スペクトラムアナライザを用いた占有周波数帯幅測定装置 · vol. 24 no. 127...

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Vol.24 No. 127 電波研究所季報 March 1978 pp. 205-214 研究 スペクトラムアナライザを用いた占有周波数帯幅測定装置 j 野芳IYJ *久保田文人*塩原 I* (昭和 52 10 18 日受理) THEOCCUPIEDBANDWIDTHMEASURINGAPPARATUS USINGA SEQUENTIALSPECTRUMANALYZER By Yoshiaki !CHINO, Fumito KUBOTA and Wa SHIOBARA Forthequalitybyusingradiowave,theoccupiedbandwidthisimportantfactorwithfrequency, powerandspuriousemissions. So,thereareseveralmethodstomeasuring oftheoccupied band- width. Thispaperdescribestheoccupiedbandwidth measuring apparatus byusing a sequentialspectrum analyzer withitsability,constructionandfeature. ThefeatureofthisapparatusistobeabletoapplyfromHFtoSHF,includingalmostall type ofradiowave,andfurthermoretoprintout the occupied bandwidth or tofigure theenveloping curveofspectraandstatisticaldistribution,etc. ].まえがき 電波の占有周波数帯幅は,周波数,電力及びスプリア スとともに発射される電波の質を定める重要な要素であ り,電波監理上でもそのように位置づけられている。近 年,通信需要の増大と通信システムの多様化の rj1 で,有 限の資源ともいうべき電波の割り当て周波数上での混雑 の様相が一段と増してきた。したがって電波の有効利用 上からも占有周波数帯幅は重要度を増し,その測定方法 についても乙れらの状況に対応した方法が求められ,特 IC 無線機の型式検定業務においては品(l j レーダ等の新機 種が加わり,これらに即応できる占有周波数議幅の測定 方法及び装置の開発が急務となっていた。占有周波数帯 隔の測定方法としては,電波監視で用いている XdB のほかにスペクトラム分析法,発射パルスの波形や周波 数偏移の実効値から計算する方法,あるいは型式検定の 一昔日で用いているいわゆるバンドメータ法があるが,乙 205 乙でいうスペクトラムアナライザを用いた占有周波数帯 l 隔の測定法(以でスペアナ方式と略称する)は,従来か ら原理的な方法として知られ,既i ζ電波監理用総合測定 システムの一部として使用されている。しかし,いまだ 乙の方式の実用上の構成,操作,その他の問題点につい てはの報告はみられない。近年,スペクトラムアナライ ザは性能及び操作商においてめざましい進歩を遂げ,そ の一般的普及率も高くなった。また,この測定方式にお いて必要となる数値計算及び機器の制御は,小型計算機 の低価格によって実用性が尚くなるなどの点から,スペ アナ方式の実用化を試みたものである。 2. スペアナ方式の原理と検討課題 2. l 原理 スペアナ方式は本装置ではアナログ掃引式のスペクト ラムアナライザを用い,その出力をA-D 変換した後, 計算機で占有周波数帯幅を求めるように構成しである。 1 図にその機能を示す。乙こで本装置の中心機能をな

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Vol. 24 No. 127 電波研究 所季報 March 1978

pp. 205-214

研究

スペクトラムアナライザを用いた占有周波数帯幅測定装置

リj野芳IYJ*久保田文人*塩原 杭I*

(昭和52年 10月18日受理)

THE OCCUPIED BANDWIDTH MEASURING APPARATUS

USING A SEQUENTIAL SPECTRUM ANALYZER

By

Yoshiaki !CHINO, Fumito KUBOTA and Wa SHIOBARA

For the quality by using radiowave, the occupied bandwidth is important factor with frequency,

power and spurious emissions. So, there are several methods to measuring of the occupied band-

width.

This paper describes the occupied bandwidth measuring apparatus by using a sequential spectrum

analyzer with its ability, construction and feature.

The feature of this apparatus is to be able to apply from HF to SHF, including almost all type

of radio wave, and furthermore to print out the occupied bandwidth or to figure the enveloping

curve of spectra and statistical distribution, etc.

].まえがき

電波の占有周波数帯幅は,周波数,電力及びスプリア

スとともに発射される電波の質を定める重要な要素であ

り,電波監理上でもそのように位置づけられている。近

年,通信需要の増大と通信システムの多様化のrj1で,有

限の資源ともいうべき電波の割り当て周波数上での混雑

の様相が一段と増してきた。したがって電波の有効利用

上からも占有周波数帯幅は重要度を増し,その測定方法

についても乙れらの状況に対応した方法が求められ,特

IC無線機の型式検定業務においては品(l月jレーダ等の新機

種が加わり,これらに即応できる占有周波数議幅の測定

方法及び装置の開発が急務となっていた。占有周波数帯

隔の測定方法としては,電波監視で用いている XdB法

のほかにスペクトラム分析法,発射パルスの波形や周波

数偏移の実効値から計算する方法,あるいは型式検定の

一昔日で用いているいわゆるバンドメータ法があるが,乙

*通信機~~部機器課

205

乙でいうスペクトラムアナライザを用いた占有周波数帯

l隔の測定法(以でスペアナ方式と略称する)は,従来か

ら原理的な方法として知られ,既iζ電波監理用総合測定

システムの一部として使用されている。しかし,いまだ

乙の方式の実用上の構成,操作,その他の問題点につい

てはの報告はみられない。近年,スペクトラムアナライ

ザは性能及び操作商においてめざましい進歩を遂げ,そ

の一般的普及率も高くなった。また,この測定方式にお

いて必要となる数値計算及び機器の制御は,小型計算機

の低価格によって実用性が尚くなるなどの点から,スペ

アナ方式の実用化を試みたものである。

2. スペアナ方式の原理と検討課題

2. l 原理

スペアナ方式は本装置ではアナログ掃引式のスペクト

ラムアナライザを用い,その出力をA-D変換した後,

計算機で占有周波数帯幅を求めるように構成しである。

第1図にその機能を示す。乙こで本装置の中心機能をな

206 電波研究所季報

婦引信号

第 1図 ス ペ ア ナ 方式機能図

す掃引式のスペクトラムアナライザは,スペクトルの逐

次的解析器の機能をもっており,次のように解析されて

いる川。すなわち第1図IC示すように,信号 f(t)と周

波数変調された掃引信号 S(t)を乗算器Mで掛け合わせ

,その出力 f(t)・S(t)をスリットフィルタ iζ加え出力

{J(t)を得る。乙こで S(t)及びその瞬時角周波数w(t)

は次のようである。

S(t)=cosゆ(t)=cosαt' ・・・(1)

w(t)=dゆ(t)I dt

=2at …・(2)

次lζスリッ卜フィルタのインパルス応答を h(t)と

し,その継続時間を T1iとし,この12{聞で α が非常に

小さく, 。(t)が l=t0における接線。。(t)( =Zalol-

dt0りによって近似できると仮定すると出力 Wo)は次

のようになる。

rJ(to) '.::'.COS ato2J::_T,/(t)・h(t0ー加s2at0tdt

+sin叫 2J::_T,/(t)仰o一のsir

乙乙で f(t)・h(t0-t)のフーリェ変換を

Fi0(w)ニ j二f(似 Cto-t)山 1

=Ato(w)・6φ1.0iwl

.・・・(3)

=1/2π・F(w) * [eiwtO・H*(w)]一..-(4)

とする。乙乙で F(w),H(w)はそれぞれ f(t),h(t)

のフーリェ変換である。そうすると fJ(to)は

9(to) c::Ato(2al0)・cos(al02+仇。(2ato)}... ー・・(5)

となる。(4)式及び(5)式から 9(to)はその包絡線が/(l)・

h(to-t)のフーリェスペク卜 Jレlζ等しい,すなわち信号

のスペクトノレ F(w)にスリットフィルタ H(w)の重み

をつけたものであるといえる。したがって包絡線検波{f.~

出カダ(t)及び A-Dコンパータ出カダ(nT)は信号

f(t)のスペクトル強度の情報をもっており, 乙の値か

らパワースベクトルや占有周波数帯幅を求める乙とがで

きる。と乙ろで(3)式における近似の精度は,(3)式の近似

から生ずる最大誤差 emによって決まり, emが無視で

きるためには次の条件を満たす必要がある。

fs《B' ・・・(6)

乙乙で, J.:掃引速度(掃引幅/掃引時間), B:スリッ

トフィルタの帯域幅である。実際のスペクトラムアナラ

イザは,との条件を満たす範囲内で使用できるようにな

っーとし、る。

2.2 実用化に当たっての検討課題

前節で述べたように綿引式のスペクトラムアナライザ

の出力は,入力信号のスペクト Jレ強度の情報をもってい

るからその出力から占有周波数帯幅を求めることができ

る。占有周波数帯幅は,電波法施行規則で「その上限の

周波数を超えて幅射され,及びその下限の周波数未満に

おいて隠射される平均電力がそれぞれ与えられた発射に

よって稲射される全平均沼力の 0.5パーセントIC等しい

上限及び下限の周波数搭l隔をいう。……」と定義されて

いる。したがって乙の定義どおりの周波数帯幅を算出す

るには,次の操作が必裂である。

( i ) 信号の性質を巧・厳してスペクトラムアナライザ

のおrl~I速度及ひ、スリットフィノレタ借域幅などの諸条

件をi)とめる。

(ii) スペクトラムアナライザ出力をサンプリング

し, 'rfiJJの次元lζ換える,すなわちサンプ”ル値を2

来した後記憶する。

(iii) 全平均電力及びその 0.5パーセント値を算出

し,それを基にした1li'fj周波数帯幅を全サンプJレ値

N

から算出する。すなわち,全平均電力を P=L.9’2

K N

(nT)・'1fとし, L.9''(nT)・'1/!P=L. 9’2(nT) ・'1/! n=1 n=L

P=O. 005となる K及びLの値を求める。乙乙で,

'1f:サンプリングの周波数軸上の間隔, T:サンプ

リング周期

以上述べた操作IL当たっては,第1図lこ示したように

A-Dコンパータ及びコンピュータが不可欠である。ま

た占有周波数帯幅の算/J¥IL当たっては,次のような検討

課題がある。

( i ) 各種電波形式に過した装置の燐成及び処理方法

(ii) 測定IL当たっての各種パラメータの設定値

(iii) 測定装置の校正放ひ‘誤差について

これらの内,型式検定業務での実用化に当たっては,次

Vol. 24 No. 127 March 1978 207

入力

スター卜・スト yプlhlJi,却

第21'!¥I 測 定 装 置の構成

の点について検討しておく必要がある。

( i ) 当面,パルス波及びFM波を測定するための装

置の構成及び処理方法

(ii) 上記の電波形式について~(lj定するうえで必要な

条件として,掃引幅,必要とするサンプル数(掃引

速度及びA-Dコンパータ速度と関連),スリット

フィルタ帯域幅の設定値, dBスケール(対数圧縮)

の採用,低域フィルタ(積分器)の必要性及び信号

のSN R等について

(iii) 測定した値がどの程度の誤差をもつか

本報告では乙れらの点に関しては,雑音(擬似音声*)

で変調されたFM波について検討した結果について述

べ,パJレス波については別途報告をする問。

スタート

の定始

聞い設引

ν掃

コ半ナ

D

7

Ah粂ス

3. 測定装置

3. 1 本装置の構成及び性能

構成方法としては幾っか考えられるが,本報f';・にある

実用機は第2聞に示すように,スペクトラムアナライザ,

バッファアンプ,ピークホールダ, A-Dコンパータ及ひ

計算出I]御部としてのコンピュータから構成されている。

動作は計算ilfl]御部から発したスタート信号lとより,スペ

クトラムアナライザの掃引を開始させ,同時にピークホ

ールダ, A-Dコンパータも動作状態にする。なお,ピ

ークホーノレダは, レーダあるいはエコーゾンデ%'・の占有

周波数帯幅の測定に用いるもので山, A-Dコンパータ

の読みとりに同期させてリセットが行われる。なお, j主

続性信号についてはピークホールダはmいない。装置が

スタートすると, A Dコンパータ出力はいったんコン

ピュータのメモリ IC貯えられていき,スペクトラムアナ

ライザの掃引終了信号を得て読み取りを終了させ,貯え

られたデータの値,個数及びスペクトラムアナライザの

設定条件をもとに,占有周波数帯幅等の計算処理が実行

される。第3図は本装置の処理過程を示すフローチャー

トである。乙乙で,スペアナ方式の性能は使用するスペ

クトラムアナライザの性能lとより大きく左右されるが,

Y社製のスペクトラムアナライザを使用した場合の測定

装置の性能を第1表に示す。

対数一真数変換2 采操 作

全電力及び占有周波数帯幅の算出などの計算

幅等力

帯図

市A

レij

波ト出

問ク

有ペ

占スの

次の計算操作へ

本白色雑音をCCITT規格のフィルタに通した信号

第3医lフローチャート

3.2 各部の特性

3.2.1 スペクトラムアナライザ

第2表は使用したスペクトラムアナライザの規格の一

部である。なお,乙のほかにビデオフィルタ(検波出力

208

第1表測定装ii:iの性能

(1) il[IJ定周波数飽問

(2) 測定対象

(3)処理速度例

lOMHz~18GHz

各種屯波形式

10秒/330サンプル(掃引 2秒,計算8秒)

計算値との比較では±5%以内

占有周波数帯幅その統計的分布平均値,分散スペクトノレ分布図など

(4) 測定精度

(5) 出力項目

第2表 スペクトラムアナライザの規桃

(1) 測定周波数筋四 lOMHz~18GHz

(2) タ9イナミックレンジ 75dB

スリットフィルタの 0.1 kHz~300 kHz (3)

通過帯域幅 cs段階切り換え)

(4) 掃引速度 0.1 msec~10 sec c1s段階切り換え)

20

剥l

士f 。周

波-20

-40 (kHz)

-GO

-so

-JOO

り 2 :;

経]邑 II.¥'H¥J (11.¥'/iil)

第4図 スペクトラムアナライザの長時間川波数波動

- 0 分lllJ

:ts !t-101 9

周j皮数

り 20ド

スレ

(kHz/分)(J 2 3 4

経)J&llキ!日I(II寺IUJ)r. ~)

第5図 スペクトラムアナライザ短時間周波数i:~:動

lζ対する積分回路と考えられ, 10 kHz, 100 Hz, 10 Hz

のものを備えている)を挿入できるようになっている。

第 4図は長時間周波数潔動を第5図は短時間 (1分間

の)周波数漂動を示したものである。点、火後約1時間半

程経過すればほぼ定常状態IC:遂し, 20kHz/時間, 0.05

電 波 研 究 所 季 報

//

e

J /

相対レベル必 /

;;;ffj::ki;Q1~,j :!;i~kl lz J

¥'fl: {'1' ~1,';filli·:i}域1/Ji,i:2,jo1、 1 lz i インハルス・:i}M:1!Ji,i:fiOk、ilzl

\\| \|

干// ,t./J,'i)波数(2001、1lz/<liv) 第6図 スリットフィルタの周波数特性

第3表 スペクトラムアナライザ周波数報l精度

レンジ|誤差| レンジ i 誤差い~誤差kHz/div % MHz/div % MHz/div %

2 +7.6 o. 2 +0.55 20 +o. 79

5 +7. 7 0.5 +0.19 50 +1. 22

10 +7.6 1 +I. 23 100 +0.77

20 十7.7 2 +l. 22 200 +0.45

50 +s.o 5 +o. n 100 +7.8 10 +1.08

lf'

p'f-0.2

カ(V)

() .4

-0.6

-0.8 80 -60 -41) -20

HI .<-tノ、力(dB)

第7図 スペクトラムアナライザの直線性

~o. 3 kHz/分程度の漂動状態になる。また, ローカルの

周波数ジッタはスタビライザONの状態で約o.5 kHz程

度である。したがって点火後1時間半程経過した後使用

する乙とが望ましいといえる。第6図はスリットフィ Jレ

Vol. 24 No. 127 March 1978

6

ホ4

Jlノ

II¥ 2

(V)

-60 -40 -20

相対入力 (dB)

第8図 illU定装置の直線性

タの周波数特性の例であるが,乙の 3dB帯域幅は295

kHz,雑音等価帯域幅は240kHz, インパルス帯域幅は

350世Izである。また,誤差の主要な原因となる周波数

軸の精度は各レンジについて測定した結果,第3表のよ

うになった。占有周波数帯幅の測定値は,乙の値により

補正を加えるようになっている。

3.2.2 直線性

第7図はスペクトラムアナライザの直線性を,第8図

はスペクトラムアナライザ、とバッファアンプ,ピークホ

ールダ及び、A-Dコンパータまでの振幅の入,出力関係、

を示したものである。乙の場合,入力がー70dB付近で

50k

f言~}入 11 0

リセット入力

209

直線性が悉くなっているが,乙れはピークホールダ回路

の検波器の特性によるものと考えられ,バッファアンプ

の利得をもう少し増加させればもう少し改善可能と考え

られる。また,スペクトラムアナライザの垂直軸は附属

の包絡線検波器及びピークホーJレダ検波器の直線性の良

いととろを使う乙とはもちろん,測定に際しての操作の

容易さから dBスケールを使用しており,したがってA

-Dコンパータの読み取り値は計算処理の過程で対数か

ら真数値への変換が行われるようになっている。

3.2.3 ピークホールダ

第2図の担lj定装置の構成で示したように,本装置では

レーダ及びエコーゾンデ等のPO電波の測定には,ピー

クホールダを使用している。第9図ICバッファアンプと

ピークホールド回路を示す。ピークホーノレダのリセット

はA-Dコンパータの読み取りと同期して行うようにな

っている。回路の直線性, SN Rは第8図からみても実

用上問題ないといえる。第 10図(a), (ゅはピークホール

ダの動作状況を示しているもので,横軸はO.2 msec/div

で図中下の波形はA-Dコンパータと同期したリセット

パルスで=あり, Lレベルでリセット, Hレベルのと乙ろ

でホールドの状態となる。また上の波形はピークホール

ダの出力であるが, リセット信号IC同期してリセットが

行われ,ホールド動作も正常に行われているととを示し

ている。なお,ホールド状態での最初のところで輝線が

上下lζ表れているが,乙れは(扮の説明図にあるように,

リセット信号とピークホールダの入力ノ-II;レスが非同期な

ため,写真撮映の間lζパルス間隔分だけ動くことによる

ものである。なお, A-Dコンパータの読みとりはリセ

ットの直前で行っている。

一一一一一一一ー一一ーーーーーー一一一「,一ーーー- ' I

I I

i I I

tl'i 11

lk

第9図 パップァ&ピークホーノレダ回路図

210

(a)写 J’l ,、

(リセ γ トパルス)

(b) f.lt WI 図

篭 波 研 究 所 季 報

/ホールドレベル

ラ')七;,_::パルスとヒ クホールダ入力!三4 ;パルスの~ I'Jl;JJtJJのため

+ーーホーjレド

第 10図 ピークホーノレダの車IJfi:放形

3.2.4 A-Dコンパータ,コンピュータ

使用 したA-Dコンパータ及びコンピュ ータはいずれ

もY社製のもので, A-Dコンバータはレンジが lOV,

1 v, 0.1 vの3レンジで最大読み取り速度はASC I

Iモードで 3700サンプノレ/秒でtあり,コンピュータは記

憶容量約 15Kバイト, 入出力最大速度は DAM入力で

約 400Kワード/秒であり, A-Dコンパータとはイン

ターフェースを介して級統するようになっている。スペ

クトラムアナライザはコンピュータからのスタ ート信号

を受けてスタ ートし, 終了はスペク トラムアナライザカミ

らのス トップパノレスをコンピュータが受け取り, A D

コンパータの動作を終了させるようlζなっている。

4. 測定上必要な条件

2で主GべたようK,本立では型式検定試験において用

いている擬似音声を変調信号としたFM信号について検

討を加えた。

4. l 掃引幅

占有周波数帯l~ijjの測定を行ううえで, 対象とする信号

の周波数範囲を決める乙とは重要な乙 とである。第 11

図は乙の点を検討するためK実視lj値の平均値を示したも

のであり,スペク トノレをほぼ全て含んだ湯合の占有周波

数報開IC;t-jし,スペク トノレの極大値から,あるレベルだ

け低いと乙ろまでの範囲を対象として求めた占有周波数

帯幅が,どの程度の誤差をもつか示したものである。そ

の結果,スペク トノレの極大値から 30clB下ったととろま

でを対象とした場合,約 lパーセ ント, 40clBで約o.1

ノマ一セントとなり,ほぼ40clB以上あればf/Aj題なく ,30

dBでも実用上支障ないといえる。 この場合, 周波数偏

移は 3.5 kHz ( S G附属メータで)であるが,他の周波

数儒移についても第 11図に準じて扱えると考える。

4.2 スリットフィルタ幅

第 12図(司~(d)は周波数偏移及びスリッ トフィノレタ闘

を変えたl時の占有周波数有1・1掃の変化をみたものである。

乙れらの値は,1回の昂i引で 389個のサンプノレを得る条

件で 20巨l掃引して得た 20個の占有周波数帯憾の平均値

を用いている。ζれらの図の内,局波数備移の広い(c),

(d)Iとついては占有周波数帯帽の増減が周波数儒移と関係

が深く ,特に ビデオフィノレタをON にした場合IC顕著IC

表れる乙とがいえ,またスリッ 卜フィノレタ認域憾と周波

Z

M

AU

nu -

1

一ア-mMじ,

, v

喝、、.

ピテ’オOFF

を用いた場合と用いない場合では,平均値については約

1パーセント程度前者が低くなる乙と,変動係数につい

てもサンプJレ数にかかわりなく前者が低く,サンプJレ数

200個で約4パーセント, 400個で 3.5パーセント, 600

個以上になると 2.5パーセント以下になる乙とがいえ

る。また,このような条件下でも何度か掃引して,その

F’U

F川山

口U

ハM

ι7一ア

ピピ

。,, ,

, ,

a

’ ,

, ,

o

吋五

ビ7オOFF

211

0.;, 1. () 5. () スリットフィルタ似(kHz)

(c)

5. ()

5.0

スリットフィノレタ幅と占有周波数帯幅

0. 5 1. () スリソトフィルタ1μ1,¥ (kHz)

(b)

0. 5 1. () スリソ卜フィルタ*iii(kHχ)

(a)

0. 5 1. 0 スリットフィルタ恥~ (kHz)

(d)

l.'i];皮数fliiHt3.51、lIχ

},';)i皮数制移 11、lIχ

liilil'.iM而移 2kllz

12.0

11. 0ト~;. 10. o, ),'i] 9. 01

誌s.d

~;:; 7. 01 (I、1-lz)G.OI

r; 日一~一一一一-v. v ll. l

0. 1

0.1

第 12図

0.1

13. 0

9.0

1'i 8. 0

1i 7. 0 J.~J il!i. o.O tx ;:;;, 5. 0

側、4.0(I、Hz)

3. 0,

12.0

{.~; 山i皮数帯 10.0 幅

(I、Hz)9.0

8.0

| 師ヲ伺レl 「一一一「,,,,一

戸l I/ ¥ W刊とりI I/ I Lベ10

I ,.A '. 周波数

数偏移の値が近いととろで、極小値が現れるようlζ推測さ

れる。乙れらの原因は明らかではないが,測定値の信頼

性,安定性及び分解能の面からみてスリットフィルタは

0.1 kHz若しくはo.3kHzを用いるのが妥当と考えられ

る。

4.3 占有周波数帯幅の算出に必要なサンプル数

計算!と必要なサンプル数は,スペクトラムアナライザ

の掃引速度, A-Dコンパータの読み取り速度とコンピ

ュータの処理能力及び測定値の統計的性質から決めると

とになる。 13第図及び第 14図は周波数偏移 3.5kHz,

掃引速度50kHz/10秒の場合について1回の掃引で得ら

れるサンプJレ数と占有周波数帯幅の平均値及び変動係数

の収束性をみたものである。乙の場合,ビデオフィルタ

を用いることにより,平均化の操作が加わるから測定値

のバラツキは少なくなることが考えられるが,その点で

の効果をみるため lOHzの遮断周波数をもっビデオフィ

ルタを用いて比較した。乙れらの図からビデオフィルタ

周i皮数偏移 3.5kllz

-50

50kllz

掃引闘と誤差の関係(実測備の平均値)

-40

(dB)

全帰g11隔

切 り とりレベル

1978

-30

March

20

No. 127

-10

第 11図

Vol. 24

10

1

0.1

(%)

去を

212

A Dコンノ、ータj宝l主(mぉcc)

100 so 10

11. 0

周波数偏移3.SkH' tilfリ1速度50kHz/10秒10111!1;昔引の、l'・l';Jλリット0.11、1lz

有限l

十0.0トペで~~;=~)~!:9. 0←

1斗印刷ーHID 51111

サ/フル滋(@)

第13図 サンプJレ数と占有周波数帯幅

15

第13限!と同じ条{’,,

n

u

t

a

官民)垣市消川町\別思鋒饗

。100 500

サンプル数 (i[~I)

第14図 サンプノレ数と変動係数

平均値を用いるようlとすれば,変動係数を更に小さくす

るととができる。第 15図及び第 16図は乙の点について

検討するためのものである。乙の場合, 1回の掃引で得

られるサンプル数は 396個である。第 16図は例えば4

回掃引してその平均値を使用する場合,変動係数は1パ

ーセントとなる乙とを示している。以上の点から,平均

値の収束性の点ではl回の掃引で得られるサンプル数は

400個程度あれば良くとの場合,ビデオフィルタ IOHz

を積分器として用い平均回数4回とすれば変動係数も 1

パーセント以下にできることがいえる。第四区lから第

16図はスリットフィルタ 100Hz,掃引速度50kHz/10

秒の条件であるが,掃引速度を変えた場合でもサンフ勺レ

数を基準lとして考えれば,前述の結果は一つの目安とな

1000

ると考えられる。

5. 校正と誤差

5. I 校正について

占有周波数帯幅測定装置の校正は,既知の占有周波数

電 波 研 究 所 季 報

1mi1.主数(mi移3.51、Hzf;j}リ I~度50kl lz/10秒ビデオ!OHχスリ y 卜O.!kHz

fr I jujのサンプル数396f!~I

同j皮数 10.0-’:1, 併

市1i(kHヌ)

9.0

5 10

ー!と U,jj1ijt~ (1111)

第15図平均操作と占有周波数帯幅

15

第15悶と同じ条件

ざ 10

4」岨

~ Eト\\

事~ 5

l製E悪!!& ト

。5 10

平均回数(同)

第16図平均操作と変動係数

第4表計算値と実illU値の比較

周偏(k波Hz数移) | ス実リ測ッ値トIll 献 ス実リ測ッ値|121 誤差

計(k算Hz値) Jレ〆、タ 0.1 kH「ノz)イ・ (%) ル(タ o.3kトHフz)" (%)

1. 5 3. 97 4.16 +4. 79 4.53 +14.1

2. 6 7. 94 7. 76 2.27 7. 76 -2.27

3. 5 9. 92 9.7 2.22 9. 61 -3.12

5. 0 11. 90 11. 81 -0.76 12. 0 +0.84

*変調信号 992Hz

帯幅をもっ標準信号があれば可能な訳であるが,乙のよ

うな標準信号の実現は困難である。ことでは簡便法とし

てピュアトーンでFM変調をかけた信号を用い,ベッセ

Jレ関数を用いて展開した計算値から求めた占有周波数帯;

幅とその実測値との比較を行ってみた。第4表にその結

果を示す。第4表から例えば,スリットフィルタが0.1

kHzの場合実測値は計算値lζ対して ±5パーセント以内

であり,更IC周波数偏移を 2.6kHz~5. OkHzとして考え

12

スリットフィルタO.lkHzーピテeオlOHz。 0.3kHzI

1. OkHz I ,, lOOHz1

第 19図は本装置で測定した後プリントしたスペクト

Jレ図の例である。乙れらのほかに,占有周波数帯幅を繰

り返して測定する乙と及びその結果を基lとして算出した

統計的な分布表,平均値,分散等を必要lζ応じてプリン

トする乙とができる。また,本方式は汎用性の面でも各

周波数偏移3.5kHz

-一ービデオフィルタOFF

一一ビデオフィルタON

?詑

ンプJレ値の比を基にして占有周波数帯幅を算出する訳で

あるから,占有周波数帯幅の測定値そのものも統計的な

分布をもっ。第 18図は占有周波数帯幅の分布すなわち

確率誤差の分布である。確率誤差の代表値としてどのよ

うな値を用いるかは使用目的に応じて決めればよいが,

比絞的使いやすい方法としては,既に第 13図~第 16図

で示したように,変動係数を用い「平均値に対して何パ

ーセントのバラツキがある」という表現が考えられる。

213

10 11

内有周波数帯帳(kl-Iz)

第 18図 占有周波数帯隔の分布

F M変調波の実訊u例

本方式の特徴

NZvBN

.0H

NZ』由同.0円

NZv

-NDト.由?’

N叩向ぷ回目.

ovalE

NZぷ∞dv

.0垣間消

Nr

第 19図

6.

令史ぜ,’

°'<" /

9

99. 991

0.011

99. 9

0.1

DO000000005

QdQJOOヴ’

ρORU4・っ。ヮ“,A

Iri

--

f

L

M川

辺1

引(

99

れば,スリットフィルタが0.1kHzの場合一2.3パーセ

ント以内, o.3 kHzの場合+0.85~ 3.2パーセント以

内である乙とが読み取れる。実測値は,変調器やスペク

トラムアナライザの特性の影響を受け,計算値と完全に

一致することは考えられないが,上記の結果は,計算値

との比較もスペアナ方式の精度を見る目安ICなる乙とが

いえ,本装置の精度も実用上問題ない精度であることが

推測される。

5.2 纏率誤差について

前節で,計算値と実測値の比般から系統誤差と考えら

れる値は,ほぼ数パーセントと推測されたが,測定値に

は乙のほかに統計的な性質を伴う確率誤差が存在してお

り,乙の点での検討が必要である。スペクトラムアナラ

イザに雑音性の信号を入力した場合には,その検波出カ

ダ(t)はほぼレイリ一分布をする。乙の信号をA-Dコ

ンパータでサンプリングし, 2乗して電力次元IC変換し

たサンプル値 g'2(nT)は自由度2のf分布に相似した

分布すなわち指数分布をする。第 17闘はスペクトラム

アナライザ出力の分布を示したもので,ビデオフィ Jレタ

を通さない場合は,スリットフィルタが0.1凶 z,o. 3

kHz及び 1.0 kHzともほぼレイリ一分布をしており,ビ

デオフィルタ ONの場合は低いレベルで分布がつまって

くることがわかる。このように,ある確率分布をもっサ

スペクトラムアナライザ出力雑7干の分布

10 一10 0 相対レベル(50%依: OdB)

(レーレー確率紙)

1978 March No. 127

-20

第17図

Vol. 24

99.9 99.5

99

95 90 80 70 60 50 t!O 30

泉20狽

石室市 10・-,、

(%) 5

0.5

o. 1

214

種電波形式に適用でき,使用している機穏は他への流

用,応用もできる利点があり,操作については容易で自

動測定ができ,対象とする周波数範囲もHF帯からSH

F帯の広範囲にわたって測定できるという特徴がある。

5. むすび

スペアナ方式占有周波数帯幅測定装置については,従

来から知られており,既iζ電波監理用総合測定システム

の中iζ用いられているが,実用化le当たっての検討を行

ったという報告がみられず,また無線機の型式検定業務

における新機種の測定le即応できるように,という見地

からスペアナ方式占有周波数,帯幅測定装置の製作,検討

を行い,ほぼ満足すべき結果が得られたので, その構

成,性能及び各種検討結果について報告したが,本装置

の特徴点についてもう一度概括すると次のようになる。

( i) H F帯からSH F帯までの広い範囲にわたって

使用できる。

(ii) レーダ,ゾンデ, FM等各穫の電波形式Iζ適用

でき,使用している機器は必要があれば他への流

用,応用ができる。

(iii) 占有周波数帝幅の精度は実用上の純聞内で計算

電波研究所季報

値と比較した場合一2.3パーセントでありほぼ問題

なく使用できる。

(iv) 占有周波数得幅及びその統計的分布,平均値,

分散あるいはスベクトル図等を短時聞に得る乙とが

でき,測定操作も初期条件を設定した後は自動的に

行う乙とができる。

謝 辞

木装置の製作,検討及び報告の機会を与えられた宮島

通信・機器部長,今野機添課長並びに製作,検討に当たり

御協力頂いた池問主任研究官,渋谷係長,小島技官,内

政技官,徳屯技日, t首沢技nほか型式検定関係の皆様lζ

感謝いたします。

参考文献

(1) A ・パポリス著;工学のための応用フーリエ積分,

オームネ土, LIB45.10.

(2)久保田文人,市野芳明,塩原和;スペクトラムアナ

ライザ方式によるパルス変調波の占有周波数帯阪の測

定,電波研季報, 24,No. 127, pp.215 221March,

1978.

11111111~111111111111111111111111111111111111111111↓1111111111111111111111111111111111111111111111111111111