ファミリービジネス企業の 永続的な発展のヒント...

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ファミリービジネス企業の 永続的な発展のヒント ファミリービジネスサーベイ2016 日本分析版 www.pwc.com/jp 76% 今後5年間の課題として、「優位を維持する ためにイノベーションを続けること」と回答 した日本のファミリービジネス企業経営者 の割合 10% 「デジタルが企業文化に浸透している」と 回答した日本のファミリービジネス企業経 営者の割合

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ファミリービジネス企業の 永続的な発展のヒント

ファミリービジネスサーベイ2016 日本分析版

www.pwc.com/jp

76%今後5年間の課題として、「優位を維持するためにイノベーションを続けること」と回答した日本のファミリービジネス企業経営者の割合

10%「デジタルが企業文化に浸透している」と回答した日本のファミリービジネス企業経営者の割合

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1 ファミリービジネスサーベイ2016 日本分析版

日本のファミリービジネス企業は、日本の全法人企業260万社のうち約97%1、上場企業の約3,600社のうち約53%を占めている2と言われており、まさに日本の経済・社会を支えていると言えます。

しかしながら、日本の社長の平均年齢は59.2歳と過去最高3になり、後継者の不在・不足が現在抱える経営上の問題の一つとなっています。この点について、2016年12月に中小企業庁の発表した「事業承継ガイドライン」によると、調査対象企業4,000社のうち60歳以上の法人経営者の3割が、「廃業を検討している」と回答しています。廃業の理由として、「後継者の不在」を上げており、

「子供に継ぐ意思がない」、「子供がいない」、「適当な後継者が見からない」の三つで28.6%を占めています。 

後継者の不在により廃業が増えれば、これまで培った技術・ノウハウや地域の雇用が次第に失われ、地域経済・社会にも影響を与えます。つまり、事業承継がうまくいかなければ、日本経済の活力を弱めてしまう可能性もあると言えます。まさに、事業承継は日本経済にとって喫緊の課題であると言えます。

そのような状況の中で、一昔前までファミリービジネス企業の経営者にとっ

てはなかなか踏み切れなかった M&A(合併・買収)といった選択肢も、事業の継続と社員の雇用維持のために見直されてきており、ニーズが増えています。

一方で、日本には老舗企業が多いことが世界的に知られています。創業200年以上 の 企業 が 約4,000社、100年 以上の企業が約25,000社あると言われています1。それら企業のほとんどがファミリービジネス企業です。長期的な視点に立ち、伝統と革新のバランスを取りながら、時代の変化に柔軟にかつ創造的に対応し、幾多の困難を乗り越え、何世代にもわたり事業を継承しています。

この度 PwC は、世界50カ国の2,802名のファミリービジネス企業経営者への意識調査を実施し、その分析・考察結果を「ファミリービジネスサーベイ2016」として公表しました。この調査は、隔年で実施しており、今回で8回目となります。PwC Japan にとっては、今回初めての調査への参加ということもあり、調査に協力していただく企業の選定にあたっては、年商規模、業種や世代のバランスなどを勘案しながら慎重に進め、日本以外の国では、ほとんど電話によるヒアリング調査で実施する中、日本では、調査対象企業の8割ほどをフェイ

ス・ツー・フェイスで実施させていただきました。そのため回答数は51人と統計的には十分な水準を満たしておりませんことをあらかじめご了承ください。

調査母数は十分とは言えないものの、日本とグローバルとの回答比較において、特徴的な違いが見られた直面する課題、国際化、事業承継、親族間の紛争解決の仕組み、およびデジタル化への対応に関して取り上げ、皆様に分析結果と考察を共有させていただきます。

本レポートの作成にあたり、調査に参加してくださったファミリービジネス企業のオーナーおよび経営者の皆様にはお礼申し上げます。また、特別インタビューにご協力いただきました株式会社シャトレーゼホールディングスの創業者の齊藤寛様からは創業からこれまでの同社の成長の過程や将来に向けてのビジョンなどを共有いただき、日本経済大学の特任教授の後藤俊夫様からは長年の長寿企業、ファミリービジネスの研究から貴重な知見と洞察をいただき、心より感謝申し上げます。

本レポートが、永続的な発展を目指すファミリービジネス企業の皆様の一助となれば幸いです。

ご挨拶小林 和也パートナーミドルマーケット担当PwC 税理士法人

高田 佳和パートナーミドルマーケット担当PwC 京都監査法人

1 『長寿企業のリスクマネジメント ~生き残るためのDNA~』(第一法規)2 『ファミリービジネス白書 2015年版 100年経営をめざして』(同友館)3 帝国データバンク「2016年全国社長分析」

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ファミリービジネス企業の永続的な発展のヒント 2

「ファミリービジネス企業」の定義この調査では、以下のいずれかに当てはまる企業を「ファ

ミリービジネス企業」と定義しています。

1. 会社を創業または買収した者(もしくはその配偶者、親、子、直系子孫)が過半数議決権を有している

2. 一族のメンバーに少なくとも一人が会社の経営管理に関与している

3. 上場企業の場合は、会社を創業または買収した者(もしくはその家族)が株式所有を通じて議決権の25%以上を保有し、一族のメンバーに少なくとも一人が取締役に就任している

調査方法調査方法

2016年5月9日から8月18日にかけて、50カ国のファミリービジネス企業の経営幹部2,802人に対し、電話、オンライン、または直接面会してインタビューを実施し、質問に回答していただきました。

インタビューは Kudos Research が実施し、平均25分~35分にわたり現地の言葉でネイティブスピーカーにより行われました。

日本に関しては、主にミドルマーケット担当の責任者などによるフェイス・ツー・フェイスでのインタビューを実施し、一部 Kudos Research による電話インタビューにより回答していただきました。

調査対象企業の年間売上高は、500万米ドルから10億米ドル以上でした。

集計結果は全て、独立市場調査会社の Jigsaw Researchが分析をしました。

2,802名の

ファミリービジネス企業オーナーなど

50カ国

日本

51件(1.8%)北米

234件(8%)

中南米379件(14%)

西欧1,144件(41%)

中東・ アフリカ

226件(8%)

中欧・東欧136件(5%)

アジア太平洋683件(24%)

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3 ファミリービジネスサーベイ2016 日本分析版

グローバルとの比較による回答結果の分析と考察 

成長の見通しと今後の課題 7

国際化 10

事業承継 12

親族間の紛争解決の仕組み 14

デジタル化への対応 15

目次

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ファミリービジネス企業の永続的な発展のヒント 4

特別インタビュー 17

「素材を生かした洋菓子の流通革命」を世界へ:日本における成長とグローバル化株式会社シャトレーゼホールディングス 創業者 齊藤 寛氏

「ファミリービジネスが100年続くための4つの視点」日本経済大学 特任教授 後藤 俊夫氏

19

おわりに 21

補足データ 22

調査対象の属性 28

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5 ファミリービジネスサーベイ2016 日本分析版

日本のファミリービジネス企業経営者は下記のように回答している。

自社の成長への自信

が、「 今後5年間安定的 に成長 する」と回答

が、今後12カ月間に直面する課題として「高スキル人材の採用・労働力不足」と回答

が、「新たな国で販売を開始する」と回答

が、「高度の人材の採用・維持に労力がかかる」と回答

84%

45%

88%

39%

76% 71% 71%

将来の課題

国際化

優位を維持するためのイノベーション

適切な人材採用・維持 自社が属する業界の競争

日本のファミリービジネス企業経営者にとっての今後5年間の主な課題

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ファミリービジネス企業の永続的な発展のヒント 6

事業承継計画

親族間の紛争対応

デジタル化への対応

が、「承継計画はない」と回答

が、「親族間の紛争を解決する手順や仕組みを実施している」と回答

が、「デジタル化が企業文化に浸透している」と回答

が、「デジタル・ディスラプション(デジタル化による創造的破壊)について、取締役会レベルで議論したことがある」と回答

が、「具体的な承継計画を整備し、文書化、周知して いる」と 回答

39%

45%

10%

29%

2%

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7 ファミリービジネスサーベイ2016 日本分析版

まず昨年度の売上の状況と今後5年間の成長見込みを聞いた上で、今後 12カ月間と5年間に直面すると考えられる課題について意識調査を実施した。

今後5年間の売上の成長の見通しとしては、図表1のとおり、日本のファミリービジネス企業(以下、「FB 企業」という)の経営者は、84%が「安定的に成長する」、14%が「迅速にかつ強力に成長する」と答え、おおむね将来の見通しに自信がうかがえる結果となった。

それでは今後12カ月、および 今後 5年間の課題として、具体的にどのような課題を抱えているのであろうか。

今後12カ月の課題としては、日本のFB 企業では次ページの図表2のとおり、「高スキル人材の採用・労働力不足」

(45%)が最も多く、「企業の構造改革」「事業/商品開発」「社員教育」(それぞれ24%)と続いている。

一方、グローバルの FB 企業は、「市況」(51 %)、「高スキル 人材 の 採用」

(30 %)、「 政府政策 / 規制 / 法令 /公共支出 」(27%)を挙げている。市況や政府政策・規制などは、経営者にとってはコントロールできない要素であるが、今回の調査対象企業では、自国以外での売上が7割に達している(11ページの図表7参照)ことから、世界の市況や規制の変化は、業績や経営に影響を与える可能性が高いと懸念していることがうかがえる。

今後5年間の主な課題としては、次ページの図表3のとおり、日本とグローバルともに、 「優位性を維持するためにイノベーションを続けること」、「適切な人材を採用し、維持する能力」、「自社が所属する業界の競争」をトップ3に挙げている。加えて日本では、「よりプロフェッショナルな事業運営の必要性」も63%と多い回答であった。

成長の見通しと今後の課題FB 企業経営者にとって最も重要な課

題と捉えられているイノベーションについて、日本経済大学の特任教授である後藤 俊夫氏が実施した創業から100年以上の企業のイノベーションに関する調査によれば、最も多いイノベーション は創業時からの事業の周辺の市場または事業分野への進出で全体の49%を占め、全くの新規分野 への進出 が32%、残りの19%は、創業時と同じ市場で同じ製品を販売しているものの、継続的に細かな工夫を重ねることで、商品力を磨き続け、専門性を高めていることが分かった(19ページ参照)。事業を永続的に発展していくためには、新事業、もしくは新市場への進出、さらには新市場での新事業の進出が時代の環境変化に応じて継続的に求められていると言える。

84%の日本のFB企業の経営者が「今後5年間は、安定的に成長する」と回答

「失敗の可能性に対処できないならば、本当の意味での革新的な会社だとは言えません。失敗しなければ学ぶことはなく、学ばなければ成功できないからです」

(英国、ベッドメーカー)4

図表1:今後5年間の成長目標

質問:今後5年間の成長目標について、貴社に最も当てはまるものはどれですか?

迅速かつ強力に成長する

安定的に成長する

変わらない

縮小する

分からない

15%14%

84%

2%

70%

13% 1%1%

グローバル日本

4 ファミリービジネスサーベイ2016 ケーススタディ 世界のファミリービジネス経営者が語るストーリー

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ファミリービジネス企業の永続的な発展のヒント 8

76%の日本のFB企業経営者が

「優位性を維持するためにイノベーションを続けること」と回答

図表2:今後12カ月の間に直面すると考えられる主な課題

質問:今後12カ月間で、どのような社内および/または社外の問題または課題が貴社に影響を及ぼすことが予想されますか。その中の上位3つを挙げてください

図表3:今後5年間に直面すると考えられる主な課題

質問:下記それぞれの項目が今後5年間に貴社の事業にとってどの程度重大な課題となると思われるか、5段階で評価してください。重大な課題となりそうな場合を5、課題が深刻にならない場合や、課題そのものが特に重要ではない場合を1として、5段階でお答えください

45%

24%

24%

24%

14%

10%

10%

10%

8%

6%

6%

高スキル人材の採用・労働力不足

企業の構造改革

事業/商品開発

社員教育

競争

原材料

政府政策/規制/法令/公共支出

為替レート

市況

財務/資金調達の可能性

生産能力/受注対応

グローバル

30%

15%

13%

6%

23%

13%

27%

19%

51%

13%

76%

71%

71%

63%

52%

51%

49%

49%

47%

47%

39%

37%

35%

25%

20%

0%

優位性を維持するためにイノベーションを続けること

適切な人材を採用し、維持する能力

自社が属する業界の競争

よりプロフェッショナルな事業運営の必要性

サイバーセキュリティに対する脅威

事業展開する国の政治的不安定

経済情勢全般

事業承継計画

デジタル技術や新技術についていくこと

規制を順守しなければならないこと

事業展開する市場の不安定

環境の国際化がますます進むこと

サプライヤーやサプライチェーンの問題

コスト抑制

事業展開する国の腐敗

親族間の争い

グローバル

64%

58%

56%

43%

24%

33%

54%

34%

47%

42%

38%

36%

25%

36%

23%

11%

4と5を回答した割合

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9 ファミリービジネスサーベイ2016 日本分析版

また、下記図表4の FB 企業とその他の企業との違いについて、グローバルと大変顕著な差となって表れた質問が一つあった。それは、「高度人材の採用・維持に労力がかかる」という項目に対して、グローバルは48%が同意したのに対し、日本は88%と今回の日本の調査対象のほとんどの FB 企業が課題として認識していることが明らかになった。

日本の FB 企業経営者が、短期的、長期的な課題として挙げているのは、いずれも「人材」に関してであった。日本で独自に追加した下記図表5の「企業経営において何が最も重要と考えていますか」の問いには、「人材(優秀な人材の確保・育成)」が71%と最も高く、

「人材」についての重要性を再認識できた結果となった。

日本の FB 企業の63%が課題と認識している「よりプロフェッショナルな事業運営の必要性」であるが、外部からの人材獲得は、プロフェッショナルな事業運営、いわゆるプロフェッショナリゼーションの重要な一つの要素である。

この点における海外の FB 企業での事例として、「もう一段レベルアップするには、新しい血と異なる専門スキル、思考、経験を持つ人材が必要だと感じ、外部から社長を招いた」(カナダ、コーヒー・茶サプライヤー)、「外部 の 専門家 の起用が会社のためになる」(オマーン、SABCO Group)、「外部の有能な専門家を起用することの価値を認識しており、実際に上級管理職または最高責任者として多く起用している」(アラブ首長国連邦、高級品小売業)などがある5。

日本の調査対象の FB 企業では、図表4のとおり、「文化や価値観を強く持っている」と76%が回答していることから、特に高い専門性をもった優秀な人材の採用にあたっては、専門分野における経験・実績に対する評価のみならず、その FB 企業の持つ価値観や企業文化に共感できる人物であることも確認する必要がある。

また、日本の FB 企業が直面している後継者選びについては、プロの経営者の採用も選択肢と考えられるが、経営

図表4:FB企業とその他の企業との違い 図表5:会社経営において重要なもの

質問:下記の内容に関してどの程度賛同するか、全くそう思わない場合を1、強くそう思う場合を5として、5段階でお答えください

質問:企業経営において何が最も重要と考えていますか?(日本で追加した独自 質問)

人材として十分な資質や経験を有しているだけではなく、自社の経営理念や経営方針に共感し、それを承継してくれる人材であるか否かを慎重に見極めることが重要と言える。加えて親族内承継・親族外承継のいずれにしても現経営者とある一定期間並走することが望ましく、創業者、現経営者を支えてきたファミリー、役員はじめ社員と良好で密なコミュニケーションをとりながら、経営者としての実績や信頼を着実に積み上げていくことが求められるであろう。

変化の激しい経営環境下では、社内の人材育成に計画的に取り組むと同時に、これまで以上に外部の視点を持つ高スキルの適切な人材も活用しながらイノベーションを創出する風土づくりに取り組み、人材による差別化を図ることにより、他社との優位性を築くことが求められる。

グローバル

74%

71%

55%

40%

61%

48%

76%

75%

69%

61%

53%

88%

文化や価値観を強く持っている

意思決定プロセスが迅速/組織がシンプル

長期的アプローチで意思決定を行う

リスクを取りやすい

起業家精神が強い

高度人材の採用・維持に労力がかかる

人材(優秀な人材の確保・育成)

戦略

顧客との関係

開発力・商品力

その他

営業力、サービス

株主

71%

13%

8%

4%

4%

0%

0%

4と5を回答した割合

5 ファミリービジネスサーベイ2016 ケーススタディ 世界のファミリービジネス経営者が語るストーリー

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ファミリービジネス企業の永続的な発展のヒント 10

国際化

『海外進出企業総覧2016(国別編)』(東洋経済新報社)

少子高齢化社会の進展に伴い、マクロで見れば国内市場の成熟化・縮小化に直面している多くの日本企業にとっては、新たな需要の拡大が見込める海外市場への進出に伴い、国際化は企業の戦略上非常に重要な経営テーマである。これは、FB 企業にとっても同様なのは言うまでもない。

東洋経済新報社 の『 海外進出企業総覧2016(国別編)』によれば、海外の現地法人数企業数は、2006年では18,554社 で あった が、2016年 で は29,125社と1.5倍超に増加しており、地域別に見ればアジアが18,315社と全体の62.9%を占めている。

次ページの図表7、および8のとおり、現在輸出を含む国外売上の占める割合は、グローバルは70%であるのに対し、日本は50%、今後5年間に見込ん

でいる国外売上の占める割合は、グローバルが78%に対し、日本は71%であった。つまり、日本の FB 企業においては、今後5年間で輸出を含む国外売上の割合を21%増やす見込みであると考えている。また、次ページの図表9の今後5年間の事業の方向性においては、日本の FB 企業経営者の39%は、「新たな国で販売をする」と回答している。

このように、日本の FB 企業も海外への進出を進めようとしているものの、海外市場において現地の文化や商習慣を理解し、現地の社員をマネジメントし事業を構築できるグローバル人材が豊富に存在しているとは言いがたい。さらには、世界での地政学的リスクが高まり、以前にも増して海外での事業運営が難しくなっている現在、FB 企業経営者にとっては、その舵取りが重要な局面を迎えている。

日本の FB 企業が国際化を実現するためには、その全体像を描きながら、必要な情報収集や現地視察等を踏まえた市場調査をベースに、具体的な中期戦略・ロードマップを文書化し、必要な人材像を明確にすることが求められる。その上で、海外の事業展開のコアとなる社内人材の計画的育成に取り組むと同時に、外部からコミュニケーション能力の高い経験者の採用も検討する必要がある。

また、海外市場における展開においては、自社と価値観の共有できるパートナーとのアライアンスの選択も視野に入れるとよいであろう。その際には、その分野に詳しい専門家のアドバイスも有益であると思われる。

図表6:国別に見た現地法人数

欧州4,192社(14.4%)

中南米1,453社(5.0%)

北米4,049社(13.9%)

オセアニア707社(2.4%)

アジア18,315社(62.9%)

中近東215社(0.7%)

アフリカ194社(0.7%)

人材(優秀な人材の確保・育成)

戦略

顧客との関係

開発力・商品力

その他

営業力、サービス

株主

71%

13%

8%

4%

4%

0%

0%

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11 ファミリービジネスサーベイ2016 日本分析版

39%の日本のFB企業経営者が

「今後5年間で新たな国で販売を開始する」と回答

図表7:現在の国外売上の割合 図表8:5年後の国外売上の割合

質問:現状、売上高の約何%が輸出もしくは国外での商品・サービス販売によるものですか?

質問:5年後には、売上高の約何%が輸出もしくは国外での商品・サービス販売によるものになっていると思いますか?

50%

70%

日本 グローバル

71%78%

日本 グローバル

輸出および国外での販売の割合(平均) 輸出および国外での販売の割合(平均)

図表9:今後5年間の事業の方向性

質問:事業の5年後を現実的に予想した場合に、貴社の事業が次のようになっている可能性はどの程度ありますか。5を「非常に可能性が高い」、1を「全く可能性がない」として、1~5の数値でお答えください。

59%

57%

35%

39%

72%

61%

54%

44%

現状の商品・サービスで売上の大部分を稼ぐ

親族以外の専門家を迎えて、事業運営を支援してもらう

新たなベンチャー事業を起こす

新たな国で販売を開始する

日本 グローバル

4と5を回答した割合

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ファミリービジネス企業の永続的な発展のヒント 12

図表10:事業承継にあたって、最も重要と考える要素 図表11:経営者の資質として最も重要と考える要素

質問:事業承継にあたっては、何が最も重要と考えていますか?(日本で追加した独自質問)

質問:経営者の資質として最も重要と思われることは何ですか?(日本で追加した独自質問)

事業承継自社の将来を託せる後継者を選定

し、親族内および親族外の役員、金融機関、取引先などの利害関係者の理解を得て、次世代への事業承継をいかにスムーズに行うかは、FB 企業経営にとって最も重要であり、かつ難しいテーマでもあると言える。前掲の図表3が示しているように、今後5年間の課題として、49%が「事業承継計画」を挙げている。

下記図表10のとおり、日本で独自に追加した「事業承継にあたっては、何が最も重要と考えていますか」との問いには、65%の経営者が「事業の永続的な発展・将来性」と答えている。また、図表11のとおり、経営者の資質として最も重要と考えている要素は、「先見性、変化への対応能力」が70%と突出して多く、次ページ図表12のとおり、後継者の選定にあたって重視するポイントとしては、「人間性」と「経営能力」の二つの回答が最も多かった。

それでは具体的に事業承継の準備への取り組みはどの程度進んでいるのであろうか。

次ページ図表13のとおり、承継計画の準備について「全ての上位役職者について計画がある」、および「大半の上位役職者について計画がある」については、日本、グローバルはともに2割程度が「ある」と回答した。一方、「承継計画はない」との回答は日本39%、グローバル43%とともに4割程度であった。

さらに、次ページ図表14のとおり、「具体的な承継計画を整備し、文書化、周知している」は、グローバルが15%に対し、日本はわずか2%と際立って低い割合であった。次ページの図表15のとおり、日本の FB 企業経営者の45%が「経営を次世代に引き継ぐ」と答えていながら、実際には承継計画を文書化し周知する水準までには至っておらず事業承継を計画的に進めているFB 企業は多くない。

最終的な後継者の決定は、現経営者の一大仕事であるが、後継者育成に5年から10年相当かかることを考慮すると、なるべく早い段階で後継者候補の選定と具体的な育成計画など承継プラン策定に着手することが望まれる。

例 えば、フィンランドの 創業165年を 迎 える 世界大手 の 繊維会社 Antti Ahlström Perilliset Oy の5代目経営者は、「承継計画に長い時間を費やし、次の世代に対して4年間の能力開発計画を設け、彼らを職務経験を積む機会を提供している」と自社の取り組みを紹介している6。

事業承継の進め方は、企業によって当然異なるが、いずれの FB 企業においても、上記の事例のように、承継計画を策定し後継者の育成を計画的に行っていくことは、次世代へ事業をスムーズに承継する上で必要と思われる。

11%

4%

15%カリスマ性、リーダーシップ

70%先見性、変化への対応能力

調整能力

その他

8%

65%

15%

会社の永続的な発展・将来性

後継者の選定・育成

6%

6%

株式の承継

経営ノウハウなどビジネスの承継

その他

「次世代の親族には会社の外でキャリアを積んでほしいと思います。そして家業に加わるのであれば、適切なスキルがなければなりません。FB業は、一族のメンバーに不適切な役職を与えることで失敗します。加わるのであれば、どんな役職であれ、価値をもたらさなければなりません」

(イタリア、製造業)6

6 ファミリービジネスサーベイ2016 ケーススタディ 世界のファミリービジネス経営者が語るストーリー

59%

57%

35%

39%

72%

61%

54%

44%

現状の商品・サービスで売上の大部分を稼ぐ

親族以外の専門家を迎えて、事業運営を支援してもらう

新たなベンチャー事業を起こす

新たな国で販売を開始する

日本 グローバル

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13 ファミリービジネスサーベイ2016 日本分析版

図表15:将来の事業承継計画

「経営を次世代に引き継ぐ」と「所有を次世代に引き継ぎ、経営の専門家を招き入れる」の両方の選択は不可 他の選択肢では、複数回答可

質問:今後5年程度、もしくは長期的に貴社にどのような変化があると予測しますか?

図表14:継承計画の準備・文書化の状況

質問:具体的な承継計画を準備し、文書化し、周知していますか?

39%の日本のFB企業経営者が

「承継計画はない」と回答

売却/ IPO(株式公開)の内訳IPO:14%プライベートエクイティ投資家に売却:8%他社に売却:6%経営陣に売却:4%

質問:上位役職者に対して後継者計画はありますか?

全ての上位役職者について計画がある

大半の上位役職者について計画がある

少数の上位役職者について計画がある

承継計画はない

グローバル日本

18%

18%

12%

21%

39%

43%

16%

22%

2%

15%

日本 グローバル

図表12:後継者選定にあたっての基準(日本で追加した独自質問) 図表13:継承計画の準備

質問:後継者の選定にあたり、重視する要素は何ですか?

45%

20%

20%

12%

4%

39%

34%

17%

7%

3%

経営を次世代に引き継ぐ

所有を次世代に引き継ぎ、経営の専門家を招き入れる

売却/IPO(株式公開)

分からない

その他 日本 グローバル

37%

36%

10%

10%

6%その他

将来性

今までの継続性

経営能力

人間性、人望

「はい」と回答した割合

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ファミリービジネス企業の永続的な発展のヒント 14

親族間の紛争解決の仕組みFB 企業の経営および承継において、

親族間で良好な関係を維持していることは非常に重要と言える。では万が一、親族間で紛争が起きた場合には何かしらの仕組みを用意しているのだろうか。

近年、日本でも遺言や信託などが広がりつつあるものの、下記図表16のとおり、「親族間紛争に対応するための手順や仕組みがある」と回答した割合は、グローバルの82 %に対して、日本は45%と多くはなく、この点において十分に整備が進んでいない状況が浮き彫りになった。

親族間の紛争に対応するために実施している手順・仕組みに関して、グローバルの回答として割合が特に高かった項目は、「株主間契約」(53%)、「就業不能・死亡時の取り決め」(40 %)、

「業績の測定・評価」(40%)、「家族会議」(34%)、「入社および退社の条件」

(30%)であった。一方、日本の FB 企業経営者が主に挙げたのは、「家族会議」(24%)、「第三者の仲介」(12%) であった。

お互いの意図を察しあい「以心伝心」で意思伝達が行われるハイコンテキスト社会と言われる日本においては、こと親族間において、文書化した手順や取り決めを作成・運用すること自体に心理的に抵抗があるかもしれない。もともと、日本では、歴史的に家督相続という長子に全ての財産を承継する制度が運用された時期があり、親族間の争いの発生をあらかじめ防ぐ仕組みが機能していた。しかしながら、現代では民法上法定相続分が定められ、原則として、兄弟はみな平等である。つまり、昔と違い、相続において平等意識が強く働くため、親族間での争いが起こりやすい環境にあり、現に「争続」が問題となる事例が増えている。

事業の永続性を目指す FB 企業においては、次世代へと事業承継を重ねるにつれ、株式の分散や親族で保有する議決株の希薄化が進むことはある程度は避けられないかもしれない。一方で、日本の FB 企業の場合は、婿養子として外部から人材を獲得し、娘婿に事業を承継をするケースもある。親族以外の人材が世代を重ねるにつれ、経営に関

与する人材の価値観も多様化し、ファミリーの持つ価値観や理念も、創業ファミリーの期待ほどには浸透しない可能性も考えられ、事業の持続性・安定性において潜在的なリスクも抱える。そういう意味では、将来起こりうる親族間の争いに対応するために、何かしら親族間紛争に対する仕組みをあらかじめ準備し、親族間でコンセンサスを得ておいた方が望ましい。親族間での調整が難しいと思われる場合には、外部の専門家などに仲介役として入ってもらうこともよいであろう。

また、日本では、欧米のようにファミリーの資産管理や FB 経営に関するアドバイスを行うファミリーオフィスは根付いていないが、日本の FB 企業には、昔から伝統的に創業家・経営者を支え、後継者の育成も支援してきた、いわゆる

「番頭」の存在がある。経営者の高齢化に伴い、番頭の高齢化の問題も想定され、次世代の番頭役を務めることができる人材の有無も懸念される。ファミリービジネスに関して深い知見を持ち、FB 企業経営者へのアドバイス、親族間の仲介役を務めることができる人材はまだ少数であり、そのような人材の発掘・育成も急務である。

日本

45%グローバル

82%「親族間の紛争に対応するために実施している手順・仕組みがある」と回答した割合

図表16:親族間の紛争に対応するために実施している手順・仕組み

質問:親族間に紛争が生じた場合に対応する方針や手順がある場合、それは以下のうちどれですか?(複数回答可)

24%

12%

8%

4%

4%

2%

2%

0%

55%

家族会議

第三者の仲介

株主間契約

就業不能・死亡時の取り決め

ファミリー憲章

業績の測定・評価

紛争解決メカニズム

入社および退社の条件

上記のいずれも実施していない

34%

29%

53%

40%

24%

40%

29%

30%

18%

グローバル

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15 ファミリービジネスサーベイ2016 日本分析版

今回の調査で新たに追加されたのが、デジタル化に関する質問項目であった。AI(人工知能)、IoT、ロボティクスとデジタル技術はかつてないスピードで進展しているが、今後そのようなデジタル化に自社がいかに対応していくかは今後ますます重要になる。

デジタル化は、今回の調査において日本とグローバルとの比較で最も顕著な違いが表れたテーマの一つでもあった。下記図表17のとおり、デジタル時代に向けた準備に関して四つの質問をしているが、日本とグローバルの間では、18ポイントから46ポイント差が生じ、グローバルに比べ日本はいずれも際立って低い結果となっている。特に「デジタルが企業文化に浸透している」は、グローバル56%に対し、日本は10%とデジタル技術の活用、定着には後れを取っているようにみられる。デジタル技術が企業文化に浸透している海外のFB 企業の例として、ギリシャの技術製品小売業の会社では販売、在庫、返品、マーケティングにおいて、デジタル技術

を活用して eコマース(電子商取引)、法人間、実店舗でシームレスに連携させている事例や、ロシアのアグリビジネスを営む会社では、GPS 機器を利用して全てのデータをスマートフォンへリモート転送することで砂糖工場、酪農工場、ジャガイモ畑の管理を自動化し、デジタル技術を最大限に活用して生産性を高めている事例などがある7。

また、「デジタル化の具体的なメリットを理解しており、それを測定するための現実的な計画がある」についても、グローバルが59%に対し、日本は27%と大きな差があり、日本の FB 企業において、デジタルに関する戦略計画策定に着手できている企業は多くはない。

さらに、次ページ図表18の「デジタル・ディスラプション(デジタル化による創造的破壊)の脅威に関して、役員レベルで話し合ったことがあるか」との問いには、グローバル54%に対し、日本は29%と顕著な差となって表れている。デジタル技術を使って既存の業界の枠組みやビジネスモデルを創

デジタル化への対応造的に破壊するデジタル・ディスラプションの影響を受 ける業界は拡大しており、その勢いはとどまることを知らない。図表19のとおり、デジタル・ディスラプションの影響を「全く影響を受けない」および「あまり影響を受けない」の回答 が77%とグローバルと比較しても多く、デジタル化の進展が及ぼす企業経営への影響に対しての危機感が若干薄いようにも感じられる。しかしながら、デジタル・ディスラプ ションは、今後あらゆる産業にインパクトを与えると言われている。 

日本の FB 企業が、自社が属する業界、その周辺の業界、および国外市場において、デジタル化による変化、また変化の兆しが表れていないかをモニターし、また、そのデジタル化の進展により、業界の将来はどのような姿に変化していくのか想像し考え続けてみることも必要と思われる。

10%の日本のFB企業の経営者が 「デジタルが企業文化に浸透している」と回答

図表17:デジタル時代に向けた準備

質問:組織とデジタル化への対応に関する各文章について、1を「全くそう思わない」、5を「とてもそう思う」として、1~5の数値でお答えください

33%

27%

27%

10%

53%

59%

45%

56%

デジタル時代に適合した戦略がある

デジタル化の具体的なメリットを理解しており、それを測定するための現実的な計画がある

データ漏えいやサイバー攻撃に対応する準備ができている

デジタルが企業文化に浸透している

日本 グローバル7 ファミリービジネスサーベイ2016 ケーススタディ 世界のファミリービジネス経営者が語るストーリー

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ファミリービジネス企業の永続的な発展のヒント 16

18%28%

59% 47%

14% 21%

4% 4%

日本 グローバル

非常に影響を受ける

かなり影響を受ける

あまり影響を受けない

全く影響を受けない

図表19:デジタル・ディスラプションの影響

質問:短期的・中期的に見て、貴社はどの程度デジタル・ディスラプションの脅威に直面しやすいと思いますか?

「はい」と回答した割合

そして、このような業界の将来やデジタル・ディスラプションの与える可能性など重要なテーマに関して問題提起をすることが期待される取締役会といった場のみならず、FB 企業経営者もしくは親族役員などのリーダーシップのもと、デジタルリテラシーの高い若手社員も含め、客観的な視点を持ちながら、デジタル化が自社の経営に与えるインパクトや取るべき戦略に関して、深く創造的に議論することも有用と思われる。

いずれにしても、デジタル化の進展はもはや避けられない現実である。中期的なビジョンを踏まえ、デジタル技術を戦略的に活用する領域を見いだし、自社のデジタル化に関する具体的な中期戦略の策定が求められる。

「デジタルは、どんな組織においても マーケティングとコミュニケーションの戦略にとって必要不可欠です。Eコマースであれ、広告であれ、ターゲット層の絞り込みであれ、ソーシャルメディアであれ、消費者とのエンゲージメントのあらゆる側面で中心的な役割を果たします」

(アラブ首長国連邦、高級品小売業)8

図表18:デジタル・ディスラプションの脅威に対する取締役会レベルの認識

質問:デジタル・ディスラプションの脅威に関して、貴社の役員レベルで話し合ったことはありますか

日本 グローバル

54%

29%

8 ファミリービジネスサーベイ2016 ケーススタディ 世界のファミリービジネス経営者が語るストーリー

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17 ファミリービジネスサーベイ2016 日本分析版

和菓子・洋菓子製造販売業 を 営 むシャトレーゼは、地元山梨県の素材を生かした製品を自社工場で生産し、フランチャイズシステムにより販売するという方式で、日本国内で急成長を果たした。シャトレーゼの創業者であり、現シャトレーゼホールディングスの社長である齊藤寛氏 は、1954年(20歳 の時)に弟が4坪の広さで始めた菓子店の経営を任されることになった。「やるからには日本一のお菓子屋に」と大手メーカーとの差別化を図ることで、今では3,000人の従業員を擁し年商630億円企業に育てた。

シャトレーゼが現在扱う商品は500種類以上と多彩で、店舗には旬の果物を使った生ケーキなどの洋菓子をはじめ、どら焼きなど和菓子のほか、アイスクリーム、各種飲料、山梨県特産のブドウを生かしたワインまでが並ぶ。それだけでなく、ワイナリーやリゾートホテル、日本各地のゴルフ事業も手掛ける一大企業グループだ。

シャトレーゼホールディングスは、寛氏の娘が専務、妹が常務としてグループ全体を統括し、甥の誠氏はシャトレーゼの社長であり、オランダ事業を管轄するなど一族経営を続けている。

地元山梨県で今川焼風のお菓子の店として創業した同社が今日に至る過程は容易でなかったが、1967年(寛氏が33歳の時)に圧倒的な安さと品質にこだわった「10円シュークリーム」が大ヒットし、起爆剤となった。

自社で生産した製品を既存の流通経路で販売する卸売業としての苦労体験などから、「小売業も他と同じことをやっていたのではダメ。大手メーカーのできないことをやる」というポリシーと、問屋を通さない独自の直販スタイルが生まれた。そして創業30年目の1984年

(50歳の時)に、まだ売上は48億円であったが、自分の経験を信じ思い切って50億円を投資し、本社工場を移転したことが転機になったと寛氏は語る。当時は移転直前の主力工場の火災や、専務、工場長の病死など災難が続いたが結束して乗り越え、首都圏から日本全国に FC 店舗を中心に拡大し、右肩上がりの成長を遂げた。

そんな成長を支える人材育成もユニークである。グループ会社の社長の募集は社内公募を行い、やる気のあるチャレンジ精神旺盛な社員には自ら手を挙げるチャンスがある。現在、グループ会社の経営者の最年少は32歳の若手の生え抜き人材である。経営という難しい判断を迫られる仕事を比較的小規模なグループ会社で経験させることは、経営者視点・考え方を養う登竜門であるとの考えによるものだ。

また、寛氏自らがグループ会社の社長含む幹部を対象に、これまでの経営における自身の失敗談、成功談、経営者としての考え方などを伝える研修も開始し、創業経営者から直接経営を学べる貴重な機会もある。

株式会社シャトレーゼホールディングス創業者 齊藤 寛氏

「素材を生かした洋菓子の流通革命」 を世界へ:日本における成長とグローバル化

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ファミリービジネス企業の永続的な発展のヒント 18

同社が始めた「素材を生かした洋菓子の流通革命」を、シャトレーゼは世界に広げようとしている。洋菓子の伝統あるオランダで、フランスブルターニュ産の乳製品を原料とした製品作りに取り組むほか、近年はシンガポール・台湾・マレーシア・中国・韓国・香港などアジア各国、2016年にドバイにも出店、今後はインドネシア・ベトナム・タイ・フィリピン・カナダにも出店予定である。「日本は少子高齢化が進んで洋菓子の消費が減り、国内だけでは先が見えている。将来は海外売上の割合を多くしたい」と寛氏は語る。目標としては、現在1割に満たない海外の売上比率を5年後には5割程度まで引き上げることだ。

寛氏は、企業の長期ビジョンである100年企業の構想を自ら書面化し、幹部社員に発表した。100年企業の実現に向け、向こう3年、5年どうあるべきかのビジョンを共有するだけでなく、幹部社員一人ひとりが何をすべきか、深く考えさせる風土も根付いている。

また両親の教えに基づいた社是である「三喜経営」(顧客・取引先・社員に喜ばれる経営)の理念も、さらに社内に浸透させ、守り育てていきたいと言う。現在83歳となる寛氏だが、「30年プラン」が構想としてあるといい、「グローバル展開の先を見届けたい。達成する頃には110歳になるけどね」と笑いながらも中長期ビジョンを見据え、さらなる飛躍へと挑戦を続ける。

香港 台湾UAE

韓国

マレーシア

シンガポール

中国

2016年までの出店状況

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19 ファミリービジネスサーベイ2016 日本分析版

1. ファミリー企業は生き残るためにイノベーションを起こさなければならない

創業以来100年以上続く企業について、市場(商圏)と事業分野(製品・技術)の範囲のイノベーションに関して100社の分析を行ったことがある。最も多いイノベーションは創業事業の周辺への進出(市場または事業分野)で全体の49%を占める。全くの新規分野への進出が32%で、残りの19%は、創業時

と同じ市場で同じ製品を販売していた。そのような企業も、継続的に細かな工夫を重ねることで、商品力を磨き続け、専門性を高めている。そのようなイノベーションを「深堀型イノベーション」と呼んでいる。

やはり企業を100年続ける過程では、顧客のニーズ・嗜好の変化、技術の進展、代替製品・サービスの登場など企業を取り巻く環境も大きく変わる。そのような状況下、企業としての競争力を

ファミリービジネスが100年続くための4つの視点日本における老舗企業、ファミリービジネス研究に関して第一人者の一人である日

本経済大学の特任教授である後藤 俊夫氏が考えるファミリービジネスが100年続くための4つの視点を紹介する。

日本経済大学特任教授後藤 俊夫氏

維持するにはそのような変化に柔軟に、かつスピーディーに対応していかなくてはいけない。 

つまり、企業が長期にわたり持続していくためには、イノベーションは不可欠である。企業は社歴が長くなればなるほど、過去の成功体験に束縛され、変革への力が弱まりがちである。よって、ファミリー企業が永続するためには、 イノベーションの工夫を続ける必要がある。

1

2

3

4

ポイント1ファミリー企業は生き残るためにイノベーションを起こさなければならない

ポイント2ファミリー企業は長期的な視点を持たなければならない

ポイント3ファミリー企業はもっと外に目を向ける必要がある

ポイント4ファミリー企業は「社会の公器」という認識を持って経営しなければならない

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ファミリービジネス企業の永続的な発展のヒント 20

2. ファミリー企業は長期的な視点をもたなければならない

長寿企業の特徴として「長期的経営の視点」がある。20年ほど前にある長寿企業経営者とインタビューで、「短期10年、中期30年、長期100年」ということを聞き、驚いたことがある。短期の10年は後継者を見つけて、経営者として育成してバトンタッチするまでである。中期の30年は、自分の社長の任期である。長期100年というのは、その経営者いわく、子供の代を超えて孫の代まで考えて経営を行うことである。

ファミリー企業は、10年前後という長い時間を承継計画の策定、後継者の育成など事業承継に費やすことができるのにも関わらず、現実的には取り組めていない例も多い。事業承継の準備は、今すぐに取り組まなくても経営にはあまり影響はない。しかしながら、事業承継の準備に何も手をつけずにいると、徐々に経営にインパクトがでてくる可能性がある。事業承継に10年間という長い時間を使えるということを、どれほど多くのファミリー企業の経営者自らが意識して実際にやっているだろうか。

3. ファミリー企業はもっと外に目を向ける必要がある

ファミリー企業を取り巻く利害関係者として、社員、顧客、納入業者、地域社会などがある。ファミリー企業は、特に価値観を共有できる適切なパートナーを選ぶことが重要である。ファミリービジネスは、社歴が長くなればなるほど物の見方や考え方が内向きになるという傾向にある。それは日本だけでない。いかに外部に意識的に目を向けるか、が大事になってくる。やはりそこにはトップのリーダーシップが必要である。

また、ファミリー企業はファミリー以外の人材の獲得・才能が必要であろう。オープンで創造的な文化を維持する一つの方法としては、外部からの人材を獲得することが望ましい。外部の人材は新しいアイデアや新しい働き方をもたらす可能性がある。

実は、2014年に CEO が変わった日本のファミリー会社を全て見てみると、上場企業の173社のうち、新 CEO の3分の2は非親族だった9。

4. ファミリー企業は「社会の公器」という認識を持って経営しなければならない

「企業は社会の公器」という言葉がある。社会のためによい商品・サービスを提供しようとしている企業を消費者はじめ利害関係者も支援しようと考える。日本は古来からそういった思想が綿々と脈うっていて、それが日常生活の中に生きていた。

2011年の東日本大震災で被災した岩手県、宮城県を訪問し、地元のファミリー企業の経営者の方が「今まで100年続いたのは、お客さん、取引先、地域などの周りの人から助けられてきたから。だから今度は私たちが周りの人たちに恩返しをする」とお話しされた。「恩返し」といった日本固有の言葉が日本の精神性を如実に示していると思う。

社会のためと思えば、顧客のためにさらに付加価値のある商品・サービスをつくれる。付加価値のある商品・サービスをつくれば比較的価格帯も高めに設定でき、適正水準の利幅も取れ、経営もいい循環にまわっていく。これが日本のファミリービジネスが100年続いているパターンである。「社会の公器」であるという認識を持って経営することは、日本のファミリービジネスが持っている素晴らしい特徴だと思う。これは日本だけでなく、世界的な普遍性を持っており、海外から一層注目されてしかるべきと考える。プロフィール

1942年生まれ。東京大学経済学部卒。ハーバード大学ビジネススクール(MBA取得)。日本経済大学大学院 特任教授。一般社団法人100年経営研究機構 代表理事。大学卒業後NEC に入社、1997年から1999年まで(財) 国民経済研究協会・常務理事(兼)企業環境研究センター所長。1999年静岡産業大学国際情報学部教授、2005年光産業創成大学院大学統合エンジニアリング分野教授を経て、2011年より日本経済大学渋谷キャンパス教授に就任し、同経営学部長を経て、2016年4月から現職。2015年(一社)100年経営研究機構設立、代表理事に就任。経営戦略(企業の持続的成長) を専門分野とし、日本における長寿企業、ファミリービジネス研究の第一人者の一人である。

9 『ファミリービジネス白書 2015年度版 100年経営を目指して』(同友館)後藤俊夫監修

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21 ファミリービジネスサーベイ2016 日本分析版

今回実施した FB 企業経営者の意識調査について、日本とグローバルとの比較結果とその洞察についてこれまで述べてきました。その結果から導き出されたFB 企業の課題は、まずは「人材」であり、そして「イノベーション」と「デジタル化への対応」です。

これらの課題に取り組む上で鍵となるのは、まず1点目として、長期的な視点を持ちながらも、ビジョン実現のための『具体的な中期経営計画の策定と実行』です。中期経営計画とは、自社の置かれた現状を認識した上で、企業の中・長期的なビジョンの実現にあたり、5年程度の時間軸で、「いつ」、「なにを」、「どのように」実行していくかを明確にした具体的な行動計画です。その中には国際化、事業承継、デジタル化などの計画も含まれ、そのために必要な人材を採用・育成・維持していくことがポイントと言えます。また、中期経営計画については、ある程度柔軟性をもち、経営環境の変化に応じて適宜修正することが望ましいと考えます。

2点目として、これまで触れてきましたように、環境変化の激しい時代に対応していくためには、本業を軸とした新規事業であれ、新たな市場への参入であれ、イノベーションは必要不可欠です。高い専門性と豊富な経験をもった外部人材の採用や専門家のアドバイスなどにより、多様な物の見方・考え方などを社内に取り入れることが望ましいと思われます。そして、新しいことへのチャレンジを推奨する、失敗を許容するなど自社で工夫して『継続的にイノベーションが生み出される風土づくり』に取り組むことが今後ますます重要になってきます。

3点目として、デジタル化に関して現在起きている事象や今後の動向に対して、今まで以上に高い意識をもつ必要があります。たとえば、販売、生産、マーケティング、そして、昨今政府も注力している「働き方改革」においても、テレワーク、モバイルワークやコミュニケーションツールなど、まさにデジタル技術の活用の余地は多分にあり、今後 FB 企業がさらなる発展を続けるためには、『デジタル化への対応』は避けて通れないと思われます。業務改善による生産性の向上、マーケティングでの活用による顧客とのエンゲージメントの向上、柔軟な働き方の提供など、デジタル化の重要性を再認識した上で積極的に進め、自社の競争力向上につなげることが求められます。

9ページの図表4のとおり、FB 企業の優れた点は、理念、社是、家訓といった企業経営における価値観の軸をもって、長期的視点に立って経営をし、素早い意思決定ができることです。日本の老舗企業のほとんどは FB 企業であり、創業の精神を企業経営の拠り所としながら、過去の成功体験にとらわれることなく、事業を継続するという強い使命感をもち、その時々の時代の変化に柔軟に対応し、革新を起こし続けてきました。

おわりに

今回の調査での最後の質問である「長く残したいレガシーは何か」に対しては、「会社の経営方針、理念、社是、家訓、創業の精神」、「経営者自身の生き様、生き方」、「社員を大切にする経営」、「誠実、品質、尊敬、信頼などの価値観」、「事業が安定して継続すること」といった回答をいただきました。「企業は社会の公器」、近江商人の「三方よし」といった言葉に代表されるように、日本の FB 企業が伝統的に大事にしてきた、今後も変わることがない価値観を守りながらも、会社の一番の財産である社員を大切にし、時代の変化に柔軟に対応しながら永続的に経営を行うことは、FB企業経営者の願いであると言えます。

複雑化、不安定化が増す国際情勢、そして急速な技術の進展など、ますます予見が困難な昨今、永続的に企業が成長し発展し続けていくためには、「変わらぬもの」を大事にしながら、「変わり続けるもの」に対応するための戦略と実行が、今こそ求められています。

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ファミリービジネス企業の永続的な発展のヒント 22

補足データ

図表20:昨年度の売上の状況

図表21:個人として、企業として、これからの5年間に重要な目標

質問:前々期に比べて、前期の売上はどのように変化しましたか?

質問:これから個人としての目標、企業としての目標をいくつか列挙しました。これからの5年間、あなたにとってそれぞれの目標がどの程度重要になるかを10段階で評価してください。重要でない場合を1、重要性が高く不可欠な目標である場合を10として10段階でお答えください

25% 20%

67% 64%

日本 グローバル

売上増

売上減

グローバル

従業員に公正に報い、成功を共有する

事業の長期的将来性を確保する

高度なスキル人材を採用し、事業に投入する

仕事を楽しみ、興味を持ち続ける

利益率の向上

セクター、商品、チャネルを多様化する

もっとイノベーションを進める

もっとプロフェッショナルな方法で事業を運営する

貢献する/良いレガシー(将来への遺産)を残す

国内の新しい地域市場に参入する

可能な限り速く成長する

新しい輸出市場に参入する

ファミリービジネスのまま維持する

親族を新たに雇い入れるために雇用を創出する

76%

91%

83%

84%

82%

47%

72%

68%

67%

43%

38%

43%

53%

18%

90%

86%

82%

82%

71%

68%

64%

55%

48%

43%

38%

34%

24%

14%

7~10を回答した割合

Page 24: ファミリービジネス企業の 永続的な発展のヒント …ファミリービジネス企業の永続的な発展のヒント 2 「ファミリービジネス企業」の定義

23 ファミリービジネスサーベイ2016 日本分析版

図表24:家族と事業の一致

質問:「家族戦略と事業戦略は完全に一致していると思う」に関して、どの程度賛同するか、全くそう思わない場合を1、強くそう思う場合を5として、5段階でお答えください

グローバル

69%

53%

日本

4と5を回答した割合

図表22:事業多角化の現状

質問:貴社の多角化の現状を最も適切に説明しているのは次のうちどれですか?

33% 30%

20% 20%

20% 25%

27% 25%

日本 グローバル

複数国で複数業種

複数国で1業種のみ

ひとつの国で複数業種

ひとつの国で1業種のみ

図表23:国外市場の決定に際して重視する要素

質問:すでに進出している国および/またはまだ進出していない国について、5年後に貴社の商品やサービスをどの国に販売するかを決定する際に、以下の要素はどの程度重要ですか?非常に重要である場合を5、特に重要でない場合を1として、5段階でお答えください(複数回答可)

4と5を回答した割合

71%

69%

20%

14%

73%

61%

36%

26%

経済的安定・政治的安定

規模・成長可能性

近隣国であること

言語・文化 日本

グローバル

Page 25: ファミリービジネス企業の 永続的な発展のヒント …ファミリービジネス企業の永続的な発展のヒント 2 「ファミリービジネス企業」の定義

ファミリービジネス企業の永続的な発展のヒント 24

図表26:ファミリービジネスへの次世代の関与

質問:現在、次世代の親族で以下の方はいますか?ご自身が該当する場合は、ご自身も含めてください

35%

25%

41%

4%

58%

39%

36%

16%

上級管理職

中間・下位管理職

就業はしておらず、株を所有している

就業はしておらず、別の方法で報酬を得ている 日本 グローバル

4と5を回答した割合

図表25:FB企業の強みと弱み

質問:下記の文章に関して、どの程度賛同するか、全くそう思わない場合を1、強くそう思う場合を5として、5段階でお答えください

グローバル

57%

65%

37%

57%

47%

経済のバランスと安定性に貢献している

不況時にも雇用を支えている

利益を目的とせず地域の取り組みを支えている

世代ごとに自社を改革している

新しい考え方やアイデアを取り入れる機会が限られるのではないかと心配である

77%

74%

66%

57%

35%

Page 26: ファミリービジネス企業の 永続的な発展のヒント …ファミリービジネス企業の永続的な発展のヒント 2 「ファミリービジネス企業」の定義

25 ファミリービジネスサーベイ2016 日本分析版

86%

65%

日本 グローバル

72%

33%

日本 グローバル

49% 54%

日本 グローバル

図表27:親族以外の取締役

図表29:男女同権プログラム

図表28:親族以外の株主

質問:貴社には親族以外の取締役がいますか?

質問:「男女同権プログラムを積極的に推進している」に関して、どの程度賛同するか、全くそう思わない場合を1、強くそう思う場合を5として、5段階でお答えください

質問:親族ではないが貴社で働いている人、もしくは親族でもなく貴社で働いてもいない人(プライベートエクイティもしくはその他の金融機関を含む)で、貴社の株を所有している人はいますか?

「はい」と回答した割合 「はい」と回答した割合

4と5を回答した割合

Page 27: ファミリービジネス企業の 永続的な発展のヒント …ファミリービジネス企業の永続的な発展のヒント 2 「ファミリービジネス企業」の定義

ファミリービジネス企業の永続的な発展のヒント 26

補足データ~日本独自追加質問~質問1:会社経営において何が最も重要とお考えですか?

質問5:戦略的事業計画(ビジネスプラン)はありますか?

質問3:経営者の資質として最も重要と思われることは何ですか?

質問7:事業承継にあたっては、何が最も重要とお考えですか?

質問2:それは達成できていますか?

質問6:創業家(ファミリー)における女系親族の影響力はありますか?

質問4:貴社の強み(特長)は何ですか?

質問8:事業承継の現状での課題は何ですか?

4%

73%

22%

十分達成されている

まあまあ達成されている

達成されていない

27%

11%

5%

人材

18%営業力、サービス

15%開発力・商品力

24%ノウハウ、商圏(顧客)

財務安定性、内部管理体制

その他

13%

13%

69%

4%

かなりある

まあまあある

あまりない

その他

4%

20%後継者

23%株式の承継(株高、株主など)

23%会社の将来性

31%人材・組織・管理体制

その他

70%

11%

4%

15%カリスマ性、リーダーシップ

先見性、変化への対応能力

調整能力

その他

株主

営業力、サービス

その他

開発力・商品力

顧客との関係

戦略

人材(優秀な人材の確保、育成など) 71%

13%

8%

4%

4%

0%

0%

36%

47%

18%

かなり具体的なものを作成している

おおおまかなものは作成している

不十分、作成していない

6%

65%

15%

会社の永続的な発展・将来性

後継者の選定・育成

6%株式の承継

8%経営ノウハウなどビジネスの承継

その他

Page 28: ファミリービジネス企業の 永続的な発展のヒント …ファミリービジネス企業の永続的な発展のヒント 2 「ファミリービジネス企業」の定義

27 ファミリービジネスサーベイ2016 日本分析版

質問9:後継者はどのように考えていますか? 質問10:後継者選定にあたっては、何を基準に決定されますか?

質問11:相続対策は具体的に検討されていますか?

33%

24%

9%

33%

親族内

社内(親族以外の役員・従業員)

親族外・社外

未定、検討中

50%

13%

37%

具体的に検討し、進めている

検討中

未検討

10%

10%

6%

36%経営能力

37%人間性、人望など

今までの継続性

将来性

その他

日本では、独自に質問内容を追加し、フェイス・ツー・フェイスでインタビューを行った44人から回答をいただいた。

Page 29: ファミリービジネス企業の 永続的な発展のヒント …ファミリービジネス企業の永続的な発展のヒント 2 「ファミリービジネス企業」の定義

ファミリービジネス企業の永続的な発展のヒント 28

年齢

売上高(米ドル)

世代数

ビジネスにおけるファミリーの役割

業種

現在の役職

調査対象の属性

日本

10億超

5億100万~10億

1億100万~5億

5,100万~1億

2,100万~5,000万

1,100万~2,000万

1,000万以下

グローバル

20%

16%

18%

6%

6%

27%

8%

16%

20%

17%

15%

4%

20%

6%

日本

4世代以上

3世代

2世代

1世代

グローバル

25%

16%

49%

10%

21%

28%

39%

11%

日本

65歳以上

55歳~64歳

45歳~54歳

35歳~44歳

35歳未満

グローバル

24%

27%

2%

25%

22%22%

34%

10%

23%

10%

日本

経営はせず所有のみ

所有と経営

グローバル

98%

2%

90%

10%

90%

71%

2%

13%

6%

46%

12%

19%

2%4%

CEO/業務執行取締役

会長

所有者

その他の取締役

パートナー

日本

グローバル

他営利事業

ホテル・飲食業

不動産業

農業

鉱業&公益事業

輸送業

建設業

小売業

卸売業

製造業 39%28%

23%27%

10%11%

10%9%

4%8%

5%

5%

3%

4%2%

2%

2%

2%2%

4%

日本グローバル

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29 ファミリービジネスサーベイ2016 日本分析版

お問い合わせ先小林 和也パートナーミドルマーケット担当PwC 税理士法人[email protected]

高田 佳和パートナーミドルマーケット担当PwC 京都監査法人[email protected]

越田 勝パートナーIPOソリューション部リーダー兼 ベンチャー支援センター長PwCあらた有限責任監査法人[email protected]

ファミリービジネス企業への経営サポート成功するファミリービジネス企業とは、専門的な経営管理能力と責任ある事業のオーナーシップ、そして家族の健全な力

関係の間で上手にバランスを取る企業であるとPwCでは理解しています。ファミリービジネス企業に特有の課題を十分に理解した上で、PwC のアドバイザーは、世界各地の多岐にわたる業界と市場において、大小さまざまな規模のファミリービジネス企業をサポートしています。戦略策定やガバナンス、事業と個人資産の承継、海外進出、IPO(株式公開)などファミリービジネス企業が永続する価値を築いていくために必要な支援を行っています。

執筆/分析小林 和也 パートナー ミドルマーケット担当 PwC 税理士法人高田 佳和 パートナー ミドルマーケット担当 PwC 京都監査法人越田 勝 パートナー IPOソリューション部リーダー兼ベンチャー支援センター長 PwCあらた有限責任監査法人今井 兼人 マネージャー マーケット部 PwCあらた有限責任監査法人

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www.pwc.com/jpPwC Japanグループは、日本におけるPwCグローバルネットワークのメンバーファームおよびそれらの関連会社(PwCあらた有限責任監査法人、PwC京都監査法人、PwCコンサルティング合同会社、PwCアドバイザリー合同会社、PwC税理士法人、PwC弁護士法人を含む)の総称です。各法人は独立して事業を行い、相互に連携をとりながら、監査およびアシュアランス、コンサルティング、ディールアドバイザリー、税務、法務のサービスをクライアントに提供しています。PwCは、社会における信頼を築き、重要な課題を解決することをPurpose(存在意義)としています。私たちは、世界157カ国に及ぶグローバルネットワークに223,000人以上のスタッフを有し、高品質な監査、税務、アドバイザリーサービスを提供しています。詳細はwww.pwc.com をご覧ください。

電子版はこちらからダウンロードできます。 www.pwc.com/jp/ja/japan-knowledge/thoughtleadership.html 日本語版発刊年月: 2017年4月 管理番号: I201702-3

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