海・河川のプラスチックごみの 現状について ·...

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海・河川のプラスチックごみの 現状について 大阪商業大学公共学部 原田禎夫 資料2-2 0 200,000 400,000 600,000 800,000 1,000,000 1,200,000 1,400,000 1,600,000 1,800,000 2015 2016 2017 2018 2019 日本から海外への廃プラ輸出(中国とその他の国) ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、PETフレーク PETその他、ポリプロピレン、その他プラの合計 t各年1月から12月までのデータ 2019 年のみ5月までのデータ 中国には香港を含む 中国は 黄色 で着色(PETフレークのみオレンジその他の国・地域で着色PETフレークのみ水色出所: 財務省貿易統計 普通貿易統計品別国別表 輸出 より http://www.customs.go.jp/toukei/info/tsdl.htm 2019627日確認 作図 堀 孝弘氏

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Page 1: 海・河川のプラスチックごみの 現状について · 各年1月から12月までのデータ 2019 年のみ5月までのデータ 中国には香港を含む 中国は黄色で着色(petフレークのみオレンジ)

海・河川のプラスチックごみの現状について

大阪商業大学公共学部

原田禎夫

資料2-2

0

200,000

400,000

600,000

800,000

1,000,000

1,200,000

1,400,000

1,600,000

1,800,000

2015 2016 2017 2018 2019

日本から海外への廃プラ輸出(中国とその他の国)ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、PETフレーク

PETその他、ポリプロピレン、その他プラの合計(t)

各年1月から12月までのデータ2019 年のみ5月までのデータ中国には香港を含む

中国は黄色 で着色(PETフレークのみオレンジ)

その他の国・地域は青で着色(PETフレークのみ水色)

出所: 財務省貿易統計 普通貿易統計品別国別表 輸出 よりhttp://www.customs.go.jp/toukei/info/tsdl.htm 2019年6月27日確認 作図 堀 孝弘氏

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焼却処分に依存した日本の廃棄物処理

Environment at a Glance 2015 OECD INDICATORSから筆者作成出典:「2017年プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況表」(一般社団法人プラスチック循環利用協会)を元に筆者作成

廃プラスチックと海洋へのごみ流出

日本からのプラごみ輸出先

(2018年)

1位 マレーシア 22.0万t

2位 タイ 18.8万t

3位 台湾 17.7万t

4位 ベトナム 12.3万t

5位 韓国 10.1万t

6位 中国(含香港) 10.0万t

7位 インド 2.1万t

8位 インドネシア 2.0万t

9位 フィリピン 1.1万t

10位 アメリカ 0.9万t

プラごみ海洋流出の多い国

(2010年)

1位 中国(含香港) 132-353万t

2位 インドネシア 48-129万t

3位 フィリピン 28-75万t

4位 ベトナム 28-73万t

5位 スリランカ 24-64万t

6位 タイ 15-41万t

7位 エジプト 15-39万t

8位 マレーシア 14-37万t

9位 ナイジェリア 13-34万t

10位 バングラデシュ 12-31万t

出所:財務省貿易統計普通貿易統計品別国別表 輸出より http://www.customs.go.jp/toukei/info/tsdl.html 2019年6月27日確認、2010年における推定値 Jambeck(2015)

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発達期に内分泌かく乱物質に曝露すると起こりやすくなる疾患

発達期の曝露

学習・行動障害、ぜんそく

感染症への感受性の増大

精巣形成不全症候群

不妊 乳がん

アテローム性動脈硬化症心臓血管系疾患

肥満

思春期早発または遅延

子宮筋腫早期閉経

前立腺がんアルツハイマー病パーキンソン病

年 齢

2 12 25 40 50 60 70歳

出所:「地球を脅かす化学物質」木村-黒田純子 (原典:WHO2012報告書)

日本, 283, 55%

韓国, 103, 20%

中国, 78, 15%台湾, 2, 1%

マレーシア, 2, 0%

シンガポール, 1, 0%

ベトナム, 1, 0% 北朝鮮, 1, 0% 不明, 47, 9%

冠島における漂着ペットボトル 製造国別構成比

調査日:2018/8/31N=518

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現存量海面700t海岸2,600t

ボランティアによる貢献(海岸での回収)は全体の15%

流入の70%は系外(外洋,海底)へ

出典:藤枝繁「陸域から海洋へのごみの流入抑制」(きれいな海辺を取戻すための研修会2009)

瀬戸内海における海洋ごみ収支モデル

0

500

1,000

1,500

2,000

0 10 20 30 40 50 60 70 80

鴨川左岸総袋数

鴨川右岸総袋数

淀川左岸総袋数

淀川右岸総袋数

木津川左岸総袋数

木津川右岸総袋数

宇治川左岸総袋数

宇治川右岸総袋数

桂川左岸総袋数

桂川右岸総袋数

km

淀川大堰

枚方大橋

三川合流

新名神木津川橋

奈良線木津川橋高

瀬川

山科川

五条大橋

保津峡

阪急京都線

桂川橋名神

淀川水系における河口からの距離と河口からの積算ごみ総量

出典) 関西広域連合(2019)「琵琶湖・淀川流域対策に係る研究会海ごみ発生源対策部会報告書」

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保津峡の漂着ごみの構成

269

93

61

48

47

32

27

27

26

20

17

13

13

10

10

9

8

7

7

6

0 50 100 150 200 250 300

飲料ペットボトル

食品の発泡スチロール容器

その他

飲料缶

食品のプラスチック容器

その他生活用品

食品のポリ袋

プラスチック・ボトル(洗剤・シャンプーなど)

スプレー缶・カセットボンベ

飲料びん

タバコの吸殻・フィルター

飲料紙パック

飲料ペットボトルのキャップ

ボール

くつ・サンダル類

その他のプラスチックのふた・キャップ

花火

買い物レジ袋

おもちゃ

コップ・皿類(発泡スチロール)

破片類を除く調査日:2016年10月22日サンプル数:30袋(20L)

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

飲料ペットボトル タバコのすいがら・フィルター 食品のポリ袋(菓子袋など)

その他※数のみ! その他の生活用品 食品のプラスチック容器(弁当、プラトレイなど)

食品の発泡スチロール容器(発泡トレイ、カップめんなど) 飲料缶 ポリ袋(レジ袋、食品用以外)

飲料ペットボトルのキャップ 11位以下

淀川・海老江干潟における漂着ごみの構成比(2015/4〜2019/1、上位20品目)

前田潤哉, 原田禎夫(2017)「内陸部からの海洋ごみの発生抑制に向けた課題の検討:大阪淀川における漂着ごみ調査結果から」をもとに作成

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• 大阪湾で行われている底引き網漁では、網を上げるごとに多くのビニル、レジ袋が引っ掛かってくる。• 網の中にはビニルやレジ袋だけでなくさまざまなプラスチックごみが入る。• ペットボトルは水が入ると海底に沈む。紀伊水道の友ヶ島の近くの深くくぼんでいるところで底引網を引くとペットボトルしか網に入らないことがある。

鉄枠にはビニル片、レジ袋、空き缶など多くの種類のごみが引っ掛かる

鉄枠に引っ掛かるビニル

中に⽔が⼊り海底に沈んだペットボトル

木くずに絡まり海底に水没したレジ袋

木片と一緒に泥の塊になったビニル⽚

鉄枠に引っ掛かったビニルは掻き落とす

大阪湾のビニルごみによる漁業被害

出典) 関西広域連合(2019)「琵琶湖・淀川流域対策に係る研究会海ごみ発生源対策部会報告書(案)」

出典) 関西広域連合(2019)「琵琶湖・淀川流域対策に係る研究会海ごみ発生源対策部会報告書(案)」

大阪湾の海底に沈降したビニルごみの総量の推定

鉄桁

爪36本 35×0.035=1.225m

約1.2m

今回の作業量:7km/hで鉄枠を引く(約15分間)① 1回当たりの回収面積

幅1.2m×7.0km/h×0.25=約2,100㎡総回収面積2,100㎡×38回=79,800㎡ 約0.080k㎡(6時30分から13回の作業で鉄桁のビニルを確認した回数)

② 採取区分鉄桁に引っ掛かったビニル、レジ袋を写真判読(実際には爪に複数の引っ掛かりがあるため過小評価)

ビニル片 337枚レジ袋 163枚

③ 大阪湾全体の分布(面積による比率から推定)ビニル 約610万枚レジ袋 約300万枚

⼤阪湾︓約1,450k㎡

注)漁具による採取を目視判読した数量のため、実際にはもっと多くの量が沈んでいると思われる。

ビニル片:13 レジ袋:8

作業範囲

調査年月日:2018.11.30

大阪湾のビニルごみによる漁業被害n ⼤阪湾に沈むビニルごみ

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河川におけるマイクロプラスチック調査結果マイクロプラスチックは

海だけでなく河川にも存在する。

①流域でマイクロプラスチック化

②河川内でマクロプラスチック化

マイクロプラスチック化される前に発生源で抑制する対策が必要

部分的に粉砕されるペットボトル

腐食するペットボトル

フィルム状ビニール破片3つ

人工芝破片

分級後(1.0mmふるい残留)

0

4

8

12

16

200

100

200

300

400

500

園部雨量(気象庁)

信楽雨量(気象庁)

大宇陀雨量(気象庁)

桂川流量(納所地点)

宇治川流量(淀地点)

木津川流量(八幡地点)

時間雨量

(mm/h)

流量(㎥/s) 常時(10月19日-20日)流量データは速報値であり変わる可能性が有ります。

0

20

40

60

80桂川

宇治川

木津川

個数 常時(各河川の合計個数)

調査日:常 時:2017年10月19日~20日(24時間)

流下するマイクロプラスチックの個数(常時)

河川における流下マイクロプラスチック調査結果(常時)

出典) 関西広域連合(2019)「琵琶湖・淀川流域対策に係る研究会海ごみ発生源対策部会報告書(案)」

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0

10

20

30

40

50

60

700

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

園部雨量(気象庁)

信楽雨量(気象庁)

大宇陀雨量(気象庁)

桂川流量(桂地点)

宇治川流量(向島地点)

木津川流量(飯岡地点)

時間雨量

(mm/h)

流量(㎥/s)洪水時(10月22日-23日)

流量データは速報値であり変わる可能性が有ります。

0

200

400

600

800

1000桂川

宇治川

木津川

個数 洪水時(各河川の合計個数)

23日2時:未採取

調査日:洪水時:2017年10月22日~23日(24時間)台風21号

流下するマイクロプラスチックの個数(洪水時)

河川におけるマイクロプラスチック調査結果(洪水時)

出典) 関西広域連合(2019)「琵琶湖・淀川流域対策に係る研究会海ごみ発生源対策部会報告書(案)」

小型飲料容器ごみ回収量と飲料用ペットボトル生産量の推移

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

40,000

45,000

1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017

千万kℓ(個)

飲料PETボトル生産量 ペットボトル 紙パック 飲料缶 飲料びん

荒川クリーンエイド(2013)をもとに筆者作成

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-100

-50

0

50

100

150

200

250

300

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2103 2014 2015 2016 2017 2018

(kt)

輸入 輸出 輸出-輸入

高密度ポリエチレン(HDPE)の輸出入の動向

Circular Economy再生し続ける経済環境であり、製品・部品・資源を最大限に活用し、それらの価値を目減りさせることなく再生・再利用し続けること。

Source: A Circular Economy in the Netherlands by 2050

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水Do! facebookページ

【給水スポット@祇園祭1日目報告】

https://www.facebook.com/Suido.campaign/posts/2362717803764889

【給水スポット@天神祭報告】

https://www.facebook.com/Suido.campaign/posts/2380236668679669

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なぜ、今、脱プラスチックなのか?海洋プラスチック汚染だけがその理由ではない。

座礁資産としての石油

Ø パリ協定「2℃目標」は国際的な合意事項l目標達成のためには、世界の化石燃料の推定埋蔵量の1/3しか利用できない

l推定埋蔵量の2/3が使えない=座礁資産化

世界の化石燃料の推定埋蔵量に含まれる

CO2 2860ギガトン

2℃目標達成のためには、1974~2295ギガトンCO2分の化石燃料が利用できない!

座礁資産

資源が「枯渇」するのではなく「使えなくなる」のが問題

Circular Economy再生し続ける経済環境であり、製品・部品・資源を最大限に活用し、それらの価値を目減りさせることなく再生・再利用し続けること。

Source: A Circular Economy in the Netherlands by 2050

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Circular EconomyEUは成長戦略「EUROPE2020」でフラッグシップ・イニシアティブの1つに資源効率性 (RE:Resource Efficiency)を定め、ResourceEfficient Europeを策定(2011)◦ EU全体でREが1%改善されると年間 2,300 億ユーロのコストダウンと

15万人の雇用創出につながると試算。

◦ EUのサーキュラー・エコノミーに関する2015年のアクションプランにおいてEU共通の枠組み「サーキュラー・エコノミー・パッケージ(CEP)」を採択。

優先分野◦ プラスチック、食品廃棄物、バイオマス・バイオ由来資源関連3分野の計5分野

◦ 12億ユーロの資金が投入される

海洋プラスチックごみ対策アクションプラン(日本 2019)

我が国は、「新たな汚染を生み出さない世界」の実現を目指し、率先して取り組む。そのための我が国としての具体的な取組を、「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」として取りまとめた

l 重要なことは、プラスチックごみの海への流出をいかに抑えるか。

Ø経済活動を制約する必要はなく、廃棄物処理制度による回収、ポイ捨て・流出防止、散乱・漂着ごみの回収、イノベーションによる代替素材への転換、途上国支援など、「新たな汚染を生み出さない」ことに焦点を当て、率先して取り組む。

出典:海洋プラスチックごみ対策アクションプランの概要(環境省)

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海洋プラスチックごみ対策アクションプラン(日本 2019)

1. 廃棄物処理制度等による回収・適正処理の徹底

2. ポイ捨て・不法投棄、非意図的な海洋流出の防止

3. 陸域での散乱ごみの回収

4. 海洋に流出したごみの回収

5. 代替素材の開発・転換等のイノべーション

6. 関係者の連携協働

7. 途上国等における対策促進のための国際貢献

8. 実態把握・科学的知見の集積

出典:海洋プラスチックごみ対策アクションプランの概要(環境省)

G20 持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会合閣僚声明

Resource Efficiency and Marine Plastic Litter

We recognize the economic and environmental benefits of resource efficiency and circular economy policies in their potential to reduce all types of emissions, and look forward to pursuing these benefits.

資源効率性と海洋プラスチックごみ

我々は、あらゆる種類の排出物を削減する可能性において、資源効率性及び循環経済に関する政策の経済的・環境的便益を認識し、また、これら便益を追求することを期待する。