龍谷大学から在外研究の機会をいただき、二00三年八月

日から移民の増場であるカリフォルニアに拠点をおき、私の研

究分野である移民学の研究を開始した現在取り組んでいる研

究課題のつが「シリコンバレーという特異な地域に見られる

移民の動向」である。シリコンバレーに位置する経済的要因か

らこの士地に集まる移民グループの中にいわゆる社会の底辺を

支える出稼ぎ労働に従事している人たちだけではなく、世界中

から集まった最先端の技術開発者も含まれる人種的少数派グ

ループが政治力を持ち始め、知事選がグレイ・デービス知事

(民主党)の解職の可否を問う住民投票と同時実施され、米力

りフォルニア州知事に、ハリウツド映画スターでオーストリア

出身のアーノルド・シユワルツエネッガー氏が選出されたこと

も、日本ではありえない移民にとってのアメリカン・ドリーム

の一例であろう

シリコンバレーの人口は約百五十万人(就労者は約百十

五万人)で、その就労者のうち五%が外国生まれであるシ

リコンバレーは二局学歴のハイテク移民」が最先端の技術開発

と新事業構築に明け暮れるという1T産業のメッカであると

ころでカリフォルニアの地図を見てもシリコンバレーという名

称は見つからないシリコンバレーはサンノゼ(仂曾、omΦと

綴るがスヘイン語風にサンノゼと発音する)を中心としたここ

サンタクララ郡お0三q)の通称であるスタンフォード大

学が位置するパルアルトにはサンマイクロシステムズの本社が

あり、サンタクララ市にはインテル、ヤフ1の木社があるそ

して、クパティーノ市にはアップルの本社があるこのような

1T企業が集中している地域をシリコンバレーと呼ぶ

茶子

-4

シリコンバレーの日本人起業家

E.S.S 'a'y

一情報発信地に集まった同志社の卒業生たちー

エッセイ

(籠谷大学経営学部教授、1975年商学部卒業)

イ

洙任

多数派を占める中国・台湾系、インド系、東南アジア系出身

の先端技術者は、米国で教育を受け大学や太饒卒業後白国に

知国せずシリコンバレーに職を求めて集まる。内凶ではありえ

ない機会や成功を夢見て一拙下金をめざすことが目的である

そして白国にいる若い世代がシリコンバレーで成功した先推た

ちのことを見聞きし、内分の将来の姿をオーバーラツプさせ、

彼らも又米国での在住を夢見るしかし、日本人にはこの移民

のモビリティ・モデルが適用されない多くのΠ本からの企業

派造研究員や大学関係者と'を持つ機会無まれたが、「Π本

への帰凶は前捉条什であり、米凶での経験をキャリアのステツ

プアップに使うというより、Π木での過酷な勤務状況から一瞬

雌れるための勁務先からのこ褒美的なもの」という愆識をもつ

人が多かった方韓国からの研究者や留学生の中では、米倒

でなんとか仕事を見つけ長期在作をめざしている人たちが多い

のが興味深い子供の将来を男えてという理山が多く、兵没と

受験戦争は、"能であれぱイ供たちに経験させたくないという

のが彼らの本音だ

日本人人口はアジア系人口が鰔も多いm豊司雪含m8市近辺

に集中してぃるが、シリコンバレーの中心地サンノゼにもΠ木

人人口は増えており、戸大なジャパニーズスーバーマーケツト

が二店も存在している最近はそのスーパーの近隣にコリアン

スーパーマーケットも誕生したこの地域では日本版ビデオの

レンタル店や紀伊国屋圭凹店、そしてΠ本語システムコンピユー

タの販売専門沽など、日本に関述する商品を販売する店が立ち

ならぶ。

従ってこの地域に行くと品数は多くはないが、 U本製品はほ

ぽ何でも千に人れることができる U本人向け大型スーパーマ

ーケットに舗時おいてある日本人向け新聞の紙に、 m三8コ

く印=Φて、山でNコΦmΦ則ゑ「ΦでおコΦ仁「 ZΦ一乏0牙(仂く高Z)が上催

する起業家トークセッションが紹介されていた四'四二品Φ

、し

一ヨΦ3里一0悉一、一コδ.創業者の桝本博之氏をスヒーカーとして迎

え、テーマは「関西人、涙と笑いのシリコンバレー起業劇」、

関西人という'葉に惹きつけら器谷大学難早部、京都産業

耕究に関連する情報が得られるのではと思い興味をもった

日本でょく見られる喪まったテーマとあまりにも異なる、人剛

味に満ちたタイトルで参加省を募る点も興味深い

米国では剛い介わせはすべてオンラインで行う謹岫番'ゾは

はじめから・紀幟されておらず、「デジタルディバイド」という

U葉はここ米国では既に陳腐な喪現だ PCがなけれぱ、生活

に支障をきたすと."つても大げさではない参加登録をオンラ

インで行うと雲例登録で定員に達したので当Π参加もできま

せんと文が加わっていたが、細かいことはいわない地域性

を既に理解していたため、登録なしの当日参加を決め込み、

゛、ノ

イオテックの基礎と桝木氏の四,如二品Φについて乏Φずでチエツ

クし、会場に出向いた

シリコンバレーはこ存知のように九八力年以降、日本より

ト五輩い1T革命劣兆し、多くのべンチャーキャピタルー

T企業が乱立し始めた卜年ほど前からこの多国籍集団が、

1

Tのみならずバイオに口を向け始めた如,四二品ΦのHP自社

紹介でシリコンバレーのバイオ産業の発展が「1T企業の成長

↓資八"富状態、ブレインの染約↓新規事業への出資、投資↓

新規バイオ企業の成長」という凶式で細介されている今では、

mmm山イ

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このシリコンバレーは「石を投げれぱ、バイオ研究者に当たる」

とまで園われるほどの大バイオ企業集約群に成長した。それ

にょって、最近の投資家は、この地域をバイオの如a )§、

即ち、バイオテックベイと呼ぶようになったそうである

桝本氏の背景がまず紹介された学生時代にロックバンド活

動、ラ、シオ番組のディレクターなどを精力的に行ってぃたとい

う紹介を聞くと、平均的な日本人でないことがわかる自己紹

介時に学歴の紹介を含めなかった点も非常に興味深かった卒

業後は東洋紡績株式会社に入社され、同社では、診断薬の販

売・生産およぴ海外事業の企画、そして経営分析等の業務を扣

当された。しかしながら、ドイツ畿中に受けたへッドハンタ

ーからの一本の電'で渡米を決意し、九九六年七月には渡米、

勺巴0 》=0の四一0一Φ6プ企業(nげOZ↓国n工げ号9豊0二Φm、一コn)

で口一「Φn§、一ヨΦヨ曾一0コ巴 m巴Φ仂に就く同社では、ドイッ、

イギリス、日本での法人立ち上げに関わり、日本の現地法人の

代表取締役も務められたしかし、他社にょる買収を契機に、

二000年二月如,如二品Φ一ヨΦヨ豊§一、一暑.を起業するに至

つた。東洋紡績、匹0 ↓Φ0丁業界での経験と人脈を生かし、日

本と米国の四一0 ↓Φ今業界のまさに「四二品Φ」となるというミ

ツションを掲げ、四,則二品Φ一コ一ΦヨΦご0コ巴をシリコンバレーで

設立し、約三年半で日米のライフサイエンス業界に注目される

国際企業へと同社を急成長させたのである。

背広にネクタイを着装しているメインスピーカーを想像して

いた私は、壇上に立たれる桝本氏を見てまず驚いたなぜなら

その風貌であるこ自分でもおっしゃつてぃたが、頭髪はなく

体格がとてもりつぱな桝本氏は、日本で地下鉄にでも乗ろうも

のなら周りの人は距籬をあけられるほどイメージの強い方であ

るしかし、常に笑みをうかべながら参列者を笑いの渦に巻き

込む関西人特有のサービス精神があふれた人問味豊かなカリス

マ性があった高校時代にはハンドボールの選手で国体選手に

選出されるほどのスポーツマンであったが、大学卒業後東洋

紡績という大企業のサラリーマンになる学生時代に英語はま

つたくだめであったがヨーロッパ・アメリカに無銭旅行を経験

し、その体験際らも桝本氏の英断に満ち溢れた性格が垣問見

られた大学では監査会計学を専攻され、その専攻分野からは

将来を緻密に計画し、技能を身につけておこうとする真面日な

姿勢も感じ取られた。

東洋紡績に入社して三力月後の工場研修後人事課からバイ

オ分野に所属を命じられ、その時「バイオという口葉を初め

て聞いたそうであるいまから十八年前のことである科学は

まったくの門外漢であり、それも英語が不得意な人材が海外で

販尤をすることになったという話を聞くと、ジエネラリストを

育成する日本的人材育成・管理法もこのように素晴らしい結果

を出すケースがあるのだと思ったドイツに出張中にアメリカ

のバイオ関係の会社からへッドハンティングを受け八年前に渡

米してきた桝本氏は、日本にはない福利厚生のストックォプシ

ヨンの権利を手にし、その会社の株価が上がっていくと同時に

高級車や大邸宅を夢見たしかし、その会社は突然他社に買収

され従業員の株も紙くずと化し、桝本氏の夢は崩れた。

この時点で桝本氏は日本に帰国するかアメリカに残るか選択

する場面に直面するそして、彼は米国に残る決意をし、一

年二月に資本金d仂九五 000ドル・従業員一人でべ

而

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ンチャー企業を起こすのである

セミナーの骨子は多様な参加者の目線に合わせたべンチャ

スピリットとは何であるかという点であったまず、セミ

ナーは日本経営方式の批判から人った「根回し、しがらみ、

人の顔色を見ながらの仕事、稟議システム、人為的ストレス、

見ためにこだわる」などが口本式難凸のキーワードとして挙げ

られた。桝本氏が笑いを交えながら話を震開する中で参加者の

目力卸き始めた桝本氏が日本式経営を批判するたぴに参加者

は深くうなずき、誌"感を身体で表現していた白然と私も同

じように桝本氏の話に引き込まれていった。

「会議のあり方」も口本と米国祭=泥の差があるようだ日

本では会議のための会議、会議の後の会識、そして、やりなお

し会議と何のための会議であるかわからないという非効率性を

痛烈に批判するアメリカでは会議で参加者が全員意思表示を

明確に行い、決定嘔項を尊重する点に特徴がある「見ために

こだわる」は日本ではまず学歴そして服装千叫し方、イメージ

がその人材の資質より先行する点で優秀な人材が兆掘できず、

また育成しにくい点も挙げられた

しかし、米国での起業で必饗と強開され為{は私が期待して

いたようなアメリカ式鷲園手法ではなかった効率的どころか

反対に非効率とも Yえる乢菊分扣ができているアメリカ式鷲[

手法と倫<なり、桝木氏は「人で何でもできるか(いわゆる

ジエネラリスト的発想ごそして、デメリカ人に対して自分が

外国人であること烹織できるか(日本人としての自覚とプラ

イド)」という点を強訓されたのであるそして「日本とのネ

ツトワーク」「瓢客や従業員に対して謙虚であるべき」点

mmm山イ

も重要であると加えたこれはアメリカ式経営手法にない点で

ある結局桝本氏は日本人の強みをアメリカ市場で試すことで、

起業における成功に繋げたのではないかと恐った。

しかし、最も重要な成功の基盤となったのはやはり「最大情

報窕倫地域であるシリコンバレー」を本拠地に構えたことであ

ろうスタンフォード大学で新たな肝炎に役立つ遺伝子治療に

ついて聞きつけるやいなや、その開発主任である教授と連絡を

とり、そして日本を市場とした製品開発に繋げ、新たな

)<0禽けという研究中心の起業も可能になった

最後に桝本氏はアメリカに来た意味合いを見つけ出すことを

常に考え、何事も楽しみ重視、家族驫謝、無理をしない、臼

分のプロフエッショナリティーを見つけるために長期的ゴール

を打ち立てる重要性を説かれ、セミナーは終了したセミナー

参加者はこのカリフォルニアで、日本人の強みを戦略に、日本

で実現できなかった夢をこ橘報の発信地シリコンバレーで実

現していくのであろう。大学教員としての貰務は、日本の学生

が世界に視点を向けるような教育環境を整備することと強く感

じた。学

歴が紹介されなかったことに興昧を抱いた私は、講演終了

後不驥な質問と思ったが、桝本氏に彼の出身校を訪ねたそ

うすると桝本氏は偶然にも私の後輩で、同志礼大学商〕赤卒業

九八五年卒)であることが判明した。そしてセミナー参加

者の巾に五人の同志社大学卒業生がいることがわかった。情報

発仏地、シリコンバレーに集まった同志社の卒業生たちである

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