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オノマトペ再考 テクノロジーと3Cの観点から日本語教育を考える Shigeru Osuka Seton Hall University 24th Annual SEATJ Conference Wake Forest University Saturday, March 21, 2009 Onomatopoeia Reconsidered: Examining Japanese language education with technology and 3C

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オノマトペ再考テクノロジーと3Cの観点から日本語教育を考える

Shigeru OsukaSeton Hall University

24th Annual SEATJ ConferenceWake Forest University

Saturday, March 21, 2009

Onomatopoeia Reconsidered:Examining Japanese language education

with technology and 3C

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擬態語・擬音語・擬声語

擬態語 視覚・触覚など聴覚以外の感覚印象をことばで表現した語「にやにや」「ふらふら」「ゆったり」の類(p. 650)

擬音語 実際の音をまねて言葉とした語「さらさら」「ざあざあ」「わんわん」など(p. 625)

擬声語 擬音語に同じ。人・動物の声をまねた語「きゃあきゃあ」「わんわん」の類

(p. 647)

『広辞苑』より

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オノマトペ辞典

1.浅野鶴子編『擬音語・擬態語辞典』角川書店(1978)

2.尾野秀一編『日英擬音・擬態語活用辞典』北星堂書店(1984)

3.阿刀田稔子・星野和子編『擬音語・擬態語使い方辞典』創拓社出版(1993)

4.飛田良文・浅田秀子『現代擬音語・擬態語用法辞典』東京堂出版(2002)

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日本語教科書と国語教科書

日本語教科書と国語教科書の語彙の比較し

日本語教科書に扱われていない単語を確認

日本語教科書

『なかま1-2』『ようこそ1-2』『げんき1-2』『JSL1-3』合計9冊

国語教科書

『1上 かざぐるま』 、 『 1下 ともだち』 、 『 2上たんぽぽ』、 『 2下 赤とんぼ』 、 『 3上 わかば』 、 『 3下 あおぞら』(光村図書)合計6冊

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日本語教科書と国語教科書の語彙比較

• 日本語教科書に載っていない国語教科書の385語 Count Percentage

名詞 243 63.12%

動詞 51 13.25%

複合動詞 32 8.31%

副詞 24 6.23%

オノマトペ 24 6.23%

形容詞 8 2.2%

形容動詞 2 0.5%

連語 1 0.25%

385 100%

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他の調査からA. 『みんなの日本語初級1・2 』

総語彙数 2000語

B. 『新文化初級日本語1・2 』

総語彙数 1900語

C. 『日本語初歩』

総語彙数 1400語

D. 『 Japanese for Busy People I・2・3 』

総語彙数 2400語はっきり・ゆっくり・(ちょっと・もっと・ちょうど)の5語だけ

平根由香里・鈴木理子・阪本史代・神谷道夫(2001)より

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国語教科書語彙(1)

a) 名詞 (243語 63.12%) 木、くわ、ぶな、など 植物、ごま、だいこん、なす、など 昆虫、てんとう虫、かぶとむし、かまきり、せみ、まつむし、など 鳥、きつつき、あひる、からす、おうむ、すずめ、はちどり、ふくろう、など 動物、きつね、いのしし、しまうま、かもしか、ねずみ、ぶた、やぎ、など 魚、あじ、さば、たい、くらげ、など 物、はしご、ひも、ふえ、ふた、ほうき、まくら、まな板、やかん、など 時間、ゆうひ、よいのくち、など 日常生活語、しんこきゅう、ごうれい、あくび、ためいき、はく手、など 季節感、わかば、こいのぼり、など 複合名詞、あやとり、いすとり、くりひろい、かけあし、うたごえ、など 話し言葉、はっぱ、しっぽ、てっぺん、ねっこ、はらっぱ、など

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国語教科書語彙(2)

b) 動詞 (51語 13.25%)

• くわえる、やぶれる、まねる、どける、ふんばる、ゆれる、しぼむ、ちらす、おさめる、さからう、うずまる、あらす、さえぎる、みだれる、など

c) 複合動詞 (32語8.1%)• ふきとばす、だきあう、みとれる、かけよる、はねのける、などd) 副詞 (24語 6.23%)• ふりふり、うきうき、ころころ、しゅんと、ぐったり、ぼんやり、などe) オノマトペ (24語 6.23%)• ミーンミーン、キンコンカンコン、キャー、ニャーオ、コケコッコー、などf) 形容詞 (8語 2.2%)• けたたましい、まずしい、するどい、よわよわしい、でかい、などh) 連語 (1語 0.25%)• たまらない

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e) オノマトペ (24語 6.23%)

国語の教科書に載っている擬態語には小学生低学

年の為か、語呂を繰り返し表現する語彙が多かった。例えば、うきうき、ぐんぐん、ころころ、こわごわ、くるりくるり、どんどん、ふりふり、など

擬声語として、ミーンミーン、キンコンカンコン、

キャー、ニャーオ、コケコッコー、など、良く耳にする語彙が多かった。

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日本語教科書と国語教科書の対象者

• 日本語教科書の対象者

学習者は青年・成人で、日常生活に必要な語彙から政治・経済・医療などの分野まで

• 国語教科書の対象者

学習者は小学生で、まだ認知力が十分では

なく世界観に限りがあるので、自然や日常生活を扱っている。

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日本語教科書と国語教科書の目的

日本語教科書の目的

• 限られた学習時間の中で「聞く・話す・読む・書く」の四技能を身につけ、日本語でコミュケーションが出来る

国語教科書の目的

• 共通体験を通して日本人としてのアイデンティティー形成。

• 日本語でコミュニュケーションが出来る。

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日本語の特徴

1. Word Order2. Topic3. Ellipsis4. Personal Pronouns5. Passive6. Politeness and Formality7. Sentence –final particles8. Sound Symbolisms-giseigo and gitaigo9. Viewpoint

Makino and Tsutsui, ed. A Dictionary of Basic Japanese Grammar, Tokyo: Japan Times, 1986.

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8. Sound Symbolisms (1)

giseigo and gitaigo

(a) Voiceless and Voiced Consonant

きらきらーぎらぎら (shine) sparklingly - dazzlingly

ころころーごろごろ (small object) – (large object) rolls

ぽたぽたーぼたぼた (small amount of liquid) – (large amount of liquid) drips

(b) Velar Consonants – k and g

くっきり(と見える) visible Cleary

きっぱり(と別れる) separate from people once and for all

がらっ(と変わる)completely change

ぽっくり(と死ぬ) die suddenly

(c) Dental Fricative Consonant – s

さっ(と立ち上がる) stand up quickly

するする(と滑る)slide smoothly

しとしと(と降る) it rain/snow quietly

しんみり(と話す) talk quietly and intimately

しょんぼり(とする) be despondent

こそこそ(と逃げる) escape secretly

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8. Sound Symbolisms (2)

giseigo and gitaigo (D) Liquid Consonant – r

すらっ(としている) figure is slimすらすら(と答える) answer with great easyつるつる(している) be slippery

(E) Nasal Consonants – m and n

むちむち(している) be plumpねちねち(している) be sticky

(F) Voiceless Bilabial Plosive - p

ぴん(とくる) come to me in a flashぺらぺら(としゃべる)gibber, speak fluentlyぴんぴん(している) be peppy

(G) Semi vowel - y

よぼよぼ(になる) become senileよれよれ(になる) become worn out

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8. Sound Symbolisms (3)

giseigo and gitaigo (H) Back High Vowel – u

うきうき(する) be buoyantうっかり(する) be off guardうっとり(する) be enchanted

(I) Back Vowel – o

おどおど(している)be very nervousおたおた(する) don’t know what to do

(J) Front Vowel – e

めそめそ(泣く) sobへらへら(と笑う)laugh meaninglesslyへれべけ(になる)become dead drunk

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ACTFLの「全国学習基準」 5C

5C = 1996年にACTFLが外国語教育の基本概念

「全国学習基準」を提示

1.コミュニケーション(Communication)

2.文化 (culture)

3.連結 (Connections)

4.比較 (Comparisons)

5.コミュニティー (Communities)

3C = 1.文化 (culture)

2.連結 (Connections)

3.コミュニティー (Communities)

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オノマトペと3C文化 (culture)

日本人の物の見方・感じ方・考え方

オノマトペ表現の機能(日本的な柔らかさ、面白さ、易しさ)

連結 (Connections)

経験の無い表現方法との接触

新しい世界観(情緒)との接触

コミュニティー (Communities)

日本人のアイデンティティーとの繋がり

日本社会との繋がり

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漫画とオノマトペ

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オノマトペの学習時期(初級から)

1.早い時期から、基本的なオノマトペを導入しておくと、中・上級になって対応できる。

2.オノマトペを沢山含んでいる容易な昔話や物語を日本語教材に取り入れて、初級学習の時点から日本文学や文化を理解する基礎作りも大切。

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動物の鳴き声

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オノマトペの学習時期(中・上級から)

1.日本語の基本語彙の学習に掛かる負担が多いので、数も多く付随的な要素であるオノマトペを学習するのは大変。

2.初級レベルでは、基本語彙や文型を優先するべき。

3.オノマトペは感覚的な語彙であるために、微妙な二アンスまで、説明するのが大変。

4.オノマトペを用いなくても表現が可能。

5.中・上級レベルの教材に出てきた時に扱う。

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文化の定義

人間が自然に手を加えて形成してきた物心両面の成果。衣食住をはじめ技術・学問・芸術・道徳・宗教・政治など生活形成の様式と内容を含む。文明とほぼ同義に用いられることが多いが、西洋では人間の精神生活にかかわるものを文化と呼び、技術的ニュアンスが強い文明と区別する。(広辞苑p.2380)

学問・芸術・宗教・道徳など、主として精神生活から生み出されたもの。(大辞林p.2302)

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テクノロジーを使用したオノマトペ学習の試み

1.日本語辞書(日本語でケアナビ )http://nihongodecarenavi.jp/ja/index.html

2.動画(アメバ・ビジョン)

http://vision.ameba.jp/

3.ビデオ(Google Video)など

4.イメージ(Google Image)など

5.My Videoの作成

(教師・学習者のプロジェクト)

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おわりに

1.オノマトペは生きた日本語

2.3C(5C)によりオノマトペを再認識

3.テクノロジーを利用した説明が可能

4.日本語教師会などでの議論が必要

5.日本語教師会などで基本的なオノマトペ・リストの作成の必要性