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平成30年度 モノ×コトづくりビジネス展開のための知財戦略調査 サービス・ドミナント・ロジック事業化事例集 中国経済産業局

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平成30年度

モノ×コトづくりビジネス展開のための知財戦略調査

サービス・ドミナント・ロジック事業化事例集

中国経済産業局

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サービス・ドミナント・ロジック化事業 事例集

● もくじ・事例一覧 ....................................................... 1

● サービス・ドミナント・ロジックによる事業革新 ........................... 2

見える化

遠隔操作・メンテ

見守り

安全安心

コミュ

ニティ

楽しさ

スマー

トシティ

サプライチェー

プラッ

トフォー

1ミツフジ株式会社(京都府相楽郡精華町)

導電性銀メッキ繊維(糸)導電性ウェアラブル電極テープ

● ● ● 6

2株式会社フクル(群馬県桐生市)

レディーススーツなど婦人衣料縫製工場

● ● ● 8

3ダイヤ工業株式会社(岡山県岡山市)

サポーター,コルセット ● ● ● 10

4株式会社リプロ(岡山県岡山市)

境界杭 ● ● ● 12

5京都機械工具株式会社 (京都府久世郡久御山町)

締結工具 ● ● ● 14

6小橋工業株式会社(岡山県岡山市)

農業用機械(代かき機) ● 16

7株式会社ニューマインド(東京都中央区)

可食プリンター,可食インク ● ● 18

8株式会社オリィ研究所(東京都港区)

分身ロボット ● ● 20

9株式会社英田エンジニアリング(岡山県美作市)

駐車場車止め装置駐車場精算機

● ● ● 22

10ウィルポート株式会社(東京都中央区)

宅配ボックス ● ● 24

11東洋電装株式会社(広島県広島市)

シートセンサー,ナースコール

● ● 26

12日本信号株式会社(東京都千代田区)

交通信号機 ● ● 28

13NSウエスト株式会社(広島県庄原市)

ヘッドアップディスプレイモーターサイクルヘルメット

● ● ● 30

14株式会社バンビ(東京都台東区)

パスケース,カードホルダー

● ● 32

15株式会社ハチたま(神奈川県藤沢市)

ねこのトイレ ● ● 34

事例№

企業名(本社所在地)

モノ(製品)

サービス類型

ペー

※掲載順は、対象となる製品の属する業種での日本産業標準分類を参考にした。

1

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「すべての経済活動はサービス活動である」

「サービス・ドミナント・ロジック」(以下、S-Dロジック)とは、「モノ(有形の商品)」と「サ

ービス(無形の商品)」を区別することなく包括的にとらえ、企業が顧客と共に価値を創造すると

いう「価値共創」の視点からマーケティングを組み立てようとする考え方のことである。2004

年に、アメリカのマーケティング研究者であるロバート・F・ラッシュとスティーブン・L・バー

ゴ(以下、Vargo & Lush)によって提唱された。

S-Dロジックにおける「サービス」とは、「ベネフィットのために、知識、情報、技術など(ナ

レッジやスキル)を活用すること」で、サービス業で言う「サービス」とは根本的に異なってい

る。S-D ロジックに基づく「価値」は、顧客とともに創造するものであり、「顧客」は企業と一緒

になって価値を創造する主体である。Vargo & Lush は、S-Dロジックは理論ではなく、“マイ

ンドセット(考え方の基本的な枠組み)”であると述べている。

その考え方の大きな特徴として、以下の 3点があげられる。

〇 商品は、顧客が利用することではじめて価値を持つ = 使用価値・経験価値

〇 その価値は、それぞれ異なる背景をもった顧客によって判断される = 文脈価値

〇 顧客は主体的な存在であり、価値は顧客とともに生み出されるものである = 価値共創

サービス・ドミナント・ロジックによる事業革新

● サービス・ドミナント・ロジックによるマインドセット

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S-Dロジックについて理解するためには、モノ(グッズ)の観点から交換の世界を組み立てる

「グッズ・ドミナント・ロジック」(以下、G-Dロジック)と対比するとわかりやすい。

モノを中心とした G-Dロジックでは、商品の価値(価格)は売り手である企業が決めて、顧客

に提供(販売)されるが、商品そのものに価値が含まれており、顧客は貨幣を支払うことで商品

を入手し、これによって企業と顧客とのあいだで価値交換(所有権の移転)が行われるという考

え方である。

一方、S-D ロジックは、モノ(有形商品)とサービシィーズ(無形商品としてのサービス)を

包括するプロセスとしてのサービス(ナレッジとスキルの適用)に焦点をあて、モノは顧客(ユ

ーザー)の手に渡り、顧客が使用して初めて価値(使用価値・経験価値)を創出すると考える。

表 1 グッズ・ドミナント・ロジックとサービス・ドミナント・ロジックの対比

グッズ・ドミナント・ロジック サービス・ドミナント・ロジック

イメージ

モノ(有形商品)とサービシィーズ(無

形商品としてのサービス)は単体

有形商品と無形商品を包括するプロセ

スとしてのサービスに焦点をあてる

交換されるもの グッズ(財) サービス(プロセス)

取引関係 1回のみ 継続的

顧客に対する認識 オペランド資源(操作対象者) オペラント資源(価値共創者)

価値尺度 交換価値 使用価値 または 文脈価値

価値判断の主体 売り手 顧客 および ユーザー

価値創造の方法 売り手がグッズに交換価値を

付加する

売り手と顧客が一緒に文脈価値を

共創する

マーケティング コンセプト 製品志向 顧客志向

交換プロセスの終点 (企業の目標) グッズの交換 顧客による文脈価値の知覚

出典:井上・村松(2010)の図表 3-1 に加筆

S-Dロジックを論じるとき、「価値共創」、「文脈価値」がキーワードとして多用される。「価値

共創」とは、消費プロセスにおいて、企業と顧客が直接的相互作用によって“文脈価値”を生み

出すことである。その「文脈価値」とは、ユーザーがモノやサービスを消費する場面、条件、環境

はそれぞれ異なることから、それぞれのユーザーによって判断される価値である。ここでの価値

判断は顧客が行うが、そこに至るどのような文脈で顧客に経験をしてもらうかについては、企業

● モノの観点からみるグッズ・ドミナント・ロジックとの対比

● 企業と顧客が価値を共創するという考え方

3

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からマネジメント(提案)が可能である。

G-Dロジックを、モノを中心として、いかに消費者の購入を促すかといった4P(製品・価格・

流通・販売促進)に代表される「伝統的マーケティング」だとすれば、一方のS-Dロジックの

サービス=コトのビジネスにおいては、主体は消費者であり、モノが消費者の手に渡り、消費者

が使用(経験)して初めて価値を生み出す、という発想であり、これを「価値共創マーケティン

グ」という。

本事業でいう「コトづくりビジネス」とは、モノを作って売る“売り切り”型ビジネスではな

く、モノが使われる場面での新たなビジネスを思考している。顧客のサービスの使用過程そのも

のが価値共創のプロセスである。

表 2 伝統的マーケティングと価値共創マーケティングの対比

伝統的マーケティング 価値共創マーケティング

論理基盤 グッズ・ドミナント・ロジック サービス・ドミナント・ロジック

対象領域 生産プロセス 消費プロセス

目 的 モノの交換価値の向上 サービスによる文脈価値の向上

方 法 生産プロセスへの顧客の取り込み 消費プロセスへの企業の入り込み

内 容 企業が交換価値を決め、顧客とのより

良い市場取引に臨む

顧客が決める文脈価値を直接的相互

作用により共創する

出典:村松(2017)の表2を一部修正

“あらゆるモノがインターネットでつながる”というIoT関連技術の発展と普及は、従来の

製造業の“売り切り”型のビジネスから“つながる”ビジネスへの転換を可能にしている。いち

早く事業革新に取り組んだ企業では、モノとサービスが一体化したビジネスが見られる。その特

徴・視点を以下に挙げてみる。

① 見える化

従来は、経験と勘に頼っていた“今までは見ることができなかった部分”にIoT関連

技術を掛け合わせることによって、数値化、ビジュアル化し、正確な作業による安全性・

生産性の向上、過去のデータの蓄積と利活用による改善などに活用される。

② 遠隔操作、メンテナンス

産業機械メーカーが納品した機械の稼働状況を遠隔で管理し、部品や消耗品の交換時期

の把握や、故障の予知保全、メンテナンスをより効率的に行う。ユーザーにとっては、生

産ラインを停止させるリスクが軽減されたり、修理等の予算を立てやすくなるといったメ

リットがある。

③ 見守り

センサーとネットワークを利用して、遠隔の見守りができるというビジネスで、主には、

医療、介護、保育や工事現場等の場面でのビジネスが多い。

● IoTで顧客とつながることが可能になる

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④ 安全・安心

特定の人を見守ることとは異なる観点で、IoTを活用することで安全・安心をシステ

ムにより具現化する事業である。

⑤ コミュニティとのつながり

ロボットなどを介して、病気や障害で病院や自宅から外出できない人と家庭や職場、学

校といったコミュニティとのつながりを持ち続けられるサービスである。

⑥ 楽しさの提供

モノとして、従来はなかった機能を付加することで、ユーザーにとって楽しさが増し、

そのモノ自体の価値を向上させる。

⑦ スマートシティ

自動運転の実現、様々なインフラ施設にIoTが導入される社会の到来を備えて、様々

な社会的課題の解決に取り組むビジネスモデルである。

⑧ サプライチェーン・マネジメント(SCM)の形成

受注から部品調達、製造、販売に至るサプライチェーンを、IoTを活用して形成し、

多数のメーカーからユーザーがつながるというビジネスモデル。

⑨ プラットフォームの形成

自社製品単独の事業ではなく、ネットワークを形成し、そこに様々な事業者が加わるこ

とで全体の価値を向上させる。

こうしたモノとサービスが一体化したビジネスは、S=D ロジックの考え方にもとづくものであ

り、今後は、顧客の消費プロセスへの入り込みが一層進んでいくものと思われる。

次代の市場においては「モノ」はコモディティ化し最終製品の中での価値を生み出しにくくな

る。その一方で、消費者に対するサービス(「コト」)と結び付けたコト的価値の部分が大きくな

ってきている。

市場構造は変化しており、次代の市場に合った新たな事業づくりにおいては、製品のサービス

価値を提案することが重要となる。

本事業においては、モノにIoT関連技術を掛け合わせて、既存事業の単なる延長ではない事

業、特にサービス価値づくりを中心に考えられた事業を「サービス・ドミナント・ロジック化事

業」と位置づけ、様々な業種の事例を収集した。

それらの事業創出に至るロジック及び知的財産の位置づけ、その手法を価値創造・事業展開を

参考にして、事業革新のヒントにしていただきたい。

参考文献 井上崇通 監訳『サービス・ドミナント・ロジックの発想と応用』同文舘出版、2016年

井上崇通・村松潤一 共編著『サービス・ドミナント・ロジック』同文舘出版、2010年

村松潤一著「価値共創マーケティングの対象領域と理論的基盤」『マーケティングジャーナ

ル』Vol.37 №2、2017年

● サービス・ドミナント・ロジックによる事業革新

5

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ミツフジ株式会社 京都府相楽郡精華町

ミツフジ株式会社

代表取締役社長 三寺 歩

所在地

京都府相楽郡精華町光台 1-7

けいはんなプラザ ラボ棟 13 階(京都本社)

東京都千代田区内幸町 2-2-3

日比谷国際ビル1階(東京本社)

資本金 23億 9,450万円 従業員 37 名

事業内容 銀メッキ導電性繊維 AGposs、ウェアラブル

IoT hamon®製品の開発・製造・販売

URL http://www. mitsufuji.co.jp

生体情報により「安心・安全」のための予防・予知サービスを提供

西陣織の職人が、西陣織工場として起業をし、織物の加工・製造から、新規事業展開として 1992 年より銀メッキ繊維 AGposs®の開発・製造・販売に取り組んできた。 抗菌製品からスタートした AGposs®は、銀の持つ高い導電性能に注目され、現在では、導電性繊維として高く評価されている。 伝統に裏打ちされた技術と、最先端のウェアラブルIoT技術を融合させた製品を通して、様々な社会的課題の解決を目指す。

1956 年に西陣織工場としてスタートしたミツフジ(株)は、1980 年に導電性繊維と出会い用途開

発を始め、導電性ネット、テープなどを世に送りだした。1992 年には米国銀メッキ製造会社と独占

販売契約を提携、2002年に銀メッキ繊維の総合ブランドとして「AGposs®」を商標登録した。これが

同社のコア技術となっている。現社長が就任する時期に、銀繊維には電導性があり生体情報が取得

できることを教えてくれた国内の研究機関があり、現社長はこの機能で生き残りが図れると考えウ

ェアラブル繊維の事業を開始した。より価値の高い情報に切り替えるベースとなるクラウドと、知

見を活かすためのアプリケーションも用意し、「hamon®」のサービスを整えた。

導電性銀メッキ繊維(糸)

導電性ウェアラブル電極テープ トランスミッター、Bluetooth

アプリ&クラウド

モ ノ

IoT

コ ト

● 事業展開に至る経緯

● IoTを使ってモノからコトへ

導電性を備えた銀メッキ繊維(糸)「AGposs®」を採用した着衣型ウェアラブルデバイスと、センサ

ーや Bluetooth などを内蔵した着脱式トランスミッターとを組み合わせてユーザーの生体データを

取得し、トランスミッターからスマートフォン、専用アプリに転送しつつクラウドで解析するまで

のソリューション「hamon®」を提供している。健康管理、スポーツ選手のパフォーマンス管理、医

療・福祉、工事現場等における従業員の体調管理などに活用できる。さらに、IBMの産業用Io

Tソリューション「IBM Maximo Worker Insights」のクラウド・プラットフォームを利用すること

で、建築現場や工場内で働く業務担当者の体調やストレス、疲れを検知するアルゴリズム(計算方

法)に基づき過酷な作業現場で働く業務担当者の見守りサービスを実現する。蓄積される膨大な生

体情報を機械学習や人工知能(AI)と組み合わせることで、業務担当者の体調予測から即座にそ

の日の最適な要員配置計画を立案することや、遠隔地医療や救急医療と生体情報を連携することで

介護や福祉に関する見守りサポートを行うといった、超高齢化による労働人口減少が予測される現

代社会の様々な課題を解決していく。

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同社のウェアラブル戦略は「安心・安全」がキーワードとなっている。BtoBの価値づくりにおいて

は、ウェアラブルソリューション「hamon®」を使用して従業員の熱中症対策や眠気での事故防止を未然

に防ぐ予防をビジネスモデルとして展開している。さらに、ウェアラブルの最大の価値は、予知が出来

ることであり、今までのビジネスモデルと全く異なるものである。「hamon®」により収集されたビック

データの解析により、体調変化の事前検知が可能となる。この予知サービスによって労働環境や医療・

介護福祉分野における様々な社会的課題の解決が可能となり、人々が最適な労働条件を得ることによっ

て、より充実した人生を送ることも支援できることとなる。

BtoCの価値づくりについて、これからの展開となるが、子供服製造販売の(株)キムラタンと提携、

子供服に「hamon®」を採用することで全国の保育園に向けた園児⾒守りサービスの開発に取り組んでい

る。

販売モデルは、以前は売切り型であったが、モノではなく「安心・安全」のサービスを提供するとい

う観点から 2018年後半からユーザー課金型でスマートウェア、トランスミッターを無償配布している。

●企業理念「生体情報で人間の未知を編みとく」が示すとおり、同社の未来もまた計り知れないもの

があるが、そのひとつの方向がモノづくり企業からサービス企業への転換である。

●同社においては、すでに売り切り型から月額課金型に移行しており、そうした方向に経営の舵が取

られている。

●留意すべきは、サービスは受け手が主導するということであり、生体情報の提供者がサービスの受

け手となり、その「ヒト」の意向に沿った形で活用されることが望ましい。そのためには、そこに

相互作用関係が構築される必要がある。

●それは、人間中心社会の成立へと繋がっていくが、今後、取り組むべきは、社会性を有す賢明な「ヒ

ト」の育成にあるともいえる。

「AGposs®」、「hamon®」など多数の特許取得。ライセンス提供も行う。

IoTに関する特許を取得するに当っては、ウェアラブル端末やシステムといったハードウェアと

してだけでなく、取得したデータをどのように利活用するかという点に関して「ビジネス関連発明」

として特許を取得することも有効である。

● ユーザーとの価値づくりのポイント

● サービス・ドミナント・ロジックの視点

出所:日本情報通信(株)2019年 11月 19日プレスリリース

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クラウド、AI、AR

ビーコン、IC タグ

レディススーツ・ ワンピースなど婦人衣料縫製工場

アパレル産業SCMと顧客をIoTでつなげ 試着体験によるハイクオリティなファッションを適正価格で提供

株式会社フクル

代表取締役 木島 広

所在地 群馬県桐生市天神町 3-4-5

資本金 400万円 従業員 2名

事業内容 アパレル製品の製造と販売

URL https://fukule.co.jp/

古くから絹織物の産地として知られる桐

生市にて国内のアパレル産業の活性化を

目指し 2015 年に創業。代表者の出身地で

ある桐生市の縫製業をベースとして、アパ

レル産業版インダストリー4.0の実現でマ

スカスタマイゼーションに対応したSC

M(サプライチェーンマネジメント)の構

築を目指している。

(株)フクルの代表者はデザイナーズブランドや大手企業でアパレル産業に携わった経験から、

グローバルサプライチェーンでの大量生産による価格競争を目の当たりにして、日本らしい新しい

服の作り方を提案しようと試行錯誤していた。そして、服を縫う工程を除いてIT化やテクノロジ

ー化の可能性と服に関する付加価値が高められる方法を模索していた時にアパレル産業版インダス

トリー4.0※による「マスカスタマイゼーション※」に行きついた。そこで、代表者の出身地で両親

が縫製工場を経営している桐生市の縫製業を中心としてSCM※の構築を進めつつ、顧客接点として

スマートフォンからのカスタムオーダーが出来るシステムを構築した。

● IoTを使ってモノからコトへ

同社のマスカスタマイゼーションモデルには2つの要素がある。1つ目は顧客接点で、顧客がス

マートフォンまたは実店舗で購入する場合、実物を試着するのではなくAR(仮想現実)×3Dに

よる仮想試着を行う。顧客の動画に仮想試着するシステムも考案中であり、購入時のエンターテイ

メント性を狙っている。また、購入時にはAIによりデザインや生地等をレコメンドすると同時に

採寸データや趣向データをクラウドに蓄積する。

2つ目は、供給側のSCMシステムである。クラウドに蓄積された顧客オーダーデータをもとに、

AIによって、全国各地の縫製工場との自動マッチングを行い裁断ロボットやニット3Dプリンタ

ーにより効率的に生産し、最終的には人による縫製と仕上げを行い顧客に納品される。このSCM

システムにより、膨大な材料・資材・工場・職人のマッチング労務が解消される。

また、顧客は発注した服がビーコンとICタグで結ばれていることから、トレーサビリティと職

人が手縫している様子をスマートフォンから閲覧できるため、納品までの待ち時間のエンターテイ

メント提供と同時に職人のモチベーションアップにも貢献している。

株式会社フクル 群馬県桐生市

● 事業展開に至る経緯

モ ノ

IoT

コ ト

※ インダストリー4.0:IoTやAIを用いることによる製造業の革新

※ マスカスタマイゼーション:コンピュータを利用した柔軟な製造システムで特注品を製造すること

※ SCM:複数の企業間で統合的な物流システムを構築し、経営の成果を高めるためのマネジメント手法

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●IoTによるマスカスタマイゼーションを実現したが、同社の特徴としては、顧客側からみれば、

試着はもちろんこと、納品までのプロセスがエンターテイメント化されている点にある。その意味

では、それは、顧客参加型製品開発の進化形といえ、見事に生産プロセスへの顧客の取り込みに成

功したといえる。

●従って、生産プロセスへの取り込みによって直接繋がった顧客に対して、今後は、彼らと繋がった

ままで、モノが消費・使用されるプロセスに企業として入り込み、そこでの相互作用を通じて、新

たに生まれる価値を顧客とどのように共創するかについて考えていく必要がある。

同社が考えているSCMは究極的には人と人とのつながりであるので参入障壁が高く、

特に特許所得は考えていない。本事業における競争力の源泉の一つは供給側のSCMであり、このS

CMに不可欠な要素が人的な繋がりと捉えられている。人的な繋がりは「知的資産」と位置付けられ

ており、高度に複雑化した人的な繋がりは模倣困難な資産といえる。

● ユーザーとの価値づくりのポイント

● サービス・ドミナント・ロジックの視点

顧客接点側

のシステム

供給側・ 生産者側の

システム (SCM)

顧客

同社のビジネスモデルは「SCM+顧客接点」であり、マスカスタマイゼーションに対応した供

給側のSCMにより、インタラクティブな顧客接点を持つことで価格決定権を握り、適正価格でハ

イクオリティなファッションを需要側に供給する仕組みである。顧客接点で重要な価値づくりは、

試着をAR(仮想現実)で実現している点にある。仮想モデルに3Dで試着させるのではなく、本人

の動画に選んだ服を試着させようと試みている。購入に対する選択条件としては、服のリアリティ

よりも、購入者本人のリアリティのほうが重要であり、スマートフォン上では静止画より動画、つ

まり服を着用して動いている人の方にリアリティがあるためである。

実店舗でも3D動画試着はサイネージで利用することができる。これにより、販売側は在庫を持

たずにコストの削減ができる。顧客側は、服を単なるモノではなく本人の3D動画試着によりリア

ルな購入体験というエンターテイメント(コト)が提供されることとなる。また、顧客側のデータを

蓄積することでAIによる服のレコメンドが可能となり、双方向での価値づくりとなる。

同社は、SCMの構築を進めるうえではテクノロジーが全てではなく、より使いやすいUX/UI

(顧客接点と顧客体験)や工場の生産者側接点が必要と考えている。生産者側から顧客側に心地よ

く効率的に提供できる仕組みを検討し推進していく方針である。

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インターネット

アプリケーション(チェックシステム)

サポーター

コルセット

接骨院・整骨院の患者の運動器をチェック、「運動器年齢」により改善度

を見える化。最適な商品提案と接骨院と患者のつながりを強化する

ダイヤ工業(株)のIT導入への取り組みは早く、CTI※を導入した顧客である接骨院などの顧

客管理の仕組みや自社オリジナルの販売サイトの立ち上げなどを積極的に展開。商品開発において

は、大学との共同研究により先進的な健康サポート技術の確立に取り組んでいる。

長年サポーターを製造・販売してきたが、健康寿命を延ばしていくためには、サポートするだけで

なく、利用者の運動器の状態に気づくことが重要になるとの考えから、「bonboneチェックシステム」

の開発に着手。自社で仕様を設計し、システムは専門業者に委託、2017年 12月から本格的な事業展

開を開始した。

ダイヤ工業株式会社 岡山県岡山市

モ ノ

IoT

コ ト

● 事業展開に至る経緯

● IoTを使ってモノからコトへ

接骨院の患者は、接骨院にある血圧計や身長計、体重・体組成計、握力計、立ち上がりイス、長座

体前屈計などの機器を利用して様々な項目を測定。健康チェックシステムは、測定したデータをイン

ターネットを経由してダイヤ工業内のデータベースに送信、保存し、患者ごとに統合される。施設内

のどの端末からでもデータの入力や結果の閲覧が可能になる。

同社は、接骨院からシステム導入による毎月の使用料を得るが、接骨院が患者からどのようにサー

ビス料を徴収するかについてまでは関与していない。

同社のサポーターやコルセットがIoTによりネットワークにつながっているものではないが、

患者のどの運動機能が低下しているかを見える化することが、同社の製品につながっている。

ダイヤ工業株式会社

代表取締役社長 松尾 浩紀

所在地 岡山県岡山市南区古新田 1125

資本金 1,000 万円 従業員 118名

事業内容 コルセット・サポーターなどの医療用品

の開発・製造・販売

URL http://www.daiyak.co.jp/

1963 年設立。当時はイ草のサンダルの製造

を行っていた。

その後、独自でコルセットを企画・開発し、

全国の接骨院などを通じて販売するシステ

ムを構築。様々な健康サポート製品を開発・

販売している。「運動器のサポーティングシ

ステムメーカー」と位置づけ、肉体労働者の

サポートツールや健康寿命の延伸につなが

る研究開発に取り組んでいる。

※CTI【Computer Telephony Integration】:電話や FAX とコンピュータをつなげる技術

10

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●接骨院と患者の価値共創を、接骨院を通じてサポートするのが同社であり、接骨院との間には機器

及びサービス提供によって良好な関係が築きあげられている。今後は、さらに優れた機器の開発・

販売、そして、提供するサービス内容の充実が期待される。

●しかし、接骨院との調整次第では、このようなビジネスモデルとは違い、健康に対して高い関心を

持つ人々を同社の直接の顧客とするモデルも考えられる。即ち、その場合は、直接、同社とつなが

った顧客の健康増進に向けた価値共創に同社が取り組むことになる。そして、同社と顧客との価値

共創の中に機器及びサービス提供、そして、接骨院が組み込まれることになり、接骨院としても大

きなメリットがある。従って、その際には、同社は、人々の健康増進を直接的相互作用を通じて担

うスタッフを社内に配置することになる。

製品開発に関する特許は多数取得。健康チェックシステムに関する特許は取得していな

いが、海外展開に向けて「bonbone®」ブランドの国際的な商標登録を行っている。

サポーター製品も健康チェックシステムも、同じ「bonbone®」ブランドの下で展開することによ

って、健康チェックの結果がモノづくりにフィードバックされるということを惹起させ、通常の製品

に対する優位性を維持することが可能となっている。

自社を「運動器のサポーティングシステムメーカー」と位置付ける同社として、すべての人々の健

康寿命を引き延ばすことを目標に掲げており、これは厚生労働省の方針にも合致している。

「bonboneチェックシステム」を利用する患者は、自身の運動機能を把握し、これを引き上げるた

めにどのような運動を行えばよいかを知ることで、自身の健康増進への取り組み意欲向上につなが

る。一方、同社の主要顧客である接骨院などにとっては、患者との接点の強化とともに、継続的な関

係を構築できる。また、その延長線で同社のサポーターやコルセットの提案も行われる。

同社にとっては患者に一番近い専門家(接骨院の先生)が、患者一人一人に最適な製品を提案して

くれることで、それが同社の製品の好評価につながるという好循環につながっている。

● ユーザーとの価値づくりのポイント

【診断書イメージ】

出力される分析レポートの一部

運動器年齢、筋力、筋持久力、柔軟性、敏しょう性、バランス、移動能力が点数化される。

自宅でどのようなトレーニングを行えばよいかのメニューの提案もある。

(接骨院など) (患者)

● サービス・ドミナント・ロジックの視点

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ビーコン、ICタグ

NFC、センサ、GPS

境界杭

株式会社リプロ 岡山県岡山市

正確な位置情報の記録。現場の情報を発信し、遠隔地でも把握が可能。

災害時の地形・水位変動が瞬時に把握可能であるほか、観光ガイドにも活用。

(株)リプロの創業は 1971年。プラスチックのリサイクルとこれを原材料とした境界杭を主要製

品としていた。1990 年頃から社内において境界杭に付加価値を加えることを模索しはじめ、当時は

まだ普及していなかったICタグに着目し、ICタグを組み込んだ「情報杭®」を開発し、特許を取

得した。

これは、境界杭にICタグを組み合わせることにより、当該地点にかかる正確な情報を得ることが

できるため、地籍調査や境界確定において有用性があるのではという着想によるものであった。

開発当初は高価であったICタグリーダーは、現在はスマートフォンでの読み取りも可能となっ

ており、容易に情報にアクセスできるようになった。

モ ノ

IoT

コ ト

● 事業展開に至る経緯

● IoTを使ってモノからコトへ

境界杭に加速度センサを組み込むことにより、正確な位置情報の把握と地面の変位を感知できる

ことから、土砂崩れ発生段階の地面変位を検知し、警報を届けるシステムを開発した。災害発生時の

速報や砂防工事現場での危険警告など、加速度センサを搭載した杭だからこそ可能になったサービ

スである。

ITの発展に伴ってICタグから発信できる情報も多様化している、例えば観光地での名所スポ

ットに情報杭®を設置し、観光客がスマートフォンをかざせば、施設や周辺の店舗などの情報も得ら

れるといった新しい利用方法も増加している。スマートフォンの使用言語をもとに、訪れた外国人の

回遊状況の把握もできるなど、自治体の観光動態調査やスタンプラリー等のイベントへの活用も期

待できる。

株式会社リプロ

代表取締役 岡田謙吾

所在地 岡山県岡山市南区中畦 1186

資本金 1,500 万円 従業員 40 名

事業内容 プラスチックリサイクルの原材料引取り

からエコ製品の開発・製造・加工

URL http://www.ripro.co.jp/

1971年の創業。早期に廃プラスチックのリ

サイクル事業を開始。自社で回収・選別・

粉砕・原料化し、標識杭の製造・販売まで

すべてを行うリサイクルモデルを構築し

た。

境界杭にICタグを備えた情報杭®を開発

し、従来の杭とは異なる付加価値を備えた

製品で国内外での導入を推進している。

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●IT化による杭の高付加価値化に成功した事例である。今後は、杭にさらなる情報機能をどのよう

に持たせていくかが、同社の技術的課題となっている。

●一方、モノは使われることで価値が生まれるというサービス・ドミナント・ロジックからすれば、

使用することで生まれる新たな価値を顧客とどのように共創していくいかが課題となる。そして、

企業に留まらず、自治体や個人も同社の顧客と成り得るが、情報杭®の使用方法については、社会

的にもかなり大きな広がりがあると考えられ、その特定は、一般的な思考を超えると思われる。

●従って、同社にとって重要なことは、あらゆる顧客と直接的な関係を構築し、その行動プロセスに

入り込み、解決すべき課題(社会的課題を含む)を理解することで、情報杭®の使用によって生ま

れる新たな価値を具体的に示すと共に、顧客と一緒になって価値を共創していく仕組みを作り出す

ことにある。

製品開発のアイデア段階から積極的に特許を取得し、権利化することに取り組んでお

り、情報杭®に関しては、杭のハード部分とソフト部分で合わせて6件の特許が関連している。

同社は主として杭について特許を取得しているが、IoTシステムで提供されるサービス実現のた

めに必須の機能を権利化することによって、代替品の出現が困難となり、自社の杭の需要が増大する

ことが期待される。

同社は、まず情報杭®が世界的なインフラ設備として導入されることを目指しており、情報杭から

集積される膨大なデータを活用したビジネスも準備中である。

ICタグに記憶できる情報量の増加により、山林の所有者、観光情報など、定位置において得られ

る情報が多様化するとともに、スマートフォンの普及により、これを入手できるシステムも簡易に提

供することができるため、自治体、企業、個人それぞれのニーズに応じた活用が期待できる。

同社の杭をインフラとして、様々な技術を有するIoT企業との共同事業の展開も期待される。

● ユーザーとの価値づくりのポイント

● サービス・ドミナント・ロジックの視点

砂防工事の安全管理

復旧復興事例(陸前高田市)

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センサー、RFID

クラウド

締結工具

京都機械工具株式会社 京都府久世郡久御山町

京都機械工具株式会社

代表取締役社長 宇城邦英

所在地 京都府久世郡久御山町佐山新開地 128番地

資本金 10億 3,208万円 従業員 209名

事業内容 自動車整備用工具、医療工具、その他一般作

業工具、及び関連する機器の製造販売

URL http://www.ktc.co.jp

ボルト締結における「トルク管理」の作業工程を見える化、

デジタルでトレーサビリティを実現

1950年創業。機械工具の専門メーカーとして

企画・設計開発から製造まで一貫した生産

体制をもって技術提案を行う。

現在は自動車メーカー以外にも公共交通、

生産設備、医療・介護の分野など多様な

業界で幅広く採用されている。

生産拠点は本社久御山工場を含め 2 ヵ所、

営業拠点は9ヵ所を有している。

ボルトの締結作業は適切な荷重で行う必要があり、緩すぎるのは当然ながら、きつく締めすぎても

部材破損等、事故につながる恐れがある。そのため、特に自動車等の輸送用機械の組立てや整備にお

いては「トルク管理」が重要な要素となる。

京都機械工具(株)の当該製品開発のきっかけは、2000 年に発生した輸送トラックのタイヤが走

行中に脱輪し、歩行者を巻き込んだ事故であった。「トルク管理」という作業をいかに確実に実行す

るか、人の経験や感覚に頼るだけでは正確性に限界があることを感じ、レンチにデジタルメーターを

付設した「デジラチェ®」を開発した。開発にあたっては家電メーカー出身の技術士を採用し、自社

内で取り組み 2005 年に発売に至る。その後、2012 年には締結作業を実行するごとに自動的に記録

し、過去の履歴も追跡管理できるトレーサビリティ機能を有する「メモルク®」を開発した。

モ ノ

IoT

コ ト

● 事業展開に至る経緯

● IoTを使ってモノからコトへ

従来の工具にセンサーを内蔵したデジタルメーターを付加したことで、正確なトルク管理を実現

した。さらに、いつ、誰が、どの程度の締結作業を行ったか、また作業漏れがなかったかのデータを

クラウド上で時系列に記録する“トレーサビリティ”を実現した。従来のボルト締結作業ではトルク

レンチ締め、マーキング、写真撮影、記録、報告書作成といった工程を別々に行い、その都度作業を

止めて切り替える必要があったが、デジラチェ「メモルク®」により手作業で行っていた確認と記録

の作業が省略でき、正確性に加えて効率化・省力化につながっている。

また工具とスマートグラスを連動し、作業現場にマニュアルを携帯せず、視線を変えずに手順通り

の作業ができ、作業状況の撮影も行うシステムの開発をウエストユニティス㈱と連携して実現した。

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●モノづくりを支える工具そのものをIoT化することで、トルク管理に留まらず作業管理も可能に

した。今後は、データ分析によって、個別作業を含む最適な工程管理を示すことができる。

●サービス・ドミナント・ロジックの立場からすれば、工具によってつくられるモノの利用から生ま

れる価値にまで目を向けていく必要がある。言い換えれば、そうすることで、利用価値の高いモノ

づくりに寄与する工具の在り方を問い直すためのヒントを得ることができる。

●さらに、工具を利用するヒトと利用する時空間で直接的相互作用を行う仕組みが構築できれば、利

用から生まれる価値の共創に深く関与することが可能になる。

トルク値のデジタル化に関する特許取得。デジラチェ®で意匠権取得。

締結工具や締結部品は形状により機能を発揮するため、それらの知的財産は特許権・意匠権による

保護が有効であるところ、同社は特許権のみならず意匠権を積極的に活用しており、IoT化された

締結工具に関しても多数の意匠登録を受けている。

同社は、工具の製造を行い、ユーザーであるメカニックへの販売は代理店を通じて行っているが、

使用にあたってはユーザーとの様々な接点を有している。故障した工具のメンテナンス対応のほか、

いかに工具を良好に保ち、長く使用してもらえるかを啓発するハンドブックの発行などを行ってい

る。京都府久御山町とさいたま市に設置する「ものづくり技術館」は、販売代理店やユーザーが訪れ、

同社の製品づくりに関する考え方や工具の理想的な活用方法を伝授する施設となっている。今後は、

国内の主要営業所にもこのような機能を持たせていく構想である。

ユーザーのプロメカニックとしての工具へのこだわりと、今後予想される輸送用機械の更なる軽量

化の動きに対して求められる精密なトルク管理の両方に応えられる製品開発に取り組んでいる。

●作業開始日時

●作業トルク値

●作業完了日時

⇒リアルタイムに情報出力

● ユーザーとの価値づくりのポイント

● サービス・ドミナント・ロジックの視点

●作業マニュアル

●作業手順

●トルク値など

●作業記録

●品質記録

●情報解析など

●作業状況モニター

●タクトタイム管理

●進捗管理

●段取り管理など

デジラチェ「メモルク®」(上)

ヘッドマウント型スマート端末(下)

データ送信

データ表示

インターネットでのデータ送信

データ表示

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代かき機のレベラー(土を平らにならす板)に同社が開発したセンサーを設置。トラクターの運

転席に設置し仕上がり状態を現場で確認できるモニターとGPSの機器はクボタ㈱の製品を組み合

わせている。代かき機及びモニター、GPS機器は、どのメーカーのトラクターでも接続すること

ができる。システムの開発にあたっては、同社が設計し、プログラミングは専門業者に委託してい

る。

代かき作業は、トラクターの速度や回数によって土の細かさや粘度が変わり、稲植えの良否、そ

の後の収穫にも影響するが、熟練者の経験と勘に頼っていたこの作業を見える化、データベース化

した。

小橋工業株式会社 岡山県岡山市

小橋工業(株)の主力製品のひとつである代かき機は、水稲の田植え前に水をはった水田の土を

細かく砕き、丁寧にかき混ぜ、土の表面を平らにならす機械である。代かき作業により、苗を植え

やすくし、苗の活着と生育が良くなりムラがなく生育できるようになる。

代かき作業の仕上がりの良否は、目視で判断しにくいうえ、農家の勘と経験に頼るところが多く、

ノウハウの蓄積が難しい。また、水田での最適な経路の把握、代かきする回数の記録が難しく、最

適な仕上がりを確保することは熟練者でなければ難しかった。

この代かきの進捗度を見える化し、ノウハウを蓄積して誰でも簡単に作業できるようにするため

に、センサー付きのトラクター用代かき機と専用アプリ「SMART作業ナビ」を開発した。

小橋工業株式会社

代表取締役社長 小橋 正次郎

所在地 岡山県岡山市南区中畦 684

資本金 1億円 従業員 324名(グループ全体) 241名(小橋工業単独)

事業内容 農業用機械・部品の製造、販売

URL http://www.kobashiindustries.com/

1910 年の創業以来、効率的に土を耕すことのできる製品を農家に提供し続け、日本農業の発展に貢献してきた。 これまでに培ってきた事業基盤を活かしつつ、起業家やドローンファンドとの提携を通じて新たな技術へ展開を進め、新しい産業創出に向けた取り組みを積極的に行う。「地球を耕す」というミッションのもと、持続可能な世界を実現するため、地球規模の問題解決に向けた活動に取り組んでいる。

● 事業展開に至る経緯

センサー(速度、傾斜など)

GPSガイダンス

農業機械

(代かき機)

熟練者に頼っていた水田の代かき作業のノウハウを見える化し、

農作業の効率化、収穫との紐づけにより農家の生産性向上を実現

●IoTを使ってモノからコトへ

モ ノ

IoT

コ ト

16

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本製品のユーザー(農家)は、本製品を利用することで、従来は作業の熟練者、長く従事した経験

のある人でなければできなかった代かき作業の品質の確保を見える化によって実現した。今後、代か

きの作業記録と米の収穫量・品質との関係性を分析することが出来れば、毎年の作業の効率化のみで

なく、収益性の向上も期待できる。

現在は、本製品の販売は、トラクターメーカーや農協などの販売店を介して行われており、同社は、

農家と直接つながってはいない。今後は、SMART作業ナビのプラットフォームを活用して、農家を支

援する様々なシステムや新製品の開発が期待される。

仕上がりのセンシング方法、判定の方法、データの取得方法等の技術の主となるところ

を特許出願中。

同社は農業用機械に関して多数の特許を取得し特許網を構築している。IoT化に伴い新たに開発

された技術についても特許網を構築することで、引き続き競争力を維持することが可能となる。

作業経路をガイダンス 仕上げをリアルタイムで表示 作業内容を指示

測定

代かき機にセンサーを設置。

運転席のモニターには仕上がり状態が3色で表示され、

現場でリアルタイムに仕上がり状態を確認

● ユーザーとの価値づくりのポイント

●モノは使われることで初めて価値が生まれるというサービス・ドミナント・ロジックの考え方から

すれば、「SMART 作業ナビ」の開発は、農作業にもっとも近い農業用機械を製造/販売する会社だ

からこそ行うべきであったのであり、また、それが実現できたといえる。

●しかし、価値共創には、顧客との直接的相互作用が不可欠であり、今後は、農家との直接的な関係

を如何にして構築し、相互作用的なやりとりを行うかが重要となってくる。

●そして、農家の方の日々の生活の中で農作業がどのように位置づけられるかを把握することで、農

作業を含む農家の生活全般を支援することが可能になるが、そのことは、同時に、新たなビジネス

の創造に繋がっていく。

● サービス・ドミナント・ロジックの視点

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センサー、ゲートウェイ

クラウド

可食プリンター

可食インク

株式会社ニューマインド 東京都中央区

自社製品の稼働状況を遠隔地で把握し、プリンターの故障予知保全、

インクなど消耗品の補充により生産ラインの維持に貢献

2012 年に設立した(株)ニューマインドは、食品に可食インクでプリントできる可食プリンター

の開発、製造、販売により、ニッチな市場で高いシェアを有するようになった。可食インクは、紅花

やクチナシなどの食品添加物をインクカートリッジ化し、プリンターで(ヘッドの往復走査による)

シャトルスキャン方式印刷を可能にしたもので、従来の版を必要とするパッド印刷とは異なり、画像

や文字などのデザインデータがあれば、食品に直接印刷ができるのが強みである。

全国に販売しているが、プリンターのトラブルや、メンテナンスに即座に対応することが難しいた

め、遠隔でプリンターの稼働状況を把握する必要に迫られた。当時、佐藤社長と以前から交流のあっ

たIoTプラットフォームを提供する(株)インフォコーパスに相談し、様々なセンサーをプリンタ

ーに搭載し、ゲートウェイを介してクラウド上のデータを管理できるプラットフォームを構築した。

外部温度、ヘッド温度、搬送スピード、インク量、インク残量を可視化した。

モ ノ

IoT

コ ト

● 事業展開に至る経緯

● IoTを使ってモノからコトへ

ライン印刷を行う場合、1時間に1万2千個から1万4千個の菓子に印刷を行うことが可能であ

るが、印字ムラやインク切れなどプリンターに不具合が発生すると製造した商品が出荷できなくな

ってしまう。また食品工場では、作業場内に入るためには衛生面での配慮が必要で復旧に手間と時間

を要する。可食インクを使用するプリンターの状況を“見える化”し、食品添加物が原料であるイン

クの使用期限切れ、不具合の発生を未然に防ぎ、製造ラインが停止する可能性を減少させている。

株式会社ニューマインド

代表取締役社長 佐藤 東一

所在地 東京都中央区東日本橋 2-27-5

資本金 5,000 万円 従業員 8名

事業内容 特殊プリンター機器と専用インクの開発・

設計・製造・販売及び保守メンテナンス

URL http://www.newmind.co.jp/

2012年設立。クッキー、煎餅などの食品

やプラスチックなどへのデザイン印刷を

可能とするプリンター機器と専用インク

の開発から製造・販売・保守メンテナン

スを行っている。可食インクは食品衛生

法で許可された食品添加物のみを原料と

し、プリンターはインクジェット方式に

よる高速印刷が可能で、生産ラインに組

み込むことで、少量多品種生産が可能で

ある。

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●IoTによって、販売後も自社製品と繋がり、その稼働状況を把握することで、適切なアフターサ

ービスの実施を可能にするとともに、営業コストの削減を実現している。

●さらに、今後は、蓄積され続けるデータを分析することで、アフターサービスのメニューを増やし

ていくこともできる。また、そこから、新たな販路開拓も可能となる。

●しかし、何よりも重要なことは、営業をこれまでのようなアフターサービス型から顧客との直接的

相互作用を通じた価値共創型に変革することである。

●そして、その際には、顧客が自社製品を使うことで生まれる新たな価値に注目し、顧客の顧客にま

でその視野を広げていく必要がある。即ち、可食プリンターの使用によって顧客の顧客がどのよう

にビジネス機会を獲得できるかを示す必要がある。

プリンターに関しては大手メーカーが特許を取得しており、インクが食品添加物であり

特許取得ができない。このため同社はシステムで特許を取得している。(公財)東京都中小企業振興

公社の東京都知的財産総合センターに相談しアドバイスを受けている。

可食プリンターを使用することで生じる特有の課題を解決する手段を知財化することで、競合他

社の参入を抑止することができるようになる。

印刷することにより食品に新たな商品価値を生み出す可食プリンターは、印刷対象物をクッキーや煎

餅などの菓子から、薬の錠剤、りんごやバナナなどの果物の皮、ビールやカフェラテの泡、入浴剤など、

可能領域を広げている。版を必要としないインクジェットプリンターは、多品種少量生産に向いている

ため、商品開発やイベント時の景品、ノベルティなどに利用されている。

取引先の製菓会社では、製造工場を見学施設として、可食プリンターで印刷される様子を公開してい

る。見学客からの反応は好評で、販売促進、リピーター獲得に貢献している。

可食プリンターのインクは食品添加物を原料とするため、日本国外での稼働には各国の規制をクリア

する必要があるが、韓国から始まった海外展開も、今後は中国、タイなどに広がることが期待される。

● ユーザーとの価値づくりのポイント

● サービス・ドミナント・ロジックの視点

出所:(株)インフォコーパスHP

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孤独化の要因となる「移動」「対話」「役割」などの課題をテクノロジーで

解決し、これからの時代の新たな「社会参加」を実現

株式会社オリィ研究所

代表取締役 CEO 吉藤 健太郎

所在地 東京都港区芝 5-1-13 三ツ輪三田ビル 6F

資本金 1 億 3,982万円 従業員 15 名

事業内容 コミュニケーションテクノロジーの研究

開発および製造販売

URL http://orylab.com/

ロボットテクノロジー、Wi-Fi

Bluetooth、クラウド、視線入力※

分身ロボット

OriHime®

株式会社オリィ研究所 東京都港区

モ ノ

IoT

代表者が高校時代に電動車椅子の新機構

の発明に関わり、高専で人工知能を学んだ

後、早稲田大学創造理工学部へ進学。自身

の不登校の体験をもとに、対孤独用分身コ

ミュニケーションロボット「OriHime®」を

開発。このロボットを多くの人に使っても

らうべく、株式会社オリィ研究所を設立。

自身の体験から「ベッドの上にいながら会

いたい人と会い、社会に参加できる未来の

実現」を理念に開発を進めている。

(株)オリィ研究所は、代表者が幼少期に入院したことをきっかけに学校に通えなくなり、3年

半の不登校を経験したことで感じた“孤独”という社会課題の解消を理念に掲げ、2012 年に立ち上

げられた会社。教室に行きたくとも行けなかったこと、友達と同じ行事に参加できないことが本当

に悔しく、「なぜ身体がひとつしかないのだろう。身体がいくつもあればいいのに」と感じた経験か

ら「OriHime®」は開発された。近年、眼の動きだけでPCや「OriHime®」を操作し、会話ができる「OriHime

eye」も開発、製品化された。「OriHime®」や「OriHime eye」はテレワーク、遠隔授業参加、ALS

(筋萎縮性側索硬化症)など身体を動かしたり話すことができない難病患者の方のコミュニケーシ

ョン補助に使われている。

コ ト

● 事業展開に至る経緯

● IoTを使ってモノからコトへ

分身型ロボット「OriHime®」は、単なるロボットやAIではない。「ロボットと人ではなく、人と

人をつなぐロボット」というコンセプトで造られている。「OriHime®」は、ユーザーが iPhone、iPad

を使用して Orihime アプリにより簡単に遠隔操作でき、置かれている場所で双方向のコミュニケー

ション(音声・画像・動作)を行うことができる。

「OriHime®」を遠隔操作することにより、その場に自分が存在しているような感覚と、自分の音

声、拍手などの手や首の動作などの多感な感情表現を通じて周囲にも、その場にあたかも自分が存

在しているように認識してもらうことができる。「OriHime®」をオフィスや学校に設置していれば、

職場であれば同僚とコミュニケーションを取ることができ、学校であれば教室で友達と席を並べ、

授業を受けることができる。分身により、友達をつくり、思い出を残すことができる。

※ 視線入力:画面に表示されている文字を見る(視線を向ける)ことによりその文字が入力できるシステム

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視線入力「OriHime eye」でソフトウェアやユーザーインタフェースで特許取得。

「OriHime-D」で特許出願を検討中。

「OriHime-D」の開発に際しては、他の企業・研究所等との連携、及び実証実験の実施を必要とす

るが、知的財産の適切な保護のためには連携先との間で秘密保持契約を締結するとともに、公開前に

特許出願を済ませることが重要となる。

● ユーザーとの価値づくりのポイント

OriHime-D

テレワークをしている

人が遠隔で接客やもの

を運ぶなど、身体労働

を伴う業務を可能にす

る、全長約 120cmの分

身ロボット

OriHime-eye

眼や指先しか動かせない

重度肢体不自由患者のた

めの意思伝達装置。

透明文字盤をデジタル化

したシンプルな操作方法

で、PC操作をスムーズ

に行える

●多くの局面での社会参加を可能にする分身ロボットには、きわめて高い存在意義がある。

●しかし、分身ロボットは、あくまでもモノ或いはツールであり、今後、人と人、企業と人の間で交

わされるコミュニケーションそのものに如何にして関与するかが課題となっている。

●何故なら、分身ロボットを使う人も企業もコミュニケーションを通じて共創される新たな価値にこ

そ、その関心があるからである。

●言い換えれば、同社が標榜するコミュニケーションテクノロジーの研究開発の範囲をどこまで拡大

するかということであり、それは、同社にとって。まさに戦略的意思決定となり得る。特にユーザ

ーが企業の場合は、そのことの重要性は大きいといえる。

「OriHime eye」は利用される難病患者の方のニーズを重視し、顧客の生の声を開発に活かせるよ

うな体制を整えている。具体的には、意思伝達装置担当のスタッフを配置して、代理店や、フェイス

ブック、サポートセンターへの問い合わせからフィードバックを得ている。

また、「あらゆる人たちに社会参画、仲間たちと働く自由を」というコンセプトで、2018 年 11 月

から 12月にかけて「OriHime-D」(テレワークをしている人が遠隔で接客やものを運ぶなど、身体労

働を伴う業務を可能にする、全長約 120cmの分身ロボット)を使用して「分身ロボットカフェ」の公

開実証実験を行った。これにより、カフェでの接客やビル内での案内、作業現場を見回りながら指示

を出すなど、身体を動かす必要のある業務のテレワークが実現可能となった。現在、同社では、この

「OriHime-D」のさらなる可能性を探るべく、共同での事業開発・研究等が可能な企業・研究機関を

広く募集している。

● サービス・ドミナント・ロジックの視点

OriHime®

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センサー、クラウド 車止め装置

駐車場精算機

株式会社英田エンジニアリング 岡山県美作市

駐車場遠隔管理運営システムで

コインパーキングの経営をトータルサポート

(株)英田エンジニアリングが無人駐車場に関する事業に参入したのは、1990 年代。大手不動産

会社から無人駐車場管理システムの製造を請け負ったのがきっかけだった。無人駐車場というビジ

ネスの初期の段階であり、当時は車の乗り上げ等で装置が破壊されるケースが多々あった中、当初は

仕様に合わせて製造していたものに改良を提案していくうちに、設計から同社が担うようになり更

に改良を重ねていった。その後、新製品を開発する上で、駐車場の運営ノウハウが必要と判断し、独

自ブランドで無人駐車場を運営することとなり、装置、システム、経営面も含めて様々なノウハウを

蓄積していった。

当初、駐車場でトラブルが発生すると、メンテナンス員が現場に駆けつけるという体制であった

が、これでは事後の対応で駐車場の営業停止が発生してしまうことから、コインパーキングにIoT

を活用した駐車場遠隔管理システム「ipark'nコンシェル」を開発、商品化した。

モ ノ IoT

コ ト

● 事業展開に至る経緯

● IoTを使ってモノからコトへ

精算機の領収書用のロール紙切れ・釣銭切れ、不正出庫等が発生した場合に自動で同社のメンテナ

ンス員に異常通知メールが届くために、メンテナンスの事前対応、トラブル発生時の迅速な対応を実

現した。

駐車場内における駐車区画の利用頻度や、近隣の競合駐車場の状況を考慮した最適な価格設定を

行うといったきめ細かなサービスの展開が可能となっている。駐車場精算機からクラウドに集積さ

れるデータが迅速に分析され、車室別の利用率や時間帯別利用率が容易に把握できることにより、利

用率が悪化している要因を特定・分析し利用率の改善を図ることが素早くできるようになった。ま

た、駐車場全体をデザインする「P-ETA®」システムを開発した。

株式会社英田エンジニアリング

代表取締役 万殿 貴志

所在地 岡山県美作市三保原 678

資本金 6,000 万円 従業員 135名

事業内容

冷間ロール成形機・造管機、無人駐車場・

駐輪場管理システム、自動化専用機等の企

画設計製造販売

URL http://www.aida-eng.co.jp/

1974年創業の産業機械メーカー。

ロール成形機、造管機、無人駐車場管理シ

ステム、パワーボラード、環境整備機器の

設計・製造・販売を行い、研究と開発を重

ねる。

「常にちょっと進んだ」技術とサービスを

提供するし、ITとコンピューターを活用

した商品は、国内はもとより全世界でその

技術とサービスは高い評価を受ける。

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●同社は、優れた駐車場遠隔管理システムを通じて、駐車場経営者との間に良好な関係を構築してい

る。従って、管理システムのさらなる高度化が、当社にとっての当面の技術的課題である。

●しかし、サービス・ドミナント・ロジックからすれば、いまひとつ重要となってくるのは、同社が

駐車場の利用者との間に直接的な関係を構築することにある。そして、その仕組みによる利用者と

の直接的なつながりをもとに、彼らと価値共創を如何にして行うかにある。

●言い換えれば、クルマの所有者、使用者の生活世界に入り込み、クルマによる移動という行動プロ

セスの中に駐車場及びその利用を位置づけ、そこから生まれる新たな価値を彼らと共創すること

が重要となっている。即ち、駐車場への誘導を通じて、クルマが果たす快適な移動という価値を利

用者と共創していくことが必要といえる。

知的財産管理課を設置し、特許の取得・管理に積極的に取り組んでいる。

無人駐車場事業においても、車止め装置、精算機等に特許を取得しており、改良改善した段階で基

本的に出願する方針としている。自社で無人駐車場を経営することで、顧客たる駐車場経営者に有益

な情報を提供することが可能となっているとともに、IoTで得られたデータが自社の駐車場機器

の開発に活用されており、知財の好循環を生み出している。

同社の無人駐車場事業には、①土地所有者が自ら駐車場を経営する(同社は機械装置を販売)、

②機械装置の販売とメンテナンスを受託する、③同社が土地を賃借し自社ブランドで駐車場経営を行

う、④同社と土地所有者で共同経営を行う、といった事業パターンがある。

駐車場の遠隔管理システムを導入することにより、1日ごと、車室ごとの損益分岐点の達成状況を

把握し、収益向上のための対策を講じている。また、深夜のトラブル対応など、長年にわたって当社

が蓄積したデータとこれを活用するノウハウにより、事業としては土地ごと同社に任せるオーナーが

大部分である。

最近の取り組みとして、人工知能AIを導入した売上高予測システムの開発に取り組むなど、無人

駐車場の経営をトータルでサポートし、駐車場オーナーとの WIN-WINの関係を構築している。

● サービス・ドミナント・ロジックの視点

● ユーザーとの価値づくりのポイント

トラブルを感知しメンテナンスメールが届く

売上・入庫情報をビッグデータとして扱うことが可能なデータベ

ースにより、売上推移等の分析を簡単に確認することができる。

WEB ソフトのため、状況・売上をリアルタイムに確認することが

できる。

23

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「まいどうもポスト®」を利用する会員で荷物の受取人は、配送デポに荷物が届くとクラウドを経由してメールや LINE などで通知を受信する。受取場所として自宅や指定の宅配ボックスを選択し、宅配ボックスでは専用のアプリを利用して鍵を開けることができる。宅配ボックスは同社のみならず複数宅配会社の利用を想定している。宅配プラットフォームを利用するユーザーの価値は、「まいどうもステーション」の会員登録(無料)することによって、「まいどうもポスト®」への荷物到着がスマートフォンに通知され、受け取りが 24 時間可能になることである。さらに、「まいどうもステーション」と「まいどうもポスト®」を受取場所に指定すると、荷物1個で 100 円(実証実験中)の安価な配送料でサービスを受けられる。配送側は、この宅配プラットフォームを利用することで再配達の無駄がなくなり、輸送コストや人件費の削減で効率的な輸送運営ができる。

宅配ボックス

再配達問題を解決する、ワンマイルエリア内の

宅配・配達・便利代行センターの展開

IoT用ネットワーク(LPWA)

クラウド

ウィルポート株式会社 東京都中央区

近年では、ECサイトによるネット販売の驚異的な伸びにより、ラストワンマイル物流の「再配達問題」が顕在化している。再配達問題により、物流側では低賃金(再配達でも同運賃)や人手不足の課題が表出し、社会的には輸送量増加による環境負荷(CO2排出量の増加)やドライバーの長時間労働が懸念されている。 ウィルポート(株)は、この再配達問題という社会的課題を解決するため、宅配ボックスが重要

なツールと考え、低コストの宅配ボックス「まいどうもポスト®」を開発した。 同時に、宅配プラットフォーム事業として、狭小地域内に地域密着宅配デポ「まいどうもステー

ション」と、「まいどうもポスト®」を設置・運営して、再配達問題を解消しながら、宅配会社や通販会社、小売店の買い物代行サービスなどの域内配達を集約して代行するモデルを考案した。

この事業は、「オープン型」で宅配会社の荷物にも対応しており、実際の配送業務は、日本宅配事業推進協会の教育プログラムを受けた軽貨物便ドライバーが担当することとなる。「まいどうもポスト®」には、LPWAゲートウェイ(リチウムイオン電池4本で4年間電池交換が不要。商業用電源が不要)が装着されており、宅配ボックス本体の機能を最小限に絞ることで本体価格を1本 10万円(屋内用)に抑制している。

ウィルポート株式会社

代表取締役 藤原 康則

所在地 東京都中央区勝ちどき 2-18-1

資本金 1億 3,800万円 従業員 33 名

事業内容 物流受託事業、地域生活支援物流事業、

宅配ボックス事業

URL https://www.willport.co.jp/index.php

● 事業展開に至る経緯

ワンマイルマッチソリューションの構築

を目指し 2015年に創業した。

「物流受託事業」、「地域生活支援物流事

業」(ブラウニー事業、コメットさん事業)、

「宅配ボックス事業」(まいどうも事業)

の3事業を柱にして、物流の効率化や再配

達の削減、省エネルギー化に取り組んでい

る。

● IoTを使ってモノからコトへ

モ ノ IoT

コ ト

24

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2018 年4月から、「まいどうもポスト®」「まいどうもステーション」を使用した宅配プラットフォーム事業の実証実験が東京都中央区勝どきで実施されている。この実証実験では、「ランドリー宅配サービス」(引き取りも、預かりも、利用者の都合で時間指定できるクリーニングサービス)や「ちょこっとまい BOX」(利用者専用の荷物ボックス預かりサービス)の機能が付加され、宅配プラットフォームを利用した新たなサービスの可能性も試行されている。

さらに、この宅配プラットフォーム事業により、利用ユーザーも配送ドライバーもラストワンマイル問題の解決につながり、「まいどうもポスト®」「まいどうもステーション」が各地の小商圏に設置されることで、町のインフラとして事業が成長していくことが期待される。 他の業種への展開として、2018 年9月から、(株)メガネスーパーは、同社の「まいどうもポスト

®」を使用したコンタクトレンズ等の受取サービスを開始している。メガネスーパーでは、購入後の商品をメガネスーパースタッフがロッカーに入れてロックをかけると、事前にロッカー使用のために顧客登録を行っていた購入ユーザーのもとに、メールもしくは LINE でロッカー番号と開錠番号が通知される仕組みとなっており、営業時間内に店舗に立ち寄れないビジネスマンや自宅での宅配物の受取りを好まない女性客など、様々な顧客の生活環境を考慮したコンタクトレンズの販売を行うことができ、これまで以上にコンタクトレンズユーザーの利便性が向上する。 同社では、将来的に高齢者のお客様の受発注などを、クラウドのAIによる音声認識サービスで受

けることによって、地域物流との親和性を確かなものにしたいと考えている。

「宅配ボックス装置を使用した配送システム」を特許出願。

宅配ボックス及び配送システムについては各社が開発を特許出願しているところ、同社はまず商用

電源不要で低コストな宅配ボックスについて権利化を図っている。そしてシェアが拡大すれば、

IoTで得られた情報を活用した新事業の可能性が見えてくる。

● ユーザーとの価値づくりのポイント

●同社の宅配ボックス事業については、地域インフラの整備という社会的要請の強い事業として位置

づけられ、ステーション、ポストを媒介とした荷主(或いはドラーバー)と一般顧客との間のマッ

チングが行われている。

●言い換えれば、ステーション、或いはポストまで一般顧客は出向くのであり、それは、物流機能の

一端を顧客が主体的に担うことを意味している。

●こうした顧客の主体性を前提とするなら、単にマッチングの仕組みを提供するだけでなく、直接、

顧客と接繋がることで、まずは、顧客のあらゆる物流問題に関与するという戦略的な方向性を見出

すことができる。それは、モノ(仕組み)企業から、サービス企業への転換の第一歩となる。

● サービス・ドミナント・ロジックの視点

※東京都中央区勝どきエリアにて実証実験中

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各種センサー、無線機器

クラウド

シートセンサー「ふむくる®」

ナースコール

介護の現場をつなぐ総合ネットワークで 高齢者や、高齢者の介護をサポート

東洋電装株式会社

代表取締役社長 桑原 弘明

所在地 広島県広島市安佐南区緑井 4-22-25

資本金 1,015 万円 従業員 57 名

事業内容

制御盤の設計・製造・販売、

ネットワークインテグレーター、

介護福祉向けシステムインテグレーター

URL http://www.t-denso.com

1972 年設立。配電盤及び自動制御盤の設

計を主な事業としてスタートした企業で

あり、現在では制御盤事業だけでなくイ

ンフラネットワーク事業、介護福祉シス

テム事業など多岐に渡る事業展開を行っ

ている。モノづくり企業として顧客の目

的や要望に合わせた一貫対応(製品開発

やカスタマイズ対応など)を信条として

いる。

東洋電装㈱は、2014 年、取引先からの介護マットを製作してほしいという要望からマットにセン

サー機能を搭載した「ふむくる®」を開発した。「ふむくる®」は、2mm の薄いシートであり、本体に

無線を内蔵し、電池で作動するのが特徴である。同社の主要事業は制御盤製造であるが、インフラ

ネットワーク事業、公共システム事業で培われた高い技術力をベースにしたネットワークシステム

構築に強みがあり、「ふむくる®」をベースとしてネットワークで介護用センサー機器を繋ぐ介護医療

システム事業を展開するに至った。

このシステムは、「にゃん田ネットワーク」という名称で、24時間 365日サポートのカスタマーセ

ンターによる保守体制とクラウド管理の仕組みを整備している。介護職員の離職者を減らすことを

ミッションとして、「にゃん田介護」というブランドで全国に事業展開している。

東洋電装株式会社 広島県広島市

● 事業展開に至る経緯

● IoTを使ってモノからコトへ

従来、介護の現場ではナースコール、シートセンサー、眠りセンサーなど個々の技術を導入して

いる事例は多く存在したが、それらのセンサー機器をネットワークで結んだシステムは存在しなか

った。同社は、無線技術やネットワーク技術を利用して、それらのセンサー機器を連結し、収集し

たデータをクラウド上で管理。分析し可視化したものを介護施設のパソコンにフィードバックして

いる。このシステムでは、介護職員の負担が軽くなるだけでなく、可視化したデータが見えること

で、より良い介護に結び付き、職員のレベルアップと入所者に対する介護サービスの向上に寄与し

ている。

モ ノ

IoT

コ ト

26

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高齢化社会では介護施設に対するニーズは増大しているが、施設職員の厳しい労働環境は改善され

ない傾向が続いている。福祉機器の導入により介護現場の負担を軽減する動きはあるが、機器を単な

る「モノ」と捉えた場合、一部分だけの作業効率化にとどまってしまう。同社のケースでは、センサ

ー機器をネットワークで結び、そのシステムから生み出される価値を介護職員や入所者に提供してい

る。同時に、介護現場の労働環境改善し、介護従事者の離職を減少することに貢献している。

また、入所者と介護職員との間のデータを双方向でやり取りすることで価値の共創を行っている。

将来的には、センサーメーカーと連携し、同社がネットワーク全体をまとめ、スマートフォンで情

報を見ることができる取り組みも始めている。眠りセンサーで収集したビッグデータの解析を通じた

新たなサービス展開の可能性も踏まえ、今後は、データを活用した価値づくりが課題となる。

● ユーザーとの価値づくりのポイント

● サービス・ドミナント・ロジックの視点

無線ナースコール 無線で携帯受信器に

信号が届く

ベッドサイド見守りカメラ 入所者の見守りと 介護者の行動記録

「ふむくる®」シートセンサー

入所者が踏むと無線で 携帯受信機に信号が届く

眠りセンサー 入所者の眠り

の状態を検知 し無線で信号 が届く 記録ソフト

無線で収集した データを分析。

入所者の行動記 録、体調記録や 介護者の作業

記録の見える化

無線 LAN

ネットワーク

「にゃん田ネットワーク」

本製品に関して特許は取得していない。

事業が拡大するのに伴い新しい技術が開発されることが予想されるが、技術を知的財産権で保護

することによって、他社の参入を阻止し、自社の競争力の維持を図ることができる。

●新たに展開する介護医療システム事業は、制御盤製造事業で培ってきたネットワークシステムに強

みのある同社だからこそ可能になったものといえる。

●そこでは、入居者と介護職員との間に直接的相互作用関係が構築されており、価値共創が実現して

いるが、実際は、家族を加えた 3 者間での価値共創の実現を考えていく必要があり、その際には、

サービスの与え手が介護職員であり、受け手は入居者或いは家族であることに十分に留意したシス

テムづくりが望まれる。即ち、入居者或いは家族にとっての価値の共創が優先される。

●そして、同社の今後の事業展開としては、システムの提供に留まらず多様で膨大なデータの分析か

ら、システムの利用に伴うマネジメントの請負などが考えられる。

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モバイル回線、クラウド

BLE、スマートフォン

交通信号機

日本信号株式会社 東京都千代田区

日本信号株式会社

代表取締役社長 塚本 英彦

所在地 東京都千代田区丸の内 1-5-1

新丸の内ビルディング 13階

資本金 100億円 従業員 1,278 名

事業内容 鉄道信号事業、AFC事業、スマートモビ

リティ事業、スマートシティ事業

URL http://www.signal.co.jp/

交差点における信号情報を自動車運転手や歩行者に伝え

自動運転の実現、交通制約者の安全を支援

1928年設立。鉄道信号事業(信号機、踏切

遮断器、列車集中制御装置など)、AFC

事業(自動改札や自動券売機・精算機な

ど)、スマートモビリティ事業、スマート

シティ事業(2019年4月開設)の4事業を柱

とする。世界 26 か国で実績を有する交通

インフラ整備事業からコインパーキング

のシステム開発、駅案内や清掃等のロボッ

ト開発など、IoTに関わる幅広い事業を

展開している。

日本信号(株)は、交通インフラシステムの開発・製造を行っており、来る自動運転社会の到来を

にらみ、2017 年に新しく「スマートモビリティ事業部」を設立した。同事業部は、交差点・踏切に

おける路車間通信、駐車場内の自動運転などの事業開発により将来のビジネス化を目指している。

交差点の信号機については、新技術、IoT技術を導入したシステムを研究してきた。

そのなか、政府が発表した「未来投資戦略 2017」の工程表に沿って、2018年3月、警察庁より「信

号制御機に接続する無線装置の開発のための実験に関する申請要領」が発表され、民間事業者が信

号機に接続して行う実験が可能となり実証実験を行ってきた。同社は実証実験を基に交差点・踏切

及び駐車場をより安全で快適な場所にしていくことを目指している。

モ ノ

IoT

コ ト

● 事業展開に至る経緯

● IoTを使ってモノからコトへ

信号機に無線装置を設置する。車両用信号の情報は、モバイル回線網を通じてクラウドにあげら

れ、交差点の手前を走行している自動車に信号の灯火情報や切替わるまでの時間情報を伝える。太

陽光や前方の車両によって信号が見えにくい時に役立つものである。また、自動運転の車両が普及

すれば、連動して安全な交通誘導を実現する。

歩行者用信号では、目の不自由な交通制約者が持つスマートフォンにBLE(Bluetooth Low

Energy)によって信号情報を伝える。歩行者は、スマートフォンから伝わる音声や振動によって、自

身の進行方向の信号が“赤か青か”、“青から赤”にもうすぐ変わるのかを知ることができるほか、ス

マートフォンから信号機に通信し、次の歩行者青信号の時間を延長させることもできる。このシス

テムは、2018 年に東京都内で実証実験を行っており、2020 年の東京オリンピック・パラリンピック

までには、一部での実用化を目指している。

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●新たに設置されたスマートモビリティ事業部において、サービス・ドミナント・ロジック化事業

としての取り組みの可能性を見いだすことができる。

●運転者には信号の先読み情報、歩行者には信号情報を伝えるとともに、横断歩道にあっては、歩

行者の渡り切り情報に基づいた青信号時間の延長等が行われる。

●しかし、何れも、運転者或いは歩行者との間に相互作用関係を構築するには至っておらず、この

点をクリアすることで、新たな事業化の方向性を得ることができる。

交通信号機に関しては、公共性の高い製品であり、法規制や許認可があるため特許を取

得する必要性が低い。

同社は、長く交通インフラに関する製品を開発・製造しており、交通信号の顧客は警察であったが、

本事業は、警察に収めた機器で一般市民にサービスを提供するという新しいモデルになっている。

自動運転の実現により交通信号機に求められる機能にも変化が訪れると予想されるが、自動車と歩

行者が共存している限り信号機が果たす役割は必要であり、自動運転車両側のシステムに障害が発生

した場合でも、路車間通信により必ず安全側で停止させる同社のフェールセーフ技術が活かされる。

これまでとは異なり、信号機から歩行者に安全を働きかけることができるようになり、新しい機能と

価値が加わった製品といえる。

本システムは既存の信号機に追加装着することができる。交差点に無線装置が設置されることによ

り、交通安全以外にも、天気や事故の状況など現地情報の把握が可能で、複合的な付加価値を信号機

からユーザー(市民)に提供する環境が整備される。

● ユーザーとの価値づくりのポイント

● サービス・ドミナント・ロジックの視点

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ナビゲーション表示をスマートヘルメットのディスプレイに表示し、

安全性とデザインに“便利”を付加したモータサイクルライフを提供

Bluetooth、GPS

スマートフォン連動

ヘッドアップディスプレイ

モーターサイクルヘルメット

NSウエスト株式会社 広島県庄原市

NSウエスト株式会社

代表取締役社長 湊 則男

所在地 広島県庄原市新庄町 366-2

資本金 3億円 従業員 523名

事業内容 自動車表示機器(メーター及びヘッド・ア

ップ・ディスプレイ)の開発・製造・販売

URL http://www.nswest.co.jp/

1982 年設立。メーター、ヘッドアップデ

ィスプレイ(HUD)、インジケーター等

の車の情報を知らせる自動車表示機器の

開発・製造を主要事業とし、マツダ(株)、

ダイハツ工業(株)などで高いシェアを有

する。

広島県庄原市と三次市に工場を、広島市に

開発室を有し、製品の開発・製造の内製化、

一貫生産体制を持つことを強みとする。

NSウエスト(株)は、2014年、“非自動車部品”での新規事業に取り組むべく社内公募を行い、

約 100 件の応募案件のなかから、自動車表示機器の内製化に強みを有する既存事業との相乗効果が

見込める、スマートヘルメットの事業企画を採用した。製品開発にあたって、社内のオートバイ利

用者と広島県内のオートバイショップから首都圏のオートバイ愛好者まで、ヒアリング調査により

潜在的ニーズを探り、「ツーリングをより楽しむためのヘルメット」というコンセプトを立案した。

並行して、国内のヘルメットメーカーに技術採用を打診し、高い関心を示して積極的な方針を示さ

れた世界的なヘルメットメーカー「(株)SHOEI」と提携。ナビゲーション機能については、オ

ートバイ用のアプリケーションを既に製品化していた「(株)ナビタイムジャパン」と提携し、独自

のアプリケーションを共同開発した。

モ ノ

IoT

● 事業展開に至る経緯

ヘルメットは、Bluetoothでライダーのスマートフォンと接続され、スマートフォンを介しインタ

ーネットにつながる。ヘルメットと一体化したディスプレイに、目的地までのナビゲーションが表

示され、内蔵スピーカーから音声ガイドが聞こえてくる。ディスプレイの表示内容はライダーの視

界を妨げないように必要な情報を絞る工夫が施されている。

ハンドルや車載メーター付近に設置する従来のオートバイ用ディスプレイに比べて、ライダーの

視線移動が少ないことにより、安全走行を可能としている。

走り以外の負担を軽減すること、ツーリングをより便利にすること、バイクに乗っていない時に

でも楽しめること、という既存のヘルメットにはない機能を付加している。

コ ト

● IoTを使ってモノからコトへ

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Rider view image

Communication

equipment

(Smartphone)

Clouds

(Server)GPS

HUDdisplay

APP

Bluetooth

Smart Helmet

※株式会社ナビタイムジャパンの技術協力のもと

開発されたバイク専用ナビゲーションアプリ

●「ツーリングをより楽しむためのヘルメット」をコンセプトに開発されたスマートヘルメットは、

モノは使われることで価値が生まれるというサービス・ドミナント・ロジックの考え方を体現して

いる。何故なら、ライダーのより楽しいツーリングを可能にするために、ヘルメットがライダー本

人と繋がることを実現しているからである。

●今後、スマートヘルメットが提供する様々な機能が、オートバイ本体、ライダー本人のその時々の

「状態」を踏まえたものとなれば、ライダーをより楽しいツーリングに導くことになるであろう。

スマートヘルメットの開発にあたり、特許、意匠などで 18 件の知的財産権を登録。

近年の意匠審査基準の改定によって、GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)の画像に

関する意匠登録が増加しつつある。スマートヘルメットで投影される画像に関して、特許だけでなく

意匠も用いて保護するというのは有効な戦略である。

車載用HUDで培った開発力を有する同社とブランド力を有する(株)SHOEIとの共同開発に

より、ヘルメットそのものの完成度、機能性いずれも高く、展示会では、「こういうモノが欲しかっ

た」と高評価を得られ、ユーザーの潜在的な価値を実現する製品ができた。

従来のヘルメットの機能である、“安全、快適、かっこよさ”を追求した上で「便利」という新し

い価値・機能を付加し、ライダーに上質なモータサイクルライフを提供することを目指している。今

後は、オートバイ車体とつながる“コネクテッド・モーターサイクル”への発展、そのネットワーク

の中心として、スマートヘルメットが様々なデバイスとつながり、新しい価値の共創づくりにつなが

ることが期待される。

● ユーザーとの価値づくりのポイント

● サービス・ドミナント・ロジックの視点

内蔵スピーカーから

連動した音声ガイド

ターン指示、レーンガイド、目的地への距離・到着時刻が表示される

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Page 34: 平成30年度 モノ×コトづくりビジネス展開のための …...平成30年度 モノ×コトづくりビジネス展開のための知財戦略調査 サービス・ドミナント・ロジック事業化事例集

RFID、ゲートウェイ

クラウド、GPS

パスケース

カードホルダー

株式会社バンビ 東京都台東区

株式会社バンビ

代表取締役社長 舘林 秀朗

所在地 東京都台東区台東 4-32-1

資本金 9,950 万円 従業員 250名

事業内容 時計ベルト、貴金属・宝飾品、革小物の企画・

製造・販売及び時計の販売

URL http://www.bambi.jp/

日本の技術を活かした革製パスケースと通信機能の融合で

インバウンドを対象とした団体ツアー客の見守りシステムを開発

1930 年に設立の時計ベルトメーカーとし

て国内で高いシェアを有するリーディン

グカンパニー。自社ブランドの他、大手時

計メーカーのOEMも行っている。高級革

の加工において高い技術力があり、時計ベ

ルト以外にも、革製財布やカードケース、

貴金属の製造販売も行っている。国内、中

国(4か所)に加工工場を有している。

(株)バンビは、国内ではトップのシェアを有する時計ベルトメーカーである。社内では、若手社

員を中心に新商品開発に取り組むプロジェクトチーム制度を 2013 年から導入しているが、腕時計の

販売が減少する状況において、2016 年から「時計バンドとは全く異なる領域での新規事業」の検討

を行っていた。こうした中、位置情報のソリューションサービスを開発していた(株)Social Area

Networks から、腕時計型の製品開発の相談が同社に寄せられたことを契機に、同社がコンサルタン

トを委託しているデザイン会社を含めた三者による共同開発に発展。1枚のカードの中に

Bluetooth、Beacon、RFID、GPS、加速度センサーなどの機能を内蔵する「Jcard」を(株)Social

Area Networksが製品化した。

カード本体に充電するシステムのため、電池切れで充電を行う間は通信ができなくなる弱点を、パ

スケースにカードを入れ替えながら継続して利用できるシステムの着想に至り、Jcard のIDとパス

ケース内蔵のRFIDを統合するシステムを同社が特許申請し、「ぴぴっとリンク®」と名付けた。

モ ノ

IoT

コ ト

● 事業展開に至る経緯

● IoT を使ってモノからコトへ

事業の展開において、まず、ターゲットとして着目したのはインバウンドに関係する旅行会社であ

った。ツアー客が迷子になったり、集合時間に遅れたりして、添乗員が旅程管理に困っているという

声を聞いていたためである。「ぴぴっとリンク®」では、旅行会社がツアー客一人ひとりに、Jcardと

セットになったパスケースを渡し身に着けてもらう。観光バスにゲートウェイを設置することで、添

乗員はツアー客がいまどこにいるか、タブレットで確認することができ、想定エリア外に出てしまい

そうになれば Jcardのアラームを鳴らしたり、ツアー客は、添乗員の助けがほしい場合は、ヘルプ信

号を送ることができる。

個人情報は持ち帰りできるパスケース側のRFIDにあり、回収される Jcard には個人情報は記

録されないため、個人情報の管理面でも事業者の負担が少なくてすむメリットがある。

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●モノ先行でウェアラブル事業への進出が図られたが、事業展開にあっては、その応用範囲の広さが

認識されるに至っている。とはいえ、代替機能を持つ製品が多い中で、どのような点で優位性を発

揮していくかが課題となっている。

●現時点では、「管理する」側の視点から、様々な用途が考え出されているが、システムに直接的な相

互作用を持たせることができれば、「管理される」側の主体性が確立し、さらに応用範囲は拡大する

と考えられる。

●また、そうすることが「顧客」にとっての価値の共創に結び付いていくものといえる。

ぴぴっとリンク®はIDを統合する特許を取得している。今後、様々なモノ同士、ある

いは人とモノを紐づけさせるビジネスが期待される。汎用性のある器具(Jcard)を特定の用途(ツ

アー観光)に適用する際に必要な機能(ID統合)を補う点に関して特許を取得することによって、

汎用性があるといえども、この特定の用途に他社が参入することを難しくすることが可能となる。

本システムは、複数のRFIDを紐づけすることに特徴がある。出展する展示会の反応から、当初

想定していた観光産業以外にも、介護現場におけるお年寄りの見守り、メガネ店や病院などで外出し

た待ち客へのお知らせ、地方自治体によるインバウンド客の行動パターン調査など、様々な用途への

広がりも期待できることが判明した。

Jcard 自体は 4.5mm程度の厚みがあるため、市販のパスケースでは収納できない。同社は国内・中

国に工場を有しており、ワニ革・松阪牛革を使用した高級品のデザイン、加工においても、自社で自

在に行える強みを活かすことができる。パスケースがお土産にもなるメイド・イン・ジャパンの良品

であることによるツアーへの付加価値も提供している。同社にとっては、パスケースの製造販売にあ

わせて、システム及びアプリケーションのメンテナンスで継続的に顧客とつながるという新しいビジ

ネスモデルに進出することが期待される。

● ユーザーとの価値づくりのポイント

● サービス・ドミナント・ロジックの視点

観光ツアーバス

(株)Social Area Networks製

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ねこのトイレ「tolleta」

株式会社ハチたま

代表取締役 堀 宏治

所在地 神奈川県藤沢市片瀬海岸 1-12-4-1F

資本金 1 億 2,752万円 従業員 11 名

事業内容 ペット関連サービス

URL https://toletta.jp/

“ねこのトイレ”から得られる生体データをもとに

飼い主に猫の健康サービスを提供

2015 年3月、代表者により創業。企業理

念「ねこが幸せになれば、人はもっと幸せ

になれる。」のもとIoTやAIを使った

革新的なねこのトイレ「tolleta」を開発

した。社内にはIT技術者やデータサイエ

ンティストが在籍し、ねこ専門の獣医師と

共同研究を行っている。

モ ノ

A I (画像認識、データ解析)

センサー、クラウド

(株)ハチたまの代表者は、もともと病院の医療システム開発に携わっており、治療に用いたデー

タにより患者の体調等の情報が可視化されることで、医師と患者が情報の非対称性なくディスカッシ

ョンできることを経験した。しかし、ペットの健康状態は飼い主に分からないことが多く、本当に必

要な情報が獣医師に伝わっていないのではとの問題意識があった。そこで、データを取得し可視化す

るシステムをペット分野において実現したいと考えた。最初は、獣医と飼い主がテレビ電話で相談で

きるシステム、次にペットの食事データを取るための自動給餌器を製作した。これらを経て、飼い主

の手間なくねこの体調データを安定的、継時的に取得するためには、特別な機械より日常的なアイテ

ムが望ましいと考え、着目したのが、ねこのトイレであった。獣医師の監修のもとで「tolleta」を

開発。収集されたデータを用い、飼い主と獣医師が共通の土台に立ってコミュニケーションを図るこ

とにより、医療の質や飼い主の満足度向上のためのサービスを見据えたビジネス展開を進めている。

株式会社ハチたま 神奈川県藤沢市

IoT

● 事業展開に至る経緯

コ ト

● IoTを使ってモノからコトへ

「tolleta」には、猫の体重、尿の量などを計るセンサーとともに、猫の顔を認識するためのカメ

ラも備わっている。センサーやカメラのデータは Wi-Fi によりインターネット経由でクラウドに収

集され自動的に分析される。特徴的であるのは、猫の顔をAIによって画像解析するアルゴリズム

がクラウドに備わっていることである。日本では一軒あたりの猫の飼育数が 1.8 頭とされるなど、

複数の猫を飼育しているケースがあることから、収集した猫の画像データをもとに個体を判別し、

得られたデータとリンクさせている。飼い主は、スマートフォンから専用アプリによって、猫の「尿

の量」、「体重」、「トイレの滞在時間」のチェック、「トイレの間隔」のアラートなどのサービスを受

けることができる。

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同社の「tolleta」によるビジネスモデルは2つの方向性を有している。1つ目は、ねこの飼い主

に対するビジネス、2つ目は収集したデータを利用したビジネスである。

1つ目のビジネスでは、収集したデータで猫の体調情報というサービス価値を飼い主に提供してい

る。2つ目のビジネスでは、収集したデータを解析することで保険会社や動物病院などと連携し、新

たなサービス価値を追求している。

「たくさんのねこを幸せにしたい」という同社の企業理念のもと、「tolleta」により提供されるの

はモノではなくサービスであるという認識から、機器は無償配布とし、月額 500円のサービス料を徴

収する収益モデルとなっている。(契約期間2年)

また、アメリカ市場への進出も視野に入れており、動物病院チェーンを介して個人に「tolleta」

を販売していくことを計画している。これが実現すれば、BtoBtoCの相互関係により、猫の膨大な

体調データが収集されることで、同社が目指すデータプラットフォーマーに近づくこととなる。

●創業者の強い課題意識から生まれたペットの健康サービス提供システムである。また、売り切り型

ではなく月額課金型での事業展開は、サービス企業としての自負の表れといえる。

●しかし、サービス・ドミナント・ロジックの視点からすれば、重要なことは、システムそのものに

あるのではなく、生体データを得た飼い主との相互作用、さらには飼い主と獣医との相互作用にあ

る。具体的にいうなら、その内容にどのようにコミットし、ペット(猫)の健康維持・増進を通じ

た飼い主の「幸せ」という価値をどのように共創するかにある。

●そのためには、データの専門的分析が欠かせない。また、この点からすれば、BtoC での事業展開

の方が、飼い主との直接的な相互作用関係を構築しやすいといえる。

● ユーザーとの価値づくりのポイント

AIによる猫の画像認識技術を特許取得。日本では多頭飼いをする家庭が多いため猫の

個体の識別が課題であるところ、識別チップを着用させることなく個体を識別する手段を開発して特

許を取得していることで、競合他社に対する優位性を築いている。

● サービス・ドミナント・ロジックの視点

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平成 30 年度 モノ×コトづくりビジネス展開のための知財戦略調査

サービス・ドミナント・ロジック事業化 事例集

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