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パネルディスカッション: 高度情報技術を活用した教育革新のシミュレ ーション:理想のシナリオ・避けたいシナリオ 新田 正(京都市教育委員会事務局指導部学校指導課参与) 益川弘如(聖心女子大学現代教養学部教育学科教授) 緒方広明(京都大学学術情報メディアセンター教授) 美馬のゆり(公立はこだて未来大学システム情報科学部教授) 白水 始(東京大学高大接続研究開発センター教授) 201979() 14:30-15:40 @文部科学省 3階講堂 国立教育政策研究所「高度情報技術の進展に応じた 教育革新に関する研究プロジェクト(令和元年度~令和3年度)」 キックオフシンポジウム

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パネルディスカッション:高度情報技術を活用した教育革新のシミュレーション:理想のシナリオ・避けたいシナリオ

新田 正(京都市教育委員会事務局指導部学校指導課参与)

益川弘如(聖心女子大学現代教養学部教育学科教授)

緒方広明(京都大学学術情報メディアセンター教授)

美馬のゆり(公立はこだて未来大学システム情報科学部教授)

白水 始(東京大学高大接続研究開発センター教授)

2019年7月9日(火) 14:30-15:40 @文部科学省 3階講堂国立教育政策研究所「高度情報技術の進展に応じた

教育革新に関する研究プロジェクト(令和元年度~令和3年度)」キックオフシンポジウム

進展する高度情報技術を学校教育に積極的に取り入れることにより「教育の革新」を推進するための方策検討に資する知見を提供

① 高度情報技術を生かすための検討課題の整理

② 高度情報技術の進展に応じた教育革新を推進する上での促進条件の解明

③ 高度情報技術を活用した技術の開発

プロジェクト研究のゴール

2

高度情報技術を活用した教育革新の動向の把握

今後の方向性と課題

当研究所はどのように貢献すべきか

本シンポジウムのゴール

3

長年の現場教員生活を踏まえて

テクノロジがあればこんなことができたのに

テクノロジが入ってきても変えない方がよいと思うこと

テクノロジが人間のこういう仕事を支援すべきだと思われること

京都市新田先生に

4

高度情報技術を授業研究のサイクルに埋め込む⇒学びの質向上へ

実践データベース検索システム

検討ログのデータベース化

対話や手書き文字のデータ化

データ分析インターフェイス

実践記録のデータベース化

(科研費基盤研究S「評価の刷新:学習科学による授業モニタリングシステムの開発と社会実装」)

観察:ビッグデータ?

認知:従来の「子どもはこう学ぶはず」

解釈:新しい洞察?

評価の三角形Pellegrino, et al., 2001, Knowing what studentsKnow. NAPr.

6

益川先生に

私たちの学びのモデルの改訂にCBTは役立ちそうでしょうか?役立てるためにはどうしたらよいでしょうか?

教育データの利活用に向けて、制度面、技術面、運用面の観点から

現時点での問題点

今後の見込みや期待

緒方先生に

7

シンガポールは24年間かけてICT4EDマスタープランを整理(日本は何年で?)

マスタープラン1(1997~2002年)

マスタープラン2(2003~2008年)

マスタープラン3(2009~2014年)

マスタープラン4(2015~2020年)

カリキュラムと評価

ICTでカリキュラム(実現)を支える

ICTをカリキュラムと評価に埋め込み

ICTをカリキュラムやペダゴジー、評価に埋め込み

ICTを学習指導要領・評価に埋め込み、オンラインリソースも提供しデジタル学習促進

教師教育全教師と全学校にコアとなるトレーニングを提供

差別化した教師教育,管理職へのICTコンサルタント派遣

ICTのメンター制,学び合うコミュニティ作り

校内チームの能力伸長、実践とネットワーク強化

研究と開発(RD)

産業と学校現場連携で研究開発を行う試みを国が主導

学校がイノベーションを起こす土壌整備

研究を教室現場の実践につながるよう「翻訳」

学校の研究サーベイ、カスタマイゼーション・イノベーション共有を支援

学習のためのインフラ

全学校に情報機器や基盤を提供,多目的な機器提供

各学校のニーズに合った機器等の提供

カリキュラムの変更や学校のニーズと緊密に連携した提供

学校・家庭や各種データやコミュニティの接続性強化

出典:https://ictconnection.moe.edu.sg/masterplan-4/overviewLooi, C. K. (2013). “Scaling up rapid collaborative practices in Singapore schools.” Talk presented in Law, N. et al. Are CSCL and Learning Sciences Research Relevant to Large-Scale Educational Reform? Proceedings of the 10th International Conference on Computer Supported Collaborative Learning (CSCL 2013), 575-576.

お聞きしたいこと

日本の場合はどんな板を想定するとよさそう?

それぞれどれくらいの高さ? 特に低いところは?

「総合的」教育改革が重要:技術的革新だけでは不足

9

(Looi, 2011 “たる理論”)

技術的革新

先生の信念

学習評価

先生のスキル実践

カリキュラム

ペダゴジー(教育学)

政策

資質・能力の視野をもっと広げて

ご自身の強力な実践体験も踏まえて

デジタル時代における学びの在り方について

美馬先生に

10

高度情報技術を活用した教育革新の動向の把握

今後の方向性と課題

当研究所はどのように貢献すべきか

本シンポジウムのゴール

11

「高度情報技術を活かした教育改革

マスタープラン」が必要

12

ヴィジョン:未来に備えた責任あるデジタル社会の学習者

達成したいゴール:ICTの力ですべての学習者に質の高い学習を

成功の鍵:学習経験・環境のデザイナーとしての教師+学校文化の創造者としてのスクールリーダー

参考になるのは…ヴィジョンから実現手段まで首尾一貫した全体像

いかに実現するか https://ictconnection.moe.edu.sg/masterplan-4/overview

こうした「絵」を皆様と共に実践で確かめながら創っていきたい。

間違ったら、細かく分けて教えて、正解したら先に進むという学び方は理解を保証するか?

基礎の積み重ねが活用・応用を保証するか?

学んだことの「何」を児童生徒は書けるのか、振り返られるのか?個人差はどうか?

他者との違い(理解度含む)の効果はないのか?

「スタディログ」は学びの一部でしかないという自覚を持ちつつ

先端的なモデルケースで答えを探って共有

問うべき問い:学力とは、学びとは、認知とは?

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国のレベルでは教育課程改善に活用できる可能性

学習指導要領骨子

要領・解説・評価基準作成

学校での

教育実践

全国学調・

PISA等

調査結果

の共有と

指導例等

「子どもたちがどう学ぶか」「だから、学びをどう支援すればよさそうか」について国民全体の考えが豊かになる

• 指導法の実態に踏み込まず、教育課程の改訂(時数の増減、

順序の変更等)の効果をビッグデータから分析できるか

• 問うべき問い:• 粗いメジャーを大量に集めて

何が見えるか?

• 測りやすい領域に特化するような試験対策をどう防ぐか?

• データの標準化など条件整備は、どれだけ教育実践と切り離して行えるのか?

国立教育政策研究所にできることを中心に考える:

理想的には国のレベルで…

15

学習指導要領骨子

要領・解説・評価基準作成

学校での

教育実践

全国学調・

PISA等

調査結果

の共有と

指導例?

「子どもたちがどう学ぶか」「だから、学びをどう支援すればよさそうか」について、国民全体の考えが豊かになる

学習指導要領骨子

要領・解説・評価基準作成

学校での

教育実践

全国学調・

PISA等

調査結果

の共有と

指導例等

「子どもがどう学んだか」の断片を得て、「学びをどう支援すればよさそうか」のフィードバックを供給

豊富な教科等の知識に基づき経験で具体化

学校現場の裁量に依存

限られた側面をテスト・調査

日々の授業などの記録も個々人の学習記録も少ない

点数が中心・記述解答(誤答分類はあり)・経験則に基づき指導例

国研が関わりうるところ:

理想的には国のレベルで…

研究開発学校・指定校

国研とパートナーを組んで実践・研究を「理想のシナリオ」に向けて進めるとすれば、期待したいことは何か?

17

理想的には自治体・学校レベルで…

18

人材像・教育ヴィジョ

ン策定

人材像等協議

学校での

教育実践

学習評価・

県市学調等

指導結果

の共有と

改善

「子どもたちがどう学ぶか」「だから、学びをどう支援すればよさそうか」について、学校全体の考えが豊かになる≒CM

ここに地域・家庭も

理想的には授業レベルで…

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教材

づくり

教材案

検討

実践学習評価=

教材評価

実践結果

の共有と

検討

「子どもたちがどう学ぶか」「だから、学びをどう支援すればよさそうか」について、先生の考えがよくなる「実際こんな

風に学ぶんだ」を丁寧に見とりながら

「こう学ぶはず」を具体的に想定して

じゃあ、次はこうしてみようを(みんなで)考える

「子どもはこう答えそう」などと協議し

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理想的にはすべてのレベルで…

自治体・学校

授業

①(テストでなく)ヴィジョンやペダゴジードリブンなPDCAサイクルが回り

②学びの記録がBig Dataとして収集され

③人知(経験則)とAIが融合

した学習の評価とカリキュラムの改善が持続的に積み重ねられていく

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避けたいのは…

自治体・学校

授業

① テストがトップダウンに一気通貫して

② PDCAが逆回転することで

③ AIを超えられない人材ばかり生み出されること