ブラックホール・ 中性子星連星の合体 -...

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ブラックホール・ 中性子星連星の合体 (特に重力波について) 京都大学基礎物理学研究所 D3 久徳浩太郎 Kyutoku, Shibata, Taniguchi PRD 82 (2010) 044049 Kyutoku, Okawa, Shibata, Taniguchi PRD 84 (2011) 064018

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  • ブラックホール・ 中性子星連星の合体

    (特に重力波について)

    京都大学基礎物理学研究所

    D3 久徳浩太郎 Kyutoku, Shibata, Taniguchi PRD 82 (2010) 044049

    Kyutoku, Okawa, Shibata, Taniguchi PRD 84 (2011) 064018

  • ブラックホール・中性子星連星

    • 最も有望な重力波源の一つ

    - 合体時で1~数kHzの重力波を放射するので

    その直前のinspiralから地上観測で期待大

    - 一般相対論の検証/中性子星の情報の探査

    • ショートガンマ線バーストの母天体候補

    (今日はあまり触れない)

    - merger scenarioと降着円盤形成

    -電磁波/ニュートリノ/GWのmulti-messenger

  • 中性子星の状態方程式 • 高密度の状態方程式は理論/実験で未決定

    • 中性子星の半径はゼロ温度の状態方程式で決まっているが、正確に観測できていない

    • 重力波観測で

    中性子星半径は

    決められるのか?

    • M-R relationから

    EOSには戻せる

    (Lindblom 1992) Lattimer, Prakash (2007)

  • BH-NSの典型的な重力波

    • inspiral-merger-ringdown (あれば)と分類される

    赤:数値相対論による波形 黒:ポストニュートンの波形

  • 数値相対論の重要性

    • 連星合体の3段階で適切な研究手法が異なる

    1. inspiral phase … ポストニュートン近似

    2. merger phase … 数値相対論

    非線形な強重力の効果、流体の効果が重要

    3. ringdown phase … BH摂動法

    • 数値相対論はコンパクト天体の連星合体の特に merger phaseに対する唯一の手法

    • 中でも中性子星の潮汐破壊は重力波形や

    形成される降着円盤の質量など性質を決定する

  • 潮汐破壊が起こりやすい条件

    • 2つの無次元パラメータが特徴的で重要

    - BH/NSの質量比

    - NSのコンパクトネス

    質量比 Q とコンパクトネス C との一方/両方が 小さい時にISCOの外で潮汐破壊が起こる

    = BHが軽い and/or NSの半径が大きい

    ∵ 潮汐現象は中性子星の大きさの効果

    • BHのスピン が大きい場合も重要

    ∵ スピンが大きいほどISCOの半径が小さい

    1/ NSBH MMQ

    2.015.0~/ NSNS RMC

    2

    BHBH / MSa

  • 数値相対論の手順の概要

    • 基本は

    • 初期条件を用意する

    - スペクトル法ライブラリLORENEを利用 http://www.lorene.obspm.fr/

    - BHのスピンやEOSを含め、新たに開発

    • 時間発展のシミュレーションを行う

    - AMRコードSACRA : 通常のPCで計算が可能 Yamamoto, Shibata, Taniguchi PRD (2008) 78 064054

    • 状態方程式を与えることで式が閉じる

    0)(,0,8 a

    a

    b

    ababab uTTG

  • Piecewise polytrope (PWP)

    • broken-polytropeにより核理論状態方程式を再現することができる (0温度部分)

    • 有限温度の効果は

    ideal gas型で入れる

    12

    11

    2

    1

    P

    Read+ (2009)

    crust

    ~crust

    ~core

  • 潮汐破壊する/しない場合の比較

    )2( 7.2,35.1 solBHsolNS QMMMM

    )75.0( a )5.0( a

    • (この例ではBHのスピンだけが異なる)

    潮汐破壊する 潮汐破壊しない

    )cm/g(log 3

  • • 上:柔らかいEOS

    • NS半径が小さい

    • 潮汐破壊は弱い

    • 下:硬いEOS

    • NS半径が大きい

    • 潮汐破壊は強い

    重力波形:状態方程式による違い

    0

    35.1

    7.2

    solNS

    solBH

    a

    MM

    MM

    km11NS R

    km15NS R

  • 重力波スペクトル • 0 ),2( 7.2,35.1 solBHsolNS aQMMMM

    quadrupole

    PN

    Larger radius

  • コンパクトネス vs カットオフ振動数

    • のとき

    • 強い相関がある

    = NS半径は

    重力波から

    読み取れる

    • 潮汐破壊するときは くらいになる

    • では無理そう

    このBHの軽さは現実的につらい?

    Quasinormal mode of BH

    4

    0 Cmfcut

    )05.4( 3 solBH MMQ

    0a

    NSNS / RM

  • 重力波形:スピンによる違い

    • スピンが角運動量と平行だと強い重力波放射

    75.0a

    5.0a

    ringdown

    tidal disruption

  • BHスピンによるスペクトルの変化

    • 低振動数側で重力波放射が増え、振幅大

    • カットオフが起こる振動数は低くなる

    spin increases

  • カットオフ振動数-コンパクトネス

    • (少し定義を変えている)

    • BHスピンがあるとカットオフ振動数は下がる

    - 観測的には低振動数であることが有望

    • ただしinspiralで

    • スピンを求める

    • 必要はある

    BHスピンごとのquasinormal mode

    NSNS / RM

  • Q=5の重力波スペクトル

    • このときは →現実的だろう

    • Adv. LIGO/LCGT(?)でも見えそうな気がしてくる solBH 75.6 MM

  • a=0.75でのカットオフ振動数

    • 重い(現実的な)BH-NS連星でもEOSを調べられる

    NSNS / RM

  • 形成される降着円盤

    • 重力波に影響があるほど激しく潮汐破壊する場合は、円盤質量は を超えることも

    log log

    sol1.0 M

    solBH 75.6 MM solBH 7.2 MM

    soldisk 2.0 MM soldisk 1.0 MM

  • まとめ

    • 数値相対論を用いてブラックホール・中性子星連星の合体からの重力波を計算した

    • 中性子星の状態方程式は、特に潮汐破壊するときに重力波スペクトルのカットオフ振動数から読み取ることができる

    • 潮汐破壊はブラックホールのスピンを考慮すると現実的な連星でも十分起こる

    • 質量などを見ると、降着円盤はショートガンマ線バーストを起こせるという期待は持てそう

  • 今後の展望

    • より一般の系(スピンの傾きなど)で大量生産

    - 重力波のテンプレートの準備のための課題

    • ニュートリノ/磁場などの物理を取り入れる

    - GRBなどの議論に必要、multi-messenger BNS: 関口さんの講演、木内さんのポスター

    • 状態方程式の決定精度を定量的に解析

    - 数値相対論の結果をFisher解析などで Lackey, KK, Shibata, Price, Friedman PRD submitted

    BNS: 仏坂さんのポスター

  • Short-hard gamma-ray burst

    • 程度以内に

    を解放する

    - jetの開き角は不明

    • BH-降着円盤が有望

    - LGRB: “collapsar” model

    - SGRB: merger scenario?

    BH-NS or NS-NS

    massive diskはできるか? From encyclopedia of science

    erg10 5149s 2~

  • 中性子星の質量

    • 最大質量からの制限は

    されており、特に最近は

    1.97Moという観測あり

    • 半径の測定は難しい

    - 距離との縮退

    - 放射/大気モデル

    Lattimer, Prakash (2010)