが個 々のモジュール開 発 ではなくて、統 合 化 のレベルに費 や

される。次のステップの予期しない反応を決 定 するには、モデリングとシミュレーションツールがリンクさ

れていることが必要である。このタイプの努力は次の場合に必要とされる。

1. 電 気 特 性 を予 測 するソフトウェアによる物 質 構 造 シミュレーションツールの接 続 。これらのツール

が役 に立 つ例 として、high-k の薄 い誘 電 膜 の開 発 がある。そして、この領 域 の将 来 のソフトウェ

アツールは個々の要素より、むしろシステムとしてゲートスタックを扱うか もし れない 。 物 質 の

予 期 しない反 応 の問 題 、より良い”ならばどうなるだろう”の分 析 、および信 頼 性 への影 響を研 究

することができるだろう。

2. 個々の装置や特性長のシミュレーションツールの接続か統合。例としては、プロセスの自 由

度 や感 度 に対 してエッチ形 状 を予 測 するプラズマエッチングツールとともに、ホトレジストの露 光

特性を予測するリソグラフィシミュレーションツールのリンクがある。

3. ツール間 のパラメータの共 通 化 を容 易 にできて、必 要 な物 理 定 数 を含 む構 造 化 したデータセッ

ト。

4. 共 同 設 計 環 境 を作 成 するための、パッケージの熱 的 、機 械 的 、および電 気 的 なシミュレーション

ツールと、チップの性能ツールの統合。

5. 設 計 用 のコンパクトモデルとデバイスファイルの作 成 のための頑 健 な方 法 を持 ち合 わせたデバイ

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スシミュレータの統合。

現有能力の表と精度/計算速度要求

モデリングとシミュレーションの分 野 は、広 範 な要 求 への様 々なアプリケーションを含 んでいる。たと

えば、設 計 に密 接 につながる応 用 として、現 象 的モデルの計 算 速 度 と精 度が主 な要 求である一 方、

キャリブレーション無しに予測をすることも要求されており、例としては OPC システムに組込まれた回

路 モデルとリソグラフィモデルがある。また技 術 開 発 に関 する応 用 では、物 理 モデルと経 験 的 モデル

をミックスしたものが要求される場合もある。テクノロジの最適化開発に使われる(高度に合せ込まれた

シミュレータを用いる)従来の TCAD 応用はこの部類に属する。最後に基本的物理が追及されるモデ

リング分 野 、たとえばモンテカルロデバイスシミュレータや第 一 原 理 によるシリコン中 の不 純 物 拡 散 係

数 計 算 がそれである。これら全ての適 用 領 域 に関して有 効 なガイダンスを与えるため、モデリングとシ

ミュレーションの技術的要求表は、能力要求表、精度と計算速度の表にわけて、図表 103a,b,c とし

た。

能力要求表(図表 103a と c)はテクノロジのモデリングとシミュレーションに対する要求が、新しいモ

デリング分野の開発を必要とするものを記述している。たとえば EUV リソグラフィステッパのモデリング

である。この場合 EUV ステッパの性能をシミュレートできる基本技術が必要となる。この種の要求は新

しい技術の導入や、微細化による新しい物理現象領域への移行と関連している。

一方、精度と計算速度の表(図表 103b)はプロセス/回路設計・最適化に必要なシミュレータの精

度レベルをより厳密に記述している。TCAD の適用にとってこの精度レベルは、図表の 1 行目にあげ

たオーバーオールな TCAD によるコスト削減を実現するために必要となる。コスト削減の目標値はより

一 般 的 に言 うと、TCAD がプロセス開 発 計 画 のスピードアップをするという、コスト削 減と開 発 期 間 短

縮を意味している。ECAD にとってこれらの精度レベルは、設計者が新しい製品を効率的に創造する

ために必 要 となる。これらの精 度 要 求 は短 期 のテクノロジ要 求 にのみ指 定 されるもので、長 期 に対 し

ては新 しい技 術 の調 査 の優 先 度が高い。与えられた時 点 において、複 数 のテクノロジ世 代 が同 時 に、

別々の精度でシミュレートされていることを知っておく必要がある。

図表 103b の要求精度は、シミュレーションツールをあるテクノロジ・ノードにキャリブレートした後の

精度であることを注意する必要がある。一般的に理解しておきたいのは、特に TCAD シミュレーション

ツールは、新 しい世 代 には新 しい技 術 ・材 料 ・不 純 物 ・プロセス領 域 が導 入 されるため、世 代 ごとに

新しい技 術 にキャリブレーションする必 要があることである。精 度の数 値 はあるプロセスの開 発 例 に対

しプロセス・設計技術者に聞いて決定したものである。

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図表 103a モデリング&シミュレーションの技術的要求 : 能力—短期 Year of Production 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

DRAM ½ PITCH (nm) 130 115 100 90 80 70 65 MPU / ASIC ½ PITCH (nm) 150 130 107 90 80 70 65

Lithography

Lithography: evaluate wavelength

Evaluate 248 nm versus 193 nm

Evaluate 193 nm Versus VUV Evaluate VUV versus EUV,EB

Resist models 193nm resist

models

157 nmresist

modelsDetailed chemical resist model

Front End Process Modeling

Gate Stack: evaluate materials

Model alternate dielectrics and gates (interfaces, impurity diffusion, barrier

height) Materials to electrical

properties

Diffusion and activation models

Interfaces, stress, ultra-shallow junctions, Si:Ge:C, source/drain.

Move from calibrated phenomenological to physically based models

Back End Process/Equipment/Topography Modeling

Models for multi- level metal

Mechanical/thermal stress and cycling Stress voiding, adhesion, and fracture

Planarization models CMP/dummy features Full CMP model Equipment/feature scale l ink

Plasma deposition and etch models

Litho/plasma integrated model to predict within-chip feature variation

Device modeling (Numerical)

Bulk CMOS Gate current models; gate oxide reliability

Full quantum gate stack models; device models with relevant quantum effects included

Non-bulk CMOS

Heterostructures; stress dependent mobility model for

Si:Ge:C "What if" capability for non-bulk CMOS devices

RF Modeling Noise models Frequency, noise, parasitic device tradeoffs

Circuit Element Modeling/ECAD

New circuit element models SOI circuit model Non- bulk CMOS compact

models 2D quantum effects /

non-quasi-static models

Interconnect models Full-chip RC On-chip inductance effects, full chip RLC

Design/device l inks Ioff/Ion link Best practice analysis for design

Package Modeling

Package models Complex

interconnect geometries

Thermo-mechanical-electrical integrated models

Unified package/chip models

Co-design package / circuit models

(multiple power and ground planes)

Unified RLC extraction for package/chip Full-wave analysis

Numerics

Numerical algorithms Robust, reliable 3D grid generation

Improve usability of 3D simulators

Exploit parallel computation

White—Manufacturable Solutions Exist , and Are Being

Yellow—Manufacturable Solutions are Known Red—Manufacturable Solutions are NOT Known

図表 103b モデリング&シミュレーションの技術的要求 : 正確さと速度—短期

Year of Production 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 DRAM ½ PITCH (nm) 130 115 100 90 80 70 65 MPU / ASIC ½ PITCH (nm) 150 130 107 90 80 70 65

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Overall technology cost reduction target (due to TCAD) 25% 35% 40%

Lithography Modeling Resist profile prediction accuracy 10%

(13nm)10%

(11.5nm)10%

(10nm)10%

(9nm) 10%

(8nm) 10%

(7nm)10%

(6.5nm)OPC model accuracy 5%

(6.5nm) 5%

(5.8nm) 5%

(5nm) 5%

(4.5nm) 5%

(4nm) 5%

(3.5nm) 5%

(3.3nm)Front End Process Modeling Vertical junction depth simulation accuracy 5%

(6.5nm)5%

(5.8nm)5%

(5nm)5%

(4.5nm) 5%

(4nm) 5%

(3.5nm)5%

(3.3nm)Lateral junction depth simulation accuracy 5%

(6.5nm) 5%

(5.8nm) 5%

(5nm) 5%

(4.5nm) 5%

(4nm) 5%

(3.5nm) 5%

(3.3nm)Total source/drain series resistance (accuracy) 20% 20% 20% 20% 20% 20% 20% Back end process/Equipment/Topography Modeling Etch/deposit ion cross wafer uniformity (% accuracy of the control spec)

10% (13nm)

10% (11.5nm)

10% (10nm)

10% (9nm)

10% (8nm)

10% (7nm)

10% (6.5nm)

2D/3D topography accuracy 10% (13nm)

10% (11.5nm)

10% (10nm)

10% (9nm)

10% (8nm)

10% (7nm)

10% (6.5nm)

Device modeling (Numerical) Accuracy of f t at given f t (% of maximum chip frequency) 10% 10% 10% 10% 10% 10% 10% Gate leakage current accuracy (%) (Ig/Iof f ) 70% 70% 40% 40% 40% 30% 30%

Ion accuracy 5% 5% 5% 5% 5% 3% 3%

Iof f accuracy 70% 70% 40% 40% 40% 30% 30%

Long-channel Vt (accuracy) 4%

(48–60mV)

3% (33–42m

V)

3% (27–36m

V)

3% (24–33m

V)

3% (21–30m

V)

3% (18–27m

V)

3% (17–23m

V) Vt rolloff accuracy (mV) 20mV 20mV 15mV 15mV 15mV 10mV 10mV

Vt 3svariat ion (%) 30% 30% 30% 30% 30% 30% 30% Circuit Element Modeling/ECAD I-V error—compact model accuracy 5% 5% 5% 5% 5% 3% 3% Sub-threshold current accuracy model accuracy 50% 20% 10% 10% 10% 7% 7% Intrinsic MOS C-V accuracy <6% <5% <5% <5% <5% <3% <3% Parasit ic C-V accuracy 5–10% 5% 5% 5% 5% <3% <3% Accuracy of Gm and r0 at Vt +150mV versus L, Vbs, Vds and T

20% 15% 10% 10% 10% 5% 5%

Circuit delay accuracy (% of maximum chip frequency) 5% 5% 5% 5% 5% 3% 3% RLC delay accuracy (% of maximum chip frequency) 5% 5% 5% 5% 5% 3% 3% Package Modeling Package delay accuracy (% of off-chip clock frequency) 1% 1% 1% 1% 1% 1% 1% Temperature distribution for chip and package(accuracy) 5C 5C 5C 5C 5C 5C 5C

Numerical Methods Speed-up of algori thms for 3D process/device 2× 3× 4× 5× 6× 7× 8× Linear solvers (kilo equations/minute) 250k 300k 600k 650k 700k 750k 800k Parallel speed-up 2× 3× 4× 6× 8× 12× 16× MFLOPS required 1000 2000 4000 5000 6500 8000 10000

White—Manufacturable Solutions Exist , and Are Being

Yellow—Manufacturable Solutions are Known Red—Manufacturable Solutions are NOT Known

図表 103c モデリング&シミュレーションの技術的要求 : 能力—長期

Year of Production 2010 2013 2016 DRAM ½ PITCH (nm) 45 32 22 MPU / ASIC ½ PITCH (nm) 50 35 25

Lithography Modeling

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Next generation l i thography NGL models

Resist technology Finite

polymer-size effects

Non-conventional photo-resist models

Front End process Modeling

Advanced process models Alternative materials Atomistic process model

Advanced doping models New technology needed

Back End process/Equipment/Topography Modeling

Alternative material models

Calculation of dielectric constant

Atomistic material model- materials to electronic

properties Equipment simulation Computer engineered materials and process

recipes Numerical Device Modeling

Emerging devices Trade-off analysis tools Quantum effect devices

Circuit Element Modeling/ECAD

Advanced circuit models Circuit models for alternative

devices New technology needed

Package Modeling

Electrical/optical models Mixed

electrical/-optical analysis

New technology needed

Numerics

Numerical algorithms

Efficient atomistic/ quantum methods

Multi-scale simulation (atomistic-continuum)

White—Manufacturable Solutions Exist , and Are Being

Yellow—Manufacturable Solutions are Known Red—Manufacturable Solutions are NOT Known

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まとめ

モデリングとシミュレーションソフトウェアツールは半 導 体 の全 体 の世 界 にかかっている。これらのツ

ールは日 常 的 に、ますます効 果 的 に使 用 されている。このドキュメントは、この有 効 性 を増 加 させて、

我々の将来の産業に影響を与えるために、明確な必要性を提示した。

特 定の技 術 的な必 要性 の他に、モデリングおよびシミュレーション共同 体は、この分 野を劇 的 に助け

る幾つかの非技術的な領域での努力を推奨する。

● 分野外の専門家が難しい挑戦を解決するのを支援するために相互訓練の機会を増やす。

● 方向付けられた長期間の研究のために大学と研究所に研究資金を適切に支援する。

● 付 加 価 値 領 域 における新しい努 力 への集 中のために、一 般 的 に使 用 されているモデリング

とシミュレーションモジュールの標準化と開放の方法を探る。

● モデリングとシミュレーションの効果を評価するための方法論を改良する。

● スプレッドシートから ab-intio まで、ソフトウェアツールの階層構造が開発されること、および

使用されることを確保する。

● 装置の供給者が装置とともに物理モデルとモデリング情報を提供する方法を探る。

参考文献と資料

半導体プロセスのモデリングとシミュレーションの将来に関するさらなる情報は、以下を参照。

“supplemental material discussing nanoelectronics, the Technology Roadmap for

Nanoelectronics 1”

監修は European Commission’s IST programme (Future and Emerging Technologies).

また検討にあたっては以下の貢献を受けました。

the European ESPRIT Industrial User Group “UPPER,” funded by the European Commission

[http://www.iis-b.fhg.de/en/arb_geb/upper.htm]