ナノテクノロジーによる生産技術革新に関する調査...

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ナノテクノロジーによる生産技術革新に関する調査研究 成果報告書 【ダイジェスト版】 平成 18 年 3 月 独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 受託者 独立行政法人 産業技術総合研究所 平成17年度調査研究報告書 V1.05

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ナノテクノロジーによる生産技術革新に関する調査研究

成果報告書

【ダイジェスト版】

平成 18 年 3 月

独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構

受託者 独立行政法人 産業技術総合研究所

平成17年度調査研究報告書

V1.05

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( i )

課題と解決のための指針

本事業 - 「ナノテクノロジーによる生産技術革新に関する調査研究」に於いて見いだされた、製造業の主要課題と

その解決のための指針について、以下に概要を列挙する。

■ 抽出された主要課題

主要製造業のマーケットは、飽和傾向を示している。また、変量多品種ないし少量多品種が支配的になって

いる。それにもかかわらず、製造システムは単品大量生産型である。特にインテグレーション工程(半導体集

積回路、液晶パネル製造等)では、強い単品大量生産型から変わっていない。

品質を落とさないコストダウンテクノロジーとそのための戦略が存在していない。

高付加価値・高機能指向の日本の大きな国内マーケットが、日本の製造業の国際競争力を削いでいる。

ナノテクノロジーはこれまでの所、自己完結型の Innovation for Nanotechnology であって、生産技術革新に

つながっていなかった。

インテグレーション工程では、人の生産性への寄与が低く、トヨタ生産方式的なムリ・ムダ・ムラの徹底排除が

進んでいない。また、生産物が小さい割に、環境負荷やエネルギー消費率が巨大であり、生産効率/設備投

資という本質的な点で実は生産的でない。

日本の得意とする、高品質製造が危うくなっている。生産設備投資の巨大化と、研究開発費の先細り、激し

い時間軸でのマーケット変化、そして、匠の技の伝承に陰りが見られることが原因である。

■ 課題解決のための指針

変量多品種向け技術開発や生産システム開発は、単品大量生産ビジネスに応用すべきでなく、変量多品種

に向いたビジネスに利用されることで、真のオンデマンド生産と低コスト生産が可能になり、企業利益をもたら

す。

品質とコストダウンを両立するテクノロジーを開発推進すべきである。

インテグレーション工程に於いては、原子スケールレベルやナノ・ミクロンレベルでの生産性の革新がすすん

でおらず、十分に生産性の革新の余地がある。ナノテクノロジーの活用で産業活性化に活路が拓ける可能

性がある。ナノテクノロジーを、Nanotechnology for Innovation と新たに位置づけることが重要である。

変量多品種生産の具体的技術やシステムとして、インクジェット技術、マイクロリアクター、局所クリーン化生

産システム(環境分離型生産システム)、Self-Assemble MEMS(または Self-Functional MEMS)が例示され

た。

持続発展可能な社会を構築し、かつ国際競争力を確保するための方策として、ミニマル・マニュファクチャリ

ングコンセプトが有効であり、その具体的実現には、変量多品種生産システムの普及が有効である。

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( ii )

本 書 の利 用 の仕 方

本書は、ダイジェスト版です。必要に応じて本編をご覧下さい。

本書は、概要と主張、それに会議でのクリエーティブなディスカッション、そして、産総研の取組みと、

製造業の調査データで構成されています。ご利用に際しては以下を参考にして下さい。

■ この事業から何が得られたのか?:1ページサマリー

「課題と解決のための指針」 page (i)(この前のページ)

■ 事業概要と主張

「第1章:事業概要と提言」 page 1-13

■ 産業界の声や議論 (本編に収録)

「第2章:会議議事録」 page 15-136 「第3章:会議資料」 page 137-259

■ 産総研の考え方と取組み

「巻頭言」 page (v) 「ナノテクノロジーへの期待 ― ミニマルマニュファクチャリングの視点から ―」 page (vi) 「第4章:イノベーションのための新たな取り組み」 page 261-283

■ 基礎調査データ (本編に収録)

「第5章:市場・製造調査資料」 page 285-428

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( iii )

目 次

巻頭言 ··························································································································································· (v)

ナノテクノロジーへの期待 ⎯ ミニマル・マニュファクチャリングの視点から ⎯ ······································ (vi)

第1章:事業概要と提言 ······································································································································································· 1

1.1 事業概要 ······································································································································ 3

1.2 現代製造業の課題とその克服のための新産業戦略 ···································································· 9

第2章:会議議事録 (本編に収録)·················································································································································· 15

会議委員名簿 ····································································································································· 17

第一回会議 ········································································································································· 19

第二回会議 ········································································································································· 55

第三回会議 ········································································································································· 96

第3章:会議資料 (本編に収録)······················································································································································· 137

◇ 本事業の背景と会議の進め方 (原史朗) ··············································································· 139

◇ 変わっていく"ものづくり" (高須秀視) ····················································································· 158

◇ ミニマル・マニュファクチャリングについて (五十嵐一男) ······················································· 170

◇ 電機業界の変わっていくモノづくり (伊藤正弥) ····································································· 176

◇ 生産上の革新についてのターミノロジー (島田孝) ··································································· 179

◇ 変わっていく LSI 製造とナノテク製造への期待 (後河内透) ·················································· 181

◇ ナノ装置とマイクロ工場 (江上洋一) ······················································································· 191

◇ 変わっていく「ものづくり」(品質面からのアプローチ) (平野稔) ············································· 198

◇ 化学プロセスのダウンサイジングと高付加価値生産、

化合物半導体のエレクトロニクスとウエハー産業 (清水肇) ·················································· 200

◇ 環境負荷の視点から (増井慶次郎) ······················································································· 210

◇ 設計支援システム(ナリッジベーストエンジニアリング) (水本宗男) ······································· 215

◇ クリーンルームにおけるムダとは (川又亨) ············································································· 217

◇ 建設業からの提案 (梶間智明) ······························································································ 222

◇ 医薬品エンジニアリング遂行の視点からの個人的見解 (渡辺恵市郎) ·································· 229

◇ インクジェットを例に (村田和広) ···························································································· 232

◇ 中小企業と日本のものづくり (上野保) ··················································································· 242

◇ イノベーション:生産システムの展開 ⎯ IMS, ADMS, BMS ⎯ (上田完次) ··················· 248

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( iv )

第4章:イノベーションのための新たな取り組み ······················································································································· 261

4.1 ナノスケール新技術による生産技術革新の可能性 ······································································ 263

4.2 環境負荷の観点からみた生産革新の必要性 ··············································································· 272

4.3 局所クリーン化生産システムによる生産性革新の可能性 ····························································· 278

第5章:市場・製造調査資料 (本編に収録)································································································································· 285

5.1 基幹製造産業におけるマーケット調査 ························································································· 287

5.2 基幹部品・基幹製品製造産業調査 ······························································································ 349

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( v )

巻 頭 言

日本経済もいよいよ長い谷間を脱して、少なくともマクロ指標からみるかぎり、緩やかな成長局面に入っているら

しい。この原動力となったのは、情報技術を取り入れた生産プロセスの効率化という意味での前向きな合理化を徹

底して敢行した製造業であり、そのパワーがタイミングよく、中国の経済成長と共鳴したことが幸いした。高付加価

値製品の生産によって支えられている日本の将来に、こうしていくらかの明るさが出てきたことは大変にうれしいこと

なのだが、では現状が持続可能な経済モデルかと問われると、理由はともあれ識者も一般人も一様に否定的なの

ではないだろうか。

原料から最終製品を作る過程が生産であり、それを実行するための方法論の体系が生産技術である。技術を集

約し、最適化することが必然的に組み込まれた生産というものの宿命として、一国が生み出す価値全体のなかで、

生産活動が生み出す付加価値は、時とともに減少していく傾向を持つ。事実、生産による直接的付加価値の割合

は、先進国に共通して10%から20%の範囲にあるが、中でも特徴的なことは、日本のそれが近年20%から顕著な

下降線をたどっていることである。このこと自体は、個々の技術開発からTQCに至るまで、生産活動全体の血の出

るような効率化の成果であり、誇るべきことではあるが、その反面、生産という行為の社会的重みが減少しているこ

とを表してもいる。経済全体が急成長フェーズであれば、それでも問題はないが、低成長時代では、社会における

価値創造のプレーヤーとしての生産の比重がしだいに低落していくことを意味しており、技術と人材の枯渇を招来

する悪循環に陥りかねない。頑張った結果が、自らの墓穴を掘るという最悪のシナリオが目の前をちらつく。

明るさを示しながらも、根底にこうした閉塞感を胚胎した日本の製造業を真の社会価値創造のドライバーとして

復権させるには、 “生産” そのものに革新をもたらすことが求められている。 産業革命以来、生産の革新は、エネ

ルギー源の変革、 大量生産方式など、 いろいろなブレークスルーによって成し遂げられてきたが、 今また我々

は、 生産における新たな飛躍の前に差し掛かっているのではないだろうか。 二酸化炭素削減、 化石燃料からの

脱皮など、100年前に概念としてすら存在しなかった多くの環境課題への対応、世界的大競争時代におけるコスト

競争力の維持・向上、物質的に満ち足りた顧客から更なる需要を引き出すための高機能性(技術的先端性)など、

困難な連立問題を解くことが求められている。良く言われるように、一瞥して解決困難な課題があるときこそ、逆に

チャンスである。

我々は、この困難な課題を解決する新しい生産システムを、ミニマルマニュファクチャリングと呼び、その実現の

技術的な基盤をナノテクノロジーが創造してくれると考えている。本調査研究の目的は、ミニマルマニュファクチャリ

ングの価値と課題を、現実論として描きだすことにある。多品種変量生産、デジタル生産技術などの新概念生産も

ミニマルマニュファクチャリングの中で幅広くとらえながら、現在の精緻な生産システムに潜む技術的、経済的、マ

ネジメント的なボトルネックを明らかにしてゆく。それによって課題解決の糸口について考察を深めていくための土

台を準備することを目指したものである。

言うまでもなく、本調査報告書はその端緒を記すに過ぎないものであり、誠に未熟なものといわざるを得ない。生

産に関わっておられる読者諸賢のご指導を是非ともお願いしたい。

平成 18 年 3 月 20 日

独立行政法人 産業技術総合研究所

ナノテクノロジー研究部門長

横山 浩

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( vi )

ナノテクノロジーへの期待 ― ミニマルマニュファクチャリングの視点から ―

わが国の産業競争力は材料・素材を含めた製造業に大きく依存しているが、現在、製造業そのものが国際競争

力の厳しい環境下に置かれている。とりわけアジア諸国の台頭は国内産業に少なからず打撃を与えており、特に、

生産コストを抑えるという点で限界近くに達している。さらに、社会的な要請として環境への配慮、省資源・省エネ

ルギーなどが求められている中で、わが国の製造業の国際競争力の強化を図るには材料・製造業の技術革新を

行い、新技術の定着を図ることが急務である。

現状の産業技術を俯瞰すると「材料・素材あるいは製品の高機能化、新機能化、新機能付与に関わる先端技

術」と「それらの省エネルギー製造や省資源化製造に関わる低環境負荷技術」、さらに「高生産性や低コスト化を可

能とする実用化技術」の3つに大きく分けることができる。これらの技術は個々に見ればいずれも世界的な技術水

準に達しているが、機能の高いものを造ろうとすると製造コストが高くなったり、環境への問題を含んだり、また、環

境へ配慮すると、生産性や機能の点で競争力が低下したりと、まだまだ、互いの技術の間に隔たりがありその解消

に際して多くの課題を含んだままとなっている。

産総研では、このような優れた要素技術を互いに統合・融合することによって、例えば、主に生産プロセスに置

いて、生産コストと環境への配慮を考え「最小の資源の投入で」かつ「最小のエネルギーの投入によって」、「最大

限の機能を発揮する製品をつくり」、「廃棄の際にも最小限の環境への負荷で止めることができる」技術体系の確

立を目指しているが、これをミニマルマニュファクチャリングと呼んでいる。

ミニマルマニュファクチャリングの立場からナノテクノロジーを見ると期待することが大である。何故なら、ナノテク

ノロジーは、本来的に高機能化や飛躍的な機能の発現、ナノスケールを対象とすることからくる省資源性、投入エ

ネルギーの低減が期待されている技術であるが、それらがミニマルマニュファクチャリングの目指す本質と一致する

ことからきている。また、ミニマルマニュファクチャリングにおける大きな技術展開はオンデマンドの方向であると考え

ているが、これを確立するためにもナノテクノロジーはキー技術の1つであり、大きな貢献が期待されている。

この度、NEDO の「ナノテクノロジーによる生産技術革新調査研究」ナノテクノロジー生産技術革新検討会議の

中で、生産技術としてナノテクノロジーの在り方が本格的に検討されることになるが、具体的な課題として抽出され

ることを期待している。また、ミニマルマニュファクチャリングを提唱している立場としても、本調査研究の成果を大い

に期待している。

独立行政法人 産業技術総合研究所

研究コーディネータ (ナノテクノロジー・材料・製造担当)

五十嵐 一男

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名前 産業分野 会社名 所属/役職

伊藤 正弥 デバイスメーカ 松下電器産業(株)生産革新本部 生産コア技術研究所 企画管理グループ / グループマネージャー

    あきら

神澤 公デバイスメーカ ローム(株)

研究開発本部/統括部長

うしろごうち

後河内  透デバイスメーカ (株)東芝

研究開発センター 先端機能材料ラボラトリー/主任研究員

羽生 由紀夫 デバイスメーカ キヤノン(株)先端技術研究開発部 先端融合研究所機能材料研究部/部長

山内毅 デバイスメーカ (株)デンソー生産技術開発部/主幹

江上 洋一 装置メーカ(株)アルバック・コーポレートセンター

総合企画部/部長

平野 稔 不良解析企業 (株)クオルテック東京営業所/所長

上野 保 中小装置メーカ 東成エレクトロビーム(株)/代表取締役社長

川又 亨 空調メーカ 日本エアーテック(株)/取締役 第二営業本部長

梶間 智明 建設メーカ 清水建設(株)技術研究所 先端技術開発センター/上席研究員

渡辺 恵市郎 プラントメーカ 日揮(株)産業プロジェクト統括本部 ライフサイエンス・ケミカル事業本部 GMP技術部 /部長

上田 完次 大学 東京大学人工物工学研究センター長/教授

清水 肇 協会(財)新機能素子研究開発協会

企画室、研究開発部/室長、統括部長

水本 宗男 協会ナノテクノロジービジネス推進協議会

事務局/次長

大久保 聡 マスコミ (株)日経BP社日経エレクトロニクス/記者

五十嵐 一男 (独)産業技術総合研究所 /研究コーディネーター

横山 浩 (独)産業技術総合研究所ナノテクノロジー研究部門/部門長

村田 和広 (独)産業技術総合研究所ナノテクノロジー研究部門スーパーインクジェット連携研究体/連携体長

増井 慶次郎 (独)産業技術総合研究所先進製造プロセス研究部門/主任研究員

原 史朗 (独)産業技術総合研究所エレクトロニクス研究部門/主任研究員

名前 産業分野 会社名 所属/役職

高須 秀視 デバイスメーカ ローム(株)研究開発本部/取締役 本部長

名前 産業分野 会社名 所属/役職

望月 洋介 マスコミ (株)日経BP社日経エレクトロニクス/編集長

島田 孝 デバイスメーカ ソニー(株)半導体事業G経営戦略部門・事業戦略部/技術渉外担当部長

名前 産業分野 会社名 所属/役職

山並 憲司 経済産業省商務情報政策局 情報通信機器課/総括課長補佐

池田 伸一 経済産業省商務情報政策局 情報通信機器課/課長補佐(通信担当)

安田 哲二 経済産業省産業技術環境局 産業技術政策課/技術戦略企画調査官

加藤 且也 NEDO ナノテクノロジー・材料技術開発部 主任研究員

小串 泰之 NEDO ナノテクノロジー・材料技術開発部 主査

水谷 亘 (独)産業技術総合研究所 企画本部/総括企画主幹

佐川 峻 (株)日本アプライドリサーチ研究所 研究調査員 主任研究員

ナノテクノロジー生産技術革新検討会議

会議委員

講師

オブザーバー

コメンテーター

( vii )

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第1章

事業概要と提言

第1章

事業概要と提言

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1 - 1 事業概要

受託期間: 平成18年1月23日 ~ 平成18年3月20日

本調査研究は、様々な産業分野の製造工程の中でも、セル生産など組立工程と比較して、生産技術革新の進ん

でいないナノスケールレベルでの製造工程における生産性向上の障害となるボトルネックを調査、抽出することで、

今後のナノテクノロジーによる生産技術革新の有り方を試験的に描き出すことを目的とする。具体的には、(1)ナノ

テクノロジー分野及び様々な産業分野の有識者による専門会議(ナノテクノロジー生産技術革新検討会議)を開催

し、(2)製造工程やボトルネック、マーケットなどの調査を行うと共に、ボトルネックや生産技術革新の可能性を議論

した。さらに、(3)上記調査と専門会議の議論を踏まえつつ、ボトルネックを極小化した理想的生産技術とその生産

性について探索的検討を行った。

■ 研究推進体制 (受託者: 独立行政法人 産業技術総合研究所)

■ 生産を阻害するボトルネックの難易度の定義

研究を進めるに当たって、生産を阻害するものをボトルネックと表現し、その難易度を以下のように分類した。

レベル(i) 全体の生産性に影響を与える程生産性が低く、克服すべき課題としてすでに認識されているボトル

ネック。

レベル(ii) 現在は認識されていないが、良く調べてみると見過ごされていた、ムダの多い資源多消費型ないし

タクトタイムにムダの多い工程としてのボトルネック。

レベル(iii) 単独工程の 適化はなされているが、システム全体の 適化という観点では、大いなるボトルネックと

なりうる、改善や克服課題としては見過ごされていたボトルネック。また、他の工程に負担をかけ、足

をひっぱる工程に内在するボトルネック。

レベル(iv) 工程の方法が刷新されれば、飛躍的工程生産性を上げることができるか、または、全体の生産性に

重大な効果をもたらす、現在は認識されていない、(i)-(iii)以外の範疇のボトルネック。

■ 調査対象分野

【集積部品産業】

・半導体集積回路製造

・液晶パネル製造

【 終製品完成組立産業】

・薄型テレビ(FPD)製造

・携帯電話製造

・自動車製造

調査研究班

ナノテクノロジー生産技術革新検討会議

自主研究班

研究推進主任 研究統括責任者(リーダー) ナノテクノロジー研究部門長 横山 浩

原 史朗(エレクトロニクス研究部門)

原 史朗(部分的に外注調査を利用)

・村田 和広(ナノテクノロジー研究部門) ・増井 慶次郎(先進製造プロセス研究部門)

- 3 -

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■ 本事業の成果概要

本事業の成果の概要は次の通りである。

<[1] ボトルネック1~4の抽出>

取り上げた5大産業について、様々なボトル

ネックが抽出された。特に企業が普段課題と

して意識し切れていない、レベル3,4の問題

として、以下の重要な問題が見いだされた。

・ (a)部品・素材・製造装置製造産業階層 -

(b)インテグレーション部品製造階層(液晶

と半導体) - (c) 終組立製品製造階層と

いう3段階の階層のうち、aとcは、変量多品

種生産システムが主たるシステムとして確立しつつある一方、中間の b のインテグレーション階層では、依然とし

て、大量単品生産性の強い生産システムを温存している。abc の生産システムの性質に食い違いが生じているこ

とは、産業全体の効率性の点で重大な問題であり、本来あるべき利益を損なっているレベル4の根本問題である

と考えられる。言い換えれば、今後、インテグレーション階層において変量多品種生産への生産方式革新を進め

てゆくことが、マーケットの飽和しているこれらの産業で今後も利益を十分に出してゆくための課題となっている。

・ 事業部制の弊害、工場の巨大化、工場と開発部門への投資額の肥大化、環境負荷の増大、製造におけるばら

つきや品質差など、約30項目もの現実課題(レベル1~2に対応)を抽出した。

・ これら全課題のうち、利益の低下の課題や市場均衡前に競争の勝敗が決定されている課題などの抽象的課題

以外のほとんど全ての現実課題で、生産規模依存性を見いだすことができた。このことは、単純単品大量生産方

式が行き過ぎによって、そのマイナス面が見過ごせない所まで到達し行き詰まりに起因する問題を噴出している

ことを意味している。産業の巨大化に伴って発生した、企業内の開発部門と生産部門の間の大きな谷の存在は、

R&D成果をコアコンピタンスとして位置づける上での重大な障害(レベル3)となっていることも明らかとなった。

以上の抽出は、主に(1)会議(表1)と(2)調査(表2、表 3)によって見いだされた。

<[2] ボトルネックの解決法>

[1]で抽出された課題のうち、約半数の14項目程度は、ナノスケール技術との関連性が強い課題であった。従来ナ

ノテクノロジーは、基幹(大工場)製造産業との関わりが薄いように思われてきたが、実はナノスケール技術は、大き

な製造産業の抱える課題に十分に答えうる技術フィールドであることが明らかとなってきている。言い換えれば、抽

出された課題の半数近くは、ナノテクノロジーの技術を駆使することで解決できる可能性がある、ということである。

<[3] 変量多品種生産に向いた理想製造システムの検討>

変量多品種生産システムの代表的な変量方法として、少量生産システムを必要数に応じて多数パラレルに並べ

ることで量を稼ぐ方法が挙げられる。そのかわり、量の加減調整のため、システム(工場ライン)を適宜増設したり、撤

去したりできるフレキシビリティーと、ユーザニーズに即応するレスポンス(オンデマンド性)、それに1システム当たり

の投資額が小さいことが必須条件となる。本研究に於いては、そのような条件を満たし、かつ抽出課題に有効なナ

ノスケール技術であることを条件として、次の技術が有効であることが会議と自主研究からわかってきた。

・インクジェット技術

・マイクロリアクター

・局所クリーン化生産システム(環境分離型生産システム)

・Self-Assemble MEMS

単品大量

変量多品種

変量多品種

部品・材料・装置産業

レーション産業インテグ

製品組立産業

最終

- 4 -

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まず、インクジェット技術に於いては、工場面積を既存方式と比較して 1/100 以下、エネルギーで 1/1000 以下、設

備投資を 1/1000 以下、資源利用率を 10 倍以上に革新することができる。また、原理的にマスクレスで配線形成の

ための金属堆積やエッチングも可能となることが見いだされている。

マイクロリアクターは、化学反応空間のダウンサイジングと捉えることが出来る局所反応場での化学反応技術であ

る。例えば、ガラスキャピラリー管という非常に細長い空間を通してナノスケールの微粒子を形成されると、微粒子の

サイズを極めて精密にかつばらつき無くコントロールすることができる。ここで重要なことは、一般的にナノテクノロジ

ーによる製造技術では、製造物のばらつきが大きくなると危惧される傾向が一部にあったということである。マイクロ

リアクターは、製造空間のサイズが、製造物のサイズと近くなってくると、本質的に、製造物の均一性が高まることを

実証している一つの重大な例であり、ナノスケール制御技術に対して一石を投じる概念である。

局所クリーン化生産システムは、人と製造物を搬送工程も含めて完全に分離する新しい方式である。本研究に於

いては、このシステムを使うことで、製造物の品質のばらつきが全く消失する重大な成果が見いだされた。具体的に

は、パーティクルだけでなく、ガスも分離する完全遮断システムに於いては、ダイオード電極の個々のリーク電流の

ばらつきが全くなくなることがわかった。このことは、環境分離技術が、環境問題克服手段としての価値だけに留ま

らず、生産性に本質的に関わってくる重要な技術であることを例示している。なお、局所クリーン化の一つの発展形

態として、工場スケール自体のフレキシビリティを飛躍的に向上させるナノクリーンシステムなども考えられる。

Self-Assemble MEMS とは、自己組織化作用により、自動的に作られるマイクロスケールないしナノスケールでの

部品製造システムのことである。自己形成されるなら、敢えて製造装置でエネルギーを大量に使用してまで製造す

る必要がない。微小マイクロフォンや光スイッチ(残留応力により Self-Assemble する)などが例示された。従来自己

組織化(self-assembly)という言葉が一般的であるので、ここでは Self-Assemble MEMS と呼んだが、製造の観点から

より本質的には、Self-Functional MEMS (自己機能化 MEMS)と呼ぶべきであろう。今後は、ナノテクノロジーの一

つのテーマとして、自己組織化から自己機能化へと目標設定を発展させることで、製造プロセスとしてのナノテクノ

ロジーの役割がより明確になってくるものと思われる。

後に、自主研究の一環として、ミニマル・マニュファクチャリングの具現化の可能性検討に取り組んだ。ミニマ

ル・マニュファクチャリングとは、「 小の資源」「 小のエネルギー」「 小の廃棄物」で「 大限の機能・特性」を発

現する製品を「高効率」で作る生産技術体系を確立することにより、わが国の産業競争力を強化するとともに、環境

と調和した持続的発展可能な社会を構築するための製造システムによる製造を指す。ミニマル・マニュファクチャリ

ングを具現化する代表的な方法が、変量多品種生産システムの普及にあるのではないか、ということがわかってき

ている。

■ 抽出された主要課題

主要製造業のマーケットは、飽和傾向を示している。また、変量多品種ないし少量多品種が支配的になって

いる。それにもかかわらず、製造システムは単品大量生産型である。特にインテグレーション工程(半導体集

積回路、液晶パネル製造等)では、強い単品大量生産型から変わっていない。

品質を落とさないコストダウンテクノロジーとそのための戦略が存在していない。

高付加価値・高機能指向の日本の大きな国内マーケットが、日本の製造業の国際競争力を削いでいる。

ナノテクノロジーはこれまでの所、自己完結型の Innovation for Nanotechnology であって、生産技術革新につ

ながっていなかった。

インテグレーション工程では、人の生産性への寄与が低く、トヨタ生産方式的なムリ・ムダ・ムラの徹底排除が

進んでいない。また、生産物が小さい割に、環境負荷やエネルギー消費率が巨大であり、生産効率/設備投

資という本質的な点で実は生産的でない。

- 5 -

Page 16: ナノテクノロジーによる生産技術革新に関する調査 …...性がある。ナノテクノロジーを、Nanotechnology for Innovationと新たに位置づけることが重要である。

日本の得意とする、高品質製造が危うくなっている。生産設備投資の巨大化と、研究開発費の先細り、激しい

時間軸でのマーケット変化、そして、匠の技の伝承に陰りが見られることが原因である。

■ 課題解決のための指針

変量多品種向け技術開発や生産システム開発は、単品大量生産ビジネスに応用すべきでなく、変量多品種

に向いたビジネスに利用されることで、真のオンデマンド生産と低コスト生産が可能になり、企業利益をもたら

す。

品質とコストダウンを両立するテクノロジーを開発推進すべきである。

インテグレーション工程に於いては、原子スケールレベルやナノ・ミクロンレベルでの生産性の革新がすすん

でおらず、十分に生産性の革新の余地がある。ナノテクノロジーの活用で産業活性化に活路が拓ける可能性

がある。ナノテクノロジーを、Nanotechnology for Innovation と新たに位置づけることが重要である。

変量多品種生産の具体的技術やシステムとして、インクジェット技術、マイクロリアクター、局所クリーン化生産

システム(環境分離型生産システム)、Self-Assemble MEMS(または Self-Functional MEMS)が例示された。

持続発展可能な社会を構築し、かつ国際競争力を確保するための方策として、ミニマル・マニュファクチャリン

グコンセプトが有効であり、その具体的実現には、変量多品種生産システムの普及が有効である。

- 6 -

Page 17: ナノテクノロジーによる生産技術革新に関する調査 …...性がある。ナノテクノロジーを、Nanotechnology for Innovationと新たに位置づけることが重要である。

ナ ノ規 模 依 存 性

変 量多 品 種

オ ン デ マ ン ド

逆 流 性

オ ン デ マ ン ド

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議に

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- 7 -

Page 18: ナノテクノロジーによる生産技術革新に関する調査 …...性がある。ナノテクノロジーを、Nanotechnology for Innovationと新たに位置づけることが重要である。

レベル1 レベル2 レベル3 レベル4

・設計期間の短縮 ・マスクのOPCパターン複雑化の抑制 ・開発スピードが求められる ・ミニファブ実用化

・高密度立体実装技術開発 ・特性ゆらぎの問題(個別プロセスとして) ・設備投資が巨額 ・トヨタ生産方式の・銅配線代替技術の開発 ・巨大なクリーンルームは設備としても   ウェーハプロセスと・低誘電体材料のゲート絶縁体の実用化  電力消費の点でも金食い虫   実装工程への適用・歪みシリコントランジスタの開発・実用化 ・解析できない、再現実験出来ない、・三次元電場制御型トランジスタの開発  不良発生原因の究明・是正・SOIウェーハのコスト抑制 ・特性ゆらぎの問題(プロセス全体問題として)

 半導体 ・CVD工程における資源の無駄 ・ガス対応局所クリーン化生産システム・スパッタリング工程における資源の無駄 ・大型チェンバーの低効率→小型化、共用化・CVD工程の短時間化 ・450mmへの対応・洗浄薬液の大量使用 ・200mm工場の局所クリーン化(SMIF化)促進・リソグラフィ技術の向上 ・消費者オンデマンド生産の実現・微細化に対応したフォトレジスト技術・材料の開発 ・研究開発成果の生産適用への困難さ増大・洗浄・乾燥技術(枚様式も) ・設計部門と製造部門の協働

・フォトマスク描画装置の開発 ・設計段階におけるテスト化容易設計・純水の高純度化、供給水量の拡大 ・実装技術の高度化・高付加価値化・45nmへの対応 ・ウェーハプロセスと実装プロセスの線引き課題

・部品のコスト削減 ・ガラス基板のハンドリング技術の開発 ・工場立ち上がり期間の短縮 ・柔軟な製造方法・大型ガラス基板の平滑化 ・ガラス基板搬送距離の短縮 ・インライン型装置から枚葉型装置への ・ミニファブ開発・マスク数削減 ・大気圧プラズマ洗浄などの新しい洗浄  コンセプトチェンジ・画素の微細化  技術の開発 ・消費者オンデマンド生産の実現・パーティクルの低減 ・ベーク装置の装置価格の低減化・CVD形成速度の向上 ・他のFPDとの差別化のための低消費電力化

・レジスト塗布のスリット式技術の開発・高い精度の露光装置の開発と低廉化

 液晶パネル ・柱状スペーサ技術の開発・剥離薬液の節減・配向膜処理における技術開発・柱状スペーサ技術の開発・カラーフィルタのプリント方式の開発・液晶注入タクトタイムの短縮・バックライトのコストの削減と高輝度化・新たな発行方式の開発・ドライバーや周辺回路のLSI化・小型省スペース化・省空間対応 ・環境配慮、省電力 ・開発費の抑制 ・市場志向の生産・メンテフリー ・開発期間の短縮 ・部品の一体化製造

 携帯電話 ・基板や部品のバラツキを吸収・対応 ・設備投資抑制に対する工夫  新技術・さらなる高密度実装化・高信頼性・部品コストの削減(PDP) ・データドライバーの駆動電圧の引き下げ(PDP) ・テレビジョン品質改善のための技術開発 ・柔軟な製造方法(PDP)

・新しいリブ構造の開発(PDP) ・ITO成膜の研磨不要な技術の開発(有機EL) ・消費者オンデマンド生産の実現 ・画面の大型化技術・光学フィルタガラスのフィルム化 ・シャドーマスクの微細孔加工技術の開発(有機EL)  の開発(有機EL)・光学フィルターのコスト削減 ・封止缶を不要とする新技術の開発(有機EL)

・発光効率を高めるガスの開発(PDP) ・発光材料の精密塗布技術の開発(有機EL)

・発光効率を高める蛍光体材料の開発(PDP)・高い精度の露光装置の開発と低廉化・ガラス基板のフィルム化(PDP)・低温焼成シール材の開発(PDP)

 FPD ・真空シールプロセスの開発(PDP)・リブの精密加工技術の高度化(PDP)・新しい蛍光材料の精密塗布装置の開発(PDP)・総合的に検査可能な試験装置の開発(PDP)・ドライバのLSI化(PDP)・TV処理信号LSI個数の削減(PDP)・有機EL素子の輝度と発光効率の向上(有機EL)・有機EL素子の寿命の長期化(有機EL)・ガラス基板の平滑度の向上(有機EL)・簡便・安価な封止缶の開発(有機EL)・ドライバや周辺回路のLSI化(有機EL)・デザインの開発 ・環境技術の開発 ・信頼性の向上 ・製品開発期間の短縮・工程数の削減 ・アルミボディ・フレームへの対応 ・多品種の効率的生産 ・生産量の変化に・部品の削減 ・ガソリン代替技術のコスト削減 ・各工場の設備や組立の仕方の共通化  ユニットの積み上げ・工場内のレイアウトの工夫 ・工場間のレイアウトの工夫  で対応できる・スループットの短縮 ・溶接工程において多種のボディへの対応、   適生産量の小規模化

・環境会計の導入  フレキシブルなラインの構築 ・超高効率電池開発・作業時間の短縮

 自動車 ・車体の運搬距離の短縮・プレス機械の振動防止・金型交換時間の短縮・溶接の高速化・塗装における水の品質管理・塗装時間の短縮・人に優しい産業環境の実現・艤装行程におけるメインラインの短縮と サブラインでのアセンブリーの増加・作業者の歩く距離の短縮

<表2 調査によって抽出された製造上の諸課題>

分野 市場からの課題 ボトルネック

 半導体 ・生産スピード  ・価格の低下 ・シリコンサイクルへの対応  ・ビジネスモデルの選択  ・事業ドメイン

・巨額の設備投資 ・事業部制等の事業形態  ・国家戦略の不在  ・国際連携の遅れ 液晶パネル ・価格の急速な低下  ・巨額の設備投資 ・投資決定の決断の遅さ  ・クリスタルサイクルへの対応 携帯電話 ・市場の成熟、飽和  ・製品ライフサイクルの短さ ・キャリアー主導体制からの脱却  ・国内、国外の通信方式の違い

・機能の多様化 FPD ・価格の急速な低下  ・方式の間の競争 ・投資決定の決断の遅さ 自動車 ・原油価格の高騰  ・環境問題への対応 ・貿易関税障壁への対応

・中国市場の攻略  ・開発期間の短縮

<表3 調査によって抽出されたマーケット関連の諸課題>

- 8 -

Page 19: ナノテクノロジーによる生産技術革新に関する調査 …...性がある。ナノテクノロジーを、Nanotechnology for Innovationと新たに位置づけることが重要である。

1 - 2 現在の製造業の課題とその克服のための新産業戦略

■ 現状

現在の製造業は、基幹産業とそれを支える周辺産業、それに小さなマーケットで成立している産業に区分するこ

とが出来る。そのうち、基幹産業においては大企業が多く、その規模の大きさ故に、スピーディーなビジネス展開が

難しく、現代の企業社会が克服すべき一大課題となっている。最近は、特に半導体や液晶分野に於いて、巨大投

資の割に利益がほとんど得られなくなっているという事実が国家的観点からも見過ごすことの出来ない重大な問題

となっている。裾野産業に於いては、技術の蓄積が進んでおり実際に日本の製造の中核を担っているが、中心に

位置するセットメーカーの巨大投資加速についてゆけなくなってきている問題点を抱えている。その一方で、比較

的自由なビジネスを展開できる小規模マーケット産業に於いては、ものづくり日本を担う無数のベンチャー企業が

存在するが、産業内マネーが不十分であり、経営を安定させるのは容易なことではない。

■ 大量生産方式が内在する課題

1913年に、フォード社のハイランドパーク工場に於いて、人類史上初めてベルトコンベアによる本格的大量生産

方式が実現して以来、それまでの親方請負による工場生産と比較して10倍もの生産性が得られるようになった。現

在の半導体集積回路製造や液晶パネル製造などにも、その大量生産方式は受け継がれてきた。すなわち、物作り

を多数の単機能工程に分解して、それぞれに対応する単機能製造装置を開発、ラインに連続して配置して製品を

次々する生産する方式であり、これにより単位時間当たりの製造個数は飛躍的に上昇し、それに伴って、製造コスト

が安くなり、結果としてマーケットが拡大する、という製造産業モデルが主流をなしてきた。

ところが、最近では、特定のマーケットを除きメジャーマーケットに於いては無限拡大の傾向が薄れつつある。例

えば典型的な例として、半導体集積回路製造に於いては、1995年を境に、それまで30年近く続いた、チップ生産

高の指数関数的な拡大フェーズから、年率3%程度の普通の産業が持つ緩やかな成長率へと移行してしまってい

る。マーケットが飽和傾向に入ると、大量生産よりも多品種変量生産が有利になることは、歴史的には自動車産業と

いう基幹産業の例に見ることができる。1920年代に入り、全米自動車販売台数の指数関数的伸びに陰りが見え始

めると、大量生産方式での単品(Model T)生産でシェア4割を確保してきたフォード社に変わり、シボレーやキャデ

ラックなど多数の車種を有す

る GM が台頭してきたことは有

名である。飽和マーケットに於

いては、変量多品種生産はメ

ジャーな方式になりうるのであ

る。それは、大量生産が本質

的に巨大投資により生産性を

高める方式であり、その投資

を支えるために実はマーケット

の拡大が前提となっていること

にある。マーケットの拡大が望

めなければ、巨大投資は控え

なくてはならない。

ところがマーケット飽和の初

期段階に於いては、巨大投資

11AIST

大量生産ラインの始まり

■ 1913年移動組立ライン導入

★ 組立時間:728分 93分

■ 標準部品でシンプルデザイン(オイルポンプ無し、2ギア、・・・)

[フォード台数と価格推移. gif / .ai]

■ 工程の細分化:1作業者 = 1作業(単純作業化)

いわゆる、ベルトコンベア方式製造品が作業者のところへやってくる

1909 1913 1917 1921 1925

200

400

600

800

1000

0

100

200

300

400

500

価格(ドル)

販売台数(万台)

0

Model T 価格

Model T 販売台数

全米販売台数

[生産技術百年.ppt]

マーケットの鈍化と同時に変量多品種指向のGM台頭

作成者: 産総研 原 史朗

- 9 -

Page 20: ナノテクノロジーによる生産技術革新に関する調査 …...性がある。ナノテクノロジーを、Nanotechnology for Innovationと新たに位置づけることが重要である。

の回収をマーケットの拡大による売上高増によって補うことが期待できなくなってしまうので、企業は、飽和したマー

ケット内でのシェア拡大ないし独占によって利益を確保し巨大投資を回収しようとするようになる。それには選択と集

中という投資の集中化が効果を発揮する。しかし、その次に来る企業のサバイバルフェーズでは、ライバル企業に

打ち勝つためにさらなる投資が必要となり、投資は逆に加速することになる。それは例えば、現在のインテルやサム

ソン、それに液晶のシャープなどの企業活動に顕著に見られている。しかし、マーケットが飽和している場合に投資

加速を継続すると、いずれは破綻する運命を辿る。ただし、そのような破綻フェーズに移行するのは5年から10年

は先になる。なぜなら指数関数的拡大ではないとは言え、多少はまだマーケットが拡大を続けているからである。そ

れでもあるべき指数関数的拡大と現実との乖離が激しくなると、資金調達に支障が生じて、大量生産技術の革新に

必要な開発費が必要額とかけ離れてくることで、破綻フェーズが到来することになる。

現在の大量生産を標榜する産業に於いては、上記必要開発費と現実開発費の乖離から発生する、必要とされる

技術開発が未完成のまま製造へ移管されてしまう問題の兆候が、産業の随所に見いだされるようになってきている。

以下では、その問題点を列挙する。

■ 基幹産業が直面している課題

<開発と生産の間にある大きな死の谷>

死の谷議論は、基礎研究と

企業応用の間に横たわる死

の谷の存在を問題視する所

から始まったが、実際には、

谷は他にもあることが認識さ

れつつある。基幹産業のよう

な大産業に於いては、基礎

Research と応用の間の谷より

も 、 実 は 企 業 内 の 開 発

Developement と 工 場 生 産

Production の間の谷が深く、

かつ生産の山の高さは非常

に高くなっており、そこへ登り

きるのは容易ならざる努力を

伴う状況となっている。

具体的には、たとえば、半導体集積回路製造の場合、開発段階ではまずプロトタイプが試作され、続いてα機、

β機と開発が進む。そして、β機の熟成が完了した後、初めて量産機が工場導入される。この量産機でさえも初め

は良品率がゼロに近いことも多く、調整・改良期間が必要となっている。通常、プロトタイプ、α、β、量産機それぞ

れ1年ずつという速いペースでの開発期間が望まれるが、新技術の開発であり順調に進むとは限らない、それぞれ

2年もかかってしまっては、開発を決定してから10年近くの年月が消費されてしまうことになり、時代がずっと先に行

ってしまうので、開発の意味が無くなってしまうことになる。結局開発には膨大な費用が必要になるので、最近では、

開発を諦めてしまったり、途中で頓挫することが多くなっている。それが実態である。大量生産性を追求してきた結

果、このように企業内で4種類もの装置開発が必要になってしまった。工場生産システムが肥大化に伴い、実用に

耐える装置の水準が量産性・均一性・多機能化などの面でどんどん上昇してしまい、それぞれの水準を少しずつ上

げた機械を作ってテストしてゆくしかなくなってしまったのである。図 2 の大量生産モデルではその様子を示してい

る。

具体的な一つの事例として、トランジスタのゲート絶縁膜材料として従来の熱酸化膜を超える材料基本性能を有

AIST

[ハイテクものづくり.ppt]

22 変量多品種は、死の谷を渡りやすい

大量生産モデル

変量多品種産モデル

[基礎の谷.ai]

死の谷

生産工場

開発部門

エンジニアリング

ピュアサイエンス

巨大な谷

幅が広い

莫大な設備投資

R&D投資効率低下の主因一切のリスクを犯せない

小設備投資

基礎装置に

多少の改良開発

小さな起伏で、確実に応用へ

リスクも小

作成者: 産総研 原 史朗

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している high-k 材料については、約5年もの長期間にわたり世界規模での多大な研究と開発の投資が行われる状

態が続いたにもかかわらず、結局生産には使われない可能性が出てきている。予定した時期への生産段階への投

入はどんどん先送りされている。基礎段階ではそれなりの成果を上げたが、企業では工場生産という最終段階への

導入までには、まだ遠い道のりが残されていると判断しているのである。この典型的事例に垣間見られることは、大

企業の技術導入に関する判断は極めて甘いということである。これは、大量生産に内在する開発と生産の谷の問題

の大きさを正しく認識していないことによると考えられる。

開発を生産に役立てられなくなっていることは、将来的視点ないし次世代技術の工場生産への導入という近視眼

的視点からも、憂うべき問題であり、それを如何に克服するかは企業内課題であると同時に、競争力保持の観点か

ら基幹製造業全体の共通課題と認識されるべきものである。

<生産工場の巨大投資の問題>

最先端の半導体集積回路工場では初期投資に2000億円を投入する。液晶でもほぼ同様な巨大投資を行って

いる。一社でまかないきれないので合弁工場を建設している場合が多くなっている。例として、三菱-日立合弁のル

ネサステクノロジ、日立と日本電気合弁のエルピーダメモリ、日立-松下-東芝合弁の液晶工場 IPS アルファテクノロ

ジなどがある。このような合弁はそれぞれの立場が違うので、問題が発生しやすい。また、当然のことであるが、巨大

投資は、ほとんどの場合借入金でまかなわれるので、額が巨大になるほど、利払い圧力が増大して、短期的な利益

を求められるようになり、リスクが高くその分ハイリターンなビジネス展開への投資は益々困難になってゆく基本問題

が存在する。

また、巨大投資は生産工場に対して主になされるので、開発費を割きにくくなっているという課題を抱えている。た

だし、実例として、分社化して切り離しているエルピーダメモリのような場合には、当初開発や基礎研究部門その他

の間接部門を一切切り離していたので、問題は一見発生しにくくなっている。しかし、分社化の度合いが高いことは、

逆に、開発体制が極めて手薄な状態に陥りやすいことを意味している。このような場合には次世代技術の開発で問

題を引き起こす可能性を内在してしまう。エルピーダでは、生産に直結した高効率開発体制をとって開発を強化し

始めている。

<企業組織肥大化と分業進化の問題>

最近では組織の肥大化が進み、経営が、開発、工場生産、そして研究開発部門との意思疎通を欠いたり、それぞ

れの内部利益が相反している問題が顕著になっている。例えば、経営側は開発投資効率が落ちているので開発に

資金を投じることをためらうようになっている。また、生産工場に対しても巨大投資をおいそれとは許容できなくなっ

ている。その反動で、開発や生産は必要な予算獲得のために、一種の方便を用いるようになっている。たとえば、競

争力を確保するために、装置の耐用年数を待たずに次の新機種へ更新してしまう、という現象が見られる。ここでの

問題は、装置の更新期間は半導体の場合1~2年という非常に短期間に陥っているという実態があるにもかかわら

ず、減価償却を長めに設定しているということである。つまり、減価償却が済んでいないのであるが、経営責任者交

代頻度も高くなっており、責任はうやむやのまま、新しい体制に於いて、また追加投資する、ということを繰り返すよう

になっている。このことで、例えば、2000億円の投資があった場合、実際には、1~2年で投資を回収すべき事態

になっているのであるが、計画では、長めの数年かけて利益回収すれば良いというプランを組んでしまっている場

合が多い。結果として、半導体メーカは論理的に利益を出せないことになってしまっている。

利益を出せないことに追い打ちをかけているのが、独立採算制の強化である。過去、例えば、あるメーカでは、モ

ータ事業部の莫大な利益を半導体投資に回していたし、別のコンシューマ製品で設けているメーカではセットでの

利益を、半導体に回していた。半導体投資は、10年以上も前から実際には単独には利益が出ていなかったのであ

る。ところが、ここにきて、各社選択と集中を強化するようになり、そのようなペンタゴン経営(カネボウのビジネスモデ

ルをそう呼んでいる)の名の下に不採算部門を放置するわけには行かなくなり、独立経営を求められるようになった。

そのことが、益々半導体部門の苦境に拍車をかけている。

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現在では分業化が進み、デバイスメーカ、製造装置メーカ、部材メーカ、建屋建設メーカ、空調メーカ、搬送装置

メーカ、駆動ソフト・生産管理ソフト開発販売企業、ソリューションビジネス提供企業、など専業化が進んでいる。この

ことで、お互い何が課題なのか本当のところがわからなくなってしまっている。例えば、大手装置メーカでは、幹部

が、デバイスメーカが変量多品種に向けて経営の舵取りを進めつつある実態を把握していないところがある。さらに

問題なのは、ナノテクノロジーベンチャー企業や中小の技術力のある企業群では、デバイス企業の課題をほとんど

把握していない。どこへセールスしたら良いかすらわかっていない場合もある。このことは、研究開発の効率が低下

する一つの原因にもなっている。

<サプライチェーンをマネージする上での問題>

デバイスメーカなど製造業の企業の多くは、経営レベルでは、表の競争力すなわちブランド力や商品の魅力と並

んで、裏の競争力(生産技術力によるコスト競争力の強化)が重要であることが認識されており、生産革新を指向し

ている。生産性を上げるだけでなく、ユーザニーズを取り込む、オンデマンド性(計画生産性に対峙する性質)や製

品フローやマネーフローの流動性を重視する動きが盛んである。しかし、大企業の生産システムの実態は、依然と

して計画生産による大量生産を基本としており、フロー重視システムへの転換はほど遠い状態にある。

■ 大量生産の課題を克服する戦略

<変量多品種生産モデルへの重点的国家投資>

大量生産性の追求で発生した課題は、大量生産性を突き詰めればさらに厳しい問題となってくる。逆に変量多品

種生産を採用することで、ほとんどの問題は回避できてしまうことになる。従って、日本の産業戦略としては、図 3 に

あるように今後、(1)大量生産モデルの徹底追求(出来る企業は手を緩めず、ライバルに打ち勝つ)、(2)変量多品種

生産を奨励育成するという2大並立戦略が求められることになる。時間軸で言えば、利益が出なくなってきている大

量生産システムにおいても、まだまだマネーの大半が費やされており、基幹システムであることにかわりはなく、その

枯渇には、10年程度の猶予が予想される。従って、今後の10年の間に、(2)の変量対品種生産をメジャーシステム

として育ててゆくのが国家戦略として重要である。

なお、ここで特に留意すべきことは、図2にあるように、R&D の成果は変量多品種モデルの方がずっと応用へ転

用しやすい、言い換えれば、変量多品種は死の谷を渡りやすいということである。イメージ的には、プロトタイプ装置

にわずかな改良で、生産をしてみることが出来るということである。その代わり生産速度(スループット)は極めて低く

なるので、ユーザーニーズに応じ

て、建設費が1桁以上小さい軽い

工場やラインを図4にあるように逐

次増産することで、並列生産が可

能であり、メジャーな生産量を確保

することが出来る。

なお、大量生産モデルでは、開

発に投資をしても、生産には繋が

りにくくなっており、国家としてこれ

に投資する意味はかなり薄れてい

る。あくまでも企業がその体力に応

じて自前の資金調達の範囲で投

資を行うのが筋である。

33AIST

[ナノ生産革新.ppt]

狙いは、変量多品種生産モデル

・液晶パネル製造・半導体集積回路製造

大量生産モデル 変量多品種生産モデル

基礎研究の成果

次なる理想生産モデルは何?

×∵保守的・大規模

∵規模可変

時代要請

大規模投資で利益回収が大問題

基礎研究の成果・ナノテク・ミニマル製造

・GMモデル

・セル生産方式・デルモデル

インテル

※日本の国家全体としては、大量生産モデル+変量多品種生産モデルの両翼を備えた戦略をとるべきではないか?

作成者: 産総研 原 史朗

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<ナノスケールでの生産革新>

すでに多品種変量生産という

観点での生産革新という意味で

は、セル生産方式が開発されて

広く工場に応用され、高い生産

性を上げるようになっている。し

かし、人の労働生産性がコスト

を支配する、組立工程であるか

らこそ、比較的簡単に革新する

ことができたと言って良い。一方、

図 5 にあるように、生産全体とし

ては、部品生産の前工程・後工

程、それにそれらを実装する工

程などでの生産革新は手つか

ずの状態にあり、産業全体の課

題となってきている。これらの工

程領域では、ナノスケールでモ

ノづくりが行われているので、そ

のようなナノスケールでの工程

の効率性を飛躍的に高める生

産革新を如何に実現するか、

が今後の検討課題である。

これに関連する課題として、ベ

ンチャー企業や中小企業では

マネーの絶対量が十分でなく、

経営を安定させることが難しい

という問題がある。一方、国家

戦略として、これまでモノづくり

というキーワードで様々な検討

を行ってきているが、マネーの

絶対量の小さな産業へのてこ

入れでは、効果は限定されてき

た。今後は、ものづくりという世界と大産業の関連性を重視した国家戦略が意味を持ってくると思われる。

(独立行政法人 産業技術総合研究所 原 史朗)

AIST

[先導研究図.ppt]

パラ/シリモデルと時代の要請

コンベア式等シリアルモデル

パラレルモデルセル生産等

リスク分散、稼働率=高

リスクは積算、稼働率=低

作業能率2倍マイスター超高給

不器用さんはごゆっくり

勝手におトイレ

♪厚化粧ロ

ット

被害最小

製品A 製品A 製品B 製品B

×お気楽に

修理・点検

製品B

厚化粧→製品

不良の原因

余裕で仕事→意味無し

50秒に1台(車の場合)

作業が遅い→ライン律速 不器用

→品質ムラ「お願いだから、品種は一つに(泣)」

トイレ!

→ライン急停止

(-_-;)

(化粧品)不良は、ずっと下流へ・・・

増産・減産

は簡単

『銀行に出かけるか』

増産=ライン新設「社長!増設です」「ちょっと待て・・・」

→他社は売りまくり借金大王、アレアレ・・・

多品種&変量時 生産性増大

単一品種・計画生産時 生産性最大

44

作成者: 産総研 原 史朗

AIST

前工程

機械化に適する

(原子分子反応が支配)

■反応場の隔離性が重要

■搬送系の機械化が重要

(人による多能工高度作業)

後工程(MEMS技術)

最終製品組立工程

セル生産方式で生産性革新

■人の有効活用

高度機械化は高コスト

(反応プロダクト収率とナノ加工精度に直結)

(部品歩留まりに直結)

機械化に適する■施設・装置の小型化が重要

工程段階別の生産技術革新

生産技術革新のこの空白部分を調査・先導するのが、本提案の課題である

ナノテクノロジーの領域

■メカの集約化が重要

55

[ナノ生産革新.ppt]

(ダイシング・ボンディング・モールド・検査工程)(ウェハ工程)

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第4章

イノベーションのための新たな取り組み

第4章

イノベーションの

ための新たな取り組み

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4 – 1 ナノスケール新技術による生産技術革新の可能性

■はじめに

本調査研究のうち、自主研究班では、従来の製造技術を新技術(ナノテクノロジー)により、どのように生産技術革

新が可能か?という観点から調査研究を行った。

■ ボトルネックの整理

本調査研究ではボトルネックを次の 4 つに分類整理している。(表1)

表1.ボトルネックの 4 つの分類

Lebel 1 現在認知されているボトルネック

Level 2 表には見えてはいないが、ムリ・ムダ・ムラとして内在しているボトルネック

Level 3 全体の工程を通して見えてくるボトルネック

Level 4 破壊的イノベーションが発生した時にはじめて知るボトルネック

表2.年賀状を例にしたボトルネックの分類

Level 1 名簿の整理の手間、デザインの手間、書き損じ等の無駄、印刷時間、配達仕分けの郵便局内

での作業手順・動線確保など

Level 2 インクジェットインクのコスト、書き損じ等の無駄、名乗らないお年玉当選者

Level 3 郵便局の地理的配置、人員配置の偏り、集配方式、

宅配・新聞配達等との機能重複(宅配や、新聞配達員に任せても良い)

Level 4 そもそも家庭で印刷したものを流通コストをかけて運ぶのは無駄。

例えば、データだけ送ってあて先郵便局で印刷し配達(電報方式)

さらに、各家庭で印刷したものをあて先仮定で印刷

さらに、電子メールによる完全デジタル化、電子ペーパー化

よりわかりやすく例示するために、身近な例として、年賀状をめぐる社会状況に関して、この分類にしたがって整

理してみたものを表 2 に示した。

Level1に関しては、現在も個人や企業、郵政公社などで十分把握しており、改善の努力が払われている。いわ

ば、日々の合理化、いわば局所的な合理化である。

Level2 は、あまり表にでる話ではなく、わかっていても放置されているケースが多いようなボトルネックである。

Level3 は、システム全体としての効率化であり、現状の年賀状の配達というシステムに立脚した上での最大の改

善で、いわばシステム全体としてのボトルネックのミニマム化を図るものである。

ところが、これらに比べて、Level4というのは、新技術の導入による発想の根本的な転換であり、Level1~3とは明

確に異なる。インターネットあるいは、写真画質プリンターといった技術がどこの家庭にも普及しているという状態で

はじめて可能になる。

あるいは、似たような別の例として、本の流通などに関しても同様なことがいえる。書店の店頭販売の在庫や売れ

なかった本の引取りの流通コストなどは、大きなムダといえるものであるが、印刷技術が進歩した現在では、データ

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だけ配信して各家庭で印刷したりあるいは各書店でオンデマンド印刷・製本したりということは、技術的には可能と

考えられる。しかしながら、実際にはそうはならない。単に技術的に可能かどうか、あるいは環境性や、流通コストだ

けではない問題がありそうで、この点に関しては今後検討の余地がある。

本自主研究で追求すべきものは、ナノテクノロジーという新技術の導入によって、どのようなボトルネックが排除さ

れ、どのような発想の転換が行われ、どのような理想製造システムが達成できるかという点である。上記の例に照ら

し合わせれば、Level4 の革新は、Level1~3のボトルネックを回避するものであるが、かならずしも Level1~3 のボト

ルネックの解消技術の延長線上に簡単に浮かび上がるものではない。

そこで、本考察を進める上で産総研で開発が進められている超微細インクジェット技術ならびに、企業で研究開

発されているインクジェット技術の産業応用をモデルとして、これらがナノテクノロジーによる生産技術革新の候補と

なりうるかという観点から考察を勧める。

■ 現状の製造技術の位置づけ -液晶産業を例に-

エレクトロニクス産業なかでも巨大投資の装置産業として液晶産業を例に考察してみる。

液晶産業は、数千億円の巨大な投資で、数百メートル角の巨大な工場で、発電所一基分を優に越す電力を消

費する現代のエレクトロニクス産業の象徴である。

フォトレジストをはじめとする、様々な化学物質を大量に使用し、産業廃棄物も大量に生み出される。しかしなが

ら、現在の最先端工場では、フォトレジストのリサイクルや、水のリサイクルをはじめ、様々な資源のリユース・リサイク

ルは積極的に行われている。また、当然ながら各工程におけるムダ・ムラなど Level 1 のボトルネックは可能な限り徹

底的に排除され、スループットは極限まで高める努力が払われている。こうした改良は、経済性の追及をドライビン

グフォースとして進んできており、いわば各工程におけるローカルミニマムの追及の集大成ともいえる。定常状態の

流れ(製品の大量生産)の中で最大効率を発揮する。

一方で、製品の設計や仕様変更への対応など非定常状態においては、製造装置群は巨大なフライホイールと

同様に、慣性質量が大きく、即時に対応させることは難しい。これはいわば液晶産業における Level2 のボトルネック

ともいえる。

また、装置の設備投資は巨額で、一旦構築されたラインの部分置き換えは難しい。したがって、工場ラインの設

計は、目的のパネルのサイズや性能の決定とほぼ同じ意味を持つ。Level3 のボトルネック:すなわちシステム全体

のボトルネックに関しては、工場を国内にするか、海外に作るかどうかを含め、工場設計段階で検討される程度で、

この段階での判断の誤りが非常に大きな経済的な損失を生むというのが、最近の液晶業界の構造である。

■ ボトルネック対応技術としてのインクジェット技術

現在、各企業においてインクジェット技術を産業応用プロセスに使おうという試みが活発化しており、例えば既に

以下のような各種応用製品が既に市場に投入されつつある。こうした背景には、表4にまとめたような、インクジェット

技術のメリットが背景にある。中でも、従来技術においてフォトレジストの塗布、露光、洗浄などの工程は、一旦成膜

した材料のほとんどを洗浄により剥離するなど、無駄の多い工程として知られている。インクジェットでは、マスクなし

に直接必要な量の材料で成膜が可能である。つまり、先に述べた Level1~3 のボトルネック対策としてのインクジェッ

ト技術への期待感がある。

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図1 露光技術とインクジェット技術のプロセス比較

表3.インクジェットの産業応用

応用 企業

液晶配向膜の塗布 セイコーエプソン (最初の応用事例) 既に発売されて

いる用途 産業用 IJ 装置 アルバック 他

カラーフィルター 大日本印刷 他 アナウンスされ

ている用途 SED キヤノン・東芝

有機 EL セイコーエプソン、CDT 他

有機トランジスタ セイコーエプソン、Plastic Logic 他

PDP 配線 セイコーエプソン、アルバック、富士通他

研究が進められ

ている用途

多層基板 セイコーエプソン、アルバック、ハリマ化成他

こうした、インクジェット技術の様々な利点を、現在の巨大製造業のひとつの象徴である液晶工場に当てはめて、

理想的状態としてどの程度効率化が図れるかを考えてみる。インクジェット装置は、製品である液晶パネルの 2 倍か

ら 4 倍程度の設置面積で、塗布・パターニングなど済むはずである。このため、現在は数百メートル角の敷地が必

要な液晶工場であるが、理想的には、インクジェット装置が数台を置ける程度の設置面積で製品の製造が可能に

なる。また、工場の使用エネルギーは、現在は発電所一基分もの電力が必要であるが、家庭用電力程度にまで削

減可能なことが見込まれる。さらに、材料の使用量は必要最小限しか扱わないために、資源利用効率は、10 倍以

上となる。すなわち、インクジェットプロセスは、生産性を考慮しなければ、従来プロセスと比較し、工場面積 1/100

以下、エネルギー使用 1/100 以下、設備投資 1/1000 以下、資源利用効率 10 倍以上で同様の製品を作ることが可

能と考えられる。これに加えて、設計から試作までの期間の驚異的な短縮化を図ることも可能である。これは、前述

した Level2 ボトルネックの定常状態でなく、製品や仕様変更に伴うロスを最小化できる意味を持つ。

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表4.インクジェット技術の特徴

マスクを必要としないこと。

プロセスの簡略化が可能なこと。

様々な材料が使用可能なこと。

非接触であること。

必要な場所に直接材料を投入でき必要なエネルギーが非常に小さいこと。

材料の利用効率が極めて高いこと。

ノズル、または基板の移動によって面積の大小を問わず同じ装置で描画可能。

データ駆動形式のため、多品種生産に適すること。

有機 EL や有機半導体など、新機能材料とのマッチングが良いこと。

■ インクジェット技術のデメリット

インクジェットプロセス利用技術の理想状態としては上記のようなものであるが、ここで生産性に関して言及してお

く必要がある。“版”または“型”(例えば、フォトリソグラフにおける露光マスク、スクリーン印刷におけるスクリーン版、

インジェクション成型の金型)を使用する工法に比べて、“版”または“型”を使用しないプロセス(たとえば、インクジ

ェット、切削加工など)は、生産性や同じものを同じように作るといった点において劣る傾向がある。“版”を使わない

プロセスは、プロセスを並列化することが難しく、作業が逐次的である。例えば、インクジェット技術でトランジスタを

作るケースでは、何千本ノズルを使おうが、結局は一つ一つのトランジスタを丁寧に作り上げていく作業である。製

品のばらつきは常に混入する危険性を秘めている。

一方で、“版”を使ったプロセスでは、数百万個のトランジスタを作る場合も、1 個のトランジスタを作る場合も同じ

工数で作ることが可能である。このため、大量生産方式には、“型”ないし“版”を使ったプロセスが用いられてきた。

前述したように、インクジェット技術は生産革新の技術として、数々の優れた特徴を有しているが、“版”を有しな

いプロセスのため、生産性に関しては必ずしも有利にはならない要素もある。現在の工場は、スループットの要請が

高く、タクトタイムの管理が厳密である。これが、インクジェット技術を既存プロセスの中で採用するときのボトルネック

のひとつになっている。次に、ナノテクノロジーを用いることで、如何にこの欠点を克服可能か検証する。

表5.インクジェット技術のデメリット

生産性の低さ(マスクレス方法共通)

電子産業応用を考えた場合の液量の多さ

電子産業応用を考えた場合の精度の低さ

インク調整のノウハウ

基板、インク、ヘッドのマッチング

ノズルのメンテナンス

信頼性の確保

■ インクジェットとナノテクノロジーによる Level4 ボトルネックの解消可能性

本節では、本調査研究のテーマであるナノテクノロジーによる生産技術革新について、検討したい。

個人的な見解であるが、ナノテクノロジーとは、材料の機能性の究極利用技術であると理解している。従来のもの

づくりは、素材という漠然としたバルク状の物質が存在して、それを切ったり、削ったり、張り合わせたり、つなぐなり、

様々な加工をほどこすことによって、そこに機能性を付与してきた。このとき、如何に同じものを作り、安く大量に提

供するかということが、製造業の歴史そのものであったといって過言ではない。

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一方で、本調査のテーマは、ナノテクノロジー的な発想に基づくものづくりで、従来プロセスと大きく違うのは、材

料からの同じ機能性の引き出し方である。ナノテクノロジーによる生産技術は、ナノ材料自体の有している機能性を

利用する。そのため、機能性の付与と材料の配置はほぼ同義語である。新しいプロセスにおいては、材料を削るこ

とで機能性を実現するのではなく、材料を足すことで機能の達成を図るものである。ここでは、既存プロセスの一部

を置き換えるのではなく、ものづくりの方法論として根本から考え直した際に、どうなるか考えてみたい。

まず、製品の最も重要な機能性の付与に関して、具体的な例を挙げる。例えば、電界放出型のフラットパネルデ

ィスプレーの電子源を従来技術で作る場合、単結晶シリコンに異方性エッチングなどを施して、針状の微細突起物

を無数に作る必要があった。一方、ナノテクノロジーを利用すれば、カーボンナノチューブ(CNT)の電子放出特性

が極めて高いことを利用する。カーボンナノチューブがその場所にありさえすれば、そこから電子放出という機能を

もたせることが可能になり、微細加工技術は不要になる。実際に、我々はカーボンナノチューブの配置法として、カ

ーボンナノチューブの生成触媒となる遷移金属の超微粒子の分散した液をインクとして調整し、インクジェット技術

で基板上に触媒のパターニングを行い、そこに化学気相反応によって触媒の付着箇所のみにカーボンナノチュー

ブを選択成長させることが可能なことを報告している。またそうして生成したカーボンナノチューブが、電子源として

十分な機能を果たすことも確認している。この場合、インクジェットで行うことは触媒の配置といういわば最小限度の

作業であり、バルク化は後工程の CVD プロセスで行われる。このため、インクジェットプロセスによる作業効率の低

下は最小限になる。

別の例として発光素子(発光ダイオード)の場合を挙げる。従来技術では、半導体に微細加工で PN 接合を作る

ことによって機能を達成してきたが、電界発光性の有機材料を利用すれば、もっと簡単に同等の機能を得ることが

可能である。透明電極の上に、発光性有機材料を有機溶剤に溶かしたインクを、インクジェットなどで滴下し、その

後別の金属電極でサンドイッチ構造を作る。材料自身の性質として光るので、単結晶や、エピタキシャル成長といっ

た方法をとらずとも、フレキシブル材料の上に発光素子素子を作ることが可能となる。これらの例から導かれることは、

「従来と同様の機能性を発現させるために、同様の構造を新プロセスで作りこむ必要はなく、材料の機能性を最大

限発現させる環境を整えればよい。」ということである。

一見、生産性が低く思われがちな、インクジェットプロセスであるが、こうした考え方に立てば、必ずしも低生産性

とはいえない。また、前述のように一般論として、“版”や“型”を使わないプロセスでは、製品がばらつく可能性が高

くなるはずであるが、ナノテクノロジーを利用した場合には、ナノ材料そのものの機能性を利用するため、出来上が

った製品のばらつきを最小限に抑えることが理想的には可能になる。別の言い方をすれば、ナノテクノロジーにより

材料に機能性を付与することが可能になり、それによりインクジェット技術のような手法をプロセス技術として採用す

ることが可能になったとも言え、インクジェット技術をナノテクノロジーという観点から眺めることにより、従来の Level1

~3 のボトルネックを超えた、Level4 のブレークスルーをもたらすことが可能になる。

表6.エレクトロニクス分野で期待されているナノ材料

半導体 有機半導体(低分子・高分子)

配線 金属超微粒子

トランジスタ分野

絶縁膜 絶縁材料超微粒子

OLED 有機発光材料(低分子・高分子)

LCD 超微粒子顔料(カラーフィルタ)、液晶

FED カーボンナノチューブ(電子源)

SED 金属超微粒子(電子源)

FPD 分野

電極 透明電極用超微粒子

電池分野 電極 カーボンナノチューブ

太陽電池 有機色素

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従来のプロセスは材料の性質をある程度モデル化し、それを加工することにより機能を引き出してきた。このため

に、材料の性能はある程度の範囲内にあればよく、加工に関しては精密な物を作ろうとすればするほど、加工装置

に要求される精度は高くなり、また様々な装置で作られた部品を重ね合わせるためにも、非常に高い絶対精度を有

することが必要であった。一方、ナノテクノロジーを用いた生産技術革新によれば、機能性はナノスケールで材料自

身により発現させるという立場をとる。また、材料も 1 原子・1分子ではなく通常あるまとまった量を扱うために、機能と

しては平均化されたものになる(究極的なナノテクノロジーとしては、単一電子トランジスタ、単一分子素子のようなも

のであるが、その生産性・信頼性などの議論は別の機会に譲る)。さらに、製造装置側に要求されるスペックとしては、

絶対精度は必ずしも必要とはならず、相対精度さえ確保できれば良くなり、低コストなどが図られる。このように、イン

クジェット技術によるナノ材料の配列は、本調査研究の目的のひとつであるナノテクノロジーによる生産技術革新の

ひとつの解答になりうると考える。

■ プロセスの更なる可能性 -超微細インクジェットとその他の方法-

前節のように、インクジェット技術とナノテクノロジーを Level4 のボトルネックを克服する生産技術革新をもたらす

プロセスのひとつである。こうした新しい手法が数々生み出されている。それらを表7に整理した。

表7. 各種微細加工技術の特徴

微細性

精密性

多品種

対応性

生産性

用途

材料の

部分配置

課題

インクジェット △ ◎ ○

FPD

インク・基板

超微細インクジェット ◎ ◎ △

実装

◎ 低生産性

ナノインプリント ◎

×

NEMS

△ 金型・部分加工

位置決め

マスクレス露光 ○

◎ △

MEMS

×

レジストの使用

レーザー直描 ○ ◎ ○

FPD

× 露光・装置高価

スクリーン印刷 △ △ ◎ △ 解像度の制限

フレキソ印刷 △ △ ◎ △ 解像度・精度の限界

Cf. フォトリソ工法 ◎ △ ◎ △ マスク、

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図2 市販インクジェットと超微細インクジェットの液滴サイズの比較

インクジェット技術は、非常に有望な技術であるが、現在実用化されているインクジェットの液滴サイズは、1 ピコリ

ットル程度で、十数ミクロンのサイズである。一般的に、液滴が基板上に着弾した場合、数十ミクロンから 100 ミクロン

程度に広がってしまう。一方、電子産業用途では、10 ミクロン以下の設計ピッチのものも多く、より微細なパターニン

グ法が望まれている。超微細インクジェット技術は、産総研で開発を進めているもので、従来のインクジェット液滴に

比べ 1/1000 以下の超微細液滴を利用することに特徴がある(図2参照)。溶液の適応範囲が広いこと、様々な少

量インクの部分的に配置することなどに特徴がある。これにより、線幅数ミクロンの金属配線や、様々なナノ材料の

精密パターニングが可能になっている(図3参照)。本技術の応用分野として、従来技術の真空地帯と呼ばれてい

るような、線幅数ミクロンから数十ミクロンの半導体チップ実装などに使われる配線領域がある。さらに、超微細液滴

の乾燥性の高さを利用すれば、大気中常温で高アスペクト比の金属立体構造を形成することも可能である。しかし

ながら、液適量が微細なために、いわゆるべた塗りなどには向いておらず、生産性が悪い。表よりわかるように、通

常のインクジェットと組み合わせることで、欠点の少ないパターニング法としてもちいることが出来る。

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図3 超微細インクジェットで扱えるナノ材料の例

ナノインプリントは、原版を電子ビームリソグラフィーなどにより作成するために、サブミクロンの精密なパターニン

グが可能であるが、原版作成の時間やコスト、精密位置決め性や重ね合わせ性、材料の部分的な配置のしにくさ

など課題も多い。その他の技術も、一長一短が有り、これらのプロセス技術を組み合わせることで、従来工法の欠点

を補いつつも更なる生産技術の革新をもたらすことも十分に可能だと考えられる。

■ まとめ

本調査報告書に書かれているように、現在の最先端の工場などにおいても、さまざまなボトルネックの存在が明ら

かになった。これは、従来のものづくりの基本である、素材を加工して機能性を引き出すこと、同じものを安く大量に

確実に製造することを追及してきた結果である。ここでは素材は、画一的な一種モデル化された物体として扱われ

てきた。

一方で、ナノテクノロジーによってもたらされた、材料がもつそれぞれの機能性、個性を積極的に製品の最終的

な機能へと応用しようという試みは、単に従来の材料をナノ材料に置き換えたというだけではなく、従来は用いること

が出来なかったようなプロセス技術の導入が可能にした。本報告書で述べた様に、インクジェット技術はその一例で

ある。

バイオテクノロジーを駆使した種子産業は、(日照条件、土壌の条件、気温や天候状態、水やりの条件などをそ

ろえれば)遺伝子レベルで農作物の色、形、味などを均一化することを保障し、それを世界中でどこでも再現可能

な世界をもたらした。ナノテクノロジーのもたらす生産技術革新も同じことが言える。すなわち、バイオ産業における

種子に相当するものがナノ材料である。どこでも同じものを作るためにはナノ材料の安定化技術が不可欠である。ま

た、ナノ材料の機能性を最大限発揮させるためには、必要な場所にナノテクノロジーの種子たるナノ材料を種まき

する精密なパターニング手法が不可欠である。さらに、それらは精密に制御された環境で行う必要がある。すなわ

ち、以下の3要素がナノテクノロジーによる生産技術革新に必要な用件で、今後推進すべき課題となる。

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ナノ材料の安定化技術

精密環境制御技術

精密パターニング技術

図4 ナノテクノロジーにおける生産技術革新の 3 要素

(独立行政法人 産業技術総合研究所 村田 和広)

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4 – 2 環境負荷低減の観点からみた生産技術革新の課題抽出

地球環境の悪化が顕在化する中で、製造業においても環境負荷低減が求められているが、“環境への配慮

(Environment: E)”は従来からの品質向上(Quality: Q)、コスト削減(Cost: C)、納期短縮(Delivery: D)といった生産

活動における目標に比べて軽視されがちな特性である。しかしながら、環境負荷低減を目的とした技術開発が製

品機能の向上やコスト削減につながる例も多いため、本節では、環境負荷低減というこれまでと違った観点で製造

業を見直すことにより、新たな生産技術革新の課題抽出を行った。本研究の進め方としては、製造業では従来から

の QCD に比較しまだまだ環境側面(E)に対する認識は低いために、まずは産総研主体の自主研究として行い、本

事業における調査委員会での議論を踏まえて、生産技術革新のための課題及び今後の研究開発ターゲットを抽

出した。

■ 低環境負荷生産技術の体系化

本研究の対象となる半導体産業やフラットパネル製造の特徴として、工程数が多いこと、金、銅、インジウム等の希

少金属が多く利用されていることが挙げられる。製造段階での資源投入(材料、エネルギー)を 小化し、また製品

使用後の材料の回収などを進め、低環境負荷な製造を実現することが必要である。図1は低環境負荷製造技術と

して必要な要素技術を体系化した図である。大きく「製造プロセスのトータルローエミッション化技術」と、「循環型生

産のための高度再生技術」が構成要素としてある。先に指摘した半導体産業における工程数の削減及び投入資

源の 小化については、加工工程の複合化、省スペース化が有効であると思われる。機械加工の例を挙げると、

単能機械の場合、機械のフレーム、送り機構などを別々に作成しなければならずムダな部分が多い。機械要素の

共通部分を抽出し、それに加工種別ごとに異なる要素を加えることで、放電・電解加工、さらにレーザー加工等を

行う複合加工機が実現できる。これにより生産段階における段取り換えにより生じる待機時のムダや取り付け誤差

を排除するという2次的効果も期待できる。「デスクトップファクトリ(写真1)」では、工作機械要素を極小化すること

で、工作物(部品)の大きさに 適な加工機の検討を実施している。これにより、工作機械を製造する際の資源投

入量の削減、加工時のエネルギーの削減ばかりではなく、従来の工作機械では非常にムダの部分が多かった加

工精度を保証するための立ち上げ時間の短縮などを実現している。ただし、機械要素が加工する部品の大きさに

合わせて極小化されると、工程間の部品の搬送や工具(ツール)の取り付け作業等において、小さな部品をマニピ

ュレーションするための技術が必要となる。この微小部品のマニピュレーション技術については、材料・部品スケー

ルがナノオーダーになった場合にはより深刻な問題であり、自己組織化などの方法で2次元平面的には検討され

てはいるが、成型された部品(3次元立体的)の再加工や組立についても、加工機械の 少化に見合うスケールで

のマニピュレーション技術が必要である。一方の希少資源の回収については、回収運搬後のリサイクル(有価金属

の回収)は精錬工程と同様の方法で進められているが、電気電子製品の場合、出荷台数に比べてユーザーからの

回収量は少なく、家電製品で約半数程度に留まっている。図 1 の「循環型生産のための高度再生技術」に記述し

たように、希少金属の回収・再利用については、ボトルネックとなっているユーザーからの回収量増加のため、動脈

系のサプライチェーンばかりではなく、静脈系の回収・再生・再利用も含めた循環型サプライチェーンの構築が必

要である。

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資源投入埋立

製造

再生

使用

排出

廃製品排出モデルの提案

循環型ビジネスモデルの提案

製造プロセスのトータルローエミッション化技術 循環型生産のための高度再生技術

製造・再生工程統合型システムの概念設計

循環型ビジネスモデルを考慮した製品設計手法の開発

低環境負荷プロセスの抽出と確立

供給

製造装置設計

プロセス設計

製品設計

社会システム設計

環境適合設計

複合,省スペース型低エミッション加工機の開発

個別プロセスのLE化と省エネ型生産システム開発

統一的評価指標,評価技術の確立

最適プロセス境界を考慮したシステム設計技術

図 1 低環境負荷生産技術の体系

写真1 デスクトップファクトリの概観(写真提供:産業技術総合研究所 先進製造プロセス研究部門 ファインファクトリ研究グル

ープ)

■ 環境負荷の観点から見た生産設備の最適化

使用時にエネルギーを利用する組立製品に関しては使用時の環境負荷が非常に大きく、製品製造時の環境負荷

が軽視される傾向にある。例えばよく会議で使われるデータプロジェクターについて、環境負荷として温暖化ガス

の排出量を考えた場合、使用時における環境負荷がすべてのライフサイクルを通じた排出量の約8割を占め、製

造段階(素材製造および製品製造)での排出量は約2割程度である。しかし、現在良く利用されている環境負荷評

価法では、直接製造に投入される資源は考慮されているが、生産設備(固定費にかかわるもの)に起因した環境負

荷が算入されていないため、製造時の環境負荷は過小評価されている。そこで今回、主に半導体産業について、

コスト及び環境負荷の両面からデータを収集し、生産設備に起因した環境負荷がどの程度であるか調査した。さら

に、この調査結果を異なる産業と比較することで、半導体産業における環境負荷低減のための課題を抽出した。

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<コスト面からのアプローチ>

製造時の環境負荷はコストに比例することも多いため、コストに占める設備償却費の比率を調査した。電子SS研究

会設立記念講演資料(ソニー中村研究所:濱田氏)によれば、半導体事業の場合、総コストに占める割合は、直接

費25%に対して償却費の比率は35%、LCDに関しては変動費50%に対して償却費が20%となっている。した

がってコスト面で見た場合、償却費は直接費と同等もしくは少なくとも半分程度その割合を占めており、環境負荷

についても生産設備に起因した環境負荷が決して無視できる割合ではないことが判明した。なお、ここで半導体事

業はLCD事業に比べて償却費の割合が高く、設備依存型の事業であると言える。したがって、これまで重要視さ

れてきた製品使用段階での省エネ性能や、製造段階での直接的な材料投入量の削減ばかりではなく、生産設備

の見直しでも大きな環境負荷低減効果が得られる可能性が見出された。

<環境面からのアプローチ>

一方で、ライフサイクルを通じたCO2排出量という視点で半導体事業を見てみると、原材料に起因した排出量比率

38%、電力22%、生産装置12%である。機械産業(ポンプ、圧縮機の例)における比率、原材料78%、電力5%、

生産装置4%に比べて、生産装置に起因した環境負荷の比率が極めて高い。これは生産設備の入れ替えが機械

産業に比べてその周期が早いためと予想される。境負荷の観点からみた場合には、生産設備の規模や更新周期

の適正化を再検討する必要があると思われる。また、電力の比率(22%)も高く、省エネルギー効果により大きな改

善が期待できる。本調査委員会で公開された製造施設の小型化による省エネルギー効果(発表:清水建設株式会

社、梶間氏)によれば、製造施設の小型化によりファブ空調エネルギーの消費量は1/3に低減される可能性があ

ることが示された。生産装置の小型化は、生産装置自身による環境負荷低減効果に加え、空調も含めた運転段階

での環境負荷について低減効果が大きい。したがって、今後は生産装置の大きさの適正化を検討するとともに、そ

の効果の算出に際しては、空調等の周辺設備の影響も組み入れる必要があることがわかった。

半導体・集積回路

原材料38%

その他サービス17%

電力22%

上下水廃棄物0%

燃料6%

その他固定資本3%

生産装置12%

工場建屋関連2%

ポンプ・圧縮機

工場建屋関連0%

生産装置4%

その他固定資本1%

燃料2%

上下水廃棄物1%

電力5%

その他サービス9%

原材料78%

出典:平成16年度産業施設のLCCO2に関する調査研究報告書、(財)エンジニアリング振興協会

半導体・集積回路製造業 ポンプ・圧縮機製造業

図2 事業別に見た生産装置関連のCO2排出量の比率

■ 製造業における生産技術革新に関する指標開発

前節までは、環境負荷の観点から生産技術革新における課題を抽出してきた。ただし、製品機能(ここでは生産能

力)を向上させると単位時間あたりの環境負荷は増大する傾向にあり、製品機能とそれに伴う環境負荷の両立を図

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るためには、両者のトレードオフを定量化し、計測するための尺度(指標)の開発が不可欠である。本節では、製造

業における生産技術革新を計測する指標が必要という認識のもと、指標に関して情報収集を行い、既存の指標の

問題点を明らかにすることで、今後の指標開発の方向性を検討したので報告する。

<指標例>

現在、製品機能と環境負荷の関係を記述する指標として、環境効率(=付加価値/環境負荷)が多く利用されて

いる。環境負荷の代表数値として年間のCO2排出量を取り、付加価値として業種別の生産金額を取ると、「t-CO

2/百万円(数値の見易さから環境効率の逆数)」は、半導体・集積回路3.0、ポンプ・圧縮機(機械産業)5.0、医

薬品3.3となる。すなわち、半導体・集積回路の産業は少ない環境負荷で多くの生産金額を産み出していることに

なる。また、この環境効率を個別の製品開発に適用した場合、前機種と新機種との比較をし、ファクター(新機種の

環境効率/前機種の環境効率)という指標で表すことも試行されている。近年、地球環境の持続性について検討

が行われているが、この持続可能性を表す指標としてファクターが用いられることも多い。現状からの変革の度合

いに応じて、実現できるファクターの数値が示されている。

1.従来製品の環境性能を高める改良では、ファクター2

2.製品のコンセプトも含めた改良では、ファクター5

3.機能も含めた変革では、ファクター10

4.システム革新社会システムや経済システムまで及ぶグランドデザインと、新しい価値観を含む革新では、ファクタ

ー20

<既存の指標の問題点抽出>

上記の環境効率は、製品機能(付加価値)とそれに伴う環境負荷の関係を明らかにすること、またファクターという2

次的な指標を算出することで、持続可能な社会の実現に向けたマイルストーンとしての利用が可能である点は評

価できる。しかしながら、①付加価値(製品機能)の算出方法や、②産業別に算出された指標はその事業特性から

産業横断的な比較が困難である点などが問題点として抽出された。またファクターについても、③評価対象(例え

ば新機種製品)のレファレンスとなる旧製品の選び方により結果が大きく異なることや、④全くの新規製品について

はファクターの算出ができないなどの問題もある。その他、⑤コスト面の評価ができない、⑥持続可能な社会実現

のために必要とされるファクターについて目標数値が曖昧である点も問題である。

<今後の指標開発の方向性>

以上の問題点に鑑み、今後製造業における生産技術革新の度合いを計測するための指標についてその方向性

を検討した。具体的な指標については現在も開発途中にあるが、指標が具備すべき要件としては以下の四項目が

挙げられる。

1.経済性・機能性・環境性について調和のとれた指標であること

2.製造段階での生産効率だけでなく、産出された付加価値の消費効率も含めた指標であること

3.製造業ならびに社会の持続可能性を検討できる指標であること

4.すべての産業分野で共通して利用できる一般的な指標とするため、自然科学等の学術体系で普遍化された法

則と類比した指標であること

■ ライフサイクルデザインの必要性

従来の「生産技術革新」といえば、製造段階の工程や生産システムについて議論されることが多かった。そこで注

目されるのは製品一世代の製品製造のコストや生産設備の初期コストであった。しかしながら現在のように、新製

品の開発(新機種の投入)周期が短サイクル化する場合、今後は製品・生産設備のライフサイクルに視点が移り、

多世代間に渡る製造コストや生産設備の更新などが 適化の対象になると思われる。

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複写機などの事務機械では、ライフサイクルを通じた製品個体管理により、使用済み製品から回収した部品の再

利用などを可能にしているが、これは製品開発当初から多世代間の部品の共通化などを念頭に入れたライフサイ

クルデザインが行われているために実現できた取り組みである。

生産設備は生産される製品の設計が変更になると、それに伴い変更されることが多い。これまでにも工場の再構成

(Reconfiguration)の効率化などが検討されているが、再構成をより容易にするためには、工場の生産設備に関し

てもライフサイクルデザインが必要である。

ビジネスモデルの策定 環境目標の策定 製品コンセプトの作成

3Rの戦略を決定(ライフサイクル・オプションのベストミックスを選択)

プロセス設計生産プロセス使用プロセスメンテナンスプロセス回収プロセスリサイクルプロセスなどの設計

製品設計分解性リサイクル性アップグレード性

などの要素設計技術

ライフサイクル評価(LCA、LCCなど)

実システムの実現

図3 ライフサイクルデザインのフロー

<ライフサイクルデザインのフロー>

図3にライフサイクルデザインの全体の流れを示す。ライフサイクルデザインでは、まず製品(生産設備)をどのよう

な形態でユーザーに提供するか、環境負荷をどの程度におさえることができるか、そのための製品のコンセプトが

検討される。これに続き、製品を構成している個々の機能部品について、ライフサイクル・オプション(例えばリユー

ス部品としての再利用、リサイクル材料としての再利用など)が計画される。このライフサイクル・オプションを念頭に

おき、製品設計やプロセス設計などの具体的な設計活動が行われる。現在の製造業では、循環型社会の必要性

の認識から、製品のリサイクル性への配慮や、製造工程での廃棄物の発生を抑制するプロセス技術の採用など、

ここの要素技術については検討されているが、まずは製品ライフサイクル自体のデザインが重要であるという考え

方である。ライフサイクルデザインの 終段階では、ライフサイクルコスト分析、ライフサイクルアセスメント(LCA)が

実施され、初期コストの低減や製造段階のみの環境負荷低減といったローカルミニマムに陥りがちな設計活動を

是正する。

<ライフサイクルの視点で見た製品開発や生産設備導入における課題>

前述のライフサイクルの視点は事務機械等の一部の産業セクターを除き製造業にはいまだ浸透していない。製品

開発に際しては、ライフサイクルを通じた環境負荷とコスト低減のため、製造や使用段階での環境負荷やコストの

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低減ばかりではなく、使用済みとなった製品からの有価物の回収容易性および再利用方法などを事前に計画して

おく必要がある。

また生産設備に関しては、初期コストの低減やランニングコストの低減は十分に検討され、さらに生産装置の2次ユ

ーザーのための中古市場もある程度の規模はある。これに加えて、今後は生産設備のライフサイクルを念頭におき、

生産設備導入の初期段階から生産設備の更新つまり既存設備の廃棄段階における生産装置の再利用の容易性

や、現有設備のアップグレード性を検討する必要がある。

技術的課題としては、製品・生産設備のライフサイクルデザインを計画する際に必要な製品または生産設備の履

歴データの収集方法および再利用部品・材料の余寿命判定技術が整備されていないという課題が抽出された。具

体的には、製品・生産設備の一部を再利用する場合には、その部品や材料の余寿命を判定しなければ再利用が

できないが、製造段階のように工程ごとの検査ができず、また回収部品のばらつきから抽出検査で対応できないな

ど、直接的に計測する方法がないという問題が明らかになった。今後は「製造・輸送・使用・回収・再利用」の各段

階において製品や生産設備の履歴管理(ライフサイクル管理)を支援するセンサ技術の開発など、履歴データ収

集技術が今後の研究開発課題として抽出された。

■ まとめ

本節では環境負荷低減の観点からみた生産技術革新の課題抽出を行った。「低環境負荷生産技術の体系化」で

は、種々の工程を複合化した機械の開発とその小型化により低環境を実現できる可能性を示し、そのための技術

的課題としては極小部品のマニピュレーション技術の開発の必要性が抽出された。「環境負荷の観点から見た生

産設備の 適化」では、生産設備をコスト面、環境面の両面から分析し、半導体産業では生産装置の小型化が両

面において有効な方向性であることを見出した。ここでの結論は前述の生産装置の複合化・小型化という技術開

発の妥当性を定量的に示したものといえる。今後、生産技術革新の効果について検証するためには、その効果を

表すための指標が必要であり、本節の主題でもある環境負荷低減の視点も盛り込んだ既存の指標の調査や、今

後の指標開発の方向性を検討した。 後に、生産技術革新の方向性の一つとして、「ライフサイクルデザイン」とい

う考え方の導入を検討した。製品や生産設備の 適化はライフサイクルを通じて設計・評価すべきであり、ライフサ

イクルを通じた管理が重要視される。今後、実際にライフサイクルデザインにより種々の製品の 適化を図ろうとし

た場合、製品の使用履歴データの収集や再利用部品の余寿命判定技術などセンシングに係わるハード面での技

術開発を進める必要があることを明らかにした。

◆参考・引用文献◆

[1] (社)産業環境管理協会、エコリーフ環境ラベル

http://www.jemai.or.jp/japanese/qualification/ecoleaf/outline.cfm

[2] 電子 SS 研究会設立記念講演資料、(株)ソニー中村研究所 濱田初美、2003 年 9 月

[3] 平成16年度産業施設のLCCO2に関する調査研究報告書、(財)エンジニアリング振興協会

[4] 山本良一、エコデザイン、ダイヤモンド社、1999 年

[5] (財)製造科学技術センター インバース・マニュファクチャリング・フォーラム 平成 13 年度ライフサイクル設計委員会

報告書、2001 年

(独立行政法人 産業技術総合研究所 増井 慶次郎)

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4 - 3 局所クリーン化生産システム

■ 局所クリーン化生産システムとは?

局所クリーン化生産システムとは、図1にあ

るように、人と生産品の雰囲気が一体となった

従来の製造法とは全く異なり、両者を空間的

に遮断して、生産に必要なミニマムな空間だ

けを清浄化するなど生産に特化した環境を用

意して生産を行うという新しい生産技術を実

現したシステムである。

クリーンな環境で物質や製品を生産すること

で、生産品の品質を上げられることは誰しも知

っている。しかし、クリーン度を上げようとする

程、生産工場全体を綺麗にしてゆく必要があ

り、究極的には LSI(Large Scale Integrated

Circuit:大規模集積回路)工場のようなスーパ

ークリーンルームが必要となってしまう。ルー

ムというとこぢんまりして聞こえるが、最新鋭のLSI工場には今や2000億円もの建設費がかかる。他の産業では、そ

のような高コストに見合う収益を単品ではあげにくいので、結局クリーン化(清浄化)はほとんどされていない。見方

を変えれば、これは実にもったいない話である。クリーン環境での生産があらゆる業種に広まれば、生産品の品質

向上・歩留まり向上と結果的なコストダウンにより、競争力が非常に強まる可能性を秘めているからである。 従来は、

清浄化には、工場全体を清浄化する必要があると信じられてきたので、半導体以外へのクリーン化の適用は事実

上不可能であった。しかし、つい最近になって、これを打破する革新的生産要素技術が登場してきた。局所クリーン

化生産システムである。これは、部屋全体を清浄化するのではなく、生産品に必要な局所的な空間だけを隔離して

清浄化し、その清浄化した離れた局所空間の間は密閉搬送容器を用いて製品搬送行うことで、製造プロセス全体

にわたって、製品と外部環境を分離した生産システムである。局所クリーン化生産システムは、実用技術であって、

実際に半導体工場の建設コストと運営コストを低減する切り札的技術として既に導入が進んでいる。

局所クリーン化のエッセンスは、必要なところだけとても綺麗にするという発想である。それ自体大変普遍的で、高

品質化に向いているだけでなく、省エネルギーであり、かつエコロジカルな概念である。綺麗にするということについ

ても、現行半導体前工程工場で制御されている唯一の要素は、パーティクル(チリ)だけであるが、水分、酸素、そ

の他のあらゆるガスについて制御することは可能である。生産現場だけでなく、開発段階でも、それ相応の局所クリ

ーン化生産システムを構築して、最先端研究開発を従来よりもずっとスマートに推進することができる。

■ 生産システム革新に於ける局所クリーン化生産システムの重要性

グローバルな観点では、本報告の調査のセクションでも浮かび上がっているように、主要基幹産業のマーケット規

模、すなわち産業規模は飽和傾向を示している。このような伸びの止まった成熟産業に於いて高い利益を確保す

るのは一般的傾向として非常に難しくなる。その一方で、製造業では技術が高度化してくるので、研究開発投資及

び生産段階の投資はますます膨らみ、利益圧迫を加速する。このような状況で依然として利益を出し続けるには、

製造原価を削減する、すなわちコストダウンが常道となってくる。さらに、主要基幹産業では、利益が出にくくなる一

方で、コストダウンを強いられながら技術が高度化してくるので、研究開発投資や生産への投資は不十分となり、そ

図 1. 局所クリーン化生産システム、半導体工場、町工場の比較

密閉型・製造装置

生産品に最適化された局所環境

裸の生産品

前室

密閉型・搬送容器(容器内に生産品)

半導体工場

△◎◎◎

超高コスト○×

×

×

高品質エネルギー大量消費人と製品の妥協環境

△×低コスト品質管理に問題人優先の環境(汚れ)

◎ 省エネルギー

中コスト人と製品環境の分離超高品質人に最も優しい生産方式省エネルギー

◎超高速生産が可能

町工場

局所クリーン化生産方式

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れが、品質低下という大問題として現出しつつある。今後は不良品の発生率が次第に高まる危険性が高まっている。

また、最近は、マーケットニーズの変化が非常に速くなり、計画経済的生産は時代に合わなくなってきている。現在

ではメーカとしても、ユーザニーズに即応する生産~オンデマンド生産への指向が強まっている。このように、コスト

ダウン、品質保持、オンデマンド性という3大課題を克服しなければ、基幹産業の明日の展望は拓けない状況にあ

る。

このような3大課題を同時に克服することは、普通に考えれば容易成らざることである。一つの課題解決に有利な

技術は、別のことに不利な場合が多い。例えば、高品質を追求すればコストが高く付くのである。オンデマンド性を

追求すれば、生産性が落ち、やはりコストアップ要因となってしまう。この相反関係は、新しい方法論が導入されな

い段階では日常的に開発段階で起こってくるトレードオフ現象として、多くの技術者や企業体が体感していることで

ある。しかし、ある時、日常的改善とは別次元の、日常的生産技術の延長線上では普通は見えていない、いわば破

壊的なイノベーションが生み出されると、この相反関係は突然のように克服されることになる。最近の良い例として、

セル生産方式を挙げることができる。セル生産により電機製品の組立工程では、オンデマンド性とコストダウンの両

立に成功した。すでに様々なメーカが自社の基本生産方式として取り入れている。これは一種の破壊的イノベーシ

ョンと位置づけられる新生産システムである。

一方、局所クリーン化生産システムは、組立工程をセル生産で革新した製造業の次の課題となっている、(集積

化)部品製造工程に於いて、コストダウン、品質保持、オンデマンド性の相反3課題を一挙に克服する、新生産方式

である。まず、局所クリーン化を製造工程に全面的に採用することで、クリーンルームが原理的に不用になるので、

従来型建屋建設コストを大幅に低減できる。また、従来クリーン化に要していた、空調エネルギーも大きく削減可能

となる。さらに、局所クリーン化空間内では、人や機械からの不用意な汚染がなくなるので、外因による品質劣化が

原理的に消えて無くなる利点がある。これは当然、良品率の向上に直結するので、利益向上に資する。また、製造

物を密閉容器に収納して搬送することで、搬送を自動化しやすくなる。また、容器は一つのエンキャプセル化され

た小ロットと見なすことが出来るので、容器単位という、品質面でも同じ環境を有する製造物の単位として進んだ管

理が可能になる。このようなエンキャプセル化された密閉容器ロットはコンピュータ管理がしやすく、高速搬送が可

能になるので、ユーザニーズに即応したオンデマンド生産に適した技術である。

■ 局所クリーン化生産システムの技術的3要素

局所クリーン化生産システムでは、製造品の装置への導入に際しては、装置内と搬送容器内そして製造品それ

ぞれが外界から汚染されるのを防ぐために、全ての装置に前室を取り付け、それを媒介として製造品を転送する。

局所クリーン化生産システムは、(1)密閉型搬送容器、(2)装置前室、(3)製造品転送機構が技術的3要素を持って

いる。それらをセットで開発し全ての製造装置をそれに対応させる必要がある。従って工場システム全体を刷新する

ものであり、かつ、生産性の飛躍的向上効果があることから、21世紀の新生産方式として広く認識すべきものである。

なお、製薬・バイオ分野を中心に、微生物ハザード回避を主な目的とした局所クリーン化技術が isolation 技術とし

て進歩してきた歴史がある。この分野では、現状において技術的3要素の機能分化と進化が十分で無い。それを補

うために却って各工程をパーティショニングして物質管理する2重の方法がとられる複雑な方式を用いている時代

的段階にある。将来的には生産方式として認識すべき段階に発展することも予想される。また、従来から局所クリー

ン化という技術は存在している。この従来技術では、局所的に清浄度を向上させることが目的であったため、上記

技術的3要素が備わっていなかった。そのため、局所空間から外へ製造物を取り出すと、そこで汚染が進行すると

いう問題点を抱えており、新世代の局所クリーン化生産システムと比較して、その導入効果は局所清浄度向上とい

う極めて限定的な用途に限られていた。

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■ パーティクル遮断型:半導体前工程事例

局所クリーン化生産システムは、半導体集積回路製造工程の

前工程において、すでに実用化され、世界中にある約40ヶ所

全ての 300mm ウェーハ対応最新鋭工場に導入されている。こ

の実用システムでは、パーティクル遮断機能を実現している。

局所クリーン化生産方式としての3要素は、図 2 にあるような形

で実現している。転送ロボット機能は、ロードポートによる

FOUP(Front Opening Unified Pod: 密 閉 搬 送 容 器 ) 蓋 と

EFEM(Equipment Front End Module: 前室)入口の開閉、ウェ

ーハを FOUP 内と製造装置本体で受け渡すロボットとウェーハ

の位置決め機構(プリアライナ)など、いくつかの機械で役割分担されている。前室機能は、ロボットを含んで EFEM

と呼ばれている。蓋の開閉やロボット転送などで発生するパーティクルがウェーハ上に飛来しにくいように、EFEM

天井にはファンフィルタユニット(FFU)が装着されており、クリーンエアが層流となって下部へ流れ、パーティクルを

効果的に排出する仕組みになっている。FOUP について特記すべき事項は、パーティクルフィルターが装着されて

いることである。当初業界では、ガスを含む完全密閉型を理想と考えていたが、蓋の開閉時及び搬送時の圧抜きが

不可欠ということがわかった。圧抜きで空気が出入りしてもパーティクルだけは遮断するようにフィルターを装着せざ

るを得なかった。EFEM についてもクリーンエアを送り込んでいるわけで、現在のシステムではその機能上ケミカル

フィルターで除去出来ないガス分子の遮断は不可能である。なお、FOUP については、直径 300 ミリのウェーハを失

敗無く転送する必要があって高い寸法精度が要求される。また、低コストにするためにプラスチック製となっている

が、超高速搬送時の加減速負荷に耐えること、有機物発生を低減すること、静電気対策を施すこと、さらにウェーハ

転送時や FOUP 搬送時の発塵対策などが必須となっており、一見した外観からは想像しにくい、ハイテクボックスと

呼べるものである。以上簡単に述べたが、従来のクリーン化技術と比較して管理対象及び技術蓄積対象が人から

機械に移ってきているのがわかる。

このようにパーティクル遮断型として第一世代は一応の完成を見たが、人と製造物の遮断性能が完全でないこと

から、作業者が自由な服装で製造に携わるという理想的環境はまだ実現されていない。現在クリーンルームに関す

るロードマップでは、図 3 のような予想がなされている。技術発展次第では、クリーンルームの不用な理想的未来工

場へ向けて生産システム革新が加速される可能性がある。

さて、新生産方式導入の最も強い動機となりうるものは、生産

性の向上である。局所クリーン化生産方式を導入することで、

(1)工場建屋建設コストの大幅な抑制、(2)「垂直立ち上げ効果」、

(3)製造リードタイムの大幅縮小、(4)生産効率の上昇、(5)省エ

ネルギー性、(6)ライン停止フリーなどの重大な効果が生み出さ

れる。(1)については、図 3 にあるように、長期に渡ってその効

果が持続する可能性がある。(2)の垂直立ち上げ効果について

は、利益確保に必要な良品率達成について、これまで例えば

2年かかっていたところを、数ヶ月で達成してしまうという、絶大

なメリットが期待できる。局所クリーン化ではその原理上、不良

原因は局所クリーン化環境内に限定されるので、意図せずとも良品に仕上がり易い方式である。また、従来は、工

場竣工後、あらゆる発塵を一つ一つつぶしてゆく必要があったが、不良原因との因果関係もシンプルになり、狭義

の QC 活動を局所クリーン化環境内部へフォーカスできる。前工程の実システムでは、完全なロボット搬送を実現し

コンピューターで制御されるようになったので、高速・高効率搬送が可能になり、生産効率向上に大きく貢献した。

ウェーハ径が 200mm から 300mm へとアップしたことによるプラス・マイナス効果や枚葉処理化を含め、全てのメリッ

図 3. クリーンルームの清浄度ロードマップ

図 2. 半導体前工程実用化システム原理図

製造装置本体

(真空or大気圧)

クリーンエア

ファンフィルタユニット(FFU)

搬送システム

密閉搬送容器

( OHT, AGV, ... )

FOUP

密閉型カセット ロードポート ロボット+ + +

フロントエンドモジュール(Equipment Front End Module: EFEM)

半導体前工程・局所クリーン化システム

その他の機構(FFU, プリアライナ等)

転送室

1995 2000西暦年

2005 2010 2015 2020

3

4

5

6

7

8

ISO

Cle

anlin

ess

Cla

ss

9

ITRS1999

ITRS2001

ITRS2003

スーパークリーンルーム

産総研・ガス遮断型・ハイパーミニプロセスシステム

ダウンフロー方式

乱流方式(局所クリーン化による CRダウングレード)

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トを総合したトータルでの生産効率は、建屋の簡素化を含まない段階で控えめに見積もっても30%は上昇している

と見られている。ここで注意すべき事は、ウェーハ径をただ大きくしても、人が運べない、装置が大きくなりフットプリ

ントが増大する、装置価格も跳ね上がる、ウェーハ内均一性をあげるための技術的工夫が必要になる、バッチ処理

のメリットが薄れるなど、沢山のデメリットが発生していることである。局所クリーン化による密閉容器搬送は、これらを

補い、大口径で均一仕上がり、かつ高速製造を可能にする、不可欠技術と捉えることもできる。

■ ガス遮断型:産総研事例

図 4 に産総研のハイパーミニ・プロセスシステムと名付けた局所クリーン化リサーチシステムを示す。洗浄を主な役

割とするグローブボックスタイプのハイパーミニファブは、離れた装置間を試料が行き来するためのハブ機能も有し

ている。試料は、ミニトランスファーボックスを介して、ハイパーミニファブから、蒸着装置、走査型トンネル顕微鏡、

そして表面分析装置へ大気暴露せずに転送される。各装置内部は、通常運用で 99.9998%の高純度窒素雰囲気、

すなわち残留酸素濃度 2ppm 程度の雰囲気性能を有する。水分量は特に意識した制御を行っていないが、相対湿

度換算で、0.35%程度である。パーティクルに関しては、0.1micron 以上の計測においてカンウトされないゼロ状態

になっている。ISO CLASS にすると、ISO CLASS 3 のスーパークリーンルームの百倍以上の性能に対応する。

VOC(Volatile Organic Compound: 揮発性有機化合物)濃度も極めて低く抑えられている。実験室空間全体の体積

に対して、局所クリーン化された部分の体積は、僅かに 0.05%である。清浄化対策がほとんどなされていないこのよ

うな実験室を使っても、肝心な試料プロセス空間は、ボールルームより遙かに清浄であり、またガスも5桁低減でき

ていることが重要である。図 3 で言えば、2010年から2015年頃の将来の半導体工場の性能に対応している。

超純水

窒素ガス

ミニ転送ボックス

低溶存酸素濃度

低有機物濃度

0.003 mμ

~ 0.1 ppm in N 2O2

ハイパーミニファブ

filter

超低濃度残留酸素

微粒子ゼロ

酸素ガス : ~ 2ppm

清浄度Class: ~ 0溶存酸素: ~ 0.2 ppb

(>0.1μm)

超低濃度環境物質

クリーン金属堆積装置

走査トンネル顕微鏡STM

表面分析装置XPS/AES/LEED/CAICISS

■ ガス遮断型のもたらす生産性の革新

半導体集積回路製造のウェーハプロセス(トランジスタ工程及び配線工程)に於いては、近年微細化の進展で、

集積化されるトランジスタセルやメモリセルの特性揺らぎの問題が顕著化しており、製造上の最も懸念される技術課

題になっている。丁寧な不良解析や、製造装置の高度化を時間と費用をかけて十分に行い、さらに量産設備段階

での不良改善を徹底的に行うことが可能であれば、特性ゆらぎの問題は比較的緩和されないとも限らない。しかし、

現実には、肥大化する必要とされる開発および生産設備投資に対して、実際の世界の全投資額は飽和状態にあり、

図 4. ハイパーミニ・プロセスシステムと名付けた産総研の局所クリーン化リサーチシステム

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特性揺らぎ問題を解決するための技術的蓄積と生産段階での効果的な不良解析とプロセス改善を着実に行って

ゆくことは多大な困難を伴う状況となってきている。このような日々の改善で克服できない重大な課題に対しては、

発想の転換が効果的であり、また必須である。この課題はもともと微細化の進展に起因して重大化してきた。先に解

説したように、パーティクルに関しては、パーティクル遮断型局所クリーン化生産システム(半導体工場導入システム

はミニエンバイロンメントシステムとも呼ばれている)の導入で飛躍的に性能が向上している。それにもかかわらずこ

のような特性揺らぎが顕在化していることから類推して、別の要因が内在し顕著化している可能性を考えなくてはな

らない。それも、微細化に関わることから、パーティクルよりもずっと小さいサイズのもの~すなわち環境に存在する

ガス分子などの影響が、揺らぎの原因として想像される。

本事業に於いては、この科学的推論に基づき、上記産総研のガス遮断型局所クリーン化生産システムを用いて、

環境物質が製造プロセスの特性揺らぎに及ぼす影響について、検討を行った。具体的には、半導体集積回路製

造に於いてもっともデバイス特性に影響が顕著な、デバイス構造の界面に着目し、その界面の性質として最もベー

シックなショットキー障壁(金属電極と半導体基板の界面に形成する電気的バリアでダイオード特性を示す障壁)を

例に取り、そのショットキー障壁の性能(リーク電流の大きさ)について環境物質の影響を調べた。

実験には、n-Si(111)基板を用いた。全ての試料は、前処理後、グローブボックス内で、5%フッ酸により、自然酸化

膜を除去した後、40%の NH4F 溶液に 5 分間浸漬させた。NH4F 溶液は、溶存酸素を低減したもの(約 10ppb)とそう

でないもの(約 1ppm)の 2 種類利用した。最終的には、全ての試料は、溶存酸素フリー(0.2ppb)の超純水中でリンス

され、N2 ブロア処理後、サンプルホルダーに装着して、大気暴露しない状態を保ったまま、超高真空蒸着装置に運

ばれ、約 200℃程度の超高真空加熱で水分除去後、Si 基板を冷却し、アルミニウムを蒸着した。初期膜形成時の

真空度は、2×10-10Torr 程度である。

図 5 は、その実験結果である。横軸はリーク

電流の大きさで、n 値が大きいほど、リーク電

流が大きいことを意味している。縦軸は、同時

に作成した電極のうち、ある n 値を持つ電極

数の数(度数)である。まず、はじめに、ハイパ

ーミニファブ(グローブボックス)内でのクリー

ン化処理を行わず、アルミニウムを室温蒸着

した場合を P.1 として図に示してある。この場

合、n 値は極めて大きく、これはリーク電流が

大変大きい。またその量は、電極ごとに大幅

に異なることがわかる。 このような質の悪さは

ずっと以前から知られており、この実験におい

ても同じ結果を得ている。ちなみに、アニール

を施すと、リーク量は大幅に改善する。これは、

主に、界面が表面よりも Si 基板側へ移動するためである。次に、溶存酸素の制御を行わない NH4F 処理をグローブ

ボックス内で行い、かつ基板温度-80℃で低温蒸着を行った場合(P.2)を同じ図に示す。この改善により、大幅にリ

ーク電流の減少が見られたが、依然として n 値は、1 から 2 の間に広く分布している。この P.2 は、通常考えられる先

端技術を駆使した製造技術の最高水準での実験に相当するものである。

最後に、ハイパーミニファブの持つ環境物質制御能力をフルに発揮し、溶存酸素を低減した NH4F 薬液を用いた

場合を P.3 として行った。P.3 では、約 30 個の電極の 81%が n ≤1.05 の範囲に収まるという、n 値の劇的な改善が見

られた。このことは、これまで無視されてきた、NH4F 薬液中の溶存酸素が、Si 表面の表面準位密度と密接な関係を

持っていることを示唆している。すでに、溶存酸素を低減した NH4F 薬液への浸漬により、Si(111)表面のエッチピッ

トが劇的に減少し、またステップ形状がより直線的になること(キンク数の減少)が、スタンフォード大のグループより

報告されている。P.3では、このようなSi表面のよりステップ線密度の減少した、つまり原子レベルでの平坦性の向上

図 5. ショットキー電極の特性ゆらぎ消滅の検証実験 4桁

1.0 1.5 2.0 2.5 3.00

2

4

6

8

10

12

度数(電極数)

n値(リーク電流の大きさ)

パーティクル除去

環境酸素・溶存酸素抑制

ガス遮断効果

プロセスの改善

P.1~通常の企業努力P.2

P.3

普通の環境下での作成

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した表面の効果が現れ、リークの減少につながったと考えるのが妥当である。また、詳細は省略するが、グローブボ

ックスを利用したパーティクルフリーな環境での窒素 80%:酸素 20%の清浄人工大気暴露の影響も調べた。暴露時

間を 5 分間に限定した実験でも、P.2 とほぼ同様なリーク効果が確認できた。また、同時間本物の大気にさらしたも

のも、この人工大気暴露試料とほぼ同様のリーク特性を示した。このことは、界面のリーク特性には、パーティクルよ

りも、酸素の効果が大変大きいことを示している。

このように、ガス遮断型の局所クリーン化生産システムを用いることにより、従来では全く知られていなかった、環

境物質とデバイス特性のゆらぎの因果関係が明らかとなった。このことは、ガス制御型システムを製造システムに導

入することで、現在顕著化している、デバイスの特性揺らぎ問題解決への道が拓けてくる可能性を強く示唆してい

る。

■ 局所クリーン化生産システムの応用可能性

まず、前工程では、ガス遮断型次世代 FOUP の開発・実用化には、製造プロセスを簡略化したり、真にパーフェク

トプロダクションを指向するメリットがある。実用化に向けた研究開発は、今後の課題である。

また、最近は実装分野の微細化も進んでいる。一方で環境問題になっている鉛のフリー化で半田技術の微細化

対応性能が後退していることもあり、微細化対応と半田性能低下を補うために、良質な環境下での実装生産の必要

性が高まっている。また、ウェーハープロセスと比較して、実装の利益率が高まっている時代的背景もあり、今後、

実装分野への局所クリーン化生産方式導入は、必須課題となってくると予想される。現にいくつかの MEMS(メム

ス:MicroElectroMechanical System: ミクロンオーダでの機械加工部品に電気的機能を持たせた部品)主力企業で

は、局所クリーン化生産方式の導入を検討しているところも出てきている。

液晶ディスプレイ技術では、現在1枚のガラス板のサイズが世代を更新するごとに肥大化している。 しかし、次

世代の 1.7m x 2m(第七世代)サイズのガラス板の生産性が本当に高いかどうかは、生産全体の効率から言って疑

念の余地がある。 一方で、パーティクルの存在は、ドット抜けにも直結する重要な課題であり、液晶ディスプレイ生

産工程の局所クリーン化対策は、真剣に検討すべき課題である。 現在の第六世代(1.35m x 1.65m)でも人で扱うこ

との出来ないサイズであり、半機械化がすでにできあがっている。従って、可能な工程から部分的に局所クリーン化

してゆくことは、実は可能な課題である。しかし、現状では、パーティクル対策を対症療法で対応しており、半導体ウ

ェーハ前工程のボールルーム生産と同じ段階に留まっている。このように、潜在ニーズがありながら、技術的 3 要素

を備えた新世代局所クリーン化による技術革新が進んでいない代表的業種である。 すでに工場投資額も LSI先端

工場と同等な 2000億円程度のレベルに達している。 液晶においてもムーアの法則の考え方が原理的に成り立っ

てきたが、その限界も、半導体集積化チップと同じように、設備投資・研究開発投資額の飽和で、規定されてしまう

可能性が高くなっている。数年内に、コストダウン化要求が極めて強まることが予想され、大規模生産にも適してお

り、仕掛かり在庫の調整に柔軟に対応できる局所クリーン化生産技術の戦略的に導入が検討される可能性がある。

この他、医薬品製造、食品、住宅・ビル建設など既存産業及び、ナノテクやバイオなどの今後立ち上がってくる分

野でそれぞれ局所クリーン化生産方式が導入されてゆく可能性がある。

(独立行政法人 産業技術総合研究所 原 史朗)

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謝辞

本事業を進めるにあたり、様々な方々に多大なるご尽力およびご協力を賜った。ここに感謝の意を表する。

特に、本事業の構想段階に於いて、貴重なご示唆を頂いた、早稲田大学の大泊巌教授には、御礼申し上げる。

また、半導体の生産技術に関して、様々な議論を頂いた、富士通(株) LSI 事業本部デバイス開発統括部担当部長

で、JEITA 半導体部会半導体生産技術専門委員会委員長の長田俊彦氏には、深く感謝申し上げる。

さらに、大局的な観点からのご意見を頂いた、財団法人くまもとテクノ産業財団の鶴島稔夫研究理事には、この場

を借りて御礼申し上げる。

横浜国立大学の羽深等教授には、産業モデルなどにつき、有用なコメントを頂いた。感謝申し上げる。

(株)アルバック・コーポレートセンター筑波超材料研究所の常務取締役山川洋幸所長には、産業界の現状につき、

様々な御議論を頂いた。感謝申し上げる。

(株)クオルテックの代表取締役志方廣一氏には、産業界の現状や日本国の有り様などにつき、広くご意見を賜っ

た。感謝申し上げる。

本事業の一環として開催したナノテクノロジー生産技術革新検討会議では、ローム(株) 取締役研究開発本部長

の高須秀視氏に、講師として有用なレクチャーを賜った。また、本事業の主旨にご賛同頂き、これからの産業のあり

方について、貴重なご意見を頂いた。ここに感謝申し上げる。

ナノテクノロジー生産技術革新検討会議の各委員およびコメンテーターの皆様には、本事業の主旨にご賛同頂き、

多忙の中、会議に毎回ご出席頂いた。この場を借りて深く感謝申し上げる。また、その中で東京大学の上田完次教

授をはじめ、多数の方々に、会議とは別に、広く産業界の現状や日本のものづくり・産業のあり方などについて、有

識者としてそれぞれ個別に御議論を頂いた。ここに深く感謝申し上げる。

本事業を進めるに当たって、多忙な業務の中でスケジュール調整を頂いてナノテクノロジー生産技術革新検討会

議にオブザーバーとしてご参加頂いた、経済産業省情報通信機器課山並憲司課長補佐と池田伸一課長補佐、及

び産業技術政策課の安田哲二技術戦略企画調査官には、感謝申し上げる。

本事業を進めるに当たって、極めて稀な大変短い事業実施期間であるにも関わらず、本事業の主旨にご賛同頂

き、短期間で集中的に産業調査に当たって頂いた、(株)日本アプライドリサーチ研究所代表取締役の山村俊弘氏

および、実際に調査を統括して頂いた佐川峻主任研究員、そして関連調査を担当頂いた諸氏には、深く感謝申し

上げる。

受託者である独立行政法人産業技術総合研究所内に於いては、本事業を進めるに当たって、本事業目的に於

いて関係の深いミニマルマニュファクチャリング推進検討会議組織から、有形無形のサポートを頂いた。ここに感謝

申し上げる。

独立行政法人産業技術総合研究所内に於いて、本事業を様々な点でサポート頂いた企画本部、特に水谷亘総

括企画主幹、重松一典企画主幹、及び木嶋倫人企画主幹にはお礼申し上げる。

さらに、短期間の本事業を進めるに当たって、様々な事務的なサポートおよびご協力を頂いた、産業技術総合研

究所内の財務会計部門および産学官連携推進部門の業務担当の皆様にはこの場を借りてお礼申し上げる。特に、

財務会計部門調達部の草間浩美主幹には、多大なお世話を頂いた。感謝申し上げる。また、本事業に当たって日

常業務をサポート頂いた、産業技術総合研究所内のエレクトロニクス研究部門及びナノテクノロジー研究部門のユ

ニットスタッフ諸氏に感謝申し上げる。

本事業を進めるに当たって、本事業推進にご協力頂いた、産業技術総合研究所エレクトロニクス研究部門長の和

田敏美部門長には、御礼申し上げる。

最後に、短期間の本事業を進めるに当たって、日常業務、事業予算管理、内部外部との連絡調整、会議運営、

および報告書作成に至る業務全般を全面的に担当し、その稀に見る膨大で厳しい実務をこなし、様々な障害を温

かい態度で円滑に切り抜けて頂いた、矢島美代子アシスタントには、とりわけ深い感謝の言葉を差し上げたい。

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