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サービスドミナント・ロジックと メーカーのサービス化 「経営戦略」第2学期 9

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Page 1: サービスドミナント・ロジックと メーカーのサービス化yoneyama.net/strategy_fall9.pdf– SDL: Service Dominant Logic • 自社が提供するモノのサービス価値(使用経験や便

サービスドミナント・ロジックと

メーカーのサービス化

「経営戦略」第2学期 第9回

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顧客はドリルが欲しいのではなく、

「穴」が欲しい(T. レビット)

私の個人的な意見ですが、ただデバイスを作っただけで顧客が関心を持つとは思えない。顧客が求めていること、顧客がしようとしていることは何か。書籍を買い、音楽を買い、映画やテレビ番組、アプリを買うことです。そのためにエコシステムを構築し、そのエコシステムにデバイスをシームレスに融合させる。顧客が簡単に見たいコンテンツを買って見られる環境を作るということです。それを実現したのがキンドル・ファイアなのです。(Amazonジェフ・ベソスCEO)

競争に勝つための新たな価値の創出

• 「モノ」から「コト」へ

• 「物質価値」から「経験価値」へ(Schmitt, 1999)

• 「機能的価値」から「意味的価値」へ(延岡, 2006)

– 機能的価値:「他社よりも(機能的に)優れている!

– 意味的価値:「他社とは(製品の意味づけが)違う!

• 「PDL」から「SDL」へ(Vargo and Lusch, 2004)

– PDL: Product Dominant Logic• 自社が提供するモノをベースにし、付随的にサービス

を考える

• 価値は企業が作り、顧客は消費する

– SDL: Service Dominant Logic• 自社が提供するモノのサービス価値(使用経験や便

益)をベースにし、その価値実現のためのモノのあり方を考える(モノづくりの放棄を意味するのではなく、価値・便益を高めるための視点からモノづくりの発想を考える)

• 企業と顧客との価値の共創

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コマツ:KOMTRAX

• KOMTRAX– コマツの建設機械の中に設置されている各種

センサー類とGPSを使った機械管理システム

• KOMTRAXのメリット– 顧客メリット

• 盗難防止、故障の未然対応、保守費用・燃料費の低減、リセールバリューの向上・・・

– コマツのメリット• KOMTRAX標準搭載による製品の魅力向

上・顧客の 囲い込み

• 保守部品の生産・在庫管理

• 債権管理・・・

• 集まった情報を活用した製品改良や新商品開発

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タニタ:からだカルテ

• 「からだカルテ」– 家庭の計測機器とタニタのデータベースを結んで提供される健康管理システム

– それを通じた自社製品の魅力向上

• からだカルテのメリット– 顧客メリット

• タニタの機器を使えば、データ管理の手間が軽減(他社製品でも登録はできる)

• からだカルテ利用により、ダイエットについて専門家のアドバイスが受けられる。

– 企業メリット• 有料サービスによる収入増(月額1,200円)

• ユーザー情報の収集(体重、歩数、血圧)

会員数は順調に増加2007年スタート時 2万人2010年6月14日現在 20万人

・備考2008年4月~

他社製品以外でも、からだカルテが利用可に

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ブリヂストン:リトレッド事業の展開

• リトレッド事業

– タイヤの張替・再生を通じた新しい価値の創出

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メーカーのサービス化

企業名 事例の概要

GE ・1997年のアニュアル・レポートで「グローバル・サービス・カンパニー」を提唱。航空機エン

ジンや、病院の画像診断装置、発電機タービンについて、それかでの売り切りから、サービス中心のビジネスモデルに転換。

・航空機エンジンをリース契約に切り替え、稼働している時間のみに課金。使用情報や故障情報などを把握し、次世代のエンジン開発に反映させる。画像診断装置も同様。

リコー ・ ハード(事務機の単品売り)からサービス事業へかじを切り、運用・管理受託サービス事業を強化(機器の再配置や印刷業務の最適化などを継続的に提案するサービス)。・ 中小企業向けITサービス(ネット接続機器の提供から設定、保守までを丸ごと請け負うサービス)に注力。

栗田工業 ・ 水処理装置(モノ)の販売だけでなく、半導体や液晶製造装置の部品洗浄サービスや水浄化装置の運転管理、メンテナンスを手掛ける。

三浦工業 ・ 産業小型ボイラーで国内シェア50%超。メンテナンス(保守管理)事業の好調が安定的な収益源。・ メンテナンスで独自の事業モデル - ボイラー販売と同時に、顧客と3年間のメンテナンス契約を結び、最初に3年分の料金を一括でもらう仕組み。・ 過去に販売したボイラー向け契約が積み上がり、メンテナンス事業の利益が増加。

堀場製作所 ・ 分析・計測機器大手。エンジン排ガス測定・分析装置で世界トップシェア。・ 測定・分析器を作って売るだけではなく、工場などの施設の設計・建設まで受注し、そこに測定・分析器を設置するというトータルサポートシステムのビジネスを展開。

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儲けの単位(Unit of Business)の切り替え

• Unit of Business(UoB)とは何か?– 売り手と買い手との取引における対価支払い基準(儲けの単位)

• 家電メーカー:納入台数

• 通信会社:通話時間

• ホテル:滞在日数

• 航空会社:乗客数…

• 業界が成熟してくると、その業界のUoBは自然と定まっていき、それが自明のものと認識される

⇒同質的な基準での競争の展開

• メーカーのサービス化は、UoBの切り替えに密接に関連する– いかにUoBを転換し、従来とは違う収益の取り方を設計するか

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UoB 転換の事例

• セメックス

– セメントの量(立方ヤード)⇒適時配送サービス

• GEのトランスポーテーションBU– 列車本体の販売⇒輸送契約

– 鉄道会社は列車という資産をオフバランス化

• 米国の医療機器画像装置会社X社

– 装置の販売⇒画像及び画像解釈のサービス

• パナソニック電工の電球ビジネス

– 電球の販売⇒「あかり安心サービス」

• ブリジストンのリトレッド事業

– タイヤの販売⇒トータル・パッケージ・サービス

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セメックス社におけるUoB転換のイノベーション

• メキシコの生コンクリート会社– 従来のUoB(Unit of Business)-納入量

• 生コンクリートの納入総量(立方ヤード)

– 新しいUoB(Unit of Business)-適時配送

• 指定時間から見た時間帯ごとの納入生コンクリート量

最高料金

低 低ドル/立方ヤード

契約時間

価格

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“定額制”で毎日食べられる!~「野郎ラーメン」の挑戦~

• 野郎ラーメン– ガッツリ系極太麺がウリのラーメン店、関東一円に

15店舗を展開。

• 「野郎ラーメン生活」– 2017年11月1日にスタート

– 専用アプリをダウンロードし、パスポートを月額8600円(税別)で購入すると、『豚骨野郎』(税込780円)、『汁無し野郎』(同830円)、『味噌野郎』(同880円)の中から好きなラーメンを毎日1杯食べられる。最も安い『豚骨野郎』でも12杯食べれば、元が取れる。

– ラーメンの原価率は約30%。800円(原価約240円)のラーメン31杯を8600円で提供しても、原価は賄える。

– 客側は、月末でお金に余裕がないときでも、このサービスを利用していれば1日1杯は夕食にありつける。

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サブスクリプション戦略

• サブスクリプション(subscription)– 英語のsubscriptionには、雑誌の「予約購読」「年間購読」の意

味がある。そこから転じて「有限期間の使用許可」という意味で使われる

– 利用者がモノを買い取るのではなく、モノの利用権を借りて利用した期間に応じて料金を支払う方式のこと。

– コンピュータのソフトウェアの利用形態として採用されてきたが、近年はメーカーのサービス化等の影響もあり、様々な分野で応用されている 英語の「サブスクリプション」には雑誌の「予約購読」「年間購読」の意味がある。

• 具体例– ラーメン店(「野郎ラーメン」)– カフェ(「coffee mafia」:月額3,000円で飲み放題)– アパレル(「レナウン」: 月額4,800円でスーツをレンタル)

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第4次産業革命とは何か?

• 第1次:機械化– 蒸気機関

• 第2次:大量生産– 電気

• 第3次:自動化– コンピュータ

• 第4次:自律化– IoT(ICT)

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第4次産業革命を支えるシステム

• IoT、BigData、AI、Product System...

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• GE– Predix

▪航空機向けジェットエンジンや発電所タービンなど大型システムが中心▪データを取得して故障の未然防止や稼働率やオペレーション効率の最

大化など、顧客の産業機器・設備のパフォーマンス管理(APM)、顧客の機器・設備の使用状況に合わせた製品開発に役立てる

• 日立製作所– Lumada

• 「電力・エネルギー」、「産業・流通・水」、「アーバン」、「金融・公共・ヘルスケア」 におけるソリューション提供のコア・システム

• ファナック– フィールド・システム(Field System)

• 工作機械やセンサーなどの部品、ITシステム、アプリ開発企業など240社超とパートナーシップ。ファナックはすでにシステムの仕様を公開しており、アプリ開発者を増やす計画

• プラットフォーム上にパートナーが開発するアプリが加わり、導入する企業は使いたいアプリをダウンロードできる

様々なIoTプラットフォーム(B2B)

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B2CベースのIoT

• 家のIoT– アマゾン(vs. グーグル、アップル)– 「アマゾン・エコー」

• 2014年11月から発売 累計で300万台(2016.年3月まで)• スピーカー形状だが、単なるスピーカーではなく人の声で操作できる音声認識

装置• アマゾンが独自開発したAI「アレクサ」

– 利用者が増えれば増えるほどアレクサの認識精度は高まる– 「スキル」というアレクサに教える新しい技

• スキルの使用は外部の開発者に公開され、誰でも作れる– ピザの注文、ライドシェアタクシーを呼ぶアプリ– 仕様公開から1年で1400のスキルが開発

– 家の中にある電灯やテレビなどともつながる– スキルの種類が増え、つながる家電が増えれば、エコーとつながりたいと

いう企業もさらに増える– 同様の「家のハブ」を狙う動きは、グーグルやアップルも…

• スマート・ホーム– パナ、サムソン、NTT、Ring・・・

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食品メーカーのIoT?

• 「未来の皿」の可能性

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製造業とサービス業との相互作用

• 様々な相互作用

1. サービス化の展開が、製造業の競争力を強化する• コマツ:KOMTRAX

2. 製造業の新たな取り組みが、サービス業の競争力を強化する

• 加賀谷旅館:食事の「自動搬送システム」

3. サービス化の展開が、製造業の事業展開の方法を変化させる

• SNS/ソーシャルゲーム → 既存のゲーム機へのインパクト

4. 製造業の新たな取り組みが、サービス業の事業展開の方法を変化させる

• ロボット化の進展、自動運転 → 保険サービスの変化

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Google’s challenge

• グーグルは、自動車事故の94%がヒューマン・エラーから起こり、そのために自動運転が安全性や信頼性を高める方法であると考えている

• 2009年に自動運転の開発を開始してから、これまでに50万キロ規格の走行実験を行ってきた。

• これまでに、14件の事故に遭遇したが、そのうちの11件は後続車に追突されたものであった。自動運転システムの問題で起きた事故はなかった。

• 2020年を目途に、自動運転車の実用化を計画している

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自動運転が自動車保険サービスに与える影響

• 自動車保険は、もはや必要なくなる?

• 自動車保険の顧客は、運転者ではなく、自動運転システムの開発者(企業)またはその運航業者になる?

• 保険の対象範囲、保険期間、価格等が大きく変化する?

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日本経済新聞 2016年11月8日 第1面

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ドライブレコーダー×保険

• オプテックスとソニー損保との連携

– オプテックス

• 加速度センサーと位置情報を組み合わせたドライブレコーダーを販売

– ソニー損保

• 自動車保険を販売

「テレマティクス保険」

安全運転をすることで保険料が安くなる保険サービス