ハスカップの自生地...-1-ハスカップの自生地...

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-1- ハスカップの自生地 ハスカップは、一般的には和名が「クロミノウグイスカグラ」とさ れていますが、実際にはクロミノウグイスカグラとケヨノミの総称で す。(どちらもスイカズラ科の低木です。) その自生地は、本州中部の高山帯から北海道、さらにサハリン、シ ベリアなどです。 北海道での自生地は、2つのタイプに大別され、ひとつは、低地の 湿地とその周辺で、勇払原野、釧路湿原、霧多布湿原、別海町周辺、 大樹町など、もうひとつは、高山から亜高山にかけてで、大雪山、知 床などの高層湿原周辺から美幌峠などの石礫地まで種々の環境の中で みられます。 図1 北海道におけるクロミノウグイスカグラ・ケヨノミの分布(道立林試)

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Page 1: ハスカップの自生地...-1-ハスカップの自生地 ハスカップは、一般的には和名が「クロミノウグイスカグラ」とさ れていますが、実際にはクロミノウグイスカグラとケヨノミの総称で

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ハスカップの自生地

ハスカップは、一般的には和名が「クロミノウグイスカグラ」とさ

れていますが、実際にはクロミノウグイスカグラとケヨノミの総称で

す。(どちらもスイカズラ科の低木です。)

その自生地は、本州中部の高山帯から北海道、さらにサハリン、シ

ベリアなどです。

北海道での自生地は、2つのタイプに大別され、ひとつは、低地の

湿地とその周辺で、勇払原野、釧路湿原、霧多布湿原、別海町周辺、

大樹町など、もうひとつは、高山から亜高山にかけてで、大雪山、知

床などの高層湿原周辺から美幌峠などの石礫地まで種々の環境の中で

みられます。

図1 北海道におけるクロミノウグイスカグラ・ケヨノミの分布(道立林試)

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ハスカップの生産状況

農業としてのハスカップ栽培面積は、昭和55年に13 haでしたが、

10年後の平成2年には、167 haに達しました。しかし、生産量の

急増によって需要と供給のバランスが崩れ、栽培熱が冷め、平成3年

の169 haをピークに栽培面積が減少し、平成15年には、ピーク時

の半分以下になってしまいました。最近では、ハスカップの機能性が

注目され始めてきており、胆振管内では、増産に向けた取り組みを始

めた農協もあります。

ハスカップ栽培面積と生産量の推移(北海道)

市町村別栽培面積割合(%)・H17

美唄市17%

厚真町13%

上富良野町10%

新得町9%

千歳市23% その他

28%

市町村名 栽培面積(ha) 生産量(t) 千歳市 19.6 20.0 美唄市 14.3 39.5 厚真町 11.0 16.0 上富良野町 8.2 6.4 新得町 8.0 3.6 その他 23.7 34.8 合計 84.8 120.3市町村別栽培面積と生産量・H17

0

50

100

150

200

250

58 59 60 61 62 63 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17

0

50

100

150

200

250栽培面積

生産量

tha

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ハスカップの生態的な特性

高さ1~2mの落葉低木で、樹冠を形成せず、多数の枝を地際から発

生させます。葉は対生し、長さ3~8cm、幅1.5~3.0cmで、先はあま

り尖っていません。葉縁にぎざぎざはなく、葉柄はごく短くて、若葉

は褐色を帯びることが多いです。新梢や葉の毛じは少ないか、または

ほとんどありません。枝は褐色ですが、古くなると灰色味を帯び、樹

皮が薄くはがれるようになります。

開花は、5月中旬からで、新梢の伸長につれて開花していくため、

6月上旬まで続きます。短い果柄の先に2花冠づつ着生しますが、2

個の子房が合体して一つの果実を形成します。

スイカズラ科の花の特性で花言葉「愛の契り」

と云われている由縁です。

着花

節位

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ハスカップ果実の特徴

果実は、開花後 30日程度で着色を始め、その後1週間程度で成熟し、

青黒色になります。果実の形は、円形、長円形、円筒形、銚子形など

変異に富んでいます。

ハスカップの形状(渡辺原図)

果実の大きさは、長さ 1.0~ 1.5cm、1果重は 0.5~ 0.8gのものが多

いのですが、長さが2 cm、1果重が1 gを越える系統が選抜されてい

ます。

果実は、多肉で汁液に富み、短楕円形の種子を5~25粒含みます。種

子は、千粒重が1.0g程度で小さく、ジャムなどでは、あまり気になり

ません。

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ハスカップ果実の成分比較

カルシウム(Ca)は、ブドウの6倍、リンゴの 13 倍。鉄(Fe)は、ブ

ドウの3倍、ミカンの6倍とトップクラスです。ビタミンC含量も、

レモンやいちごには及ばないのですが非常に多く含まれています。

樹 種 名 ビタミン (mg) 無機質 (mg)A B1 B2 E K C Ca Fe K

ハスカップ 70 0.02 0.02 1.1 0 44 38 0.6 190ブルーベリー 31 0.03 0.03 1.7 0 9 8 0.2 70アロニア 168 - - 1.4 24 14 32 0.9 218プルーン 250 0.03 0.03 1.3 0 4 6 0.2 220ブドウ 3 0.01 0.01 0.3 0 4 6 0.2 130リンゴ 3 0.01 0.01 0.2 0 3 3 0.1 110温州みかん 65 0.1 0.04 0.4 0 35 13 0.1 140

(注1)ビタミンAは、レチノール当量を記入。

(注2)ビタミンEは、トコフェロールαを記入。

その他、ハスカップ果実には、ポリフェノール(老化の原因と言わ

れる活性化酸素を除去する働きがある)が多く含まれており、無機質

(ミネラル)も豊富で、古くから「貧血によく効く」とか「不老長寿

の果実」とわれてきたことが科学的にも明らかにされつつあります。

100g当たりのビタミンC含量

4

2

4

14

35

50

62

9

44

0 20 40 60 80

いちご

レモン

温州みかん

リンゴ

ブドウ

プルーン

アロニア

ブルーベリー

ハスカップ

mg

100g当たりのカルシウム含量

17

3

6

6

32

8

38

0 10 20 30 40

温州みかん

リンゴ

ブドウ

プルーン

アロニア

ブルーベリー

ハスカップ

mg