ファーマコメトリクス研究に 要求されるスキル及び そのため...
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ファーマコメトリクス研究に要求されるスキル及び
そのための教育
株式会社ベルシステム24
医薬関連サービス事業本部
生物統計局 薬物動態解析グループ
笠井英史
2008.11.16 (Sun) 第1回ファーマコメトリクス研究会
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今日の内容
• ファーマコメトリクス研究のゴール
• 必要なスキル
• 教育
• 教育講演、ではなく、
• 現状の問題点認識
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ゴール
• 有効かつ安全な薬を早く市場に出し、薬物治療に貢献する
• それを阻む要因
– 「有効かつ安全」となるための最適用法用量で使用されない
• 治験段階、市販後
– 開発期間長期化、コスト増大
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モデル
現実
モデル
実験
• 理想化
• 抽象化
• 衝突
• 空気抵抗 データ
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シミュレーション
• 現実データが得られるならばそれがベスト• コンピュータ内で現実を模倣 (simulate)
– モデルを用いて模倣
• まず、モデルを作成し、評価– モデルは現実をどの程度模倣できているか?
– モデルから目的とする情報が取り出せるか?• 空気抵抗実験なら車内の情報は不要
• 吸収相付近の当てはまり?
– Goodness-of-fit、予測性能の評価 (VPC)
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ファーマコメトリクス(Pharmacometrics)
• 薬剤計量学 (?)、計量薬理学 (?)• PMx• MBDD has evolved to encompass
pharmacometric modeling and simulation, which includes the sciences of PK, PD, statistics, and clinical pharmacology. (Grasela, 2007, CPT)
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PMxを進めるために
• 必要なスキル– PPK/PD、統計、解析ソフト
– そのための教育をどうするか
• 臨床薬理学、医薬品開発の知識、経験
• プレゼン、交渉技術
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基本的な流れ
• 臨床試験データ (実データ)– (P)PK/Response 解析
• (P)PK/Response モデル– モンテカルロ・シミュレーション
• (仮想)臨床試験データ– 統計学的評価
• 試験デザインへの反映– 試験実施
• 臨床試験データ (実データ)– (以下、繰り返し)
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PPK、PK/PDモデリング
• 母集団解析– NONMEM– MONOLIX– WinBUGS
• PK/PDモデル
– Mechanism-based model
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Hamren (2008) CPT
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Hamren (2008) CPT
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統計解析
• 理論
– 深入りの必要はないが、基本的な知識は必要
– 確率分布
• 医学統計特有の話題
• 試験デザインに関する知識
• プログラミング– SAS、S-PLUS/R
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必要な統計の知識
• 確率分布
– 正規分布、二項分布、ポアソン分布
• 推定、検定
– 検出力
• 回帰分析– Model-based drug development
• ベイズ統計
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回帰分析
• (非)線形混合効果モデル
– 非線形モデルを敬遠?
• ロジスティック解析
• 生存時間解析
• ポアソン回帰
– 一般化線形モデル
• モデル構築のノウハウ
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Rohatagi (2008) BJCP
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ベイズ統計
• 臨床統計ではベイズ統計をあまり使わず
• PKにとってはTDMでもおなじみ
– 抵抗少ない
• 混合効果モデルのベイズ的解釈– POSTHOC。経験ベイズ
• MCMC• Learn - Confirm
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Learn - Confirm
• 知識なしの状態
• データ ⇒ 解析、結果
– 事前分布
• 事前情報を用いて次のデザイン
• データ ⇒ ベイズ解析、結果
– 事前分布(以前より精度高い情報)
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NONMEM の $PRIOR
• パラメータの事前情報を用いる– THETA、OMEGA、SIGMA
• 吸収相のデータが少ない時– Ka、ωKaの事前情報を利用
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Time (hr)
Con
cent
ratio
n (n
g/m
L)
0
200
400
600
800
1000
5 10 15 20
Phase I0
200
400
600
800
1000
Phase II
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モデル構築のノウハウ• モデル探索
– 経験、職人芸
– 解析者間差
• 背景知識
– 薬物動態、医学、薬理学
• モデル評価。バリデーション– M&Sのためには特に重要
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シミュレーション
• 現実データが得られるならばそれがベスト• コンピュータ内で現実を模倣 (simulate)
– モデルを用いて模倣
• まず、モデルを作成し、評価– モデルは現実をどの程度模倣できているか?
– モデルから目的とする情報が取り出せるか?• 空気抵抗実験なら車内の情報は不要
• 吸収相付近の当てはまり?
– Goodness-of-fit、予測性能の評価 (VPC)
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Time (hr)
Con
cent
ratio
n (n
g/m
L)
0
200
400
600
800
1000
5 10 15 20
Phase I0
200
400
600
800
1000
Phase II
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シミュレーション
• モンテカルロ・シミュレーション– Trial Simulator– Crystal Ball– SAS– S-PLUS/R
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テクニカルな流れ
• モデルを用意
• 以下を繰り返す
– 「患者」を発生
– PK/PD パラメータを発生
– PD データを発生
– 評価
• 「患者」の発生
– 年齢,体重,臓器機能,併用薬に相関
– 実際のデータ (分布)を利用?
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道具に求められること
• 乱数で「データ」を発生
• モデル解析– PPK 解析
– 回帰分析,ロジスティック解析,生存時間解析
• 以上を多数回繰り返す
– 多数回の結果をどう集計するか
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道具• NONMEM
– 「1 試験」のシミュレーション
– $SUPER の利用 (?)– 集計が弱い
• 統計ソフト– S-PLUS あるいは SAS
• S-PLUS / SASから NONMEM を起動
• Trial Simulator– 費用対効果?
• Crystal Ball– 「1 試験」のシミュレーション
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臨床試験の多数回シミュレーション
• S-PLUS– 患者背景データを復元抽出で作成
– S-PLUS から NONMEM を起動
• 出力を取り込み、集計
– 必要な統計解析
• Trial Simulator– データは復元抽出で作成
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S-PLUS でのシミュレーション
• 背景データ読み込み
• Resampling (sample())• 患者背景 ⇒ PK パラメータ ⇒ 濃度
• 患者背景 ⇒ PD パラメータ
– 濃度 + PD パラメータ ⇒ 有効 / 無効 データ
• 2 検定 (chisq.test) ⇒ 検出力を算出
• 77 行のプログラム
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SAS でのシミュレーション
• 背景データ読み込み
• Resampling (PROC SURVEYSELECT)• 患者背景 ⇒ PK パラメータ ⇒ 濃度
• 患者背景 ⇒ PD パラメータ
– 濃度 + PD パラメータ ⇒ 有効 / 無効 データ
• 2 検定 (PROC FREQ) ⇒ 検出力を算出
• 127 行のプログラム
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Modeling & Simulation の目的
• 最適な用法・用量の設定
• 試験デザイン
– 用量群の設定• 何群? 用量?
– 例数設計
– 評価時期設定 (何週目?)
– エンドポイント設定
• Go/No Go意思決定
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教育プログラム
• 教育対象者
• 教育コース
• テキスト
• 臨床統計の過去と現在
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臨床統計
• 約10年前の状況
– 統計家は各社ともせいぜい数人ずつ
• 圧倒的不足
• 臨床統計の教育機関少ない
– 試験統計家育成が急務• 「臨床試験のための統計的原則」 (E9)• 平成10年11月30日
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試験統計家 (Trial Statistician)
• 本ガイドライン中の原則を実行するために、十分な理論又は実地の教育及び経験を併せ持ち、かつ当該試験の統計的側面に責任を持つ統計家。
• 生物(医学)統計学に関連して、大学等の教育機
関において受けた教育の内容、卒業後の研修・訓練の状況、研究業績、実際の臨床試験に対してどのような立場でどの程度関わったかといった経験等を総合的に判断して個々の試験での試験統計家の選定に当たっていただきたい。
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臨床統計、その後
• 東京大学、東京理科大学、北里大学、京都大学、久留米大学、国立保健医療科学院
• 探索的モデル解析?
– 非線形モデル
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教育対象者• PK、ADMEの人に統計を教える
– プログラミングは向き、不向き(先天的才能?)
– 数式嫌い
– 日本語の良いテキストがない
• 非線形混合効果モデル
• 統計の人にPKを教える
– 日本語のテキスト
• 一人がすべてを知る必要はないが、ある程度の知識は必要
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教育コース
• PPK、M&Sを教えるコース
– 明治薬科大学オープンカレッジ
• 社会人対象大学院
• 京都大学薬学部 統合薬学フロンティア教育センター
• 教育用テキスト
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教育コース
• PPK、M&Sを教えるコース
– 明治薬科大学オープンカレッジ
• 社会人対象大学院
• 京都大学薬学部 統合薬学フロンティア教育センター
• 教育用テキスト
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教育用テキスト
• NONMEM、M&S– 実践的テキスト
• 統計
– 非線形混合効果モデル
• モデル構築の事例集
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第2回(以降)PMx研究会への期待
• スキル– PK、臨床薬理、臨床開発
– 臨床統計
– 教育
• ツール– ソフトウェア
• チュートリアル
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ゴール
• 有効かつ安全な薬を早く市場に出し、薬物治療に貢献する
• それを阻む要因
– 「有効かつ安全」となるための最適用法用量で使用されない
• 治験段階、市販後
– 開発期間長期化、コスト増大