キウイフルーツは免疫力を向上させる可能性がある キウイ...
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1.キウイフルーツの特性
グリーンキウイ10.6
サンゴールドキウイ15.1
9.3いちご
8.1バナナ
7.6かき
6.5みかん
5.5メロン
5.1レモン
5.1ブルーベリー
3.3もも
1.8りんご
3.4すいか
1.9ぶどう
1.9梨
第57回 日本心身医学会総会ならびに学術講演会 教育セミナー7(ランチョンセミナー)
キウイフルーツの健康効果ーー三次機能研究の新展開D a t e : 2016年6月5日(日) Venue : 仙台国際センター 会議棟 桜2
共催:第57回日本心身医学会総会ならびに学術講演会/ゼスプリ インターナショナル ジャパン株式会社
キウイフルーツは、1年を通じて手軽に入手でき、一般家庭での貯蔵性にも優れる比較的安価なフルーツである。キウイフルーツ果実の機能性成分として、ビタミンCやカリウム、食物繊維が豊富であることがよく知られている。特に、ビタミンCの抗酸化作用や食物繊維による便秘改善作用などがこれまでに注目され、研究の対象とされてきた。これらに加え、最近ではキウイフルーツの消化促進効果や腸内フローラ改善効果、食後高血糖の抑制効果などの新たな健康効果も解明されつつある。 そのような中、2016年4月に、世界初のキウイフルーツに関する国際シンポジウムである「キウイフルーツの栄養および健康効果に関する国際シンポジウム」が、ニュージーランドで開催された。ここでは、国際シンポジウムで発表された内容を中心に、キウイフルーツ果実の三次機能研究に関する最近の動向を紹介する。
キウイフルーツは栄養豊富なフルーツ キウイフルーツには多数の品種があるが、大規模生産され、一般に流通しているのは、緑色果肉のグリーンキウイと黄色果肉のサンゴールドキウイ、ゴールドキウイの3品種である。 キウイフルーツはビタミンCが豊富なフルーツであることがよく知られているが、その含有量は一般に食されているフルーツの中でもトップレベルにある。ビタミンCのほかにも、キウイフルーツは食物
繊維やカリウム、葉酸などの栄養素も豊富に含んでいる。 17種類の栄養素について、100 gのフルーツで1日に必要な摂取量の何%を補えるかを計算し、その平均値で示した「栄養素充足率」の値は、一般に食されているフルーツの中で、キウイフルーツがもっとも高い(図1)。これは、キウイフルーツの果実の中にさまざまな栄養素がコンパクトに詰まっていることを示している。
キウイフルーツの栄養面での特徴
主なフルーツの栄養素充足率*● ビタミンC含有量が卓越して多い1日の推奨量100 ㎎に対して、キウイフルーツを1個食べるだけで、サンゴールドキウイなら推奨量の1.5倍以上、グリーンキウイなら推奨量の85%を摂取できる
● 食物繊維、カリウム、葉酸、ビタミンEなども豊富● 小さな果実の中に栄養が詰まっている左図に示すように、キウイフルーツは他のフルーツと比べて栄養素充足率が高く、不足しがちな栄養素もバランスよく含んでいる
● 生でそのまま食べられるため、調理による栄養素の損失が少ない
*たんぱく質、食物繊維、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸、ビタミンC、それぞれの栄養素の1日必要量に対する、各フルーツ100gで摂取できる栄養素の割合(%)の平均値で栄養素充足率を表示した(J.Am.Diet.Assoc.2005;105:1881-1887に準拠)。キウイフルーツ以外については、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に基づき算出
演者: 西山 一朗 先生駒沢女子大学 人間健康学部 健康栄養学科 教授
図 1
キウイフルーツのビタミンC含有量は、他のフルーツと比べて卓越して高い。ビタミンCには、酵素反応の補助因子としての作用や抗酸化作用などの生理作用がある。 ビタミンC不足が壊血病の原因となることはよく知られているが、壊血病予防のために必要とされる血漿中ビタミンC濃度は30μM程度である。しかし、ビタミンCの生理作用を十分に発揮させ、生活習慣病予防や免疫機能の強化といった機能を期待するには、それよりも高い濃度が必要だと考えられ、血漿中ビタミンC濃度を飽和状態まで高めておくことが有効である。キウイフルーツの摂取が血漿中ビタミンC濃度に与える影響を調べた研究結果によると、ゴールドキウイを毎日2個ずつ継続して摂取することで、血漿中ビタミンC濃度が飽和レベルに達することが明らかになっている。 ビタミンCは、脳内神経伝達物質であるノルアドレナリンやセロトニンの生合成に関与しており、血漿中ビタミンC濃度は抑うつなどの
気分の状態に影響する可能性が考えられる。1日2個のゴールドキウイ摂取を6週間継続した場合の、気分の状態の変化を調べた研究によると、TMD(Total Mood Disturbance;気分の状態を示す指標)の値が高く、もともと気分の状態が悪いサブグループでは、キウイフルーツの摂取後に疲労感の低下や活気の上昇が認められ、気分が改善するという結果が得られた。 また、ビタミンCには、白血球の一種である好中球が細菌を貪食する過程で大量に産生する活性酸素を消去する働きがあり、好中球のビタミンC濃度を高めることは、免疫力の向上につながると考えられる。キウイフルーツの免疫力に対する影響を調べた研究によると、1日2個のサンゴールドキウイ摂取を4週間継続することで、血漿および好中球のビタミンC濃度の上昇が認められた。好中球の活性を示す指標である走化性とスーパーオキシド生成量は、いずれも上昇し、サンゴールドキウイの摂取が免疫力を向上させる可能性が示された。
3.キウイフルーツのビタミンCと健康効果ーー国際シンポジウムで報告された内容を中心に
4.キウイフルーツと血糖上昇の抑制ーー国際シンポジウムで報告された内容を中心に
キウイフルーツは免疫力を向上させる可能性がある
キウイフルーツは血糖値を上げにくい 食品に含まれる炭水化物は、小腸でグルコース(ブドウ糖)に分解され、血液中に吸収される。食後に血糖値が上昇すると、膵臓からインスリンが分泌され、通常、食後2時間程度で血糖値は元のレベルまで低下する。しかし、インスリンの量が少なかったり、分泌されるタイミングが遅かったりすると、食後の血糖値がすぐに下がらず、食後高血糖をきたすことがある。 食後高血糖は動脈硬化を進展させ、心血管疾患や脳卒中のリスクを高めるとされているが、血糖値を上げにくい食品は、食後高血糖を防ぐうえで有用である。食品1食当たりの血糖上昇への影響を比較した研究によると、キウイフルーツ(100 g=約1個分)はパン(30 g)や
白米(150 g)、バナナ(120 g)などと比べて、血糖値を上げにくい食品であることが明らかになっている。 実際に、ビスケットのみを食べた場合と、ビスケットの炭水化物の一部をキウイフルーツに置き換え、ビスケットとキウイフルーツを一緒に食べた場合とで、食後の血糖値の変化を調べた研究がある。その結果、どちらも等量の炭水化物を摂取したにもかかわらず、キウイフルーツを一緒に食べたほうが血糖値の上昇が緩やかになり、急激な血糖変動が起こらなかった(図6)。このことから、キウイフルーツは血糖値が気になる人でも安心して食べられる食品であると考えられる。
キウイフルーツの血糖変動への影響を調べた研究結果図 6
食後30分で血糖値が急激に上昇したのち、食前の血糖値を下回るほどの過度な低下が認められた
グリーンキウイとサンゴールドキウイ、いずれの場合も、食後の血糖値の上昇は緩やかで、過度な低下は認められなかった
キウイフルーツの食物繊維は、消化管内で水分を含んで膨潤する。これにより、消化管の内容物の粘性が増大し、グルコースの吸収速度・吸収効率が低下することが、血糖値の上昇が緩やかになる要因と考えられる
2個のキウイフルーツ
800~900 mLに膨潤
炭水化物
炭水化物
炭水化物
ビスケット
ビスケット
ビスケット
キウイフルーツキウイフルーツ
キウイフルーツ
ビスケットのみ
ビスケット+グリーンキウイ
ビスケット+サンゴールドキウイ
食後の血糖値の変化は?
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キウイフルーツの消化に対する影響図 3
2.キウイフルーツと消化器系の働きーー国際シンポジウムで報告された内容を中心にキウイフルーツは消化器系に良い影響を与える キウイフルーツが消化器系の働きに対してもたらす効果については、これまで、試験管内での研究(in vitro)や動物を用いた研究(in vivo)など、世界中でさまざまな研究が行われてきた。
これらの研究結果から、キウイフルーツには、①消化促進作用、②腸内フローラ改善作用、③便秘改善作用の3つの作用があると考えられている(図2)。
キウイフルーツの消化促進作用に関する研究は、これまでに、ヒトの消化器系の環境を模倣した試験管内の研究(in vitro)と、動物を使った研究(in vivo)が行われている。 試験管内の研究は、消化酵素であるペプシンを含む人工胃液にたんぱく質を入れ、pH2の酸性条件で30分間消化したのち、pHを8に変え、パンクレアチン(消化酵素)を添加して人工腸液の組成とし、さらに120分間の消化を行うという方法で実施された。その結果、人工胃液にグリーンキウイ抽出物を添加した場合、カゼイン(乳たんぱく質)や食肉たんぱく質、大豆たんぱく質などのたんぱく質
で、消化促進効果が観察された。 in vivo研究では、ラットや成長期のブタを使い、たんぱく質のエサと一緒にキウイフルーツを与えた場合の、消化に対する影響が検証された。その結果、アクチニジン(図3)を豊富に含むグリーンキウイを与えた場合では、アクチニジンを含まないゴールドキウイを与えた場合と比べ、消化促進効果が認められた。 なお、国際シンポジウムでは、ヒトを対象とした臨床試験結果の速報も発表されており(図3)、近いうちに論文として報告されるものと思われる。
アクチニジンとは、たんぱく質を分解する酵素の一種である。グリーンキウイの果肉には、100 g当たり約300 ㎎のアクチニジンが含まれており、消化促進効果が期待される。一方、ゴールドキウイにはこの酵素はほとんど含まれていない
● 胃腸の環境を模した試験管内(in vitro)の実験で、グリーンキウイはたんぱく質の消化を促進した
● ラットに、たんぱく質を含むエサと一緒にグリーンキウイを与えたところ、たんぱく質の消化が促進された
● ブタに、牛肉たんぱく質のエサと一緒にグリーンキウイを与えたところ、たんぱく質の消化が約50%促進され、胃内容物排出速度が約20%短縮した
● 健康な成人男性を対象に臨床試験を行ったところ、赤身ステーキと一緒にグリーンキウイを食べたグループでは、膨満感などの胃の不快な症状が軽減した
これら複数の研究結果から、グリーンキウイには、たんぱく質の消化促進作用があると考えられる
キウイフルーツの消化促進作用に関する研究結果アクチニジンとは?
① 消化促進作用
キウイフルーツがおなかにもたらすメリット図 2
アクチニジンがゼラチンを分解するため、ゼリーが固まらない
アクチニジンの含有量(相対値)
キウイフルーツの腸内フローラ(腸内細菌叢)に対する影響を調べた研究は、現在のところ、大腸の環境を模倣した試験管内(in vitro)の研究のみが報告されている。この研究は、培養液の入った容器に、10倍希釈した糞便懸濁液を10%の濃度になるように添加し、嫌気的条件下で48時間培養を行うというものである。 容器の中に、キウイフルーツを人工胃液と人工腸液で消化したあとに残った難消化性多糖(食物繊維)を添加し、腸内フローラへの影響を調べたところ、バクテロイデスやビフィズス菌などの善玉菌の増加が観察された。さらに、キウイフルーツの難消化性多糖を添加した場合は、酢酸やプロピオン酸などの短鎖脂肪酸も増加した。短鎖脂肪酸には、腸内を酸性化することで病原菌の増殖を抑制したり、大腸の運動を促進して便秘を防ぐ作用があるとされている。 これらの結果から、キウイフルーツにはプレバイオティクス(図4)としての作用があると期待される。
便通改善に寄与する食品成分としてよく知られているのが、食物繊維である。キウイフルーツは、食物繊維を多く含むうえ、他の食品よりも食物繊維の保水力が高いという特徴がある。つまり、キウイフルーツの食物繊維は、消化管内で水分を多く吸収し、大きく膨張するのである。また、キウイフルーツの食物繊維には、短鎖脂肪酸の産生を増加させることで便通を促す作用もあるものと考えられる。これらの相乗効果により、キウイフルーツはより大きな便通促進効果
(便秘改善効果)を発揮するものと考えられる。 実際に、便秘症状を示す患者を対象とした複数の臨床試験で、キウイフルーツの便秘改善効果が検証されている。いずれの臨床試験でも、キウイフルーツを継続して摂取したグループでは、排便の容易さや排便の頻度・量などが改善するという結果が得られた(図5)。
② 腸内フローラ改善作用
③ 便秘改善作用
プロバイオティクス腸内フローラのバランスを改善し、人に有益な効果をもたらす生きた微生物(善玉菌)や、その微生物を含むヨーグルトなどの食品のこと
プレバイオティクス腸内に存在する善玉菌を増殖させたり、悪玉菌の増殖を抑制することで、人に有益な効果をもたらす難消化性食品成分のこと。オリゴ糖や食物繊維などがこれにあたる
食物繊維を豊富に含むキウイフルーツは、プレバイオティクスとして働く可能性が考えられる
● 便秘型過敏性腸症候群(IBS)患者を対象に、キウイフルーツの排便に対する影響を調べたところ、1日2個のグリーンキウイの摂取を4週間継続した場合、便の結腸通過時間が短縮し、排便回数や排便量が増加するという結果が得られた
● 便秘症患者を対象に、キウイフルーツの効果を調べたところ、1日3個のグリーンキウイの摂取を3週間継続した場合、排便頻度や排便の容易さ、排便量といった便秘の指標が改善した
グリーンキウイには、便秘改善効果があると考えられる
キウイフルーツが消化器系の健康にもたらす効果を検証することを目的に、現在、ニュージーランド、イタリア、日本の3カ国において、国際共同臨床試験が実施されている。2016年4月にニュージーランドで「第1回キウイフルーツの栄養および健康効果に関する国際シンポジウム」が開催され、ニュージーランドでの臨床試験の結果が初めて報告された。 臨床試験は、機能性便秘症患者と便秘型過敏性腸症候群(IBS)患者を対象に、キウイフルーツが排便状況や消化器症状にどのような影響をもたらすのかを検証したものである。その結果、1日2個のグリーンキウイの摂取を4週間継続したところ、完全自発腸運動(CSBM)の増加や便秘症状の改善が認められ、便秘によって損なわれていたQOL(生活の質)を向上させる可能性が示された。なお、健康な成人が同量のキウイフルーツを摂取しても、下痢などの症状は起こらないこともあわせて報告された。
ニュージーランドでの臨床研究の結果を発表するニュージーランド・オタゴ大学のリチャード・ギャリー教授
便秘改善作用に関する多施設共同臨床試験の結果が初めて明らかにTOPIC
プレバイオティクスとは?図 4
キウイフルーツの便秘改善作用に関する研究結果
図 5
グリーン
サンゴールド
ゴールド
0.0 0.5 1.0
食物繊維
便秘改善
腸内フローラ改善アクチニジン
消化促進
血糖上昇抑制 消化器系の機能をサポート
膨潤
短鎖脂肪酸1
2
3