ジャストインタイム農業をめざして–...

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1 1 安全な農作物生産管理技術と トレーサビリティシステムの開発 GSBUA GSBUA できり拓くジャストインタイム できり拓くジャストインタイム 農業 農業 溝口勝 1 ・二宮正士 2 ・鳥谷均 3 1 東京大学大学院農学生命科学研究科(UT) 2 農業・食品産業技術総合研究機構(NARO) 3 農業環境技術研究所(NIAES) 2007.11.20 データ統合・解析システムH19年度中間報告会 @東京大学 小柴ホール 2 ジャストインタイム農業をめざして 農業では工業的な生産はできないのか? ジャストインタイム生産システム(Just In Time:JIT経済効率を高めるための技術体系(生産技術) トヨタ自動車の生産方式(カンバン方式) 必要な物を、必要な時に、必要なだけ適切に生産 DIASによるジャストインタイム農業システム 農業における新しい生産システム 生産性・安全性・収益性に留意した農作物生産方式 地上観測・気象予測・作物栽培データベースの活用 GSBUAで農業現場の問題を解決 野菜の産地破棄を軽減 食料への農薬混入を防止 食料自給率を向上 農地を効率的に利用等 価格維持のため産地廃棄 YOMIURI ONLINE より 畑の農薬散布作業 千葉県ホームページ より GSBUA: グローバル・スケール・ ボトムアップ・アプローチ 3 2. 2. 長期気象予測変動データ 長期気象予測変動データ MetBroker MetBroker インタフェースの開発 インタフェースの開発 9 9 月) 月) CMIP3AR4長期気象予測変動データMetBrokerインタフェースの開発 観測値と予報値の直接比較を全球にわたって経時的に検証可能になる 地上予報精度の地域性などの評価が可能になる 溝口 勝(農学生命科学研究科)・二宮正士(農業・食品産業技術総合研究機構)・鳥谷均(農業環境技術研究所) 安全な農作物生産管理技術とトレーサビリティシステムの開発 H19年度研究計画1. 1. コアシステムにある地上気象観測データ群をメッシュ気象値化 コアシステムにある地上気象観測データ群をメッシュ気象値化 9 9 月) 月) ・地上気象観測データ群をメッシュ気象値しコアシステムに投入 MetBrokerインタフェースを開発 生産現場における栽培可能性検証がグローバルスケールで可能となる 温暖化による栽培可能性への影響評価も可能となる 該当作物・品種の栽培可能性の検証を手軽に実行可能になる 3. 3. 全天日射量や炭酸ガス濃度モニタリング・評価機能の開発 全天日射量や炭酸ガス濃度モニタリング・評価機能の開発 11 11 月) 月) ・東北タイにおける広域土壌水分モニタリング・評価システムの拡張 ・全天日射量や炭酸ガス濃度モニタリング・評価機能等を追加 日射量や炭酸ガス濃度データをリアルタイム取得が可能となる 日射量や炭酸ガス濃度データのバリデーションサイトの運用基盤できる 4. 4. グローバルスケール・ボトムアップアプローチ農業生産モデルの開発 グローバルスケール・ボトムアップアプローチ農業生産モデルの開発 12 12 月) 月) ・栽培可能性検証モデル等を開発 ・多様な作物・品種の生育パラメータ推定を簡便化するツールを開発 全球レベルで精度よく適地適作予測が可能になる コアシステム コアシステム 長期気象予測 地上観測データ 地上観測データ GPV GPV 予報データ群 予報データ群 5. 5. 多国間農産物トレーサビリティシステム構築に関する予備調査 多国間農産物トレーサビリティシステム構築に関する予備調査 12 12 月) 月) ・輸入野菜の生育・加工の現場と流通過程をモニタリングする手法を検討 国民に安全な輸入農産物を提供するプロトタイプモデルの開発基盤ができる MetBroker MetBroker 100 0 cm200 250 150 50 MetBrokerインタフェース 喜連川研との連携 ほぼ完了 木本研との連携 進行中 12月に設置予定 進行中 12月に設置予定 4 1. 1. コアシステム全球気象観測データベースの コアシステム全球気象観測データベースの 利用環境 利用環境 構築 構築 フィールドサーバおよびMetBrokerによる画像を 含む地上気象観測データをコアシステムに構築 データベース生成ツールを開発中 フィールドサーバ画像データ解析ツール 平年値DBの生成ツール (全球2,2000点対応)

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Page 1: ジャストインタイム農業をめざして– ジャストインタイム生産システム(Just In Time:JIT) • 経済効率を高めるための技術体系(生産技術)

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安全な農作物生産管理技術とトレーサビリティシステムの開発

ーー GSBUAGSBUAできり拓くジャストインタイムできり拓くジャストインタイム農業農業 ーー

溝口勝1・二宮正士2・鳥谷均3

1 東京大学大学院農学生命科学研究科(UT)2 農業・食品産業技術総合研究機構(NARO)

3 農業環境技術研究所(NIAES)

2007.11.20

データ統合・解析システムH19年度中間報告会

@東京大学 小柴ホール

2

ジャストインタイム農業をめざして

• 農業では工業的な生産はできないのか?– ジャストインタイム生産システム(Just In Time:JIT)

• 経済効率を高めるための技術体系(生産技術)• トヨタ自動車の生産方式(カンバン方式)• 必要な物を、必要な時に、必要なだけ適切に生産

• DIASによるジャストインタイム農業システム– 農業における新しい生産システム– 生産性・安全性・収益性に留意した農作物生産方式– 地上観測・気象予測・作物栽培データベースの活用

• GSBUAで農業現場の問題を解決– 野菜の産地破棄を軽減– 食料への農薬混入を防止– 食料自給率を向上– 農地を効率的に利用等

価格維持のため産地廃棄YOMIURI ONLINE より

畑の農薬散布作業千葉県ホームページ より

GSBUA: グローバル・スケール・

ボトムアップ・アプローチ

3

2.2. 長期気象予測変動データ長期気象予測変動データMetBrokerMetBrokerインタフェースの開発インタフェースの開発

((99月)月)

・CMIP3/AR4長期気象予測変動データMetBrokerインタフェースの開発

→ 観測値と予報値の直接比較を全球にわたって経時的に検証可能になる

→ 地上予報精度の地域性などの評価が可能になる

溝口 勝(農学生命科学研究科)・二宮正士(農業・食品産業技術総合研究機構)・鳥谷均(農業環境技術研究所)

安全な農作物生産管理技術とトレーサビリティシステムの開発 (H19年度研究計画)

1.1. コアシステムにある地上気象観測データ群をメッシュ気象値化コアシステムにある地上気象観測データ群をメッシュ気象値化((99月)月)

・地上気象観測データ群をメッシュ気象値しコアシステムに投入・MetBrokerインタフェースを開発

→ 生産現場における栽培可能性検証がグローバルスケールで可能となる

→ 温暖化による栽培可能性への影響評価も可能となる

→ 該当作物・品種の栽培可能性の検証を手軽に実行可能になる

3.3. 全天日射量や炭酸ガス濃度モニタリング・評価機能の開発全天日射量や炭酸ガス濃度モニタリング・評価機能の開発

((1111月)月)

・東北タイにおける広域土壌水分モニタリング・評価システムの拡張

・全天日射量や炭酸ガス濃度モニタリング・評価機能等を追加

→ 日射量や炭酸ガス濃度データをリアルタイム取得が可能となる

→ 日射量や炭酸ガス濃度データのバリデーションサイトの運用基盤できる

4.4. グローバルスケール・ボトムアップアプローチ農業生産モデルの開発グローバルスケール・ボトムアップアプローチ農業生産モデルの開発((1212月)月)

・栽培可能性検証モデル等を開発・多様な作物・品種の生育パラメータ推定を簡便化するツールを開発

→ 全球レベルで精度よく適地適作予測が可能になる

コアシステムコアシステム

長期気象予測

地上観測データ地上観測データ群群

GPVGPV予報データ群予報データ群

5.5. 多国間農産物トレーサビリティシステム構築に関する予備調査多国間農産物トレーサビリティシステム構築に関する予備調査((1212月)月)

・輸入野菜の生育・加工の現場と流通過程をモニタリングする手法を検討→ 国民に安全な輸入農産物を提供するプロトタイプモデルの開発基盤ができる

MetBrokerMetBroker

1000 (cm)200 25015050 MetBrokerインタフェース

喜連川研との連携ほぼ完了

木本研との連携進行中

12月に設置予定

進行中

12月に設置予定

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1.1. コアシステム全球気象観測データベースのコアシステム全球気象観測データベースの利用環境利用環境をを構築構築

• フィールドサーバおよびMetBrokerによる画像を含む地上気象観測データをコアシステムに構築

• データベース生成ツールを開発中– フィールドサーバ画像データ解析ツール– 平年値DBの生成ツール (全球2,2000点対応)

Page 2: ジャストインタイム農業をめざして– ジャストインタイム生産システム(Just In Time:JIT) • 経済効率を高めるための技術体系(生産技術)

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コアシステムに構築された

Field Serverのシーン数及び総容量サイトID 設置場所 期間開始 期間終了 シーン数 容量(KB)azuma 茨城県つくば市吾妻4丁目 200501 現在 374,350 14,825,524CAAS 国CAAS温室 200307 200411 81,257 3,039,800Chiba 千葉県農総研 ナシ園 200407 現在 309,612 17,498,040China 中国 200504 200611 363,609 15,244,696Florida フロリダ大,USA 200505 現在 1,705,630 75,286,612Hokuriku 北陸研究センター,新潟 200504 200610 244,817 11,461,292Ibaraki_U 茨城大 200411 200510 367,594 24,577,696Ichikawa 千葉県市川市 200604 現在 15,009 887,240Kona ハワイ・コナ UCC農園 200212 200409 275,664 41,733,060kona ハワイ・コナ UCC農園 200601 現在 915,488 34,107,352Marudori 和歌山県まるどりみかん園 200507 200701 107,638 5,081,076NARC 中央農研圃場 200301 200701 6,895,151 810,890,420Obuse 小布施、長野 200605 現在 401,392 17,207,644pc0001 静岡県三ケ日町 200409 200603 133,585 8,576,480pc0006 静岡県三ケ日町 200511 現在 15,741 1,046,656sanofarm 福島佐野農園桃樹 200305 200601 231,771 250,009,900Tsumagoi 群馬県農業技術センター 200701 現在 64,649 1,964,980WeNARC 近中四農研気象観測エリア 200511 現在 488,917 20,005,140Yawara 谷和原水田圃場 200407 200607 247,611 9,962,484yawara 谷和原、中央農研 200607 200609 59,728 4,990,552

合計 13,299,213 1,368,396,644

2007年3月現在

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開発中のデータベース生成ツールの一例

FieldServer画像からのキャベツの被覆率算出

• 場所:群馬県嬬恋村のキャベツ畑– 30分ごとの観測値

• 被覆率算出には「大津の二値化」を使用– 算出には画像1シーンのみを使用し、他のデータは使用しない

– 第1段階として画像処理のベーシックな手法を適用

2006/06/30 2006/09/262006/08/17

データ:溝口研解析:喜連川研

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0作付け

収穫

キャベツ被覆率算出結果 (by 喜連川研)

画像算出被覆率の変動幅がキャベツの生育と関係してい

るのかも知れない!

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2.2. 長期気象予測変動データ長期気象予測変動データMetBrokerMetBrokerインタインタフェースの開発フェースの開発

• CMIP3/AR4長期気象予測変動データMetBrokerインタフェースの開発(進行中)

観測データ 予報データ

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3.3.全天日射量や炭酸ガス濃度モニタリング・全天日射量や炭酸ガス濃度モニタリング・評価機能の開発評価機能の開発

• 東北タイにおける広域土壌水分モニタリング(12月設置予定)

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DATE (2007)

VW

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Acc

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VWC-4cm

VWC-8cm

VWC-16cm

VWC-32cm

Precipitation

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今年度の地上土壌水分データを衛星データと照合中(小池研と連携)

全天日射量や炭酸ガス濃度モニタリング・評価機能等を追加

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4.4.グローバルスケール・ボトムアップアプローチグローバルスケール・ボトムアップアプローチ((GSBUA)GSBUA)農業生産モデルの開発農業生産モデルの開発

• 栽培可能性(水稲適地適作)検証ツール

– 全球の好きな地点で,任意の水稲品種の栽培可能性を検証

– 任意の水稲品種の栽培可能性をマップ表示

• 東大(溝口研・木本研)・農研機構・農環研の連携による共同開発

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開発の基本コンセプト

• 異なる気象データの時間軸上での統合システム– 気象観測値(アメダス,WMO等)– GPV(数日先まで)

– 平年値(数日先以降)– 長期シナリオ予測

• データのグリッド化• 生育予測モデルの高精度化・拡張

– 多数の品種パラメータの生成と高精度化– 二毛作,三毛作への対応– 水条件の付加– 小麦等への拡張

• 利用者インタフェース

緑:開発中赤:開発予定

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気象データの水平統合

観測値 短期予報

平年値

ジャストインタイム播種防除施肥収穫出荷

平年予測適作可能性

生育期間

将来予測影響評価温暖化時の作付図

長期予報

平年

Today

– 時間経過に対して重ね合わせる

– 同じ作物プログラムが異なる気象条件下でそのまま使える

Page 4: ジャストインタイム農業をめざして– ジャストインタイム生産システム(Just In Time:JIT) • 経済効率を高めるための技術体系(生産技術)

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GSBUAの一例

水稲適地適作検証ツール

• Google Map上で位置を指定

• 最寄の気象データ観測地点も表示

他の作物にも拡張可能・小麦・大豆

・トウモロコシ等

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温暖化時の生育にも対応可能

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品種を入力

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位置を指定

Page 5: ジャストインタイム農業をめざして– ジャストインタイム生産システム(Just In Time:JIT) • 経済効率を高めるための技術体系(生産技術)

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近くの気象観測データを使って補間

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登熟

出穂

気温+日長

DVI(DeVelopmental Index 発育指数)移植日=0,出穂期=1

生育予測結果の表示

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寒い地域を指定してみると・・・

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生育せず

寒くて生育しないことが判明

Page 6: ジャストインタイム農業をめざして– ジャストインタイム生産システム(Just In Time:JIT) • 経済効率を高めるための技術体系(生産技術)

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タイでコシヒカリは作れるか?

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成長が速い!土浦より1ヶ月早い収穫

同じ方式で全球レベルで栽培可能性を判定できる!(ただし、現時点では十分な水があるという条件付)

水利用可能性とのリンクが必要

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5.5.多国間農産物トレーサビリティシステム構築多国間農産物トレーサビリティシステム構築に関する予備調査に関する予備調査

• 輸入野菜の生育・加工の現場と流通過程をモニタリングする手法の検討

→ 国民に安全な輸入農産物を提供するプロトタイプモデル開発基盤

• タイのホウレンソウ栽培現場をモニタリング

• 12月2日現地予備視察• 12月20日にフィールドサーバ設置

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DIAS農の将来展望

• GSBUAによる農業創出のための情報基盤

– 個人レベルの農家が自ら意志決定• 農業現場に直結した適地適作や農薬の適正散布等

• グローバルスケールでの適地適作、最適化分業等

» GSBUA:グローバル・スケール・ボトムアップ・アプローチ

• ジャストインタイム農業をめざしたツール開発基盤

– 生産性・安全性・収益性に留意した新しい日本型農作物生産方式