ゲーテ・シラー往復書簡集の文体論的特性 - hitotsubashi...

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ゲーテ・シ (三) (1) ゲーテ・シラー往復讐簡集の文体論的特性(三) (1) 主題の継続 前稿において我々は一七九四年から一七九七年 スト・データに基づき、以下の諸点を確認した。 (i) 文章長はほぽ対数正規分布に従う。 (i) 文章長の分析は、作者判別には必ずしも有効で はない。また、その効果は分析の方法によってかなり異 なる。たとえば、ゲーテとシラーの文章長頻度分布につ いて一様性仮説をたて、カイニ乗検定を行っても、帰無 仮説は棄却されない。一方、両者の文章長平均について の、t検定や分散分析は有意となる。すなわち、対象が ある程度似通った分布を示すと、頻度分布によるカイニ (2) 乗一様性検定の検出力は効力を失い、むしろ平均値に関 するt検定や分散分析の方が有効に機能す 合、その分析過程を通じて観測される同一作 文章長のゆれから、その精神環境や人生局面の反 ることも可能である。 (一m) 不変化詞の判別分析への応用可能性。出現頻度 の高い不変化詞二十のうち、ゲ⊥ア、シラーそれぞれに 特徴的な四語(き胃彗g昌彗…α)を選び、一七九 四年から九六年のデータに基づく線形判別式を作成し判 別分析を行った。その結果、内部データ(二四標本群) については判別は完壁だったが、外部データ(九七年) については十三標本中二個の誤判別が生じた。 (■w) 同じく不変化詞二十を用いて主成分分析を試み たところ、九四年壬九七年のゲーテ、シラーそれぞれ四 413

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  • ゲーテ・シラー往復書簡集の文体論的特性

    (三)

    新  井

    皓  士

    (1) ゲーテ・シラー往復讐簡集の文体論的特性(三)

       (1)

    主題の継続

     前稿において我々は一七九四年から一七九七年のテキ

    スト・データに基づき、以下の諸点を確認した。

     (i) 文章長はほぽ対数正規分布に従う。

     (i) 文章長の分析は、作者判別には必ずしも有効で

    はない。また、その効果は分析の方法によってかなり異

    なる。たとえば、ゲーテとシラーの文章長頻度分布につ

    いて一様性仮説をたて、カイニ乗検定を行っても、帰無

    仮説は棄却されない。一方、両者の文章長平均について

    の、t検定や分散分析は有意となる。すなわち、対象が

    ある程度似通った分布を示すと、頻度分布によるカイニ

                  (2)

    乗一様性検定の検出力は効力を失い、むしろ平均値に関

    するt検定や分散分析の方が有効に機能する。後者の場

    合、その分析過程を通じて観測される同一作者における

    文章長のゆれから、その精神環境や人生局面の反映をみ

    ることも可能である。

     (一m) 不変化詞の判別分析への応用可能性。出現頻度

    の高い不変化詞二十のうち、ゲ⊥ア、シラーそれぞれに

    特徴的な四語(き胃彗g昌彗…α)を選び、一七九

    四年から九六年のデータに基づく線形判別式を作成し判

    別分析を行った。その結果、内部データ(二四標本群)

    については判別は完壁だったが、外部データ(九七年)

    については十三標本中二個の誤判別が生じた。

     (■w) 同じく不変化詞二十を用いて主成分分析を試み

    たところ、九四年壬九七年のゲーテ、シラーそれぞれ四

    413

  • 一橋論叢 第123巻 第3号 平成12年(2000年)3月号 (2〕

    個の年次別標本群、九六年、九七年の年度内分割小標本

    群のいずれに関しても、第一、第二主成分得点による布

    置図においてゲーテ標本群とシラー標本群の問に線引き

              (3)

    をすることが可能であった。

     今回は上のデータに更に一七九八年度のデータを加え、

    五年問を通して分析することにした。この五年問は直線

    距離にして約二十キロほど離れたワイマールとイェ■ナ

    に居住するゲーテとシラーが、平均するとほとんど週一

    往復のぺ-スで書簡を交わし、あるいは互いの芸術観を

    吐露し、あるいは作品推敲上の意見を交換し、あるいは

    友人知己の消息、フランス大革命後の変動極まりない欧

    州情勢のこと、その他四方山の情報を伝え合った時代で

    ある。視点を書簡と両者の間柄だけにしぼれば、二人が

    接近する直接のきっかけとなったシラー主宰の月刊誌

    『ホーレン』は、九五年一月より始まって九八年六月に

    遅れ馳せの前年分最終号が刊行されて終結、ゲーテが管

    轄するワイマール劇場は九八年夏に大改修されてシラー

    の『ヴァレンシュタィン』初演をこけら落としとする。

    そしてシラーは翌九九年十二月三日に遂にイェーナを去

    ってワイマールに移住している。すなわち、この五年間

    は大学町と公国首府の問を使いに托された両者の手紙が

                         (4)

    行き来する文字通り往復書簡の時代だったのである。話

                       (5)

    題や恩想の共通性、資質や境遇の対照性などが、この往

    復書簡の文体にどのように反映し、それはどのような手

    法を通じて文体統計論的分析が可能か、一テキストをあえ

    て数量データ化し、多変量解析などを応用して文体の差

    異を効果的に明示することがどの程度可能か、それがこ

    の実験的・探索的研究の目的であり、さしあたり対象を

    五年間で区切って中仕切りとする所以である。

    二 時系列でみる文章長分布

     ここでいう文の長さの測定原理や語の定義、そして底

    本のことなどは前稿でも述べたので繰り返さないことに

    する。表一は、一七九四年より一七九八年にわたるゲー

    テ・シラーの往復書簡を各年度毎に更に小分割し、機械

    的に番号をふって、文章の長さについてそれぞれの平均

    等を整理したものである。ただし最後の一行(トiタ

    ル)は元のデータすべてを合併した統合標本の平均や標

    準偏差を示しており、分割標本の平均を平均したもので

    414

  • (3) ゲーテ・ シラー往復書簡集の文体論的特性(三)

    ゲーテG1794095-1

    G95-2

    G95-3

    G95-4

    G96-1G9拮一2

    G96-3

    G96-4

    G9ト5G96-6G9一一1

    G9一一2

    C9フー3

    G9ト4G9ト5091-6

    C9ト7G98-1

    C98-2

    G96-3

    G98-4

    C98-5G9目一6

    G98一一

    to也1

    文数157

    150149

    150

    113

     98 回フ

     66134

    102

     84101

    131

    114

    147

    173142

    120180163

    124

    130

    137

    14

    20一

    表1

    平均(対教煽準偏差291925862.699

    2745

    2-9929102013314620242.038

    3202312830423.043

    326530832.99固

    303030263.155

    30093001

    2.832

    28202.91丁

    3233    2053

    06720.631

    0683063106840.665

    0652

    0フ440-5906560.575

    060600240651005105650.一34

    06100.649

    062606030.636

    062105330.551

    0659

    文章長データ

    ンラーS1794

    S05-1

    S95-2

    S95-3

    S95-4

    S95-5

    S95-6

    S96-1

    S96-2

    S96-3

    S96-4

    S96-5

    S96-6S9丁一1

    S97-2

    S9ト3S91-4S9一一5

    S9ト6S9固一1

    S98-2

    Sga-3

    S98-4

    S98-5

    S98-O

    Sga-7

    to㎏1

    文数305150151

    149

    151

    149

     09123

    13831291

    142

    136121

    1フ2

    219121

    129

    200166

    144110

    112

    90

    123

    306

    408一

    平均(対勧頓準偏差30682.日85

    2.753

    2.丁45

    26362.685

    203326002.650

    31002.871

    2TO029692.832

    29283.038

    30142.906

    29163.043

    30182.920

    2869290328362.日02

    2.085

    05390.634

    0.582

    0607

    06”O.619

    059706640033

    0田ηO.613

    0田5600550.665

    0.669

    0.658

    06620022

    0-010652

    0-640.698

    0.フ11

    0653

    0了420.135

    0.6フ3

    図1

    文章長平均の時系列変化

    3.5

    3■;1.ガ■

    ^曇25 一’ ■, 与

    哀 2)琢15 一 i

    序 105

    ■1■

    o]’i

    一 〇 〇ト o 1 o o卜 o F o岨F  1  ,  1  ,  ~ o’ “

    一七九四年一〉一七九八年

    表2 文章長の分散分析  1-94-179咀ゲーテ書簡文(25榎本群〕

    変聰要困平方和自由度不信分撒分触比群間 85889 四 3胴 8246群内 13111日53207 0434全体  1403.0〃 3232

     1194-1-98シラー書働文セ6棲本潮変聰妥因平方和自由度不信分倣分撒比群間 9川2 25 3棚 日Oη1幸内  1-58215  4060   0453

    全体 184908- 40冊

    ‡η94-179日ゲーテ・シラー書晒文合併{51榛本騨〕  変聰嚢因 平方和 自由度 不信分触 分散比   群間 185-19 50 3川  ”80   済内   3015,400   フ269   皿423

       全体 3261119 フ319

    415

  • ~f~3~~* ~~j~ 12 iF (2000 ~P) 3 ~~~~ (4)

    ~12-l ~~A* ~{~;(~) k: ;~ h ;f ~ ~ ~~~~~{~~~'--'-"+~~: (tf- ~ 1794-1798)

    ,Ft~tO 851~ fl,,1 I~P,

    SNF'IA~!~

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    ~O 4,~tt~El ~a,

    TS J~IR

    2 g538

    2 93Os

    2.9783 2 97, 2

    2 9957

    432 e509

    e9

    4 79

    400 B382 - 398

    ~~1'~ = 3232 OO

    .~ l,~'e~rl,~l.~~,e;?e~,"'~iP.~・,~~'e~,・,~ie・;・1r,bl~~,1,~ f.~,

    09498BUN

    ~]2-2 ~~A*i~{~;a) ~ ~ F ~ 7 A ~ E~~~~ +~~~ (~ ~~ - 1794-1798)

    IF,~~ti:a) g5N

    ~1,,E ~D

    51,~'jh~ J~

    ~~ti ~*1*

    t,~FII$ t,ht t~t: ,l~D

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    ~i~

    i2~,~ ・ 4085 OO

    .c l,~i~?~,1,~/;~r~'~~e~,e,~;~;~,"t;'~S~;,~"~f,bl~~j・i,~,1.~r

    Te ~R

    2 88S3

    2 B047

    2 s05g

    2_9035

    2 9957

    4s 1

    e7 1 4

    89

    4 74

    4O4 8473 -.45g

    S9498BUN

    41 6

  • (5) ゲーテ・シラー往復杳簡集の文体論的特性(三)

    はない。これは分割標本と全体の比較および後に述べる

    分散分析の為に必要でもあった。表一の下にある折れ線

    グラフは、上表にある平均値を時系列的に図示したもの

    であり、系列一がゲーテ、系列二がシラーである。ただ

    し、両者のデiタは時期的に必ずしも同一とは限らない

    ので、本来は別々のグラフにすべきであるが、スペース

    の節約もあって同一画面に表示してみた。とはいえ、九

    七年の後半あたりから二つの線がほとんど重なっており、

    またゲーテの方が概ね高い位置で推移していることも明

    らかであろう。図二・一は同じく合併したゲーテの統合

    標本によるヒストグラムと記述統計量であり、図二・二

    はシラーのそれである。中央値が共に九五%信頼区問か

    らわずかに外れていることは、はずれ値、すなわち極度

    ビ長い文が存在することを示している。箱ひげ図ではそ

    れが一層鮮明に示されるが、ここでは省略した。

     ニュース記事などの文章長にはあまり変動がなく平均

    がほぼ一定していることは前稿でもふれたが、書簡文で

    は期間を長くとるにつれ、平均に変化がみられるようだ。

    表二にその一部を示した分散分析にそれがあらわれてい

    る。下段のゲーテ・シラー合併標本群の分散比(F値)

    が大きいのは当然としても、ゲーテ、シラーのいずれも

    五年間をとおしてみると、平均にかなり変化があり、分

    散比は意外に大きく、文章長の平均は等しいとする仮説

    は棄却される。同一年度内のデータを分割した標本群を

    用いた分散分析でも棄却されることが多いが、分散比は

    これほど大きくならないようである。考えてみれば書簡

    では一定のテーマ意外に随時様々な話題や用件が挿入さ

    れるから、文章の長さにそれが如実に反映してもおかし

    くないのだが、特にゲーテの場合、口述筆記が主である

    ゆえ、おのずと文の長さも安定する、と予断を抱いてい

    たように思う。どの時期にとくに変化があるか、分割標

    本すべてについて多重比較をすることも考えられるが、

    表一やグラフからもある程度明らかであり、今回は断念

    した。なお、ゲーテ、シラーとも年次毎にまとめて五つ

    の標本群を作り、分散分析を行うと、分散比は更に大き

    くなり、特にゲーテの場合にそれが著しい。

     ニュiス文のみならず、ゲーテの短編物語『ノヴェ

    レ』のように、分散分析をおこなっても平均値が等しい

    とする仮説が棄却されない散文作品もあるところからす

    ると、様式的意識が平均化の方向に働くケースもあるよ

    7,1

    4

  • ~~~ ~ ~FB ~{~ ii~

    ~~ 123 ~~ ~i~3-~. ~r~: 12~f~ (2000LP) 3 ~~~ (6)

    ~l3-l

    fOO 1 50 2 oo 2 50 300

    3 75

    350 400 4_50

    s!~~,i~ = 65

    sP'~, = 3.08

    ~~]f~ = 698 oo

    ~l3-2

    4

    3

    2

    1

    o 1

    36

    71

    1 06

    141

    175

    21 1

    246

    281

    316

    351 421 491 561 631 386 456 526 596 665

    ~]3-3 38 36

    34

    32

    30

    t

    28

    26

    24

    22 1

    35

    69

    1 03

    137

    171

    205

    239

    273 341 409 477 545 613 307 375 443 5 1 1 579 647

    41 8

  • (7) if-~ -

    ~]4-l

    ~~? -~iz~~:~~=~~i~~o~C~#~i~1~~k ( )

    80

    ~l4-2

    ~!~~~~ = 67

    q:~g = 2.98

    ~~~~l~ = 677.00

    l/i) Id:p /,~L? /,%,p/J)i'~~,~a~?~l25, J'/J, J't2~, ~(?U' J"%, 1(? '~t2~,

    4

    3

    2

    1

    o

    I

    :

    l

    69

    ~]4-3 36

    1 37 205

    35 103 17f 239 273 341 409 477

    307 375 443 545 6 1 3

    5 1 1 579 647

    3.4

    32

    30

    2.8

    2.6

    24

    l!

    ~

    f 69 1 37 35 f 03

    20 5

    f 7 f 239

    273

    307

    341 409 477 375 443

    545 613 51 t 579 647

    41 9

  • 月号(2000年〕平成12年第3号123巻橋論叢

    馨套1灘婁彗姜11111灘11灘鍵鍵1鍵1111111111111

    顯,

    婁嚢爽葦姜姜§董彗彗套墓…姜董嚢嚢妻妻彗姜萎婁…嚢彗…暮;彗……§婁彗套彗…彗董姜婁萎……姜萎塞彗婁,

    呂塞;畠嵩2塞嘗言セ竃塁畠三畠豊呂岩2富セ巴呂呂=畠畠誼畠豊呂;=畠宝呂冒畠冒含昌窒三=呂豊彗彗署畠害

       顯,

    ○畠亭.  一畠害

    許…{  彗雪o

    書曇;蔓;;;彗………蔓婁婁鱗…婁;套婁…蔓蔓蔓婁…書……董蔓董……蔓……;婁……;;…盲;…蔓婁

    鰯§…蔓…;;;…;;…蔓;…;;;姜婁婁;鱗蔓;蔓……妄;;婁;;;;…;;……;………;;

    呂舶湘舳洲畠后呂雪呂舳冨蝸oo呂舶畠雷舳舳畠畠宕旨畠雪鮎雷眺畠蝸豊呂呂舳冨=

    一彗  ^室  ・雷  ”暗

    ‘雪  =一 〇昌  …

    冨E呂畠曽…筥呂=ヨ主昌畠雷呈ヨ畠皇崖ε宣室害害畠8窒畠曽害…雪轟ε霊畠星畠畠畠8畠畠畠曽里呂畠宣語畠

    ;蔓§;墓蔓喜…≡;;董量曇………曇……婁竃量量……;彗;……蔓姜;;;董;;………婁…竃;萎;蔓萎;

    …蔓蔓蔓婁蔓婁…§毫蔓蔓;曇婁蔓;;婁…;曇;婁蔓……竃蔓…;……;…蔓…蔓;…;;さ蔓§蔓蔓蔓;董≡

    董………董…蔓彗;彗…姜曇婁婁婁3畠三ミε富三§萎§姜……;曇…;……套婁…毫…;…蔓毫;§;;;ξ;

    呂筥昌昌昌雪置畠畠畠畠呂害害畠含畠雪昌;量害害雷告智:皇含=畠主霊昌昌昌=呂昌曽ヨ昌呂昌出詰雪=呂畠昌告

    ヨ皇畠雪畠竃畠台冒呂冨曽雪望巴畠宣言蓄害童害雪雪三宕嵩二畠8窒雪遣畠皇芒雪畠畠;畠畠畠豊畠=:畠曽畠畠

     董;螂ω

     蔓……

    ↓蛍轟N;庄灘懸溺(十醐鉄二一

     §……

    含告

     ;蔓

    畠畠

    ≡; ;穿

     =畠

     ;畠

     一畠

     冨呂

     ’:冒昌害畠昌萬害三筥望畠呂告ヨ…三冨…雷富量鶉畠昌害…;亀二畠害畠お昌;畠曽吉昌ヨ≡;畠窒全彗畠呂○

    一’呈

    冊舳告三舳雪鵡里;呂呂昌昌=舶畠珊昌;里宝舶二鮎宝舶船嘗塞紺畠鵡畠皇宕畠竃鵬

    洲舵舶洲湘嵩呂眺曽胴嘗室o里帥・富帥畠畠舳害=畠曽富駆挑塞♂三害8㍑ε富畠8

    岩ε

    豊ε

    告君冨崔呂宕雪告冨畠;塁;畠霊畠豊豊…;畠;志雪室畠雷曽畠昌量畠望暗富畠=畠昌呂昌宮呂害豊害畠ヨ富昌E畠害

    嘗畠害昌冒岩昌曙畠昌雪巴;;竈畠ヨ;言室雪富2畠宣三畠畠豊嵩召害雪畠畠畠E雪畠缶昌畠曽畠雷畠筥2晶呂昌三

    昌呂雪胃告;主=畠畠雪畠畠雷畠=霜皇畠畠雷胃冒若害畠島冨呂雷畠8二昔昌畠;;垣畠呈曽セ=室言呂昌ヨ亘畠呂

     …≡;

    呂曽

    暗ヨ

    =一阯

    一u^

    ○言

    ○咀o

    ;!〇

    冨一詰

    畠;

    畠』一〇

    一’昌

    呂呂

    昌-^

    冒雷

    一一竈

    ;o凹

    一一^一

    =呂

    =言

    =二

    ‘〇一

    嵩o〇

    一三

    一宝

    言岩

    皿oo

    畠〇一

    嵩一”

    一山-

    一}血o

    =岩

    回}o

    〇三

    a呂

    嵩山o

    忘畠

    o-o

    =oo

    =〇一

    ;o^

    岩^o

    二山舳

    咀嵩

    一’一〇

    ;一’

    冒;

    =^o

    吉畠

    二〇一

    回一^

    冨山o

    旨o〇

    一一昌

    套;套姜套葦葦…套姜套姜姜姜婁…毒;彗蔓蔓薯;:彗姜姜…姜姜;姜姜姜婁套;董妻;葦婁董葦姜…;婁…套姜

    董婁毫;;ξ;彗姜…墓…姜墓…婁…;童蔓婁……蔓…曇套;童…曇;婁…;董婁彗芸婁ξ;婁董;…;蔓;;蔓

    .豊

    墓;;婁婁誰董…蔓…婁…蔓…婁;蔓;墓婁婁……;毫蔓姜蔓……竃蔓董婁蔓墓;;§董蔓童毒董…姜…;;婁

    瞠曽

    嘗告

     ………

     彗…

    420

  • (9) if-~ (Ei)

    EE~~t}b~~f ~]5 3

    Goethe/Schiller ~Pr~~7 7 4 j~ (1794-1798)

    ~~

    3~ ;s

    2

    1

    D

    -1

    -2

    -3

    s94 I S97

    I S95

    I S97

    S9B

    G94 o

    o e95

    G97 B a

    G9B

    G96

    -4 -2 o

    2

    ~1 3~:Es'~~

    ~!6 Goethe/Schiller ~~~1j 7 7 4 l~ (25 + 26) 3

    2

    1

    o

    -1

    -2

    -3

    -4

    ~$ G1794 G9~1 G95-2 G95'3 G95~ G9e-1 G9e-2 G96*3 G9e~ G9e-5 G9e~ G97-1 G97-2 G97-3 G97~ G97-5 G97~ G97-7 G98- 1

    G98-2 G98-3 G98~ G9~5 G98~; G98-7

    -6 -4

    ~~4

    - o 718

    1 997 o oe2 -3seO - 1 634 - o 413

    - 3 242

    - 2 094

    - 1 969 - 3 901

    - o 602

    - 1 248

    - o 903

    -13e4 - 1 490

    - I e49

    - 1 476

    - I oe9

    - o 507

    - o 477

    - 2 742

    - 1 983 - I .531

    - 1 359

    - 2 125

    o 499 o l99

    - o 596

    - o 415

    - o 2gl

    - o 355 - 2 126

    o 928 o 422

    - 1 58e

    1 719 - o 618

    1 691

    - 2 145

    o 730 1 734 1 518 1 693 1 476 2 032

    - 1 339

    2 400 o 694

    - I i57

    - o i49

    -2 o

    ~~#

    sl794 S95-1 s95-2 S 95*3

    s95~ s9~5 s 9s~S

    s9e-1 s96-2 S 96-3

    S9e~ S9e-5 s96~; S97-1 s97-2 S97-3 s97~ S97-5 S97~; S98-1 S98-2 S98-3 S98~ S98-5

    s98~ s 98-7

    2

    4

    ~-~~~t~~ ~::~E~~~

    2 607 2 650 2.471 1 .633

    1 853 2 710 2 249 1_401

    i 585 2 179 O 863 o 923 3 058 O 392 1 218 1 238 3 320 O 204 1 290 O 654 O 877 2 174 2 OIO O 225 O 439 O 561

    O 171

    1 026 O 877

    - O 537

    - 2 695

    - 1 291

    - I OO1

    - 3 870

    - O 616

    1546 - 1 371

    - 3 Oa5

    - O 147

    - 1 172

    O 42B O S21

    1 539 - O 594

    1 109 2 775 2 474

    - 1 281

    * 1 445

    O 407 - i 3S8 O. ~ 20

    421

  • 一橋論叢 第123巻第3号 平成12年(2000年)3月号 (1O)

    うなので、今後なお検討する必要がある。一七九七年後

    半に限ってみると、ゲーテに関して八月頃の文章が目立

    ウて長く、そのため半年分の五標本で分散分析を行うと

    F検定で棄却となるが、同時期のシラーでは棄却とはな

    らないこと、これが恐らく未だ内縁の妻クリスティァ

    (6)

    ーネと息子アウグストを初めて伴って故郷フランクフル

    トに旅し母と四年ぶりの(そして最後の)会見をするゲ

    ーテの心境をある程度反映しているのではないか、とい

    う憶測を述べたが、同じデータを使って今回は時系列的

    表示を試みてみた。

     図三・一が一七九七年後半におけるゲーテ書簡文の長

    さ(対数)をヒストグラムであらわしたもので、図四.

    一は同時期のシラー書簡文を同様にグラフにしたもの、

    両者をくらべると、どちらかといえばゲーテの方が正規

    分布に近いすっきりした形であるといえよう。図三.二

    は個々の文章長を書かれた順に時系列で表示したもので

    あり、図三・三は同じデータの二十項移動平均をとって

    グラフにしたものであ、る。シラiについても同様に、図

    四・二が元のデータ、四・三が二十項移動平均である。

    移動平均の折れ線の動きだけみると、一見シラーの方が

    変動が激しいようにもみえるが、目盛りの幅が少し違う

    ので、実際はゲーテ方の、横軸目盛り二百番前後が高い

    山の塊をなしている。また帯状をなす元のデータのグラ

    フでは、一番濃い部分がシラー方ではほぽ安定推移して

    いるのに対し、ゲ⊥ア方では上下に波打つ感がある。こ

    のような視覚的印象は分散分析の結果とも照応するよう

    に思われる。九四年から九八年まで平均値の全データを

    同様に表示してみることも念頭にうかんだが、項目数が

    多すぎて簡単にはいかないので今回はあえて試みなか

    つj一

     ナ

    三 不変化詞データに基づく主成分分析の応用

     表三は、文章長の場合と同じく五年分の分割標本(ゲ

                        (8〕

    -テニ五標本、シラ⊥一六標本)に基づく不変化詞二十

    語の頻度分布表であり、頻度は千語当りの出現頻度(千

    分率)に換算してある。これとは別に比較のため年次毎

    に集計した頻度分布表も用意した。意図するところは、

    主成分得点による布置図を描いて、各標本および変数の

    位置関係を視覚的にとらえるところにある。その手順は、

    まず不変化詞二十を多変量とみなして、相関係数行列

    422

  • (標本データを標準化したZスコアの共分散行列)を作

    成し、その固有値(ヨ①q彗毒;鶉)と固有ヴェクトル

    (里σq①…①90易)を算出する。次に、Zスコア行列と固

    有ヴェクトルとの積を順次求め、これを各標本の主成分

    得点とする。その結果得られた布置図が、図五(ゲーテ、

    シラーそれぞれ五個の年次データ標本による布置図)、

    および図六(ゲーテニ五、シラ⊥ニハの分割データ標本

    による布置図)である。年次標本の布置図では、ゲーテ

    (正)とシラー(負)が裁然とわかれてグルiプをなす

    のに対し、五一個の分割標本の布置図では、両者の領域

    (11) ゲーテ・シラー往復書簡集の文体論的特性(三〕

    ~~17

    1.0

    Goethe/Schiller ~P7~~7 7 4 )~ (1794-1798)

    出old

    und

    o㎞;

    出6

    而^[o o

    ho!

    →{

    一10

    ‘15

    8 Goethe/Schiller ~~~J*] 7 7 4 )1- (1794-1798)

    dnuo

      回 ood舳!o=■

    ^比1

    oh』■

    51-10㎝一5o1■

    図10 5

    00

    一10

    51■

    05330249

    -1,189

    -0650-O.871

    -O.310

    0,199

    -O.846

    -0217-0.929

    一〇.109

    -O.810

    01960,433

     -O.9

    0.0-3

    0.O固3

    0533-0399-O.8洲

    1 340

    O 288

    O 260 - I . I 03

    ~) 004 O 606

    ~.997 -1 118 O 526

    - I .225

    ~~5 -O 052 0.093

    ~.976 ~,. 1 70

    -O 226 0.021

    O 208

    -0.462 -1 041

    0.31 2

    (~] 8 (,)'-'T'- ~r)

    nlcht

    noch

    nun

    recht

    schon

    so und

    wenn wohl

    即s曲旧箒{町…

    {d則㎏由由由・ooHn

    324

  • 一橋論叢 第123巻 第3号 平成12年(2000年)3月号 (12)

    がかなり接近しており、G九五二一とS九七・五などは

    ほとんど並び合っているから、通常の分析なら一グルー

    プをなすとみなされるだろう。しかし、この両者の間に

    線引きをすれぱ、左側(負の領域)にゲーテの分割標本

    群、右側(正の領域)にシラーの分割標本群がある。こ

    れは第一、第二主成分による布置図であるが、これに対

    応する固有値の累積寄与率は三〇%程度であうて、それ

    にもかかわらず、このように弁別可能な結果を得られた

    ことが重要であろう。この主成分の解釈はむずかしいが、

    あえて言えば不変化詞の使い方にゲーテとシラーの文体

    気質が徴妙にあらわれると言えようか。たとえば、「し

    かし」の意味合いで、シラーは豊害を多用し、ゲーテ

    はoo争にそのニュアンスを託す、というように。いず

    れにせよ、そもそも不変化詞を分析手段に用いるのは、

    形態論上の簡明さばかりでなく、無意識に使用しがちな

    語という前提があるゆえ、その現れ方もまた常に明快と

    はいえない。図六には個々の標本を表示できないので、

                  ^9)

    表四として、主成分得点表を掲げた。

     図七と図八は、変数の相関行列と固有ヴェクトルの積

    から得られた各変数の得点を図示したもので、図七は年

    次標本、図八は分割標本に基づいている。各変数名を図

    中にすべて挿入するのは難しいので、図八について各変

    数の得点を表五として付加した。図七と図八は一見する

    と全く異なるようにみえるが、実際は一八O度回転する

    とかなり似通った配置になる。変数3とωoす昌の位置

    だけが両図で多少異なる程度であり、図八でいえば、ゲ

    ーテの使用頻度の高い語が横軸の負の方(左側)に、シ

    ラーの使用頻度の高い語が正の領域に(右側)集まって

    いる。シラー方の最右翼はき雪、ゲーテ方の目取左翼に

    は目仁コと昌彗が近接している。

    四 判別分析

     主成分分析布置図(図六)では、分割標本G九酉・二

    とS九七・五が近接し、他にもG九六・一やS九七・一、

    S九八・五、S九八・六、S九八・七のように、GS境

    界線付近にあって、仮に外部的判断基準がないとすれば

    一グループを形成するとしてもお・かしくないものがみら

    れる。作者不明文献の探索などではこれではなお心も。と

    ないゆえ、種々のクラスター分析などを適用して比較す

            (m)           .

    ることも考えられるが、ここではゲーテ書簡、シラー書

    424

  • (13) ゲーテ・シラー往復書簡集の文体論的特性(三)

    簡という判断基準があるので、線形半別関数による判別

    を行い、主成分分析の結果を補う、すなわち相補的効果

    の可能性をさぐる試みを続ける。

     前稿では一七九四年から九六年までの分割標本を基に、

    四変数(きg昌o戸昌彗一…q)の線形判別関数を作成

    し、九七年の分割標本十三個に当てはめたところ、二つ

    の誤判別を生じた。これを新たな九八年分の分割標本十

    四個にあてはめると、更に三つの誤判別が加わった。判

    別式を作成する際に使用した標本を内部標本、それ以外

    を外部標本とすると、後者の場合、内部標本二四個はす

    べて正しく判別したが、外部標本二七個については五個

    の誤判別を生じたことになる。この判別率が高いか低い

    か微妙なところであるが、シェークスピアの『ヘンリー

                        (11〕

    六世』三部作の帰属を判定すべく試作した判別式にくら

    べると、やや精度が落ちるようにも思われる。もっとも

    変数の数は大幅に削減しているが。    ・

          (肥)

     判別関数の作成に当っては変数の選択と使用する標本

    (内部標本)が結果を左右する。今回は試みにまず十個

    の年次標本をもとにし、主成分分析で第一主成分得点が

    大きく、かつ第一、第二主成分得点の符号が一致する四

    語(き員罫頁三p…α)を取上げてみた。結果は内

    部標本はむろん正し<判別するが、いわば半内部標本と

    もいえる分割標本五一個について八個の誤判別を生じた。

    これでは前回作成の判別式より精度が落ちる。

     次に、ほぽ同じ原理で、分割標本五一個をもとに五語

    (罫員旨ら9名o巨;ま)を変数として判別式を作り、

    試したところ年次標本十個こそ正しく判別できたが、内

    部標本自身に六個の誤判別を生じた。これでは使い物に

    ならない。いま「ほぼ」同じ原理と述べたのは五語のう

    ち一語(…o)だけは第一、第二主成分得点の符号が異

    なるが、なにしろ頻度が高い語なのであえて付加えたも

    ので、今度はこれを外し再度四変数の判別式を作ってみ

    たが、結果は更に悪いものであうた。その理由はこれら

    の語の頻度が相対的に低いことにあろう。

     主成分分析を参照して変数を選んだ結果が芳しくない

    ので、次は単純に五年分の統合標本においてゲーテ、シ

    ラーの平均値の差が大きなもの五個(きP彗oF昌竃一

    邑o耳⊆邑)を変数に選び分割標本五一個をもとに判別

    式を作成したところ、やはり年次標本は正しく判別する

    ものの、分割標本五一のうち四個の誤判別を生ずる。結

    524

  • 一橋論叢 第123巻 第3号 平成12年(2000年)3月号 (14)

    局前回作成した判別関数と大差ない、というより、こち

    らの判別は内部標本のみということになるから、変数が

    一つ増えた割には精度はよくなっていない、といえるか

    もしれない。

     そこで思い切って前回同様、一七九四年から九六年ま

    での分割標本二四個をもとにして判別式を作ることにし、

    但し変数を九個に増やしてみることにした。選択原理は

    総平均の差が一以上のものという単純なもので、前回の

    四個(き貸彗o戸冒竃一仁邑)に対して、五個(巨g

    邑9戸目目員箏…二8葦)が加わった。次式が得られた

    判別式である。

     N1-1oあ雪(與σ胃)-o.S蜆(凹⊆o7)-ol雪o(三彗)

       十-1o2(昌與目)十〇6雷(三〇葦)十9oo富(自自目)

       -o-N冒(コ⊆『)十H.↓竃(篶o;)十〇.2ω(⊆コo)

       1冨.塞蜆

    これにそれぞれのデータを当てはめて判別得点を計算し

    てみると、年次標本や内部標本はすべて正しく判別され

    るが、外部標本としての九七、八年の分割標本二七個の

    うち四つの誤判別が生じた。つまり変数が五個増えた割

    りに、誤判別率は二七分の五から二七分の四に滅ったに

    すぎない。これだけをみれぱ判別分析は徒労に類すると

    もいえなくはない。

     しかしながら、注目すべきことに今回試みた判別分析

    の試みにおいて、主成分分析では境界に接していたG九

    五・二は上記いずれの判別でもゲーテ方に判定された。

    G九六・一、G九六・六、G一七九四も同様である。こ

    れに対してシラー方で境界に近い標本は判別式により判

    定に変動がある。このことは主成分分析の布置図におい

    て境界域に位置する標本のうち、何種かの判別関数によ

    る判別得点が一貫して一定の判別結果をえたものは、ほ

    ぼ間違えなく帰属を決することができることを示唆する。

    逆に判別式一本で断定するのは危険であるといえよう。

    その意味で作者半別問題における主成分分析と判別分析

    の相補的機能が、文体分析の対象としては相当厄介なゲ

    ーテ・シラー往復書簡の分析を通じてある程度立証され

    たという二とができよう。

    五 中仕切り

     ゲーテはその八二年余りの生涯に、残されているもの

    だけでも一万四千通以上の手紙を書き二万通以上を受け

    426

  • (15) ゲーテ・シラー往復薔簡集の文体論的特性(三〕

        (13)

    取ったという。そのうちシラーとの交信は双方約五百通

    前後、そのほとんどがゲーテ自身の手によって整理され

    刊行された。我々が分析したのは数にすればその半分に

    も満たない。しかしこの五年間は二個の稀有な精神にと

    って最も刺激に富む充実した交友の歳月であった。望ま

    れて勤めた十余年の公務を突如放鰯し二年近くのイタリ

    ア旅行から帰還したゲーテがワイマールでまず出遭った

    のが人生の伴侶クリスティアーネであり、フランス革命

    の余波が渦巻く中で再び現世実務にとらわれかけたゲー

    テの精神的飢餓を癒し創造の世界に誘ったのはシラーと

                (M)

    の出会いという「幸運な出来事」であづた。

     ゲーテはシラーを通じてカント哲学に一定の理解を育

    み、『ヴィルヘルム・マイスターの修行時代』を完成し、

    再び『ファウスト』に取り組む精神的活力を得た。一方一

    シラーは宿痢や経済的不遇と闘いながらゲーテの協力を

    得て、『ホーレン』『美神年鑑(ムーゼン・アルマナハ)』

    を充実させ、美学哲学論文を彫琢し、『ヴァレンシュタ

    イン』三部作,の完成と舞台上演に情熱を傾けた。二人の

    合作『クセニエン』やバラードの競作もこの五年問の遺

    産である。ありふれた言い方をあえて踏襲すれば、時は

    まさにドイツ古典主義文学の黄金時代であった。

     目を転ずれぱ、フランス革命は一七九一年のミラボー

    の死以来、混迷と先鋭化の度合いを強めて、一七九四年

    四月にダントンが処刑されると恩えば、七月末(テルミ

    ドール九日)にはロベスピエールも断頭台の露と消え、

    エジプト、イタリアで実力をたくわえたナポレオンは一

    七九九年十一月(ブリュメール十八日)に遂に独裁の礎

    を築く。ゲーテが一七九七年に三度目のイタリア旅行の

    計画を断念するのはかかる国際惰勢の為であり、その代

    わりにゴッタルト峠を目指したスイス旅行で、ゲーテは

    ヴィルヘルム・テルの歴史伝説を知り、病弱の為ほとん

    ど自宅を離れられないシラーにこれを具に伝える。そこ

    からやがて自由独立を希求するシラー最後の戯曲『ヴィ

         (15)

    ルヘルムニアル』が生まれるのも、二人の間に互いの天

    分に対する敬意と信頼があったれぱのことであろう。ち

    なみに『群盗』の作者シラー(5ω一①…O≡雪)に対し

    てパリの立憲議会は一七九二年八月二六日に、十七名の

    諸外国人と共に「フランス公民権」を一方的に授与した

    が、その証書(島ω守竃N09尿9⑦-焉『Oq①二】亘Oヨ)

    は遅れ遅れて一七九八年三月一目にシラーの手元に着い

    427

  • 一橋論叢 第123巻 第3号 平成12年(2000年)3月号 (16〕

    たことも、翌目付けのゲーテ宛て書簡から明らかになる。

    一方、ゲーテは一八○八年十月二日、エァフルトでナポ

    レオンに謁見するが、「あなたは人間だ」という有名な

    ことばのあと、何度も読み返したという『若きウェルテ

    ルの悩み』に談は及び存外的確な質問などがあったと伝

    えられている。革命時代、皇帝時代の違いはあれ、とも

    に築いたワイマール古典時代ではなぐ、過去のものとみ

    なした疾風怒濤時代の作品が二人の代表作として隣国に

    も知られていたことに、時代にもてはやされつつ孤高の

    存在であったものの歴史的皮肉を感ずる。その意味では

    この往復書簡は知己を見出した喜ぴが充溢する記録であ

    り、力量あい接する者の創造的格闘の喜ぴの記録でもあ

    ろう。二世紀を経て、かかる精神の記録を単なる数量に

    置き換え分析の対象としたことに罪なからんことを祈り

    つつ、ひとまず方法論的検証の中仕切りとする。

    (1) 『一橋論叢』第二=一巻第三号、頁一-ニハ。

    (2) データ数が多い場合、あるいは分布が互いにかなり異

     なる場合、文章長のカイニ乗一様性検定の結果が有意とな

     り、判別に役立つ場合もある。たとえぱ『キリストに倣い

     て』の文章長分布と著者候補と目されるケンピスとジェル

     ソンの文章長分布について、ユールのデータに基づいて一

    様性検定を行うと、ケンピスは帰無仮説保留、ジェルソン

     は仮説棄却となる。これは「ユールの特性値」を根拠に彼

     が下した結論に等しい。

    (3)二橋論叢』第二二一巻第三号の三六四(一四)頁に

     ある図三、およびその下の主成分得点表は、通常の主成分

     得点とは異なる値となっている。これはSPSSの因子分

     析プロシージャーによる成分行列に千分率データを乗じた

     値で、この成分行列は通常の方法、すなわち相関係数行列

     の第一固有値に対応する第一固有ヴェクトルにマイナス

     ニ・八二九五四五を乗じ、第ニヴェクトルにマイナス一・

     二七八を乗じたものであった。

      これに対して通常の手順、すなわち千分率データを基準

     化したZスコア行列と、相関行列より得られる固有ヴェク

     トルの積による各群の布置図では、y軸をはさんでシラー

     がプラス側、ゲーテがマイナス側に分かれた形をとる。ま

     た、この・(通常の)布超図と、Zスコアと因子得点の横に

     基づく布置図は、丁度百八○度回転した形となった。

    (4) 両者の文通は、一七九四年六月に始まり、シラーの没

     年(一八〇五年五月九目)まで続くが、分量的にはその七

     〇%強が一七九八年末までに属する。二つの町の間には定

     期的郵便馬車および特定の配達婦(巾〇一窒マ彗)による往

     来があったらしい。

    (5) ゲーテは小なりといえどもワイマール公国の台閣に列

     する枢密顧間官、十歳年少のシラーはイェーナ大学教授で、

    824

  • (17) ゲーテ・シラー往復書簡集の文体論的特性(三)

     その社会的地位や経済的差異は明らかである。しかし、当

     時の文芸.思想界の風潮に抗して共同で風刺詩集成『クセ

     ニエン』を発表し、ジャンル論研究からバラードを競作し、

     ゲーテの小説『ヴィルヘルム・マイスターの修行時代』、

     シラーの戯曲『ヴァレンシュタイン』の完成にあたっては、

     互いに助言を求め忌揮なく意見を交わして、いわゆるドイ

     ツ古典主義思想の結晶化に努める。その一方、二人の天賦

     の才、気質の違いについては、ほかならぬシラー白身によ

     る分析が『ホゾレン』掲載の論文『素朴文学と有情文学』

     となって世に問われたといえよう。

    (6) ゲーテを恋愛の名手だ、などとその様々な恋愛体験を

     喋喋する俗説に筆者は組するわけではない。むしろヴァイ

     マール宮廷社会の中枢にありながら、一七八八年七月十一

     目の出会い以来、市民身分の(すなわち賛族社会からは暗

     に排斥される負い目をもつ)娘クリスティアーネと生活を

     営み続けた一種独自の世界観と持統する意志に人聞的興味

     を覚える。ゲーテが教会の祝福を受けてクリスティアーネ

     と当時として正式の結婚をするのは、フランス軍がヴァイ

     マールに進駐し、あわやの危機にクリスティアーネが敢然

     と立ち向かったという一八〇六年十月のことである。(o「

     、唖「↓戸事・峯・一〇〇〇叶巨①伽Oすユωご凹目ρH≦一』①目o了①目-oooo)

    (7) 移動平均の計算等はいつものようにAWKを用い、結

     果の図示にはSPSSを利用した。移動平均を使うヒント

     は、鈴木義一郎『惰報量基準による統計解析入門』(東京、

     一九九五)から得たが、文章長を時系列グラフにし、一般

     に文学研究に応用する試みはまだほとんど例がないように

     思われる。これは本来、小説(特に短編小説)などの分析

     に応用すれば、時に面白い観察が可能であろう。筆者は偶

     然カフカの『変身』に適用してみて、その応用可能性に気

     づいた竈

    (8) 二十語の中には厳密にいえぱ不変化詞ではない不定人

     称代名詞昌彗も合まれている。もっとも昌彗は北ドイ

     ツの口語では不変化詞としても出現するが。(岩崎英二郎

     編、ドイツ語副詞辞典、東京、一九九八)

    (9) 行列の計算はζ呉烹冒豊Sで行い、図はSPSSで

     描いたものをウインドウズ付属のペイントにコピーして修

     正した。また表三はエクセルで印刷したものである。一貫

     性のないこと甚だしいが、要するになるべく使い慣れたも

     のですませ、猫の目のように変わる新機能・新操作習得の

     手間と時間を最小隈にとどめたい人生斜陽族の窮余の策で

     ある。

    (10) 今回はクラスターか析に本格的に取り組んだわけでは

     ないが、SPSSの機能を利用し、群平均法によってデン

     ドログラムを作成してみたところ、G九五・二、G九六・

     一、S九七.五が、特異なポジシヨンを占めている。年次

     標本については、ゲーテ五標本とシラー五標本がきれいに

     わかれて樹状図を形成した(図八)。.

    (H) =橋論叢』第一一九巻第三号、頁一…一九。

    (12) 手順は省略する。ここでもAWKとく算ま目呉一畠を

     もっぱら用いた。

    924

  • 橋論叢 第123巻 第3号 平成12年(2000年)3月号 (18)

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    DondrQgra,u using Average Linkage a5etveen Groups)

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    麦己巨争ままH霊彗急目二戸(卑;寝ミ奉9昌印・

     -ooメω1杜ωo鶉)

    (14) このことをゲーテはシラー没後十二年を経て、『シラ

     ーとの最初の知遇』において回顧し、当初シラーを回避し

     ていたこと、精神的対極にあるとみなしていたこと、イェ

     ーナの自然学協会のタベで偶然出遭い、植物の変態につい

     て論議するうち、思わぬ共感をえたことなどを語つている。

     この回想はのちに少し筆を加えて『幸運な出来事』と改題

     された。

    (15) 初演は一八〇四年三月、ヴアイマール宮廷劇場。

            (一橋大学大学陸言語社会研究科教授)

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